説明

血管新生抑制剤

【課題】 血管新生をより効果的に抑制し得るとともに、生体に対する安全性が向上した、血管新生抑制剤を提供すること。
【解決手段】 食品分野、医薬品分野等で利用可能な、血管新生抑制剤が開示されている。本発明の血管新生抑制剤は、褐藻類こんぶ目こんぶ科のマコンブ、褐藻類こんぶ目ちがいそ科のアラメ、サガラメ、ツルアラメ、クロメ、カジメ、ワカメ、アオワカメ、ヒロメ、アイヌワカメ、およびチガイソ;褐藻類ひばまた目ほんだわら科のホンダワラ、ヒジキ、およびアカモク;褐藻類まがまつも目もずく科のモズクおよびオキナワモズク;および、紅藻類スギノリ目すぎのり科に属する海藻;からなる群より選択される少なくとも1種の海藻由来の抽出物を有効成分として含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血管新生抑制剤に関し、より詳細には、生体内で血管の新生を抑制することにより、癌の増殖または転移、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチなどの血管新生病を予防または治療し得る、血管新生抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
血管新生は、発生、創傷治癒等において重要な役割を果たす。その一方で、血管新生は、癌の増殖または転移、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性、慢性関節リウマチ、乾癬などの血管新生病にも関与することが知られている。
【0003】
血管新生は、既存の血管から新たに血管が形成される過程であると理解されている。血管新生は、血管内皮細胞によるプロテアーゼの産生後、内皮細胞の遊走、増殖および分化を経て起こる。
【0004】
上記血管新生病と血管新生との関係については、近年、血管内皮細胞に特異的に働き、血管新生を促進する因子であるVEGF(血管内皮成長因子:Vascular Endothelial Growth Factor)、アンジオポエチンなどのリガンドおよびそのレセプター系が次々と見出されたことにより明確にされてきた。したがって、血管新生を抑制することがこれら疾病の予防および治療に有効であると考えられている。
【0005】
従来より、このような血管新生の抑制を目的とした種々の血管抑制剤が知られている。このような血管抑制剤としては、例えば、内皮由来過分極因子(EDHF;Endothelium−Derived Hyperpolarizing Factor)の作用を阻害し、かつ血管新生を抑制する物質として、Kチャンネルブロッカーを有効成分として含有するもの(特許文献1)、カルボリン誘導体を有効成分とするもの(特許文献2)、アスペルギルス(Aspergillus)属に属する特定の菌株が生産する化合物を有効成分として含有するもの(特許文献3)、ドコサペンタエン酸(DPA)またはその誘導体を有効成分とするもの(特許文献4)、およびポリアルコキシフラボノイドを有効成分として含有するもの(特許文献5)が知られている。
【0006】
しかし、このような従来の血管新生抑制剤は、細胞毒性が高く、副作用の発生が懸念される、製品を得るまでに多く製造工程を必要とする、あるいは上記血管新生病の予防または治療を目的とする上で、血管新生に対する抑制効果が未だ充分とはいえず、実用性の点で懸念される、などの問題が指摘されている。特に、このような疾病の予防または治療にあたっては、長期間に継続して行うことが必要なため、効果的な血管新生の抑制と副作用の回避との両方を達成し得る血管新生抑制剤が所望されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−38441号公報
【特許文献2】特開2003−321363号公報
【特許文献3】特開2003−183249号公報
【特許文献4】特開2003−308765号公報
【特許文献5】特開2004−083417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、血管新生をより効果的に抑制し得るとともに、生体に対する安全性が向上した、血管新生抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、褐藻類こんぶ目こんぶ科のマコンブ(Laminaria japonica)、褐藻類こんぶ目ちがいそ科のアラメ(Eisenia bicyclis)、サガラメ(Eisenia arborea)、ツルアラメ(Ecklonia stlonifera)、クロメ(Ecklonia kurome)、カジメ(Ecklonia cava)、ワカメ(Undaria pinnatifida)、アオワカメ(Undaria peterseniana)、ヒロメ(Undaria undarioides)、アイヌワカメ(Alaria praelomga)、およびチガイソ(Alaria crassifolia);褐藻類ひばまた目ほんだわら科のホンダワラ(Sargassum fuluvellum)、ヒジキ(Hizikia fusiforme)、およびアカモク(Sargassum horneri);褐藻類まがまつも目もずく科のモズク(Nemacystus decipieus)およびオキナワモズク(Cladosiphon okamuranus);および、紅藻類スギノリ目すぎのり科に属する海藻;からなる群より選択される少なくとも1種の海藻由来の抽出物を有効成分として含有する、血管新生抑制剤である。
【0010】
好ましい実施形態では、上記抽出物は、上記海藻由来の熱水粗抽出物を含有する50(v/v)%以上のC1〜C3アルコール液の上清から得られた抽出物である。
【0011】
