説明

衣類用防水透湿性布帛

【課題】外観品位を向上した易リサイクル衣類用防水透湿性布帛を提供する。
【解決手段】ポリエステル布帛の片面に、無色透明のポリエステルフィルムからなる防水透湿層が積層され、好ましくはその上に無機微粒子を含む透湿性高分子樹脂が全面に積層され、さらにその上に、灰色の樹脂が部分的に積層されている衣類用防水透湿性布帛で、布帛全体のポリエステルを好ましくは重量比50%以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ、ユニフォーム用衣類および雨衣などに使用される、優れた外観品位を有する衣類用防水透湿性布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツ衣料やユニフォーム衣料に使用されている防水透湿性布帛には、防水性および透湿性を備えた樹脂製の薄膜が広く使用されている。例えば、上記樹脂製薄膜として、織編物などの基布に直接に積層された多孔質または無孔質ポリウレタンをコーティングしたものや、ポリウレタンなどの多孔質または無孔質樹脂製フィルムを接着剤により基布にラミネーションしたものなどがある。
ここで、多孔質樹脂製薄膜はその孔の大きさにより、また、無孔質樹脂製薄膜の場合は孔は無く吸湿性物質を含有することで親水性とすることにより、雨やその他の水は通さず、湿気(水蒸気)は通すことにより防水透湿性を有している。
これらの従来の防水透湿性布帛では、肌や内側の衣服との磨耗から防水透湿層を保護するため、裏地を縫製で取り付けたり、トリコットを防水透湿層に接着したりする方法が用いられる。しかし、これでは、縫製品としたときに重くなり動きにくいという問題があった。
【0003】
この問題に対し、防水透湿層に、高分子樹脂を部分的に積層することにより防水透湿層を保護することが一般的になされている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1では、防水透湿層にウレタン樹脂が使用されている。近年の石油資源の枯渇化や地球温暖化という課題に対し、省資源や環境保全といった観点から、生活用品のリサイクル使用が重要視されている。このため、企業側にはリサイクル処理を前提とした製品づくりが求められている中、防水透湿性布帛についてもリサイクル処理を前提とした製品づくりが必要である。しかし、特許文献1のように、防水透湿性薄膜にウレタン樹脂が広く用いられており、リサイクルが難しくなっている。
【0004】
防水透湿性布帛をリサイクルし易くする試みとして、透湿性を持つポリエステル樹脂製のフィルムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、透湿性を持つポリエステルフィルムは、一般に分散染料で染色されたポリエステル製織編物からなる基布にラミネーションされるが、染料移行の問題があり外観を著しく損なう課題があった。
また、特許文献2のように、フィルムに黒や濃いグレーの着色をすると、染料移行により外観が変化する問題は回避できるものの、織編物からなる基布を淡色にしたい場合、フィルムの色が透けてしまい、該基布の色が制限されるという問題があった。
【特許文献1】特許3718422号公報
【特許文献2】ヨーロッパ特許第783016号明細書(EP0783016 B1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、優れた外観品位を有する衣類用防水透湿性布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリエステル布帛の片面に、無色透明のポリエステルフィルムからなる防水透湿層が積層され、さらにその上に、灰色の樹脂が部分的に積層されていることを特徴とする衣類用防水透湿性布帛に関する。
ここで、本発明の衣類用防水透湿性布帛は、ポリエステル布帛の片面に、無色透明のポリエステルフィルムからなる防水透湿層が積層され、その上に無機微粒子を含む透湿性高分子樹脂層が全面に積層され、さらにその上に、灰色の樹脂が部分的に積層されていてもよい。
また、灰色は、L値で15〜85の範囲内であることが好ましい。
