血液凝固時間測定装置
【課題】干渉物質の測定を行うための装置を別途設ける必要がなく、かつ、血液検体の消費を抑制することが可能な血液凝固時間測定装置を提供する。
【解決手段】この血液凝固時間測定装置1は、血液検体に凝固時間測定用試薬を混和して、凝固時間測定用試料を調製する試薬分注アーム60と、調製された凝固時間測定用試料に多波長の光を照射するランプユニット50と、光が照射された凝固時間測定用試料から複数の波長の光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第2光学的情報取得部80と、第2光学的情報取得部80により取得された光学的情報に基づいて、凝固時間測定用試料の凝固時間を測定する制御装置4とを備えている。そして、制御装置4は、第2光学的情報取得部80により取得された光学的情報のうち、凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報に基づいて、凝固時間測定用試料の光学測定に光学的に干渉する干渉物質の凝固時間測定用試料における含有度合いを測定するように構成されている。
【解決手段】この血液凝固時間測定装置1は、血液検体に凝固時間測定用試薬を混和して、凝固時間測定用試料を調製する試薬分注アーム60と、調製された凝固時間測定用試料に多波長の光を照射するランプユニット50と、光が照射された凝固時間測定用試料から複数の波長の光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第2光学的情報取得部80と、第2光学的情報取得部80により取得された光学的情報に基づいて、凝固時間測定用試料の凝固時間を測定する制御装置4とを備えている。そして、制御装置4は、第2光学的情報取得部80により取得された光学的情報のうち、凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報に基づいて、凝固時間測定用試料の光学測定に光学的に干渉する干渉物質の凝固時間測定用試料における含有度合いを測定するように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固時間測定装置に関し、特に、血液検体と凝固時間測定用試薬とを混和して調製した凝固時間測定用試料を光学的に分析する血液凝固時間測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本測定(たとえば、生化学分析)を実施する前に、サンプル(血清など)の品質評価を行うために、サンプル中の干渉物質(ヘモグロビン、ビリルビン、乳びなど)の測定が実施されている(たとえば、特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。なお、干渉物質とは、検査対象となる目的物質(たとえば、フィブリノーゲン)とともにサンプル中に共存し、その目的物質の光学的測定に干渉する物質のことである。
【0003】
上記特許文献1に開示された血清中の乳び度、黄疸度および溶血度の測定方法では、血清に4つの波長の光を照射して、第1次的には、可視域における短波長(たとえば、410nm)の光を使用することにより吸光度を測定し、その吸光度が一定値以上の血清については、乳び、黄疸および溶血による異常血清と判定している。次に、第2次的には、異常血清だと判定された血清について、4つの波長を用いて測定された吸光度と、予め設定した数種類の基準とを比較することにより、乳び、黄疸および溶血の程度を判定している。
【0004】
また、上記特許文献2に開示されたクロモゲン(干渉物質)の測定方法では、懸濁物質(ヘモグロビン、ビリルビン、乳びなど)が混在する検体にブランク反応用試薬を混合して検体ブランク液を調製し、この検体ブランク液に、乳びの吸収があり、かつ、ヘモグロビンおよびビリルビンの吸収が実質的にない波長を含む4種類の波長の光を照射することにより、干渉物質の程度を測定している。具体的には、乳びに関しては、吸光度が波長の指数関数で表されると仮定して、波長−吸光度の回帰曲線を求めることにより、乳びの程度を算出している。また、ヘモグロビンおよびビリルビンに関しては、異なる波長での吸光度間に予め設けた一定の関係があると仮定して、測定波長における吸光度に関する連立一次方程式を作り、それを解くことにより、ヘモグロビンおよびビリルビンの程度を算出している。
【0005】
また、上記特許文献3に開示された血清試料に溶血、黄疸および脂肪血症が存在するか否かを決定する分析装置では、まず、プローブに設けられた透明部分に配置されるニードル管に吸引された血清試料に、発光ダイオードから出射される光を照射することにより、ニードル管内の血清試料の吸光度を測定する。そして、その吸光度に基づいて測定可能だと判断された血清試料を臨床分析器に移送し、本測定を行う。
【0006】
【特許文献1】特開昭57−59151号公報
【特許文献2】特開平6−66808号公報
【特許文献3】特開平10−153597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献3では、本測定(生化学分析など)を実施する前に、血清などのサンプルを原濃度のまま用いて、サンプル中の干渉物質の測定を行っているため、原濃度のサンプルを測定するための光学測定用の構造(たとえば、光学検出部やプローブ)を本測定部とは別個に設ける必要があるという問題点がある。
【0008】
また、上記特許文献2では、本測定(本来目的とする測定)では使用することができない検体ブランク液を用いて、光学測定して干渉物質の測定を実施する必要があるという不都合がある。そのため、本測定とは別に、かかる干渉物質の測定を行わなければならない。また、検体ブランク液を調整するために、本測定とは別に血清などのサンプルを準備する必要があり、本測定の結果を得るまでに、サンプルの消費が多くなるという問題点がある。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、血液凝固時間の測定とは別に干渉物質を測定する必要がなく、かつ、血液検体の消費を抑制することが可能な血液凝固時間測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による血液凝固時間測定装置は、血液検体に凝固時間測定用試薬を混和して、凝固時間測定用試料を調製する試料調製部と、調製された前記凝固時間測定用試料に光を照射する光照射部と、光が照射された前記凝固時間測定用試料から複数の波長の光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部と、前記第1受光部により取得された光学的情報に基づいて、前記凝固時間測定用試料の凝固時間を測定する測定部とを備え、前記測定部は、前記第1受光部により取得された光学的情報のうち、前記凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報に基づいて、前記凝固時間測定用試料の光学測定に干渉する干渉物質の前記凝固時間測定用試料における含有度合いを測定するように構成されている。
【0011】
この第1の局面による血液凝固時間測定装置では、上記のように、光が照射された凝固時間測定用試料から複数の波長の光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部を設けることによって、その第1受光部により、干渉物質の凝固時間測定用試料における含有度合いの測定に用いる光学的情報(凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報)と、凝固時間の測定(本測定)に用いる光学的情報(経時的な複数の光学的情報)との両方を取得することができる。凝固反応は、内因系または外因系の多くの反応を経由して、血漿中のフィブリノーゲンがフィブリンに転化され血液凝固が起こる反応である。すなわち、血漿に血液凝固試薬を混和しても、すぐには血液凝固が開始せず、外因系(PT測定試薬)で通常7秒程度、内因系(APTT測定試薬)で通常14秒程度経過後に、凝固反応が起こる。本発明は、この凝固反応を示す前の時点(ラグフェーズという)の光学情報が、検体が希釈された状態と同じ光学情報であることに着目したものである。つまり上記構成とすることにより、測定部は、経時的な複数の光学的情報を用いて凝固時間を測定するだけでなく、凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点(ラグフェーズ)における光学的情報を用いて干渉物質の含有度合いを測定することができる。その結果、測定部は、本測定とは別に干渉物質のためだけの測定を行うことなく、干渉物質の凝固時間測定用試料における含有度合いを測定することができる。また、この際、第1受光部では、血液検体に凝固時間測定用試薬が混和された1つの凝固時間測定用試料から、凝固時間の測定(本測定)に用いる光学的情報(経時的な複数の光学的情報)と、干渉物質の含有度合いの測定に用いる光学的情報(凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報)との両方を取得することができる。その結果、本測定に用いる試料と干渉物質の含有度合いの測定に用いる試料とを別個に準備する必要がないので、血液検体の消費を抑制することができる。
【0012】
また、この第1の局面では、血液検体に凝固時間測定用試薬が混和された凝固時間測定用試料からの光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部を設けることによって、凝固時間測定用試薬によって希釈された血液検体から光学的情報を取得することができる。これにより、第1受光部では、血液検体の濃度が高いために光学的情報を検出するのが困難な場合でも、希釈された血液検体(凝固時間測定用試料)からの光学的情報を取得することができるので、光学的情報を取得することが可能な測定範囲を拡大することができる。
【0013】
上記第1の局面による血液凝固時間測定装置において、好ましくは、測定部は、第1受光部で取得された複数の波長における光学的情報に基づいて、複数の干渉物質の含有度合いをそれぞれ測定するように構成されている。このように構成すれば、光照射部から照射される複数の波長の光により取得される複数の光学的情報を用いることにより、各干渉物質が吸収する波長が異なることを利用して、容易に、複数の干渉物質の含有度合いをそれぞれ測定することができる。
【0014】
上記複数の干渉物質の含有度合いを測定する血液凝固時間測定装置において、好ましくは、第1受光部は、第1波長、第2波長および第3波長における光学的情報を少なくとも取得するように構成されており、測定部は、第1受光部により取得された第1波長、第2波長、および第3波長の少なくともいずれかにおける光学的情報に基づいて、血液検体におけるビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの少なくともいずれかの含有度合いを測定するように構成されている。このように構成すれば、光照射部から照射される第1波長、第2波長および第3波長の光により取得される複数の光学的情報を用いることにより、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する波長が異なることを利用して、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの含有度合いをそれぞれ測定することができる。
【0015】
上記ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの含有度合いを測定する血液凝固時間測定装置において、好ましくは、第1波長は、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する波長であり、第2波長は、ビリルビンが実質的に吸収せず、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する波長であり、第3波長は、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する波長であり、測定部は、少なくとも第1波長における光学的情報に基づいて、第2波長および第3波長における光学的情報への乳びの影響を推定する第1推定手段と、推定された第2波長における乳びの影響と、第2波長における光学的情報とに基づいて、第3波長における光学的情報へのヘモグロビンの影響を推定する第2推定手段とを含むとともに、第1受光部により取得された第1波長、第2波長および第3波長における光学的情報、第1推定手段により推定された第2波長および第3波長における光学的情報への乳びの影響、並びに、第2推定手段により推定された第3波長における光学的情報へのヘモグロビンの影響に基づいて、血液検体におけるビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの含有度合いを測定するように構成されている。このように構成すれば、乳びのみが吸収する波長である第1波長における光学的情報に基づいて、容易に、血液検体における乳びの含有度合いを測定することができる。また、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する波長である第2波長における光学的情報と、第1推定手段により推定された第2波長における光学的情報への乳びの影響とに基づいて、容易に、血液検体におけるヘモグロビンの含有度合いを測定することができる。また、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びのいずれもが吸収する波長である第3波長における光学的情報と、第1推定手段により推定された第3波長における光学的情報への乳びの影響と、第2推定手段により推定された第3波長における光学的情報へのヘモグロビンの影響とに基づいて、容易に、血液検体におけるビリルビンの含有度合いを測定することができる。これらのようにして、容易に、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの含有度合いをそれぞれ測定することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、第1受光部は、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する第4波長における光学的情報をさらに取得するように構成されており、第1推定手段は、第1波長および第4波長における光学的情報に基づいて、第2波長および第3波長における光学的情報への乳びの影響を推定するように構成されている。このように構成すれば、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する第1波長に加えて第4波長における光学的情報に基づいて、他の波長(第2波長および第3波長)における光学的情報への乳びの影響を推定することができる。これにより、1種類の波長における光学的情報に基づいて、他の波長における光学的情報への乳びの影響を推定する場合に比べて、2種類の波長における2つの光学的情報に基づいて、他の波長における光学的情報への乳びの影響を推定する方が、正確に乳びの影響を推定することができる。その結果、正確に推定された乳びの影響を用いて、ビリルビンおよびヘモグロビンの影響も推定することができるので、干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の影響を正確に推定することができる。
【0017】
上記第1の局面による血液凝固時間測定装置において、好ましくは、第1受光部は、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する第1波長、ビリルビンが実質的に吸収せず、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する第2波長、並びに、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する第3波長における光学的情報を少なくとも取得するように構成されており、測定部は、少なくとも第1受光部により取得された第1波長における光学的情報に基づいて、光学的情報への乳びの影響を取得する第1取得手段と、第1取得手段により取得された光学的情報への乳びの影響と、第1受光部により取得された第2波長における光学的情報とに基づいて、光学的情報へのヘモグロビンの影響を取得する第2取得手段と、第1取得手段により取得された光学的情報への乳びの影響と、第2取得手段により取得された光学的情報へのヘモグロビンの影響と、第1受光部により取得された第3波長における光学的情報とに基づいて、光学的情報へのビリルビンの影響を取得する第3取得手段とを含み、第1取得手段により取得された光学的情報への乳びの影響と、第2取得手段により取得された光学的情報へのヘモグロビンの影響と、第3取得手段により取得された光学的情報へのビリルビンの影響とを出力する出力部をさらに備える。これにより、第1取得手段により取得した乳びの影響と、第2取得手段により取得したヘモグロビンの影響と、第3取得手段により取得したビリルビンの影響とを、容易に、出力手段に出力することができる。
【0018】
上記光学的情報への乳びの影響を取得する第1取得手段を備えた血液凝固時間測定装置において、好ましくは、第1取得手段は、第1波長における光学的情報に加えて、凝固時間測定用試薬に光を照射することにより取得した凝固時間測定用試薬に由来する光学的情報に基づいて、光学的情報への乳びの影響を取得する。このように構成すれば、第1波長における光学的情報に、凝固時間測定用試料に由来する光学的情報が含まれている場合でも、容易に、光学的情報への凝固時間測定用試料に由来する光学的情報を含まない乳びのみの影響を取得することができる。
【0019】
上記第1の局面による血液凝固時間測定装置において、好ましくは、光照射部は、互いに異なる複数の波長の光を時分割で照射するように構成されている。このように構成すれば、複数の波長を有する光を時分割で測定部の凝固時間測定用試料に照射することができる。その結果、複数の波長の光を順次凝固時間測定用試料に照射することができるので、容易に、干渉物質の含有度合いを測定するのに必要な複数の光学的情報を取得することができる。また、血液検体に添加される凝固時間測定用試薬の種類に依存して、凝固時間を測定するのに適した波長が異なる場合でも、容易に、測定に適した波長の光を凝固時間測定用試薬に照射することができる。
【0020】
上記第1の局面による血液凝固時間測定装置において、好ましくは、凝固時間測定用試薬が混和される前の血液検体から光を受けて光学的情報を取得する第2受光部をさらに備え、測定部は、第2受光部により取得された光学的情報に基づいて、血液検体の光学測定に光学的に干渉する干渉物質の血液検体における含有度合いを測定するように構成されている。このように構成すれば、凝固時間測定用試薬が混和される前の段階で、血液検体中の干渉物質の含有度合いを測定することができる。これにより、第2受光部で測定された血液検体中の干渉物質の含有度合いが大きい場合に、信頼性の高い凝固時間を測定することが困難であると判断して、測定を中止することができる。その結果、測定が中止される血液検体に凝固時間測定用試薬が混和されるのを中止することができるので、凝固時間測定用試薬が無駄に消費されるのを抑制することができる。また、この場合、信頼性の高い測定結果(凝固時間)を得ることが困難な血液検体に対して、第1受光部による本測定を行うことがないので、装置の測定効率を向上させることもできる。
【0021】
この場合、好ましくは、第2受光部によって取得された光学的情報に基づいて、第1受光部により経時的な光学的情報を取得するか否かを判断する判断手段をさらに備えている。このように構成すれば、容易に、第1受光部による本測定を行うか否かを判断することができる。
【0022】
上記第2受光部を備えた血液凝固時間測定装置において、好ましくは、第1受光部により取得された光学的情報に基づいて測定された干渉物質の血液検体における含有度合いと、第2受光部により取得された光学的情報に基づいて測定された干渉物質の凝固時間測定用試料における含有度合いとのいずれか一方を選択する選択手段をさらに備えている。このように構成すれば、凝固時間測定用試料などにより希釈されていない原濃度の血液検体における干渉物質の含有度合いと、凝固時間測定用試料などにより希釈された凝固時間測定用試料における干渉物質の含有度合いとを容易に選択することができる。
【0023】
この発明の第2の局面による血液凝固時間測定装置は、血液検体に凝固時間測定用試薬を混和して、凝固時間測定用試料を調製する試料調製部と、調製された凝固時間測定用試料に光を照射する光照射部と、光が照射された凝固時間測定用試料から複数の波長の光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部と、第1受光部により取得された光学的情報に基づいて、凝固時間測定用試料の凝固時間を測定する測定部とを備え、測定部は、第1受光部により取得された光学的情報のうち、凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報に基づいて、凝固時間測定用試料に含まれるとともに、凝固時間測定用試料の光学測定に干渉する干渉物質を特定するように構成されている。
【0024】
この第2の局面による血液凝固時間測定装置では、上記のように、光が照射された凝固時間測定用試料から複数の波長の光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部を設けることによって、その第1受光部により、凝固時間測定用試料に含まれる干渉物質の特定に用いる光学的情報(凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報)と、凝固時間の測定(本測定)に用いる光学的情報(経時的な複数の光学的情報)との両方を取得することができる。これにより、測定部は、経時的な複数の光学的情報を用いて凝固時間を測定するだけでなく、凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報を用いて凝固時間測定用試料に含まれる干渉物質を特定することができる。その結果、測定部は、本測定とは別に干渉物質のためだけの測定を行うことなく、凝固時間測定用試料に含まれる干渉物質を特定することができる。また、この際、第1受光部では、血液検体に凝固時間測定用試薬が混和された1つの凝固時間測定用試料から、凝固時間の測定(本測定)に用いる光学的情報(経時的な複数の光学的情報)と、干渉物質の特定に用いる光学的情報(凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報)との両方を取得することができる。その結果、本測定に用いる試料と干渉物質の特定に用いる試料とを別個に準備する必要がないので、血液検体の消費を抑制することができる。
【0025】
また、この第2の局面では、血液検体に凝固時間測定用試薬が混和された凝固時間測定用試料からの光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部を設けることによって、凝固時間測定用試薬によって希釈された血液検体から光学的情報を取得することができる。これにより、第1受光部では、血液検体の濃度が高いために光学的情報を検出するのが困難な場合でも、希釈された血液検体(凝固時間測定用試料)からの光学的情報を取得することができるので、光学的情報を取得することが可能な測定範囲を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による血液凝固時間測定装置の全体構成を示した斜視図であり、図2は、図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の検出機構部および搬送機構部を示した平面図である。また、図3〜図14は、図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の構成を説明するための図である。まず、図1〜図14を参照して、本発明の第1実施形態による血液凝固時間測定装置1の全体構成について説明する。
【0028】
本発明の第1実施形態による血液凝固時間測定装置1は、血液の凝固・線溶機能に関連する特定の物質の量や活性の度合いを光学的に測定して分析するための装置であり、血液検体としては血漿を用いる。本実施形態による血液凝固時間測定装置1では、凝固時間法、合成基質法および免疫比濁法を用いて血液検体の光学的な測定を行うことによって、血液検体の凝固時間を測定している。そして、測定項目としては、PT(プロトロンビン時間)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)やFbg(フィブリノーゲン量)などがある。また、合成基質法の測定項目としてはATIII等、免疫比濁法の測定項目としてはDダイマー、FDP等がある。
【0029】
そして、血液凝固時間測定装置1は、図1に示すように、検出機構部2と、検出機構部2の前面側に配置された搬送機構部3と、検出機構部2に電気的に接続された制御装置4とにより構成されている。
【0030】
搬送機構部3は、検出機構部2に血液検体を供給するために、血液検体を収容した複数(本実施形態では、10本)の試験管150が載置されたラック151を検出機構部2の吸引位置2a(図2参照)に搬送する機能を有している。また、搬送機構部3は、未処理の血液検体を収容した試験管150が収納されたラック151をセットするためのラックセット領域3aと、処理済みの血液検体を収容した試験管150が収納されたラック151を収容するためのラック収容領域3bとを有している。
【0031】
検出機構部2は、搬送機構部3から供給された血液検体に対して光学的な測定を行うことにより、供給された血液検体に関する光学的な情報を取得することが可能なように構成されている。本実施形態では、搬送機構部3のラック151に載置された試験管150から検出機構部2のキュベット152(図2参照)内に分注された血液検体に対して光学的な測定が行われる。また、検出機構部2は、図1および図2に示すように、キュベット供給部10と、回転搬送部20と、検体分注アーム30と、第1光学的情報取得部40と、ランプユニット50と、2つの試薬分注アーム60と、キュベット移送部70と、第2光学的情報取得部80と、緊急検体セット部90と、キュベット廃棄部100と、流体部110とを備えている。
【0032】
キュベット供給部10は、ユーザによって無造作に投入された複数のキュベット152(図3および図4参照)を回転搬送部20に順次供給することが可能なように構成されている。このキュベット供給部10は、図2に示すように、ブラケット11(図1参照)を介して装置本体に取り付けられたホッパ12と、ホッパ12の下方に設けられた2つの誘導板13と、2つの誘導板13の下端に配置された支持台14と、支持台14から所定の間隔を隔てて設けられた供給用キャッチャ部15とを含んでいる。2つの誘導板13は、キュベット152のつば部152a(図4参照)の直径よりも小さく、かつ、キュベット152の胴部152b(図4参照)の直径よりも大きくなるような間隔を隔てて互いに平行に配置されている。ホッパ12内に供給されたキュベット152は、つば部152aが2つの誘導板13の上面に係合した状態で、支持台14に向かって滑り落ちながら移動するように構成されている。また、支持台14は、誘導板13を滑り落ちて移動したキュベット152を、供給用キャッチャ部15が把持可能な位置まで回転移送する機能を有している。そして、供給用キャッチャ部15は、支持台14により回転移送されたキュベット152を回転搬送部20に供給するために設けられている。
【0033】
回転搬送部20は、キュベット供給部10から供給されたキュベット152と、血液検体を凝固させる凝固時間測定用試薬を収容した試薬容器(図示せず)とを回転方向に搬送するために設けられている。この回転搬送部20は、図2に示すように、円形状の試薬テーブル21と、円形状の試薬テーブル21の外側に配置された円環形状の試薬テーブル22と、円環形状の試薬テーブル22の外側に配置された円環形状の二次分注テーブル23と、円環形状の二次分注テーブル23の外側に配置された円環形状の一次分注テーブル24とにより構成されている。これらの一次分注テーブル24、二次分注テーブル23、試薬テーブル21および試薬テーブル22は、それぞれ、時計回り方向および反時計回り方向の両方に回転可能で、かつ、各々のテーブルが互いに独立して回転可能なように構成されている。
【0034】
試薬テーブル21および22は、図2に示すように、それぞれ、円周方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた複数の孔部21aおよび22aを含んでいる。試薬テーブル21および22の孔部21aおよび22aは、血液を凝固させる凝固時間測定用試薬を収容した複数の試薬容器(図示せず)を載置するために設けられている。また、一次分注テーブル24および二次分注テーブル23は、それぞれ、円周方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた円筒形状の複数の保持部24aおよび23aを含んでいる。保持部24aおよび23aは、キュベット供給部10から供給されたキュベット152を保持するために設けられている。一次分注テーブル24の保持部24aに保持されたキュベット152には、一次分注処理の際に、搬送機構部3の試験管150に収容される血液検体が分注される。また、二次分注テーブル23の保持部23aに保持されたキュベット152には、二次分注処理の際に、一次分注テーブル24に保持されたキュベット152に収容される血液検体が分注される。また、保持部24aには、図4に示すように、保持部24aの側方の互いに対向する位置に一対の小孔24bが形成されている。この一対の小孔24bは、後述するランプユニット50の分岐光ファイバ58から出射された光を通過させるために設けられている。
【0035】
検体分注アーム30は、搬送機構部3により吸引位置2aに搬送された試験管150に収容される血液検体を吸引するとともに、吸引した血液検体を回転搬送部20に移送されたキュベット152内に分注する機能を有している。
【0036】
第1光学的情報取得部40は、凝固時間測定用試薬や希釈液を添加する前の血液検体中の干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の有無およびその濃度を測定するために、血液検体(希釈液や凝固時間測定用試薬などが添加されていない原検体)から光学的な情報を取得するように構成されている。具体的には、後述するランプユニット50から照射される5種類の光(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の内の4種類の光(405nm、575nm、660nmおよび800nm)を用いて、干渉物質の有無およびその濃度を測定している。
【0037】
この第1光学的情報取得部40による血液検体の光学的な情報の取得は、第2光学的情報取得部80による凝固時間測定用試料の光学的な測定(本測定)の前に行われる。第1光学的情報取得部40は、図2および図3に示すように、一次分注テーブル24の保持部24aに保持されたキュベット152内の血液検体から光学的な情報を取得する。第1光学的情報取得部40は、図3および図4に示すように、発光側ホルダ41と、光電変換素子42(図4参照)と、受光側ホルダ43と、ブラケット44と、光電変換素子42が実装される基板45とを含んでいる。
【0038】
