説明

血液バッグ用包装材及び血液バッグ包装体

【課題】血液バッグ内容物である抗凝固液や赤血球保存液中の水分が包装体外に透過するのを抑制する高い耐水蒸気透過性を有し、かつ、長期間の高温高湿環境下においても耐水蒸気透過性の安定性及び透明性に優れた血液バッグ用包装材を提供すること。
【解決手段】本発明による血液バッグ用包装材は、基材層(Y)、該基材層(Y)上に形成される無機蒸着層(X)、該無機蒸着層(X)上に形成される不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)を含有する層(Z1)、及び、該層(Z1)上に形成される不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)とを含有する層(Z2)を含む積層フィルム(I)の該層(Z2)を内側にして、該積層フィルム(I)の少なくとも二枚を積層してなる積層フィルム(II)の少なくとも一方の該基材層(Y)上に、補強層、熱融着層の順で積層してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液バッグ内に含まれる抗凝固液や赤血球保存液の水分が包装体外に透過するのを抑制する高い耐水蒸気透過性を有し、かつ、長期間の高温高湿環境下においても耐水蒸気透過性の安定性及び透明性に優れた血液バッグ用包装材、並びに、血液バッグ用包装材で包装された血液バッグ包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輸血用血液バッグ容器としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのフィルムを袋状に形成したものが使用されている。そして、血液バッグに含まれる抗凝固液や赤血球保存液等の薬液は、一般に、空気中の酸素により変色、あるいは変質するものが多く、また、比較的薬液量が少ない為に水分蒸散による濃度変動の影響を受けやすいことから、これを抑制するため、血液バッグは、ガスバリア性(水蒸気,酸素バリア性)に優れる包装材により密封包装されている。
【0003】
血液バッグを包装するガスバリア性に優れる包装材として、例えば、内部包装材としてポリエチレンあるいはポリプロピレンフィルム、外部包装材としてポリエチレン/アルミ箔/ポリアミド等の積層フィルムを用いた二重包装袋(二重包装材)(特許文献1:特開平8−243148号公報)、内部包装材として、低密度ポリエチレン/シリカ蒸着二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(蒸着PET)/二軸延伸ポリアミドフィルム(ONy)/線状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムからなる積層フィルム、外部包装材として二軸延伸ポリアミドフィルム(ONy)/線状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムからなる積層フィルムを用いた二重包装袋(二重包装材)(特許文献2:特開2009−143571号公報)など、種々のガスバリア性積層フィルムを用いる方法が提案されている。
【0004】
また、透明性を有し、よりガスバリア性に優れる積層体として、PET/酸化アルミ蒸着膜/ゾルゲル系バリアコート/酸化アルミ蒸着膜/ゾルゲル系バリアコート/接着剤/ゾルゲル系バリアコート/酸化アルミ蒸着/ゾルゲル系バリアコート/酸化アルミ蒸着膜/PET/接着剤/ゾルゲル系バリアコート/CVD−酸化珪素蒸着膜/ONy/接着剤/LLDPEフィルムのように、二枚のPET/酸化アルミ蒸着膜/ゾルゲル系バリアコート/酸化アルミ蒸着膜/ゾルゲル系バリアコートから積層フィルムのゾルゲル系バリアコート面を内面にしてドライラミネート用接着剤などを用いて積層してなる積層フィルムと、ゾルゲル系バリアコート/CVD−酸化珪素蒸着膜/ONy及びLLDPEフィルムとをドライラミネート用接着剤などを用いて積層してなる積層体(特許文献3:特開2009−248455号公報)などが提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1などに提案されているガスバリア包材はアルミ箔のため不透明であり、特許文献2などに提案されている蒸着PETフィルムをガスバリア層に用いたものは、透明性は有するものの、実質的に二重包装材である。一方、特許文献3などで提案されている積層体は、透明性を有し、ガスバリア性にも優れるものの、二度の蒸着を必要とするなど工程が複雑となる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−243148号公報
【特許文献2】特開2009−143571号公報
【特許文献3】特開2009−248455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、血液バッグ内に含まれる抗凝固液や赤血球保存液中の水分が包装体外に透過するのを抑制する高い耐水蒸気透過性を有し、かつ、長期間の高温高湿環境下においても耐水蒸気透過性の安定性及び透明性に優れた血液バッグ用包装材、並びに血液バッグ用包装材で包装された血液バッグ包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための手段は以下の第(1)項〜第(8)項である。
(1)基材層(Y)、その基材層(Y)上に形成される無機蒸着層(X)、その無機蒸着層(X)上に形成される不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)を含有する層(Z1)、及び、その層(Z1)上に形成される不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)とを含有する層(Z2)を含む積層フィルム(I)のその層(Z2)を内側にして、その積層フィルム(I)の少なくとも二枚を積層してなる積層フィルム(II)の少なくとも一方のその基材層(Y)上に、補強層、熱融着層の順で積層してなることを特徴とする、血液バッグ用包装材。
(2)その基材層(Y)が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである、第(1)項に記載の血液バッグ用包装材。
(3)その不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)が、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物との塩である第(1)項又は第(2)項に記載の血液バッグ用包装材。
(4)その不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)が、アクリル酸と亜鉛との塩である第(1)項又は第(2)項に記載の血液バッグ用包装材。
(5)そのビニルアルコール系重合体(b)が、変性ビニルアルコール系重合体(b1)である、第(1)項から第(4)項のいずれか1項に記載の血液バッグ用包装材。
(6)その補強層が、二軸延伸ポリアミドフィルムである第(1)項〜第(5)項のいずれか1項に記載の血液バッグ用包装材。
(7)第(1)項〜第(6)項のいずれか1項に記載の血液バッグ用包装材で血液バッグを包装してなる血液バッグ包装体。
