説明

血液量測定方法、血液量測定装置及び血液量測定プログラム

【課題】 従来では実質的には少なくとも1回の校正用CO値(心拍出量)を入力する校正を必要としていたものを校正用のCO値の入力をせずに、患者の酸素代謝量に関する個人特定情報の入力によって、患者の心拍出量を求めて校正に使用する血液量測定方法、血液量測定装置及び血液量測定プログラムを実現する。
【解決手段】 患者の個人特定情報を入力するステップと、当該患者の心拍出量に関する酸素代謝量を推定するステップと、推定した酸素代謝量に基づいて心拍出量を測定するステップとを含むことを特徴とする血液量測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓の拍動により駆出される血液量を測定する血液量測定方法、血液量測定装置及び血液量測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設において、その手術室,集中治療室,救急処置室,人工透析室などにいる患者に対して、循環動態の変動に対する監視は、できる限り連続的に行う必要がある。
従来、このような患者の循環動態の変動に対する監視は、主として、直接的な血圧監視をすることによって行われていた。
生体は中枢部の血圧が一定の範囲に収まるように心拍出量、血管抵抗を調節しているものである。
したがって、早期に患者の循環動態の変動を知るためには、直接的な血圧監視のみでは充分でなく、また血圧に変化が見られたときに、その原因を知る必要がある。
そのために、血圧の変化を監視する以外に、心拍出量の変化を監視する必要がある。
【0003】
患者の循環動態の変動を非侵襲で連続的に常時監視することができ、さらに、カテーテルの挿入など、熟練した医療従事者の技術が不要で、患者に対する苦痛が少なく、侵襲しないので感染の恐れがなく、且つ低コストの血液量測定方法、測定装置及び生体信号モニタ装置が知られている。(特許文献1参照)
【0004】
上記特許文献1には、心臓の拍動により駆出される血液量(心拍出量)を測定する原理について以下の記載がなされている。
図6に示すウィンドケッセルモデルを用いると大動脈に収縮期に流入した流量、つまり一回拍出量SVから収縮期に末梢に流れ出た流量Qsを差し引いた流量SV−Qsは、大動脈コンプライアンスCと脈圧(この明細書では、脈圧とは、収縮期血圧値と拡張期血圧値との差を云う。)PPで表される。
SV−Qs=C*PP 式1
【0005】
拡張期に末梢に流れ出る流量Qdは、SV−Qsと等しい。
またQs、Qdはそれぞれ収縮期、および拡張期の動脈圧Vを血管抵抗Rで割って、収縮期時間Ts及び拡張期時間Tdを掛け合わせたものになるが、簡易的にそれぞれ、Ts、Tdに比例すると考えると、
(Qd=)SV−Qs=SV*Td/(Ts+Td) 式2
で表される。
【0006】
式1、式2より
SV*Td/(Ts+Td)=C*PP
∴SV=C*PP*(1+Ts/Td) 式3
【0007】
ここで、測定期間中、CとTs/Tdが変わらないとしてC*(1+Ts/Td)をKとおくと、
SV=K*PP 式4
∴PP=SV*1/K式5
このようにウィンドケッセルモデルに従うと脈圧はSVに比例することになる。
【0008】
実際には実測される脈圧PP1は式5に基づく脈圧PP2(式5ではPPとおいたが、以下の説明ではPP2とおく)と血管収縮薬を用いたときなどに見られる脈圧の増高分PP3から成り立ち式6のようになる。
PP1=PP2+PP3 式6
【0009】
仮にPP3がないとしたら、式4、式6から
SV=K*PP1 式7
となり、実測した血圧からSVが実測できることになるが、血管収縮薬を用いるときなどはPP1がPP3を含んでしまうので、SVを過大に評価してしまう。
そのことが血圧からSVを算出する場合の問題点となっていた。
【0010】
また、上述の如く、観血的に測定される動脈血圧波形から一回拍出量さらには心拍出量を計算から求める装置の測定精度について、「手術後のICU(集中治療室)に入室した患者において、血管収縮薬フェニレフリンの投与によって血管抵抗が約60%変化したときに先に示した装置の測定値は、スタンダードとして用いられている熱希釈方式の心拍出量計の測定値よりも顕著に高いバイアスが現れたので、そのようなに時には熱希釈方式の心拍出量計により再校正する必要があること。」が報告されている。尚血管収縮薬を用いるときなどは末梢側からの反射波の影響で脈圧が増高することが知られており、PP3はそれらに相当するものである。
【0011】
心電図から末梢のSPO2脈波までの到達時間である脈波伝播時間(以下PWTT)は以下の成分から成り立つ。
PWTT=PEP+PWTT1+PWTT2 式8
【0012】
ここで、図11に示す如く、PEPは心臓の前駆出時間で、心臓が電気的な興奮を開始してから大動脈弁が開くまでの時間である。
また、PWTT1は大動脈弁が開いて大動脈に脈波が発生してから通常観血的に血圧測定等を行っている末梢側の動脈に伝播するまでの時間である。
また、PWTT2は脈波が末梢側の動脈からさらに末梢の光電脈波を計測している血管に伝播するまでの時間である。
【0013】
我々は、成犬10頭でPEP+PWTT1としてECGのR波から大腿動脈脈波の立ち上がりまでの時間を測定して、PEP+PWTT1の時間と血圧の関係を血管収縮薬投与を条件として含んで、血管拡張薬投与や心臓の収縮力増強、心臓の収縮力減弱、脱血の各条件下で測定して、脈圧PP1とPEP+PWTT1の時間の間に良い相関のあることを見出した。
図7は、代表的なPWTTと脈圧(PP)(Pulse-Pressure)の関係を示す図である。
【0014】
したがって、脈圧PP1とPEP+PWTT1の間の関係は式9のように表すことができる。
PEP+PWTT1=a*PP1+b 式9
またPWTT2とPP1の関係を式10のようにおいた。
PWTT2=c*PP1+d+e 式10
【0015】