さらに、上記ポリエステル布帛としては、好ましくはポリエステルマルチフィラメントからなる織編物が挙げられる。
さらに、上記ポリエステル布帛は、好ましくは分散染料で染色されているものが挙げられる。
さらに、上記無色透明のポリエステルフィルムとしては、透湿性を有するポリエステルを主成分とする厚さが5〜30μmの透明無孔質フィルムが挙げられる。
さらに、上記透湿性高分子樹脂としては、シリカを重量比で1〜16重量%含有する半透明高分子樹脂が挙げられる。
さらに、上記灰色の樹脂としては、酸化チタンを重量比で1〜25重量%、カーボンブラックを重量比で0.1〜3.0重量%含有した高分子樹脂が挙げられる。
さらに、上記灰色の樹脂としては、さらにシリカを重量比で1〜16重量%含有した高分子樹脂であってもよい。
さらに、上記灰色の樹脂は、面積比10〜80%の範囲で防水透湿層、または無機微粒子を含む透湿性高分子樹脂層を被覆し、かつ連続的なパターンを有するものが好ましい。
さらに、布帛全体におけるポリエステルの重量比は、好ましくは50%以上である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外観品位を向上した易リサイクル衣類用防水透湿性布帛が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、防水透湿層がラミネーションされる基布としては、ポリエステル繊維を主体とするポリエステル布帛であるが、該布帛中には、ナイロン繊維、アセテート繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、炭素繊維、綿や羊毛などの天然繊維などが50重量%以下、好ましくは30重量%以下程度含まれていてもよい。上記ポリエステル布帛は、リサイクルのし易さの観点から好ましい。より好ましくはポリエチレンテレフタレート繊維からなる布帛であり、さらに好ましくは風合いの良さや防水透湿層の接着のし易さからマルチフィラメントが好適に用いられる。基布としての布帛の形態は、織物、編物、不織布など特に限定はされないが、その引裂強力の強さなどから好ましくは編物、織物、さらに好ましくは織物が用いられる。
なお、本発明において、基布として用いられるポリエステル布帛は、その目付けが、通常、30〜900g/m、好ましくは40〜700g/m程度である。
【0009】
上記布帛は、必要に応じて撥水加工や蓄熱加工、吸汗加工などの後加工を施しても良いが、より好適には雨水をはじくように撥水加工が用いられる。
上記撥水加工に用いられる撥水剤としては、パラフィン系撥水剤やポリシロキサン系撥水処理剤、フッ素系撥水処理剤などの公知のものが使用でき、その処理も一般に行われているパディング法、スプレー法などの公知の方法で行えばよい。
【0010】
上記基布となるポリエステル布帛が織編物である場合、染色に用いる染料は分散染料、カチオン性染料など特に限定はされないが、カチオン性染料はカチオン性染料で染色可能な繊維を選択する必要があるため、より汎用性が高い分散染料を染色に用いるほうが好適である。
ポリエステル布帛が分散染料で染色されている場合、アウトドアやユニフォームなどのアウター衣料は汚れが目立ちにくい色にするほうが良いため、白色以外の色、例えば黒色、紺色、青色、緑色などで染色されていることが好ましい。
【0011】
一方、防水透湿層としては、透湿性を有する無色透明のポリエステルフィルムが用いられる。上記フィルムがポリエステルフィルムでない場合、一般にウレタン樹脂やポリテトラフロロエチレンが用いられるが、これらはリサイクルに向かないため衣料に使用後、廃棄処分されることなる。一方、ポリエステルは、ケミカルリサイクル処理により再度ポリエステルの原料として再生可能であり何度でもリサイクル使用できる点で省資源かつ環境保全できる。このポリエステルフィルムは、無色透明である必要がある。無色透明でなく白色または淡色のフィルムである場合、基布となるポリエステル布帛において、染色に使用した分散染料が防水透湿層のフィルム側の面に移行昇華し、斑のあるまだら模様となり著しく外観を損なってしまう。これを回避するには、基布であるポリエステル布帛の色が白色や淡色に限定されてしまい商品のバリエーションが下がってしまう。また、ポリエステルフィルムが、無色透明でなく黒色または濃色のフィルムである場合、基布で染色に使用した分散染料が防水透湿層のフィルム側の面に移行昇華し、斑のあるまだら模様となり概観を損なう問題は生じないが、基布が白色や淡色の場合、フィルムの色が透けてしまい基布の色が濁ってしまい外観を損なってしまう。