(8)血液バッグを収納してなる容器の上面を、第(1)項〜第(6)項のいずれか1項に記載の血液バッグ用包装材で熱融着してなる血液バッグ包装体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の血液バッグ用包装材は、ガスバリア性を有する、少なくとも二枚の積層フィルム(I)の層(Z2)同士を内側にして積層することにより、複雑な工程を経ることなく優れたガスバリア性を発現する事ができ、かつ、長期に渡り、その優れたガスバリア性を維持する事ができる。本発明により、高温高湿の環境下においても血液バッグ内容物である抗凝固液や赤血球保存液等の水分蒸散を抑制し、製造時から開封時までの長期間、薬液の安定性を保ちつつ保存することを可能とする包装材を容易に製造することができる。さらに、その高いガスバリア性を保ちながら透明性を確保しているため、従来の不透明なアルミニウム箔積層材料からなる包装体の代替品として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明による血液バッグ用包装材の1態様を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について更に詳細に説明をする。
【0012】
(1)血液バッグ用包装材
本発明による血液バッグ用包装材は、基材層(Y)、基材層(Y)上に形成される無機蒸着層(X)、無機蒸着層(X)上に形成される不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)を含有する層(Z1)、及び、層(Z1)上に形成される不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)とを含有する層(Z2)を含む積層フィルム(I)の層(Z2)を内側にして、該積層フィルム(I)の少なくとも二枚を積層してなる積層フィルム(II)の少なくとも一方の基材層(Y)上に、補強層、熱融着層の順で積層してなることを特徴とする。本発明による血液バッグ用包装材は、長期間の過酷環境下においても高いガスバリア性を安定して発現することから、血液バッグの薬液水分等の揮発成分の減量や空気中の酸素の影響による酸化を抑制することができ、製品の長期保存に有効である。また包装材が透明であるため、内容物の状態を視認でき、場合によっては異物混入などを防ぐ事ができる。
【0013】
本発明による血液バッグ用包装材の1態様の断面模式図を図1に示す。図1に示す血液バッグ用包装材10は、基材層(Y)13及び20、基材層(Y)13及び20上に形成される無機蒸着層(X)14及び19、無機蒸着層(X)14及び19上に形成される不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)を含有する層(Z1)15及び18、及び、層(Z1)15及び18上に形成される不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)とを含有する層(Z2)16及び17を含む積層フィルム(I)21及び22の層(Z2)16及び17を内側にして、二枚の積層フィルム(I)21及び22を積層してなる積層フィルム(II)23の一方の基材層(Y)13上に、補強層12、熱融着層11の順で積層してなる。なお、図1は模式図であり、各層又は積層フィルムの相対的厚みは実際の血液バッグ用包装材における各層又は積層フィルムの相対的厚みを必ずしも反映していない。
【0014】
以下、本発明による血液バッグ用包装材を構成する、基材層(Y)、無機蒸着層(X)、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)を含有する層(Z1)、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)とを含有する層(Z2)、積層フィルム(I)、及び積層フィルム(II)、並びに補強層及び熱融着層について詳しく説明をする。
【0015】
<基材層(Y)>
本発明の血液バッグ用包装材を構成する基材層(Y)は、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、フッ素樹脂あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド等が、延伸性、透明性に優れる基材層(Y)が得られるので好ましい。さらに、これら熱可塑性樹脂からなる基材層(Y)の中でも、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルムが好ましくは、特に二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが透明性、剛性、機械的強度、耐熱性に優れるので特に好ましい。
【0016】
また、これら基材層(Y)は、無機蒸着層あるいは接着剤との接着性を改良するために、その表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0017】
<無機蒸着層(X)>
本発明の血液バッグ用包装材を構成する基材層(Y)上に形成される無機蒸着層(X)は、無機物からなる薄膜であり、具体的には、珪素、亜鉛、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫、マグネシウム、インジウムなどの無機原子、あるいはその酸化物、窒化物、弗化物、あるいは酸窒化物及びそれらの複合物等の無機化合物が例示される。
【0018】
本発明の血液バッグ用包装材を構成する無機蒸着層(X)の形成方法は特に限定されず、真空蒸着法、化学気相成長法、物理気相蒸着法、化学気相蒸着法(CVD法)、ゾルゲル法などがある。中でも、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法(CVD)、物理気相蒸着法(PVD)、プラズマCVD法などの減圧下での製膜が望ましい。これにより、窒化珪素や酸化窒化珪素などの珪素を含有する化学的に活性な分子種が速やかに反応することにより、無機蒸着層(X)の表面の平滑性が改良され、孔を少なくすることができるものと予想される。無機蒸着層(X)の厚さは、0.1〜1000nmであることが好ましく、1〜500nmであることがより好ましい。
【0019】
本発明の血液バッグ用包装材を構成する無機蒸着層(X)は、その表面を予め表面改質処理をしておくことが望ましい。表面改質処理には、例えばプラズマ処理、コロナ処理等があり、酸素ガス、窒素ガス、不活性ガス、大気等を用いることにより、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体層との密着性を向上させることができる。
【0020】
<不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)を含有する層(Z1)>
本発明の血液バッグ用包装材を構成する基材層(Y)の無機蒸着層(X)面に形成される不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)を含有する層(Z1)は、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)を重合することによって得られる層である。
【0021】
本発明の血液バッグ用包装材を構成する不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)を含有する層(Z1)の厚さは、0.01〜100μmであり、好ましくは0.05〜50μmであり、より好ましくは0.1〜10μmである。
【0022】
<不飽和カルボン酸化合物>
本発明に係わる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)を形成する不飽和カルボン酸化合物は、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のα、β−エチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物であり、重合度が20未満、好ましくは単量体若しくは重合度10以下の重合体である。重合度が20を越える重合体(高分子化合物)を用いた場合は、後述の多価金属化合物との塩が完全には形成されない虞があり、その結果、当該金属塩を重合して得られる層は高湿度下でのガスバリア性が劣る虞がある。これら不飽和カルボン酸化合物は、一種でも二種以上の混合物であってもよい。これら不飽和カルボン酸化合物の中でも単量体が多価金属化合物で完全に中和された塩を形成し易く、当該塩を重合して得られる重合体層を基材層(Y)の少なくとも片面に積層してなる血液バッグ用包装材は、高湿度下でのガスバリア性に特に優れるので好ましい。