また、受光側ホルダ43は、図4に示すように、ブラケット44(図3参照)を介して発光側ホルダ41に取り付けられており、内部に光電変換素子42が実装される基板45を収容可能な形状に形成されている。この受光側ホルダ43には、所定の位置にスリット43bが設けられた蓋部材43aが取り付けられている。一次分注テーブル24の保持部24aに保持されたキュベット152を透過した後述する分岐光ファイバ58からの光は、保持部24aの一対の小孔24bおよび受光側ホルダ43のスリット43bを介して光電変換素子42により検出される。
【0039】
基板45は、光電変換素子42で検出した透過光量に対応する電気信号を増幅して、制御装置4の制御部4aに送信する機能を有している。基板45は、図5に示すように、プリアンプ45aと、増幅部45bと、A/D変換器45cと、コントローラ45dとにより構成されている。また、増幅部45bは、アンプ45eと、電子ボリューム45fとを有している。プリアンプ45aおよびアンプ45eは、光電変換素子42で検出した電気信号を増幅するために設けられている。増幅部45bのアンプ45eは、コントローラ45dからの制御信号を電子ボリューム45fに入力することによりアンプ45eのゲイン(増幅率)を調整することが可能なように構成されている。A/D変換器45cは、アンプ45eにより増幅された電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するために設けられている。
【0040】
コントローラ45dは、後述するランプユニット50の分岐光ファイバ58から出射される光の波長(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の周期的な変化に合わせて、アンプ45eのゲイン(増幅率)を変化させるように構成されている。また、コントローラ45dは、図5に示すように、制御装置4の制御部4aに電気的に接続されており、第1光学的情報取得部40において取得された透過光量に対応するデジタル信号のデータを制御装置4の制御部4aに送信する。
【0041】
ランプユニット50は、図2に示すように、第1光学的情報取得部40および第2光学的情報取得部80で行われる光学的な測定に用いられる光を供給するために設けられている。すなわち、1つのランプユニット50が、第1光学的情報取得部40および第2光学的情報取得部80に対して共通に用いられるように構成されている。このランプユニット50は、図6および図7に示すように、光源としてのハロゲンランプ51と、集光レンズ52a〜52cと、円盤形状のフィルタ部53と、モータ54と、光透過型のセンサ55と、光ファイバカプラ56と、11本の分岐光ファイバ57(図7参照)と、1本の分岐光ファイバ58(図7参照)とから構成されている。
【0042】
ハロゲンランプ51は、図6に示すように、ハロゲンランプ51が発熱することによって熱せられた空気を冷却するための複数のフィンを有するランプケース51aに収容されている。集光レンズ52a〜52cは、ハロゲンランプ51から照射された光を集光する機能を有している。そして、集光レンズ52a〜52cは、ハロゲンランプ51から照射された光を光ファイバカプラ56に導く光路上に配置されている。また、ハロゲンランプ51から照射されて集光レンズ52a〜52cにより集光された光は、後述するフィルタ部53の光学フィルタ53b〜53fのいずれか1つを透過して光ファイバカプラ56に導かれる。
【0043】
また、ランプユニット50のフィルタ部53は、図8に示すように、モータ54のモータ軸(図示せず)を中心に回転可能に取り付けられている。このフィルタ部53は、5つの光透過特性(透過波長)のそれぞれ異なる光学フィルタ53b〜53fが設けられるフィルタ板53aを備えている。フィルタ板53aには、光学フィルタ53b〜53fを取り付けるための5つの孔53gと、光が透過しないように閉塞される孔53hとが設けられている。そして、5つの孔53gには、それぞれ、光透過特性(透過波長)の異なる5つの光学フィルタ53b、53c、53d、53eおよび53fが設置されている。この孔53gおよび53hは、フィルタ部53の回転方向に沿って所定の角度間隔(本実施形態では、60°の等間隔)で設けられている。なお、孔53hは、予備の孔であり、フィルタの追加が必要となった場合には、フィルタが装着される。
【0044】
光学フィルタ53b、53c、53d、53eおよび53fは、それぞれ、340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nmの波長の光を透過し、その他の波長の光は透過しない。したがって、光学フィルタ53b、53c、53d、53eおよび53fを透過した光は、それぞれ、340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nmの波長特性を有する。
【0045】
また、フィルタ板53aは、円周方向に沿って所定の角度間隔(本実施形態では、60°の等間隔)で6つのスリットが設けられている。それら6つのスリットのうち1つは、他の5つの通常スリット53iよりもフィルタ板53aの回転方向のスリット幅が大きい原点スリット53jである。原点スリット53jおよび通常スリット53iは、隣接する孔53gおよび53hの間の中間角度位置に所定の角度間隔(本実施形態では、60°の等間隔)で形成されている。
【0046】
また、ランプユニット50から一次分注テーブル24のキュベット152および後述するキュベット載置部81のキュベット152に光が照射される場合には、フィルタ部53が連続的に回転するように構成されている。したがって、フィルタ板53aの回転に伴って、集光レンズ52a〜52c(図4参照)により集光された光の光路上に光透過特性の異なる5つの光学フィルタ53b〜53fと、1つの遮光された孔53h(図5参照)とが断続的に順次配置される。このため、波長特性の異なる5種類の光が断続的に順次照射される。なお、本実施形態では、フィルタ部53は、0.1秒間に1回転するように構成されている。したがって、一次分注テーブル24のキュベット152および後述するキュベット載置部81のキュベット152には、0.1秒間に5種類の波長特性の異なる光が順次照射される。そして、第1光学的情報取得部40では、光電変換素子42により、0.1秒間毎に5種類の波長に対応する5個の電気信号が取得されるとともに、第2光学的情報取得部80では、光電変換素子82b(参照光用光電変換素子82e)により、0.1秒間毎に5種類の波長に対応する5個の電気信号が取得される。
【0047】
また、光透過型のセンサ55は、図8に示すように、フィルタ部53の回転に伴う原点スリット53jおよび通常スリット53iの通過を検出するために設けられている。このセンサ55は、原点スリット53jおよび通常スリット53iが通過すると、スリットを介して光源からの光を受光部が検出し、検出信号を出力する。なお、原点スリット53jは、通常スリット53iよりもスリット幅が大きいので、原点スリット53jが通過した場合には、センサ55から出力される検出信号は、通常スリット53iが通過した場合の検出信号よりも、出力期間が長い。したがって、センサ55からの検出信号に基づいて、フィルタ部53が正常に回転しているか否かが監視することが可能となる。
【0048】
また、光ファイバカプラ56は、11本の分岐光ファイバ57および1本の分岐光ファイバ58のそれぞれに光学フィルタ53b〜53fを通過した光を入射させる機能を有している。つまり、光ファイバカプラ56は、11本の分岐光ファイバ57および1本の分岐光ファイバ58に対して、同時に同質の光を導いている。また、11本の分岐光ファイバ57の先端は、図2に示すように、第2光学的情報取得部80に接続されており、ランプユニット50からの光を第2光学的情報取得部80にセットされるキュベット152内の凝固時間測定用試料に導いている。具体的には、図9に示すように、11本の分岐光ファイバ57は、それぞれ、第2光学的情報取得部80の後述する10個の挿入孔81aおよび1つの参照光用測定孔81bに光を供給するように配置されている。また、1本の分岐光ファイバ58の先端は、図2および図3に示すように、11本の分岐光ファイバ57とは異なり、第1光学的情報取得部40に接続されており、ランプユニット50からの光を一次分注テーブル24の保持部24aに保持されるキュベット152内の血液検体に導いている。したがって、光学フィルタ53b〜53fを断続的に通過する波長特性の異なる5種類の光は、分岐光ファイバ57および58を介して、第1光学的情報取得部40および第2光学的情報取得部80の各々に供給されている。
【0049】
試薬分注アーム60は、図1および図2に示すように、回転搬送部20に載置された試薬容器(図示せず)内の凝固時間測定用試薬を回転搬送部20に保持されたキュベット152に分注することにより、キュベット152内の血液検体に凝固時間測定用試薬を混合するために設けられている。これにより、第1光学的情報取得部40による光学的な測定が終了した血液検体に凝固時間測定用試薬を添加して、凝固時間測定用試料が調製される。また、キュベット移送部70は、キュベット152を回転搬送部20と第2光学的情報取得部80との間を移送させるために設けられている。
【0050】
ここで、第1実施形態では、第2光学的情報取得部80は、血液検体に凝固時間測定用試薬を混和して調製された凝固時間測定用試料の加温を行うとともに、ランプユニット50によって複数の波長の光が照射された凝固時間測定用試料から光を経時的に受け、各々の波長について、経時的な光学的な情報を取得するために設けられている。具体的には、第2光学的情報取得部80は、ランプユニット50から照射される5種類の光(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の内の3種類の光(405nm、660nmおよび800nm)を用いて、経過時間毎に透過光量を取得している。なお、分岐光ファイバ57から照射される660nmの波長を有する光は、Fbg(フィブリノーゲン量)、PT(プロトロンビン時間)およびAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)を測定する際に用いられるメイン波長である。また、800nmの波長を有する光は、Fbg、PTおよびAPTTを測定する際に用いられるサブ波長である。合成基質法の測定項目であるATIIIの測定波長は405nmであり、免疫比濁法の測定項目であるDダイマーおよびFDPの測定波長は800nmである。また、血小板凝集の測定波長は、575nmである。このように、本実施形態に係る検体分析装置1は、1つの光源としてのハロゲンランプ51から照射された光をフィルタ部53の光学フィルタ53b〜53fに通して複数の波長の光を得、これらの光を用いて様々な測定項目の測定を行うようになっている。
【0051】
つまり、第1実施形態の第2光学的情報取得部80では、低波長の光の方が高波長の光よりも凝固反応を顕著に捉えることができることを利用して、メイン波長がサブ波長よりも小さくなるように設定されている。具体的には、測定項目がFbg(フィブリノーゲン量)、PT(プロトロンビン時間)およびAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)の場合には、660nmのメイン波長が800nmのサブ波長よりも小さくなるように設定されている。
【0052】
この第2光学的情報取得部80は、図2に示すように、キュベット載置部81と、キュベット載置部81の下方に配置された検出部82とにより構成されている。キュベット載置部81には、図9に示すように、キュベット152(図2参照)を挿入するための10個の挿入孔81aと、キュベット152を挿入せずに参照光を測定するための1つの参照光用測定孔81bとが設けられている。また、キュベット載置部81には、挿入孔81aに挿入されたキュベット152を所定の温度に加温するための加温機構(図示せず)が内蔵されている。
【0053】
また、参照光用測定孔81bは、分岐光ファイバ57から照射された光の特性を監視するために設けられている。具体的には、分岐光ファイバ57から照射された光を直接検出部82の参照光用光電変換素子82eに受光させることにより、ランプユニット50のハロゲンランプ51(図6参照)に由来する揺らぎなどの特性を電気信号として検出している。そして、検出した光の特性(電気信号)を挿入孔81aに挿入されたキュベット152内の凝固時間測定用試料の透過光に対応する信号から減算処理することにより、凝固時間測定用試料の透過光に対応する信号を補正する。これにより、光学的な情報の測定毎に光の特性による微差が生じるのを抑制することが可能である。
【0054】
また、第2光学的情報取得部80の検出部82は、挿入孔81aに挿入されたキュベット152内の凝固時間測定用試料に対して複数の条件下で光学的な測定(本測定)を行うことが可能なように構成されている。この検出部82には、図7および図8に示すように、キュベット152が挿入される各挿入孔81aに対応して、コリメータレンズ82a、光電変換素子82bおよびプリアンプ82cが設けられるとともに、参照光用測定孔81b(図1参照)に対応して、参照光用コリメータレンズ82d、参照光用光電変換素子82eおよび参照光用プリアンプ82fが設けられている。
【0055】
コリメータレンズ82aは、図9および図10に示すように、ランプユニット50(図6参照)からの光を誘導する分岐光ファイバ57の端部と、対応する挿入孔81aとの間に設置されている。このコリメータレンズ82aは、分岐光ファイバ57から出射された光を平行光にするために設けられている。また、光電変換素子82bは、挿入孔81aを挟んで分岐光ファイバ57の端部に対向するように設置された基板83の挿入孔81a側の面に取り付けられている。そして、光電変換素子82bは、挿入孔81aに挿入されたキュベット152内の凝固時間測定用試料に光を照射したときに凝固時間測定用試料を透過する光(以下、透過光という)を検出するとともに、検出した透過光に対応する電気信号(アナログ信号)を出力する機能を有している。この光電変換素子82bは、ランプユニット50の分岐光ファイバ57から照射される5種類の光を受光するように配置されている。
【0056】
プリアンプ82cは、基板83の挿入孔81aと反対側の面に取り付けられており、光電変換素子82bからの電気信号(アナログ信号)を増幅するために設けられている。
【0057】
そして、基板83には、図11に示すように、上記した光電変換素子82b(参照光用光電変換素子82e)、プリアンプ82c(参照光用プリアンプ82f)の他に、増幅部82gと、A/D変換器82hと、ロガー82iと、コントローラ82jとが設けられている。そして、増幅部82gは、所定のゲイン(増幅率)を有するアンプ(L)82kと、アンプ(L)82kよりも高いゲイン(増幅率)を有するアンプ(H)82lと、切替スイッチ82mとを有している。本実施形態では、プリアンプ82cからの電気信号は、アンプ(L)82kおよびアンプ(H)82lの両方に入力される。アンプ(L)82kおよびアンプ(H)82lは、プリアンプ82cからの電気信号をさらに増幅するために設けられている。また、切替スイッチ82mは、アンプ(L)82kからの電気信号をA/D変換器82hに出力するか、アンプ(H)82lからの電気信号をA/D変換器82hに出力するかを選択するために設けられている。この切替スイッチ82mは、コントローラ82jからの制御信号が入力されることにより切替動作を行うように構成されている。
【0058】
A/D変換器82hは、増幅部82gからの電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するために設けられている。ロガー82iは、A/D変換器82hからのデジタル信号のデータを一時的に保存するための機能を有している。このロガー82iは、制御装置4の制御部4aに電気的に接続されており、第2光学的情報取得部80において取得されたデジタル信号のデータを制御装置4の制御部4aに送信する。
【0059】
緊急検体セット部90は、図1および図2に示すように、緊急を要する血液検体に対しての検体分析処理を行うために設けられている。この緊急検体セット部90は、搬送機構部3から供給された血液検体に対しての検体分析処理が行われている際に、緊急検体を割り込ませることが可能なように構成されている。キュベット廃棄部100は、回転搬送部20のキュベット152を廃棄するために設けられている。キュベット廃棄部100は、図2に示すように、廃棄用キャッチャ部101と、廃棄用キャッチャ部101から所定の間隔を隔てて設けられた廃棄用孔102(図1参照)と、廃棄用孔102の下方に設置された廃棄ボックス103とにより構成されている。廃棄用キャッチャ部101は、回転搬送部20のキュベット152を、廃棄用孔102(図1参照)を介して廃棄ボックス103に移動させるために設けられている。流体部110は、血液凝固時間測定装置1のシャットダウン処理の際に、各分注アームに設けられるノズルに洗浄液などの液体を供給するために設けられている。
【0060】
制御装置4(図1参照)は、パーソナルコンピュータ(PC)などからなり、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部4aと、表示部4bと、キーボード4cとを含んでいる。また、表示部4bは、血液検体中に存在する干渉物質(ヘモグロビン、乳び(脂質)およびビリルビン)に関する情報や、第2光学的情報取得部80から送信されたデジタル信号のデータを分析して得られた分析結果(凝固時間)などを表示するために設けられている。
【0061】
次に、制御装置4の構成について説明する。制御装置4は、図12に示すように、制御部4aと、表示部4bと、キーボード4cとから主として構成されたコンピュータ401によって構成されている。制御部4aは、CPU401aと、ROM401bと、RAM401cと、ハードディスク401dと、読出装置401eと、入出力インタフェース401fと、通信インタフェース401gと、画像出力インタフェース401hとから主として構成されている。CPU401a、ROM401b、RAM401c、ハードディスク401d、読出装置401e、入出力インタフェース401f、通信インタフェース401g、および画像出力インタフェース401hは、バス401iによって接続されている。
【0062】
CPU401aは、ROM401bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM401cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム404aをCPU401aが実行することにより、コンピュータ401が制御装置4として機能する。
【0063】
ROM401bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU401aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータなどが記録されている。
【0064】
RAM401cは、SRAMまたはDRAMなどによって構成されている。RAM401cは、ROM401bおよびハードディスク401dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU401aの作業領域として利用される。
【0065】
ハードディスク401dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU401aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。本実施形態に係る血液凝固時間測定用のアプリケーションプログラム404aも、このハードディスク401dにインストールされている。
【0066】
読出装置401eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体404に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体404には、血液凝固時間測定用のアプリケーションプログラム404aが格納されており、コンピュータ401がその可搬型記録媒体404からアプリケーションプログラム404aを読み出し、そのアプリケーションプログラム404aをハードディスク401dにインストールすることが可能である。
【0067】
なお、上記アプリケーションプログラム404aは、可搬型記録媒体404によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ401と通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。たとえば、上記アプリケーションプログラム404aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ401がアクセスして、そのアプリケーションプログラム404aをダウンロードし、これをハードディスク401dにインストールすることも可能である。
【0068】
また、ハードディスク401dには、たとえば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラム404aは上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0069】
出力インタフェース401fは、たとえば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インタフェース401fには、キーボード4cが接続されており、ユーザがそのキーボード4cを使用することにより、コンピュータ401にデータを入力することが可能である。
【0070】
通信インタフェース401gは、たとえば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。コンピュータ401は、その通信インタフェース401gにより、所定の通信プロトコルを使用して検出機構部2との間でデータの送受信が可能である。
【0071】
画像出力インタフェース401hは、LCDまたはCRTなどで構成された表示部4bに接続されており、CPU401aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部4bに出力するようになっている。表示部4bは、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0072】
また、制御部4aのハードディスク401dにインストールされた血液凝固時間測定用のアプリケーションプログラム404aは、検出機構部2の第2光学的情報取得部80から送信された凝固時間測定用試料の透過光量(デジタル信号のデータ)を用いて、凝固時間測定用試料の凝固時間を測定している。この凝固時間は、キュベット152内の血液検体を凝固させる凝固時間測定用試薬が添加された時点から、凝固時間測定用試料(凝固時間測定用試薬が添加された血液検体)が流動性を失うまでの時間(凝固時間)である。この凝固時間測定用試料が流動性を失う凝固反応は、血液検体中のフィブリノーゲンが、添加された凝固時間測定用試薬によりフィブリンに変化する反応である。そして、第1実施形態の血液凝固時間測定装置1では、血液検体中のフィブリノーゲン量に依存して反応するこの凝固反応を、図13および図14に示した凝固時間測定用試料の透過光量の変化量(反応前の透過光量と反応後の透過光量との差)によって確認している。
【0073】
ここで、第1実施形態では、血液凝固時間測定用のアプリケーションプログラム404aは、第2光学的情報取得部80から送信された凝固時間測定用試料の経時的な透過光量のデータ(デジタル信号のデータ)のうち、凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の期間(図13の斜線(ハッチング)の領域)に検出された透過光量を用いて、血液検体中の干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の有無およびその濃度を測定する機能を有している。具体的には、アプリケーションプログラム404aは、受信した経時的な透過光量(デジタル信号のデータ)のうちから、凝固時間測定用試薬の添加後の3.0sec〜4.0secの間に測定された透過光量のデータ(デジタル信号のデータ)を選択して、選択した複数の透過光量の平均値を算出している。したがって、本実施形態では、ランプユニット50のフィルタ部53(図8参照)が0.1秒間に1回転するように構成されていることから、アプリケーションプログラム404aは、3.0sec〜4.0secの間に取得された10個の透過光量の平均値を算出する。
【0074】
さらに、第1実施形態では、血液凝固時間測定用のアプリケーションプログラム404aは、第1光学的情報取得部40から送信された血液検体の経時的な透過光量のデータ(デジタル信号のデータ)を用いて、血液検体中の干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の有無およびその濃度を測定する機能も有している。
【0075】
ここで、図13および図14を参照して、血液検体に凝固時間測定用試薬を添加した凝固時間測定用試料の凝固反応(凝固時間)について詳細に説明する。
【0076】
血液凝固時間測定装置1で干渉物質(乳び)が混入した血液検体を測定した場合、図13に示すように、低波長側のメイン波長(660nm)で測定した測定結果は、干渉物質(乳び)の影響を受けて小さくなり、約190〜約220の透過光量となる。また、メイン波長を用いた場合には、血液の凝固反応を示す透過光量の変化量ΔH1(反応前の透過光量と反応後の透過光量との差)も干渉物質(乳び)の影響を受けて小さくなる傾向がある。これに対して、高波長側のサブ波長(800nm)で測定した測定結果は、後述するように干渉物質(乳び)の影響を受けにくく、メイン波長で測定した透過光量(約190〜約220)より大きくなり、約350〜約390の透過光量となる。また、サブ波長を用いた場合には、血液の凝固反応を示す透過光量の変化量ΔH2(>ΔH1)も干渉物質の影響を受けにくく、小さくなりにくい。したがって、干渉物質(乳び)が混入した血液検体を測定する場合には、高波長側のサブ波長で測定した方が、低波長側のメイン波長で測定するよりも凝固反応を大きく捉えることが可能である。
【0077】
一方、干渉物質が混入していない正常血液検体を測定した場合、図14に示すように、低波長側のメイン波長(660nm)で測定した透過光量の変化量ΔH3(=約980(=反応前の透過光量(約2440)−反応後の透過光量(約1460)))の方が、高波長側のサブ波長で測定した透過光量の変化量ΔH4(=約720(=反応前の透過光量(約2630)−反応後の透過光量(約1910)))より大きくなる。したがって、正常血液検体を測定する場合には、低波長側のメイン波長で測定した方が、高波長側のサブ波長で測定するよりも凝固反応を大きく捉えることが可能である。
【0078】
図15〜図20は、干渉物質の吸光度スペクトルを示したグラフである。次に、図15〜図20を参照して、第1光学的情報取得部40に導かれる分岐光ファイバ58および第2光学的情報取得部80に導かれる分岐光ファイバ57から照射される4種類の波長(405nm、575nm、660nmおよび800nm)の光について詳細に説明する。
【0079】
660nmの波長を有する光および800nmの波長を有する光は、図15〜図17に示すように、ヘモグロビンおよびビリルビンが実質的に吸収せず、かつ、乳びが吸収する光である。また、575nmの波長を有する光は、ビリルビンが実質的に吸収せず、かつ、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する光である。また、405nmの波長を有する光は、ヘモグロビン、ビリルビンおよび乳びのいずれもが吸収する光である。そして、図17に示すように、乳びは、低波長域の405nmから高波長域の800nmまでの波長の光を吸収していることが分かる。したがって、ヘモグロビンに乳びを添加した場合には、図18に示すように、図15に示したヘモグロビンの吸光度スペクトルに比べて、乳びの吸光度(吸収する光)の分だけ、ヘモグロビンの吸光度スペクトルのベースラインが上昇していることが分かる。また、ビリルビンに乳びを添加した場合にも、図19に示すように、図16に示したビリルビンの吸光度スペクトルに比べて、乳びの吸光度の分だけ、ビリルビンの吸光度スペクトルのベースラインが上昇していることが分かる。また、図17に示すように、660nmの波長を有する光の方が、800nmの波長を有する光に比べて、乳びによる吸収が多いため、800nmの波長を有する光で測定した光学的な情報の方が、660nmの波長を有する光で測定した光学的な情報より、乳びの影響が小さいことが分かる。
【0080】
このように、各干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)毎に吸収の大きい波長は異なっているため、後述する定性判定の結果や、血液検体中に含まれる干渉物質の種類に応じて、分析に用いる波長の選択や本測定の中止などを判定することができる。また、干渉物質毎の定性判定を行わなくても、測定波長毎に干渉物質の影響があるか否かを定性的に判定してもよい。この場合には、干渉物質の影響が実質的にないと判定された波長を分析に使用し、干渉物質の影響があると判定された波長を分析に用いないようにすればよい。
【0081】
本実施形態による血液凝固時間測定装置1で測定しようとする血液検体(血漿)には、干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)が含まれている場合があり、405nmの波長を有する光を用いて測定した血液検体の吸光度は、乳びの吸光度、ヘモグロビンの吸光度およびビリルビンの吸光度が寄与している。また、575nmの波長を有する光を用いて測定した血液検体の吸光度は、乳びの吸光度およびヘモグロビンの吸光度が寄与して、ビリルビンの吸光度は寄与していない。また、660nmおよび800nmの波長を有する光を用いて測定した血液検体の吸光度は、乳びの吸光度のみが寄与して、ヘモグロビンの吸光度およびビリルビンの吸光度は寄与していない。したがって、660nmおよび/または800nmの波長を有する光を用いて測定した血液検体の吸光度を分析することにより、血液検体中の乳びの含有量が測定に悪影響を与える量であるか否かを判定することが可能となる。また、575nmの波長を有する光を用いて測定した血液検体の吸光度から、乳びの影響(吸光度)を除去することにより、血液検体中のヘモグロビンの含有量が測定に悪影響を与える量であるか否かを判定することが可能となる。そして、405nmの波長を有する光を用いて測定した血液検体の吸光度から、乳びの影響(吸光度)およびヘモグロビンの影響(吸光度)を除去することにより、血液検体中のビリルビンの含有量が測定に悪影響を与える量であるか否かを判定することが可能となる。
【0082】
また、図17に示した乳びの吸光度スペクトルを両対数グラフにプロットした場合には、図20に示すように、乳びの吸光度スペクトルは、実質的に一次式(直線)になることが知られている。すなわち、その一次式(直線)は、定数aおよびbを用いて、以下の式(1)のように表すことができる。
log10Y = alog10X+b ・・・(1)(Y:吸光度、X:波長)
【0083】
