説明

血液凝固分析装置

【課題】検体毎に適切な測定波長を選択して、検体の分析を高精度に行うことが可能な血液凝固分析装置を提供する。
【解決手段】この血液凝固分析装置1は、血液試料に血液を凝固させる試薬が添加された分析試料に、複数の波長の光を照射するランプユニット50と、ランプユニット50によって複数の波長の光が照射された分析試料から複数の波長の光を経時的に受け、各々の波長について、複数の時刻における受光量を取得する光学的情報取得部80と、光学的情報取得部80によって取得された経時的な受光量の変化に基づいて、分析に使用する波長を選択するとともに、その選択された波長の光を照射して得られた受光量を用いて血液の凝固時間を分析する制御部4aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固分析装置に関し、特に、血液試料に血液を凝固させる試料が添加された分析試料を光学的に分析する血液凝固分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液試料に血液を凝固させる試薬を添加して分析試料を調製し、分析試料における凝固反応の過程を光学的に測定することで血液の凝固時間を分析する血液凝固分析装置が知られている。かかる血液凝固分析においては、分析試料中に含まれるヘモグロビン、ビリルビン、乳び等の干渉物質(検査対象となる目的物質(たとえば、フィブリノーゲン)とともにサンプル中に共存し、その目的物質の測定に光学的に干渉する物質)により光学測定が影響を受け、正確に分析が行えない場合がある。また、波長の長い光(例えば、800nm)を測定に用いれば、ヘモグロビンおよびビリルビンの影響を受けず、かつ、乳びの影響も少ないが、測定感度が低くなる。また、凝固反応によって分析試料を透過する光量は変化するが、その変化量は分析試料中に含まれる血液凝固因子(例えば、フィブリノーゲン)の量に比例する。したがって、血液凝固因子の含有量が少ない分析試料では光量の変化が小さく、測定感度の低い長波長の光では正確な分析を行うことができない。そこで、従来の血液凝固分析装置では、干渉物質の影響を適度に受けにくく、しかも適当な測定感度が得られる660nm付近の波長の光を測定に用いている。
【0003】
その一方で、従来、本測定(たとえば、生化学分析)を実施する前に、サンプル(血清など)中の干渉物質の測定が実施されている(たとえば、特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。
【0004】
上記特許文献1に開示された血清中の乳び度、黄疸度および溶血度の測定方法では、血清に4つの波長の光を照射して、第1次的には、可視域における短波長(たとえば、410nm)の光を使用することにより吸光度を測定し、その吸光度が一定値以上の血清については、乳び、黄疸および溶血による異常血清と判定している。次に、第2次的には、異常血清だと判定された血清について、4つの波長を用いて測定された吸光度と、予め設定した数種類の基準とを比較することにより、乳び、黄疸および溶血の程度を判定している。
【0005】
また、上記特許文献2に開示されたクロモゲン(干渉物質)の測定方法では、懸濁物質(ヘモグロビン、ビリルビン、乳びなど)が混在する検体にブランク反応用試薬を混合して検体ブランク液を調製し、この検体ブランク液に、乳びの吸収があり、かつ、ヘモグロビンおよびビリルビンの吸収が実質的にない波長を含む4種類の波長の光を照射することにより、干渉物質の程度を測定している。具体的には、乳びに関しては、吸光度が波長の指数関数で表されると仮定して、波長−吸光度の回帰曲線を求めることにより、乳びの程度を算出している。また、ヘモグロビンおよびビリルビンに関しては、異なる波長での吸光度間に予め設けた一定の関係があると仮定して、測定波長における吸光度に関する連立一次方程式を作り、それを解くことにより、ヘモグロビンおよびビリルビンの程度を算出している。
【0006】
また、上記特許文献3に開示された血清試料に溶血、黄疸および脂肪血症が存在するか否かを決定する分析装置では、まず、プローブに設けられた透明部分に配置されるニードル管に吸引された血清試料に、発光ダイオードから出射される光を照射することにより、ニードル管内の血清試料の吸光度を測定する。そして、その吸光度に基づいて測定可能だと判断された血清試料を臨床分析器に移送し、本測定を行う。
【0007】
【特許文献1】特開昭57−59151号公報
【特許文献2】特開平6−66808号公報
【特許文献3】特開平10−153597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の血液凝固分析装置においては、干渉物質が含まれている可能性を考慮して測定波長が設定されていた。しかしながら、検体によって干渉物質の含有量、血液凝固因子の含有量は様々であり、検体毎に分析に適した波長は異なっているため、かかる従来の血液凝固分析装置では、予め設定された波長でしか測定することができず、分析の精度が低くなる場合があった。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、検体毎に適切な測定波長を選択して、検体の分析を高精度に行うことが可能な血液凝固分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による血液凝固分析装置は、血液試料に血液を凝固させる試薬が添加された分析試料に、光を照射する光照射部と、光照射部によって光が照射された分析試料から複数の波長の光を経時的に受け、各々の波長について、複数の時刻における受光量を取得する受光部と、受光部によって取得された経時的な受光量の変化に基づいて、分析に使用する波長を選択する選択手段と、選択手段によって選択された波長の光を照射して得られた受光量を用いて血液の凝固時間を分析する分析手段とを備える。
【0011】
この一の局面による血液凝固分析装置では、上記のように、受光部によって取得された経時的な受光量の変化に基づいて、分析に使用する波長を選択する選択手段を設けることによって、血液の凝固反応の経過に伴って変化する受光量の経時的な変化に基づいて、分析に使用する波長を変化させることができる。これにより、受光部で取得された経時的な受光量の変化が干渉物質の影響を受けている場合に、血液試料中に含まれる干渉物質が吸収しにくい波長を選択すれば、干渉物質の影響が少ない経時的な受光量の変化を取得することができる。その結果、干渉物質の影響が少ない経時的な受光量の変化を、血液の凝固反応に由来する変化として捉えることができるので、分析手段は、血液試料の凝固時間を正確に分析することができる。また、受光部で取得された経時的な受光量の変化が小さい場合に、経時的な受光量の変化を大きく捉えることが可能な波長を選択すれば、経時的な受光量の変化を大きく捉えることができる。その結果、大きく捉えられた経時的な受光量の変化を血液の凝固反応に由来する変化とみなすことにより、分析手段は、血液試料の凝固時間を正確に分析することができる。
【0012】
上記一の局面による血液凝固分析装置において、好ましくは、選択手段は、受光部によって取得された、分析試料が凝固反応を示す前の時点における受光量および経時的な受光量の変化量に基づいて、分析に使用する波長を選択する。凝固反応は、内因系または外因系の多くの反応を経由して、血漿中のフィブリノーゲンがフィブリンに転化され血液凝固が起こる反応である。すなわち、血漿に血液凝固試薬を混和しても、すぐには血液凝固が開始せず、外因系(PT測定試薬)で通常7秒程度、内因系(APTT測定試薬)で通常14秒程度経過後に、凝固反応が起こる。したがって、分析試料が凝固反応を示す前の時点(ラグフェーズ)の光学情報(受光量)は、検体が希釈された状態と同じ光学情報(受光量)であるということができる。そこで、上述のように経時的な受光量の変化量に加えて、ラグフェーズにおける受光量に基づいて、分析に使用する波長を選択するようにすれば、選択手段は、干渉物質の影響が顕著に表れるラグフェーズの受光量が分析手段の分析可能な分析範囲を超えている場合に、ラグフェーズの受光量がこの分析範囲に入るように、選択する波長を変化させることができる。その結果、分析手段は、分析範囲を超えた(干渉物質の影響を強く受けた)信頼性の低い受光量を採用して分析することがないので、正確な分析を行うことができる。
