衝撃吸収部材
【課題】衝撃吸収の際、充分な変形量を確保でき、かつ荷重を小さくすることができる衝撃吸収部材を提供することを課題とする。
【解決手段】衝撃吸収部材1は、各々根本縁30と先端縁31とを有し、所定間隔だけ離間して立設される一対の側壁部3と、一対の先端縁31間に介在すると共に、一対の先端縁31の各々に湾曲して連なり、衝突対象者から直接あるいは間接的に荷重が入力される頂壁部2と、一対の根本縁30の各々に、頂壁部2の先端縁31に対する湾曲方向とは逆方向に、湾曲して連なると共に、一対の側壁部3に対して外側に向かって延在し、基材91に固定される一対の固定リブ部4と、を備える。一対の根本縁30間の間隔L1は、一対の先端縁31間の間隔L2よりも、狭く設定されている。
【解決手段】衝撃吸収部材1は、各々根本縁30と先端縁31とを有し、所定間隔だけ離間して立設される一対の側壁部3と、一対の先端縁31間に介在すると共に、一対の先端縁31の各々に湾曲して連なり、衝突対象者から直接あるいは間接的に荷重が入力される頂壁部2と、一対の根本縁30の各々に、頂壁部2の先端縁31に対する湾曲方向とは逆方向に、湾曲して連なると共に、一対の側壁部3に対して外側に向かって延在し、基材91に固定される一対の固定リブ部4と、を備える。一対の根本縁30間の間隔L1は、一対の先端縁31間の間隔L2よりも、狭く設定されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突対象である乗員や歩行者などを、衝突時の衝撃から保護するための衝撃吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両衝突時の衝撃から乗員を保護するためのドアインパクトビームが紹介されている。図13に、特許文献1のドアインパクトビームの断面図を示す。図13に示すように、特許文献1に記載のドアインパクトビーム100は、頂壁部101と底壁部102と一対の側壁部103と補強壁部104とを備えている。車両衝突時の荷重F1は、頂壁部101外側から加わる。
【0003】
また、特許文献2には、車両衝突時の衝撃から乗員を保護するためのバンパビームが紹介されている。図14に、特許文献2のバンパビームの断面図を示す。図14に示すように、特許文献2に記載のバンパビーム105は、外側部材106と内側部材107と補強板108とを備えている。外側部材106は、断面コ字状を呈している。外側部材106は、頂壁部106aと、頂壁部106aに対して直角に連なる一対の側壁部106bと、側壁部106bに対して直角に連なる一対の固定リブ部106cと、を備えている。内側部材107は、外側部材106と同様の形状を呈している。補強板108は、外側部材106の開口と内側部材107の開口との間に介装されている。車両衝突時の荷重F2は、外側部材106の頂壁部106a外側から加わる。
【特許文献1】特表平8−507272号公報
【特許文献2】特開平6−171441号公報
【特許文献3】特開2004−189230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のドアインパクトビーム100および特許文献2に記載のバンパビーム105によると、車両衝突時に自身が変形することにより、衝突エネルギを消費することができる。このため、車室内の乗員を、車両衝突時の衝撃から保護することができる。
【0005】
しかしながら、ドアインパクトビーム100およびバンパビーム105の断面構造は複雑である。具体的には、ドアインパクトビーム100は補強壁部104を、バンパビーム105は補強板108を、それぞれ備えている。このため、ドアインパクトビーム100あるいはバンパビーム105が変形する際、補強壁部104や補強板108が変形の邪魔になるおそれがある。したがって、ドアインパクトビーム100やバンパビーム105に、比較的大きな潰れ残りが発生する場合がある。潰れ残り量が大きいと、その分、衝突エネルギの吸収量が小さくなる。
【0006】
また、補強壁部104や補強板108が配置されていると、荷重が大きくなりやすい。このため、衝突対象物(例えば、衝突相手側の車両など)に加わる反力も大きくなりやすい。
【0007】
この点、特許文献1のドアインパクトビーム100および特許文献2のバンパビーム105は、そもそも車両外部における衝突から車室内の乗員を保護するためのものである。したがって、所望のエネルギ消費量が確保できさえすれば、荷重つまり反力の大きさは不問である。
【0008】
ところが、衝撃吸収部材の衝突対象が乗員や歩行者などの人間や、犬や猫などの動物である場合、これらの衝突してくる人間や動物を保護する観点から、荷重を所定の荷重しきい値以下に制御する必要がある。したがって、特許文献1のドアインパクトビーム100あるいは特許文献2のバンパビーム105の構造を、人間用あるいは動物用として転用するのは困難である。
【0009】
この点、特許文献3には、角筒状の衝撃吸収部材が紹介されている。図15に、特許文献3の衝撃吸収部材の断面図を示す。図15に示すように、特許文献3記載の衝撃吸収部材109は、頂壁部110と底壁部111と一対の側壁部112とを備えている。衝撃吸収部材109の周囲には、凹凸部(図略)が螺旋状に形成されている。このため、衝撃吸収部材109は、フレキシブル性を有している。
【0010】
特許文献3の衝撃吸収部材109は、特許文献3の段落[0001]、段落[0005]、段落[0014]などに記載されているように、車両のボディに加わる外力のエネルギを吸収するためのものである。すなわち、特許文献1のドアインパクトビーム100や特許文献2のバンパビーム105と同様に、そもそも車両外部における衝突から車室内の乗員を保護するためのものである。
【0011】
仮に、この衝撃吸収部材109を、人間用あるいは動物用として転用した場合について考察する。例えば、人間が頂壁部110に衝突すると、荷重F3が頂壁部110に外側から加わる。この場合、衝撃吸収部材109は、フレキシブル性を有しているため、柔軟に変形することができる。このため、衝撃吸収部材109によると、荷重を小さくすることができる。すなわち、衝突してきた人間に、過度の反力が加わるのを抑制することができる。
【0012】
しかしながら、特許文献3記載の衝撃吸収部材109は、角筒状を呈している。このため、図15中、白抜き矢印A1で示すように、荷重F3入力時に、底壁部111が、角筒内部に入り込むように、変形しまう(この点については後述する実施例参照)。そして、同じく角筒内部に入り込む頂壁部110あるいは側壁部112と、当該底壁部111とが、干渉してしまう。したがって、衝撃吸収時の潰れ残り量が大きくなる。
【0013】
本発明の衝撃吸収部材は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、衝撃吸収の際、充分な変形量を確保でき、かつ荷重を小さくすることができる衝撃吸収部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記課題を解決するため、本発明の衝撃吸収部材は、各々根本縁と先端縁とを有し、所定間隔だけ離間して立設される一対の側壁部と、一対の該先端縁間に介在すると共に、一対の該先端縁の各々に湾曲して連なり、衝突対象者から直接あるいは間接的に荷重が入力される頂壁部と、一対の該根本縁の各々に、該頂壁部の該先端縁に対する湾曲方向とは逆方向に、湾曲して連なると共に、一対の該側壁部に対して外側に向かって延在し、基材に固定される一対の固定リブ部と、を備え、一対の該根本縁間の間隔は、一対の該先端縁間の間隔よりも、狭く設定されており、自身が変形することにより該衝突対象者を保護することを特徴とする(請求項1に対応)。ここで、「衝突対象者」とは、乗物の乗員や通行人(動物を含む)などをいう。
【0015】
一対の側壁部において、根本縁間の間隔は、先端縁間の間隔よりも、狭くなっている。このため、頂壁部に荷重が加わる際、側壁部は、頂壁部に対して、外側に拡がるように湾曲変形する。したがって、荷重により衝撃吸収部材が潰れる際、潰れる方向に対して、湾曲した側壁部が波板状に幾重にも重なるのを抑制することができる。側壁部の重畳的な積層が抑制できると、衝撃吸収時の潰れ残り量を小さくすることができる。このため、充分な変形量を確保することができる。すなわち、衝突エネルギの消費量が大きくなる。言い換えると、従来と同程度の衝突エネルギ消費量が要求される場合、衝撃吸収部材の体格を小型化することができる。
【0016】
また、前出特許文献1に記載のドアインパクトビーム100(前出図13参照)や前出特許文献2に記載のバンパビーム105(前出図14参照)の場合、断面構造が複雑である。このため、ドアインパクトビーム100やバンパビーム105に、比較的大きな潰れ残りが発生する。これに対して、本発明の衝撃吸収部材の断面構造は、極めて単純である。したがって、この点においても、衝撃吸収時に、充分な変形量を確保することができる。
【0017】
また、前出特許文献3に記載の角筒状の衝撃吸収部材109(前出図15参照)の場合、衝撃吸収時に、底壁部111と、頂壁部110あるいは側壁部112と、が干渉してしまう。このため、衝撃吸収時の潰れ残り量が大きくなってしまう。これに対して、本発明の衝撃吸収部材には、頂壁部に対向する底壁部が配置されていない。このため、衝撃吸収時の潰れ残り量が小さくなる。したがって、この点においても、充分な変形量を確保することができる。
【0018】
また、本発明の衝撃吸収部材の側壁部によると、上述したように、根本縁間の間隔が、先端縁間の間隔よりも、狭くなっている。このため、側壁部の延在方向と、衝撃吸収部材の潰れる方向と、が一致していない。したがって、本発明の衝撃吸収部材は、衝撃が加わる際に変形しやすい。衝撃により変形しやすいため、本発明の衝撃吸収部材の側壁部によると、荷重を小さくすることができる。すなわち、衝撃吸収部材から衝突対象者に過度の反力が加わるのを、抑制することができる。
