衝突防止機能付き車両
【課題】障害物との衝突を防止しつつ、必要以上に車両の運動が制限されないことを可能とする。
【解決手段】 この車両は、入力された目標速度及び目標進行方向で車体50が所定時間だけ移動するときに車体が通過すると予測される車体通過予測領域と、障害物検知部で検出された障害物の位置とから、車体と障害物とが衝突するか否かを判定する。そして、車体と障害物とが衝突すると判定されるときは、入力部への入力に応じた目標速度及び目標進行方向の少なくとも一方を修正する。車体通過予測領域は、予め設定された車体モデル70に基づいて算出され、その車体モデル70は入力された目標速度及び目標進行方向に応じて変化する。
【解決手段】 この車両は、入力された目標速度及び目標進行方向で車体50が所定時間だけ移動するときに車体が通過すると予測される車体通過予測領域と、障害物検知部で検出された障害物の位置とから、車体と障害物とが衝突するか否かを判定する。そして、車体と障害物とが衝突すると判定されるときは、入力部への入力に応じた目標速度及び目標進行方向の少なくとも一方を修正する。車体通過予測領域は、予め設定された車体モデル70に基づいて算出され、その車体モデル70は入力された目標速度及び目標進行方向に応じて変化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両(例えば、電動車いす、ゴルフカート、シニアカー、台車、買い物カート等)に関する。詳しくは、障害物との衝突を防止する機能を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、衝突防止機能を備えた車両を開示する。この車両は、障害物を検知する障害物検知センサを備えている。この車両では、車体の周囲に障害物との衝突を考慮すべき対象領域が設定される。障害物検知センサが対象領域内に障害物が存在することを検知すると、制御装置は、検知された障害物と車体とが衝突する可能性があると判断し、その障害物と車体との距離に応じて速度を制限する。これによって、障害物との衝突の回避が容易となり、また、たとえ障害物と衝突してもその衝撃を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−341519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、車体の周囲に設定された対象領域内に障害物が存在するか否かによって、障害物と車体との衝突の可能性を判断する。車体と障害物との衝突を確実に防止するには、車体の周囲に設定される対象領域は広い方が好ましい。その一方、車体の周囲に設定される対象領域が広すぎると、車体と障害物との衝突の可能性が低い場合であっても速度が制限されてしまう。例えば、特許文献1の技術では、車両が障害物から離れる方向に移動しており、車体と障害物との衝突の可能性が低い場合であっても、車体と障害物との距離が近ければ、速度が制限されてしまう場合がある。したがって、車体と障害物との衝突を適切に判断して障害物との衝突を防止しつつ、必要以上に車両の運動が制限されない技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する車両は、車体の目標速度及び目標進行方向を入力する入力部と、障害物を検知する障害物検知部と、入力部へ入力された目標速度及び目標進行方向で車体が所定時間だけ移動するときに車体が通過すると予測される車体通過予測領域を算出する車体通過予測領域算出部と、車体通過予測領域算出部で算出された車体通過予測領域と障害物検知部で検出された障害物の位置とから、車体と障害物とが衝突するか否かを判定する判定部と、判定部で車体と障害物とが衝突しないと判定されるときは、入力部への入力に応じた目標速度及び目標進行方向に基づいて車体の速度及び進行方向を制御する一方、車体と障害物とが衝突すると判定されるときは、入力部への入力に応じた目標速度及び目標進行方向の少なくとも一方を修正すると共に、その修正した目標速度及び目標進行方向に基づいて車体の速度及び進行方向を制御する制御部と、を備えている。そして、車体通過予測領域算出部は、予め設定された車体モデルに基づいて車体通過予測領域を算出し、その車体モデルが入力部への入力に応じて変化する。
【0006】
この車両では、入力部への入力に基づいて車体通過予測領域が算出され、その車体通過予測領域と障害物検知部で検出された障害物の位置に基づいて、車体と障害物とが衝突するか否かが判定される。入力部への入力に基づいて車体通過予測領域を算出するため、車両が障害物から離れる方向に移動する場合には、車体と障害物とが衝突すると判定され難くなる。その結果、車両の運動が必要以上に制限されることを抑制することができる。また、車体通過予測領域を算出するための車体モデルも、入力部への入力に応じて変化する。その結果、車両の運動(速度,進行方向)に応じて適切な車体モデルを用いて車体通過予測領域を算出することができる。したがって、車体と障害物との衝突を適切に判断して障害物との衝突を防止しつつ、車両の運動が必要以上に制限されることを抑制することができる。
【0007】
上記の車体モデルは、車体の前方に設定された前方マージンと、車体の後方に設定された後方マージンを有することができる。そして、入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が前進する場合は、車体モデルの前方マージンが後方マージンより大きくされ、また、入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が後進する場合は、車体モデルの後方マージンが前方マージンより大きくされていてもよい。ここで、前方マージンと後方マージンの一方は0としてもよく、このような場合であっても、車体モデルは前方マージンと後方マージンを有しているということができる。
【0008】
このような構成では、車体モデルは前方マージンと後方マージンを有しているため、これらマージンの分だけ車体通過予測領域が広く算出される。このため、障害物検知部の検知結果に計測誤差が含まれていても、車体と障害物との衝突防止を適切に行うことができる。その一方、車体が前進する場合は前方マージンが後方マージンより大きくされ、車体が後進する場合は後方マージンが前方マージンより大きくされる。このため、車体の運動に応じて車体モデルが小さくなり、車体通過予測領域が広く算出され過ぎることを防止する。その結果、車両の運動が必要以上に制限されることを抑制することができる。
【0009】
また、上記の車体モデルは、車体の右側方に設定された右側方マージンと、車体の左側方に設定された左側方マージンを有することができる。そして、車体を上方より平面視したときに入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が反時計回りに旋回する場合は、車体モデルの左側方マージンは、車体の前方側が車体の後方側よりも大きくされる一方、車体モデルの右側方マージンは、車体の後方側が車体の前方側よりも大きくされてもよい。また、車体を上方より平面視したときに入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が時計回りに旋回する場合は、車体モデルの右側方マージンは、車体の前方側が車体の後方側よりも大きくされる一方、車体モデルの左側方マージンは、車体の後方側が車体の前方側よりも大きくされてもよい。
【0010】
このような構成では、車体モデルが右側方マージンと左側方マージンを有する。このため、障害物検知部の検知結果に計測誤差が含まれていても、車体の側方における障害物との衝突の防止を適切に行うことができる。一方、車体が旋回するときは、その旋回方向に応じて右側方マージン及び左側方マージンが変化する。このため、車体の旋回方向に応じて車体通過予測領域が適切に算出され、車体通過予測領域が広く算出され過ぎることを防止する。その結果、車両の運動が必要以上に制限されることを抑制することができる。
【0011】
上記の車両において、制御部は、判定部によって車体と障害物とが衝突すると判定されるときは、入力部への入力に応じた目標速度及び目標進行方向から決定される車体の軌道を変えることなく、車体の速度を減速することが好ましい。
【0012】
このような構成によると、入力部への入力と異なる方向へ車両が移動してしまうことが防止される。すなわち、車両は入力部に入力された方向に移動しながら、車両の速度のみが減速される。このため、車両を運転者が運転している場合には、運転者の意図しない方向へ車両が移動しないため、運転者の違和感を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係る車両を模式的に示す平面図。
