説明

血液循環促進剤、血液循環装置および血液循環促進医療システム

【課題】 カテーテル手術等による患者の負担が無く、血管の狭窄の原因を取り除くことが可能な血液循環促進剤、血液循環装置および血液循環促進医療システムの提供。
【解決手段】光の照射により自走するナノメートルオーダーの粒径を有する可動子2と、前記可動子を分散させるための分散剤3と、を備えることを特徴とする血液循環促進剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 血液循環促進剤、血液循環装置および血液循環促進医療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、食生活の変化に伴い動物性脂肪等の摂取が増加する一方、運動不足等により、コレステロールや中性脂肪が体内に過度に蓄積される成人の割合が増加しつつある。それに伴って血液中のコレステロール、中心脂肪等の割合が増加し、その結果、血管の狭窄を発生させ、心筋梗塞、脳梗塞等の命に関わる疾患の発生の原因となる。これらの疾患の治療方法としては、現在では、低侵襲手術方法として、血管内にカテーテルを挿入し、レーザー照射(例えば、特許文献1)、バルーン(例えば、特許文献2)、薬剤の投与(例えば、特許文献3)等により血管の狭窄の原因を取り除く方法が行われている。現在では治療に用いられるカテーテル径の小型化が進んでおり、患者の負担がより低減される方向に技術開発が進められている。
【特許文献1】特開平5−64668号
【特許文献2】特開2005−160536号
【特許文献3】特開2001−252354号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一方で、カテーテルを用いた手術では、約5%程度の失敗、すなわち、カテーテル手術の実施による患者の死亡例があるとされている。これは、血管の狭窄の原因を取り除く際に、その部位から剥がれたコレステロール等が、塊のまま血管内を流れ、その塊が別の血管(例えば、脳に向かう大動脈等)を詰まらせてしまい、別の疾患(例えば、脳梗塞)を引き起こす可能性があるからである。
【0004】
本発明はかかる実情に鑑みてなされたものであり、カテーテル手術等による患者の負担が無く、血管の狭窄の原因を取り除くことができる血液循環促進剤、血液循環装置および血液循環促進医療システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に関わる血液循環促進剤は、光の照射により自走するナノメートルオーダーの粒径を有する可動子と、前記可動子を分散させるための分散剤と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に関わる血液循環装置は、生体の血液を採取する血液採取手段と、採取された血液を循環させる血液循環手段と、前記血液循環手段に光の照射により自走するナノメートルオーダーの粒径を有する可動子が分散された血液循環促進剤を供給する血液循環促進剤供給手段と、前記血液循環促進剤が供給された血液に光を照射する光照射手段と、前記光照射手段で照射された血液を前記生体に注射する血液注射手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に関わる血液循環促進医療システムは、光の照射により自走するナノメートルオーダーの粒径を有する可動子が分散された血液循環促進剤と、前記血液循環促進剤に含まれる可動子に光エネルギーを供給する光照射装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
カテーテル手術等による患者の負担が無く、血管の狭窄の原因を取り除くことが可能な血液循環促進剤、血液循環装置および血液循環促進医療システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付する。
【0010】
図1に、本発明に関わる血液循環促進剤を説明する概念図を示す。
【0011】
本発明に関わる血液循環促進剤1は、図1に示すように、ナノメートルオーダーの粒径を有する可動子2と、可動子2を分散させるための分散剤3とを備えている。
【0012】
可動子2は、外部から光を照射すると特定の方向に自走する特性を備えている微粒子体であり、半導体特性を有する材料、例えば、シリコンで構成されている。
