説明

衝撃緩和機能付き玩具用歯車およびその軸方向隙間調整機構

【要 約】
【課 題】 エアガンのような玩具の駆動機構に組み込んで高回転速度で作動させた場合でも、その歯車と噛み合う被駆動側歯車を含む、玩具の駆動機構の寿命を延ばすことができる玩具用歯車を、その軸方向隙間調整機構と共に提供する。
【解決手段】 無歯部を有する一方の歯車と他方の歯車が同軸に重ね合わされ、軸方向に介在させた衝撃緩和機構により連結されてなる玩具用歯車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動源からの動力を被駆動側に間欠的に伝達する特殊な歯車を、エアガンのような玩具の駆動機構に組み込んで高回転速度で回転させた場合でも、玩具の駆動機構の寿命を延ばすことができる玩具用歯車およびその軸方向隙間調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
玩具の一つであるエアガンとしては、ピストンをシリンダ内で往復移動させてその都度弾丸を発射するものが知られている。例えばモータなどの駆動源を用い、ばね力に抗してシリンダ内でピストンを後退させた後、ばねの反発力により一瞬にしてシリンダ内で前進させることにより、シリンダ内で作り出した圧縮空気の作用により弾丸を発射するエアガンが公知である(特許文献1)。
【0003】
この特許文献1に記載のエアガンには、図8、図9に示すように、モータ110とピストン103間に、駆動源であるモータ110の回転をピストン103の下部に設けたラック歯105に間欠的に伝達するため、特殊な玩具用歯車がピストン駆動用歯車108として組み込まれている。このような特殊な玩具用歯車は、図11に示すように、2つの歯車108A、108Bが同軸に重ね合わされ、駆動源側からの動力を被駆動側に間欠的に伝達する歯車という意味で以下、間欠歯車ともいう。
【0004】
図8、図9中、中央部に示すピストン駆動用歯車108が特殊な玩具用歯車であり、一方の歯車108Aに無歯部107が形成されている。従来の特殊な玩具用歯車は、無歯部107が形成されている一方の歯車108Aと他方の歯車108Bが同軸に重ね合わされ、軸方向に介在させた連結ピン108Cによって一体とされている。
【0005】
ピストン駆動用歯車108には、他方の歯車108Bと、モータ110の動力を入力する減速歯車109が噛合され、無歯部107を有する一方の歯車108Aと、ピストン103下部のラック105とが間欠的に噛み合う。この特殊な玩具用歯車をエアガンの駆動機構に組み込んだ場合の動作は以下のようである。
【0006】
図8に示すモータ110を回転させると、回転が減速歯車109などを介してピストン駆動用歯車108に伝達され、ピストン駆動用歯車108のギヤ歯106とラック歯105とが噛み合い、圧縮ばね104のばね力に抗してピストン103が後退する。更に回転すると図9に示すように、ピストン駆動用歯車108の無歯部107がピストン103の下部に到達し、その直後に噛み合いがなくなって、圧縮ばね104の反発力によって一瞬にしてピストン103が前進する。この過程を繰り返す毎に、吸引したエアが圧縮されてシリンダ102の噴出口101から噴出し、その直前で停止している弾丸121が発射される。
【0007】
この圧縮ばね104は、ピストン103を押し出す強いばね力を有し、エアガン本体120に固定されたスピンドル111で受け止められている。一方ピストン103は、前部にO−リング112が装着されてシリンダ内の気密性を保持している。
【0008】
ここで特許文献1に記載されたピストン103の駆動機構では、図10に詳細を示すように、ピストン下部に設けたラックの第1歯105Aが他のラック歯より高い歯丈とされ確実にピストン駆動用歯車108の第1歯106Aを捕らえる構造としている。
【0009】
また従来の特殊な玩具用歯車は、図11に示したように、2つの歯車108A、108Bが同軸に重ね合わされ、軸方向に介在させた連結ピン108Cで一体とされてピストン103の駆動機構に組み込まれている。
【特許文献1】実公平7−22635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし従来のピストン103の駆動機構においては、単位時間当たりの弾丸発射数を多くするために、特殊な玩具用歯車であるピストン駆動用歯車108を高回転速度で作動させた場合、玩具の駆動機構の寿命が極端に短くなるという問題がある。
