説明

衣料用液体洗浄剤組成物

【課題】被洗物への再汚染防止効果に優れるとともに、経時安定性にも優れた液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)ノニオン界面活性剤5〜60質量%、および(B)フミコーラ・インソレンス株由来、分子量45〜50Kda、かつ等電点5.0〜6.0であるエンドグルカナーゼを含有することを特徴とする衣料用液体洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣料用液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯においては、洗浄の際に、被洗物の繊維からいったん離脱して洗濯液に分散した汚れの一部が、再び繊維に沈着することにより洗浄効果を下げる、いわゆる「再汚染」の問題がある。
【0003】
近年、家庭用の洗濯機においては、環境対応への意識の高まりの観点から、また、デザイン性の点から、節水型のドラム式洗濯機が普及してきている。
このことから、一般家庭でのドラム式洗濯機を用いた洗濯では、浴比(被洗物の量に対する洗濯液の量の割合)の低下が引き起こされ、洗濯液中の汚れが高濃度化することによって汚れの繊維への再汚染が顕在化してきている。特に綿繊維の再汚染が起きやすいことが明らかになってきた。
一方、洗浄剤の分野でも、環境への負荷を軽減する方法として、界面活性剤の使用量を低減することが求められるようになってきている。ドラム式洗濯機を用いた洗濯において、界面活性剤の使用量を低減した場合、従来の縦型洗濯機を用いた洗濯に比べて、洗浄効果の低下や再汚染の問題が懸念される。
特にノニオン界面活性剤を洗浄主成分とする液体洗浄剤においては、被洗布表面の負電荷が弱いためカーボン汚れなどの再汚染防止効果が不充分になりやすい。またカルボキシメチルセルロース等の汎用の再汚染防止剤を安定的に配合することは難しく、再汚染防止効果の向上は大きな課題であった。
【0004】
特許文献1、2、3には、セルラーゼを液体洗浄剤組成物に含有させた例が開示されている。また特許文献1には特定の変異アルカリセルラーゼを配合した液体洗浄剤組成物が再汚染防止効果に優れることが記載されている。
【特許文献1】特開2003−313593号公報
【特許文献2】特表平8−511824号公報
【特許文献3】特開平11−152494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、通常液体洗剤では洗濯で標準使用量を入れた場合、洗濯液のpHは中性付近になってしまう。そこで中性領域下で高い再汚染防止性能が期待できるセルラーゼが必要であった。またセルラーゼを液体洗浄剤中に配合すると、保存中に活性が低下する場合があり、経時安定性が問題となる。
本発明は前記事情を鑑みてなされたもので、被洗物への再汚染防止効果に優れるとともに、経時安定性にも優れた衣料用液体洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物(以下、液体洗浄剤組成物ということもある。)は(A)ノニオン界面活性剤5〜60質量%、および(B)フミコーラ・インソレンス株由来、分子量45〜50kDa、かつ等電点5.0〜6.0であるエンドグルカナーゼを含有することを特徴とする。
さらに(C)アニオン界面活性剤1〜30質量%を含むことが好ましい。
さらに(D)プロテアーゼを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液体洗浄剤組成物は、被洗物への再汚染防止効果に優れるとともに、酵素活性の経時安定性に優れており、保存後も良好な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
<(A)ノニオン界面活性剤>
本発明における(A)ノニオン界面活性剤((A)成分ということもある。)は、その種類は特に制限されず、一般の洗浄剤組成物に常用されるノニオン界面活性剤のいずれも好適に使用することができる。
これらの中でも、特に下記化合物(I)、(II)、または(III)がより好ましい。
【0009】
[化合物(I):一般式(I)で表わされる化合物]
R’−X−[(EO)(PO)]−H …(I)
但し、式(I)中、R’は炭素数8〜20、好ましくは10〜16の疎水基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよく、また、不飽和結合を有していてもよい。
該疎水基としては、例えば高級アルコール、高級脂肪酸、高級アミン、高級脂肪酸アミド等を原料とするものが挙げられ、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。これらは直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。