【0019】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記固定リブ部と前記側壁部との挟角は、70°以上90°未満である構成とする方がよい(請求項2に対応)。ここで、固定リブ部と側壁部との挟角を70°以上にしたのは、70°未満の場合、衝突初期での反力(荷重)が小さくなり(反力の立ち上がりが緩やかになり)、結果としてエネルギ吸収量が小さくなってしまうからである。一方、固定リブ部と側壁部との挟角を90°未満にしたのは、90°以上の場合、衝突対象者の衝突部位の形状によっては、側壁部が内側に折れるように変形し、潰れ残り量が大きくなってしまう可能性があるからである。
【0020】
(2−1)より好ましくは、上記(2)の構成において、前記固定リブ部と前記側壁部との挟角は、80°以上である構成とする方がよい。ここで、固定リブ部と側壁部との挟角を80°以上にしたのは、衝突初期での反力(荷重)の立ち上がりを充分に大きくするには、80°以上が好ましいからである。
【0021】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、一対の前記側壁部は、前記先端縁から前記根本縁に向かって、徐々に間隔が狭まるように配置されている構成とする方がよい(請求項3に対応)。
【0022】
本構成によると、衝撃吸収部材が変形する過程において、荷重値が変化しにくい。このため、衝突対象者に加わる反力も、衝撃吸収部材が変形する過程において、変化しにくい。また、衝突対象者を保護する観点から設定される荷重しきい値に、比較的近い荷重値を保ったまま、衝撃吸収部材を変形させることができる。すなわち、衝撃吸収過程全体における衝突エネルギ消費量を大きくすることができる。
【0023】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記固定リブ部は、前記側壁部の前記根本縁に連なる曲率略一定の根本面取部を有する構成とする方がよい(請求項4に対応)。
【0024】
本構成によると、固定リブ部が根本面取部を有している。このため、根本面取部を有しない場合と比較して、固定リブ部と側壁部との境界付近に荷重が集中するのを抑制することができる。
【0025】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記根本面取部の曲率半径は、0mm超過3mm以下である構成とする方がよい(請求項5に対応)。ここで、根本面取部の曲率半径を0mm超過にしたのは、0mmの場合、固定リブ部と側壁部とが角張って連なることになり、荷重が集中しやすいからである。
【0026】
一方、根本面取部の曲率半径を3mm以下にしたのは、3mm超過の場合、潰れ残りが大きくなってしまうおそれがあるからである。
【0027】
(5−1)より好ましくは、上記(5)の構成において、前記根本面取部の曲率半径は、2mm以下である構成とする方がよい。ここで、根本面取部の曲率半径を2mm以下にしたのは、潰れ残り量を充分に小さくするためには、2mm以下が望ましいからである。
【0028】
(6)好ましくは、上記(4)または(5)の構成において、前記基材の表面に対する、前記固定リブ部の略垂直方向投影面における、前記側壁部に対する延在方向長さは、前記根本面取部の曲率半径に2mmを加算した値以上である構成とする方がよい(請求項6に対応)。ここで、固定リブ部の略垂直方向投影面における、側壁部に対する延在方向長さを、根本面取部の曲率半径に2mmを加算した値以上にしたのは、固定リブ部が基材と強固に固定でき、また固定リブ部は基材が一対の側壁部間に入り込むように変形する挙動を防止する役割を果たしているが、当該値未満である場合には、こうした機能が充分に果たせなくなるからである。
【0029】
(7)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記頂壁部は、前記側壁部の前記先端縁に連なる曲率略一定の先端面取部を有する構成とする方がよい(請求項7に対応)。本構成によると、頂壁部が先端面取部を有している。このため、先端面取部を有しない場合と比較して、頂壁部と側壁部との境界付近に荷重が集中するのを抑制することができる。
【0030】
(8)好ましくは、上記(7)の構成において、前記先端面取部の曲率半径は、0mm超過3mm以下である構成とする方がよい(請求項8に対応)。ここで、先端面取部の曲率半径を0mm超過にしたのは、0mmの場合、頂壁部と側壁部とが角張って連なることになり、荷重が集中しやすいからである。
【0031】
一方、先端面取部の曲率半径を3mm以下にしたのは、3mm超過の場合、衝突初期での反力(荷重)が小さくなり(反力の立ち上がりが緩やかになり)、結果としてエネルギ吸収量が小さくなってしまうからである。
【0032】
(8−1)より好ましくは、上記(8)の構成において、前記先端面取部の曲率半径は、1mm以下である構成とする方がよい。ここで、先端面取部の曲率半径を1mm以下にしたのは、衝突初期での反力(荷重)の立ち上がりを充分に大きくするには、1mm以下が好ましいからである。
【0033】
(9)好ましくは、上記(1)ないし(8)のいずれかの構成において、前記頂壁部の全幅は、前記固定リブ部底面と該頂壁部頂面との間の距離に0.8を乗じた値以上である構成とする方がよい(請求項9に対応)。
【0034】
ここで、頂壁部の全幅を、固定リブ部底面と頂壁部頂面との間の距離に0.8を乗じた値以上にしたのは、この値未満の場合、根本縁間の距離が接近しすぎてしまい、斜め方向からの衝突に対して充分にエネルギを吸収できない可能性が大きくなるためである。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、衝撃吸収の際、充分な変形量を確保でき、かつ荷重を小さくすることが可能な衝撃吸収部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の衝撃吸収部材を、車室内の乗員保護用として具現化した実施の形態について説明する。
【0037】
<第一実施形態>
まず、本実施形態の衝撃吸収部材の配置について説明する。図1に、本実施形態の衝撃吸収部材が配置されている車室内の斜視図を示す。なお、図1〜図3の方位は、車両後方から前方を見た場合を基準に設定している。図1に示すように、車室内の天井には、樹脂製のルーフライニング9が配置されている。衝撃吸収部材1(図1中、ハッチングで示す。)は、ルーフライニング9内部の左右縁に、各々、前後に二列ずつ、収容されている。すなわち、衝撃吸収部材1は、ルーフライニング9内部に、合計四列配置されている。
【0038】
以下、ルーフライニング9内部右前の衝撃吸収部材1の、配置および構成について説明する。残りの三列の衝撃吸収部材1の配置および構成も、右前に配置された衝撃吸収部材1と同様である。したがって、ここでは説明を割愛する。
【0039】
図2に、図1のII−II断面図を示す。図3に、本実施形態の衝撃吸収部材の斜視図を示す。図2、図3に示すように、ルーフライニング9上方には、所定間隔だけ離間して、鋼製のルーフパネル90が配置されている。ルーフパネル90は、車両の外郭を形成している。ルーフライニング9とルーフパネル90との間には、鋼製であって高剛性のルーフサイドレール部91が介装されている。ルーフサイドレール部91は、本発明の基材に含まれる。衝撃吸収部材1は、当該ルーフサイドレール部91の下面に、固定されている。
【0040】
次に、本実施形態の衝撃吸収部材の構成について説明する。衝撃吸収部材1は、頂壁部2と、一対の側壁部3と、一対の固定リブ部4と、を備えている。衝撃吸収部材1は、一枚のSUS製の板をプレス成形することにより、作製されている。つまり、衝撃吸収部材1は一体物である。
【0041】
固定リブ部4は、根本面取部40を除いて、平板状を呈している。すなわち、平板の一縁が面取状に丸められた形状を呈している。固定リブ部4は、ルーフサイドレール部91の下面に、強固に固定されている。固定リブ部4は、ルーフサイドレール部91の下面に、左右方向(厳密には左上−右下方向)に所定間隔だけ離間して、二つ並設されている。一対の固定リブ部4は、各々、根本面取部40を有している。根本面取部40は、曲率略一定の曲板状を呈している。根本面取部40は、固定リブ部4の内縁から、左下方向に湾曲しながら突出している。一対の固定リブ部4の根本面取部40同士は、対向して配置されている。
【0042】
側壁部3は、平板状を呈している。側壁部3は、根本面取部40の端部から、左下方向に延在している。側壁部3は、一対の前記根本面取部40の各々に連なっている。一対の側壁部3同士の間隔は、ルーフサイドレール部91から離間するに従って、徐々に広くなるように設定されている。
【0043】
頂壁部2は、先端面取部20を除いて、平板状を呈している。すなわち、平板の両縁が面取状に丸められた形状を呈している。頂壁部2は、一対の側壁部3の先端縁間を連結している。頂壁部2と前記固定リブ部4とは、略平行に配置されている。また、頂壁部2は、ルーフライニング9上面に、近接して配置されている。頂壁部2は、一対の先端面取部20を有している。一対の先端面取部20は、各々、曲率略一定の曲板状を呈している。一対の先端面取部20は、一対の前記側壁部3の各々に連なっている。
【0044】
次に、本実施形態の衝撃吸収部材の寸法について説明する。図4に、本実施形態の衝撃吸収部材の寸法図(端面図)を示す。図4に示すように、衝撃吸収部材1の肉厚(SUS板の板厚)は、0.6mmに設定されている。また、固定リブ部4(詳しくは根本面取部40を除いたもの)と側壁部3との挟角α1は、80°に設定されている。また、一対の側壁部3の根本縁30間の間隔L1は、一対の先端縁31間の間隔L2よりも、狭く設定されている。また、根本面取部40の曲率半径R1(詳しくは曲率中心から外側の面までの距離)は、1mmに設定されている。また、ルーフサイドレール部91の表面(図4においては上面)に対する、固定リブ部4(勿論、根本面取部40を含む)の略垂直方向投影面における、側壁部3に対する延在方向長さ(図4においては固定リブ部4の左右方向長さ。以下、単に「固定リブ部4の長さ」と略称する。)L3は、5mmに設定されている。また、先端面取部20の曲率半径R2(詳しくは曲率中心から外側の面までの距離)は、1mmに設定されている。また、頂壁部2の全幅L4は、28mmに設定されている。また、衝撃吸収部材1の高さ(固定リブ部4底面と頂壁部2頂面との間の距離)L5は、22.4mmに設定されている。また、衝撃吸収部材1の全長(図4の紙面表裏方向長さ)は、200mmに設定されている。