【0013】
上記分析試料が凝固反応を示す前の時点における受光量に基づいて分析に使用する波長を選択する構成において、好ましくは、選択手段は、受光部によって取得された分析試料が凝固反応を示す前の時点における受光量が分析手段による分析可能な分析範囲に入る場合に、経時的な受光量の変化量に基づいて、分析に使用する波長を選択する。このように構成すれば、ラグフェーズの受光量がこの分析範囲に入るのを確認してから、経時的な受光量の変化量に基づいて、分析に使用する波長を選択することができる。
【0014】
上記一の局面による血液凝固分析装置において、好ましくは、選択手段は、受光部により取得された第1の波長における経時的な受光量の変化量が所定の値よりも大きい場合には、第1の波長を選択し、分析手段は、選択手段によって選択された第1の波長における受光量を用いて血液の凝固時間を分析する。このように構成すれば、血液の凝固反応の経過に伴って変化する受光量の経時的な変化を所定の値よりも大きく捉えることができる第1の波長の光を用いて、血液の凝固反応を分析することができる。その結果、第1の波長の光を用いて捉えられた経時的な受光量の変化を血液の凝固反応に由来する変化とみなせば、分析手段は、第1の波長の光を用いて取得された受光量から血液試料の凝固時間を正確に分析することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、選択手段は、受光部により取得された第1の波長における経時的な受光量の変化量が所定の値以下の場合で、かつ、受光部により取得された第2の波長における経時的な受光量の変化量が所定の値よりも大きい場合には、第2の波長を選択し、分析手段は、選択手段によって選択された第2の波長における受光量を用いて血液の凝固時間を分析する。このように構成すれば、第1の波長の光を用いれば、血液の凝固反応の経過に伴って変化する受光量の経時的な変化を捉えることが困難な場合でも、第2の波長の光を用いることにより、血液の凝固反応の経過に伴って変化する受光量の経時的な変化を捉えることができる。これにより、分析手段は、第2の波長の光を用いて、血液の凝固反応を分析することができる。その結果、第2の波長の光を用いて捉えられた経時的な受光量の変化を血液の凝固反応に由来する変化とみなせば、分析手段は、第2の波長の光を用いて取得された受光量から血液試料の凝固時間を正確に分析することができる。
【0016】
上記第1の波長における経時的な受光量の変化量に基づいて選択する波長を変化させる構成において、好ましくは、選択手段は、受光部により取得された第1の波長における経時的な受光量の変化量が所定の第1の値よりも大きい場合で、かつ、分析試料が凝固反応を示す前の時点での第1の波長における受光量が所定の第2の値より大きいときには、第1の波長を選択し、分析手段は、選択手段によって選択された第1の波長における受光量を用いて血液の凝固時間を分析する。このように構成すれば、血液の凝固反応の経過に伴って変化する受光量の経時的な変化を所定の値よりも大きく捉えることができ、しかも干渉物質の影響を強く受けていないと判断できる第1の波長の光を用いて、血液の凝固反応を分析することができる。その結果、第1の波長の光を用いて捉えられた経時的な受光量の変化を血液の凝固反応に由来する変化とみなせば、分析手段は、第1の波長の光を用いて取得された受光量から血液試料の凝固時間を正確に分析することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、選択手段は、受光部により取得された第1の波長における経時的な受光量の変化量が第1の値以下の場合には、受光部により取得された第1の波長よりも短い第2の波長における受光量に基づいて、第2の波長の受光量を分析に使用できるか否かを判定する。このように構成すれば、第1の波長の光を用いれば、血液の凝固反応の経過に伴って変化する受光量の経時的な変化を捉えることが困難な場合でも、測定感度が高い第2の波長の光が分析に使用できるか否かを判定し、その判定結果に基づいて分析を行うことができる。ここで、第2の波長が分析に使用できる場合には、第2の波長の光を用いることにより、高精度に分析することができるし、第2の波長が分析に使用できない場合には、分析を中止したり、他の波長を選択したりするなど適切な処置を執ることができる。
【0018】
上記第1の波長における経時的な受光量の変化量に基づいて選択する波長を変化させる構成において、好ましくは、選択手段は、受光部により取得された第1の波長における経時的な受光量の変化量が所定の第1の値よりも大きい場合で、かつ、分析試料が凝固反応を示す前の時点での第1の波長における受光量が所定の第2の値以下のときには、受光部により取得された第1の波長よりも長い第3の波長における受光量に基づいて、第3の波長の受光量が分析に使用できるか否かを判定する。このように構成すれば、第1の波長の光が干渉物質の影響を強く受けており、分析に使用することができない場合でも、干渉物質の影響を受けにくい第3の波長の光が分析に使用できるか否かを判定し、その判定結果に基づいて分析を行うことができる。ここで、第3の波長が分析に使用できる場合には、第3の波長の光を用いることにより、高精度に分析することができるし、第3の波長が分析に使用できない場合には、分析を中止したり、他の波長を選択したりするなど適切な処置を執ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態による血液凝固分析装置の全体構成を示した斜視図であり、図2は、図1に示した一実施形態による血液凝固分析装置の検出機構部および搬送機構部を示した平面図である。また、図3〜図14は、図1に示した一実施形態による血液凝固分析装置の構成を説明するための図である。まず、図1〜図14を参照して、本発明の一実施形態による血液凝固分析装置1の全体構成について説明する。
【0021】
本発明の一実施形態による血液凝固分析装置1は、血液の凝固・線溶機能に関連する特定の物質の量や活性の度合いを光学的に測定して分析するための装置であり、検体(血液試料)としては血漿を用いる。本実施形態による血液凝固分析装置1では、凝固時間法を用いて検体の光学的な測定を行うことによって、検体の凝固時間を分析している。そして、測定項目としては、PT(プロトロンビン時間)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)やFbg(フィブリノーゲン量)などがある。
【0022】
そして、血液凝固分析装置1は、図1に示すように、検出機構部2と、検出機構部2の前面側に配置された搬送機構部3と、検出機構部2に電気的に接続された制御装置4とにより構成されている。
【0023】
搬送機構部3は、検出機構部2に検体を供給するために、検体を収容した複数(本実施形態では、10本)の試験管150が載置されたラック151を検出機構部2の吸引位置2a(図2参照)に搬送する機能を有している。また、搬送機構部3は、未処理の検体を収容した試験管150が収納されたラック151をセットするためのラックセット領域3aと、処理済みの検体を収容した試験管150が収納されたラック151を収容するためのラック収容領域3bとを有している。
【0024】
検出機構部2は、搬送機構部3から供給された検体に対して光学的な測定を行うことにより、供給された検体に関する光学的な情報を取得することが可能なように構成されている。本実施形態では、搬送機構部3のラック151に載置された試験管150から検出機構部2のキュベット152(図2参照)内に分注された検体に対して光学的な測定が行われる。また、検出機構部2は、図1および図2に示すように、キュベット供給部10と、回転搬送部20と、検体分注アーム30と、ランプユニット50と、2つの試薬分注アーム60と、キュベット移送部70と、光学的情報取得部80と、緊急検体セット部90と、キュベット廃棄部100と、流体部110とを備えている。
【0025】