さらに好ましい実施形態では、上記抽出物は、上記上清の濃縮物を、40(v/v)%から90(v/v)%のC1〜C3アルコール水溶液を用いるカラムクロマトグラフィーにかけることにより得られた画分由来の抽出物である。
【0012】
さらにより好ましい実施形態では、上記カラムクロマトグラフィーに用いる吸着剤はスチレン−ジビニルベンゼン系吸着剤である。
【0013】
本発明は、海藻由来の抽出物を有効成分として含有する血管新生抑制剤であって、該抽出物が該抽出物に含まれる固形分の重量を基準としてフロロタンニンを15重量%以上の割合で含有する、血管新生抑制剤である。
【0014】
本発明はまた、フロロタンニンを有効成分として含有する、血管新生抑制剤である。
【0015】
好ましい実施形態では、上記フロロタンニンは海藻由来である。
【0016】
本発明はまた、血管新生抑制剤の製造方法であって、
褐藻類こんぶ目こんぶ科のマコンブ(Laminaria japonica)、褐藻類こんぶ目ちがいそ科のアラメ(Eisenia bicyclis)、サガラメ(Eisenia arborea)、ツルアラメ(Ecklonia stlonifera)、クロメ(Ecklonia kurome)、カジメ(Ecklonia cava)、ワカメ(Undaria pinnatifida)、アオワカメ(Undaria peterseniana)、ヒロメ(Undaria undarioides)、アイヌワカメ((Alaria praelomga)、およびチガイソ(Alaria crassifolia);褐藻類ひばまた目ほんだわら科のホンダワラ(Sargassum fuluvellum)、ヒジキ(Hizikia fusiforme)、およびアカモク(Sargassum horneri);褐藻類まがまつも目もずく科のモズク(Nemacystus decipieus)およびオキナワモズク(Cladosiphon okamuranus);および、紅藻類スギノリ目すぎのり科に属する海藻;からなる群より選択される少なくとも1種の海藻を、60℃から100℃の熱水中で抽出して熱水粗抽出物を得る工程;
該熱水粗抽出物に、C1〜C3アルコールまたはC1〜C3アルコール水溶液と合わせて、50(v/v)%以上の該アルコールを含有するアルコール液を得る工程;ならびに
該アルコール液の上清を分取する工程;
を包含する、方法である。
【0017】
好ましい実施形態では、さらに、上記上清を濃縮して、該上清の濃縮物を得る工程;および該上清の濃縮物を、40(v/v)%から90(v/v)%のC1〜C3のアルコール水溶液を用いるカラムに通す工程;を包含する。
【0018】
さらに好ましい実施形態では、上記カラムはスチレン−ジビニルベンゼン系吸着剤を含有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、血管新生をより効果的に抑制し得るとともに、生体に対する安全性をも向上させることができる。このため、本発明の血管新生抑制剤は日常的な使用がより可能となり、食品分野、医薬分野などの種々の分野における汎用性を高めることができる。本発明の血管新生抑制剤はまた、固形腫瘍(胃癌、大腸癌、肺癌、膵臓癌等)の増殖・転移、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、網膜静脈閉鎖症、網膜動脈閉鎖症等の網膜疾患、新生血管性緑内障、リュウマチ、リュウマチ性関節炎、乾癬等の各種炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞等の病的状態に対する予防または治療の目的に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず、本発明の第一の血管新生抑制剤について説明する。
【0021】
本発明の第一の血管新生抑制剤は、海藻由来の抽出物を有効成分として含有する。
【0022】
本発明に用いられる海藻の例としては、褐藻類のこんぶ目こんぶ科、褐藻類こんぶ目ちがいそ科、褐藻類ひばまた目ほんだわら科、褐藻類ながまつも目もずく科、または紅藻類スギノリ目すぎのり科に属する海藻が挙げられる。
【0023】
上記海藻に包含される、具体的な例としては、褐藻類こんぶ目こんぶ科のマコンブ(Laminaria japonica)、褐藻類こんぶ目ちがいそ科のアラメ(Eisenia bicyclis)、サガラメ(Eisenia arborea)、ツルアラメ(Ecklonia stlonifera)、クロメ(Ecklonia kurome)、カジメ(Ecklonia cava)、ワカメ(Undaria pinnatifida)、アオワカメ(Undaria peterseniana)、ヒロメ(Undaria undarioides)、アイヌワカメ((Alaria praelomga)、およびチガイソ(Alaria crassifolia);褐藻類ひばまた目ほんだわら科のホンダワラ(Sargassum fuluvellum)、ヒジキ(Hizikia fusiforme)、およびアカモク(Sargassum horneri);褐藻類まがまつも目もずく科のモズク(Nemacystus decipieus)およびオキナワモズク(Cladosiphon okamuranus);ならびに紅藻類スギノリ目すぎのり科に属する海藻;が挙げられる。本発明に用いられる海藻としては、特に、海藻自体の生産量が比較的多く入手が容易であり、かつ後述する血管新生に対する抑制作用を有する抽出物の画分がより得られ易いという理由から、アラメ、クロメ、ワカメ、ヒジキが好ましい。
【0024】
本明細書において、海藻とは、これらの海藻の全草自体、あるいは根、茎、および葉を包含する少なくとも一つの部位を包含していう。本発明に用いられる海藻の形態は、未加工のもの、断片、細片または粉末を包含する。さらに、本発明に用いられる海藻は、乾燥物または生の状態のもののいずれをも包含する。
