説明

血液分析装置および血液分析装置における測定位置の設定方法

【課題】環境温度の変化等により回転体等が変形しても、測定に必要な光量が得られるようにし、高精度な測定を可能とすること。
【解決手段】検体(血液)を保持したμTASチップをセットする前に、イニシャライズ処理として、加熱手段35により所定温度まで加熱する。そして、回転体25を微小量回転させながら、アパーチャ部23を通過し、受光部42で受光される光量値が規定値以上となる回転位置を探し、その回転位置を測定位置として記憶する。ついで、μTASチップをチップ保持部22にセットし、μTASチップ内の検体液の秤量、試薬との混合、測定エリアへの液送等の測定前処理を行ったのち、回転体25を上記測定位置まで回転させ、光源41からの光をアパーチャ部23を介してμTASチップの測定エリアに入射させ、測定エリアからでた光を受光部43で受光し測定液の光吸収量を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液等の検体を保持するμTAS(Micro- Total Analysis Systems)チップを遠心回転させ、μTASチップに保持された測定液を吸光度分析法により測定する血液分析装置およびこの血液分析装置における測定位置の設定方法に関し、特に、μTASチップに保持された測定液の吸光度測定を行う際の測定位置を正確に設定することが可能な血液分析装置および血液分析装置における測定位置の設定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術を応用して、化学分析等を従来の装置に比して微細化して行うことのできる、「μTAS」や「Lab on achip」と称されるμTASチップを利用した分析方法が注目されている。
このようなμTASチップを使用した分析システム(以下、「μTASチップ分析システム」という。)は、マイクロマシン作製技術によって小さな基盤上に形成された微細な流路内において、試薬の混合、反応、分離、抽出及び検出を含む分析のすべての工程を行うことを目指したものであり、例えば医療分野における血液の分析、超微量の蛋白質や核酸等の生体分子の分析等に用いられている。
特に、μTASチップ分析システムを用いて例えば人の血液の分析を行う場合には、以下の利点が得られることから、近年では積極的に開発が進められている。
(1)分析検査に必要とされる血液(検体)の量が微少量でよいので、患者への負担を軽減することができる。
(2)血液と混合されて用いられる試薬の量も少なくて済むので、分析コストを低減することができる。
(3)装置自体を小型のものとして構成することができるので、分析を容易に行うことができる。
【0003】
一般的には、このようなμTASチップ分析システムにおいては、測定液(検体液)中における検出対象成分の濃度を測定するための方法として、例えば吸光光度分析法が用いられている。吸光光度分析法を用いた血液分析装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。
図18に血液分析装置における測定部の構成例を示す。同図は、血液分析装置における測定部の内部構造を概略的に示す断面図である。
血液分析装置は、ケーシング(図示せず)を備え、ケーシングの内部に、図18に示す測定部20と、光源41を有する光源部と、受光部43、図示しない制御部、電源部等が設けられている。
測定部20は、図18に示すように、中空円柱状の測定室21を有し、この測定室21内に、例えば有底円筒状の回転体25が配置される。回転体25の下面中央位置を貫通して上下方向に延びるように駆動軸24bが配置され、該駆動軸24bは遠心用モータ24aに連結される。遠心用モータ24aが駆動されることにより、回転体25が回転駆動される。上記遠心用モータ24a、駆動軸24b、後述するエンコーダ24cで回転駆動機構24を構成する。
【0004】
回転体25の底部には、外径が回転体25の半径より小さい方向切替用ギア26が設けられており、方向切替用ギア26は、回転体25上であって、その回転軸中心Cと平行な軸Dの回りに回転可能に軸支されており、このギア26上に、μTASチップ60を保持するためのチップ保持部22が設けられる。チップ保持部22は、回転体25の外周縁側に位置するように配置される。
なお、測定部20は、チップ保持部22を複数有する構成とすることができ、図18では、回転体25の回転バランスを適正な状態に維持するために、回転軸中心Cを挟んだ反対側の位置に、同一の構成のチップ保持部22が設けられている。
【0005】
測定室21の下部、回転体25およびチップ保持部22が設けられる方向切替用ギア26の各々には、μTASチップ60がチップ保持部22に保持された状態において、光源41から反射鏡42を介して入射する光をμTASチップ60の測定エリア(測定液が配置されるエリア)に導入させるための光導入用開口部22aおよびアパーチャ部23が形成されており、測定室21の上部にはμTASチップ60の測定エリアを通過した光を受光する受光部43と、この光を導光する例えば光ファイバ44が装着される開口部22bが設けられている。
【0006】
μTASチップ60の測定エリア内の測定液の吸光度測定を行う際には、回転体25の回転が停止された状態で行われ、上記光源41からの光をμTASチップ60の測定エリア内に導入する必要がある。したがって、その際の回転体25の停止位置は、高い位置精度で制御される必要がある。
このため、回転体25を回転駆動させるための遠心用モータ24aにはエンコーダ24cが連結されており、エンコーダ24cからの信号に基づいて回転体25の停止位置が制御される。
また、測定室21の上面および下面の一部の領域には、分析検査時において測定室21内の温度を一定温度例えば37℃に維持するための面状の加熱手段(ヒータ)35が設けられており、例えばサーミスタ等の温度測定手段36による検出温度に基づいて、測定室内の温度が一定になるように制御される。
【0007】
また、測定部20は、チップ保持部22に保持されたμTASチップ60の向きを調整するための、回転体25を回転駆動させる駆動機構24とは別の駆動機構を有するチップ方向切替機構30を備えている。
