説明

血管用ステント

この発明は血管用ステントに関する。より詳細には、この発明は、ヒアルロン酸ポリマーに基づくコーティングを有するステントであって、前記ヒアルロン酸ポリマーはヒアルロン酸のエステル誘導体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は血管用ステントに関するものである。より詳細には、この発明は再狭窄の現象を防止するために、血管形成において使用されるポリマーコーティングを有する血管用ステントに関する。
【背景技術】
【0002】
今日の血管形成分野において、ステントは冠動脈閉塞の治療に広く使用され、受入れられていることが知られている。ステントはリリースシステム及びバルーンシステムが撤収された後、損傷部位に残されて狭窄し易い血管内に配置される細網金属人工補装具である。即ち、ステントはバルーンの膨張により再構築された血管直径を維持して血管の崩壊を防止するために血管壁を機械的に支持し局面を加圧している。
【0003】
しかしながら、相互冠動脈ステントの使用の長期効力には、冠動脈血管の再閉塞の現象という血管形成後の冠動脈再狭窄の大きな問題が存在している。例えばウイリアム ドー、ホルブコフ アール、ヤー ダブリュ等の「1985−1986と比較した最新の経皮冠動脈の介入:国家心臓、肺、及び血液研究所」、サーキュレーション2000;102:2945−2951に述べられているように、この再狭窄の現象がステント血管形成を受けた患者の15〜30%で起こっている。
【0004】
ステントの挿入により起こる狭窄は新たに形成された内膜の肥厚のためである。詳細には、動脈壁にステントにより受けた機械的ダメージとステントの存在により誘起される異物反応で血管内に慢性炎のプロセスを起こしている。この現象が次々にサイトカインと、平滑筋細胞(SMC)の増殖及び移動の活性を促進する成長因子との放出を起こしている。これらの細胞の成長が、細胞外のマトリックスの産出と共に、新たな内膜(neointema)により占有される血管の断面積の増加と、これによる血管の管膣の減少プロセスとを起こし、上述の再狭窄を引き起こすのである。
【0005】
系統的な方法により試みられた多数の薬理学的なアプローチは、血管形成後の再狭窄の程度の減少に関して、十分な結果を得ていない。この処理方法における問題は、実際に狭窄損傷に達する薬理活性成分の濃度の低い場合と同一視できる。
【0006】
処理が必要な領域において活性成分をより多く放出することを引き起こすことで再狭窄の問題を防止するための他の試みは、被覆されたステントの使用により与えられ、ステントが局部的な薬剤放出可能源(DES、薬剤溶出ステント)として使用された。例えば、鈴木タケシ等による論文「ステントに基づくシロリムス(sirolimus)の搬送は、豚の冠状静脈洞モデルにおける新たな内膜(neointema)を減少する」サーキュレーション2001;104:1188−1193には、治療学的濃度の活性成分が含まれたポリ−n−ブチルメタクリレートとポリエチレン−ビニルアセテートとに基づく非分解性ポリマーマトリックスが、新たな内膜(neointema)の肥厚を減少するために示された。
【0007】
活性成分の放出のためのポリマーコーティングであって、ポリマーが分解性又は非分解性の性質を有するものが知られている。しかしながら、不活性な機能を有しているだけでなく、それらが活性成分のためのリザーバーとして作用し、これにより放出割合を調整することに限定もされている。しかしながら、それら自体が何らかの方法でアテローム硬化の損傷に作用することはない。
【0008】
上述とは逆に、しかしながら、再狭窄のプロセスの調整に活性的に作用することができるポリマーも存在する。ヒアルロン酸、哺乳動物の種々の種類の組織の中から分子で見出される天然の多糖類は生物医学の分野では特によく知られている。実際にヒアルロン酸は異物反応を減少し、その結果の炎症プロセスにおいて好ましい特性を有している。加えて、このヒアルロン酸は、平滑筋細胞(SMC)と内皮細胞との特別な相互作用の結果として、再狭窄のプロセスにおいて重要な役割を果たす。これらの特徴の結果として、動物モデルにおいては、高濃度のヒアルロン酸に対する動脈損傷の暴露は、新たな内膜(neointema)の成長の顕著な減少を起こすことが明らかになっている。
【0009】
しかしながら、ヒアルロン酸をコーティング及び活性成分のリザーバーとして適用することが直ちに可能ということではない。実際に、ヒアルロン酸が水に非常に溶けやすく、そのためすぐに溶出されて損傷から外へ移動する。この短時間の溶出が含有させる全活性成分の短時間の溶出を起こすことになり、活性成分の過剰及び中毒量に対して障害部分を露出するリスクを伴わせ、天然ポリマーから活性成分の放出の動特性をコントロールすることを絶対的に不可能にしている。
【0010】
これらの欠点を解決するために、ステント表面のヒアルロン酸を固定化する技術についての多数の実験が報告されている。一般に、文献に既に示されている表面の改質方法では、ヒアルロン酸がステントの表面に共有的に結合される。しかしながら、この方法では、天然ポリマーが移植部分に治療の効果のある高濃度で放出されることができない。加えて、固定化反応が被覆された物質とヒアルロン酸との間の境界で起こるために、ポリマー層の厚さが単分子層に限定され、明確ではないが活性成分の治療効果のある量のためのリザーバーとして適切ではない。従って、ヒアルロン酸の可能な量と収容できる活性成分の量とが極端に少なく、そのため再狭窄の減少を防止するのに不十分であった。
【0011】
しかしながら、ヒアルロン酸は、それ自体の橋かけ反応を通して、より厚く、数ミクロンの程度でコーティングとして適用されることができる。この橋かけ反応は、例えばポリウレタンを用いて実施される。この橋かけプロセスでは、ステントのためのコーティングの状況において適用することは適切でない。実際に、血管用ステントのような複雑な外形を有する部材に用いることは困難であることが示されており、例えばポリウレタンによる付帯的作用のような橋かけ材による付帯的作用を生じ、これらより橋かけにより固定化されたヒアルロン酸は、生化学的な特性を失い、再狭窄の調整において活性的に作用することができなくなる。