【0045】
次に、本実施形態の衝撃吸収部材1の動きについて簡単に説明する(詳細な動きについては後述する実施例参照)。例えば事故などにより、乗員の頭部がルーフライニング9に衝突すると、図2中に白抜き矢印で示すように、荷重F4が頂壁部2に入力される。荷重F4が所定の荷重しきい値に達する前に、衝撃吸収部材1は変形を開始する。具体的には、頂壁部2が頭部の形状に沿って陥没変形する。また、一対の側壁部3が、各々、外方(右下方向と左上方向)に膨らむように湾曲変形する。ただし、固定リブ部4は、ルーフサイドレール部91に対して不動である。衝撃吸収部材1の変形は、頂壁部2上面がルーフサイドレール部91下面に当接することにより完了する。当該変形の過程により、衝突エネルギが吸収される。すなわち、乗員頭部の運動エネルギの少なくとも一部が、衝撃吸収部材1の変形エネルギに変換される。
【0046】
次に、本実施形態の衝撃吸収部材1の作用効果について説明する。本実施形態の衝撃吸収部材1によると、前出図4に示すように、一対の側壁部3において、根本縁30間の間隔L1は、先端縁31間の間隔L2よりも、狭くなっている。このため、頂壁部2に荷重が加わる際、側壁部3は、頂壁部2に対して、外側に拡がるように湾曲変形する。したがって、荷重が加わる際、衝撃吸収部材1の潰れる方向に、湾曲した側壁部3が波板状に幾重にも重なるのを抑制することができる。よって、衝撃吸収時の潰れ残り量を小さくすることができる。このため、充分な変形量を確保することができる。すなわち、衝突エネルギの消費量が大きくなる。
【0047】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1の断面は、略コ字状を呈している。並びに、前出図13に示す補強壁部104や前出図14に示す補強板108のような、補強部材が配置されていない。このため、断面構造は、極めて単純である。したがって、この点においても、衝撃吸収時に、充分な変形量を確保することができる。
【0048】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1には、頂壁部2に対向する底壁部が配置されていない。このため、衝撃吸収時の潰れ残り量が小さくなる。したがって、この点においても、充分な変形量を確保することができる。
【0049】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1の側壁部3によると、上述したように、根本縁30間の間隔L1が、先端縁31間の間隔L2よりも、狭くなっている。このため、側壁部3の延在方向と、衝撃吸収部材1の潰れる方向と、が一致していない。したがって、本実施形態の衝撃吸収部材1は、衝撃が加わる際に変形しやすい。衝撃により変形しやすいため、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、荷重を小さくすることができる。すなわち、衝突の際、衝撃吸収部材1から乗員頭部に、過度の反力が加わるのを、抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、固定リブ部4と側壁部3との挟角α1が80°に設定されている。このため、側壁部3が安定して外側に広がるように湾曲変形し、衝突初期の反力(荷重)の立ち上がりを確保することができる。
【0051】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、一対の側壁部3は、先端縁31から根本縁30に向かって、徐々に間隔が狭まるように配置されている。このため、衝撃吸収部材1が変形する過程において、荷重値が変化しにくい。したがって、乗員頭部に加わる反力も、衝撃吸収部材1が変形する過程において、変化しにくい。また、乗員を保護する観点から設定される荷重しきい値に、比較的近い荷重値を保ったまま、衝撃吸収部材1が変形する(後述する実施例参照)。このため、衝突エネルギの消費量が大きい。
【0052】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、固定リブ部4は根本面取部40を有している。このため、根本面取部40を有しない場合と比較して、固定リブ部4と側壁部3との境界付近に荷重が集中するのを抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1は、一枚のSUS板から作製されている。このため、比較的簡単に作製することができる。また、製造コストも低い。また、例えば溶接などによる継ぎ目がなく、肉厚も一定であるため、特定の部位に荷重が集中しにくい。したがって、変形中に特定の部位が破断してしまうおそれが小さい。
【0054】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、根本面取部40の曲率半径R1は、1mmに設定されている。このため、潰れ残り量を小さくして吸収エネルギ量を大きくすることができる。
【0055】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、固定リブ部4の長さL3は、5mmに設定されている。言い換えると、根本面取部40の曲率半径R1(=1mm)に2mmを加算した値(3mm=1mm+2mm)以上になるように、設定されている。このため、固定リブ部4はルーフサイドレール部91と強固に固定され、一対の側壁部3間に入り込むように変形する挙動は生じない。
【0056】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、頂壁部2は先端面取部20を有している。このため、先端面取部20を有しない場合と比較して、頂壁部2と側壁部3との境界付近に荷重が集中するのを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、先端面取部20の曲率半径R2は、1mmに設定されている。このため、衝突初期の反力(荷重)の立ち上がりを大きく取ることができる。
【0058】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、頂壁部2の全幅L4は28mmに、衝撃吸収部材1の高さL5は22.4mmに、それぞれ設定されている。すなわち、全幅L4は、高さL5に0.8を乗じた値(17.92mm=22.4mm×0.8)以上になるように、設定されている。このため、根本縁30間の距離を充分大きく取ることができ、斜め方向からの衝突に対しても安定してエネルギを吸収できる形状となっている。
【0059】
<第二実施形態>
本実施形態の衝撃吸収部材と第一実施形態の衝撃吸収部材との相違点は、側壁部が平板状ではなく、曲板状を呈している点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。図5に、本実施形態の衝撃吸収部材の端面図を示す。なお、図4と対応する部位については、同じ符号で示す。図5に示すように、一対の側壁部3は、各々、外側に膨らむ曲板状を呈している。本実施形態の衝撃吸収部材1は、構成が共通する部分については、第一実施形態の衝撃吸収部材と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の衝撃吸収部材1の側壁部3は、外側に膨出している。このため、衝撃が加わる際、より確実に、側壁部3を外側に張り出させることができる。したがって、側壁部3が衝撃吸収部材1の内側に入り込んで、頂壁部2と干渉するおそれが小さい。
【0060】
<その他>
以上、本発明の衝撃吸収部材の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0061】
例えば、第一実施形態においては、前出図4に示すように、衝撃吸収部材1の肉厚を0.6mmに、固定リブ部4と側壁部3との挟角α1を80°に、根本面取部40の曲率半径R1を1mmに、固定リブ部4の長さL3を5mmに、先端面取部20の曲率半径R2を1mmに、衝撃吸収部材1の全幅L4を28mmに、衝撃吸収部材1の高さL5を22.4mmに、衝撃吸収部材1の全長を200mmに、それぞれ設定した。しかしながら、上記各寸法は、特に限定しない。所望のエネルギ吸収量や荷重しきい値、配置部位などに応じて、適宜、適切な値に設定すればよい。例えば、曲率半径R1、R2を大きくすると、エネルギ消費量を小さくすることができる。また、挟角α1を大きくすると(90°に近づけると)、荷重を大きくすることができる。また、板厚を薄くすると、エネルギ消費量を小さくすることができる。
【0062】
また、側壁部3の形状についても特に限定しない。前出図4に示す平板状や前出図5に示す曲板状であってもよい。また、平板状の場合、部分的に傾斜が異なるような形状としてもよい。また、曲板状の場合、部分的に曲率が異なるような形状としてもよい。また、平板状と曲板状とを適宜組み合わせた形状としてもよい。また、先端面取部や根本面取部を配置しない形態で実施してもよい。また、衝撃吸収部材1の材質についても特に限定しない。SUS以外の金属製であってもよい。また、各種樹脂製であってもよい。また、頂壁部2の形状についても特に限定しない。例えば、頂壁部2全体が湾曲していてもよい。すなわち、頂壁部2全体が湾曲した状態で、側壁部3に連なっていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態においては、ルーフライニング9内部に衝撃吸収部材1を配置した。しかしながら、配置部位は特に限定しない。乗員保護の観点からは、車室内に表出する部材の裏側に配置すればよい。例えば、フロントピラー、センターピラー、フロントドアトリム、リヤドアトリム、インストルメントパネルなどの裏側に配置すればよい。また、歩行者保護の観点からは、歩行者(自転車やバイクの運転者を含む)が衝突しやすい部材の裏側に配置すればよい。例えば、フロントバンパ、リヤバンパ、サイドモールディングなどの裏側に配置すればよい。また、これら表出する部材の裏側のみならず、勿論、表側に配置してもよい。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の衝撃吸収部材について行った衝突実験について説明する。