図21は、図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の検体分析動作の手順を示したフローチャートである。図22は、図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の制御装置の表示部に出力された検体分析一覧表を示した図である。次に、図1〜図5、図8〜図13、図21および図22を参照して、血液凝固時間測定装置1の血液検体の測定動作について詳細に説明する。
【0084】
まず、使用者が、図1および図2に示した血液凝固時間測定装置1の検出機構部2および制御装置4の電源をそれぞれオン状態にすることにより、血液凝固時間測定装置1が起動され、これにより、血液凝固時間測定装置1の初期設定が行われる。上記した初期設定においては、キュベット152を移動させるための機構と各分注アームとを初期位置に戻すための動作が行われることで、検出機構部2が初期化されるとともに制御装置4の制御部4aのレジスタの初期化が行われる。そして、使用者による検体分析情報の入力が行われる。すなわち、使用者は、制御装置4のキーボード4cを用いて、制御装置4の表示部4bに出力される検体分析一覧表(図22参照)中の検体番号および測定項目の欄に情報の入力を行う。制御部4aは、これらの検体分析情報の入力を受け付け、これらの検体分析情報は制御部4aに保存される。
【0085】
なお、使用者がキーボード4cを用いて検体分析情報を入力するのではなく、検体を収容した試験管150に予めバーコードラベルなどを貼付しておき、これをバーコードリーダなどで読み取ることによって制御部4aが検体分析情報を取得できるように構成されていてもよい。この場合、バーコードラベルのデータが読み取られると、制御部4aは、検体分析情報などを管理するホストコンピュータにアクセスし、バーコードから読み取られたデータに対応する検体分析情報を取得することができる。これにより、使用者が検体分析情報を入力することなく制御部4aが検体分析情報を取得することができる。
【0086】
ここで、図22に示した検体分析一覧表について説明する。検体番号の欄には、個々の検体を識別するための番号(「000101」など)が入力される。また、検体番号に関連付けられた測定項目の欄には、検体に対して行われる凝固時間の測定の項目を示した記号(「PT」や「APTT」など)が入力される。また、検体分析一覧表には、二次分注フラグの項目と、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの3つの小項目を含む干渉物質フラグの項目と、波長変更フラグの項目と、Highゲインフラグの項目とが設けられている。これらの各項目は、ステップS1の初期設定においてオフ(表中では「0」で表示)に設定されているが、第1光学的情報取得部40からの光学的情報の分析結果に応じて、オン(表中では「1」で表示)に変更される。なお、図22は、いずれの項目もオフである状態を示している。二次分注フラグがオンの状態は、その測定項目について、検体が二次分注の対象であることを示す。干渉物質フラグのビリルビン、ヘモグロビンまたは乳びのフラグがオンの状態は、その測定項目について、検体がビリルビン、ヘモグロビンまたは乳びの影響を受けている可能性が高いことを示す。波長変更フラグがオンの状態は、その測定項目について、メイン波長(たとえば、660nm)の光とは異なるサブ波長(たとえば、800nm)の光を用いて取得された光学的情報を解析の対象とすることを示す。Highゲインフラグがオンの状態は、通常のアンプ45eのゲイン(増幅率)よりも高いゲイン(増幅率)で取得した光学的情報を解析の対象とすることを示す。
【0087】
検体番号および測定項目の入力がされた後には、測定用試料の調製に必要な試薬を収容した試薬容器(図示せず)と、検体を収容した試験管150とが各々所定の位置にセットされた状態で、使用者による分析処理開始の入力が行われる。そして、使用者による分析処理開始の入力が行われることにより、測定開始を指示するデータが検出機構部2へ送信され、図2に示した搬送機構部3によって、検体を収容した試験管150が載置されたラック151の搬送が行われる。これにより、ラックセット領域3aのラック151が検出機構部2の吸引分注位置2aに対応する位置まで搬送される。そして、ステップS1において、検体分注アーム30(図2参照)により試験管150から所定量の血液検体の吸引が行われる。そして、検体分注アーム30を回転搬送部20の一次分注テーブル24に保持されたキュベット152の上方に移動させる。その後、検体分注アーム30から一次分注テーブル24のキュベット152内に血液検体が吐出されることにより、キュベット152内に血液検体が分取される。
【0088】
そして、一次分注テーブル24を回転させて、血液検体が分注されたキュベット152を第1光学的情報取得部40による測定が可能な位置に搬送する。これにより、ステップS2において、第1光学的情報取得部40によりキュベット152内の血液検体(凝固時間測定用試薬などが添加される前の原検体)に対して複数の条件下で光学的な測定が行われることによって、血液検体から複数(5種類)の透過光量が取得される。具体的には、一次分注テーブル24の保持部24a(図4参照)に保持されたキュベット152へ、ランプユニット50の分岐光ファイバ58から5種類(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の異なる波長の光が照射される。分岐光ファイバ58から照射され、キュベット152およびキュベット152内の血液検体を透過した透過光は、順次、光電変換素子42に検出される。そして、光電変換素子42により検出された透過光量の電気信号をプリアンプ45a(図5参照)およびアンプ45eで増幅するとともに、A/D変換器45cでデジタル信号に変換する。その後、コントローラ45dにより、透過光量に対応するデジタル信号のデータが制御装置4の制御部4aに送信される。これにより、第1光学的情報取得部40による血液検体に対する透過光量(デジタル信号のデータ)の取得が完了する。なお、制御装置4の制御部4aでは、受信した透過光量のデータから各波長ごとに吸光度が算出される。
【0089】
そして、ステップS3において、制御装置4のCPU401a(図12参照)は、第1光学的情報取得部40(図3参照)から送信された透過光量のデータ(デジタル信号のデータ)を用いて、血液検体(原検体)中に含まれる干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の濃度および有無を推定し、その後、ステップS4において、干渉物質に関する定性判定を実行する。この定性判定では、各干渉物質毎に、強陽性(検体に多量に含まれている)、弱陽性(検体に所定量含まれている)、および陰性(検体に実質的に含まれていない)のいずれに該当するかが判断される。ここで、ステップS3およびステップS4の処理について詳細に説明する。CPU401aは、受信したデジタル信号のデータを用いて、血液検体の吸光度を算出するとともに、その血液検体中の干渉物質(乳び、ヘモグロビン、ビリルビン)の有無およびその濃度を算出する。具体的には、CPU401aは、ランプユニット50から照射される4種類(405nm、575nm、660nmおよび800nm)の光を用いて取得された透過光量のデータを用いて、血液検体の吸光度を算出するとともに、干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の有無およびその濃度を算出する。そして、CPU401aは、算出した血液検体中の干渉物質の有無およびその濃度に基づいて、干渉物質の定性判定を行う。なお、この定性判定として、検体中に干渉物質が実質的に含まれていないことを示す陰性「−」、検体中に干渉物質が所定量含まれていることを示す弱陽性「+」、および、検体中に干渉物質が多量に含まれていることを示す強陽性「++」がある。このような定性判定の結果は、後述するステップS15において、ステップS13で得られた凝固時間などの分析結果とともに、制御装置4の表示部4bに表示される。
【0090】
そして、CPU401aは、ステップS5において、上記したステップS4の定性判定の結果に基づいて本測定が可能か否かを判定する。ここで、ステップS5の処理を詳細に説明する。図15〜図17に示すように、干渉物質毎に影響を及ぼす波長は異なる。すなわち、ヘモグロビンは660nmおよび800nmの波長の光を実質的に吸収しないが、405nmおよび575nmの光を吸収する。したがって、ヘモグロビンは、660nm又は800nmの光を用いた分析には実質的に影響を及ぼさないが、405nm又は575nmの光を用いた分析には影響を及ぼすことがわかる。同様にして、ビリルビンは、575nm、660nm又は800nmの光を用いた分析には実質的に影響を及ぼさないが、405nmの光を用いた分析には影響を及ぼす。また、乳びは、全ての波長(405nm、575nm、660nmおよび800nm)において分析に影響を及ぼす。このように、干渉物質に関する定性判定の結果、ヘモグロビンが検体中に多量に含まれている(強陽性)場合には、測定波長が405nmまたは575nmである検査項目については、正常に血液凝固時間の分析を実施することができない。また、ビリルビンが検体中に多量に含まれている(強陽性)場合には、測定波長が405nmである検査項目については、正常に血液凝固時間の分析を実施することができない。一方、乳びが検体中に多量に含まれている(強陽性)場合には、いずれの測定波長においても強く影響を受けるため、正常に血液凝固時間の分析を行うことができない。したがって、定性判定の結果、ヘモグロビンが強陽性であり、かつ、測定波長が405nmもしくは575nmの測定項目の場合、ビリルビンが強陽性であり、かつ、測定波長が405nmの測定項目の場合、又は乳びが強陽性の場合には、本測定が不可能と判断することができる。そして、ステップS5において、本測定が不可能と判定された場合には、ステップS6において、測定結果にフラグが付与されて、測定エラーとなる。その後、後述するステップS15において、制御装置4の表示部4bに、「測定エラー」が表示されるとともに、エラーコードが表示される。これにより、ユーザーは、表示部4bに表示されるエラーコードと、取り扱い説明書などに記載されるエラーコードとを照合して、エラー内容を確認することが可能となる。
【0091】
ステップS5において、本測定が可能と判定された場合には、ステップS7において、CPU401aにより分析に使用する波長が選択される。上述したように、定性判定の結果、乳びが陰性の場合には、メイン波長(660nm)が選択され、乳びが弱陽性の場合には、サブ波長(800nm)が選択される。そして、メインは長が選択される場合には、波長変更フラグがオフのままとされ、サブ波長が選択される場合には、波長変更フラグがオンにセットされる。
【0092】
そして、ステップS8において、後述する凝固時間測定用試料が収容されるキュベット152が挿入される予定の挿入孔81aに対応する光電変換素子82b(図9参照)により、分岐光ファイバ57から照射される光が受光される。これにより、所定のキュベット152が挿入される予定の挿入孔81aに対応する分岐光ファイバ57固有の揺らぎなどの光特性を電気信号として検出することが可能となる。その結果、この挿入孔81aに挿入されるキュベット152内の凝固時間測定用試料から取得された電気信号から、挿入孔81aにキュベット152を挿入しない状態で検出された電気信号を減算処理することにより、凝固時間測定用試料の透過光に対応する信号を補正することが可能となる。これにより、キュベット152が挿入される位置により、取得した電気信号に微差が生じるのを抑制することが可能となる。なお、本実施形態では、試薬分注アーム60により凝固時間測定用試薬が血液検体に添加されてから、キュベット152が挿入されるまでの3秒間に上記した分岐光ファイバ57固有の電気信号が検出される。
【0093】
その後、ステップS9において、検体分注アーム30により一次分注テーブル24の保持部24aに保持されたキュベット152から所定量の血液検体が吸引される。そして、検体分注アーム30から二次分注テーブル23の複数のキュベット152に所定量の血液検体が各々吐出されることにより二次分注処理が行われる。そして、試薬分注アーム60を駆動させて、試薬テーブル21および22に載置された試薬容器(図示せず)内の血液を凝固させる凝固時間測定用試薬を二次分注テーブル23のキュベット152内の血液検体に添加する。これにより、凝固時間測定用試料の調製が行われる。そして、ステップS10において、キュベット移送部70を用いて、凝固時間測定用試料が収容された二次分注テーブル23のキュベット152を第2光学的情報取得部80のキュベット載置部81の挿入孔81aに移動させる。凝固時間測定用試料が収容されたキュベット152がキュベット載置部81の挿入孔81aに挿入された後、第2光学的情報取得部80の検出部82によりキュベット152内の凝固時間測定用試料に対して複数の条件下で光学的な測定(本測定)が行われることによって、凝固時間測定用試料から複数(10種類)の透過光量が取得される。具体的には、まず、キュベット載置部81の挿入孔81aに挿入されたキュベット152は、加温機構(図示せず)により所定の温度に加温される。その後、図10に示すように、キュベット載置部81のキュベット152へ、ランプユニット50の分岐光ファイバ57から光が照射される。なお、分岐光ファイバ57からは、5つの異なる波長(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の光が、フィルタ部53(図8参照)の回転によって周期的に照射される。分岐光ファイバ57から照射され、キュベット152およびキュベット152内の凝固時間測定用試料を透過した上記各波長の光は、光電変換素子82bによって順次検出される。そして、光電変換素子82bにより変換された5つの異なる波長の光に対応する透過光量の電気信号がプリアンプ82cで増幅された後、順次、増幅部82gに入力される。
【0094】
増幅部82gでは、プリアンプ82c(図11参照)からの5つの異なる波長の光に対応する透過光量の電気信号が、増幅率の高いアンプ(H)82lおよび通常の増幅率のアンプ(L)82kに各々入力される。そして、コントローラ82jにより切替スイッチ82mを制御することにより、アンプ(H)82lにより増幅された電気信号がA/D変換器82hに出力された後、アンプ(L)82kにより増幅された電気信号がA/D変換器82hに出力される。ここで、切替スイッチ82mは、ランプユニット50におけるフィルタ部53(図8参照)の回転のタイミングに応じて繰り返し切り替えられる。これにより、増幅部82gにおいては、5つの異なる波長の光に対応する透過光量の電気信号がそれぞれ2つの異なる増幅率で増幅され、合計10種類の電気信号がA/D変換器82hに繰り返し出力される。そして、10種類の電気信号は、A/D変換器82hでデジタル信号に変換され、ロガー82iに一時的に記憶された後、制御装置4の制御部4aに順次送信される。
【0095】
そして、凝固時間測定用試料が収容されたキュベット152が挿入孔81aに挿入された時点(凝固時間測定用試薬が添加されてから3.0秒経過時点)から、凝固反応が終了する時点までの期間に、透過光量に対応する電気信号が光電変換素子82bにより検出されて、制御装置4の制御部4aに順次送信される。これにより、制御装置4のCPU401aは、受信した経時的な透過光量のデータを用いて、各波長ごとの透過光量の変化量(=反応前の透過光量−反応後の透過光量)を算出する。
【0096】
そして、第2光学的情報取得部80による透過光量のデータの取得(本測定)の後、ステップS11において、CPU401aは、ラグフェーズ(凝固時間測定用試薬が添加されてから4.0秒経過時点)における透過光量のデータを用いて、凝固時間測定用試料中に含まれる干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の濃度および有無を推定する。凝固反応は、内因系または外因系の多くの反応を経由して、血漿中のフィブリノーゲンがフィブリンに転化され血液凝固が起こる反応である。すなわち、血漿に血液凝固試薬を混和しても、すぐには血液凝固が開始せず、外因系(PT測定試薬)で通常7秒程度、内因系(APTT測定試薬)で通常14秒程度経過後に、凝固反応が起こる。したがって、この凝固反応を示す前の時点(ラグフェーズという)の光学情報は、凝固反応による光学的変化が生じる前のものであり、検体が希釈された状態と同じ光学情報であるといえる。そのため、凝固時間測定用試薬によって希釈された状態の検体から、干渉物質の濃度および有無を推定することができる。
【0097】
次に、CPU401aは、ステップS12において、CPU401aにより、血液検体(原検体)を用いてステップS3において推定された干渉物質の推定結果と、凝固時間測定用試料を用いてステップS11において推定された干渉物質の推定結果との差が所定の閾値以内か否かが判断される。すなわち、ステップS12では、同一の血液検体から取得された両推定結果にばらつきが生じるのを監視している。
【0098】
そして、ステップS12において、両推定結果の差が閾値以内の場合には、ステップS13において、第2光学的情報取得部80において測定された複数の透過光量のデータの中から、メイン波長およびサブ波長のうち、ステップS7で選択された波長で測定した凝固時間測定用試料の透過光量のデータを用いてCPU401aが血液凝固時間を分析する。たとえば、血液検体の検査項目が「PT」の場合であって、波長変更フラグがオフのときには、「PT」のメイン波長である660nmを有する光を照射して測定された透過光量のデータが分析に使用される。その後、CPU401aは、ステップS15において、血液凝固時間および各種フラグなどの分析結果を出力する。
【0099】
一方、ステップS12において、制御装置4のCPU401aにより、両推定結果の差が閾値より大きいと判断された場合には、ステップS14において、測定結果にフラグが付与されて、測定エラーとなる。その後、ステップS15において、制御装置4の表示部4bに、「測定エラー」が表示されるとともに、エラーコードが表示される。これにより、ユーザーは、表示部4bに表示されるエラーコードと、取り扱い説明書などに記載されるエラーコードとを照合して、エラー内容を確認することが可能となる。このようにして、血液凝固時間測定装置1の血液検体の分析動作が終了する。
【0100】
図23〜図26は、図21のステップS11の干渉物質の濃度推定処理の詳細(サブルーチン)を説明するためのフローチャートである。次に、図20、図21、図22〜図26を参照して、図21のステップS11の干渉物質の濃度推定処理について詳細に説明する。
【0101】
第2光学的情報取得部80において取得されたラグフェーズにおける凝固時間測定用試料の透過光量のデータにより、図23に示したステップS31において、各波長(405nm、575nm、660nmおよび800nm)の光に対するラグフェーズにおける凝固時間測定用試料の吸光度が算出される。具体的には、CPU401aは、凝固時間測定用試料が収容されたキュベット152が挿入孔81aに挿入された時点(凝固時間測定用試薬が添加されてから3.0秒経過時点)から、凝固反応が始まる前の時点(凝固時間測定用試薬が添加されてから4.0秒経過時点)までの期間に取得された合計10個の透過光量のデータの平均値を用いて、吸光度を算出している。ここで、吸光度Aは、凝固時間測定用試料の光透過率T(%)を用いて、以下の式(2)により求められる値である。
A = −log10(T/100) ・・・(2)
【0102】
そして、ステップS32において、乳びのチェックが行われる。具体的には、図24に示すように、ステップS32aにおいて、660nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.660)が所定値よりも大きいか否かが判断される。そして、ステップS32aにおいて、660nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.660)が所定値より大きいと判断された場合には、ステップS32bにおいて、凝固時間測定用試料中に乳びが存在していると判断されて、検体分析一覧表(図22参照)中の乳びフラグの項目がオフ(表中では「0」)からオン(表中では「1」)に変更される。これに対して、ステップS32aにおいて、660nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.660)が所定値以下であると判断された場合には、凝固時間測定用試料中の乳びの含有量が、上述の本測定に影響を与えない程度であると判断されて、検体分析一覧表中の乳びフラグの項目がオフ(表中では「0」)状態で維持される。なお、第1実施形態では、660nmの波長の光を用いて、凝固時間測定用試料中の乳びの含有量を測定したが、800nmの波長の光を用いて、凝固時間測定用試料中の乳びの含有量を測定してもよい。
【0103】
そして、第1実施形態では、ステップS32cにおいて、660nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.660)を用いて、乳びの補正式を求める。具体的には、下記の乳びの吸光度の標準式(3)を予め定めておく。
Y = 10b0・Xa0 ・・・(3)
【0104】
この標準式は、標準的な乳びの吸光度Yと波長Xとの関係式である。つまり、上記式(1)の未知数aおよびbとしてa0およびb0を定め、吸光度の式となるように(左辺がYとなるように)変形した式である。そして、測定した吸光度(Abs.660)と標準式による660nmにおける吸光度(Abs.660標準)(標準式に波長660を代入して得られた吸光度)との差{(Abs.660)−(Abs.660標準)}を、この標準式の右辺に加算する。これにより、以下の乳びの補正式(4)が求められる。
y = 10b0・xa0+{(Abs.660)−(Abs.660標準)}・・・(4)
【0105】
そして、ステップS32dにおいて、上記したステップS32cにおいて求められた乳びの補正式から575nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.575乳び推定値)が算出される。つまり、補正式(4)に波長(x=575nm)を代入することによって、575nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(y=Abs.575乳び推定値)が算出される。
【0106】
そして、ステップS32eにおいて、上記したステップS32dと同様にして、乳びの補正式(4)から405nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.405乳び推定値)が算出される。つまり、補正式(4)に波長(x=405nm)を代入することによって、405nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(y=Abs.405乳び推定値)が算出される。
【0107】
次に、図23に示したステップS33において、ヘモグロビンのチェックが行われる。具体的には、図25に示すように、ステップS33aにおいて、575nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.575)から上記したステップS32d(図20参照)で算出された575nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.575乳び推定値)を差し引くことによって、575nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.575)を補正して、575nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度を推定する。そして、推定した575nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度((Abs.575)−(Abs.575乳び推定値))が所定値よりも大きいか否かが判断される。そして、ステップS33aにおいて、((Abs.575)−(Abs.575乳び推定値))が所定値より大きいと判断された場合には、ステップS33bにおいて、凝固時間測定用試料中にヘモグロビンが存在していると判断されて、検体分析一覧表(図22参照)中のヘモグロビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)からオン(表中では「1」)に変更される。これに対して、ステップS33aにおいて、((Abs.575)−(Abs.575乳び推定値))が所定値以下であると判断された場合には、凝固時間測定用試料中のヘモグロビンの含有量が本測定に影響を与えない程度であると判断されて、検体分析一覧表中のヘモグロビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)状態で維持される。
【0108】
そして、ステップS33cにおいて、上記したステップS33aにおいて算出された「(Abs.575)−(Abs.575乳び推定値)」から405nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度の推定値(Abs.405Hgb推定値)を算出する。具体的には、下記の式(5)に示すように、(Abs.405Hgb推定値)は、ステップS33aにおいて算出された((Abs.575)−(Abs.575乳び推定値))を定数倍H(6.5〜7.5(好ましくは、6.8))することによって算出される。
(Abs.405Hgb推定値) = H ×{(Abs.575)−(Abs.575乳び推定値)} ・・・(5)
【0109】
次に、図23に示したステップS34において、ビリルビンのチェックが行われる。具体的には、図26に示すように、ステップS34aにおいて、405nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.405)から、上記したステップS32e(図24参照)で算出された405nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.405乳び推定値)および上記したステップS33c(図25参照)で算出された405nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度の推定値(Abs.405Hgb推定値)を差し引くことによって、405nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.405)を補正して、405nmの波長の光に対するビリルビンの吸光度を推定する。そして、推定した405nmの波長の光に対するビリルビンの吸光度((Abs.405)−(Abs.405乳び推定値)−(Abs.405Hgb推定値))が所定値よりも大きいか否かが判断される。そして、ステップS34aにおいて、((Abs.405)−(Abs.405乳び推定値)−(Abs.405Hgb推定値))が所定値より大きいと判断された場合には、ステップS34bにおいて、凝固時間測定用試料中のビリルビンの含有量が本測定に悪影響を及ぼす程度であると判断されて、検体分析一覧表(図22参照)中のビリルビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)からオン(表中では「1」)に変更される。これに対して、ステップS34aにおいて、((Abs.405)−(Abs.405乳び推定値)−(Abs.405Hgb推定値))が所定値以下であると判断された場合には、凝固時間測定用試料中のビリルビンの含有量が本測定に悪影響を及ぼす程度であると判断されて、検体分析一覧表中のビリルビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)状態で維持される。このようにして、凝固時間測定用試料を用いた干渉物質の濃度推定が終了する。
【0110】
なお、図21のステップS3における血液検体(原検体)を用いた干渉物質の濃度推定は、使用するデータが第1光学的情報取得部40において取得された透過光量のデータである他は、上述した凝固時間測定用試料を用いた干渉物質の濃度推定と同様であるので、その説明を省略する。
【0111】
(第2実施形態)
第2実施形態による血液凝固時間測定装置の構成は、第1実施形態の血液凝固時間測定装置の第1光学的情報取得部40が設けられていない。したがって、第2光学的情報取得部80による光学的情報の取得に先立って、第1光学的情報取得部40により光学的情報を取得し、これに基づいて干渉物質の濃度推定および干渉物質に関する定性判定を行う構成とはなっておらず、第2光学的情報取得部80によって得られたラグフェーズにおける光学的情報のみに基づいて、干渉物質の濃度推定および干渉物質に関する定性判定を行う構成となっている。なお、第1実施形態による血液凝固時間測定装置の構成と同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0112】
図27は、第2実施形態による血液凝固時間測定装置の検体分析動作の手順を示したフローチャートである。まず、使用者が、図1および図2に示した血液凝固時間測定装置1の検出機構部2および制御装置4の電源をそれぞれオン状態にすることにより、血液凝固時間測定装置1が起動され、これにより、血液凝固時間測定装置1の初期設定が行われる。また、その後、使用者による検体分析情報および分析処理開始の入力が行われる。分析処理開始の入力があった後は、図27に示したステップS201において、血液検体が分取される。なお、血液凝固時間測定装置1の初期設定、検体分析情報の入力およびステップS201の一次分注処理については、第1実施形態のステップS1(図21参照)の処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0113】
ステップS201の一次分注処理の後、ステップS202において、空気ブランクの測定処理が行われ、その後、ステップS203において、二次分注処理が行われる。そして、ステップS204において、凝固時間測定用試料に対して複数の条件下で光学的な測定が行われ、第2光学的情報取得部80による透過光量のデータの取得が行われる。なお、これらのステップS202、ステップS203およびステップS204の処理は、それぞれ、第1実施形態のステップS8、ステップS9およびステップS10の処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0114】
次に、ステップS205において、CPU401aは、ラグフェーズ(凝固時間測定用試薬が添加されてから4.0秒経過時点)における透過光量のデータを用いて、凝固時間測定用試料中に含まれる干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の濃度および有無を推定する。そして、CPU401aは、ステップS206において、推定された干渉物質の濃度に基づき、干渉物質に関する定性判定を行う。その後、ステップS207において、CPU401aにより、分析に使用する波長が選択される。そして、ステップS208において、第2光学的情報取得部80において測定された複数の透過光量のデータの中から、メイン波長およびサブ波長のうち、ステップS207で選択された波長で測定した凝固時間測定用試料の透過光量のデータを用いてCPU401aが血液凝固時間を分析する。その後、CPU401aは、ステップS209において、血液凝固時間および各種フラグなどの分析結果を出力し、処理を終了する。なお、これらのステップS206、S207、S208、S209の処理は、それぞれ、第1実施形態におけるステップS4、ステップS7、ステップS13、ステップS15の処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0115】