【0012】
最後に、ヒアルロン酸の溶解度を減少させるもう一つの方法は、ステントが被覆される天然又は合成材料と共に混合物を形成することである。例えば、ステントのコーティングに再吸収性フィルムSeprafilm(ゲンザイムカンパニー製、登録商標)を用いる。このフィルムはヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースとの混合物からなる。しかしながら、これらのフィルムも、狭窄損傷における炎症性の反応についてのカルボキシメチルセルロースの付帯的作用の大きな欠点を有している。
【0013】
そのため血管形成に使用できると共に、再狭窄の減少を効果的に防止できるステントの改良が明らかに要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明における技術的な課題は、上述のような公知技術における欠点の全てを有しない新規なステントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、本発明に従い、添付の特許請求の範囲に記載されたように、ヒアルロン酸のエステル誘導体で構成されるポリマーコーティングを有するステントによって解決される。
【0016】
本発明の他の利点及び特徴は、限定されない単なる実施例で与えられる添付図面を引用した以下の詳述から明らかにされるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のステントをコーティングするために適したヒアルロン酸は、例えば、参照のために含められたザ フィディア アドバンスト バイオポリマースカンパニーによる欧州特許EP216453に詳述されているものである。
【0018】
これらの化合物は、ヒアルロン酸のカルボキシル基の一部又は全部が、脂肪族、アリール脂肪族、環状脂肪族、及び複素環系のアルコールから選ばれるアルコール基によりエステル化されたヒアルロン酸エステルである。
【0019】
ヒアルロン酸のカルボキシル基をエステル化するために使用される脂肪族系のアルコールは、2乃至は12の炭素を有する直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和アルコールから選択され、水酸化物、アミン、アルデヒド、メルカプタン、若しくはカルボキシル基、又は、これらから誘導される、例えば、エステル、エーテル、アセタール、ケトール、チオエーテル、チオエステル、カルバミドのような基から選択される1又は2以上の基により適宜置換されている。
【0020】
アルコールが脂肪族飽和非置換アルコールの場合、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、ter−ブチル、アミル、又はペンチルアルコールから選択されるのが好ましい。
【0021】
アルコールが脂肪族2価アルコールの場合、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールから選択されるのが好ましく、アルコールが脂肪族3価アルコールの場合、好ましくはグリセリンである。
【0022】
脂肪族アルコールがアミノアルコールの場合、アミノエタノール、アミノプロパノール、アミノブタノール、及びそれらのジメチレン−若しくはジエチレンアミン誘導体、ピペリジンエタノール、ピロリジンエタノール、又は、ピペラジンエタノールから選択されるのが好ましい。
【0023】
アルコールがカルボキシアルコールの場合、ラクチック、タータリック、マレイック、又はグリコリック酸から選択されるのが好ましい。
【0024】
最後に、アルコールが不飽和脂肪族アルコールの場合、好ましくはアリルアルコールである。
【0025】
ヒアルロン酸のカルボキシル基をエステル化するために使用されるアリール脂肪族系のアルコールは、適宜1乃至は3個のメチル基若しくはヒドロキシル基、又はハロゲン原子、特に、フッ素、塩素、ホウ素、ヨウ素により置換されたベンゼンを有し、脂肪族鎖が、1乃至は4個の炭素原子を有すると共に、適宜第1アミノ基、モノ−若しくはジメトキシド基、又は、ピロリジン若しくはピペリジン基から選択される1又は2以上の基によって置換されたものから選択されるのが好ましい。
【0026】
ヒアルロン酸のカルボキシル基をエステル化するために使用されるアリール脂肪族系のアルコールは、ベンジルアルコール又はフェニルエチルアルコールであるのが好ましい。
【0027】
ヒアルロン酸のカルボキシル基をエステル化するために使用される環状脂肪族系のアルコールは、3乃至は34の炭素原子を有し、適宜1乃至は3のO、S、Nから選択されるヘテロ原子を有すると共に、適宜脂肪族系のアルコールのために挙げられたものから選択される1又は2以上の基により置換された単−又は多環状脂肪族から選択されるのが好ましい。
【0028】
特に、環状脂肪族アルコールが単環の場合、本発明に好適な具体的なものは、5乃至は7の炭素原子を有し、適宜ヒドロキシル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルから選択される1又は2以上の基により置換されたものである。例えば、シクロヘキサノール、シクロヘキサンジオール、イノシトール、又はメントールが使用される。
【0029】
上述のアルコールによるヒアルロン酸エステル誘導体のエステル化度は、ステントのコーティングに与える所望の特徴、例えば親油性或いは親水性の増減などに応じて変化させることができる。
【0030】
一般的に実際に高いエステル化度はエステル誘導体の親油性の性質を増加して水への溶解性を減少する。これにより、狭窄部位で低速で分解でき、直ちに溶解されて損傷部位から消失されるヒアルロン酸のコーティングに比べて長期間作用を維持するコーティングを備えたステントを得ることができる。
【0031】