【0013】
可動子2の粒径は、図1に示すように、数十nm〜数百nm程度のナノメートルオーダーで構成されている。可動子2の粒径がミクロンメートルオーダー以上の粒径で構成されている場合は、その可動子2が生体の血管を流れる際に、体内に存在する血管のうち、特にその径が細い毛細血管等を詰まらせてしまう可能性があるため好ましくない。
【0014】
可動子2は、球体、又は、楕円体の形状を有していることが好ましい。可動子2の形状が、球体、又は、楕円体以外の形状、例えば、鋭角、又は、鈍角の尖った部分を有している多角形である場合は、その尖った部分が生体の血管内の内壁を傷つけてしまう可能性があるため好ましくない。
【0015】
なお、可動子2は、前述したように、ナノメートルオーダーの粒径を備えているため、可動子2同士で凝縮してしまう傾向を有している。そのため可動子2は分散剤3に分散されている。
【0016】
分散剤3は、人間を治療する医薬品であって、弱アルカリ性、例えば、pH7.1〜8.0である液状の医薬品で構成されている。これにより可動子2は、可動子2同士で凝縮されずに、分散剤3内でそれぞれ数十nm〜数百nm程度の粒径の微粒子体として存在することができる。
【0017】
分散剤3には、抗狭心症薬、血液凝固阻止薬、強心剤等の心臓疾患用の治療法で用いられる液状の心臓疾患用医薬品が含まれていることがより好ましい。これにより、心臓疾患用薬品としての従来の心臓疾患の治療の効果と、可動子2の存在による血液循環促進剤としての効果も加わり、より効果の高い心臓疾患用医薬品としての血液循環促進剤を提供することができる。
【0018】
次に、本発明の可動子2が分散された血液循環促進剤1を生体に使用した場合の効果を説明する。図2から図4は、本発明に関わる血液循環促進剤1を生体に注射した時の生体の血管内の状態を説明する概念図である。
【0019】
可動子2が分散された血液循環促進剤1を注射器、又は、点滴等により血管内に注射すると、血管内には、図2に示すように血液と共に、可動子2が血液の流れにのって血管内を循環する。
【0020】
なお、可動子2は、図2に示すように、血液内に存在する白血球(10〜15μm)、赤血球(約8μm)、血小板(2〜5μm)等よりもはるかに小さいナノメートルオーダーの粒径を備えているため、可動子2が注入されて血管内を流れたとしても通常の血液の流れ自体に悪影響を及ぼすことはない。
【0021】
また、個人差は存在するが、一般的な成人の血管の直径は、大動脈でおよそ2.5cm、動脈でおよそ4mm、細動脈でおよそ30μm、毛細血管でおよそ数μm〜10μmであるため、ナノメートルオーダーの粒径で構成されている可動子2が注入されて血管内を流れたとしても、毛細血管を含むすべての血管が、血液中の可動子2によって詰まる等の不具合は発生しない。つまり、体内の血液の流れを阻害することはない。
【0022】
可動子2が血液中に存在すると、血液の血流にのって、可動子2は、体内を循環していき、例えば、図3に示すように、血管の内壁に付着したコレステロール4が存在している血管の主要部に可動子2がさしかかった場合には、可動子2は、血流の流れの運動エネルギーを備えた状態でコレステロール4に接触する。接触した可動子2は、徐々に、コレステロール4を破壊し、削り取っていく機能を備えている。このように、可動子2は、血管内のコレステロール4等を徐々に破壊していくため、前述したように、血管内の内壁に付着したコレステロール4等が大きい塊のまま剥がれる心配がなく、その塊が別の血管(例えば、脳に向かう大動脈等)を詰まらせるという最悪の事態は発生することはない。
【0023】
加えて、可動子2は、長い年月が経過すると血管内の血液中に溶解してしまう性質を備えている。血液は、その45%が水分で構成されていると言われているが、人間の日常の食事等により、血液は酸性、または、アルカリ性に変化する。なお、可動子2は、半導体材料で構成されているため、長い年月をかけて血液内で酸エッチング、または、アルカリエッチングされ、数年で完全に血液内に溶解してしまう特性も備えている。よって、血液中に存在している可動子2は、将来的に、血液中に溶解してしまうため、治療終了後、可動子2を、血液中から取り除く必要はない。
【0024】
