説明

衛星通信システム、ゲートウエイ局及び端末局

【課題】 複数の非静止衛星を切り替えて通信を行う際に、複数の復調器を用いることなく、また単一の周波数で衛星切替を行うことにより、ハードウエアを小型化し、周波数を有効に利用する衛星通信システム、ゲートウエイ局及び端末局を得ることを目的とする。
【解決手段】 ゲートウエイ局3は、データ多重器8により衛星切替前の送信データを繰り返して送信信号を生成する。切替制御部10は衛星切替タイミングに従って、アンテナ6とアンテナ7とを切り替え、非静止衛星1と非静止衛星2へ送信信号を送信する。端末局4は、アンテナ5により非静止衛星1及び非静止衛星2からの送信信号を受信し、データ合成器16により、衛星切替の前後の受信信号を合成して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衛星軌道を運行する非静止衛星と通信を行う技術に関し、特に複数の非静止衛星が軌道上の会合点で会合する際に生じる衛星切替を効率的に行う衛星通信システム、ゲートウエイ局及び端末局に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2004−080466には、非静止衛星が軌道上の会合点で会合する際の衛星切替を効率的に行う従来技術が記載されている。一方の非静止衛星から周波数f1の信号を受信している状態で他方の非静止衛星に衛星切替をする場合、会合点で一時的に同一の信号を一方の非静止衛星からは周波数f1で、他方の非静止衛星からは周波数f2で重複して受信される。周波数f2での受信同期が確立した後は、一方の非静止衛星での受信と他方の非静止衛星での受信に生じる時間遅延によって受信データ出力を補正し、一方の非静止衛星から他方の非静止衛星への切替が完了される。これにより、軌道上の会合点で会合する非静止衛星との通信切替時の受信データの瞬断が防止されるものである。
【0003】
【特許文献1】特開2004−080466
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術においては、衛星切替時に軌道上で会合する2つの非静止衛星からの複数の信号を同時に受信する必要があるため、複数の復調器が必要でありハードウエア規模が大きくなるという問題点があった。また、衛星切替時に複数の周波数による受信を行うため、周波数の利用効率が低下するという問題点があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、複数の非静止衛星を切り替えて通信を行う際に、複数の復調器を用いることなく、また単一の周波数で衛星切替を行うことにより、ハードウエアを小型化し、周波数を有効に利用する衛星通信システム、ゲートウエイ局及び端末局を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る衛星通信システムは、ゲートウエイ局と端末局との間で非静止衛星を介して衛星通信を行う衛星通信システムにおいて、上記ゲートウエイ局は、第1の非静止衛星を追尾する第1のアンテナと、第2の非静止衛星を追尾する第2のアンテナと、上記第1の非静止衛星と上記第2の非静止衛星との衛星切替前の送信データを衛星切替の前後で繰り返して送信信号を生成する信号生成手段と、衛星切替において、上記信号生成手段により生成した送信信号の出力を上記第1のアンテナと上記第2のアンテナとの間で切り替える切替制御部とを備え、上記端末局は、上記第1の非静止衛星及び上記第2の非静止衛星からの送信信号を受信するアンテナと、このアンテナにより受信した衛星切替の前後の受信信号を合成して出力するデータ合成器とを備えたものである。
【0007】
請求項2の発明に係る衛星通信システムは、ゲートウエイ局と端末局との間で非静止衛星を介して衛星通信を行う衛星通信システムにおいて、上記端末局は、第1の非静止衛星と第2の非静止衛星との衛星切替前の送信データを衛星切替の前後で繰り返して送信信号を生成する信号生成手段と、上記第1の非静止衛星及び上記第2の非静止衛星へ上記信号生成手段により生成した送信信号を送信するアンテナとを備え、上記ゲートウエイ局は、第1の非静止衛星を追尾する第1のアンテナと、第2の非静止衛星を追尾する第2のアンテナと、衛星切替において上記第1のアンテナと上記第2のアンテナとの間で受信を切り替える切替制御部と、この切替制御部によりアンテナを切り替えて受信した衛星切替の前後の受信信号を合成して出力するデータ合成器とを備えたものである。
【0008】