本発明の目的のためには、ヒアルロン酸のエステル誘導体のエステル化度は、上述のアルコールのアルコール基によりエステル化されるヒアルロン酸のカルボキシル基の50%以上100%以下の範囲である。このエステル化度がヒアルロン酸のカルボキシル基の70%以上100%以下の範囲であるのが好ましい。
【0032】
本発明の好ましい具体例では、ステントはベンジルアルコールによりヒアルロン酸のエステル化により得られた製造物でコーティングされる。
【0033】
より好ましくは、ベンジルアルコールによるヒアルロン酸の全体のエステル化から得られた誘導体、又はベンジルアルコールによるヒアルロン酸の残りのカルボキシル基の75%のエステル化により得られた誘導体が使用される。
【0034】
これらの製造物は本発明のステントのコーティングの製造に特に有用である。実際に、ヒアルロン酸のエステル化プロセスは水中でヒアルロン酸自体の放出と溶解性を調整できるポリマー誘導体を得ることを可能にする。実際に水分子によるエステルへのアタックプロセスは、ヒアルロン酸とアルコール基の必然的な放出を伴うエステル誘導体の脱エステル化を含んでいる。
【0035】
このアルコール基がベンジルアルコールである詳細な具体例では、ヒアルロン酸エステルも生体適合性があり、副作用がない。
【0036】
エステル誘導体の分解は、従ってヒアルロン酸の連続的な放出を引き起こし、溶解されて損傷部位で活性的に作用させることができる。
【0037】
特に、上述の好ましい製造物、即ち、ベンジルアルコールによるヒアルロン酸の全てのエステル化による誘導体、及びベンジルアルコールによるヒアルロン酸の75%のエステル化により得られた誘導体は、それぞれ1ヶ月以上の長期間又は2週間の期間、水中で分解する。
【0038】
驚くべきことに、これらのヒアルロン酸のエステル誘導体はステントの網状の表面に良好に付着された金属ステント上の均一なコーティングフィルムを形成することも見出された。
【0039】
そのため、本発明により得られるステントは、それ自体に薬理活性成分を効果的に会合或いは結合することもできるコーティングを備えている。
【0040】
本発明におけるポリマーコーティングに会合或いは結合された薬理活性成分は、抗炎症性、抗増殖性、若しくは抗移動性の作用を有する活性成分、及び免疫抑制薬である。
【0041】
より好ましくは、本発明のステントのポリマーコーティングに会合或いは結合された薬理活性成分は、「imatinib mesylate」であって、4−[(4−メチル−1−ピペラジニル)メチル]−N−[4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−フェニル]ベンズアミドメタンスルホネート、ノバルティスカンパニー社製により「Glivec(商標)として販売されているものである。
【0042】
ヒアルロン酸エステルコーティングに会合或いは結合されねばならない活性成分の量は、活性成分の分類に従って変化する。
【0043】
活性成分が抗炎症性作用を有する活性成分である場合、0.001mgと10mgとの間の量でポリマーコーティングに会合或いは結合されているのが好ましい。
【0044】
活性成分が抗増殖性作用を有する活性成分である場合、0.0001mgと10mgとの間の量でポリマーコーティングに会合或いは結合されているのが好ましい。
【0045】
活性成分が抗移動性作用を有する活性成分である場合、0.0001mgと10mgとの間の量でポリマーコーティングに会合或いは結合されているのが好ましい。
【0046】
活性成分が免疫抑制薬である場合、0.0001mgと10mgとの間の量でポリマーコーティングに会合或いは結合されているのが好ましい。
【0047】
より詳細には活性成分がimatinib mesylate(Glivec、商標)である場合、0.001mgと10mgとの間の量でヒアルロン酸ポリマーコーティングに会合或いは結合されている。
【0048】
本発明のステントを被覆するために用いるヒアルロン酸エステルは、ヒアルロン酸と異なり、有機溶媒、特に極性非プロトン溶媒にある程度の溶解性も有する。
【0049】
特に、ヒアルロン酸のエステルは、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリジン、及びジメチルホルムアミドにおける良好な溶解度を有している。これらの溶媒は、異なる活性成分も溶解することができる。
【0050】
幾つかのエステルは、低沸点溶媒、1,1,1,3,3,3−ヘキサフロロ−2−プロパノール(ヘキサフロロイソプロパノール)にも溶解可能であり、「imatinib mesylate」のための溶媒でもある。ヘキサフロロイソプロパノールの沸点は、雰囲気圧で59℃であり、活性成分の安定性の作用に影響を及ぼさない温度で溶媒を除去することができる特徴がある。
【0051】
これらの溶解特性は本発明のもう一つの利点である。実際に、ヒアルロン酸誘導体及び活性成分を、単一の通常の溶媒から直接ディップコーティング技術を通して所望の濃度でステントの表面に付着することを可能にしている。蒸発による溶媒の除去は、必要により減圧下で、薄いフィルムを得ることを可能にし、主プロセスパラメータにより調整できる厚さでステントの表面に付着できる。
【0052】
ステント上のヒアルロン酸ポリマーコーティングの厚さは、0.5ミクロン以上40ミクロン以下、好ましくは1ミクロンと30ミクロンとの間、より好ましくは、5ミクロンと10ミクロンとの間で変えられる。
【0053】
水性雰囲気で直ちに溶解されて活性成分とヒアルロン酸が直ちに完全に放出されるヒアルロン酸のフィルムを備えた同様のステントとは異なり、これによりエステルの特性により活性成分とヒアルロン酸分子の放出が抑制される。実際に、分解されてヒアルロン酸及び活性成分が放出される期間は、フィルム厚とポリマー本来の特性を通して、特にエステル化度を通して調整されることができる。
【0054】
従って、狭窄部位付近で長時間、即ち、ヒアルロン酸エステル誘導体に基づくポリマーコーティングの分解時間と同等の期間にわたり活性成分とヒアルロン酸の放出が得られる。特に、ベンジルアルコールによる100%及び75%のカルボキシル基のエステル化により得られた上述の好ましい具体例では、それぞれ1ヶ月以上の期間又は2週間までの期間の間活性成分が放出される。