【図2】本実施例に係る車両の制御系の構成を示すブロック図。
【図3】制御装置で実行される処理の手順を示すフローチャート。
【図4】操作部に入力された操作力から目標直進速度vx,目標横方向速度vyを算出する手順を説明するための図。
【図5】障害物検知センサの検知結果の一例を示す図。
【図6】車両の合成目標速度vと目標旋回速度ωを算出する手順を説明するための図。
【図7】車体通過予測領域を算出するために用いられる車体モデルを説明するための図。
【図8】車体通過予測領域を算出した一例を示す図。
【図9】図8に示す車体通過予測領域を用いた衝突判定の一例。
【図10】図8に示す車体通過予測領域を用いた衝突判定の他の例。
【図11】他の実施例に係る車両の車体モデルを説明するための図。
【図12】他の実施例に係る車両の車体モデルを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例) 本発明を具現化した一実施例に係る車両10について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、車両10は、前輪12と、後輪14と、前輪12及び後輪14が取付けられた車体50を備えている。
【0015】
前輪12a,12bは、車体50の側面の前端側に取付けられている。前輪12a,12bは、駆動輪であり、モータ18(図2に図示)に接続されている。モータ18が回転すると、モータ18の回転が前輪12a,12bにそれぞれ伝達される。前輪12a,12bが回転することで、車両10は路面を走行することができる。後輪14は、車体50の幅方向中央の後端側に取付けられている。後輪14は、操舵輪であり、操舵装置20(図2に図示)に接続されている。操舵装置20によって、後輪14の操舵角が変更可能となっている。後輪14の操舵角が変化することで、車両10の進行方向が変化する。
【0016】
車体50には、障害物を検知する障害物検知センサ16a〜16cが設置されている。障害物検知センサ16a〜16cは、2次元スキャン型の距離計測センサである。障害物検知センサ16a〜16cは、レーザ光を照射すると共に、その照射したレーザ光の反射光を検知可能となっている。障害物検知センサ16a〜16cの計測範囲内(例えば、障害物検知センサ16a〜16cからの距離が30.0m以内)で、かつ、レーザ光を照射する方向に障害物が存在している場合は、障害物検知センサ16a〜16cからレーザ光が照射されると、そのレーザ光が障害物で反射され、その反射光が障害物検知センサ16a〜16cで検知される。障害物検知センサ16a〜16cは、レーザ光を照射してからレーザ光を検知するまでの時間によって、障害物までの距離を計測する。一方、障害物検知センサ16a〜16cの計測範囲内に障害物が存在していない場合は、障害物検知センサ16a〜16cから照射されたレーザ光は反射されず、障害物検知センサ16a〜16cでは反射光が検知されない。
【0017】
障害物検知センサ16aは、車体50の中央の前端側に設置されている。障害物検知センサ16aは、車体50の前方の領域60a内に障害物が存在するか否かを検知する。障害物検知センサ16bは、車体50の左側面の後端側に設置されている。障害物検知センサ16bは、車体50の左側方及び後方の領域60b内に障害物が存在するか否かを検知する。障害物検知センサ16cは、車体50の右側面の後端側に設置されている。障害物検知センサ16cは、車体50の右側方及び後方の領域60c内に障害物が存在するか否かを検知する。本実施例では、3つの障害物検知センサ16a〜16cを設けることで、車体50の周囲の障害物を漏れなく検出することができる。障害物検知センサ16a〜16cは、後述する制御装置30に電気的に接続され、障害物検知センサ16a〜16cの検知結果が制御装置30(図2に図示)に入力されるようになっている。
【0018】
上述した障害物検知センサ16a〜16cには、例えば、SICK社製のLMS200や、北陽電機社製のUTM−30LX等を用いることができる。なお、障害物検知センサ16a〜16cには、上記のレーザ光を利用した距離計測センサに限られず、他の方式(例えば、超音波等)を利用したものを用いることもできる。
【0019】
図2に示すように、車両10は制御装置30を備えている。制御装置30には、入力部24と、モータ18と、操舵装置20と、上述した障害物検知センサ16a〜16cがそれぞれ接続されている。
【0020】
入力部24は、車体50に設置された運転者用シートの近傍に設置される。入力部24は、運転者が操作するジョイステック24aと、ジョイステック24aに接続された操作力検出装置24bを備えている。ジョイステック24aは、前後左右に傾けることができるように構成されている。運転者は、車両10を前方に走行させたいときはジョイステック24aを前方に傾け、車両10を後方に走行させたいときはジョイステック24aを後方に傾ける。また、車両10を右側に旋回させたいときはジョイステック24aを右側に傾け、車両10を左側に旋回させたいときはジョイステック24aを左側に傾ける。これによって運転者は、車両10を所望の位置に移動させることができる。
【0021】
操作力検出装置24bは、ジョイステックの操作方向(すなわち、前後方向及び左右方向)毎に、ジョイステック24aに入力された力の大きさを検知する。操作力検出装置24bで検出された力は、操作方向毎に電気信号に変換され、制御装置30に入力される。操作力検出装置24bには、公知の力センサを用いることができる。
【0022】
なお、入力部24は、上述した構成に限られず、種々の構成を採用することができる。例えば、本願出願人によって先に出願された特開2009−254220号公報に開示された構成を採ることができる。また、アクセルペダルとハンドルによって、車体の目標速度及び目標進行方向を入力するようにしてもよい。
【0023】
モータ18は、制御装置30と電気的に接続されている。モータ18は、制御装置30から入力される制御指令値にしたがって、前輪12a,12bを駆動する。モータ18には、エンコーダ19が設けられている。エンコーダ19は、制御装置30と電気的に接続されている。エンコーダ19は、モータ18の回転角速度(すなわち、前輪12a,12bの回転角速度)を検出する。エンコーダ19が検出した前輪12a,12bの回転角速度は、制御装置30に入力される。
【0024】
操舵装置20は、制御装置30と電気的に接続されている。操舵装置20は、制御装置30から入力される制御指令値にしたがって、後輪14の操舵角を変更する。操舵装置20には、操舵角検出装置22が設けられている。操舵角検出装置22は、制御装置30と電気的に接続されている。操舵角検出装置22は、後輪14の操舵角を検出する。操舵角検出装置22が検出した後輪14の操舵角は、制御装置30に入力される。
【0025】
制御装置30は、CPU,ROM,RAMを備えたコンピュータによって構成されている。制御装置30は、車体50に設置されている。制御装置30は、モータ18と、エンコーダ19と、障害物検知センサ16a〜16cと、操作力検出装置24bと、操舵装置20と、操舵角検出装置22に電気的に接続されている。図2に示すように、制御装置30は、その機能として、操作入力変換部32と、車体通過予測領域算出部34と、衝突判定部36と、駆動制御部38とを備えている。制御装置30に備えられる各部32,34,36,38の機能については、後で詳述する。
【0026】
次に、上述した車両10の制御装置30で行われる処理を、図3のフローチャートに従って説明する。制御装置30は、所定の制御周期毎に、図3に示すステップS10〜S36の処理を繰り返し実行する。これにより、車両10は路面を走行する。
【0027】
図3に示すように、制御装置30は、まず、操作力検出装置24bから、運転者がジョイステック24aに入力している操作力の大きさと方向を取得する(S10)。上述したように操作力検出装置24bは、ジョイステック24aの操作方向毎に、ジョイステック24aに入力される操作力を検知している。このため、制御装置30は、ジョイステック24aの操作方向毎に操作力を取得する。
【0028】
次に、制御装置30は、操作力検出装置24bから取得した情報に基づいて、入力部24に入力された操作力を変換して、入力された操作力に応じた車体50の目標速度及び目標進行方向を算出する(S12)。具体的な算出手順を、図4を参照して説明する。
【0029】