【0023】
<多価金属化合物>
本発明に係わる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)を形成する成分である多価金属化合物は、周期表の2A〜7A族、1B〜3B族及び8族に属する金属及び金属化合物であり、具体的には、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)等の二価以上の金属、これら金属の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩等である。これら金属化合物の中でも、二価の金属化合物が好ましく、特には酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛等がより好ましい。これら二価の金属化合物を用いた場合は、不飽和カルボン酸化合物との塩を重合して得られる膜の高湿度下でのガスバリア性が特に優れている。これら多価金属化合物は、少なくとも一種が使用され、一種のみの使用であっても、二種以上を併用してもよい。これら多価金属化合物の中でもMg、Ca、Zn、Ba及びAlが好ましく、特にZnがより好ましい。
【0024】
<不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)>
本発明に係わる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)は、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物との塩であることが好ましい。これら不飽和カルボン酸化合物多価金属塩は一種でも二種以上の混合物であってもよい。そして、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の中でも、(メタ)アクリル酸亜鉛が、得られる重合体層の耐熱水性に優れるので好ましい。
【0025】
<不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)とを含有する層(Z2)>
本発明の血液バッグ用包装材を構成する層(Z1)上に形成される層は、上記で述べた不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)とを含有する層(Z2)である。
【0026】
<ビニルアルコール系重合体(b)>
本発明に係るビニルアルコール系重合体(b)は、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、変性ビニルアルコール系重合体等である。ポリビニルアルコールは混合可能であれば特に問題ないが、好ましくは重合度が100〜3000であり、より好ましくは200〜2500であり、更に好ましくは300〜2000である。重合度が100〜3000であると、水溶液にして不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)と混合し、層(Z1)上にコーティングし易く、ガスバリア性も良好である。鹸化度は、好ましくは90%以上であり、より好ましくは、95%以上である。鹸化度が90%以上であるとガスバリア性が良い。また、耐水性からオレフィン含有ポリビニルアルコールを使用してもよい。オレフィン含有量が0〜25モル%であることが好ましく、1〜20モル%であることがより好ましく、2〜16モル%であることが更に好ましい。オレフィンとしては、炭素数4以下のものが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等が挙げられるが、耐水性の点でエチレンが最も好ましい。また、ビニルアルコール系重合体の好適な例として、変性ビニルアルコール系重合体がある。
【0027】
〈変性ビニルアルコール系重合体(b1)〉
変性ビニルアルコール系重合体(b1)としては、ビニルアルコール系重合体(b)に、種々の公知の反応性を有する基(反応性基)を付加、置換、あるいはエステル化等により反応性基を結合して変性したもの、酢酸ビニル等のビニルエステルと反応性基を有する不飽和化合物とを共重合して得た共重合体を鹸化したもの等を挙げることができる。これら反応性重合基としては、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基、スチリル基、チオール基、シリル基、アセトアセチル基、エポキシ基などが挙げられる。反応性基の量は、適宜決めることができるが、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の量が少なくなるとビニルアルコール系重合体が本来有するガスバリア性が損なわれる虞があるので、反応性基の量は、0.001〜50モル%の範囲にあることが好ましい(反応性基とOH基の合計で100モル%とする)。
【0028】
変性ビニルアルコール系重合体(b1)の製法としては、ビニルアルコール系重合体(b)に種々公知の反応性を有する基(反応性基)を付加、置換あるいはエステル化等により反応性基を結合して変性したもの、酢酸ビニル等のビニルエステルと反応性基を有する不飽和化合物とを共重合して得た共重合体を鹸化したもの等を挙げることができ、重合体として分子内に反応性基を有する限りとくに限定はされない。
【0029】
変性ビニルアルコール系重合体(b1)は、好ましくは、重合度が100〜3000の範囲のものが使用され、より好ましくは、300〜2000の範囲のものが使用される。また、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)と併用して得られる重合体のガスバリア性の観点から鹸化度が70〜99.9%の高いものが好ましく用いられ、とくに85〜99.9%のものがより好ましく用いられる。これら変性ビニルアルコール系重合体(b1)が有する反応性基としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニル基、アリル基、スチリル基、チオール基、シリル基、アセトアセチル基、エポキシ基等が挙げられる。変性ビニルアルコール系重合体に於ける反応性基の量は、適宜決め得るが、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の量が少なくなるとビニルアルコール系重合体が本来有するガスバリア性が損なわれる虞があるので、反応性基の量は、0.001〜50モル%の範囲にある(反応性基とOH基の合計が100モル%)ことが好ましい。また、変性ビニルアルコール系重合体(b1)は、水、低級アルコール、有機溶媒等に溶解性があるものが好ましく、とくに水又は水−低級アルコール系混合溶媒に溶けるものがより好ましい。
【0030】
これら反応性基で変性した変性ビニルアルコール系重合体(b1)を成分の一つに用いることにより、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)と混合して重合する際に、変性ビニルアルコール系重合体(b1)と不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(a)の少なくとも一部が何らかの結合をした重合体からなる低湿度下におけるガスバリア性が改良された層(Z2)が得られる。
【0031】