【0011】
図10によりこの問題点について説明する。図10において(a)〜(c)は、ピストン駆動用歯車108の第1歯106Aがピストン下部に設けたラックの第1歯105Aを捕らえる噛み合わせ前後の状態を示す模式図である。
【0012】
図10(a)は、ピストン103が圧縮ばね104のばね力によりピストン待機位置に待機している状態を示し、図10(b)は、ピストン駆動用歯車108が回転してきてピストン下部に形成したラックの第1歯105Aと衝突したときの状態を示す。また図10(c)は、モータ110からの回転力と、モータ110以降からピストン駆動用歯車108までの各部の慣性モーメントに加えて、ピストン103の駆動機構には力の逃げ場がないため、ピストン103が後退を開始した状態を示す。この際に、多大なひずみがピストン下部に形成したラックの第1歯105Aとピストン駆動用歯車108の第1歯106Aに溜め込まれる。
【0013】
図10(d)には、多大なひずみの蓄積によりピストン下部に形成したラックの第1歯105Aに損傷が生じ、玩具の駆動機構が早期にその機能を果たせなくなった状態を示す。このような損傷が生じない場合でも、多大なひずみが繰り返してピストン下部に形成したラックの第1歯105Aに加わるために、発熱により軟化して玩具の駆動機構が早期にその機能を果たせなくなることがある。
【0014】
このような問題が玩具であるエアガンにおいて生じる原因は、ピストン駆動用歯車108が回転してきてピストン駆動用歯車108の第1歯106Aがピストン下部に形成したラックの第1歯105Aを捕らえる噛合開始時に、モータ110からの回転力と、モータ110以降からピストン駆動用歯車108までの各部の慣性モーメントに加えて、ピストン103の駆動機構に力の逃げ場がないため、大きな衝撃が噛み合う歯同士に繰り返しかかることの影響が大きいことを知見した。なお玩具であるエアガンにおいては、普通、ピストン下部に設けたラックの材質は樹脂製とされ、ピストン駆動用歯車108の材質は金属製とされている。
【0015】
すなわち単位時間当たりの弾丸発射数を多くするために、例えば毎分900発の弾丸発射数のところ、競技用のサバイバルゲームのように毎分1500発の弾丸発射数とし、かつ1発の弾丸発射エネルギーを1J(ジュール)としてピストン駆動用歯車108を高回転速度で作動させた場合には、歯車自体の慣性モーメントを含む、玩具の駆動機構の各部品による慣性モーメントが急激に増大すると共に、モータ110以降からピストン駆動用歯車108までの玩具の駆動機構には力の逃げ場がないので、大きな衝撃が最初に噛み合う歯同士に繰り返しかかることになる。その結果、玩具の駆動機構の寿命が極端に短くなるという問題があるから、弾丸発射数を制限するのが一般的である。
【0016】
また駆動機構にピストン駆動用歯車108を組み込んだエアガンにおいては、競技用のサバイバルゲームのように毎分1500発の弾丸発射数とし、1発の弾丸発射エネルギーを1J(ジュール)に上げて使用した場合、ピストン駆動用歯車108と噛み合う歯車の材質を高強度でかつ高靱性としたものに代えたとしても、大きな衝撃が最初に噛み合う歯同士に繰り返しかかることになるから、被駆動側歯車が機能を果たせなくなるまでの弾丸発射数が不十分となる。
【0017】
またモータ110以降からピストン駆動用歯車108までの間のピストン103の駆動機構には力の逃げ場がないため、駆動源からの動力を被駆動側に間欠的に伝達する特殊な歯車を、玩具の駆動機構に組み込んで高回転速度で回転させた場合には、玩具の駆動機構を構成する各部品に無理な力が加わり、部品の寿命が短くなる恐れもある。
【0018】
本発明は、駆動源からの動力を被駆動側に間欠的に伝達する特殊な歯車を、エアガンのような玩具の駆動機構に組み込んで高回転速度で回転させた場合でも、その歯車と噛み合う被駆動側歯車を含む、玩具の駆動機構の寿命を延ばすことができる玩具用歯車およびその軸方向隙間調整機構と共に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、玩具の駆動機構に組み込んで、駆動源からの動力を被駆動側に間欠的に伝達するために使用する玩具用歯車であって、無歯部を有する一方の歯車と他方の歯車が同軸に重ね合わされ、軸方向に介在させた衝撃緩和機構により連結されてなることを特徴とする玩具用歯車である。この間欠歯車は、衝撃緩和機能付き間欠歯車ともいう。