キュベット供給部10は、ユーザによって無造作に投入された複数のキュベット152(図3および図4参照)を回転搬送部20に順次供給することが可能なように構成されている。このキュベット供給部10は、図2に示すように、ブラケット11(図1参照)を介して装置本体に取り付けられたホッパ12と、ホッパ12の下方に設けられた2つの誘導板13と、2つの誘導板13の下端に配置された支持台14と、支持台14から所定の間隔を隔てて設けられた供給用キャッチャ部15とを含んでいる。2つの誘導板13は、キュベット152のつば部152a(図4参照)の直径よりも小さく、かつ、キュベット152の胴部152b(図4参照)の直径よりも大きくなるような間隔を隔てて互いに平行に配置されている。ホッパ12内に供給されたキュベット152は、つば部152aが2つの誘導板13の上面に係合した状態で、支持台14に向かって滑り落ちながら移動するように構成されている。また、支持台14は、誘導板13を滑り落ちて移動したキュベット152を、供給用キャッチャ部15が把持可能な位置まで回転移送する機能を有している。そして、供給用キャッチャ部15は、支持台14により回転移送されたキュベット152を回転搬送部20に供給するために設けられている。
【0026】
回転搬送部20は、キュベット供給部10から供給されたキュベット152と、検体(血液試料)を凝固させる試薬を収容した試薬容器(図示せず)とを回転方向に搬送するために設けられている。この回転搬送部20は、図2に示すように、円形状の試薬テーブル21と、円形状の試薬テーブル21の外側に配置された円環形状の試薬テーブル22と、円環形状の試薬テーブル22の外側に配置された円環形状の二次分注テーブル23と、円環形状の二次分注テーブル23の外側に配置された円環形状の一次分注テーブル24とにより構成されている。これらの一次分注テーブル24、二次分注テーブル23、試薬テーブル21および試薬テーブル22は、それぞれ、時計回り方向および反時計回り方向の両方に回転可能で、かつ、各々のテーブルが互いに独立して回転可能なように構成されている。
【0027】
試薬テーブル21および22は、図2に示すように、それぞれ、円周方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた複数の孔部21aおよび22aを含んでいる。試薬テーブル21および22の孔部21aおよび22aは、血液を凝固させる試薬を収容した複数の試薬容器(図示せず)を載置するために設けられている。また、一次分注テーブル24および二次分注テーブル23は、それぞれ、円周方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた円筒形状の複数の保持部24aおよび23aを含んでいる。保持部24aおよび23aは、キュベット供給部10から供給されたキュベット152を保持するために設けられている。一次分注テーブル24の保持部24aに保持されたキュベット152には、一次分注処理の際に、搬送機構部3の試験管150に収容される検体が分注される。また、二次分注テーブル23の保持部23aに保持されたキュベット152には、二次分注処理の際に、一次分注テーブル24に保持されたキュベット152に収容される検体が分注される。
【0028】
検体分注アーム30は、搬送機構部3により吸引位置2aに搬送された試験管150に収容される検体を吸引するとともに、吸引した検体を回転搬送部20に移送されたキュベット152内に分注する機能を有している。
【0029】
ランプユニット50は、図2に示すように、光学的情報取得部80で行われる光学的な測定に用いられる光を供給するために設けられている。このランプユニット50は、図6および図7に示すように、光源としてのハロゲンランプ51と、集光レンズ52a〜52cと、円盤形状のフィルタ部53と、モータ54と、光透過型のセンサ55と、光ファイバカプラ56と、11本の分岐光ファイバ57(図7参照)とから構成されている。
【0030】
ハロゲンランプ51は、図6に示すように、ハロゲンランプ51が発熱することによって熱せられた空気を冷却するための複数のフィンを有するランプケース51aに収容されている。集光レンズ52a〜52cは、ハロゲンランプ51から照射された光を集光する機能を有している。そして、集光レンズ52a〜52cは、ハロゲンランプ51から照射された光を光ファイバカプラ56に導く光路上に配置されている。また、ハロゲンランプ51から照射されて集光レンズ52a〜52cにより集光された光は、後述するフィルタ部53の光学フィルタ53b〜53fのいずれか1つを透過して光ファイバカプラ56に導かれる。
【0031】
また、ランプユニット50のフィルタ部53は、図8に示すように、モータ54のモータ軸(図示せず)を中心に回転可能に取り付けられている。このフィルタ部53は、5つの光透過特性(透過波長)のそれぞれ異なる光学フィルタ53b〜53fが設けられるフィルタ板53aを備えている。フィルタ板53aには、光学フィルタ53b〜53fを取り付けるための5つの孔53gと、光が透過しないように閉塞される孔53hとが設けられている。そして、5つの孔53gには、それぞれ、光透過特性(透過波長)の異なる5つの光学フィルタ53b、53c、53d、53eおよび53fが設置されている。この孔53gおよび53hは、フィルタ部53の回転方向に沿って所定の角度間隔(本実施形態では、60°の等間隔)で設けられている。なお、孔53hは、予備の孔であり、フィルタの追加が必要となった場合には、フィルタが装着される。
【0032】
光学フィルタ53b、53c、53d、53eおよび53fは、それぞれ、340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nmの波長の光を透過し、その他の波長の光は透過しない。したがって、光学フィルタ53b、53c、53d、53eおよび53fを透過した光は、それぞれ、340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nmの波長特性を有する。
【0033】
また、フィルタ板53aは、円周方向に沿って所定の角度間隔(本実施形態では、60°の等間隔)で6つのスリットが設けられている。それら6つのスリットのうち1つは、他の5つの通常スリット53iよりもフィルタ板53aの回転方向のスリット幅が大きい原点スリット53jである。原点スリット53jおよび通常スリット53iは、隣接する孔53gおよび53hの間の中間角度位置に所定の角度間隔(本実施形態では、60°の等間隔)で形成されている。
【0034】
また、ランプユニット50から一次分注テーブル24のキュベット152に光が照射される場合には、フィルタ部53が連続的に回転するように構成されている。したがって、フィルタ板53aの回転に伴って、集光レンズ52a〜52c(図7参照)により集光された光の光路上に光透過特性の異なる5つの光学フィルタ53b〜53fと、1つの遮光された孔53h(図8参照)とが断続的に順次配置される。このため、波長特性の異なる5種類の光が断続的に順次照射される。
【0035】
なお、405nmの波長を有する光は、図3〜図5に示すように、乳び、ヘモグロビンおよびビリルビンのいずれにも吸収される光である。すなわち、405nmの波長を有する光により測定された光学的な情報には、乳び、ヘモグロビンおよびビリルビンの影響が寄与している。また、575nmの波長を有する光は、ビリルビンには実質的に吸収されず、かつ、乳びおよびヘモグロビンに吸収される光である。つまり、575nmの波長を有する光により測定された光学的な情報には、乳びおよびヘモグロビンの影響が寄与している。そして、660nmおよび800nmの波長を有する光は、ビリルビンおよびヘモグロビンには実質的に吸収されず、かつ、乳びに吸収される光である。すなわち、660nmおよび800nmの波長を有する光により測定された光学的な情報には、乳びの影響が寄与している。また、図5に示すように、乳びは、低波長域の405nmから高波長域の800nmまでの波長の光を吸収しており、660nmの波長を有する光の方が、800nmの波長を有する光に比べて、乳びによる吸収が多い。つまり、800nmの波長を有する光で測定した光学的な情報の方が、660nmの波長を有する光で測定した光学的な情報より、乳びの影響が小さい。
【0036】