次に、ステップS205における凝固時間測定用試料を用いた濃度推定について説明する。ここでは、血液検体に凝固時間測定用試薬を添加した凝固時間測定用試料を測定対象としているため、取得した透過光量のデータには、干渉物質の濃度による影響だけでなく、凝固時間測定用試薬の濁度による影響も含まれている。そのため、凝固時間測定用試料を用いた濃度推定において、上記した第1実施形態におけるステップS10の濃度推定処理と異なり、凝固時間測定用試薬の濁度を考慮した処理を行えばより好ましい。そこで、本実施形態における凝固時間測定用試料を用いた濃度推定では、凝固時間測定用試薬の濁度を考慮した処理を行う。
【0116】
図28〜図31は、図27のステップS205の干渉物質の濃度推定処理の詳細(サブルーチン)を説明するためのフローチャートである。まず、図28に示したステップS131において、各波長(405nm、575nm、660nmおよび800nm)の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度が算出される。具体的には、CPU401aは、凝固時間測定用試料が収容されたキュベット152が挿入孔81aに挿入された時点(凝固時間測定用試薬が添加されてから3.0秒経過時点)から、凝固反応が始まる前の時点(凝固時間測定用試薬が添加されてから4.0秒経過時点)までの期間に取得された合計10個の透過光量のデータの平均値を用いて、吸光度を算出している。
【0117】
そして、ステップS132において、乳びのチェックが行われる。具体的には、図29に示すように、ステップS132aにおいて、660nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.660)から凝固時間測定用試薬に由来する試薬固有の吸光度(試薬濁度Abs.660)を差し引くことにより、660nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.660)を補正する。これにより、凝固時間測定用試薬の濁度を除去した補正吸光度((Abs.660)−(試薬濁度Abs.660))を取得することが可能となる。なお、第2実施形態では、凝固時間測定用試薬に由来する660nmにおける試薬固有の吸光度(試薬濁度Abs.660)並びに後述する800nmにおける吸光度(試薬濁度Abs.800)、575nmにおける吸光度(試薬濁度Abs.575)、405nmにおける吸光度(試薬濁度Abs.405)は、試薬の種類毎に設定される固定値であり、凝固時間測定用試薬と水とを混合して予め求められている。そして、上記した補正吸光度((Abs.660)−(試薬濁度Abs.660))が所定値よりも大きいか否かが判断される。そして、ステップS132aにおいて、上記した補正吸光度((Abs.660)−(試薬濁度Abs.660))が所定値より大きいと判断された場合には、ステップS132bにおいて、凝固時間測定用試料中に乳びが存在していると判断されて、検体分析一覧表(図22参照)中の乳びフラグの項目がオフ(表中では「0」)からオン(表中では「1」)に変更される。これに対して、ステップS132aにおいて、補正吸光度((Abs.660)−(試薬濁度Abs.660))が所定値以下であると判断された場合には、ステップS132bにおいて、凝固時間測定用試料中の乳びの含有量が、測定に影響を与えない程度であると判断されて、検体分析一覧表中の乳びフラグの項目がオフ(表中では「0」)状態で維持される。また、本実施形態では、660nmの波長の光を用いて、凝固時間測定用試料中の乳びの含有量を測定したが、800nmの波長の光を用いて、凝固時間測定用試料中の乳びの含有量を測定してもよい。
【0118】
そして、第2実施形態では、ステップS132cにおいて、上述したステップS132aにおける660nmの波長の光における場合と同様に、800nmの波長の光における凝固時間測定用試薬の濁度を除去した補正吸光度((Abs.800)−(試薬濁度Abs.800))を取得する。そして、上記した660nmにおける補正吸光度((Abs.660)−(試薬濁度Abs.660))と、800nmにおける補正吸光度((Abs.800)−(試薬濁度Abs.800))とを用いて、乳びの補正式を求める。具体的には、上記式(1)に波長(X=660)および補正吸光度(Y=(Abs.660)−(試薬濁度Abs.660))を代入して、下記式(1a)を導くとともに、上記式(1)に波長(X=800)および補正吸光度(Y=(Abs.800)−(試薬濁度Abs.800))を代入して、下記式(1b)を導く。
log10{(Abs.660)−(試薬濁度Abs.660)} = alog10660+b ・・・(1a)
log10{(Abs.800)−(試薬濁度Abs.800)} = alog10800+b ・・・(1b)
【0119】
そして、上記式(1a)および(1b)を連立して、定数aおよびbを算出して、所定の波長xにおける乳びの吸光度yを導出する乳びの補正式(6)が導かれる。
log10y = alog10x+b ・・・(6)
【0120】
そして、ステップS132dにおいて、上記したステップS132cにおいて求められた乳びの補正式(6)から575nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.575乳び推定値)が算出される。つまり、補正式(6)に波長(x=575nm)を代入することによって、575nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(y=Abs.575乳び推定値)が算出される。
【0121】
そして、ステップS132eにおいて、上記したステップS132dと同様にして、乳びの補正式(6)から405nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.405乳び推定値)が算出される。つまり、補正式(6)に波長(x=405nm)を代入することによって、405nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(y=Abs.405乳び推定値)が算出される。
【0122】
次に、図28に示したステップS133において、ヘモグロビンのチェックが行われる。具体的には、図30に示すように、ステップS133aにおいて、上述したステップS132aにおける660nmの波長の光における場合と同様に、575nmの波長の光における凝固時間測定用試薬の濁度を除去した補正吸光度((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))を取得する。そして、575nmの波長の補正吸光度((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))から上記したステップS132d(図29参照)で算出された575nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.575乳び推定値)を差し引くことによって、575nmの補正吸光度((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))を補正して、575nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度を推定する。そして、推定した575nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度(((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))−(Abs.575乳び推定値))が所定値よりも大きいか否かが判断される。そして、ステップS133aにおいて、(((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))−(Abs.575乳び推定値))が所定値より大きいと判断された場合には、ステップS133bにおいて、凝固時間測定用試料中にヘモグロビンが存在していると判断されて、検体分析一覧表(図22参照)中のヘモグロビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)からオン(表中では「1」)に変更される。これに対して、ステップS133aにおいて、(((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))−(Abs.575乳び推定値))が所定値以下であると判断された場合には、凝固時間測定用試料中のヘモグロビンの含有量が測定に影響を与えない程度であると判断されて、検体分析一覧表中のヘモグロビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)状態で維持される。
【0123】
そして、ステップS133cにおいて、上記したステップS133aにおいて算出された「((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))−(Abs.575乳び推定値)」から405nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度の推定値(Abs.405Hgb推定値)を算出する。具体的には、下記の式(7)に示すように、(Abs.405Hgb推定値)は、ステップS133aにおいて算出された(((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))−(Abs.575乳び推定値))を定数倍H(6.5〜7.5(好ましくは、6.8))することによって算出される。
(Abs.405Hgb推定値) = H ×{((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))−(Abs.575乳び推定値)} ・・・(7)
【0124】
次に、図28に示したステップS134において、ビリルビンのチェックが行われる。具体的には、図31に示すように、ステップS134aにおいて、上述したステップS132aにおける660nmの波長の光における場合と同様に、405nmの波長の光における凝固時間測定用試薬の濁度を除去した補正吸光度((Abs.405)−(試薬濁度Abs.405))を取得する。そして、405nmの波長の補正吸光度((Abs.405)−(試薬濁度Abs.405))から、上記したステップS132e(図29参照)で算出された405nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.405乳び推定値)および上記したステップS133c(図30参照)で算出された405nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度の推定値(Abs.405Hgb推定値)を差し引くことによって、405nmの補正吸光度((Abs.405)−(試薬濁度Abs.405))を更に補正して、405nmの波長の光に対するビリルビンの吸光度を推定する。そして、推定した405nmの波長の光に対するビリルビンの吸光度(((Abs.405)−(試薬濁度Abs.405))−(Abs.405乳び推定値)−(Abs.405Hgb推定値))が所定値よりも大きいか否かが判断される。そして、ステップS134aにおいて、(((Abs.405)−(試薬濁度Abs.405))−(Abs.405乳び推定値)−(Abs.405Hgb推定値))が所定値より大きいと判断された場合には、ステップS134bにおいて、凝固時間測定用試料中のビリルビンの含有量が測定に悪影響を及ぼす程度であると判断されて、検体分析一覧表(図22参照)中のビリルビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)からオン(表中では「1」)に変更される。これに対して、ステップS134aにおいて、(((Abs.405)−(試薬濁度Abs.405))−(Abs.405乳び推定値)−(Abs.405Hgb推定値))が所定値以下であると判断された場合には、凝固時間測定用試料中のビリルビンの含有量が測定に悪影響を及ぼす程度であると判断されて、検体分析一覧表中のビリルビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)状態で維持される。このようにして、凝固時間測定用試料を用いた濃度推定が終了する。
【0125】
上述した第1および第2実施形態では、上記のように、第2光学的情報取得部80を設けることによって、凝固時間測定用試料中の干渉物質の濃度および有無を推定するのに用いる凝固反応を示す前の時点(凝固時間測定用試薬が添加されてから3.0秒〜4.0秒までの間)における透過光量のデータと、凝固時間の測定(本測定)に用いる経時的な複数の透過光量のデータとの両方を取得することができる。これにより、制御装置4のアプリケーションプログラム404aは、経時的な透過光量のデータの変化を用いて凝固時間を測定するだけでなく、凝固反応を示す前の時点(図13の斜線(ハッチング)の領域)における透過光量のデータを用いて干渉物質の有無および濃度を測定することができる。
【0126】
また、第1および第2実施形態では、血液検体に凝固時間測定用試薬が混和された1つの凝固時間測定用試料から、凝固時間の測定(本測定)に用いる経時的な複数の透過光量の変化と、干渉物質の濃度および有無の推定に用いる凝固反応を示す前の時点における透過光量とを取得することができる。凝固反応は、内因系または外因系の多くの反応を経由して、血漿中のフィブリノーゲンがフィブリンに転化され血液凝固が起こる反応である。すなわち、血漿に血液凝固試薬を混和しても、すぐには血液凝固が開始せず、外因系(PT測定試薬)で通常7秒程度、内因系(APTT測定試薬)で通常14秒程度経過後に、凝固反応が起こる。本実施形態は、この凝固反応を示す前の時点(ラグフェーズという)の光学情報が、検体が希釈された状態と同じ光学情報であることに着目したものである。つまり上記構成とすることにより、本測定に用いる試料と干渉物質の濃度および有無の推定に用いる試料とを別個に準備する必要がないので、血液検体の消費を抑制することができる。
【0127】
また、第1および第2実施形態では、血液検体に凝固時間測定用試薬が混和された凝固時間測定用試料からの光を経時的に受け、経時的な透過光量の変化を取得する第2光学的情報取得部80を設けることによって、凝固時間測定用試薬によって希釈された凝固時間測定用試料から透過光量のデータを取得することができる。これにより、第2光学的情報取得部80では、血液検体の濃度が高いため透過光量のデータを検出するのが困難な場合でも、希釈された凝固時間測定用試料からの透過光量のデータを取得することができるので、透過光量のデータを取得することが可能な測定範囲を拡大することができる。
【0128】
また、第2実施形態では、アプリケーションプログラム404aを、660nmおよび800nmにおける吸光度に基づいて、575nmおよび405nmにおける光学的情報への乳びの影響を推定するように構築することによって、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する2種類の波長における吸光度に基づいて、他の波長(第2波長および第3波長)における吸光度への乳びの影響を推定することができる。これにより、1種類の波長における吸光度に基づいて、他の波長における吸光度への乳びの影響を推定する場合に比べて、2種類の波長における2つの吸光度に基づいて、他の波長における吸光度への乳びの影響を推定する方が、正確に乳びの影響を推定することができる。その結果、正確に推定された乳びの影響を用いて、ビリルビンおよびヘモグロビンの影響も推定することができるので、干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の影響を正確に推定することができる。
【0129】
また、第1実施形態では、本測定を行うための第2光学的情報取得部80に加えて、凝固時間測定用試薬が混和される前の血液検体から光を受けて透過光量を取得する第1光学的情報取得部40を設けることによって、第1光学的情報取得部40で測定された血液検体中の干渉物質の濃度が高い場合に、信頼性の高い凝固時間を測定することが困難であると判断して、測定を中止することができる。その結果、測定が中止される血液検体に凝固時間測定用試薬が混和されるのを中止することができるので、凝固時間測定用試薬が無駄に消費されるのを抑制することができる。また、この場合、信頼性の高い測定結果(凝固時間)を得ることが困難な血液検体に対して、第2光学的情報取得部80による本測定を行うことがないので、装置の測定効率を向上させることもできる。
【0130】
また、第1実施形態では、凝固時間測定用試薬が混和される前の血液検体から光を受けて透過光量を取得する第1光学的情報取得部40、および、本測定を行うための第2光学的情報取得部80を設けることによって、原検体(血液検体)を用いた濃度推定に加えて、凝固時間測定用試料を用いた濃度推定を行うことができる。これにより、原検体(血液検体)を用いた濃度推定と、凝固時間測定用試料を用いた濃度推定とを比較することにより、正確な推定結果を取得しているのか確認することができる。その結果、より正確な干渉物質の濃度および有無の測定結果を取得することができる。また、比較した推定結果の値がかけ離れた場合には、凝固時間測定用試薬の分注エラーが生じたなどの装置エラーも監視することができる。
【0131】
また、第2実施形態では、第1光学的取得部を設けずに、第2光学的情報取得部のみにより、干渉物質の濃度推定を行うことによって、干渉物質の測定を行うためだけの専用の装置(第1光学的情報取得部)を本測定部(第2光学的情報取得部)とは別個に設ける必要がないので、血液凝固時間測定装置が複雑になるのを抑制することができるとともに、装置自体が大きくなるのを抑制することができる。また、血液検体(原検体)の光学測定を行う必要がなく、血液凝固時間測定装置の動作が複雑化することを抑制することができる。
【0132】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0133】
たとえば、上記第1実施形態および第2実施形態では、メイン波長を低波長に設定するとともに、サブ波長を高波長に設定する例を示したが、本発明はこれに限らず、メイン波長を高波長に設定するとともに、サブ波長を低波長に設定してもよい。これにより、血液検体中のフィブリノーゲン量が少なく、凝固反応を大きく捉えられない場合でも、低波長のサブ波長を選択すれば、低フィブリノーゲン血液検体についても凝固反応を捉えることができる。
【0134】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、検出機構部と制御装置とを別個に設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、制御装置の機能を検出機構部に設けてもよい。
【0135】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、凝固時間法を用いて凝固時間測定用試料の光学的な測定(本測定)を行う例を示したが、本発明はこれに限らず、凝固時間法以外の合成基質法や免疫比濁法などを用いて凝固時間測定用試料の光学的な測定を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の第1実施形態による血液凝固時間測定装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の検出機構部および搬送機構部を示した平面図である。
【図3】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第1光学的情報取得部を示した斜視図である。
【図4】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第1光学的情報取得部の構成を説明するための模式図である。
【図5】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第1光学的情報取得部のブロック図である。
【図6】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置のランプユニットを示した斜視図である。
【図7】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置のランプユニットの構成を説明するための模式図である。
【図8】図6に示したランプユニットのフィルタ部を示した拡大斜視図である。
【図9】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第2光学的情報取得部の検出部の内部構造を説明するための概略図である。
【図10】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第2光学的情報取得部の検出部の構成を説明するための断面図である。
【図11】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第2光学的情報取得部のブロック図である。
【図12】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の制御装置のブロック図である。
【図13】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第2光学的情報取得部により測定された干渉物質が混入した血液検体の測定結果である。
【図14】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第2光学的情報取得部により測定された正常血液検体の測定結果である。
【図15】干渉物質(ヘモグロビン)の吸光度スペクトルを示したグラフである。
【図16】干渉物質(ビリルビン)の吸光度スペクトルを示したグラフである。
【図17】干渉物質(乳び)の吸光度スペクトルを示したグラフである。
【図18】ヘモグロビンに乳びを添加した場合の吸光度スペクトルを示したグラフである。
【図19】ビリルビンに乳びを添加した場合の吸光度スペクトルを示したグラフである。
【図20】図17に示した乳びの吸光度スペクトルを両対数グラフにプロットしたグラフである。
【図21】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の分析動作の手順を示したフローチャートである。
【図22】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の制御装置の表示部に出力された検体分析一覧表を示した図である。
【図23】図1に示した第1実施形態の血液凝固時間測定装置の制御装置による干渉物質の濃度推定処理の詳細(サブルーチン)を説明するためのフローチャートである。
【図24】図23に示した干渉物質(乳び)のチェックのサブルーチンを示したフローチャートである。
【図25】図23に示した干渉物質(ヘモグロビン)のチェックのサブルーチンを示したフローチャートである。
【図26】図23に示した干渉物質(ビリルビン)のチェックのサブルーチンを示したフローチャートである。
【図27】本発明の第2実施形態による血液凝固時間測定装置の分析動作の手順を示したフローチャートである。
【図28】本発明の第2実施形態の血液凝固時間測定装置の制御装置による干渉物質の濃度推定処理の詳細(サブルーチン)を説明するためのフローチャートである。
【図29】図28に示した干渉物質(乳び)のチェックのサブルーチンを示したフローチャートである。
【図30】図28に示した干渉物質(ヘモグロビン)のチェックのサブルーチンを示したフローチャートである。
【図31】図28に示した干渉物質(ビリルビン)のチェックのサブルーチンを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0137】
1 血液凝固時間測定装置
4 制御装置(測定部)
4a 制御部(第1推定手段、第2推定手段、第1取得手段、第2取得手段、第3取得手段、判断手段、選択手段)
4b 表示部(出力部)
40 第1光学的情報取得部(第2受光部)
50 ランプユニット(光照射部)
60 試薬分注アーム(試料調製部)
80 第2光学的情報取得部(第1受光部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液凝固時間測定装置に関し、特に、血液検体と凝固時間測定用試薬とを混和して調製した凝固時間測定用試料を光学的に分析する血液凝固時間測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本測定(たとえば、生化学分析)を実施する前に、サンプル(血清など)の品質評価を行うために、サンプル中の干渉物質(ヘモグロビン、ビリルビン、乳びなど)の測定が実施されている(たとえば、特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。なお、干渉物質とは、検査対象となる目的物質(たとえば、フィブリノーゲン)とともにサンプル中に共存し、その目的物質の光学的測定に干渉する物質のことである。
【0003】
上記特許文献1に開示された血清中の乳び度、黄疸度および溶血度の測定方法では、血清に4つの波長の光を照射して、第1次的には、可視域における短波長(たとえば、410nm)の光を使用することにより吸光度を測定し、その吸光度が一定値以上の血清については、乳び、黄疸および溶血による異常血清と判定している。次に、第2次的には、異常血清だと判定された血清について、4つの波長を用いて測定された吸光度と、予め設定した数種類の基準とを比較することにより、乳び、黄疸および溶血の程度を判定している。
【0004】
また、上記特許文献2に開示されたクロモゲン(干渉物質)の測定方法では、懸濁物質(ヘモグロビン、ビリルビン、乳びなど)が混在する検体にブランク反応用試薬を混合して検体ブランク液を調製し、この検体ブランク液に、乳びの吸収があり、かつ、ヘモグロビンおよびビリルビンの吸収が実質的にない波長を含む4種類の波長の光を照射することにより、干渉物質の程度を測定している。具体的には、乳びに関しては、吸光度が波長の指数関数で表されると仮定して、波長−吸光度の回帰曲線を求めることにより、乳びの程度を算出している。また、ヘモグロビンおよびビリルビンに関しては、異なる波長での吸光度間に予め設けた一定の関係があると仮定して、測定波長における吸光度に関する連立一次方程式を作り、それを解くことにより、ヘモグロビンおよびビリルビンの程度を算出している。
【0005】
また、上記特許文献3に開示された血清試料に溶血、黄疸および脂肪血症が存在するか否かを決定する分析装置では、まず、プローブに設けられた透明部分に配置されるニードル管に吸引された血清試料に、発光ダイオードから出射される光を照射することにより、ニードル管内の血清試料の吸光度を測定する。そして、その吸光度に基づいて測定可能だと判断された血清試料を臨床分析器に移送し、本測定を行う。
【0006】
【特許文献1】特開昭57−59151号公報
【特許文献2】特開平6−66808号公報
【特許文献3】特開平10−153597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1および特許文献3では、本測定(生化学分析など)を実施する前に、血清などのサンプルを原濃度のまま用いて、サンプル中の干渉物質の測定を行っているため、原濃度のサンプルを測定するための光学測定用の構造(たとえば、光学検出部やプローブ)を本測定部とは別個に設ける必要があるという問題点がある。
【0008】
また、上記特許文献2では、本測定(本来目的とする測定)では使用することができない検体ブランク液を用いて、光学測定して干渉物質の測定を実施する必要があるという不都合がある。そのため、本測定とは別に、かかる干渉物質の測定を行わなければならない。また、検体ブランク液を調整するために、本測定とは別に血清などのサンプルを準備する必要があり、本測定の結果を得るまでに、サンプルの消費が多くなるという問題点がある。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、血液凝固時間の測定とは別に干渉物質を測定する必要がなく、かつ、血液検体の消費を抑制することが可能な血液凝固時間測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0010】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による血液凝固時間測定装置は、血液検体に凝固時間測定用試薬を混和して、凝固時間測定用試料を調製する試料調製部と、調製された前記凝固時間測定用試料に光を照射する光照射部と、光が照射された前記凝固時間測定用試料から複数の波長の光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部と、前記第1受光部により取得された光学的情報に基づいて、前記凝固時間測定用試料の凝固時間を測定する測定部とを備え、前記測定部は、前記第1受光部により取得された光学的情報のうち、前記凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報に基づいて、前記凝固時間測定用試料の光学測定に干渉する干渉物質の前記凝固時間測定用試料における含有度合いを測定するように構成されている。
【0011】
この第1の局面による血液凝固時間測定装置では、上記のように、光が照射された凝固時間測定用試料から複数の波長の光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部を設けることによって、その第1受光部により、干渉物質の凝固時間測定用試料における含有度合いの測定に用いる光学的情報(凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報)と、凝固時間の測定(本測定)に用いる光学的情報(経時的な複数の光学的情報)との両方を取得することができる。凝固反応は、内因系または外因系の多くの反応を経由して、血漿中のフィブリノーゲンがフィブリンに転化され血液凝固が起こる反応である。すなわち、血漿に血液凝固試薬を混和しても、すぐには血液凝固が開始せず、外因系(PT測定試薬)で通常7秒程度、内因系(APTT測定試薬)で通常14秒程度経過後に、凝固反応が起こる。本発明は、この凝固反応を示す前の時点(ラグフェーズという)の光学情報が、検体が希釈された状態と同じ光学情報であることに着目したものである。つまり上記構成とすることにより、測定部は、経時的な複数の光学的情報を用いて凝固時間を測定するだけでなく、凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点(ラグフェーズ)における光学的情報を用いて干渉物質の含有度合いを測定することができる。その結果、測定部は、本測定とは別に干渉物質のためだけの測定を行うことなく、干渉物質の凝固時間測定用試料における含有度合いを測定することができる。また、この際、第1受光部では、血液検体に凝固時間測定用試薬が混和された1つの凝固時間測定用試料から、凝固時間の測定(本測定)に用いる光学的情報(経時的な複数の光学的情報)と、干渉物質の含有度合いの測定に用いる光学的情報(凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報)との両方を取得することができる。その結果、本測定に用いる試料と干渉物質の含有度合いの測定に用いる試料とを別個に準備する必要がないので、血液検体の消費を抑制することができる。