このように、本発明に関わる血液循環促進剤は、血液循環促進剤内に含まれるナノメートルオーダーの粒径を有する可動子によって、血管内部に付着したコレステロール等を徐々に剥離させる効果を備えているため、カテーテル等の手術を行う必要がなく、血管の狭窄の原因を取り除くことが可能となる。
【0025】
次に、本発明に関わる血液循環促進医療システムを説明する。図4は、本発明に関わる血液循環促進医療システムを説明する概念図である。
【0026】
本発明に関わる血液循環促進医療システムは、光の照射により自走するナノメートルオーダーの粒径を有する可動子が分散された血液循環促進剤と、血液循環促進剤に含まれる可動子に光エネルギーを供給する光照射装置と、を備えている。
【0027】
具体的には、図4に示すように、光の照射により自走するナノメートルオーダーの粒径を有する可動子2が分散された血液循環促進剤1を注射器、又は、点滴等により生体内に注射すると共に、更に、図示しない光照射装置を用いて、生体の血管に光5を照射することで、血液中を流れている可動子2に、可動子2自身が自走する光エネルギーを供給し、可動子2を血流の方向に自走させる。これによって、通常の血流の流れをより加速させることが可能となると共に、血管の内壁に付着しているコレステロール等を削り取る場合でも、血流の流れの運動エネルギーに加えて、可動子2自身が自走する運動エネルギーが加えられるため、より効率的にコレステロール等を削り取ることが可能となる。
【0028】
なお、図4に示すような、生体に光を照射する光照射装置としては、図5に示すように、例えば、腕輪6に設けられた発光ダイオード7を備えた光照射装置8で構成されている。これらの光照射装置8に備えられている発光ダイオード7の部分を、腕の動脈、又は、静脈の部分に接触させて、生体に光を照射することで、図4に示すように、血液中を流れる可動子2に光エネルギーを供給することが可能となる。
【0029】
光照射装置8から生体に照射する光5は、可視光、又は、赤外光を用いることが好ましい。その他の光(例えば、紫外光等)を照射する場合は、生体に悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0030】
なお、前述した光照射装置8は、図5に限定されるものではなく、首輪、指輪等で構成されていてもよい。さらに、発光ダイオード7は、複数、例えば、腕輪6の内壁全体に備えてもよく、腕全体に光を照射することができる構成としてもよい。さらに、平面状の基材に発光ダイオード7を取り付ける構成としてもよい。
【0031】
このように、本発明に関わる血液循環促進医療システムは、ナノメートルオーダーの粒径を有する可動子が分散された血液循環促進剤を血管内に注射すると共に、生体外部から光照射装置8等により生体内に光を照射することで、血液循環促進剤の効果をより高めることができる。
【0032】
次に、本発明に関わる血液循環装置を説明する。図6は、本発明に関わる血液循環装置を説明する概念図である。
【0033】
本発明に関わる血液循環装置10は、血液採取部11と、血液循環部12と、血液循環促進剤供給部13と、光照射部14と、血液注射部15とを備えている。
【0034】
血液採取部11は、生体から血液を採取する血液採取手段を備えており、例えば、注射器11aで構成されている。
【0035】
血液循環部12は、血液採取部11で採取した血液を循環させる血液循環手段を備えており、例えば、血液採取部11で採取した血液を循環させるための細管12aと、細管12a内の血液を循環させる血液循環装置12bとで構成されている。
【0036】
血液循環促進剤供給部13は、血液循環部12の細管12aに光の照射により自走するナノメートルオーダーの粒径を有する可動子が分散された血液循環促進剤を供給する血液循環促進剤供給手段を備えており、例えば、血液循環促進剤を収容する収容部13aと、血液循環部12の細管12aに血液循環促進剤を供給するための細管13bで構成されている。
【0037】
光照射部14は、血液循環部12の細管12aに光を照射することで、血液循環促進剤が供給された血液に光を照射する光照射手段を備えており、例えば、発光ダイオード14aと、発光ダイオード14aを固定する固定基材14bで構成されている。
【0038】
血液注入部15は、光照射部14で光を照射した血液を、生体に注射するための血液注射手段を備えており、例えば、注射器15aで構成されている。
【0039】