【0010】
−X−は、−O−、−COO−、−CONH−などの官能基を表わす。
EOはエチレンオキサイド、mはEOの平均付加モル数を表す。mは3〜30、好ましくは5〜25、より好ましくは10〜20である。
POはプロピレンオキサイド、nはPOの平均付加モル数を示す。nは0〜10が好ましく、0〜5が特に好ましい。EO、POの付加モル数分布は、(A)ノニオン界面活性剤を製造する際の反応方法により異なるが、一般的な水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ触媒を用いて酸化エチレンや酸化プロピレンを疎水基原料に付加させて得られる、分布の比較的広いものでもよい。または、特公平6−15038号公報に記載のAl3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Co3+、Sc3+、La3+、Mn2+等の金属イオンを添加した酸化マグネシウム等の、特定のアルコキシル化触媒を用いて酸化エチレンや酸化プロピレンを疎水基原料に付加させて得られる、分布の狭いものでもよい。
式(I)中のmが30を超えると、衣類への洗浄液の浸透性が劣る場合があり、mが3未満の組成物は経時安定性が劣る場合がある。また、これらは、随意に1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0011】
化合物(I)の具体例としては、例えば、Conol(炭素数12:新日本理化(株)製)等の天然アルコールに15モル相当の酸化エチレンを付加したもの、ブテンを3量化して得られるC12アルケンをオキソ法に供して得られるC13アルコール1モルに10モル相当の酸化エチレンを付加したもの(BASF社製、LutensolTO10)、ヘキセンをガーベット反応に供して得られるC12アルコール1モルに10モル相当の酸化エチレンを付加したもの(Sasol社製、ISOFOL12−10EO)、炭素数12〜14の第2級アルコールに9モル相当の酸化エチレンを付加したもの(日本触媒(株)製、ソフタノール90)、ラウリン酸メチルにアルコキシル化触媒を用いて15モル相当の酸化エチレンと3モル相当の酸化プロピレンを付加したもの、ラウリルアミンに9モル相当の酸化エチレンを付加したもの、CO−1214(炭素数12、14:P&G(株)製)、ECOROL(炭素数12、14:EcogreenOleochmicals(株)製)等の天然アルコールに15モル相当の酸化エチレンを付加したものなどが挙げられる。また石炭を出発原料とし、Fischer−Tropsch法により得た混合オレフィンを分留することにより得られる所定のアルキル鎖長、分岐率をもつものを用いることができる。工業的に製造され販売が行なわれている原料アルコールとしては、サソール社製のSafol23アルコール(商品名)があり、炭素数が12〜14であり、30質量%以上が分岐しており、かつこの分岐が中間鎖分岐であり、かつこの分岐が中間鎖分岐であるアルキル基及び/又はアルケニル基を有するものである。ここで、「中間鎖分岐」とは、アルキル基又はアルケニル基(以下、まとめて「アルキル基等」という)において、最も炭素数が多い鎖(主鎖)の両端部の炭素原子、並びに2位の炭素原子以外に分岐鎖(アルキル基等)が結合していることを示す。すなわち、結合手が伸びる末端炭素原子、並びに「2位」、すなわち結合手がのびる末端炭素原子に隣接する2番目の炭素原子と、結合手を有しない末端炭素原子に隣接する2番目の炭素原子には分岐鎖が結合していないことを示す。「30質量%以上が分岐している」とは、アルキル基等の全質量に対し、分岐鎖を構成するアルキル基等(主鎖を構成しないアルキル基等)の質量の割合(以下、「分岐率」ということがある)が、30質量%以上であることを示す。なお、アルキル基等において、分岐率や、中間鎖分岐が存在することの確認はGC(ガスクロマトグラフィ)を用い、標準品と比較することにより行うことができる。これらの中では、炭素数12、14の天然アルコールに15モル相当の酸化エチレンを付加したものが特に好ましい。
【0012】
[化合物(II):一般式(II)で表わされる化合物]
以下の一般式(II)で表されるノニオン界面活性剤も好ましい。
【0013】
【化1】

【0014】
式(II)において、Rは炭素数5〜21のアルキル基またはアルケニル基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表わす。nはORの平均付加モル数を示し、5〜30の数である。
化合物(II)の製造方法としては、特に制限されるものではないが、たとえば表面改質された複合金属酸化物触媒を用いて、脂肪酸アルキルエステルに酸化エチレンを付加重合させる方法(特開2000−144179号公報参照)により容易に製造することができる。
