説明

血液適合性の様式で表面をコーティングするための化合物および方法

【課題】表面を血液適合性にコーティングするための基質、そのコーティング方法、および望まない反応を防止または低減するための表面上でのそれらの使用方法の提供。
【解決手段】選択された血液適合性表面を調整するための、糖ユニットであるN−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミンを含む、オリゴ糖および多糖類、ならびにそれらオリゴ糖および/または多糖類の使用、ならびに、ヘパリン、ヘパラン硫酸およびキトサンの一般的な生合成前駆体物質を模範とする、前記オリゴ糖および/または多糖類を伴った表面の血液適合性コーティングの方法。さらに、前記オリゴ糖および/または多糖類の生産方法、および、血液適合性コートされた表面の様々な利用に関する。また特に、抗増殖性、抗炎症性および/または抗血栓性の活性物質を含む血液適合性コーティングを付着したステントにおける前記オリゴ糖および/または多糖類の使用方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液適合性表面を調製するための、糖ビルディングブロックN−アシルグルコサミンおよび/またはN−アシルガラクトサミンを含有するオリゴ糖類および/または多糖類の使用、前記オリゴ糖類および/または多糖類を用いて表面を血液適合性にコーティングするための方法、ならびに血液適合性にコーティングされた表面の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの身体において、血液は、外傷の場合にのみ、天然の血管の内面以外の表面と接触する。結果として、血液が異質面と接触する場合、出血を抑制し、生命を脅かすほど血液が失われるのを防ぐために、血液凝固システムが常に活性化される。インプラントが異質面を示すという事実により、血液と永久的に接触するインプラントを受け入れる全ての患者は、血液と薬物、いわゆる血液凝固を抑制する抗凝固薬に継続して接触するように処置される。このことは、血液透析患者等の体外循環を適用される患者にもいえる。しかし、この凝固抑制医薬は、毛髪喪失、血小板減少症を超え、嘔気および嘔吐、出血性皮膚壊死に至る範囲の考慮すべき副作用をある程度受け、脳出血等の致命的な結果を有する副作用まで出血性素因が増加する。
【0003】
従って、血液に接触した際に凝固システムを活性化せず、血液の凝固を引き起こさない、プロテーゼ(prothese)、臓器スペアパーツ、層、カニューレ、管、血液コンテナ、ステント等のような、トロンボゲンを形成しない血液適合性の材料に対する需要が存在する。
【0004】
EP−B−0 333 730(特許文献1)は、トロンボゲンを形成しない内皮細胞表面の多糖類(HS−I)の組み込み、接着および/または改変および接続による、血液適合性の基質を調製するための方法を記載している。生物学的表面または人工表面へのこの特定の内皮細胞表面の硫酸プロテオヘパランHSIの固定化により、このようにコーティングされた表面が血液適合性を持ち、永久的な血液接触に対して好ましい。しかし、HSIを生成するためのプロセスは内皮細胞の培養を必要とし、その結果、このプロセスの経済的な有用性は、内皮細胞の培養に時間がかかり、比較的大量の培養された内皮細胞を手に入れるには、かなり高いコストがかかるため、非常に限定されるので、不利益である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第EP−B−0 333 730
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、表面を血液適合性にコーティングするための基質、表面を血液適合性にコーティングするための方法、および望まない反応を防止または低減するための表面上でのそれらの使用、を提供することにある。
【0007】
特に、本発明の目的は、一方で、選択された活性化剤および活性化剤の組み合わせを用いて移植の初日および数週間の細胞反応を抑制することによって、他方では、活性化剤の影響を減らしつつ、この異質な表面において、長期間にわたって合併症を招く恐れのある反応が起こらないことを保証する、トロンボゲンを形成しない表面、不活性な表面、生体適合性の表面を提供することによって、医療用製品の連続的に制御された内殖を可能にする医療用製品を提供することである。
【0008】
この目的は、本発明の独立請求項の技術的教示によって解決される。本発明の更に有利な実施の形態は、従属項、説明、図面および実施例から明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は一般式Iaの多糖類
【0010】
【化3】

【0011】
および一般式Ibの構造的に非常に類似した多糖類
【0012】
【化4】

【0013】
を開示する。
【0014】
式Iaの多糖類は、2kDから400kD、好ましくは5kDから150kD、更に好ましくは10kDから100kD、特に好ましくは30kDから80kDの分子量を有する。式Ibの多糖類は、2kDから15kD、好ましくは4kDから13kD、更に好ましくは6kDから12kD、特に好ましくは8kDから11kDの分子量を有する。変数nは4から1050までの範囲の整数である。好ましくは、nは9から400まで、更に好ましくは14から260までの整数であり、特に好ましくは19から210までの整数である。
【0015】
一般式IaおよびIbは二糖類を表し、これらは本発明の多糖類の基本単位として表され、この基本単位がn回つながることによって多糖類を形成する。2個の糖分子を含む前記基本単位は、一般式IaおよびIbが偶数の糖分子を有する多糖類に関連する場合のみを示唆することを意図していない。もちろん、一般式Iaおよび一般式Ibは、奇数の糖単位を有する多糖類も含んでいる。ヒドロキシ基は、オリゴ糖類および多糖類の末端基としてそれぞれ存在している。
【0016】
基YおよびZは互いに独立して、以下の化学アシル基またはカルボキシアルキル基を表す:−CHO、−COCH、−COC、−COC、−COC、−COC11、−COCH(CH、−COCHCH(CH、−COCH(CH)C、−COC(CH、−CHCOO、−CCOO、−CCOO、−CCOO
【0017】
好ましいのはアシル基−COCH、−COC、−COC、およびカルボキシアルキル基−CHCOO、−CCOO、−CCOOである。更に好ましいのはアセチル基およびプロパノイル基であり、カルボキシメチル基およびカルボキシエチル基である。特に好ましいのはアセチル基およびカルボキシメチル基である。
【0018】
加えて、基Yがアシル基を表し、基Zがカルボキシアルキル基を表すことが好ましい。Yが基−COCH、−COCまたはCOCである場合が更に好ましく、特に−COCHである。更に、Zがカルボキシエチル基またはカルボキシメチル基の場合が更に好ましく、カルボキシメチル基が特に好ましい。
【0019】
式Iaによって示される二糖類基本単位は、置換基Yおよび更なる基Zをそれぞれ含む。
【0020】
本発明の多糖類が2つの異なる基、すなわちYおよびZを含むことは明らかである。一般式Iaは、二糖類基本単位を共につなげることにより生じる厳格な交互配列で基YおよびZを含む多糖類を含むだけではなく、アミノ基で完全にランダムな順序で基YおよびZを有する多糖類も含むべきであることをここで指摘することは重要である。更に、一般式Iaは、基YおよびZを異なる数で含有する多糖類も含むべきである。Y基の数対X基の数の比は、70%:30%、好ましくは60%:40%、特に好ましくは45%:55%であることができる。特に好ましいのは、単にランダムな分布で、アミノ基の実質的に半分がY残基を有し、アミノ基の残りの半分がZ残基を有する、一般式Iaの多糖類である。用語「実質的に半分」は、ほとんどの適切な場合において正確に50%を意味するが、45%から55%まで、特に48%から52%までも含むべきである。
【0021】
好ましいのは、基YおよびZが以下の意味を有する一般式Iaの化合物である:
Y = −CHO および Z = −CCOO
Y = −CHO および Z = −CHCOO
Y = −COCH および Z = −CCOO
Y = −COCH および Z = −CHCOO
Y = −COC および Z = −CCOO
Y = −COC および Z = −CHCOO
特に好ましいのは、基YおよびZが以下の意味を有する一般式Iaの化合物である:
Y = −CHO および Z = −CCOO
Y = −COCH および Z = −CHCOO
特に好ましいのは、Yが以下の基の1つである、一般式Ibの化合物である:−CHO、−COCH、−COCまたはCOC。更に好ましいのは、基−CHO、−COCH、−COCであり、特に好ましいのは基−COCHである。
【0022】
一般式Ibの化合物は、ごく少量の遊離アミノ基を含有する。ニンヒドリン試験を用いても遊離アミノ基が検出されない場合、この試験の感受性に起因して、全ての−NH−Y基のうち、2%未満、好ましくは1%未満、特に好ましくは0.5%未満が遊離アミノ基として存在すること、すなわち、Yが水素を表す−NH−Y基の割合が低いことを結論づけることができる。
【0023】
一般式IaおよびIbの多糖類がカルボキシレート基およびアミノ基を含有する場合、一般式IaおよびIbは、それぞれの多糖類のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩も含む。従って、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、またはマグネシウム塩またはカルシウム塩等のアルカリ土類金属塩を述べることができる。更に、アンモニア、第1、第2、第3および第4のアミン、ピリジンおよびピリジン誘導体を用いて、アンモニウム塩、好ましくはアルキルアンモニウム塩およびピリジニウム塩を形成することができる。多糖類と塩を形成する塩基としては、NaOH、KOH、LiOH、CaCO、Fe(OH)、NHOH、テトラアルキルアンモニウム水酸化物等の無機および有機の塩基、および類似の化合物がある。
【0024】
ヘパラン硫酸は哺乳動物の細胞表面に偏在している。細胞の種類によって、ヘパラン硫酸は、分子量、アセチル化度および硫酸化度について非常に異なる。例えば、肝臓のヘパラン硫酸は、約50%のアセチル化度を有しているが、一方、内皮細胞の多糖外被(glycocalyx)由来のヘパラン硫酸は90%以上のアセチル化度を示す場合がある。ヘパリンは、5%までの非常に低いレベルのアセチル化度しか示さない。肝臓のヘパラン硫酸およびヘパリンの硫酸化度は、二糖類単位あたり約2であり、内皮細胞のヘパラン硫酸の硫酸化度はほぼ0であり、他の細胞種由来のヘパラン硫酸は二糖類単位あたり0〜2である。
【0025】
以下の図は、硫酸基がランダムに分布し、ヘパリンについて典型的な場合、二糖類単位あたり硫酸化度2の、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の四糖類単位を示す。
【0026】
【化5】

【0027】
すべてのヘパラン硫酸は、ヘパリンと共通の生合成プロセスを有する。この場合に、最初に、キシロース含有結合領域を有するコアタンパク質が構築される。このコアタンパク質は、キシロースと、それらに結合する2個のガラクトース残基からなる。2個のガラクトース残基のうち最後の1個に対して、グルクロン酸およびガラクトサミンが、それぞれの鎖長が達成されるまで、互いに交互に結合する。最後に、スルホトランスフェラーゼおよびエピメラーゼによる、全てのヘパラン硫酸およびヘパリンの通常の前駆体多糖類の多段階酵素的改変は、種々のヘパラン硫酸からヘパリンまでの広範囲のスペクトルを生じる変動する完全性(completeness)を有する反応によって行われる。
【0028】
ヘパリンは、D−グルコサミンおよびD−グルクロン酸またはL−イズロン酸から代替的に構築され、ここで、D−グルコサミンおよびD−グルクロン酸は、β−1,4−グリコシド様式(または、α−1,4−グリコシド様式におけるL−イズロン酸)で二糖類となるように結合し、ヘパリンサブユニットを形成する。これらのサブユニットは、順に、互いにβ−1,4−グリコシド様式で結合し、ヘパリンへと導かれる。スルホニル基の位置は変わってもよい。四糖類単位は、平均4〜5の硫酸基を含有する。ヘパラン硫酸は、硫酸ヘパリチンとも称され、肝臓のヘパラン硫酸を除き、ヘパリンよりもN−結合およびO−結合したスルホニル基が少ないが、N−アセチル基が多い。
【0029】
図3から明らかなように、一般式Iaの化合物(例として図3Cを参照)および一般式Ibの化合物(例として図3Bを参照)は、内皮細胞の天然のヘパラン硫酸と構造的に非常に類似しているが、内皮細胞のヘパラン硫酸の使用における最初に記載したような不利益を防ぐ。
【0030】
抗血栓活性について、特定の五糖類単位が、約3番目の分子ごとに市販のヘパリン調整物中に見出すことができるものが原因である。異なる抗血栓活性を持つヘパリン調製物は、特定の分離技術によって製造可能である。高い活性において、例えば、調製物から得られるアンチトロンビン−III−アフィニティークロマトグラフィー(「高親和性」−ヘパリン)によって、この活性な配列は全てのヘパリン分子中に見出され、一方、「非親和性」−調製物は特徴的ではない五糖類配列であり、凝固の活性阻害は検出することができない。この五糖類との相互作用を介して、アンチトロンビンIIIの活性、凝固鍵因子トロンビンの阻害剤は、本質的に累乗される(結合親和性は因子(factor)2×10まで増加する)[Stiekema J.C.J.;Clin Nephrology 26,Suppl.No.1,S3-S8,(1986)]。
【0031】
ヘパリンのアミノ基はほとんどN−硫酸化またはN−アセチル化されている。最も重要なO−硫酸化位置は、イズロン酸のC2およびグルコサミンのC6およびC3である。血漿の凝固における五糖類の活性のために、基本的にC6上の硫酸基が原因であり、それより低い比率で他の官能基も原因である。
【0032】
ヘパリンまたはヘパラン硫酸でコーティングされた医療用インプラントの表面は、コーティングによって単に状況的に血液適合性になり、その状態を維持する。人工表面上に添加されるヘパリンまたはヘパラン硫酸は、上述の五糖類単位とアンチトロンビンIIIとの立体障害に起因する、制限された相互作用に関する、その抗血栓活性の測定値において部分的に顕著に減少する。
【0033】
これらのポリアニオン性基質の固定化のために、一方で、ヘパリンの凝固抑制効果または硫酸ヘパリンの凝固抑制効果を排除し、他方では、付着によって特定の凝固プロセスを開始し、それにより血漿タンパク質(例えば、アルブミン、フィブリノーゲン、トロンビン)の三次構造が変化し、その上に血小板が付着する全ての場合において、ヘパリン化表面上への血漿タンパク質の強い吸着が観察される。
【0034】
従って、一方で、固定化による五糖類単位とアンチトロンビンIIIとの制限された相互作用、他方では、医療用インプラント上でヘパリンまたはヘパラン硫酸層上への血漿タンパク質の付着について、相関関係が存在し、コーティングの抗血栓性の損失を導き、2〜3秒の間に起こる血漿タンパク質の吸着が抗凝固性表面を失わせ、粘着性の血漿タンパク質が三次構造を変化させ、それによってトロンボゲン生成能を有する表面が生じるため、正反対のことも起こり得る。驚くべきことに、一般式IaおよびIbの化合物が、ヘパリンまたはヘパラン硫酸に対して構造的に異なっているにもかかわらず、ヘパリンの血液適合性を示し、更に、一般式IaおよびIbの化合物の固定化の間に、凝固カスケードの活性化における初期段階を示す血漿タンパク質の顕著な付着が観察されないことが検出された。本発明の化合物の血液適合性は、人工表面への固定後にも維持されている。
【0035】
更に、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の硫酸基は、アンチトロンビンIIIとの相互作用のために必要であり、ヘパリンまたはヘパラン硫酸に抗血栓効果を付与すると考えられる。式Ibの化合物および式Iaの化合物は、ほとんど完全な脱硫酸化に起因して、凝固抑制に活性を持たず、すなわち、抗凝固性を持たず、一般式Ibの化合物の硫酸基は、二糖類単位あたりの硫酸基が0.2未満の少量になるまで除去される。
【0036】
一般式Ibの化合物は、最初に多糖類を実質的に完全に脱硫酸化し、次いで実質的に完全にN−アシル化することによって、ヘパリンまたはヘパラン硫酸から製造可能である。用語「実質的に完全に脱硫酸化」は、90%を超える、好ましくは95%を超える、特に好ましくは98%を超える脱硫酸化度をいう。脱硫酸化度は、遊離アミノ基を検出する、いわゆるニンヒドリン試験によって決定することができる。脱硫酸化は、DMMB(ジメチルメチレンブルー)を用いて得られる着色反応が起こらない程度まで行われる。この着色試験は、硫酸化した多糖類を検出するために適切である。しかし、それらの検出限界は当該技術分野の文献において公知ではない。脱硫酸化は、例えば、溶媒混合物中でピリジニウム塩を加熱することによって実施できる。特に、DMSO、1,4−ジオキサンおよびメタノールの混合物が適していることがわかった。
【0037】
ヘパラン硫酸およびヘパリンは、全体的な加水分解によって脱硫酸化、次いで再アシル化された。その後、二糖類単位あたりの硫酸基の数(S/D)を13C−NMRによって決定した。以下の表1は、ヘパリン、および脱硫酸化され、再アセチル化されたヘパリン(Ac−ヘパリン)の実施例におけるこれらの結果を示す。
【0038】
表1:13C−NMRによって決定されるような、ヘパリン、およびAc−ヘパリンの実施例における二糖類単位あたりの官能基の分布
【0039】
【表1】