このように、本発明に関わる血液循環装置は、生体から血液を採取して、採取した血液に本発明に関わる血液循環促進剤を供給し、血液循環促進剤を供給した血液に対して、光を照射してから生体内に戻すことで、血液循環促進剤内に含まれる可動子が光エネルギーを備えた状態で、血液内に供給することができる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
【0041】
(実施例1)
図7に示すように、循環器20に、全長3m、直径4mmの人工血管21を接続して、常に、人工血管21内に溶媒を循環させる簡易的な溶媒循環装置を作成した。その後、人工血管21の一部を切断し、その内壁に、コレステロールと同じ物質で構成された大きさが1mmの塊22を、接着剤を用いて接着させて、もとの位置に縫合させた。
【0042】
その後、人工血管21内に溶媒として人工血液を流し込み、循環の流量を安定させた後、分散剤に粒径が10〜50nmの楕円体のシリコンで構成された可動子を分散させた血液循環促進剤を人工血管21内に注射器で注入して、72時間人工血液を循環させた。
【0043】
72時間経過後、人工血液の循環をやめて、人工血管21内の人工血液を排出した後、人工血管21の内壁に接着させた塊22を採取し、その大きさを計測して、塊22の大きさの変化を確認した。その結果、塊22の大きさは、0.97mm程度に減少しており、微小ではあるが、明らかに、塊22が小さくなっていることが確認された。
【0044】
(実施例2)
図8に示すように、循環器20に、全長3m、直径4mmの人工血管21を接続して、常に、人工血管21内に溶媒を循環させる簡易的な溶媒循環装置を作成した。その後、人工血管21の一部を切断し、その内壁に、コレステロールと同じ物質で構成された大きさが1mmの塊22を、接着剤を用いて接着させて、もとの位置に縫合させた。
【0045】
その後、人工血管21内に溶媒として人工血液を流し込み、循環の流量を安定させた後、分散剤に粒径が10〜50nmの楕円体のシリコンで構成された可動子を分散させた血液循環促進剤を人工血管21内に注射器で注入すると共に、人工血管21の一部に、基材23に固定された発光ダイオード24から可視光を照射して、72時間人工血液を循環させた。
【0046】
72時間経過後、人工血液の循環をやめて、人工血管21内の人工血液を排出した後、人工血管21の内壁に接着させた塊22を採取し、大きさを計測して、塊22の大きさの変化を確認した。その結果、塊22の大きさは、0.94mm程度に減少しており、明らかに、塊22が小さくなっていることが確認された。
【0047】
(実施例3)
図9に示すように、循環器20に、全長3m、直径4mmの人工血管21を接続して、常に、人工血管21内に溶媒を循環させる簡易的な溶媒循環装置を作成した。その後、人工血管21の一部を切断し、その内壁に、コレステロールと同じ物質で構成された大きさが1mmの塊22を、接着剤を用いて接着させて、もとの位置に縫合させた。さらに、直径30μmの人工血管25を、複数本、縫合してバイパスを作り、仮想的な毛細血管を作製した。
【0048】
その後、人工血管21内に人工血液を流し込み、循環の流量を安定させた後、分散剤に粒径が10〜50nmの楕円体のシリコンで構成された可動子を分散させた血液循環促進剤を人工血管21内に注射器で注入して、144時間人工血液を循環させた。
【0049】
144時間経過後、人工血液の循環をやめて、人工血管21内の人工血液を排出した後、人工血管21の内壁に接着させた塊22を採取し、その大きさを計測して、塊22の大きさの変化を確認すると共に、直径30μmの人工血管25を縫合した部分の人工血管25の接合部26の詰まり程度を目視にて確認した。その結果、塊22の大きさは、0.93mm程度に減少しており、明らかに、塊22が小さくなっていることが確認された。また、すべての接合部26においてコレステロール等による詰まりは確認されなかった。
【0050】
(実施例4)
図10に示すように、循環器20に、全長3m、直径4mmの人工血管21を接続して、常に、人工血管21内に溶媒を循環させる簡易的な溶媒循環装置を作成した。その後、人工血管21の一部を切断し、その内壁に、コレステロールと同じ物質で構成された大きさが1mmの塊22を、接着剤を用いて接着させて、もとの位置に縫合させた。さらに、直径30μmの人工血管25を、複数本、縫合してバイパスを作り、仮想的な毛細血管を作製した。