また、光透過型のセンサ55は、図8に示すように、フィルタ部53の回転に伴う原点スリット53jおよび通常スリット53iの通過を検出するために設けられている。このセンサ55は、原点スリット53jおよび通常スリット53iが通過すると、スリットを介して光源からの光を受光部が検出し、検出信号を出力する。なお、原点スリット53jは、通常スリット53iよりもスリット幅が大きいので、原点スリット53jが通過した場合には、センサ55から出力される検出信号は、通常スリット53iが通過した場合の検出信号よりも、出力期間が長い。したがって、センサ55からの検出信号に基づいて、フィルタ部53が正常に回転しているか否かが監視することが可能となる。
【0037】
また、光ファイバカプラ56は、11本の分岐光ファイバ57のそれぞれに光学フィルタ53b〜53fを通過した光を入射させる機能を有している。つまり、光ファイバカプラ56は、11本の分岐光ファイバ57に対して、同時に同質の光を導いている。また、11本の分岐光ファイバ57の先端は、図2に示すように、光学的情報取得部80に接続されており、ランプユニット50からの光を光学的情報取得部80にセットされるキュベット152内の分析試料に導いている。具体的には、図9に示すように、11本の分岐光ファイバ57は、それぞれ、光学的情報取得部80の後述する10個の挿入孔81aおよび1つの参照光用測定孔81bに光を供給するように配置されている。したがって、光学フィルタ53b〜53fを断続的に通過する波長特性の異なる5種類の光は、分岐光ファイバ57を介して、光学的情報取得部80に供給されている。
【0038】
試薬分注アーム60は、図1および図2に示すように、回転搬送部20に載置された試薬容器(図示せず)内の試薬を回転搬送部20に保持されたキュベット152に分注することにより、キュベット152内の検体に試薬を混合するために設けられている。これにより、検体に試薬を添加して分析試料が調製される。また、キュベット移送部70は、キュベット152を回転搬送部20と光学的情報取得部80との間を移送させるために設けられている。
【0039】
ここで、本実施形態では、光学的情報取得部80は、検体に試薬を添加して調製された分析試料の加温を行うとともに、ランプユニット50によって複数の波長の光が照射された分析試料から光を経時的に受け、各々の波長について、複数の時刻における透過光量を測定するために設けられている。具体的には、光学的情報取得部80は、ランプユニット50から照射される5種類の光(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の内の3種類の光(405nm、660nmおよび800nm)を用いて、経過時間に対する透過光量を測定している。
【0040】
この光学的情報取得部80は、図2に示すように、キュベット載置部81と、キュベット載置部81の下方に配置された検出部82とにより構成されている。キュベット載置部81には、図9に示すように、キュベット152(図2参照)を挿入するための10個の挿入孔81aと、キュベット152を挿入せずに参照光を測定するための1つの参照光用測定孔81bとが設けられている。また、キュベット載置部81には、挿入孔81aに挿入されたキュベット152を所定の温度に加温するための加温機構(図示せず)が内蔵されている。
【0041】
また、参照光用測定孔81bは、分岐光ファイバ57から照射された光の特性を監視するために設けられている。具体的には、分岐光ファイバ57から照射された光を直接検出部82の参照光用光電変換素子82eに受光させることにより、ランプユニット50のハロゲンランプ51(図6参照)に由来する揺らぎなどの特性を電気信号として検知している。そして、検知した光の特性(電気信号)を挿入孔81aに挿入されたキュベット152内の分析試料の透過光に対応する信号から減算処理することにより、分析試料の透過光に対応する信号を補正する。これにより、光学的な情報の測定毎に光の特性による微差が生じるのを抑制することが可能である。
【0042】
また、光学的情報取得部80の検出部82は、挿入孔81aに挿入されたキュベット152内の分析試料に対して複数の条件下で光学的な測定を行うことが可能なように構成されている。この検出部82には、図9および図10に示すように、キュベット152が挿入される各挿入孔81aに対応して、コリメータレンズ82a、光電変換素子82bおよびプリアンプ82cが設けられるとともに、参照光用測定孔81b(図1参照)に対応して、参照光用コリメータレンズ82d、参照光用光電変換素子82eおよび参照光用プリアンプ82fが設けられている。
【0043】
コリメータレンズ82aは、図9および図10に示すように、ランプユニット50(図6参照)からの光を誘導する分岐光ファイバ57の端部と、対応する挿入孔81aとの間に設置されている。このコリメータレンズ82aは、分岐光ファイバ57から出射された光を平行光にするために設けられている。また、光電変換素子82bは、挿入孔81aを挟んで分岐光ファイバ57の端部に対向するように設置された基板83の挿入孔81a側の面に取り付けられている。そして、光電変換素子82bは、挿入孔81aに挿入されたキュベット152内の分析試料に光を照射したときに分析試料を透過する光(以下、透過光という)を検出するとともに、検出した透過光に対応する電気信号(アナログ信号)を出力する機能を有している。この光電変換素子82bは、ランプユニット50の分岐光ファイバ57から照射される5種類の光を受光するように配置されている。
【0044】
プリアンプ82cは、基板83の挿入孔81aと反対側の面に取り付けられており、光電変換素子82bからの電気信号(アナログ信号)を増幅するために設けられている。
【0045】
そして、基板83には、図11に示すように、上記した光電変換素子82b(参照光用光電変換素子82e)、プリアンプ82c(参照光用プリアンプ82f)の他に、増幅部82gと、A/D変換器82hと、ロガー82iと、コントローラ82jとが設けられている。そして、増幅部82gは、所定のゲイン(増幅率)を有するアンプ(L)82kと、アンプ(L)82kよりも高いゲイン(増幅率)を有するアンプ(H)82lと、切替スイッチ82mとを有している。本実施形態では、プリアンプ82cからの電気信号は、アンプ(L)82kおよびアンプ(H)82lの両方に入力される。アンプ(L)82kおよびアンプ(H)82lは、プリアンプ82cからの電気信号をさらに増幅するために設けられている。また、切替スイッチ82mは、アンプ(L)82kからの電気信号をA/D変換器82hに出力するか、アンプ(H)82lからの電気信号をA/D変換器82hに出力するかを選択するために設けられている。この切替スイッチ82mは、コントローラ82jからの制御信号が入力されることにより切替動作を行うように構成されている。
【0046】
A/D変換器82hは、増幅部82gからの電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するために設けられている。ロガー82iは、A/D変換器82hからのデジタル信号のデータ(光学的な情報)を一時的に保存するための機能を有している。このロガー82iは、制御装置4の制御部4aに電気的に接続されており、光学的情報取得部80において取得されたデジタル信号のデータを制御装置4の制御部4aに送信する。
【0047】
緊急検体セット部90は、図1および図2に示すように、緊急を要する検体に対しての検体分析処理を行うために設けられている。この緊急検体セット部90は、搬送機構部3から供給された検体に対しての検体分析処理が行われている際に、緊急検体を割り込ませることが可能なように構成されている。キュベット廃棄部100は、回転搬送部20のキュベット152を廃棄するために設けられている。キュベット廃棄部100は、図2に示すように、廃棄用キャッチャ部101と、廃棄用キャッチャ部101から所定の間隔を隔てて設けられた廃棄用孔102(図1参照)と、廃棄用孔102の下方に設置された廃棄ボックス103とにより構成されている。廃棄用キャッチャ部101は、回転搬送部20のキュベット152を、廃棄用孔102(図1参照)を介して廃棄ボックス103に移動させるために設けられている。流体部110は、血液凝固分析装置1のシャットダウン処理の際に、各分注アームに設けられるノズルに洗浄液などの液体を供給するために設けられている。