上述したように、制御装置30は、ジョイステック24aの操作方向毎に操作力を取得する。このため、制御装置30は、まず、取得した操作方向毎の操作力を合成し、その合力Fの大きさ|F|と方向θを算出する。ここで、合力Fの大きさが設定値Fmaxを超えるときは、合力Fの大きさをFmaxとする。一方、合力Fの大きさが設定値Fmax以下となるときは、合力Fの大きさは修正されない。これによって、ジョイステック24aに過大な操作力(Fmaxを超える操作力)が入力されても、車両10の速度が最大速度に制限される。
【0030】
次に、制御装置30は、合力Fの大きさと方向θから、車両10の直進方向(x方向)の目標速度vx(=|F|cosθ)と、直進方向に対して横方向(y方向)の目標速度vy(=|F|sinθ)を算出する(図5参照)。これによって、入力部24への入力に応じた車体50の目標速度及び目標進行方向が算出される。なお、本実施例では、直進方向目標速度vxと横方向目標速度vyによって目標速度及び目標進行方向を表したが、目標速度及び目標進行方向は他のパラメータで与えることができる。
【0031】
次に、制御装置30は、障害物検知センサ16a〜16cから検知結果を取得し(S16)、取得した検知結果から障害物を抽出する(S18)。既に説明したように、障害物検知センサ16a〜16cは、計測領域内に障害物が存在すると、その障害物からの反射光を検知する。例えば、図5に示すように、障害物検知センサ16の右斜め前方にのみ障害物52が存在する場合は、障害物検知センサ16は、障害物52が存在する方向からのみ反射光を検知し、それ以外の方向からは反射光を検知しない。したがって、制御装置30は、障害物検知センサ16の検知結果から、反射光を受光した方向が存在するか否かを判断することによって障害物を抽出する。
【0032】
次に、制御装置30は、ステップS18で抽出した障害物の位置と大きさを算出する(S18)。ステップS18の障害物の位置と大きさを算出する方法は、公知の方法を用いることができる。すなわち、図5に示すように、障害物52は連続する複数の検知点Bによって表される。各検知点Bについては、障害物検知センサ16からの距離と、その検知点Bを検知した時のレーザ光の照射方向が既知である。このため、制御装置30は、これらを用いて、各検知点Bの座標を算出することができる。
【0033】
次に、制御装置30は、時間t(変数)に0.1秒(s)を代入し(S20)、時間tが設定時間Tmaxを越えたか否かを判定する(S22)。後述するように、本実施例では、車体通過予測領域を0.1秒(s)刻みで計算して衝突判定を行うことで障害物と衝突するまでの時間を推定し、設定時間Tmaxが経過すると衝突判定処理を終了する。このため、ステップS22で時間tに0.1(s)を代入し、その時間tが設定時間Tmaxを越えたか否かを判定する。時間tが設定時間Tmaxを越えている場合(ステップS22でYES)は、ステップS36に進む。時間tが設定時間Tmaxを越えていない場合(ステップS22でNO)は、ステップS24に進む。
【0034】
ステップS24に進むと、制御装置30は、まず、ステップS12で算出した車体50の目標速度及び目標進行方向(すなわち、直進方向目標速度vx,横方向目標速度vy)に基づいて車体モデルを決定し(S24)、その車体モデルを用いて現在の位置から時間tが経過するまでに車体50が通過すると予測される車体通過予測領域を算出する(S26)。具体的な算出手順を、図6〜8を参照して説明する。
【0035】
制御装置30は、まず、ステップS12で算出した車体50の直進方向目標速度vx,横方向目標速度vyから、車体50の合成目標速度vと目標旋回速度ωと曲率半径ρを算出する(図6参照)。具体的には、車体50の直進方向目標速度vxと横方向目標速度vyから、まず、合成目標速度vと目標旋回速度ωを算出する(下記の式(1))。ここで、vxmaxは、車両10の直進方向の最高速度であり、例えば、1.0m/sとすることができる。vymaxは、車両10の旋回方向の最高速度であり、例えば、1.0rad/sとすることができる。次いで、算出した合成目標速度vと目標旋回速度ωから、曲率半径ρを算出する(下記の式(2))。なお、図6中、点O(0,0)は制御中心であり、前輪12a,12bと路面との接触点の中点に設定されている。
【0036】
【数1】
【0037】
【数2】
【0038】
合成目標速度vと目標旋回速度ωと曲率半径ρを算出すると、制御装置30は、まず、車体通過予測領域を算出するための車体モデルを決定する。車体モデルは、車体50を上方より平面視したときの外形状に基づいて作成することができる。ここで、障害物検知センサ16a〜16cの検知結果には計測誤差が含まれている。このため、車体50を上方より平面視した外形状そのものを車体モデルとすると、車体50と障害物とが衝突する可能性が生じる。そこで、本実施例では、図7に示すように、車体50の前後左右に所定のマージンを設定し、所定のマージンを含んだ形状を車体モデル70としている。(図7では、合成目標速度vが0で目標旋回速度ωが正となる場合の車体モデルにのみ符号を付している。)すなわち、車体50の前方に前方マージンdfが設定され、車体50の後方に後方マージンdbが設定され、車体50の右側方に右側方マージンdrが設定され、車体50の左側方に左側方マージンdlが設定される。そして、車体50の外形状に、これらのマージンdf,db,dr,dlを加えて車体モデル70を作成している。なお、車体モデル70のマージンdf,db,dr,dlは、障害物検知センサ16a〜16cの計測誤差に基づいて適宜設定することができる。
【0039】
ここで、上記のマージンdf,db,dr,dlを大きくすると、障害物との衝突をより確実に防止することができる。しかしながら、上記のマージンdf,db,dr,dlを大きくし過ぎると、障害物と衝突すると判定され過ぎることとなり、車両10の運動が制限され過ぎることとなる。一方、上記のマージンdf,db,dr,dlが小さいと、車両10の運動は制限され難くなるが、障害物との衝突を防止することができない。そこで、障害物との衝突を防止しながら、上記のマージンdf,db,dr,dlを小さくする必要がある。
【0040】
そこで、本実施例では、制御装置30は、直進方向目標速度vxと横方向目標速度vyから算出される合成目標速度vと目標旋回速度ωに基づいて、車体モデル70の外形状を変化させる。すなわち、図7に示すように、合成目標速度vが正となる場合(すなわち、車体50が前進する場合)は、車体モデル70の前方マージンdfが後方マージンdbより大きくされる(本実施例では、後方マージンdbが0となる)。また、合成目標速度vが負の場合(すなわち、車体50が後進する場合)は、車体モデル70の後方マージンdbが前方マージンdfより大きくされる(本実施例では、前方マージンdfが0となる)。このようにマージンを設定することで、車体50の進行方向と関係のない方向のマージンが小さくされ、障害物と衝突すると判定され過ぎることを防止することができる。
【0041】
さらに、本実施例では、目標旋回速度ωが正となる場合(すなわち、車体50が左旋回(平面視したときに反時計回りとなる方向に旋回する場合)は、車体モデル70の左側方マージンdlは、車体50の前方側が車体50の後方側よりも大きくされる一方、車体モデル70の右側方マージンdrは、車体50の後方側が車体50の前方側よりも大きくされる。逆に、目標旋回速度ωが負となる場合(すなわち、車体50が右旋回(平面視したときに時計回りとなる方向に旋回する場合)は、車体モデル70の右側方マージンdrは、車体50の前方側が車体50の後方側よりも大きくされる一方、車体モデル70の左側方マージンdlは、車体50の後方側が車体50の前方側よりも大きくされる。すなわち、車両10の内輪差及び外輪差が考慮され、車体モデル70のマージンdr,dlが適切に小さくされる。
【0042】
上記のように車体モデル70を決定すると、制御装置30は、車体モデル70の4つの角部の頂点a,b,c,dの軌跡を求める(図8参照)。このためには、まず、現在の車体モデル70の角部の頂点a,b,c,dの座標と、時間tだけ経過した後の車体モデル70’の角部の頂点a’,b’,c’,d’の座標を算出する。ここで、頂点a,b,c,dの座標と、頂点a’,b’,c’,d’の座標は、車体50内に設定した制御中心O(0,0)を基準に算出することができる。現在の車体モデル70の角部の頂点a,b,c,dの座標は、制御中心O(0,0)と頂点a,b,c,dの幾何学的関係によって既知である。一方、時間tだけ経過した後の頂点a’,b’,c’,d’の座標は、制御中心O(0,0)と頂点a,b,c,dの幾何学的関係と、旋回速度ωと、曲率半径ρとを用いて算出することができる。
【0043】
