説明

血管プラーク検出および分析のための自動化方法およびシステム

患者血管系の1つまたは複数の領域におけるプラークの検出および分析のための自動化方法およびシステムが記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本特許出願は、米国特許出願第60/497,375号(2003年8月21日提出)(全目的に関してこの記載内容は、参照により本明細書中で援用される)に対する優先権およびその利益を主張する。
産業上の利用分野
本発明は、医学的画像診断データの自動化分析のための方法、ソフトウエアおよびシステムに関する。特に本発明は、患者の血管系の一部または全部内のプラークの自動化検出および分析に関する方法、ソフトウエアおよびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1.序論
以下の説明は、本発明を理解するに際して有用であり得る情報を包含する。任意のこのような情報が、ここに特許請求した本発明に対して従来技術でありまたは関連するということ、あるいは特定的にまたは無条件に言及された任意の出版物が従来技術であるということは、認められた事実というわけではない。
【0003】
2.背景
アテローム硬化症は、虚血性心疾患の最も一般的な原因である。別個に考えられる場合、卒中は脂肪の第三の主要原因であり、莫大な大多数の卒中は虚血性事象の結果である。しかしながら動脈硬化症は全く一般的な炎症応答であり、血栓形成を伴わないアテローム硬化症は概して良性疾患である。狭窄の程度というよりむしろプラーク組成が、破裂または血栓形成への脆弱性を予測するための重要因子である、ということをいくつかの研究は示している。このような血栓形成傾向または高危険性プラークは、「脆弱性」プラークと呼ばれる。
【0004】
プラーク破裂は機械的事象により引き起こされるが、しかしプラーク脆弱性は、しばしば感染ならびにマクロファージおよびT細胞浸潤の結果としての、繊維質キャップの弱体化、プラーク間出血およびプラーク構成成分軟化のためである。概して富脂質性軟質プラークは、富コラーゲン性硬質プラークより破裂し易い。いくつかの形態学的および生理学的特徴は、脆弱および安定プラークと関連づけられる。形態学的特質は構造的弱点または損害(薄いまたは破裂した繊維質キャップ、石灰化、負の再造形、新血管新生、大型脂質沈着物等)を示唆するが、一方、物理学的特徴は化学組成、活動性感染、炎症性応答および代謝を示唆する。因子の多くは自覚的または定性的であって、全ての特質が危険決定因子として実証されたというわけではない、という事実を反映する。危険因子のバリデーションは、長期にわたる臨床試験、動脈内膜切除または剖検を要する。
【0005】
脆弱性プラークを同定するために、いくつかの侵襲的方法、例えば静脈内超音波法(IVUS)、血管顕微法、血管内MRおよびサーモグラフィーが用いられてきた。侵襲的方法は卒中およびMIの有意の危険に患者を曝すため、それらはスクリーニングまたは連続検査のためには適切でない。最後に、これらの方法はカテーテルの使用を要するため、全体的血管プラーク負担の概算は2〜3個だけの局所的プラーク沈着物の検査から推測されねばならない。さらにカテーテルおよび動脈サイズ、動脈分枝等といった物理的制約のため、患者の血管系の多くは、侵襲性計器に接近不可能である。
【0006】
MRIは、高感受性および特異性で、形態学的プラーク特徴、例えばプラークサイズおよび繊維質キャップ厚を同定するために用いられてきたが、プラークを特性化するための努力のほとんどは、専門放射線医によるCATまたはMRIスキャンの視覚的検査を伴う。これは時間を要する(したがって経費が掛かる)、そして誤りを生じ易い方法であり、いくつかの主観的偏りを受け易く、とりわけ2または3つより多い変数間の統計学的関係を同時に査定するのが、ヒトは周知のように不得意である。自然傾向は、大まかな境界および局所的テクスチャーに焦点を合わせることである。マルチモード画像を考察する場合、全ての利用可能な証拠をダイジェストするために分析者は4つという多くの異なるモダリティで局所環境をピクセル単位で査定しなければならないため、この問題は数倍に倍加される。典型的にはこれは、特定の組織に関して「最良の」コントラストで1つだけのモダリティに分析者を集中させ、そして他のモダリティでの考え得る反対証拠を無視させる。分類精度は、研究者間の、そして長時間では同一研究者に関してさえ、変動性を免れず、標準化診断試験を実質的に不可能にする。ほとんどの場合、解釈画像のバリデーションは、動脈内膜切除の組織学的検査により成し遂げられ得るだけである。患者の健康に取ってのプラーク検出および分析のこれらの重要性を考えると、in vivoでのプラークの検出および分析のための方法改良が必要であることは明らかである。
【0007】
3.定義
本発明を詳細に説明する前に、本発明の状況で用いられるいくつかの用語を定義する。これらの用語のほかに、必要な場合、本明細書中の他の箇所で、その他の用語を定義する。本明細書中に別記しない限り、本明細書中に用いられる当該技術分野の用語はそれらの当該技術分野で認識された意味を有する。
【0008】
「医学的画像診断システム」とは、患者の身体の内部領域のいくつかまたは全ての画像を集め、処理し、生成するために用いられ得る任意のシステムを指す。典型的にはこのようなシステムは、データを生成し、集めるための装置、ならびにデータを処理し、分析し、そしてしばしばデータを表示する出力画像を生成するよう構成されたコンピューターを包含する。データを生成し、集めるために用いられる装置としては、非侵襲性であるもの、例えば磁気共鳴画像診断(「MRI」)機器、陽電子放出断層撮影(「PET」)機器、コンピューター体軸断層(「CAT」)機器、超音波機器等、ならびに侵襲敵にデータを生成し、収集する装置、例えば内視鏡(身体内の体腔または管腔からの視覚的画像の伝達のため)および感知能力を有するカテーテルが挙げられる。次にこのような装置から収集されたデータは、少なくともいくつかの場合には患者の身体の1つまたは複数の内部領域の画像を生成するために用いられ得るプロセッサーに伝達される。次に画像を解釈するよう訓練されたヘルスケア専門家が画像を検査し、解釈して、診断を下すかまたは予後を判定する。
【0009】
本発明による「特許性」組成物、方法、機械、製品または改良とは、分析が実施された時点で特許性に関する全ての法定要件を対象物が満たしていることを意味する。例えば新規性、非自明性等に関して、後者調査が、1つまたは複数の特許請求が新規性、非自明性等を否定する1つまたは複数の実施形態を包含する、ということを明示する場合、定義により「特許性」実施形態に限定される特許請求(単数または複数)は非特許性実施形態(単数または複数)を特定的に除外する。さらにまた、本明細書に添付された特許請求の範囲は、最も広範な合理的範囲を提供し、ならびにそれらの妥当性を保持すると解釈されるべきものである。さらに特許性に関する1つまたは複数の法定要件が修正される場合、あるいは特許性に関する特定の法定要件が本出願時点から満たされるか否かを査定するための基準変更が1つまたは複数の添付の特許請求の範囲の妥当性が問題にされる時点までに特許として提出または発行された場合、特許請求は、(1)それらの妥当性を保持し、そして(2)その環境下で最も広範な合理的解釈を提供する、という点で解釈されるべきものである。
【0010】
「治療」または「治療する」という用語は、疾患または障害の任意の治療、例えば疾患または障害に対して防止するかまたは防御し(即ち臨床的症候(または症候を生じるかまたは関与し得る根源的過程)を発症しないようにさせる);疾患または障害を抑制し(即ち臨床的症候を引き止めるかまたは抑止し、あるいは症候を生じ得る病態に関与する1つまたは複数の根源的過程の進行を抑制する);および/または疾患または障害を軽減する(即ち臨床的症候の退行;あるいは症候に関与する1つまたは複数の過程の退行を引き起こす)ことを意味する。言うまでもなく、単数または複数の最終的帰納的事象は未知であるかまたは潜在的であるため、疾患または障害を「防止する」と「抑制する」との間を常に区別し得るわけではない。しが「予防」という用語は、「防止する」および/または「抑制する」のいずれかまたは両方を包含する「治療」の型を構成すると理解される。したがって「防御」という用語は、「予防」を含む。
【発明の開示】
【0011】
発明の要約
医学的画像診断システムから得られるデータから得られる患者の血管システムの1つまたは複数の領域におけるプラークの自動化検出および所望により分析のための方法、ソフトウエアおよびシステム、あるいは初期感知またはデータ収集方法、例えば画像を生成するために用いられ得る方法(これらに限定されない)を提供することは、本発明の一目的である。
【0012】
したがって一態様では、本発明は、患者の血管系の少なくとも一部、しばしば1つまたは複数の血管、特に脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、小腸、膀胱、胃、卵巣および精巣のような器官に、ならびに末梢、例えば腕および足に血液を供給する血管の一部または全部におけるアテローム硬化症の程度を査定する自動化方法に関する。分析のための好ましい血管としては、頚動脈、冠動脈および大動脈が挙げられる。本発明の方法は種々の動物における血管プラークを検出し、分析するために用いられ得るが、しかし本方法は、最もしばしば、ヒトに関して用いられる。
【0013】
典型的には本発明の方法は、医学的画像診断システムから得られる患者の血管系の少なくとも1つの血管の少なくとも1つの横断面(またはその一部分)からの処理可能データをコンピューター処理して、血管(または少なくとも分析中の部分)がプラークの存在と相関する少なくとも1つのプラーク構成成分または組織を含むか否かを確定することを包含する。したがってこのような方法の実施は、患者の血管系の少なくとも一部におけるアテローム硬化症に関連するものまたは関連した測定値の査定を可能にする。
【0014】
好ましい実施形態では、これらの方法は、血管がプラーク、特に破裂するような脆弱なプラークを含有するか否かの確定を可能にする。特定の横断面に関して、分析されたデータは、初期に収集されたデータのいくつかまたは全てを含み得る。初期データを得るために用いられる医学的画像診断システムは、侵襲性または非侵襲性画像診断システムである。好ましい非侵襲性画像診断システムは、1つまたは複数のMRI、CT、PET、断層撮影または超音波計器を包含する。多重非侵襲性画像診断機能を包含する計器も、用いられ得る。好ましい侵襲性計器としては、1つまたは複数のセンサーを装備したカテーテルが挙げられる。例としては、静脈内超音波、血管顕微法、血管内MRおよびサーモグラフィーが挙げられる。侵襲性および非侵襲性技法からのデータはまた、分析のために併合され得る。同様にその他のまたは付加的なデータ、例えば造影剤、1つまたは複数の組織、細胞型に特異的な標識部分、あるいは例えば健常または疾患血管系の組織または構成成分、例えばプラークまたはその構成成分を含むリガンドの使用により得られるデータも包含され得る。
【0015】
MRIベースの方法は、好ましい組の実施形態を代表する。このような実施形態では、MRI計器は、処理可能磁気共鳴データが得られる生磁気共鳴データを生成するために用いられる。1つまたは複数の異なる高周波パルスシーケンスシリーズにより実行される1つまたは複数の異なる画像診断モダリティは、その後の分析時に異なる組織および組織構成成分を識別させ得る。このようなモダリティにより生成される好ましいデータ型としては、T1加重データ、T2加重データ、PDW加重データおよびTOF加重データが挙げられる。1つまたは複数のこれらのおよびその他のデータ型の組合せにより生成されるデータも組合せられ得る。
【0016】
本発明の方法を実施しながら、データを前処理し、および/または正規化するのが望ましい。任意の場合に、処理可能データはコンピューター処理されて、血管が、横断面(単数または複数)(またはその部分(単数または複数))の領域に、動脈およびプラーク組織またはその構成成分を含むか否かを確定する。好ましい実施形態では、組織または構成成分型確定は、データ中で同定された異なる組織型を、1つまたは複数の統計的分類素子とコンピューターで比較することにより成し遂げられる。このような分類素子は、任意の適切な方法により、例えばロジスティック回帰、決定木、非パラメトリック回帰、フィッシャー判別分析、ベイジアン・ネットワーク・モデリングおよびファジー理論システムにより、既知の結果データを用いて(例えば術後組織学的検査、直接組織検査、または1人または複数のエキスパートによる標識により)開発され得る。好ましくはスクリーニングされる構成成分および組織としては、筋肉、外膜、カルシウム沈着、コレステロール沈着、脂質、繊維質プラーク、コラーゲンおよび血栓が挙げられる。
【0017】
好ましい実施形態では、特に多重画像診断モダリティまたは画像診断計器からのデータが用いられる実施形態では、データは共通フォーマットに変換される。それは好ましくは、しばしば標識構造を用いて、それを、物理的特徴(例えば動脈分枝点、例えば頚動脈分岐部)またはコンピューター的特徴、例えば処理されているデータから算定される血管管腔セントロイドを表すものとコンピューター登録される。いくつかの実施形態では、分析されている血管の最も間隔があいた横断面により結合される領域の少なくとも一部の上の血管の三次元モデルがコンピューターで描かれ得る。複数のその他の分析または操作、例えば全体的プラーク容積または負担の計算、プラークの位置および/または組成等も実施され得る。実施される分析または操作によって、分析の結果は1つまたは複数の出力ファイルに出力され得るし、および/または保存のためにシステム中の異なる場所に伝達または移動され得る。あるいはデータは、異なる場所に伝達され得る。
【0018】
本発明のさらに別の態様は、治療レジメンの有効性を査定するか、または治療レジメンを確定することに関する。このような方法は、本発明のプラーク検出および分析態様を、場合によって、プラーク検出、および好ましくは分類、分析の結果によって、治療レジメンの送達または確定と一緒に用いる。いくつかの実施形態では、治療レジメンは、時間経過中に患者におけるプラーク負担を安定化するかまたは低減することが予測される薬剤の投与を包含する。所望により、治療レジメンの作用は、好ましくは追跡分析により、好ましくは付加的プラーク検出を、そして好ましくは分類、分析を本発明に従って実施することにより、査定され得る。言うまでもなく、本発明の方法は、認可治療戦略を送達する場合だけでなく、新規の戦略を開発するに際しても有用である。一例として、これらの方法は、研究的治療、例えば心臓血管性および/または脳血管性疾患を治療するために査定中の薬剤に関連した治療の臨床的効能を査定するのに有用である。