【0025】
また、本発明において、抽出物とは、上記のような海藻を、水、極性または非極性の溶媒、あるいはこれらの混合物を抽出溶媒として用い適切な条件で抽出された抽出物を意味する。抽出物の形態は特に限定されず、抽出液、あるいは当該抽出液を当業者が通常用いる手段により濃縮または乾燥して得られる粉末またはペースト状物も含まれる。
【0026】
本発明に用いられる海藻由来の抽出物は、好ましくは、上述したような種類の海藻由来の水および/またはアルコール(例えば、メタノール、エタノール、またはプロパノール)かえら抽出されたもの、より好ましくは、上述したような種類の海藻由来の熱水粗抽出物を含有するC1〜C3アルコール液の上清から得られたもの、である。特に、「海藻由来の熱水粗抽出物を含有するC1〜C3アルコール液の上清から得られたもの」は、後述するような操作を通じて、上記海藻から熱水粗抽出物を得、次いで、これにC1〜C3アルコールまたはC1〜C3アルコール水溶液と合わせた、80%(v/v)%以上のC1〜C3アルコール液から、上清を分取して得ることができる。
【0027】
本発明の第一の血管新生抑制剤において、上記抽出物は、当該抽出物に含まれる固形分の重量を基準として、フロロタンニンを好ましくは15重量%以上、より好ましくは18重量%〜100重量%、さらにより好ましくは30重量%〜99重量%、さらにより好ましくは60重量%〜99重量%、さらにより好ましくは60重量%〜99重量%の割合で含有する。
ここで、本明細書中に用いられる用語「抽出物に含まれる固形分の重量」とは、上記抽出物を構成する液体成分を取除く(例えば、蒸発させる)ことにより、固体成分として残存し得る物質の重量を指して言う。当該抽出物がこのような範囲をフロロタンニン含量を満足することにより、血管新生に対する抑制作用は著しく向上する。なお、本明細書中に用いられる用語「フロロタンニン」とは、一般に海藻タンニンとも呼ばれるポリフェノールの一種であり、フロログルシノールを基本骨格単位とする、フロロタンニン類全体を包含する高分子化合物を指して言う。本発明に用いられ得るフロロタンニンは、1種の当該フロロタンニン類または複数の当該フロロタンニン類でなる混合物のいずれをも包含する。
【0028】
次に、本発明の第二の血管新生抑制剤について説明する。
【0029】
本発明の第二の血管新生抑制剤は、海藻由来の抽出物を有効成分として含有し、該抽出物は該抽出物に含まれる固形分の重量を基準としてフロロタンニンを15重量%以上、好ましくは18重量%〜100重量%、より好ましくは30重量%〜99重量%、さらにより好ましくは60重量%〜99重量%、さらにより好ましくは60重量%〜99重量%の割合で含有する。
【0030】
本発明の第二の血管新生抑制剤は、海藻中に含まれるフロロタンニンが上記範囲で含有されていることが重要である。よって、この含有量の範囲を満足する限り、使用され得る海藻の種類は特に限定されない。本発明の第二の血管新生抑制剤に含まれる抽出物として使用可能な海藻の例としては、褐藻類または紅藻類に属する海藻が挙げられる。また、これら褐藻類または紅藻類のより具体的な例としては、褐藻類のこんぶ目こんぶ科、褐藻類こんぶ目ちがいそ科、褐藻類ひばまた目ほんだわら科、褐藻類ながまつも目もずく科、または紅藻類スギノリ目すぎのり科に属する海藻が挙げられるが、これらもまた特に限定されない。
【0031】
本発明の第二の血管新生抑制剤に用いられ得る海藻のさらに具体的な例としては、上記本発明の第一の血管新生抑制剤に用いられる海藻と同様のものが包含される。
【0032】
本発明の第一および第二の血管新生抑制剤において、当該抑制剤に用いられる海藻由来の抽出物は、特に限定されないが、例えば、以下のようにして製造される。
【0033】
まず、上記海藻を熱水中に所定時間浸漬することにより、熱水粗抽出物が製造される。
【0034】
この浸漬における当該海藻と熱水との量比は特に限定されないが、例えば、海藻100g(乾燥重量)に対して、好ましくは1リットル〜10リットル、より好ましくは2リットル〜5リットルの熱水が使用される。
【0035】
使用される熱水の温度(抽出温度)は、好ましくは60℃〜100℃、より好ましくは80℃〜100℃、さらにより好ましくは90℃〜100である。なお、上記海藻を浸漬している間は、本発明に用いられる有効成分がより抽出されやすくする目的で、熱水の温度を低下させることのないよう、当業者に公知の手段を用いて加熱することにより温度を維持することが好ましい。
【0036】
熱水中に浸漬する時間(抽出時間)は、使用する抽出温度によって変化するため、必ずしも限定されないが、例えば、熱水をほぼ100℃に維持する場合、好ましくは1分〜120分、より好ましくは10分〜60分である。抽出時間をこのような範囲内で行うことにより、本発明に用いられる有効成分がより効率良く抽出され得るとともに、不要物の過度の抽出を防止することができる。
【0037】
上記浸漬の後、例えば、室温まで放冷され、濾過または遠心分離により海藻が取り除かされる。こうして熱水粗抽出物を得ることができる。なお、得られた熱水粗抽出物は、その後、予め不純物を除去する目的で、ヘキサン、クロロホルムなどの有機溶媒と合わせ、有機層が取り除かれた水層由来のものであってもよい。さらに、得られた熱水粗抽出物は、後述の工程に対し、そのまま用いられてもよく、あるいは必要に応じ、当業者に公知の手段を用いて水分を蒸発させた乾固物またはペースト状物の形態で用いられてもよい。
【0038】