【0051】
その後、人工血管21内に人工血液を流し込み、循環の流量を安定させた後、分散剤に粒径が10〜50nmの楕円体のシリコンで構成された可動子を分散させた血液循環促進剤を人工血管21内に注射器で注入すると共に、人工血管21の一部に、基材23に固定された発光ダイオード24から可視光を照射して、144時間人工血液を循環させた。
【0052】
144時間経過後、人工血液の循環をやめて、人工血管21内の人工血液を排出した後、人工血管21の内壁に接着させた塊22を採取し、その大きさを計測して、塊22の大きさの変化を確認するとともに、直径30μmの人工血管25を縫合した部分の人工血管25の接合部26の詰まり程度を目視にて確認した。その結果、塊22の大きさは、0.90mm程度に減少しており、明らかに、塊22が小さくなっていることが確認された。また、すべての接合部26においてコレステロール等による詰まりは確認されなかった。
【0053】
(実施例5)
微量の抗狭心症薬(ニトログリセリン)を混ぜた心臓疾患用医薬品に粒径が10〜50nmの楕円体のシリコンで構成された可動子を分散させた血液循環促進剤を用いて、その他は、実施例4と同様な条件にて、144時間人工血液を循環させて、塊22の大きさの変化を確認するとともに、直径30μmの人工血管25を縫合した部分の人工血管25の接合部26の詰まり程度を目視にて確認した。その結果、塊22の大きさは、0.85mm程度に減少しており、明らかに、塊22が小さくなっていることが確認された。また、すべての接合部26においてコレステロール等による詰まりは確認されなかった。
【0054】
(実施例6)
図11に示すように、循環器20に、全長3m、直径4mmの人工血管21を接続して、常に、人工血管21内に溶媒を循環させる簡易的な溶媒循環装置を作成した。その後、人工血管21の一部を切断し、その内壁に、コレステロールと同じ物質で構成された大きさが1mmの塊22を、接着剤を用いて接着させて、もとの位置に縫合させた。
【0055】
その後、人工血管21内に溶媒として人工血液を流し込み、循環の流量を安定させた後、塊22を接着して縫合させた人工血管21の循環方向上流部に、図11に示すように、血液循環装置10を接続し、人工血管21内を流れる人工血液の一部を血液循環装置10内に流し込み、血液循環促進剤供給部13から、人工血液内に血液循環促進剤を供給すると共に、光照射部14で、血液循環促進剤を供給した人工血液に可視光を照射して、144時間人工血液を循環させた。
【0056】
144時間経過後、人工血液の循環をやめて、人工血管21内の人工血液を排出した後、人工血管21の内壁に接着させた塊22を採取し、その大きさを計測して、塊22の大きさの変化を確認した。その結果、塊22の大きさは、0.87mm程度に減少しており、明らかに、塊22が小さくなっていることが確認された。
【0057】
(実施例7)
図12に示すように、循環器20に、全長3m、直径4mmの人工血管21を接続して、常に、人工血管21内に溶媒を循環させる簡易的な溶媒循環装置を作成した。その後、人工血管21の一部を切断し、その内壁に、コレステロールと同じ物質で構成された大きさが1mmの塊22を、接着剤を用いて接着させて、もとの位置に縫合させた。さらに、直径30μmの人工血管25を、複数本、縫合してバイパスを作り、仮想的な毛細血管を作製した。
【0058】
その後、人工血管21内に溶媒として人工血液を流し込み、循環の流量を安定させた後、塊22を接着して縫合させた人工血管21の循環方向上流部に、図12に示すように、血液循環装置10を接続し、人工血管21内を流れる人工血液の一部を血液循環装置10内に流し込み、血液循環促進剤供給部13から、人工血液内に血液循環促進剤を供給すると共に、光照射部14で、血液循環促進剤を供給した人工血液に可視光を照射して、144時間人工血液を循環させた。
【0059】
144時間経過後、人工血液の循環をやめて、人工血管21内の人工血液を排出した後、人工血管21の内壁に接着させた塊22を採取し、その大きさを計測して、塊22の大きさの変化を確認するとともに、直径30μmの人工血管25を縫合した部分の人工血管25の接合部26の詰まり程度を目視にて確認した。その結果、塊22の大きさは、0.88mm程度に減少しており、明らかに、塊22が小さくなっていることが確認された。また、すべての接合部26においてコレステロール等による詰まりは確認されなかった。