【0012】
また、上記無色透明ポリエステルフィルムは透湿性を有するが、該フィルムは、透湿性を有するポリエステルを主成分とする無孔質フィルムであることが好ましい。ポリエステルフィルムが多孔質フィルムである場合、無色透明にはなり得ないからである。ポリエステルに透湿性を付与するには、特に限定されるものではないが、ポリエチレングリコールをポリエステルに共重合する方法が好適に用いられる。
【0013】
本発明のポリエステルフィルムに用いられる透湿性を有するポリエステルとしては、例えばポリエーテル−エステル系エラストマーが挙げられる。上記ポリエーテル−エステル系エラストマーは、長鎖エステル単位および短鎖エステル単位からなり、該短鎖エステル単位は、全ポリエーテル−エステル系エラストマーの30〜70重量%の範囲にあることが好ましい。上記短鎖エステル単位の割合が、30重量%未満であるポリエーテル−エステル系エラストマーは比較的低融点であって、加工性が不良であり、また、該短鎖エステル単位が、70重量%を超えるポリエーテル−エステル系エラストマーの場合には、比較的高融点であり、加工性が不良である。
【0014】
本発明において使用し得るポリエーテル−エステル系エラストマーの酸成分は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸、または、これらのエステル形成性誘導体から選ばれた少なくとも1種が挙げられるが、好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、またはこれらのエステル形成性誘導体が例示される。
【0015】
もちろん、このような酸成分の一部(通常は、全酸成分を基準として30モル%以下)は、他のジカルボン酸成分やオキシカルボン酸成分で置換されていてもよい。
なお、上記ポリマー中には、各種安定剤、紫外線吸収剤などが必要に応じて配合されていてもよい。
【0016】
次に、本発明において使用し得るポリエーテル−エステル系エラストマーの長鎖エステル単位のグリコール成分としては、ポリエチレングリコール、ポリ1,2−プロピレングリコール、ポリ1,3−プロピレングリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体などのポリアルキレングリコールのうち少なくとも1種が挙げられるが、満足できる透湿性を得るためにはポリエチレングリコールが最も好ましく例示され、その平均分子量が600〜8,000の範囲にあるものが好ましい。上記平均分子量が600未満であると、満足できる機械的物性が得られず、一方、該平均分子量が8,000を超えた場合には、相分離のためにポリエーテル−エステルの調製において問題を引き起こす場合がある。
【0017】
また、ポリエーテル−エステル系エラストマーの短鎖エステル単位のグリコール成分は、エチレングリコールおよびテトラメチレングリコールからなり、該エチレングリコールおよびテトラメチレングリコール中に占めるテトラメチレングリコールのモル分率が70モル%未満のものが好ましく使用される。上記テトラメチレングリコールが70モル%を超えると、フィルム層自体は柔軟となるが、布帛とのモジュラス差が大きすぎるため、耐揉み性が悪く、フィルム層と布帛の界面に剥離が生じやすい。
【0018】
上記テトラメチレングリコールのモル分率のさらに好ましい範囲は、70モル%未満〜50モル%以上の範囲である。
【0019】
本発明の防水透湿性布帛は、このようなポリエーテル−エステル系エラストマーからなるフィルムが少なくとも布帛の片側面にラミネートされているものである。
【0020】