頂点a,b,c,dの座標と頂点a’,b’,c’,d’の座標を算出することで、図8に示すように、現在の車体モデル70の位置と、時間tだけ経過した時の車体モデル70の位置を算出することができる。また、頂点aから頂点a’に移動する際の軌跡と、頂点bから頂点b’に移動する際の軌跡と,頂点cから頂点c’に移動する際の軌跡と,頂点dから頂点d’に移動する際の軌跡が分かる。したがって、これらの軌跡より車体モデル70が通過すると予測される車体通過予測領域を算出する。
【0044】
次に、制御装置30は、ステップS26で算出した車体通過予測領域と、ステップS18で算出した障害物の位置とから、車体50と障害物とが衝突するか否かを判定する(S28)。すなわち、ステップS26で算出した車体通過予測領域内に、ステップS18で算出した障害物が存在しているか否かによって、車体50と障害物とが衝突するか否かを判定する。例えば、図9に示すように、車体通過予測領域内に障害物が存在しない場合は、車体50と障害物とが衝突しないと判定する。また、図10に示すように、車体通過予測領域内に障害物が存在している場合は、車体50と障害物とが衝突すると判定する。
【0045】
車体50と障害物とが衝突しないと判定した場合(ステップS30でNO)は、制御装置30は、時間t(変数)に0.1秒(s)を加算して新たな時間t(変数)とし(S34)、ステップS22に戻って、ステップS22からの処理を繰り返す。これによって、車体50と障害物が衝突すると判定されない限り、時間tが設定時間Tmaxを越えるまでステップS24〜S30の処理が繰り返される。
【0046】
一方、車体50と障害物とが衝突すると判定された場合(ステップS30でYES)は、制御装置30は、ステップS12で算出した目標速度(直進方向目標速度vx,横方向目標速度vy)を修正し(S32)、ステップS36に進む。具体的には、制御装置30は、入力部24への入力から決定される車体50の軌道を変えることなく、車体50の速度のみを減速する。このように修正すると、車両10の速度は減速するものの運転者の意図した方向に車両10は移動するため、運転者に与える違和感を緩和することができる。このような速度修正は、例えば、下記の式を用いて算出することができる。
【0047】
【数3】
【0048】
なお、上記の式では、合成目標速度vと目標旋回速度ωを用いている。また、変数tは、ステップS20で初期値が与えられ、ステップS34で更新された時間である。すなわち、車体50が障害物と衝突するまでの時間である。また、Tmaxは、ステップS22の設定時間である。上記の式から明らかなように、衝突するまでの時間に応じて徐々に目標速度をゼロに近づける。これによって、障害物との衝突を回避しながら、目標速度が突然ゼロに修正させることを防止し、運転者に違和感を与えることを緩和している。
【0049】
ステップS36に進むと、制御装置30は、ステップS12で算出された目標速度又はステップS32で修正された目標速度で車両10が移動するように、モータ18及び操舵装置20を駆動する(ステップS34)。すなわち、車体50と障害物が衝突しないと判定した場合は、制御装置30は、ステップS12で算出された目標速度、すなわち、入力部24に入力された運転者の操作に応じて車両10を駆動する。一方、車体50と障害物が衝突すると判定した場合は、制御装置30は、ステップS32で修正された目標速度に応じて車両10を駆動する。その結果、車両10の速度が減速され、運転者は容易に障害物を回避することができる。
【0050】
上述した説明から明らかなように、本実施例の車両10では、運転者の入力した操作力から算出される目標速度(v,ω)に応じて車体モデルを選択し、その選択した車体モデルを用いて車体通過予測領域を算出する。このため、障害物検知センサ16a〜16cの計測誤差を考慮しながら、車体通過予測領域が大きくなり過ぎることが防止される。このため、車体50と障害物との衝突を回避しながら、車両10の運動が必要以上に制限されることを防止することができる。その結果、従来の技術では走行できなかった狭い通路や、障害物の近傍を、車両10は走行することができる。
【0051】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
【0052】
例えば、上述した実施例では、平面視したときの外形状が矩形状となる車両であったが、本発明は、このような形態に限られない。例えば、図11に示すように、平面視したときの外形状が三角形となる車両であってもよい。このような車両においても、図11に示すように、車体の周囲にマージンdを設定した車体モデル(平面視三角形状)を作成し、その車体モデルを車両の合成目標速度v及び目標旋回速度ωに応じて変化させてもよい。さらには、図12に示すように、平面視したときの外形状が円形となる車両であってもよい。このような車両においても、図12に示すように、車体の周囲にマージンdを設定した車体モデル(平面視楕円形状)を作成し、その車体モデルを車両の合成目標速度v及び目標旋回速度ωに応じて変化させてもよい。なお、図11,12においては、色の濃い部分が車体の外形状(平面視)であり、色の薄い部分が車体モデルの外形状(平面視)である。
【0053】
また、上述した実施例では、運転者が乗車して運転を行う車両であったが、本発明は自律移動型の車両とすることもできる。また、上述した実施例では、前輪12a,12bを駆動輪とし、後輪14を操舵輪としていたが、本発明はこのような形態に限られない。例えば、左右前輪(又は左右後輪)を独立して駆動される駆動輪とし、後輪(又は前輪)をキャスタ輪としてもよい。このような構成を採る場合、左右の駆動輪の回転数の差によって車両の進行方向を変更することができる。
【0054】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0055】
10:車両
12a,12b:前輪
14:後輪
16a〜16c:障害物検知センサ
18:モータ
24:入力部
24a:ジョイステック
24b:操作力検出装置
30:制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両(例えば、電動車いす、ゴルフカート、シニアカー、台車、買い物カート等)に関する。詳しくは、障害物との衝突を防止する機能を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、衝突防止機能を備えた車両を開示する。この車両は、障害物を検知する障害物検知センサを備えている。この車両では、車体の周囲に障害物との衝突を考慮すべき対象領域が設定される。障害物検知センサが対象領域内に障害物が存在することを検知すると、制御装置は、検知された障害物と車体とが衝突する可能性があると判断し、その障害物と車体との距離に応じて速度を制限する。これによって、障害物との衝突の回避が容易となり、また、たとえ障害物と衝突してもその衝撃を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−341519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、車体の周囲に設定された対象領域内に障害物が存在するか否かによって、障害物と車体との衝突の可能性を判断する。車体と障害物との衝突を確実に防止するには、車体の周囲に設定される対象領域は広い方が好ましい。その一方、車体の周囲に設定される対象領域が広すぎると、車体と障害物との衝突の可能性が低い場合であっても速度が制限されてしまう。例えば、特許文献1の技術では、車両が障害物から離れる方向に移動しており、車体と障害物との衝突の可能性が低い場合であっても、車体と障害物との距離が近ければ、速度が制限されてしまう場合がある。したがって、車体と障害物との衝突を適切に判断して障害物との衝突を防止しつつ、必要以上に車両の運動が制限されない技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する車両は、車体の目標速度及び目標進行方向を入力する入力部と、障害物を検知する障害物検知部と、入力部へ入力された目標速度及び目標進行方向で車体が所定時間だけ移動するときに車体が通過すると予測される車体通過予測領域を算出する車体通過予測領域算出部と、車体通過予測領域算出部で算出された車体通過予測領域と障害物検知部で検出された障害物の位置とから、車体と障害物とが衝突するか否かを判定する判定部と、判定部で車体と障害物とが衝突しないと判定されるときは、入力部への入力に応じた目標速度及び目標進行方向に基づいて車体の速度及び進行方向を制御する一方、車体と障害物とが衝突すると判定されるときは、入力部への入力に応じた目標速度及び目標進行方向の少なくとも一方を修正すると共に、その修正した目標速度及び目標進行方向に基づいて車体の速度及び進行方向を制御する制御部と、を備えている。そして、車体通過予測領域算出部は、予め設定された車体モデルに基づいて車体通過予測領域を算出し、その車体モデルが入力部への入力に応じて変化する。