【0019】
本発明の別の態様は、その中に具体化されたコンピューター読取りプログラム暗号を有するコンピューター使用可能媒体を含むコンピュータープログラム製品であって、コンピューター読取り可能プログラム暗号を遂行するよう適合されたコンピューター上で本発明の自動化方法を実行するようコンピューター読取り可能プログラム暗号が構成されるコンピュータープログラム製品に関する。
【0020】
このようなコンピューター読取り可能プログラム暗号を遂行するよう構成されたコンピューターシステムは、このような方法を実行するためのビジネスモデル、例えばASPおよびAPIビジネスモデルの場合と同様に、本発明の付加的態様を代表する。例えばASPモデルでは、本発明のコンピューター読取り可能プログラム暗号を遂行するよう構成された医学的画像診断システムおよびコンピューターシステムは、異なる位置に配置される。しばしば、処理可能データが得られる生データを生成し得る医学的画像診断システムを各々が含む複数の画像診断中心の各々から物理的に除去されるコンピューター中心部に、コンピューターは存在する。好ましい実施形態では、画像診断中心の少なくとも1つは、遠距離通信リンクを介して生データをコンピューター中心に伝達する。
【0021】
コンピューターシステムに関して、それらは典型的には、本発明のコンピューター読取り可能プログラム暗号を遂行するよう適合されたコンピューター、コンピューターと連絡するデータ保存システム、および任意に、コンピューターにより処理されるべきデータを受信するための、またはコンピューターによる処理後のデータを送るための通信インターフェース(コンピューターに操作可能的に連結)を含む。
【0022】
当業者には明らかなように、添付の図面に示した実施形態は代表例であるに過ぎず、本発明の実範囲を表すものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の詳細な説明
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、これらが変わり得る場合、記載される特定の画像診断技術、方法およびシステムに限定されない、と理解される。本明細書中で用いられる用語は特定の実施形態のみを説明する目的のためであって、本明細書中に記載した本発明の範囲を限定するものではない、とも理解される。
【0024】
本発明は、患者の血管系の1つまたは複数の領域におけるプラークを検出し、分析するための自動化客観的方法およびシステムに関する。概して本発明の方法は、患者由来データを分類させ、存在する場合、プラークを検出させる情報を含有するデータベースに対して患者を検査するために、医学的画像診断システム(またはこのようなシステムに対するデータ収集前駆物質)を用いて得られる1、2または3次元画像から得られるデータの比較を包含する。さらに比較は、プラークを分析させ、例えば所望により分類させる(例えば安定または脆弱性プラークとして)。パターン認識技法を用いて、これらの比較を成し遂げる。この情報は、単独でまたは患者についての他のデータとともに、種々の目的のために、例えば治療経過を確定し、その後の悪事象(例えば卒中または心臓発作)を蒙る患者の危険を層化するために用いられ得る。本発明を実行するのに有用な画像診断技法は、血管の三次元画像を生成するために用いられ得る物であり、例としてはCAT、PET、MRIおよび超音波が挙げられる。今のところ、MRIが好ましい。
【0025】
実際、患者に関するデータは、その後の分析を実施するために必要とされる基礎入力データを生成する画像診断装置に患者を入れるMRI(または他の画像診断)センターに患者を送ることにより得られる。本発明を実行するためには、付加的ハードウエアは画像診断センターで必要とされない。一旦生けデータが収集されれば、好ましい実施形態では、それらは分析のためにセンターに送られる(例えば1つまたは複数の暗号化電子データファイルとしてインターネットを介して)。次にデータは自動的に処理されて、患者のデータパターンと1つまたは複数の統計的分類素子組を用いたデータベースとを比較することにより個別化プロダクトを生成する。次に個別化患者プロダクトが調製され、依頼医に送られ得る。好ましい実施形態では、患者プロダクトは、例えば患者の心臓の血管系の3−D視覚化を提供するが、これは例えば総プラークおよび破裂に至る脆弱なプラークのサブセットの両方の位置を示し得る。それは、個々のプラーク、総プラーク、個々の脆弱性プラークおよび総脆弱性プラークの容積を定量するためにも有用であり得る。所定の患者、特にアテローム硬化性疾患のための治療を受けている患者に関する複数の分析を生じるために長時間用いられる場合、本発明の方法およびシステムは治療の効能を査定するために用いられ得る。例えば治療は患者の全体的プラーク負担を少なくし(および/またはこの負担の進行速度(予測される進行)を低減する);脆弱性プラークのパーセンテージまたは料が低減され;特定のプラークの組成が長時間に変化する(例えば多少安定になる等)等。
【0026】
本発明の方法は、使い易く且つ再現可能な方法でのアテローム硬化性(AT)病変の自動化、非侵襲性および客観的な検出および分析(例えばプラーク同定および分類)を提供するために、ソフトウエア、ハードウエアまたはこれらの組合せにおいて容易に具体化され得る。本発明は、研究者、医者および患者が現存する疾患管理および/または治療戦略からの利益増大を容易に得るのを可能にする。したがってこれらの重要な診断および予後方法およびシステムは、先進国における罹患率および死亡率の単一主因を構成する疾患クラスに関する療法および結果を改善する。
【0027】
1.血管プラーク検出および分析のための自動化方法
概して本発明の方法は、医学的画像診断システムを用いて得られる患者に関するデータのコンピューター分析に基づいて、患者が彼/彼女の血管系の少なくとも一部においてアテローム硬化症に罹患しているか否かを確定する。血管プラークを検出するために、コンピューターは統計的分類素子を用いてデータを処理し、比較して、分析中の血管(単数または複数)の1つまたは複数の領域が、血管プラークの存在と相関する(即ち関連することが既知である)少なくとも1つの組織を含有するか否かを確定する。所望される場合、プラークはまた、存在する場合、プラークの領域で同定される組織によって、例えば安定または脆弱性プラークとして分類され得る。さらにプラーク容積、プラーク負担、疾患進行、治療効能等のような査定も成し遂げられ得る。
【0028】
最初に、患者の身体の、特に血管のすべてまたは一部の、少なくとも1つの点、線、面、横断面、または三(またはそれ以上の)次元画像の生画像データが、医学的画像診断システムを用いて集められる。本明細書中で用いる場合、「横断面」は、そこに例示される実データがより少ないかまたはより多い量のデータを指す、ということを意味すると理解される。好ましい医学的画像診断システムは非侵襲性システムであり、例としてはMRI計器が挙げられる。画像診断計器から収集された生データは次に、コンピューター分析に適した形態に変換される。分析はコンピューターを用いて実施されて、所定の横断面に関する処理データを、少なくとも1つ、好ましくは数個の統計的に得られた分類素子あるいは血管系に存在することが既知である少なくとも1つ、好ましくは数個の異なる健常および罹患組織に関する予測モデルと比較する。このようにして、少なくとも1つの血管の少なくとも1つの横断面のモデルが組み立てられ得る。いくつかのまたは多数の横断面に関するデータが得られる場合、種々の横断面により限定される領域に及ぶより大きなモデルが組み立てられ得る。所望により、その結果生じたモデルを用いて、分析中の血管の領域(単数または複数)の三次元モデルを再構築し得るが、このモデルは血管の種々の特徴を示す。例えば三次元モデルは、血管内側のプラークの位置(単数または複数)を示し得る。このようなモデルは、血管の1つまたは複数の領域における狭窄の程度、ならびに血管の特定領域の内側のプラークの容積を算定するためにも用いられ得る。プラーク容積は、任意の適切なアプローチを用いて算定され得る。例えばプラークの非存在下での血管管腔の総容積は、プラークの存在下でのその領域における管腔の容積の場合と同様に算定され得る。その差を用いて、その領域のプラークの概算容積を算定し得るし、狭窄の程度(例えばパーセンテージ)も容易に算定され得る。同様にプラーク負担は、疾患の他の臨床的測定値と同様に確定され得る。
【0029】
A.代表的システム形状
代表例としてMRI分析を用いて、本発明によるプラーク検出および分析のためのシステムの好ましい実施形態の全体的デザインが、図1に模式的に示されている。言うまでもなく、システムの種々の構成成分は好ましくはモジュール式であり、したがって1つまたは複数の構成成分は、全システムを更新または改正する必要なく、更新または改正され得る。さらに示した過程の多くは任意であり、本発明の方法およびシステムの一般的に好ましい実施形態を説明するために包含されている。これらの任意の素子、過程またはプロセスのうちの1つまたは複数の除去は、所定の用途において所望され得る。
【0030】
図1に示したように、プロセスは、MRIセンターまたは他の設備(110)で収集されている患者MRIデータを用いて開始する。収集された生データ(105)はデータが集められた設備または異なる設備に内在するシステムの一部としてのプラーク検出および分析システムに通される。別の設備での迅速データ処理のために、データは好ましくは、例えばインターネット上で伝達される暗号化データファイルとして、データを処理するよう構成された1つまたは複数のコンピューターを含有する設備に電子的に伝達されて、血管プラークを検出し、所望により分析する。好ましくは生画像データは、例えば集団安定指数を算定することにより、それが最小品質基準(データ品質分析120)を満たすことを保証するために試験される。データが、出力を信頼可能にさせるほど十分高品質でない(そして本発明の特定の実施において十分高品質にされ得ない)場合、それらはさらに処理されず、メッセージは好ましくは画像診断センターに伝達されて、分析用生画像データの拒絶を通知する。所望により、初期生データの別のコピーが再伝達されるか、あるいは別の組の生データ(105)が収集されて、分析のために再提示され得る。
【0031】
品質保証パラメーターを満たした後、生データはさらなる処理のために認可される。好ましい実施形態では、生けデータは前処理されおよび/または正規化されて(過程130)、次にコンピューター分析されて、血管中の全体構造を予備的に同定する(140)。分析のためにデータの2またはそれ以上の様式が利用可能である場合、次に、コンピューターベースの実行のために構成された任意の適切なアルゴリズムを用いて、断面および異なるデータ様式が登録される(150)。次に画像変換、テクスチャー処理および変数計算(即ち画像処理、160)が実施され、その後、データは統計的分類素子または予測モデルを用いて分類されて、組織分類を割り当てる(170)。血管中の全体構造境界が次に確定され(過程180)、そして
血管の三次元的再構築が種々のデータから組み立てられる(185)。その後、病変(ここでは血管プラーク)診断が実施され、その後、血管の三次元モデルが、所望により診断/予後報告および/または標識画像とともに、生成され得る(195)。所望により、次に結果は、その後の回収のために、指定受容者、例えば医者、クリニックまたはデータ保存システムに送られる。
上記のおよび図1に示したシステムのいくつかの過程を、以下でさらに詳細に説明する。
【0032】
i.データ入力
患者に関する生画像データ(105)は、任意の適切な方法により、本発明のプラーク査定システムに提示され得る。このような好ましい一方法はASP(Application Service Provider)モデルであり、この場合、患者の生データ(105)は安全なインターネット接続を介して画像診断設備から送信される。別のモデルは、(Application Program Interfaceまたは「API」)モデルであり、この場合、プラーク査定システムは、画像診断設備で現場でインストールされるソフトウエアパッケージ内に埋め込まれる。
【0033】
ii.画像処理およびフォーマット化
好ましい実施形態では、生画像データは、それがデータ品質に関する最小判定基準を満たすことを保証するために、品質保証検査に付される。次にこれらの基準を満たすデータは、前処理される。例えば異なるMRI画像診断設備から受信されたデータは、異なるMRI計器、異なるバージョンの計器制御ソフトウエ等の使用のため、異なるフォーマットで存在し得る。MRI由来データに関する好ましい一般フォーマットはDICOMであるが、しかし他のフォーマットは、本発明に従って用いるために適合され得る。さらにまた種々のMRI計器およびRFコイル間のハードウエア差のため、解像度および尺度は、所望により、ノイズおよび歪みを相対的に含有しないデータを生じるやり方で補償され得る。
【0034】
既知であるように、MRIシグナル強度は表面RFコイルからの距離に伴って下がる(1/R2)。その結果、生MRIデータから明らかにされる画像は、図2に示したような「イルミネーション勾配」を示す。所望により、この作用に関して補正するのに有用な任意の目下既知のまたはその後開発されたアルゴリズムが用いられ得る。適切な方法としては、ヒストグラム等化(Gonzalas and Woods, Digital Image Processing, 1992 Addison Wesley)、ならびにRFコイル機能をモデル化するためのウェーブレットの使用が挙げられる。この作用を補正するために用いられ得るその他のアルゴリズムは、市販画像処理ソフトウエアツール、例えばMATLAB(Mathworks, Inc., Natick. MA)の一部として利用可能である(Han, et al. (2001), J. Mag. Res. Imaging, vol. 13: 428-436も参照)。
【0035】
骨の折れる画像識別は稀に、主として強度がしばしばデータを収集するために用いられる特定の条件および画像診断機によっているため、絶対(相対的というよりむしろ)ピクセル強度によっている。その結果として、それぞれの画像の各々におけるそれらの最高ピクセル強度に対してデータを正規化することが通常は有益である。典型的には、各データ収集モダリティ(例えばT1、T2、PDW、TOF等)からのデータは、各モダリティに関するデータが同一ダイナミックレンジを有するよう、個別に正規化される。しかしながら絶対様式内強度差を比較する付加的変数は、非正規化データを用いて作製され得る。マルチモード変数、例えばT1およびT2の比率は、例えば正規化量の比率を測定する。
【0036】