かかる表面改質された複合金属酸化物触媒の好適なものとしては、具体的には、金属水酸化物等により表面改質された、金属イオン(Al3+、Ga3+、In3+、Tl3+、Co3+、Sc3+、La3+、Mn3+等)が添加された酸化マグネシウム等の複合金属酸化物触媒や、金属水酸化物および/または金属アルコキシド等により表面改質されたハイドロタルサイトの焼成物触媒等である。
また、前記複合金属酸化物触媒の表面改質においては、複合金属酸化物と、金属水酸化物および/または金属アルコキシドとの混合割合を、複合金属酸化物100質量部に対して、金属水酸化物および/または金属アルコキシドの割合を0.5〜10質量部とすることが好ましく、1〜5質量部とすることがより好ましい。
【0015】
[化合物(III):一般式(III)で表わされる化合物]
以下の式(III)で表されるノニオン界面活性剤も好ましい。
−O(EO)(PO)(EO)H …(III)
式中、Rは炭素数8〜20の直鎖のアルキル基又はアルケニル基を示し、EOはオキシエチレン基を示し、POはオキシプロピレン基を示し、p、q及びrはそれぞれ平均付加モル数を示し、p>0、q>0及びr≧0である。
【0016】
アルコールに、エチレンオキサイドを付加させる方法で化合物(I)または(III)を製造する場合、反応生成物においては、質量平均分子量200〜20000程度のポリエチレングリコールが、目的の化合物100質量%に対して0.01〜2質量%程度副生するのが一般的である。本発明の液体洗浄剤組成物は、この様な副生物を含有してもよい。
【0017】
(A)成分を用いることにより良好な洗浄力が得られる。(A)成分は、1種単独で、又は2種以上混合して用いることができる。(A)成分の含有量は、液体洗浄剤組成物中、5〜60質量%であり、10〜50質量%が好ましく、15〜50質量%がより好ましい。
(A)成分の含有量が5質量%未満であると組成物中における(B)成分の安定性が損なわれやすく、再汚染防止効果が低下する。(A)成分が50質量%を超えると液外観が悪化しやすい。
【0018】
<(B)エンドグルカナーゼ>
本発明の液体洗浄剤組成物は、(B)フミコーラ・インソレンス株由来かつ分子量45〜50Kdaであって、等電点5.0〜6.0であるエンドグルカナーゼ((B)成分ということもある。)を含有する。
本発明において、(B)エンドグルカナーゼの分子量(単位:kDa)はゲル濃度12.5Totalアクリルアミド%(質量/体積)のプレキャストゲル(アトー社)とBenchiMark Proteim Ladder(インビトロジェン社)を用いSDS−PAGE法により得られる値である。
該(B)成分は、セルラーゼ酵素の中でも、セルロース結合ドメイン(CBD)を有しないものである。これを含有させることによって再汚染防止効果が得られる。そのメカニズムは以下のように推測される。すなわち、(B)成分はCBDを有しないため、繊維表面のセルロース部位に結合することなく、繊維内部のアモルファス部分に吸着している汚れを取り除く効果があると考えられる。再汚染とは、一度洗濯液中に出た汚れが再度付着することから、衣類の奥に汚れがしみこんでしまっていると予測される。従って(B)成分はセルラーゼの中でも再汚染により効果的に働くと推定される。
【0019】
(B)成分は市販品から入手可能であり、例えばエンドラーゼ5000L(商品名、ノボザイム社製品)があげられる。
本発明の液体洗浄剤組成物における(B)成分の含有量は、好ましくは0.01〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜3質量%であり、さらに好ましくは0.2〜3質量%である。
(B)成分の含有量が0.01質量%以上であると(B)成分の添加効果が得られやすい。3質量%以下であると充分な洗浄力が得られやすい。また、経済的にも有利となる。
【0020】
<(C)アニオン界面活性剤>
本発明の液体洗浄組成物に(C)アニオン界面活性剤((C)成分ということもある。)を含有させることが好ましい。(C)成分を配合することにより、良好な洗浄力および再汚染防止効果が得られやすい。
本発明の液体洗浄剤組成物における(C)成分の含有量は、好ましくは1〜30質量%であり、より好ましくは2.5〜20質量%であり、さらに好ましくは10〜20質量%である。(C)成分が1質量%以上20%以下であると良好な再汚染防止能が示される。
【0021】
(C)成分としては、特に制限されるものでなく、例えば直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)、二級アルカンスルホン酸塩(SAS)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(AES)、α−オレフィンスルホン酸塩(AOS)、高級脂肪酸塩等が挙げられる。