【0048】
制御装置4は、パーソナルコンピュータ401などからなり、図1に示すように、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部4aと、表示部4bと、キーボード4cとを含んでいる。また、表示部4bは、検体中に存在する干渉物質(ヘモグロビン、乳び(脂質)およびビリルビン)に関する情報と、光学的情報取得部80から送信されたデジタル信号のデータを分析して得られた分析結果(凝固時間)とを表示するために設けられている。
【0049】
次に、制御装置4の構成について説明する。制御部4aは、図12に示すように、CPU401aと、ROM401bと、RAM401cと、ハードディスク401dと、読出装置401eと、入出力インタフェース401fと、通信インタフェース401gと、画像出力インタフェース401hとから主として構成されている。CPU401a、ROM401b、RAM401c、ハードディスク401d、読出装置401e、入出力インタフェース401f、通信インタフェース401g、および画像出力インタフェース401hは、バス401iによって接続されている。
【0050】
CPU401aは、ROM401bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM401cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム404aをCPU401aが実行することにより、コンピュータ401が制御装置4として機能する。
【0051】
ROM401bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU401aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータなどが記録されている。
【0052】
RAM401cは、SRAMまたはDRAMなどによって構成されている。RAM401cは、ROM401bおよびハードディスク401dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU401aの作業領域として利用される。
【0053】
ハードディスク401dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU401aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。本実施形態に係る血液凝固時間測定用のアプリケーションプログラム404aも、このハードディスク401dにインストールされている。
【0054】
読出装置401eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体404に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体404には、血液凝固時間測定用のアプリケーションプログラム404aが格納されており、コンピュータ401がその可搬型記録媒体404からアプリケーションプログラム404aを読み出し、そのアプリケーションプログラム404aをハードディスク401dにインストールすることが可能である。
【0055】
なお、上記アプリケーションプログラム404aは、可搬型記録媒体404によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ401と通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。たとえば、上記アプリケーションプログラム404aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ401がアクセスして、そのアプリケーションプログラム404aをダウンロードし、これをハードディスク401dにインストールすることも可能である。
【0056】
また、ハードディスク401dには、たとえば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラム404aは上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0057】
出力インタフェース401fは、たとえば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インタフェース401fには、キーボード4cが接続されており、ユーザがそのキーボード4cを使用することにより、コンピュータ401にデータを入力することが可能である。
【0058】
通信インタフェース401gは、たとえば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。コンピュータ401は、その通信インタフェース401gにより、所定の通信プロトコルを使用して検出機構部2との間でデータの送受信が可能である。
【0059】
画像出力インタフェース401hは、LCDまたはCRTなどで構成された表示部4bに接続されており、CPU401aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部4bに出力するようになっている。表示部4bは、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0060】
そして、本実施形態では、制御部4aのハードディスク401dにインストールされた血液凝固時間測定用のアプリケーションプログラム404aは、検出機構部2の光学的情報取得部80で得られた分析試料の透過光量(デジタル信号データ)に基づいて、分析試料の凝固時間を分析している。この凝固時間は、キュベット152内の検体に対して血液を凝固させる試薬が添加された時点から、試薬が添加された分析試料が流動性を失うまでの時間(凝固時間)である。この分析試料が流動性を失う凝固反応は、検体中のフィブリノーゲンが、添加された試薬によりフィブリンに変化する反応である。そして、本実施形態の血液凝固分析装置1では、検体中のフィブリノーゲン量に依存して反応する凝固反応を、図13および図14に示すように、分析試料の透過光量の変化量(反応前の透過光量と反応後の透過光量との差)によって確認している。
【0061】
また、本実施形態の血液凝固分析装置1で干渉物質(乳び)が混入した検体を測定した場合、図13に示すように、低波長側の660nmで測定した測定結果は、干渉物質(乳び)の影響を受けて小さくなり、約190〜約220の透過光量となる。また、660nmの波長を用いた場合には、血液の凝固反応を示す透過光量の変化量ΔH1(反応前の透過光量と反応後の透過光量との差)も干渉物質(乳び)の影響を受けて小さくなる傾向がある。これに対して、高波長側の800nmで測定した測定結果は、干渉物質(乳び)の影響を受けにくく、660nmの波長で測定した透過光量(約190〜約220)より大きくなり、約350〜約390の透過光量となる。また、800nm波長を用いた場合には、血液の凝固反応を示す透過光量の変化量ΔH2(>ΔH1)も干渉物質の影響を受けにくく、小さくなりにくい。したがって、干渉物質(乳び)が混入した検体を測定する場合には、高波長側の800nmの波長で測定した方が、低波長側の660nmの波長で測定するよりも凝固反応を大きく捉えることが可能である。
【0062】
一方、干渉物質が混入していない正常検体を測定した場合、図14に示すように、低波長側の660nmで測定した透過光量の変化量ΔH11(=約980(=反応前の透過光量(約2440)−反応後の透過光量(約1460)))の方が、高波長側の800nmで測定した透過光量の変化量ΔH21(=約720(=反応前の透過光量(約2630)−反応後の透過光量(約1910)))より大きくなる。したがって、正常検体を測定する場合には、低波長側の660nmの波長で測定した方が、高波長側の800nmの波長で測定するよりも凝固反応を大きく捉えることが可能である。
【0063】