ピクセル強度のダイナミックレンジは、いくつかの場合には、例えばいくつかのin vivo頚動脈画像と対照をなすことが観察されている。シーケンス(頭部に最も近い)の末端近くでは、おそらくは限局性頚部コイルの使用の結果として、観察される解像度は全く不十分であり得る。しかしながら用途によって、例えばプラーク分類または微細構造(例えば新血管新生または繊維質キャップ厚)の同定とは対照的に、全体的プラーク負担の概算では、低解像度が依然として有用であり得る。さらに血液抑制パルスシーケンスも、いくつかのモダリティを用いたデータの収集の場合と同様に、解像度を増強し得る(Yang, et al. (2003), International J. of Cardiovascular Imaging, vol. 19: 419-428)。例えば血管プラークの繊維質キャップは、TOF画像において良好に識別され得る。
【0037】
iii.予備全体構造同定
患者の身体の画像化横断面における血管プラークを検出し、分析するためには、分析されるべき血管(単数または複数)を同定するのがしばしば望ましい。全体組織同定は、MRI薄片から分析のために当該領域、例えば血管を抜き出させる。これは、例えば血管の管腔を同定するための形態学的技法を用いて、容易に成し遂げられ得る。もちろん他の全体的形態学的特徴、例えば動脈筋肉、外膜等の同定も、単独でまたは管腔検出とともに用いられ得る。管腔検出が用いられる場合、一旦初期管腔位置が確定されれば、続いて起こる画像薄片は、先行薄片中の管腔の位置の見積もりを用いて、管腔の場所の初期見積もりをなし得る。一旦検出されれば、管腔の中心(即ち管腔のセントロイド)は好ましくは、各薄片に関して反復的に再概算される。特に不規則容貌を有する罹患組織の状況において、連続薄片におけるセントロイド概算誤差の形成を回避するために、付加的ヒューリスティックアルゴリズム、例えばより遠位の軸位置での再登録および薄片間の挿入が用いられ得る。
【0038】
iv.画像登録
患者の動き、心拍、呼吸、動脈拡張等のため、マルチモードMRI走査を実行するために必要な時間間隔は、様式間および様式内アルゴリズムおよび登録誤差を導入し得る。頚動脈画像診断のため、複数の画像薄片、例えば12−20が好ましくは走査当たり平行して撮影され、これは、一般の慣用的市販MRI計器で3〜4分を要する。付加的走査は、マルチモード画像のために必要とされる。それゆえ全プロセスは(今のところ)、慣用的MRI計器を用いた頚動脈画像診断に3〜20分またはそれ以上掛かる。心拍または呼吸周期に対するゲーティングは頚動脈画像診断において多くの利益を生じないが、一方、より長い走査時間(例えばマルチモードを用いて走査を実行するために必要とされ得るような)は、走査手順中に患者が動く能力を増大し得る。冠動脈画像診断に関しては、心拍の揺れのため、ゲーティングはEKGに基づいて生磁気共鳴データを収集し得るが、しかしそうすることはしばしばプロセス/モダリティを有意に遅くし、約10分/モダリティという時間は珍しくはない。
【0039】
マルチモードが用いられる場合、モード間登録またはアラインメントがほぼ確実に必要とされる。合理的登録は、管腔セントロイドの真っ直ぐなアラインメントを用いて得られる。しかしながら全てのMRIモダリティにおける血液の高コントラストのため、重要な参照点または標識構造上に画像を中心に置くための「管腔検出器」を作製することはかなり取るに足りないことである。管腔の検出は全体管腔境界の位置選定を可能にし、これは次に、画像登録のための出発参照点として用いられ得る(Woods, et al. (1998), Journal of Computer Assisted Tomography, vol. 22: 139-152)。申し分ないアラインメントは剛体翻訳および回転により達成されるが(図3参照)、しかし例えば血圧における変化のための組織変換を考慮する他のより複雑な方法も用いられ得る(例えばDhawan, A. (2003), Medical Image Analysis, IEEE Press Series in Biomedical Engineering参照)。
【0040】
言うまでもなく、より改良されたアラインメント、例えばピクセルアラインメントを包含する方法は、好ましくはとろくの品質が定量され得るメートル法を用いる。このようなメートル法は、正規化相互相関と同様に単純なものであり得るし、あるいはそれらは、相互情報の最大化のようにより複雑であり得る(Viola and Wells (1995), Alignment by Maximization of Mutual Information, International Conference on Computer Vision; Wells, et al. (1996), Med Image Anal., vol. 1(1): 35-51)。異なる画像診断モダリティを用いて制作された画像またはデータセットを整列させる場合、参照画像および整列されるべき画像はしばしば異なる特質を表示する、ということに留意することは重要である。このようなものとして、アラインメント最大化判定基準は、2つの画像またはデータセットが同一モダリティを用いて収集された場合に予測され得るのと同様に明らかなピークを示し得ない。
【0041】
垂直登録に関しては、分析を受ける血管の管腔は好ましくは、共通解剖学的参照点、コンピューター化仮説(例えば管腔セントロイド)またはその他の標識構造近くに異なるモダリティからの薄片を整列する。次にその後の薄片は、この共通点から容易に整列され得る。例えば頚動脈画像診断における便利な参照点は、頚動脈分岐部である。実際、以下の実施例に記載される分析は、垂直方向参照点として頚動脈分岐部を用いた。異なるモダリティにおける薄片間間隔は、線状挿入アルゴリズムも要し得る。
【0042】
v.画像処理
好ましい実施形態では、処理可能データ(即ちコンピューターによる操作のために構成されたデータ)は、画像処理アルゴリズムに通されてノイズを除去し、ならびに当該テクスチャー特徴およびその他の変数を合成する。非パラメーター回帰モデル(例えばニューラルネットワークまたは動径基底関数)を用いてあらゆる任意の非線形識別関数を概算し得る(Cybenko, G. (1989), Mathematical Contl. Signal & Systems, vol. 2: 303-314; Hornik, et al. (1989), Neural Networks, vol. 2: 359-366; Jang and Sun (1993), IEEE Trans. Neural Networks, vol. 4: 156-159)。実際問題として、変数組に任意の既知の関係を組入れて、最適化問題を簡単にすることは有用である。一般的技法としては、変数線形化、ならびに非線形関係を捕獲するための変数の変換または組合せ等が挙げられる。例えば震動性シグナルを識別するためにモデルを作り上げるに際しては、周波数ドメインに時系列を先ず変換することが、圧倒的に有効である(Dowla, et al. (1990), Bull. Seismo. Soc. Amer., vol. 80(5): 1346-1373)。画像処理の全体的目的は、次に、入力画像の変換を引き起こすことである。用いられる画像処理操作の型は、それらの数学的目的:ノイズ低減;次元低減;テクスチャーまたは特徴検出;および誘導変数に基づいて、大雑把にいくつかの(非相互排除的)クラスに分かれる(しばしばエキスパートドメイン知識を用いて設計されるが、しかしそれらは数学的/統計学的技法を用いて限定され得る)。本発明のプラーク分類システムの性能を増強することが実証された変数および変換の例は、以下の実施例に記載されている;しかしながら当該技術分野で既知のその他の画像処理技法も、本発明を実施するのに用いるために適合され得る。
【0043】
vi.組織分類
画像処理(160)後、変換データは統計的分類素子に供給されて、血管プラーク構成成分を含めたいくつかの組織のうちの1つに属するとして画像中の各ピクセルを分類する。画像のラベリングは、画像中の各ピクセルに関する数学的関数を実施する直接プロセスである。予測モデルの開発のための一アプローチは、以下の実施例2に記載されている。MRI画像からのプラーク分類のための予測モデル構築の詳細な例は、次に、実施例3に提示される。
【0044】
vii.組織分割
当該組織、狭窄の程度等を強調し、ならびに非関連特徴を抑制するために、画像分割が組織分類素子の出力で実施される。多くの場合、プラーク構成成分と非病理学的組織との間の区別は、解剖学的状況の範囲外では不可能である。例えば硬質プラークは本質的に瘢痕組織であり、動脈筋膜と同様に、主にコラーゲンからなる。動脈壁外側のコラーゲンは構造物であり、疑いなく病的ではない。同様に血管外側の脂質またはカルシウム沈着は、血管の内側で検出および分析する状況では臨床的意義を有さない。任意の適切なアプローチは、このプロセスのために用いられ得る。好ましい実施形態では、いくつかの変数は管腔境界からの動径距離の一関数として感度を失うので、ドメイン知識が役立てられる。別の好ましい実施形態では、二段階アプローチにより優れた結果が達成され、それにより、組織型予測は二次全体構造処理モジュールに通される。本質的に、予測モデルの出力は画像処理アルゴリズム(例えば勾配−フローおよび能動輪郭制御(Han, et al. (2003), IEEE Trans. Biomed. Eng., vol. 50(6): 705-710))に供給されて、動脈筋肉の境界を限定する。次にこの境界の外側のピクセルは全て、血管の内部を境界する動脈壁内のプラーク構成成分またはその他の組織としての考察から排除され得る。「能動輪郭」アルゴリズムまたは「スネーク」アルゴリズムを用いたアプローチ(Xu, P. (1997), Gradient Vector Flow: A New External Force for Snakes, IEEE Conference on Computer Visual Pattern Recognition; Xu, P. (1997), Snakes Shapes and Gradient Vector Flow, IEEE Transactions on Image Processing)は、図12に示したex vivoデータに示されている。
【0045】
当業者に既知のその他の分割アルゴリズムも、本発明の状況において用いるために適合され得る。例えば組織分割は、原則に基づいた方法を用いて成し遂げられ得る。図11および13に示した結果は、このようなアプローチを用いて得られた。このような方法は、最小コスト経路のための検索を包含する境界検出方法と一緒に用いられ得る(Bishop, C. (1995), Neural Networks and Statistical Pattern Recognition, Oxford University Press)。図11に示した結果を生成するために用いられるプロセスにおいて、原則に基づいた方法を用いて、管腔に中心をおいた血管画像を、固有に放射状である特徴を線形化する動径座標系に変換した。
【0046】
viii.三次元再構築
MRI走査の全ての薄片が一旦標識されれば、動脈およびプラークの完全三次元モデルが、所望により生成され得る。市販のMRI計器(例えばGeneral Electric製造のMRI計器)から得られるDICOMフォーマットデータから直接全体構造(例えば管腔および外部動脈壁)を検出するアルゴリズムは、この目的のために用いられ得る。実施例4は、このようなモデルが生成され得る方法の代表例を記載する。
【0047】
ix.病変診断
全体サイズおよび狭窄の程度、脂質含量、プラークサイズおよび容積、血栓、石灰化等を含めた病変診断は、血管の三次元再構築から概算され得る(Voxels)。もちろん、プラーク構成成分(例えば脂質)を選択的に検出する画像診断モダリティを用いて、少ないデータから有用なモデルを生成し得るが、この場合、血管プラークが検出され、分析される(例えば破裂する脆弱性に関して分類される)モデルを生成するためには、より少ない画像診断モダリティ(MRI分析の状況では、例えばT1、T2、PDW、TOF等)が必要とされ得る。
【0048】
x.データ出力
システムの出力は、生成された結果を再検討するために要求されまたは必要とされ得るような情報を含有するため、正規化ならびにカスタムフォーマットで表され得る。いくつかの実施形態では、出力は、元のデータ、予測モデルにより標識されたデータ、三次元モデル、ならびに診断報告、例えば危険因子および推奨療法(指示された場合)からなる。好ましくは出力は、システムに、特にAPIモデルを基礎にしたシステムに直接利用可能にされる。ASPモデルの状況では、分析を実施するコンピューターシステムは、自動的にまたは適切なコマンドの受信時に、特定のアドレスに出力ファイルを送信する。このようなアドレスは、担当医、放射線医および/または専門医、検査中の患者、患者のデータが最初に送られた医学的画像診断設備等のeメールアカウントのためのアドレスであり得る。
【0049】
xi.汎化および正規化
言うまでもなく、本発明の方法の自動化性は、正規化データ分析手法、フォーマット等の開発を可能にする。さらにまた画像診断データの最新ヒトエキスパートベースの検査の主観的性質の、したがって変異性の多くは、本発明の方法およびシステムを実行することにより廃棄され得る。
【0050】
xii.その他の考察
本明細書中に記載したように、MRIを用いて、形態学的プラーク特徴、例えばプラークサイズおよび繊維質キャップ厚を、高感度および特異性で同定し得る。さらにMRIは、主要動脈:頚動脈;冠動脈および大動脈の全てにおける脆弱および安定プラークに特徴的なプラーク構成成分(例えば繊維質キャップ、石灰化、脂質含量、出血等)を区別し得る。画像診断プロトコールにおける改善は、動作人工プロダクトを最小限にするよう開発されてきた(Worthley, et al. (2001), Int’l J. Cardiovascular Imaging, vol. 17: 195-201; Kerwin, et al. (2002), Magnetic Res. In Med., vol. 47: 1211-1217)。
【0051】
MRIの利点は、構造がいくつかの異なるモダリティを用いて画像化され得るということである。同一解剖組織のT1−、T2−、PD−およびTOF加重画像(それぞれT1W、T2W、PDWおよびTOFW)は、化学構成成分および組織の構造によって、全く異なり得る。例えば石灰化、繊維質組織およびプラーク内出血は、T2加重画像を用いて識別され得る。カルシウムは、陽子密度加重(PDW)画像においては極低強度であるが、一方、平滑筋は相対的に短いTにより良好に特性化され得る。フライト時(TOF)加重画像は、プラーク内出血および富脂質、壊死性コアの良好な区別を生じる。造影剤は、プラーク脆弱性の別の指標である血管系の検出を改良するために用いられ得る。さらにその他の作用物質、例えば標識抗体、プラークの構成成分に特異的な標的部分を含有する小胞も、本発明による分析のための医学的画像診断システムから収集されるデータを増強し、またはそれに付加するために用いられ得る。