このチップ方向切替機構30は、例えば玉軸受け32などを介して遠心用モータ24aの駆動軸24bに対して回転自在に設けられた、方向切替用ギア26と噛み合う原動側ギア33と、この原動側ギア33を回転駆動させるための駆動源であるチップ方向切替用モータ31とを有する。
そして、上記チップ方向切替用モータ31を駆動することにより、原動側ギア33が回転し、これと噛み合う方向切替用ギア26が回転してチップ保持部22が回転する。これにより、μTASチップ60の向き(回転体25の回転軸中心Cに対する向き)を変えることができる。
上記チップ方向切替機構30の具体的な構造、動作などについては、たとえば特許文献2を参照されたい。
【0008】
上述した血液分析装置による測定液の分析処理は、例えば次のように行われる。
検体(血液)が保持されたμTASチップを搭載した回転体を回転させ、遠心力を利用して、検体を遠心分離する分離処理を行い、当該分離処理により得られる検体液を秤量する。
そして、当該測定対象液と試薬とを混合し、反応させる混合反応処理と、当該混合反応処理により得られる測定液を測定エリアに液送する処理を含む前処理動作を行う。
ついで、回転体25の回転が停止された状態で、光源部41からの光をμTASチップ60の測定エリアに導入し、測定エリアを透過した光を受光部によって受光する。これにより、測定エリア内の測定液による光吸収量が測定される。
【特許文献1】特開2007−322208号公報
【特許文献2】特開2006−110491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
μTASチップを用いる血液分析装置では、微量な血液でも分析できる点が特徴である。このため、血液を遠心分離、試薬との混合・反応により生成した測定液も微量となる。この測定液に対して吸光度分析をするとき、μTASチップ中での測定液が配置される測定エリアは、例えば1.2mm×1.2mmの微小な領域である。
測定液を透過した光量を測定したいため、測定エリアに対して、絞った光を入射させるため、例えばアパーチャ部23の直径はФ0.6mm程度である。
【0010】
一方、血液分析装置を取り巻く環境温度は、冬場と夏場とでは異なる。この環境温度による変化により、回転体25は、例えば「膨張・収縮」や「撓む」といった変形が起こることがある。環境温度の変化によって回転体が変形すると、光源から受光部43までの光軸に対してアパーチャ部23の位置がずれる。
アパーチャ部23は例えば直径Ф0.6mmという微小な貫通孔なので、直径Ф170mmの回転体25が僅かに変形しただけで、アパーチャ部23に入射される光の量は極端に下がる。
なお、アパーチャ部23への入射される光量が極端に下がることを防止するため、アパーチャ部23の直径を大きくすることが考えられるが、アパーチャ部23をμTASチップの測定エリア(測定液が位置するエリア)よりも大きくしてしまうと、測定エリア以外にも光源からの光が入射されてしまい、測定液を透過した光量のみを測定することができなくなってしまう。
【0011】
以上のように、回転体25の変形によって測定結果が大きく異なるといった問題は、微量な血液で分析するμTASチップを用いる血液分析装置の特有の問題であった。
特に、μTASチップに試薬を保持し、μTASチップ内で試薬と検体液とを反応させるため、μTASチップを加熱する場合においては、μTASチップを保持する回転体も加熱されるので、特に回転体25の変形が大きくなるといった問題もあった。
本発明は上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、環境温度の変化等により回転体等が変形しても、測定に必要な光量が得られるようにし、高精度な測定を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明においては、測定液を測定する前に、チップ保持部を設けた回転体を、あらかじめ設定された原点位置(設計位置)から微小量回転させ、回転体に形成されたアパーチャ部を通過して、受光部で受光される光の光量値が、あらかじめ設定された規定値以上になる、あるいは最大光量となる回転体の位置を求め、これを測定位置とする。
そして、測定液による光吸収量を測定する際、回転体を上記測定位置に移動させて、光源部からの光をμTASチップの測定エリアに導入し、透過した光を受光部によって受光して、光吸収量を測定する。
すなわち、本発明においては、上記課題を次のように解決する。
(1)光を通過させるアパーチャ部を有し、測定液を保持するμTASチップを保持するチップ保持部と、該チップ保持部を載置して回転する回転体と、該回転体を回転させる回転駆動機構と、該回転体に対する該μTASチップの向きを変更するチップ方向切替機構と、を備えてなる駆動ユニットと、上記アパーチャ部に光を入射させる光源と、該光源からの光を受光する受光部とを備える測定ユニットと、上記回転駆動機構と該光源及び受光部を制御する制御部とを有する血液分析装置において、制御部に、上記μTASチップに上記光源からの光を入射させて測定液を測定するときの回転体の回転位置である測定位置を定めるための測定位置設定部を設ける。
上記測定位置設定部は、測定液を測定する前に上記回転体を回転させ、上記アパーチャ部を通過して上記受光部が受光する上記光源からの光の光量値が、あらかじめ設定された規定値以上になる上記回転体の測定位置を求める。
(2)上記(1)において、測定位置設定部は、上記受光部が受光した光量とその光量が得られる回転体位置とを記憶する記憶部を備え、回転体の各回転位置における上記光量を上記記憶部に記憶させて最大光量となる回転位置を求め、該回転位置における光量値が規定値以上であるとき、該回転体の回転位置を、回転体の測定位置とする。
(3)上記(1)(2)において、上記チップ保持部と上記回転体とを内部に配置するように室を設け、該室に加熱手段と温度測定手段を設け、上記制御部は、該温度測定手段により測定される温度が所定温度になるように該加熱手段を制御する。