このような変性ビニルアルコール系重合体(b1)の具体例としては、例えば、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα、βエチレン性不飽和基を有するカルボン酸化合物あるいはその誘導体と反応させ(メタ)アクリレート基を導入してなる(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ);イソチウロニウム塩やチオール酸エステルを有するビニルモノマーと酢酸ビニルとを共重合し、得られた重合体を酸や塩基で分解しチオール基とする方法、高分子反応により、ビニルアルコール系重合体の側鎖に反応性官能基を導入する方法、チオール酸の存在下にビニルエステル類を重合し、得られた重合体を鹸化することにより分子の末端にのみチオール基を導入する方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にチオール基(−SH基)を有する、チオール基変性ビニルアルコール系重合体(b1ロ);ビニルアルコール系重合体あるいはカルボキシル基又は水酸基を含有する酢酸ビニル系重合体にオルガノハロゲンシラン、オルガノアセトキシシラン、オルガノアルコキシシラン等のシリル化剤を用いて後変性によりシリル基を付加する方法、あるいは酢酸ビニルとビニルシラン、(メタ)アクリルアミド−アルキルシラン等のシリル基含有オレフィン性不飽和化合物との共重合体を鹸化し、分子内にアルコキシシリル基、アシロキシシリル基あるいはこれらの加水分解物であるシラノール基又はその塩等のシリル基を導入する方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にトリメトキシラン基、トリエトキシシラン基等のトリアルコキシシラン基、トリカルボニルオキシシラン基等を有する、シリル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ハ);ビニルアルコール系重合体を酢酸溶媒中に分散させておき、これにジケテンを添加する方法、ビニルアルコール系重合体をジメチルホルムアミド、またはジオキサンなどの溶媒にあらかじめ溶解しておき、これにジケテンを添加する方法、及びビニルアルコール系重合体にジケテンガスまたは液状ジケテンを直接接触させる方法等により得られる、基体となるビニルアルコール系重合体のOH基の一部にアセトアセチル基を有する、アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ニ);その他反応性官能基を有するモノマーを酢酸ビニルと共重合した後鹸化することにより、側鎖に反応性官能基を導入する方法、高分子反応により、ポリビニルアルコールの側鎖に反応性官能基を導入する方法、連鎖移動反応を利用して反応性官能基を末端に導入する方法等、種々公知の方法により分子内に、(メタ)アクリルアミド基、アリル基、ビニル基、スチリル基、分子内二重結合、ビニルエーテル基等のその他のラジカル重合基を付加してなる変性ビニルアルコール系重合体、エポキシ基、グリシジルエーテル基等のカチオン重合基を付加してなる変性ビニルアルコール系重合体等を例示できる。
【0032】
これら変性ビニルアルコール系重合体(b1)の中でも、(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ)を用いて得られる重合体からなる層は、高湿度下及び低湿度下でのガスバリア性(酸素バリア性)に優れ、熱水処理後のガスバリア性(耐熱水性)の低下もなく、柔軟性を有し、また、このような層が形成された積層体、中でもフィルムを包装材等に用いる場合、ヒートシール強度が改良されるという特徴を有する。
【0033】
〈(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ)〉
(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ)としては、好ましくは(メタ)アクリロイル基の量(−OH基との対比;エステル化率)が0.001〜50%の範囲にあり、より好ましくは0.1〜40%の範囲にある。エステル化率が0.001%未満のものは得られる層(Y)の耐熱水性、柔軟性等が改良されない虞があり、一方、50%を超えるものは得られる層(Y)の耐熱水性、酸素バリア性等が改良されない虞がある。本発明に係る(メタ)アクリレート基変性ビニルアルコール系重合体(b1イ)は、例えば、ビニルアルコール系共重合体と(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸誘導体とを、例えばブレンステッド酸、ブレンステッド塩基、ルイス酸、ルイス塩基、金属化合物などの触媒の存在下または非存在下に反応させることにより得られる。またビニルアルコール系共重合体と、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のビニルアルコール系共重合体のOH基と反応する官能基を分子内に有する(メタ)アクリル酸誘導体とを反応させ、(メタ)アクリレート基をビニルアルコール系共重合体に間接的に導入することもできる。
【0034】
〈チオール基変性ビニルアルコール系重合体(b1ロ)〉
チオール基変性ビニルアルコール系重合体(b1ロ)としては、イソチウロニウム塩やチオール酸エステルを有するビニルモノマーと酢酸ビニルとを共重合し、得られた重合体を酸や塩基で分解しチオール基とする方法、高分子反応により、ポリビニルアルコール系重合体の側鎖に反応性官能基を導入する方法、−COSH基を有する有機チオール酸を包含する、チオール酢酸、チオールプロピオン酸、チオール酪酸等のチオールカルボン酸の存在下に、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサテイック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステル類を重合し、得られた重合体を鹸化することにより分子の末端にのみチオール基を導入する方法等、公知の方法により分子内にチオール基を付与させた重合体で、チオール基変性率が0.1〜50モル%の範囲にあることが好ましい。
【0035】
これらチオール基変性ビニルアルコール系重合体(b1ロ)として、例えば、(株)クラレからクラレMポリマーの商品名で、「M−115」及び「M−205」が製造・販売されている。
【0036】
〈シリル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ハ)〉
シリル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ハ)としては、ビニルアルコール系重合体あるいはカルボキシル基又は水酸基を含有する酢酸ビニル系重合体にトリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、ビニルトリクロルシラン、ジフェニルジクロルシラン等のオルガノハロゲンシラン、トリメチルアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン等のオルガノアセトキシシランあるいはトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン等のシリル化剤を用いて後変性によりシリル基を付加する方法、あるいは酢酸ビニルと例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス−(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルアセトキシシラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリヘキシロキシシラン、ビニルメトキシジヘキシロキシシラン、ビニルジメトキシオクチロキシシラン等のビニルシラン、あるいは3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルエチルトリメトキシシラン、N−(2−(メタ)アクリルアミド−エチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリアセトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−エチルトリメトキシシラン、1−(メタ)アクリルアミド−メチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルジメチルメトキシシラン、3−(N−メチル−(メタ)アクリルアミド)−プロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−3−ハイドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−プロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルアミド−アルキルシラン等のシリル基含有オレフィン性不飽和化合物との共重合体を鹸化する方法等で得られる分子内にアルコキシシリル基、アシロキシシリル基あるいはこれらの加水分解物であるシラノール基又はその塩等のシリル基を有する重合体等を挙げることができる。