【0052】
今のところ、MRI画像診断を基礎にした本発明の自動化方法によるプラーク検出および分析は好ましくは、プラーク構成成分を血管の他の組織と区別するために、2、3または4つの異なる画像診断様式(例えばT1、T2、PDWおよびTOF)またはそれらの派生物(例えばT1/T2比)から得られるデータを用いる、ということを本発明人等は確定した。しかしながら単一のおよびその他のマルチモード分析も、本発明の範囲内である。多数の対比から得られる情報の統合は、プラークの存在、位置および組成のより迅速、精確および再現可能な査定を促す。このような分析は次に、プラークを測定し、分類するために必要なモダリティの数を低減するために用いられ、そしておそらくはより高度の差別的力を有するRFシーケンスの設計をもたらし得る。同様に血管プラークの特定の構成成分に特異的なデータ収集様式の使用は、画像診断装備ハードウエア、操作ソフトウエア等を改良すると同様に、初期データ収集時間を低減する。
【0053】
2.用途
崩壊/浸蝕性ヒトアテローム硬化性病変における急性血栓形成は、急性冠動脈症候群の開始およびアテローム硬化症の進行において重要な役割を演じる。病理学的証拠は、プラーク脆弱性および血栓形成性を調整するのが狭窄重症度というよりむしろプラーク組成である、ということを明らかに確立した。言うまでもなく、本発明の方法およびシステムは、in vivoでのアテローム硬化性プラーク、ならびに総プラーク負担および関連測定値を検出し、測定し、分類するためのパターン認識に基づいた自動画像分析のために展開され得る。好ましい実施形態では、三次元画像は、MRIを用いて得られる。自動化は、迅速な客観的(観察者非依存性)データ分析を可能にする。このような方法は、種々の用途、例えば血管プラークの検出、そして所望により分析を有する。分析としては、例えばプラーク容積の定量、プラーク位置の確定、および/またはプラーク組成の査定が挙げられ得る。さらに血管プラークの分析は、既知の心臓血管性疾患を有するまたは有さない患者における1つまたは複数の領域または器官(脳、心臓、腎臓等)内のおよび/またはそれらに導く血管系中の1つまたは複数の領域に集中し、総プラーク負担(例えば患者スクリーニングの状況では、疾患管理等)、ならびに危険査定および層化を査定し得る。これらの方法は、標準的客観的診断および予後測定としても用いられ、それにより実験室間の、長期的試験を通しての、結果の比較を可能にして、薬剤およびその他の治療の臨床試験における、そして異なる画像診断装備を横断する代理終点を査定し得る。臨床設定では、これらの方法はまた、狭窄程度の測定および血栓傾向があるプラークの検出に関与する診断コストを大いに低減し、そうでなければより多くの侵襲性診断方法を施されねばならない患者における危険および負担を軽減するが、一方同時に、現存方法を用いて得られるよりもはるかに有用な情報を提供する。
【0054】
A.心臓血管性疾患
したがって本発明は用途を有する一状況は、心臓血管性疾患に関する。既知であるように、心臓血管性疾患は、男性および女性の両方における死亡の単一主因である。先進国における個体の約半数は心臓血管性疾患で死亡し、そしてさらに多くが心臓血管性疾患に関連した合併症、ならびに随伴するより低いクォリティ・オブ・ライフを患う。米国単独では、心臓およびプラークを視覚化する製品に関して、150億ドル以上が年間に費やされる。近年の知見は、脆弱性、非安定プラークが破裂して、心臓発作および卒中を引き起こす、ということを示す。破裂して心臓発作を引き起こすプラークの約70%が、プラークがほとんど存在しない血管系の領域から生じる、ということは意義深い。しかしながら今日まで、破裂して、決戦を引き起こし、それが心臓発作または卒中を引き起こし得る脆弱性不安定プラークと安定プラークとの間を識別するための客観的迅速方法は開発されていなかった。本発明は、血管系全体の、特に脳、頚部および頭部の血管系におけるプラークを検出し、分析するための非侵襲性、客観的且つ迅速な方法を提供することにより、この有意の満たされていない必要性に取り組む。
【0055】
i.術前病変診断および患者スクリーニング
最新米国心臓協会ガイドラインは全て、プラーク組成を参照せずに、狭窄の程度および症候状態に基づいている。明らかにより精確な術前診断(例えばプラーク組成、例えば石灰化、脂質含量、血栓、繊維質キャップ厚等)は、術前危険率概算を有意に改良して、薬学的介入を上回る手術の相対的危険性をより確実に臨床医に査定させる。
【0056】
ii.治療
患者の心臓血管性疾患(CVD)または脳血管性危険の概算に基づいて、多数の心臓血管性および脳血管性予防的測定および治療が患者に割り当てられる。この説明の目的のために、CVDは、本発明は概して関連するアテローム硬化性疾患の代表例として考察される。したがって米国合同委員会の高血圧ガイドラインおよび成人治療パネル/全米コレステロール教育パネルのコレステロールガイドラインは、予測CVD危険率による治療のための適格性を限定する:即ちそれらは、CVD危険率概算に基づいて、治療閾値パーセンテージ、あるいは治療が開始される血圧またはコレステロールのレベルを限定する。さらにそれらは、予測CVD危険率により治療の目標(治療標的):即ち治療の攻撃性、あるいは治療が進められるべき血圧またはコレステロール下降のレベルを限定する。
これは、CVDの危険性が高い人ほど低減するより多くの危険を有するため、理論的に正当化される:危険率の同一分率低減はより高いベースラインCVD危険に直面した人における危険率のより大きな絶対低減をもたらし、CVD危険低減が大きいほど、大きい治療のコスト有効性を提供し(CVD事象または死を防止するために治療するために必要とされる量が少ない);そして治療の(より大きい絶対的)利益が治療の害を上回る見込みがより大きい。
【0057】
CVD危険率概算(k治療閾値および標的が予測される)のための一般的アプローチは、脆弱性プラークに関する情報を組入れない。脆弱性プラークはCVD危険の重要決定因子(ほぼ間違いなく最も重要な決定因子)であるため、そして本発明は客観的自動化および到達可能的に脆弱性プラークを検出および分析させるため、CVD危険予測(および異なる末端器官に対して標的化される危険予測)の精度は大いに改善されて、治療のターゲッティング改善を顕著に可能にする。
【0058】
例えば脆弱性プラーク、全体的プラーク負担等の有効査定からのCVD危険予測(および危険層化)改善は、重要な経費節約および生命救助的意味を有し得る。まさに危険に直面している人に対する治療のターゲッティング改善は、同一コストで生命を救助し、そして同一生命救助でお金を節約する。
【0059】
プラーク検出および特性化は、誰が医学的処置で利益を得るか、どの医学的処置が特定の患者を最良に助けるかに関するより良好な決定も可能にする。これは、(経費的に)スタチンコレステロール低下薬(例えばアトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、ロスバスタチンおよびフルバスタチン)の配分を包含し得るが、これは一般的に、世界中の任意の処方薬剤に関する年間市場200億ドルという最大の出費を説明し、そしてその使用量は人口高齢化に伴って顕著に上昇すると予測される。さらに一般的には、プラーク検出および分析は、一続きのメカニズムのいずれか、例えば血圧低下(例えばサイアザイド利尿薬、例えばヒドロクロルサイアザイド、β遮断薬、例えばアテノロール、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、例えばフォシノプリル、アンギオテンシン受容体遮断薬、例えばイルベサルタン、カルシウムチャンネル遮断薬、例えばニフェジピン(ジルチアゼムおよびベラパミル)、α遮断薬、例えばプラゾシン(テラゾシン)、ならびに血管拡張薬、例えばヒドララジン)、プラーク安定化(いくつかのスタチンにより達成され得るような)、脂質低減(スタチン;フィブリン酸誘導体、例えばゲムフィブロジルまたはフェノフィブラート;ナイアシンまたは変異体、例えばナイアスパン;胆汁酸金属イオン封鎖薬、例えばコレスチポールまたはコレスチラミン;あるいはコレステロール吸収の遮断薬、例えばエゼチミブを用いて成し遂げられるような)、炎症低減および/または抗血小板物質助長(例えばアスピリン、クロピドグレル等)、または抗血栓作用(例えば組織プラスミノーゲン活性剤またはストレプトキナーゼ)等による心臓血管性危険を攻撃する治療レジメンに関する治療決定も改善し得る。もちろん、治療されるべき特定の患者および症状によって、単独でまたは他の治療と組合せて、1つまたは複数の上記の療法を組合せることが望ましい。
【0060】
最も必要とする者に対して外科的処置をターゲッティングするに際しての改善は、外科手術に関連して考え得る経費および危険が、真の当該危険率が外科手術の危険率を上回る者によってのみ生み出されるべきであるため、より重要であり得る。脆弱性プラーク査定は、患者がこのレベルの危険を真に有するか否かの確定を大いに改善し得る。
【0061】
iii.薬剤開発
研究者は、長期試験におけるコレステロール低下薬の効能をモニタリングするために非侵襲性患者画像データの手動評価を用いてきた。しかしながら手動検査は、全般的臨床診断のためには経費が掛かりすぎる。これに対比して、本発明の自動化方法およびシステムは、臨床結果(例えば破裂、卒中、MI)の代理として用いられるべきプラーク組成(例えば石灰化、脂質含量、血栓、繊維質キャップ厚等)、全体的プラーク負担、脆弱性プラーク負担、脆弱性プラーク対安定プラークの比、あるいは脂質沈着の統計学的に信頼できる概算を迅速に生成し、検索の時間および経費を大いに低減するために用いられ得る。本発明により得られる別の主な利点は、臨床試験中のものを含めて、心臓血管性および脳血管性薬剤の有効性を実証するために必要とされる患者の数および追跡調査の長さを有意に低減することである。例えばスタチンの使用に関連した有意の臨床的利益を考える場合、プラセボを含む任意の新規の試験を実施することは非倫理的であり得る。したがって一般的に用いられる心臓血管性薬剤を上回る有意の利点を実証するために、試験は少なくとも2000〜3000人の患者と3〜5年の追跡調査を必要とし得る。
【0062】
iv.診断強化
本発明の方法およびシステムの別の用途は、患者および医者に優れた診断および予後ツールを提供することに関する。この点で、プラーク検出および分析データならびに本発明の使用に由来する結果は、他の供給源からのデータと組合されて、さらに進歩した診断プロダクトおよび恩恵を提供し得る。例えばフラミンガム心臓研究データベースは、心臓血管性疾患(CVD)の危険を概算するためのスコアカードを作成するために広範に用いられてきた。この画期的なデータセットは、長時間に亘って5,209名の被験者を追跡し、彼等から予測変数、例えば年齢、性別、コレステロールおよび高血圧の測定値、人口統計学因子、投薬、糖尿病状態、アルコール消費、喫煙歴、心臓事象歴(例えば心筋梗塞(MI)、狭心症、頻脈および徐脈)、血管再生、冠動脈バイパス移殖手法、卒中、血中分析物(例えばクレアチニン、タンパク質)のレベル、人格分類(例えばタイプA)、ならびに多数の「緊急」危険因子、例えば血液中のC反応性タンパク質のレベル、VCAM、ICAM接着分子等の宿主が得られてきた。査定された結果としては、死亡(原因特異的)、ならびに心臓血管性事象、例えばMI、卒中および突然死が挙げられる。
【0063】
フラミンガムデータセット中にはMR走査は存在しない;しかしながらより近年の長期スタチン薬剤試験からのin vivo患者MRIは、MRI画像および関連患者病歴の両方を含有し、そして危険因子(例えば血圧、コレステロールレベル等)が利用可能である.例えばシナイ山での検索チームは、2年間に亘って6ヶ月間隔でMR画像を収集した(Woods, et al. (1998), Journal of Computer Assisted Tomography, vol. 22: 139-152)。本発明の方法を用いて得られた結果をCVDと相関する1つまたは複数の他のデータ点と組合せることにより、改善された、より良好な診断手法が実行され得る。
【0064】
B.卒中
アテローム硬化性病変の組成についてのより良好な知識は、卒中に対するより精確な患者危険層化を可能にして、適切な療法の選択を促す。卒中の約25%は、頚部内頚動脈の閉塞性疾患に関連する。治療選択肢としては、抗血小板療法、動脈内膜切除、ステンティングおよび血管形成術が挙げられる。これらの処置のうち、頚動脈内膜切除(順向性外科的除去)は進行性頚動脈病変のための好ましい治療選択肢であり、120,000例を超えるこれらの手術が米国では毎年実施されている。いくつかの大型臨床試験、例えば北米症候性頚動脈内膜切除試験(NASCET)、無症候性頚動脈アテローム硬化症研究(ACAS)および欧州頚動脈外科手術試験群(ECST)は、ある種の制限下で卒中の危険を有意に低減するためにこの手法を示してきた。70%狭窄を有する症候性患者に関しては、卒中の2年危険率の全体的低減は、17%であると概算された。外科手術も、術中事象の危険を増大する;死亡率は、手術患者において0.3%から0.6%に増大する;多数の卒中は3.3%から5.5%に増大する;そして脳血管性自称は3.3%から5.5%に増大する。60%を上回る狭窄を有する無症候性患者に関しては、卒中ならびに術中卒中または死亡の集合的危険は、手術患者に関しては5.1%であると概算され、それに比して、薬物治療された者に関しては11%である。さらに証拠は、試験から得られる悪結果概算が、実世界適用における悪結果の見込みを過小評価する、ということを示唆するため、真に有益であると思われるものを同定する重要性がさらに増大する。
【0065】
本発明の方法の使用は、適切な療法が実行され得るよう、患者をより良好に査定させる。さらに心臓血管性疾患の場合と同様に、スクリーニングは、疾患発症のより早期に患者が診断されるようにして、早期治療介入および長期に亘るより大きな危険低減を可能にする。
【0066】
3.コンピューターベースの実行
上記の本発明の種々の技術、方法および態様は、一部または全部、コンピューターベースのシステムおよび方法を用いて実行され得る。さらにコンピューターベースのシステムおよび方法を用いて、上記の機能を増大または強化し、機能が実施され得る速度を増大し、そしてさらなる特徴および態様を、本文書中の他の箇所に記載された本発明のものの一部として、または本発明のもののほかに、提供し得る。上記の技法に従った種々のコンピューターベースのシステム、方法および実行をここに提示する。