(4)上記(1)(2)(3)において、上記測定位置設定手段は、上記光量値が、上記規定値以上にならないとき、不良と判断する。
(5)測定液を保持するμTASチップを保持するチップ保持部を載置した回転体を備え、上記μTASチップをチップ保持部に保持させて、該回転体を回転させて上記測定液に対して所定の処理を行った後、上記回転体を測定位置まで回転させて、上記チップ保持部に設けられたアパーチャ部から上記μTASチップに光を入射し、μTASチップを透過した光を受光部で受光して、上記測定液の特性を測定する血液分析装置における上記測定位置の設定方法において、測定液を測定する前に以下の(イ)(ロ)の工程により、測定位置を求める。
(イ)上記回転体を回転させながら、上記アパーチャ部を通過して、受光部で受光される光の光量値を求め、
(ロ)受光した光の光量値が、あらかじめ設定された規定値以上になる上記回転体の回転位置を求めて、上記測定位置とする
(6)上記(5)の(ロ)の工程を行なう際、最大光量となる回転位置を求め、該回転位置における光量値が規定値以上であるとき、該回転体の回転位置を、回転体の測定位置とする。
(7)チップ保持部の雰囲気温度が所定温度になるまで加熱したのちに、上記(5)または(6)の(イ)(ロ)の工程を行なう。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)測定液を測定する前に、チップ保持部を載置した回転体を、回転させ、回転体に形成されたアパーチャ部を通過して、受光部で受光される光の光量値が、あらかじめ設定された規定値以上になる回転体の位置を求め、これを測定位置としているので、環境温度等によって、回転体が変形しても、測定に必要な所期光量を得られる回転体の位置を知ることができ、光源からアパーチャ部に入射する光量が減少し、測定結果がバラツクといった問題を解決することができる。
特に、受光部で受光される光の光量値が、最大光量となる測定位置を求めることにより、さらに、測定精度を向上させることができる。
(2)加熱手段を有する血液分析装置は温度による回転体の撓みが大きいと考えられるが、チップ保持部の雰囲気温度が所定温度になるようにしてから、測定位置を求めることにより、加熱手段の加熱による変形を考慮した測定位置を求めることができる。
(3)光量値が、上記規定値以上にならないとき、不良と判断することにより、回転体の変形が大きくなりすぎて測定に必要な所期光量が得られない場合、制御部が、規定値以上になる回転体位置を無限に求め続けることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(1)第1の実施例
図1〜図4は本発明の第1の実施例の装置構成を示す図である。
図1は血液分析装置を内部に配置した筐体の外観図であり、図1(a)は蓋をしている状態、図1(b)は蓋を開けて、血液分析装置のチップ挿入口が見えている状態を示している。
図1(a)に示すように血液分析装置は、筺体1中の収納されており、μTASチップを血液分析装置内に挿入するときは、図1(b)に示すように筐体1の蓋1aを開き、測定室のチップ挿入口1bから測定室内のチップ保持部に入れる。
図2、図3は図1の筐体1の内部に配置された測定部20の構成を示す図である。図2は、測定部20の斜視図であり、図3は図2のA−A断面図である。なお、図2では、図3に図示した、光ファイバ、受光部、反射鏡、光源は省略されている。
【0015】
図2に示すように、血液分析装置の測定部20は、内部に前記回転体を有する測定室21と、上記回転体を回転駆動する回転駆動機構24から構成され、測定室21には、μTASチップを挿入するためのチップ挿入口21aが設けられる。
図3は本実施例の測定部20の構成例を示す図であり、基本的構成は前記図18で説明したのと同じである。なお、本実施例において測定位置を求める工程は、血液分析装置のためのμTASチップを挿入する前に行われることから、図3では、μTASチップは削除されている。
図3の構成は前記図18に示したものと同じであるので詳細な説明は省略するが、前述したように測定部20は中空円柱状の測定室21を有し、この測定室21内に、回転体25が配置される。回転体25は、駆動軸24bを介して回転駆動機構24の遠心用モータ24aが連結され、回転体25は遠心用モータ24aで回転駆動される。また、遠心用モータ24aには、その回転位置を検出するためのエンコーダ24cが設けられている。
【0016】
回転体25の底部には、前記したように方向切替用ギア26が、回転可能に軸支されて設けられており、このギア26上に、μTASチップを保持するためのチップ保持部22が設けられる。
測定室21の下部、回転体25およびチップ保持部22が設けられる方向切替用ギア26の各々には、光源41から反射鏡42を介して入射する光を通過させる光導入用開口部22aおよびアパーチャ部23が形成されており、測定室21の上部には、この光を受光する受光部43と、この光を導光する例えば光ファイバ44が装着される開口部22bが設けられている。
また、測定室21の上面および下面の一部の領域には、測定室21内の温度を一定温度例えば37℃に維持するための面状の加熱手段35が設けられており、例えばサーミスタ等の温度測定手段36による検出温度に基づいて、測定室内の温度が一定になるように制御される。
また、測定部20は、前述したようにチップ保持部22に保持されたμTASチップの向きを調整するための、チップ方向切替機構30を備えている。
そして、チップ方向切替用モータ31を駆動することにより、原動側ギア33が回転し、これと噛み合う方向切替用ギア26が回転してチップ保持部22が回転する。これにより、μTASチップ60の向きを変えることができる。
【0017】
図4(a)は上記回転体25をチップ保持部側から見た概念図、図4(b)は図4(a)の一点鎖線の丸で囲った部分の拡大図である。
図4(a)に示すように、回転体25上には、チップ保持部22に保持されたμTASチップの向きを調整するための方向切替用ギア26が設けられ、方向切替用ギア26上に、μTASチップを保持するためのチップ保持部22が配置される。