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(AES)のなかでも、特にポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を構成する全エチレンオキサイド付加体中に質量基準で最も多く存在するエチレンオキサイド付加体のエチレンオキサイドの付加モル数を「nlmax」とした際、エチレンオキサイドの付加モル数が(nlmax−1)とnlmaxと(nlmax+1)のエチレンオキサイド付加体の合計の、全エチレンオキサイド付加体に対する割合(以下、「nlmax−1〜+1/全体の割合」ということもある。)が55質量%以上であるもの(NRES)が好ましく、55〜80%質量%の範囲であるものがより好ましい。前記範囲であると、流動性がよく、製造性がよくなる。
【0022】
具体的には、炭素数8〜16のアルキル基を有する直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS);炭素数10〜20のアルキル基を有するアルキル硫酸塩(AS);炭素数10〜20のアルキル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数1〜10のポリオキシエチレンアルキルエ−テル硫酸塩(AES);炭素数10〜20のアルキル基を有するα−オレフィンスルホン酸塩(AOS);炭素数10〜20のアルキル基を有する二級アルカンスルホン酸塩(SAS);炭素数10〜20のアルキル基を有するα−スルホ脂肪酸メチルエステル塩(α−SF);炭素数10〜20のアルキル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数1〜10のポリオキシエチレンアルキルエ−テルカルボン酸塩などが好ましく挙げられる。上記の塩は、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、モノエタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミン等のアルカノ−ルアミン塩を示す。
また高級脂肪酸塩としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の単一脂肪酸の他、ヤシ油脂肪酸、牛脂肪酸等の混合脂肪酸のナトリウム、カリウム等の無機塩基性塩;アンモニウム塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、2−アミノ−2−メチルプロパノールや2−アミノ−2−メチルプロパンジオール等のアルカノールアミン塩;リジン、アルギニン等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく挙げられる。高級脂肪酸塩は必ずしも脂肪酸塩として本発明洗浄剤組成物に配合する必要はなく、上記の高級脂肪酸と塩基とをそれぞれ別個に添加し、組成物中で脂肪酸塩を形成せしめてもよい。
【0023】
(C)成分は1種でもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
上記の中でも直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)が好ましい。直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩におけるアルキル基の炭素数は8〜16が好ましく、10〜14がより好ましい。また抑泡の面から、ヤシ脂肪酸を入れるのが好ましい。
【0024】
<(D)プロテアーゼ>
本発明の液体洗浄組成物に(D)プロテアーゼ((D)成分ということもある。)を含有させることが好ましい。(D)成分を配合することにより、良好な洗浄力および再汚染防止効果が得られやすい。
本発明の液体洗浄剤組成物における(D)成分の含有量は、好ましくは0.01〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜3質量%であり、さらに好ましくは0.2〜3質量%である。
【0025】
(D)成分は市販品から入手可能である。具体例としては、エバラーゼ16L Type EX、サビナーゼ10LCC、サビナーゼ16L Type EX、サビナーゼUltra 16L、サビナーゼUltra EX、アルカラーゼ2.5L DX、リカナーゼ2.5L、ニュートラーゼ0.8L、フレーバザイム1000L(以上すべてノボザイム社製品)、プロペラーゼ1600L、ピュラフェクト4000L、ピュラフェクト MA 500L、ピュラフェクト Prime 4000L、ピュラフェクト OX 4000L(以上すべてジェネンコア社製品)、MED−UM、MED−01(以上株式会社日本触媒製品)が挙げられる。