【0006】
この車両では、入力部への入力に基づいて車体通過予測領域が算出され、その車体通過予測領域と障害物検知部で検出された障害物の位置に基づいて、車体と障害物とが衝突するか否かが判定される。入力部への入力に基づいて車体通過予測領域を算出するため、車両が障害物から離れる方向に移動する場合には、車体と障害物とが衝突すると判定され難くなる。その結果、車両の運動が必要以上に制限されることを抑制することができる。また、車体通過予測領域を算出するための車体モデルも、入力部への入力に応じて変化する。その結果、車両の運動(速度,進行方向)に応じて適切な車体モデルを用いて車体通過予測領域を算出することができる。したがって、車体と障害物との衝突を適切に判断して障害物との衝突を防止しつつ、車両の運動が必要以上に制限されることを抑制することができる。
【0007】
上記の車体モデルは、車体の前方に設定された前方マージンと、車体の後方に設定された後方マージンを有することができる。そして、入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が前進する場合は、車体モデルの前方マージンが後方マージンより大きくされ、また、入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が後進する場合は、車体モデルの後方マージンが前方マージンより大きくされていてもよい。ここで、前方マージンと後方マージンの一方は0としてもよく、このような場合であっても、車体モデルは前方マージンと後方マージンを有しているということができる。
【0008】
このような構成では、車体モデルは前方マージンと後方マージンを有しているため、これらマージンの分だけ車体通過予測領域が広く算出される。このため、障害物検知部の検知結果に計測誤差が含まれていても、車体と障害物との衝突防止を適切に行うことができる。その一方、車体が前進する場合は前方マージンが後方マージンより大きくされ、車体が後進する場合は後方マージンが前方マージンより大きくされる。このため、車体の運動に応じて車体モデルが小さくなり、車体通過予測領域が広く算出され過ぎることを防止する。その結果、車両の運動が必要以上に制限されることを抑制することができる。
【0009】
また、上記の車体モデルは、車体の右側方に設定された右側方マージンと、車体の左側方に設定された左側方マージンを有することができる。そして、車体を上方より平面視したときに入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が反時計回りに旋回する場合は、車体モデルの左側方マージンは、車体の前方側が車体の後方側よりも大きくされる一方、車体モデルの右側方マージンは、車体の後方側が車体の前方側よりも大きくされてもよい。また、車体を上方より平面視したときに入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が時計回りに旋回する場合は、車体モデルの右側方マージンは、車体の前方側が車体の後方側よりも大きくされる一方、車体モデルの左側方マージンは、車体の後方側が車体の前方側よりも大きくされてもよい。
【0010】
このような構成では、車体モデルが右側方マージンと左側方マージンを有する。このため、障害物検知部の検知結果に計測誤差が含まれていても、車体の側方における障害物との衝突の防止を適切に行うことができる。一方、車体が旋回するときは、その旋回方向に応じて右側方マージン及び左側方マージンが変化する。このため、車体の旋回方向に応じて車体通過予測領域が適切に算出され、車体通過予測領域が広く算出され過ぎることを防止する。その結果、車両の運動が必要以上に制限されることを抑制することができる。
【0011】
上記の車両において、制御部は、判定部によって車体と障害物とが衝突すると判定されるときは、入力部への入力に応じた目標速度及び目標進行方向から決定される車体の軌道を変えることなく、車体の速度を減速することが好ましい。
【0012】
このような構成によると、入力部への入力と異なる方向へ車両が移動してしまうことが防止される。すなわち、車両は入力部に入力された方向に移動しながら、車両の速度のみが減速される。このため、車両を運転者が運転している場合には、運転者の意図しない方向へ車両が移動しないため、運転者の違和感を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例に係る車両を模式的に示す平面図。
【図2】本実施例に係る車両の制御系の構成を示すブロック図。
【図3】制御装置で実行される処理の手順を示すフローチャート。
【図4】操作部に入力された操作力から目標直進速度vx,目標横方向速度vyを算出する手順を説明するための図。
【図5】障害物検知センサの検知結果の一例を示す図。
【図6】車両の合成目標速度vと目標旋回速度ωを算出する手順を説明するための図。
【図7】車体通過予測領域を算出するために用いられる車体モデルを説明するための図。
【図8】車体通過予測領域を算出した一例を示す図。
【図9】図8に示す車体通過予測領域を用いた衝突判定の一例。
【図10】図8に示す車体通過予測領域を用いた衝突判定の他の例。
【図11】他の実施例に係る車両の車体モデルを説明するための図。
【図12】他の実施例に係る車両の車体モデルを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施例) 本発明を具現化した一実施例に係る車両10について、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、車両10は、前輪12と、後輪14と、前輪12及び後輪14が取付けられた車体50を備えている。
【0015】
前輪12a,12bは、車体50の側面の前端側に取付けられている。前輪12a,12bは、駆動輪であり、モータ18(図2に図示)に接続されている。モータ18が回転すると、モータ18の回転が前輪12a,12bにそれぞれ伝達される。前輪12a,12bが回転することで、車両10は路面を走行することができる。後輪14は、車体50の幅方向中央の後端側に取付けられている。後輪14は、操舵輪であり、操舵装置20(図2に図示)に接続されている。操舵装置20によって、後輪14の操舵角が変更可能となっている。後輪14の操舵角が変化することで、車両10の進行方向が変化する。
【0016】
車体50には、障害物を検知する障害物検知センサ16a〜16cが設置されている。障害物検知センサ16a〜16cは、2次元スキャン型の距離計測センサである。障害物検知センサ16a〜16cは、レーザ光を照射すると共に、その照射したレーザ光の反射光を検知可能となっている。障害物検知センサ16a〜16cの計測範囲内(例えば、障害物検知センサ16a〜16cからの距離が30.0m以内)で、かつ、レーザ光を照射する方向に障害物が存在している場合は、障害物検知センサ16a〜16cからレーザ光が照射されると、そのレーザ光が障害物で反射され、その反射光が障害物検知センサ16a〜16cで検知される。障害物検知センサ16a〜16cは、レーザ光を照射してからレーザ光を検知するまでの時間によって、障害物までの距離を計測する。一方、障害物検知センサ16a〜16cの計測範囲内に障害物が存在していない場合は、障害物検知センサ16a〜16cから照射されたレーザ光は反射されず、障害物検知センサ16a〜16cでは反射光が検知されない。
【0017】
障害物検知センサ16aは、車体50の中央の前端側に設置されている。障害物検知センサ16aは、車体50の前方の領域60a内に障害物が存在するか否かを検知する。障害物検知センサ16bは、車体50の左側面の後端側に設置されている。障害物検知センサ16bは、車体50の左側方及び後方の領域60b内に障害物が存在するか否かを検知する。障害物検知センサ16cは、車体50の右側面の後端側に設置されている。障害物検知センサ16cは、車体50の右側方及び後方の領域60c内に障害物が存在するか否かを検知する。本実施例では、3つの障害物検知センサ16a〜16cを設けることで、車体50の周囲の障害物を漏れなく検出することができる。障害物検知センサ16a〜16cは、後述する制御装置30に電気的に接続され、障害物検知センサ16a〜16cの検知結果が制御装置30(図2に図示)に入力されるようになっている。
【0018】