請求項3の発明に係るゲートウエイ局は、第1の非静止衛星を追尾する第1のアンテナと、第2の非静止衛星を追尾する第2のアンテナと、上記第1の非静止衛星と上記第2の非静止衛星との衛星切替前の送信データを衛星切替の前後で繰り返して端末局へ送信する送信信号を生成する信号生成手段と、衛星切替において、上記信号生成手段により生成した送信信号の出力を上記第1のアンテナと上記第2のアンテナとの間で切り替える切替制御部とを備えたものである。
【0009】
請求項4の発明に係るゲートウエイ局は、第1の非静止衛星を追尾する第1のアンテナと、第2の非静止衛星を追尾する第2のアンテナと、衛星切替において上記第1のアンテナと上記第2のアンテナとの間で端末局からの送信信号の受信を切り替える切替制御部と、この切替制御部によりアンテナを切り替えて受信した衛星切替の前後の受信信号を合成して出力するデータ合成器とを備えたものである。
【0010】
請求項5の発明に係る端末局は、第1の非静止衛星及び第2の非静止衛星との間で送受信を行うアンテナと、上記第1の非静止衛星と上記第2の非静止衛星との衛星切替前の送信データを衛星切替の前後で繰り返してゲートウエイ局へ送信する送信信号を生成する信号生成手段と、上記アンテナにより受信した衛星切替の前後のゲートウエイ局からの受信信号を合成して出力するデータ合成器とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1乃至請求項5に記載の発明によれば、第1の非静止衛星と第2の非静止衛星との衛星切替において衛星切替前の送信信号を繰り返して送信信号を生成して送信し、ゲートウエイ局又は端末局は衛星切替前後で受信した受信信号を合成して出力するので、複数の復調器を必要とすることなく、ハードウエアの小型化や周波数の有効利用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1
【0013】
この発明の実施の形態1に係る衛星通信システム、ゲートウエイ局及び端末局を図1乃至図3により説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係わる衛星通信システムの構成を示す構成図であり、図2は、ゲートウエイ局から端末局に送信する信号のタイミング図、図3は、端末局からゲートウエイ局に送信する信号のタイミング図である。図1において、1は第1の非静止衛星(以下、「非静止衛星1」と表記する。)、2は第2の非静止衛星(以下、「非静止衛星2」と表記する。)であり、軌道上の会合点において会合する。このような衛星群としては、例えば準天頂衛星(又は、8の字衛星とも呼ばれる。)があり、軌道上に配置した3機の衛星がほぼ日本の上空に順番に飛来し、地上の端末局は常時高仰角に衛星を見込んで衛星通信を行うことができる。この非静止衛星1及び2は、複数の衛星を切り替えて通信を引き継ぐことにより、地上の端末局やゲートウエイ局との通信をほぼ常時行うものである。3はゲートウエイ局、4は端末局であり、非静止衛星1及び非静止衛星2を介して、ゲートウエイ局3と端末局4との間で通信を行う。例えば、音声や映像、情報データなどがゲートウエイ局3に集積され、ゲートウエイ局3から衛星を介して各端末局4に配信され、また端末局4からの送信信号も衛星を介してゲートウエイ局3へ伝送する。衛星切替は、非静止衛星1と非静止衛星2の会合点で行うが、このとき、端末局4のアンテナ5は同時に非静止衛星1及び非静止衛星2と通信可能であり、ゲートウエイ局3は、第1のアンテナ6(以下、「アンテナ6」と表記する。)により非静止衛星1と、第2のアンテナ7(以下、「アンテナ7」と表記する。)により非静止衛星2と通信を行う。ゲートウエイ局3において、8は送信信号を生成する信号生成手段であって、送信データを多重化するデータ多重器、9は多重化された送信データを変調する変調器、10は送受信信号の送受信先をアンテナ6とアンテナ7とに切り替える切替制御部である。11は受信信号を復調する復調器であり、12は復調された受信データを合成するデータ合成器である。端末局4において、13は送信信号を生成する信号生成手段であって、送信データを多重化するデータ多重器、14は多重化された送信データを変調する変調器、15は受信信号を復調する復調器であり、16は復調された受信データを合成するデータ合成器である。
【0014】
