説明

衣料用液体洗浄剤組成物

【課題】洗浄力を低下させることなく、従来以上に濯ぎ性に優れた、安定性の良い濃縮タイプの衣料用液体洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)一般式(I)で表される非イオン性界面活性剤、(B)陰イオン性界面活性剤、(C)水混和性有機溶剤5〜40質量%、及び(D)水を含有し、(A)成分と(B)成分の合計量が35〜55質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比〔(A)成分/(B)成分〕が70/30〜90/10であり、JISK3362:1998記載の25℃で測定する組成物のpHが6.5〜10.0である衣料用液体洗浄剤組成物。R1−Y−(EO)n−R2(I)(式中、R1は炭化水素基であり、−Y−は−O−又は−COO−であり、R1−Y−は総炭素数8〜22である。EOはエチレンオキシ基を表し、nは平均付加モル数を表し、nは14〜30の数である。R2は水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する意識が高まってきており、環境に対し、より負荷の小さい衣料用洗浄剤組成物の登場が渇望されている。
環境に対する負荷の小さいものとしては、従来の洗浄剤組成物より洗浄成分濃度が高い、いわゆる濃縮タイプの洗浄剤組成物が考えられる。濃縮タイプである場合、洗浄剤組成物自身のサイズを小さくすることができることから、容器樹脂量の削減、輸送費の削減、使用後のゴミの削減等ができるようになり、環境に対する負荷を低減させるのに非常に有効であると考えられる。
【0003】
衣料用洗浄剤組成物としては、主に粒状洗浄剤組成物と液体洗浄剤組成物が挙げられるが、液体洗浄剤組成物を濃縮タイプにした場合には、洗浄力と共に液の安定性(特に液の低温安定性)が重要な技術課題となる。
しかし、液体洗浄剤組成物には、液安定性の観点から、一般的に粒状洗浄剤組成物において洗浄力向上を目的として配合されるゼオライト等のカルシウム捕捉剤を十分な量を配合することは難しい。このため、従来は界面活性剤として耐硬水性に優れるアルキルエーテル硫酸塩や非イオン性界面活性剤が主に用いられている。
【0004】
一方、白物家電を扱う大手電気メーカーは洗濯機への付加価値化として、節水・節電を唱った製品が開発、販売されている。
ドラム式洗濯機は浴比(洗濯物1kgあたりの水の量)が低いことから洗濯水量を少なくすることができ、攪拌による繊維への傷みも少ないことから、販売シェアを伸ばしている。
また従来の全自動洗濯機に関しても、脱水・シャワー濯ぎなどの各社独自の濯ぎ方法を採用したり、泡センサー等により自動的に濯ぎ回数を減らしたりするなどの機能を導入している。このような節水は、家庭での節水・節電のみならず、上水及び下水処理での浄水化に伴うエネルギーを考慮する上でも非常に有意義である。
【0005】
洗濯時の節水効果を高めるためには、濯ぎ水の節水が有効である。濯ぎ性をテーマとした技術としては、昔からシリコーン、脂肪酸による消泡作用を利用することで濯ぎ剤として配合することが知られており、また泡立ちの少ない界面活性剤の使用が提案されている。
【0006】
特許文献1には、非イオン型シリコーン界面活性剤を用いることで、泡コントロールされた洗浄剤が記載されている。
特許文献2には脂肪酸とシリコーンを併用する洗浄剤が公報一般に非イオン界面活性剤は陰イオン界面活性剤に対して泡立ちが少なく、油汚れに対する洗浄性にも優れることから多数の特許が知られている。
特許文献3には、分岐鎖を有する低泡性の液体洗浄剤が記載されており、その他に非イオン界面活性剤に関しては、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7が知られている。
またポリオキシエチン基(以下EO)とオキシプロピレン基(以下PO)とをEO−PO−EOの順序で有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤として、特許文献8、特許文献9、特許文献10及び特許文献11が挙げられる。特許文献8、特許文献9には特定の非イオン界面活性剤が泡切れ性に優れることが記載されており、特許文献11には、該非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤を併用する液体洗浄剤が開示されている。
【0007】
しかしながら、これら先行技術は、泡コントロールに関する技術で、泡立ちを低減させるものであり、水中での繊維への界面活性剤の吸着性に関する技術を示唆するものではなく、実施例で使用している非イオン界面活性剤のオキシエチレン基の平均付加モル数が本発明よりも少ないものである。
従って、濯ぎ回数の少ない場合や浴比の低い場合の洗浄基剤と繊維の関係について検討し、その解決手段を提案するものではない。更に、これらの技術は洗浄性能の点で改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平9−502746号公報