【0020】
また本発明は、玩具の駆動機構に組み込んで、駆動用歯車として使用する玩具用歯車であって、一方の歯車と他方の歯車が同軸に重ね合わされ、軸方向に介在させた衝撃緩和機構により連結されてなることを特徴とする玩具用歯車である。
【0021】
この歯車は、単に、衝撃緩和機能付き歯車ともいう。
【0022】
また本発明は、前記衝撃緩和機能付き間欠歯車または前記衝撃緩和機能付き歯車を玩具の駆動機構に駆動用歯車として組み込むに当たり、その軸を遊動状態で挿入し、かつその軸に圧縮ばねを装着した状態で玩具本体に設けた軸受け間に組み込んでなることを特徴とする玩具用歯車の軸方向隙間調整機構である。
【0023】
また本発明は、前記衝撃緩和機能付き間欠歯車をピストン駆動用歯車として組み込むに当たり、その軸を遊動状態で挿入し、玩具本体に設けた軸受け間に組み込んだことを特徴とするエアガン用ピストンの駆動機構である。
【0024】
また本発明は、前記衝撃緩和機能付き歯車を、その軸を遊動状態で挿入し、動力源からピストン駆動用歯車に至る経路途中の玩具本体に設けた軸受け間に組み込んだことを特徴とするエアガン用ピストンの駆動機構である。
【0025】
また前記衝撃緩和機能付き間欠歯車をピストン駆動用歯車として組み込むに当たり、その軸を遊動状態で挿入し、玩具本体に設けた軸受け間に組み込むと共に、前記衝撃緩和機能付き歯車を、その軸を遊動状態で挿入し、動力源からピストン駆動用歯車に至る経路途中の玩具本体に設けた軸受け間に組み込んだことを特徴とするエアガン用ピストンの駆動機構である。
【0026】
すなわち、本発明にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車と衝撃緩和機能付き歯車は、どちらも玩具の駆動機構に組み込んで使用する玩具用歯車である。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかる玩具用歯車によれば、エアガンのような玩具の駆動機構に組み込んで高回転速度で作動させた場合でも、その歯車と噛み合う被駆動側歯車を含む、玩具の駆動機構の寿命を延ばすことができる。
【0028】
また本発明にかかる玩具用歯車の軸方向隙間調整機構によれば、エアガンのような玩具の駆動機構に簡単に組み込めると共に安定した玩具の駆動機構とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
先ず第1実施の形態にかかる玩具用歯車について図1、図2により説明する。図1は、第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1を示す概略平面図であり、図2は、図1のX−X断面図である。
【0030】
この図1、図2に示した玩具用歯車は、駆動源からの動力を被駆動側に間欠的に伝達するための歯車、すなわち間欠歯車であって、2つの歯車2、3が同軸に重ね合わされ、軸方向に介在させた衝撃緩和機構により連結されてなる衝撃緩和機能付き間欠歯車1である。なお軸方向に介在させた衝撃緩和機構の構成は後述する。
【0031】
ここで衝撃緩和機能付き間欠歯車1の軸は、玩具の駆動機構に組み込む際に、その軸孔に対して遊動状態で挿入される。図1、図2中、9は、軸孔に挿入する衝撃緩和機能付き間欠歯車1の軸芯9を示す。
【0032】
第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1においては、一方の歯車2に無歯部7が形成され、かつまた所定数のギヤ歯6が形成されている。他方の歯車3には、無歯部はなく、駆動源側歯車の歯と噛み合う所定数のギヤ歯8が形成されている。例えば一方の歯車2には、全部で歯数30枚のところ、そのうち14枚を削り落として無歯部7とし、残った16枚のギヤ歯6が駆動源側歯車の歯と噛み合う。すなわち一方の歯車2には、衝撃緩和機能付き間欠歯車1を玩具の駆動機構に組み込んだ際に被駆動側歯車と噛み合う所定数のギヤ歯6が形成されている。
【0033】
したがって衝撃緩和機能付き間欠歯車1に遊動状態で軸を挿入し、玩具本体に設けた軸受け間に組み込んだ使用状態では、所定数のギヤ歯6が形成されている範囲において被駆動側歯車へ駆動源からの動力を伝達する。一方衝撃緩和機能付き間欠歯車1は、被駆動側歯車に対しては無歯部7の範囲だけ被駆動側歯車の歯と噛み合わず、いわゆる空転状態となって回転する。
【0034】