【0065】
<サンプルの寸法>
(実施例)
実施例として用いたのは、前出図4に示す第一実施形態の衝撃吸収部材1である。寸法も第一実施形態同様である。したがって、ここでは説明を割愛する。
【0066】
(比較例1)
比較例1として用いたのは、角筒状の衝撃吸収部材である。図6に、比較例1の衝撃吸収部材の寸法図(端面図)を示す。図6に示すように、比較例1の衝撃吸収部材5は、SUS製の角管である。すなわち、衝撃吸収部材5は、頂壁部50と一対の側壁部51と底壁部52とを備えている。頂壁部50と側壁部51との間および側壁部51と底壁部52との間には、各々面取部が介在している。肉厚(SUS板の板厚)は、0.6mmに設定されている。高さL6および全幅L7は、共に23mmに設定されている。また、衝撃吸収部材5の全長(図6の紙面表裏方向長さ)は、200mmに設定されている。
【0067】
(比較例2)
比較例2として用いたのは、平板に格子状のリブが立設された形状を呈した衝撃吸収部材である。図7(a)に、比較例2の衝撃吸収部材の寸法図(端面図)を示す。図7(b)に、同衝撃吸収部材の寸法図(下面図)を示す。図8に、同衝撃吸収部材の斜視図を示す。図7、図8に示すように、比較例2の衝撃吸収部材6は、頂壁部60と、一対の横リブ61と一対の縦リブ62とを備えている。衝撃吸収部材6は、PP(ポリプロピレン)樹脂製である。頂壁部60は、正方形の平板状を呈している。一対の横リブ61は、互いに平行であって、頂壁部60下面から下方に立設されている。一対の縦リブ62は、互いに平行であって、頂壁部60下面から下方に立設されている。一対の縦リブ62と一対の横リブ61とは、格子状に直交している。
【0068】
頂壁部60の板厚T1は、2.5mmに設定されている。横リブ61および縦リブ62の肉厚T2は、1.2mmに設定されている。横リブ61および縦リブ62の高さL8は、25mmに設定されている。一対の横リブ61間の間隔L9は、25mmに設定されている。また、頂壁部60両縁から、近い方の横リブ61までの距離L10は、各々、12.5mmに設定されている。同様に、一対の縦リブ62間の間隔L11は、25mmに設定されている。また、頂壁部60両縁から、近い方の縦リブ62までの距離L12は、各々、12.5mmに設定されている。
【0069】
<実験方法>
図9に、衝突実験の実験方法の模式図を示す。図9に示すように、実験は、半径R3が82.5mmの半球状のストライカ7を、実施例、比較例1、比較例2の衝撃吸収部材1、5、6に、各々、一定の速度20mm/min.で衝突させることにより行った。
【0070】
<実験結果>
図10に、実施例の衝撃吸収部材の変形過程の模式図を示す。図10に示すように、変形の際、一対の側壁部3は、根本面取部40付近を起点に、外側に膨出するように変形する。このため、側壁部3は、衝撃吸収部材1の内側に入り込まない。したがって、頂壁部2と基材99とが完全に接触するまで、衝撃吸収部材1は変形することができる。したがって、潰れ残り量が小さくなる。
【0071】
図11に、比較例1の衝撃吸収部材の変形過程の模式図を示す。図11に示すように、変形の際、一対の側壁部51は、外側に膨出するように変形しようとする。このため、底壁部52には、一対の側壁部51から、内向きの荷重が加わる。したがって、底壁部52は、内側に折れ込んでしまう。具体的には、底壁部52の中央部分520が、隆起してしまう。中央部分520が隆起すると、頂壁部50の変位が、中央部分520に接触することにより、阻害されてしまう。したがって、図11(e)と前出図10(e)とを比較して判るように、実施例の衝撃吸収部材1よりも比較例1の衝撃吸収部材5の方が、潰れ残り量が大きくなる。なお、比較例2の衝撃吸収部材6の変形過程は、実施例の衝撃吸収部材1、比較例1の衝撃吸収部材5よりも、さらに複雑になる。また、潰れ残り量も大きくなる。ここでは、詳しい説明を割愛する。
【0072】
図12に、実験における変形率と荷重との関係をグラフで示す。なお、変形率は、変形率(%)=((元の高さ−変形時の高さ)/元の高さ)×100という式から、算出される。図12に示すように、例えば荷重しきい値を5kNとする場合、理想的な荷重線Dは点線のようになる。すなわち、衝撃吸収部材の場合、衝突対象者保護のための荷重しきい値を超えずに、かつ変形率が100%付近まで変形して充分に衝突エネルギを吸収可能なことが理想とされる。
【0073】
この理想的な荷重線Dに最も近似した履歴を示すのが、実施例の衝撃吸収部材1の荷重線である。すなわち、実施例の衝撃吸収部材1によると、荷重しきい値に近い荷重値を保ちながら、変形率90%近くまで、充分に潰れることができる。言い換えると、衝突対象者を保護しながら、かつ充分に衝突エネルギを吸収することができる。
【0074】
これに対して、比較例1の衝撃吸収部材5の場合、荷重しきい値と荷重線との間隔が大きい。並びに、変形率80%に達する前の段階から、変形が困難になっている。このため、潰れ残り量が大きく、衝突対象者を保護しながら、充分に衝突エネルギを吸収することが困難である。
【0075】
また、比較例2の衝撃吸収部材6の場合、複雑な形状に起因して荷重線の変動が大きい。並びに、変形率70%に達する前の段階から、変形が困難になっている。このため、潰れ残り量が大きく、衝突対象者を保護しながら、充分に衝突エネルギを吸収することが、比較例1の衝撃吸収部材5と同様に困難である。
【0076】
以上説明したように、衝突実験から、比較例1の衝撃吸収部材5および比較例2の衝撃吸収部材6と比較して、実施例の衝撃吸収部材1によると、衝突対象者を保護しながら、かつ充分に衝突エネルギを吸収可能なことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】第一実施形態の衝撃吸収部材が配置されている車室内の斜視図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】同衝撃吸収部材の斜視図である。
【図4】同実施形態の衝撃吸収部材の寸法図(端面図)である。
【図5】第二実施形態の衝撃吸収部材の端面図である。
【図6】比較例1の衝撃吸収部材の寸法図(端面図)である。
【図7】(a)は比較例2の衝撃吸収部材の寸法図(端面図)である。(b)は同衝撃吸収部材の寸法図(下面図)である。
【図8】同衝撃吸収部材の斜視図である。
【図9】衝突実験の実験方法の模式図である。
【図10】実施例の衝撃吸収部材の変形過程の模式図である。
【図11】比較例1の衝撃吸収部材の変形過程の模式図である。
【図12】変形率と荷重との関係を示すグラフである。
【図13】特許文献1のドアインパクトビームの断面図である。
【図14】特許文献2のバンパビームの断面図である。
【図15】特許文献3の衝撃吸収部材の断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1:衝撃吸収部材。
2:頂壁部、20:先端面取部。
3:側壁部、30:根本縁、31:先端縁。
4:固定リブ部、40:根本面取部。
5:衝撃吸収部材、50:頂壁部、51:側壁部、52:底壁部、520:中央部分。
6:衝撃吸収部材、60:頂壁部、61:横リブ、62:縦リブ。
7:ストライカ。
9:ルーフライニング、90:ルーフパネル、91:ルーフサイドレール部(基材)、99:基材。
α1:挟角、A1:矢印、D:荷重線、F1〜F4:荷重、L1:間隔、L2:間隔、L3:固定リブ部の長さ、L4:全幅、L5:高さ、L6:高さ、L7:全幅、L8:高さ、L9:間隔、L10:距離、L11:間隔、L12:距離、R1:曲率半径、R2:曲率半径、R3:半径、T1:板厚、T2:肉厚。
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突対象である乗員や歩行者などを、衝突時の衝撃から保護するための衝撃吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両衝突時の衝撃から乗員を保護するためのドアインパクトビームが紹介されている。図13に、特許文献1のドアインパクトビームの断面図を示す。図13に示すように、特許文献1に記載のドアインパクトビーム100は、頂壁部101と底壁部102と一対の側壁部103と補強壁部104とを備えている。車両衝突時の荷重F1は、頂壁部101外側から加わる。
【0003】
また、特許文献2には、車両衝突時の衝撃から乗員を保護するためのバンパビームが紹介されている。図14に、特許文献2のバンパビームの断面図を示す。図14に示すように、特許文献2に記載のバンパビーム105は、外側部材106と内側部材107と補強板108とを備えている。外側部材106は、断面コ字状を呈している。外側部材106は、頂壁部106aと、頂壁部106aに対して直角に連なる一対の側壁部106bと、側壁部106bに対して直角に連なる一対の固定リブ部106cと、を備えている。内側部材107は、外側部材106と同様の形状を呈している。補強板108は、外側部材106の開口と内側部材107の開口との間に介装されている。車両衝突時の荷重F2は、外側部材106の頂壁部106a外側から加わる。
【特許文献1】特表平8−507272号公報
【特許文献2】特開平6−171441号公報