次いで、当該熱水粗抽出物にC1〜C3アルコールまたはC1〜C3アルコール水溶液が合わされ、好ましくは50(v/v)%以上、より好ましくは60(v/v)%〜98(v/v)%の当該アルコール濃度を有するC1〜C3アルコール液が調製される。ここで、調製され得るC1〜C3アルコール液の濃度は、好ましくはこのような範囲において、当業者によって任意の濃度に設定され得る。すなわち、使用する海藻の種類、使用部位、産地、採取時期、採取後の保存状態等によって、本発明において重要な血管新生を抑制する成分の含量が変動することがある。また、後述する一連の抽出操作においても、得られる成分含量に誤差が生じることもある。よって、当業者は。このような条件に応じて、当該調製され得るアルコール液の濃度を好ましくはこのような範囲内で任意に設定することができる。
【0039】
より具体的には、当該熱水粗抽出物を、1個〜3個の炭素原子を有するアルコールまたは所定濃度に調製された1個〜3個の炭素数を有するアルコール水溶液(含水アルコール)と合わすことにより、上記のようなアルコール濃度を有するアルコール液が調製される。このような操作において使用可能な1個〜3個の炭素原子を有するアルコールの例としては、メタノール、エタノールおよびプロパノール、ならびにそれらの組合わせが挙げられる。生体に対する安全性をさらに向上させることを考慮すれば、エタノールを用いることが好ましい。このようなアルコールまたは含水アルコールの使用量は、合わせる熱水粗抽出物の量によって変化するため特に限定されない。
【0040】
その後、このC1〜C3アルコール液の上清が分取される。
【0041】
上記アルコール濃度に設定されたアルコール液を調製することにより、当該アルコール液に不溶な物質が沈殿する場合がある。上清の分取はこの沈殿物を除去する目的で行われ、上清は当業者に周知の方法(例えば、濾過または遠心分離)によって取り出すことができる。
【0042】
このようにして本発明に用いられる海藻由来の抽出物を製造することができる。なお、得られた海藻由来の抽出物は、本発明における血管新生抑制作用を高める目的で精製が行われてもよい。この精製は、例えば、上記で得られた上清を、当業者に周知の手段を用いて濃縮することにより濃縮物を得た後、好ましくは40(v/v)%〜90(v/v)%、より好ましくは50(v/v)%〜80(v/v)%のC1〜C3アルコール(好ましくはエタノール)水溶液を用いるカラムに通すことによって行われる。このカラムクロマトグラフィーに有用な吸着剤は、好ましくは芳香族系吸着剤であり、より具体的な例としては、スチレン−ジビニルベンゼン系吸着剤が挙げられる。スチレン−ジビニルベンゼン系吸着剤は、例えば、ダイヤイオンHP20という商品名で三菱化学(株)より市販されている。なお、本発明においては、血管新生抑制作用をさらに高める目的で、上記C1〜C3アルコール水溶液を用いる精製を行う前に、上記カラムに対し、水(例えば、蒸留水)を用いて予備的な精製を行うことが好ましい。さらに、この水を用いる予備的な精製は複数回に分けて行うことが好ましい。
【0043】
上記クロマトグラフィーを行うことにより、より血管新生抑制作用が高められた画分を抽出することができる。得られた画分は、本発明の血管新生抑制剤としてそのまま使用することができる。
【0044】
本発明の血管新生抑制剤は、経口による投与または摂取を目的としたもの、経皮吸収を目的としたもの、あるいは皮膚外用剤を目的としたもののいずれの目的にも使用することができる。
【0045】
本発明の血管新生抑制剤はまた、有効成分である上記海藻由来の抽出物以外に、目的に応じて他の成分を含有していてもよい。本発明に含有され得る他の成分の例としては、水;アルコール;食肉加工品;米、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、スイートポテト、大豆、コンブ、ワカメ、テングサなどの一般食品材料およびそれらの粉末;デンプン、水飴、乳糖、グルコース、果糖、スクロース、マンニトールなどの糖類;香辛料、甘味料、食用油、ビタミン類などの一般的な食品添加物;界面活性剤;賦形剤;着色料;保存料;コーティング助剤;ラクトース;デキストリン;コーンスターチ;ソルビトール;結晶性セルロース;ポリビニルピロリドン;油分;保湿剤;増粘剤;防腐剤;香料;ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の血管新生抑制剤はさらに、必要に応じて他の薬剤(漢方薬を包含する)を含有していてもよい。このような他の成分および/または他の薬剤の含有量は、特に限定されず、当業者によって適切な量が選択され得る。
【0046】
さらに、本発明の血管新生抑制剤は、必ずしもインビボまたはインビトロのいずれに限定されることなく、さらに血管新生に対する抑制作用を発揮させたい任意の用途において広範に利用され得る。すなわち、本発明の血管新生抑制剤は、特に限定されないが、例えば、健康食品などの食品組成物に添加される添加物の一種として使用されてもよく、家畜または養殖魚などの生産分野に利用される飼料組成物として、そのままあるいは他の飼料用材料と組み合わせて使用されてもよく、あるいは医薬品、医薬部外品などの医薬組成物として、そのままあるいは他の医薬組成物と組み合わせて使用されてもよい。
【0047】
本発明の血管新生抑制剤が食品組成物として使用される場合、その形態には固定食品に限定されず、飲料(例えば、液体飲料)のようなものを包含される。より具体的な例としては液状、ペースト状、固形状等の形態でなる、茶飲料、コーヒー飲料、清涼飲料、乳飲料、菓子類、シロップ類、果実加工品、野菜加工品、漬物類、畜肉製品、魚肉製品、珍味類、缶・ビン詰類、即席飲食物、内服液、肝油ドロップ、口中清涼剤、ゼリーなどが挙げられるが特にこれらに限定されない。本発明のβ−グルクロニダーゼ阻害剤を含有するこのような食品組成物は、当業者に公知の手法を用いて製造され得る。
【0048】