要するに第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1は、玩具の駆動機構に組み込んで、駆動源からの動力を被駆動側に間欠的に伝達するために使用する玩具用歯車であって、無歯部を有する一方の歯車と他方の歯車が同軸に重ね合わされ、軸方向に介在させた衝撃緩和機構により連結されてなる玩具用歯車である。
【0035】
この第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1は、軸方向に介在させた衝撃緩和機構により連結されている構造を有するから、玩具の駆動機構にその軸を遊動状態で挿入し、玩具本体に設けた軸受け間に組み込んだ使用状態で、そのギヤ歯6と被駆動側歯車の歯との噛み合い開始時での衝撃を緩和する衝撃緩和機能がある。
【0036】
第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1に介在させた衝撃緩和機構について詳しく説明する。
【0037】
図1、図2に示した衝撃緩和機構は、歯車2に軸方向に貫通させて形成した断面円形の貫通孔と、該貫通孔に挿入され、歯車3から軸方向に延在させてなる円筒状隙間規制部材5B付き押圧部材5と、衝撃緩衝材4からなる。また衝撃緩衝材4はリング状とされ、円筒状隙間規制部材5Bを外装した押圧部材5と、断面円形の貫通孔との間に圧縮状態で挿入されている。
【0038】
この場合、無歯部7を有する歯車2には、周方向3箇所に等間隔に断面円形の貫通孔が軸方向に形成されている。一方歯車3には、前記貫通孔の位置に対応させて、雌ねじが形成され、2段の円筒状隙間規制部材5Aとリング状の衝撃緩衝材4を装着した状態で押圧部材5をねじ結合させて歯車3に固定している。押圧部材5は、この場合皿ねじとした。
【0039】
また押圧部材5には2段の円筒状隙間規制部材5Bを外装することによりで隙間Gを規制した。この隙間Gは、第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1をエアガンの駆動機構にピストン駆動用歯車として組み込んで使用した場合における、回転方向位置での衝撃緩衝材4の圧縮量に相当する。
【0040】
衝撃緩衝材4としては、ゴム製のO−リングを用いることができる。例えばエアガンのような玩具の駆動機構では、耐熱性を有する衝撃緩衝材4とするのがよい。衝撃緩衝材4が前記の円筒状隙間規制部材5Bを外装した押圧部材5により短時間のうちに圧縮され、その後元の形状に戻ることを毎分900回も繰り返すために発熱するからである。衝撃緩衝材4としてゴム性のO−リングを使用する場合には、歯車回転方向位置での衝撃緩衝材4の圧縮量に相当する隙間Gは、O−リングの厚み、すなわち、外径と内径との差の×30%以下に設定するのが、衝撃緩衝材4の発熱量を抑制でき、衝撃緩和作用を持続できるので好ましい。
【0041】
ただし衝撃緩衝材4としては、ゴム性のO−リングに限定されず、円筒状隙間規制部材5Bを外装した押圧部材5により短時間のうちに圧縮され、その後元の形状に戻ることを繰り返した場合でも、その形状の変化が小さくて衝撃を緩和する衝撃緩和作用を持続できる適宜な材料を選定することができる。
【0042】
この図1、図2に示した衝撃緩和機能付き間欠歯車1は、玩具の駆動機構に使用するのに好適である。その際には、衝撃緩和機能付き間欠歯車1の軸を遊動状態で挿入し、玩具本体に設けた軸受け間に組み込むことができる。
【0043】
次に第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1の作用について図3により説明する。
【0044】
図3は、衝撃緩和機能付き間欠歯車1をエアガンの駆動機構にピストン駆動用歯車として組み込んだ使用状態の模式図であり、ギヤ歯6の第1歯6Aとピストン11下部に形成したラックとの噛み合い開始時前後の状態を(a)、(b)、(c)、(d)の順に示す図である。
【0045】
ここでギヤ歯6は図3において、上側の歯車2に形成されている一方、押圧部材5は、図3において図示しない下側の歯車3に、衝撃緩衝材4と円筒状隙間規制部材5Bを装着した状態で固定されている。なお、図2中、押圧部材5の頭部と断面円形の貫通孔との間の隙間は、円筒状隙間規制部材5Bを外装した押圧部材5と、断面円形の貫通孔との間に形成される隙間Gと同じとした。
【0046】