シリル基の変性量は、0.1〜50モル%の範囲にあることが好ましい。
【0037】
シリル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ハ)は、例えば、(株)クラレからクラレRポリマーの商品名で、「R−1130」、「R−2105」及び「R−2130」が製造・販売されている。
【0038】
〈アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ニ)〉
アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ニ)としては、ビニルアルコール系重合体の溶液、分散液又は粉末に液状又はガス状のジケテンを添加反応させて得られるものであり、アセトアセチル化度は、1〜10モル%の範囲であることが好ましく、3〜5モル%の範囲にあることがより好ましい。
【0039】
アセトアセチル基変性ビニルアルコール系重合体(b1ニ)は、例えば、日本合成化学工業(株)から「ゴーセファイマーZ100」、同「Z200」、同「Z200H」及び同「Z210」の商品名で製造・販売されている。
【0040】
また、変性ビニルアルコール系重合体は、好ましくは水、低級アルコール、有機溶媒に溶解性であるものであり、より好ましくは、水−低級アルコール系混合溶媒に溶解するものである。変性ビニルアルコール系重合体を含めビニルアルコール系重合体の水溶液には、水以外の溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、あるいはその他ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等を必要に応じて、1種または2種以上を組み合わせて加えることも可能である。また、ポリビニルアルコール系重合体には、本発明の目的及び主旨を逸脱しない範囲で、濡れ性向上剤、帯電防止剤、その他各種添加剤等を加えることが可能である。
【0041】
本発明に係る不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)及びビニルアルコール系重合体(b)を含む層(Z2)は、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)が1〜99質量%であり、かつ、ビニルアルコール系重合体(b)が1〜99質量%であることが好ましく、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)が60〜98質量%であり、かつ、ビニルアルコール系重合体(b)が2〜40質量%であることがより好ましく、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体(a)が70〜95質量%であり、かつ、(b)5〜30質量%であることが更に好ましい。なお、(a)及び(b)の合計を100質量%とする。
【0042】
<積層フィルム(I)>
本発明の血液バッグ用包装材を構成する積層フィルム(I)は、無機蒸着層(X)が形成されてなる基材層(Y)の無機蒸着層(X)面に、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)を含有する層(Z1)、層(Z1)層上に、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)とを含有する層(Z2)を含む積層フィルムである。
【0043】
<積層フィルム(I)の製造方法>
本発明の血液バッグ用包装材を構成する積層フィルム(I)は、例えば、基材層(Y)の無機蒸着層(X)面に、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液を塗布した後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合させて重合体(a)を含有する層(Z1)を形成させた後、重合体(a)を含有する層(Z1)上に、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩溶液とビニルアルコール系重合体(b)を所定の量で混合して塗布した後、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩(A)を重合させて、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)とを含有する層(Z2)を形成させることにより製造し得る。また、層(Z1)又は層(Z2)を単独で塗工することや、層(Z1)及び層(Z2)をさらに多層にて塗工すること、また他の添加剤を含む層を設けて製造することも可能である。
【0044】
また、本発明の血液バッグ用包装材を構成する重合体(a)層、又は重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)を含む層は、無機蒸着層(X)上に重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を塗布し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させた後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合すること、あるいは(Z1)上に、ビニルアルコール系重合体(b)及び重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を塗布し、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を形成させた後、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を重合することよっても得られる。
【0045】
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩等の溶液を調整する方法としては、予め不飽和カルボン酸と多価金属化合物とを反応させて、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩とした後、当該不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を水等の溶媒に溶かして溶液としてもよいし、直接溶媒に不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物を溶かして多価金属塩の溶液としてもよい。
【0046】