本発明の血管新生抑制剤が医薬組成物として使用される場合、その投与剤形は特に限定されず、日本薬局方に記載の方法にしたがって適切な剤形に加工される。投与剤形のより具体的な例としては、経口投与を目的とする医薬組成物の場合、カプセル剤、錠剤、粉剤、顆粒剤、細粒剤、徐放剤、液剤などの剤形が挙げられ、そして非経口投与を目的とする医薬組成物の場合、注射剤、輸液剤、点眼剤、軟膏剤、クリーム剤、貼付剤などの剤形が挙げられる。用量は、対象となる者の体重等の条件によって容易に変動し得るため、当業者によって適宜選択され得る。
【0049】
本発明の血管新生抑制剤は、その使用形態に応じて当該分野で通常用いる方法によって製造され、その形態に応じた方法で適宜に適量摂取または適用することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例によって具体的に記述する。しかし、これらによって本発明は制限されるものではない。
【0051】
<実施例1:アラメ抽出物の製造>
凍結乾燥した100gのアラメをミキサーにかけ、乾燥粉末を調製した。これに、2Lの蒸留水を添加し、100℃にて10分間加熱して抽出を行い、抽出残渣を濾過にて取除いて、熱水粗抽出物(700ml)を得、これにエタノールを添加して90(v/v)%のエタノール液に調製した。
【0052】
その後、得られたエタノール液を濾過して上清のみを取出した。次いで、この上清を減圧濃縮して、350mlのエタノール可溶画分を得た。このエタノール可溶画分を350mlのクロロホルムと合わせ分液抽出して得られた水層のうち、50mlをスチレン−ジビニルベンゼン吸着剤(三菱化学(株)製ダイヤイオンHP20)を含有するカラム(φ3.8cm×30cm)に充填し、溶出液として(A)蒸留水(500ml)、(B)蒸留水(500mL)、(C)30(v/v)%エタノール水溶液(500ml)、(D)60(v/v)%エタノール水溶液(500ml)、および(E)100(v/v)%エタノール(500ml)を用いて順次溶出し、粗画分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)をそれぞれ500ml分割収集した。次いで、粗画分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)の溶媒をそれぞれ減圧下にて留去した後、再度40mlの蒸留水に溶解または再懸濁して凍結乾燥し、アラメ画分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)を得た。
【0053】
<実施例2:細胞培養および管腔染色>
血管新生キット(倉敷紡績(株)製Cat No.KZ−1000)を用い、同キットに添付の取扱い説明書にしたがって、以下を行った:まず、同キットの細胞について、輸送中のダメージを回復させるために、この細胞を37℃、5%COインキューベーターにて3時間静置した。各ウェルの培地を、培地中の最終濃度が50μg/mlとなるように実施例1で得られたアラメ画分(D)、および培地中の最終濃度が10ng/mlとなるようにVEGF(血管内皮成長因子:Vascular Endothelial Growth Factor)をそれぞれ添加した新たな培地に置き換え、37℃、5%COインキュベーターにて培養を行った。培地の交換を、培養開始後、第4日目、第7日目、および第9日目にそれぞれ同様の方法で行った。
【0054】
培養開始後第11日目に、上記ウェルに対し、管腔染色キット(CD31染色用)(倉敷紡績(株)製Cat No.KZ−1225)を用いた染色を以下のようにして行った:まず、上記ウェルから培地を除去し、ダルベッコリン酸緩衝液PBS(−)1mlで細胞を洗浄した後、氷冷70%メタノール1mlを各ウェルに添加し、室温で30分間静置することにより細胞を固定した。次いで、エタノールを除去した後、1%BSAを含むPBS(−)(以下、ブロッキング剤という)1mlを各ウェルに添加し、細胞を洗浄した。さらに、ブロッキング剤で4000倍まで希釈した1次抗体0.5mlを各ウェルに添加し、37℃で60分間インキュベートした。1次抗体を除去し、ブロッキング剤で細胞を3回洗浄した後、ブロッキング剤で500倍にまで希釈した2次抗体0.5mlを各ウェルに添加し、37℃で60分間インキュベートした。インキュベート後、2次抗体を除去し、各ウェルを1mlのミリQ水で3回洗浄した。
【0055】
他方、2錠のBCIP/NBT(ブロモクロロインドリルリン酸/ニトロブルーテトラゾリウム)を20mlのミリQ水に溶解し、濾過した溶液を基質溶液とした。上記ウェルに、この基質溶液を0.5mlづつ添加し、管腔が深紫色になるまで(約10分間)37℃でインキュベートした。基質溶液を除去し、各ウェルを1mlのミリQ水で3回洗浄した後、プレートをそのまま静置して自然乾燥した。1ウェルあたり、の代表的な3視野をデジタルスチルカメラを備える倒立顕微鏡((株)ニコン製DIAPHOT−TMD)を用い、倍率40倍で撮影し、その画像を専用の解析ソフト(倉敷紡績(株)製血管新生定量ソフト)に取り込んで、当該画像内に存在する血管の管腔長さ、管腔面積、管腔ジョイント数(分岐点の数)および管腔パス数(分岐して得られた枝の数)の解析を行った。得られた、当該長さ、面積、ジョイント数およびパス数について、後述の比較例1(コントロール)で得られた結果を100%として再計算を行った。
【0056】
本実施例で得られた画像を示す写真を図1に示す。また、コントロールに対して得られた、当該画像が示す、管腔長さ、管腔面積、管腔ジョイント数および管腔パス数の結果をそれぞれ図4〜図7に示す。
【0057】
<実施例3:細胞培養および管腔染色>
各ウェルの培地に対し、培地中の最終濃度が5μg/mlとなるように実施例1で得られたアラメ画分(D)、および培地中の最終濃度が10ng/mlとなるようにVEGFをそれぞれ添加した培地を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてインキュベートおよび管腔染色を行った。