そして、前述したように、玉軸受け32などを介して駆動軸24bに対して回転自在に設けられた、方向切替用ギア26と噛み合う原動側ギア33が設けられており、図示しないチップ方向切替用モータを駆動することにより、原動側ギア33が回転し、これと噛み合う方向切替用ギア26が、回転軸Dを中心に回転してチップ保持部22が回転する。なお、チップ方向切替機構は、ギア(遊星ギア)による切替を記載したが、例えば磁石でチップ保持部を回転させて切り替えるように構成することもできる。
【0018】
チップ保持部22には、図4(b)に示すように、アパーチャ部23が設けられ、μTASチップがチップ保持部22に装着されているとき、前記光源41からの光は、このアパーチャ部23を通って、μTASチップの測定エリアに入射する。
また、本実施例の測定位置設定工程は、チップ保持部22にμTASチップが装着される前に行われ、前記光源41からの光を上記アパーチャ部23に導入しながら、回転体25を微小量回転させ、各回転位置における受光部43で受光される光量値を検出する。そして、後述するように光の光量値が、あらかじめ設定された規定値以上になるか、あるいは最大光量となる回転体の位置を求め、これを測定位置とする。
なお、図4(b)には、回転体25を微小回転させたときのエンコーダ24cで検出されるエンコーダ値を例示している。
【0019】
図5は、本実施例の血液分析装置のシステム構成を示すブロック図である。
図5において、回転体25、該回転体25を回転駆動する回転駆動機構24、μTASチップを保持するためのチップ保持部22、μTASチップの向きを変えるための方向切替用ギア26、チップ方向切替機構30等から駆動ユニット27が構成される。
上記チップ保持部22には、アパーチャ部23が設けられており、測定ユニット40の光源41からの光は反射鏡42で反射して、アパーチャ部23を通って(μTASチップが装着されているときには、その測定エリアを通過して)、受光部43で受光される。
また、前述したようにμTASチップや回転体25の雰囲気温度を制御するための加熱手段35、駆動ユニットなどの温度を検出するための温度測定手段36が設けられる。
【0020】
上記回転駆動機構24は、駆動ユニット制御部55により制御され、駆動ユニット制御部55は、制御部50から与えられる駆動指令信号に応じて、回転駆動機構24を制御して、回転体25を回転駆動したり、所定の回転位置に位置決めする。
制御部50は、イニシャライズ工程制御部501、測定工程制御部502を備え、上記駆動ユニット制御部55に駆動指令信号を与えて回転駆動機構24を制御するとともに、前記加熱手段35、測定ユニット40、チップ方向切替機構30等を制御して、血液分析処理のための各種工程を制御する。
本実施例において、回転体25を回転させアパーチャ部23を通過する光量値が規定値以上(あるいは最大光量)になる回転体25の測定位置を求める測定位置設定処理は、制御部50のイニシャライズ工程制御部501における一工程として実現される。なお、上記測定位置設定処理は、測定液を測定する前であれば、いつおこなってもよい。
【0021】
以下、上記制御部50、駆動ユニット制御部55による吸光度測定処理について説明する。
まず、駆動ユニット制御部55による回転駆動機構24の制御について説明する。
図6は、駆動ユニット制御部55の概略構成を示すブロック図、図7は、駆動ユニット制御部55における制御処理を示すフローチャートである。
図6に示すように駆動ユニット制御部55にはCPU551と、遠心用モータ24aを駆動するためのドライバ552が設けられ、ドライバ552はエンコーダ24cにより検出される回転位置がセットされるカウンタ553を有する。なお、この場合の遠心用モータ24aはたとえばDCモータであり、その回転軸に回転位置検出用のエンコーダ24cが設けられている。
【0022】
遠心用モータ24aの駆動制御について図7のフローチャートに説明する。
制御部50からCPU551に対して、モータ24aの駆動指令が与えられると、CPU551は、ドライバ552にモータ駆動情報をセットする。すなわち、CPU551はモータ24aの速度、加速度、減速度をドライバ552にセットし(ステップS1) 、さらにモータ24aが停止する目標位置(相対位置、すなわち、現在位置からの移動量)を演算してセットする(ステップS2)。ここで、目標位置は次のように与えられる。
目標位置=(速度(rpm)×回転時間(秒)/60)×パルス数
ここで、エンコーダの一周のパルス数は例えば1000である。
なお、後述するモータ24aの遠心分離駆動、原点移動及び測定位置移動の制御においては、上記「速度・加速度・減速度」、「目標位置」等が相違するだけで、モータ24aを遠心分離のために回転駆動する場合にも、駆動指令は目標位置として与えられ、モータ24aは目標位置に達するまで、所定回数回転して目標位置で停止する。
【0023】
ドライバ552は、CPU551から与えられる「速度・加速度・減速度」「目標位置」に基いてモータを駆動させる。
すなわち、ドライバ552は上記でデータが与えられると、モータ24aの加速、定速、減速パターンを生成し、この加減速パターンに基づきモータ24aを加速駆動、定速駆動、減速駆動を行い目標位置でモータ24aを停止させる(図7のステップS3−S6)。モータの回転に応じて、モータの回転がエンコーダ24cにより検出され、回転位置がカウンタ553にセットされるので、ドライバ552は、上記加減速パターン、定速パターンにモータ24aの回転位置が一致するように、モータ24aを駆動する。
【0024】
図6、図7ではモータとしてエンコーダ付きモータを用いた場合について説明したが、上記回転体25を駆動するモータとしては、エンコーダ付きモータに代えてパルスモータ(ステッピングモータ)を用いることもできる。
以下、遠心用モータ24aとしてパルスモータを用いた場合について説明する。
図8は、パルスモータを用いた場合の駆動ユニット制御部55の概略構成を示すブロック図であり、図9は駆動ユニット制御部55における制御処理を示すフローチャートである。