【0040】
2−S、3−S、6−S それぞれ2位、3位、6位に硫酸基
NS:アミノ基上に硫酸基
N−Ac:アミノ基上にアセチル基
NH:遊離アミノ基
S/D:二糖類単位あたりの硫酸基
ヘパリンの場合には硫酸基含量が約2.5の硫酸基/二糖類単位(S/D)であるのと比較して、Ac−ヘパリンの場合には、約0.03の硫酸基/二糖類単位が再生可能に得られた。
【0041】
上述のように、ヘパリンまたは硫酸ヘパリンと、前記一般式の化合物とにおける硫酸基含量の違いは、アンチトロンビンIIIに対する活性におよびこれらの化合物の凝固効果にかなりの悪影響を与える。
【0042】
一般式IaおよびIbの化合物は、二糖類単位あたりの硫酸基含量が0.2未満であり、好ましくは0.07未満、更に好ましくは0.05未満、特に好ましくは二糖類単位あたりの硫酸基含量が0.03未満である。
【0043】
活性な凝固抑制作用機構が認められているヘパリンの硫酸基を除去することによって、ヘパリンは、一方で、凝固プロセスにおける活性な役割を持たず、他方で、凝固システムによって異質面として検出されない、血液適合性の、凝固不活性なオリゴ糖類または多糖類の適切な表面改質を受ける。このコーティングは、血液の凝固活性成分に対して最も高い標準的な血液適合性および不動態性を与える天然物を首尾よく模倣する。
【0044】
実施例5および6は、一般式Iaおよび/またはIbの本発明の化合物でコーティングされる表面が、特に共有結合的にコーティングされる表面が、不動態性、非トロンボン形成性、血液適合性、非増殖性および/または非炎症性のコーティングを生じることを明らかにする。このことは、Ac−ヘパリンの実施例によって明らかになっている。
【0045】
用語「実質的に完全にN−アシル化された」は、94%を超える、好ましくは97%を超える、特に好ましくは98%を超えるN−アシル化度をいう。アシル化は、遊離アミノ基のニンヒドリン検出がいかなる着色反応も示さないほど完全な様式で行われる。アシル化剤として、カルボン酸塩化物、臭化物、または無水物が好ましく使用される。例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ブタン酸、酢酸塩化物、プロピオン酸塩化物またはブタン酸塩化物が、本発明の化合物を調製するために適している。無水カルボン酸は、アシル化剤として特に適している。
【0046】
溶媒として、特に無水カルボン酸のための溶媒として、脱イオン水が、好ましくは、10〜30体積%の量で添加される共溶媒とともに使用される。共溶媒として、メタノール、エタノール、DMSO、DMF、アセトン、ジオキサン、THF、酢酸エチルエステルおよび他の極性溶媒が適している。カルボン酸ハロゲン化物を使用する場合、DMSOまたはDMFのような水を含まない極性溶媒が使用されるのが好ましい。
【0047】
溶媒として、脱イオン水が、好ましくは、10〜30体積%の量で添加される共溶媒とともに使用される。共溶媒として、メタノール、エタノール、DMSO、DMF、アセトン、ジオキサン、THF、酢酸エチルエステルおよび他の極性溶媒が適している。
【0048】
一般式Iaの本発明の化合物は、糖分子の半分にカルボキシレート基を有し、他の半分にN−アシル基を有する。
【0049】
このような化合物は、多糖類ヒアルロン酸、硫酸デルマタン、コンドロイチン硫酸から製造することもできる。ヘパリンおよびヘパラン硫酸に対する違いは、本明細書中では1,4−グリコシド結合ではなく1,3−グリコシド結合に存在する単糖類の結合から生じる。二糖類は再び、互いに1,4−グリコシドに結合する。血液凝固抗血栓活性な硫酸デルマタン[Biochem.J 289,313〜330(1993)]の場合にも、コントロイチン硫酸N−アセチルグルコサミンがN−アセチルガラクトサミンによって置換され、4位のC原子でのヒドロキシル基の立体的位置が異なる。
【0050】
それらの関連する構造に起因して、多糖類は、以下のような違いによって分類される:
タイプ1)ウロン酸−ガラクトサミンタイプ(HexA−GalN)n:
このタイプに分類されるのは硫酸コンドロイチンおよび硫酸デルマタンである。この基に典型的なのは、ガラクトサミンに対してウロン酸がβ−1,3−グリコシド結合していることである。ガラクトサミンは、次のウロン酸に対して一部分がβ−1,4−グリコシド結合している。硫酸デルマタンは、ウロン酸を生じるヘパリンおよびヘパラン硫酸におけるものとは別の、つまり大量のL−イズロン酸によって、硫酸コンドトイチンとは異なる。硫酸コンドロイチンの硫酸化度は、二糖類あたり0.1から1.3の硫酸基である。硫酸デルマタンは、硫酸コンドロイチンよりも平均的に高い硫酸化度で、二糖類あたり1.0から3.0までの硫酸基を有し、ヘパリンと似た値に達している。アミノ基はN−アセチル化されている。
【0051】
脱硫酸化およびN−再アセチル化は、ヘパリンおよび硫酸ヘパリンの場合におけるように、トロンボンを形成しないコーティングとして使用するためにも適する化合物を導く。
【0052】
タイプ2)ウロン酸−グルコサミンタイプ(HexA−GlcN)n:
このタイプに分類されるのは、ヘパリン、ヘパラン硫酸およびヒアルロナンである。ヘパリンおよびヘパラン硫酸は、β−1,4−結合のみであり、一方、この種類にも分類されるヒアルロナンにおいて、単糖類D−グルクロン酸およびD−グルコサミンはβ−1,3−結合した単糖類である。この多糖類は、硫酸基を有さずN−アセチル化されている多糖類のみを含む。分子量は、ヘパリンおよびヘパラン硫酸の最大値と比較して、8000kDにまで達する。鎖長の減少およびアセチル基の維持またはN−再アセチル化によって、単糖類のβ−1,3−グリコシド結合によってのみ式Ibから区別できる構造が導かれる。
【0053】
更なる化合物は、キチンまたはキトサンからも調製可能である。キチンは、そのモノマー単位がN−アセチル−D−グルコサミンからなり、β−1,4−グリコシド様式で結合する、窒素含有多糖類である。キチンは、約2,000個の糖単位からなり、約400,000g/molの分子量を有する直鎖ポリマーである。キチンは溶解度が非常に低く、水、有機溶媒および希酸または希塩基にほとんど溶けない。強酸と混合すると加水分解し、D−グルコサミンおよび酢酸が生成する。しかし、強塩基を用いて処理すると、キトサンおよび酢酸塩が生じる。
【0054】
キトサンは、キチンのケン化によって容易に製造することができる。キトサンは、β−1,4−グリコシド結合したグルコサミン(2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコース)からなる。キトサンは、そのフィルム形成能について知られており、イオン交換器のための基本材料として更に使用され、血清中のコレステロール濃度を下げ、減量のための薬剤として更に使用される。
【0055】
一般式Iaの本発明の基質は、強塩基を用いてキチンを部分的に脱アセチル化し、遊離アミノ基をモノカルボキシアルキル化することによって、キチンから製造可能である(図1を参照)。脱アセチル化度、すなわち、デマスクした第1アミノ基の量は、容積分析によって決定できる。遊離アミノ基の定量的な検出は、ニンヒドリン反応を用いて行われる。実験が行われる様式によって、20から80%の脱アセチル化度を得ることができる。40から60%の脱アセチル化度が好ましく、45から55%が特に好ましい。
【0056】
この様式の合成によって、多糖類は、単にランダムな分布で、N−アセチル基またはN−カルボキシアルキル基のいずれかを含有する糖単位を得ることができる。
【0057】
キチンのN−アセチル基の塩基性加水分解によって容易に得ることができるキトサン(図1を参照)は、同時に、式Iaの多糖類の合成のための出発物質として役立つ。
【0058】
キトサンはN−アセチル基を非常にわずかしか有していない。従って、本発明の化合物は、一方で、第1のステップで遊離アミノ基の実質的に半分をカルボキシアルキル化し、次いで残りの遊離アミノ基をアシル化するか、またはアシル化を最初に行い、次いで残りの遊離アミノ基と適切なカルボキシアルキル化剤とを反応させることによって得ることができる。アミノ基の実質的に半分がアシル化され、残りの半分がカルボキシアルキル化されている場合が好ましい。
【0059】
「部分的にN−アシル化されたキトサン」は、30〜70%、好ましくは40〜60%、特に好ましくは45〜55%のN−アシル化度をいう。特に好ましいのは、単にランダムな分布で、アミノ基の実質的に半分がY残基を有し、アミノ基の残りの半分がZ残基を有する、キトサン誘導体である。用語「実質的に半分」は、最も適切な場合には正確に50%を意味するが、45%から55%までの範囲も含むべきである。カルボキシアルキル化度およびアシル化度は、例えば、13C−NMRで決定できる(偏差±3%)。
【0060】
第1の反応ステップにおいて、特定の数の遊離アミノ基がアシル化されるかまたはカルボキシアルキル化されるという事実に起因して、このことにより、一般式Iaの多糖類におけるアシル基またはカルボキシアルキル基の完全にランダムな分布を必然的に生じる。従って、式Iaは、本発明の多糖類のうちの二糖類単位を示すことを意図するだけでなく、アシル基およびカルボキシアルキル基の交互配列を決定することも意図する。
【0061】
以下の図は、N−カルボキシメチル化され、N−アセチル化されたキトサンの典型的な四糖類単位を示す。
【0062】
【化6】