【0058】
本実施例で得られた顕微鏡写真を図2に示す。また、コントロールに対して得られた、当該画像が示す、管腔長さ、管腔面積、管腔ジョイント数および管腔パス数の結果をそれぞれ図4〜図7に示す。
【0059】
<比較例1:細胞培養および管腔染色>
各ウェルの培地に対し、実施例1で得られたアラメ画分(D)を含有させることなく、培地中の最終濃度が10ng/mlとなるようにVEGFを添加した培地(コントロール)を用いたこと以外は、実施例2と同様にしてインキュベートおよび管腔染色を行った。
【0060】
本比較例で得られた画像を示す写真を図3に示す。また、本比較例(コントロール)で得られた、当該画像が示す、管腔長さ、管腔面積、管腔ジョイント数および管腔パス数をそれぞれ100%とした際の結果を図4〜図7に示す。
【0061】
図1〜図3に示されるように、コントロールの培地を用いた比較例1の顕微鏡写真では、一連のインキュベートを行うことにより、ウェル内に血管(図中、複雑に分岐した枝状のもの)が新たに多く形成されているのに対し、実施例2(図1)および実施例3(図2)の顕微鏡写真によれば、そのような枝状のものがほとんど形成されていない。このことから、本実施例に用いたアラメ画分(D)は、血管新生に対してその新生を抑制する効果を有していることがわかる。特に、実施例3(培地最終濃度5μg/ml)に対して、より高濃度(培地最終濃度50μg/ml)に設定された実施例2では、血管新生がほとんど生じておらず、血管新生に対する抑制効果がより高められていたことがわかる。
【0062】
また、図4〜図7に示されるように、実施例2および3で使用したアラメ画分(D)は、コントロール(比較例1)に対して、血管の管腔長さ、管腔面積、管腔ジョイント数、および管腔パス数のいずれにおいても低い値を示しており、充分な血管新生抑制効果を有していることがわかる。さらに、上記顕微鏡写真と同様、アラメ画分(D)の濃度を高くするほど、管腔長さ、管腔面積、管腔ジョイント数および管腔パス数のいずれにおいても、その値は低減する傾向にあることもわかる。
【0063】
<実施例4:アラメ抽出物の製造>
凍結乾燥した100gのアラメをミキサーにかけ、乾燥粉末を調製した。これに、2Lの蒸留水を添加し、100℃にて10分間加熱して抽出を行い、抽出残渣を濾過にて取除いて、熱水粗抽出物(700ml)を得た。次いで、得られた熱水粗抽出物のうち、ビーカーに取分けた100mlの当該抽出液に、これにエタノールを添加して90(v/v)%のエタノール液に調製した。
【0064】
その後、得られたエタノール液を濾過して上清のみを取出した。次いで、この上清を減圧濃縮かつ凍結乾燥して、0.9gのエタノール可溶画分(F)を得た。
【0065】
血管新生キット(倉敷紡績(株)製Cat No.KZ−1000)を用い、同キットに添付の取扱い説明書にしたがって、以下を行った:まず、同キットの細胞について、輸送中のダメージを回復させるために、この細胞を37℃、5%COインキューベーターにて3時間静置した。各ウェルの培地を、培地中の最終濃度が50μg/mlとなるように上記で得られたエタノール画分(F)、および培地中の最終濃度が10ng/mlとなるようにVEGF(血管内皮成長因子:Vascular Endothelial Growth Factor)をそれぞれ添加した新たな培地に置き換え、37℃、5%COインキュベーターにて培養を行った。培地の交換を、培養開始後、第4日目、第7日目、および第9日目にそれぞれ同様の方法で行った。
【0066】
培養開始後第11日目に、上記ウェルに対し、管腔染色キット(CD31染色用)(倉敷紡績(株)製Cat No.KZ−1225)を用いた染色を以下のようにして行った:まず、上記ウェルから培地を除去し、ダルベッコリン酸緩衝液PBS(−)1mlで細胞を洗浄した後、氷冷70%メタノール1mlを各ウェルに添加し、室温で30分間静置することにより細胞を固定した。次いで、エタノールを除去した後、1%BSAを含むPBS(−)(以下、ブロッキング剤という)1mlを各ウェルに添加し、細胞を洗浄した。さらに、ブロッキング剤で4000倍まで希釈した1次抗体0.5mlを各ウェルに添加し、37℃で60分間インキュベートした。1次抗体を除去し、ブロッキング剤で細胞を3回洗浄した後、ブロッキング剤で500倍にまで希釈した2次抗体0.5mlを各ウェルに添加し、37℃で60分間インキュベートした。インキュベート後、2次抗体を除去し、各ウェルを1mlのミリQ水で3回洗浄した。
【0067】
他方、2錠のBCIP/NBT(ブロモクロロインドリルリン酸/ニトロブルーテトラゾリウム)を20mlのミリQ水に溶解し、濾過した溶液を基質溶液とした。上記ウェルに、この基質溶液を0.5mlづつ添加し、管腔が深紫色になるまで(約10分間)37℃でインキュベートした。基質溶液を除去し、各ウェルを1mlのミリQ水で3回洗浄した後、プレートをそのまま静置して自然乾燥した。1ウェルあたり、の代表的な3視野をデジタルスチルカメラを備える倒立顕微鏡((株)ニコン製DIAPHOT−TMD)を用い、倍率40倍で撮影し、その画像を専用の解析ソフト(倉敷紡績(株)製血管新生定量ソフト)に取り込んで、当該画像内に存在する血管の管腔長さ、管腔面積、管腔ジョイント数(分岐点の数)および管腔パス数(分岐して得られた枝の数)の解析を行った。得られた、当該長さ、面積、ジョイント数およびパス数について、上記比較例1(コントロール)で得られた結果を100%として再計算を行った。
【0068】
コントロールに対する、本実施例で得られた画像が示す、管腔長さ、管腔面積、管腔ジョイント数および管腔パス数の結果をそれぞれ図8〜図11に示す。
【0069】
<実施例5:アラメ抽出物の製造>