図8に示すように駆動ユニット制御部55にはCPU551と、駆動量がセットされるカウンタ553と、遠心用モータ(パルスモータ)24aを駆動するためのパルス信号を出力するドライバ552が設けられる。
なお、パルスモータは一パルスが送られる毎に、一定の角度だけ回転するモータであり、回転角はステップ角と呼ばれ、ステップ角を小さくすればするほど分解能が高くなる。例えば1000パルスで一回転するパルスモータを用いれば、前述したエンコーダ付きモータ(1回転で1000パルスを出力するエンコーダを用いた場合)と同程度の分解能を得ることができる。
【0025】
パルスモータを用いた場合の遠心用モータ24aの駆動制御について図9のフローチャートに説明する。
制御部50からCPU551に対して、モータ24aの駆動指令が与えられると、CPU551は、速度、加速度、減速度に応じたパルスモータ24aへ供給される駆動パルスのパルスレート(パルス周波数)設定などの初期化設定を行い(ステップS1)、カウンタ553に目標位置(相対位置)をセットする(ステップS2)。
ここで、目標位置はエンコーダ付きモータを使用した場合と同様に次のように設定される。
目標位置=(速度(rpm)×回転時間(秒)/60)×パルス数
なお、パルスモータのステップ角は例えば0.72°(5相パルスモータ)、パルス発生周波数は10kHzである。
ついで、パルスモータ24aを駆動する。
すなわち、パルスモータ24aに上記設定されたパルスレートで1パルスを出力し(ステップS3)、モータ24aが駆動されたらカウンタ553に保持された値を1減じる( ステップS4−S5)。ついで、カウンタ553に保持された値が0になったかを調べ、0になればモータの駆動を停止し、0でなければステップS3に戻り、上記処理を繰り返す。
【0026】
次に、本実施例の吸光度測定の処理について説明する。
図10は、μTASチップ(以下チップという)に保持された測定液の吸光度測定の全工程を示す概略フローチャートである。
まず、血液分析装置のイニシャライズ(初期化)処理を行なう(ステップS1)。この工程では、インキュベーション処理(測定室21を加熱して設定温度にする処理)を行なったのち、後述する本発明に係る測定位置設定処理を行なう。
ついで、ステップS2〜S6の工程に移行し、測定室21のチップ保持部22にチップをセットし(ステップS2)、測定前処理を行なう(ステップS3)。
測定前処理においては、検体液の秤量、検体液と試薬との混合、測定液を測定エリアに液送する処理を含む処理を行なう。
次に、測定エリア内の測定液の光吸収量を測定する測定工程処理を行い(ステップS4)、測定工程終了処理を行なう(ステップS5)。そして、他の血液測定に供するチップが無いことを確認して(ステップS6)、処理を終了する。また、血液測定に供するチップがある場合には、ステップS2に戻り、上記処理を繰り返す。
【0027】
次に上記各工程について具体的に説明する。
(1)イニシャライズ工程
図11は本発明に係る測定位置設定工程を含むイニシャライズ(初期化)工程の処理を示すフローチャートである。
図11は、チップをチップ保持部にセットする(チップセット)前に行われるイニシャライズ工程の詳細なフローチャートを示し、測定された光量値が規定値以上になる回転体位置を測定位置と設定する場合の処理を示す。
図11において、電源ON時に装置イニシャライズを開始する。
まず、電源ON指令により図示しない電源がONされ、図5に示した制御部50、駆動ユニット制御部55等に給電を開始する(ステップT1)。
これにより、制御部50のイニシャライズ工程制御部501は、制御部50、駆動ユニット制御部55等を構成するCPUを初期化し、また、エンコーダモータイニシャル処理において、エンコーダ付きモータ24aを初期化する(ステップT2−T3)。
なお、ここでは、回転体25を駆動するモータとして前記図6で説明したエンコーダ付きモータ24a(以下では、エンコーダモータあるいは単にモータという)を用いる場合について説明する。
次いで、ステップT4でインキュベーションを開始し、測定室21の温度を一定にする工程に入る。
すなわち、図5に示す制御部50のイニシャライズ工程制御部501は、測定室21の内部が設定温度になるように加熱手段35の昇温を開始させる。
その後、例えばサーミスタ等からなる温度測定手段36によって、測定室21の内部が設定温度になったかどうかを判定する(ステップT5)。
【0028】
設定温度になったら、制御部50のイニシャライズ工程制御部501の測定位置設定部503は、以下に説明する測定位置設定工程処理を行う。
まず、エンコーダモータ24aを初回位置に移動させる(ステップT6)。すなわち、測定位置設定部503は、駆動ユニット制御部55に対して、エンコーダモータ24aが上記初回位置に移動するような駆動指令を出力し、駆動ユニット制御部55は前述したように、エンコーダモータ24aを駆動して、上記初回位置に移動させる。
なお、初回位置とは、あらかじめ設定された探索開始位置であるが、任意の位置を始点として規定値以上の光量が得られる場所を探すよりも、撓んだ回転体25のアパーチャ部23の位置は設計位置に近接していることが多いことから、規定値以上の光量が得られる場所を高速に見つけるという観点からは、撓む前の回転体の駆動軸からアパーチャ部まで伸ばした線分から±15°の範囲(図4(a)参照)に、モータ24aの回転位置を移動させることが好ましい。
ここでは、この位置をエンコーダモータ光量取得設計位置ということとし、この「設計位置」とは、回転体25が撓まなかったとき、チップ保持部22のアパーチャ部23に光源が入射されるモータ24aの回転位置(設計値)のことである。
すなわち、あらかじめエンコーダモータ光量取得設計位置に移動させておくことで、光量が規定値以上となる位置を求めるまでの時間を短縮することができる。なお、後述する図13のフローチャートでは、エンコーダモータ光量取得設計位置に移動させている。
【0029】
以下、モータ24aを少しずつ回転させながら、アパーチャ23を通過する光量が規定値以上となる回転位置を探索する。図12はエンコーダパルス値と、アパーチャを通過する光量の関係を示す図であり、この例では、エンコーダパルス値が12のとき、最大光量となっている。
