説明

衛星通信地球局装置及びその制御方法

【課題】 通信を素早い起動時間で可能な状態とすること(起動時間短縮)が可能な衛星通信地球局装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度によって基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間を温度ごとに記憶した記憶部と、恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度を計測する温度センサ部と、この温度センサ部が測定した温度に対応する収束時間を記憶部から取得する処理制御部とを備え、処理制御部は、温度センサ部が恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度を測定した測定時間から、この測定時間における温度センサ部の測定した温度に対応する収束時間の経過後に、信号処理部を通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、通信衛星を介して通信を行う衛星通信地球局(可搬局、車載局、固定局を含む)が通信衛星からの電波の受信同期確立や自局から通信衛星への電波の送信開始までの時間を短縮する機能を有する衛星通信地球局装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星通信地球局装置には、衛星通信地球局装置に内蔵されている基準信号を生成する恒温槽温度制御型水晶発振器(温度補償水晶発振器)が、電波を送出可能な状態となるに十分な周波数偏差に達するまでに必要な時間を、同じく衛星通信地球局装置に内蔵した記憶素子に記憶させ、装置の電源投入から前述の必要な時間の計測を開始し、必要な時間が経過後に電波の送出を許可する信号を生成し、該地球局からの電波の送出を可能な状態とするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
恒温槽温度制御型水晶発振器は、特許文献2に記載のものなどがある。なお、周波数偏差(周波数許容偏差とも呼ばれる)とは、基準信号や送受信に用いる信号の周波数が、周囲の温度の変化などにより基準値からずれた度合いを比で表したものである。特に、周囲の温度が25℃において基準となる周波数からずれた度合いを比で表したものを常温偏差と呼ぶ場合もある。
【0004】
また、従来、衛星通信地球局装置の送信制御方式においては、恒温槽温度制御型水晶発振器が、電波を送出可能な状態となるに十分な周波数偏差に達するまでに必要な時間を用いる代わりに、衛星通信地球局装置が属する衛星通信システムにおける中心局からの高精度な受信波を受信し、その復調により得られるクロック信号と自地球局(衛星通信地球局装置)の基準信号クロックとを比較し、その両者間の偏差が規定の一定範囲内に収まった段階で自局の送信を許可するというものがある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−199126号公報
【特許文献2】特開2005−347929号公報
【特許文献3】特開2002−290300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の衛星通信地球局装置においては、記憶素子に記憶させておく時間値は装置の規定温度範囲における最低温度の状態から必要時間経過までの時間値であるため、装置の周囲温度が最低温度でない場合にも同値の時間経過を要するという問題があった。この問題により、最低温度よりも高い温度環境で運用を開始する場合には必要以上の起動時間を要し、迅速な運用開始という重要な目的を達することが出来ない状態という課題があった。
【0007】
特許文献3に記載の衛星通信地球局装置の送信制御方式においては、自地球局が受信可能になるまでに必要な時間に関しては記載されていない。また、特許文献3に記載方式は、通信衛星からの電波を受信するために必要な通信衛星の捕捉は装置の電源投入前に完了している所謂固定衛星通信地球局にのみ適用可能な送信制御方式であり、且つ高精度な周波数偏差で電波を送出する中心局がないシステムにおいても適用できない制御方式であるので、特許文献1が有する課題を解決するものではない。
【0008】
また、特許文献1に記載の衛星通信地球局装置では、地球局からの送信開始までの時間のみに言及しており、電波の送信に要求される周波数偏差に比べ、低い周波数偏差しか要求されない受信に必要な周波数偏差に到達する時間に関しては言及されていないので、受信に関する動作の迅速な運用開始という重要な目的を達することが困難である。
【0009】
近年の衛星通信システムにおける衛星通信可搬局や車載局において必要な通信衛星からの電波の捕捉動作を行う際には、通信衛星からの電波の受信に必要な周波数偏差に到達したという情報が重要であり、この段階で通信衛星の捕捉動作を行うことが衛星通信地球局装置の運用開始までの時間を短縮する目的に必要不可欠である。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解消するためになされたもので、通信を素早い起動時間で可能な状態とすること(起動時間短縮)が可能な衛星通信地球局装置及びその制御方法を提供することを目的とする。また、この発明は、衛星捕捉が必要な場合においても、同じく最短の起動時間で通信可能な状態とすることが可能な衛星通信地球局装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明に係る衛星通信地球局装置は、衛星を介してセンター局や他の地球局と通信するためのアンテナ部に接続された信号処理部を有するものであって、恒温槽温度制御型水晶発振器を具備し、この恒温槽温度制御型水晶発振器から発振される基準信号を用いて、前記信号処理部が前記通信に用いる信号の信号処理を行う衛星通信地球局装置において、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度によって前記基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間を温度ごとに記憶した記憶部と、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度を計測する温度センサ部と、この温度センサ部が測定した温度に対応する前記収束時間を前記記憶部から取得する処理制御部とを備え、前記処理制御部は、前記温度センサ部が前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度を測定した測定時間から、この測定時間における前記温度センサ部の測定した温度に対応する前記収束時間の経過後に、前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にすることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2の発明に係る衛星通信地球局装置は、衛星を介してセンター局や他の地球局と通信するためのアンテナ部とこのアンテナ部に接続された信号処理部とを有するものであって、恒温槽温度制御型水晶発振器を具備し、この恒温槽温度制御型水晶発振器から発振される基準信号を用いて、前記信号処理部が前記通信に用いる信号の信号処理、及び、前記アンテナ部の制御を行う衛星通信地球局装置において、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度によって前記基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間を温度ごとに記憶した記憶部と、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度を計測する温度センサ部と、この温度センサ部が測定した温度に対応する前記収束時間を前記記憶部から取得する処理制御部と、この処理制御部からの指示により、前記アンテナ部を制御して前記衛星の捕捉を開始させるアンテナ制御部とを備え、前記処理制御部は、前記温度センサ部が前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度を測定した測定時間から、この測定時間における前記温度センサ部の測定した温度に対応する前記収束時間の経過後に、前記アンテナ制御部へ前記アンテナ部による前記衛星の捕捉の開始を指示し、前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にすることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3の発明に係る衛星通信地球局装置は、前記記憶部が、前記アンテナ制御部へ前記アンテナ部による前記衛星の捕捉の開始指示と前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にする制御とで異なる前記収束時間を記憶しているものである請求項2に記載のものである。