血管収縮薬を用いること等によりPP3が現れた時にはその他の条件の時に比べてPWTT2は、延長する傾向があることを見出したので、その延長に相当する分をeとおいた。(ここで、eは定数とは限らない。)
【0016】
そこで、式8を式9、式10で書き換えると
PWTT=(a*PP1+b)+(c*PP1+d+e)
∴ PP1=1/(a+c)*(PWTT−b−d−e) 式11
【0017】
式6におけるPP2に式5の右辺を代入すると
PP1=SV*1/K+PP3 式12
式11、式12より
1/(a+c)*PWTT−(b+d)/(a+c)=SV*1/K+PP3+e/(a+c)
∴SV=K*(1/(a+c)*PWTT−(b+d)/(a+c))−K*(PP3+e/(a+c))式13
【0018】
上述の如く、血管収縮薬を用いるなどしてPP3が現れる時にはPWTT2が延長傾向になることを実験的に見出したので、その関係を図10に示す。
フェニレフリンを投与すると、図10に示す如く、PP3が現れて、PP1は増大していくが、PWTT2 とPP1の間には脱血時やペントバルビタール投与時のような関係はもはやフェニレフリン投与時には見られなくなり、PWTT2は延長傾向になる。
したがって、図9のようにフェニレフリン投与時でもSVとPWTTの間には他の条件下と同様な負の相関関係が保たれているので、式13の右辺第二項K*(PP3+e/(a+c))
はほぼ無視できることを実験的に見出した。
【0019】
そこで1/(a+c)=α、−(b+d)/(a+c)=β とおくと
SV=K*(α*PWTT+β) 式14
α、βは実験的に求められる患者に固有の係数である。
【0020】
さらに心拍出量を以下の式で計算できる。
esCO=K*(α*PWTT+β)*HR 式15
ここでesCOはL/minで表される心拍出量であり、Kは実験的に求められる患者に固有な定数である。
【0021】
なお、式15は式16のようにも置き換えられる。
esCO=(αK*PWTT+βK)*HR 式16
αK、βKは実験的に求められる患者に固有な係数である。
【0022】
式14,式15及び式16のようにPWTTを用いてSV及びesCOを算出すると、図8に示すように血管収縮薬を用いるなどの脈圧が増高するような時でも、図9に示すようにSVとPWTTの間には他の条件と同様な関係が保たれているので、従来の血圧を用いてSVを算出する場合に見られる問題点が解決できる。
当然COも過大に評価されることはない。
図8、図9は動物実験で血管収縮時、脱血、心抑制時に測定したSVとPP1、及びSVとPWTTの関係である。
なお、フェニレフリン投与時には、60%を超える血管抵抗の増加があった。
【0023】
次に、従来の血液量測定方法を適用した生体信号モニタ装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図12は生体信号モニタ装置の一実施形態の構成を説明するためのブロック図であり、図13は、従来の生体信号モニタ装置による測定形態の一例を説明する模式図である。
図11は、測定された各脈波の波形を示す図である。
【0024】
収縮・拡張期血圧測定手段20は、図12に示すように、カフ25、加圧ポンプ27、圧力センサ28、カフ圧検出部29、A/D変換器22等により構成されている。
【0025】
具体的には、図13に示すように、カフ25を患者の上腕部に装着して測定を行う。
このカフ25は、生体信号モニタ装置本体10内に設けられた排気弁26によってその内部が大気に対して開放または閉塞される。
また、カフ25には、生体信号モニタ装置本体10内に設けられた加圧ポンプ27によって空気が供給される。
生体信号モニタ装置本体10内には圧力センサ28(カフ脈波センサ)が取り付けられており、このセンサ出力がカフ圧検出部29によって検出される。
このカフ圧検出部29の出力は、A/D変換器22によってディジタル信号に変換され、心拍出量演算手段40に取り込まれる(図13においては、カフ圧検出部29、A/D変換器22、心拍出量演算手段40は、生体信号モニタ装置本体10内に含まれる)。
【0026】
図11(a)は心電図波形であり、心臓から出た直後の大動脈圧は、図11(b)に示すような波形となる。
また、図11(c)(d)に示すような末梢側動脈波形及び末梢脈波波形が得られる。
【0027】
脈波伝播時間測定手段30は、図12に示すように、時間間隔検出基準点測定手段31、A/D変換器32、光電脈波検出センサ33、脈波検出部34、A/D変換器35、等により構成されている。
【0028】
時間間隔検出基準点測定手段31は、心電図のR波の発生時点を検出するためのものであり、この検出部の出力は、A/D変換器32によりディジタル信号に変換されて、心拍出量演算手段40に取り込まれる。
この時間間隔検出基準点測定手段31は、具体的には、図13に示すような、被験者の胸部に装着される心電図電極31a(心電図測定手段)からなる。
この心電図電極31aと電気的に接続された測定データ送信器50から、測定データが生体信号モニタ装置本体10に無線送信される。
この送信された測定データは、生体信号モニタ装置本体10内のA/D変換器32によりディジタル信号に変換されて、心拍出量演算手段40に取り込まれる。このようにして、図11(a)に示すような心電図波形が得られる。
【0029】
一方、光電脈波検出センサ33は、図13に示すように、指など患者の末梢部に装着し、例えば、SPO2測定等を行い、脈波伝播時間を得るものである。
この光電脈波検出センサ33は、測定データ送信器50と電気的に接続され、測定データ送信器50は、生体信号モニタ装置本体10に測定データを無線送信する。
この測定データが、生体信号モニタ装置本体10内の脈波検出部34に送られることで、患者の装着部位の脈波(光電脈波)が検出される。
脈波検出部34の出力は、A/D変換器35によりディジタル信号に変換されて、心拍出量演算手段40に取り込まれる。