【0067】
上記の本発明の種々の実施形態、態様および特徴は、ハードウエア、ソフトウエアまたはそれらの組合せを用いて実行され得るし、1つまたは複数のプロセッサーを有するコンピューターシステムを用いて実行され得る。実際、一実施形態では、これらの素子は、それに関して記載された機能を実行しうるプロセッサーベースのシステムを用いて実行される。プロセッサーベースのシステムの一例としては、1つまたは複数のプロセッサーが挙げられる。各プロセッサーは、通信バスに接続される。種々のソフトウエア実施形態は、この実例コンピューターシステムに関して記載される。本明細書中の本発明の実施形態、特徴および機能は、特定のコンピューターシステムまたはプロセッサー・アーキテクチャーに、あるいは特定の操作システムによらない。実際、本発明の説明を考えると、他のコンピューターまたはプロセッサーシステムおよび/またはアーキテクチャーを用いた本発明の実行方法は、関連技術分野の当業者には明らかである。
【0068】
上記の本発明の種々の技術、方法および態様は、一部または全部、コンピューターベースのシステムおよび方法を用いて実行され得る。さらにコンピューターベースのシステムおよび方法を用いて、上記の機能を増大または強化し、機能が実施され得る速度を増大し、そしてさらなる特徴および態様を、本文書中の他の箇所に記載された本発明のものの一部として、または本発明のもののほかに、提供し得る。上記の技法に従った種々のコンピューターベースのシステム、方法および実行をここに提示する。
【0069】
上記の本発明の種々の実施形態、態様および特徴は、ハードウエア、ソフトウエアまたはそれらの組合せを用いて実行され得るし、1つまたは複数のプロセッサーを有するコンピューターシステムを用いて実行され得る。実際、一実施形態では、これらの素子は、それに関して記載された機能を実行しうるプロセッサーベースのシステムを用いて実行される。プロセッサーベースのシステムの一例としては、1つまたは複数のプロセッサーが挙げられる。各プロセッサーは、通信バスに接続される。種々のソフトウエア実施形態は、この実例コンピューターシステムに関して記載される。本明細書中の本発明の実施形態、特徴および機能は、特定のコンピューターシステムまたはプロセッサー・アーキテクチャーに、あるいは特定の操作システムによらない。実際、本発明の説明を考えると、他のコンピューターまたはプロセッサーシステムおよび/またはアーキテクチャーを用いた本発明の実行方法は、関連技術分野の当業者には明らかである。
【0070】
概してプロセッサーベースのシステムは、主記憶装置、好ましくはランダムアクセス記憶装置(RAM)を包含し、そして1つまたは複数のその他の二次記憶装置、例えばディスクドライブ、テープドライブ、取外し可能ストレージドライブ(例えば差込可能または取外し可能記憶装置およびテープドライブ、CD−ROMドライブ、DVDドライブ、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、光ディスクドライブ等)も包含し得る。代替的実施形態では、二次記憶装置は、コンピュータープログラムまたはその他の命令を呼び出させるかまたはそうでなければコンピューターシステムにロードさせるためのその他のデータ保存装置を包含する。
【0071】
本発明のコンピューターシステムは、1つまたは複数の外部装置に、外部装置から、またはコンピューターシステムと外部装置間に、ソフトウエアおよびデータを転送させるために、通信インターフェースも包含し得る。通信インターフェースの例としては、モデム、ネットワークインターフェース(例えばイーサネット(登録商標)・カード)、通信ポート、PCMCIAスロットおよびカード等が挙げられる。通信インターフェースを介して転送されるソフトウエアおよびデータは、通信インターフェースにより受信されうる電子、電磁、光またはその他のシグナルであり得るシグナルの形態である。これらのシグナルは通常は、シグナルを保有するチャンネルを介して通信インターフェースに提供され、そしてワイヤレス媒体、ワイヤ、ケーブル、光ファイバーまたはその他の通信媒体を用いて実行され得る。チャンネルのいくつかの例としては、電話線、携帯電話リンク、RFリンク、ネットワーク・インターフェースおよびその他の通信チャンネルが挙げられる。
【0072】
本文書中では、「コンピュータープログラムプロダクト」等という用語は一般に、取外し可能ストレージ装置、ディスクドライブにインストール可能なディスクおよびチャンネル上のシグナルといったような媒体を指す。これらのコンピュータープログラムプロダクトは、コンピュータープロセッサー(単数または複数)にソフトウエアまたはプログラム命令を提供する。コンピュータープログラム(コンピューター制御論理とも呼ばれる)は通常は、主記憶装置および/または二次記憶装置中に保存される。コンピュータープログラムはまた、通信インターフェースを介して受信され得る。コンピュータープログラムは、実行されると、本明細書中に記載したような本発明の特徴をコンピューターシステムに実施させる。特にコンピュータープログラムは、実行されると、本発明の特徴をプロセッサー(単数または複数)に実施させる。したがってコンピュータープログラムは、コンピューターシステムの制御装置を表す。
【0073】
本発明がソフトウエアを用いて実行される一実施形態では、ソフトウエアはコンピュータープログラムプロダクト中に保存され、またはそれを介して伝送され、そして任意の適切な装置または通信インターフェースを用いてコンピューターシステム中にロードされ得る。制御論理(ソフトウエア)は、プロセッサー(単数または複数)により実行されると、本明細書中に記載されたような本発明の機能をプロセッサーに実施させる。その他の実施形態では、本発明の方法は、例えばハードウエア構成成分、例えばPAL、専用集積回路(ASIC)またはその他のハードウエア構成成分を用いて、ハードウエア、またはハードウエアとソフトウエアの組合せで、予備的に実行した。本明細書中に記載された機能を実施するためのハードウエア状態機械の実行は、関連技術分野(単数または複数)の当業者には明らかである。
【実施例】
【0074】
実施例
本発明のある種の態様を説明するために、そして本発明を実行する当業者を手助けするために、以下の実施例を提示する。これらの実施例は決して、任意の方法で本発明の範囲を限定すると考えられるものではない。
【0075】
実施例1
画像処理
本実施例は、ノイズ低減、次元低減およびテクスチャー処理を含めた本発明の情況における画像データを処理するためのいくつかの特に好ましい技術を説明する。
【0076】
A.ノイズ低減
ノイズを低減し、平滑化を導入するために、複合マルチコントラスト画像を処理した。各々の場合、画像を先ずメディアンフィルター処理して、インパルス特徴を有するノイズを除去し、次に周囲「N」ピクセル近傍における統計量に調整する適応ウィーナ・フィルターで平滑化した。ピクセル位置n1、n2での強度「a」から、平均および分散を概算する:
【数1】

次にこれらの概算を用いて、パラメーター「b」をウィーナ・フィルターに割り当てる:
【数2】

上記の係数bを用いて、各画像強度平面上で、二次元畳み込みを実施した。
【0077】
B.次元低減
処理されるべきデータ点および変数の数のため、ノイズの作用を最小限にするためには、データベースの時限を低減して、より少ないがしかしより統計学的に有意の変数を作成することが好ましい。クラスター分析は、その最も突出した特徴に対して画像診断計器により生成される生データのノイズおよび次元を低減するために用いられる多数の方法の1つに過ぎない。K平均クラスタリングは、クラスタリングアルゴリズムの一例である。このようなアルゴリズムでは、「K」クラスが形成され、その成員は、各クラスの概算セントロイドから最小に離れた(特徴−空間)位置に存在する。このアプローチは、クラスターセントロイドで初期概算を行い、次に更新クラス・メンバーシップに従ってそれらのセントロイドを再概算する。この方法は、クラスターセントロイドでの初期概算を行なって、次に更新クラス・メンバーシップに従ってそれらのセントロイドを再概算する。
【0078】
K平均クラスタリング・アルゴリズムの基礎を成す過程を以下に示す:
i. 初期セントロイドを有する多数のクラスター「k」を選択し;
ii. その最密接クラスターセントロイドに各データ点を割り当てることにより、データ点をkクラスターに分配し;
iii. クラスター割り当てマトリックスをコンピューター処理し;そして
iv. 各クラスターのセントロイドを概算する。
停止判定基準に達するまで、典型的には成員がクラスターメンバーシップ変更を停止する時まで、過程ii〜ivを反復する(Bishop (1995), Neural Networks and Statistical Pattern Recognition, Oxford University Press参照)。例示的クラスター分析結果を、図7に示す。図面から、いくつかのクラスターは特定の組織型と高い相関を有する、ということが明らかである。テクスチャークラスタリングは、視覚的に全く申し分ないが、しかし統計学的には予測モデルと同様に良好であるというわけではない結果を生じた。したがってK平均クラスター類別を、予測モデルへの入力として用いた。当該技術分野で既知のその他のツール、例えば典型的人工ニューラルネットワーク(ANN)の理論的非線形曲線適合能力を階層技法(Bates White, LLC software, RDMSTM)の安定性と組合せるアプローチも、次元を低減するために用いられ得る。その結果、概算ルーチンを、それら自身に関するいくつかの予測パワーを有することが既知であり、そしてさらにモデルにおいて多数の最も有用な基礎を成す非線形作用を具体化し得る入力にのみ曝露する。これらの過程は、そうでなければ必要とされるよりも低い次元を有し、そしてより低い非線形性を有する問題にANN訓練段階を集中させる。さらにその他の技法としては、Prindipal Component Analysis, Independent Component Analysis (Bell and Sejnowski (1995), Neural Computation, vol. (7) 6: 1129-1159および局所情報メートル法(Haralick, R. (1979), Proc. IEEE, vol. 67(5))が挙げられる。
【0079】
C.テクスチャー計測
組織およびプラーク構成成分は、それらのテクスチャーにより視覚的に識別可能である。例えば筋肉およびコラーゲン組織はしばしば縞模様を有するが、一方、壊死性コアは斑点模様を有する。テクスチャーの正規の数学的定義はないが、しかしこれらの特徴、例えば情報含量、空間周波数等は数学的に相関する。一般的に用いられる一分類は、28のテクスチャー計測値を識別する。ここでは、2つのクラスのテクスチャー計測値、即ち局所的強度変異および空間周波数に関する統計量を用いた。用いた統計学的ピクセル測定値は標準統計量であり、種々のサイズの近傍に当てはまる。離散コサイン変換を用いて、「x」および「y」方位の両方に関する空間スペクトルエネルギーの概算値を生成した。例えば微細部が豊富であるピクセル領域は、より高い空間周波数においてより大きい比率のエネルギーを有する。2D DCTに関する式を以下に示す:
【数3】

【0080】
D.誘導変数
予測特性を有するよう意図された基本的実体から、誘導変数を合成する。この類別に入っている2つの変数としては、生変数のプロダクトおよび比率、ならびに3つのデータ方のその他の組合せが挙げられる。強力な差別的パワーを有することが見出された誘導変数の3つの型としては、以下のものが挙げられる:(i)脂質の検出に有用な比T1/T2として定義される「脂肪検出素子」;(ii)軸回転:YCbCr:このフォーマットでは、発光情報は単一構成成分(Y)として保存され、そして色情報は二色差構成成分(Cb、Cr)として保存される。Cbは青色構成成分と参照値との間の差を表す。Crは、赤色構成成分と参照値との間の差を表す。;ならびに(iii)管腔協会からの幾何学的距離に基づいた局所環境変数。その他の考え得る変数画像特徴の例を、以下の表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
実施例2
予測モデル開発
「モデル」は、新規条件下での振る舞いを説明しまたは予測するために用いられるデータまたはシステムの数学的または統計学的表現である。モデルは、機械論的(物理科学および工学に一般的に用いられる)または経験的/統計的(この場合、モデル予測は基礎を成す因果関係を説明するよう意図されない)であり得る。統計的モデリングの2つの関連用途は、統計的分類素子および予測モデルを開発することである。統計的分類素子は、一組の観察に基づいて対象のクラスを区別するよう意図される。予測モデルは、一般の観察または観察シリーズから結果を予測し、未来値を予報するよう試みる。本発明は、両方の型のモデルを用いる:統計的分類素子は組織およびプラーク構成成分を分類するために用いられる;そして予測モデルは、例えば心臓血管性疾患(CVD)に関連した危険を予測するために用いられる。
【0083】
モデル開発のプロセスは、特定の用途によっているが、しかし図4に模式的に示したいくつかの基本的手法は、典型的モデル開発努力に共通である。先ず、一連の観察(「パターン」)および既知の結果、値または各々の観察に対応するクラス(「標識化」または「標的」値とも呼ばれる)を含めたモデリングデータセットを構築しなければならない。図4において、これはデータセット構築410として特性かされる。このモデリング・データセットを用いて、予測モデルを築き上げる(または「訓練する」)。次にモデルを用いて、新規の(または非標識)パターンを分類する。モデル開発はしばしば、いかに記載するように、変数作成、選択、モデル訓練および評価の反復プロセスである。
【0084】
A.データセット構築
モデル建築プロセスにおける第一過程は一般に、いつでもデータセットに使える問題に関連し得る全ての利用可能な事実、測定値またはその他の観察を組み立てることである。データセット中の各記録は、所定の事象に関する利用可能な情報のすべてに対応する。予測モデルを築き上げるためには、「標的値」は、データセット中の少なくともいくつかの記録に関して確立されるべきである。数学的言い方では、標的値は従属変数を限定する。CVD危険予測の実例用途において、標的は、長期臨床試験からの観察された臨床結果データを用いて設定され得る。プラーク検出および分析(例えば分類)の状況では、標的は、例として、ヒトエキスパートにより標識されるかまたは組織学的検査により正当化された画像に対応する。図5は、このような一用途に用いられるデータ標識プロセスを説明する。この例では、各パターン/標的対は一般的に手本または訓練例と呼ばれ、これを用いてモデルを訓練し、試験しまたは正当化する。言うまでもなく、パターン手本を構成するものは、モデリング対象によっている。