図15は、図1に示した一実施形態による血液凝固分析装置の検体分析動作の手順を示したフローチャートである。次に、図1、図2、図8、図10、図11および図15を参照して、血液凝固分析装置1の検体の分析動作について詳細に説明する。
【0064】
まず、図1に示した血液凝固分析装置1の検出機構部2および制御装置4の電源をそれぞれオン状態にすることにより、血液凝固分析装置1の初期設定が行われる。これにより、キュベット152を移動させるための機構と各分注アームとを初期位置に戻すための動作や、制御装置4の制御部4aに記憶されているソフトウェアの初期化などが行われる。
【0065】
そして、図2に示した搬送機構部3によって、検体を収容した試験管150が載置されたラック151の搬送が行われる。これにより、ラックセット領域3aのラック151が検出機構部2の吸引位置2aに対応する位置まで搬送される。
【0066】
そして、ステップS1において、検体分注アーム30(図2参照)により試験管150から所定量の検体の吸引が行われる。そして、検体分注アーム30を回転搬送部20の一次分注テーブル24に保持されたキュベット152の上方に移動させる。その後、検体分注アーム30から一次分注テーブル24のキュベット152内に検体が吐出されることにより、キュベット152内に検体が分取される。
【0067】
次に、ステップS2において、検体分注アーム30により一次分注テーブル24の保持部24aに保持されたキュベット152から所定量の検体が吸引される。その後、検体分注アーム30から二次分注テーブル23の複数のキュベット152に所定量の検体が各々吐出されることにより二次分注処理が行われる。そして、試薬分注アーム60を駆動させて、試薬テーブル21および22に載置された試薬容器(図示せず)内の血液を凝固させる試薬を二次分注テーブル23のキュベット152内の検体に添加する。これにより、分析試料の調製が行われる。そして、キュベット移送部70を用いて、分析試料が収容された二次分注テーブル23のキュベット152を光学的情報取得部80のキュベット載置部81の挿入孔81aに移動させる。
【0068】
そして、ステップS3において、光学的情報取得部80の検出部82によりキュベット152内の分析試料に対して複数の条件下で光学的な測定が行われることによって、分析試料から複数(10種類)の透過光量が取得される。具体的には、まず、キュベット載置部81の挿入孔81aに挿入されたキュベット152は、加温機構(図示せず)により所定の温度に加温される。その後、図10に示すように、キュベット載置部81のキュベット152へ、ランプユニット50の分岐光ファイバ57から光が照射される。なお、分岐光ファイバ57からは、5つの異なる波長(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の光が、フィルタ部53(図8参照)の回転によって周期的に照射される。分岐光ファイバ57から照射され、キュベット152およびキュベット152内の分析試料を透過した上記各波長の光は、光電変換素子82bによって順次検出される。そして、光電変換素子82bにより変換された5つの異なる波長の光に対応する透過光量の電気信号がプリアンプ82cで増幅された後、順次、増幅部82gに入力される。
【0069】
増幅部82gでは、プリアンプ82c(図11参照)からの5つの異なる波長の光に対応する透過光量の電気信号が、増幅率の高いアンプ(H)82lおよび通常の増幅率のアンプ(L)82kに各々入力される。そして、コントローラ82jにより切替スイッチ82mを制御することにより、アンプ(H)82lにより増幅された電気信号がA/D変換器82hに出力された後、アンプ(L)82kにより増幅された電気信号がA/D変換器82hに出力される。ここで、切替スイッチ82mは、ランプユニット50におけるフィルタ部53(図8参照)の回転のタイミングに応じて繰り返し切り替えられる。これにより、増幅部82gにおいては、5つの異なる波長の光に対応する透過光量の電気信号がそれぞれ2つの異なる増幅率で増幅され、合計10種類の電気信号がA/D変換器82hに繰り返し出力される。そして、10種類の電気信号は、A/D変換器82hでデジタル信号に変換され、ロガー82iに一時的に記憶された後、制御装置4の制御部4aに順次送信される。これにより、光学的情報取得部80による分析試料に対する複数(10種類)の透過光量データの取得が完了する。なお、制御装置4の制御部4aでは、受信した透過光量データから各波長ごとに透過光量の変化量(=反応前の透過光量−反応後の透過光量)が算出されている。このようにして取得された透過光量データは、制御装置4のRAM401cに記憶される。
【0070】
そして、本実施形態では、上記したステップS3の光学的情報取得部80による透過光量データの取得の後、ステップS4において、660nmの波長で測定した分析試料の透過光量の変化量(ΔH1)が閾値(T11)よりも大きいか否かが判断される。血液の凝固反応は分析試料に光学的な変化をもたらし、かかる光学的変化が透過光量の変化量として表れる。したがって、透過光量の変化が大きい場合には、血液の凝固反応に由来する分析試料の光学的変化を大きく捉えていると考えることができる。このように大きく捉えられた経時的な透過光量の変化を用いれば、透過光量データのS/N比が大きいため、高精度に凝固時間を測定することができる。
【0071】
そして、ステップS4において、660nmで測定した透過光量の変化量(ΔH1)が閾値(T11)よりも大きい場合には、ステップS5において、ラグフェーズ(測定試料が調製されてから、血液の凝固反応により測定試料が光学的な変化を呈する前までの期間)における660nmの透過光量(bH1)が所定の閾値(T12)よりも大きいか否かが判定される。凝固反応は、内因系または外因系の多くの反応を経由して、血漿中のフィブリノーゲンがフィブリンに転化され血液凝固が起こる反応である。すなわち、血漿に血液凝固試薬を混和しても、すぐには血液凝固が開始せず、外因系(PT測定試薬)で通常7秒程度、内因系(APTT測定試薬)で通常14秒程度経過後に、凝固反応が起こる。したがって、この凝固反応を示す前の時点(ラグフェーズ)の光学情報は、凝固反応による光学的変化が生じる前のものであり、検体が希釈された状態と同じ光学情報であるといえる。そのため、凝固時間測定用試薬によって希釈された状態の検体のラグフェーズにおける透過光量(bH1)を閾値(T12)と比較することにより、その透過光量データが分析に使用可能かどうかを判断することができる。分析試料に干渉物質が多く含まれる場合には、光学的情報取得部80の光電変換素子82bで検知された受光量が微小となり、ラグフェーズにおける上記透過光量が小さくなる。このことにより、ラグフェーズにおける660nmの透過光量(bH1)が閾値(T12)以下の場合には、光学的情報取得部80において取得されたこの波長(660nm)の透過光量に干渉物質が大きく影響しており、分析に使用することができないと判断することができる。このラグフェーズにおける透過光量データは、光学測定の開始から所定期間後のデータを採用することにより取得される。なお、これに限らず、例えば、透過光量を微分して透過光量の変化の度合いを求め、光学測定の開始から、この微分値が所定値を超えるまでの期間をラグフェーズとするといったように、経時的な透過光量の変化を解析してラグフェーズを求め、この期間における透過光量データを採用することもできる。
【0072】
ステップS5において、ラグフェーズにおける660nmの透過光量(bH1)が閾値(T12)より大きい場合には、ステップS6において、光学的情報取得部80において測定された複数の透過光量データの中から660nmで測定した分析試料の透過光量データが制御装置4のCPU401aにより分析され、対象となる分析項目(例えば、「PT」)の凝固時間が求められる。その後、制御部4aが、凝固時間などの分析結果を出力する。
【0073】