ポリエーテル−エステル系エラストマーからなるフィルムを作成する方法としては、公知の方法、例えば、インフレーション法やダイ押出し法により得た、厚さが好ましくは5〜30μm、さらに好ましくは5〜20μmの均一なフィルムを使用するものがよい。上記フィルムの厚さが5μm未満の場合には、ラミネートの作業が困難となり均一な耐水圧が得られないおそれがあり、また防水透湿層の強度が著しく低下してしまい、一方、フィルムの厚さが30μmを超える場合には、透湿性が低下するおそれがあり、また防水透湿層の曲げ硬さが硬くなってしまうことで布帛全体が硬くなり衣料に適さないものとなってしまう。
得られたフィルムは、種々の方法、例えば、熱処理、ミシン掛け、あるいは、接着剤の使用により付着することができる。
【0021】
なお、本発明のポリエステルフィルムに用いられるポリエステルとしては、上記以外に、例えば「主として結晶性芳香族ポリエステル単位からなるハードセグメントと、主として脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなるソフトセグメントとを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体であってもよい。このポリエステルブロック共重合体の詳細は、例えば特開平11−170461号公報の段落「0009」〜「0015」に詳述されている。
【0022】
また、本発明の防水透湿性布帛の防水透湿層側には、上記ポリエステルフィルム上に無機微粒子を含む透湿性高分子樹脂層が全面に積層されているほうがより好適である。無機微粒子を含む透湿性高分子樹脂層が積層されてない場合、ポリエステルフィルムが透明であるためにフィルム表面が光を表面反射し、上品さを損なってしまう。ここで、上記高分子樹脂に透湿性が無い場合、全面に塗布した場合布帛全体の透湿性を損なってしまう。
【0023】
ここで、透湿性高分子樹脂層を構成する高分子樹脂としては、透湿性ポリウレタン系樹脂、透湿性ポリエステル系樹脂などが挙げられる。
また、透湿性高分子樹脂に含まれる無機微粒子は、樹脂塗布面をさらさらとべとつきの少ない手触りにするためにシリカが好適であり、重量比で1〜16重量%含有される半透明樹脂であることが好適である。ここで、無機微粒子が1重量%より小さい場合は、光沢の軽減効果が小さいものとなってしまう。また、無機微粒子が16重量%より大きい場合は、樹脂塗布面が必要以上にざらざらとしたものになってしまう。
【0024】
また、本発明の防水透湿性布帛の防水透湿層側には灰色の樹脂が部分的に積層されている。この積層された樹脂は、防水透湿層の保護がその主目的であるが、防水透湿層の肌側の面に凹凸を形成することで、肌とのはりつきやべとつきを抑制する効果もある。また、一定のパターンなどの柄を浮き出させることにより、外観が好ましくなり消費者の購買意欲を高めることもでき、そのためにはベースの防水透湿層の外観色と異なる色の樹脂を積層する必要がある。ベースの防水透湿層の外観色は防水透湿層のフィルムは透明であるため、染色された基布の色が透けている。ここで、防水透湿層に積層される樹脂の色は灰色であることがよい。白色や灰色は広範囲の基布の色に対応できるが、有色の場合は基布の適用範囲が狭くなる。防水透湿層に積層される樹脂の色が黒やグレーなどの濃色のときは、基布が濃色の場合は一定のパターンなどの柄で樹脂を積層しても見えにくいため消費者の購買意欲を高めることができず、また、基布が淡色の場合はパターン柄が見えるものの、基布側から見るとそのパターン柄が透けて見えてしまい外観を損ねてしまう。また、防水透湿層に積層される樹脂の色が中色や白色、灰色以外の淡色のときは、基布が濃色、淡色の場合であってもパターン柄は見えるが、基布の染料が防水透湿層および防水透湿層に積層される樹脂に移行昇華してくると染料の色と元の樹脂の色とが混ざり合い、斑っぽくなり外観を著しく損なってしまう。防水透湿層に積層される樹脂の色が灰色のときには、基布が濃色、淡色の場合であってもパターン柄は見え、また、基布の染料が防水透湿層および防水透湿層に積層される樹脂に移行昇華してきても、元の樹脂の色が灰色であるため染料の色と混ざり合っても他の色に見えることがなく外観を損ないにくい。
ここで、灰色は、L値で15〜85の範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは20〜70である。