ここでは、図12において、エンコーダパルス値が例えば「9」の回転位置が、前記した光量取得設計位置であるとして説明を続ける。
エンコーダモータ光量取得設計位置へ移動し停止後に、その位置での受光部が受光する光量を測定する(ステップT7)。そして、測定した光量値を測定位置設定部503の記憶部504に記憶する(ステップT8)。
そして、エンコーダモータ24aを1パルス分移動させ、受光部が受光する光量を測定し(ステップT9−T10)、記憶部504に前回記憶された光量値と比較する(ステップT11)。
なお、この例では、光量値が増加するエンコーダモータ24aの回転方向はわかっているとして、その方向にエンコーダモータ24aを移動させている。例えば図12においては、エンコーダモータパルス値が増加する方向、すなわち、右側に移動させている。
したがって、「取得光量値>前回記憶光量値」となるはずであり、「取得光量値<前回記憶光量値」になる場合は、取得光量が規定値に達せずに減少し始めたか、あるいは、モータの移動方向が誤っているかである。したがってこの場合はエラー終了する。
【0030】
「取得光量値≧前回記憶光量値」であると、この取得光量値が規定値以上であるかを判断する(ステップT12)。この光量値が規定値以下であれば、ステップT8に戻る。
上記ステップT8〜T12の手順を繰り返し、光量値が規定値以上になると、エンコーダモータの移動を停止し、その時のエンコーダモータ24aの回転位置を設定位置として記憶する(ステップT13)。
ついで、エンコーダモータ24aのイニシャライズを行い(ステップT14)、装置イニシャライズを終了する。
図11に示した本実施例においては、予めわかっている光量増加方向に、回転体25を回転させながら、光量値が規定値以上になる回転位置を求めているので、規定値以上の光量が得られる回転体の位置を速やかに知ることができる。
【0031】
図11では、測定された光量値が規定値以上となる回転位置を求める場合について説明したが、測定された光量値が最大値で、かつ規定値以上となる回転体位置を求めるようにしてもよい。
図13に、測定された光量値が最大値となる回転体位置を測定位置と設定する場合のフローチャートを示す。
図13において、ステップT5までの処理は前記図11と同じであり、ここではステップT6から説明する。
この実施例では、受光部で取得される光量値が増加するエンコーダモータの回転方向はわからないとして、まず、光量が増加するエンコーダモータの回転方向を調べる。
すなわち、エンコーダモータ24aを前記したエンコーダモータ光量取得設計位置に移動させる(ステップT6)。
次いで、受光部が受光する光量を取得し、取得した光量を記憶部504に記憶し、エンコーダモータ24aを1パルス分移動させる(ステップT7−T9)。
そして、受光部が受光する光量を取得し、上記記憶された光量値と比較する(ステップT10−T11)。そして、上記比較結果からエンコーダモータが光量増加方向に回転しているか否かを判別する。
上記比較結果が、「取得光量値>記憶部光量値」であれば、エンコーダモータ24aは光量値が増加する方向に移動していることになる。例えば前記図12で説明すると、エンコーダモータを回転体の一方向に向かって移動し、エンコーダパルス値「9」から「10」に移動すると、「取得光量値>記憶部光量値」となる。
ついで、ステップT12にいき、エンコーダモータ24aを光量が増加する方向、すなわち、同じ方向に1パルス分移動させる。
【0032】
一方、ステップT11で、「取得光量値<記憶部光量値」の場合は、エンコーダモータ24aは光量値が減少する向に移動しているので、エンコーダモータ24aを逆方向に、すなわち光量値が増加する方向に2ステップ分移動させる(ステップT13)。
すなわち、「取得光量値<記憶部光量値」の場合は、図12の例で説明すると、エンコーダパルス値「9」から「8」に移動し、「8」での光量を取得したことになる。
このとき、光増加方向がエンコーダパルス値「9」から「10」に向かう方向であったことが分かるので、エンコーダモータを光増加方向、すなわち、エンコーダモータが回転していた方向に対して、反対方向に向かって2パルス移動すれば、エンコーダパルス値を「8」から「10」に移動させることができる。
【0033】
ついで、取得した光量値が最大光量となるエンコーダモータの回転位置を求める。
まず、ステップT14で、ステップT10で取得した光量値を記憶部504に記憶し、受光部が受光する光量を取得し、上記記憶された光量値と比較する(ステップT14−T16)。そして、「取得光量値>記憶部光量値」であれば、まだ光量値が最大値まで到達していないので、ステップT12に戻り上記ステップT12−T15の処理を繰り返す。 上記処理を繰り返し「取得光量値<記憶部光量値」になると、取得光量値が最大値に到達し最大値を超えて減少し始めたということなので、上記記憶部に記憶された光量値を最大光量値とする。
例えば前記図12で説明すると、エンコーダモータを一方向に向かって移動し、エンコーダパルス値「10」→「11」→「12」→「13」に移動すると、「12」→「13」になるとき、「取得光量値>記憶部光量値」から「取得光量値<記憶部光量値」に変わる。この場合は、取得光量値が最大値に到達し最大値を超えて減少し始めたということなので、上記エンコーダ値「12」を最大の光量値が得られる回転位置とする。
ついで、上記記憶部に記憶された光量値(最大値)を規定値と比較する(ステップT17)。
ここで、「取得光量値<規定値」になる場合は、取得光量の最大値が規定値に達しない場合であり、この場合はエラー終了する。例えば図12の例では、エンコーダパルス値「12」の位置の光量値が規定値以下である場合は、例えば回転体の撓みが大きすぎるなどの理由により、光量値が規定値を超えることがないので、不良であると判断する。
また、記憶部に記憶された光量値が規定値以上であれば、該規定値を超えている光量値を取得したときのエンコーダモータ24aの回転位置を設定位置として記憶する(ステップT18)。