これらの中で、再汚染防止の点からエバラーゼ16L Type EX(商品名/ノボザイム社製品)が特に好ましい。
【0026】
<その他の成分>
本発明の液体洗浄組成物に、上記成分のほかに、ソイルリリースポリマー、粘度低下剤(エタノール、イソプロピルグリコール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類)、安定化剤(安息香酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、多価アルコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル等)、シリコーン等の風合い向上剤、防腐剤、ハイドロトロープ剤、蛍光剤、移染防止剤、パール剤、酸化防止剤、着色剤として汎用の色素や顔料、着香剤及び乳濁化剤等の添加剤、並びに水及びアルコール等の溶媒、酵素(セルラーゼ(エンドラーゼ以外のセルラーゼ)、アミラーゼ、リパーゼ、マンナナーゼ)等を配合することができるが、これらに限定されない。また、これら成分の種類の選択及び配合量については、本発明の目的を妨げない限度において、任意に選択することが可能である。
【0027】
<pH>
本発明の液体洗浄組成物の25℃におけるpHは、好ましくは6.0〜9.0であり、より好ましくは6.5〜8.5であり、特に好ましくは7.0〜8.0である。
上記範囲内のpHであると、組成物中における酵素の安定性が得られやすい。
必要に応じて液体洗浄組成物にpH調整剤を添加することができる。pH調整剤としては硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカノールアミン等が好ましい。
【0028】
<製造方法・使用方法>
本発明の液体洗浄剤組成物は、公知の常法に基づいて製造することができる。
使用方法は、通常の使用方法、すなわち本発明の液体洗浄剤組成物(本発明品)を、洗濯時に洗濯物と一緒に水に投入する方法、泥汚れや皮脂汚れに本発明品を直接塗布する方法、本発明品を予め水に溶かして衣類を浸漬する方法等が挙げられる。また、本発明品を洗濯物に塗布後、適宜放置し、その後、通常の洗濯液を用いて通常の洗濯を行う方法も好ましい。
使用量については、たとえば従来の液体洗浄剤組成物は、標準使用量として液体洗浄剤組成物20mLを30Lの水道水に投入して洗浄する方法が一般的である。本発明品も同様の方法を用いることができるが、これに限られない。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0030】
<液体洗浄剤組成物の製造>
表1、2に示す組成の液体洗浄剤組成物を、常法に準じて、以下のように製造した。
まず、2cmの撹拌子の入った円筒ガラス瓶(直径50mm、高さ100mm)に、(A)成分を入れた。次に、(C)成分と任意成分との混合溶液を入れて、400rpmで撹拌子を撹拌させた。その後、全体量(全体量を100質量部とする。)が95質量部になるように精製水を入れ、撹拌混合した後、pHを調整した。次いで、(B)成分を入れて撹拌混合したのち、全体量が100質量%になるように精製水を加えて液体洗浄剤組成物を製造した。
pHの調整は、液体洗浄剤組成物の25℃で任意のpHとなるように、pH調整剤(硫酸またはモノエタノールアミン)を適量添加することにより行った。
なお、表中の配合量の単位は質量%であり、純分換算量を示す。
【0031】
以下、表中に示した成分について説明する。
a−1:ラウリルアルコールとミリスチルアルコールの混合アルコール1モル当たり平均15モルの酸化エチレンを付加させたアルコールエトキシレート、商品名:LMAO、ライオンケミカル社製。
a−2:ラウリルアルコールとミリスチルアルコールの混合アルコール1モル当たり平均12モルの酸化エチレンを付加させたアルコールエトキシレート、商品名:LMAL、ライオンケミカル社製。
a−3:ポリオキシエチレンC12−13アルキルエ−テル。平均EO鎖長15モル、原料アルコ−ルはサフォ−ル23(製品名、サソ−ル社製、C12/13=55%/45%、直鎖率50%)。商品名:SLAO、ライオンケミカル社製。
なお、「直鎖率」とは、全高級アルコールに対する、直鎖状の高級アルコールの割合(質量%)を示す。
a−4:C12〜14の2級アルコール1モル当たり平均7モルの酸化エチレンを付加させたアルコールエトキシレート、商品名:ソフタール70、日本触媒社製。
a−5:C12〜14の直鎖第一級アルコールに対して平均15モルの酸化エチレン、および平均3モルの酸化プロピレンを付加させたもの。商品名:LMAEP−15030、ライオンケミカル社製。
【0032】
b−1:エンドラーゼ5000L(商品名、ノボザイムズ社製)。フミコーラ・インソレンス株由来、分子量50kDa、等電5.1のエンドグルカナーゼ。