【0085】
i.データ分離
図4に示したように、モデルの実行は典型的には、データ分離(過程420)を包含する。ほとんどのモデル開発努力は、少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つのデータ分配、開発データセット(モデルを建築し/訓練するために用いられるデータ)427、試験データセット(個々の変数、予備モデル等を評価し、選択するために用いられるデータ)425、およびバリデーション・データセット(最終性能を概算するためのデータ)429を要する。この目的にかなうには、初期データは、3つのデータセットに無作為に分離されるが、これらは必ずしも等サイズを有するというわけではない。例えばデータは、50%の開発(427)、25%の試験(425)および25%のバリデーション(429)に分離され得る。モデルは、最初に開発データ(427)を用いて開発される。試験データ(425)に関する結果的に生じる性能を用いて、任意のオーバーフィッティング問題といったような問題点をモニタリングする。即ち、モデルは開発データ(427)および試験データ(425)の両方に関して匹敵する性能を示すべきである。モデルが試験データ(425)に比して開発データ(427)に関する優れた性能を有する場合、モデルが安定性能を達成するまで、モデルを調整する。
【0086】
モデルが任意の個々のデータセットに関して予期されたように実施することを立証するために、理想的にはデータのいくつかの分画を、専ら最終モデル・バリデーションのために取っておく。バリデーション(または「ホールドアウト」)データセット429は、モデルを訓練するためには用いられなかった一組の実例パターンからなる。次に完成モデルを用いて、これらの未知のパターンを採点し、新規パターンを採点する場合にモデルが実施し得る方法を概算し得る。
【0087】
さらにいくつかの用途は、長時間に亘るモデル性能の安定性を立証するためには、付加的な「調子外れの」バリデーション組を要する。深的「データ分離」はしばしば、より洗練されたモデリング方法、例えばニューラルネットワークまたは遺伝的アルゴリズムのために必要である。例えばいくつかのモデリング技法は、モデル最適化の進行をモニタリングするための「最適化」データセットを要する。
【0088】
モデリングのさらなる態様は、図4の過程430に示したような変数作成/変換である。この処理では、目的はドメイン知識の的確さおよび組入れである。生データ値は、多くの理由:例えばデータ入力エラー;非数的値;紛失値;および外れ値:のため、必ずしも最良のモデル変数をもたらさない。モデリング論理を実行する前に、変数はしばしば、収集された情報から最良の使用法を作るために再作成されるかまたは変換される必要がある。開発データ、試験データおよびバリデーションデータ間の依存を回避するために、全ての変換論理は好ましくは開発データのみから得られる。
【0089】
所望されるようなおよび/または必要とされるような変数の変換とともに、モデリングプロセスは変数選択の過程440を包含する。その後、モデル開発は、モデルの試験とともに、モデルの訓練450を包含する。この後には、モデル・バリデーションが続く。
【0090】
モデル・バリデーション460の結果は、性能目標470が得られたか否かを明示する。図4に示したように、性能目標が獲得された場合には、モデリングプロセスを過程480で終結する。性能目標が得られなかった場合には、モデルのさらなる開発を必要とする。したがって、より良好な性能を達成するためには、変数作成または変換を変更するために、図4のプロセスは過程430に戻り得る。
【0091】
実施例3
プラーク分類
本実施例は、統計的分類素子を用いてプラークを検出し、分類するための本発明の好ましい実施形態を記載する。最初に、ex vivo血管のMR(磁気共鳴)画像におけるアテローム硬化性プラークの3つの重要構成成分を検出するために、一組のモデルを用いてシステムを築き上げることに努力が向けられる。システムは、プラークおよび脂質検出システムと組合せた場合、画像中で全動脈を同定させ、プラーク負担概算をコンピューター処理させる動脈筋肉組織も検出した。このシステムは完全に自動化され、そして本実施例では、検出および分析プロセスにおける唯一のヒト介入は、MRI計器からの生磁気共鳴データの収集中に生じた。このシステムを用いて、ヒトエキスパート放射線医の性能と等しいかまたはそれを上回る上首尾の速度を、プラーク構成成分分類において達成した。
【0092】
本実施例では、予測モデルを訓練して、3つの組織型:即ちプラーク、脂質および筋肉を同定した。硬質プラークを同定した実例画像のラベリングを用いて、プラーク検出素子を訓練した。脂質が道程され標識され得たより少数組の画像に関して、脂質検出素子を訓練した。筋肉検出素子を用いて、画像に示された血管の他の部分から動脈壁組織を分離した。付加的モデルを開発して、石灰化組織、血栓およびその他の非病態組織を検出し得る。動脈壁の適正な同定を用いて、他のモデルの出力が与えられれば、血管内のプラーク負担概算をコンピューター処理することができる。
【0093】
予測モデリングの目標は、そのピクセルおよびその隣接周囲環境でのMRI画像の特質に基づいた画像の各ピクセルに関して、グラウンド・トゥルース分類を精確に予測することである。予測モデリングが一旦開始すると、画像処理過程が完成され、もとの画像が、記録として各ピクセルをあらわす縦書きデータに変換された。各ピクセル記録は、各ピクセルに関して、そして画像処理過程から得られる特質を捕獲する400の付加的変数に亘って、グラウンド・トゥルース分類を同定する一変数を含有した。予測モデリングの挑戦は、これら数百の潜在的変数およびすう栓の変数の順列により精査して、ほとんどの予測組合せを公表することであった。
【0094】
好ましい実施形態では、Relevant Input Processor Network(RIPNetTM; Bates White, LLC, San Diego, CA; Perez-Amaral and White (2003), Oxford Bulleting of Economics and Statistics, vol. 65: 821-838)として既知の人工ニューラルネットワーク(ANN)モデリングアプローチ;しかしながら当業者に既知の標準線形および非線形回帰技法(例えば線形およびロジスティック回帰、決定木、パラメトリック回帰(例えばニューラルネットワークまたは動径基底関数を用いる)、ベイジアン・ネットワークモデリング、フィッシャー判別分析、ファジー理論システム等)も用いられ得る。RIPNetTMは、特にオーバーフィットを回避しながら、多数の潜在変数を有するネットワーク・アーキテクチャーを同定する方法の問題を取り扱うために開発された。ニューラルネットワーク概算に関連した典型的問題は、これらのモデルにおいて具体化される機能形態が本質的に「フレキシブル過ぎる」、ということである。標準ANNアプローチは、自動的に概算されたままであった場合(試験または交差バリデーションプロセスも自動的に含まれない限りは)、データ中のシグナルだけでなく、ノイズも同様に要約するモデル柔軟性のレベルを指定する。これは、モデルが訓練データ中に含入されない情報に関して良好に汎用化しない状態であるオーバーフィットを生じる。最適停止規則のような手法は、ノイズのフィッティングが開始する前の時点でネットワーク訓練手法を停止するための方法(特に最小自乗フィッティング・アルゴリズム)として、広範な承認を得た。これらの手法は症候を取り扱うが、しかしモデルオーバーフィットの原因は取り扱わない。ANNにおけるモデルオーバーフィットは基本的には、線形モデルに伴って遭遇され得るオーバーフィット問題と直接的に類似するモデル仕様における過剰複雑性により引き起こされる。線形モデルにおけるオーバーフィットに遭遇する場合、一解決法は一般的に最小自乗フィッティング・ルーチンを修正することではなく、変数を減少することによりモデル使用を簡単にすることである。別の解決法は、フィッティングを停止する時を示すための交差バリデーションデータ組を用いることである。
【0095】
RIPNetは、フィッティング・アルゴリズムそれ自体に対するその場限りの修正を用いずに、最良のアウト・オブ・サンプル(out-of-sample)予測性能を保証するモデル複雑性のレベルを直接的に同定することを目指すニューラルネットワーク概算への基本的に異なるアプローチを具体化する。結果の節全体でより詳細に考察されるRIPNetアプローチを用いてモデルを産生するには5つの主要過程が存在する:(1)データセット作成、ラベリングおよびサンプリング;(2)異常データ検出;(3)変数前選択および変換生成;(4)予測もでる概算および変数選択;ならびに(5)最終モデルバリデーション。
【0096】
i.データセット作成
ピクセル単位に基づいたいくつかの主要組織特徴の各々の存在を予測するために、MRI画像のプールデータセットから、モデルを開発した。10個の画像が、112,481の使用可能な組織観察(即ちピクセル)を産生した。結果は、血管形状の特質に、または臨床的に関連した、信頼の置ける結果を得るための画像の解像度によらない特徴検出への計量可能なアプローチを実証する。
【0097】
モデル訓練および概算のために用いられる画像データセットは、このプロジェクトのために利用可能な動脈横断面画像の全てを表わす10個のex vivo動脈切片で構成された。組織学知見との直接比較により、各動脈のプラーク、筋肉および脂質構成成分のラベリングを実施した。検査した画像は全て、概算のために標識された硬質プラークの有意例を含有した。筋肉は明らかに同定可能であり、画像のほとんどで標識されたが、しかしいくつか、例えば図10の低質画像では、動脈の1つは組織学的挑戦を示す。画像のうちの3つだけが脂質の例を含有氏、図5の画像は最大のこのような例を有する。
【0098】
これらの画像から抽出したデータは、別個のデータ点として処理されたピクセルの形態であった。モデリングプロセスに関する標的変数は表示変数であり、これは、ピクセルが標的クラスに属する場合は1、そうでない場合は0である。この表示は、画像のラベリングに基づいている。MRI画像中の各ピクセルとは、T1、T2およびPDモダリティにおける郷土を示す3つの変数が関連する。これらの強度の動的範囲は、0〜255で、整数値のみを採用する(8ビットの色の濃さ)。これらのデータを苦労して処理して、ピクセル近傍における平均強度、その他のより洗練された変換、例えば局所テクスチャー計測値のようなものを要約する多数の付加的変数を生成した。
【0099】
有用なMRI情報を生成しない検体をスライド上に載せたため、それらが関連データを含有しなかったために、多数のピクセルが落とされた。ここでは、T1、T2およびPD表示変数が全て同時に0であるためのものとしてこれらのピクセルを同定した。これらの手法は保守的で、そしてデータセット中に無作為ノイズを有するいくつかのピクセルを容認したが、しかしこれはアルゴリズムの性能に影響を及ぼさない。各々の下の画像の50%より多くを、このようにして削除した。
【0100】
結果を最大限にするために、RIPNet手法は、実世界性能の体系的試験が全体に亘って存在するよう、モデリングプロセスにおいてデータが多段階で分離されることを選択する。この理由のために、画像のいくつかを、性能の一試験として完全に保存した。モデリングのために用いたデータセットを以下に示す:訓練(モデルパラメーターを概算するために使用);バリデーション(アウト・オブ・サンプルエントロピー測定値および偽R自乗測定値に基づいた選定変数の性能を立証するためのモデリング結果の交差バリデーションに使用);試験(代替モデル仕様の相対的性能を比較するために極稀に使用。バリデーションデータセットが苦労して得られたため、このデータセットは、Data Miner’s Reality CheckTMアルゴリズムに(White, H. (2000), Econometrica, vol. 68: 1097-1126;米国特許第5,893,069号および第6,088,676号)により開発され、使用された);ならびにホールド・アウトhold-out(このデータ(3つの画像および45,000を超える観察)は、モデルに実世界例を提供するため、概算およびバリデーションプロセスの完全に外側に保持された)。記録は全て、それらのそれぞれの試料中で無作為に選択した。
【0101】
ii.異常データ検出
データ中の外れ値を同定するために、異常データ検出アルゴリズムを開発した。ここでは、異常検出素子は、多変量外れ値をデータ中で同定させるクラスタリング・アルゴリズムの形態であった。そのkに最も近い近傍から遠く離れた(L1−normにより計測)記録として、異常を同定した。異常がこれらの別個の群と比較して同定され得るよう、標的=0試料および標的=1試料間にデータを分離した。この場合、k=10が選択された。この手法は典型的には、モデル概算ルーチンに関する異常影響力を有し得る記録を同定するために必要である。しかしながら画像診断計器からの画像生データが、ほとんどのMRIで得たに関する場合と同様に、相対的に鮮明である場合、大きな外れ値は同定され得ない。
【0102】
以下の表1は、いくつかの異常変数の量を示す。
【表2】

【0103】
異常データ検出エンジンも、異常変数を生成した。異常変数は、各観察に関する2つの離れた計測値(標的=0試料に関して、および標的=1試料に関して)を,見込み比率統計量に翻訳した。この統計量は、入力変数の変換における標的試料への相対距離を埋め込み、これはいくつかの場合には強力な予測素子である。各モデルに関する異常変数は、上記の表1に示したように、5までの連続入力変数からなる。
【0104】
iii.変数前選択および変換生成
次に、データセットサイズを低減するための変数変換生成および非予測変数の予備排除の付加相に着手した。この段階で生成された変換は、以下の入力データセットに関する変数の全てを含む:群変換(これは、十分位数ビンに群別される一変量連続変数であり、次にクラスタリング・アルゴリズムにより組合されて、予測性能の有意の低減を伴わずに少数ビンを達成する);交差プロダクト(これは、互いに相互作用し、上記のクラスタリング・アルゴリズムを用いてビン化類別変数に群別される一変量連続および離散変数である);ならびにβ変換(これはβ分布機能をデータにフィッティング氏、そして見込み比率を計算することに基づいた柔軟性機能形態である)。
【0105】