【0063】
本発明は、コーティング、特に天然および/または人工の表面を血液適合性にコーティングするための、一般式Iaおよび/またはIbの化合物およびそれらの化合物の塩の使用を記載する。「血液適合性」は、血液凝固システムまたは血小板の基質と相互作用せず、血液凝固カスケードの引き金とならないことを意味する、本発明に従う化合物の性質をいう。
【0064】
加えて、本発明は、表面を血液適合性にコーティングするための、オリゴ糖類および/または多糖類を開示している。好ましいのは、上述の分子量の範囲内の多糖類である。使用されるオリゴ糖類および/または多糖類の顕著な特徴の1つは、大量の糖単位N−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミンを含有することである。このことは、糖単位の40〜60%、好ましくは45〜55%、特に好ましくは48〜52%がN−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミンであり、実質的に残りの糖単位がそれぞれカルボキシル基を有することを意味する。従って、通常は95%を超える、好ましくは98%を超えるオリゴ糖類および/または多糖類が、単に2個の糖単位からなり、1つの糖単位はカルボキシル基を有し、他のものはN−アシル基を有する。
【0065】
オリゴ糖類および/または多糖類の1つの糖単位は、N−アシルグルコサミンおよびN−アシルガラクトサミン、好ましくはN−アセチルグルコサミンおよびN−アセチルガラクトサミンであり、他方はウロン酸、好ましくはグルクロン酸およびイズロン酸である。
【0066】
好ましいのは、実質的に糖グルコサミンおよびガラクトサミンからなり、実質的に糖単位の半分がN−アシル基、好ましくはN−アセチル基を保有し、グルコサミン単位の他の半分が、アミノ基を介して、または1つ以上のメチレニル基を介して直接結合するカルボキシル基を保有するオリゴ糖類および/または多糖類である。アミノ基に結合するこれらのカルボン酸基は、好ましくはカルボキシメチルまたはカルボキシエチル基である。更に、実質的にその半分、すなわち48〜52%、好ましくは49〜51%、特に好ましくは49.5〜50.5%が、N−アシルグルコサミンおよびN−アシルガラクトサミンであり、好ましくはN−アセチルグルコサミンまたはN−アセチルガラクトサミンからなり、および実質的にそれらの他の半分がウロン酸、好ましくはグルクロン酸およびイズロン酸からなる、オリゴ糖類および/または多糖類が好ましい。特に好ましいのは、2つの糖単位が実質的に交互の配列を示す(すなわち、交互の接続の場合における統計的偏移率にかかわらない)オリゴ糖類および/または多糖類である。偏差結合の比は、1%未満、好ましくは0.1%未満であるべきである。
【0067】
驚くべきことに、本発明の使用のために、特に、実質的に脱硫酸化され、実質的にN−アシル化されたヘパリンおよび部分的にN−カルボキシアルキル化され、N−アシル化されたキトサン並びに脱硫酸化され、実質的にN−アシル化された硫酸デルマタン、硫酸コンドロイチン、更に鎖長の減少したヒアルロン酸が特に適していることが示された。特に、N−アセチル化されたヘパリンおよび部分的にN−カルボキシメチル化され、N−アセチル化されたキトサンは、血液適合性コーティングに適している。
【0068】
「実質的に」によって定義される脱硫酸化度およびアシル化度は、すでに上記で更に定義された。用語「実質的に」は、統計的偏差を考慮に入れる必要があることを明らかにすることを意図している。糖単位の実質的に交互の配列は、一般的に、2個の等しい糖単位が互いに結合しているわけではないが、このような誤りのある結合を完全に排除するわけではないことを意味する。これに対して、「実質的に半分」は、ほぼ50%を意味するが、わずかな偏差は許容する。これは、特に生合成で製造される高分子において、最も適切な場合は決して達成されず、酵素は完全に働くわけではなく、触媒は通常特定の誤り率を含んでいるので、特定の偏差は常に考慮に入れなければならないためである。しかし、天然ヘパリンの場合には、N−アセチルグルコサミンおよびウロン酸単位(グルクロン酸の代わり)の厳密な交互配列が存在する。
【0069】
更に、直接的な血液接触を意図する、表面を血液適合性にコーティングするためのプロセスが開示される。前記プロセスにおいて、天然および/または人工の表面が提供され、上に記載されるオリゴ糖類および/または多糖類は上記表面上に固定される。
【0070】
これらの表面上のオリゴ糖類および/または多糖類の固定化は、オリゴ糖類および/または多糖類の疎水性相互作用、ファンデルワールス力、静電相互作用、水素結合、イオン相互作用、架橋を介して、および/または表面上の共有結合によって達成可能である。好ましいのは、オリゴ糖類および/または多糖類の共有結合(横からの結合)、更に好ましくは共有結合性の単一点での結合(横からの結合)、特に好ましくは共有結合性の末端結合(末端からの結合)である。
【0071】
医療用製品の任意の天然および/または人工の表面は、例えば、プロテーゼ、臓器、血管、大動脈、心臓弁、管、臓器交換パーツ、インプラント、繊維、中空繊維、ステント、皮下針、シリンジ、層、糖剤、血液容器、タイタープレート、ペースメーカー、吸着媒体、クロマトグラフィー媒体、クロマトグラフィーカラム、ダイアライザー、接続パーツ、センサー、ベンタイル、遠心チャンバ、熱交換器、内視鏡、フィルター、ポンプチャンバの表面、および他の表面に使用可能であり、これらは血液適合性を有するべきである。用語「医療用製品」は、広範囲に理解されるべきであり、特に、血液と短時間接触するかかる製品(例えば内視鏡)または永久的に接触する製品(例えばステント)の表面をいう。
【0072】
以下に、本発明のコーティング方法を記載する。医療用デバイスの生物学的表面および/または人工表面は、以下の方法を用いて血液適合性のコーティングを備えることができる:
【0073】
a)医療用デバイスの表面を提供するステップ、および
b)式Iaおよび/またはIbの少なくとも1つのオリゴ糖類および/または多糖類の付着ステップ、
および/または
少なくとも1つのオリゴ糖類および/または多糖類は、糖単位N−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミン40%から60%を含有し、残りの糖単位は実質的に糖単位あたり1つのカルボキシル基を含有する。
【0074】
「付着」は、対応する化合物で表面を少なくとも部分的にコーティングすることをいい、ここで、上記化合物は下にある表面上および/または表面中に付着され、および/または導入され、および/または固定化されるか、または何らかの方法で固着される。
【0075】
「実質的に残りの糖のビルディング単位」とは、カルボキシル基を有する糖ビルディング単位の残りの60〜40%のうち、残りの糖ビルディング単位の93%、好ましくは96%、特に好ましくは98%であると理解すべきである。
【0076】
コーティングされていない表面および/または非血液適合性の表面が、提供されるのが好ましい。「非血液適合性」表面は、血液凝固システムを活性化可能な、多かれ少なかれトロンボゲン形成能を有する表面をいう。
【0077】
代替の実施の形態は以下のステップを含む:
a)医療用デバイスの表面を提供するステップ、および
b’)医療用デバイスの表面上に生体安定性の層(膜)を付着
または
a)医療用デバイスの表面を提供するステップ、および
b)式Iaおよび/またはIbの少なくとも1つのオリゴ糖類および/または多糖類の付着ステップ、
および/または
少なくとも1つのオリゴ糖類および/または多糖類が、糖単位N−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミン40%から60%を含有し、残りの糖単位が、糖単位あたり1つのカルボキシル基を実質的に含有する。
【0078】
b’)医療用デバイスの表面上に生体安定性の層を付着するステップ、および
d’)式Iaおよび/またはIbの少なくとも1つのオリゴ糖類および/または多糖類の更なる血液適合性の層の付着ステップ、
および/または
少なくとも1つのオリゴ糖類および/または多糖類が、糖単位N−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミン40%から60%を含有し、残りの糖単位が、糖単位あたり1つのカルボキシル基を実質的に含有する。
【0079】
最後に述べた実施の形態は、例えば、移植中の不適切な輸送または複雑な条件に起因して、ポリマー性層およびそれと共に外部の血液適合性層の機械的ダメージの場合でさえ、表面コーティングが血液適合性であるその性質を失わないことを確実にしている。
【0080】
「生物学的および人工」表面は、人工の医療用デバイスと人工パーツと、例えば、ブタの心臓と人工心臓弁との組み合わせであると理解すべきである。
【0081】
単一層は、好ましくは浸漬法または噴霧法によって付着され、一方、1つの層が医療用デバイスの表面上で別のまたは更なる活性化剤を付着するのと同時に付着可能であり、次いで、共有結合的におよび/または接着的に結合するそれぞれの層において行われる。この様式において、1つ以上の活性化剤が、医療用デバイス上に血液適合性の層が付着するのと同時に付着可能である。
【0082】
生体安定性または生分解性の層のために使用可能な活性化剤および基質を、以下で更に項目別に記す。
【0083】
この第1の生体安定性または血液適合性の層について、追加で任意のステップc)において、1つ以上の活性化剤の活性化剤層を付着させることが可能である。好ましい実施の形態では、活性化剤はその下層に共有結合する。また、活性化剤は、好ましくは浸漬法または噴霧法によって付着される。
【0084】
ステップb)またはステップc)の後、血液適合性の層または活性化剤層上に少なくとも1つの生分解性層および/または少なくとも1つの生体安定性の層を付着することを含む、更なるステップd)を続けることができる。
【0085】
代替の実施の形態によれば、ステップb’)またはステップc)の後に、式IaまたはIbの本発明の少なくとも1つのオリゴ糖類および/または多糖類の付着または固定化、および/または、血液適合性層として、糖単位N−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミンを40%から60%含有し、残りの糖単位が実質的に糖単位あたり1つのカルボキシル基を含有する少なくとも1つのオリゴ糖類および/または多糖類の付着または固定化を含む、ステップd’)を続けることができる。好ましくはステップb’)の後にステップd’)が続く。
【0086】
ステップd)またはd’)の後に、1つ以上の活性化剤の別の活性化剤層の付着を、その下の生分解性および/または生体安定性の層または血液適合性層の内部または上で行うことができる。
【0087】
付着した活性化剤層に加えて、生体安定性、生分解性および/または血液適合性の層は、生体安定性および/または生分解性の基質と共に、または医療用デバイス上の血液適合性オリゴ糖類および/または多糖類と共に付着され、それぞれの層に含有される更なる活性化剤を含有することができる。
【0088】
好ましい実施の形態によれば、生体安定性の層は、医療用デバイスの表面に共有結合および/または接着結合し、生体安定性層に(好ましくは共有結合で)結合する血液適合性層を完全または不完全に覆う。
【0089】
好ましくは、血液適合性層は、抗血栓活性の原因となる五糖類の分子量範囲(購入可能なヘパリンの標準的な分子量13kDまで)において、異なる硫酸化係数(硫酸化度)およびアシル化係数(アシル化度)を持つ位置選択的に合成された誘導体の天然起源のヘパリン、ヘパラン硫酸およびその誘導体、赤血球グリコカリックスのオリゴ糖類および多糖類、脱硫酸化され、N−再アセチル化されたヘパリン、N−カルボキシメチル化され、および/または部分的にN−アセチル化されたキトサン、並びにこれらの基質の混合物を含む。
【0090】
また、本発明の主題は、上述の方法の1つによって血液適合性を持ってコーティングされる医療用デバイスである。
【0091】
更に、本発明の主題は、医療用デバイスの表面が、血液適合性層を用いて、直接的に、または少なくとも1つの間にある生体安定性および/または生分解性の層および/または活性化剤層を介して覆われ、血液適合層は、少なくとも1つのオリゴ糖類および/または多糖類からなり、これらは糖単位N−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミンを40%から60%含有し、残りの糖単位は実質的に糖単位あたり1つのカルボキシル基を含有する、医療用デバイスである。
【0092】
好ましい実施の形態によれば、上述のオリゴ糖類および/または多糖類の血液適合性層の下に、少なくとも1つの生体安定性層が存在し、この生体安定性層は、医療用デバイスの表面に好ましくは更に共有結合される。
【0093】
血液適合性層の上に、血液適合性層を完全または不完全に覆う少なくとも1つの生体安定性および/または少なくとも1つの生分解性層が存在する場合が更に好ましい。特に好ましいのは、血液適合性層を覆う生分解性層である。
【0094】
更に好ましい実施の形態は、生体安定性の下部層およびその下の血液適合性層との間に、血液適合性層に共有結合および/または接着的に結合する、非増殖性、非炎症性および/または抗血栓性の少なくとも1つの活性剤の活性化剤層を含有する。代替として、活性化剤層に対して、または活性化剤層に加えて、下部の生体安定性および/または上部の血液適合性層は、好ましくはそれぞれの層の付着と共に付着される更なる活性化剤を含有することができる。
【0095】
基本的に全ての層、すなわち、生体安定性層、生分解性層および血液適合性層は、非増殖性、非炎症性および/または抗血栓性の1つ以上の活性化剤を含有することができ、更に、上述の層の間に、1つ以上の活性化剤の活性化剤層が存在可能である。好ましいのは、2つの層、生体安定性および血液適合性層のコーティング系であり、ここで、血液適合性層は外部層であり、両方の層は、1つ以上の活性化剤を含有することができる。更に、血液適合性層の上または下に、1つ以上の活性化剤の活性化剤層が存在する場合が好ましい。また、好ましいのは、生体安定性層、生分解性層および血液適合性層からなる三層系である。ここで、好ましくは、最も下部の層が生体安定性層である。更なる1つまたは2つの活性化剤層が可能である。2つの活性化剤層が互いに直接的に付着することも可能である。更に好ましい実施の形態において、少なくとも1つの活性化剤が、層の上または中で共有結合する。
【0096】
活性化剤としてのコーティング方法および医療用デバイスで好ましく使用されるものは、タクロリムス、ピメクロリムス、PI88、チモシンα−1、PETN(ペンタエリスリトール四硝酸塩)、バッカチンおよびその誘導体、ドセタキセル、コルヒチン、パクリタキセルおよびその誘導体、トラピジル、α−およびβ−エストラジオール、デルミシジン(dermicidin)、チアリン(tialin)(2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸)、チアリンナトリウム(チアリンのナトリウム塩)、シムバスタチン(simvastatine)、大環状亜酸化物(MCS)およびその誘導体、シロリムス、チロホスチン(tyrphostine)、D24851、コルヒチン、フマル酸およびフマル酸エステル、活性化タンパク質C(aPC)、インターロイシン−1βインヒビター、およびメラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)、並びにこれらの活性化剤の混合物である。
【0097】
医療用デバイスの天然および/または人工の表面は、本発明のオリゴ糖類および/または多糖類、または糖単位N−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミンを40%から60%含有し、残りの糖単位が糖単位あたり1つのカルボキシル基を実質的に含有するオリゴ糖類および/または多糖類の血液適合性層を用いて本明細書中に記載の方法でコーティングされる、血液循環および血液と直接接触する、インプラントおよび臓器交換パーツとしてそれぞれ特に適している。本発明に従ってコーティングされる医療用デバイスは、直接的および永久的な血液接触のために特に適しているだけでなく、驚くべきことに、このようにコーティングされた表面上にタンパク質が付着するのを減らすかまたは防ぐという特性を示す。
【0098】
血液と接触する異質面上の血漿タンパク質の付着は本質的であり、血液システムの認識および実行行為に関する更なる事象の開始ステップである。
【0099】
このことは、例えば、体液からのインビトロ診断において重要である。従って、本発明のコーティングの付着は、一般的に感受性の試験反応を妨害し、分析結果の錯誤をもたらし得る、診断用検出法のために使用されるマイクロタイタープレートまたは他の支持媒体上にタンパク質が非特異的に付着するのを防ぐか、または少なくとも低減する。
【0100】
吸着媒体またはクロマトグラフィー媒体上に本発明のコーティングを使用することによって、タンパク質の非特異的な付着も防ぐかまたは低減し、より良好な分離を達成可能であり、より高い純度を持つ製品を製造可能である。
【0101】
特に、ステントは、本発明の方法を用いてコーティングされる。閉塞した血管のバルーン膨張を用いたステントの移植は、昨年徐々に達成されるようになった。ステントは再生した血管の閉塞リスクを減らすが、かかる再狭窄を完全に防ぐことは現時点ではまだできない。
【0102】
再狭窄の実際の概念上の記載は、技術文献中には見出すことができない。最も慣習的に使用される再狭窄の形態学的定義は、血管直径を通常の50%未満まで小さくするような、首尾よいPTA(経皮経管形成術)の後の再狭窄を定義するものである。これは、血流力学の関連性および臨床病理学との関係が、大規模な科学的基礎を持たない経験的に定義される値である。実際の実験において、患者の臨床的悪化は、以前に処置した血管セグメントの再狭窄のサインとして、しばしば観察される。
【0103】
ステントによって生じる再狭窄について、異なる3つの理由が存在する:
a.)移植後の最初の期間中、ステント表面は血液と直接接触し、新しく存在する異質面に起因して血管が再び閉塞し、急性血栓症が起こる場合がある。
【0104】
b.)ステントの移植は、最初の7日間の回復プロセスに重要な役割を果たす炎症性反応を誘発する血管の外傷を生じる。本明細書中で、並行したプロセスは、他のものの中で増殖因子の放出と関連し、制御できない増殖のために、血管の再生した閉塞を迅速に生じる平滑筋細胞の増加した増殖を開始する。
【0105】
c.)数週間後、ステントは、血管の組織内で増殖を始める。このことは、ステントが全体的に平滑筋細胞に囲まれ、血液と接触しないことを意味する。この瘢痕化は、非常に独特であり(新生内層過形成)、ステント表面を覆うだけでなく、ステントの内部表面全体を閉塞する場合がある。
【0106】
ヘパリンを用いたステントのコーティングによって再狭窄の問題を解決することが試みられたがうまくいかなかった(J.Whoerle他、European Heart Journal 2001,22,1808〜1816)。ヘパリンは、最初に述べた原因でのみ抗凝固剤として扱われ、溶液中でのみ全体的な効果を更に表すことが可能である。この第1の問題は、一方では、抗凝固剤の適用によって、医薬的にほぼ全体的に避けることができる。第2および第3の問題は、ステント上で局部的に平滑筋細胞の増殖を阻害することによって現在は解決することが意図されている。このことは、例えば、放射性ステントまたは薬学的な活性化剤を含有するステントによって行われる。
【0107】
米国特許US−A−5 891 108は、例えば、その内部に薬学的な活性化剤を含有することができ、ステントの種々の数の出口を通って放出可能な、中空に成形されたステントを開示する。一方、欧州特許EP−A−1 127 582は、その表面に、活性化剤を実装するために適切な深さ0.1〜1mmおよび長さ7〜15mmの溝を示す、ステントを記載する。これらの活性化剤を貯めておく部分は、中空ステント中の出口と同様に、含有する薬学的な活性化剤を時間通りに高濃度で、比較的長時間にわたって放出するが、平滑筋細胞がステントを囲まないか、または単に非常に遅れるという事実を生じる。その結果として、ステントはずいぶん長く血液にさらされ、血栓症による血管閉塞を再び増加させる(Liistro F.,Colombo A.,Late acute thrombosis after Paclitaxel eluting stent implantation.Heart 2001,86,262〜264)。
【0108】
この問題に対する1つのアプローチは、生体適合性のホスホリルコリンコーティング(WO0101957)によって表される。ここでは、赤血球細胞層の構成成分であるホスホリルコリンは、ステント上にコーティングされた非生分解性ポリマー層の構成成分としてトロンボゲンを生成しない表面を作る。その分子量に依存して、活性化剤は、ホスホリルコリン層を含むポリマーに吸収されるか、または表面上に吸着される。
【0109】
本発明のステントは、血液適合性の層でコーティングされ、非増殖性および/または非炎症性および必要な場合、抗血栓性の活性化剤を少なくとも含む、1つ以上の追加の層を特徴とする。
【0110】
ステントの血液適合性コーティングは、必要な血液適合性を提供し、ステントの表面全体にわたって均一に分布する活性化剤(または活性化剤の組み合わせ)は、制御された様式で、細胞、特に平滑筋細胞および内皮細胞を用いてステント表面を覆うことを提供する。従って、再狭窄を導き得る細胞を用いた迅速な集合および過剰増殖は、ステント表面で起こらず、一方、ステント表面を細胞で覆うことは、血栓症のリスクに関与する高い医薬濃度によって完全には防ぎきれない。
【0111】
従って、その下の層に共有結合および/または接着結合する、および/または層内に共有結合および/または付着結合された活性化剤または活性化剤の組み合わせは、細胞によるステント表面の集合は阻害されないが、過剰増殖は防がれる少ない用量で、連続的に放出されることを保証する。両方の効果の組み合わせは、本発明のステントが血管壁内で迅速に増殖し、再狭窄のリスクおよび血栓症のリスクを両方とも減らす能力を与える。1つ以上の活性化剤の放出は、1から12ヶ月にわたる期間であり、好ましくは移植後1から3ヶ月である。
【0112】
抗増殖性の活性物質、抗炎症性(antiphlogistic)ならびに抗血栓性化合物が活性物質として用いられる。細胞成長抑止物質(cytostatics)、マクロライド抗生物質、および/または、スタチン(statins)は、抗増殖性の活性物質(active agents)として用いられるのが好ましい。適用可能な抗増殖性の活性物質は、シロリムス(ラパマイシン)、エベロリムス、ピメクロリムス、ソマトスタチン、タクロリムス、ロキシスロマイシン、ドウナイマイシン(dunaimycin)、アスコマイシン、バフィロマイシン、エリスロマイシン、ミデカマイシン、ジョサマイシン、コンカナマイシン、クラリスロマイシン、トロレアンドマイシン、フォリマイシン(folimycin)、セリバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、エトポシド(etoboside)、テニポシド(teniposide)、ニムスチン、カルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、4−ヒドロキシシクロホスファミド、エストラムスチン、メルファラン、ベツリニック酸(betulinic acid)、カンプトセシン、ラパコール、β−ラパコン(lapachone)、ポドフィロトキシン、ベツリン(betulin)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ポドフィリック酸(podophyllic acid)2−エチルヒドラジド、イホスファミド、クロランブシル、ベンダムスチン(bendamustine)、ダカルバジン、ブスルファン、プロカルバジン、トレオスルファン(treosulfan)、テモゾロマイド、メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)、チオテパ、ダウノルビシン、ドキソルビシン、アクラルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ダクチノマイシン、メトトレキセート、フルダラビン、フルダラビン−5’−リン酸二水素、モフェブタゾン(mofebutazone)、アセメタシン、ジクロフェナク、ロナゾラック(lonazolac)、ダプソン、o−カルバモイルフェノキシ酢酸(carbamoylphenoxyacetic acid)、リドカイン、ケトプロフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、メロキシカム、クロロキンリン酸、ペニシラミン、ヒドロキシクロロキン、オーラノフィン、金チオリンゴ酸ナトリウム、オクサセプロール(oxaceprol)、セレコキシブ、β−シトステリン、アデノシル・メチオニン(ademetionine)、ミルテカイン(myrtecaine)、ポリドカノール、ノニヴァミド(nonivamide)、レボメントール(levomenthol)、ベンゾカイン、アエスシン(aescin)、クラドリビン、メルカプトプリン、チオグアニン、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、ドセタキセル、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、アムサクリン、イリノテカン、トポテカン、ヒドロキシカルバミド、ミルテフォシン、ペントスタチン、アルデスロイキン(aldesleukin)、トレチノイン、アスパラギナーゼ、トラスツズマブ、エキセメスタン、レトロゾール、ゴセレリン、セファロマニン、ペガスパルガーゼ(pegaspargase)、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、フォルメスタン(formestane)、アミノグルテチミド(aminoglutethemide)、アドリアマイシン、アジスロマイシン、スピラマイシン、セファランチン(cepharantin)、smc増殖阻害剤(smc proliferation inhibitor)−2w、エポシロンAおよびB、ミトキサントロン、アザチオプリン、マイコフェノールアトモフェチル(mycophenolatmofetil)、c−myc−アンチセンス、b−myc−アンチセンス、セレクチン(サイトカイン アンタゴニスト)、CETP阻害剤、カドヘリン(cadherines)、サイトカイニン阻害剤、COX−2阻害剤、NFkB、アンギオペプチン(angiopeptin)、シプロフロキサシン、カンプトセシン、フルロブラスチン(fluroblastin)、筋細胞の増殖を阻害するモノクローナル抗体、bFGFアンタゴニスト、プロブコール、プロスタグランジン、葉酸および誘導体、B類のビタミン、カルシポトリロールのようなビタミンD誘導体、タカルシトール、D24851、フマル酸およびジメチルフマレートのような誘導体、IL−1β阻害剤、コルヒチン、例えば四硝酸ペンタエリスリトール(pentaerythritol tetranitrate)およびシンドノエイミン(syndnoeimines)のようなNO供与体(一酸化窒素供与体)、S−ニトロソデリバティブ(nitrosoderivatives)、タモキシフェン、スタウロスポリン、β−エストラジオール、α−エストラジオール、エストロン、エストリオール、エチニルエストラジオール、ホスフェストロール、メドロキシプロゲステロン、エストラジオール シピオネイト(cypionates)、エストラジオール ベンゾアート、トラニラスト、カメバコーリン(kamebakaurin)、および、癌の治療に利用されるその他のテルペノイド、ベラパミル、チロシンキナーゼ阻害剤(チルフォスチン(tyrphostines))、シクロスポリンA、パクリタキセルおよびその誘導体(6−α−ヒドロキシ−パクリタキセル、バッカチン(baccatin)、およびその他)、合成的に生産および天然源に由来するカーボン・サブオキサイド(carbon suboxide)の大環状オリゴマー(MCS)およびその誘導体、モルグラモスティム(molgramostim)(rhuGM−CSF)、ペグインターフェロン α−2b、ラノグラスチム(lanograstim) (r−HuG−CSF)、フィルグラスチム、マクロゴール、ダカルバジン、レトロゾール(letrozol)、ゴセレリン、セファロマニン(chephalomannin)、トラスツズマブ、エキセメスタン、バシリキシマブ、ダシリツマブ(daclizumab)、エリプチシン、D−24851(カルビオケム)、コルセミド、サイトカラシンA−E、インダノシン(indanocine)、ノコダゾール、S100プロテイン、PI−88、メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)、バシトラシン、ビトロネクチン受容体アンタゴニスト、アゼラスチン、グアニジル シクラーゼ刺激薬(stimulator) 組織メタロプロテアーゼインヒビター(tissue inhibitor of metal proteinase)−1および−2、遊離した核酸、ウイルス伝搬体(virus transmitters)に組み込まれた核酸、DNAおよびRNA断片、プラスミノーゲン活性化因子インヒビター−1、プラスミノーゲン活性化因子インヒビター−2、インターロイキン−1β阻害剤、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、VEGF阻害剤、いわゆるIGF−1、が好ましい。