上述した障害物検知センサ16a〜16cには、例えば、SICK社製のLMS200や、北陽電機社製のUTM−30LX等を用いることができる。なお、障害物検知センサ16a〜16cには、上記のレーザ光を利用した距離計測センサに限られず、他の方式(例えば、超音波等)を利用したものを用いることもできる。
【0019】
図2に示すように、車両10は制御装置30を備えている。制御装置30には、入力部24と、モータ18と、操舵装置20と、上述した障害物検知センサ16a〜16cがそれぞれ接続されている。
【0020】
入力部24は、車体50に設置された運転者用シートの近傍に設置される。入力部24は、運転者が操作するジョイステック24aと、ジョイステック24aに接続された操作力検出装置24bを備えている。ジョイステック24aは、前後左右に傾けることができるように構成されている。運転者は、車両10を前方に走行させたいときはジョイステック24aを前方に傾け、車両10を後方に走行させたいときはジョイステック24aを後方に傾ける。また、車両10を右側に旋回させたいときはジョイステック24aを右側に傾け、車両10を左側に旋回させたいときはジョイステック24aを左側に傾ける。これによって運転者は、車両10を所望の位置に移動させることができる。
【0021】
操作力検出装置24bは、ジョイステックの操作方向(すなわち、前後方向及び左右方向)毎に、ジョイステック24aに入力された力の大きさを検知する。操作力検出装置24bで検出された力は、操作方向毎に電気信号に変換され、制御装置30に入力される。操作力検出装置24bには、公知の力センサを用いることができる。
【0022】
なお、入力部24は、上述した構成に限られず、種々の構成を採用することができる。例えば、本願出願人によって先に出願された特開2009−254220号公報に開示された構成を採ることができる。また、アクセルペダルとハンドルによって、車体の目標速度及び目標進行方向を入力するようにしてもよい。
【0023】
モータ18は、制御装置30と電気的に接続されている。モータ18は、制御装置30から入力される制御指令値にしたがって、前輪12a,12bを駆動する。モータ18には、エンコーダ19が設けられている。エンコーダ19は、制御装置30と電気的に接続されている。エンコーダ19は、モータ18の回転角速度(すなわち、前輪12a,12bの回転角速度)を検出する。エンコーダ19が検出した前輪12a,12bの回転角速度は、制御装置30に入力される。
【0024】
操舵装置20は、制御装置30と電気的に接続されている。操舵装置20は、制御装置30から入力される制御指令値にしたがって、後輪14の操舵角を変更する。操舵装置20には、操舵角検出装置22が設けられている。操舵角検出装置22は、制御装置30と電気的に接続されている。操舵角検出装置22は、後輪14の操舵角を検出する。操舵角検出装置22が検出した後輪14の操舵角は、制御装置30に入力される。
【0025】
制御装置30は、CPU,ROM,RAMを備えたコンピュータによって構成されている。制御装置30は、車体50に設置されている。制御装置30は、モータ18と、エンコーダ19と、障害物検知センサ16a〜16cと、操作力検出装置24bと、操舵装置20と、操舵角検出装置22に電気的に接続されている。図2に示すように、制御装置30は、その機能として、操作入力変換部32と、車体通過予測領域算出部34と、衝突判定部36と、駆動制御部38とを備えている。制御装置30に備えられる各部32,34,36,38の機能については、後で詳述する。
【0026】
次に、上述した車両10の制御装置30で行われる処理を、図3のフローチャートに従って説明する。制御装置30は、所定の制御周期毎に、図3に示すステップS10〜S36の処理を繰り返し実行する。これにより、車両10は路面を走行する。
【0027】
図3に示すように、制御装置30は、まず、操作力検出装置24bから、運転者がジョイステック24aに入力している操作力の大きさと方向を取得する(S10)。上述したように操作力検出装置24bは、ジョイステック24aの操作方向毎に、ジョイステック24aに入力される操作力を検知している。このため、制御装置30は、ジョイステック24aの操作方向毎に操作力を取得する。
【0028】
次に、制御装置30は、操作力検出装置24bから取得した情報に基づいて、入力部24に入力された操作力を変換して、入力された操作力に応じた車体50の目標速度及び目標進行方向を算出する(S12)。具体的な算出手順を、図4を参照して説明する。
【0029】
上述したように、制御装置30は、ジョイステック24aの操作方向毎に操作力を取得する。このため、制御装置30は、まず、取得した操作方向毎の操作力を合成し、その合力Fの大きさ|F|と方向θを算出する。ここで、合力Fの大きさが設定値Fmaxを超えるときは、合力Fの大きさをFmaxとする。一方、合力Fの大きさが設定値Fmax以下となるときは、合力Fの大きさは修正されない。これによって、ジョイステック24aに過大な操作力(Fmaxを超える操作力)が入力されても、車両10の速度が最大速度に制限される。
【0030】
次に、制御装置30は、合力Fの大きさと方向θから、車両10の直進方向(x方向)の目標速度vx(=|F|cosθ)と、直進方向に対して横方向(y方向)の目標速度vy(=|F|sinθ)を算出する(図5参照)。これによって、入力部24への入力に応じた車体50の目標速度及び目標進行方向が算出される。なお、本実施例では、直進方向目標速度vxと横方向目標速度vyによって目標速度及び目標進行方向を表したが、目標速度及び目標進行方向は他のパラメータで与えることができる。
【0031】
次に、制御装置30は、障害物検知センサ16a〜16cから検知結果を取得し(S16)、取得した検知結果から障害物を抽出する(S18)。既に説明したように、障害物検知センサ16a〜16cは、計測領域内に障害物が存在すると、その障害物からの反射光を検知する。例えば、図5に示すように、障害物検知センサ16の右斜め前方にのみ障害物52が存在する場合は、障害物検知センサ16は、障害物52が存在する方向からのみ反射光を検知し、それ以外の方向からは反射光を検知しない。したがって、制御装置30は、障害物検知センサ16の検知結果から、反射光を受光した方向が存在するか否かを判断することによって障害物を抽出する。
【0032】
次に、制御装置30は、ステップS18で抽出した障害物の位置と大きさを算出する(S18)。ステップS18の障害物の位置と大きさを算出する方法は、公知の方法を用いることができる。すなわち、図5に示すように、障害物52は連続する複数の検知点Bによって表される。各検知点Bについては、障害物検知センサ16からの距離と、その検知点Bを検知した時のレーザ光の照射方向が既知である。このため、制御装置30は、これらを用いて、各検知点Bの座標を算出することができる。
【0033】
次に、制御装置30は、時間t(変数)に0.1秒(s)を代入し(S20)、時間tが設定時間Tmaxを越えたか否かを判定する(S22)。後述するように、本実施例では、車体通過予測領域を0.1秒(s)刻みで計算して衝突判定を行うことで障害物と衝突するまでの時間を推定し、設定時間Tmaxが経過すると衝突判定処理を終了する。このため、ステップS22で時間tに0.1(s)を代入し、その時間tが設定時間Tmaxを越えたか否かを判定する。時間tが設定時間Tmaxを越えている場合(ステップS22でYES)は、ステップS36に進む。時間tが設定時間Tmaxを越えていない場合(ステップS22でNO)は、ステップS24に進む。
【0034】
ステップS24に進むと、制御装置30は、まず、ステップS12で算出した車体50の目標速度及び目標進行方向(すなわち、直進方向目標速度vx,横方向目標速度vy)に基づいて車体モデルを決定し(S24)、その車体モデルを用いて現在の位置から時間tが経過するまでに車体50が通過すると予測される車体通過予測領域を算出する(S26)。具体的な算出手順を、図6〜8を参照して説明する。
【0035】
制御装置30は、まず、ステップS12で算出した車体50の直進方向目標速度vx,横方向目標速度vyから、車体50の合成目標速度vと目標旋回速度ωと曲率半径ρを算出する(図6参照)。具体的には、車体50の直進方向目標速度vxと横方向目標速度vyから、まず、合成目標速度vと目標旋回速度ωを算出する(下記の式(1))。ここで、vxmaxは、車両10の直進方向の最高速度であり、例えば、1.0m/sとすることができる。vymaxは、車両10の旋回方向の最高速度であり、例えば、1.0rad/sとすることができる。次いで、算出した合成目標速度vと目標旋回速度ωから、曲率半径ρを算出する(下記の式(2))。なお、図6中、点O(0,0)は制御中心であり、前輪12a,12bと路面との接触点の中点に設定されている。