本発明の血液バッグ用包装材を構成する積層フィルム(I)の製造方法として、直接溶媒に不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物を溶かす場合、すなわち、不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を用いる場合は、不飽和カルボン酸化合物に対して、0.3化学当量を越える量の多価金属化合物を添加することが好ましい。多価金属化合物の添加量が0.3化学当量以下の混合溶液を用いた場合は、遊離のカルボン酸基の含有量が多い重合体層となり、結果として、ガスバリア性が低い積層体となる虞がある。また、多価金属化合物の添加量の上限はとくに限定はされないが、多価金属化合物の添加量が1化学当量を越えると未反応の多価金属化合物が多くなるので、5化学当量以下であることが好ましく、2化学当量以下であることがより好ましい。
【0047】
また、不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを含む溶液を用いる場合は、通常、不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを溶媒に溶かしている間に、不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩が形成されるが、多価金属塩の形成を確実にするために、1分以上混合しておくことが好ましい。不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を調整するために用いる溶媒は、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール若しくはアセトン、メチルエチルケトン等の有機溶媒あるいはそれらの混合溶媒が挙げられるが、水が好ましい。
【0048】
無機蒸着層(X)上に不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を塗布する方法、あるいは(Z1)上にビニルアルコール系重合体(b)を含む不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液を塗布する方法としては、当該溶液を塗布面の表面に塗布する方法、当該溶液を塗布面の表面に噴霧する方法等種々公知の塗布(塗工)方法を採り得る。塗布面上に不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩の溶液などを塗布する方法としては、例えば、エアーナイフコーター、ダイレクトグラビアコーター、グラビアオフセット、アークグラビアコーター、グラビアリバースおよびジェットノズル方式等のグラビアコーター、トップフィードリバースコーター、ボトムフィードリバースコーターおよびノズルフィードリバースコーター等のリバースロールコーター、5本ロールコーター、リップコーター、バーコーター、バーリバースコーター、ダイコーター、多層ダイコーター、スプレーコーター、ディップコーター等種々公知の塗工機を用いて、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の溶液中(固形分)の量で好ましくは0.05〜10g/m2、より好ましくは0.1〜5g/m2となるよう塗布すればよい。
【0049】
不飽和カルボン酸化合物の多価金属塩を溶解する際若しくは不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを溶解する際には、本発明の目的を損なわない範囲で、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、エチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、PEG#200・ジ(メタ)アクリレート、PEG#400・ジ(メタ)アクリレート、PEG#600・ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール・ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール・ジ(メタ)アクリレートなどのグリコール類のアクリル酸二価エステル、その他の不飽和カルボン酸(ジ)エステル化合物酢酸ビニルなどのビニルエステル化合物、アクリルアミドなどのアミド系モノマー等、不飽和二重結合を有する単量体やオリゴマー等あるいは低分子量の化合物、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、澱粉、アラビアガム、メチルセルロース等の水溶性重合体、アクリル酸エステル重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン等の高分子量の化合物等を添加してもよい。また各モノマー・ポリマー等と反応する架橋性材料を添加してもよい。
【0050】
また、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩などを溶解する際若しくは不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物とを溶解する際には、本発明の目的を損なわない範囲で、滑剤、スリップ剤、アンチ・ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、無機また有機の充填剤等の各種添加剤を添加しておいてもよいし、無機蒸着層(X)との濡れ性を改良するために、各種界面活性剤等を添加しておいてもよい。
【0051】
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩などの溶液を重合するには、種々の公知の方法、具体的には電離性放射線の照射又は加熱などによる方法があげられる。電離放射線を使用する場合は、波長領域が0.0001〜800nmの範囲のエネルギー線であれば特に限定されないが、かかるエネルギー線としては、α線、β線、γ線、X線、可視光線、紫外線、電子線等が上げられる。これらの電離放射線の中でも、波長領域が400〜800nmの範囲の可視光線、50〜400nmの範囲の紫外線および0.01〜0.002nmの範囲の電子線が、取り扱いが容易で、装置も普及しているので好ましい。
【0052】
電離放射線として可視光線および紫外線を用いる場合は、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩などを含む溶液に光重合開始剤を添加することが必要となる。光重合開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;ダロキュアー 1173)、1−ヒドロキシーシクロヘキシルーフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 184)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー819)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名;イルガキュアー 2959)、α―ヒドロキシケトン、アシルホスフィンオキサイド、4−メチルベンゾフェノン及び2,4,6−トリメチルベンゾフェノンの混合物(ランベルティ・ケミカル・スペシャルティ社製 商品名;エサキュアー KT046)、エサキュアー KT55(ランベルティー・ケミカルスペシャルティ)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(ラムソン・ファイア・ケミカル社製 商品名;スピードキュアTPO)の商品名で製造・販売されているラジカル重合開始剤を挙げることができる。また複数の開始剤を使用しても良い。さらに過酸化物や増感剤など他のタイプの開始剤や重合補助剤を用いても良い。さらに、重合度又は重合速度を向上させるため重合促進剤を添加することができ、例えば、N、N-ジメチルアミノ-エチル-(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイル-モルフォリン等が挙げられる。