次に本発明に係る衛星通信システムの動作について説明する。端末局4は、送信データをデータ多重器13によりデータ多重処理し、変調器14により変調処理した後、アンテナ5から非静止衛星1及び非静止衛星2へ送信する。上記のようにアンテナ5は会合点に位置する非静止衛星1及び非静止衛星2を同時に見込むことにより1つの送信信号(1つの周波数)によって非静止衛星1及び非静止衛星2へ送信する。非静止衛星1及び非静止衛星2は、端末局4からの送信信号を受信し、同じ周波数の送信信号によりゲートウエイ局3へ送信するが、ゲートウエイ局3のアンテナ6は非静止衛星1を追尾し、アンテナ7非静止衛星2を追尾し、アンテナ6及びアンテナ7による受信信号はそれぞれ切替制御部10に入力される。切替制御部10は、衛星切替タイミングに従って、アンテナ6とアンテナ7を切り替え、受信信号を復調器11に出力する。復調器11は復調信号をデータ合成器12に出力し、データ合成器12によりデータ合成して出力する。一方、ゲートウエイ局3は、送信データをデータ多重器8によりデータ多重処理し、変調器9で変調処理した後、切替制御部10に出力する。切替制御部10は衛星切替タイミングに従って、変調器17出力をアンテナ6又はアンテナ7に切り替える。ゲートウエイ局3からの送信信号はアンテナ6又はアンテナ7から送信される。アンテナ6から送信しているときには、アンテナ6が追尾している非静止衛星1がゲートウエイ局3からの送信信号を受信し、アンテナ7から送信しているときには、アンテナ7が追尾している非静止衛星2がゲートウエイ局3からの送信信号を受信し、非静止衛星1及び非静止衛星2は同じ周波数の送信信号により、ゲートウエイ局3からの送信信号を端末局4へ送信する。端末局4はアンテナ5により非静止衛星1及び非静止衛星2からの信号を同時に受信し、復調器15により復調処理した後、データ合成器16によりデータ合成して出力する。
【0015】
次にゲートウエイ局3のデータ多重器8及び端末局4のデータ多重器13の動作について説明する。データ多重器8及びデータ多重器13は、衛星切替時に、衛星切替直前の一定時間T1分の送信データを繰返し送信する。このためにデータ多重器8及び13は、送信データのクロック周波数よりも高い周波数で信号出力するが、周波数の増分は一定時間T1を衛星切替周期で割った値であり一般には非常に小さい。例えば、準天頂衛星3機を順次衛星切替して通信サービスを提供する場合、衛星切替間隔は8時間であり、一定時間T1を2秒とすると70ppm以下である。図2に示すように、ゲートウエイ局3に入力された送信データであるDATA#1、DATA#2、DATA#3について、データ多重器8はDATA#2を繰り返しDATA#2’を出力する。変調器9は送信データを変調して出力する。切替制御部10は衛星切替時に変調器9出力をアンテナ6からアンテナ7へ切り替える制御を行う。即ち、衛星切替前には、アンテナ6をオン、アンテナ7をオフに制御して、アンテナ6からDATA#1及びDATA#2を送信し、衛星切替後には、アンテナ6をオフ、アンテナ7をオンに制御して、アンテナ7からDATA#2’及びDATA#3を送信する。端末局4は、アンテナ5により、非静止衛星1及び非静止衛星2からの信号を同一周波数により受信するが、衛星が切り替わることによって生じる伝送遅延差等のために、DATA#2とDATA#2’との間に空白時間17が生じ、また、逆にDATA#2とDATA#2’とが若干重なって受信されることとなる。復調器15にはアンテナ5により受信信号が入力されるが、キャリア周波数やクロック周波数の変動、又は位相ずれ等による引き込み動作のために、DATA#2とDATA#2’の出力の間に受信同期時間T2が発生する。この受信同期時間T2の期間、受信データが欠落してデータ合成器16に入力される。データ合成器16は、衛星切替タイミング前後の復調データの相関値を計算し、DATA#2とDATA#2’とからDATA#2を合成して出力する。したがって、端末局4のデータ合成器16から、DATA#1、DATA#2、DATA#3が受信信号として出力することができる。
【0016】
同様に、図3に示すように端末局4に入力された送信データであるDATA#1、DATA#2、DATA#3について、データ多重器13はDATA#2を繰り返しDATA#2’を出力する。変調器14は送信データを変調して出力し、アンテナ5からDATA#1、DATA#2、DATA#2’、DATA#3を送信する。アンテナ6及びアンテナ7はそれぞれ非静止衛星1及び非静止衛星2を受信しており、ともにDATA#1、DATA#2、DATA#2’、DATA#3を受信する。切替制御部10は衛星切替時に変調器9へ入力する信号をアンテナ6受信信号からアンテナ7受信信号へ切り替える制御を行う。即ち、衛星切替前には、アンテナ6をオン、アンテナ7をオフに制御し、衛星切替後には、アンテナ6をオフ、アンテナ7をオンに制御する。復調器11には衛星切替前にはアンテナ6から、衛星切替後にはアンテナ7からの受信信号が入力されるが、アンテナ7からの受信信号が入力された直後には、キャリア周波数やクロック周波数の変動、又は位相ずれ等による引き込み動作のために受信同期時間T2が発生する。復調器11は、この受信同期時間T2の期間、DATA#2とDATA#2’の一部において復調処理ができず、復調器11出力は、受信同期時間T2分の受信データに欠落が生じた出力となる。データ合成器12は、衛星切替タイミング前後の復調データの相関値を計算し、DATA#2とDATA#2’とからDATA#2を合成して出力する。したがって、ゲートウエイ局4のデータ合成器12から、DATA#1、DATA#2、DATA#3を受信信号として出力することができる。