【0025】
ここで、防水透湿層(または、透湿性高分子樹脂層)に部分的に積層される樹脂は特に限定されるものではないが、多孔質ウレタン樹脂などの透湿性ウレタン系樹脂、無透湿性ウレタン系樹脂、上記のような透湿性ポリエステル系樹脂、無透湿性ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂などが用いられるが、得られる防水透湿性布帛のリサイクル性から、ポリエステル系樹脂であることが好ましい。
【0026】
また、防水透湿層(または、透湿性高分子樹脂層)に部分的に積層される樹脂は、灰色を呈するため酸化チタンを重量比で好ましくは1%〜25重量%、さらに好ましくは1〜10重量%含有し、かつ、カーボンブラックを重量比で好ましくは0.1%〜3重量%含有した樹脂である。酸化チタンが1重量%より少なく、カーボンブラックが0.1重量%より少ないと樹脂が灰色にならず、一方、酸化チタンが25重量%より多いと樹脂の強度が低下してしまい、カーボンブラックが3重量%より多いと樹脂が黒色になってしまう。
さらに、防水透湿層(または、透湿性高分子樹脂層)に部分的に積層される樹脂には、さらにシリカを重量比で1〜16重量%含有するほうが手触りがさらさらしてより好適である。ここで、シリカが1重量%より少ないと手触りがさらさらする効果が少なく、一方、16重量%より多いと必要以上にざらざらとした手触りになってしまう。シリカの含有量は、さらに好ましくは7〜13重量%である。
【0027】
また、防水透湿層側に部分的に積層された灰色の樹脂は、面積比10%〜80%の範囲で防水透湿層(または、透湿性高分子樹脂層)を被覆し、かつ連続的なパターンを有することが好ましい。ここで、面積比が10%より小さいと連続的なパターンを維持することが難しくなり、一方80%より大きいと防水透湿性布帛の透湿性を低下させてしまう。この面積比は、さらに好ましくは20〜75%である。ここで、連続的なパターンとは、特に限定されるものではないが、それぞれの樹脂が分離せずに直線や曲線などによって連結され防水透湿層全体を一定のパターンで被覆していることが肝要である。積層樹脂が互い分離している場合は、その部分の防水透湿層が肌や内部の衣服との摩擦の程度が多くなり保護が十分でなくなってしまう。
【0028】
なお、灰色の樹脂を無色透明のポリエステルフィルムからなる防水透湿層(または、透湿性高分子樹脂層)に連続的なパターンで積層するには、ポリエステルフィルム(または、透湿性高分子樹脂層を印刷したポリエステルフィルム)上にあらかじめ連続的なパターンの柄を形成したグラビアロールによって灰色の樹脂をプリントするなどの手段を用いればよい。なお、上記パターンの目付けは、乾燥膜厚で、通常、0.1〜20g/m、好ましくは0.5〜10g/m程度である。
【0029】
さらに、本発明において、防水透湿性布帛をケミカルリサイクルし、再度、ポリエステル原料として再生するには、布帛全体のポリエステルが好ましくは重量比50%以上、さらに好ましくは70%以上であることが重要である。ここで、ポリエステルの重量比率が50%より小さいとリサイクル効率が低下してしまいコストアップやエネルギー消費量アップしてしまう。リサイクル効率を上げるためにはできる限りポリエステル比率を高めるほうがよい。そのため、防水透湿性布帛の構成は特に限定されるものではないが、ポリエステルマルチフィラメント繊維のみからなる基布およびポリエステルフィルムで構成することが好ましい。
【0030】
ここで、基布とフィルムをラミネーションする接着剤や、フィルム上に全面に積層する透湿性高分子樹脂、防水透湿層に積層させる灰色の樹脂についてもポリエステル系樹脂であることが好ましい。しかし、布帛全体における重量はわずかであるため必須ではない。
【実施例】
【0031】
次に、本発明の実施例および比較例を詳述するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
なお、L値は、JIS Z8729(L***表色系およびL***表色系による物体色の表示方法)に示すL***表色系で表した。
【0032】
[実施例1]