【0036】
【数1】
【0037】
【数2】
【0038】
合成目標速度vと目標旋回速度ωと曲率半径ρを算出すると、制御装置30は、まず、車体通過予測領域を算出するための車体モデルを決定する。車体モデルは、車体50を上方より平面視したときの外形状に基づいて作成することができる。ここで、障害物検知センサ16a〜16cの検知結果には計測誤差が含まれている。このため、車体50を上方より平面視した外形状そのものを車体モデルとすると、車体50と障害物とが衝突する可能性が生じる。そこで、本実施例では、図7に示すように、車体50の前後左右に所定のマージンを設定し、所定のマージンを含んだ形状を車体モデル70としている。(図7では、合成目標速度vが0で目標旋回速度ωが正となる場合の車体モデルにのみ符号を付している。)すなわち、車体50の前方に前方マージンdfが設定され、車体50の後方に後方マージンdbが設定され、車体50の右側方に右側方マージンdrが設定され、車体50の左側方に左側方マージンdlが設定される。そして、車体50の外形状に、これらのマージンdf,db,dr,dlを加えて車体モデル70を作成している。なお、車体モデル70のマージンdf,db,dr,dlは、障害物検知センサ16a〜16cの計測誤差に基づいて適宜設定することができる。
【0039】
ここで、上記のマージンdf,db,dr,dlを大きくすると、障害物との衝突をより確実に防止することができる。しかしながら、上記のマージンdf,db,dr,dlを大きくし過ぎると、障害物と衝突すると判定され過ぎることとなり、車両10の運動が制限され過ぎることとなる。一方、上記のマージンdf,db,dr,dlが小さいと、車両10の運動は制限され難くなるが、障害物との衝突を防止することができない。そこで、障害物との衝突を防止しながら、上記のマージンdf,db,dr,dlを小さくする必要がある。
【0040】
そこで、本実施例では、制御装置30は、直進方向目標速度vxと横方向目標速度vyから算出される合成目標速度vと目標旋回速度ωに基づいて、車体モデル70の外形状を変化させる。すなわち、図7に示すように、合成目標速度vが正となる場合(すなわち、車体50が前進する場合)は、車体モデル70の前方マージンdfが後方マージンdbより大きくされる(本実施例では、後方マージンdbが0となる)。また、合成目標速度vが負の場合(すなわち、車体50が後進する場合)は、車体モデル70の後方マージンdbが前方マージンdfより大きくされる(本実施例では、前方マージンdfが0となる)。このようにマージンを設定することで、車体50の進行方向と関係のない方向のマージンが小さくされ、障害物と衝突すると判定され過ぎることを防止することができる。
【0041】
さらに、本実施例では、目標旋回速度ωが正となる場合(すなわち、車体50が左旋回(平面視したときに反時計回りとなる方向に旋回する場合)は、車体モデル70の左側方マージンdlは、車体50の前方側が車体50の後方側よりも大きくされる一方、車体モデル70の右側方マージンdrは、車体50の後方側が車体50の前方側よりも大きくされる。逆に、目標旋回速度ωが負となる場合(すなわち、車体50が右旋回(平面視したときに時計回りとなる方向に旋回する場合)は、車体モデル70の右側方マージンdrは、車体50の前方側が車体50の後方側よりも大きくされる一方、車体モデル70の左側方マージンdlは、車体50の後方側が車体50の前方側よりも大きくされる。すなわち、車両10の内輪差及び外輪差が考慮され、車体モデル70のマージンdr,dlが適切に小さくされる。
【0042】
上記のように車体モデル70を決定すると、制御装置30は、車体モデル70の4つの角部の頂点a,b,c,dの軌跡を求める(図8参照)。このためには、まず、現在の車体モデル70の角部の頂点a,b,c,dの座標と、時間tだけ経過した後の車体モデル70’の角部の頂点a’,b’,c’,d’の座標を算出する。ここで、頂点a,b,c,dの座標と、頂点a’,b’,c’,d’の座標は、車体50内に設定した制御中心O(0,0)を基準に算出することができる。現在の車体モデル70の角部の頂点a,b,c,dの座標は、制御中心O(0,0)と頂点a,b,c,dの幾何学的関係によって既知である。一方、時間tだけ経過した後の頂点a’,b’,c’,d’の座標は、制御中心O(0,0)と頂点a,b,c,dの幾何学的関係と、旋回速度ωと、曲率半径ρとを用いて算出することができる。
【0043】
頂点a,b,c,dの座標と頂点a’,b’,c’,d’の座標を算出することで、図8に示すように、現在の車体モデル70の位置と、時間tだけ経過した時の車体モデル70の位置を算出することができる。また、頂点aから頂点a’に移動する際の軌跡と、頂点bから頂点b’に移動する際の軌跡と,頂点cから頂点c’に移動する際の軌跡と,頂点dから頂点d’に移動する際の軌跡が分かる。したがって、これらの軌跡より車体モデル70が通過すると予測される車体通過予測領域を算出する。
【0044】
次に、制御装置30は、ステップS26で算出した車体通過予測領域と、ステップS18で算出した障害物の位置とから、車体50と障害物とが衝突するか否かを判定する(S28)。すなわち、ステップS26で算出した車体通過予測領域内に、ステップS18で算出した障害物が存在しているか否かによって、車体50と障害物とが衝突するか否かを判定する。例えば、図9に示すように、車体通過予測領域内に障害物が存在しない場合は、車体50と障害物とが衝突しないと判定する。また、図10に示すように、車体通過予測領域内に障害物が存在している場合は、車体50と障害物とが衝突すると判定する。
【0045】
車体50と障害物とが衝突しないと判定した場合(ステップS30でNO)は、制御装置30は、時間t(変数)に0.1秒(s)を加算して新たな時間t(変数)とし(S34)、ステップS22に戻って、ステップS22からの処理を繰り返す。これによって、車体50と障害物が衝突すると判定されない限り、時間tが設定時間Tmaxを越えるまでステップS24〜S30の処理が繰り返される。
【0046】
一方、車体50と障害物とが衝突すると判定された場合(ステップS30でYES)は、制御装置30は、ステップS12で算出した目標速度(直進方向目標速度vx,横方向目標速度vy)を修正し(S32)、ステップS36に進む。具体的には、制御装置30は、入力部24への入力から決定される車体50の軌道を変えることなく、車体50の速度のみを減速する。このように修正すると、車両10の速度は減速するものの運転者の意図した方向に車両10は移動するため、運転者に与える違和感を緩和することができる。このような速度修正は、例えば、下記の式を用いて算出することができる。
【0047】
【数3】
【0048】
なお、上記の式では、合成目標速度vと目標旋回速度ωを用いている。また、変数tは、ステップS20で初期値が与えられ、ステップS34で更新された時間である。すなわち、車体50が障害物と衝突するまでの時間である。また、Tmaxは、ステップS22の設定時間である。上記の式から明らかなように、衝突するまでの時間に応じて徐々に目標速度をゼロに近づける。これによって、障害物との衝突を回避しながら、目標速度が突然ゼロに修正させることを防止し、運転者に違和感を与えることを緩和している。
【0049】
ステップS36に進むと、制御装置30は、ステップS12で算出された目標速度又はステップS32で修正された目標速度で車両10が移動するように、モータ18及び操舵装置20を駆動する(ステップS34)。すなわち、車体50と障害物が衝突しないと判定した場合は、制御装置30は、ステップS12で算出された目標速度、すなわち、入力部24に入力された運転者の操作に応じて車両10を駆動する。一方、車体50と障害物が衝突すると判定した場合は、制御装置30は、ステップS32で修正された目標速度に応じて車両10を駆動する。その結果、車両10の速度が減速され、運転者は容易に障害物を回避することができる。
【0050】
上述した説明から明らかなように、本実施例の車両10では、運転者の入力した操作力から算出される目標速度(v,ω)に応じて車体モデルを選択し、その選択した車体モデルを用いて車体通過予測領域を算出する。このため、障害物検知センサ16a〜16cの計測誤差を考慮しながら、車体通過予測領域が大きくなり過ぎることが防止される。このため、車体50と障害物との衝突を回避しながら、車両10の運動が必要以上に制限されることを防止することができる。その結果、従来の技術では走行できなかった狭い通路や、障害物の近傍を、車両10は走行することができる。