【特許文献2】特表平10−508060号公報
【特許文献3】特表平10−507788号公報
【特許文献4】特開平11−293293号公報
【特許文献5】特開2000−355700号公報
【特許文献6】特開平7−166190号公報
【特許文献7】特開2002−285191号公報
【特許文献8】特開平11−92784号公報
【特許文献9】国際公開第1998/024864号パンフレット
【特許文献10】国際公開第1998/024867号パンフレット
【特許文献11】国際公開第1998/024865号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した先行技術では、環境への負荷軽減を目的とした濃縮タイプの液体洗浄剤組成物にしたとき、液の安定性を維持しつつ、濯ぎ性と洗浄性の双方の目的を満たすことは非常に困難であった。
従って、本発明の課題は、洗浄力を低下させることなく、従来以上に濯ぎ性に優れた、安定性の良い濃縮タイプの衣料用液体洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、課題の解決手段として下記の発明を提供する。
(A)一般式(I)で表される非イオン性界面活性剤、(B)陰イオン性界面活性剤、(C)水混和性有機溶剤5〜40質量%、及び(D)水を含有し、
(A)成分と(B)成分の合計量が35〜55質量%であり、
(A)成分と(B)成分の質量比〔(A)成分/(B)成分〕が70/30〜90/10であり、
JIS K3362:1998記載の25℃で測定する組成物のpHが6.5〜10.0
である衣料用液体洗浄剤組成物。
1−Y−(EO)n−R2 (I)
(式中、R1は炭化水素基であり、−Y−は−O−又は−COO−であり、R1−Y−は総炭素数8〜22である。EOはエチレンオキシ基を表し、nは平均付加モル数を表し、nは14〜30の数である。R2は水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗浄力と濯ぎ性に優れた、安定性の良い濃縮タイプの衣料用液体洗浄剤組成物が提供される。
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物は、洗浄力が優れており、濯ぎ回数が少ない場合、特に濯ぎの水が少ない場合であっても、繊維製品からの界面活性剤の除去性に優れていることから、洗濯時の節水量が増加できる(即ち、水使用量を減少させ、かつ排水量を減少させることができる)ので、環境への負荷軽減の観点からも有効である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔(A)成分〕
本発明の(A)成分は、一般式(I)で示される非イオン性界面活性剤である。
1−Y−(EO)n−R2 (I)
(式中、R1は炭化水素基であり、−Y−は−O−又は−COO−であり、R1−Y−は総炭素数8〜22である。
EOはエチレンオキシ基を表し、nは平均付加モル数を表し、nは14〜30の数である。
2は水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基である。)
【0013】
一般式(I)において、R1である炭化水素基は、直鎖、分岐鎖、1級、2級等の何れでもよいが、好ましくは直鎖1級の炭化水素基である。
洗浄性能の観点から、R1−Y−は総炭素数10〜20が好ましく、総炭素数12〜18がより好ましく、総炭素数12〜16が更に好ましく、総炭素数12〜14が特に好ましい。
また、一般式(I)において、泡コントロールの観点から、R2は炭素数1〜3の炭化水素基が好ましく、炭素数1又は2の炭化水素基がより好ましく、メチル基が更に好ましい。
また、衣料への低残留性の観点から、nは好ましくは15〜25の数、より好ましくは16〜20の数である。
【0014】
〔(B)成分〕
本発明の(B)成分は、陰イオン性界面活性剤である。
(B)成分としては、例えば直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及び/又はその塩(LAS)、アルキル硫酸エステル及び/又はその塩(AS)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル及び/又はその塩(AES)、α−オレフィンスルホン酸及び/又はその塩(AOS)、アルカンスルホン酸及び/又はその塩(SAS)、α−スルホ脂肪酸エステル及び/又はその塩(α−SF)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸及び/又はその塩、高級脂肪酸及び/又はその塩(石鹸)等が挙げられる。
【0015】
上記のなかでも、(A)成分との相乗効果による洗浄性能の観点から、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及び/又はその塩、アルキル硫酸エステル及び/又はその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル及び/又はその塩、α−オレフィンスルホン酸及び/又はその塩、アルカンスルホン酸及び/又はその塩が好ましく、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及び/又はその塩がより好ましい。