【0060】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限られず、特許請求の範囲に記載の発明の要旨の範疇において様々に変更可能である。また、本発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に関わる血液循環促進剤を説明する概念図
【図2】本発明に関わる血液循環促進剤を生体に注射した時の生体の血管内の状態を説明する概念図。
【図3】本発明に関わる血液循環促進剤を生体に注射した時の生体の血管内の状態を説明する概念図。
【図4】本発明に関わる血液循環促進医療システムを説明する概念図。
【図5】本発明に関わる光照射装置の一例を説明する概念図。
【図6】本発明に関わる血液循環装置を説明する概念図
【図7】本発明に関わる実施例1を説明する概念図。
【図8】本発明に関わる実施例2を説明する概念図。
【図9】本発明に関わる実施例3を説明する概念図。
【図10】本発明に関わる実施例4、5を説明する概念図。
【図11】本発明に関わる実施例6を説明する概念図。
【図12】本発明に関わる実施例7を説明する概念図。
【符号の説明】
【0062】
1 血液循環促進剤
2 可動子
3 分散剤
4 コレステロール
5 光
6 腕輪
7 発光ダイオード
8 光照射装置
10 血液循環装置
11 血液採取部
11a 注射器
12 血液循環部
12a 細管
12b 血液循環装置
13 血液循環促進剤供給部
13a 収容部
13b 細管
14 光照射部
14a 発光ダイオード
14b 固定基材
15 血液注入部
15a 注射器
20 循環器
21 人工血管
22 塊
23 基材
24 発光ダイオード
25 人工血管
26 接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射により自走するナノメートルオーダーの粒径を有する可動子と、
前記可動子を分散させるための分散剤と、
を備えることを特徴とする血液循環促進剤。
【請求項2】
前記可動子は球体、又は、楕円体の形状を備えることを特徴とする請求項1に記載の血液循環促進剤。
【請求項3】
前記分散剤は、弱アルカリで構成された医薬品であることを特徴とする請求項1または2に記載の血液循環促進剤。
【請求項4】
前記分散剤には、心臓疾患用医薬品が含まれていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の血液循環促進剤。
【請求項5】
生体の血液を採取する血液採取手段と、
採取された血液を循環させる血液循環手段と、
前記血液循環手段に光の照射により自走するナノメートルオーダーの粒径を有する可動子が分散された血液循環促進剤を供給する血液循環促進剤供給手段と、
前記血液循環促進剤が供給された血液に光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段で照射された血液を前記生体に注射する血液注射手段と、
を備えたことを特徴とする血液循環装置。
【請求項6】
前記可動子は球体、又は、楕円体の形状を備えることを特徴とする請求項5に記載の血液循環装置。
【請求項7】
前記分散剤は、弱アルカリで構成された医薬品であることを特徴とする請求項5または6に記載の血液循環装置。
【請求項8】
前記分散剤には、心臓疾患用医薬品が含まれていることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載の血液循環装置。
【請求項9】
光の照射により自走するナノメートルオーダーの粒径を有する可動子が分散された血液循環促進剤と、
前記血液循環促進剤に含まれる可動子に光エネルギーを供給する光照射装置と、
を備えたことを特徴とする血液循環促進医療システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−91673(P2007−91673A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285590(P2005−285590)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】