【0051】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
【0052】
例えば、上述した実施例では、平面視したときの外形状が矩形状となる車両であったが、本発明は、このような形態に限られない。例えば、図11に示すように、平面視したときの外形状が三角形となる車両であってもよい。このような車両においても、図11に示すように、車体の周囲にマージンdを設定した車体モデル(平面視三角形状)を作成し、その車体モデルを車両の合成目標速度v及び目標旋回速度ωに応じて変化させてもよい。さらには、図12に示すように、平面視したときの外形状が円形となる車両であってもよい。このような車両においても、図12に示すように、車体の周囲にマージンdを設定した車体モデル(平面視楕円形状)を作成し、その車体モデルを車両の合成目標速度v及び目標旋回速度ωに応じて変化させてもよい。なお、図11,12においては、色の濃い部分が車体の外形状(平面視)であり、色の薄い部分が車体モデルの外形状(平面視)である。
【0053】
また、上述した実施例では、運転者が乗車して運転を行う車両であったが、本発明は自律移動型の車両とすることもできる。また、上述した実施例では、前輪12a,12bを駆動輪とし、後輪14を操舵輪としていたが、本発明はこのような形態に限られない。例えば、左右前輪(又は左右後輪)を独立して駆動される駆動輪とし、後輪(又は前輪)をキャスタ輪としてもよい。このような構成を採る場合、左右の駆動輪の回転数の差によって車両の進行方向を変更することができる。
【0054】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0055】
10:車両
12a,12b:前輪
14:後輪
16a〜16c:障害物検知センサ
18:モータ
24:入力部
24a:ジョイステック
24b:操作力検出装置
30:制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の目標速度及び目標進行方向を入力する入力部と、
障害物を検知する障害物検知部と、
入力部へ入力された目標速度及び目標進行方向で車体が所定時間だけ移動するときに車体が通過すると予測される車体通過予測領域を算出する車体通過予測領域算出部と、
車体通過予測領域算出部で算出された車体通過予測領域と障害物検知部で検出された障害物の位置とから、車体と障害物とが衝突するか否かを判定する判定部と、
判定部で車体と障害物とが衝突しないと判定されるときは、入力部への入力に応じた目標速度及び目標進行方向に基づいて車体の速度及び進行方向を制御する一方、車体と障害物とが衝突すると判定されるときは、入力部への入力に応じた目標速度及び目標進行方向の少なくとも一方を修正すると共に、その修正した目標速度及び目標進行方向に基づいて車体の速度及び進行方向を制御する制御部と、を備えており、
前記車体通過予測領域算出部は、予め設定された車体モデルに基づいて車体通過予測領域を算出し、その車体モデルが入力部への入力に応じて変化することを特徴とする衝突防止機能付き車両。
【請求項2】
前記車体モデルは、車体の前方に設定された前方マージンと、車体の後方に設定された後方マージンを有しており、
入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が前進する場合は、前記車体モデルの前方マージンが後方マージンより大きくされ、
入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が後進する場合は、前記車体モデルの後方マージンが前方マージンより大きくされることを特徴とする請求項1に記載の衝突防止機能付き車両。
【請求項3】
前記車体モデルは、車体の右側方に設定された右側方マージンと、車体の左側方に設定された左側方マージンを有しており、
車体を上方より平面視したときに入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が反時計回りに旋回する場合は、前記車体モデルの左側方マージンは、車体の前方側が車体の後方側よりも大きくされる一方、前記車体モデルの右側方マージンは、車体の後方側が車体の前方側よりも大きくされ、
車体を上方より平面視したときに入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が時計回りに旋回する場合は、前記車体モデルの右側方マージンは、車体の前方側が車体の後方側よりも大きくされる一方、前記車体モデルの左側方マージンは、車体の後方側が車体の前方側よりも大きくされることを特徴とする請求項1又は2に記載の衝突防止機能付き車両。
【請求項4】
制御部は、判定部によって車体と障害物とが衝突すると判定されるときは、入力部への入力に応じた目標速度及び目標進行方向から決定される車体の軌道を変えることなく、車体の速度を減速することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の衝突防止機能付き車両。
【請求項1】
車体の目標速度及び目標進行方向を入力する入力部と、
障害物を検知する障害物検知部と、
入力部へ入力された目標速度及び目標進行方向で車体が所定時間だけ移動するときに車体が通過すると予測される車体通過予測領域を算出する車体通過予測領域算出部と、
車体通過予測領域算出部で算出された車体通過予測領域と障害物検知部で検出された障害物の位置とから、車体と障害物とが衝突するか否かを判定する判定部と、
判定部で車体と障害物とが衝突しないと判定されるときは、入力部への入力に応じた目標速度及び目標進行方向に基づいて車体の速度及び進行方向を制御する一方、車体と障害物とが衝突すると判定されるときは、入力部への入力に応じた目標速度及び目標進行方向の少なくとも一方を修正すると共に、その修正した目標速度及び目標進行方向に基づいて車体の速度及び進行方向を制御する制御部と、を備えており、
前記車体通過予測領域算出部は、予め設定された車体モデルに基づいて車体通過予測領域を算出し、その車体モデルが入力部への入力に応じて変化することを特徴とする衝突防止機能付き車両。
【請求項2】
前記車体モデルは、車体の前方に設定された前方マージンと、車体の後方に設定された後方マージンを有しており、
入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が前進する場合は、前記車体モデルの前方マージンが後方マージンより大きくされ、
入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が後進する場合は、前記車体モデルの後方マージンが前方マージンより大きくされることを特徴とする請求項1に記載の衝突防止機能付き車両。
【請求項3】
前記車体モデルは、車体の右側方に設定された右側方マージンと、車体の左側方に設定された左側方マージンを有しており、
車体を上方より平面視したときに入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が反時計回りに旋回する場合は、前記車体モデルの左側方マージンは、車体の前方側が車体の後方側よりも大きくされる一方、前記車体モデルの右側方マージンは、車体の後方側が車体の前方側よりも大きくされ、
車体を上方より平面視したときに入力部に入力された車体の目標速度及び目標進行方向によって車体が時計回りに旋回する場合は、前記車体モデルの右側方マージンは、車体の前方側が車体の後方側よりも大きくされる一方、前記車体モデルの左側方マージンは、車体の後方側が車体の前方側よりも大きくされることを特徴とする請求項1又は2に記載の衝突防止機能付き車両。
【請求項4】
制御部は、判定部によって車体と障害物とが衝突すると判定されるときは、入力部への入力に応じた目標速度及び目標進行方向から決定される車体の軌道を変えることなく、車体の速度を減速することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の衝突防止機能付き車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−226613(P2012−226613A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94394(P2011−94394)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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