【0113】
抗生物質(antibiotics)の群から、さらに、セファドロキシル、セファゾリン、セファクロル、セフォタキシム(cefotaxim)、トブラマイシン、ゲンタマイシンを利用することができる。手術後の段階(postoperative phase)に対してよい影響を与えるものとして、例えばジクロキサシリンのようなペニシリン、オキサシリン、サルファ剤、メトロニダゾール、例えばアルガトロバンのような抗血栓剤、アスピリン、アブシキシマブ、合成された(synthetic)アンチトロンビン、ビバリルジン(bivalirudin)、クマジン、ダームシジン、エノキサパリン、ヘモパリン(hemoparin)、組織プラスミノーゲン活性化因子、GpIIb/IIIa 血小板層レセプター、ファクターXa阻害剤(factor Xa inhibitor)、活性化プロテインC、ダームシジン、抗体、ヘパリン、ヒルジン、r−ヒルジン、PPACK、プロタミン、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ワルファリン、ウロキナーゼ、例えばジピラミドール(dipyramidole)のような血管拡張薬(vasodilators)、トラピジル、ニトロプルシド(nitroprussides)、例えばトリアゾロピリミジン(triazolopyrimidine)およびセラミンのようなPDGFアンタゴニスト、カプトプリルのようなACE阻害剤、シラザプリル、リシノプリル、エナラプリル、ロサルタン、チオールプロテアーゼ阻害剤、カスパーゼ阻害剤、アポトーシス阻害剤、例えばp65 NF−kBまたはBcl−xL アンチセンス・オリゴヌクレオチドおよびプロスタサイクリンのようなアポトーシスレギュレーター、バピプロスト(vapiprost)、インターフェロンα、βおよびγ、ヒスタミン・アンタゴニスト、セロトニンブロッカー、ハロフジノン、ニフェジピン、トコフェロール、トラニラスト(tranirast)、モルシドミン、茶成分ポリフェノール、エピカテキン・ガレート(epicatechin gallate)、エピガロカテキン・ガレート(epigallocatechin gallate)、ボズウェラ酸(boswellic acids)およびその誘導体(derivatives)、レフルノミド、アナキンラ、エタネルセプト、スルファサラジン、エトポシド、ジクロキサシリン、テトラサイクリン、トリアムシノロン、ムタマイシン(mutamycin)、プロカイナミド(procainimid)、レチノイン酸、キニジン、ジソピラミド(disopyrimide)、フレカイニド、プロパフェノン、ソタロール(sotolol)、アミドロン(amidorone)がある。さらに、活性物質(active agents)は、ステロイド(ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン)、例えばフェノプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、フェニルブタゾンおよびその他のような非ステロイド化合物(NSAIDS)である。例えばアシクロビル、ガンシクロビルおよびジドブジンのような抗ウイルス剤も適用可能である。種々の抗かび剤(antimycotics)も、当分野で用いられる。この例として、クロトリマゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、ケトコナゾール、ミコナゾール、ニスタチン、テルビナフィンがある。例えばクロロキン、メフロキン、キニーネのようなアンチプロゾール(antiprozoal)作用物質は、同等の手段として有効な活性物質であり、さらに、例えばヒッポカエスクリン(hippocaesculin)のような天然のテルペノイド、バリントゲノール(barringtogenol)−C21−アンゲレート、14−デヒロドアグロスチスタチン(dehydroagrostistachin)、アグロスケリン(agroskerin)、アガロスチスタチン(agrostistachin)、17−ヒドロキシアグロスチスタチン(hydroxyagrostistachin)、オヴァトジオライド(ovatodiolids)、4,7−オキシシクロアニソメリック・アシッド(oxycycloanisomelic acid)、バッカリノイド(baccharinoids)B1、B2およびB3、トゥベイモシド(tubeimoside)、ブルセノール(bruceanol)A、BおよびC、ブルセアンチノシドC、ヤダンジオシド(yadanziosides)NおよびP、イソデオキシエレファントピン(isodeoxyelephantopin)、トメンファントピン(tomenphantopin)AおよびB、コロナリン(coronarin)A、B、CおよびD、ウルソール酸、ヒプタチック酸(hyptatic acid)A、ゼオリン(zeorin)、イソ−イリドジャーマナル(iridogermanal)、メイテンフォリオル(maytenfoliol)、エフサンチン(effusantin)A、エキシサニン(excisanin)AおよびB、ロンギカウリン(longikaurin) B、スカルポネアチン(sculponeatin)C、カメバウニン(kamebaunin)、ロイカメニン(leukamenin)AおよびB、13,18−デヒドロ−6−α−シネシオイルオキシシャパリン(senecioyloxychaparrin)、1,11−ジメトキシカンシン(dimethoxycanthin)−6−オン、1−ヒドロキシ−11−メトキシカンチン(methoxycanthin)−6−オン、スコポレティン(scopolectin)、タクサマイリン(taxamairin)AおよびB、レジェニロール(regenilol)、トリプトライド(triptolide)、さらに、シマリン、アポシマリン(apocymarin)、アリストロキア酸、アノプテリン(anopterin)、ヒドロキシアノプテリン(hydroxyanopterin)、アネモニン、プロトアネモニン、ベルベリン、チェリブリン・クロライド(cheliburin chloride)、シクトキシン(cictoxin)、シノコクリン(sinococuline)、ボムブレスタチン(bombrestatin)AおよびB、クドライソフラボン(cudraisoflavone)A、クルクミン、ジヒドロニチジン(dihydronitidine)、塩化ニチジン(nitidine chloride)、12−β−ヒドロキシプレグナジエン(hydroxypregnadien)−3,20−ジオン、ビロボール(bilobol)、ギンコール(ginkgol)、ギンコール酸、ヘレナリン(helenalin)、インジシン(indicine)、インジシン(indicine)−N−オキシド、ラシオカルピン(lasiocarpine)、イノトジオール(inotodiol)、グリコシド1a、ポドフィロトキシン、ジャスチシジン(justicidin)AおよびB、ラレアチン(larreatin)、マロテリン(malloterin)、マロトクロマノール(mallotochromanol)、イソブチリルマロトクロマノール(isobutyrylmallotochromanol)、マキロシド(maquiroside)A、マーチャンチン(marchantin)A、メイタイシン(maytansine)、リコリジシン(lycoridicin)、マルゲチン(margetine)、パンクラチスタチン(pancratistatin)、リリオデニン(liriodenine)、オクソウシンスニン(oxoushinsunine)、アリストラクタム(aristolactam)−AII、ビスパーセノリジン(bisparthenolidine)、ペリプロコシド(periplocoside)A、ガラキノシド(ghalakinoside)、ウルソール酸、デオキシソロスパミン(deoxypsorospermin)、サイコルビン(psychorubin)、リシンA、サンギナリン、マンウ(manwu)ホウィート・アシッド(wheat acid)、メチルソルビフォリン(methylsorbifolin)、スファセリアクロメン(sphatheliachromen)、スチゾフィリン(stizophyllin)、マンソニン(mansonine)、ストレブロシド(strebloside)、アカゲリン(akagerine)、ジヒロドウサムバレンシン(dihydrousambarensine)、ヒドロキシウサムバリン(hydroxyusambarine)、ストリクノペンタミン(strychnopentamine)、ストリクノフィリン(strychnophylline)、ウサムバリン(usambarine)、ウサムバレンシン(usambarensine)、ベルベリン、リリオデニン(liriodenine)、オクソウシンスニン(oxoushinsunine)、ダフノレチン(daphnoretin)、ラリシレシノール(lariciresinol)、メトキシラリシレシノール(methoxylariciresinol)、シリンガレジノール(syringaresinol)、ウンベリフェロン(umbelliferon)、アフロモソン(afromoson)、アセチルビスミオン(acetylvismione) B、デスアセチルビスミオン(desacetylvismione)A、ビスミオン(vismione)AおよびB、さらに、例えばヒッポカエスクリンのような天然のテルペノイド、14−デヒロドアグロスチスタチン、アグロスケリン、アガロスチスタチン、17−ヒドロキシアグロスチスタチン、オヴァトジオライド、4,7−オキシシクロアニソメリック・アシッド、ヤダンジオシドNおよびP、イソデオキシエレファントピン、トメンファントピンAおよびB、コロナリンA、B、CおよびD、ウルソール酸、ヒプタチック酸A、ゼオリン、イソ−イリドジャーマナル、メイテンフォリオル、エフサンチンA、エキシサニンAおよびB、ロンギカウリン B、スカルポネアチンも同等の手段として有効な活性物質である。
【0114】
かかる活性物質は、同じ濃度あるいは異なる濃度において、単独あるいは組み合わせて用いられる。その抗増殖性効果とともに免疫抑制性を特徴とする活性物質が特に好ましい。このような活性物質は、エリスロマイシン、ミデカマイシン、タクロリムス、シロリムス、パクリタキセル、およびジョサマイシンである。さらに、好ましいのは、いくつかの、抗増殖性作用物質、あるいは、免疫抑制性活性物質を有した抗増殖性活性物質、の組み合わせである。
【0115】
本発明に好適であるのは、タクロリムス、ピペクロリムス、PI88、サイモシン a-1、PETN (四硝酸ペンタエリスリトール)、バッカチンおよびその誘導体、ドセタキセル、コルヒチン、パクリタキセルおよびその誘導体、トラピジル、α-およびβ-エストラジオール、ダームシジン、シンバスタチン、大環状のサブオキサイド(MCS)および誘導体、シロリムス、チルフォスチン、D24851、コルヒチン、フマル酸、およびフマル酸エステル、活性化プロテイン(aPC)、インターロイシン-1s阻害剤、およびメラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)、およびチアリン(2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸)、ならびにチアリン-Na(チアリンのナトリウム塩)である。
【0116】
かかる活性物質には、ステント表面の1平方センチ当たり、及び活性物質層当たりまたは層を含む活性物質当たり、0.001から10mg濃度の薬学的活性物質が含まれていることが好ましい。追加の活性物質を、同様の濃度で、同じあるいは別の層に含んでもよい。
【0117】
本発明によってコートされた医療用製品、特に、本発明によってコートされたステントは、活性物質を放出、または活性物質を連続的および制御可能に放出することが可能であり、再狭窄の防止またはそれを低下させるために適している(図6参照)。
【0118】
ステントを直接を覆う血液適合性層は、購入可能なヘパリンの標準的な分子量に至るまで抗血栓作用を生じさせるペンタサッカライド(pentasaccharide)の分子量範囲において、異なる硫酸化率(硫酸化度)およびアシル化率(アシル化度)を有する合成的に得られた誘導体とともに、天然由来のヘパリン、および、ヘパラン硫酸、およびその誘導体、赤血球の非血栓形成的な(athrombogeneous)な表面に整然と並んで模作された、赤血球性の(erythrocytic)グリコカリックス(glycocalix)のオリゴおよび多糖類類を含んでおり、ここで、ホスホリルコリンとは反対側には、血液と赤血球表面との間に実際の接触が生じており、完全に脱硫酸化およびN−再アセチル化されたヘパリン、脱硫酸化およびN−再アセチル化されたヘパリン、N−カルボキシメチル化され、および/または、部分的にN−アセチル化(N-acetylated)されたキトサン、キトサンおよび/またはこれらの物質の混合物、を含むことが好ましい。血液適合性コーテイングを有するこれらのステントは、従来のコートされていない通常のステントを準備し、活性物質の放出後、すなわち、活性物質の影響が減少し、マトリクスが分解した後、移植物を永久にマスクする血液適合性を有する層を共有付着させること、によって得られる。
【0119】
発明にかかる方法によりコートされた従来のステントは、ステンレススチール、ニチロール(nitirol)、又は、他の金属および合金、あるいは、合成ポリマーから構成される。
【0120】
本発明にかかるステントの他の好ましい実施形態は、少なくとも2つの層から構成されるコーテイングを示している。また、複数層を有するシステムを用いることもできる。かかる複数層システムにおいては、ステントに直接付着された層が、第1層と呼ばれる。第2層と呼ばれるのは、第1層の上に付着された層等である。
【0121】
2つの層を有するデザインによると、前記第1層は、少なくとも、抗増殖性物質、抗消炎物質、および/または、共有および/または接着結合した抗血栓活性物質を含む生物分解性層により、ほぼ完全に覆われる血液適合性層、から構成される。また、互いに促進し、補充しあう、活性物質の組み合わせを適用することもできる。
【0122】
外側層用の生物分解性物質には、ポリバレロラクトン(polyvalerolactones)、ポリ−ε−デカラクトン、ポリ乳酸(ポリアクトニック・アシッド(polylactonic acid))、ポリグリコール酸、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリラクチドのコポリマー(copolymers、共重合体)、および、ポリグリコライド、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシブタン酸、ポリヒドロキンブチレート、ポリヒドロキシバレレート(polyhydroxyvalerates)、ポリヒロドキシブチレート−co−バレレート(valerates)、ポリ(1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ポリ(1,3−ジオキサン−2−オン(ones))、ポリ−p−ジオキサノン、例えばポリ無水マレイン酸(polymaleic anhydrides)のようなポリアンヒドリド(polyanhydrides)、ポリヒドロキシメタクリレート、フィブリン、ポリシアノアクリレート、ポリカプロラクトンジメチルアクリレート、ポリ−b−マレイン酸、ポリカプロラクトンブチル−アクリレーツ(acrylates)、例えばオリゴカプロラクトンジオール(oligocaprolactonedioles)およびオリゴジオキサノンジオール(oligodioxanonedioles)から得られるようなマルチブロックポリマー(multiblock polymers)、例えばPEGおよびポリブチレンテレフタレートのようなポリエーテルエステル・マルチブロックポリマー(multiblock polymers)、ポリピボトラクトン(polypivotolactones)、ポリグリコール酸・トリメチル−カーボネート(carbonates)、ポリカプロラクトン−グリコライド(glycolides)、ポリ−g−エチルグルタミン酸、ポリ(DTH−イミノカーボネート(iminocarbonate))、ポリ(DTE−co−DT−カーボネート)、ポリ(ビスフェノール−A−イミノカーボネート(iminocarbonate))、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸・トリメチル−カーボネート(carbonates)、ポリトリメチルカルボン酸、ポリイミノカルボン酸、ポリ(N−ビニル)−ピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド(polyesteramides)、グリコール酸・ポリエステル(glycolated polyesters)、ポリホスホエステル(polyphosphoesters)、ポリホスファゼン、ポリ[p−カルボキシフェノキシ)プロパン]、ポリヒドロキシペンタン酸、ポリアンヒドリド(polyanhydrides)、ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド、ソフトポリウレタン、主鎖にアミノ酸残基が付加されたポリウレタン、例えばポリエチレンオキシドのようなポリエーテルエステル、ポリアルケンシュウ酸(polyalkeneoxalates)、ポリオルトエステルおよびそれらのコポリマー、脂質(lipides)、カラギーナン(carrageenanes)、フィブリノーゲン、デンプン、コラーゲン、プロテインをもとにしたポリマー(protein based polymers)、ポリアミノ酸、合成された(synthetic)ポリアミノ酸、ゼイン(zein)、修飾されたゼイン、ポリヒドロキシアルカン酸、ペクチン酸、化学作用のある酸(actinic acid)、修飾および非修飾のフィブリンおよびカゼイン、カルボキシメチル硫酸(carboxymethylsulphate)、アルブミン、さらに、ヒアルロン酸、ヘパラン硫酸(heparan sulphate)、ヘパリン、コンドロイチン硫酸(chondroitinesulphate)、デキストラン、b−シクロデキストリン、PEGおよびポリプロピレングリコールによるコポリマー、アラビアゴム(gummi arabicum)、グアー(guar)、ゼラチン、コラーゲン、コラーゲン−N−ヒドロキシサクシンイミド、脂質(lipides)、リン脂質(phospholipides)、前述の物質の修飾物、前述の物質のコポリマー、および/または前述の物質の混合物、を用いることが可能である。
【0123】
活性物質を含む前記層並びに複数の層は、それぞれ、分解速度にしたがって層外に活性物質を放出し、あるいは、自己の溶出態様に基づきマトリクスから自身を溶かすよう、血液の成分によってゆっくりと分解する。生物分解性層が分解されると、第1の血液適合性層は、必要とされるステントの血液適合性を確保する。外部層のこのような生物分解性、ならびに、対応する活性物質の放出は、一定期間だけ細胞の成長速度(ongrowth)を著しく減少させ、外部層が広く分解された場所に向け、制御された接着を可能にする。かかる外部層の生物分解性は、都合の良いことに1ヶ月から36ヶ月間、好ましくは1ヶ月から6ヶ月間、更に好ましくは1ヶ月から2ヶ月間にわたる。このようなステントは、再狭窄を予防、あるいは、少なくとその可能性を非常に小さくすることが示される。かかる期間で、重要な治癒がなされる。最後に、血液適合性層は、非血栓形成表面として残存し、生命を危険にさらすような反応が起こらないようにするよう、異物表面をマスクする。
【0124】
医療用製品、好ましくはステントの表面に付着するポリマーの量は、層当たり0.01mgから3mg、好ましくは層当たり0.20mgから1mg、特に好ましくは層当たり0.2mgから0.5mgである。
【0125】
このようなステントは、基本的に以下の方式:
a)コートしていないステントを準備するステップ、
b)好ましくは、共有結合する血液適合性層を付着するステップ、
c)血液適合性層中に活性物質を拡散するステップ、あるいは、
c’)少なくとも1の活性物質に浸漬あるいは吹きつけを行うことにより、前記血液適合性層をほぼ完全にコートするステップ、あるいは
c’’)少なくとも1の生物分解性層、および/または、少なくとも1の活性物質、および/または、当該活性物質そのものを代表するもの、を含む生物的安定層に浸漬あるいは吹きつけを行うことにより、前記血液適合性層を、ほぼ完全、および/または、部分的に(incomplete)コートするステップ、を備えた、ステントに血液適合性コーテイングを施す方法によって製造することができる。
【0126】
かかるコーテイング法は、活性物質の選択に要求される基準に関し、広い範囲の自由度を提供するとともに、それら自身の間で組み合わせ可能な別のコーテイング様式に、分離可能である。
【0127】
コーテイング法I:
a)コートされていないステントを準備するステップ、
b)血液適合性層を付着するステップ、
c)活性物質、あるいは、活性物質の組み合わせをマトリクスなしで前記血液適合性層上に付着するステップ、
d)活性物質あるいは活性物質の組み合わせを、マトリクスなしで前記血液適合性層上に付着するとともに、拡散を制御するため、生物分解性および/または生物的安定材料により、前記層を、ほぼ完全および/または不完全にコートするステップ、を備えた、コーテイング法である。
【0128】
コーテイング法II:
a)コートされていないステントを準備するステップ、
b)血液適合性層を付着するステップ、
c)前記血液適合性層に共有および/または接着結合する、少なくとも1の活性物質を含む、少なくとも1の生物分解性層、および/または、生物的安定層により、前記血液適合性層を、ほぼ完全、および/または、不完全にコートするステップ、
d)少なくとも1の活性物質であって前記マトリクスに共有および/または接着結合するもの、を含む少なくとも1の生物分解性層および/または生物的安定層、ならびに、拡散バリアとして、下にある層を完全および/または部分的に覆う、活性物質を含まない他の生物分解性層および/または生物的安定層により、前記血液適合性層をほぼ完全にコートするステップ、
を備えた、コーテイング法である。
【0129】
コーテイング法III:
a)コートされていないステントを準備するステップ、
b)血液適合性層を付着するステップ、
c)少なくとも1の活性物質であって共有および/または接着結合するもの、を含む少なくとも1の生物分解性層および/または生物的安定層により前記血液適合性層を、ほぼ完全にコートするステップ、
d)前記下にある層と共有および/または接着結合する活性物質あるいは活性物質の組み合わせを付着するステップ、
e)共有および/または接着結合する少なくとも1の活性物質を含む、少なくとも1の生物分解性層、および/または、生物的安定層により、前記血液適合性層をほぼ完全にコートするとともに、活性物質あるいは活性物質の組み合わせ、ならびに、拡散バリアとして、下にある層を完全または/および部分的に覆う、活性物質を含まない他の生物分解性層、および/または、生物的安定層を付着するステップ、
を備えた、コーテイング法である。
【0130】
コーテイング法IV:
a)コートされていないステントを準備するステップ、
b)血液適合性層を付着するステップ、
c)層ごとに異なる濃度を有し、共有および/または接着結合する少なくとも1の活性物質を含む、少なくとも2の生物分解性層、および/または、生物的安定層により、前記血液適合性層をほぼ完全および/または不完全にコートするステップ、
d)層ごとに異なる濃度を有し、共有および/または接着結合する少なくとも1の活性物質を含む、少なくとも2の生物分解性層、および/または、生物的安定層、ならびに、拡散バリアとして、下にある層を完全および/または部分的に覆う、活性物質を含まない、少なくとも他の生物分解性層、および/または、他の生物的安定層により、前記血液適合性層をほぼ完全および/または不完全にコートするステップ、
e)共有および/または接着結合形式において同じあるいは異なる濃度を有する、少なくとも1の活性物質、および/または、同じ群あるいは他の補足的物質の群からの少なくとも他の活性物質を含む、少なくとも1の生物分解性層および/または生物的安定層により、前記血液適合性層をほぼ完全または/および不完全にコートするステップ、
f)同じあるいは異なる濃度を有し、少なくとも1の活性物質、および/または、同じ群あるいは他の補足的物質の群からの少なくとも他の活性物質を含む、少なくとも2の生物分解性層および/または生物的安定層、ならびに、拡散バリアとして、下にある層を完全および/または部分的に覆う、活性物質ではない少なくとも他の生物分解性層および/または生物的安定層により、前記血液適合性層をほぼ完全および/または不完全にコートするステップ、
g)同じおよび/または異なる濃度を有し、共有および/または接着結合する少なくとも1の活性物質を含む、少なくとも2の生物分解性層および/または生物的安定層、ならびに、拡散バリアとして、下にある層を完全またはその一部のみを覆う、活性物質を含まない他の生物分解性層および/または生物的安定層により、前記血液適合性層をほぼ完全にコートするステップであって、前記層は、下のマトリクスに共有結合、および/または支持材料(support material)なしで接着結合する、少なくとも1の活性物質を含む活性物質の層によりカバーされるステップ、
を備えた、コーテイング法である。
【0131】
他の好都合な実施形態は、少なくとも3つの層構造のコーテイングを有するステントにより表され、第1層は、血液適合性層によりステントの表面を覆い、第2層は、活性物質を含むが、生物分解性はなく、第3の血液適合性層により覆われる。かかる外部層は、ここで、ステントに必要とされる血液適合性を提供するとともに、第2層は、活性物質貯め(active agent reservoir)として機能する。必要に応じ、活性物質は、加水分解−弱い結合(hydrolysis-weak bonding)によりマトリクスと共有結合し、および/または、前記コーテイング方法に必要とされる溶液を溶解したマトリクスに加えられ、その活性物質は、第2層から連続的に少しづつ溶出して低い濃度となり、前記外部血液適合性層を介し自由に拡散する。この層アセンブリは、ステント表面上に細胞を生じさせることは妨げないが、理想的な程度の数に抑えるという結果を生じさせる。第1層は、移植中にステント表面が、例えば、存在する血小板による摩擦、あるいは、例えば、配置前の段階(例えば圧接段階など)に、損傷するリスクを最小限にする。第2の安全策は、生物的に安定したポリマーでも、長い期間を経て、体内で分解するという事実から、ステント表面の少なくとも一部を覆わない、という結果を得る。上述のコーテイング方法のように、具体的には、生物分解性素材と組み合わせることもできる。
【0132】
このようなステントは、従来のステントを用意し、その表面に血液適合性の第1層を付着し、少なくとも1の活性物質、ならびに、共有および/または接着結合する他の群の他の活性物質との組み合わせを含む、生物分解性のない層を付着し、この層を、他の血液適合性により、ほぼ完全にコートすることにより、準備することができる。
【0133】
生物的安定層として問題となる物質は、医学用に一貫して用いられる全ての材料である。それらの材料は、例えばポリアクリル酸および例えばポリメチルメタクリレートのようなポリアクリレート、ポリブチル・メタクリレート(methacrylate)、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエーテルアミド(polyetheramides)、ポリエチレンアミン、ポリイミド、ポリカーボネート(polycarbonates)、ポリカルボウレタン(polycarbourethanes)、ポリビニルケトン、ポリビニルハロゲン化物(polyvinylhalogenides)、ポリビニリデンハロゲン化物(polyvinylidenhalogenides)、ポリビニルエーテル、ポリビニルアロメート(polyvinylaromates)、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリオキシメチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィンエラストマー、ポリイソブチレン、EPDM ガム(gums)、フルオロシリコン、カルボキシメチル キトサン、ポリエチレンテレフタレート、ポリバレレート(polyvalerates)、カルボキシメチルセルロース、セルロース、レーヨン、レーヨントリアセテート、セルロースニトレート、セルロースアセテート、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース・ブチレート、セルロース・アセテート・ブチレート、エチルビニールアセテート・コポリマー(copolymers、共重合体)、ポリスルホン、エポキシレジン、ABSレジン、EPDM ガム(gums)、例えばポリシロキサンのようなシリコン、ポリビニルハロゲンおよびコポリマー(copolymers、共重合体)、セルロースエーテル、セルロース トリアセテート、キトサンおよびコポリマー、および/または、これらの物質の混合物、である。