【特許文献3】特開2004−189230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のドアインパクトビーム100および特許文献2に記載のバンパビーム105によると、車両衝突時に自身が変形することにより、衝突エネルギを消費することができる。このため、車室内の乗員を、車両衝突時の衝撃から保護することができる。
【0005】
しかしながら、ドアインパクトビーム100およびバンパビーム105の断面構造は複雑である。具体的には、ドアインパクトビーム100は補強壁部104を、バンパビーム105は補強板108を、それぞれ備えている。このため、ドアインパクトビーム100あるいはバンパビーム105が変形する際、補強壁部104や補強板108が変形の邪魔になるおそれがある。したがって、ドアインパクトビーム100やバンパビーム105に、比較的大きな潰れ残りが発生する場合がある。潰れ残り量が大きいと、その分、衝突エネルギの吸収量が小さくなる。
【0006】
また、補強壁部104や補強板108が配置されていると、荷重が大きくなりやすい。このため、衝突対象物(例えば、衝突相手側の車両など)に加わる反力も大きくなりやすい。
【0007】
この点、特許文献1のドアインパクトビーム100および特許文献2のバンパビーム105は、そもそも車両外部における衝突から車室内の乗員を保護するためのものである。したがって、所望のエネルギ消費量が確保できさえすれば、荷重つまり反力の大きさは不問である。
【0008】
ところが、衝撃吸収部材の衝突対象が乗員や歩行者などの人間や、犬や猫などの動物である場合、これらの衝突してくる人間や動物を保護する観点から、荷重を所定の荷重しきい値以下に制御する必要がある。したがって、特許文献1のドアインパクトビーム100あるいは特許文献2のバンパビーム105の構造を、人間用あるいは動物用として転用するのは困難である。
【0009】
この点、特許文献3には、角筒状の衝撃吸収部材が紹介されている。図15に、特許文献3の衝撃吸収部材の断面図を示す。図15に示すように、特許文献3記載の衝撃吸収部材109は、頂壁部110と底壁部111と一対の側壁部112とを備えている。衝撃吸収部材109の周囲には、凹凸部(図略)が螺旋状に形成されている。このため、衝撃吸収部材109は、フレキシブル性を有している。
【0010】
特許文献3の衝撃吸収部材109は、特許文献3の段落[0001]、段落[0005]、段落[0014]などに記載されているように、車両のボディに加わる外力のエネルギを吸収するためのものである。すなわち、特許文献1のドアインパクトビーム100や特許文献2のバンパビーム105と同様に、そもそも車両外部における衝突から車室内の乗員を保護するためのものである。
【0011】
仮に、この衝撃吸収部材109を、人間用あるいは動物用として転用した場合について考察する。例えば、人間が頂壁部110に衝突すると、荷重F3が頂壁部110に外側から加わる。この場合、衝撃吸収部材109は、フレキシブル性を有しているため、柔軟に変形することができる。このため、衝撃吸収部材109によると、荷重を小さくすることができる。すなわち、衝突してきた人間に、過度の反力が加わるのを抑制することができる。
【0012】
しかしながら、特許文献3記載の衝撃吸収部材109は、角筒状を呈している。このため、図15中、白抜き矢印A1で示すように、荷重F3入力時に、底壁部111が、角筒内部に入り込むように、変形しまう(この点については後述する実施例参照)。そして、同じく角筒内部に入り込む頂壁部110あるいは側壁部112と、当該底壁部111とが、干渉してしまう。したがって、衝撃吸収時の潰れ残り量が大きくなる。
【0013】
本発明の衝撃吸収部材は、上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって、本発明は、衝撃吸収の際、充分な変形量を確保でき、かつ荷重を小さくすることができる衝撃吸収部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記課題を解決するため、本発明の衝撃吸収部材は、各々根本縁と先端縁とを有し、所定間隔だけ離間して立設される一対の側壁部と、一対の該先端縁間に介在すると共に、一対の該先端縁の各々に湾曲して連なり、衝突対象者から直接あるいは間接的に荷重が入力される頂壁部と、一対の該根本縁の各々に、該頂壁部の該先端縁に対する湾曲方向とは逆方向に、湾曲して連なると共に、一対の該側壁部に対して外側に向かって延在し、基材に固定される一対の固定リブ部と、を備え、一対の該根本縁間の間隔は、一対の該先端縁間の間隔よりも、狭く設定されており、自身が変形することにより該衝突対象者を保護することを特徴とする(請求項1に対応)。ここで、「衝突対象者」とは、乗物の乗員や通行人(動物を含む)などをいう。
【0015】
一対の側壁部において、根本縁間の間隔は、先端縁間の間隔よりも、狭くなっている。このため、頂壁部に荷重が加わる際、側壁部は、頂壁部に対して、外側に拡がるように湾曲変形する。したがって、荷重により衝撃吸収部材が潰れる際、潰れる方向に対して、湾曲した側壁部が波板状に幾重にも重なるのを抑制することができる。側壁部の重畳的な積層が抑制できると、衝撃吸収時の潰れ残り量を小さくすることができる。このため、充分な変形量を確保することができる。すなわち、衝突エネルギの消費量が大きくなる。言い換えると、従来と同程度の衝突エネルギ消費量が要求される場合、衝撃吸収部材の体格を小型化することができる。
【0016】
また、前出特許文献1に記載のドアインパクトビーム100(前出図13参照)や前出特許文献2に記載のバンパビーム105(前出図14参照)の場合、断面構造が複雑である。このため、ドアインパクトビーム100やバンパビーム105に、比較的大きな潰れ残りが発生する。これに対して、本発明の衝撃吸収部材の断面構造は、極めて単純である。したがって、この点においても、衝撃吸収時に、充分な変形量を確保することができる。
【0017】
また、前出特許文献3に記載の角筒状の衝撃吸収部材109(前出図15参照)の場合、衝撃吸収時に、底壁部111と、頂壁部110あるいは側壁部112と、が干渉してしまう。このため、衝撃吸収時の潰れ残り量が大きくなってしまう。これに対して、本発明の衝撃吸収部材には、頂壁部に対向する底壁部が配置されていない。このため、衝撃吸収時の潰れ残り量が小さくなる。したがって、この点においても、充分な変形量を確保することができる。
【0018】
また、本発明の衝撃吸収部材の側壁部によると、上述したように、根本縁間の間隔が、先端縁間の間隔よりも、狭くなっている。このため、側壁部の延在方向と、衝撃吸収部材の潰れる方向と、が一致していない。したがって、本発明の衝撃吸収部材は、衝撃が加わる際に変形しやすい。衝撃により変形しやすいため、本発明の衝撃吸収部材の側壁部によると、荷重を小さくすることができる。すなわち、衝撃吸収部材から衝突対象者に過度の反力が加わるのを、抑制することができる。
【0019】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記固定リブ部と前記側壁部との挟角は、70°以上90°未満である構成とする方がよい(請求項2に対応)。ここで、固定リブ部と側壁部との挟角を70°以上にしたのは、70°未満の場合、衝突初期での反力(荷重)が小さくなり(反力の立ち上がりが緩やかになり)、結果としてエネルギ吸収量が小さくなってしまうからである。一方、固定リブ部と側壁部との挟角を90°未満にしたのは、90°以上の場合、衝突対象者の衝突部位の形状によっては、側壁部が内側に折れるように変形し、潰れ残り量が大きくなってしまう可能性があるからである。
【0020】
(2−1)より好ましくは、上記(2)の構成において、前記固定リブ部と前記側壁部との挟角は、80°以上である構成とする方がよい。ここで、固定リブ部と側壁部との挟角を80°以上にしたのは、衝突初期での反力(荷重)の立ち上がりを充分に大きくするには、80°以上が好ましいからである。
【0021】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、一対の前記側壁部は、前記先端縁から前記根本縁に向かって、徐々に間隔が狭まるように配置されている構成とする方がよい(請求項3に対応)。
【0022】
本構成によると、衝撃吸収部材が変形する過程において、荷重値が変化しにくい。このため、衝突対象者に加わる反力も、衝撃吸収部材が変形する過程において、変化しにくい。また、衝突対象者を保護する観点から設定される荷重しきい値に、比較的近い荷重値を保ったまま、衝撃吸収部材を変形させることができる。すなわち、衝撃吸収過程全体における衝突エネルギ消費量を大きくすることができる。
【0023】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記固定リブ部は、前記側壁部の前記根本縁に連なる曲率略一定の根本面取部を有する構成とする方がよい(請求項4に対応)。
【0024】
本構成によると、固定リブ部が根本面取部を有している。このため、根本面取部を有しない場合と比較して、固定リブ部と側壁部との境界付近に荷重が集中するのを抑制することができる。
【0025】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記根本面取部の曲率半径は、0mm超過3mm以下である構成とする方がよい(請求項5に対応)。ここで、根本面取部の曲率半径を0mm超過にしたのは、0mmの場合、固定リブ部と側壁部とが角張って連なることになり、荷重が集中しやすいからである。
【0026】
一方、根本面取部の曲率半径を3mm以下にしたのは、3mm超過の場合、潰れ残りが大きくなってしまうおそれがあるからである。
【0027】
(5−1)より好ましくは、上記(5)の構成において、前記根本面取部の曲率半径は、2mm以下である構成とする方がよい。ここで、根本面取部の曲率半径を2mm以下にしたのは、潰れ残り量を充分に小さくするためには、2mm以下が望ましいからである。