【0055】
従って、本発明によれば、全ての本来的な生物学的及び治療学的な性質を保持したポリマーコーティングを有する優れたステントを得ることができ、水性雰囲気における低い溶解性を有するためにステントの表面から直ちに除去されず、並びに、臨床上有効な期間を通して調整された方法で搬送及び放出される活性成分の会合或いは結合に影響されない厚さを有している。
【0056】
この発明のステントは、炎症プロセスを減少してヒアルロン酸自体の細胞移動を調整可能な長い期間にわたり調整することに、損傷部位の細胞レベルで活性成分の効果を組合わせ、これにより再狭窄の現象を効果的に防止できるという更なる利点も有している。
【0057】
この発明の好ましい具体例では、図1に図示されるように、活性成分が会合或いは結合されたヒアルロン酸エステルの層は、ステントの表面に先に共有的に結合されたヒアルロン酸の薄い層で被覆されたステントに付着される。ヒアルロン酸層を共有的に結合してステントの表面に固定化するプロセスは、フィデアアドバンストバイオポリマー名義の米国特許第6,129,956号に記載されて下記実施例9に示されるような方法に従って実施することができる。
【0058】
ステントの表面に共有的に結合されるヒアルロン酸の層の厚さは、1nm以上20nm以下、好ましくは10nmである。
【0059】
この方法では、ヒアルロン酸エステル誘導体のコーティングが狭窄部位付近において分解されるとき、ヒアルロン酸と活性成分を放出し、血管の組織がヒアルロン酸の層と有効に接触したままとなり、ステント自体の金属表面よりも生体適合性及び生体寛容性に優れる。
【0060】
本発明のもう一つの具体例では、上述のヒアルロン酸エステル誘導体のコーティングに加え、疎水性の性質の合成ポリマーのコーティングの第2の層を有するステントを示す。
【0061】
好ましくは、疎水性の性質を有する合成ポリマーコーティングはステントの表面に直接付着され、次に本発明で先に述べたヒアルロン酸エステル誘導体の層により被覆されるのがよい。
【0062】
この第2コーティングを構成するポリマーの疎水性の性質の程度は、水に対する接触角度技術を使用して測定される。特に、ステント上の第2のポリマー層を形成するために使用される適切な疎水性の性質を有する合成ポリマーは、水に対する接触角が60°より大きい。
【0063】
疎水性の性質を有するポリマーとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、オレフィンポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエンースチレン)、又はポリビニルアクリレートから選択されたものが好ましい。
【0064】
より好ましい具体例としては、疎水性の性質を有する合成ポリマーはポリスチレンである。
【0065】
更に、第2の合成ポリマーコーティングは、薬理活性成分も効果的に会合或いは結合することができる。従って、この方法では、不活性コーティングの役割を実行し、ヒアルロン酸誘導体の第1の活性コーティングの下で、活性成分の第2のリザーバーとして作用することを可能にすると共に損傷部位において会合或いは結合された前記活性成分の放出の割合を調整することも可能にする。
【0066】
活性成分の分類は、好ましくは疎水性の性質の前記ポリマーコーティングに会合或いは結合され、その会合或いは結合される活性成分の量は、ヒアルロン酸エステル誘導体から得られるコーティングのために既に記載されたものと同じである。
【0067】
要求される臨床的目的に応じ、同一又は異なる活性成分を同一のステントの2つのポリマー層、疎水性の性質を有する層とヒアルロン酸エステル誘導体に基づく層とに会合或いは結合させることができる。ステントの2つのコーティングに会合或いは結合される活性成分の対応する量も臨床的要求に従って同一又は異なるものとすることができる。
【0068】
疎水性の性質を有するポリマーコーティングとそれに会合或いは結合された活性成分との使用は、ヒアルロン酸誘導体のコーティングの使用のために先に記述されたものと同一の方法でステントに付着することができる。疎水性ポリマーと活性成分は同一の有機溶媒に溶解又は懸濁されて単一の通常溶液又は懸濁物を形成する。この目的のために適切な溶媒は、雰囲気圧で100℃以下、好ましくは80℃以下の沸点を有するべきである。好ましくは、前記有機溶媒は、ジクロロメタン、塩化メチレン、アセトン、脂肪族炭化水素、又はシクロヘキサンから選ばれるものが好ましい。
【0069】
溶媒の蒸発を通して、種々の厚みのコーティングが、プロセスパラメータに依存し、ステントの表面に付着して得られる。ヒアルロン酸のエステル誘導体に基づくコーティングは、この方法で前処理されたステントに順に付着される。
【0070】
ステント上の疎水性合成ポリマーコーティングの厚さは、0.5ミクロン以上40ミクロン以下、好ましくは1ミクロンと30ミクロンとの間、より好ましくは5ミクロンと10ミクロンとの間で変えられる。
【0071】
従って、ステントのこの具体例の更に利点は、ステント上の2重コーティングを通して活性成分の放出割合を調整でき、更に活性成分の放出の期間を延ばし、これにより狭窄部位おけるその薬理的作用を延長するということである。実際に、この具体例と共に、ヒアルロン酸エステル誘導体コーティングの分解プロセスと、それに伴う第2の不活性ポリマーコーティングにより放出された活性成分の効果との両方で、アテローム硬化の損傷において活性成分とヒアルロン酸との硬化の組合わせによる第1の二重作用がある。
【0072】
この方法では、治療学的効果が疎水性の性質のポリマーコーティングからの活性成分ための放出時間と同等の時間の間、損傷部位で延長することができる。
【0073】
疎水性の性質を有するポリマーコーティングがポリスチレンに基づく詳細な具体例では、活性成分の放出期間は1月の期間の間、更に延長される。
【0074】