この時点までに生成された変数の全てを、アウト・オブ・サンプル偽R自乗統計量を用いて標的変数における性能に関して試験した。直接エントロピー計算は、依存性変数の状態を仮定した場合、非依存性変数の分布と対照を成し、これは次に、バリデーション試料に関する偽R自乗統計量で要約された。この偽自乗統計量は、小試料においては0および1間に設定されない(ドメインが精確には概算試料に関するものと同一でないためである)。最大10の予測群変換変数および最大10の予測交差プロダクト変数をデータセット中に保持し、モデル概算ルーチンに通した。上部5つの予測β変換変数だけを保持した。低いかまたは負の一変量または二変量偽R自乗統計量を有する変数も、考え得る候補変数プールから恒久的に取り除いた。これらの変数変換を、以下の表2に列挙する。
【0106】
【表3】

【0107】
iv.モデル概算および変数選択
ほとんどのパターン認識例を用いた場合と同様に、いくつかの有意の危険性を保有する予測モデルに実際に収容され得るより多くの含入のための潜在的候補変数が存在した。1つは、単に、評価するには変数があまりにも多すぎるため、潜在的に有用な候補が見落とされることである。もう一つは、変数を評価し、含入するための体系的ルーチンが用いられる場合、それがオーバーフィッティングを生じ得ることである。最後に、多数の候補変数は有り余るほど多く、このことが、概算ルーチンに関する問題を引き起こし得る。例えばT1モダリティの平均が3−ピクセル半径〜9−ピクセル半径の範囲で近傍全体で採用された場合、全てが候補変数として含まれた。
【0108】
本実施例に用いたRIPNetTM手法は、典型的ANNの理論的非線形曲線フィッティング能力を階層技法の安定性と組合せることにより、この危険を取り扱う。次に、入力変数の非線形組合せおよび変換全体に及ぶこの検索を、標準最大見込みロジックモデルに用い得る。RIPNetTMは、変数生成(ネットワーク・ノード)、変数試験およびモデル概算のためのアルゴリズムを含有する。2入力および1出力を伴う典型的単一隠れ層フィード・フォワード・ネットワークは、以下のアーキテクチャを有し得る:
【0109】
この場合、f(.)およびg(.)はいわゆるスカッシング(s字形)関数である。これらのスカッシング関数は、それらがパラメーターβおよびγの設定によっていくつかの異なる振る舞いを示すため、ANNのパワーを送達する。このような設定の例を以下に挙げる:逆関数;対数関数;指数関数;および閾値関数。
【0110】
RIPNetモデリング戦略は、以下のような関数形態を用いて開始する:
【数4】

この場合の濃厚性および非線形性は、関数fi(x1,x2)に由来する。RIPNetアルゴリズムの重要な貢献の1つは、模擬ネットワーク・ノードfi(x1,x2)を生成するための高収率方法である。その外側単純性にもかかわらず、この形態のモデルを用いて、伝統的ANNの性能を密接に近似し得る。
【0111】
相対的に扱い易いモデルの一クラス内でのノード選択が、本プロセスの次の過程である。変数前濾過過程の場合と同様に、ノード選択は,アウト・オブ・サンプル性能を検査するためのバリデーション試料の使用に基づいた。予測モデルにおけるそれらの妥当化予測性能のために、候補ノードをモデルに入れた。選定手法内で2つの方向で、冗長性を取り扱った。先ず、付加的ノードをモデル中に入れると、それらは、冗長構成成分を除去するために、直交させられる。ノード直交性の最適レベルが同定され得るよう、多数の閾値を試験した。次に、モデル中の他のノードにより説明されるそれらの変数の5%未満を有するノードのみが進入され得るよう、冗長性に関する閾値を精選した。
【0112】
v.モデル・バリデーション
最終モデル・バリデーション過程を用いて、最終モデルとしてどのモデルが選択されても、より単純な水準点またはその他の候補モデルよりそれが良好である、ということを保証した。Data Miner’s Reality CheckTM(DMRC)を再び用いて、このやり方でモデルを試験した。この技法は、アウト・オブ・サンプル予測およびブートストラップ分布を利用して、試験モデルが水準点モデルと同じ性能を有するという仮説のための妥当なp値を生成した。低p値は、試験モデルが有意に良好な性能を示すことを示した。
【0113】
vi.結果
本明細書中に記載した予測モデルは、今日使用中の主要技法と比較して、有意に改善された予測性能を有する。図9は、上記のモデルの性能を要約する。図中、表1は、2つの異なる統計的計測値に基づいたRIPNetモデルの性能を要約する:最大コルモゴロフ・スミルノフ統計量;ならびにジニ係数(これらは、各々、ROC(領域内動作特性)曲線の態様を計測する)。K平均アプローチに基づいたモデルを、比較のための基礎として用いる。これらの結果は、RIPNetモデルが普遍的に、K平均より絶対単位で25%〜30%良好に成し遂げる、ということを実証する。これは、擬陽性の所定レベルを真の陽性比率より50%高く翻訳する。これらの結果が得られたROC曲線を、図9に示す。
【0114】
統計的性能計測値のほかに、画像形態で示された併合モデル結果(図8)も、この結論を支持する。図8では、各画像に関して、標識グラウンド・トゥルースが左パネルに示されており、同一画像に関するモデリング予測が右パネルに示されている。図中、筋肉は標識画像中で桃色に、モデル結果では赤色に見える。脂質は、標識画像中では白色であり、モデル結果は青色であるが、一方、プラークは両画像中で黄色に見える。どのモデルがそのピクセルに関して最高確率を生じたかによって、各ピクセルを類別に割り当てた。モデル予測の全てに関して30%より低い確率を有するピクセルを、ブランクとして暗号化した。
【0115】
図8Aに示した予測モデルから展開された画像は、本発明の予測モデルの可能性の明白な実例を提供する。特に、元のグラウンド・トゥルース標識画像におけるピクセル標識プラークと、コンピューターモデルによる標識プラークとの間に高度の対応が認められる。同様に、筋肉も良好に同定した。図8Bの画像は、硬質血管プラークだけでなく、脂質構成成分を有するプラークも検出する本発明のモデルの能力を実証する。筋肉領域は均一に同定されないが、しかしこれは、元の画像が人工物により悩まされる、そして筋肉壁が薄い領域においてまさにその通りに起こる。興味深いことに、この画像中に示された脂質コアを取り囲む繊維質キャップの領域に沿って、筋肉モデルから生じるいくつかの擬陽性物が認められる。
【0116】
400を上回る変数がこの分析に含まれ、そして数千のネットワーク・ノードがこれらの変数から作成された。これらのノードの全てから、140を各モデル用に選択した。これは普通は多数であると考えられるが、しかしデータセットでの観察が多いためである。以下の表3は、各モデルのために選択された上部数個のノードを例示する。これらのノードの検査は、他のアプローチを上回る自動化技法を用いる利点を示す。例えばプラークモデルは、主にT1およびPD変数を含有し、含まれる変数のほとんど全てに関して、利用可能なその他の全てを上回って、7−ピクセル近傍計測値が選択された。これらの選択型は、桁は擦れの努力なしでは手動で再現することがほとんど不可能であった。同様に変数の組合せの多くは、ヒトの眼には明らかでない。例えば脂質モデルに関する上部ノードは、T2に関する4−ピクセル近傍、PDの離散コサイン変換および異常変数の最大値の線形組合せである(今日、明白な説明が存在しない組合せ)。確かに、通常のヒューリスティックな方法でこれらを明かしたものはない。
【0117】
【表4】

【0118】
これらのモデルの高度の非線形性に留意することも重要である。以上変数がほとんどの予測変数のうちの1つとして現れる、という事実は、この事実を力説するのに役立つ。陰の単位、群変換、β変換等は、これらのモデルにおける上位変数として出現する入力の全非線形変換である。
【0119】
オーバーフィットを避けるために、予防措置をとった。モデリング・プロセスから完全に取り除けられたいくつかの画像に関して、試験を実施した。図10に示したように、モデルは合理的に良好な仕事を行なって、プラークから筋肉を分離する。筋肉モデルは動脈壁の全体的輪郭を引いて、標識プラーク領域を良好に同定する。この画像は、エキスパート放射線医が最初の場所で標識するよう要求した場合、それは、挑戦的な、そして最終的には上首尾の試験に関してなされた。
【0120】
実施例4
3D血管モデル
本実施例は、医学的画像診断計器を用いて画像形成された血管の三次元モデルを生成するための好ましい方法を説明する。特に図13は、頚動脈分岐領域における頚動脈の3−D透視図を示す。図中、内部動脈壁(1920)は、管腔の境界を表す。プラーク(1910)は、動脈壁の内表面と動脈の外表面(示されていない)の間に存在する。このモデルは、T1様式のみを用いて、11のin vivoMRI組織薄片から得た。モデルを生成するために、以下の過程を用いて、組織薄片画像を変換した。最初に、各薄片に関するデータを低パスフィルター(例えば適応ウィーナ・フィルター)に通した。各薄片に関する管腔中心の位置を、先行薄片からの管腔セントロイドの位置に基づいて概算した。次に、概算管腔位置にセンタリング後、各画像を取り入れた。次に閾値強度の線形検索を実施して、概算セントロイドに近接する管腔領域を明示した。管腔が必要な形態特徴、例えば面積および離心率を有することを立証後、管腔セントロイドの位置を再概算した。次に組織分割を実施して、管腔セントロイド付近の脂質特徴を同定した。
【0121】
言うまでもなく、薄片が頚動脈分岐部の上か下かによって、上記の過程をわずかに修正した。アルゴリズムが2つの管腔(即ち頚動脈分岐より上の薄片における)を追跡していた場合、2つの管腔セントロイドの幾何学平均を用いた。次にその結果生じた薄片を、軸性ミスアラインメントを補償するために、再センタリングした。その他の組織情報、例えば筋肉、外膜およびプラーク構成成分、例えば脂質、出血、繊維質プラークおよびカルシウムに関する情報の付加も、包含され得る。その結果生じたモデルは、プラークサイズ、容積および組成の視覚化および自動定量を可能にする。
【0122】
本明細書中に記載し、特許請求した製造の方法、システムおよび製品は全て、本明細書にかんがみて、過度の実験を伴わずに作製され、遂行され得る。好ましい実施形態および任意の特徴に関して本発明の方法、システムおよびコンピュータープログラムプロダクトを説明してきたが、本発明の本質および範囲を逸脱しない限り、修正および変更が、本明細書中に記載した方法に、ならびに方法の過程または一連の過程において適用され得る、ということは当業者には明らかである。特に、異なるアルゴリズム、ソフトウエアおよびデータが血管プラークの自動化検出および分析のために適合され得る、ということは明らかである。当業者に明らかなこのような等価のまたは類似の適合、装飾、修正および代替物は全て、添付の特許請求の範囲により限定されるような本発明の精神および範囲内にあるとみなされる。
【0123】
本明細書中で広範におよび包括的に本発明を説明してきた。包括的開示内にある狭い範囲の種および亜属群別の各々も、本発明の一部を構成する。これは、本発明の全般的説明を包含するが、但し、切除物質が本明細書中で特定的に説明されているか否かにかかわらず、属から任意の対象物を取り出すが、しかしこれに限定されない。
【0124】
本明細書中に例示的に記載された本発明は、必須事項として、本明細書中に特定的に開示されない任意の素子(単数または複数)の非存在下で適切に実行され得る。用いられた用語および表現は、説明のための用語として用いるものであり、限定するものではなく、このような用語および表現の使用に際しては、図示され、説明された特徴の任意の現行のまたは後に開発された等価物を排除するということは意図されないが、しかし種々の修正は特許請求された本発明の範囲内であり得る、と認識される。さらにまた、「〜を含む」、「〜を包含する」、「〜を含有する」等の用語は、広範に読まれるべきものであり、限定を伴わない。本明細書中で、ならびに添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、本文中に別記しない限り、複数の言及を含む、ということに留意しなければならない。
【0125】
本明細書中に記述した特許、特許出願および出版物は全て、本発明が関連する当該技術分野における当業者のレベルを表す。特許、特許出願および出版物は全て、全ての目的に関して、そして各々の個々の特許、特許出願または出版物が特定的におよび個別に参照により援用されるのと同程度に、その記載内容が参照により本明細書中で援用される。
【0126】
本発明のこれらのおよびその他の態様および実施形態は、以下の詳細な説明および本発明のある種の好ましい実施形態を示す添付の図面に対する言及時に明白になる。図面は以下のように要約され得る:
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、本発明のいくつかの好ましい実施形態の概要を示すフローチャートである。
【図2】図2は、2つのパネルAおよびBを有する。パネルAは、表面コイルからのイルミネーション勾配を示す市販のMRI計器から得られる生磁気共鳴データ(DICOMフォーマットで)から生成される画像である。パネルBは、ヒストグラム等化後のパネルAで示したのと同一画像を現す。
【図3】図3は、4つのパネルA〜Dを有する。パネルAは、T1加重(T1W)モダリティを用いて得られるデータから得られたMRI画像を示す。パネルBは、T2加重(T2W)モダリティを用いて得られるデータから得られたMRI画像を示す。パネルCは、PD加重(PDW)モダリティを用いて得られるデータから得られたMRI画像を示す。パネルDは、in vivoT1W、T2WおよびPDW画像の多モード登録の結果を示す。
【図4】図4は、本発明の状況において有用な予測モデルに関するプロセスを示すフローチャートである。