【0028】
(6)好ましくは、上記(4)または(5)の構成において、前記基材の表面に対する、前記固定リブ部の略垂直方向投影面における、前記側壁部に対する延在方向長さは、前記根本面取部の曲率半径に2mmを加算した値以上である構成とする方がよい(請求項6に対応)。ここで、固定リブ部の略垂直方向投影面における、側壁部に対する延在方向長さを、根本面取部の曲率半径に2mmを加算した値以上にしたのは、固定リブ部が基材と強固に固定でき、また固定リブ部は基材が一対の側壁部間に入り込むように変形する挙動を防止する役割を果たしているが、当該値未満である場合には、こうした機能が充分に果たせなくなるからである。
【0029】
(7)好ましくは、上記(1)ないし(6)のいずれかの構成において、前記頂壁部は、前記側壁部の前記先端縁に連なる曲率略一定の先端面取部を有する構成とする方がよい(請求項7に対応)。本構成によると、頂壁部が先端面取部を有している。このため、先端面取部を有しない場合と比較して、頂壁部と側壁部との境界付近に荷重が集中するのを抑制することができる。
【0030】
(8)好ましくは、上記(7)の構成において、前記先端面取部の曲率半径は、0mm超過3mm以下である構成とする方がよい(請求項8に対応)。ここで、先端面取部の曲率半径を0mm超過にしたのは、0mmの場合、頂壁部と側壁部とが角張って連なることになり、荷重が集中しやすいからである。
【0031】
一方、先端面取部の曲率半径を3mm以下にしたのは、3mm超過の場合、衝突初期での反力(荷重)が小さくなり(反力の立ち上がりが緩やかになり)、結果としてエネルギ吸収量が小さくなってしまうからである。
【0032】
(8−1)より好ましくは、上記(8)の構成において、前記先端面取部の曲率半径は、1mm以下である構成とする方がよい。ここで、先端面取部の曲率半径を1mm以下にしたのは、衝突初期での反力(荷重)の立ち上がりを充分に大きくするには、1mm以下が好ましいからである。
【0033】
(9)好ましくは、上記(1)ないし(8)のいずれかの構成において、前記頂壁部の全幅は、前記固定リブ部底面と該頂壁部頂面との間の距離に0.8を乗じた値以上である構成とする方がよい(請求項9に対応)。
【0034】
ここで、頂壁部の全幅を、固定リブ部底面と頂壁部頂面との間の距離に0.8を乗じた値以上にしたのは、この値未満の場合、根本縁間の距離が接近しすぎてしまい、斜め方向からの衝突に対して充分にエネルギを吸収できない可能性が大きくなるためである。
【発明の効果】
【0035】
本発明によると、衝撃吸収の際、充分な変形量を確保でき、かつ荷重を小さくすることが可能な衝撃吸収部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の衝撃吸収部材を、車室内の乗員保護用として具現化した実施の形態について説明する。
【0037】
<第一実施形態>
まず、本実施形態の衝撃吸収部材の配置について説明する。図1に、本実施形態の衝撃吸収部材が配置されている車室内の斜視図を示す。なお、図1〜図3の方位は、車両後方から前方を見た場合を基準に設定している。図1に示すように、車室内の天井には、樹脂製のルーフライニング9が配置されている。衝撃吸収部材1(図1中、ハッチングで示す。)は、ルーフライニング9内部の左右縁に、各々、前後に二列ずつ、収容されている。すなわち、衝撃吸収部材1は、ルーフライニング9内部に、合計四列配置されている。
【0038】
以下、ルーフライニング9内部右前の衝撃吸収部材1の、配置および構成について説明する。残りの三列の衝撃吸収部材1の配置および構成も、右前に配置された衝撃吸収部材1と同様である。したがって、ここでは説明を割愛する。
【0039】
図2に、図1のII−II断面図を示す。図3に、本実施形態の衝撃吸収部材の斜視図を示す。図2、図3に示すように、ルーフライニング9上方には、所定間隔だけ離間して、鋼製のルーフパネル90が配置されている。ルーフパネル90は、車両の外郭を形成している。ルーフライニング9とルーフパネル90との間には、鋼製であって高剛性のルーフサイドレール部91が介装されている。ルーフサイドレール部91は、本発明の基材に含まれる。衝撃吸収部材1は、当該ルーフサイドレール部91の下面に、固定されている。
【0040】
次に、本実施形態の衝撃吸収部材の構成について説明する。衝撃吸収部材1は、頂壁部2と、一対の側壁部3と、一対の固定リブ部4と、を備えている。衝撃吸収部材1は、一枚のSUS製の板をプレス成形することにより、作製されている。つまり、衝撃吸収部材1は一体物である。
【0041】
固定リブ部4は、根本面取部40を除いて、平板状を呈している。すなわち、平板の一縁が面取状に丸められた形状を呈している。固定リブ部4は、ルーフサイドレール部91の下面に、強固に固定されている。固定リブ部4は、ルーフサイドレール部91の下面に、左右方向(厳密には左上−右下方向)に所定間隔だけ離間して、二つ並設されている。一対の固定リブ部4は、各々、根本面取部40を有している。根本面取部40は、曲率略一定の曲板状を呈している。根本面取部40は、固定リブ部4の内縁から、左下方向に湾曲しながら突出している。一対の固定リブ部4の根本面取部40同士は、対向して配置されている。
【0042】
側壁部3は、平板状を呈している。側壁部3は、根本面取部40の端部から、左下方向に延在している。側壁部3は、一対の前記根本面取部40の各々に連なっている。一対の側壁部3同士の間隔は、ルーフサイドレール部91から離間するに従って、徐々に広くなるように設定されている。
【0043】
頂壁部2は、先端面取部20を除いて、平板状を呈している。すなわち、平板の両縁が面取状に丸められた形状を呈している。頂壁部2は、一対の側壁部3の先端縁間を連結している。頂壁部2と前記固定リブ部4とは、略平行に配置されている。また、頂壁部2は、ルーフライニング9上面に、近接して配置されている。頂壁部2は、一対の先端面取部20を有している。一対の先端面取部20は、各々、曲率略一定の曲板状を呈している。一対の先端面取部20は、一対の前記側壁部3の各々に連なっている。
【0044】
次に、本実施形態の衝撃吸収部材の寸法について説明する。図4に、本実施形態の衝撃吸収部材の寸法図(端面図)を示す。図4に示すように、衝撃吸収部材1の肉厚(SUS板の板厚)は、0.6mmに設定されている。また、固定リブ部4(詳しくは根本面取部40を除いたもの)と側壁部3との挟角α1は、80°に設定されている。また、一対の側壁部3の根本縁30間の間隔L1は、一対の先端縁31間の間隔L2よりも、狭く設定されている。また、根本面取部40の曲率半径R1(詳しくは曲率中心から外側の面までの距離)は、1mmに設定されている。また、ルーフサイドレール部91の表面(図4においては上面)に対する、固定リブ部4(勿論、根本面取部40を含む)の略垂直方向投影面における、側壁部3に対する延在方向長さ(図4においては固定リブ部4の左右方向長さ。以下、単に「固定リブ部4の長さ」と略称する。)L3は、5mmに設定されている。また、先端面取部20の曲率半径R2(詳しくは曲率中心から外側の面までの距離)は、1mmに設定されている。また、頂壁部2の全幅L4は、28mmに設定されている。また、衝撃吸収部材1の高さ(固定リブ部4底面と頂壁部2頂面との間の距離)L5は、22.4mmに設定されている。また、衝撃吸収部材1の全長(図4の紙面表裏方向長さ)は、200mmに設定されている。
【0045】
次に、本実施形態の衝撃吸収部材1の動きについて簡単に説明する(詳細な動きについては後述する実施例参照)。例えば事故などにより、乗員の頭部がルーフライニング9に衝突すると、図2中に白抜き矢印で示すように、荷重F4が頂壁部2に入力される。荷重F4が所定の荷重しきい値に達する前に、衝撃吸収部材1は変形を開始する。具体的には、頂壁部2が頭部の形状に沿って陥没変形する。また、一対の側壁部3が、各々、外方(右下方向と左上方向)に膨らむように湾曲変形する。ただし、固定リブ部4は、ルーフサイドレール部91に対して不動である。衝撃吸収部材1の変形は、頂壁部2上面がルーフサイドレール部91下面に当接することにより完了する。当該変形の過程により、衝突エネルギが吸収される。すなわち、乗員頭部の運動エネルギの少なくとも一部が、衝撃吸収部材1の変形エネルギに変換される。
【0046】
次に、本実施形態の衝撃吸収部材1の作用効果について説明する。本実施形態の衝撃吸収部材1によると、前出図4に示すように、一対の側壁部3において、根本縁30間の間隔L1は、先端縁31間の間隔L2よりも、狭くなっている。このため、頂壁部2に荷重が加わる際、側壁部3は、頂壁部2に対して、外側に拡がるように湾曲変形する。したがって、荷重が加わる際、衝撃吸収部材1の潰れる方向に、湾曲した側壁部3が波板状に幾重にも重なるのを抑制することができる。よって、衝撃吸収時の潰れ残り量を小さくすることができる。このため、充分な変形量を確保することができる。すなわち、衝突エネルギの消費量が大きくなる。
【0047】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1の断面は、略コ字状を呈している。並びに、前出図13に示す補強壁部104や前出図14に示す補強板108のような、補強部材が配置されていない。このため、断面構造は、極めて単純である。したがって、この点においても、衝撃吸収時に、充分な変形量を確保することができる。
【0048】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1には、頂壁部2に対向する底壁部が配置されていない。このため、衝撃吸収時の潰れ残り量が小さくなる。したがって、この点においても、充分な変形量を確保することができる。