【0134】
複数の層を用いるシステムにおいて、新しく付着された層は、下の層をほぼ完全に覆う。「実質的に」という文言は、ここでは、少なくとも、血管壁に接触するステントの表面が完全に覆われており、それぞれ、ステント表面の少なくとも90%、好ましくは95%、特に好ましくは98%が覆われていることを意味する。
【0135】
さらに、上述した方法に関して、いかなるプラスチック表面も、オリゴ糖および/または多糖類の血液適合性層によってコートされうる。プラスチックとして、例えば、単量体(モノマー)のエテン、酢酸ビニル、メタクリル酸、ビニルカルバゾール、トリフルオロエチレン、プロペン、ブテン、メチルペンテン、イソブテン、スチレン、クロロスチレン、アミノスチレン、アクリロニトリル、ブタジエン、アクリル酸エステル、ジビニルベンゼン、イソプロペン、塩化ビニル、ビニルアルコール、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、テトラフロオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロイソブテン(hexafluoroisobutene)、アクリル酸、アクロレイン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸、ヒドロキシメチルメタクリル酸、メチルメタクリル酸、無水マレイン酸、無水メタクリル酸、メタクリロニトリル、フルオロスチレン(fluorstyrene)、フルオロアニリド(fluoranilide)、3,4−イソチオシアネイトスチレン(3,4-isothiocyanatostyrene)、アリル・アルコール、スルホン酸、メタリルスルホン酸(methallylsulfonic acid)、ジアリル・フタル酸、シアノアクリル酸、ジメチルアミノエチルメタクリル酸、メタクリル酸ラウリル(lauryl methacrylic acid)、アセトアミノフェニルエトキシメタクリル酸(acetaminophenylethoxymethacrylic acid)、ジメタクリル酸グリコール(glycol dimethacrylic acid)、2−ヒドロキシエチルメタクリル酸(2-hydroxyethyl methacrylic acid)、ホルムアルデヒド、フルオラル(fluoral)、クローラル、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、アリルグリシジル・エーテル(allyl glycidyl ether)、エピクロルヒドリン、グリセリン、トリメチルプロパン、ペンタエリスライト(pentaerythrite)、ソルバイト、フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピニック酸(adipinic acid)、チオフェン、エチレンイミン、ヘキサメチレン・アジパミド、ヘキサメチレン・セバカミド(hexamethylene sebacamide)、ヘキサメチレン・ドデカンジアミド(hexamethylene dodecane diamide)、アミノベンズアミド、フェニレンジアミン、アミドヒドラジド(amide hydrazides)、ジメチルピペラジン、ベンズイミダゾール、テトラアミノベンゼン、ピロン(pyrones)、e−カプロラクタム、イソフタル酸、グルタミニン酸、ロイシン、フェニルアラニン、バリン、リジン、尿素、ジイソシアネート(diisocyanate)、チオ尿素、およびその他、または、上述のモノマーの混合物を含む、合成されたポリマーおよびバイオポリマー(生物高分子)が適当である。さらに、以下のポリマーも考慮することができる:シリコン、セルロースおよびセルロースの誘導体、油(オイル)、ポリカーボネート、ポリウレタン、アガロース、多糖類、デキストラン、スターチ(でんぷん)、キチン、グリコサミノグリカン、ゼラチン、コラーゲンI−XII、およびその他のタンパク質。
【発明の効果】
【0136】
本発明にかかるステントは、急性血栓症(acute thrombosis)ならびにステント移植後の新生内層過形成(neointimal hyperplasia )の両方の問題を解決する。さらに、本発明にかかるステントは、単一層あるいは複数層システムのいずれであるかに拘わらず、そのコーテイングにより、1以上の抗増殖性物質および/または免疫抑制活性物質を放出するのに非常に適している。要求される量の活性物質を連続的に放出することを目的とするかかる特徴により、本発明にかかるコートされたステントは、再狭窄の危険性をほぼ完全に予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】図1は、塩の加水分解(basic hydrolysis)によってキトサンに変わりうる、または、部分的な脱アセチル化および続くN−カルボキシアルキル化によって一般式Iaの化合物に変わりうる、キチンの二糖構造の一部分を示す。
【図2】図2は、部分的なN−アシル化および続くN−カルボキシアルキル化によって、または、部分的なN−カルボキシアルキル化および続くN−アシル化によって一般式Iaの化合物に変わりうる、キトサンの二糖構造の一部分を示す。
【図3】図3は、硫酸基がランダムに分布しており、ヘパリンの典型例として、二糖ユニット当たり2の硫酸化度である、ヘパリンまたはヘパラン硫酸の四糖類の1ユニット(a tetrasaccharide unit)を示す(図3A)。構造類似性の比較として、図3Bは、一般式Ibに関する化合物の例を示し、図3Cは、N−カルボキシメチル化され、部分的にN−アセチル化されたキトサンの典型的な構造を伴った部分を示す。
【図4】図4は、拡張されたPVC−チューブへ入れた場合の、表面が改良されたステンレススチールの冠動脈ステントにおける血小板数の減少(PLT-loss)の影響を示す。非コートのステンレススチールの冠動脈ステントは、基準(非コート)として測定した。血小板数の減少の0値の基準として、ステンレススチール冠動脈ステントがないPVC−チューブの場合を設定した。
【0138】
SH1は、ヘパリンを共有結合してコートしたステントである。SH2は、コンドロイチン硫酸でコートされたステントである。SH3は、赤血球性の(erythrocytic)グリコカリックスから得られた多糖類でコートされたステントである。SH4は、Ac−ヘパリンを共有結合してコートしたステンレススチール冠動脈ステントである。
【図5】図5は、豚への移植4週間後の、非コートのステントおよびポリアクリル酸(PAS)でコートされたステントとの比較における、完全な脱硫酸化およびN−再アセチル化されたヘパリン(Ac-heparin)を共有結合してコートしたステント、および赤血球性のグリコカリックスのオリゴ−および多糖類でコートしたステントの再狭窄率の概略的な提示を示す。
【図6】図6は、定量的冠動脈造影を示す。図6は、非コートのステント(unco.)(図6B)との比較としての、Ac-ヘパリンでコートしたステントの管部分(vessel-segment)を含んだステント(図6A)の断面画像である。動物実験(豚)での4週間後において、形成された新生内層の厚さに明らかな相違が観察されうる。
【図7】図7は、ステント(支持媒体なし)からのパクリタキセルの溶出のグラフである。
【図8】図8は、PLGA-マトリクス内に埋め込まれたパクリタキセルの溶出の図表である。
【図9】図9は、PLGA-マトリクス内に埋め込まれたパクリタキセルの溶出の図表、および、ベースコーテイング(basis coating)を完全に覆う、パクリタキセル原液(undiluted)の層の溶出に関する図表である。
【図10】図10は、マトリクス内に埋め込まれた親水性の活性物質の溶出の図表、および、拡散を制御するためにベースコーティングを完全に覆う、上にある、活性物質のないポリマー(トップコート)の溶出に関する図表である。
【図11】図11は、PLGA-マトリクスからのコルヒチンの溶出に関する図表である。
【図12】図12は、PLGA-マトリクスからのシンバスタチン(simvastatin)の溶出に関する図表である。
【図13】図13は、拡散を制御する層としての、ベースコーテイングを完全に覆う、ポリスチレンによるマトリクスからのスタチンの溶出に関する図表である。
【図14】図14は、チャンドラーループ(Chandler loop)後の、空のチューブ(コントロール)、新たに抽出した血液の血小板の数(ドナー)、および、注射器中に60分置いた血液の血小板の数(シリンジ60)ついての、コート済み(coat.)のステントと非コート(unco.)のステントとの間の血液中の血小板数の比較である。
【図15】図15は、新たに抽出した血液中の血小板(ドナー)、空のチューブに入れて60分経過後(コントロール)、および、コートされていないステント、ならびに、コート済みステント、の血小板因子4の濃度の比較である。
【図16】図16は、新たに抽出した血液(ドナー)、空のチューブに入れて60分経過後(コントロール)、および、コートされていないステント、ならびに、コート済みステント、の活性化された補体因子C5aの比較を表した図である。
【図17】図17は、非コートのステントとの比較による、(豚体内への移植12週間経過後の)完全に脱硫酸しN−再アセチル化されたヘパリン(Ac−ヘパリン)により共有コートされたステントであって、ポリ(D,L−ラクチド−CO−グリコライド(D,L-lactide-co-glycolide)の2番目の層を伴うものの再狭窄率 直径%を表した図である。PLGAの場合の狭窄の形成の時系列経過を示すものであり、「%−直径 再狭窄率」は、ステントの移植直後(post)の初期状態に対する、血管(vessel)の直径の百分率を表す。実験のために、6から9ヶ月の年齢の家畜の豚を用い、血管の直径を、移植前(pre)およびステントの移植後(Post)に血管内超音波法(IVUS)によって測定した。一週間後(1WoFUP)、1ヶ月後(4WoFUP)、6週間後(6WoFUP)、および3ヶ月後(12WoFUP)のそれぞれについて、ステントが用いられた領域を冠動脈造影法、および血管内超音波法(IVUS)によって検査した。得られたデータは、予期できないほどの驚くべきの明白な効果を示しており、これは、疑う余地なくコーティングによるものである。3ヶ月後の狭窄の値は、非コートのステントとコート済みのステントとはほとんど違いがないが、PLGA−コート済みステントに向かう血管壁の手ごたえ(reaction)は、実質的により滑らかである(smoother)。1週間後の狭窄の値は、非コートのインプラントの値である10.4%よりも著しく低い6%である。4週間後の金属表面のマスキング(masking)の結果は、この期間後に最高値22.6%(54%の増加)に達する非コートのステントよりも、2倍以上低い狭窄率である10%(33%の増加)にすぎない。コート済みのステントは、最高値として、6週間後に12.33%を示したのみである。12週間後の両方の系統の値は、約11%で互いに等しい。
【図18】図18は、図17における、豚(pig.)内の、血液適合性が与えられたPLGA-コート済みのステントの1週間後、4週間後、6週間後、および3ヶ月後のそれぞれの動物実験の定量的冠動脈造影の画像である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0139】
実施例1
脱硫酸化され、再アセチル化されたヘパリンの調製:
アンバーライトIR−122カチオン交換樹脂100mLを、直径2cmを有するカラムに充填し、3M HCl 400mLを用いてH形態に変換し、溶出液が塩素を含まずpHが中性になるまで蒸留水で洗浄した。ナトリウムヘパリン1gを水10mLに溶解し、カチオン交換カラム上に置き、水400mLで溶出させた。溶出液をピリジン0.7gを用いて受け器に落とし、続けて、ピリジンを用いてpH6になるまで滴定し、凍結乾燥させた。
【0140】
ヘパリンピリジニウム塩0.9gを、還流冷却器を取り付けた丸底フラスコ中のDMSO/1,4−ジオキサン/メタノールの6/3/1混合物(v/v/v)90mLに添加し、90℃で24時間加熱した。次いで、塩化ピリジニウム823mgを添加し、90℃までの加熱を更に70時間続けた。次いで、水100mLを用いて希釈し、希苛性ソーダを用いてpH9まで滴定した。脱硫酸化されたヘパリンを水に対して透析し、凍結乾燥させた。
【0141】
脱硫酸化されたヘパリン100mgを水10mLに溶解し、0℃まで冷却し、攪拌しながらメタノール1.5mLとともに混合した。この溶液に、OH−形態のDowex 1×4アニオン交換樹脂4mL、次いで無水酢酸150μLを添加し、4℃で2時間攪拌した。その後、樹脂をろ過し、溶液を水に対して透析し、凍結乾燥させた。
【0142】
実施例2
N−カルボキシメチル化され、部分的にN−アセチル化されたキトサン:
0.1N HCl 150mLに、キトサン2gを溶解し、窒素下、還流下で24時間沸騰させた。室温まで冷却した後、2N NaOHを用いて溶液のpHを5.8に調整した。溶液を脱塩水に対して透析し、凍結乾燥させた。
【0143】
この様式で部分的に加水分解されたキトサン1gを1%酢酸100mLに溶解した。メタノール100mLを添加した後、メタノール30mLに溶解した無水酢酸605μLを添加し、室温で40分攪拌した。メタノール140mLおよび25%NH溶液60mLの混合物に注ぐことによって、生成物を沈殿させた。これをろ過し、メタノールおよびジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で一晩乾燥させた。
【0144】
部分的に加水分解され、部分的にN−アセチル化されたキトサン1gを水50mLに懸濁させた。グリオキシル酸一水和物0.57gを添加した後、キトサン誘導体を続く45分以内に溶解した。この溶液のpH値を2N NaOHを用いて12に調整した。できる限り少ない水にシアノ水素化ホウ素ナトリウム0.4gを溶かした溶液を添加し、45分攪拌した。生成物をエタノール400mL中で沈殿させ、ろ過し、エタノールで洗浄し、減圧下で一晩乾燥させた。
【0145】
実施例3
脱硫酸化され、N−プロピオニル化されたヘパリンの合成:
アンバーライトIR−122カチオン交換樹脂100mLを、直径2cmを有するカラムに充填し、3M HCl 400mLを用いてH形態に変換し、溶出液が塩素を含まずpHが中性になるまで蒸留水ですすいだ。ナトリウムヘパリン1gを水10mLに溶解し、カチオン交換カラム上に置き、水400mLで溶出させた。溶出液をピリジン0.7gを用いて受器に落とし、その後、ピリジンを用いてpH6になるまで滴定し、凍結乾燥させた。
【0146】
ヘパリンピリジニウム塩0.9gを、還流冷却器を取り付けた丸底フラスコ中に、DMSO/1,4−ジオキサン/メタノールの6/3/1混合物(v/v/v)90mLとともに添加し、90℃で24時間加熱した。次いで、塩化ピリジニウム823mgを添加し、90℃で更に70時間加熱した。その後、水100mLで希釈し、希水酸化ナトリウムでpH9になるまで滴定した。脱硫酸化されたヘパリンを水に対して透析し、凍結乾燥させた。
【0147】
脱硫酸化されたヘパリン100mgを水10mLに溶解し、0℃まで冷却し、攪拌しながらメタノール1.5mLを添加した。この溶液に、OH形態のdowex 1×4アニオン交換樹脂4mL、次いで無水プロピオン酸192μLを添加し、4℃で2時間攪拌した。次いで、樹脂をろ過により除去し、溶液を水に対して透析し、凍結乾燥させた。
【0148】
実施例4
N−カルボキシメチル化され、部分的にN−プロピオニル化されたキトサン:
150mLの0.1N HClに、キトサン2gを溶解し、窒素下、還流下で24時間沸騰させた。室温まで冷却した後、2N NaOHを用いて溶液のpHを5.8に調整した。溶液を脱塩水に対して透析し、凍結乾燥させた。
【0149】
この様式で部分的に加水分解されたキトサン1gを1%酢酸100mLに溶解した。メタノール100mLを添加した後、メタノール30mLに溶解した無水プロピオン酸772μLを添加し、室温で40分攪拌した。メタノール140mLおよび25%NH溶液60mLの混合物に注ぐことによって、生成物を沈殿させた。これをろ過し、メタノールおよびジエチルエーテルで洗浄し、減圧下で一晩乾燥させた。
【0150】
部分的に加水分解され、部分的にN−アセチル化されたキトサン1gを水50mLに懸濁させた。グリオキシル酸一水和物0.57gを添加した後、キトサン誘導体はその後45分以内に溶解した。この溶液のpH値を2N NaOHを用いて12に調整した。できる限り少量の水にシアノ水素化ホウ素ナトリウム0.4gを溶かした溶液を添加し、45分間攪拌した。生成物をエタノール400mL中に沈殿させ、ろ過し、エタノールで洗浄し、減圧下で一晩乾燥させた。
【0151】
実施例5
ISO10933−4(インビトロ測定)による、一般式IaおよびIbの化合物の血液適合性の測定:
式IaおよびIbの化合物の血液適合性を測定するために、セルロース膜、シリコン管およびステンレス鋼ステントを、式IaおよびIbの化合物を用いて共有結合的にコーティングし、コーティングされていない材料表面を使用する単一試験において、ヘパリンおよび対応物に対して試験した。
【0152】
5.1.脱硫酸化され、再アセチル化されたヘパリン(Ac−ヘパリン)でコーティングされたセルロース膜(キュプロファン)
クエン酸添加された全血液とAc−ヘパリンまたはヘパリンでコーティングされたキュプロファン膜との間の凝固性の生理学的相互作用を試験するために、Sakariassen改良のBaumgartner−チャンバの開かん流システムが使用される[Sakariassen K.S.他;J.Lab.Clin.Med.102:522〜535(1983)]。チャンバは、4つのビルディングパーツに加えてコニカルニップルおよびねじ込み継手で構成され、ポリメチルメタクリレートで製造され、2個の改質された膜の並行観察が可能となり、その結果、全ての実験において、すでに統計的有効範囲が含まれる。このチャンバ構成は、準層状のかん流条件を可能にする。
【0153】
37℃で5分間かん流した後、膜を抽出し、粘着性の血小板を固定した後、血小板占有率を測定する。それぞれの結果は、100%血小板占有率を有するネガティブ標準として、高度にトロンボゲンを形成するサブ内皮細胞マトリックスに関連して設定される。血小板の付着は、異物に血漿タンパク質層が形成する前に、二次的に起こる。血漿タンパク質のフィブリノーゲンは、血小板凝集の共因子として作用する。血小板のこのような誘発された活性によって、例えば、ビトロネクチン、フィブロネクチンおよび血小板表面のvon Willebrand因子のような、いくつかの凝固に関連する血漿タンパク質の結合が生じる。それらの影響によって、最終的に血小板の不可逆的な凝集が起こる。血小板占有率は、血液が異物表面と接触する場合の、上述の相互作用に因る、表面のトロンボゲン形成性に対して受容される量を示す。この因子から、以下の結果が生じる:血小板占有率が与えられた表面上で小さくなるにつれて、判断される試験表面の血液適合性が高くなる。
【0154】
ヘパリンでコーティングされた膜およびAc−ヘパリンでコーティングされた膜による試験結果では、Ac−ヘパリンを用いたコーティングを介して異質面の血液適合性が改善されたこと明確に示している。ヘパリンでコーティングされた膜は、45乃至65%の血小板占有率を示す。一方、Ac−ヘパリンでコーティングされた表面は、0乃至5%の値を示す(参照:100%の血小板占有率を有するサブ内皮細胞マトリックス)。
【0155】
Ac−ヘパリン化された表面上の血小板の付着は、血小板の活性化に不可欠な血漿タンパク質が存在しないことに起因して、顕著に悪化する。これとは異なり、迅速に初期の血漿タンパク質の吸着を伴うヘパリンでコーティングされた表面は、血小板の活性化、付着および凝集のための最適な前提条件を与え、最終的に、凝固カスケードの活性化によって、対応する防衛機構で、血液と挿入された異質面とが反応する。Ac−ヘパリンは、ヘパリンよりもはるかに優れており、異質面の血液適合性に対する要件を満たす。
【0156】
表面のトロンボン形成性のための直接的な量としての血漿タンパク質吸着および血小板占有率の相互作用は、血液に提供されたコーティングに依存して、特にこのインビトロ試験によってさらに十分に明らかにされる。従って、共有結合ヘパリンを抗血栓性のオペラント表面として使用することは、非常に限定されるか、または完全に不可能である。固定化されたヘパリンと血液との相互作用は、所望でない逆の方へと戻っていく。つまり、ヘパリンでコーティングされた表面がトロンボン形成能を獲得する。
【0157】
明らかに、抗血栓剤としてのヘパリンの突出した重要性は、共有結合的に固定化されたヘパリンにはあてはまらない。溶解した形態における全身適用においては、その特性を十分に発揮することができる。しかし、ヘパリンが共有結合的に固定化されない場合、その抗血栓性の特性は、仮にあったとしても、寿命が非常に短い。Ac−ヘパリン(「非親和性」−ヘパリン)は、脱硫酸化およびN−再アセチル化に起因して、初期分子の活性な抗血栓性特性を完全に失っているが、不動態性対アンチトロンビンIIIにおいて顕著に見出され、凝固を開始するプロセスに対する親和性を失っており、共有結合後にも維持する、区別可能な非トロンボン形成性を獲得しているという事実において異なる。
【0158】
ここで、Ac−ヘパリンおよび一般式IaおよびIbの化合物は全体として、凝固システムと接触する異質面のカモフラージュのために最適である。
【0159】
5.2.シリコン上の固定化
内径3mmを有する長いシリコン管1mを通して、エタノール/水1/1(v/v)混合物100mLを40℃で30分、円運動で圧送した。次いで、3−(トリエトキシシリル)−プロピルアミン2mLを添加し、40℃で更に15時間、円運動で圧送した。その後、それぞれの場合においてエタノール/水100mLおよび水100mLで2時間すすいだ。
【0160】
脱アセチル化され再アセチル化されたヘパリン(Ac−ヘパリン)3mgを30mLの0.1M MES−バッファーpH4.75 中に4℃で溶解し、CME−CDI(N−シクロヘキシル−N’−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメチル−p−トルエンスルホネート)30mgと混合した。この溶液を管を通して、4℃で15時間、円運動で圧送した。水ですすいだ後に、それぞれの場合に4M NaCl溶液および水で2時間すすいだ。
【0161】
5.3 血小板数の決定(EN30993−4)
内径3mmを有する1m長のシリコン管に、2つの2cm長の形状の合ったガラス管を配置した。次いで、管を収縮可能な管で円状に密閉し、0.154M NaCl溶液を用いてシリンジを介して空気を排除しつつ充填した。そのようにしながら、1つのシリンジを使用して溶液中に充填し、他のシリンジを用いて空気を除去した。空気を排除しながら(気泡が存在しない)、健康な被検体のクエン酸塩を添加した全血液に対して、2つのシリンジを用いて溶液を交換した。次いで、シリンジの凹状の穴を、その上からガラス管を押すことによって閉じ、透析ポンプ内で管をトートではさんだ。血液を150mL/分の流速で10分間圧送した。Coulterカウンターを用いてかん流する前および後に、血液の血小板成分を測定した。コーティングされていないシリコン管について、血小板損失は10%であった。それに対して、実施例5.2でコーティングされたシリコン管中の血小板損失は、平均で0%であった(実験数:n=3)。
【0162】
また、この動的試験システムにおいて、Ac−ヘパリンでコーティングされた表面上の血小板の活性が減少することが示されている。同時に、ヘパリンの固定化が、使用した表面の血液適合性に悪影響をもたらすと記録できる。それに対し、Ac−ヘパリンは、その受身の性質に従って、血小板と接触しても何の影響も与えないことを示す。
【0163】
5.4 316LVMステンレス鋼冠状ステント上での全血液実験
生体適合性を有するラインの試験において、31mm長の316LVMステンレス鋼ステントを、Ac−ヘパリンで共有結合的にコーティングした。全表面2cmおよび占有率係数約20pm/cmのステント表面の場合、このようなステントへの充填は、約0.35μgのAc−ヘパリンである。比較として、一方、血栓症予防の場合には、ヘパリンの通常の1日の適用は、20〜30mgであり、これは上記の値の少なくとも60,000倍に対応する。
【0164】
これらの実験は、確立された血流力学のChandlerループシステム[A.Henseler,B.Oedekoven,C.Andersson,K.Mottaghy;KARDIOTECHNIK 3(1999)]を用いたRWTH Aachenの生理学研究所で行われた。コーティングされたステントおよびコーティングされていないステントを広げ、600mm長および4mm内径を有するPVC管(医療用グレードPVC)中で試験した。これらの実験の結果は、シリコン管によって議論された実験を立証する。50%のかん流液におけるステントに起因する初期の血小板損失は、Ac−ヘパリンを用いてステント表面を改質することによって、80%を越えて減少する。
【0165】
広げた管において、血小板損失に対する表面改質した冠状ステントの影響を、45分間の全血液のかん流中に、更なるChandler試験において評価する。最初にステントが存在しないPVC管を分析すると、この結果はゼロ値である。空の管は、ドナー血液に関して平均27.4%の血小板損失を示し、標準偏差はわずかに3.6%である。この基本値に基づき、異なる表面改質されたステントがPVC管中で広げられ、それらによって生じる血小板損失について、類似の条件下で分析する。また、この場合において、単に全試験表面の約0.84%を占めるステントを被覆する表面が、血小板含量に対して顕著で再生可能な効果を生じる。空の管(基本値)に基づいて、研磨された、化学的に表面被覆されていないステントの分析によって、22.7%の更なる平均血小板損失を生む。PVCの空の管と比較して、1%未満の測定可能な異質面がほぼ同程度の血小板損失を有する。直接的な結果として、ステント材料として使用される医療用ステンレス鋼316LVMは、この試験表面は全表面の0.84%を占めるのみであるが、医療用グレードのPVC表面と比較して、約100倍の強度の血小板損傷を誘発する。
【0166】
ステンレス鋼冠状ステント上の分析された表面コーティングは、ステントにより誘発される血小板損傷の度合いを明らかに低減できることを示す(図4を参照)。最も効果的なのはAc−ヘパリンを81.5%用いた場合であることがわかった(SH4)。
【0167】
血小板損失に対するAc−ヘパリンでコーティングされたステントの効果が考慮される場合、良好な一致する値が生じる。かん流液中の血小板損失と、提示された表面に対する血小板の付着との相関関係は、測定結果の信頼性を示す。
【0168】
5.4.1 ステントに対する共有血液適合性コーテイング
医療用ステンレススチールLVM316製の非伸張ステントは、アセトンおよびエタノールを貯めた超音波漕内で15分間脱脂され、乾燥棚内において100℃で乾燥された。次に、これらのステントは、 エタノール/水の混合液(50対50の体積比)と3−アミノプロピルトリエトキシシラン(3-aminopropyltriethoxysilane)の2%溶液中に5分間浸漬され、その後、100℃で5分間乾燥された。その後、ステントは、脱塩水を用いて一晩洗浄された。
【0169】
3mgの脱硫酸され、再アセチル化されたヘパリンを、4℃において30mlの0.1M MES−バッファ(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)(pH4.75)に溶解し、N−シクロヘキシル−N´−(2−モルホリノエチル)カルボジイミド−メチル−p−トレンスルフォネート(toluenesulphonate)30mgと共に混合した。10本のステントが、この溶液中において、4℃で15時間攪拌された。次に、かかるステントは、水で洗浄され、2時間毎に4MのNaCl溶液および水で洗浄された。
【0170】
5.4.2 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるコート済みステントのグルコサミンの含有量の測定:
【0171】
加水分解:コート済みステントが、細い加水分解チューブ内に置かれ、3mlの3MHCIとともに、室温でちょうど1分間放置された。金属プローブが、取り除かれ、前記チューブは、密閉後、乾燥棚内において100℃で16時間インキュベート(保温)された。次に、ステントは、冷却され、乾燥状態になるまで3回乾燥され、1mlの脱気および濾過された水の中に入れられ、加水分解された標準試料との比較によって高速液体クロマトグラフィーによる測定が行われた(measured contra an also hydrolysed standard in HPLC)。
【0172】
【表2】