したがって歯車3に固定した円筒状隙間規制部材5B付き押圧部材5は、エアガンの駆動機構にピストン駆動用歯車として組み込んで使用した場合、ギヤ歯6と被駆動側歯車であるラックとの噛み合い開始時において、衝撃緩衝材4を歯車回転方向位置で隙間Gだけ圧縮する役割を有すると共に、衝撃緩衝材4を圧縮し終わった以降、被駆動側歯車へ動力を伝達している間、押圧部材5の頭部が歯車2に形成した貫通孔の内面と接触し、また円筒状隙間規制部材5Bの大径部が貫通孔の内面と接触することにより、歯車3に入力された動力を歯車2に伝達する役割を有する。
【0047】
図3中、21はピストン11内に挿入された圧縮ばねを示す。
【0048】
(a)、(b)、(c)、(d)の順に説明すると、図3(a)は、ピストン11が圧縮ばね21のばね力によりピストン待機位置に待機しているときの状態を示し、歯車2に形成したギヤ歯の第1歯6Aは、ラック歯の第1歯12Aより回転方向後方に位置している。図3(b)は、ピストン駆動用歯車1が回転してきて、ギヤ歯の第1歯6Aがラック歯の第1歯12Aを捕らえたときの状態を示す。図3(b)では歯車2は、一旦その位置に停止する。
【0049】
図3(c)は、図示しない下側の歯車3に固定した押圧部材5により衝撃緩衝材4が歯車回転方向位置で隙間Gだけ圧縮され、衝撃緩衝材4により一定量の衝撃を吸収し終わった時点の状態を示す。すなわち、図3(b)〜図3(c)間において、歯車2の回転が停止し、下側の歯車3に固定した押圧部材5により歯車回転方向位置で衝撃緩衝材4が所定量だけ圧縮されて、駆動源であるモータ以降から衝撃緩和機能付き間欠歯車1までの各部品による慣性モーメントを吸収することができる。なお、その間においては、徐々に回転方向に対するモーメントが蓄積され、図3(d)に示すようにピストン11が後退し始める。
【0050】
このように衝撃緩和機能付き間欠歯車1を玩具の駆動機構にピストン駆動用歯車として組み込んだ場合には、ギヤ歯の第1歯6Aがラック歯の第1歯12Aを捕らえるときの
噛み合い開始時において歯車回転方向位置で衝撃緩衝材4を所定量だけ圧縮することにより、歯車自体の慣性モーメントを含む、ピストン11の駆動機構を構成している各部品の慣性モーメントに起因する衝撃を吸収し、衝撃緩衝材4を所定量だけ圧縮し終わった以降は、衝撃緩衝材4を介することなく、歯車3から歯車2へ動力を伝達している。
【0051】
すなわち、衝撃緩衝材4により一定量の慣性モーメントを吸収し終わった以降、ピストン11のラックへ動力を伝達している間、押圧部材5の頭部が歯車2に形成した貫通孔の内面と接触し、また円筒状隙間規制部材5Bの大径部が貫通孔の内面と接触することにより、歯車3に入力された動力を歯車2に伝達しているために、衝撃緩衝材4による動力伝達ロスなく、歯車3から歯車2へ動力を伝えることができる。
【0052】
そこで第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1によれば、エアガンのような玩具の駆動機構に組み込んで高回転速度で作動させた場合でも、その歯車と噛み合う被駆動側歯車を含む、玩具の駆動機構の寿命を延ばすことができる。
【0053】
また第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1によれば、衝撃緩衝材4を所定量だけ圧縮し終わった以降、被駆動側歯車へ動力を伝達している間、衝撃緩衝材4による動力伝達ロスが抑制できる利点もある。
【0054】
以上第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1について説明したが、本発明では、図1、2に示した玩具用歯車に限定されない。例えば図4、図5に示すような第2実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車10とすることもできる。
【0055】
この場合には、歯車2の中央部に、断面円形の貫通孔と十文字状の溝を軸方向に貫通させて形成し、一方歯車3には、平歯車2に形成した断面円形の貫通孔と十文字状の溝に隙間を形成して挿入することが可能な、突起と押圧部材5を延在させてなる。
【0056】