ついで、エンコーダモータ24aのイニシャライズを行い(ステップT19)、装置イニシャライズを終了する。
【0034】
(2)チップセット、測定前処理工程
装置イニシャライズ終了後、図1(b)に示したように、血液分析装置の筐体1の蓋1aが開けられ、測定室のチップ挿入口1bにμTASチップが挿入され、チップ保持部22にμTASチップが配置される。
チップセット後、測定前処理として、図14に示す工程を行う。
すなわち、検体液の秤量、検体液と試薬との混合、測定液を測定エリアに液送する処理等を行うため、チップ方向切替機構30により、必要に応じてチップの方向を切り替え、また、チップに遠心力を書ける必要がある場合には、回転体25を回転させる(ステップS1−S3)。
そして、チップの方向を切り替えて再度、処理を行う必要がある場合には、ステップS4からステップS1に戻り上記工程を繰り返す。
【0035】
(3)測定処理工程
上記測定前処理で、吸光度測定を行なうことができる測定液が得られると、図15に示す測定工程処理でこの測定液の吸光度測定が行われる。
すなわち、まず、前記イニシャライズ工程で求めたエンコーダモータ測定設定位置に、エンコーダモータを回転移動させる(ステップS1)。
ついで、吸光度測定処理を行う(ステップS1)。すなわち、前記したように、光源41からの光がμTASチップの測定エリアに入射し、測定エリアから出射した光が受光部43で受光され、吸光度が測定される。
μTASチップに保持される測定液は、規定値以上の光量値が得られる測定設定位置で測定されるので、例えば温度変化などにより回転体が撓んでも、信頼性のある測定結果が得られる。
測定終了後、測定室内の回転体25の原点移動処理が行われて、回転体25が原点位置に戻り、チップ保持部22から測定したμTASチップが取り出される。
他に血液測定に供するμTASが無ければ電源をOFFにして、終了する。
【0036】
以上のように、第1の実施例に係る血液分析装置は、μTASチップに保持された測定液を測定する前に、所期光量が得られる位置を求め、これを記憶することに特徴がある。 特に、μTASチップの内部に保持された血液と試薬との反応を促進する目的で、μTASチップを加熱する加熱手段を設けた血液分析装置においては、この加熱手段で回転体が加熱されると、熱膨張等により撓んでしまうこともある。そこで、第1の実施例に係る血液分析装置は、μTASチップが配置される測定室の内部が設定温度になってから、所期光量が得られる位置を求めることで、所期光量位置が得られた後に、回転体が撓むことを防止できる。
また、最大光量値が得られる位置を求め、これを記憶し、この最大光量値が得られる回転体の回転位置を測定設定位置とすることにより、より高精度の測定結果を得ることができる。
【0037】
次に本発明の第2の実施例について、図16及び図17により説明する。
図16は前記図3と同様、血液分析装置の断面図を示し、図17は、図4(a)と同様、回転体25をチップ保持部側から見た概念図であるが、本実施例においては、図3、図4に示したものと光源と受光部の位置が異なり、これに伴ってアパーチャ部が設けられる位置が異なっている。
すなわち、本実施例においては、図17に示すように、アパーチャ部23は、チップ保持部22の側壁部分に設けられ、チップを保持するチップ保持部22上に反射鏡42が設けられている。そして、光源41からの光が、回転体25の横方向からアパーチャ部23を通って上記反射鏡42に入射し、ここで反射して、回転体25の横方向に設けられた受光部43に入射するように構成されている(図16は断面図であり、この構成は示されていない)。
その他の構成は前記図3等に示したものと同様であり、前述したように測定部20は中空円柱状の測定室21を有し、この測定室21内に、回転体25が配置される。回転体25は、駆動軸24bを介して回転駆動機構24の遠心用モータ24aが連結され、回転体25は遠心用モータ24aで回転駆動される。また、遠心用モータ24aには、その回転位置を検出するためのエンコーダ24cが設けられている。
【0038】
回転体25の底部には、前記したように方向切替用ギア26が、回転可能に軸支されて設けられており、このギア26上に、μTASチップを保持するためのチップ保持部22が設けられる。
また、測定室21の上面および下面の一部の領域には、測定室21内の温度を一定温度例えば37℃に維持するための面状の加熱手段35が設けられており、例えばサーミスタ等の温度測定手段36による検出温度に基づいて、測定室内の温度が一定になるように制御される。
また、測定部20は、前述したようにチップ保持部22に保持されたμTASチップの向きを調整するための、チップ方向切替機構30を備えている。
そして、チップ方向切替用モータ31を駆動することにより、原動側ギア33が回転し、これと噛み合う方向切替用ギア26が回転してチップ保持部22が回転する。これにより、μTASチップ60の向きを変えることができる。
【0039】
第2の実施例に係る血液分析装置における制御装置の構成、動作などは、第1の実施例で説明した通りであり、第1の実施例に係る血液分析装置と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施例においては、チップ保持部に反射鏡を設けているので、回転体の撓みと一緒に反射鏡の位置も変化する。このため、チップ保持部に反射鏡を設けない血液分析装置よりも回転体の撓みの影響を受け易い。
しかし、本実施例のように、規定値以上の光量値が得られる測定設定位置を求めておくことにより、回転体の変形と一緒に反射鏡の位置も変化しても、光源からアパーチャ部に入射する光量が減少し測定結果がバラツクといった問題は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る血液分析装置を具備する筐体の外観図である。
【図2】本発明に係る血液分析装置の測定部の斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施例の血液分析装置の測定部の断面構成を示す図である。
【図4】回転体をチップ保持部側から見た概念図である。