上述されたものと同様に、図2に図示されたように、ステントのための2層のコーティングの好ましい詳細な具体例は、疎水性の性質を有する下部のポリマー層が、共有的な方法で化学的に結合されたヒアルロン酸の薄い層で被覆されている。この方法では、ヒアルロン酸エステルの上層が分解したとき、血管の組織が合成ポリマーに露出されるのではなく、ヒアルロン酸の層に露出される。
【0075】
疎水性の性質のポリマーコーティングとヒアルロン酸の層との間に共有的な結合を形成するプロセスは、例えば、前述のフィデアアドバンスト名義の米国特許第6,129,956号に記載された方法に従って実施される。
【0076】
疎水性の性質のポリマーコーティングの表面に共有的に結合されたヒアルロン酸の層の厚さは、1nm以上20nm以下、好ましくは10nmである。
【0077】
本発明は、以下の図示されて非限定的な実施例を通してさらに詳述され、これにより本発明の特徴及び利点はより明らかになる。
【0078】
実施例1
カルボキシル基のベンジルアルコールによる全エステル化による異なる厚さのヒアルロン酸エステル誘導体のフィルムの形成
【0079】
フィデアアドバンストバイオポリマー社製のLaserskin膜、特にHYAFF 11(商標)を用いて構成されたものが、ベンジルアルコールでカルボキシル基の全エステル化から得られるヒアルロン酸エステル誘導体のフィルムを形成するために使用された(HYAFF 11の商品名を有する製品)。70mgの全重量を有する複数の断片が膜から切り出された。これらが3mlのジメチルスルホオキシド(DMSO)に溶解された。溶解は雰囲気温度で1時間行った。均一溶液が形成されたとき、0.5ml、1ml、及び1.5mlの3つの部分溶液がそれぞれ取り出された。DMSOが各部分溶液に、各溶液3mlとなるような量添加され、3つの溶液A、B、Cがそれぞれこの方法で得られた。このように得られた3溶液がポリエチレンペトリ皿に注がれ、60℃の乾燥炉内に置かれ、溶媒が完全に蒸発するまで保たれた。ペトリ皿の底に析出されたフィルムが回収され、その厚さが操作型電子顕微鏡を通して観察することにより測定された。観察により表1に示される次の結果が得られた。4回の測定の平均値として示された。
【0080】
【表1】

【0081】
実施例2
実施例1によるフィルムのステンレススチールステントへの適用
【0082】
実施例1により得られた溶液Aが使用された。直径13mmのステンレススチールステントがビーカーに収容された溶液に浸漬されて溶液から取り出され、減圧下で60℃の乾燥炉に移された。乾燥後、フィルム形成を評価するために、ヒアルロン酸を着色できる染料のトルイジンブルーの溶液にステントが浸漬された。着色の存在及び均一性が観察された。テストによりステントの表面のHYAFF 11フィルムの存在と、その均一な分配とが確認された。
【0083】
実施例3
HYAFF 11フィルムの活性成分の加入及び放出
【0084】
DMSO中のHYAFF(商標)の溶液が実施例1において記載されたように作製された。10mgの活性成分imatinib mesylateが薬剤Glivec(商標)から得られ、順に水への溶解、不溶賦形剤を除くための濾過、水の蒸発が溶液に施された。溶解後、溶液が乾燥炉に配置され溶媒が蒸発された。
【0085】
細胞毒性テストがBalb/3T3細胞を使用して行われ、活性成分の存在を評価した。フィルムの0.5cm部分が、その細胞の融合層を有するペトリ皿に配置された。実施例1のヒアルロン酸エステル誘導体A、B、Cの種々のサンプルの各濃度用に、活性成分を含まないヒアルロン酸エステルを含む標準試料が作製された。細胞についての効果は1日の接触後に評価され、0から5までの値を有する細胞毒性スケールを用いて表された。値0は細胞毒性効果の不在を示し、一方、値5は全ての細胞の死滅を示す。下の表2はそのようにして得られた結果を示す。
【0086】
【表2】

【0087】
得られた結果から、純粋な活性成分により予め確認された細胞毒性効果により、活性成分がステント上のHYAFF 11フィルムから放出されたことを明確に確認した。
【0088】
実施例4
HYAFF 11フィルムに会合或いは結合された活性成分の濃度の検討
【0089】
タイプAのHYAFF 11フィルムが、活性成分の量を10mg、5mg、1mg、及び0.1mgと異ならせる他は、上記実施例3のように得られた。細胞培養テストが実施例3ように実施され、表3に示される結果が得られた。
【0090】
【表3】

【0091】
この実験はフィルムにおける活性成分の濃度の調整、即ち、細胞について有効の期間を有毒から水準以下まで調整することが可能であることを示した。
【0092】
実施例5
HYAFF 11フィルムの活性成分の加入及び放出
【0093】
上記実施例3のようなタイプAのHYAFF 11フィルムと、活性成分を含まない標準試料とが作製された。フィルムが複数の0.5cm部分に分割された。各フィルムの4つの部分が生理学的溶液に1日、2日、1週間、及び2週間の期間それぞれ浸漬された。浸漬期間後サンプルが生理学的溶液から取り出され、実施例3と同じ条件下で細胞毒性テストに供された。
得られた結果が下の表4に示された。
【0094】
【表4】

【0095】
活性成分を含まない標準試料は細胞毒性の何らの兆候も示さなかった。
これらのデータはHYAFF 11フィルムに加入された活性成分が穏やかに放出されて2週間後でさえも水性雰囲気内でそれが残留していることを示し、ヒアルロン酸エステル誘導体の層の活性成分のリザーバー機能を確認する。
【0096】
実施例6
HYAFF 11のコーティングを有するステントの製造及びコーティングに会合或いは結合された活性成分の放出
【0097】
実施例2のようにして多数のステントを作製し、活性成分imatinib mesylateが実施例1に従って作製されたHYAFF 11の溶液Aに添加された。ステントはその後それぞれ0日、1日、2日、1週間生理学的溶液に浸漬された。実施例5で詳述された実験がこの方法で作製されたステントを用いて繰り返された。下の表5に示される結果が得られた。
【0098】
【表5】

【0099】
この実験では、活性成分がHYAFF(商標)フィルムで被覆されたステントから長時間放出されることが確認された。