【0016】
具体的には、炭素数8〜16、好ましくは10〜14のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸及び/又はその塩、炭素数10〜20、好ましくは12〜18のアルキル基を有するアルキル硫酸エステル及び/又はその塩、炭素数10〜20、好ましくは12〜18のアルキル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数1〜10、好ましくは2〜8のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル及び/又はその塩、炭素数10〜20のアルキル基を有するα−オレフィンスルホン酸及び/又はその塩、炭素数10〜20、好ましくは12〜14のアルキル基を有するアルカンスルホン酸及び/又はその塩、好ましくは2級アルカンスルホン酸及び/又はその塩、炭素数10〜20のアルキル基を有するα−スルホ脂肪酸メチルエステル及び/又はその塩、炭素数10〜20のアルキル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数1〜10のポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸及び/又はその塩、炭素数12〜14の高級脂肪酸及び/又はその塩(石鹸)等が好ましく挙げられる。
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。
【0017】
〔(C)成分〕
本発明の(C)成分は、水混和性有機溶剤である。本発明でいう水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解するもの(溶解度が50g/L以上)である溶剤を指す。
(C)成分としては、洗浄性能、安定性、溶解性の点で、水酸基及び/又はエーテル基を有する水混和性有機溶剤が好ましい。
【0018】
水混和性有機溶剤としては、
(c1)エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルカノール類、
(c2)エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどの炭素数2〜6のアルキレングリコール類やグリセリン、
(c3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール又は重量平均分子量400〜4000のポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコール、重量平均分子量400〜4000のメトキシポリエチレングリコールもしくはメトキシポリプロピレングリコールなどの炭素数2〜4のアルキレングリコール単位からなるポリアルキレングリコール類、
(c4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、又は1−エトキシ−2−プロパノールなどの炭素数2〜4のアルキレングリコール単位の(ポリ)アルキレングリコールと炭素数1〜5のアルカノールからなる(ポリ)アルキレングリコール(モノ又はジ)アルキルエーテル、
(c5)1−メチルグリセリンエーテル、2−メチルグリセリンエーテル、1,3−ジメチルグリセリンエーテル、1−エチルグリセリンエーテル、1,3−ジエチルグリセリンエーテル、トリエチルグリセリンエーテル、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、1−オクチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテルなどの炭素数1〜8のアルキルを有するアルキルグリセリルエーテル類、
(c6)2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の炭素数2〜3のアルキレングリコール単位を有する(ポリ)アルキレングリコールの芳香族エーテル類等が挙げられる。
【0019】
(C)成分は、組成物の粘度調整剤、ゲル化抑制剤として有効であり、上記の(c1)〜(c6)の分類から選ばれる1種以上を使用することが好ましい。
(C)成分は、上記の(c1)アルカノール類、(c2)グリコール類、(c3)ポリアルキレングリコール類、(c4)アルキルエーテル類、及び(c6)芳香族エーテル類が好ましく、(c1)アルカノール類、(c2)グリコール類、(c4)アルキルエーテル類、及び(c6)芳香族エーテル類がより好ましい。
【0020】