基布として通常のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸84dtex/72filを経糸および緯糸に用いて緯2重織組織の生機を織成した後、撥水加工を含む通常の染色工程にて分散染料(日本化薬(株)社製、Kayalon Polyester Black
BR-SF)により黒色に染色したポリエステル織物を得た(目付100g/m)。その後、デュポン(株)製の無孔質透湿性透明ポリエステルフィルム(商品名:アクティブレイヤー)をウレタン系接着剤でラミネーションした(フィルム16g/m、接着剤12g/m)。
さらに、上記防水透湿性布帛のフィルム側に、透湿性ポリウレタン系樹脂(大日本インキ化学工業社製、クリスボン8166)にシリカを固形分比で4重量%含有させた、ポリウレタン系樹脂を全面(目付7g/m)にコーティングし、乾燥後、140℃で1分間乾熱処理し防水透湿性布帛を得た。
さらに、上記防水透湿性布帛のフィルム側に、ポリウレタン系樹脂に酸化チタンを固形分比で5重量%、カーボンブラックを固形分比で1重量%含有させた、灰色(L値32)のポリウレタン系樹脂をグラビアコーターにより4mm角の連続的な格子柄(面積比30%、目付4g/m)をプリントし、乾燥後、140℃で1分間乾熱処理し防水透湿性布帛を得た。
得られた布帛は、肌側から見て黒色の基布が透けて、全体に光沢が抑えられ黒色に見え、その中にポリエステルフィルム上に積層された灰色の樹脂による格子柄がくっきりと見え、大変外観がよいものとなった。
また、フィルム側は、さらさらとした風合いであった。
また、ポリエステルが布帛全体の重量比83%であり、リサイクルによる効率が良いものであった。
【0033】
実施例1における全面コーティングされた透湿性高分子樹脂の組成
ポリウレタン系樹脂(*1) 100重量部
架橋剤(*2) 4重量部
平滑剤 4重量部
トルエン 30重量部
MEK(メチルエチルケトン) 30重量部
*1)ハイムレンY−262 大日精化製、クリスボン8166(以下も同じ)
*2)大日精化製、X−100(以下も同じ)
【0034】
実施例1における灰色プリント樹脂の組成
ポリウレタン系樹脂 100重量部
架橋剤 4重量部
ホワイト顔料 8重量部
ブラック顔料 2重量部
平滑剤 2重量部
シリカ 4重量部
トルエン 50重量部
MEK(メチルエチルケトン) 20重量部
【0035】
[比較例1]
基布としてナイロンマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸84dtex/72filを経糸および緯糸に用い、酸性染料(日本化薬(株)製、Kayanol
Milling Black TLB)により黒色に染色したナイロン織物を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
得られた布帛は、肌側から見て黒色の基布が透けて、全体に光沢が抑えられ黒色に見え、その中にポリエステルフィルム上に積層された白色の樹脂による格子柄がくっきりと見え、大変外観がよいものとなった。
また、フィルム側は、さらさらとした風合いであった。
しかし、ポリエステルが布帛全体の重量比12%であり、リサイクルによる効率が悪いものであった。
【0036】
[比較例2]
基布として通常のポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント仮撚捲縮加工糸84dtex/72filを経糸および緯糸に用いて緯2重織組織の生機を織成した後、撥水加工を含む通常の染色工程にて分散染料(日本化薬(株)製、Kayalon
Polyester Blue 2R-SF)により青色に染色したポリエステル織物用い、防水透湿層として、カーボンブラックを固形分比で8重量%含有した黒色無孔質ポリエステルフィルムを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。
得られた布帛は、肌側から見て全体に光沢が抑えられた黒色フィルムの中にポリエステルフィルム上に積層された白色の樹脂による格子柄がくっきりと見え、大変外観がよいものとなった。
また、フィルム側はさらさらとした風合いであった。