【0012】
また、この第1の局面では、血液検体に凝固時間測定用試薬が混和された凝固時間測定用試料からの光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部を設けることによって、凝固時間測定用試薬によって希釈された血液検体から光学的情報を取得することができる。これにより、第1受光部では、血液検体の濃度が高いために光学的情報を検出するのが困難な場合でも、希釈された血液検体(凝固時間測定用試料)からの光学的情報を取得することができるので、光学的情報を取得することが可能な測定範囲を拡大することができる。
【0013】
上記第1の局面による血液凝固時間測定装置において、好ましくは、測定部は、第1受光部で取得された複数の波長における光学的情報に基づいて、複数の干渉物質の含有度合いをそれぞれ測定するように構成されている。このように構成すれば、光照射部から照射される複数の波長の光により取得される複数の光学的情報を用いることにより、各干渉物質が吸収する波長が異なることを利用して、容易に、複数の干渉物質の含有度合いをそれぞれ測定することができる。
【0014】
上記複数の干渉物質の含有度合いを測定する血液凝固時間測定装置において、好ましくは、第1受光部は、第1波長、第2波長および第3波長における光学的情報を少なくとも取得するように構成されており、測定部は、第1受光部により取得された第1波長、第2波長、および第3波長の少なくともいずれかにおける光学的情報に基づいて、血液検体におけるビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの少なくともいずれかの含有度合いを測定するように構成されている。このように構成すれば、光照射部から照射される第1波長、第2波長および第3波長の光により取得される複数の光学的情報を用いることにより、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する波長が異なることを利用して、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの含有度合いをそれぞれ測定することができる。
【0015】
上記ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの含有度合いを測定する血液凝固時間測定装置において、好ましくは、第1波長は、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する波長であり、第2波長は、ビリルビンが実質的に吸収せず、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する波長であり、第3波長は、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する波長であり、測定部は、少なくとも第1波長における光学的情報に基づいて、第2波長および第3波長における光学的情報への乳びの影響を推定する第1推定手段と、推定された第2波長における乳びの影響と、第2波長における光学的情報とに基づいて、第3波長における光学的情報へのヘモグロビンの影響を推定する第2推定手段とを含むとともに、第1受光部により取得された第1波長、第2波長および第3波長における光学的情報、第1推定手段により推定された第2波長および第3波長における光学的情報への乳びの影響、並びに、第2推定手段により推定された第3波長における光学的情報へのヘモグロビンの影響に基づいて、血液検体におけるビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの含有度合いを測定するように構成されている。このように構成すれば、乳びのみが吸収する波長である第1波長における光学的情報に基づいて、容易に、血液検体における乳びの含有度合いを測定することができる。また、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する波長である第2波長における光学的情報と、第1推定手段により推定された第2波長における光学的情報への乳びの影響とに基づいて、容易に、血液検体におけるヘモグロビンの含有度合いを測定することができる。また、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びのいずれもが吸収する波長である第3波長における光学的情報と、第1推定手段により推定された第3波長における光学的情報への乳びの影響と、第2推定手段により推定された第3波長における光学的情報へのヘモグロビンの影響とに基づいて、容易に、血液検体におけるビリルビンの含有度合いを測定することができる。これらのようにして、容易に、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの含有度合いをそれぞれ測定することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、第1受光部は、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する第4波長における光学的情報をさらに取得するように構成されており、第1推定手段は、第1波長および第4波長における光学的情報に基づいて、第2波長および第3波長における光学的情報への乳びの影響を推定するように構成されている。このように構成すれば、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する第1波長に加えて第4波長における光学的情報に基づいて、他の波長(第2波長および第3波長)における光学的情報への乳びの影響を推定することができる。これにより、1種類の波長における光学的情報に基づいて、他の波長における光学的情報への乳びの影響を推定する場合に比べて、2種類の波長における2つの光学的情報に基づいて、他の波長における光学的情報への乳びの影響を推定する方が、正確に乳びの影響を推定することができる。その結果、正確に推定された乳びの影響を用いて、ビリルビンおよびヘモグロビンの影響も推定することができるので、干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の影響を正確に推定することができる。
【0017】
上記第1の局面による血液凝固時間測定装置において、好ましくは、第1受光部は、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する第1波長、ビリルビンが実質的に吸収せず、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する第2波長、並びに、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する第3波長における光学的情報を少なくとも取得するように構成されており、測定部は、少なくとも第1受光部により取得された第1波長における光学的情報に基づいて、光学的情報への乳びの影響を取得する第1取得手段と、第1取得手段により取得された光学的情報への乳びの影響と、第1受光部により取得された第2波長における光学的情報とに基づいて、光学的情報へのヘモグロビンの影響を取得する第2取得手段と、第1取得手段により取得された光学的情報への乳びの影響と、第2取得手段により取得された光学的情報へのヘモグロビンの影響と、第1受光部により取得された第3波長における光学的情報とに基づいて、光学的情報へのビリルビンの影響を取得する第3取得手段とを含み、第1取得手段により取得された光学的情報への乳びの影響と、第2取得手段により取得された光学的情報へのヘモグロビンの影響と、第3取得手段により取得された光学的情報へのビリルビンの影響とを出力する出力部をさらに備える。これにより、第1取得手段により取得した乳びの影響と、第2取得手段により取得したヘモグロビンの影響と、第3取得手段により取得したビリルビンの影響とを、容易に、出力手段に出力することができる。
【0018】
上記光学的情報への乳びの影響を取得する第1取得手段を備えた血液凝固時間測定装置において、好ましくは、第1取得手段は、第1波長における光学的情報に加えて、凝固時間測定用試薬に光を照射することにより取得した凝固時間測定用試薬に由来する光学的情報に基づいて、光学的情報への乳びの影響を取得する。このように構成すれば、第1波長における光学的情報に、凝固時間測定用試料に由来する光学的情報が含まれている場合でも、容易に、光学的情報への凝固時間測定用試料に由来する光学的情報を含まない乳びのみの影響を取得することができる。
【0019】
上記第1の局面による血液凝固時間測定装置において、好ましくは、光照射部は、互いに異なる複数の波長の光を時分割で照射するように構成されている。このように構成すれば、複数の波長を有する光を時分割で測定部の凝固時間測定用試料に照射することができる。その結果、複数の波長の光を順次凝固時間測定用試料に照射することができるので、容易に、干渉物質の含有度合いを測定するのに必要な複数の光学的情報を取得することができる。また、血液検体に添加される凝固時間測定用試薬の種類に依存して、凝固時間を測定するのに適した波長が異なる場合でも、容易に、測定に適した波長の光を凝固時間測定用試薬に照射することができる。
【0020】
上記第1の局面による血液凝固時間測定装置において、好ましくは、凝固時間測定用試薬が混和される前の血液検体から光を受けて光学的情報を取得する第2受光部をさらに備え、測定部は、第2受光部により取得された光学的情報に基づいて、血液検体の光学測定に光学的に干渉する干渉物質の血液検体における含有度合いを測定するように構成されている。このように構成すれば、凝固時間測定用試薬が混和される前の段階で、血液検体中の干渉物質の含有度合いを測定することができる。これにより、第2受光部で測定された血液検体中の干渉物質の含有度合いが大きい場合に、信頼性の高い凝固時間を測定することが困難であると判断して、測定を中止することができる。その結果、測定が中止される血液検体に凝固時間測定用試薬が混和されるのを中止することができるので、凝固時間測定用試薬が無駄に消費されるのを抑制することができる。また、この場合、信頼性の高い測定結果(凝固時間)を得ることが困難な血液検体に対して、第1受光部による本測定を行うことがないので、装置の測定効率を向上させることもできる。
【0021】
この場合、好ましくは、第2受光部によって取得された光学的情報に基づいて、第1受光部により経時的な光学的情報を取得するか否かを判断する判断手段をさらに備えている。このように構成すれば、容易に、第1受光部による本測定を行うか否かを判断することができる。
【0022】
上記第2受光部を備えた血液凝固時間測定装置において、好ましくは、第1受光部により取得された光学的情報に基づいて測定された干渉物質の血液検体における含有度合いと、第2受光部により取得された光学的情報に基づいて測定された干渉物質の凝固時間測定用試料における含有度合いとのいずれか一方を選択する選択手段をさらに備えている。このように構成すれば、凝固時間測定用試料などにより希釈されていない原濃度の血液検体における干渉物質の含有度合いと、凝固時間測定用試料などにより希釈された凝固時間測定用試料における干渉物質の含有度合いとを容易に選択することができる。
【0023】
この発明の第2の局面による血液凝固時間測定装置は、血液検体に凝固時間測定用試薬を混和して、凝固時間測定用試料を調製する試料調製部と、調製された凝固時間測定用試料に光を照射する光照射部と、光が照射された凝固時間測定用試料から複数の波長の光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部と、第1受光部により取得された光学的情報に基づいて、凝固時間測定用試料の凝固時間を測定する測定部とを備え、測定部は、第1受光部により取得された光学的情報のうち、凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報に基づいて、凝固時間測定用試料に含まれるとともに、凝固時間測定用試料の光学測定に干渉する干渉物質を特定するように構成されている。
【0024】
この第2の局面による血液凝固時間測定装置では、上記のように、光が照射された凝固時間測定用試料から複数の波長の光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部を設けることによって、その第1受光部により、凝固時間測定用試料に含まれる干渉物質の特定に用いる光学的情報(凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報)と、凝固時間の測定(本測定)に用いる光学的情報(経時的な複数の光学的情報)との両方を取得することができる。これにより、測定部は、経時的な複数の光学的情報を用いて凝固時間を測定するだけでなく、凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報を用いて凝固時間測定用試料に含まれる干渉物質を特定することができる。その結果、測定部は、本測定とは別に干渉物質のためだけの測定を行うことなく、凝固時間測定用試料に含まれる干渉物質を特定することができる。また、この際、第1受光部では、血液検体に凝固時間測定用試薬が混和された1つの凝固時間測定用試料から、凝固時間の測定(本測定)に用いる光学的情報(経時的な複数の光学的情報)と、干渉物質の特定に用いる光学的情報(凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報)との両方を取得することができる。その結果、本測定に用いる試料と干渉物質の特定に用いる試料とを別個に準備する必要がないので、血液検体の消費を抑制することができる。
【0025】
また、この第2の局面では、血液検体に凝固時間測定用試薬が混和された凝固時間測定用試料からの光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部を設けることによって、凝固時間測定用試薬によって希釈された血液検体から光学的情報を取得することができる。これにより、第1受光部では、血液検体の濃度が高いために光学的情報を検出するのが困難な場合でも、希釈された血液検体(凝固時間測定用試料)からの光学的情報を取得することができるので、光学的情報を取得することが可能な測定範囲を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による血液凝固時間測定装置の全体構成を示した斜視図であり、図2は、図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の検出機構部および搬送機構部を示した平面図である。また、図3〜図14は、図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の構成を説明するための図である。まず、図1〜図14を参照して、本発明の第1実施形態による血液凝固時間測定装置1の全体構成について説明する。
【0028】
本発明の第1実施形態による血液凝固時間測定装置1は、血液の凝固・線溶機能に関連する特定の物質の量や活性の度合いを光学的に測定して分析するための装置であり、血液検体としては血漿を用いる。本実施形態による血液凝固時間測定装置1では、凝固時間法、合成基質法および免疫比濁法を用いて血液検体の光学的な測定を行うことによって、血液検体の凝固時間を測定している。そして、測定項目としては、PT(プロトロンビン時間)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)やFbg(フィブリノーゲン量)などがある。また、合成基質法の測定項目としてはATIII等、免疫比濁法の測定項目としてはDダイマー、FDP等がある。
【0029】
そして、血液凝固時間測定装置1は、図1に示すように、検出機構部2と、検出機構部2の前面側に配置された搬送機構部3と、検出機構部2に電気的に接続された制御装置4とにより構成されている。
【0030】
搬送機構部3は、検出機構部2に血液検体を供給するために、血液検体を収容した複数(本実施形態では、10本)の試験管150が載置されたラック151を検出機構部2の吸引位置2a(図2参照)に搬送する機能を有している。また、搬送機構部3は、未処理の血液検体を収容した試験管150が収納されたラック151をセットするためのラックセット領域3aと、処理済みの血液検体を収容した試験管150が収納されたラック151を収容するためのラック収容領域3bとを有している。
【0031】
検出機構部2は、搬送機構部3から供給された血液検体に対して光学的な測定を行うことにより、供給された血液検体に関する光学的な情報を取得することが可能なように構成されている。本実施形態では、搬送機構部3のラック151に載置された試験管150から検出機構部2のキュベット152(図2参照)内に分注された血液検体に対して光学的な測定が行われる。また、検出機構部2は、図1および図2に示すように、キュベット供給部10と、回転搬送部20と、検体分注アーム30と、第1光学的情報取得部40と、ランプユニット50と、2つの試薬分注アーム60と、キュベット移送部70と、第2光学的情報取得部80と、緊急検体セット部90と、キュベット廃棄部100と、流体部110とを備えている。
【0032】
キュベット供給部10は、ユーザによって無造作に投入された複数のキュベット152(図3および図4参照)を回転搬送部20に順次供給することが可能なように構成されている。このキュベット供給部10は、図2に示すように、ブラケット11(図1参照)を介して装置本体に取り付けられたホッパ12と、ホッパ12の下方に設けられた2つの誘導板13と、2つの誘導板13の下端に配置された支持台14と、支持台14から所定の間隔を隔てて設けられた供給用キャッチャ部15とを含んでいる。2つの誘導板13は、キュベット152のつば部152a(図4参照)の直径よりも小さく、かつ、キュベット152の胴部152b(図4参照)の直径よりも大きくなるような間隔を隔てて互いに平行に配置されている。ホッパ12内に供給されたキュベット152は、つば部152aが2つの誘導板13の上面に係合した状態で、支持台14に向かって滑り落ちながら移動するように構成されている。また、支持台14は、誘導板13を滑り落ちて移動したキュベット152を、供給用キャッチャ部15が把持可能な位置まで回転移送する機能を有している。そして、供給用キャッチャ部15は、支持台14により回転移送されたキュベット152を回転搬送部20に供給するために設けられている。
【0033】
回転搬送部20は、キュベット供給部10から供給されたキュベット152と、血液検体を凝固させる凝固時間測定用試薬を収容した試薬容器(図示せず)とを回転方向に搬送するために設けられている。この回転搬送部20は、図2に示すように、円形状の試薬テーブル21と、円形状の試薬テーブル21の外側に配置された円環形状の試薬テーブル22と、円環形状の試薬テーブル22の外側に配置された円環形状の二次分注テーブル23と、円環形状の二次分注テーブル23の外側に配置された円環形状の一次分注テーブル24とにより構成されている。これらの一次分注テーブル24、二次分注テーブル23、試薬テーブル21および試薬テーブル22は、それぞれ、時計回り方向および反時計回り方向の両方に回転可能で、かつ、各々のテーブルが互いに独立して回転可能なように構成されている。
【0034】
試薬テーブル21および22は、図2に示すように、それぞれ、円周方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた複数の孔部21aおよび22aを含んでいる。試薬テーブル21および22の孔部21aおよび22aは、血液を凝固させる凝固時間測定用試薬を収容した複数の試薬容器(図示せず)を載置するために設けられている。また、一次分注テーブル24および二次分注テーブル23は、それぞれ、円周方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた円筒形状の複数の保持部24aおよび23aを含んでいる。保持部24aおよび23aは、キュベット供給部10から供給されたキュベット152を保持するために設けられている。一次分注テーブル24の保持部24aに保持されたキュベット152には、一次分注処理の際に、搬送機構部3の試験管150に収容される血液検体が分注される。また、二次分注テーブル23の保持部23aに保持されたキュベット152には、二次分注処理の際に、一次分注テーブル24に保持されたキュベット152に収容される血液検体が分注される。また、保持部24aには、図4に示すように、保持部24aの側方の互いに対向する位置に一対の小孔24bが形成されている。この一対の小孔24bは、後述するランプユニット50の分岐光ファイバ58から出射された光を通過させるために設けられている。
【0035】
検体分注アーム30は、搬送機構部3により吸引位置2aに搬送された試験管150に収容される血液検体を吸引するとともに、吸引した血液検体を回転搬送部20に移送されたキュベット152内に分注する機能を有している。
【0036】
第1光学的情報取得部40は、凝固時間測定用試薬や希釈液を添加する前の血液検体中の干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の有無およびその濃度を測定するために、血液検体(希釈液や凝固時間測定用試薬などが添加されていない原検体)から光学的な情報を取得するように構成されている。具体的には、後述するランプユニット50から照射される5種類の光(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の内の4種類の光(405nm、575nm、660nmおよび800nm)を用いて、干渉物質の有無およびその濃度を測定している。
【0037】
この第1光学的情報取得部40による血液検体の光学的な情報の取得は、第2光学的情報取得部80による凝固時間測定用試料の光学的な測定(本測定)の前に行われる。第1光学的情報取得部40は、図2および図3に示すように、一次分注テーブル24の保持部24aに保持されたキュベット152内の血液検体から光学的な情報を取得する。第1光学的情報取得部40は、図3および図4に示すように、発光側ホルダ41と、光電変換素子42(図4参照)と、受光側ホルダ43と、ブラケット44と、光電変換素子42が実装される基板45とを含んでいる。
【0038】
また、受光側ホルダ43は、図4に示すように、ブラケット44(図3参照)を介して発光側ホルダ41に取り付けられており、内部に光電変換素子42が実装される基板45を収容可能な形状に形成されている。この受光側ホルダ43には、所定の位置にスリット43bが設けられた蓋部材43aが取り付けられている。一次分注テーブル24の保持部24aに保持されたキュベット152を透過した後述する分岐光ファイバ58からの光は、保持部24aの一対の小孔24bおよび受光側ホルダ43のスリット43bを介して光電変換素子42により検出される。
【0039】
基板45は、光電変換素子42で検出した透過光量に対応する電気信号を増幅して、制御装置4の制御部4aに送信する機能を有している。基板45は、図5に示すように、プリアンプ45aと、増幅部45bと、A/D変換器45cと、コントローラ45dとにより構成されている。また、増幅部45bは、アンプ45eと、電子ボリューム45fとを有している。プリアンプ45aおよびアンプ45eは、光電変換素子42で検出した電気信号を増幅するために設けられている。増幅部45bのアンプ45eは、コントローラ45dからの制御信号を電子ボリューム45fに入力することによりアンプ45eのゲイン(増幅率)を調整することが可能なように構成されている。A/D変換器45cは、アンプ45eにより増幅された電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するために設けられている。
【0040】
コントローラ45dは、後述するランプユニット50の分岐光ファイバ58から出射される光の波長(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の周期的な変化に合わせて、アンプ45eのゲイン(増幅率)を変化させるように構成されている。また、コントローラ45dは、図5に示すように、制御装置4の制御部4aに電気的に接続されており、第1光学的情報取得部40において取得された透過光量に対応するデジタル信号のデータを制御装置4の制御部4aに送信する。
【0041】
ランプユニット50は、図2に示すように、第1光学的情報取得部40および第2光学的情報取得部80で行われる光学的な測定に用いられる光を供給するために設けられている。すなわち、1つのランプユニット50が、第1光学的情報取得部40および第2光学的情報取得部80に対して共通に用いられるように構成されている。このランプユニット50は、図6および図7に示すように、光源としてのハロゲンランプ51と、集光レンズ52a〜52cと、円盤形状のフィルタ部53と、モータ54と、光透過型のセンサ55と、光ファイバカプラ56と、11本の分岐光ファイバ57(図7参照)と、1本の分岐光ファイバ58(図7参照)とから構成されている。
【0042】
ハロゲンランプ51は、図6に示すように、ハロゲンランプ51が発熱することによって熱せられた空気を冷却するための複数のフィンを有するランプケース51aに収容されている。集光レンズ52a〜52cは、ハロゲンランプ51から照射された光を集光する機能を有している。そして、集光レンズ52a〜52cは、ハロゲンランプ51から照射された光を光ファイバカプラ56に導く光路上に配置されている。また、ハロゲンランプ51から照射されて集光レンズ52a〜52cにより集光された光は、後述するフィルタ部53の光学フィルタ53b〜53fのいずれか1つを透過して光ファイバカプラ56に導かれる。
【0043】
また、ランプユニット50のフィルタ部53は、図8に示すように、モータ54のモータ軸(図示せず)を中心に回転可能に取り付けられている。このフィルタ部53は、5つの光透過特性(透過波長)のそれぞれ異なる光学フィルタ53b〜53fが設けられるフィルタ板53aを備えている。フィルタ板53aには、光学フィルタ53b〜53fを取り付けるための5つの孔53gと、光が透過しないように閉塞される孔53hとが設けられている。そして、5つの孔53gには、それぞれ、光透過特性(透過波長)の異なる5つの光学フィルタ53b、53c、53d、53eおよび53fが設置されている。この孔53gおよび53hは、フィルタ部53の回転方向に沿って所定の角度間隔(本実施形態では、60°の等間隔)で設けられている。なお、孔53hは、予備の孔であり、フィルタの追加が必要となった場合には、フィルタが装着される。
【0044】
光学フィルタ53b、53c、53d、53eおよび53fは、それぞれ、340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nmの波長の光を透過し、その他の波長の光は透過しない。したがって、光学フィルタ53b、53c、53d、53eおよび53fを透過した光は、それぞれ、340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nmの波長特性を有する。
【0045】
また、フィルタ板53aは、円周方向に沿って所定の角度間隔(本実施形態では、60°の等間隔)で6つのスリットが設けられている。それら6つのスリットのうち1つは、他の5つの通常スリット53iよりもフィルタ板53aの回転方向のスリット幅が大きい原点スリット53jである。原点スリット53jおよび通常スリット53iは、隣接する孔53gおよび53hの間の中間角度位置に所定の角度間隔(本実施形態では、60°の等間隔)で形成されている。
【0046】
また、ランプユニット50から一次分注テーブル24のキュベット152および後述するキュベット載置部81のキュベット152に光が照射される場合には、フィルタ部53が連続的に回転するように構成されている。したがって、フィルタ板53aの回転に伴って、集光レンズ52a〜52c(図4参照)により集光された光の光路上に光透過特性の異なる5つの光学フィルタ53b〜53fと、1つの遮光された孔53h(図5参照)とが断続的に順次配置される。このため、波長特性の異なる5種類の光が断続的に順次照射される。なお、本実施形態では、フィルタ部53は、0.1秒間に1回転するように構成されている。したがって、一次分注テーブル24のキュベット152および後述するキュベット載置部81のキュベット152には、0.1秒間に5種類の波長特性の異なる光が順次照射される。そして、第1光学的情報取得部40では、光電変換素子42により、0.1秒間毎に5種類の波長に対応する5個の電気信号が取得されるとともに、第2光学的情報取得部80では、光電変換素子82b(参照光用光電変換素子82e)により、0.1秒間毎に5種類の波長に対応する5個の電気信号が取得される。
【0047】
また、光透過型のセンサ55は、図8に示すように、フィルタ部53の回転に伴う原点スリット53jおよび通常スリット53iの通過を検出するために設けられている。このセンサ55は、原点スリット53jおよび通常スリット53iが通過すると、スリットを介して光源からの光を受光部が検出し、検出信号を出力する。なお、原点スリット53jは、通常スリット53iよりもスリット幅が大きいので、原点スリット53jが通過した場合には、センサ55から出力される検出信号は、通常スリット53iが通過した場合の検出信号よりも、出力期間が長い。したがって、センサ55からの検出信号に基づいて、フィルタ部53が正常に回転しているか否かが監視することが可能となる。
【0048】
また、光ファイバカプラ56は、11本の分岐光ファイバ57および1本の分岐光ファイバ58のそれぞれに光学フィルタ53b〜53fを通過した光を入射させる機能を有している。つまり、光ファイバカプラ56は、11本の分岐光ファイバ57および1本の分岐光ファイバ58に対して、同時に同質の光を導いている。また、11本の分岐光ファイバ57の先端は、図2に示すように、第2光学的情報取得部80に接続されており、ランプユニット50からの光を第2光学的情報取得部80にセットされるキュベット152内の凝固時間測定用試料に導いている。具体的には、図9に示すように、11本の分岐光ファイバ57は、それぞれ、第2光学的情報取得部80の後述する10個の挿入孔81aおよび1つの参照光用測定孔81bに光を供給するように配置されている。また、1本の分岐光ファイバ58の先端は、図2および図3に示すように、11本の分岐光ファイバ57とは異なり、第1光学的情報取得部40に接続されており、ランプユニット50からの光を一次分注テーブル24の保持部24aに保持されるキュベット152内の血液検体に導いている。したがって、光学フィルタ53b〜53fを断続的に通過する波長特性の異なる5種類の光は、分岐光ファイバ57および58を介して、第1光学的情報取得部40および第2光学的情報取得部80の各々に供給されている。
【0049】
試薬分注アーム60は、図1および図2に示すように、回転搬送部20に載置された試薬容器(図示せず)内の凝固時間測定用試薬を回転搬送部20に保持されたキュベット152に分注することにより、キュベット152内の血液検体に凝固時間測定用試薬を混合するために設けられている。これにより、第1光学的情報取得部40による光学的な測定が終了した血液検体に凝固時間測定用試薬を添加して、凝固時間測定用試料が調製される。また、キュベット移送部70は、キュベット152を回転搬送部20と第2光学的情報取得部80との間を移送させるために設けられている。