一方、ステップS5において、ラグフェーズにおける660nmの透過光量(bH1)が閾値(T12)以下の場合には、ステップS7において、800nmで測定した分析試料の透過光量の変化量(ΔH2)が閾値(T21)よりも大きいか否かが判断される。つまり、この場合には、660nmの透過光量データは干渉物質の影響を強く受けており、分析に使用することができないため、より干渉物質の影響を受けにくい800nmの透過光量データが分析に使用可能か否かが判定される。そして、ステップS7において、800nmの透過光量の変化量(ΔH2)が閾値(T21)より大きい場合には、ステップS8において、ラグフェーズにおける800nmの透過光量(bH2)が所定の閾値(T22)よりも大きいか否かが判定される。そして、ラグフェーズにおける800nmの透過光量(bH2)が所定の閾値(T22)よりも大きい場合には、800nmの透過光量データを使用して分析が行われる。すなわち、ステップS9において、光学的情報取得部80において測定された複数の透過光量データの中から800nmで測定した分析試料の透過光量データが制御装置4のCPU401aにより分析され、対象となる分析項目の凝固時間が求められる。その後、制御部4aが、凝固時間などの分析結果を出力する。ステップS8において、ラグフェーズにおける800nmの透過光量(bH2)が閾値(T22)以下の場合には、CPU401aは分析を実行せずに、ステップS10において測定結果に測定エラーのフラグを付与する。また、ステップS7において、800nmの透過光量の変化量(ΔH2)が閾値(T21)以下の場合にも、測定波長の中で最も干渉物質の影響を受けにくい800nmの透過光量データを分析に使用することができないと判断することができるため、CPUは分析を実行せずに、ステップS10において測定結果に測定エラーのフラグを付与する。
【0074】
一方、ステップS4において、660nmで測定した透過光量の変化量(ΔH1)が閾値(T11)以下の場合には、ステップS11において、575nmで測定した分析試料の透過光量の変化量(ΔH3)が閾値(T31)よりも大きいか否かが判断される。つまり、この場合には、660nmの透過光量の変化は分析に使用するには十分でないため、より測定感度が高い575nmの透過光量データが分析に使用可能か否かが判定される。
【0075】
そして、ステップS11において、575nmで測定した透過光量の変化量(ΔH3)が閾値(T31)よりも大きい場合には、ステップS12において、ラグフェーズにおける575nmの透過光量(bH3)が所定の閾値(T32)よりも大きいか否かが判定される。そして、ラグフェーズにおける575nmの透過光量(bH3)が所定の閾値(T32)よりも大きい場合には、ステップS13において、光学的情報取得部80において測定された複数の透過光量の中から575nmで測定した分析試料の透過光量データが制御装置4のCPU401aにより分析され、対象の分析項目の凝固時間が求められる。その後、制御部4aが、凝固時間などの分析結果を出力する。また、ステップS12において、ラグフェーズにおける575nmの透過光量(bH3)が閾値(T32)以下の場合には、CPU401aは分析を実行せずに、ステップS14において測定結果に測定エラーのフラグを付与する。
【0076】
また、ステップS11において、575nmで測定した透過光量の変化量(ΔH3)が閾値(T31)以下の場合には、ステップS15において、405nmで測定した分析試料の透過光量の変化量(ΔH4)が閾値(T41)よりも大きいか否かが判断される。つまり、この場合には、575nmの透過光量の変化は分析に使用するには十分でないため、より測定感度が高い405nmの透過光量データが分析に使用可能か否かが判定される。
【0077】
そして、ステップS15において、405nmで測定した透過光量の変化量(ΔH4)が閾値(T41)よりも大きい場合には、ステップS16において、ラグフェーズにおける405nmの透過光量(bH4)が所定の閾値(T42)よりも大きいか否かが判定される。そして、ラグフェーズにおける405nmの透過光量(bH4)が所定の閾値(T42)よりも大きい場合には、ステップS17において、光学的情報取得部80において測定された複数の透過光量の中から405nmで測定した分析試料の透過光量データが制御装置4のCPU401aにより分析され、対象の分析項目の凝固時間が求められる。その後、制御部4aが、凝固時間などの分析結果を出力する。また、ステップS16において、ラグフェーズにおける405nmの透過光量(bH4)が閾値(T42)以下の場合には、CPU401aは分析を実行せずに、ステップS18において測定結果に測定エラーのフラグを付与する。また、ステップS15において、405nmで測定した透過光量の変化量(ΔH4)が閾値(T41)以下の場合にも、CPU401aは分析を実行せずに、ステップS18において測定結果に測定エラーのフラグを付与する。
【0078】
そして、ステップS6、ステップS9、ステップS13、およびステップS17の制御装置4のCPU401aによる分析が終了した後には、ステップS19において、上記ステップS6、ステップS9、ステップS13、またはステップS17で得られた凝固時間などの分析結果を制御装置4の表示部4bに表示する。また、ステップS10、S14、またはS18において、測定結果にフラグが付与されて、測定エラーとなった場合には、制御装置4の表示部4bに、「測定エラー」の表示とともに、エラーコードが表示される。これにより、ユーザーは、表示部4bに表示されるエラーコードと、取り扱い説明書などに記載されるエラーコードとを照合して、エラー内容を確認することが可能となる。このようにして、血液凝固分析装置1の検体の分析動作が終了する。
【0079】
本実施形態では、上記のように、光学的情報取得部80によって取得された経時的な透過光量の変化量(ΔH1〜ΔH4)に基づいて、分析に使用する波長を選択することによって、血液の凝固反応の経過に伴って変化する透過光量の経時的な変化に基づいて、分析に使用する波長を変化させることができる。これにより、光学的情報取得部80で取得された経時的な透過光量の変化が干渉物質(乳び)の影響を受けている場合に、検体中に含まれる干渉物質が吸収しにくい長い波長を選択すれば、干渉物質の影響が少ない経時的な透過光量の変化を取得することができる。その結果、干渉物質の影響が少ない経時的な透過光量の変化を、血液の凝固反応に由来する変化として捉えることができるので、制御装置4は、血液試料の凝固時間を正確に分析することができる。
【0080】
また、本実施形態では、800nm、660nm、575nm、および405nmの各波長で測定したラグフェーズにおける分析試料の透過光量を閾値と比較して、この透過光量が制御装置4の分析可能な分析範囲に入っているのか確認することによって、ラグフェーズの透過光量が制御装置4の分析可能な分析範囲を超えている場合に、ラグフェーズの透過光量が制御装置4の分析可能な分析範囲に入るように、選択する波長を変化させることができる。その結果、制御装置4は、分析範囲を超えた信頼性の低い透過光量を採用して分析することがないので、正確な分析を行うことができる。
【0081】
また、本実施形態では、血液凝固分析に使用する透過光量データ(経時的に取得した受光量)を使用して、分析に使用する波長を選択する構成としたので、特定の波長(例えば、660nm)のデータでは正確な分析が行えない場合に、他の波長(例えば、800nm)のデータを使用して適切な分析を行うことができる。また、適度に干渉物質の影響を受けにくく、しかも適当な測定感度を得ることができる第1の波長(660nm)のデータを分析に使用できるか否かを優先的に判断しているので、第1の波長のデータを優先的に使用することができる。この第1の波長のデータは、第1の波長よりも波長が短い第2の波長(575nm、405nm)のデータよりも干渉物質の影響を受けにくく、しかも第1の波長より波長が長い第3の波長(800nm)よりも高い分解能で得られたものであるので、信頼性の高いデータであることが確認されている。そして、第1の波長のデータでは、凝固反応による分析試料の光学的変化が十分に大きく捉えられていない場合には、第2の波長(575nm、405nm)のデータを選択することにより、精度の高い分析を行うことが可能となる。また、検体中に含まれる干渉物質の影響が大きい場合に、第3の波長(800nm)を選択することにより、干渉物質の影響を受けにくい第3の波長のデータを用いて分析することができる。また、以上のような構成とすることにより、干渉物質を光学的に測定するための構造が不要となり、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0082】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0083】