このようにして、図11(d)に示すような光電脈波の波形(末梢部の波形)が得られる。
【0030】
次に、前記式16、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算処理について
図14〜17を用いて説明する。
【0031】
先ず、初期値のαKを用いて、βKを校正で求めて、esCOを演算する手順を図14を用いて説明する。
・αKの初期値を読み込む。(ステップS1)
・PWTT及びHRを取得する。(ステップS2)
・次に、βKはあるか否かの判断をする。(ステップS3)
・ステップS3の判断がNOの場合、校正用のCO値の入力要求を表示する。(ステップS4)
・校正用のCO値が入力されたか否かの判断をする。(ステップS5)
・ステップS5の判断でYESの場合には、入力されたCO値と、取得したPWTT及びHRを、CO1,PWTT1及びHR1としてレジスタに格納する。(ステップS6)
・βK=CO1/HR1−αK*PWTT1の式によりβKを求める。(ステップS7)
・求めたβKを用いて、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算する。(ステップS8)
・ステップS3の判断がYESの場合も同様に、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算する。(ステップS8)
・演算で求めたesCOを表示する。(ステップS9)
上記処理を逐次繰り返す。
【0032】
次に、αK及びβKを校正で求めて、esCOを演算する手順を図15を用いて説明する。
・αKの初期値を読み込む。(ステップS1)
・PWTT及びHRを取得する。(ステップS2)
・次に、βKはあるか否かの判断をする。(ステップS3)
・ステップS3の判断がNOの場合、校正用のCO値の入力要求を表示する。(ステップS4)
・校正用のCO値が入力されたか否かの判断をする。(ステップS5)
・ステップS5の判断でYESの場合には、入力されたCO値と、取得したPWTT及びHRを、CO1,PWTT1及びHR1としてレジスタに格納する。(ステップS6)
・βK=CO1/HR1−αK*PWTT1の式によりβKを求める。(ステップS7)
・求めたβKを用いて、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算する。(ステップS8)
・ステップS3の判断がYESの場合、αKの再校正を行うか否かの判断をする。(ステップS10)
・ステップS10の判断でNOの場合、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算する。(ステップS8)
・ステップS10の判断がYESの場合、校正用のCO値の入力要求を表示する。(ステップS11)
・校正用のCO値が入力されたか否かの判断をする。(ステップS12)
・ステップS12の判断でYESの場合、入力されたCO値と、取得したPWTT及びHRを、CO2
,PWTT2及びHR2としてレジスタに格納する。(ステップS13)
・αK及びβKを
CO1=(αK*PWTT1+βK)*HR1
CO2=(αK*PWTT2+βK)*HR2
の2式より算出する。(ステップS14)
・求めたαK及びβKを用いて、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算する。(ステップS8)
・ステップS10の判断でNOの場合、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算する。(ステップS8)
・演算で求めたesCOを表示する。(ステップS9)
上記処理を逐次繰り返す。
【0033】
また、αが初期値で、β及びKを校正で求めて、esCOを演算する手順を図16を用いて説明する。(βの校正は、血管収縮薬投与等による脈圧の増高がない時に行う。)
・αの初期値を読み込む。(ステップS1)
・PWTT及びHRを取得する。(ステップS2)
・次に、βはあるか否かの判断をする。(ステップS15)
・ステップS15の判断でNOの場合には、校正用血圧測定要求を表示する。(ステップS16)
・校正用血圧測定が行われたか否かの判断をする。(ステップS17)
・ステップS17の判断でYESの場合には、測定されたPP値と、取得したPWTT及びHRをPP1,PWTT1,HR1としてレジスタに格納する。(ステップS18)
・β=PP1−α*PWTT1の式によりβを算出する。(ステップS19)
・ステップS15での判断がYESの場合及びステップS19でβを算出した後に、Kがあるか否かの判断をする。(ステップS20)
・ステップS20での判断がNOの場合には、校正用のCO値の入力要求を表示する。(ステップS21)
・校正用のCO値が入力されたか否かの判断をする。(ステップS22)
・ステップ22の判断でYESの場合には、入力されたCO値をCO1としてレジスタに格納する。
(ステップS23)
・K=CO1/(α*PWTT1+β)*HR1の式によりKを求める。(ステップS24)
・ステップS20での判断がYESの場合及びステップS24でKを算出した後に、esCO=K*(α*PWTT+β)*HRの式からesCOを求める演算する。(ステップS25)
・演算で求めたesCOを表示する。(ステップS26)
上記処理を逐次繰り返す。
【0034】
また、α,β及びKを校正で求めて、esCOを演算する手順を図17を用いて説明する。
(α,βの校正は、血管収縮薬投与等による脈圧の増高がない時に行う。)
・αの初期値を読み込む。(ステップS1)
・PWTT及びHRを取得する。(ステップS2)
・次に、βはあるか否かの判断をする。(ステップS15)
・ステップS15の判断でNOの場合、校正用血圧測定要求を表示する。(ステップS16)
・校正用血圧測定が行われたか否かの判断をする。(ステップS17)