凍結乾燥した100gのアラメをミキサーにかけ、乾燥粉末を調製した。これに、2Lの蒸留水を添加し、100℃にて10分間加熱して抽出を行い、抽出残渣を濾過にて取除いて、熱水粗抽出物(700ml)を得た。次いで、得られた熱水粗抽出物のうち、ビーカーに取分けた100mlの当該抽出液、これにエタノールを添加して60(v/v)%のエタノール液に調製した。
【0070】
その後、得られたエタノール液を濾過して上清のみを取出した。次いで、この上清を減圧濃縮かつ凍結乾燥して、1.2gのエタノール可溶画分(G)を得た。
【0071】
エタノール可溶画分(F)の代わりに、このエタノール可溶画分(G)を用い、各ウェルの培地に対し、培地中の最終濃度が50μg/mlとなるように当該エタノール可溶画分(G)、および培地中の最終濃度が10ng/mlとなるようにVEGFをそれぞれ添加した培地を用いたこと以外は、実施例4と同様にしてインキュベートおよび管腔染色を行った。
【0072】
コントロールに対する、本実施例で得られた画像が示す、管腔長さ、管腔面積、管腔ジョイント数および管腔パス数の結果をそれぞれ図8〜図11に示す。
【0073】
図8〜図11に示されるように、実施例4および5で使用したエタノール可溶画分(F)および(G)は、コントロール(比較例1)に対して、血管の管腔長さ、管腔面積、管腔ジョイント数、および管腔パス数のいずれにおいても低い値を示しており、充分な血管新生抑制効果を有していることがわかる。
【0074】
<実施例6:フロロタンニンの定量>
実施例1で得られたアラメ画分(A)〜(E)、ならびに実施例4および5で得られたエタノール可溶画分(F)および(G)、をそれぞれ100mgづつ正確に量りとり、各画分の総フロロタンニン量を、フロログルシノールを標準物質として用いるFolin−Denis法(日本食品科学工学会誌,2002年,第49巻,pp.507−511)により測定した。得られたそれぞれの総フロロタンニン量(%)を表1および表2に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
表1に示されるように、実施例1で得られたアラメ画分(A)〜(E)はいずれもフロロタンニンが含まれている一方で、その含有量は画分によって著しく異なっていることがわかる。特に、このアラメ画分(D)の結果と、実施例2で得られた顕微鏡写真(図1および図2)、ならびに管腔長さ、管腔面積、管腔ジョイント数および管腔パス数の結果を考慮すれば、上記で示された血管新生抑制効果は、アラメ画分(D)に主成分として含まれるフロロタンニンが大きく寄与している可能性が考えられる。また、表2に示されるように、エタノール可溶画分を得るために、上記熱水粗抽出物にエタノールを添加して調製されるエタノール液は、その調製濃度が特に60(v/v)%〜98(v/v)%の範囲内にある(実施例4は90(v/v)%に、実施例5は60(v/v)%に調製された)場合、いずれもエタノール可溶画分の重量を基準として、すでに20重量%近くもの高い割合で含まれていることがわかる。
【0078】
<実施例7:食品組成物の調製>
上記実施例1で得られたアラメ画分(D)を用いて、以下の組成を有する食品組成物を調製した。
【0079】
成分 重量(g)
アラメ画分(D) 0.6
大豆サポニン 2.0
黒酢エキス 2.0
リンゴファイバー 2.0
レシチン 1.0
フラクトオリゴ糖 2.0
果糖 1.0
粉末酢 0.1
シクロデキストリン 1.0
蜂蜜 1.0
骨粉 1.0
デキストリン 4.9。
【0080】
各成分を流動造粒機中で混合した後、水を噴霧して造粒を行い、入風温度80℃で乾燥して、顆粒状食品を得た。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の血管新生抑制剤は、食品として広く用いられ得る海藻に由来する抽出物を有効成分として含有するため、安全性が高く、日常的な使用が可能であり、食品分野、医薬分野などの種々の分野における汎用性を高めることができる。本発明の血管新生抑制剤はまた、生体内の血管新生を抑制する効果を有するため、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、網膜静脈閉鎖症、網膜動脈閉鎖症等の網膜疾患、新生血管性緑内障、リュウマチ、リュウマチ性関節炎、乾癬等の各種炎症性疾患、アテローム性動脈硬化症、固形腫瘍(胃癌、大腸癌、肺癌、膵臓癌等)の増殖・転移、心筋梗塞等の病的状態に対する予防または治療の目的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】実施例2で得られた、アラメ画分を添加したウェル中の細胞により発現した血管新生の状態を示す顕微鏡写真である。
【図2】実施例3で得られた、アラメ画分を添加したウェル中の細胞により発現した血管新生の状態を示す顕微鏡写真である。
【図3】比較例1で得られた、コントロールのウェル中の細胞により発現した血管新生の状態を示す顕微鏡写真である。
【図4】アラメ画分を添加したウェルと、コントロールのウェルとの間の、血管新生の状態の際を説明するためのグラフであって、コントロールの管腔長さを基準とする実施例2および3で得られた管腔長さ(%)を示すグラフである。
【図5】アラメ画分を添加したウェルと、コントロールのウェルとの間の、血管新生の状態の際を説明するためのグラフであって、コントロールの管腔面積を基準とする実施例2および3で得られた管腔面積(%)を示すグラフである。
【図6】アラメ画分を添加したウェルと、コントロールのウェルとの間の、血管新生の状態の際を説明するためのグラフであって、コントロールの管腔ジョイント数を基準とする実施例2および3で得られた管腔ジョイント数(%)を示すグラフである。
【図7】アラメ画分を添加したウェルと、コントロールのウェルとの間の、血管新生の状態の際を説明するためのグラフであって、コントロールの管腔パス数を基準とする実施例2および3で得られた管腔パス数(%)を示すグラフである。