また、ポリエステルが布帛全体の重量比83%であり、リサイクルによる効率が良いものであった。しかし、布帛を表側から見た場合、フィルムの黒色が透けて基布の青色が濁った色になり外観が損なわれたものであった。
【0037】
[比較例3]
防水透湿層に部分的に積層された樹脂として、カーボンブラックを固形分比で5重量%含有した黒色のポリウレタン系樹脂を用いた以外は実施例1と同様に実施した。
得られた布帛は、肌側から見て無孔質透湿性透明ポリエステルフィルム上に積層された黒色の樹脂による格子柄がはっきりとはわからず、外観は変わらなかった。
また、ポリエステルが布帛全体の重量比83%であり、リサイクルによる効率は良いものではあった。
比較例3におけるプリント樹脂の組成
ポリウレタン系樹脂 100重量部
架橋剤 4重量部
ブラック顔料 10重量部
トルエン 50重量部
MEK 20重量部
【0038】
[実施例2]
防水透湿フィルム上にポリウレタン系樹脂の全面コーティング(透湿性高分子樹脂層)を施さなかった以外は実施例1と同様に実施した。
得られた布帛は、肌側から見て黒色の基布が透けて、その中にポリエステルフィルム上に積層された灰色の樹脂による格子柄がくっきりと見えるものであった。
また、フィルム側はさらさらとした風合いであった。
また、ポリエステルが布帛全体の重量比88%であり、リサイクルによる効率は良いものではあった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、外観品位を向上した易リサイクルの衣類用防水透湿性布帛が提供され、その工業的価値は極めて大である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル布帛の片面に、無色透明のポリエステルフィルムからなる防水透湿層が積層され、その上に灰色の樹脂が部分的に積層されていることを特徴とする衣類用防水透湿性布帛。
【請求項2】
無職透明のポリエステルフィルムからなる防水透湿層の上に無機微粒子を含む透湿性高分子樹脂層が全面に積層され、さらにその上に、灰色の樹脂が部分的に積層されている請求項1記載の衣類用防水透湿性布帛。
【請求項3】
灰色がL値で15〜85の範囲内である、請求項1または2記載の衣類用防水透湿性布帛。
【請求項4】
上記ポリエステル布帛が、ポリエステルマルチフィラメントからなる織編物である、請求項1〜3いずれかに記載の衣類用防水透湿性布帛。
【請求項5】
上記ポリエステル布帛が分散染料で染色されている、請求項1〜4いずれかに記載の衣類用防水透湿性布帛。
【請求項6】
上記無色透明のポリエステルフィルムが、透湿性を有するポリエステルを主成分とする厚さが5〜30μmの透明無孔質フィルムである、請求項1〜5いずれかに記載の衣類用防水透湿性布帛。
【請求項7】
透湿性高分子樹脂が、シリカを重量比で1〜16重量%含有する半透明高分子樹脂である、請求項2〜6いずれかに記載の衣類用防水透湿性布帛。
【請求項8】
上記灰色の樹脂が、酸化チタンを重量比で1〜25重量%、カーボンブラックを重量比で0.1〜3.0重量%含有した高分子樹脂である、請求項1〜7いずれかに記載の衣類用防水透湿性布帛。
【請求項9】
上記灰色の樹脂が、さらにシリカを重量比で1〜16重量%含有した高分子樹脂である、請求項8に記載の衣類用防水透湿性布帛。
【請求項10】
上記灰色の樹脂が、面積比10〜80%の範囲で、防水透湿層または無機微粒子を含む透湿性高分子樹脂層を被覆し、かつ連続的なパターンを有する、請求項1〜9いずれかに記載の衣類用防水透湿性布帛。
【請求項11】
布帛全体におけるポリエステル重量比が50%以上である、請求項1〜10いずれかに記載の衣類用防水透湿性布帛。


【公開番号】特開2008−201014(P2008−201014A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40334(P2007−40334)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【出願人】(392017624)平松産業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】