【0014】
請求項4の発明に係る衛星通信地球局装置は、前記処理制御部が、前記アンテナ制御部へ前記アンテナ部による前記衛星の捕捉の開始を指示した後、所定時間後に、前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にするものである請求項2に記載のものである。
【0015】
請求項5の発明に係る衛星通信地球局装置は、前記温度センサ部が、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の起動時に温度を測定するものである請求項1〜4のいずれかに記載のものである。
【0016】
請求項6の発明に係る衛星通信地球局装置の制御方法は、衛星を介してセンター局や他の地球局と通信するためのアンテナ部に接続された信号処理部を有するものであって、恒温槽温度制御型水晶発振器を具備し、この恒温槽温度制御型水晶発振器から発振される基準信号を用いて、前記信号処理部が前記通信に用いる信号の信号処理を行う衛星通信地球局装置の制御方法において、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度を計測する計測ステップと、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度ごとに、予め準備された前記基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間から、前記計測ステップで計測された温度に対応する収束時間を選択する選択ステップと、前記計測ステップの測定時間から、前記選択ステップで選択された収束時間の経過後に、前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にする制御ステップとを備えたことを特徴とするものである。
【0017】
請求項7の発明に係る衛星通信地球局装置の制御方法は、衛星を介してセンター局や他の地球局と通信するためのアンテナ部とこのアンテナ部に接続された信号処理部とを有するものであって、恒温槽温度制御型水晶発振器を具備し、この恒温槽温度制御型水晶発振器から発振される基準信号を用いて、前記信号処理部が前記通信に用いる信号の信号処理、及び、前記アンテナ部の制御を行う衛星通信地球局装置の制御方法において、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度を計測する計測ステップと、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度ごとに、予め準備された前記基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間から、前記計測ステップで計測された温度に対応する収束時間を選択する選択ステップと、前記計測ステップの測定時間から、前記選択ステップで選択された収束時間の経過後に、前記アンテナ部による前記衛星の捕捉の開始を指示し、前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にする制御ステップとを備えたことを特徴とするものである。
【0018】
請求項8の発明に係る衛星通信地球局装置の制御方法は、前記選択ステップが、前記アンテナ部による前記衛星の捕捉の開始指示と前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にする制御とで異なる収束時間を、予め準備された前記基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間から選択するものである請求項7に記載のものである。
【0019】
請求項9の発明に係る衛星通信地球局装置の制御方法は、前記制御ステップが、前記アンテナ部による前記衛星の捕捉の開始を指示した後、所定時間後に、前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にするものである請求項7に記載のものである。
【0020】
請求項10の発明に係る衛星通信地球局装置の制御方法は、前記計測ステップが、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の起動時に温度を測定するものである請求項6〜9のいずれかに記載のものである。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、請求項1〜5に係る発明によれば、温度センサ部により、運用を開始する周囲温度を得て、その温度に応じて、内蔵する恒温槽温度制御型水晶発振器からの基準信号が必要な周波数偏差に達するまでの時間を記憶部から得て、処理制御部により装置の起動時間とすることにより、最短の起動時間で無駄なく迅速に衛星通信回線の確立が可能となる衛星通信地球局装置の制御方法を得ることができる。
【0022】
請求項6〜10に係る発明によれば、運用を開始する周囲温度に応じて、内蔵する恒温槽温度制御型水晶発振器からの基準信号が必要な周波数偏差に達するまでの時間を装置の起動時間とすることにより、最短の起動時間で無駄なく迅速に衛星通信回線の確立が可能となる衛星通信地球局装置の制御方法を得ることができる。
【0023】
また、請求項1〜10に係る発明は、衛星通信地球局装置が可搬局などでバッテリーを使用する場合に、装置の起動時間中にバッテリーを消耗するという欠点も必要最小限に抑えることが可能であり、実際の運用時間を長くできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の実施の形態1に係る衛星通信地球局装置の詳細ブロック図である。
【図2】この発明に係る衛星通信地球局装置が運用される衛星巣通信システムの構成図である。
【図3】この発明に係る衛星通信地球局装置が運用される衛星通信システム上の電波の配置概念図である。
【図4】この発明に係る衛星通信地球局装置における基準発振器の電源投入時(起動時)の周囲温度と一定の周波数偏差内に収束する時間的経過を示した模式図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る衛星通信地球局装置係わる地球局の電源投入から衛星回線の確立までのステップを示したフォローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1に係る衛星通信地球局装置の基準発振器が必要な周波数偏差以内に収束するのに必要な時間の関係を示すテーブルの一例図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る衛星通信地球局装置の詳細ブロック図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る衛星通信地球局装置係わる地球局の電源投入から衛星回線の確立までのステップを示したフォローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態2に係る衛星通信地球局装置の基準発振器が必要な周波数偏差以内に収束するのに必要な時間の関係を示すテーブルの一例図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る衛星通信地球局装置の詳細ブロック図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係る衛星通信地球局装置係わる地球局の電源投入から衛星回線の確立までのステップを示したフォローチャートである。