ただし押圧部材5は、衝撃緩衝材4を装着した状態で締結ボルト5Aで歯車3に固定した。また衝撃緩衝材4は、歯車2に形成した断面円形の貫通孔と十文字状の溝内に、歯車3に延在させた突起と押圧部材5を挿入して形成される隙間に圧縮した状態で装着されている。この第2実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車10を玩具の駆動機構に組み込んで使用した場合における、回転方向位置での衝撃緩衝材4の圧縮量に相当する隙間Gは、第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1と同様に設定するのが好ましい。
【0057】
図4、図5に示すような第2実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車10は、例えば、無歯部7を有する一方の歯車2と他方の歯車3を同軸に重ね合わせ、衝撃緩衝材4を装着した押圧部材5を締結ボルト5Aで歯車3に取り付けることで組み立てることができる。
【0058】
第2実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車10によれば、エアガンの駆動機構にピストン駆動用歯車として組み込んで使用した場合、第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1と同様な作用・効果を発揮することができる。
【0059】
図6には、第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1をピストン駆動用歯車としてエアガンの駆動機構に組み込むに当たり、その軸を遊動状態で挿入し、かつその軸に圧縮ばね16を装着した状態でエアガン本体20に設けた軸受け13間に組み込んだ場合を示す。
【0060】
図6中、衝撃緩和機能付き間欠歯車1の軸には、上から順にシムとも称される隙間調整リング14、ブッシュ15、圧縮ばね16が装着され、また減速歯車17の軸にも圧縮ばね16が装着され、ばね力により衝撃緩和機能付き間欠歯車1と減速歯車17を同方向に押しつけている。減速歯車17は、一体化された小歯車18と大歯車19とからなる。
【0061】
図6に示したような玩具用歯車の軸方向隙間調整機構によれば、衝撃緩和機能付き間欠歯車1のシム調整作業が不必要となるから組み込み作業を簡単に行うことができると共に、圧縮ばね16によって組み込んだ衝撃緩和機能付き間欠歯車1が常に一方向に一定の圧力で抑えられているので、衝撃緩和機能付き間欠歯車1のスラスト方向のガタツキもなくなって玩具の駆動機構が安定するという副次的効果もある。
【0062】
例えばエアガン本体20に軸受け13として、ラジアルボールベアリングを使用した場合には、ボールベアリングの持つラジアル/スラスト方向のクリアランスを同時に排除できるので衝撃緩和機能付き間欠歯車1のスラスト方向のガタツキを抑えることができる。またエアガン本体20に軸受け13として、オイルレス・メタルを使用した場合には、やはり衝撃緩和機能付き間欠歯車1のスラスト方向のガタツキが排除できるので共振を抑えることができる。
【0063】
一方、図7に示すような従来の軸方向隙間調整機構を採用した場合には、圧縮ばね16が装着されていないから、シム調整作業を十分行い、衝撃緩和機能付き間欠歯車1がスムーズに回転することができるように適正なスラスト方向クリアランスを持たせて組み込む必要がある。例えばシム調整作業が不十分であった場合には、衝撃緩和機能付き間欠歯車1と減速歯車17とが側面同士で接触する危険性を排除できない。
【0064】
このようなシム調整作業が必要となるのは、玩具の場合、適正なスラスト方向クリアランスがあるのに対して、玩具の駆動機構を納めるエアガン本体20の個体差により軸受け13間の距離が大きく変化し、それに伴ってスラスト方向クリアランスが過大になってしまうと、歯車同士が側面で接触したり、玩具の作動不良が生じるからである。なお玩具であるエアガンの場合には、適正なクリアランスが0.02mmであるのに対して、隙間調整リング14の厚みは最低でも0.1mmと適正なクリアランスより大きいから、シム調整作業を十分行っても、衝撃緩和機能付き間欠歯車1のスラスト方向のガタツキが排除できない場合がある。従来の軸方向隙間調整機構では、隙間調整リング14を適宜な枚数重ねて、衝撃緩和機能付き間欠歯車1のスラスト方向のガタツキを小さくしているため、圧縮ばね16が装着されていない。
【0065】