・ステップS17の判断でYESの場合には、測定されたPP値と、取得したPWTT及びHRをPP1,PWTT1,HR1としてレジスタに格納する。(ステップS18)
・β=PP1−α*PWTT1の式によりβを算出する。(ステップS19)
・ステップS15の判断でYESの場合、αを再校正するか否かの判断をする。(ステップS27)
・ステップS27の判断でYESの場合、校正用血圧の測定要求を表示する。(ステップS28)
・校正用血圧測定が行われたか否かの判断をする。(ステップS29)
・ステップS29の判断でYESの場合、測定されたPP値と、取得したPWTT及びHRをPP2,PWTT2,HR2としてレジスタに格納する。(ステップS30)
・PP1=α*PWTT1+β
PP2=α*PWTT2+β
の2式よりα及びβを算出する。(ステップS31)
・ステップS27の判断がNOの場合及び、ステップS19及びステップS31の処理後、Kはあるか否かの判断をする。(ステップS20)
・ステップS20での判断がNOの場合、校正用のCO値の入力要求を表示する。(ステップS21)
・校正用のCO値が入力されたか否かの判断をする。(ステップS22)
・ステップS22の判断でYESの場合、入力されたCO値をCO1としてレジスタに格納する。(ステップS23)
・K=CO1/(α*PWTT1+β)*HR1の式によりKを求める。(ステップS24)
・ステップS20での判断がYESの場合及び、ステップS24でKを算出した後に、
esCO=K*(α*PWTT+β)*HRの式からesCOを求める演算する。(ステップS25)
・演算で求めたesCOを表示する。(ステップS26)
上記処理を逐次繰り返す。
【0035】
なお、校正用血圧測定を行わずに、他の血圧計で測定した血圧値をキー入力しても良い。また、末梢の脈波はSpO2脈波以外にも容積変化を表すものを含む。
【0036】
上述の如く、特許文献1では、患者の循環動態の変動を非侵襲で連続的に常時監視することができ、さらに、カテーテルの挿入など、熟練した医療従事者の技術が不要であり、患者に対する苦痛が少なく、侵襲しないので感染の恐れがなく、且つ低コストの血液量測定方法、測定装置及び生体信号モニタ装置が実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】
【特許文献1】特開2005−312947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
上記特許文献1に記載の血液量測定方法、測定装置及び生体信号モニタ装置でも、従来のものよりも改良はされているが、実質的には少なくとも1回の校正用CO値を入力する校正を必要とするので、高度な医療従事者の技術が要求されること、患者への侵襲度の高さを考えると、到底、手軽に連続して行えることができず、これらの方法により、患者の循環動態の変動を連続的に常時監視することは困難であるという問題を有していた。
【0039】
本発明の課題(目的)は、従来では実質的には少なくとも1回の校正用CO値(心拍出量)を入力する校正を必要としていたものを 校正用のCO値の入力をせずに、患者の酸素代謝量に関する個人特定情報の入力によって、患者の心拍出量を求めて校正に使用する血液量測定方法、血液量測定装置及び血液量測定プログラムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0040】
前記課題を解決するために、本発明の血液量測定方法は、患者の個人特定情報を入力するステップと、当該患者の心拍出量に関する酸素代謝量を推定するステップと、推定した酸素代謝量に基づいて心拍出量を測定するステップと、を含むことを特徴とする。
【0041】
また、前記個人特定情報は、患者の体表面積、年齢、性別、血圧、心拍数、脈波伝播速度であることを特徴とする。
【0042】
また、下記の
CO=a+b*Sex+c*Age+d*BSA+e*PWTT+f*HR*PP
式から心拍出量を求めるステップを含むことを特徴とする。
但し、COは心拍出量、Sexは性別(男=1、女=-1)、Ageは年齢、BSAは体表面積、PWTTは脈波伝播時間、HRは心拍数、a、b、c、d、e、fは患者固有の係数である。
【0043】
また、校正のタイミングで入力された校正時の心拍数(HR1)及び血圧(PP)を使用して、
【数1】

式を用いて校正した心拍出量を求めるステップを含むことを特徴とする。
但し、HR0、PP0は、校正時点のHR、PPを示す。
α、βは患者に固有の係数で、a1、b1、c1、d1、e1は定数である。
【0044】
また、前記a1、b1、c1、d1、e1はあらかじめ複数の被験者における個人特定情報と実際のCO値から重回帰分析法により求めるステップを含むことを特徴とする。
【0045】
また、心拍出量に関連する個人特定情報には校正時点の脈波伝播時間を含み、
【数2】

式を用いて校正した心拍出量を求めるステップを含むことを特徴とする。
但し、HR0、PP0、PWTT0は、校正時点のHR、PP、PWTTを示す。
α、βは患者に固有の係数で、a2、b2、c2、d2、e2、f2は定数である。
【0046】
また、前記a2、b2、c2、d2、e2、f2はあらかじめ複数の被験者における個人特定情報と実際のCO値から重回帰分析法により求めるステップを含むことを特徴とする。
【0047】
また、本発明の血液量測定装置は、患者の個人特定情報を入力して、当該患者の心拍出量に関する酸素代謝量を推定し、推定した酸素代謝量に基づいて心拍出量を測定する血液量測定装置であって、時間間隔検出基準点測定手段と、脈波検出手段と、前記時間間隔検出基準点測定手段又は脈波検出手段から心拍数を演算する心拍数演算手段と、少なくとも患者の年齢、性別、BSAを入力する入力手段と、及び血圧値入力又は血圧測定手段とを備えることを特徴とする。
【0048】
また、前記血液量測定装置は、校正のタイミングを入力するタイミング入力手段を備えることを特徴とする。