【図12】この発明の実施の形態3に係る衛星通信地球局装置の基準発振器が必要な周波数偏差以内に収束するのに必要な時間の関係を示すテーブルの一例図である。
【図13】この発明の実施の形態4に係る衛星通信地球局装置の詳細ブロック図である。
【図14】この発明の実施の形態4に係る衛星通信地球局装置係わる地球局の電源投入から衛星回線の確立までのステップを示したフォローチャートである。
【図15】この発明の実施の形態4に係る衛星通信地球局装置の基準発振器が必要な周波数偏差以内に収束するのに必要な時間の関係を示すテーブルの一例図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について図1〜6を用いて説明する。図中、同一符号は、同一又は相当部分を示しそれらについての詳細な説明は省略する。図1及び2において、1は通信衛星(衛星)、2は通信衛星1と通信を行う固定局、可搬局、車載局などの地球局、3は通信衛星1を介して、衛星通信システムを構成する地球局2などの各地球局の通信回線設定、解除及び監視、制御を行う中心局であり、一般的にセンター局(HUB局)と呼ばれるものである。ここでは、地球局2などの各地球局を地球局2a(本願の衛星通信地球局装置に相当する)と地球局2bとし、地球局2a、2bはセンター局3からの制御により通信回線の周波数などを割り当てられるものとする。図2においては地球局Aを2a、地球局Bを2bとしている。これらの地球局2は前述の通り、固定局、可搬局、車載局などの形態を取り得り、且つ地球局は本願の実施の形態で説明するような2局に限るものではない。また、地球局2a、地球局2bはセンター局3との間に監視制御回線を接続し、各地球局2間にも通信回線を接続するものとする。なお、全ての衛星通信回線は図1の通信衛星1を介して、送受信の全波を中継されるものとする。実施の形態1では地球局2aは衛星方向を捕捉することが可能な自動捕捉機能を有する可搬局もしくは車載局などの地球局とする。
【0026】
図1において、4は地球局2aが通信衛星1から電波を受信又は通信衛星1へ電波を送信するアンテナ部、5はアンテナ部4の方向、偏波面などを調整するために、アンテナ部4を駆動するアンテナ駆動装置、6はアンテナ駆動装置5を制御するアンテナ制御部、7はアンテナ部4と高周波信号を結合させるための結合分離部であり、一般的には、高周波フィルタやサーキュレータなどで構成されることが多い。8は結合分離部7に送信の高周波信号を送出する送信増幅/送信周波数変換部8は結合分離部7から受信の高周波信号を入力される受信増幅/受信周波数変換部9は送信増幅/送信周波数変換部8と受信増幅/受信周波数変換部9とに接続される変復調部である。
【0027】
変復調部10(後述の基準発振器12)からは、送受信中間周波数信号(送信IF信号、受信IF信号)以外に、送信増幅/送信周波数変換部8、受信増幅/受信周波数変換部9及びアンテナ制御部6に各装置の局所発振回路(図示は省略)の周波数偏差を決定する基準信号が供給されているものとし、それに加えてアンテナ制御部6とはアンテナ部4の方向調整のためのトラッキング制御の開始指示、トラッキング制御の結果得られる方向調整などの完了信号のやり取りも行うこととする。なお、本願では、アンテナ部4に機械式走査によるものを例示しているが、アンテナ部4が電子走査式のアンテナであれば、アンテナ駆動装置5は移相器となり、アンテナ制御部6は、その移相器を制御してアンテナ部4の電子的な方向調整のためのトラッキング制御を行えばよい。
【0028】
図1において、11は送信増幅/送信周波数変換部8,受信増幅/受信周波数変換部9,変復調部10から構成される信号処理部であり、通信衛星1を介して、センター局3や他の地球局2(2b)と通信するためのアンテナ部4に結合分離部7を介して接続されたものであるといえる。12はアンテナ制御部6がアンテナ部5による通信衛星1の捕捉の開始させるために必要な基準信号や、信号処理部11を通信衛星1との通信に用いる信号の信号処理に必要な基準信号を発振する恒温槽温度制御型水晶発振器(以下、単に「基準発振器12」という場合がある)、13は基準発振器12の周囲の温度(以下、単に「周囲温度」という場合がある)を計測する温度センサ部であり、基準発振器12の周囲の温度を計測できるものであれば、配置や種類は任意のものを選択できるが、後述する処理制御部26へ計測した温度データを供給することが可能なものである必要はある。14は基準発振器12の周囲の温度によって、基準発振器12が発振する基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間を温度ごとに記憶した記憶部である。記憶部14は、メモリなどの記憶素子を用いればよい。また、記憶部14が記憶する情報は、後述する基準信号がトラッキング開始に必要な周波数偏差に収束するまでの時間である第1の収束時間と基準信号が送信準備開始に必要な周波数偏差に収束するまでの時間である第2の収束時間とである。この情報は、温度ごとに第1の収束時間(トラッキング開始)と第2の収束時間(送信準備開始)のデータが並んだ表(テーブル)である。なお、第1の収束時間は、実施の形態1以外の実施の形態では、受信準備開始(受信動作開始待ち状態、換言すると、受信信号復調可能状態への準備開始)である場合がある。
【0029】
基準発振器12や温度センサ部13以外の変復調部10の内部構成を説明する。15は送信信号や受信信号に対してデジタル信号処理を行うデジタル信号処理部、16はデジタル信号処理部15から送出された送信RF信号を変調する変調部、17は基準発振器12から送られてきた基準信号を基にローカル信号を発振する送信局所発振器、18は変調部16から送られてきた送信RF信号と送信局所発振器17から送られてきたローカル信号を混合する周波数ミキサ、19は周波数ミキサ18が混合した送信IF信号を増幅する送信IF増幅部19、20は送信IF増幅部19が増幅した送信IF信号に基準発振器12からの基準信号を重畳して、送信IF信号と基準信号とを送信増幅/送信周波数変換部8へ送る重畳部、21は受信増幅/受信周波数変換部9へ基準発振器12からの基準信号を送る重畳部、22は重畳部21を介して、受信周波数変換部10から送られてきた受信IF信号を増幅する受信IF増幅部、23は基準発振器12から送られてきた基準信号を基にローカル信号を発振する受信局所発振器、24は受信IF増幅部22から送られてきた受信IF信号と局所発振器23から送られてきたローカル信号を混合する周波数ミキサ、25は周波数ミキサ24からの受信RF信号を復調してデジタル信号処理部15へ送る復調部である。
【0030】
引き続き、変復調部10の内部構成を説明する。26は信号処理部11(変復調部10)の中核を担っており、温度センサ部13が測定した温度に対応する収束時間を記憶部14から取得する処理制御部である。この処理制御部26からの指示により、アンテナ制御部6はアンテナ部4を制御して通信衛星1の捕捉を開始させる(トラッキング開始)。また、処理制御部26からの指示により、信号処理部11を通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にするものである。通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態とは、処理制御部26の制御により変復調部10が行う送信準備と送信動作開始待ち状態や、通信衛星1の捕捉後に、処理制御部26の制御により変復調部10が行う受信動作開始待ち状態を指す。処理制御部26によるこれらの制御は、温度センサ部13が基準発振器12の周囲の温度を測定した測定時間から、この測定時間における温度センサ部13の測定した温度に対応する収束時間の経過後に実行される。この実行は、処理制御部26が内部に有する起動タイマーを用いて行う(図示は省略)。なお、処理制御部26は、図1では外部に記憶部14を有しているが、内部に設ける構成としてもよい。起動タイマーに関しては、処理制御部26の外部に設けてもよい。