【図8】エタノール可溶画分を添加したウェルと、コントロールのウェルとの間の、血管新生の状態の際を説明するためのグラフであって、コントロールの管腔長さを基準とする実施例4および5で得られた管腔長さ(%)を示すグラフである。
【図9】エタノール可溶画分を添加したウェルと、コントロールのウェルとの間の、血管新生の状態の際を説明するためのグラフであって、コントロールの管腔面積を基準とする実施例4および5で得られた管腔面積(%)を示すグラフである。
【図10】エタノール可溶画分を添加したウェルと、コントロールのウェルとの間の、血管新生の状態の際を説明するためのグラフであって、コントロールの管腔ジョイント数を基準とする実施例4および5で得られた管腔ジョイント数(%)を示すグラフである。
【図11】エタノール可溶画分を添加したウェルと、コントロールのウェルとの間の、血管新生の状態の際を説明するためのグラフであって、コントロールの管腔パス数を基準とする実施例4および5で得られた管腔パス数(%)を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
褐藻類こんぶ目こんぶ科のマコンブ(Laminaria japonica)、褐藻類こんぶ目ちがいそ科のアラメ(Eisenia bicyclis)、サガラメ(Eisenia arborea)、ツルアラメ(Ecklonia stlonifera)、クロメ(Ecklonia kurome)、カジメ(Ecklonia cava)、ワカメ(Undaria pinnatifida)、アオワカメ(Undaria peterseniana)、ヒロメ(Undaria undarioides)、アイヌワカメ(Alaria praelomga)、およびチガイソ(Alaria crassifolia);褐藻類ひばまた目ほんだわら科のホンダワラ(Sargassum fuluvellum)、ヒジキ(Hizikia fusiforme)、およびアカモク(Sargassum horneri);褐藻類まがまつも目もずく科のモズク(Nemacystus decipieus)およびオキナワモズク(Cladosiphon okamuranus);および、紅藻類スギノリ目すぎのり科に属する海藻;からなる群より選択される少なくとも1種の海藻由来の抽出物を有効成分として含有する、血管新生抑制剤。
【請求項2】
前記抽出物が、前記海藻由来の熱水粗抽出物を含有する50(v/v)%以上のC1〜C3アルコール液の上清から得られた抽出物である、請求項1に記載の血管新生抑制剤。
【請求項3】
前記抽出物が、前記上清の濃縮物を、40(v/v)%から90(v/v)%のC1〜C3アルコール水溶液を用いるカラムクロマトグラフィーにかけることにより得られた画分由来の抽出物である、請求項2に記載の血管新生抑制剤。
【請求項4】
前記カラムクロマトグラフィーに用いる吸着剤がスチレン−ジビニルベンゼン系吸着剤である、請求項3に記載の血管新生抑制剤。
【請求項5】
海藻由来の抽出物を有効成分として含有する血管新生抑制剤であって、該抽出物が該抽出物に含まれる固形分の重量を基準としてフロロタンニンを15重量%以上の割合で含有する、血管新生抑制剤。
【請求項6】
フロロタンニンを有効成分として含有する、血管新生抑制剤。
【請求項7】
前記フロロタンニンが海藻由来である、請求項6に記載の血管新生抑制剤。
【請求項8】
血管新生抑制剤の製造方法であって、
褐藻類こんぶ目こんぶ科のマコンブ(Laminaria japonica)、褐藻類こんぶ目ちがいそ科のアラメ(Eisenia bicyclis)、サガラメ(Eisenia arborea)、ツルアラメ(Ecklonia stlonifera)、クロメ(Ecklonia kurome)、カジメ(Ecklonia cava)、ワカメ(Undaria pinnatifida)、アオワカメ(Undaria peterseniana)、ヒロメ(Undaria undarioides)、アイヌワカメ(Alaria praelomga)、およびチガイソ(Alaria crassifolia);褐藻類ひばまた目ほんだわら科のホンダワラ(Sargassum fuluvellum)、ヒジキ(Hizikia fusiforme)、およびアカモク(Sargassum horneri);褐藻類まがまつも目もずく科のモズク(Nemacystus decipieus)およびオキナワモズク(Cladosiphon okamuranus);および、紅藻類スギノリ目すぎのり科に属する海藻;からなる群より選択される少なくとも1種の海藻を、60℃から100℃の熱水中で抽出して熱水粗抽出物を得る工程;
該熱水粗抽出物に、C1〜C3アルコールまたはC1〜C3アルコール水溶液と合わせて、50(v/v)%以上の該アルコールを含有するC1〜C3アルコール液を得る工程;ならびに
該C1〜C3アルコール液の上清を分取する工程;
を包含する、方法。
【請求項9】
さらに、前記上清を濃縮して、該上清の濃縮物を得る工程;および該上清の濃縮物を、40(v/v)%から90(v/v)%のC1〜C3アルコール水溶液を用いるカラムに通す工程;を包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カラムがスチレン−ジビニルベンゼン系吸着剤を含有する、請求項9に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−22033(P2006−22033A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200790(P2004−200790)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】