【0049】
また、前記時間間隔検出基準点測定手段は心電図測定手段であることを特徴とする。
【0050】
また、本発明の血液量測定プログラムは、請求項1〜7の各ステップを血液測定装置に搭載されたコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、校正用CO値を入力する校正処理を必要はしないので、手軽に連続して行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の生体信号モニタ装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】本発明の初期値のαKを用いて、βKを校正して、esCOを演算する手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明のαK,βKを校正して、esCOを演算する手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の初期値のαを用いて、β,Kを校正して、esCOを演算する手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明のK,α,βを校正して、esCOを演算する手順を示すフローチャートである。
【図6】ウィンドケッセルモデルを示す図である。
【図7】代表的なPWTTと脈圧(PP)(Pulse-Pressure)の関係を示す図である。
【図8】動物実験で血管収縮時、脱血、心抑制時に測定したSVとPP1の関係を示す図である。
【図9】動物実験で血管収縮時、脱血、心抑制時に測定したSVとPWTTの関係を示す図である。
【図10】動物実験で血管収縮時、脱血、心抑制時に測定したPP1とPWTT2の関係を示す図である。
【図11】PEP,PWTT1,PWTT2,PWTTの関係を示す図である。
【図12】従来の生体信号モニタ装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図13】心電図計測手段及び末梢脈波検出手段の患者への装着状態の1例を示す図である。
【図14】従来の初期値のαKを用いて、βKを校正して、esCOを演算する手順を示すフローチャートである。
【図15】従来のαK,βKを校正して、esCOを演算する手順を示すフローチャートである。
【図16】従来の初期値のαを用いて、β,Kを校正して、esCOを演算する手順を示すフローチャートである。
【図17】従来のK,α,βを校正して、esCOを演算する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の特徴は、従来では実質的には少なくとも1回の校正用CO値(心拍出量)を入力する校正を必要としていたものを 校正用のCO値の入力をせずに、患者の酸素代謝量に関する個人特定情報の入力によって、患者の心拍出量を求めて校正に使用するものである。
【0054】
そこで、本発明で使用する心拍出量に関係する個人特定情報であって患者の酸素代謝量に関連する個人特定情報について以下に述べる。心拍出量は生体の酸素代謝量に応じて、心臓から酸素を含む血液の拍出量のコントロールがなされている。従って、生体の酸素代謝量に関する情報は、直接心拍出量を反映するものではないが、心拍出量に関連している。
【0055】
本発明では、患者の酸素代謝量に関連する個人特定情報として、体表面積,年齢,性別,血圧,心拍数及び脈波伝播速度を使用する。
【0056】
・心拍出量は人体の酸素消費量あるいは代謝率に主として支配され、代謝率は体表面積によってもっともよく補正されると考えられる。
・人体の代謝率は年齢に左右され、小児期に最高で、年齢を増すに従い減少していく。
・心拍出量、心係数は年齢に逆相関する。ここで、心係数とは、心拍出量を体表面積で割ったものである。
・女性は男性よりも基礎代謝率が低い。(基礎代謝と性別・年齢)
・心筋酸素消費量は一般には心拍数と収縮期圧の積(すなわち二重積)を指標としている。
・運動強度の増加とともに平均血圧は漸増する。特に収縮期圧の上昇が著しく、拡張期圧はわずかに上昇するにすぎない。従って心筋酸素消費量は心拍数と収縮期圧と拡張期圧の差分、脈圧と心拍数の積といってもよい。
・脈波伝播速度は、脈波伝播時間の逆数となる。
脈波伝播速度は以下のように表される。
脈波伝播速度=3.57/√(血圧の増加に対する容積増加のパーセント)
血管の伸展性が高い場合には、血圧の増加に対する容積増加のパーセントが大きくなり、 脈波伝播速度は小さくなる。つまり同じ血圧変化に対して、心拍出量の変化の大小は脈波伝播速度に反映されることになる。つまり、心拍出量の変化は脈波伝播時間に反映されることになる。
また、加齢により、脈波伝播速度が変化することも知られている。
【0057】
本発明の校正用心拍出量演算は、統計解析の重回帰分析の手法を用いて、その係数及び定数を複数の被経者について求める。
CALC-CO=a+b*性別+c*年齢+d*BSA+e*PWTT+f*HR*PP
a=1.18,b=0.061,c=-0.0267,d=3.26,e=-0.011,f=0.000487,男=1,女=-1
【0058】
次に、本発明の血液量測定方法を適用した生体信号モニタ装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の生体信号モニタ装置の一実施形態の構成を説明するためのブロック図である。
【0059】
収縮・拡張期血圧測定手段は、図1に示すように、カフ25、加圧ポンプ27、圧力センサ28、カフ圧検出部29、A/D変換器22等により構成されている。
【0060】