不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を重合させる際は、溶液が水等の溶媒を含んだ状態で重合させてもよいし、一部乾燥させた後に重合させてもよいが、溶液を塗布後直ぐに重合させた場合は、金属塩が重合する際に溶媒の蒸発が多いためか、得られる重合体層が白化する場合がある。一方、溶媒(水分)が少なくなるとともに、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩が結晶として析出する場合があり、かかる状態で重合を行うと得られる重合体層の形成が不十分になり、重合体層が白化を起こしたりしてガスバリア性が安定しない虞がある。したがって、塗布した不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を重合させる際には、適度な水分を含んだ状態で重合することが好ましい。
【0053】
また、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を溶媒の存在下で電離放射線を照射する際の温度は、溶媒が沸騰する温度でない限りとくに限定はされないが、通常、60℃以下、とくに常温〜50℃の範囲で行うことが好ましい。電離放射線を照射する際の温度を高くし過ぎると、溶媒の蒸発が速くなり、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の結晶が析出し易くなり、一方、温度が低すぎる場合は、不飽和カルボン酸化合物多価金属塩を重合させた後に溶媒を乾燥する時間が長くなり、ガスバリア性フィルムの製造ライン等を長くする必要がある。
【0054】
<熱処理>
本発明に係わる不飽和カルボン酸化合物多価金属塩の重合体層(層(Z1)及び層(Z2))は、更に熱処理することによってガスバリア性能を更に向上させることができる。熱処理は、熱風加熱、加熱ロールによるロール加熱、赤外線、近赤外線、遠赤外線等を用いた熱線加熱等、様々な加熱方法を用いることができる。
【0055】
熱処理は、ガスバリア性フィルムを好ましくは60〜350℃、より好ましくは100〜300、更に好ましくは150〜250℃の温度範囲で行うことが好適であり、不活性ガス雰囲気下で行うとより好適である。また、圧力は特に限定されず、加圧下、減圧下、常圧下のいずれでもよい。加熱処理時間は長くても何ら問題はないが、生産効率上短時間で加熱できた方が良い。通常0.01秒から90分程度であり、中でも0.01秒から70分が好適であり、特に0.01秒から60分が好適である。
【0056】
<積層フィルム(II)>
本発明の血液バッグ用包装材を構成する積層フィルム(II)は、積層フィルム(I)の不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)とを含有する層(Z2)を内側にして、少なくとも二枚の積層フィルム(I)を積層してなる積層フィルムである。
【0057】
少なくとも二枚の積層フィルム(I)を積層するには、ドライラミネート、押出ラミネート、熱ラミネート等の公知のラミネート方法が用いられる。ラミネートには接着剤を用いることが好ましい。例えば、接着剤としては、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等、溶剤系、水系、無用剤タイプ等のさまざまな公知の接着剤が挙げられる。さらに、積層フィルム(I)は、必要に応じて三枚以上を積層したものでもよい。その場合、それらの積層フィルム(I)の層(Z2)が外側に向かなければよい。
【0058】
<補強層>
本発明の血液バッグ用包装材を構成する補強層は、OPP、CPP、EVOH、PET、Ny、PE等包装材の要求性能により様々なフィルムを用いることができるが、フィルムの強度、強靱性等を考慮すると、好ましくは二軸延伸ポリアミドフィルムがよい。
【0059】
<熱融着層>
本発明の血液バッグ用包装材を構成する熱融着層は、包装材の要求性能、形状等により公知の熱融着層をもちいてもよい。本発明のガスバリア性の積層フィルム(II)は、その少なくとも片面に、熱融着層を積層することにより、ヒートシール可能な包装用フィルムとして好適な積層フィルム(II)が得られる。かかる熱融着層としては、通常熱融着層として公知のエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル・ペンテン−1、オクテン−1等のα−オレフィンの単独若しくは共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンランダム共重合体、ポリブテン、ポリ4−メチル・ペンテン−1、低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン・ブテン−1ランダム共重合体等のポリオレフィンを単独若しくは2種以上の組成物、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体あるいはその金属塩、EVAとポリオレフィンとの組成物等から得られる層である。中でも、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン等のエチレン系重合体から得られる熱融着層が低温ヒートシール性、ヒートシール強度に優れるので好ましい。
【0060】
また各材料を多層でフィルム加工し、熱融着性多層フィルムとして、内容物の収納時のヒートシール強度と、内容物を取り出す際の開封容易性(イージーオープン性)のバランスが優れた包装用等の用途に適したフィルムを用いてもよい。
【0061】
<血液バッグ用包装材の製造方法>
本発明の血液バッグ用包装材は、ドライラミネートや押出ラミネート、熱ラミネート等の公知のラミネート方法を用いて、積層フィルム(II)の一方の基材層(Y)面に、補強層及び熱融着層が積層され、製造される。ラミネートに用いる接着剤はウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等、また溶剤系、水系、無用剤タイプ等のさまざまな公知の接着剤を使用できる。
【0062】
<血液バッグ包装体>
本発明の血液バッグ包装体は、本発明の血液バッグ用包装材で血液バッグを包装してなる血液バッグ包装体である。本発明の血液バッグ包装体は、本発明の血液バッグ用包装材を2枚貼り合わせて袋状にして、その中に血液バッグを収納し密封してなる包装体であることが好ましく、また、血液バッグを収納してなる容器の上部を、本発明の血液バッグ用包装材で熱融着してなる血液バッグ包装体であることが好ましく、さらに、、ブリスター成形を施したプラスチック製トレーとその天面を覆う血液バッグ用包装材を使用したトップフィルムからなることが好ましい。
【実施例】
【0063】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0064】
実施例及び比較例における物性値等は、以下の評価方法により求めた。
【0065】
<評価方法>
重量減少量[g/m2]:多層フィルムを線状低密度ポリエチレンフィルム面または無延伸ポリプロピレンフィルム面が内側になるように折り返し、2方をヒートシールして袋状にした後、内容物として水を入れ、もう1方をヒートシールにより、表面積が0.01m2になるように袋(三方シール袋)を作成し、これを40℃、25%R.H.以下の条件で63日間放置し、その間の重量減少を経時(1日後、21日後、42日後、63日後)で測定し、その測定値を1平方メートル(m2)当たりに換算をした。
【0066】
<溶液(s1)の作製>