【0173】
実施例6
コーティングされた冠状ステントのインビボ実験(図5)
6.1.Ac−ヘパリンでコーティングされた冠状ステントのインビボ実験
血液適合性についてのデータに起因して、Ac−ヘパリンをインビトロ実験において得て、金属ステントの非トロンボン形成性コーティングとしてのAc−ヘパリン表面の適性をインビボで検討した(動物実験)。実験の標的は、主として、血管反応を誘発するステントに対するAc−ヘパリンコーティングの影響を評価することである。可能な血栓事象の位置合わせ以外に、新生内層領域、血管内腔および狭窄症の程度のような狭窄プロセスについての関連パラメータを記録した。
【0174】
認定された心臓病専門医であるHess教授の指導の下で、動物実験をInselspital Bern(スイス)で行った。実験のために、6〜9月齢の家畜のブタを使用し、ステントの妥当性確認のために、1匹を長期間定住させ、動物モデルとして良好であると判断した。
【0175】
これらの実験において予想されるように、急性、亜急性でもなく後期急性でもない血栓事象を位置合わせし、Ac−ヘパリンの非トロンボン形成性についての証明として評価してもよい。
【0176】
4週間後、動物を選び(安楽死させ)、ステントの冠状動脈セグメントを抽出し、組織形態学的に分析した。Ac−ヘパリンでコーティングされたステントを移植した結果として、可能な急性または亜慢性の毒性、アレルギー反応または潜在性の刺激に対する指標は、実験段階全体で、特に組織学的実験において、観察されない。ステント移植およびフォローアップの冠状の血管造影データセットを解明する間に、ステント移植に対する血管反応に関して解釈した。
【0177】
コーティングされていないコントロールステントとAc−ヘパリンでコーティングされたステントとの違いは、明確である。はっきりと区別できる新生内層層の生成は、コーティングされていないコントロールステントの場合は、非常に良好に観察可能である。すでに4週間後に、周りの組織に対するコーティングされていない表面の増殖促進効果は、ステント領域における血管閉塞の危険性が最終的に与えられる程度まで生じている。Ac−ヘパリンでコーティングされたステントの場合では対照的に、明確に薄い新生内層層が観察され、広い、自由な血管内腔を維持した状態で、ステントの十分に調整された内殖がある。
【0178】
詳細な組織形態学的および冠状の血管造影データはこの結果を立証し、一致して観察可能な場合、Ac−ヘパリンコーティング(SH4)を介して、新生内層過形成(「再狭窄」)は、コーティングされていないコントロールステントと比較して、約17から20%抑制された。この結果は予期されないものであり、同時に顕著なものである。確実に、血液適合性を事前に備えておくことに加えて、新生内層過形成を導くプロセスにおいても影響を有し、すなわち、再狭窄を防ぐ、トロンボゲンを生成しない表面は要求されていない。
【0179】
一方、Ac−ヘパリンを用いたステント表面の密集した、永久的な占有は、金属表面に対する直接的な細胞接触を防ぐ。技術文献におけるように、インプラント付近の組織内への特定の金属イオンの放出は、再狭窄の1つの可能な理由として議論されており、抗再狭窄能は、直接的な金属接触を防止するコーティングの1つによって見出された。
【0180】
他方では、このような肯定的な副作用はもっともらしい。というのは、血小板凝集が起こらない消極的で非トロンボン形成性のステント表面においては、増殖効果、それによる増側因子の放出が起こらないからである。従って、内腔側から開始する、重要な新生内層増殖は起こらない。
【0181】
実施例7
共有結合したAc−ヘパリンおよびPLGA50/50の第2のその上に隣接する層でコーティングされた冠状ステントのインビボ実験
7.1 インビトロで使用されるマトリックスの血液適合性
PLGA50/50の血液適合性の評価のために、ステンレス鋼ステントをポリマーでコーティングし、インビトロで全血液試験を用いて、RWTH Aachenの生理学研究所で試験した。使用され、確立され、標準化されたChandlerループシステムは、動的に密閉された管システムであり、ポンプを使用することなく作動する。血液適合性実験の全血液の範囲内で、血小板因子4(PF4)および相補因子5a(C5a)を決定した(図14〜16を参照)。比較の理由のために、コーティングされていないステントが含まれていた。
【0182】
実験の実施:
ドナー血液をヘパリン1.5U/mLに入れる。ステントをPVC管(内径3.5mm、長さ(L)=95cm)に導入し、バルーンカテーテルを介して固定する。4つの管(K3〜K6)および2つの空の管(L1、L2)をそれぞれの場合において等張性の塩化ナトリウム溶液7.5mLで満たし、Chandlerループ中で、37℃で5r/分で15分間回転させた。完全に空にした管をヘパリン化されたドナー血液(7.5mL)で注意深く満たし、5r/分で60分間回転させた。抗凝固剤サンプルをmonovettesおよびサンプルジャーにそれぞれ入れ(PF4−CTAD、C5a−EDTA、BB−EDTA)、処理する。
【0183】
血小板数の決定は、空のコントロール管、コーティングされたステントおよびコーティングされていないステント間で、顕著な違いを示す。放出されたPF4は、コーティングされた管およびコーティングされていない管の場合では、同じレベルである。活性化された相補因子5(C5a)の決定は、コーティングされたステントの場合には、コーティングされていないステントの場合より活性化度が低い。
【0184】
7.2 インビトロで使用されるマトリックスの血液適合性
この実験の標的は、主として、血管反応を誘発するステントに関するPLGA−コーティングの影響を評価することである。実験のために、28匹の6月齢から9月齢の家畜のブタを使用した。ステント領域を1週間後(1WoFUP)、1ヶ月後(4WoFUP)、6週間後(6WoFUP)、および3ヶ月後(12WoFUP)に試験した。得られたデータは、予想されない顕著に肯定的な効果を示し、これは疑いようもなくPLGA50/50の存在に起因する。3ヶ月後の狭窄症の値はコーティングされていないステントおよびコーティングされたステントについてはほとんど異ならないが、PLGAでコーティングされたステントに対する血管壁の反応は実質的に横ばい(smoother)である。1週間後、狭窄症値は、コーティングされていないインプラントが10.4%なのを顕著に下回って6%である。金属表面の保護効果は、4週間後ですら10%であり(33%の増加)、この期間経過後その最大値が22.6%まで到達する(54%の増加)コーティングされていないステントよりも、2つを超える因子において、狭窄症の速度が遅い。コーティングされたステントは、6週間後にも、最大で12.33%しか示さない。12週間後、両システムの値は互いに約11%で等しい(図16)。
【0185】
再狭窄プロセスについてのデータは、定量冠状血管造影(QCA)および脈管内超音波実験(IVUS)を介して決定した。
【0186】
実施例8
タクロリムス(tacrolimus)を表面にコーテイングすることに関する実験:
【0187】
トルイジンブルー液による前実験:
タクロリムスを化学的に検出するのは非常に困難なことから、最初に、トルイジンブルー(アルドリッチ社)による前実験が行われる。
【0188】
化学物質:
ステンレススチールチューブLVM316:長さ2.5センチ、直径2ミリ
ポリラクチド :Fluka社 ロット番号398555/123500、HNo.0409
トルイジンブルー :アルドリッチ社 ロット番号19,816−1、 HNo.0430
PBSーバッファ pH7.4 :14.24gのNa2HPO4, 2.72gのNaH2PO4および9gのNaCl
実行:
かかるステントは、化学天秤で量られ、質量(weight)が記録される。0.5gのポリラクチドは、細い加水分解チューブにおいて、2mlのCHCl3に溶解される。この結果、それは、水槽内で65℃まで加熱される。かかる溶液は、冷凍室において冷却される。200マイクログラムのトルイジンブルーが、200マイクロリットルのCHCl3に加えられる。この溶液中に、ステントが浸漬される。数分後、ステントは、ピンセットにより溶液から取り出され、溶液が乾燥するまでヒュームフード(fume hood)内に置かれる。ステントは、2回目の浸漬がなされる。空気乾燥した後、ステントは約10分間フリーズドライされる。乾燥後、ステントは、再び秤量される。質量の差から、トルイジンブルーにより固定化されたポリラクチドの量が、測定される(サンプル1)。
【0189】
この実験は、同じ溶液(サンプル2)を用いて再度繰り返される。
【0190】
実験3のため、実験1(サンプル1)および実験2(サンプル2)によって生じた浸漬溶液(1.93ml) は、0.825mlのCHCl3ならびに250mgのポリラクチド中の0.825mgのトルイジンブルーと混合される。かかるポリラクチドは、加熱中に溶解される。次に、上述のように、ステントはそれに2回浸漬される。
【0191】
結果:
処理していないステントは、それぞれ176.0mgおよび180.9mgの質量があった。ポリラクチド溶液に浸漬後、ステントの質量は、200.9および205.2mgとなった。
【0192】
浸漬溶液は、ポリラクチドを500mgおよびトルイジンブルーを200マイクログラム含んでいる。サンプル1ならびにサンプル2についてのトルイジンブルーの結合量は、この比率により測定することが可能である。サンプル3の場合、2.755mlの溶液が1mgのトルイジンブルー、ならびに、638.6mgのポリラクチドを含んでいる(初期質量−サンプル1+2の消費量;約50mg)。ここでは、吸収を高めるために、2本のステントが1回の製造に供される。厚いコーテイングを作り出す浸漬溶液は、非常に粘度が高いので、クロロホルムを用い、2.625mlから4mlに希釈される。
【0193】
浸漬溶液中の濃度:
【0194】
【表3】