【0050】
ここで、第1実施形態では、第2光学的情報取得部80は、血液検体に凝固時間測定用試薬を混和して調製された凝固時間測定用試料の加温を行うとともに、ランプユニット50によって複数の波長の光が照射された凝固時間測定用試料から光を経時的に受け、各々の波長について、経時的な光学的な情報を取得するために設けられている。具体的には、第2光学的情報取得部80は、ランプユニット50から照射される5種類の光(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の内の3種類の光(405nm、660nmおよび800nm)を用いて、経過時間毎に透過光量を取得している。なお、分岐光ファイバ57から照射される660nmの波長を有する光は、Fbg(フィブリノーゲン量)、PT(プロトロンビン時間)およびAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)を測定する際に用いられるメイン波長である。また、800nmの波長を有する光は、Fbg、PTおよびAPTTを測定する際に用いられるサブ波長である。合成基質法の測定項目であるATIIIの測定波長は405nmであり、免疫比濁法の測定項目であるDダイマーおよびFDPの測定波長は800nmである。また、血小板凝集の測定波長は、575nmである。このように、本実施形態に係る検体分析装置1は、1つの光源としてのハロゲンランプ51から照射された光をフィルタ部53の光学フィルタ53b〜53fに通して複数の波長の光を得、これらの光を用いて様々な測定項目の測定を行うようになっている。
【0051】
つまり、第1実施形態の第2光学的情報取得部80では、低波長の光の方が高波長の光よりも凝固反応を顕著に捉えることができることを利用して、メイン波長がサブ波長よりも小さくなるように設定されている。具体的には、測定項目がFbg(フィブリノーゲン量)、PT(プロトロンビン時間)およびAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)の場合には、660nmのメイン波長が800nmのサブ波長よりも小さくなるように設定されている。
【0052】
この第2光学的情報取得部80は、図2に示すように、キュベット載置部81と、キュベット載置部81の下方に配置された検出部82とにより構成されている。キュベット載置部81には、図9に示すように、キュベット152(図2参照)を挿入するための10個の挿入孔81aと、キュベット152を挿入せずに参照光を測定するための1つの参照光用測定孔81bとが設けられている。また、キュベット載置部81には、挿入孔81aに挿入されたキュベット152を所定の温度に加温するための加温機構(図示せず)が内蔵されている。
【0053】
また、参照光用測定孔81bは、分岐光ファイバ57から照射された光の特性を監視するために設けられている。具体的には、分岐光ファイバ57から照射された光を直接検出部82の参照光用光電変換素子82eに受光させることにより、ランプユニット50のハロゲンランプ51(図6参照)に由来する揺らぎなどの特性を電気信号として検出している。そして、検出した光の特性(電気信号)を挿入孔81aに挿入されたキュベット152内の凝固時間測定用試料の透過光に対応する信号から減算処理することにより、凝固時間測定用試料の透過光に対応する信号を補正する。これにより、光学的な情報の測定毎に光の特性による微差が生じるのを抑制することが可能である。
【0054】
また、第2光学的情報取得部80の検出部82は、挿入孔81aに挿入されたキュベット152内の凝固時間測定用試料に対して複数の条件下で光学的な測定(本測定)を行うことが可能なように構成されている。この検出部82には、図7および図8に示すように、キュベット152が挿入される各挿入孔81aに対応して、コリメータレンズ82a、光電変換素子82bおよびプリアンプ82cが設けられるとともに、参照光用測定孔81b(図1参照)に対応して、参照光用コリメータレンズ82d、参照光用光電変換素子82eおよび参照光用プリアンプ82fが設けられている。
【0055】
コリメータレンズ82aは、図9および図10に示すように、ランプユニット50(図6参照)からの光を誘導する分岐光ファイバ57の端部と、対応する挿入孔81aとの間に設置されている。このコリメータレンズ82aは、分岐光ファイバ57から出射された光を平行光にするために設けられている。また、光電変換素子82bは、挿入孔81aを挟んで分岐光ファイバ57の端部に対向するように設置された基板83の挿入孔81a側の面に取り付けられている。そして、光電変換素子82bは、挿入孔81aに挿入されたキュベット152内の凝固時間測定用試料に光を照射したときに凝固時間測定用試料を透過する光(以下、透過光という)を検出するとともに、検出した透過光に対応する電気信号(アナログ信号)を出力する機能を有している。この光電変換素子82bは、ランプユニット50の分岐光ファイバ57から照射される5種類の光を受光するように配置されている。
【0056】
プリアンプ82cは、基板83の挿入孔81aと反対側の面に取り付けられており、光電変換素子82bからの電気信号(アナログ信号)を増幅するために設けられている。
【0057】
そして、基板83には、図11に示すように、上記した光電変換素子82b(参照光用光電変換素子82e)、プリアンプ82c(参照光用プリアンプ82f)の他に、増幅部82gと、A/D変換器82hと、ロガー82iと、コントローラ82jとが設けられている。そして、増幅部82gは、所定のゲイン(増幅率)を有するアンプ(L)82kと、アンプ(L)82kよりも高いゲイン(増幅率)を有するアンプ(H)82lと、切替スイッチ82mとを有している。本実施形態では、プリアンプ82cからの電気信号は、アンプ(L)82kおよびアンプ(H)82lの両方に入力される。アンプ(L)82kおよびアンプ(H)82lは、プリアンプ82cからの電気信号をさらに増幅するために設けられている。また、切替スイッチ82mは、アンプ(L)82kからの電気信号をA/D変換器82hに出力するか、アンプ(H)82lからの電気信号をA/D変換器82hに出力するかを選択するために設けられている。この切替スイッチ82mは、コントローラ82jからの制御信号が入力されることにより切替動作を行うように構成されている。
【0058】
A/D変換器82hは、増幅部82gからの電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換するために設けられている。ロガー82iは、A/D変換器82hからのデジタル信号のデータを一時的に保存するための機能を有している。このロガー82iは、制御装置4の制御部4aに電気的に接続されており、第2光学的情報取得部80において取得されたデジタル信号のデータを制御装置4の制御部4aに送信する。
【0059】
緊急検体セット部90は、図1および図2に示すように、緊急を要する血液検体に対しての検体分析処理を行うために設けられている。この緊急検体セット部90は、搬送機構部3から供給された血液検体に対しての検体分析処理が行われている際に、緊急検体を割り込ませることが可能なように構成されている。キュベット廃棄部100は、回転搬送部20のキュベット152を廃棄するために設けられている。キュベット廃棄部100は、図2に示すように、廃棄用キャッチャ部101と、廃棄用キャッチャ部101から所定の間隔を隔てて設けられた廃棄用孔102(図1参照)と、廃棄用孔102の下方に設置された廃棄ボックス103とにより構成されている。廃棄用キャッチャ部101は、回転搬送部20のキュベット152を、廃棄用孔102(図1参照)を介して廃棄ボックス103に移動させるために設けられている。流体部110は、血液凝固時間測定装置1のシャットダウン処理の際に、各分注アームに設けられるノズルに洗浄液などの液体を供給するために設けられている。
【0060】
制御装置4(図1参照)は、パーソナルコンピュータ(PC)などからなり、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部4aと、表示部4bと、キーボード4cとを含んでいる。また、表示部4bは、血液検体中に存在する干渉物質(ヘモグロビン、乳び(脂質)およびビリルビン)に関する情報や、第2光学的情報取得部80から送信されたデジタル信号のデータを分析して得られた分析結果(凝固時間)などを表示するために設けられている。
【0061】
次に、制御装置4の構成について説明する。制御装置4は、図12に示すように、制御部4aと、表示部4bと、キーボード4cとから主として構成されたコンピュータ401によって構成されている。制御部4aは、CPU401aと、ROM401bと、RAM401cと、ハードディスク401dと、読出装置401eと、入出力インタフェース401fと、通信インタフェース401gと、画像出力インタフェース401hとから主として構成されている。CPU401a、ROM401b、RAM401c、ハードディスク401d、読出装置401e、入出力インタフェース401f、通信インタフェース401g、および画像出力インタフェース401hは、バス401iによって接続されている。
【0062】
CPU401aは、ROM401bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM401cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム404aをCPU401aが実行することにより、コンピュータ401が制御装置4として機能する。
【0063】
ROM401bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU401aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータなどが記録されている。
【0064】
RAM401cは、SRAMまたはDRAMなどによって構成されている。RAM401cは、ROM401bおよびハードディスク401dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU401aの作業領域として利用される。
【0065】
ハードディスク401dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU401aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。本実施形態に係る血液凝固時間測定用のアプリケーションプログラム404aも、このハードディスク401dにインストールされている。
【0066】
読出装置401eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体404に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体404には、血液凝固時間測定用のアプリケーションプログラム404aが格納されており、コンピュータ401がその可搬型記録媒体404からアプリケーションプログラム404aを読み出し、そのアプリケーションプログラム404aをハードディスク401dにインストールすることが可能である。
【0067】
なお、上記アプリケーションプログラム404aは、可搬型記録媒体404によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ401と通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。たとえば、上記アプリケーションプログラム404aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ401がアクセスして、そのアプリケーションプログラム404aをダウンロードし、これをハードディスク401dにインストールすることも可能である。
【0068】
また、ハードディスク401dには、たとえば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラム404aは上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0069】
出力インタフェース401fは、たとえば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インタフェース401fには、キーボード4cが接続されており、ユーザがそのキーボード4cを使用することにより、コンピュータ401にデータを入力することが可能である。
【0070】
通信インタフェース401gは、たとえば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。コンピュータ401は、その通信インタフェース401gにより、所定の通信プロトコルを使用して検出機構部2との間でデータの送受信が可能である。
【0071】
画像出力インタフェース401hは、LCDまたはCRTなどで構成された表示部4bに接続されており、CPU401aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部4bに出力するようになっている。表示部4bは、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0072】
また、制御部4aのハードディスク401dにインストールされた血液凝固時間測定用のアプリケーションプログラム404aは、検出機構部2の第2光学的情報取得部80から送信された凝固時間測定用試料の透過光量(デジタル信号のデータ)を用いて、凝固時間測定用試料の凝固時間を測定している。この凝固時間は、キュベット152内の血液検体を凝固させる凝固時間測定用試薬が添加された時点から、凝固時間測定用試料(凝固時間測定用試薬が添加された血液検体)が流動性を失うまでの時間(凝固時間)である。この凝固時間測定用試料が流動性を失う凝固反応は、血液検体中のフィブリノーゲンが、添加された凝固時間測定用試薬によりフィブリンに変化する反応である。そして、第1実施形態の血液凝固時間測定装置1では、血液検体中のフィブリノーゲン量に依存して反応するこの凝固反応を、図13および図14に示した凝固時間測定用試料の透過光量の変化量(反応前の透過光量と反応後の透過光量との差)によって確認している。
【0073】
ここで、第1実施形態では、血液凝固時間測定用のアプリケーションプログラム404aは、第2光学的情報取得部80から送信された凝固時間測定用試料の経時的な透過光量のデータ(デジタル信号のデータ)のうち、凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の期間(図13の斜線(ハッチング)の領域)に検出された透過光量を用いて、血液検体中の干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の有無およびその濃度を測定する機能を有している。具体的には、アプリケーションプログラム404aは、受信した経時的な透過光量(デジタル信号のデータ)のうちから、凝固時間測定用試薬の添加後の3.0sec〜4.0secの間に測定された透過光量のデータ(デジタル信号のデータ)を選択して、選択した複数の透過光量の平均値を算出している。したがって、本実施形態では、ランプユニット50のフィルタ部53(図8参照)が0.1秒間に1回転するように構成されていることから、アプリケーションプログラム404aは、3.0sec〜4.0secの間に取得された10個の透過光量の平均値を算出する。
【0074】
さらに、第1実施形態では、血液凝固時間測定用のアプリケーションプログラム404aは、第1光学的情報取得部40から送信された血液検体の経時的な透過光量のデータ(デジタル信号のデータ)を用いて、血液検体中の干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の有無およびその濃度を測定する機能も有している。
【0075】
ここで、図13および図14を参照して、血液検体に凝固時間測定用試薬を添加した凝固時間測定用試料の凝固反応(凝固時間)について詳細に説明する。
【0076】
血液凝固時間測定装置1で干渉物質(乳び)が混入した血液検体を測定した場合、図13に示すように、低波長側のメイン波長(660nm)で測定した測定結果は、干渉物質(乳び)の影響を受けて小さくなり、約190〜約220の透過光量となる。また、メイン波長を用いた場合には、血液の凝固反応を示す透過光量の変化量ΔH1(反応前の透過光量と反応後の透過光量との差)も干渉物質(乳び)の影響を受けて小さくなる傾向がある。これに対して、高波長側のサブ波長(800nm)で測定した測定結果は、後述するように干渉物質(乳び)の影響を受けにくく、メイン波長で測定した透過光量(約190〜約220)より大きくなり、約350〜約390の透過光量となる。また、サブ波長を用いた場合には、血液の凝固反応を示す透過光量の変化量ΔH2(>ΔH1)も干渉物質の影響を受けにくく、小さくなりにくい。したがって、干渉物質(乳び)が混入した血液検体を測定する場合には、高波長側のサブ波長で測定した方が、低波長側のメイン波長で測定するよりも凝固反応を大きく捉えることが可能である。
【0077】
一方、干渉物質が混入していない正常血液検体を測定した場合、図14に示すように、低波長側のメイン波長(660nm)で測定した透過光量の変化量ΔH3(=約980(=反応前の透過光量(約2440)−反応後の透過光量(約1460)))の方が、高波長側のサブ波長で測定した透過光量の変化量ΔH4(=約720(=反応前の透過光量(約2630)−反応後の透過光量(約1910)))より大きくなる。したがって、正常血液検体を測定する場合には、低波長側のメイン波長で測定した方が、高波長側のサブ波長で測定するよりも凝固反応を大きく捉えることが可能である。
【0078】
図15〜図20は、干渉物質の吸光度スペクトルを示したグラフである。次に、図15〜図20を参照して、第1光学的情報取得部40に導かれる分岐光ファイバ58および第2光学的情報取得部80に導かれる分岐光ファイバ57から照射される4種類の波長(405nm、575nm、660nmおよび800nm)の光について詳細に説明する。
【0079】
660nmの波長を有する光および800nmの波長を有する光は、図15〜図17に示すように、ヘモグロビンおよびビリルビンが実質的に吸収せず、かつ、乳びが吸収する光である。また、575nmの波長を有する光は、ビリルビンが実質的に吸収せず、かつ、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する光である。また、405nmの波長を有する光は、ヘモグロビン、ビリルビンおよび乳びのいずれもが吸収する光である。そして、図17に示すように、乳びは、低波長域の405nmから高波長域の800nmまでの波長の光を吸収していることが分かる。したがって、ヘモグロビンに乳びを添加した場合には、図18に示すように、図15に示したヘモグロビンの吸光度スペクトルに比べて、乳びの吸光度(吸収する光)の分だけ、ヘモグロビンの吸光度スペクトルのベースラインが上昇していることが分かる。また、ビリルビンに乳びを添加した場合にも、図19に示すように、図16に示したビリルビンの吸光度スペクトルに比べて、乳びの吸光度の分だけ、ビリルビンの吸光度スペクトルのベースラインが上昇していることが分かる。また、図17に示すように、660nmの波長を有する光の方が、800nmの波長を有する光に比べて、乳びによる吸収が多いため、800nmの波長を有する光で測定した光学的な情報の方が、660nmの波長を有する光で測定した光学的な情報より、乳びの影響が小さいことが分かる。
【0080】
このように、各干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)毎に吸収の大きい波長は異なっているため、後述する定性判定の結果や、血液検体中に含まれる干渉物質の種類に応じて、分析に用いる波長の選択や本測定の中止などを判定することができる。また、干渉物質毎の定性判定を行わなくても、測定波長毎に干渉物質の影響があるか否かを定性的に判定してもよい。この場合には、干渉物質の影響が実質的にないと判定された波長を分析に使用し、干渉物質の影響があると判定された波長を分析に用いないようにすればよい。
【0081】
本実施形態による血液凝固時間測定装置1で測定しようとする血液検体(血漿)には、干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)が含まれている場合があり、405nmの波長を有する光を用いて測定した血液検体の吸光度は、乳びの吸光度、ヘモグロビンの吸光度およびビリルビンの吸光度が寄与している。また、575nmの波長を有する光を用いて測定した血液検体の吸光度は、乳びの吸光度およびヘモグロビンの吸光度が寄与して、ビリルビンの吸光度は寄与していない。また、660nmおよび800nmの波長を有する光を用いて測定した血液検体の吸光度は、乳びの吸光度のみが寄与して、ヘモグロビンの吸光度およびビリルビンの吸光度は寄与していない。したがって、660nmおよび/または800nmの波長を有する光を用いて測定した血液検体の吸光度を分析することにより、血液検体中の乳びの含有量が測定に悪影響を与える量であるか否かを判定することが可能となる。また、575nmの波長を有する光を用いて測定した血液検体の吸光度から、乳びの影響(吸光度)を除去することにより、血液検体中のヘモグロビンの含有量が測定に悪影響を与える量であるか否かを判定することが可能となる。そして、405nmの波長を有する光を用いて測定した血液検体の吸光度から、乳びの影響(吸光度)およびヘモグロビンの影響(吸光度)を除去することにより、血液検体中のビリルビンの含有量が測定に悪影響を与える量であるか否かを判定することが可能となる。
【0082】
また、図17に示した乳びの吸光度スペクトルを両対数グラフにプロットした場合には、図20に示すように、乳びの吸光度スペクトルは、実質的に一次式(直線)になることが知られている。すなわち、その一次式(直線)は、定数aおよびbを用いて、以下の式(1)のように表すことができる。
log10Y = alog10X+b ・・・(1)(Y:吸光度、X:波長)
【0083】
図21は、図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の検体分析動作の手順を示したフローチャートである。図22は、図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の制御装置の表示部に出力された検体分析一覧表を示した図である。次に、図1〜図5、図8〜図13、図21および図22を参照して、血液凝固時間測定装置1の血液検体の測定動作について詳細に説明する。
【0084】
まず、使用者が、図1および図2に示した血液凝固時間測定装置1の検出機構部2および制御装置4の電源をそれぞれオン状態にすることにより、血液凝固時間測定装置1が起動され、これにより、血液凝固時間測定装置1の初期設定が行われる。上記した初期設定においては、キュベット152を移動させるための機構と各分注アームとを初期位置に戻すための動作が行われることで、検出機構部2が初期化されるとともに制御装置4の制御部4aのレジスタの初期化が行われる。そして、使用者による検体分析情報の入力が行われる。すなわち、使用者は、制御装置4のキーボード4cを用いて、制御装置4の表示部4bに出力される検体分析一覧表(図22参照)中の検体番号および測定項目の欄に情報の入力を行う。制御部4aは、これらの検体分析情報の入力を受け付け、これらの検体分析情報は制御部4aに保存される。
【0085】
なお、使用者がキーボード4cを用いて検体分析情報を入力するのではなく、検体を収容した試験管150に予めバーコードラベルなどを貼付しておき、これをバーコードリーダなどで読み取ることによって制御部4aが検体分析情報を取得できるように構成されていてもよい。この場合、バーコードラベルのデータが読み取られると、制御部4aは、検体分析情報などを管理するホストコンピュータにアクセスし、バーコードから読み取られたデータに対応する検体分析情報を取得することができる。これにより、使用者が検体分析情報を入力することなく制御部4aが検体分析情報を取得することができる。
【0086】
ここで、図22に示した検体分析一覧表について説明する。検体番号の欄には、個々の検体を識別するための番号(「000101」など)が入力される。また、検体番号に関連付けられた測定項目の欄には、検体に対して行われる凝固時間の測定の項目を示した記号(「PT」や「APTT」など)が入力される。また、検体分析一覧表には、二次分注フラグの項目と、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの3つの小項目を含む干渉物質フラグの項目と、波長変更フラグの項目と、Highゲインフラグの項目とが設けられている。これらの各項目は、ステップS1の初期設定においてオフ(表中では「0」で表示)に設定されているが、第1光学的情報取得部40からの光学的情報の分析結果に応じて、オン(表中では「1」で表示)に変更される。なお、図22は、いずれの項目もオフである状態を示している。二次分注フラグがオンの状態は、その測定項目について、検体が二次分注の対象であることを示す。干渉物質フラグのビリルビン、ヘモグロビンまたは乳びのフラグがオンの状態は、その測定項目について、検体がビリルビン、ヘモグロビンまたは乳びの影響を受けている可能性が高いことを示す。波長変更フラグがオンの状態は、その測定項目について、メイン波長(たとえば、660nm)の光とは異なるサブ波長(たとえば、800nm)の光を用いて取得された光学的情報を解析の対象とすることを示す。Highゲインフラグがオンの状態は、通常のアンプ45eのゲイン(増幅率)よりも高いゲイン(増幅率)で取得した光学的情報を解析の対象とすることを示す。
【0087】
検体番号および測定項目の入力がされた後には、測定用試料の調製に必要な試薬を収容した試薬容器(図示せず)と、検体を収容した試験管150とが各々所定の位置にセットされた状態で、使用者による分析処理開始の入力が行われる。そして、使用者による分析処理開始の入力が行われることにより、測定開始を指示するデータが検出機構部2へ送信され、図2に示した搬送機構部3によって、検体を収容した試験管150が載置されたラック151の搬送が行われる。これにより、ラックセット領域3aのラック151が検出機構部2の吸引分注位置2aに対応する位置まで搬送される。そして、ステップS1において、検体分注アーム30(図2参照)により試験管150から所定量の血液検体の吸引が行われる。そして、検体分注アーム30を回転搬送部20の一次分注テーブル24に保持されたキュベット152の上方に移動させる。その後、検体分注アーム30から一次分注テーブル24のキュベット152内に血液検体が吐出されることにより、キュベット152内に血液検体が分取される。
【0088】
そして、一次分注テーブル24を回転させて、血液検体が分注されたキュベット152を第1光学的情報取得部40による測定が可能な位置に搬送する。これにより、ステップS2において、第1光学的情報取得部40によりキュベット152内の血液検体(凝固時間測定用試薬などが添加される前の原検体)に対して複数の条件下で光学的な測定が行われることによって、血液検体から複数(5種類)の透過光量が取得される。具体的には、一次分注テーブル24の保持部24a(図4参照)に保持されたキュベット152へ、ランプユニット50の分岐光ファイバ58から5種類(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の異なる波長の光が照射される。分岐光ファイバ58から照射され、キュベット152およびキュベット152内の血液検体を透過した透過光は、順次、光電変換素子42に検出される。そして、光電変換素子42により検出された透過光量の電気信号をプリアンプ45a(図5参照)およびアンプ45eで増幅するとともに、A/D変換器45cでデジタル信号に変換する。その後、コントローラ45dにより、透過光量に対応するデジタル信号のデータが制御装置4の制御部4aに送信される。これにより、第1光学的情報取得部40による血液検体に対する透過光量(デジタル信号のデータ)の取得が完了する。なお、制御装置4の制御部4aでは、受信した透過光量のデータから各波長ごとに吸光度が算出される。
【0089】
そして、ステップS3において、制御装置4のCPU401a(図12参照)は、第1光学的情報取得部40(図3参照)から送信された透過光量のデータ(デジタル信号のデータ)を用いて、血液検体(原検体)中に含まれる干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の濃度および有無を推定し、その後、ステップS4において、干渉物質に関する定性判定を実行する。この定性判定では、各干渉物質毎に、強陽性(検体に多量に含まれている)、弱陽性(検体に所定量含まれている)、および陰性(検体に実質的に含まれていない)のいずれに該当するかが判断される。ここで、ステップS3およびステップS4の処理について詳細に説明する。CPU401aは、受信したデジタル信号のデータを用いて、血液検体の吸光度を算出するとともに、その血液検体中の干渉物質(乳び、ヘモグロビン、ビリルビン)の有無およびその濃度を算出する。具体的には、CPU401aは、ランプユニット50から照射される4種類(405nm、575nm、660nmおよび800nm)の光を用いて取得された透過光量のデータを用いて、血液検体の吸光度を算出するとともに、干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の有無およびその濃度を算出する。そして、CPU401aは、算出した血液検体中の干渉物質の有無およびその濃度に基づいて、干渉物質の定性判定を行う。なお、この定性判定として、検体中に干渉物質が実質的に含まれていないことを示す陰性「−」、検体中に干渉物質が所定量含まれていることを示す弱陽性「+」、および、検体中に干渉物質が多量に含まれていることを示す強陽性「++」がある。このような定性判定の結果は、後述するステップS15において、ステップS13で得られた凝固時間などの分析結果とともに、制御装置4の表示部4bに表示される。
【0090】
そして、CPU401aは、ステップS5において、上記したステップS4の定性判定の結果に基づいて本測定が可能か否かを判定する。ここで、ステップS5の処理を詳細に説明する。図15〜図17に示すように、干渉物質毎に影響を及ぼす波長は異なる。すなわち、ヘモグロビンは660nmおよび800nmの波長の光を実質的に吸収しないが、405nmおよび575nmの光を吸収する。したがって、ヘモグロビンは、660nm又は800nmの光を用いた分析には実質的に影響を及ぼさないが、405nm又は575nmの光を用いた分析には影響を及ぼすことがわかる。同様にして、ビリルビンは、575nm、660nm又は800nmの光を用いた分析には実質的に影響を及ぼさないが、405nmの光を用いた分析には影響を及ぼす。また、乳びは、全ての波長(405nm、575nm、660nmおよび800nm)において分析に影響を及ぼす。このように、干渉物質に関する定性判定の結果、ヘモグロビンが検体中に多量に含まれている(強陽性)場合には、測定波長が405nmまたは575nmである検査項目については、正常に血液凝固時間の分析を実施することができない。また、ビリルビンが検体中に多量に含まれている(強陽性)場合には、測定波長が405nmである検査項目については、正常に血液凝固時間の分析を実施することができない。一方、乳びが検体中に多量に含まれている(強陽性)場合には、いずれの測定波長においても強く影響を受けるため、正常に血液凝固時間の分析を行うことができない。したがって、定性判定の結果、ヘモグロビンが強陽性であり、かつ、測定波長が405nmもしくは575nmの測定項目の場合、ビリルビンが強陽性であり、かつ、測定波長が405nmの測定項目の場合、又は乳びが強陽性の場合には、本測定が不可能と判断することができる。そして、ステップS5において、本測定が不可能と判定された場合には、ステップS6において、測定結果にフラグが付与されて、測定エラーとなる。その後、後述するステップS15において、制御装置4の表示部4bに、「測定エラー」が表示されるとともに、エラーコードが表示される。これにより、ユーザーは、表示部4bに表示されるエラーコードと、取り扱い説明書などに記載されるエラーコードとを照合して、エラー内容を確認することが可能となる。