組成物の粘度調整、ゲル化抑制の観点から、(c1)アルカノール類、(c2)グリコール類、(c4)アルキルエーテル類、及び(c6)芳香族エーテル類から選ばれる2種以上を併用することが好ましく、(c2)グリコール類、(c4)アルキルエーテル類、及び(c6)芳香族エーテル類から選ばれる2種以上を併用することがより好ましい。
より具体的には、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、モノ〜トリエチレングリコールモノフェニルエーテルから選ばれる2種以上が最も好ましい。
使用時における冷水への希釈溶解性の観点から、(c1)アルカノール類から選ばれるものと、(c3)ポリアルキレングリコール類から選ばれるものを併用することが好ましい。
【0021】
〔(D)成分〕
本発明の(D)成分は、水である。脱イオン水などの余分な金属イオンを除去したものを用いることが好ましい。
【0022】
〔(E)成分〕
本発明の(E)成分は、有機酸及び/又はその塩である。
(E)成分としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、乳酸、安息香酸、サリチル酸、エチル安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、ヒドロキシエタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、ヒドロキシメタンホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリ(メチレンホスホン酸)、2−ヒドロキシエチルイミノジ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、及びこれらの塩が挙げられる。
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。
【0023】
これらの中で、特に、衣料用液体洗浄剤組成物のpH安定化効果及び組成の保存安定性などの点からクエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、乳酸、安息香酸、サリチル酸、エチル安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、及びこれらの塩から選ばれる化合物〔以下、(E−1)成分という〕が好ましく、(E−1)成分の中でもクエン酸、安息香酸、及びこれらの塩から選ばれる化合物がより好ましい。
【0024】
また、安定性の観点から、(E)成分として、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸、及びこれらの塩から選ばれるラジカルトラップ効果を有する化合物〔以下、(E−2)成分という〕を含有することが好ましく、これらの中でも4−ヒドロキシ安息香酸がより好ましい。
【0025】
また、安定性の観点から、(E)成分として、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1−ジホスホン酸、エタン−1,1,2−トリホスホン酸、ヒドロキシエタン−1,1,2−トリホスホン酸、エタン−1,2−ジカルボキシ−1,2−ジホスホン酸、ヒドロキシメタンホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリ(メチレンホスホン酸)、2−ヒドロキシエチルイミノジ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、及びこれらの塩から選ばれる金属捕捉効果を有する化合物〔以下、(E−3)成分という〕を含有することが好ましく、これらの中でも1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸やその塩が好ましい。
【0026】
安定性の観点から、(E−2)成分及び(E−3)成分を併用することがより好ましい。
その場合、(E−2)成分/(E−3)成分の質量比は、10/1〜1/10、更に5/1〜1/5が好ましい。
【0027】
本発明では、(E)成分として、(E−1)成分と、(E−2)成分及び/又は(E−3)成分とを含有することが好ましく、(E−1)成分、(E−2)成分及び(E−3)成分を含有することがより好ましい。
【0028】
(E)成分は、1種又は2種以上混合して用いることができる。なお、pH調整剤として(E)成分に該当する化合物を用いることもできるが、それらの量は(E)成分に算入する。
【0029】
〔組成物中の各成分の含有量〕
(A)成分と(B)成分は、使用時における冷水への希釈溶解性、洗浄性能の観点から、衣料用液体洗浄剤組成物中の合計含有量は35〜55質量%で、かつ〔(A)成分/(B)成分〕は70/30〜90/10であり、80/20〜90/10が好ましく、85/15〜90/10がより好ましい。
(A)成分と(B)成分の合計含有量は38〜55質量%が好ましく、40〜55質量%がより好ましい。
(A)成分と(B)成分の質量比〔(A)成分/(B)成分〕は72/28〜88/12が好ましく、75/25〜85/15がより好ましい。