【0195】
チューブならびに測定されたコーテイングの質量:
【0196】
【表4】

【0197】
実施例9
異なる濃度におけるコーテイングの溶出態様:
【0198】
前実験のように、エタノール中のトルイジンブルー溶液の可視分光分析値(UV-Vis)が取られ(c=0.1mg/ml)、吸収極大(absrption maximum)が決定される。溶液中のトルイジンブルーの濃度は、627nmの吸収極大において測定される。それに対する検量線が生成される。
【0199】
ステントは、pH7.4のリン酸緩衝液(phosphate buffer)(14.24g のNaH2PO4、2.72gの K2HPO4および9gのNaCl)中の25mlの生理食塩水を有するビーカー内に、置かれ、室温でゆっくりと撹拌される。0.5、1、2、3、6、24、48ならびに120時間経過後、毎回3mlのサンプルが取られて、分光的に測定され、製造に反映される。
【0200】
【表5】

【0201】
異なる時間経過後のサンプルの吸収。濃度を測定するため、キュベットの差(cuvette difference)(abs. at T=0)が、測定値から差し引かれる。
【0202】
12日および13日後、それぞれの実験が、終了する。実験終了後、全てのステントの上にコーテイングが残存している。溶解しているトルイジンブルーおよびポリラクチドの量をそれぞれ決定するため、ステントは、水およびエタノールにより洗浄され、次に、それらをその後に秤量するため、1時間フリーズドライされる。
【0203】
【表6】

【0204】
トルイジンブルーの濃度が、浸漬溶液1ml当たり90マイクログラムである場合、トルイジンブルー溶出量は、 吸収値が分光計の測定限界に存する程度に非常に低い。濃度が、1ml当たり200マイクログラムである場合、吸収値は数時間後に測定可能領域に達する。測定の際、より高い吸収値を得るため、ビーカー(溶出ジャー)内に2つのサンプルを収納することが推奨される。ポリラクチド/トルイジンブルーの濃度が最も高い場合、濃度の薄いサンプルの場合に、溶出比がほぼ直線状の軌道を有する間、飽和効果(saturation effect)が現れる。数日経った後でも、全てのステント上でコーテイングを検出することができる。
【0205】
約2週間後、結合したトルイジンブルーは、平均して約1/4から1/5溶解する。このように、かかるサンプルは、約8週から10週間、トルイジンブルーを溶出する。
【0206】
浸漬溶液は、濃すぎてはならず、そうしなければコーテイング材料が厚すぎて不均一になってしまうので、抽出中にクロロホルムがすぐに蒸発しないよう、冷却しなければならない。ここで、サンプル4におけるポリラクチドの濃度(134mg/ml)は、十分であるように思えるが、とりわけ濃度が高い場合、溶液の粘度が非常に高くなり、ポリラクチドを溶解するだけでも大変である。
【0207】
実施例10
スプレー法を用いてのステントのコーテイング:
実験例1ならびに実験例2によると、前もって準備した非伸張ステントは、秤量され、回転兼フィード器具(rotation and feed equipemnt)の回転軸に付けられた(stuck on)細い金属棒(d=0.2mm)に水平に引っ掛けられ、毎分28回転する。かかるステントは、ステントの内部が前記金属棒に触れないよう固定される。フィーデイング幅(feeding amplitude)が2.2cm、フィーデイング速度が秒速4cmであり、ステントとスプレーノズル間の距離が6cmである時、それぞれのスプレー液が当該ステントに吹き付けられる。室温での乾燥後(約15分)、ヒュームフード内に約一晩入れ、再度秤量される。
【0208】
実施例11
マトリクスのみによるステントのコーテイング:
スプレー液の準備:
ポリラクチド176mgを秤量し、クロロホルムを注いで20gとする。
【0209】
かかるステントには、毎回、3mlのスプレー液が吹き付けられ、スプレーの前後に秤量され、生成された層の厚みは、倍率が100倍の顕微鏡によって測定することにより決定される。
【0210】
【表7】

【0211】
実施例12
活性物質のみによるステントのコーテイング:
スプレー液の準備:
タクソール 44mgを、クロロホルム6gに溶解する。
【0212】
スプレーの前後にステントを秤量する。
【0213】
【表8】

【0214】
実施例13
PBS−バッファにおける溶出態様の決定:
十分小さいフラスコ内に置かれた各ステントに、2mlのPBS−バッファが加えられ、パラフィルムにより密閉され、乾燥棚において37℃でインキュベートされる。所定時間の終了後に、毎回、ピペットによって上澄み液が除去され、306nmにおける自身の赤外線吸収が測定される。
【0215】
実施例14
活性物質を載せたマトリクスにより血液適合性を具備するステントをコーテイングする(図7):
スプレー液:
ポリラクチド145.2mgならびにタクソール48.4mgに、クロロホルムを注いで、22gのポリラクチド RG502/タクソール−溶液とする。
【0216】
【表9】