アクリル酸亜鉛水溶液〔浅田化学社製、濃度30質量%(アクリル酸成分:20質量%、亜鉛成分10質量%)〕を固形分比率で98.0質量%、メチルアルコールで25質量%に希釈した光重合開始剤〔1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製 商品名:イルガキュアー 2959)〕を固形分比率で1.3質量%、及び界面活性剤(花王社製 商品名:エマルゲン120)を固形分比率で0.7質量%となるように混合し、アクリル酸亜鉛溶液(s1)を作製した。
【0067】
<溶液(s2)の作製>
アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールの混合水溶液 濃度14質量%(アクリル酸亜鉛成分:12質量%、アクリレート基変性ポリビニルアルコール成分2質量%)〕に上記アクリル酸亜鉛の溶液(s1)を混合させて、アクリル酸亜鉛成分を固形分比率で88.5質量%、アクリレート基変性ポリビニルアルコール成分を固形分比率で9.7質量%、光重合開始剤を固形分比率で1.2質量%、界面活性剤を固形分比率で0.6質量%となるように混合し、アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールからなる溶液(s2)を作製した。
【0068】
実施例1
厚さ12μmの酸化アルミニウム蒸着ポリエステルフィルムの蒸着面に、上記のアクリル酸亜鉛溶液(s1)をバーコート法を用いて塗布量が固形分で0.5g/m2になるよう塗布し、塗布面を直ちに紫外線照射装置(アイグラフィック社製 EYE GRANDAGE 型式ECS 301G1)を用いて、照度:180mW/cm2、積算光量:180mJ/cm2の条件で紫外線を照射して重合して層を形成した。さらに、この層の上に上記アクリル酸亜鉛とアクリレート基変性ポリビニルアルコールの混合溶液(s2)を塗布量3.0g/m2になるよう塗布し、アクリル酸亜鉛溶液(s1)塗工時と同様の条件でUVを照射して重合させ、変性ポリビニルアルコールを含む層を設けた。これによりアクリレート基変性ポリビニルアルコールを含まない層と含む層の2層を積層した積層フィルム(I)を得た。
【0069】
次いで、二枚の積層フィルム(I)を用意し、一枚の積層フィルム(I)の変性ポリビニルアルコールを含む層(Z2)面に、ポリウレタン系ドライラミネート接着剤(三井化学社製 商品名:タケラックA−310/タケネートA−3)を塗布し、当該塗布面に他の一枚の積層フィルム(I)の変性ポリビニルアルコールを含む層(Z2)面を積層し、さらに基材層(Y)面に上記接着剤を塗工し、熱融着層50μmのLLDPEフィルムを積層した。得られた積層フィルムを上記記載の方法で評価した。重量減少量の評価結果を表1に示す。
【0070】
比較例1
一枚の積層フィルム(I)の変性ポリビニルアルコールを含む層(Z2)面に、ポリウレタン系ドライラミネート接着剤(三井化学社製 商品名:タケラックA−310/タケネートA−3)を塗布し、当該塗布面に厚さ12μmの酸化アルミニウム蒸着ポリエステルフィルムの蒸着面を積層し、さらに積層フィルム(I)の基材層(Y)面に上記接着剤を塗工し、熱融着層50μmのLLDPEフィルムを積層した。得られた積層フィルムを上記記載の方法で評価した。重量減少量の評価結果を表1に示す。
【0071】
比較例2
一枚の積層フィルム(I)の変性ポリビニルアルコールを含む層(Z2)面に、ポリウレタン系ドライラミネート接着剤(三井化学社製 商品名:タケラックA−310/タケネートA−3)を塗布し、当該塗布面に厚さ12μmの酸化アルミニウム蒸着ポリエステルフィルムの蒸着面を積層し、さらに酸化アルミニウム蒸着ポリエステルフィルムの基材層面に上記接着剤を塗工し、熱融着層50μmのLLDPEフィルムを積層した。得られた積層フィルムを上記記載の方法で評価した。重量減少量の評価結果を表1に示す。
【0072】
比較例3
一枚の積層フィルム(I)の変性ポリビニルアルコールを含む層(Z2)面に、ポリウレタン系ドライラミネート接着剤(三井化学社製 商品名:タケラックA−310/タケネートA−3)を塗布し、当該塗布面に厚さ15μmのナイロンフィルム(ユニチカ社製 商品名;エンブレム ON)のコロナ面を積層し、さらにナイロンフィルムのノンコロナ面に上記接着剤を塗工し、熱融着層50μmのLLDPEフィルムを積層した。得られた積層フィルムを上記記載の方法で評価した。重量減少量の評価結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
表1から、積層フィルム(I)のZ1層・Z2層を設けたバリアフィルムにおいてZ2層面同士を貼り合わせた構成(実施例1)は、積層フィルム(I)と酸化アルミニウム蒸着ポリエステルフィルムとを積層した構成(比較例1、2)や積層フィルム(I)とナイロンフィルムとを積層した構成(比較例3)と比べて経時での重量減少量は小さいため、バリア性が安定していることがわかる。
【符号の説明】
【0075】
10 血液バッグ用包装材
11 熱融着層
12 補強層
13 基材層(Y)
14 無機蒸着層(X)
15 層(Z1
16 層(Z2
17 層(Z2
18 層(Z1
19 無機蒸着層(X)
20 基材層(Y)
21 積層フィルム(I)
22 積層フィルム(I)
23 積層フィルム(II)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層(Y)、該基材層(Y)上に形成される無機蒸着層(X)、該無機蒸着層(X)上に形成される不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)を含有する層(Z1)、及び、該層(Z1)上に形成される不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)の重合体(a)とビニルアルコール系重合体(b)とを含有する層(Z2)を含む積層フィルム(I)の該層(Z2)を内側にして、該積層フィルム(I)の少なくとも二枚を積層してなる積層フィルム(II)の少なくとも一方の該基材層(Y)上に、補強層、熱融着層の順で積層してなることを特徴とする、血液バッグ用包装材。
【請求項2】
前記基材層(Y)が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである、請求項1に記載の血液バッグ用包装材。
【請求項3】
前記不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)が、重合度が20未満の不飽和カルボン酸化合物と多価金属化合物との塩である請求項1又は2に記載の血液バッグ用包装材。
【請求項4】
前記不飽和カルボン酸化合物多価金属塩(A)が、アクリル酸と亜鉛との塩である請求項1又は2に記載の血液バッグ用包装材。
【請求項5】
前記ビニルアルコール系重合体(b)が、変性ビニルアルコール系重合体(b1)である、請求項1から4のいずれか1項に記載の血液バッグ用包装材。
【請求項6】
前記補強層が、二軸延伸ポリアミドフィルムである請求項1から5のいずれか1項に記載の血液バッグ用包装材。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の血液バッグ用包装材で血液バッグを包装してなる血液バッグ包装体。
【請求項8】
血液バッグを収納してなる容器の上面を、請求項1から6のいずれか1項に記載の血液液バッグ用包装材で熱融着してなる血液バッグ包装体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−179248(P2012−179248A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44300(P2011−44300)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000220099)三井化学東セロ株式会社 (177)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】