具体的には、カフ25を患者の上腕部に装着して測定を行う。このカフ25は、生体信号モニタ装置本体内に設けられた排気弁26によってその内部が大気に対して開放または閉塞される。また、カフ25には、生体信号モニタ装置本体内に設けられた加圧ポンプ27によって空気が供給される。生体信号モニタ装置本体内には圧力センサ28(カフ脈波センサ)が取り付けられており、このセンサ出力がカフ圧検出部29によって検出される。このカフ圧検出部29の出力は、A/D変換器22によってディジタル信号に変換され、心拍出量演算手段40に取り込まれる。
【0061】
脈波伝播時間測定手段は、時間間隔検出基準点測定手段31、A/D変換器32、光電脈波検出センサ33、脈波検出部34、A/D変換器35、等により構成されている。
【0062】
時間間隔検出基準点測定手段31は、心電図のR波の発生時点を検出するためのものであり、この検出部の出力は、A/D変換器32によりディジタル信号に変換されて、心拍出量演算手段40に取り込まれる。この時間間隔検出基準点測定手段31は、被験者の胸部に装着される心電図電極31a(心電図測定手段)からなる。この心電図電極31aと電気的に接続された測定データ送信器50から、測定データが生体信号モニタ装置本体10に無線送信される。この送信された測定データは、生体信号モニタ装置本体10内のA/D変換器32によりディジタル信号に変換されて、心拍出量演算手段40に取り込まれる。このようにして心電図波形が得られる。
【0063】
一方、光電脈波検出センサ33は、指など患者の末梢部に装着し、例えば、SpO2測定等を行い、脈波伝播時間を得るものである。この光電脈波検出センサ33は、測定データが、生体信号モニタ装置本体10内の脈波検出部34に送られることで、患者の装着部位の脈波(光電脈波)が検出される。
脈波検出部34の出力は、A/D変換器35によりディジタル信号に変換されて、心拍出量演算手段40に取り込まれる。このようにして、光電脈波の波形(末梢部の波形)が得られる。
【0064】
17−1は入力手段1であって、本発明の特徴である患者の酸素代謝量に関連する個人特定情報としての体表面積,年齢,性別を入力する手段である。
17−2は別の入力手段2であって、校正のタイミング入力をする手段である。
【0065】
次に、本発明のesCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを求める演算処理におけるα,β及びKの校正について図2〜5を用いて説明する。
【0066】
フローチャートの説明に先だって、K、α、βについての技術的意義について述べる。
・Kについて
特許文献1(特開2005-312974)の式4の、
S V= K×P P より
K=SV/PP
Kは、SV(心臓の一回の拍出量)に対するPP(脈圧)の比の逆数となる。
血管が硬い人ほどKは小さくなる。Kを求めることにより、心臓の一回拍出量と脈圧の関係の個人差を補正できる。
・αについて
PP=α×PWTT+β より、
α=ΔPP/ΔPWTT
αは、PWTTの変化分に対するPPの変化分の比となる。
血管の硬いヒトほどαは大きくなる。αを求めることにより、血管の硬さによるPWTTの変化分とPPの変化分の関係の個人差を補正できる。動物の種別により異なるが、同一種別では一定と考えても差し支えない。
・βについて
PP=α×PWTT+β より、
β=PP―α×PWTT
βは、血管の長さと血管の硬さを反映する。βを求めることにより、血管の長さと血管の硬さの個人差を補正できる。
・Kαについて
特許文献1(特開2005-312974)の式14の、
SV= K* ( α * PWTT+ β ) より
Kα=ΔSV/ΔPWTT
Kαは、SVの変化分に対するPWTTの変化分の比の逆数となる。
血管の硬い人ほど、Kは小さくなるのに対して、αは大きくなるので、Kαは血管の硬さに伴う個人差を吸収した係数となる。Kαを求めることにより、SVの変化分とPWTTの変化分の関係の個人差を補正できる。
・Kβについて
SV= K* ( α * PWTT+ β ) より
Kβ=SV-K*α*PWTT
Kβは血管の長さと血管の硬さを反映する。Kβを求めることにより、血管の長さと血管の硬さの個人差を補正できる。
【0067】
先ず、初期値のαKを用いてβKを校正で求め、esCOを演算する手順を図2を用いて説明する。
・患者特定情報(性別、年齢、身長、体重)の読み込む。(ステップS51)
・αKの初期値を読み込む。(ステップS52)
・PWTT及びHRを取得する。(ステップS53)
・次に、βKはあるか否かの判断をする。(ステップS54)
・ステップS54の判断がNOの場合、校正用の血圧測定要求を表示する。(ステップS55)
・校正用の血圧が測定されたか否かの判断をする。(ステップS56)
・ステップS56の判断でYESの場合には、測定された血圧(PP)値と、ステップS53で取得したPWTT及びHRを、PP1,PWTT1及びHR1としてレジスタに格納する。(ステップS57)
・以下の式を用いてCO1を算出する。(ステップS58)
CO1=a+b*性別+c*年齢+d*BSA+e*PWTT1+f*HR1*PP1
但し、BSA(体表面積)=0.007184*(身長)∧0.725*(体重)∧ 0.425
性別:男=1,女=-1
・以下の式でβKを算出する。(ステップS59)
βK=CO1/HR1−αK*PWTT1
・求めたβKを用いて、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを演算する。(ステップS60)
・ステップS53の判断がYESの場合も同様に、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを演算する。(ステップS60)
・演算で求めたesCOを表示する。(ステップS61)
上記処理を逐次繰り返す。
【0068】
次に、αK及びβKを校正で求めて、esCOを演算する手順を図3を用いて説明する。
・患者特定情報(性別、年齢、身長、体重)の読み込む。(ステップS51)
・αKの初期値を読み込む。(ステップS52)
・PWTT及びHRを取得する。(ステップS53)