なお、(B)成分の陰イオン界面活性剤は酸型又はその塩であるが、塩の分子量によって、その質量が異なることから、本発明では塩であっても、酸型と仮定したときの質量を(B)成分の質量とする。
【0030】
(A)成分との相乗効果による洗浄性能の観点から、(B)成分中の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及び/又はその塩、アルキル硫酸エステル及び/又はその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル及び/又はその塩、α−オレフィンスルホン酸及び/又はその塩、アルカンスルホン酸及び/又はその塩の合計量は70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
また、(B)成分中の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及び/又はその塩の含有量は50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
【0031】
衣料用液体洗浄剤組成物の安定性、使用時における冷水への希釈溶解性、洗浄性能、特に衣料への低残留性の観点から、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物に用いる界面活性剤中、(A)成分と(B)成分の合計量は70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。上限値は100質量%が好ましい。
【0032】
(C)成分は、使用時における冷水への希釈溶解性、安定性の観点から、衣料用液体洗浄剤組成物中の含有量は5〜40質量%であり、10〜35質量%が好ましく、10〜25質量%が特に好ましい。
【0033】
また、使用時における冷水への希釈溶解性、安定性の観点から、(A)成分及び(B)成分の合計と(C)成分との質量比〔(A)+(B)〕/(C)は90/10〜60/40が好ましく、85/15〜70/30がより好ましく、80/20〜70/30が更に好ましい。
【0034】
使用時における冷水への希釈溶解性の観点から、(C)成分として(c1)アルカノール類と(c3)ポリアルキレングリコール類を併用したときの合計量は70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。
【0035】
(D)成分の水の含有量は、衣料用液体洗浄剤組成物の安定性、使用時における冷水への希釈溶解性、コンパクト性の観点から、組成物中、10〜50質量%が好ましく、15〜45質量%が更に好ましく、20〜40質量%が特に好ましい。
【0036】
各成分の含有量や含有比率を上記の範囲の組成物とすることで、使用時における冷水への希釈溶解性に優れ、洗浄力を低下させることなく、従来以上に濯ぎ性に優れた濃縮タイプの衣料用液体洗浄剤組成物が得られる。
【0037】
衣料用液体洗浄剤組成物の使用時における冷水への希釈溶解性、安定性、洗浄性能の観点から、本発明の衣料用液体洗浄剤組成物に(E)成分を含有させることが好ましく、0.05〜10質量%がより好ましく、0.1〜7質量%が更に好ましく、0.2〜5質量%が特に好ましく、0.5〜3質量%が最も好ましい。
【0038】
特に(E)成分として、(E−1)成分を含有することが好ましく、衣料用液体洗浄剤組成物中の(E−1)成分は0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜4質量%がより好ましく、0.2〜3質量%が更に好ましく、0.5〜2質量%が特に好ましい。
また、(E)成分として、(E−2)成分及び/又は(E−3)成分を含有させることが安定性の観点から好ましく、(E−2)成分及び(E−3)成分を含有させることがより好ましい。
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物中の(E−2)成分の含有量は、0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましく、0.2〜2質量%が更に好ましい。
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物中の(E−3)成分の含有量は、0.01〜2質量%が好ましく、0.05〜1.5質量%がより好ましく、0.1〜1質量%が更に好ましい。
【0039】
なお、(E)成分は酸型又はその塩であるが、塩の分子量によって、その質量が異なることから、本発明では塩であっても、酸型と仮定した時の質量を(E)成分の質量とする。
【0040】
〔その他の成分〕
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物には、上記の成分以外に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、種々の任意成分を適宜配合することができる。