【0049】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1の側壁部3によると、上述したように、根本縁30間の間隔L1が、先端縁31間の間隔L2よりも、狭くなっている。このため、側壁部3の延在方向と、衝撃吸収部材1の潰れる方向と、が一致していない。したがって、本実施形態の衝撃吸収部材1は、衝撃が加わる際に変形しやすい。衝撃により変形しやすいため、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、荷重を小さくすることができる。すなわち、衝突の際、衝撃吸収部材1から乗員頭部に、過度の反力が加わるのを、抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、固定リブ部4と側壁部3との挟角α1が80°に設定されている。このため、側壁部3が安定して外側に広がるように湾曲変形し、衝突初期の反力(荷重)の立ち上がりを確保することができる。
【0051】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、一対の側壁部3は、先端縁31から根本縁30に向かって、徐々に間隔が狭まるように配置されている。このため、衝撃吸収部材1が変形する過程において、荷重値が変化しにくい。したがって、乗員頭部に加わる反力も、衝撃吸収部材1が変形する過程において、変化しにくい。また、乗員を保護する観点から設定される荷重しきい値に、比較的近い荷重値を保ったまま、衝撃吸収部材1が変形する(後述する実施例参照)。このため、衝突エネルギの消費量が大きい。
【0052】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、固定リブ部4は根本面取部40を有している。このため、根本面取部40を有しない場合と比較して、固定リブ部4と側壁部3との境界付近に荷重が集中するのを抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1は、一枚のSUS板から作製されている。このため、比較的簡単に作製することができる。また、製造コストも低い。また、例えば溶接などによる継ぎ目がなく、肉厚も一定であるため、特定の部位に荷重が集中しにくい。したがって、変形中に特定の部位が破断してしまうおそれが小さい。
【0054】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、根本面取部40の曲率半径R1は、1mmに設定されている。このため、潰れ残り量を小さくして吸収エネルギ量を大きくすることができる。
【0055】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、固定リブ部4の長さL3は、5mmに設定されている。言い換えると、根本面取部40の曲率半径R1(=1mm)に2mmを加算した値(3mm=1mm+2mm)以上になるように、設定されている。このため、固定リブ部4はルーフサイドレール部91と強固に固定され、一対の側壁部3間に入り込むように変形する挙動は生じない。
【0056】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、頂壁部2は先端面取部20を有している。このため、先端面取部20を有しない場合と比較して、頂壁部2と側壁部3との境界付近に荷重が集中するのを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、先端面取部20の曲率半径R2は、1mmに設定されている。このため、衝突初期の反力(荷重)の立ち上がりを大きく取ることができる。
【0058】
また、本実施形態の衝撃吸収部材1によると、頂壁部2の全幅L4は28mmに、衝撃吸収部材1の高さL5は22.4mmに、それぞれ設定されている。すなわち、全幅L4は、高さL5に0.8を乗じた値(17.92mm=22.4mm×0.8)以上になるように、設定されている。このため、根本縁30間の距離を充分大きく取ることができ、斜め方向からの衝突に対しても安定してエネルギを吸収できる形状となっている。
【0059】
<第二実施形態>
本実施形態の衝撃吸収部材と第一実施形態の衝撃吸収部材との相違点は、側壁部が平板状ではなく、曲板状を呈している点である。したがって、ここでは相違点についてのみ説明する。図5に、本実施形態の衝撃吸収部材の端面図を示す。なお、図4と対応する部位については、同じ符号で示す。図5に示すように、一対の側壁部3は、各々、外側に膨らむ曲板状を呈している。本実施形態の衝撃吸収部材1は、構成が共通する部分については、第一実施形態の衝撃吸収部材と同様の作用効果を有する。また、本実施形態の衝撃吸収部材1の側壁部3は、外側に膨出している。このため、衝撃が加わる際、より確実に、側壁部3を外側に張り出させることができる。したがって、側壁部3が衝撃吸収部材1の内側に入り込んで、頂壁部2と干渉するおそれが小さい。
【0060】
<その他>
以上、本発明の衝撃吸収部材の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0061】
例えば、第一実施形態においては、前出図4に示すように、衝撃吸収部材1の肉厚を0.6mmに、固定リブ部4と側壁部3との挟角α1を80°に、根本面取部40の曲率半径R1を1mmに、固定リブ部4の長さL3を5mmに、先端面取部20の曲率半径R2を1mmに、衝撃吸収部材1の全幅L4を28mmに、衝撃吸収部材1の高さL5を22.4mmに、衝撃吸収部材1の全長を200mmに、それぞれ設定した。しかしながら、上記各寸法は、特に限定しない。所望のエネルギ吸収量や荷重しきい値、配置部位などに応じて、適宜、適切な値に設定すればよい。例えば、曲率半径R1、R2を大きくすると、エネルギ消費量を小さくすることができる。また、挟角α1を大きくすると(90°に近づけると)、荷重を大きくすることができる。また、板厚を薄くすると、エネルギ消費量を小さくすることができる。
【0062】
また、側壁部3の形状についても特に限定しない。前出図4に示す平板状や前出図5に示す曲板状であってもよい。また、平板状の場合、部分的に傾斜が異なるような形状としてもよい。また、曲板状の場合、部分的に曲率が異なるような形状としてもよい。また、平板状と曲板状とを適宜組み合わせた形状としてもよい。また、先端面取部や根本面取部を配置しない形態で実施してもよい。また、衝撃吸収部材1の材質についても特に限定しない。SUS以外の金属製であってもよい。また、各種樹脂製であってもよい。また、頂壁部2の形状についても特に限定しない。例えば、頂壁部2全体が湾曲していてもよい。すなわち、頂壁部2全体が湾曲した状態で、側壁部3に連なっていてもよい。
【0063】
また、上記実施形態においては、ルーフライニング9内部に衝撃吸収部材1を配置した。しかしながら、配置部位は特に限定しない。乗員保護の観点からは、車室内に表出する部材の裏側に配置すればよい。例えば、フロントピラー、センターピラー、フロントドアトリム、リヤドアトリム、インストルメントパネルなどの裏側に配置すればよい。また、歩行者保護の観点からは、歩行者(自転車やバイクの運転者を含む)が衝突しやすい部材の裏側に配置すればよい。例えば、フロントバンパ、リヤバンパ、サイドモールディングなどの裏側に配置すればよい。また、これら表出する部材の裏側のみならず、勿論、表側に配置してもよい。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の衝撃吸収部材について行った衝突実験について説明する。
【0065】
<サンプルの寸法>
(実施例)
実施例として用いたのは、前出図4に示す第一実施形態の衝撃吸収部材1である。寸法も第一実施形態同様である。したがって、ここでは説明を割愛する。
【0066】
(比較例1)
比較例1として用いたのは、角筒状の衝撃吸収部材である。図6に、比較例1の衝撃吸収部材の寸法図(端面図)を示す。図6に示すように、比較例1の衝撃吸収部材5は、SUS製の角管である。すなわち、衝撃吸収部材5は、頂壁部50と一対の側壁部51と底壁部52とを備えている。頂壁部50と側壁部51との間および側壁部51と底壁部52との間には、各々面取部が介在している。肉厚(SUS板の板厚)は、0.6mmに設定されている。高さL6および全幅L7は、共に23mmに設定されている。また、衝撃吸収部材5の全長(図6の紙面表裏方向長さ)は、200mmに設定されている。
【0067】
(比較例2)
比較例2として用いたのは、平板に格子状のリブが立設された形状を呈した衝撃吸収部材である。図7(a)に、比較例2の衝撃吸収部材の寸法図(端面図)を示す。図7(b)に、同衝撃吸収部材の寸法図(下面図)を示す。図8に、同衝撃吸収部材の斜視図を示す。図7、図8に示すように、比較例2の衝撃吸収部材6は、頂壁部60と、一対の横リブ61と一対の縦リブ62とを備えている。衝撃吸収部材6は、PP(ポリプロピレン)樹脂製である。頂壁部60は、正方形の平板状を呈している。一対の横リブ61は、互いに平行であって、頂壁部60下面から下方に立設されている。一対の縦リブ62は、互いに平行であって、頂壁部60下面から下方に立設されている。一対の縦リブ62と一対の横リブ61とは、格子状に直交している。
【0068】
頂壁部60の板厚T1は、2.5mmに設定されている。横リブ61および縦リブ62の肉厚T2は、1.2mmに設定されている。横リブ61および縦リブ62の高さL8は、25mmに設定されている。一対の横リブ61間の間隔L9は、25mmに設定されている。また、頂壁部60両縁から、近い方の横リブ61までの距離L10は、各々、12.5mmに設定されている。同様に、一対の縦リブ62間の間隔L11は、25mmに設定されている。また、頂壁部60両縁から、近い方の縦リブ62までの距離L12は、各々、12.5mmに設定されている。
【0069】
<実験方法>
図9に、衝突実験の実験方法の模式図を示す。図9に示すように、実験は、半径R3が82.5mmの半球状のストライカ7を、実施例、比較例1、比較例2の衝撃吸収部材1、5、6に、各々、一定の速度20mm/min.で衝突させることにより行った。