【0031】
実施の形態1に係る衛星通信地球局装置は、信号処理部11が通信衛星1を介して行う通信に用いる信号の信号処理、及び、アンテナ部4の制御を行うものである。実施の形態1に係る衛星通信地球局装置は、基準発振器12から発振される基準信号が、アンテナ部4を衛星方向に向けるトラッキング制御に必要な通信衛星1からの受信信号(受信波)の受信に必要な基準信号の周波数偏差へ収束する収束時間と通信衛星1への送信に必要な基準信号の周波数偏差へ収束する収束時間とが予め記憶部14にプリセットされている。
【0032】
実施の形態1に係る衛星通信地球局装置の処理制御部26は、アンテナ部4を衛星方向に向けるトラッキング制御に必要な通信衛星1からの受信信号を受信するために必要な周波数偏差が得られた段階、換言すると、記憶部14に記憶された第1の収束時間が経過した段階で、アンテナ制御部6によるアンテナ駆動装置5を駆動させて行うアンテナ部4を衛星方向(通信衛星1の方向)に向けるトラッキング開始制御を行い(トラッキング開始)、アンテナ制御部6が通信衛星1の方向のトラッキングを完了した時点で、処理制御部26の制御により、変復調部10(信号処理部11)における復調部25での復調処理を開始する。このとき、復調処理開始を受信動作開始としてもよいし、トラッキングが完了した時点を受信動作開始としてもよい。アンテナ制御部6には、アンテナ部4の衛星方向のトラッキング制御に必要な通信衛星1からの受信信号の受信装置を内蔵している(図示は省略)。このアンテナ部4の衛星方向のトラッキング制御に必要な衛星1からの受信信号は、対向局の通信波,各地球局で共通使用しているセンター局3などからの共通線回線、パイロット信号、または衛星1が送出しているビーコン信号などが利用可能である。
【0033】
次に、実施の形態1に係る衛星通信地球局装置の処理制御部26は、送信に必要な基準信号の周波数偏差が得られているかを判定し、必要な基準信号の周波数偏差が得られた段階(通信衛星1への送信に必要な基準信号の周波数偏差が得られた段階であり、換言すると、記憶部14に記憶された第2の収束時間が経過した段階)で変復調部10内及び送信増幅/送信周波数変換部8に対して送信可能な状態設定を行う。この送信可能な状態設定とは、例えば、変復調部10内のデジタル信号処理部15でのベースバンド信号の送出を開始したり、送信局所発振器17の出力を周波数ミキサ18に入力する経路を接続したり、送信IF増幅部19の電源供給を開始したり、送信増幅/送信周波数変換部8に対して増幅機能のON制御をしたりする様々な手段を単独もしくは複数の手段を組み合わせて適用されるものが挙げられる。
【0034】
なお、通信衛星1への送信に必要な基準信号の周波数偏差が得られた段階は、一般的に、必要な周波数偏差の精度の違いから、変復調部10での復調処理を開始の後、又は、トラッキングが完了した時点の後となる。これは、実施の形態1に係る衛星通信地球局装置で使用される一般的な衛星通信システムでは、電波の送信に要求される周波数偏差に比べ、電波の受信(トラッキング)に要求される周波数偏差が低いものであることが理由である。つまり、基準発振器12から発振される基準信号に求められる周波数偏差の精度には、高い精度の中でも、高低があるということは、所定の周波数偏差が複数あるということになり、基準発振器12が発振する基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間も複数あるということになる。実施の形態1では、前述の通り、第1の収束時間と第2の収束時間との二つの収束時間を設定している。
【0035】
図3は、通信衛星1上の各地球局2からの電波の配置概念図である。図3の横軸は周波数を示し、この例では、周波数の低い方から順に、共通監視制御回線、応答回線、通信回線(地球局2a→地球局2b)、通信回線(地球局2b→地球局2a)と並んでいる。この配置で、実施の形態1に係る衛星通信地球局装置が実施される衛星通信システムが運用されている(一例であることはいうまでもない)。図3では、センター局3から地球局2a、2bに対しての共通監視制御回線と、それらの監視制御回線に対する応答として地球局2a、2bからセンター局3への応答回線と、地球局2aと地球局2b間の通信回線の通信衛星1上での配置の概念図を示しており、各回線は周波数分割された状態で配置されている。なお、地球局2a、2bからセンター局3への応答回線は一般的に同じ周波数上の回線を時分割で共有する形態が取られている。
【0036】
ここで、発明の実施の形態1に係る衛星通信地球局装置の各構成における作用について説明する。まず、アンテナ部4から通信衛星1に送出される送信波(送信信号)の周波数偏差は変復調部10から送出される送信中間周波数信号の周波数偏差と、送信増幅/送信周波数変換部8内に設けられた局所発振回路の周波数偏差の合計となる。ここで、変復調部10から送出される送信中間周波数信号の周波数偏差は、変復調部10に内蔵された基準発振器12の周波数偏差により決定され、また送信増幅/送信周波数変換部8内に設けられた局所発振回路の周波数偏差も、該局所発振回路の基準信号が変復調部10から供給されるので、同じく変復調部10に内蔵された基準発振器12の周波数偏差により決定される。また、同様に通信衛星1からアンテナ部4が受信する受信波(受信信号)は、受信増幅/受信周波数変換部9内に設けられたの局所発振回路により周波数変換され、変復調部10に入力され、変復調部10内に設けられた受信局所発振器23と周波数ミキサ22とによりベースバンド信号に周波数変換されるので、アンテナ部4が受信する受信波に対するこれらの周波数偏差も変復調部10に内蔵された基準発振器12の周波数偏差により決定される。
【0037】
上記の説明の通り、地球局2aが通信衛星1に送信する送信波の周波数偏差と、地球局2aが通信衛星1から受信する受信波を変復調部10が正確に周波数変換しベースバンド信号に変換するためには、変復調部10に内蔵された基準発振器12の周波数偏差が所定の値に収まっている必要があることが分かる。つまり、地球局2aの衛星回線の運用開始には変復調部10に内蔵された基準発振器12が、十分な周波数偏差に達していることが必要となる。なお、図1においては、送信増幅/送信周波数変換部8、受信増幅/受信周波数変換部9に変復調部10から基準発振器12の基準信号を供給する手段として、送信側では重畳部20、受信では重畳部21を用いて各々送受信中間周波数との合波、分波を行う形態の場合を示しているが、その他の手段として基準発振器12の基準信号を単独で各々の装置(送信増幅/送信周波数変換部8,受信増幅/受信周波数変換部9)に供給することも可能である。アンテナ制御部6に対しては後者の手段を用いて基準信号を供給する手段を取る場合を図1にて示している。
【0038】
さらに、アンテナ制御部6には、「アンテナの衛星方向のトラッキング制御に必要な衛星からの受信信号」の受信装置を内蔵しているが、この受信装置にも変復調部10(基準発振器12)から基準信号が供給されており、同じく受信信号を周波数変換するので、その周波数偏差も変復調部10に内蔵された基準発振器12が発振する基準信号の周波数偏差により決定され、アンテナ制御部6がアンテナ部4の方向調整のためのトラッキング制御を行うには変復調部10に内蔵された基準発振器12が十分な周波数偏差に達していることが必要となる。
【0039】