例えば、その他の界面活性剤(陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、上記以外の非イオン性界面活性剤)、粘度低下剤(エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類など)、アルカリ剤(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン等)、シリコーン等の風合い向上剤、防腐剤、ハイドロトロープ剤、蛍光剤、移染防止剤、パール剤、酸化防止剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム等)、酵素、着香剤又は乳濁化剤等の添加剤などが挙げられる。
【0041】
〔組成物のpH〕
衣料用液体洗浄剤組成物の安定性、使用時における冷水への希釈溶解性、洗浄性能の観点から、JIS K3362:1998記載の25℃で測定する本発明の衣料用液体洗浄剤組成物のpHは6.5〜10.0であり、6.6〜9.5が好ましく、6.7〜9.0がより好ましい。
【0042】
pH調整剤としては、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、多価カルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸類等の有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカノールアミン、アンモニア等が挙げられ、衣料用液体洗浄剤組成物の経時安定性の面から、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカノールアミンが好ましい。
【0043】
〔組成物の粘度〕
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物の20℃における粘度は、取り扱いの容易さの点で10〜500mPa・sが好ましく、50〜400mPa・sがより好ましく、100〜300mPa・sが更に好ましい。
本発明において粘度はB型粘度計により測定する。ローターは粘度に合ったものを選択する。回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を衣料用液体洗浄剤組成物の粘度とする。
【0044】
〔衣料用液体洗浄剤組成物の使用方法(衣料の洗濯方法)〕
本発明の衣料用液体洗浄剤組成物の使用方法は、通常の使用方法、すなわち衣料用液体洗浄剤組成物を、洗濯時に洗濯物と一緒に水に投入する方法、泥汚れや皮脂汚れに衣料用液体洗浄剤組成物を直接塗布する方法、衣料用液体洗浄剤組成物を予め水に溶かして衣類を浸漬する方法等が挙げられる。また、衣料用液体洗浄剤組成物を洗濯物に塗布後、適宜放置し、その後、通常の洗濯液を用いて通常の洗濯を行う方法も好ましい。
【0045】
本発明の洗濯方法では、浴比は好ましくは3〜40である。ここで浴比とは、水性洗浄液の質量を衣類の質量で割った値を意味する。
本発明ではドラム式洗濯機のように、低浴比の洗濯機に対しても優れた効果が得られる。
具体的には浴比が3〜12、特には3〜8であっても、優れた濯ぎ性、すなわち被洗濯物からの界面活性剤の除去性を発揮する。
本発明の液体洗浄剤組成物を用いた洗濯方法は、従来の限界と考えられた濯ぎ性を超えるものである。また、濯ぎ回数を減らせること、或いは濯ぎ用に用いる水量を減らすこと(即ち、排水量を減らすこと)を容易にする。
【実施例】
【0046】
実施例及び比較例
表1、表2に示す各成分を混合して得られた衣料用液体洗浄剤組成物を用い、下記の各評価を行った。結果を表1、表2に示す。
【0047】
〔洗浄力の評価〕
JIS K 3362:1998記載の『衣料用合成洗剤の洗浄力評価方法』に従い、組成表1記載の衣料用液体洗浄剤組成物と洗浄力判定用指標洗剤の洗浄力を比較した。指標洗剤に対して、同等以上の洗浄力であるか、或いは劣るかにつき確認した。衣料用液体洗浄剤組成物の使用濃度は15g/Lとした。
【0048】
〔吸着率評価(濯ぎ性の評価)〕
広口規格ビン(PS−No.11、ガラス製、直径50mm、高さ95mm、口径30mm)に、表1の液体洗浄剤組成物の水溶液100g(界面活性剤濃度200mg/Lになるように調整、Caイオン濃度4°DH)と木綿メリヤス〔(株)色染社製、未シルケット、坪量19mg/cm2、綿100%、5g(約1.5cm×1.5cm)〕を入れ、振とう器(RECIPRO SHAKER SR-II W ;タイテック株式会社製)で、ストローク幅50mm、300回/分の速度で、10分間振とうした。繊維吸着率は、以下のようにして求めた。繊維吸着率が小さいほど、濯ぎ性が良いことを示している。
繊維吸着率(%)=〔1−(振とう後の水溶液中に含まれる界面活性剤量)/(布を投入する前の水溶液中に含まれる界面活性剤量)〕×100
なお、水溶液中に含まれる界面活性剤量は、液体クロマトグラフ法により測定した。