【0217】
実施例15
活性物質を載せたマトリクスによりステントをコーテイングするとともに、活性物質をトップコートとして用いる(図8):
【0218】
ベースコート:ポリラクチド19.8mgならびにタクソール6.6mgにクロロホルムを注いで、3gとする。
【0219】
トップコート:タクソール8.8mgにクロロホルムを注いで、2gとする。
【0220】
【表10】

【0221】
実施例16
親水性の活性物質を含むポリラクチド、ならびに、トップコートとして、活性物質を含まないマトリクス、によりステントをコーテイングする(図9):
スプレー液:
ベースコーテイング:ポリラクチド22mgならびに親水性の活性物質22mgを秤量し、それにクロロホルムを注いで、5gとする。
【0222】
トップコート: ポリラクチド22mgならびにポリスチレン22mgを秤量し、それにクロロホルムを注いで、5gとする。
【0223】
【表11】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式IaおよびIbで表される化合物
一般式Ia
【化1】

一般式Ib
【化2】

nは、4から1050の間の整数であり、
YおよびZは、互いに独立に、−CHO,−COCH,−COC,−COC,−COC,−COC11,−COCH(CH,−COCHCH(CH,−COCH(CH)C,−COC(CH,−CHCOO,−CCOO,−CCOO,−CCOO,の基(groups)を表す化合物、および当該化合物の塩。
【請求項2】
請求項1の一般式Iaの化合物であって、
前記YおよびZは、互いに独立に、−COCH,−COC,−COC,−CHCOO,−CCOO,−CCOO,の基を表す化合物、および当該化合物の塩。
【請求項3】
請求項1の一般式Ibの化合物であって、
前記Yは、−COCH,−COC,−COC,の基を表す化合物、および当該化合物の塩。
【請求項4】
前記一般式Iaの化合物の製造方法であって、
ヘパラン硫酸および/またはヘパラン硫酸ヘパリンが、実質的に完全に脱硫酸化され、続いて酸によってN−アシル化されていることを特徴とする方法。
【請求項5】
前記一般式Ibの化合物の製造方法であって、以下の、
a)キトサンは部分的にN−カルボキシアルキル化され、続いてN−アシル化され、または、
b)キトサンは部分的にN−アシル化され、続いてN−カルボキシアルキル化され、または、
c)キトサンは部分的に脱アセチル化され、続いてN−カルボキシアルキル化されること、
を特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5の製造方法において、
実質的に前記キトサンまたはキチンのアミノ基の半分はアシル化され、それらの他の半分はカルボキシアルキル化されること、
を特徴とする方法。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一つの方法によって得られうる前記一般式Iaおよび/またはIbの化合物。
【請求項8】
請求項1、2、3または7のいずれか一つの前記一般式Iaおよび/またはIbの化合物であって、二糖ユニット(disaccharide unit)当たりの硫酸基(sulphate groups)の含有量が0.005未満であること、
を特徴とする化合物。
【請求項9】
請求項1、2、3、7、または8のいずれか一つの前記一般式Iaおよび/またはIbの化合物であって、遊離アミノ基の含有量が、前記−NH−Y基の全てに関して1%未満であること、
を特徴とする化合物。
【請求項10】
請求項1から3、7から9のいずれか一つの前記一般式Iaおよび/またはIbの化合物であって、前記糖ユニット(sugar units)の順番が実質的に変換されていること、
を特徴とする化合物。
【請求項11】
請求項1から3、7から10のいずれか一つの前記一般式Iaの化合物であって、前記全てのアミノ基の45%から55%が前記Yの基を有しており、残りのアミノ基が前記Zの基を有すること、
を特徴とする化合物。
【請求項12】
医療用機器の血液適合性(hemocompatible)の表面を生成するための、前記一般式Iaおよび/またはIbの化合物の使用方法。
【請求項13】
請求項12の使用方法であって、前記一般式Iaおよび/またはIbの化合物は、前記表面に共有結合していること、
を特徴とする使用方法。
【請求項14】
表面の血液適合性コーティングのためのオリゴ糖および/または多糖類の使用方法であって、
前記オリゴ糖および/または多糖類は、糖ユニットであるN−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミンを40%から60%の間で含み、実質的に残りの糖ユニットは、糖ユニット当たり一つのカルボキシル基を有すること、
を特徴とする使用方法。
【請求項15】
請求項14の使用方法であって、
前記オリゴ糖および/または多糖類の実質的に各2番目の糖ユニットは、N−アシルグルコサミンまたはN−アシルガラクトサミンであること、
を特徴とする使用方法。
【請求項16】
請求項14または15の使用方法であって、N−アシルグルコサミン N−アセチルグルコサミンの場合、および、N−アシルガラクトサミン N−アセチルガラクトサミンの場合が考慮されること、
を特徴とする使用方法。
【請求項17】
請求項14、15、または16の使用方法であって、前記残りの糖ユニットがウロン酸であること、
を特徴とする使用方法。
【請求項18】
請求項17の使用方法において、前記ウロン酸は実質的にD−グルクロン酸おおびL−イズロン酸であること、
を特徴とする使用方法。
【請求項19】
請求項12から18のいずれか一つの使用方法において、前記糖ユニットの順番が実質的に変更されていること、
を特徴とする使用方法。
【請求項20】
請求項14から19のいずれか一つの使用方法であって、前記オリゴ糖および/または多糖類は、実質的に脱硫酸化および実質的にN−アシル化されたヘパラン硫酸、および部分的にN−カルボキシアルキル化およびN−アシル化されたキトサンであること、
を特徴とする使用方法。
【請求項21】
医療用機器の生物的および/または人工的な表面の血液適合性コーティングのための方法であって、以下の:
a)医療用機器の表面を準備するステップ、
b)前記表面の血液適合性層(layer)として、請求項1から3、7から11、14から20のいずれか一つの、少なくとも一つのオリゴ糖および/または多糖類を付着するステップ、あるいは、
b’)前記医療用機器の表面または前記血液適合性層に生物的安定層を付着するステップ、
を含む方法。
【請求項22】
請求項21の方法であって、前記血液適合性層または生物的安定層は、共有および/または接着結合する少なくとも1の活性物質を含む、少なくとも1の生物分解性層、および/または生物的安定層を浸漬(dipping)または吹きつけ法(spraying method)を介してコートされること、
を特徴とする方法。
【請求項23】
請求項21の方法であって、さらに、
c)前記血液適合性層または生物的安定層の中、および/または上に少なくとも1の活性物質を付着するステップ、
を含む方法。
【請求項24】
請求項23の方法であって、前記少なくとも1の活性物質は、前記血液適合性層または生物的安定層の上および/または中に浸漬または吹きつけ法によって適用および/または付着され、および/または、前記少なくとも1の活性物質は、前記血液適合性層または生物的安定層に共有および/または接着結合によって結合されること、
を特徴とする方法。
【請求項25】
請求項21から24のいずれか一つの方法であって、さらに、
d)少なくとも1の生物分解性層および/または少なくとも1の生物的安定層を、前記血液適合性層または前記活性物質の層のそれぞれに付着するステップ、あるいは、
d’)前記生物的安定層または前記活性物質の層のそれぞれに、血液適合性層として、請求項1から3、7から11、14から20のいずれか一つの少なくとも1のオリゴ糖および/または多糖類を付着するステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項21から25のいずれか一つの方法であって、さらに、
e)少なくとも1の生物分解性層、および/または生物的安定層または血液適合性層の中および/または上に少なくとも1の活性物質を付着するステップ、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項26の方法であって、
前記少なくとも1の活性物質は、少なくとも1の生物分解性、および/または生物的安定層または血液適合性層の上および/または中に浸漬または吹きつけ法を介して付着および/または適用され、および/または、少なくとも1の活性物質は、少なくとも生物分解性、および/または、生物的安定層または血液適合性層に共有および/または接着結合することによって結合されること、
を特徴とする方法。
【請求項28】
請求項25から27のいずれか一つの方法であって、前記生物的安定および/または生物分解性層は、前記医療用機器の表面に共有および/または接着結合しており、前記血液適合性層は、前記生物的安定層に共有結合して、それを完全に(completely)または不完全に(incompletely)覆うこと、
を特徴とする方法。
【請求項29】
請求項21から28のいずれか一つの方法であって、
前記血液適合性層は、購入可能なヘパリンの標準的な分子量13kDに至るまで抗血栓作用を生じさせるペンタサッカライド(pentasaccharide)の分子量範囲において、異なる硫酸化率(硫酸化度)およびアシル化率(アシル化度)を有する位置選択的(regioselectively)に合成された誘導体の、天然由来のヘパリン、ヘパラン硫酸およびその誘導体、赤血球性の(erythrocytic)グリコカリックス(glycocalix)のオリゴ−および多糖類、脱硫酸化(desulphated)およびN−再アセチル化(reac(et)ylated)されたヘパリン、N−カルボキシメチル化および/または部分的にN−アセチル化(N-ac(et)ylated)されたキトサン、またはそれらの物質の混合物、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項21から29のいずれか一つの方法において、
前記生物分解性層のための生物分解性物質として、ポリバレロラクトン、ポリ−ε−デカラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリラクチド、ポリグリコライド、ポリラクチドおよびポリグリコライドのコポリマー、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシブタン酸、ポリヒドロキンブチレート、ポリヒドロキシバレレート、ポリヒロドキシブチレート−co−バレレート、ポリ(1、4−ジオキサン−2、3−ジオン)、ポリ(1、3−ジオキサン−2−オン)、ポリ−パラ−ジオキサノン、例えばポリ無水マレイン酸のようなポリアンヒドリド、ポリヒドロキシメタクリレート、フィブリン、ポリシアノアクリレート、ポリカプロラクトンジメチルアクリレート、ポリ−b−マレイン酸、ポリカプロラクトンブチル−アクリレーツ、例えばオリゴカプロラクトンジオールおよびオリゴジオキサノンジオールから得られるようなマルチブロックポリマー、例えばPEGおよびポリ(ブチレン テレフタレート)のようなポリエーテルエステル・マルチブロックポリマー、ポリピボトラクトン、ポリグリコール酸 トリメチレン−カーボネート、ポリカプロラクトン−グリコライド、ポリ(g−エチルグルタミン酸)、ポリ(DTH−イミノカーボネート)、ポリ(DTE−co−DT−カーボネート)、ポリ(ビスフェノール−A−イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸 トリメチレン−カーボネート、ポリトリメチルカルボン酸、ポリイミノカルボン酸、ポリ(N−ビニル)−ピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド、グリコール酸・ポリエステル、ポリホスホエステル、ポリホスファゼン、ポリ[p−カルボキシフェノキシ)プロパン]、ポリヒドロキシペンタン酸、ポリアンヒドリド、ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド、ソフトポリウレタン、主鎖にアミノ酸残基が付加されたポリウレタン、例えばポリエチレンオキシドのようなポリエーテルエステル、ポリアルケンシュウ酸、ポリオルトエステルおよびそれらのコポリマー、脂質、カラギーナン、フィブリノーゲン、デンプン、コラーゲン、プロテインをもとにしたポリマー、ポリアミノ酸、合成されたポリアミノ酸、ゼイン、修飾されたゼイン、ポリヒドロキシアルカン酸、ペクチン酸、化学作用のある酸(actinic acid)、修飾および非修飾のフィブリンおよびカゼイン、カルボキシメチル硫酸、アルブミン、さらに、ヒアルロン酸、キトサン及びその誘導体、ヘパラン硫酸及びその誘導体、ヘパリン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、b−シクロデキストリン、PEGおよびポリプロピレングリコールによるコポリマー、アラビアゴム、グアー、ゼラチン、コラーゲン、コラーゲン−N−ヒドロキシサクシンイミド、脂質、リン脂質、前述の物質の修飾物、前述の物質のコポリマー、および/または、前述の物質の混合物、が用いられること、
を特徴とする方法。
【請求項31】
請求項21から30のいずれか一つの方法において、
前記生体安定性層のための生体安定性物質として、ポリアクリル酸および、例えばポリメチルメタクリレートのようなポリアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエチレンアミン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリカルボウレタン、ポリビニルケトン、ポリビニルハロゲン化物、ポリビニリデンハロゲン化物、ポリビニルエーテル、ポリイソブチレン、ポリビニルアロメート、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリオキシメチレン、ポリテトラメチレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、シリコン−ポリエーテルウレタン、シリコン−ポリウレタン、シリコン−ポリカーボネート−ウレタン、ポリオレフィンエラストマー、ポリイソブチレン、EPDM ガム、フルオロシリコン、カルボキシメチルキトサン、ポリアリルエーテルエーテル(polyaryletherether)ケトン、ポリエーテルエーテル(polyetherether)ケトン、ポリエチレンテレフタラート、ポリバレレート、カルボキシメチルセルロース、セルロース、レーヨン、レーヨントリアセテート、セルロースニトレート、セルロースアセテート、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、エチルビニールアセテート・コポリマー、ポリスルホン、エポキシレジン、ABSレジン、EPDM ガム、例えばポリシロキサンのようなシリコン、ポリジメチルシロキサン、ポリビニルハロゲンおよびコポリマー、セルロースエーテル、セルローストリアセテート、キトサン、それらの物質のコポリマー、および/またはそれらの混合物、が用いられること、
を特徴とする方法。
【請求項32】
請求項21から31のいずれか一つの方法において、
前記活性物質は、シロリムス(ラパマイシン)、エベロリムス、ピメクロリムス、ソマトスタチン、タクロリムス、ロキシスロマイシン、ドウナイマイシン、アスコマイシン、バフィロマイシン、エリスロマイシン、ミデカマイシン、ジョサマイシン、コンカナマイシン、クラリスロマイシン、トロレアンドマイシン、フォリマイシン、セリバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、エトボシド、テニポシド、ニムスチン、カルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、4−ヒドロキシシクロフォスファミド、エストラムスチン、メルファラン、イホスファミド、トロフォスファミド、サイモシンα−1、クロランブシル、ベンダムスチン(bendamustine)、ダカルバジン、ブスルファン、プロカルバジン、トレオスルファン(treosulfan)、トレモゾロミド(tremozolomide)、チオテパ、ダウノルビシン、ドキソルビシン、アクラルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ダクチノマイシン、メトトレキセート、フルダラビン、2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸、チアリン(tialin)−Na(チアリンのナトリウム塩)、フルダラビン−5’−リン酸二水素、クラドリビン、メルカプトプリン、チオグアニン、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、ドセタキセル、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、アムサクリン、イリノテカン、トポテカン、ヒドロキシカルバミド、ミルテフォシン、ペントスタチン、アルデスロイキン、トレチノイン、アスパラギナーゼ、ペガスパラーゼ、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、フォルメスタン、アミノグルテサミド、アドリアマイシン、アジスロマイシン、スピラマイシン、セファランチン、ダームシジン(ダームシジン)、smc増殖阻害剤−2w、エポシロンAおよびB、ミトキサントロン、アザチオプリン、マイコフェノールアトモフェチル、c−myc−アンチセンス、b−myc−アンチセンス、ベツリニック酸、カンプトセシン、PI−88(硫酸化オリゴ糖)、メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)、活性化プロテインC、IL1−β阻害剤、フマル酸、およびそのエステル、カルシポトリオール、タカルシトール、ラパコール、β−ラパコン、ポドフィロトキシン、ベツリン、ポドフィリック酸 2−エチルヒドラジド、モルグラモスティム(rhuGM−CSF)、ペグインターフェロン α−2b、ラノグラスチム(r−HuG−CSF)、フィルグラスチム、マクロゴール、ダカルバジン、エキセメスタン、レトロゾール、ゴセレリン、セファロマニン、バシリキシマブ、トラスツズマブ、ダシリツマブ、セレクチン(サイトカイン アンタゴニスト)、CETP阻害剤、カドヘリン、サイトカイニン阻害剤、COX−2阻害剤、NFkB、アンギオペプチン、シプロフロキサシン、カンプトセシン、フルロブラスチン、筋細胞の増殖を阻害するモノクローナル抗体、bFGFアンタゴニスト、プロブコール、プロスタグランジン、1,11−ジメトキシカンシン−6−オン、1−ヒドロキシ−11−メトキシカンチン−6−オン、スコポレクチン、コルヒチン、例えば四硝酸ペンタエリスリトールおよびシンドノエイミンのようなNO供与体(一酸化窒素供与体)、S−ニトロソデリバティブ、タモキシフェン、スタウロスポリン、β−エストラジオール、α−エストラジオール、エストリオール、エストロン、エチニルエストラジオール、ホスフェストロール、メドロキシプロゲステロン、エストラジオールシピオネイト、エストラジオール ベンゾアート、トラニラスト、カメバコーリン、および、癌の治療に利用されるその他のテルペノイド、ベラパミル、チロシンキナーゼ阻害剤(チルフォスチン)、シクロスポリンA、例えば6−α−ヒドロキシ−パクリタキセルのようなパクリタキセルおよびその誘導体、バッカチン、タキソテール、その他合成的に生産および天然源に由来するカーボン・サブオキサイドの大環状オリゴマー(MCS)およびその誘導体、モフェブタゾン、アセメタシン、ジクロフェナク、ロナゾラック、ダプソン、o−カルバモイルフェノキシ酢酸、リドカイン、ケトプロフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、メロキシカム、クロロキンリン酸、ペニシラミン、ヒドロキシクロロキン、オーラノフィン、金チオリンゴ酸ナトリウム、オクサセプロール、セレコキシブ、β−シトステリン、アデノシル・メチオニン、ミルテカイン、ポリドカノール、ノニヴァミド、レボメントール、ベンゾカイン、アエスシン、エリプチシン、D−24851 (カルビオケム)、コルセミド、サイトカラシンA−E、インダノシン、ノコダゾール、S100プロテイン、バシトラシン、ビトロネクチン受容体アンタゴニスト、アゼラスチン、グアニジル シクラーゼ刺激薬 組織メタロプロテアーゼインヒビター−1および−2、遊離した核酸、ウイルス伝搬体に組み込まれた核酸、DNAおよびRNA断片、プラスミノーゲン活性化因子インヒビター−1、プラスミノーゲン活性化因子インヒビター−2、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、VEGF阻害剤、IGF−1、例えばセファドロキシル、セファゾリン、セファクロル、セフォタキシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、例えばジクロキサシリンのようなペニシリン、オキサシリン、サルファ剤、メトロニダゾールからなる抗生物質の群より選ばれた活性物質、例えばアルガトロバンのような抗血栓剤、アスピリン、アブシキシマブ、合成されたアンチトロンビン、ビバリルジン、クマジン、エノキソパリン、脱硫酸化およびN−再アセチル化されたヘパリン、組織プラスミノーゲン活性化因子、GpIIb/IIIa 血小板層レセプター、ファクターXa阻害抗体、ヘパリン、ヒルジン、r−ヒルジン、PPACK、プロタミン、チアリン−Na(thialin-Na)、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ワルファリン、ウロキナーゼ、例えばジピラミドールのような血管拡張薬、トラピジル、ニトロプルシド、例えばトリアゾロピリミジンおよびセラミンのようなPDGFアンタゴニスト、例えばカプトプリルのようなACE阻害剤、シラザプリル、リシノプリル、エナラプリル、ロサルタン、チオプロテアーゼ阻害剤、プロスタサイクリン、バピプロスト、インターフェロンα、βおよびγ、ヒスタミン アンタゴニスト、セロトニンブロッカー、アポトーシス阻害剤、例えばp65、NF−kBまたはBcl−xL アンチセンス・オリゴヌクレオチドのようなアポトーシスレギュレーター、ハロフジノン、ニフェジピン、トコフェロール、ビタミンB1、B2、B6、B12、葉酸、トラニラスト、モルシドミン、茶成分ポリフェノール、エピカテキン・ガレート、エピガロカテキン・ガレート、ボズウェラ酸およびその誘導体、レフルノミド、アナキンラ、エタネルセプト、スルファサラジン、エトポシド、ジクロキサシリン、テトラサイクリン、トリアムシノロン、ムタマイシン、プロカイナミド、レチノイン酸、キニジン、ジソピラミド、フレカイニド、プロパフェノン、ソタロール、アミドロン、例えばブリオフィリンAのような天然および合成的に得られたステロイド、イノトジオール、マキロシドA、ガラキノシド、マンソニン、ストレブロシド、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、例えばフェノプロフェンのような非ステロイド化合物(NSAIDS)、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、フェニルブタゾン、例えばアシクロビル、ガンシクロビルおよびジドブジンのようなその他の抗ウイルス剤、例えばクロトリマゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、ケトコナゾール、ミコナゾール、ニスタチン、テルビナフィンのような抗かび剤、例えばクロロキン、メフロキン、キニーネのようなアンチプロゾール作用物質、さらに、例えばヒッポカエスクリンのような天然のテルペノイド、バリントゲノール−C21−アンゲレート、14−デヒロドアグロスチスタチン、アグロスケリン、アガロスチスタチン、17−ヒドロキシアグロスチスタチン、オヴァトジオライド、4,7−オキシシクロアニソメリック・アシッド、バッカリノイドB1、B2、B3およびB7、トゥベイモシド、ブルセノールA、BおよびC、ブルセアンチノシドC、ヤダンジオシドNおよびP、イソデオキシエレファントピン、トメンファントピンAおよびB、コロナリンA、B、CおよびD、ウルソール酸、ヒプタチック酸A、ゼオリン、イソ−イリドジャーマナル、メイテンフォリオル、エフサンチンA、エキシサニンAおよびB、ロンギカウリンB、スカルポネアチン C、カメバウニン、ロイカメニンAおよびB、13,18−デヒドロ−6−α−シネシオイルオキシシャパリン、タクサマイリンAおよびB、レジェニロール、トリプトライド、さらに、シマリン、アポシマリン、アリストロキア酸、アノプテリン、ヒドロキシアノプテリン、アネモニン、プロトアネモニン、ベルベリン、チェリブリン・クロライド、シクトキシン、シノコクリン、ボムブレスタチンAおよびB、クドライソフラボンA、クルクミン、ジヒドロニチジン、塩化ニチジン、12−β−ヒドロキシプレグナジエン−3,20−ジオン、ビロボール、ギンコール、ギンコール酸、ヘレナリン、インジシン、インジシン−N−オキシド、ラシオカルピン、イノトジオール、グリコシド 1a、ポドフィロトキシン、ジャスチシジンAおよびB、ラレアチン、マロテリン、マロトクロマノール、イソブチリルマロトクロマノール、マキロシドA、マーチャンチンA、メイタイシン、リコリジシン、マルゲチン、パンクラチスタチン、リリオデニン、ビスパーセノリジン、オクソウシンスニン、アリストラクタム−AII、ビスパーセノリジン、ペリプロコシドA、ガラキノシド、ウルソール酸、デオキシソロスパミン、サイコルビン、リシンA、サンギナリン、マンウ ホウィート・アシッド、メチルソルビフォリン、メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)、スファセリアクロメン、スチゾフィリン、マンソニン、ストレブロシド、アカゲリン、ジヒロドウサムバレンシン、ヒドロキシウサムバリン、ストリクノペンタミン、ストリクノフィリン、ウサムバリン、ウサムバレンシン、ベルベリン、リリオデニン、オクソウシンスニン、ダフノレチン、ラリシレシノール、メトキシラリシレシノール、シリンガレジノール、ウンベリフェロン、アフロモソン、アセチルビスミオン B、デスアセチルビスミオンA、ビスミオンAおよびB、からなる群より選択されたものであること、
を特徴とする方法。
【請求項33】
請求項21から32のいずれか一つの方法であって、
請求項1から3、7から11、14から20のいずれか一つの前記オリゴ糖および/または多糖類の付着または固定化は、疎水的相互作用、ファン・デル・ワールス力、ファン・デル・ワールス力、静電的相互作用、水素結合、イオン結合、架橋結合、および/または共有結合によって行われること、
を特徴とする方法。
【請求項34】
請求項21から33のいずれか一つの方法によって得られうる医療用機器。
【請求項35】
医療用機器であって、前記医療用機器の表面は、少なくとも1の介在する(interjacent)生物的安定層および/または生物分解性層によって直接的および/またはそれらを介してコートされ、および/または、血液適合性層を伴う活性物質の層は、請求項1から3、7から11、14から20の少なくとも1のオリゴ糖および/または多糖類を含むこと、
を特徴とする医療用機器。
【請求項36】
請求項35の医療用機器であって、前記血液適合性層の下、または2つの血液適合性層の間に、少なくとも1の生物的安定層および/または生物分解性層が存在すること、
を特徴とする医療用機器。
【請求項37】
請求項35または36の医療用機器であって、前記血液適合性層は、少なくとも他の、上にある(suprajacent)生物的安定層および/または生物分解性層によって完全に、および/または不完全にコートされること、
を特徴とする医療用機器。
【請求項38】
請求項36または37の医療用機器であって、前記少なくとも1の活性物質の層は、生物的安定層および/または生物分解性層の間に存在し、前記血液適合性層は、共有および/または接着結合する、少なくとも1の抗増殖性(antiproliferative)、抗炎症性(antiinflammatory)、および/または、抗血栓性(antithrombotic)の活性物質(active agent)を含むこと、
を特徴とする医療用機器。
【請求項39】
請求項35から38のいずれか一つの医療用機器であって、前記少なくとも1の抗増殖性、抗炎症性、および/または、抗血栓性の活性物質(active agent)は、前記血液適合性層、および/または生物的安定層、および/または生物分解性層、の中および/または上に共有および/または接着結合すること、
を特徴とする医療用機器。
【請求項40】
請求項35から39のいずれか一つの医療装置において、
前記用いられる活性物質は、シロリムス(ラパマイシン)、エベロリムス、ピメクロリムス、ソマトスタチン、タクロリムス、ロキシスロマイシン、ドウナイマイシン、アスコマイシン、バフィロマイシン、エリスロマイシン、ミデカマイシン、ジョサマイシン、コンカナマイシン、クラリスロマイシン、トロレアンドマイシン、フォリマイシン、セリバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、エトボシド、テニポシド、ニムスチン、カルムスチン、ロムスチン、シクロホスファミド、4−ヒドロキシシクロフォスファミド、エストラムスチン、メルファラン、イホスファミド、トロフォスファミド、クロランブシル、ベンダムスチン、ダカルバジン、ブスルファン、プロカルバジン、トレオスルファン、サイモシンα−1、トレモゾロミド、チオテパ、チアリン(2−メチルチアゾリジン−2,4−ジカルボン酸)、チアリン−Na(チアリンのナトリウム塩)、アウノルビシン(aunorubicin)、ドキソルビシン、アクラルビシン、エピルビシン、ミトキサントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ダクチノマイシン、メトトレキセート、フルダラビン、フルダラビン−5’−リン酸二水素、クラドリビン、メルカプトプリン、チオグアニン、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、ドセタキセル、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、アムサクリン、イリノテカン、トポテカン、ヒドロキシカルバミド、ミルテフォシン、ペントスタチン、アルデスロイキン、トレチノイン、アスパラギナーゼ、ペガスパラーゼ、アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール、フォルメスタン、アミノグルテサミド、アドリアマイシン、アジスロマイシン、スピラマイシン、セファランチン、smc増殖阻害剤−2w、エポシロンAおよびB、ミトキサントロン、アザチオプリン、マイコフェノールアトモフェチル、c−myc−アンチセンス、b−myc−アンチセンス、ベツリニック酸、カンプトセシン、PI−88(硫酸化オリゴ糖)、メラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)、活性化プロテインC、IL1−β阻害剤、フマル酸、およびそのエステル、ダームシジン、カルシポトリオール、タカルシトール、ラパコール、β−ラパコン、ポドフィロトキシン、ベツリン、ポドフィリック酸 2−エチルヒドラジド、モルグラモスティム(rhuGM−CSF)、ペグインターフェロン α−2b、ラノグラスチム(r−HuG−CSF)、フィルグラスチム、マクロゴール、ダカルバジン、レトロゾール、ゴセレリン、セファロマニン、トラスツズマブ、エキセメスタン、バシリキシマブ、ダシリツマブ、セレクチン(サイトカイン アンタゴニスト)、CETP阻害剤、カドヘリン、サイトカイニン阻害剤、COX−2阻害剤、NFkB、アンギオペプチン、シプロフロキサシン、カンプトセシン、フルロブラスチン、筋細胞の増殖を阻害するモノクローナル抗体、bFGFアンタゴニスト、プロブコール、プロスタグランジン、1、11−ジメトキシカンシン−6−オン、1−ヒドロキシ−11−メトキシカンチン−6−オン、スコポレクチン、コルヒチン、例えば四硝酸ペンタエリスリトールおよびシンドノエイミンのようなNO供与体(一酸化窒素供与体)、S−ニトロソデリバティブ、タモキシフェン、スタウロスポリン、β−エストラジオール、α−エストラジオール、エストリオール、エストロン、エチニルエストラジオール、ホスフェストロール、メドロキシプロゲステロン、エストラジオールシピオネイト、エストラジオール ベンゾアート、トラニラスト、カメバコーリン、および、癌の治療に利用されるその他のテルペノイド、ベラパミル、チロシンキナーゼ阻害剤(チルフォスチン)、シクロスポリンA、例えば6−α−ヒドロキシ−パクリタキセルのようなパクリタキセルおよびその誘導体、バッカチン、タキソテール、その他合成的に生産および天然源に由来するカーボン・サブオキサイドの大環状オリゴマー(MCS)およびその誘導体、モフェブタゾン、アセメタシン、ジクロフェナク、ロナゾラック、ダプソン、o−カルバモイルフェノキシ酢酸、リドカイン、ケトプロフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、メロキシカム、クロロキンリン酸、ペニシラミン、ヒドロキシクロロキン、オーラノフィン、金チオリンゴ酸ナトリウム、オクサセプロール、セレコキシブ、β−シトステリン、アデノシル・メチオニン、ミルテカイン、ポリドカノール、ノニヴァミド、レボメントール、ベンゾカイン、アエスシン、エリプチシン、D−24851 (カルビオケム)、コルセミド、サイトカラシンA−E、インダノシン、ノコダゾール、S100プロテイン、バシトラシン、ビトロネクチン受容体アンタゴニスト、アゼラスチン、グアニジル シクラーゼ刺激薬 組織メタロプロテアーゼインヒビター−1および−2、遊離した核酸、ウイルス伝搬体に組み込まれた核酸、DNAおよびRNA断片、プラスミノーゲン活性化因子インヒビター−1、プラスミノーゲン活性化因子インヒビター−2、アンチセンス・オリゴヌクレオチド、VEGF阻害剤、IGF−1、例えばセファドロキシル、セファゾリン、セファクロル、セフォタキシン(cefotaxin)、トブラマイシン、ゲンタマイシン、例えばジクロキサシリンのようなペニシリン、オキサシリン、サルファ剤、メトロニダゾールからなる抗生物質(antibiotics)の群より選ばれた活性物質、例えばアルガトロバンのような抗血栓剤、アスピリン、アブシキシマブ、合成されたアンチトロンビン、ビバリルジン、クマジン、エノキソパリン(enoxoparin)、脱硫酸化(desulphated)およびN−再アセチル化(reacetylated)されたヘパリン、組織プラスミノーゲン活性化因子、GpIIb/IIIa 血小板層レセプター、ファクターXa阻害抗体、ヘパリン、ヒルジン、r−ヒルジン、PPACK、プロタミン、プロウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ワルファリン、ウロキナーゼ、例えばジピラミドールのような血管拡張薬、トラピジル、ニトロプルシド、例えばトリアゾロピリミジンおよびセラミンのようなPDGFアンタゴニスト、例えばカプトプリルのようなACE阻害剤、シラザプリル、リシノプリル、エナラプリル、ロサルタン、チオプロテアーゼ阻害剤(thioprotease inhibitors)、プロスタサイクリン、バピプロスト、インターフェロンα、βおよびγ、ヒスタミン アンタゴニスト、セロトニンブロッカー、アポトーシス阻害剤、例えばp65、NF−kBまたはBcl−xL アンチセンス・オリゴヌクレオチドのようなアポトーシスレギュレーター、ハロフジノン、ニフェジピン、トコフェロール、トラニラスト、モルシドミン、茶成分ポリフェノール、エピカテキン・ガレート、エピガロカテキン・ガレート、ボズウェラ酸およびその誘導体、レフルノミド、アナキンラ、エタネルセプト、スルファサラジン、エトポシド、ジクロキサシリン、テトラサイクリン、トリアムシノロン、ムタマイシン、プロカイナミド、レチノイン酸、キニジン、ジソピラミド、フレカイニド、プロパフェノン、ソタロール、アミドロン、例えばブリオフィリン(bryophyllin)Aのような天然および合成的に得られたステロイド、イノトジオール(inotodiol)、マキロシド(maquiroside)A、ガラキノシド(ghalakinoside)、マンソニン(mansonine)、ストレブロシド(strebloside)、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、例えばフェノプロフェン(fenoporfen)のような非ステロイド化合物(NSAIDS)、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセン、フェニルブタゾン、例えばアシクロビル、ガンシクロビルおよびジドブジンのようなその他の抗ウイルス剤、例えばクロトリマゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、ケトコナゾール、ミコナゾール、ニスタチン、テルビナフィンのような抗かび剤、例えばクロロキン、メフロキン、キニーネのようなアンチプロゾール作用物質、さらに、例えばヒッポカエスクリンのような天然のテルペノイド、バリントゲノール−C21−アンゲレート、14−デヒロドアグロスチスタチン、アグロスケリン、アガロスチスタチン、17−ヒドロキシアグロスチスタチン、オヴァトジオライド、4、7−オキシシクロアニソメリック・アシッド、バッカリノイドB1、B2、B3およびB7、トゥベイモシド、ブルセノールA、BおよびC、ブルセアンチノシドC、ヤダンジオシドNおよびP、イソデオキシエレファントピン、トメンファントピンAおよびB、コロナリンA、B、CおよびD、ウルソール酸、ヒプタチック酸A、ゼオリン、イソ−イリドジャーマナル、メイテンフォリオル、エフサンチンA、エキシサニンAおよびB、ロンギカウリンB、スカルポネアチン C、カメバウニン、ロイカメニンAおよびB、13、18−デヒドロ−6−α−シネシオイルオキシシャパリン、タクサマイリンAおよびB、レジェニロール、トリプトライド、さらに、シマリン、アポシマリン、アリストロキア酸、アノプテリン、ヒドロキシアノプテリン、アネモニン、プロトアネモニン、ベルベリン、チェリブリン・クロライド、シクトキシン、シノコクリン、ボムブレスタチンAおよびB、クドライソフラボンA、クルクミン、ジヒドロニチジン、塩化ニチジン、12−β−ヒドロキシプレグナジエン−3、20−ジオン、ビロボール、ギンコール、ギンコール酸、ヘレナリン、インジシン、インジシン−N−オキシド、ラシオカルピン、イノトジオール、グリコシド 1a、ポドフィロトキシン、ジャスチシジンAおよびB、ラレアチン、マロテリン、マロトクロマノール、イソブチリルマロトクロマノール、マキロシドA、マーチャンチンA、メイタイシン、リコリジシン、マルゲチン、パンクラチスタチン、リリオデニン、ビスパーセノリジン(bisparthenolidine)、オクソウシンスニン、アリストラクタム−AII、ビスパーセノリジン、ペリプロコシドA、ガラキノシド、ウルソール酸、デオキシソロスパミン、サイコルビン、リシンA、サンギナリン、マンウ ホウィート・アシッド、メチルソルビフォリン、スファセリアクロメン、スチゾフィリン、マンソニン、ストレブロシド、アカゲリン、ジヒロドウサムバレンシン、ヒドロキシウサムバリン、ストリクノペンタミン、ストリクノフィリン、ウサムバリン、ウサムバレンシン、ベルベリン、リリオデニン、オクソウシンスニン、ダフノレチン、ラリシレシノール、メトキシラリシレシノール、シリンガレジノール、ウンベリフェロン、アフロモソン、アセチルビスミオン B、デスアセチルビスミオンA、ビスミオンAおよびB、からなる群より選択されたものであること、
を特徴とする医療装置。
【請求項41】
請求項40の医療用機器であって、利用される活性物質として、タクロリムス、ピペクロリムス、PI 88、サイモシン a-1、PETN、バッカチン(baccatine)およびその誘導体、ドセタキセル, コルヒチン、パクリタキセルおよびその誘導体、トラピジル、α−およびβ−エストラジオール、ダームシジン, チアリン-ナトリウム(sodium)、シンバスタチン,大環状のサブオキサイト(macrocyclic suboxide) (MCS) およびその誘導体、シロリムス、チルフォスチン、D24851、コルヒチン、フマル酸およびそのエステル、活性化プロテイン (aPC)、インターロイキン1β阻害剤、またはメラニン細胞刺激ホルモン(α−MSH)(melanocyte stimulating hormon (a-MSH) )、またはそれらの活性物質の混合物、が考慮されること、
を特徴とする医療用機器。
【請求項42】
請求項34から41のいずれか一つの医療用機器であって、前記医療用機器は、人工器官、器官、血管、大動脈、心臓弁、管、器官予備部品、インプラント、繊維(fibers)、中空糸、ステント、中空針(hollow needles)、シリンジ、メンブレン(membranes)、缶詰商品(tinned goods)、血液容器(blood containers)、滴定のプレート(titrimetric plates)、ペースメーカー、吸収媒体、クロマトグラフィー媒体、クロマトグラフィーカラム、透析器、連結部品(connexion parts)、センサー(sensors)、バルブ、遠心用のチャンバー(centrifugal chambers)、熱交換器(recuperators)、内視鏡、フィルター、またはポンプのチャンバー(pump chambers)を含むこと、
を特徴とする医療用機器。
【請求項43】
請求項42の医療用機器であって、前記医療用機器がステントであることを特徴とする医療用機器。
【請求項44】
請求項43のステントであって、前記ポリマーは、0.01mgから3mg/層(layer)(層当たり)、好ましくは0.20mgから1mg/層、特に好ましくは0.2mgから0.5mg/層の量で付着されること、
を特徴とするステント。
【請求項45】
請求項43または44のステントであって、前記抗増殖性、抗炎症性、および/または抗血栓性の活性物質は、ステント表面1平方センチ当たり0.001から10mgの薬学的活性濃度(pharmaceutically active concentrations)を含むこと、
を特徴とするステント。
【請求項46】
再狭窄の防止、またはそれを低下させるための、請求項43から45のいずれか一つの前記ステントの使用方法。
【請求項47】
少なくとも、抗増殖性、抗炎症性、および/または、抗血栓性の活性物質を連続的に放出するための、請求項43から46のいずれか一つの前記ステントの使用方法。
【請求項48】
血液に直接接触させるための、請求項34から41のいずれか一つの前記医療用機器の使用方法。
【請求項49】
前記医療用機器のコートされた表面にタンパク質が接着することを防止、またはそれを低下させるための、請求項34から41のいずれか一つの前記医療用機器の使用方法。
【請求項50】
請求項48または49の前記使用方法であって、診断上の検出方法に利用するための、マイクロタイター(microtiter)のプレート、または他の支持媒体(carrier media)の血液親和的にコートされた表面が、非特異的なタンパク質の付着を防止またはそれを低下させること、
を特徴とする使用方法。
【請求項51】
請求項48または49の使用方法であって、吸着媒体(adsorber media)またはクロマトグラフィー媒体の前記血液親和的にコートされた表面が、非特異的なタンパク質の付着を防止またはそれを低下させること、
を特徴とする使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−189649(P2010−189649A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76668(P2010−76668)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【分割の表示】特願2004−503070(P2004−503070)の分割
【原出願日】平成15年4月15日(2003.4.15)
【出願人】(504150209)ヘモテック アーゲー (12)
【氏名又は名称原語表記】Hemoteq AG
【Fターム(参考)】