【0017】
以上のように、この発明によれば、ゲートウエイ局3及び端末局4において、複数の復調器を必要とすることなく、単一の周波数で衛星切替を行ない、データを合成してシームレスに復元することができるとともに、ハードウエアを小型化し、周波数を有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施の形態1に係わる衛星通信システムの構成を示す構成図である。
【図2】ゲートウエイ局から端末局に送信する信号のタイミング図である。
【図3】端末局からゲートウエイ局に送信する信号のタイミング図である。
【符号の説明】
【0019】
1、2 非静止衛星
3 ゲートウエイ局
4 端末局
5、6,7 アンテナ
8、13 データ多重器(信号生成手段)
10 切替制御部
12、16 データ合成器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートウエイ局と端末局との間で非静止衛星を介して衛星通信を行う衛星通信システムにおいて、上記ゲートウエイ局は、第1の非静止衛星を追尾する第1のアンテナと、第2の非静止衛星を追尾する第2のアンテナと、上記第1の非静止衛星と上記第2の非静止衛星との衛星切替前の送信データを衛星切替の前後で繰り返して送信信号を生成する信号生成手段と、衛星切替において、上記信号生成手段により生成した送信信号の出力を上記第1のアンテナと上記第2のアンテナとの間で切り替える切替制御部とを備え、上記端末局は、上記第1の非静止衛星及び上記第2の非静止衛星からの送信信号を受信するアンテナと、このアンテナにより受信した衛星切替の前後の受信信号を合成して出力するデータ合成器とを備えたことを特徴とする衛星通信システム。
【請求項2】
ゲートウエイ局と端末局との間で非静止衛星を介して衛星通信を行う衛星通信システムにおいて、上記端末局は、第1の非静止衛星と第2の非静止衛星との衛星切替前の送信データを衛星切替の前後で繰り返して送信信号を生成する信号生成手段と、上記第1の非静止衛星及び上記第2の非静止衛星へ上記信号生成手段により生成した送信信号を送信するアンテナとを備え、上記ゲートウエイ局は、第1の非静止衛星を追尾する第1のアンテナと、第2の非静止衛星を追尾する第2のアンテナと、衛星切替において上記第1のアンテナと上記第2のアンテナとの間で受信を切り替える切替制御部と、この切替制御部によりアンテナを切り替えて受信した衛星切替の前後の受信信号を合成して出力するデータ合成器とを備えたことを特徴とする衛星通信システム。
【請求項3】
第1の非静止衛星を追尾する第1のアンテナと、第2の非静止衛星を追尾する第2のアンテナと、上記第1の非静止衛星と上記第2の非静止衛星との衛星切替前の送信データを衛星切替の前後で繰り返して端末局へ送信する送信信号を生成する信号生成手段と、衛星切替において、上記信号生成手段により生成した送信信号の出力を上記第1のアンテナと上記第2のアンテナとの間で切り替える切替制御部とを備えたことを特徴とするゲートウエイ局。
【請求項4】
第1の非静止衛星を追尾する第1のアンテナと、第2の非静止衛星を追尾する第2のアンテナと、衛星切替において上記第1のアンテナと上記第2のアンテナとの間で端末局からの送信信号の受信を切り替える切替制御部と、この切替制御部によりアンテナを切り替えて受信した衛星切替の前後の受信信号を合成して出力するデータ合成器とを備えたことを特徴とするゲートウエイ局。
【請求項5】
第1の非静止衛星及び第2の非静止衛星との間で送受信を行うアンテナと、上記第1の非静止衛星と上記第2の非静止衛星との衛星切替前の送信データを衛星切替の前後で繰り返してゲートウエイ局へ送信する送信信号を生成する信号生成手段と、上記アンテナにより受信した衛星切替の前後のゲートウエイ局からの受信信号を合成して出力するデータ合成器とを備えた端末局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−203794(P2006−203794A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15730(P2005−15730)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】