ここで、通信衛星1上に図3で示したような各通信波が周波数配置されるような衛星通信システムにおいては、基準信号を生成する基準発振器12には非常に高精度な周波数偏差を有する恒温槽温度制御型水晶発振器が用いられる。この恒温槽温度制御型水晶発振器は内部を一定の温度に保つためのヒータを内蔵しており、恒温槽温度制御型水晶発振器内を一定の温度に保つことで非常に高精度な周波数偏差を有する基準信号を得ていることができる。そのため、一般的に、恒温槽温度制御型水晶発振器の出力周波数が高精度な周波数偏差に到達するまでの時間は、周囲温度に依存することが知られている。この特性を恒温槽温度制御型水晶発振器(基準発振器12)の周囲の温度ごと示した模式図を図4に示す。
【0040】
図4では横軸に装置の電源投入からの経過時間を、縦軸に恒温槽温度制御型水晶発振器(基準発振器12)が発振する基準信号の周波数偏差を示しており、周囲温度が−20℃、0℃、20℃、40℃と高くなるに連れて基準信号の所定の周波数偏差が収束するまでの時間が短くなることを示している。実施の形態1に係る所定の周波数偏差とは、基準信号として使用可能な高精度なものを指し、信号処理部11内で基準信号を用いる構成や及びアンテナ制御部6に設けられた通信衛星トラッキング用の信号を受信するための受信装置に求められる程度のものである。信号処理部11内で基準信号を用いる構成とは、具体的に、変復調部10内の送信局所発振器17、受信局所発振器24、送信増幅/送信周波数変換部8内に設けられた局所発振回路、受信増幅/受信周波数変換部9内に設けられた局所発振回路を指す。なお、本願において、装置の電源投入は、衛星通信地球局装置の基準発振器12への電源投入を指しているが、これは、基準発振器12(恒温槽温度制御型水晶発振器12)が動作し始めることも含めるとする(基準発振器12起動)。この場合、温度センサ部13は、基準発振器12の起動時に温度を測定することになる。また、基準発振器12への電源投入は、本願の衛星通信地球局装置全体、又は、基準発振器12以外の衛星通信地球局装置の一部への電源投入も含むものとする。電源投入による各構成の起動順序は、本願では、変復調部10が先で、基準発振器12があとの場合を用いて説明するがこれに限るものではない。これは、基準発振器12の起動時間よりも、変復調部10の起動時間の方が後でも、その起動時間が、基準発振器12内部の温度補償動作の実行初期であれば、前述の第1及び第2の収束時間に与える影響が少ないためである。
【0041】
本願は、恒温槽温度制御型水晶発振器の特性を利用した衛星通信地球局装置であり、信号処理部11を構成する変復調部10内に基準発振器12の周囲の温度を測定する温度センサ部13と基準発振器12の周波数偏差と装置の電源投入からの経過時間の関係をデータ化したテーブルを予め格納した記憶部14と、測定温度と記憶部14内のテーブルを参照して基準発振器の周波数偏差を把握する処理制御部26を備えている。特に、実施の形態1に係る衛星通信地球局装置は、処理制御部26により、アンテナ制御部6へアンテナ部4による通信衛星1の捕捉の開始を指示し、信号処理部11を通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態、つまり、トラッキング開始と送信準備開始を制御して、地球局2aの衛星回線の運用開始にするものである。
【0042】
実施の形態1に係る衛星通信地球局装置の一連の動作をフローチャートで表したものを図5に示す。以下、図5を用いて実施の形態1に係る衛星通信地球局装置の制御方法における各ステップの動作を説明する。なお、各ステップ(図5中では、Stepと記載)は、S○(○内にはステップ数を正の整数で表示)と表現する。例えば、Step1はS1と表現する。まず、S1で衛星通信地球局装置の電源投入による立ち上げを行い変復調部10が起動される(起動ステップ)。S2は、基準発振器12の周囲の温度を計測するステップであり、基準発振器12の電源投入時(起動時)における基準発振器12の周辺温度を温度センサ部13が測定し検出する(計測ステップ)。S3は、基準発振器12の周囲の温度ごとに、予め準備された基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間から、計測ステップで計測された温度に対応する収束時間を選択する選択ステップである。つまり、基準発振器12の周囲温度ごとに送受信周波数の要求周波数偏差別に基準発振器12がその偏差以内に周波数が収束するのに必要な収束時間の関係が記憶部14にプリセットされているので、温度センサ部13が検出した温度値(温度データ)を処理制御部26が読み取り、予めセットされた周囲温度別、送受信別の収束に必要な時間である収束時間から温度センサ部13から読み取った温度に対応するものを処理制御部26が記憶部14から読み取る。この読み取った収束時間から、処理制御部26が送受信の起動タイマー値を決定する(選択ステップ)。なお、S3におけるタイマー値(送信/受信)とは、タイマー値(受信)が、トラッキング開始に必要な周波数偏差に収束するまでの時間である第1の収束時間に基づき、タイマー値(送信)が、基準信号が送信準備開始に必要な周波数偏差に収束するまでの時間である第2の収束時間に基づくものである。以下、タイマー値(受信)を受信タイマー、タイマー値(送信)を送信タイマーと称する場合がある。
【0043】
残りのステップであるS4〜S9は、制御ステップとなる。実施の形態1に係る衛星通信地球局装置の制御方法における制御ステップを説明する。S4〜S9は、S2の測定時間から、S2で選択された収束時間の経過後に、アンテナ部4による通信衛星1の捕捉の開始を指示し、信号処理部11を通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にするものである。制御ステップのうち、S4〜S7は、トラッキングステップ(受信準備ステップ)であり、S8、S9は送信準備ステップである。
【0044】
S4において、処理制御部26が内部に有する起動タイマーセットをセットした受信タイマーの時間が経過したか否かを処理制御部26が判定し、受信タイマーが経過した場合に、S5に示すようにアンテナ制御部6によってアンテナ駆動部5を制御して、トラッキング開始制御を行う。受信タイマーが経過していない場合は、S4を繰り返し、受信タイマーの計測を継続する。受信タイマーが経過した場合は、アンテナ制御部6にはアンテナのトラッキング制御に必要な衛星からの受信信号の受信装置が内蔵されており、該受信装置には基準発振器12の基準信号が供給されており、処理制御部26によるトラッキング開始指示があった時点では通信衛星1を捕捉するのに十分な周波数偏差を有する基準信号が基準発振器12から得られているので、アンテナ駆動装置5はアンテナ制御部6の制御に従い、アンテナ部4を駆動し、通信衛星1の捕捉動作を行う。次に、S6でアンテナ制御部6がトラッキング動作を行い、S7でアンテナ制御部6がトラッキング動作を完了することで通信衛星1の方向の捕捉が完了したことが、処理制御部26に通知される。
【0045】
トラッキング動作の完了が、処理制御部26に通知されると処理制御部26は、S8において、処理制御部26がセットした送信タイマーが経過したか否かを判定し送信タイマーが経過した場合には通信衛星1に対して、送信波を送出するに十分な周波数偏差を有する基準信号が基準発振器12から得られている。送信タイマーが経過していない場合は、S8を繰り返し、送信タイマーの計測を継続する。送信タイマーが経過した場合は、信号処理部11には、基準発振器12の基準信号が供給されており、処理制御部26による送信準備開始指示があった時点では、通信衛星1へ送信する送信信号を生成するのに十分な周波数偏差を有する基準信号が基準発振器12から得られているので、S9において、処理制御部26の制御に従い、信号処理部11における変復調部10及び送信増幅/送信周波数変換部8に対して送信可能な状態設定(送信信号の変調など)を行う。
【0046】
S9の後に、信号処理部11における変復調部10及び受信増幅/受信周波数変換部9に対して受信可能な状態設定(受信信号の復調など)を行ってもよいし、S7の後に行ってもよい。これは、S7の終了後は、速やかに「受信信号復調可能な状態」となっているためである。
【0047】