以上説明した第1、2実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1もしくは10は、図8、9に示したようなエアガンのピストン駆動用歯車としても、また他の玩具の駆動機構の駆動用歯車としても適用することができる。
【0066】
ところで第1、2実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1もしくは10を、玩具の駆動機構の駆動用歯車として組み込むのが困難である場合には、従来のまま、無歯部を有する一方の歯車と他方の歯車が同軸に一体化されてなる玩具用歯車を駆動用歯車として組み込み、この間欠歯車と一緒に、一方の歯車と他方の歯車が同軸に重ね合わされ、軸方向に介在させた衝撃緩和機構により連結されてなる撃緩和機能付き歯車を、その軸を遊動状態で挿入し、玩具本体に設けた軸受け間に組み込んだ玩具の駆動機構とすることもできる。一方の歯車と他方の歯車が同軸に重ね合わされ、軸方向に介在させた衝撃緩和機構により連結されてなる撃緩和機能付き歯車は、玩具の駆動機構の駆動用歯車として同様に組み込むこともできる。このような場合でも、その歯車と噛み合う被駆動側歯車を含む、玩具の駆動機構の寿命を延ばすことができるから、一方の歯車と他方の歯車が同軸に重ね合わされ、軸方向に介在させた衝撃緩和機構により連結されてなる衝撃緩和機能付き歯車も有用である。
【0067】
勿論、第1、2実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車1もしくは10を玩具の駆動機構に駆動用歯車として組み込むことができれば、その軸を遊動状態で挿入し、玩具本体に設けた軸受け間に組み込み、この衝撃緩和機能付き間欠歯車1もしくは10と一緒に、衝撃緩和機能付き歯車を、その軸を遊動状態で挿入し、玩具本体に設けた軸受け間に組み込んだ玩具の駆動機構とすることも好適である。
【実施例】
【0068】
図1、図2に示した衝撃緩和機能付き間欠歯車1をエアガンの駆動機構に組み込んで弾丸の発射実験を行い本発明例とした。衝撃緩和機能付き間欠歯車1をエアガンの駆動機構に組み込むに当たり、図6に示すように、その軸を遊動状態で挿入し、玩具本体20に設けた軸受け13間に組み込んだ。エアガンは、電動モータを駆動源とする電動エアガンであり、ピストンのラックは樹脂製である。
【0069】
無歯部7を形成した歯車2は、30枚の歯のうち14枚を削り落とし、16枚の歯を残した。一方歯車3は、歯数が32枚の平歯車とした。両方の歯車2、3の材質は、鋼製とした。衝撃緩和機構は、歯車2に軸方向に貫通させて形成した内径が7.6mmの断面円形の貫通孔と、該貫通孔に挿入され、歯車3から軸方向に延在させてなる円筒状隙間規制部材5B付き押圧部材5と、衝撃緩衝材4からなる。また衝撃緩衝材4は、呼び径が3mm、外径が7.6mm、内径が3.8mmで、耐熱温度220℃のO−リングを使用した。
O−リングの衝撃緩衝材4は、円筒状隙間規制部材5Bを外装した押圧部材5と、断面円形の貫通孔との間に圧縮状態で挿入した。押圧部材5は、ステンレス製M3mmの皿ねじとした。2段の円筒状隙間規制部材5Aは、一段目の外径が4.0mm、二段目の外径が6.0mmとし、真鍮製とした。隙間Gは0.8mmに規制した。衝撃緩和機能付き間欠歯車1の質量は20gとした。
【0070】
要するに実施例の場合、使用状態においてギヤ歯6とピストン11に形成したラックの第1歯12Aとの噛み合い開始時での衝撃を緩和する際に、衝撃緩衝材4が隙間G=0.8mmだけ圧縮されるように衝撃緩和機構を構成した。
【0071】
なお電動モーターの回転子から衝撃緩和機能付き玩具用歯車1までの合計質量は84g、衝撃緩和機能付き玩具用歯車1までの最終減速比は18.7/1である。
【0072】
発射実験は、発射エネルギー1J、1500発/分(=25発/秒)の競技用のサバイバルゲームを模した条件で行った。比較例としては図11に示したような平歯車108A、108B同士が軸方向に打ち込んだ連結ピン108Cによって一体とされているピストン駆動用歯車108を組み込んであるエアガンを用い、本発明例と同じ発射条件で発射実験を行った。
【0073】