・次に、βKはあるか否かの判断をする。(ステップS54)
・ステップS54の判断がNOの場合、校正用の血圧測定要求を表示する。(ステップS55)
・校正用の血圧が測定されたか否かの判断をする。(ステップS56)
・ステップS56の判断でYESの場合には、測定された血圧(PP)値と、ステップS53で取得したPWTT及びHRを、PP1,PWTT1及びHR1としてレジスタに格納する。(ステップS57)
・以下の式を用いてCO1を算出する。(ステップS58)
CO1=a+b*性別+c*年齢+d*BSA+e*PWTT1+f*HR1*PP1
但し、BSA(体表面積)=0.007184*(身長)∧0.725*(体重)∧ 0.425
性別:男=1,女=-1
・以下の式でβKを算出する。(ステップS59)
βK=CO1/HR1−αK*PWTT1
・求めたβKを用いて、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを演算する。(ステップS60)
・ステップS54の判断がYESの場合も同様に、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを演算する。(ステップS60)
・演算で求めたesCOを表示する。(ステップS61)
・ステップS54の判断がYESの場合、αKの再校正を行うか否かの判断をする。(ステップS63)
・ステップS62の判断でNOの場合、上記と同様に、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを演算する。(ステップS60)
・ステップS62の判断がYESの場合、校正用の血圧測定要求を表示する。(ステップS63)
・校正用の血圧が測定されたか否かの判断をする。(ステップS64)
・ステップS64の判断でYESの場合、測定された血圧(PP)値と、ステップS53で取得したPWTT及びHRを、PP2,PWTT2及びHR2としてレジスタに格納する。(ステップS65)
・以下の式を用いてCO1を算出する。(ステップS66)
CO2=a+b*性別+c*年齢+d*BSA+e*PWTT2+f*HR2*PP2
但し、BSA(体表面積)=0.007184*(身長)∧0.725*(体重)∧ 0.425
性別:男=1,女=-1
・以下の2式よりαK及びβKを算出する。(ステップS67)
CO1=(αK*PWTT1+βK)*HR1
CO2=(αK*PWTT2+βK)*HR2
・求めたαK及びβKを用いて、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを演算する。(ステップS60)
・ステップS62の判断でNOの場合にも、上記と同様に、esCO=(αK*PWTT+βK)*HRからesCOを演算する。(ステップS60)
・演算で求めたesCOを表示する。(ステップS61)
上記処理を逐次繰り返す。
【0069】
また、αが初期値で、β及びKを校正で求めて、esCOを演算する手順を図4を用いて説明する。(βの校正は、血管収縮薬投与等による脈圧の増高がない時に行う。)
・患者特定情報(性別、年齢、身長、体重)の読み込む。(ステップS71)
・αの初期値を読み込む。(ステップS72)
・PWTT及びHRを取得する。(ステップS73)
・次に、βはあるか否かの判断をする。(ステップS74)
・ステップS74の判断でNOの場合、校正用血圧測定要求を表示する。(ステップS75)
・校正用血圧測定が行われたか否かの判断をする。(ステップS76)
・ステップS76の判断でYESの場合、測定されたPP値と、取得したPWTT及びHRをPP1、PWTT1、HR1としてレジスタに格納する。(ステップS77)
・β=PP1−α*PWTT1の式によりβを算出する。(ステップS78)
・ステップS74での判断がYESの場合及びステップS78でβを算出した後に、Kがあるか否かの判断をする。(ステップS79)
・ステップS79での判断がNOの場合、以下の式を用いてCO1を算出する。(ステップS80)
CO1=a+b*性別+c*年齢+d*BSA+e*PWTT1+f*HR1*PP1
但し、BSA(体表面積)=0.007184*(身長)∧0.725*(体重)∧ 0.425
性別:男=1,女=-1
・K=CO1/(α*PWTT1+β)*HR1の式によりKを求める。(ステップS81)
・ステップS79での判断がYESの場合及び、ステップS81の処理後、esCO=K*(α*PWTT+β)*HRの式からesCOを演算する。(ステップS82)
・演算で求めたesCOを表示する。(ステップS83)
上記処理を逐次繰り返す。
【0070】
また、α,β及びKを校正で求めて、esCOを演算する手順を図5を用いて説明する。
(α,βの校正は、血管収縮薬投与等による脈圧の増高がない時に行う。)
・患者特定情報(性別、年齢、身長、体重)の読み込む。(ステップS71)
・αの初期値を読み込む。(ステップS72)
・PWTT及びHRを取得する。(ステップS73)
・次に、βはあるか否かの判断をする。(ステップS74)
・ステップS74の判断でNOの場合、校正用血圧測定要求を表示する。(ステップS75)
・校正用血圧測定が行われたか否かの判断をする。(ステップS76)
・ステップS76の判断でYESの場合、測定されたPP値と、取得したPWTT及びHRをPP1,PWTT1,HR1としてレジスタに格納する。(ステップS77)
・β=PP1−α*PWTT1の式によりβを算出する。(ステップS78)
・ステップS74での判断がYESの場合及び、ステップS78でβを算出した後に、Kがあるか否かの判断をする。(ステップS79)
・ステップS79での判断がNOの場合、以下の式を用いてCO1を算出する。(ステップS80)
CO1=a+b*性別+c*年齢+d*BSA+e*PWTT1+f*HR1*PP1
但し、BSA(体表面積)=0.007184*(身長)∧0.725*(体重)∧ 0.425