【0100】
実施例7
低沸点溶媒を用いたHYAFF 11コーティングを有するステントの製造及びコーティングに会合或いは結合された活性成分の放出
【0101】
溶媒としてヘキサフロロイソプロパノールを用いる他は実施例2に詳述されたようにして、HYAFF(商標)コーティングを有する複数のステントが作製された。
【0102】
活性成分imatinib mesylateが添加されたヘキサフロロイソプロパノールのHYAFF 11溶液がこの目的のために作製された。詳細には、5ccのヘキサフロロイソプロパノール、40mgのHYAFF 11、及び20mgのimatinib mesylateを含有する溶液が作製された。ステントを溶液中に浸漬させた後、25℃の減圧乾燥炉内で溶媒の除去を行った。
【0103】
ステントはその後それぞれ0日、1日、2日、1週間生理学的溶液に浸漬された。実施例5で詳述された実験がこの方法で作製されたステントを用いて繰り返された。次の表6に示される結果が得られた。
【0104】
【表6】

【0105】
この実験では、再び活性成分がHYAFF 11フィルムで被覆されたステントから長時間放出されることが確認された。
【0106】
実施例8
HYAFF 11コーティングと疎水性の性質を有する合成ポリマーの第2のコーティングを備えたステントの製造及びコーティングに会合或いは結合された活性成分の放出
【0107】
次のように前処理されたステントに施す他は実施例7に詳述されたようにして複数のステントが作製された。
【0108】
ジクロロメタンのポリスチレン2%溶液のimatinib mesylate懸濁液が作製された。ステントは溶液中に浸漬することにより被覆され、次いで30℃の減圧乾燥炉内で溶媒が除去された。そのプロセスが3回繰り返された。
【0109】
比較の目的で、多数のステントが作製された。そこではHYAFF 11、及びimatinib mesylateを用いて同じ工程が実施された。
【0110】
ステントはその後0日、1日、2日、1週間及び3週間、生理学的溶液に浸漬された。実施例5で詳述された実験がこの方法で作製されたステントを用いて繰り返された。次の表7に示される結果が得られた。
【0111】
【表7】

【0112】
この実験では、再び活性成分が被覆されたステントから長時間放出され、活性成分を含有する疎水性ポリマーの存在が損傷部位で活性成分の放出を補助及び延長できることが確認された。
【0113】
実施例9
共有的に結合されたヒアルロン酸の層が予め被覆されたステント上のHYAFF 11コーティングの製造及びコーティングに会合或いは結合された活性成分の放出
【0114】
米国特許第6,129,956号(フィデアアドバンストバイオポリマー名義)に記載された方法に従い、多数のステントがヒアルロン酸の層で被覆され、ステントの表面に共有的に結合された。詳細には、ステントは、ユーロプラズマ反応器で1分間空気プラズマを用いてプラズマ処理された。ステントはその後ポリエチレンイミド(PEI、シグマ)の0。5%水性溶液中に雰囲気温度で2時間浸漬された。その後、繰返し1%のN−ヒドロキシスクシンイミド(シグマ)と1%のジメチルアミノーN−ヒドロキシスクシンイミド(EDC、シグマ)とを含有する0.5%のヒアルロン酸(シグマ)の溶液に浸漬及び洗浄された。結合反応が雰囲気温度で1夜を通して継続された。次の日にステントが注意深く洗浄された。
【0115】
この方法で前処理されたステントは、実施例7に詳述されたようにヘキサフロロイソプロパノールのHYAFF 11溶液に浸漬されて被覆された。詳細には、2つの溶液が使用され、第1の溶液は5mlのヘキサフロロイソプロパノール、40mgのHYAFF 11、及び20mgのimatinib mesylateを含有し、第2の溶液はimatinib mesylateの濃度が2倍の40mgである他は同一の溶液である。
【0116】
そのようにして得られた各ステントは、HYAFF 11コーティングからのimatinib mesylateの放出についての調査を実施するために、1mlの生理学的溶液が収容されたテストチューブに37℃で配置された。所定時間で溶液が取り出されてウニカム紫外−可視分光器を用いて測定された。ステントにより放出されるimatinib mesylateの濃度は波長251nmで溶液の吸光度を測定することにより算出された。吸光度とimatinib mesylate濃度との間の相関は標準食塩水の濃度既知のimatinib mesylateの溶液の吸光度を測定することによるキャリブレーション曲線をプロットすることにより確立された。
【0117】
この実験により得られたステントについて20mgのimatinib mesylateを含有する溶液及び40mgのimatinib mesylateを含有する溶液から、図3に示される2つの放出曲線が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】図1は、この発明の具体例に従ったステントのためのポリマーコーティングの細部の断面の図を示す。
【図2】図2は、この発明の他の具体例に従ったステントのためのポリマーコーティングの細部の断面の図を示す。
【図3】図3は、図1に図示された具体例に従ったステントのポリマーコーティングからの活性成分の放出曲線と、そのコーティング中の活性成分の濃度の放出についての効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸のポリマーに基づくコーティングを有するステントであって、前記ヒアルロン酸ポリマーがヒアルロン酸のエステル誘導体であることを特徴とする。
【請求項2】
請求項1に記載のステントであって、前記ヒアルロン酸エステル誘導体は、ヒアルロン酸のカルボキシル基の一部又は全部が、脂肪族、アリール脂肪族、環状脂肪族、及び複素環系のアルコールから選ばれるアルコールによりエステル化されたものである。
【請求項3】
請求項2に記載のステントであって、