b−2(比較例):ケアザイム(商品名、ノボザイムズ社製)。フミコーラ・インソレンス株由来、分子量43kDa、等電点5.0のエンドグルカナーゼ。
b−3(比較例):セルクリーン(商品名、ノボザイムズ社製)。Bacillus sp.株由来、分子量80kDa、等電点3.7のエンドグルカナーゼ。
【0033】
c−1:LAS、直鎖アルキル(炭素数10〜14)ベンゼンスルホン酸、ライオン社製、商品名:ライポンLHシリーズ、平均分子量322。
c−2:SAS、セカンダリーアルカンスルホン酸Na、クラリアント・ジャパン社製、商品名:SAS30。
c−3:AES、炭素数C12〜13ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(エチレンオキサイドの平均付加モル数2)、合成品(原料アルコールは商品名:ネオドール23、シェル社製)。
c−4:ヤシ脂肪酸、商品名:椰子脂肪酸、日本油脂製。
【0034】
d−1:エバラーゼ16L Type EX(商品名、ノボザイムズ社製)。
(任意成分)
SR剤(1):アルキレンテレフタレート単位及び/またはアルキレンイソフタレート単位とポリオキシアルキレン単位を有する高分子化合物(クラリアント社製 純度70%)、商品名:SRN−170、クラリアントジャパン社製。
PEG(2):ポリエチレングリコ−ル、商品名:PEG#1000、ライオン化学社製、濃度(AI)=60質量%。
MEA(3):モノエタノールアミン、三井化学製。
クエン酸3Na・2HO(4):クエン酸3ナトリウム2水塩、扶桑化学工業(株)製;濃度(AI)=100質量%。
エタノール(5):商品名:95vol%合成エタノール、NEDO製。
安息香酸Na(6):商品名:安息香酸ナトリウム、伏見製薬社製。
硫酸(7):東邦亜鉛(株)製。
精製水(8):イオン交換水使用。
【0035】
<再汚染評価方法>
以下の方法で再汚染防止効果を評価した。
1)評価布の調製(前処理)
二槽式洗濯機(製品名:CW−C30A1−H、三菱電機製;以下同様)を用いて、B.V.D肌シャツ(株式会社フジボウアパレル)1kgを、ノニオン界面活性剤の20質量%水溶液(洗剤の標準使用濃度)にて、40〜50℃の水道水で2回繰り返し洗濯を行った後、常温の水道水で充分すすぎ、室温で乾燥して評価布を調製した。
なお、上記の前処理は、浴比30倍、洗濯条件:洗濯10分間およびその後の注水すすぎ10分間の2回繰り返し、ノニオン界面活性剤として前記LMAOを用いて行った。
【0036】
2)再汚染度の評価
[使用試験の方法]
各例の液体洗浄剤組成物を容器(容量1000mLのポリエチレン容器)に収容した評価用の洗剤と、前記評価布とを、各家庭に渡し、通常の洗濯の際に評価布を一緒に洗濯していただき、当該評価布を20回繰り返して洗濯した時点で回収する使用試験を行った。
かかる使用試験は、評価用の洗剤1サンプルにつき20の家庭(たとえば洗剤4サンプルならば80の家庭)で行った。
また、洗濯の際、洗濯機のタイプとしてドラム式洗濯機を用いること、柔軟剤製品(その種類は限定せず)を用いること、を条件とした。
【0037】
[再汚染度△Zの測定]
再汚染度△Zの測定は、以下のようにして行った。
各家庭における使用試験の開始前の評価布をブランク(対照)とした。
このブランクの評価布と使用試験で回収した評価布について、測色色差計(日本電色工業株式会社製、製品名:1001−DP;レンズ30φ)を用いてZ値(反射率)を測定した。この際、蛍光剤の影響を遮断するフィルターを、必ず着けるものとした。
Z値の測定は、評価布(肌シャツ)の前身ごろ4隅と、後見ごろ中央1箇所との合計5箇所を測定部位とし、それらの平均値を各評価布のZ値とした。
これらのZ値から、以下に示す式よりΔZを求めた。
ΔZ=(ブランクの評価布のZ値)−(使用試験後の評価布のZ値)
評価用の洗剤1サンプルにつき20の家庭から回収された評価布におけるΔZ値のうち、最大値と最小値を除いた、残り18個のデータの平均値をその評価布の再汚染度ΔZとし、下記の評価基準に基づいて、再汚染の防止効果を評価した。ΔZの値が大きいほど、再汚染が顕著であることを示す。その結果を表1,2に示す。
(評価基準)
再汚染度ΔZが、◎◎:3未満、◎:3以上6未満、○:6以上9未満、△:9以上12未満、×:12以上。
【0038】
<酵素活性の安定性評価方法>
液体洗浄剤組成物を35℃の条件で1ヶ月保存した後のセルラーゼ活性を調べた。
すなわち、セルロースパウダー(商品名:アビセル)に液体洗浄剤組成物の希釈液を反応させて可溶化(オリゴマー化)し、さらにアルカリ加水分解して得られたグルコース還元末端(グルコース還元糖)と発色試薬とを反応させると410nmの吸収波長を持つ化合物となる。この410nmにおける吸光度を調べ、検量線と比較することで液体洗浄剤組成物がどのくらいのセルラーゼ活性を有するかを評価する方法を用いた。液体洗浄剤組成物中のセルラーゼ活性が高いほど、グルコース還元末端の存在量が多くなり、410nmにおける吸収が高くなる。