その結果、従来のエアガンの場合には、競技用のサバイバルゲームを模した条件において3000発発射するとピストン103に形成したラックの第1歯105Aに損傷が生じてピストンの機能を果たせなくなった。これに対し、実施例のエアガンの場合には、競技用のサバイバルゲームを模した条件で従来のエアガンの寿命限界発射数の10倍である30000発発射してもピストン11に形成したラックの第1歯12Aにその機能を果たせなくなるような損傷は見られず、さらなる使用も可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車を示す概略平面図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】第1実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車の作用を説明する図である。
【図4】第2実施の形態にかかる衝撃緩和機能付き間欠歯車を示す概略平面図である。
【図5】図4のY−Y断面図である。
【図6】本発明にかかる玩具用歯車の軸方向隙間調整機構を説明する断面図である。
【図7】従来の玩具用歯車の軸方向隙間調整機構を説明する断面図である。
【図8】エアガンの駆動機構を説明する図である。
【図9】エアガンの駆動機構を説明する他の図である。
【図10】従来のピストン駆動用歯車の問題点を説明する図である。
【図11】従来のピストン駆動用歯車の構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1、10 衝撃緩和機能付き間欠歯車
2、3 歯車
4 衝撃緩衝材
5 押圧部材
5A 締結ボルト
5B 円筒状隙間規制部材
6 ギヤ歯
6A 第1歯
7 無歯部
8 ギヤ歯
9 軸芯
G 隙間
11 ピストン
12A 第1歯
13 軸受け
14 隙間調整リング(シム)
15 ブッシュ
16 圧縮ばね
17 減速歯車
18 小歯車
19 大歯車
20 エアガン本体
21 圧縮ばね
101 噴出口
102 シリンダ
103 ピストン
104 圧縮ばね
105 ラック歯
105A 第1歯
106 ギヤ歯
106A 第1歯
107 無歯部
108 ピストン駆動用歯車
108A、108B 歯車
108C 連結ピン
109 減速歯車
110 モータ(駆動源)
111 スピンドル
112 O−リング
120 エアガン本体
121 弾丸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
玩具の駆動機構に組み込んで、駆動源からの動力を被駆動側に間欠的に伝達するために使用する玩具用歯車であって、無歯部を有する一方の歯車と他方の歯車が同軸に重ね合わされ、軸方向に介在させた衝撃緩和機構により連結されてなることを特徴とする玩具用歯車。
【請求項2】
玩具の駆動機構に組み込んで、駆動用歯車として使用する玩具用歯車であって、
一方の歯車と他方の歯車が同軸に重ね合わされ、軸方向に介在させた衝撃緩和機構により連結されてなることを特徴とする玩具用歯車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の玩具用歯車を玩具の駆動機構に駆動用歯車として組み込むに当たり、その軸を遊動状態で挿入し、かつその軸に圧縮ばねを装着した状態で玩具本体に設けた軸受け間に組み込んでなることを特徴とする玩具用歯車の軸方向隙間調整機構。
【請求項4】
請求項1に記載の玩具用歯車をピストン駆動用歯車として組み込むに当たり、その軸を遊動状態で挿入し、玩具本体に設けた軸受け間に組み込んだことを特徴とするエアガン用ピストンの駆動機構。
【請求項5】
請求項2に記載の玩具用歯車を、その軸を遊動状態で挿入し、動力源からピストン駆動用歯車に至る経路途中の玩具本体に設けた軸受け間に組み込んだことを特徴とするエアガン用ピストンの駆動機構。
【請求項6】
請求項1に記載の玩具用歯車をピストン駆動用歯車として組み込むに当たり、その軸を遊動状態で挿入し、玩具本体に設けた軸受け間に組み込むと共に、
請求項4に記載の玩具用歯車を、その軸を遊動状態で挿入し、動力源からピストン駆動用歯車に至る経路途中の玩具本体に設けた軸受け間に組み込んだことを特徴とするエアガン用ピストンの駆動機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−6588(P2006−6588A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187366(P2004−187366)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(303054124)
【出願人】(504247118)
【Fターム(参考)】