前記アルコールが脂肪族系である場合、2乃至は12の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状の飽和又は不飽和アルコールから選択され、水酸化物、アミン、アルデヒド、メルカプタン、若しくはカルボキシル基、又は、これらから誘導される、例えば、エステル、エーテル、アセタール、ケトール、チオエーテル、チオエステル、カルバミドのような基から選択される1又は2以上の基により適宜置換されていてもよく;特に、前記アルコールが脂肪族飽和アルコールの場合、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ノルマルブチル、イソブチル、ter−ブチル、アミル、又はペンチルアルコールから選択され;前記アルコールが脂肪族2価アルコールの場合、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールから選択され;前記アルコールが脂肪族3価アルコールの場合、好ましくはグリセリンであり;前記アルコールがアミノアルコールの場合、アミノエタノール、アミノプロパノール、アミノブタノール、及びそれらのジメチレン−若しくはジエチレンアミン誘導体、ピペリジンエタノール、ピロリジンエタノール、又は、ピペラジンエタノールから選択され;前記アルコールがカルボキシアルコールの場合、ラクチック、タータリック、マレイック、又はグリコール酸から選択され;前記アルコールが不飽和脂肪族アルコールの場合、好ましくはアリルアルコールであり、
前記アルコールがアリール脂肪族系の場合、適宜1乃至は3個のメチル基若しくはヒドロキシル基、又はハロゲン原子、特に、フッ素、塩素、ホウ素、ヨウ素により置換されたベンゼンを有するものから選択され、脂肪族鎖が、1乃至は4個の炭素原子を有すると共に、第1アミノ基、モノ−若しくはジメトキシド基から、又は、ピロリジン若しくはピペリジン基から選択される1又は2以上の基によって適宜置換されていてもよく、特にベンジルアルコール又はフェニルエチルアルコールであり、
前記アルコールが環状脂肪族系の場合、3乃至は34の炭素原子を有し、適宜O、S、Nから選択される1乃至は3のヘテロ原子を有すると共に、適宜ヒドロキシル、アミン、アルデヒド、メルカプタン、若しくはカルボキシル基、又はこれらから誘導される例えばエステル、エーテル、アセタール、ケタール、チオエーテル、チオエステル、カーバミドのような基から選択される1又は2以上の基により置換された単−又は多環状脂肪族アルコールから選択され;特に、前記環状脂肪族アルコールが単環の場合、5乃至は7の炭素原子を有し、適宜ヒドロキシル、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルから選択される1又は2以上の基により置換されたものから選択され、特に、それらがシクロヘキサノール、シクロヘキサンジオール、イノシトール、又はメントールである。
【請求項4】
前記請求項の何れか一つに記載のステントであって、前記ヒアルロン酸エステル誘導体のエステル化度がヒアルロン酸のカルボキシル基の50%以上100%以下の範囲である。
【請求項5】
請求項4に記載のステントであって、前記エステル化度がヒアルロン酸のカルボキシル基の70%以上100%以下の範囲である。
【請求項6】
請求項1乃至は5の何れか一つに記載のステントであって、前記アルコールがベンジルアルコールであると共に前記エステル化度がヒアルロン酸のカルボキシル基の100%と同等のものである。
【請求項7】
請求項1乃至は5の何れか一つに記載のステントであって、前記アルコールがベンジルアルコールであると共に前記エステル化度がヒアルロン酸のカルボキシル基の75%と同等のものである。
【請求項8】
前記何れか一つの請求項に記載のステントであって、薬理活性成分が前記ヒアルロン酸ポリマーコーティングに会合或いは結合されている。
【請求項9】
請求項8に記載のステントであって、前記ヒアルロン酸ポリマーコーティングに会合或いは結合された前記前記薬理活性成分が、抗炎症性、抗増殖性、若しくは抗移動性の作用を有する活性成分及び/又は免疫抑制薬である。
【請求項10】
請求項8に記載のステントであって、前記活性成分が4−[(4−メチル−1−ピペラジニル)メチル]−N−[4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−フェニル]ベンズアミドメタンスルホネートである。
【請求項11】
請求項9に記載のステントであって、前記活性成分が抗炎症性作用を有する活性成分である場合、0.001mgと10mgとの間の量でヒアルロン酸ポリマーコーティングに会合或いは結合している。
【請求項12】
請求項9に記載のステントであって、前記活性成分が抗増殖性作用を有する活性成分である場合、0.0001mgと10mgとの間の量でヒアルロン酸ポリマーコーティングに会合或いは結合している。
【請求項13】
請求項9に記載のステントであって、前記活性成分が抗移動性作用を有する活性成分である場合、0.0001mgと10mgとの間の量でヒアルロン酸ポリマーコーティングに会合或いは結合している。
【請求項14】
請求項9に記載のステントであって、前記活性成分が免疫抑制薬である場合、0.0001mgと10mgとの間の量でヒアルロン酸ポリマーコーティングに会合或いは結合している。
【請求項15】
請求項10に記載のステントであって、前記活性成分が4−[(4−メチル−1−ピペラジニル)メチル]−N−[4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−フェニル]ベンズアミドメタンスルホネートである場合、0.001mgと10mgとの間の量でヒアルロン酸ポリマーコーティングに会合或いは結合している。
【請求項16】
前記請求項の何れか一つに記載のステントであって、前記ステント上のヒアルロン酸ポリマーコーティングの厚さが、0.5ミクロン以上40ミクロン以下、好ましくは1ミクロンと30ミクロンとの間、より好ましくは、5ミクロンと10ミクロンとの間の範囲である。
【請求項17】
前記請求項の何れか一つに記載のステントであって、活性成分とヒアルロン酸とが長期間ヒアルロン酸ポリマーコーティングから放出されるものである。