また木綿メリヤス布は、100cm×100cmに裁断したものを、全自動洗濯機にてJISK3362:1998の洗浄評価用の指標洗剤で累積洗浄(洗濯時間10分、濯ぎ1回、脱水3分)を5回行った後、更に2槽式洗濯機にて、3時間注水濯ぎを行い、界面活性剤を十分取り除いたものを用いた。
【0049】
〔溶解性のモデル評価(低温安定性の評価)〕
衣料用液体洗浄剤組成物とイオン交換水を、〔(衣料用液体洗浄剤組成物の質量)/(衣料用液体洗浄剤組成物の質量+イオン交換水の質量)×100=5〜95質量%となるように、5質量%刻みで混合した計19サンプルを準備した。これらのサンプルを5℃の恒温室で1日間静置の後、各サンプルの5℃における粘度を以下の条件で測定し、以下の基準で判定した。
【0050】
測定機器:東京計器(株)製のデジタルB型粘度計(型番;DVM−B)
測定条件:60r/m,60秒
(評価基準)
○:すべてのサンプルの粘度が1500mPa・s未満である。これは、冷水による希釈時に液晶形成や結晶形成等により増粘しないことを意味し、溶解性に優れると判断できる。
×:サンプルの中に粘度が1500mPa・s以上のものがある。これは冷水による希釈時に液晶形成、又は結晶形成等により増粘する場合があることを意味し、溶解性が劣ると判断される。
【0051】
表中の成分は以下のものである。また、表中、「調整量」は、pHを表中の値に調整するための量である。
〔(A)成分〕
・A−1:一般式(I)中のR1が炭素数11の直鎖1級アルキル基、−Y−が−COO−、nが15、R2がメチル基の非イオン性界面活性剤
・A−2:一般式(I)中のR1が炭素数12の直鎖1級アルキル基、−Y−が−O−、nが15、R2が水素原子の非イオン性界面活性剤
・A−3:一般式(I)中のR1が炭素数12の直鎖1級アルキル基、−Y−が−O−、nが20、R2が水素原子の非イオン性界面活性剤
〔(A)成分の比較成分〕
・A’−4(比較例):一般式(I)中のR1が炭素数12の直鎖1級アルキル基、−Y−が−O−、nが12、R2が水素原子の非イオン性界面活性剤
・A’−5(比較例):一般式(I)中のR1が炭素数12の直鎖1級アルキル基、−Y−が−O−、nが41、R2が水素原子の非イオン性界面活性剤
・A’−6(比較例):一般式(I)中のR1が炭素数11の直鎖1級アルキル基、−Y−が−COO−、nが9、R2がメチル基の非イオン性界面活性剤
【0052】
〔(B)成分〕
・B−1:炭素数10〜14の直鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸
・B−2:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(炭素数10〜14の直鎖アルキル、EO平均付加モル数2、モノエタノールアミン塩、但し表中の濃度は酸型の濃度とし、対塩のモノエタノールアミンは別途記載した。
・B−3:ラウリル硫酸ナトリウム
・B−4:アルカンスルホン酸Na塩(炭素数12、製品名:HOSTAPUR SAS60〔クラリアントジャパンより入手〕)
・B−5:ルナックL−55(商品名)(ヤシ油系脂肪酸;花王株式会社製)
【0053】
〔(C)成分〕
・C-1:エタノール
・C-2:プロピレングリコール
・C-3:メトキシポリエチレングリコール(EO=9)
・C-4:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
・C-5:2−エチルヘキシルグリセリルエーテル
・C-6:ジエチレングリコールモノフェニルエーテル
【0054】
〔(E)成分〕
・E-1:安息香酸
・E-2:4−ヒドロキシ安息香酸
・E-3:1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(I)で表される非イオン性界面活性剤、(B)陰イオン性界面活性剤、(C)水混和性有機溶剤5〜40質量%、及び(D)水を含有し、
(A)成分と(B)成分の合計量が35〜55質量%であり、
(A)成分と(B)成分の質量比〔(A)成分/(B)成分〕が70/30〜90/10であり、
JIS K3362:1998記載の25℃で測定する組成物のpHが6.5〜10.0
である衣料用液体洗浄剤組成物。
1−Y−(EO)n−R2 (I)
(式中、R1は炭化水素基であり、−Y−は−O−又は−COO−であり、R1−Y−は総炭素数8〜22である。EOはエチレンオキシ基を表し、nは平均付加モル数を表し、nは14〜30の数である。R2は水素原子又は炭素数1〜3の炭化水素基である。)
【請求項2】
更に(E)有機酸及び/又はその塩を含有する請求項1記載の衣料用液体洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2012−102285(P2012−102285A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253858(P2010−253858)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】