【図5−1】図5は、MRI画像からのデータラベリングのプロセスを示す4つのパネルA〜Dを有する。言うまでもなく、画像データ、例えばMRI画像は、異なるプロトコール(モダリティ)を用いて収集されるデータから生成され得る。この、図において、パネルAは、3つの標準MRI画像診断モダリティ:陽子密度荷重(PDW)、T1緩和時間(T1)加重(T1W)およびT2緩和時間(T2)加重(T2W)を用いて画像形成されたヒト動脈の横断面のMRI画像を示す。視覚的解釈を容易にするために、これらのPDW、T1WおよびT2W画像(それぞれ510、520および530)は併合されて、パネルBに示した偽色複合MR画像540(緑=PDW、赤=T1、青=T2)を作製し得る。パネルBに示した複合画像において、マルチコントラスト正規化グレースケール画像510、520および530は、それぞれ緑、赤および青チャンネルとして一列にマッピングされ、この場合、各色チャンネルにおいて黒をゼロに、そして白を255にマッピングして色複合画像を作成し、MATLABを用いてそれを三次元的に示した。同様の化学的および環境的特性を有する組織は、同様の色を有する傾向がある。組織型に関するさらなる合図としては、解剖学的位置(例えば筋肉壁の内側または外側、即ち血管の内側または外側)およびテクスチャー(例えば筋肉は縞模様を有する傾向があるが、一方、軟質プラークは典型的には「斑点を有する」ように見える)が挙げられる。放射線専門医はしばしば、このようなデータの詳細手動検査により繊維質または脆弱性プラークを分類し得るが、しかしこのような努力は非常に時間が掛かり、そして主観的である。プラークを分類するための自動化システムを開発するためには、モデルは既知の例(「グラウンド・トゥルース」)に関して「訓練」されねばならない。エキスパートの作業を模倣するためにモデルを訓練し得るが、しかしこれらの画像または画像を生成するために用いられるデータを、考え得る最も客観的な判定基準、例えば組織の組織病理学切片を用いたバリデーションで標識するのが好ましい。パネルCは、パネルAおよびBに示した画像を生成するために用いられる動脈横断面の組織病理学(「グラウンド・トゥルース」)を示す。図5のパネルDは、モデル訓練のために用いられる標識画像を示し、当該組織クラスは各々、異なる標的色で標識されている。動脈筋(中膜、565)は桃色であり;外膜(筋膜またはコラーゲン、570)は明黄色であり;血栓(凝固血液、575)は赤色であり;繊維質プラーク(580)は淡黄色であり;脂質(585)は白色であり;そして血管管腔(590)は黒色である。
【図5−2】図5−1の続き。
【図6】図6は、3つのパネルA〜Cを有し、データラベリングの別の例を示す。パネルAは、2つの動脈の横断面の偽色複合MR画像(610)を示す。MR画像610は、図5に示した偽色画像に関連して記載したような3つのMRIモダリティPDW、T1WおよびT2Wを用いて生成されるグレースケールMR画像を併合することにより生成した。パネルBは、動脈横断面の組織病理を示す。パネルCは、図5のパネルDにおけるMR画像と同様に標識した標識画像(630)を示す。
【図7】図7は、3つのパネルA〜Cを有し、K平均クラスタリングアルゴリズムを用いて処理された画像を示す。
【図8】図8は、標識グラウンド・トゥルース(各パネルの左部分)に対して測定した場合の好ましい実施形態の性能を示す2つのパネルAおよびBを有する。
【図9】図9は、血管プラーク、その構成成分(即ち脂質)および筋肉組織を検出するための3つの予測モデルの性能を要約する表(表A)および3つのグラフを含有する。表Aは、最大コルモゴロフ・フミルノフ統計量(Max−KS)および図面の他の箇所に示したROC曲線のジニ係数測定値を基礎にしたPIPNetモデルの性能を示す。
【図10】図10は、3つのパネルA〜Cを有し、モデル開発法から保持された低質画像に関する本発明の好ましい実施形態の性能を示す。
【図11】図11は、2つのパネルAおよびBを有し、パネルAの画像のパネルBの極座標への管腔中心変換を示す。この変換を用いて、総境界検出アルゴリズムの性能を改良した。
【図12】図12は、2つのパネルAおよびBを有し、2つの動脈横断面に関する組織分割アルゴリズム性能の結果を示す。一旦組織分割が成し遂げられれば、血管壁外側のプラーク構成成分として擬似標識されたピクセルを排除して、擬陽性を低減した。さらにプラーク負担概算は、プラークとして分類されるピクセル対壁内のピクセル数の比を比較することにより得られる。これらの例では、プラーク負担はそれぞれ28%および62%であると概算される。
【図13】図13は、頚動脈分岐の領域における頚動脈の部分の三次元図を示す。モデルにおいて、血管管腔(1940)内の動脈壁(1920)および硬質プラーク(1930)の内部境界が示されているが、一方、動脈の外部境界は示されていない。動脈壁(示されていない)の内表面(1920)および外表面間の脂質(1910)を赤色で示す。モデルにおける硬質プラークはベージュ色である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管系の少なくとも一部におけるアテローム硬化症の程度を査定する自動化方法であって、医学的画像診断システムから得られる患者の血管系の少なくとも1つの血管の少なくとも1つの横断面からの処理可能データをコンピューター処理して、血管がプラークの存在と相関する少なくとも1つの組織を含むか否かを確定し、それにより患者の血管系の少なくとも一部におけるアテローム硬化症の程度を査定することを包含する方法。
【請求項2】
患者の血管系の血管がプラークを含有するか否かを確定する自動化方法であって、医学的画像診断システムから得られる患者の血管系の血管の少なくとも1つの横断面からの処理可能データをコンピューター処理して、血管がプラークの存在と相関する少なくとも1つの組織を含むか否かを確定し、含むと確定されれば、血管がプラークを含有すると確定される方法。
【請求項3】
医学的画像診断システムが非侵襲性画像診断システムである、請求項2記載の自動化方法。
【請求項4】
非侵襲性画像診断システムが、処理可能データが得られる生画像データを生じるためのMRI計器、CT計器、PET計器、サーモグラフィー計器および超音波計器からなる群から選択される1つまたは複数の計器を含む、請求項3記載の自動化方法。
【請求項5】
医学的画像診断システムが処理可能磁気共鳴データが得られる生磁気共鳴データを生じるためのMRI計器を含む、請求項2記載の自動化方法。
【請求項6】
複数の異なる高周波パルスシーケンスシリーズが用いられ、血管中に存在し得る異なる組織のサブセットに関して異なる高周波パルスシーケンスシリーズの各々が生磁気共鳴データを生じさせる、請求項5記載の自動化方法。
【請求項7】
異なる高周波パルスシーケンスシリーズの少なくとも1つがT1−加重データ、T2−加重データ、PDW加重データおよびTOF加重データからなる群から選択される生磁気共鳴データの生成をもたらす、請求項6記載の自動化方法。
【請求項8】
血管が脳および心臓からなる群から選択される器官に血液を供給する血管系の一部を含む、請求項2記載の自動化方法。
【請求項9】
血管が頚動脈および冠動脈からなる群から選択される、請求項2記載の自動化方法。
【請求項10】
患者がヒトである、請求項2記載の自動化方法。
【請求項11】
処理可能データが医学的画像診断システムにより生成される前処理生データにより生成される、請求項2記載の自動化方法。
【請求項12】
処理可能データをコンピューター処理する前に処理可能データを正規化することをさらに包含する、請求項11記載の自動化方法。
【請求項13】
血管が横断面の領域で動脈およびプラークを含むか否かを確定するために処理可能データがコンピューター処理される、請求項1記載の自動化方法。
【請求項14】
組織型の確定がコンピューターによりデータ中で同定される異なる組織型を複数の統計的分類素子と比較することにより成し遂げられる、請求項13記載の自動化方法。
【請求項15】
ロジスティック回帰、決定木、非パラメトリック回帰、フィッシャー判別分析、ベイジアン・ネットワーク・モデリングおよびファジー理論システムからなる群から選択される方法により統計的分類素子が既知の結果データを用いて開発される、請求項14記載の自動化方法。
【請求項16】
複数の保存組織分類素子のうちの少なくとも1つが術後組織学的実験、直接組織検査および1人または複数のエキスパートによる分類からなる群から選択される方法により確定される、請求項15記載の自動化方法。
【請求項17】
血管が横断面の領域で外膜、カルシウム沈着、コレステロール沈着、繊維質プラークおよび血栓からなる群から選択される少なくとも1つの組織をさらに含むか否かを確定するために処理可能データがコンピューター処理される、請求項14記載の自動化方法。
【請求項18】
組織型の確定がコンピューターによりデータ中で同定される異なる組織型を複数の統計的分類素子と比較することにより成し遂げられる、請求項17記載の自動化方法。
【請求項19】
処理可能磁気共鳴データを含む構成成分がコンピューターにより登録される、請求項6記載の自動化方法。
【請求項20】
血管管腔セントロイドおよび血管分枝点からなる群から選択される標識構造を表す表示についての処理可能磁気共鳴データを含む構成成分を整列させることにより登録が達成される、請求項19記載の自動化方法。
【請求項21】
標識構造が物理的標識構造およびコンピューター的標識構造からなる群から選択される、請求項20記載の自動化方法。
【請求項22】
血管の複数の間隔を置いた横断面の処理可能データをコンピューター処理することを包含する、請求項2記載の自動化方法。
【請求項23】
最も距離的に間隔を置かれた血管横断面により結合された領域の少なくとも一部分に関して血管の三次元モデルをコンピューターで描くことをさらに包含する、請求項22記載の自動化方法。
【請求項24】
コンピューター処理に起因するデータを含む出力ファイルを生成することをさらに包含する、請求項2記載の自動化方法。
【請求項25】
出力ファイルが最も距離的に間隔を置かれた血管横断面により結合される領域の少なくとも一部分に関する血管のコンピューター描写三次元モデルをさらに含む、請求項24記載の自動化方法。
【請求項26】
血管の三次元モデル中に存在するプラーク容積をコンピューターで確定することをさらに包含する、請求項23記載の自動化方法。
【請求項27】
血管の三次元モデル中に存在するプラークの組成をコンピューターで確定することをさらに包含する、請求項23記載の自動化方法。
【請求項28】
プラークが脆弱性プラークであるか安定プラークであるかをコンピューターで確定することをさらに包含する、請求項27記載の自動化方法。
【請求項29】
治療レジメンの有効性を査定する自動化方法であって、以下の:
a.請求項26記載の自動化方法を用いて患者におけるプラークの負担を確定し;
b.治療レジメンの経過中に患者におけるプラーク負担を安定化するかまたは低減することが予測される薬剤の投与を包含する治療レジメンを患者に送達し;そして
c.治療レジメン中および/または治療レジメン終了時に、患者におけるプラーク負担が安定化されるかまたは低減されたか否かを確定し、それにより治療レジメンの有効性の査定を可能にする
ことを包含する方法。
【請求項30】
薬剤が治験薬である、請求項24記載の自動化方法。
【請求項31】
血管中に脆弱性プラークを有する患者の治療方法であって、以下の:
a.請求項27記載の自動化方法を用いて患者が血管中の脆弱性プラークを有することを確定し;そして
b.治療レジメンの経過中に破裂する脆弱性プラークの脆弱性を安定化するかまたは低減するよう意図された治療レジメンを患者に送達し、それにより患者を治療する
ことを包含する方法。
【請求項32】
破裂するプラークの脆弱性を安定化するかまたは低減する薬剤の投与を治療レジメンが包含する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
薬剤がスタチン、抗炎症薬および抗凝固薬からなる群から選択される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
その中に具体化されたコンピューター読取りプログラム暗号を有するコンピューター使用可能媒体を含むコンピュータープログラムプロダクトであって、コンピューター読取り可能プログラム暗号を遂行するよう適合されたコンピューター上で請求項1記載の自動化方法を実行するようコンピューター読取り可能プログラム暗号が構成されるコンピュータープログラムプロダクト。
【請求項35】
患者の血管がプラークを含有するか否かを確定するために医学的画像診断システムを用いて得られる患者データを分析するための自動化方法であって、以下の:
a.患者の血管系の血管の少なくとも1つの横断面の処理可能データであって、医学的画像診断システムを用いて収集された生データから得られる処理可能データを得て;
b.処理可能データを受容し、コンピューター処理するよう構成されたコンピューターに処理可能データを伝達して、横断面(単数または複数)の領域における血管がプラークの存在と相関する少なくとも1つの組織を含むか否かを確定し、含むと確定されれば、血管がプラークを含有することが確定され;そして
c.コンピューターを用いて処理可能データをコンピューター処理し、血管がプラークを含有するか否かを確定する
ことを包含する方法。
【請求項36】
医学的画像診断システムおよびコンピューターが異なる位置に置かれる、請求項35記載の自動化方法。
【請求項37】
処理可能データが得られる生データを生成し得る医学的画像診断システムを各々が含む複数の画像診断センターの各々から物理的に取り出される計算センターにコンピューターが存在する、請求項36記載の自動化方法。
【請求項38】
画像診断センターの少なくとも1つが遠距離通信リンクを介して生データを計算センターに伝達する、請求項37記載の自動化方法。
【請求項39】
生データを収集するために用いられる医学的画像診断システムの付属機関であると特定されるアドレスに分析の結果を伝達することをさらに包含する、請求項35記載の自動化方法。
【請求項40】
患者の血管系の血管がプラークを含有するか否かを分析するためのシステムであって、以下の:
a.請求項34記載のコンピュータープログラムプロダクトにおいて具体化されるコンピューター読取り可能暗号を遂行するよう適合されるコンピューター;
b.コンピューターと連絡するコンピューターデータ保存システムであって、コンピューターに送り、コンピューターから受信し、および/またはコンピューターにより処理されるデータを保存するよう構成されるコンピューターデータ保存システム;ならびに
c.コンピューターにより処理されるべきデータを受信するための、またはコンピューターによる処理後のデータを送るための通信インターフェース(コンピューターに操作可能的に連結)
を含むシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−502676(P2007−502676A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524086(P2006−524086)
【出願日】平成16年8月21日(2004.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/027171
【国際公開番号】WO2005/020790
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506059159)アイシェム コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】