【図5】本発明の第1の実施例の血液分析装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図6】エンコーダモータを用いた場合の駆動ユニット制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図7】エンコーダモータを用いた場合の駆動ユニット制御部における制御処理を示すフローチャートである。
【図8】パルスモータを用いた場合の駆動ユニット制御部の概略構成を示すブロック図である。
【図9】パルスモータを用いた場合の駆動ユニット制御部における制御処理を示すフローチャートである。
【図10】μTASチップに保持された測定液の吸光度測定の全工程を示す概略フローチャートである。
【図11】本発明に係る測定位置設定工程を含むイニシャライズ工程の処理を示すフローチャート(1)である。
【図12】エンコーダパルス値とアパーチャを通過する光量の関係を示す図である。
【図13】本発明に係る測定位置設定工程を含むイニシャライズ工程の処理を示すフローチャート(2)である。
【図14】測定前処理工程の概略フローチャートである。
【図15】測定処理工程の概略フローチャートである。
【図16】本発明の第2の実施例の血液分析装置の断面図である。
【図17】本発明の第2の実施例の血液分析装置の回転体をチップ保持側から見た図である。
【図18】従来の血液分析装置の測定部の断面構成を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 筺体
1a 蓋
1b チップ挿入口
10 血液分析装置
20 測定部
21 測定室
22 チップ保持部
23 アパーチャ部
24 回転駆動機構
24a 遠心用モータ
24b 駆動軸
24c エンコーダ
25 回転体
26 方向切替用ギア
30 チップ方向切替機構
32 玉軸受け
33 原動側ギア
35 加熱手段
36 温度測定手段
40 測定ユニット
41 光源
42 反射鏡
43 受光部
44 光ファイバ
55 駆動ユニット制御部
50 制御部
501 イニシャライズ工程制御部
502 測定工程制御部
503 測定位置設定部
504 記憶部
551 CPU
552 ドライバ
553 カウンタ
60 μTASチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を通過させるアパーチャ部を有し、測定液を保持するμTASチップを保持するチップ保持部と、該チップ保持部を載置して回転する回転体と、該回転体を回転させる回転駆動機構と、該回転体に対する該μTASチップの向きを変更するチップ方向切替機構と、を備えてなる駆動ユニットと、
上記アパーチャ部に光を入射させる光源と、該光源からの光を受光する受光部とを備える測定ユニットと、
上記回転駆動機構と該光源及び受光部を制御する制御部とを有する血液分析装置において、
上記制御部は、上記μTASチップに上記光源からの光を入射させて測定液を測定するときの回転体の回転位置である測定位置を定めるための測定位置設定部を備え、
上記測定位置設定部は、測定液を測定する前に上記回転体を回転させ、上記アパーチャ部を通過して上記受光部が受光する上記光源からの光の光量値が、あらかじめ設定された規定値以上になる上記回転体の測定位置を求める
ことを特徴とする血液分析装置。
【請求項2】
上記測定位置設定部は、上記受光部が受光した光量とその光量が得られる回転体位置とを記憶する記憶部を備え、
回転体の各回転位置における上記光量を上記記憶部に記憶させて最大光量となる回転位置を求め、該回転位置における光量値が規定値以上であるとき、該回転体の回転位置を、回転体の測定位置とする
ことを特徴とする請求項1に記載の血液分析装置。
【請求項3】
上記チップ保持部と上記回転体とを内部に配置するように室を設け、該室に加熱手段と温度測定手段を設け、
上記制御部は、該温度測定手段により測定される温度が所定温度になるように該加熱手段を制御する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の血液分析装置。
【請求項4】
上記測定位置設定部は、上記光量値が、上記規定値以上にならないとき、不良と判断する
ことを特徴とする請求項1,2または請求項3の記載の血液分析装置。
【請求項5】
測定液を保持するμTASチップを保持するチップ保持部を載置した回転体を備え、
上記μTASチップをチップ保持部に保持させて、該回転体を回転させて上記測定液に対して所定の処理を行った後、
上記回転体を測定位置まで回転させて、上記チップ保持部に設けられたアパーチャ部から上記μTASチップに光を入射し、μTASチップを透過した光を受光部で受光して、上記測定液の特性を測定する血液分析装置における上記測定位置の設定方法であって、
測定液を測定する前に以下の(イ)(ロ)の工程により、測定位置を求める
(イ)上記回転体を回転させながら、上記アパーチャ部を通過して、受光部で受光される光の光量値を求め、
(ロ)受光した光の光量値が、あらかじめ設定された規定値以上になる上記回転体の回転位置を求めて、上記測定位置とする
ことを特徴とする血液分析装置における測定位置の設定方法。
【請求項6】
請求項5の(ロ)の工程を行なう際、最大光量となる回転位置を求め、該回転位置における光量値が規定値以上であるとき、該回転体の回転位置を、回転体の測定位置とする
ことを特徴とする血液分析装置における測定位置の設定方法。
【請求項7】
チップ保持部の雰囲気温度が所定温度になるまで加熱したのちに、請求項5または請求項6に記載の(イ)(ロ)の工程を行なう
ことを特徴とする血液分析装置における測定位置の設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−264868(P2009−264868A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113584(P2008−113584)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】