以下、詳しく説明する。
【0039】
試薬は以下のものを用いた。
・酵素溶液:実施例または比較例において調製した液体洗浄剤組成物。
・0.1Mリン酸バッファー:pH7.0、Merck社製、No.573。
・基質PASC(Phospholic Acid Swollen Cellulose)溶液:下記調製例1で調製したもの。
・発色試薬PAHBAH溶液:下記調製例2で調製したもの。
・(+)−酒石酸カリウムナトリウム四水和物:Merck社製、No.8087。
・Bismuth(III)acetate:Alfa AESAR社製、No.017574。
・2%NaOH水溶液:Merck社製、No.6498。
【0040】
[調製例1:基質PASC溶液の調製]
アビセル(Fluka社製、No.11365)に85質量%リン酸溶液を加えアイスバスで冷やしながらスターラーでゆっくりかき混ぜた。そこにアセトンを加えて膨潤させた。得られた溶液をフィルターでろ過し、アセトンとMilliQ水で洗い流した。最終的に1質量%の基質PASC溶液になるように調整した。
【0041】
[調製例2:発色試薬PAHBAH溶液の調製]
PAHBAH(4− Hydroxybenzhydrazide、Sigma社製、No.H−9882)1.5gに(+)−酒石酸カリウムナトリウム四水和物5.0gとBismuth(III)acetate0.193gを添加し、2%NaOH水溶液にて100mlにメスアップした。
【0042】
[評価試験]
遠沈管に酵素溶液(液体洗浄剤組成物)、0.1Mリン酸バッファー、および基質PASC溶液(1%)を各2mL入れ、攪拌しながら50℃のウォーターバスに60分間つけて反応させた。反応終了後、2%NaOH水溶液を各サンプルに1mL加え反応させた。遠心分離機(4000rpm、10分)にかけ、上清をとり、該上清に発色試薬PAHBAH溶液を2ml加え、攪拌後、100℃で煮沸を行って、グルコース還元糖と発色試薬を反応させた。その後、氷浴で冷やし、410nmにおける吸光度を測定した。吸光度は、吸光度計(日立製作所社製、商品名:U−3010)を用いて測定した。
検量線の作成:標準酵素溶液として0.0175g/Lの母液を作製し、リン酸バッファーのみ・母液の250倍希釈溶液・50倍希釈溶液・25倍希釈溶液・12.5倍希釈溶液の5段階のスタンダード溶液を作製し、サンプル溶液と共に反応を行い、吸光度から検量線を得た。
液体洗浄剤組成物を35℃の条件で1ヶ月保存した後の残存活性量を、上記検量線を用いた上記活性評価法にて求めた。5℃保存品の活性を100%としたときの、各保存品の活性の割合が90%以上の場合は◎、80%以上90%未満の場合は○、80%未満の場合は×として評価した。その結果を表1,2に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
以上の結果から明らかなように、本発明に係る実施例1〜18の液体洗浄剤組成物は、被洗物への再汚染防止効果に優れるとともに、酵素活性の経時安定性にも優れていた。
これに対して(B)成分を含まない比較例1、3は良好な再汚染防止効果が得られなかった。
(A)成分の量が多い比較例2と、(A)成分の量が少なくて、洗浄力を確保するために(C)成分を多く配合した比較例6は、酵素の経時安定性が低下した。
(B)成分に代えて、ケアザイムを用いた比較例4は酵素の経時安定性は良好であるが、良好な再汚染防止効果は得られなかった。またセルクリーンを用いた比較例5は再汚染防止効果はあるものの、経時安定性が悪く失活が早いため実用的ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ノニオン界面活性剤5〜60質量%、および
(B)フミコーラ・インソレンス株由来、分子量45〜50kDa、かつ等電点5.0〜6.0であるエンドグルカナーゼを含有することを特徴とする衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに(C)アニオン界面活性剤1〜30質量%を含む、請求項1記載の衣料用液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに(D)プロテアーゼを含む、請求項1または2に記載の衣料用液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2010−138218(P2010−138218A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313126(P2008−313126)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】