【0091】
ステップS5において、本測定が可能と判定された場合には、ステップS7において、CPU401aにより分析に使用する波長が選択される。上述したように、定性判定の結果、乳びが陰性の場合には、メイン波長(660nm)が選択され、乳びが弱陽性の場合には、サブ波長(800nm)が選択される。そして、メインは長が選択される場合には、波長変更フラグがオフのままとされ、サブ波長が選択される場合には、波長変更フラグがオンにセットされる。
【0092】
そして、ステップS8において、後述する凝固時間測定用試料が収容されるキュベット152が挿入される予定の挿入孔81aに対応する光電変換素子82b(図9参照)により、分岐光ファイバ57から照射される光が受光される。これにより、所定のキュベット152が挿入される予定の挿入孔81aに対応する分岐光ファイバ57固有の揺らぎなどの光特性を電気信号として検出することが可能となる。その結果、この挿入孔81aに挿入されるキュベット152内の凝固時間測定用試料から取得された電気信号から、挿入孔81aにキュベット152を挿入しない状態で検出された電気信号を減算処理することにより、凝固時間測定用試料の透過光に対応する信号を補正することが可能となる。これにより、キュベット152が挿入される位置により、取得した電気信号に微差が生じるのを抑制することが可能となる。なお、本実施形態では、試薬分注アーム60により凝固時間測定用試薬が血液検体に添加されてから、キュベット152が挿入されるまでの3秒間に上記した分岐光ファイバ57固有の電気信号が検出される。
【0093】
その後、ステップS9において、検体分注アーム30により一次分注テーブル24の保持部24aに保持されたキュベット152から所定量の血液検体が吸引される。そして、検体分注アーム30から二次分注テーブル23の複数のキュベット152に所定量の血液検体が各々吐出されることにより二次分注処理が行われる。そして、試薬分注アーム60を駆動させて、試薬テーブル21および22に載置された試薬容器(図示せず)内の血液を凝固させる凝固時間測定用試薬を二次分注テーブル23のキュベット152内の血液検体に添加する。これにより、凝固時間測定用試料の調製が行われる。そして、ステップS10において、キュベット移送部70を用いて、凝固時間測定用試料が収容された二次分注テーブル23のキュベット152を第2光学的情報取得部80のキュベット載置部81の挿入孔81aに移動させる。凝固時間測定用試料が収容されたキュベット152がキュベット載置部81の挿入孔81aに挿入された後、第2光学的情報取得部80の検出部82によりキュベット152内の凝固時間測定用試料に対して複数の条件下で光学的な測定(本測定)が行われることによって、凝固時間測定用試料から複数(10種類)の透過光量が取得される。具体的には、まず、キュベット載置部81の挿入孔81aに挿入されたキュベット152は、加温機構(図示せず)により所定の温度に加温される。その後、図10に示すように、キュベット載置部81のキュベット152へ、ランプユニット50の分岐光ファイバ57から光が照射される。なお、分岐光ファイバ57からは、5つの異なる波長(340nm、405nm、575nm、660nmおよび800nm)の光が、フィルタ部53(図8参照)の回転によって周期的に照射される。分岐光ファイバ57から照射され、キュベット152およびキュベット152内の凝固時間測定用試料を透過した上記各波長の光は、光電変換素子82bによって順次検出される。そして、光電変換素子82bにより変換された5つの異なる波長の光に対応する透過光量の電気信号がプリアンプ82cで増幅された後、順次、増幅部82gに入力される。
【0094】
増幅部82gでは、プリアンプ82c(図11参照)からの5つの異なる波長の光に対応する透過光量の電気信号が、増幅率の高いアンプ(H)82lおよび通常の増幅率のアンプ(L)82kに各々入力される。そして、コントローラ82jにより切替スイッチ82mを制御することにより、アンプ(H)82lにより増幅された電気信号がA/D変換器82hに出力された後、アンプ(L)82kにより増幅された電気信号がA/D変換器82hに出力される。ここで、切替スイッチ82mは、ランプユニット50におけるフィルタ部53(図8参照)の回転のタイミングに応じて繰り返し切り替えられる。これにより、増幅部82gにおいては、5つの異なる波長の光に対応する透過光量の電気信号がそれぞれ2つの異なる増幅率で増幅され、合計10種類の電気信号がA/D変換器82hに繰り返し出力される。そして、10種類の電気信号は、A/D変換器82hでデジタル信号に変換され、ロガー82iに一時的に記憶された後、制御装置4の制御部4aに順次送信される。
【0095】
そして、凝固時間測定用試料が収容されたキュベット152が挿入孔81aに挿入された時点(凝固時間測定用試薬が添加されてから3.0秒経過時点)から、凝固反応が終了する時点までの期間に、透過光量に対応する電気信号が光電変換素子82bにより検出されて、制御装置4の制御部4aに順次送信される。これにより、制御装置4のCPU401aは、受信した経時的な透過光量のデータを用いて、各波長ごとの透過光量の変化量(=反応前の透過光量−反応後の透過光量)を算出する。
【0096】
そして、第2光学的情報取得部80による透過光量のデータの取得(本測定)の後、ステップS11において、CPU401aは、ラグフェーズ(凝固時間測定用試薬が添加されてから4.0秒経過時点)における透過光量のデータを用いて、凝固時間測定用試料中に含まれる干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の濃度および有無を推定する。凝固反応は、内因系または外因系の多くの反応を経由して、血漿中のフィブリノーゲンがフィブリンに転化され血液凝固が起こる反応である。すなわち、血漿に血液凝固試薬を混和しても、すぐには血液凝固が開始せず、外因系(PT測定試薬)で通常7秒程度、内因系(APTT測定試薬)で通常14秒程度経過後に、凝固反応が起こる。したがって、この凝固反応を示す前の時点(ラグフェーズという)の光学情報は、凝固反応による光学的変化が生じる前のものであり、検体が希釈された状態と同じ光学情報であるといえる。そのため、凝固時間測定用試薬によって希釈された状態の検体から、干渉物質の濃度および有無を推定することができる。
【0097】
次に、CPU401aは、ステップS12において、CPU401aにより、血液検体(原検体)を用いてステップS3において推定された干渉物質の推定結果と、凝固時間測定用試料を用いてステップS11において推定された干渉物質の推定結果との差が所定の閾値以内か否かが判断される。すなわち、ステップS12では、同一の血液検体から取得された両推定結果にばらつきが生じるのを監視している。
【0098】
そして、ステップS12において、両推定結果の差が閾値以内の場合には、ステップS13において、第2光学的情報取得部80において測定された複数の透過光量のデータの中から、メイン波長およびサブ波長のうち、ステップS7で選択された波長で測定した凝固時間測定用試料の透過光量のデータを用いてCPU401aが血液凝固時間を分析する。たとえば、血液検体の検査項目が「PT」の場合であって、波長変更フラグがオフのときには、「PT」のメイン波長である660nmを有する光を照射して測定された透過光量のデータが分析に使用される。その後、CPU401aは、ステップS15において、血液凝固時間および各種フラグなどの分析結果を出力する。
【0099】
一方、ステップS12において、制御装置4のCPU401aにより、両推定結果の差が閾値より大きいと判断された場合には、ステップS14において、測定結果にフラグが付与されて、測定エラーとなる。その後、ステップS15において、制御装置4の表示部4bに、「測定エラー」が表示されるとともに、エラーコードが表示される。これにより、ユーザーは、表示部4bに表示されるエラーコードと、取り扱い説明書などに記載されるエラーコードとを照合して、エラー内容を確認することが可能となる。このようにして、血液凝固時間測定装置1の血液検体の分析動作が終了する。
【0100】
図23〜図26は、図21のステップS11の干渉物質の濃度推定処理の詳細(サブルーチン)を説明するためのフローチャートである。次に、図20、図21、図22〜図26を参照して、図21のステップS11の干渉物質の濃度推定処理について詳細に説明する。
【0101】
第2光学的情報取得部80において取得されたラグフェーズにおける凝固時間測定用試料の透過光量のデータにより、図23に示したステップS31において、各波長(405nm、575nm、660nmおよび800nm)の光に対するラグフェーズにおける凝固時間測定用試料の吸光度が算出される。具体的には、CPU401aは、凝固時間測定用試料が収容されたキュベット152が挿入孔81aに挿入された時点(凝固時間測定用試薬が添加されてから3.0秒経過時点)から、凝固反応が始まる前の時点(凝固時間測定用試薬が添加されてから4.0秒経過時点)までの期間に取得された合計10個の透過光量のデータの平均値を用いて、吸光度を算出している。ここで、吸光度Aは、凝固時間測定用試料の光透過率T(%)を用いて、以下の式(2)により求められる値である。
A = −log10(T/100) ・・・(2)
【0102】
そして、ステップS32において、乳びのチェックが行われる。具体的には、図24に示すように、ステップS32aにおいて、660nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.660)が所定値よりも大きいか否かが判断される。そして、ステップS32aにおいて、660nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.660)が所定値より大きいと判断された場合には、ステップS32bにおいて、凝固時間測定用試料中に乳びが存在していると判断されて、検体分析一覧表(図22参照)中の乳びフラグの項目がオフ(表中では「0」)からオン(表中では「1」)に変更される。これに対して、ステップS32aにおいて、660nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.660)が所定値以下であると判断された場合には、凝固時間測定用試料中の乳びの含有量が、上述の本測定に影響を与えない程度であると判断されて、検体分析一覧表中の乳びフラグの項目がオフ(表中では「0」)状態で維持される。なお、第1実施形態では、660nmの波長の光を用いて、凝固時間測定用試料中の乳びの含有量を測定したが、800nmの波長の光を用いて、凝固時間測定用試料中の乳びの含有量を測定してもよい。
【0103】
そして、第1実施形態では、ステップS32cにおいて、660nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.660)を用いて、乳びの補正式を求める。具体的には、下記の乳びの吸光度の標準式(3)を予め定めておく。
Y = 10b0・Xa0 ・・・(3)
【0104】
この標準式は、標準的な乳びの吸光度Yと波長Xとの関係式である。つまり、上記式(1)の未知数aおよびbとしてa0およびb0を定め、吸光度の式となるように(左辺がYとなるように)変形した式である。そして、測定した吸光度(Abs.660)と標準式による660nmにおける吸光度(Abs.660標準)(標準式に波長660を代入して得られた吸光度)との差{(Abs.660)−(Abs.660標準)}を、この標準式の右辺に加算する。これにより、以下の乳びの補正式(4)が求められる。
y = 10b0・xa0+{(Abs.660)−(Abs.660標準)}・・・(4)
【0105】
そして、ステップS32dにおいて、上記したステップS32cにおいて求められた乳びの補正式から575nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.575乳び推定値)が算出される。つまり、補正式(4)に波長(x=575nm)を代入することによって、575nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(y=Abs.575乳び推定値)が算出される。
【0106】
そして、ステップS32eにおいて、上記したステップS32dと同様にして、乳びの補正式(4)から405nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.405乳び推定値)が算出される。つまり、補正式(4)に波長(x=405nm)を代入することによって、405nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(y=Abs.405乳び推定値)が算出される。
【0107】
次に、図23に示したステップS33において、ヘモグロビンのチェックが行われる。具体的には、図25に示すように、ステップS33aにおいて、575nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.575)から上記したステップS32d(図20参照)で算出された575nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.575乳び推定値)を差し引くことによって、575nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.575)を補正して、575nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度を推定する。そして、推定した575nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度((Abs.575)−(Abs.575乳び推定値))が所定値よりも大きいか否かが判断される。そして、ステップS33aにおいて、((Abs.575)−(Abs.575乳び推定値))が所定値より大きいと判断された場合には、ステップS33bにおいて、凝固時間測定用試料中にヘモグロビンが存在していると判断されて、検体分析一覧表(図22参照)中のヘモグロビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)からオン(表中では「1」)に変更される。これに対して、ステップS33aにおいて、((Abs.575)−(Abs.575乳び推定値))が所定値以下であると判断された場合には、凝固時間測定用試料中のヘモグロビンの含有量が本測定に影響を与えない程度であると判断されて、検体分析一覧表中のヘモグロビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)状態で維持される。
【0108】
そして、ステップS33cにおいて、上記したステップS33aにおいて算出された「(Abs.575)−(Abs.575乳び推定値)」から405nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度の推定値(Abs.405Hgb推定値)を算出する。具体的には、下記の式(5)に示すように、(Abs.405Hgb推定値)は、ステップS33aにおいて算出された((Abs.575)−(Abs.575乳び推定値))を定数倍H(6.5〜7.5(好ましくは、6.8))することによって算出される。
(Abs.405Hgb推定値) = H ×{(Abs.575)−(Abs.575乳び推定値)} ・・・(5)
【0109】
次に、図23に示したステップS34において、ビリルビンのチェックが行われる。具体的には、図26に示すように、ステップS34aにおいて、405nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.405)から、上記したステップS32e(図24参照)で算出された405nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.405乳び推定値)および上記したステップS33c(図25参照)で算出された405nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度の推定値(Abs.405Hgb推定値)を差し引くことによって、405nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.405)を補正して、405nmの波長の光に対するビリルビンの吸光度を推定する。そして、推定した405nmの波長の光に対するビリルビンの吸光度((Abs.405)−(Abs.405乳び推定値)−(Abs.405Hgb推定値))が所定値よりも大きいか否かが判断される。そして、ステップS34aにおいて、((Abs.405)−(Abs.405乳び推定値)−(Abs.405Hgb推定値))が所定値より大きいと判断された場合には、ステップS34bにおいて、凝固時間測定用試料中のビリルビンの含有量が本測定に悪影響を及ぼす程度であると判断されて、検体分析一覧表(図22参照)中のビリルビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)からオン(表中では「1」)に変更される。これに対して、ステップS34aにおいて、((Abs.405)−(Abs.405乳び推定値)−(Abs.405Hgb推定値))が所定値以下であると判断された場合には、凝固時間測定用試料中のビリルビンの含有量が本測定に悪影響を及ぼす程度であると判断されて、検体分析一覧表中のビリルビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)状態で維持される。このようにして、凝固時間測定用試料を用いた干渉物質の濃度推定が終了する。
【0110】
なお、図21のステップS3における血液検体(原検体)を用いた干渉物質の濃度推定は、使用するデータが第1光学的情報取得部40において取得された透過光量のデータである他は、上述した凝固時間測定用試料を用いた干渉物質の濃度推定と同様であるので、その説明を省略する。
【0111】
(第2実施形態)
第2実施形態による血液凝固時間測定装置の構成は、第1実施形態の血液凝固時間測定装置の第1光学的情報取得部40が設けられていない。したがって、第2光学的情報取得部80による光学的情報の取得に先立って、第1光学的情報取得部40により光学的情報を取得し、これに基づいて干渉物質の濃度推定および干渉物質に関する定性判定を行う構成とはなっておらず、第2光学的情報取得部80によって得られたラグフェーズにおける光学的情報のみに基づいて、干渉物質の濃度推定および干渉物質に関する定性判定を行う構成となっている。なお、第1実施形態による血液凝固時間測定装置の構成と同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0112】
図27は、第2実施形態による血液凝固時間測定装置の検体分析動作の手順を示したフローチャートである。まず、使用者が、図1および図2に示した血液凝固時間測定装置1の検出機構部2および制御装置4の電源をそれぞれオン状態にすることにより、血液凝固時間測定装置1が起動され、これにより、血液凝固時間測定装置1の初期設定が行われる。また、その後、使用者による検体分析情報および分析処理開始の入力が行われる。分析処理開始の入力があった後は、図27に示したステップS201において、血液検体が分取される。なお、血液凝固時間測定装置1の初期設定、検体分析情報の入力およびステップS201の一次分注処理については、第1実施形態のステップS1(図21参照)の処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0113】
ステップS201の一次分注処理の後、ステップS202において、空気ブランクの測定処理が行われ、その後、ステップS203において、二次分注処理が行われる。そして、ステップS204において、凝固時間測定用試料に対して複数の条件下で光学的な測定が行われ、第2光学的情報取得部80による透過光量のデータの取得が行われる。なお、これらのステップS202、ステップS203およびステップS204の処理は、それぞれ、第1実施形態のステップS8、ステップS9およびステップS10の処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0114】
次に、ステップS205において、CPU401aは、ラグフェーズ(凝固時間測定用試薬が添加されてから4.0秒経過時点)における透過光量のデータを用いて、凝固時間測定用試料中に含まれる干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の濃度および有無を推定する。そして、CPU401aは、ステップS206において、推定された干渉物質の濃度に基づき、干渉物質に関する定性判定を行う。その後、ステップS207において、CPU401aにより、分析に使用する波長が選択される。そして、ステップS208において、第2光学的情報取得部80において測定された複数の透過光量のデータの中から、メイン波長およびサブ波長のうち、ステップS207で選択された波長で測定した凝固時間測定用試料の透過光量のデータを用いてCPU401aが血液凝固時間を分析する。その後、CPU401aは、ステップS209において、血液凝固時間および各種フラグなどの分析結果を出力し、処理を終了する。なお、これらのステップS206、S207、S208、S209の処理は、それぞれ、第1実施形態におけるステップS4、ステップS7、ステップS13、ステップS15の処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0115】
次に、ステップS205における凝固時間測定用試料を用いた濃度推定について説明する。ここでは、血液検体に凝固時間測定用試薬を添加した凝固時間測定用試料を測定対象としているため、取得した透過光量のデータには、干渉物質の濃度による影響だけでなく、凝固時間測定用試薬の濁度による影響も含まれている。そのため、凝固時間測定用試料を用いた濃度推定において、上記した第1実施形態におけるステップS10の濃度推定処理と異なり、凝固時間測定用試薬の濁度を考慮した処理を行えばより好ましい。そこで、本実施形態における凝固時間測定用試料を用いた濃度推定では、凝固時間測定用試薬の濁度を考慮した処理を行う。
【0116】
図28〜図31は、図27のステップS205の干渉物質の濃度推定処理の詳細(サブルーチン)を説明するためのフローチャートである。まず、図28に示したステップS131において、各波長(405nm、575nm、660nmおよび800nm)の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度が算出される。具体的には、CPU401aは、凝固時間測定用試料が収容されたキュベット152が挿入孔81aに挿入された時点(凝固時間測定用試薬が添加されてから3.0秒経過時点)から、凝固反応が始まる前の時点(凝固時間測定用試薬が添加されてから4.0秒経過時点)までの期間に取得された合計10個の透過光量のデータの平均値を用いて、吸光度を算出している。
【0117】
そして、ステップS132において、乳びのチェックが行われる。具体的には、図29に示すように、ステップS132aにおいて、660nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.660)から凝固時間測定用試薬に由来する試薬固有の吸光度(試薬濁度Abs.660)を差し引くことにより、660nmの波長の光に対する凝固時間測定用試料の吸光度(Abs.660)を補正する。これにより、凝固時間測定用試薬の濁度を除去した補正吸光度((Abs.660)−(試薬濁度Abs.660))を取得することが可能となる。なお、第2実施形態では、凝固時間測定用試薬に由来する660nmにおける試薬固有の吸光度(試薬濁度Abs.660)並びに後述する800nmにおける吸光度(試薬濁度Abs.800)、575nmにおける吸光度(試薬濁度Abs.575)、405nmにおける吸光度(試薬濁度Abs.405)は、試薬の種類毎に設定される固定値であり、凝固時間測定用試薬と水とを混合して予め求められている。そして、上記した補正吸光度((Abs.660)−(試薬濁度Abs.660))が所定値よりも大きいか否かが判断される。そして、ステップS132aにおいて、上記した補正吸光度((Abs.660)−(試薬濁度Abs.660))が所定値より大きいと判断された場合には、ステップS132bにおいて、凝固時間測定用試料中に乳びが存在していると判断されて、検体分析一覧表(図22参照)中の乳びフラグの項目がオフ(表中では「0」)からオン(表中では「1」)に変更される。これに対して、ステップS132aにおいて、補正吸光度((Abs.660)−(試薬濁度Abs.660))が所定値以下であると判断された場合には、ステップS132bにおいて、凝固時間測定用試料中の乳びの含有量が、測定に影響を与えない程度であると判断されて、検体分析一覧表中の乳びフラグの項目がオフ(表中では「0」)状態で維持される。また、本実施形態では、660nmの波長の光を用いて、凝固時間測定用試料中の乳びの含有量を測定したが、800nmの波長の光を用いて、凝固時間測定用試料中の乳びの含有量を測定してもよい。
【0118】
そして、第2実施形態では、ステップS132cにおいて、上述したステップS132aにおける660nmの波長の光における場合と同様に、800nmの波長の光における凝固時間測定用試薬の濁度を除去した補正吸光度((Abs.800)−(試薬濁度Abs.800))を取得する。そして、上記した660nmにおける補正吸光度((Abs.660)−(試薬濁度Abs.660))と、800nmにおける補正吸光度((Abs.800)−(試薬濁度Abs.800))とを用いて、乳びの補正式を求める。具体的には、上記式(1)に波長(X=660)および補正吸光度(Y=(Abs.660)−(試薬濁度Abs.660))を代入して、下記式(1a)を導くとともに、上記式(1)に波長(X=800)および補正吸光度(Y=(Abs.800)−(試薬濁度Abs.800))を代入して、下記式(1b)を導く。
log10{(Abs.660)−(試薬濁度Abs.660)} = alog10660+b ・・・(1a)
log10{(Abs.800)−(試薬濁度Abs.800)} = alog10800+b ・・・(1b)
【0119】
そして、上記式(1a)および(1b)を連立して、定数aおよびbを算出して、所定の波長xにおける乳びの吸光度yを導出する乳びの補正式(6)が導かれる。
log10y = alog10x+b ・・・(6)
【0120】
そして、ステップS132dにおいて、上記したステップS132cにおいて求められた乳びの補正式(6)から575nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.575乳び推定値)が算出される。つまり、補正式(6)に波長(x=575nm)を代入することによって、575nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(y=Abs.575乳び推定値)が算出される。
【0121】
そして、ステップS132eにおいて、上記したステップS132dと同様にして、乳びの補正式(6)から405nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.405乳び推定値)が算出される。つまり、補正式(6)に波長(x=405nm)を代入することによって、405nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(y=Abs.405乳び推定値)が算出される。
【0122】
次に、図28に示したステップS133において、ヘモグロビンのチェックが行われる。具体的には、図30に示すように、ステップS133aにおいて、上述したステップS132aにおける660nmの波長の光における場合と同様に、575nmの波長の光における凝固時間測定用試薬の濁度を除去した補正吸光度((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))を取得する。そして、575nmの波長の補正吸光度((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))から上記したステップS132d(図29参照)で算出された575nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.575乳び推定値)を差し引くことによって、575nmの補正吸光度((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))を補正して、575nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度を推定する。そして、推定した575nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度(((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))−(Abs.575乳び推定値))が所定値よりも大きいか否かが判断される。そして、ステップS133aにおいて、(((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))−(Abs.575乳び推定値))が所定値より大きいと判断された場合には、ステップS133bにおいて、凝固時間測定用試料中にヘモグロビンが存在していると判断されて、検体分析一覧表(図22参照)中のヘモグロビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)からオン(表中では「1」)に変更される。これに対して、ステップS133aにおいて、(((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))−(Abs.575乳び推定値))が所定値以下であると判断された場合には、凝固時間測定用試料中のヘモグロビンの含有量が測定に影響を与えない程度であると判断されて、検体分析一覧表中のヘモグロビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)状態で維持される。
【0123】