ここで、実施の形態1に係る衛星通信地球局装置である地球局2aが他地球局2bの支配下にあり、その制御を受けるシステムである場合は、S1〜S9の各ステップが完了していても、地球局2aの実際の送信制御は他地球局2bからの送信許可、又は、他地球局2bからの受信波の受信同期がなければ通信衛星1に対して送出されない機能を有するものとする。本機能は、地球局2aと他地球局2bの間に親子関係があり、地球局2aが子局の中の一子局で、他地球局2bが親局の場合、親局である他地球局2bからの送信許可、又は、他地球局2bからの受信波の受信同期がなければ、子局である地球局2aは通信衛星1に対して電波の送出が行えないシステムに対応したものである。この機能を具備することにより、地球局2aにおいてS1〜S9の各ステップが完了していても、自動的に通信衛星1に対して電波の送出を行わないという発信規制が可能となる。このような発信規制が行われるシステムとしては、限られた電波の周波数帯域を複数の子局にてシェアする場合(換言すれば、子局の全局が電波を利用できる周波数帯域が確保されていない場合)などにおいて有効且つ必要な機能である。この場合、親局である他地球局2bがシステムで利用できる限られた電波の周波数帯域を選択もしくは許可した子局、ここでは地球局2aに対して与えることが可能となる。このような、地球局2aと他地球局2bの間に親子関係がある場合の考え方は、実施の形態1に係る衛星通信地球局装置及びその制御方法に限定されるものではなく、他の実施の形態に係る衛星通信地球局装置及びその制御方法にも適用可能なものである。
【0048】
S3において、処理制御部26が受信タイマー値、送信タイマー値を決定する際に参照する記憶部14にセットされている周囲温度と送受信周波数の要求周波数偏差別に基準発振器12がその偏差以内に周波数が収束するのに必要な時間の関係を示すテーブルの一例を図6(a)に示す。図6(a)は、−20℃から60℃までの10℃刻み(ステップ)で、送信準備開始のための収束時間とトラッキング開始のための収束時間とのデータを並べた表(テーブル)である。このテーブルは、変復調部10に実装されている恒温槽温度制御型水晶発振器12の個体差が影響しない程度に十分なマージンを考慮して決定されるが、恒温槽温度制御型水晶発振器12の種類が変わった場合には、その特性に応じて変更が可能なものとする。また、温度の刻みは必要に応じて細かくすることが可能である。処理制御部26ではテーブルに無い温度が温度センサから読み取った場合には、記憶されている温度ステップ間を補完する形で各タイマー値を決定することも可能であるとする。例えば、温度センサ部13によって検出された恒温槽温度制御型水晶発振器12の周囲温度が、−13℃のときは、より近い温度である−10℃における値を処理制御部26が記憶部14(図6(a)のテーブルの場合)から採用する場合や、−20℃〜−10℃からの収束時間の減少が100秒であることから(図6(a)のテーブルの場合)、1℃あたりの収束時間の減少率を10秒として、検出された周囲温度が、−13℃のときは、送信準備開始のための収束時間(送信タイマー)を530秒とし、トラッキング開始のための収束時間(受信タイマー)を470秒とする場合などが考えられる。
【0049】
図6(a)で例示するテーブルでは、温度センサ部13が測定し検出した温度が−10℃の場合、受信タイマーが440秒、送信タイマーが500秒に設定されるが、温度センサ部13が測定し検出した温度が30℃の場合、受信タイマーが240秒、送信タイマーが300秒に設定されることになる。この場合は、実際の周囲の温度に関わらず、恒温槽温度制御型水晶発振器12の周囲温度が事前に設定される最低温度になっていた場合のタイマー値が決定されていた場合に比べて、送受信とも200秒早くトラッキング動作と受信動作及び送信可能状態になる効果があり、通信衛星1捕捉に必要な受信系の周波数偏差、及び送信に要求される周波数偏差が得られる時間を、基準発振器12の温度起動特性に合わせたタイマー値を別々に持ち、それに従い衛星捕捉及び送信許可を制御することにより、無駄なく迅速に衛星捕捉及び衛星通信回線を確立及び開始することが可能となる。また、地球局2aを可搬局や車載局などの固定局に比べて簡易な構成のもので運用する場合、電源をバッテリー用いても、地球局2aに実施の形態1に係る通信衛星地球局装置を適用すれば、装置の起動時間中にバッテリーを消耗してしまい、実際の通信時間が短くなるという欠点も必要最小限に抑えることが可能となる。
【0050】
図6(a)に記載のテーブルは、アンテナ制御部6へアンテナ部4による通信衛星1の捕捉の開始指示(受信タイマー)と信号処理部11を通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にする制御(送信タイマー)とで異なる収束時間を記憶しているものであり、図5に記載のS3では、その受信タイマーと送信タイマーとで異なる収束時間を選択するものであったが、恒温槽温度制御型水晶発振器12の周囲温度の違いに関係なく、受信タイマー値の時間から所定時間を経過すると、送信タイマー値となる場合、図6(a)で例示するテーブルでなくてもよい。この場合、記憶部14に記憶しておくテーブルは、処理制御部26がアンテナ制御部6へアンテナ部4による通信衛星1の捕捉の開始を指示した後、所定時間後に、処理制御部26が信号処理部11を通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にすることを実行できるものであり、図5に記載のS3では、アンテナ部4による通信衛星1の捕捉の開始を指示した後、所定時間後に、信号処理部11を通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にすることになる。なお、本願では、所定時間を60秒とするが、これに限るものではない。
【0051】
図6(b)と図6(c)とを例に用いて、前述の受信タイマー値の時間から所定時間を経過すると、送信タイマー値となる場合に、記憶部14に記憶させておくテーブルの具体事例を説明する。まず、図6(b)に記載のテーブルは、−20℃から60℃までの10℃刻み(ステップ)で、トラッキング開始のための収束時間とのデータと、このトラッキング開始のための収束時間(受信タイマー値)から所定時間である60秒経過後(図6(b)では、+60と図示している。)が、送信準備開始のための収束時間(送信タイマー値)であるデータとを並べた表(テーブル)である。また、恒温槽温度制御型水晶発振器12の周囲温度の違いに関係がなく、トラッキング開始のための収束時間から所定時間経過後が、送信準備開始のための収束時間であることを利用して、トラッキング開始のための収束時間(受信タイマー値)だけを記憶部14に記憶させて、送信タイマー値を処理制御部26に保持させておいてもよい。この場合に、記憶部14に記憶させておくものは、図6(c)に記載したような、−20℃から60℃までの10℃刻み(ステップ)で、トラッキング開始のための収束時間のデータを並べた表(テーブル)である。
【0052】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2について図7〜9を用いて説明する。図中、同一符号は、同一又は相当部分を示しそれらについての詳細な説明は省略する。実施の形態2においては、実施の形態1と異なる部分を説明し、実施の形態1と共通する部分の説明は省略する。実施の形態1に係る衛星通信基地局装置(地球局2a)は、アンテナ部4による通信衛星1を追尾する自動衛星捕捉に必要な構成要素を有していたが、実施の形態2に係る衛星通信基地局装置は、自動衛星捕捉の機能を有していないものである。つまり、図7に示すように実施の形態2に係る衛星通信基地局装置(地球局2a)は、アンテナ駆動装置5及びアンテナ制御部6がない構成のものである。この構成は、アンテナ部4の方向調整が既に済んでいる固定局やアンテナ部4の方向調整を手動で行う局などへの適用が考えられる。方向調整を手動で行う地球局としては、可搬局ではあるが質量、価格、寸法などの制限によりアンテナ駆動装置5及びアンテナ制御部6の構成要素を具備しない構成の可搬局、または、通常時には固定局として運用しており、災害発生時などにおいて災害現場に一時的に設置する運用を考慮した手動方向調整機能を有する半固定局などが考えられる。