【0070】
<実験結果>
図10に、実施例の衝撃吸収部材の変形過程の模式図を示す。図10に示すように、変形の際、一対の側壁部3は、根本面取部40付近を起点に、外側に膨出するように変形する。このため、側壁部3は、衝撃吸収部材1の内側に入り込まない。したがって、頂壁部2と基材99とが完全に接触するまで、衝撃吸収部材1は変形することができる。したがって、潰れ残り量が小さくなる。
【0071】
図11に、比較例1の衝撃吸収部材の変形過程の模式図を示す。図11に示すように、変形の際、一対の側壁部51は、外側に膨出するように変形しようとする。このため、底壁部52には、一対の側壁部51から、内向きの荷重が加わる。したがって、底壁部52は、内側に折れ込んでしまう。具体的には、底壁部52の中央部分520が、隆起してしまう。中央部分520が隆起すると、頂壁部50の変位が、中央部分520に接触することにより、阻害されてしまう。したがって、図11(e)と前出図10(e)とを比較して判るように、実施例の衝撃吸収部材1よりも比較例1の衝撃吸収部材5の方が、潰れ残り量が大きくなる。なお、比較例2の衝撃吸収部材6の変形過程は、実施例の衝撃吸収部材1、比較例1の衝撃吸収部材5よりも、さらに複雑になる。また、潰れ残り量も大きくなる。ここでは、詳しい説明を割愛する。
【0072】
図12に、実験における変形率と荷重との関係をグラフで示す。なお、変形率は、変形率(%)=((元の高さ−変形時の高さ)/元の高さ)×100という式から、算出される。図12に示すように、例えば荷重しきい値を5kNとする場合、理想的な荷重線Dは点線のようになる。すなわち、衝撃吸収部材の場合、衝突対象者保護のための荷重しきい値を超えずに、かつ変形率が100%付近まで変形して充分に衝突エネルギを吸収可能なことが理想とされる。
【0073】
この理想的な荷重線Dに最も近似した履歴を示すのが、実施例の衝撃吸収部材1の荷重線である。すなわち、実施例の衝撃吸収部材1によると、荷重しきい値に近い荷重値を保ちながら、変形率90%近くまで、充分に潰れることができる。言い換えると、衝突対象者を保護しながら、かつ充分に衝突エネルギを吸収することができる。
【0074】
これに対して、比較例1の衝撃吸収部材5の場合、荷重しきい値と荷重線との間隔が大きい。並びに、変形率80%に達する前の段階から、変形が困難になっている。このため、潰れ残り量が大きく、衝突対象者を保護しながら、充分に衝突エネルギを吸収することが困難である。
【0075】
また、比較例2の衝撃吸収部材6の場合、複雑な形状に起因して荷重線の変動が大きい。並びに、変形率70%に達する前の段階から、変形が困難になっている。このため、潰れ残り量が大きく、衝突対象者を保護しながら、充分に衝突エネルギを吸収することが、比較例1の衝撃吸収部材5と同様に困難である。
【0076】
以上説明したように、衝突実験から、比較例1の衝撃吸収部材5および比較例2の衝撃吸収部材6と比較して、実施例の衝撃吸収部材1によると、衝突対象者を保護しながら、かつ充分に衝突エネルギを吸収可能なことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】第一実施形態の衝撃吸収部材が配置されている車室内の斜視図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】同衝撃吸収部材の斜視図である。
【図4】同実施形態の衝撃吸収部材の寸法図(端面図)である。
【図5】第二実施形態の衝撃吸収部材の端面図である。
【図6】比較例1の衝撃吸収部材の寸法図(端面図)である。
【図7】(a)は比較例2の衝撃吸収部材の寸法図(端面図)である。(b)は同衝撃吸収部材の寸法図(下面図)である。
【図8】同衝撃吸収部材の斜視図である。
【図9】衝突実験の実験方法の模式図である。
【図10】実施例の衝撃吸収部材の変形過程の模式図である。
【図11】比較例1の衝撃吸収部材の変形過程の模式図である。
【図12】変形率と荷重との関係を示すグラフである。
【図13】特許文献1のドアインパクトビームの断面図である。
【図14】特許文献2のバンパビームの断面図である。
【図15】特許文献3の衝撃吸収部材の断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1:衝撃吸収部材。
2:頂壁部、20:先端面取部。
3:側壁部、30:根本縁、31:先端縁。
4:固定リブ部、40:根本面取部。
5:衝撃吸収部材、50:頂壁部、51:側壁部、52:底壁部、520:中央部分。
6:衝撃吸収部材、60:頂壁部、61:横リブ、62:縦リブ。
7:ストライカ。
9:ルーフライニング、90:ルーフパネル、91:ルーフサイドレール部(基材)、99:基材。
α1:挟角、A1:矢印、D:荷重線、F1〜F4:荷重、L1:間隔、L2:間隔、L3:固定リブ部の長さ、L4:全幅、L5:高さ、L6:高さ、L7:全幅、L8:高さ、L9:間隔、L10:距離、L11:間隔、L12:距離、R1:曲率半径、R2:曲率半径、R3:半径、T1:板厚、T2:肉厚。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々根本縁と先端縁とを有し、所定間隔だけ離間して立設される一対の側壁部と、
一対の該先端縁間に介在すると共に、一対の該先端縁の各々に湾曲して連なり、衝突対象者から直接あるいは間接的に荷重が入力される頂壁部と、
一対の該根本縁の各々に、該頂壁部の該先端縁に対する湾曲方向とは逆方向に、湾曲して連なると共に、一対の該側壁部に対して外側に向かって延在し、基材に固定される一対の固定リブ部と、
を備え、一対の該根本縁間の間隔は、一対の該先端縁間の間隔よりも、狭く設定されており、自身が変形することにより該衝突対象者を保護する衝撃吸収部材。
【請求項2】
前記固定リブ部と前記側壁部との挟角は、70°以上90°未満である請求項1に記載の衝撃吸収部材。
【請求項3】
一対の前記側壁部は、前記先端縁から前記根本縁に向かって、徐々に間隔が狭まるように配置されている請求項1または請求項2に記載の衝撃吸収部材。
【請求項4】
前記固定リブ部は、前記側壁部の前記根本縁に連なる曲率略一定の根本面取部を有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の衝撃吸収部材。
【請求項5】
前記根本面取部の曲率半径は、0mm超過3mm以下である請求項4に記載の衝撃吸収部材。
【請求項6】
前記基材の表面に対する、前記固定リブ部の略垂直方向投影面における、前記側壁部に対する延在方向長さは、前記根本面取部の曲率半径に2mmを加算した値以上である請求項4または請求項5に記載の衝撃吸収部材。
【請求項7】
前記頂壁部は、前記側壁部の前記先端縁に連なる曲率略一定の先端面取部を有する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の衝撃吸収部材。
【請求項8】
前記先端面取部の曲率半径は、0mm超過3mm以下である請求項7に記載の衝撃吸収部材。
【請求項9】
前記頂壁部の全幅は、前記固定リブ部底面と該頂壁部頂面との間の距離に0.8を乗じた値以上である請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の衝撃吸収部材。
【請求項1】
各々根本縁と先端縁とを有し、所定間隔だけ離間して立設される一対の側壁部と、
一対の該先端縁間に介在すると共に、一対の該先端縁の各々に湾曲して連なり、衝突対象者から直接あるいは間接的に荷重が入力される頂壁部と、
一対の該根本縁の各々に、該頂壁部の該先端縁に対する湾曲方向とは逆方向に、湾曲して連なると共に、一対の該側壁部に対して外側に向かって延在し、基材に固定される一対の固定リブ部と、
を備え、一対の該根本縁間の間隔は、一対の該先端縁間の間隔よりも、狭く設定されており、自身が変形することにより該衝突対象者を保護する衝撃吸収部材。
【請求項2】
前記固定リブ部と前記側壁部との挟角は、70°以上90°未満である請求項1に記載の衝撃吸収部材。
【請求項3】
一対の前記側壁部は、前記先端縁から前記根本縁に向かって、徐々に間隔が狭まるように配置されている請求項1または請求項2に記載の衝撃吸収部材。
【請求項4】
前記固定リブ部は、前記側壁部の前記根本縁に連なる曲率略一定の根本面取部を有する請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の衝撃吸収部材。
【請求項5】
前記根本面取部の曲率半径は、0mm超過3mm以下である請求項4に記載の衝撃吸収部材。
【請求項6】
前記基材の表面に対する、前記固定リブ部の略垂直方向投影面における、前記側壁部に対する延在方向長さは、前記根本面取部の曲率半径に2mmを加算した値以上である請求項4または請求項5に記載の衝撃吸収部材。
【請求項7】
前記頂壁部は、前記側壁部の前記先端縁に連なる曲率略一定の先端面取部を有する請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の衝撃吸収部材。
【請求項8】
前記先端面取部の曲率半径は、0mm超過3mm以下である請求項7に記載の衝撃吸収部材。
【請求項9】
前記頂壁部の全幅は、前記固定リブ部底面と該頂壁部頂面との間の距離に0.8を乗じた値以上である請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の衝撃吸収部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−184087(P2008−184087A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20427(P2007−20427)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】
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