そして、ステップS133cにおいて、上記したステップS133aにおいて算出された「((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))−(Abs.575乳び推定値)」から405nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度の推定値(Abs.405Hgb推定値)を算出する。具体的には、下記の式(7)に示すように、(Abs.405Hgb推定値)は、ステップS133aにおいて算出された(((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))−(Abs.575乳び推定値))を定数倍H(6.5〜7.5(好ましくは、6.8))することによって算出される。
(Abs.405Hgb推定値) = H ×{((Abs.575)−(試薬濁度Abs.575))−(Abs.575乳び推定値)} ・・・(7)
【0124】
次に、図28に示したステップS134において、ビリルビンのチェックが行われる。具体的には、図31に示すように、ステップS134aにおいて、上述したステップS132aにおける660nmの波長の光における場合と同様に、405nmの波長の光における凝固時間測定用試薬の濁度を除去した補正吸光度((Abs.405)−(試薬濁度Abs.405))を取得する。そして、405nmの波長の補正吸光度((Abs.405)−(試薬濁度Abs.405))から、上記したステップS132e(図29参照)で算出された405nmの波長の光に対する乳びの吸光度の推定値(Abs.405乳び推定値)および上記したステップS133c(図30参照)で算出された405nmの波長の光に対するヘモグロビンの吸光度の推定値(Abs.405Hgb推定値)を差し引くことによって、405nmの補正吸光度((Abs.405)−(試薬濁度Abs.405))を更に補正して、405nmの波長の光に対するビリルビンの吸光度を推定する。そして、推定した405nmの波長の光に対するビリルビンの吸光度(((Abs.405)−(試薬濁度Abs.405))−(Abs.405乳び推定値)−(Abs.405Hgb推定値))が所定値よりも大きいか否かが判断される。そして、ステップS134aにおいて、(((Abs.405)−(試薬濁度Abs.405))−(Abs.405乳び推定値)−(Abs.405Hgb推定値))が所定値より大きいと判断された場合には、ステップS134bにおいて、凝固時間測定用試料中のビリルビンの含有量が測定に悪影響を及ぼす程度であると判断されて、検体分析一覧表(図22参照)中のビリルビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)からオン(表中では「1」)に変更される。これに対して、ステップS134aにおいて、(((Abs.405)−(試薬濁度Abs.405))−(Abs.405乳び推定値)−(Abs.405Hgb推定値))が所定値以下であると判断された場合には、凝固時間測定用試料中のビリルビンの含有量が測定に悪影響を及ぼす程度であると判断されて、検体分析一覧表中のビリルビンフラグの項目がオフ(表中では「0」)状態で維持される。このようにして、凝固時間測定用試料を用いた濃度推定が終了する。
【0125】
上述した第1および第2実施形態では、上記のように、第2光学的情報取得部80を設けることによって、凝固時間測定用試料中の干渉物質の濃度および有無を推定するのに用いる凝固反応を示す前の時点(凝固時間測定用試薬が添加されてから3.0秒〜4.0秒までの間)における透過光量のデータと、凝固時間の測定(本測定)に用いる経時的な複数の透過光量のデータとの両方を取得することができる。これにより、制御装置4のアプリケーションプログラム404aは、経時的な透過光量のデータの変化を用いて凝固時間を測定するだけでなく、凝固反応を示す前の時点(図13の斜線(ハッチング)の領域)における透過光量のデータを用いて干渉物質の有無および濃度を測定することができる。
【0126】
また、第1および第2実施形態では、血液検体に凝固時間測定用試薬が混和された1つの凝固時間測定用試料から、凝固時間の測定(本測定)に用いる経時的な複数の透過光量の変化と、干渉物質の濃度および有無の推定に用いる凝固反応を示す前の時点における透過光量とを取得することができる。凝固反応は、内因系または外因系の多くの反応を経由して、血漿中のフィブリノーゲンがフィブリンに転化され血液凝固が起こる反応である。すなわち、血漿に血液凝固試薬を混和しても、すぐには血液凝固が開始せず、外因系(PT測定試薬)で通常7秒程度、内因系(APTT測定試薬)で通常14秒程度経過後に、凝固反応が起こる。本実施形態は、この凝固反応を示す前の時点(ラグフェーズという)の光学情報が、検体が希釈された状態と同じ光学情報であることに着目したものである。つまり上記構成とすることにより、本測定に用いる試料と干渉物質の濃度および有無の推定に用いる試料とを別個に準備する必要がないので、血液検体の消費を抑制することができる。
【0127】
また、第1および第2実施形態では、血液検体に凝固時間測定用試薬が混和された凝固時間測定用試料からの光を経時的に受け、経時的な透過光量の変化を取得する第2光学的情報取得部80を設けることによって、凝固時間測定用試薬によって希釈された凝固時間測定用試料から透過光量のデータを取得することができる。これにより、第2光学的情報取得部80では、血液検体の濃度が高いため透過光量のデータを検出するのが困難な場合でも、希釈された凝固時間測定用試料からの透過光量のデータを取得することができるので、透過光量のデータを取得することが可能な測定範囲を拡大することができる。
【0128】
また、第2実施形態では、アプリケーションプログラム404aを、660nmおよび800nmにおける吸光度に基づいて、575nmおよび405nmにおける光学的情報への乳びの影響を推定するように構築することによって、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する2種類の波長における吸光度に基づいて、他の波長(第2波長および第3波長)における吸光度への乳びの影響を推定することができる。これにより、1種類の波長における吸光度に基づいて、他の波長における吸光度への乳びの影響を推定する場合に比べて、2種類の波長における2つの吸光度に基づいて、他の波長における吸光度への乳びの影響を推定する方が、正確に乳びの影響を推定することができる。その結果、正確に推定された乳びの影響を用いて、ビリルビンおよびヘモグロビンの影響も推定することができるので、干渉物質(乳び、ヘモグロビンおよびビリルビン)の影響を正確に推定することができる。
【0129】
また、第1実施形態では、本測定を行うための第2光学的情報取得部80に加えて、凝固時間測定用試薬が混和される前の血液検体から光を受けて透過光量を取得する第1光学的情報取得部40を設けることによって、第1光学的情報取得部40で測定された血液検体中の干渉物質の濃度が高い場合に、信頼性の高い凝固時間を測定することが困難であると判断して、測定を中止することができる。その結果、測定が中止される血液検体に凝固時間測定用試薬が混和されるのを中止することができるので、凝固時間測定用試薬が無駄に消費されるのを抑制することができる。また、この場合、信頼性の高い測定結果(凝固時間)を得ることが困難な血液検体に対して、第2光学的情報取得部80による本測定を行うことがないので、装置の測定効率を向上させることもできる。
【0130】
また、第1実施形態では、凝固時間測定用試薬が混和される前の血液検体から光を受けて透過光量を取得する第1光学的情報取得部40、および、本測定を行うための第2光学的情報取得部80を設けることによって、原検体(血液検体)を用いた濃度推定に加えて、凝固時間測定用試料を用いた濃度推定を行うことができる。これにより、原検体(血液検体)を用いた濃度推定と、凝固時間測定用試料を用いた濃度推定とを比較することにより、正確な推定結果を取得しているのか確認することができる。その結果、より正確な干渉物質の濃度および有無の測定結果を取得することができる。また、比較した推定結果の値がかけ離れた場合には、凝固時間測定用試薬の分注エラーが生じたなどの装置エラーも監視することができる。
【0131】
また、第2実施形態では、第1光学的取得部を設けずに、第2光学的情報取得部のみにより、干渉物質の濃度推定を行うことによって、干渉物質の測定を行うためだけの専用の装置(第1光学的情報取得部)を本測定部(第2光学的情報取得部)とは別個に設ける必要がないので、血液凝固時間測定装置が複雑になるのを抑制することができるとともに、装置自体が大きくなるのを抑制することができる。また、血液検体(原検体)の光学測定を行う必要がなく、血液凝固時間測定装置の動作が複雑化することを抑制することができる。
【0132】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0133】
たとえば、上記第1実施形態および第2実施形態では、メイン波長を低波長に設定するとともに、サブ波長を高波長に設定する例を示したが、本発明はこれに限らず、メイン波長を高波長に設定するとともに、サブ波長を低波長に設定してもよい。これにより、血液検体中のフィブリノーゲン量が少なく、凝固反応を大きく捉えられない場合でも、低波長のサブ波長を選択すれば、低フィブリノーゲン血液検体についても凝固反応を捉えることができる。
【0134】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、検出機構部と制御装置とを別個に設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、制御装置の機能を検出機構部に設けてもよい。
【0135】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、凝固時間法を用いて凝固時間測定用試料の光学的な測定(本測定)を行う例を示したが、本発明はこれに限らず、凝固時間法以外の合成基質法や免疫比濁法などを用いて凝固時間測定用試料の光学的な測定を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の第1実施形態による血液凝固時間測定装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の検出機構部および搬送機構部を示した平面図である。
【図3】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第1光学的情報取得部を示した斜視図である。
【図4】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第1光学的情報取得部の構成を説明するための模式図である。
【図5】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第1光学的情報取得部のブロック図である。
【図6】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置のランプユニットを示した斜視図である。
【図7】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置のランプユニットの構成を説明するための模式図である。
【図8】図6に示したランプユニットのフィルタ部を示した拡大斜視図である。
【図9】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第2光学的情報取得部の検出部の内部構造を説明するための概略図である。
【図10】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第2光学的情報取得部の検出部の構成を説明するための断面図である。
【図11】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第2光学的情報取得部のブロック図である。
【図12】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の制御装置のブロック図である。
【図13】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第2光学的情報取得部により測定された干渉物質が混入した血液検体の測定結果である。
【図14】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の第2光学的情報取得部により測定された正常血液検体の測定結果である。
【図15】干渉物質(ヘモグロビン)の吸光度スペクトルを示したグラフである。
【図16】干渉物質(ビリルビン)の吸光度スペクトルを示したグラフである。
【図17】干渉物質(乳び)の吸光度スペクトルを示したグラフである。
【図18】ヘモグロビンに乳びを添加した場合の吸光度スペクトルを示したグラフである。
【図19】ビリルビンに乳びを添加した場合の吸光度スペクトルを示したグラフである。
【図20】図17に示した乳びの吸光度スペクトルを両対数グラフにプロットしたグラフである。
【図21】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の分析動作の手順を示したフローチャートである。
【図22】図1に示した第1実施形態による血液凝固時間測定装置の制御装置の表示部に出力された検体分析一覧表を示した図である。
【図23】図1に示した第1実施形態の血液凝固時間測定装置の制御装置による干渉物質の濃度推定処理の詳細(サブルーチン)を説明するためのフローチャートである。
【図24】図23に示した干渉物質(乳び)のチェックのサブルーチンを示したフローチャートである。
【図25】図23に示した干渉物質(ヘモグロビン)のチェックのサブルーチンを示したフローチャートである。
【図26】図23に示した干渉物質(ビリルビン)のチェックのサブルーチンを示したフローチャートである。
【図27】本発明の第2実施形態による血液凝固時間測定装置の分析動作の手順を示したフローチャートである。
【図28】本発明の第2実施形態の血液凝固時間測定装置の制御装置による干渉物質の濃度推定処理の詳細(サブルーチン)を説明するためのフローチャートである。
【図29】図28に示した干渉物質(乳び)のチェックのサブルーチンを示したフローチャートである。
【図30】図28に示した干渉物質(ヘモグロビン)のチェックのサブルーチンを示したフローチャートである。
【図31】図28に示した干渉物質(ビリルビン)のチェックのサブルーチンを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0137】
1 血液凝固時間測定装置
4 制御装置(測定部)
4a 制御部(第1推定手段、第2推定手段、第1取得手段、第2取得手段、第3取得手段、判断手段、選択手段)
4b 表示部(出力部)
40 第1光学的情報取得部(第2受光部)
50 ランプユニット(光照射部)
60 試薬分注アーム(試料調製部)
80 第2光学的情報取得部(第1受光部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液検体に凝固時間測定用試薬を混和して、凝固時間測定用試料を調製する試料調製部と、
調製された前記凝固時間測定用試料に光を照射する光照射部と、
光が照射された前記凝固時間測定用試料から複数の波長の光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部と、
前記第1受光部により取得された光学的情報に基づいて、前記凝固時間測定用試料の凝固時間を測定する測定部とを備え、
前記測定部は、前記第1受光部により取得された光学的情報のうち、前記凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報に基づいて、前記凝固時間測定用試料の光学測定に干渉する干渉物質の前記凝固時間測定用試料における含有度合いを測定するように構成されている、血液凝固時間測定装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記第1受光部で取得された複数の波長における光学的情報に基づいて、複数の前記干渉物質の含有度合いをそれぞれ測定するように構成されている、請求項1に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項3】
前記第1受光部は、第1波長、第2波長および第3波長における光学的情報を少なくとも取得するように構成されており、
前記測定部は、前記第1受光部により取得された前記第1波長、前記第2波長、および前記第3波長の少なくともいずれかにおける光学的情報に基づいて、前記血液検体におけるビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの少なくともいずれかの含有度合いを測定するように構成されている、請求項2に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項4】
前記第1波長は、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する波長であり、
前記第2波長は、ビリルビンが実質的に吸収せず、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する波長であり、
前記第3波長は、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する波長であり、
前記測定部は、
少なくとも前記第1波長における光学的情報に基づいて、前記第2波長および前記第3波長における光学的情報への乳びの影響を推定する第1推定手段と、
推定された前記第2波長における乳びの影響と、前記第2波長における光学的情報とに基づいて、前記第3波長における光学的情報へのヘモグロビンの影響を推定する第2推定手段とを含むとともに、
前記第1受光部により取得された前記第1波長、前記第2波長および前記第3波長における光学的情報、前記第1推定手段により推定された前記第2波長および前記第3波長における光学的情報への乳びの影響、並びに、前記第2推定手段により推定された前記第3波長における光学的情報へのヘモグロビンの影響に基づいて、前記血液検体におけるビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの含有度合いを測定するように構成されている、請求項3に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項5】
前記第1受光部は、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する第4波長における光学的情報をさらに取得するように構成されており、
前記第1推定手段は、前記第1波長および前記第4波長における光学的情報に基づいて、前記第2波長および前記第3波長における光学的情報への乳びの影響を推定するように構成されている、請求項4に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項6】
前記第1受光部は、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する第1波長、ビリルビンが実質的に吸収せず、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する第2波長、並びに、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する第3波長における光学的情報を少なくとも取得するように構成されており、
前記測定部は、
少なくとも前記第1受光部により取得された前記第1波長における光学的情報に基づいて、光学的情報への乳びの影響を取得する第1取得手段と、
前記第1取得手段により取得された光学的情報への乳びの影響と、前記第1受光部により取得された前記第2波長における光学的情報とに基づいて、光学的情報へのヘモグロビンの影響を取得する第2取得手段と、
前記第1取得手段により取得された光学的情報への乳びの影響と、前記第2取得手段により取得された光学的情報へのヘモグロビンの影響と、前記第1受光部により取得された前記第3波長における光学的情報とに基づいて、光学的情報へのビリルビンの影響を取得する第3取得手段とを含み、
前記第1取得手段により取得された前記光学的情報への乳びの影響と、前記第2取得手段により取得された前記光学的情報へのヘモグロビンの影響と、前記第3取得手段により取得された前記光学的情報へのビリルビンの影響とを出力する出力部をさらに備える、請求項1に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項7】
前記第1取得手段は、
前記第1波長における光学的情報に加えて、前記凝固時間測定用試薬に光を照射することにより取得した前記凝固時間測定用試薬に由来する光学的情報に基づいて、前記光学的情報への乳びの影響を取得する、請求項6に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項8】
前記光照射部は、互いに異なる複数の波長の光を時分割で照射するように構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項9】
前記凝固時間測定用試薬が混和される前の前記血液検体から光を受けて光学的情報を取得する第2受光部をさらに備え、
前記測定部は、前記第2受光部により取得された光学的情報に基づいて、前記血液検体の光学測定に光学的に干渉する前記干渉物質の前記血液検体における含有度合いを測定するように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項10】
前記第2受光部によって取得された光学的情報に基づいて、前記第1受光部により経時的な光学的情報を取得するか否かを判断する判断手段をさらに備える、請求項9に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項11】
前記第1受光部により取得された光学的情報に基づいて測定された前記干渉物質の前記血液検体における含有度合いと、前記第2受光部により取得された光学的情報に基づいて測定された前記干渉物質の前記凝固時間測定用試料における含有度合いとのいずれか一方を選択する選択手段をさらに備える、請求項9または10に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項12】
血液検体に凝固時間測定用試薬を混和して、凝固時間測定用試料を調製する試料調製部と、
調製された前記凝固時間測定用試料に光を照射する光照射部と、
光が照射された前記凝固時間測定用試料から複数の波長の光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部と、
前記第1受光部により取得された光学的情報に基づいて、前記凝固時間測定用試料の凝固時間を測定する測定部とを備え、
前記測定部は、前記第1受光部により取得された光学的情報のうち、前記凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報に基づいて、前記凝固時間測定用試料に含まれるとともに前記凝固時間測定用試料の光学測定に干渉する干渉物質を特定するように構成されている、血液凝固時間測定装置。
【請求項1】
血液検体に凝固時間測定用試薬を混和して、凝固時間測定用試料を調製する試料調製部と、
調製された前記凝固時間測定用試料に光を照射する光照射部と、
光が照射された前記凝固時間測定用試料から複数の波長の光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部と、
前記第1受光部により取得された光学的情報に基づいて、前記凝固時間測定用試料の凝固時間を測定する測定部とを備え、
前記測定部は、前記第1受光部により取得された光学的情報のうち、前記凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報に基づいて、前記凝固時間測定用試料の光学測定に干渉する干渉物質の前記凝固時間測定用試料における含有度合いを測定するように構成されている、血液凝固時間測定装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記第1受光部で取得された複数の波長における光学的情報に基づいて、複数の前記干渉物質の含有度合いをそれぞれ測定するように構成されている、請求項1に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項3】
前記第1受光部は、第1波長、第2波長および第3波長における光学的情報を少なくとも取得するように構成されており、
前記測定部は、前記第1受光部により取得された前記第1波長、前記第2波長、および前記第3波長の少なくともいずれかにおける光学的情報に基づいて、前記血液検体におけるビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの少なくともいずれかの含有度合いを測定するように構成されている、請求項2に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項4】
前記第1波長は、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する波長であり、
前記第2波長は、ビリルビンが実質的に吸収せず、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する波長であり、
前記第3波長は、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する波長であり、
前記測定部は、
少なくとも前記第1波長における光学的情報に基づいて、前記第2波長および前記第3波長における光学的情報への乳びの影響を推定する第1推定手段と、
推定された前記第2波長における乳びの影響と、前記第2波長における光学的情報とに基づいて、前記第3波長における光学的情報へのヘモグロビンの影響を推定する第2推定手段とを含むとともに、
前記第1受光部により取得された前記第1波長、前記第2波長および前記第3波長における光学的情報、前記第1推定手段により推定された前記第2波長および前記第3波長における光学的情報への乳びの影響、並びに、前記第2推定手段により推定された前記第3波長における光学的情報へのヘモグロビンの影響に基づいて、前記血液検体におけるビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びの含有度合いを測定するように構成されている、請求項3に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項5】
前記第1受光部は、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する第4波長における光学的情報をさらに取得するように構成されており、
前記第1推定手段は、前記第1波長および前記第4波長における光学的情報に基づいて、前記第2波長および前記第3波長における光学的情報への乳びの影響を推定するように構成されている、請求項4に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項6】
前記第1受光部は、ビリルビンおよびヘモグロビンが実質的に吸収せず、乳びが吸収する第1波長、ビリルビンが実質的に吸収せず、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する第2波長、並びに、ビリルビン、ヘモグロビンおよび乳びが吸収する第3波長における光学的情報を少なくとも取得するように構成されており、
前記測定部は、
少なくとも前記第1受光部により取得された前記第1波長における光学的情報に基づいて、光学的情報への乳びの影響を取得する第1取得手段と、
前記第1取得手段により取得された光学的情報への乳びの影響と、前記第1受光部により取得された前記第2波長における光学的情報とに基づいて、光学的情報へのヘモグロビンの影響を取得する第2取得手段と、
前記第1取得手段により取得された光学的情報への乳びの影響と、前記第2取得手段により取得された光学的情報へのヘモグロビンの影響と、前記第1受光部により取得された前記第3波長における光学的情報とに基づいて、光学的情報へのビリルビンの影響を取得する第3取得手段とを含み、
前記第1取得手段により取得された前記光学的情報への乳びの影響と、前記第2取得手段により取得された前記光学的情報へのヘモグロビンの影響と、前記第3取得手段により取得された前記光学的情報へのビリルビンの影響とを出力する出力部をさらに備える、請求項1に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項7】
前記第1取得手段は、
前記第1波長における光学的情報に加えて、前記凝固時間測定用試薬に光を照射することにより取得した前記凝固時間測定用試薬に由来する光学的情報に基づいて、前記光学的情報への乳びの影響を取得する、請求項6に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項8】
前記光照射部は、互いに異なる複数の波長の光を時分割で照射するように構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項9】
前記凝固時間測定用試薬が混和される前の前記血液検体から光を受けて光学的情報を取得する第2受光部をさらに備え、
前記測定部は、前記第2受光部により取得された光学的情報に基づいて、前記血液検体の光学測定に光学的に干渉する前記干渉物質の前記血液検体における含有度合いを測定するように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項10】
前記第2受光部によって取得された光学的情報に基づいて、前記第1受光部により経時的な光学的情報を取得するか否かを判断する判断手段をさらに備える、請求項9に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項11】
前記第1受光部により取得された光学的情報に基づいて測定された前記干渉物質の前記血液検体における含有度合いと、前記第2受光部により取得された光学的情報に基づいて測定された前記干渉物質の前記凝固時間測定用試料における含有度合いとのいずれか一方を選択する選択手段をさらに備える、請求項9または10に記載の血液凝固時間測定装置。
【請求項12】
血液検体に凝固時間測定用試薬を混和して、凝固時間測定用試料を調製する試料調製部と、
調製された前記凝固時間測定用試料に光を照射する光照射部と、
光が照射された前記凝固時間測定用試料から複数の波長の光を経時的に受け、経時的な光学的情報を取得する第1受光部と、
前記第1受光部により取得された光学的情報に基づいて、前記凝固時間測定用試料の凝固時間を測定する測定部とを備え、
前記測定部は、前記第1受光部により取得された光学的情報のうち、前記凝固時間測定用試料が凝固反応を示す前の時点における光学的情報に基づいて、前記凝固時間測定用試料に含まれるとともに前記凝固時間測定用試料の光学測定に干渉する干渉物質を特定するように構成されている、血液凝固時間測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2007−263907(P2007−263907A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92723(P2006−92723)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]