例えば、本実施形態においては、各波長における透過光量の変化量と、ラグフェーズにおける透過光量とを用いて分析に使用する波長を選択する構成について述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、各波長における透過光量の変化量のみを用いて分析に使用する波長を選択することもできる。この場合、例えば、800nmの波長における透過光量の変化量が閾値よりも大きい場合には、800nmの波長の透過光量データを使用して分析を行い、800nmの波長における透過光量の変化量が閾値以下の場合には、660nmの波長の透過光量データを使用して分析を行うことが可能である。
【0084】
また、本実施形態においては、特定の波長における透過光量の変化量が所定の閾値よりも大きいか否かを判断し、透過光量の変化量が閾値よりも大きい場合に、その特定の波長におけるラグフェーズの透過光量が所定の閾値よりも大きいか否かを判断するという順番でその特定の波長が分析に使用することができるか否かを判定したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、特定の波長におけるラグフェーズの透過光量が所定の閾値よりも大きいか否かを判断し、その透過光量が閾値よりも大きい場合に、その特定の波長における透過光量の変化量が所定の閾値よりも大きいか否かを判断するという順番としてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、検出機構部と制御装置とを別個に設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、制御装置の機能を検出機構部に設けてもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、凝固時間法を用いて分析試料の光学的な測定(本測定)を行う例を示したが、本発明はこれに限らず、凝固時間法以外の合成基質法や免疫比濁法などを用いて分析試料の光学的な測定を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態による血液凝固分析装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による血液凝固分析装置の検出機構部および搬送機構部を示した平面図である。
【図3】干渉物質(ヘモグロビン)の吸光度スペクトルを示したグラフである。
【図4】干渉物質(ビリルビン)の吸光度スペクトルを示したグラフである。
【図5】干渉物質(乳び)の吸光度スペクトルを示したグラフである。
【図6】図1に示した一実施形態による血液凝固分析装置のランプユニットを示した斜視図である。
【図7】図1に示した一実施形態による血液凝固分析装置のランプユニットの構成を説明するための模式図である。
【図8】図6に示したランプユニットのフィルタ部を示した拡大斜視図である。
【図9】図1に示した一実施形態による血液凝固分析装置の光学的情報取得部の検出部の内部構造を説明するための概略図である。
【図10】図1に示した一実施形態による血液凝固分析装置の光学的情報取得部の検出部の構成を説明するための断面図である。
【図11】図1に示した一実施形態による血液凝固分析装置の光学的情報取得部のブロック図である。
【図12】図1に示した一実施形態による血液凝固分析装置の制御装置のブロック図である。
【図13】図1に示した一実施形態による血液凝固分析装置の光学的情報取得部により測定された干渉物質が混入した検体の測定結果である。
【図14】図1に示した一実施形態による血液凝固分析装置の光学的情報取得部により測定された正常検体の測定結果である。
【図15】図1に示した一実施形態による血液凝固分析装置の検体分析動作の手順を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0088】
1 血液凝固分析装置
4a 制御部(選択手段、分析手段)
50 ランプユニット(光照射部)
80 光学的情報取得部(受光部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料に血液を凝固させる試薬が添加された分析試料に、光を照射する光照射部と、
前記光照射部によって光が照射された分析試料から複数の波長の光を経時的に受け、各々の前記波長について、複数の時刻における受光量を取得する受光部と、
前記受光部によって取得された経時的な受光量の変化に基づいて、分析に使用する波長を選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択された波長の光を照射して得られた受光量を用いて血液の凝固時間を分析する分析手段とを備えた、血液凝固分析装置。
【請求項2】
前記選択手段は、前記受光部によって取得された、前記分析試料が凝固反応を示す前の時点における受光量および経時的な受光量の変化量に基づいて、分析に使用する波長を選択する、請求項1に記載の血液凝固分析装置。
【請求項3】
前記選択手段は、前記受光部によって取得された前記分析試料が凝固反応を示す前の時点における受光量が前記分析手段による分析可能な分析範囲に入る場合に、前記経時的な受光量の変化量に基づいて、分析に使用する波長を選択する、請求項2に記載の血液凝固分析装置。
【請求項4】
前記選択手段は、前記受光部により取得された第1の波長における経時的な受光量の変化量が所定の値よりも大きい場合には、前記第1の波長を選択し、
前記分析手段は、前記選択手段によって選択された前記第1の波長における受光量を用いて血液の凝固時間を分析する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の血液凝固分析装置。
【請求項5】
前記選択手段は、前記受光部により取得された前記第1の波長における経時的な受光量の変化量が所定の値以下の場合で、かつ、前記受光部により取得された第2の波長における経時的な受光量の変化量が所定の値よりも大きい場合には、前記第2の波長を選択し、
前記分析手段は、前記選択手段によって選択された前記第2の波長における受光量を用いて血液の凝固時間を分析する、請求項4に記載の血液凝固分析装置。
【請求項6】
前記選択手段は、前記受光部により取得された前記第1の波長における経時的な受光量の変化量が所定の第1の値よりも大きい場合で、かつ、前記分析試料が凝固反応を示す前の時点での前記第1の波長における受光量が所定の第2の値より大きいときには、前記第1の波長を選択し、
前記分析手段は、前記選択手段によって選択された前記第1の波長における受光量を用いて血液の凝固時間を分析する、請求項4に記載の血液凝固分析装置。
【請求項7】
前記選択手段は、前記受光部により取得された前記第1の波長における経時的な受光量の変化量が前記第1の値以下の場合には、前記受光部により取得された前記第1の波長よりも短い第2の波長における受光量に基づいて、前記第2の波長の受光量を分析に使用できるか否かを判定する、請求項6に記載の血液凝固分析装置。
【請求項8】
前記選択手段は、前記受光部により取得された前記第1の波長における経時的な受光量の変化量が所定の第1の値よりも大きい場合で、かつ、前記分析試料が凝固反応を示す前の時点での前記第1の波長における受光量が所定の第2の値以下のときには、前記受光部により取得された前記第1の波長よりも長い第3の波長における受光量に基づいて、前記第3の波長の受光量が分析に使用できるか否かを判定する、請求項6または7に記載の血液凝固分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−263912(P2007−263912A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92813(P2006−92813)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】