【請求項18】
請求項6及び17を組合わせたステントであって、活性成分とヒアルロン酸とが1ヶ月を超える時間ヒアルロン酸ポリマーコーティングから放出されるものである。
【請求項19】
請求項7及び17を組合わせたステントであって、活性成分とヒアルロン酸とが2週間以内ヒアルロン酸ポリマーコーティングから放出されるものである。
【請求項20】
ステント自身の表面に共有的に結合されたヒアルロン酸の層と、前記請求項の何れか一つに記載されたヒアルロン酸ポリマーのコーティングとを含むステント。
【請求項21】
前記請求項の何れか一つに記載のステントであって、薬理活性成分が会合或いは結合する疎水性の性質を備えた第2のポリマーコーティングを更に有する。
【請求項22】
請求項21に記載のステントであって、ヒアルロン酸エステルポリマーに基づく前記コーティングの下に、疎水性の性質を備えた前記ポリマーコーティングがステントの表面に直接付着されている。
【請求項23】
請求項21又は22に記載のステントであって、疎水性の性質を備えた前記ポリマーの水に対する接触角が60°より大きい。
【請求項24】
請求項23に記載のステントであって、疎水性を備えた前記ポリマーが、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、オレフィンポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエンースチレン)、又はポリビニルアクリレートから選択されたものである。
【請求項25】
請求項23に記載のステントであって、疎水性の性質を有する前記ポリマーがポリスチレンである。
【請求項26】
請求項21乃至は25の何れか一つに記載のステントであって、疎水性を備えた前記ポリマーコーティングに会合或いは結合する前記活性成分が請求項9又は10に挙げられた活性成分から選択されるものである。
【請求項27】
請求項21乃至は26の何れか一つに記載のステントであって、疎水性を備えた前記ポリマーコーティングに会合或いは結合する前記活性成分の量が請求項11乃至は15に記載された量と等しいものである。
【請求項28】
請求項21乃至は27の何れか一つに記載のステントであって、前記ステント上の疎水性の性質を備えた前記ポリマーコーティングの厚さが0.5ミクロン以上40ミクロン以下、好ましくは1ミクロンと30ミクロンとの間、より好ましくは5ミクロンと10ミクロンとの間である。
【請求項29】
請求項21乃至は28の何れか一つに記載のステントであって、前記活性成分が疎水性の性質を備えた前記ポリマーコーティングから1ヶ月の時間放出されるものである。
【請求項30】
請求項21乃至は29の何れか一つに記載のステントであって、前記2つのポリマーコーティングに会合或いは結合する活性成分と該活性成分の量とがそれぞれ同一又は異なるものである。
【請求項31】
請求項21乃至は30の何れか一つに記載されたステントであって、疎水性の性質を備えた前記ポリマーコーティングに共有的に結合されたヒアルロン酸の層を更に含んでいる。
【請求項32】
請求項1乃至は19の何れか一つに記載のステントを得るための方法であって、
(a)前記ヒアルロン酸エステルと前記活性成分とを同じ有機溶媒に溶解して溶液を得る工程と、
(b)前記ステントを前記溶液に浸漬して取り出す工程と、
(c)前記溶媒を蒸発させる工程とを含んでいる。
【請求項33】
請求項32に記載の方法であって、前記有機溶媒が極性非プロトン溶媒である。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、前記有機溶媒がジメチルスルホキシド、N−メチルピロリジン、ジメチルホルムアミド、又はヘキサフロロイソプロパノールから選択されるものである。
【請求項35】
請求項20に記載のステントを得るための請求項32乃至は34の何れか一つに記載の方法であって、共有的に結合されるヒアルロン酸の層が付着される前記ステントの表面の前処理工程を含んでいる。
【請求項36】
請求項21乃至は30の何れか一つに記載のステントを得るための請求項32乃至は34の何れか一つに記載の方法であって、前記a)、b)c)の工程の前に、
a1)疎水性の性質を備えたポリマーと活性成分とを同じ有機溶媒に溶解して溶液又は懸濁液を得る工程と、
b1)ステントを前記溶液又は懸濁液に浸漬して取り出す工程と、
c1)溶媒を蒸発させる工程とが先に行われる。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、前記有機溶媒が雰囲気圧で100℃以下、好ましくは80℃以下の沸点を有する低沸点溶媒である。
【請求項38】
請求項37に記載の方法であって、前記有機溶媒がジクロロメタン、塩化メチレン、アセトン、脂肪族炭化水素、又はシクロヘキサンから選ばれるものである。
【請求項39】
請求項31に記載のステントを得るための請求項36乃至は38の何れか一つに記載の方法であって、共有的に結合されるヒアルロン酸の層が疎水性の性質を有するポリマーコーティングに付着される工程d1)を更に含んでいる。
【請求項40】
血管形成に使用されるステントのためのコーティングの作製にヒアルロン酸エステルを使用する使用方法。
【請求項41】
請求項40に記載の使用方法であって、薬理活性成分と共に使用する。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2006−513791(P2006−513791A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570056(P2004−570056)
【出願日】平成15年5月22日(2003.5.22)
【国際出願番号】PCT/IB2003/001958
【国際公開番号】WO2004/087234
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(505371623)ベイコ テック リミテッド (3)
【Fターム(参考)】