性別:男=1,女=-1
・K=CO1/(α*PWTT1+β)*HR1の式よりKを求める。(ステップS81)
・ステップS79での判断がYESの場合及びステップS81の処理後、esCO=K*(α*PWTT+β)*HRの式からesCOを演算する。(ステップS82)
・演算で求めたesCOを表示する。(ステップS83)
上記処理を逐次繰り返す。
・ステップS74の判断でYESの場合、αを再校正するか否かの判断をする。(ステップS90)
・ステップS90の判断でYESの場合、校正用血圧の測定要求を表示する。(ステップS91)
・校正用血圧測定が行われたか否かの判断をする。(ステップS92)
・ステップS29の判断でYESの場合、測定されたPP値と、取得したPWTT及びHRをPP2,PWTT2,HR2としてレジスタに格納する。(ステップS93)
・下記の2式よりα及びβを算出する。(ステップS94)
PP1=α*PWTT1+β
PP2=α*PWTT2+β
・ステップS90の判断がNOの場合及び、Kはあるか否かの判断をする。(ステップS79)
【0071】
なお、校正用血圧測定を行わずに、他の血圧計で測定した血圧値をキー入力しても良い。また、末梢の脈波はSpO2脈波以外にも容積変化を表すものを含む。
【0072】
上記図2〜5のフローチャートに示す如く、本発明では、校正用CO値を入力する校正処理を必要としないので、手軽に連続して行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0073】
17−1,17−2 入力手段
20 収縮・拡張期血圧測定手段
22 A/D変換器
25 カフ
26 排気弁
27 加圧ポンプ
28 圧力センサ
29 カフ圧検出部
30 脈波伝播時間測定手段
31 時間間隔検出基準点測定手段
32 A/D変換器
33 光電脈波検出センサ
34 脈波検出部
35 A/D変換器
36 脈拍周期検出手段
40 心拍出量演算手段
41 表示部
42 アラーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の個人特定情報を入力するステップと、当該患者の心拍出量に関する酸素代謝量を推定するステップと、推定した酸素代謝量に基づいて心拍出量を測定するステップと、
を含むことを特徴とする血液量測定方法。
【請求項2】
前記個人特定情報は、患者の体表面積、年齢、性別、血圧、心拍数、脈波伝播速度であることを特徴とする請求項1に記載の血液量測定方法。
【請求項3】
下記の
CO=a+b*Sex+c*Age+d*BSA+e*PWTT+f*HR*PP
式から心拍出量を求めるステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の血液量測定方法。
但し、COは心拍出量、Sexは性別(男=1、女=-1)、Ageは年齢、BSAは体表面積、PWTTは脈波伝播時間、HRは心拍数を示し、a、b,c,d,e,fは患者固有の係数である。
【請求項4】
校正のタイミングで入力された校正時の心拍数(HR1)及び血圧のうち脈圧(PP)を使用して、
【数1】

式を用いて校正した心拍出量を求めるステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の血液量測定方法。
但し、HR0、PP0は、校正時点のHR、PPを示す。
α、βは患者に固有の係数で、a1、b1、c1、d1、e1は定数である。
【請求項5】
前記a1、b1、c1、d1、e1はあらかじめ複数の被験者における個人特定情報と実際のCO値から重回帰分析法により求めるステップを含むことを特徴とする請求項4に記載の血液量測定方法。
【請求項6】
心拍出量に関連する個人特定情報には校正時点の脈波伝播時間を含み、
【数2】

式を用いて校正した心拍出量を求めるステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の血液量測定方法。
但し、HR0、PP0、PWTT0は、校正時点のHR、PP、PWTTを示す。
α、βは患者に固有の係数で、a2、b2、c2、d2、e2、f2は定数である。
【請求項7】
前記a2、b2、c2、d2、e2、f2はあらかじめ複数の被験者における個人特定情報と実際のCO値から重回帰分析法により求めるステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の血液量測定方法。
【請求項8】
患者の個人特定情報を入力して、当該患者の心拍出量に関する酸素代謝量を推定し、推定した酸素代謝量に基づいて心拍出量を測定する血液量測定装置であって、
時間間隔検出基準点測定手段と、脈波検出手段と、前記時間間隔検出基準点測定手段又は脈波検出手段から心拍数を演算する心拍数演算手段と、少なくとも患者の年齢、性別、BSAを入力する入力手段と、血圧値入力又は血圧測定手段と、
を備えることを特徴とする血液量測定装置。
【請求項9】
前記血液量測定装置は、校正のタイミングを入力するタイミング入力手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の血液量測定装置。
【請求項10】
前記時間間隔検出基準点測定手段は、心電図測定手段であることを特徴とする請求項8又は9に記載の血液量測定装置。
【請求項11】
請求項1〜7の各ステップを血液測定装置に搭載されたコンピュータに実行させることを特徴とする血液量測定装置プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−246801(P2010−246801A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100957(P2009−100957)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】