【0053】
図8を用いて実施の形態2に係る衛星通信地球局装置の制御方法における各ステップの動作を説明する。図8におけるS1〜S3、S8、S9は、実施の形態1に係る衛星通信地球局装置の制御方法におけるS1〜S3、S8、S9と同様なので説明を省略する。S4も実施の形態1及び2もほぼ同じであるが、説明の分かり易さを優先して省略しない。なお、S4、S5’、S8、S9は、制御ステップとなる。実施の形態2に係る衛星通信地球局装置の制御方法における制御ステップを説明する。S4、S5’、S8、S9は、S2の測定時間から、S2で選択された収束時間の経過後に、信号処理部11を通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にするものである。制御ステップのうち、S4、S5’は受信準備ステップであり、S8、S9は送信準備ステップである。
【0054】
S4において、処理制御部26が内部に有する起動タイマーセットをセットした受信タイマーの時間が経過したか否かを処理制御部26が判定し、受信タイマーが経過した場合に、S5’に示すように処理制御部26が受信増幅/受信周波数変換部9や変復調部10に対して受信可能な状態設定(受信信号の復調など)を行うように指示を出す。受信タイマーが経過していない場合は、S4を繰り返し、受信タイマーの計測を継続する。受信タイマーが経過した場合は、受信増幅/受信周波数変換部9や変復調部10が受信信号復調可能な状態であることが処理制御部26に通知される。受信信号復調可能な状態になったことが、処理制御部26に通知されると処理制御部26は、S8以降は前述の通り、実施の形態1での説明と同様であるので説明を省略する。なお、S9の後に、信号処理部11における変復調部10及び受信増幅/受信周波数変換部9に対して受信信号の復調などを行わせてもよいし、S5’の後に行わせてもよい。これは、S5’の終了後は、「受信信号復調可能な状態」となっているためである。
【0055】
S3において、処理制御部26が受信タイマー値、送信タイマー値を決定する際に参照する記憶部14にセットされている周囲温度と送受信周波数の要求周波数偏差別に基準発振器12がその偏差以内に周波数が収束するのに必要な時間の関係を示すテーブルの一例を図9に示す。図9は、−20℃から60℃までの10℃刻み(ステップ)で、送信準備開始のための収束時間(送信タイマー)と受信信号復調可能な状態へ移行用の復調準備開始のための収束時間(受信タイマー)とのデータを並べた表(テーブル)である。図9では、受信信号復調可能な状態へ移行用の復調準備開始のための収束時間を実施の形態1におけるトラッキング開始のための収束時間と同じであるが、受信タイマーの意味が異なる。実施の形態1の受信タイマーは、アンテナ部4を通信衛星1の方向に向けるために、通信衛星1から得る受信信号を得るためのタイマー(第1の収束時間)であるが、実施の形態2の受信タイマーは、通信衛星1と地球局2aとの通信に用いる通信衛星1からの受信信号を復調するためのタイマー(第1の収束時間)である。
【0056】
このように、実施の形態2に係る衛星通信基地局装置は、アンテナ部4を通信衛星1の方向に向ける自動衛星捕捉の機能を有していないので、実施の形態1で説明した受信タイマー値を変復調部10内の復調開始の制御信号を発するトリガーとして用いることができる。このため、実施の形態2に係る衛星通信基地局装置がアンテナ部4の方向調整を手動で行う局である場合は、手動によりアンテナ部4の方向調整が可能な状態を通知するトリガーに、復調開始の制御信号を発するトリガーを利用することが可能である。よって、衛星通信基地局装置(地球局2a)の使用者は、送信可能状態を待たずに通信衛星1の捕捉が行え、地球局2aを用いた衛星通信回線の確立、開始するための待ち時間を短縮することが可能となり、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0057】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3について図10〜12を用いて説明する。図中、同一符号は、同一又は相当部分を示しそれらについての詳細な説明は省略する。実施の形態3においては、実施の形態1と異なる部分を説明し、実施の形態1と共通する部分の説明は省略する。実施の形態1に係る衛星通信基地局装置(地球局2a)は、アンテナ部4による通信衛星1を追尾する自動衛星捕捉に必要な構成要素と通信衛星1から受信信号を受信して復調する受信機能を有していたが、実施の形態3に係る衛星通信基地局装置は、自動衛星捕捉の機能や受信機能を有していないものである。つまり、図10に示すように実施の形態3に係る衛星通信基地局装置(地球局2a)は、アンテナ駆動装置5及びアンテナ制御部6や受信増幅/受信周波数変換部9以降の復調に関する構成がないものである。この構成は、アンテナ部4の方向調整が既に済んでいる固定局への適用が考えられる。
【0058】
図11を用いて実施の形態3に係る衛星通信地球局装置の制御方法における各ステップの動作を説明する。図11におけるS3’以外は、実施の形態1に係る衛星通信地球局装置の制御方法におけるものと同様なので説明を省略する。なお、S8、S9は、制御ステップとなる。実施の形態3に係る衛星通信地球局装置の制御方法における制御ステップを説明する。S8、S9は、S2の測定時間から、S2で選択された収束時間の経過後に、信号処理部11を通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にするものである。制御ステップのうち、S8、S9は送信準備ステップである。
【0059】
S3’は、基準発振器12の周囲の温度ごとに、予め準備された基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間から、計測ステップで計測された温度に対応する収束時間を選択する選択ステップである。つまり、基準発振器12の周囲温度ごとに送信周波数の要求周波数偏差別に基準発振器12がその偏差以内に周波数が収束するのに必要な収束時間の関係が記憶部14にセットされているので、温度センサ部13が検出した温度値を処理制御部26が読み取り、予めセットされた周囲温度別、送信の収束に必要な時間である収束時間から温度センサ部13から読み取った温度に対応するものを処理制御部26が記憶部14から読み取る。この読み取った収束時間から、処理制御部26が送信の起動タイマー値を決定する(選択ステップ)。なお、S3’におけるタイマー値(送信)とは、タイマー値(送信)が、基準信号が送信準備開始に必要な周波数偏差に収束するまでの時間である収束時間に基づくものである。
【0060】
S3’において、処理制御部26が送信タイマー値を決定する際に参照する記憶部14にセットされている周囲温度と送信周波数の要求周波数偏差別に基準発振器12がその偏差以内に周波数が収束するのに必要な時間の関係を示すテーブルの一例を図12に示す。図12は、−20℃から60℃までの10℃刻み(ステップ)で、送信準備開始のための収束時間のデータを並べた表(テーブル)である。
【0061】
実施の形態3に係る衛星地球局装置は、このような構成であるので、地球局2aが送信機能のみの場合においても、実施の形態1及び2に係る衛星地球局装置と同じく、実際の周囲の温度に関わらず、恒温槽温度制御型水晶発振器12の周囲温度が事前に設定される最低温度になっていた場合のタイマー値が決定されていた場合に比べて、変復調部10の起動時間が短縮される効果を得ることができるので、衛星回線による送信開始までの待ち時間が短縮される。また、自動衛星捕捉に必要な構成要素がないため、アンテナ部4の方向調整が可能となるまでの待ち時間が短縮される。もちろん、実施の形態3に係る衛星地球局装置は、アンテナ部4による通信衛星1を追尾する自動衛星捕捉に必要な構成要素(実施の形態1に係るアンテナ駆動装置5やアンテナ制御部6)を有するようにしてもよい。
【0062】
実施の形態4.
この発明の実施の形態4について図13〜15を用いて説明する。図中、同一符号は、同一又は相当部分を示しそれらについての詳細な説明は省略する。実施の形態4においては、実施の形態1と異なる部分を説明し、実施の形態1と共通する部分の説明は省略する。実施の形態1に係る衛星通信基地局装置(地球局2a)は、通信衛星1へ送信信号を送信する送信機能を有していたが、実施の形態4に係る衛星通信基地局装置は、送信機能を有していないものである。つまり、図13に示すように実施の形態4に係る衛星通信基地局装置(地球局2a)は、送信増幅/送信周波数変換部8以降の変調に関する構成がないものである。
【0063】
図14を用いて実施の形態4に係る衛星通信地球局装置の制御方法における各ステップの動作を説明する。図14におけるS3’’とS5’と以外は、実施の形態1に係る衛星通信地球局装置の制御方法におけるものと同様なので説明を省略する。S3’’は、基準発振器12の周囲の温度ごとに、予め準備された基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間から、計測ステップで計測された温度に対応する収束時間を選択する選択ステップである。つまり、基準発振器12の周囲温度ごとに受信周波数の要求周波数偏差別に基準発振器12がその偏差以内に周波数が収束するのに必要な収束時間の関係が記憶部14にセットされているので、温度センサ部13が検出した温度値を処理制御部26が読み取り、予めセットされた周囲温度別、受信の収束に必要な時間である収束時間から温度センサ部13から読み取った温度に対応するものを処理制御部26が記憶部14から読み取る。この読み取った収束時間から、処理制御部26が受信の起動タイマー値を決定する(選択ステップ)。なお、S3’’におけるタイマー値(受信)とは、タイマー値(受信)が、トラッキング開始に必要な周波数偏差に収束するまでの時間である第1の収束時間に基づくものである。
【0064】
残りのステップであるS4〜S7、S5’は、制御ステップとなり、これらは、特に、受信準備ステップといえる。受信タイマーが経過した場合に、S5’に示すように処理制御部26が受信増幅/受信周波数変換部9や変復調部10に対して受信可能な状態設定(受信信号の復調など)を行うように指示を出す。受信タイマーが経過していない場合は、S4を繰り返し、受信タイマーの計測を継続する。受信タイマーが経過した場合は、受信増幅/受信周波数変換部9や変復調部10が受信信号復調可能な状態であることが処理制御部26に通知される。受信信号復調可能な状態になったことが、処理制御部26に通知されると処理制御部26は、信号処理部11における変復調部10及び受信増幅/受信周波数変換部9に対して受信信号の復調などを行わせてもよいし、そのまま受信信号復調可能な状態で留めておいてもよい。これは、S5’の終了後は、「受信信号復調可能な状態」となっているためである。
【0065】
S3’’において、処理制御部26が受信タイマー値を決定する際に参照する記憶部14にセットされている周囲温度と受信周波数の要求周波数偏差別に基準発振器12がその偏差以内に周波数が収束するのに必要な時間の関係を示すテーブルの一例を図15に示す。図15は、−20℃から60℃までの10℃刻み(ステップ)で、トラッキング開始のための収束時間(受信タイマー)のデータを並べた表(テーブル)である。
【0066】
実施の形態4に係る衛星地球局装置は、このような構成であるので、地球局2aが受信機能のみの場合においても、実施の形態1〜3に係る衛星地球局装置と同じく、実際の周囲の温度に関わらず、恒温槽温度制御型水晶発振器12の周囲温度が事前に設定される最低温度になっていた場合のタイマー値が決定されていた場合に比べて、変復調部10の起動時間が短縮される効果を得ることができる。もちろん、実施の形態4に係る衛星地球局装置は、アンテナ部4による通信衛星1を追尾する自動衛星捕捉に必要な構成要素(実施の形態1に係るアンテナ駆動装置5やアンテナ制御部6)が無い構成としてもよく、その場合は、アンテナ部4の方向調整が可能となるまでの待ち時間が短縮される。
【符号の説明】
【0067】
1・・通信衛星、2・・地球局、3・・センター局、4・・アンテナ部、5・・アンテナ駆動装置、6・・アンテナ制御部、7・・結合分離部、8・・送信増幅/送信周波数変換部、9・・受信増幅/受信周波数変換部、10・・変復調部、11・・信号処理部、12・・恒温槽温度制御型水晶発振器(基準発振器)、13・・温度センサ部、14・・記憶部、15・・デジタル信号処理部、16・・変調部、17・・送信局所発振器、18・・周波数ミキサ、19・・送信IF増幅部、20・・重畳部、21・・重畳部、22・・受信IF増幅部、23・・受信局所発振器、24・・周波数ミキサ、25・・復調部、26・・処理制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星を介してセンター局や他の地球局と通信するためのアンテナ部に接続された信号処理部を有するものであって、恒温槽温度制御型水晶発振器を具備し、この恒温槽温度制御型水晶発振器から発振される基準信号を用いて、前記信号処理部が前記通信に用いる信号の信号処理を行う衛星通信地球局装置において、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度によって前記基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間を温度ごとに記憶した記憶部と、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度を計測する温度センサ部と、この温度センサ部が測定した温度に対応する前記収束時間を前記記憶部から取得する処理制御部とを備え、前記処理制御部は、前記温度センサ部が前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度を測定した測定時間から、この測定時間における前記温度センサ部の測定した温度に対応する前記収束時間の経過後に、前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にすることを特徴とする衛星通信地球局装置。
【請求項2】
衛星を介してセンター局や他の地球局と通信するためのアンテナ部とこのアンテナ部に接続された信号処理部とを有するものであって、恒温槽温度制御型水晶発振器を具備し、この恒温槽温度制御型水晶発振器から発振される基準信号を用いて、前記信号処理部が前記通信に用いる信号の信号処理、及び、前記アンテナ部の制御を行う衛星通信地球局装置において、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度によって前記基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間を温度ごとに記憶した記憶部と、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度を計測する温度センサ部と、この温度センサ部が測定した温度に対応する前記収束時間を前記記憶部から取得する処理制御部と、この処理制御部からの指示により、前記アンテナ部を制御して前記衛星の捕捉を開始させるアンテナ制御部とを備え、前記処理制御部は、前記温度センサ部が前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度を測定した測定時間から、この測定時間における前記温度センサ部の測定した温度に対応する前記収束時間の経過後に、前記アンテナ制御部へ前記アンテナ部による前記衛星の捕捉の開始を指示し、前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にすることを特徴とする衛星通信地球局装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記アンテナ制御部へ前記アンテナ部による前記衛星の捕捉の開始指示と前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にする制御とで異なる前記収束時間を記憶しているものである請求項2に記載の衛星通信地球局装置。
【請求項4】
前記処理制御部は、前記アンテナ制御部へ前記アンテナ部による前記衛星の捕捉の開始を指示した後、所定時間後に、前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にするものである請求項2に記載の衛星通信地球局装置。
【請求項5】
前記温度センサ部は、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の起動時に温度を測定するものである請求項1〜4のいずれかに記載の衛星通信地球局装置。
【請求項6】
衛星を介してセンター局や他の地球局と通信するためのアンテナ部に接続された信号処理部を有するものであって、恒温槽温度制御型水晶発振器を具備し、この恒温槽温度制御型水晶発振器から発振される基準信号を用いて、前記信号処理部が前記通信に用いる信号の信号処理を行う衛星通信地球局装置の制御方法において、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度を計測する計測ステップと、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度ごとに、予め準備された前記基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間から、前記計測ステップで計測された温度に対応する収束時間を選択する選択ステップと、前記計測ステップの測定時間から、前記選択ステップで選択された収束時間の経過後に、前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にする制御ステップとを備えた衛星通信地球局装置の制御方法。
【請求項7】
衛星を介してセンター局や他の地球局と通信するためのアンテナ部とこのアンテナ部に接続された信号処理部とを有するものであって、恒温槽温度制御型水晶発振器を具備し、この恒温槽温度制御型水晶発振器から発振される基準信号を用いて、前記信号処理部が前記通信に用いる信号の信号処理、及び、前記アンテナ部の制御を行う衛星通信地球局装置の制御方法において、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度を計測する計測ステップと、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の周囲の温度ごとに、予め準備された前記基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間から、前記計測ステップで計測された温度に対応する収束時間を選択する選択ステップと、前記計測ステップの測定時間から、前記選択ステップで選択された収束時間の経過後に、前記アンテナ部による前記衛星の捕捉の開始を指示し、前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にする制御ステップとを備えた衛星通信地球局装置の制御方法。
【請求項8】
前記選択ステップは、前記アンテナ部による前記衛星の捕捉の開始指示と前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にする制御とで異なる収束時間を、予め準備された前記基準信号が所定の周波数偏差へ収束する収束時間から選択するものである請求項7に記載の衛星通信地球局装置の制御方法。
【請求項9】
前記制御ステップは、前記アンテナ部による前記衛星の捕捉の開始を指示した後、所定時間後に、前記信号処理部を前記通信に用いる信号の信号処理の開始可能な状態にするものである請求項7に記載の衛星通信地球局装置の制御方法。
【請求項10】
前記計測ステップは、前記恒温槽温度制御型水晶発振器の起動時に温度を測定するものである請求項6〜9のいずれかに記載の衛星通信地球局装置の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−169766(P2012−169766A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27478(P2011−27478)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】