説明

表示媒体および表示システム

【課題】製造コストが安価な表示媒体および表示システムを提供すること。
【解決手段】光導電体18は、データ電極20および画素電極22よりも透光基板12側に配設されているので、データ電極20および画素電極22を透明材料で構成しなくても、透光基板12側からの光は、光導電体18に照射される。したがって、データ電極20および画素電極22の材料選択の自由度が高く、これらのデータ電極20および画素電極22を、安価な材料で構成することができるので、表示媒体10の製造コストが安価となるという効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示媒体および表示システムに関し、特に、製造コストが安価な表示媒体および表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子ペーパ、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンスなど、書換可能な表示媒体が提案されている。このような表示媒体の駆動方式の1つとして、アクティブマトリックス駆動方式が知られている。アクティブマトリックス駆動方式により表示媒体を駆動する場合、基板上に電界効果型トランジスタを作り込む必要がある。
【0003】
電界効果型トランジスタは、大きく分類して、シリコンなど無機半導体が用いられた無機トランジスタと、有機半導体が用いられた有機トランジスタとがある。しかしながら、無機トランジスタを基板上に作り込む際には高温プロセスを必要とするので、プラスチック製基板など、耐熱性が低い基板上に作り込むことが困難である。これに対し、有機トランジスタは、高温プロセスを必要としないので、例えば、プラスチック製基板上にも作り込むことが可能であるものの、有機トランジスタは、経時的に劣化しやすく、安定性に問題があるので、何層にも封止をしておかないと、安定して長時間使用することが困難である。
【0004】
よって、無機トランジスタや有機トランジスタを用いない表示媒体が提案されている。そのような表示媒体の一例として、表示素子と光スイッチング素子とが設けられた表示媒体の概略構成を説明する。
【0005】
図10は、従来の表示媒体と、その表示媒体に画像を書き込む書き込み装置との概略構成を示す図である。図10に示すように、表示媒体100は、光入射側透明基板130と、それに対向する表示側透明基板131との間に、光入射側透明基板130から順に、光入射側透明電極層132、有機光電導スイッチング素子層134、液晶表示素子層136、表示側透明電極層138が積層された構造である。
【0006】
書き込み装置120は、画像データに応じたパターンを形成するパターン形成部150と、パターン生成部150において形成されたパターンの書き込み光を、表示媒体100に照射する光照射部152とが設けられている。
【0007】
書き込み装置120から、書き込み光が照射されると、表示媒体100では、書き込み光が照射された部分のみ、光電導スイッチング素子層134が導体化し、書き込み光が照射されない部分は非導体のままである。このようにして、書き込み光に応じて液晶表示素子層136に印加する電圧を制御することにより、所望のパターンを表示媒体100に表示させることができる。
【特許文献1】特開2002−248066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の構成では、表示媒体100に形成させたいパターンの書き込み光を照射するために、書き込み装置120において、画像データに応じたパターンを生成しなければならないので、書き込み装置の構成が複雑となり、安価な表示システムを提供することができないという問題点があった。また、上記の構成では、光入射側透明基板130と有機光電導スイッチング素子層134との間に、電極層138が介在していたため、有機光電導スイッチング素子層134まで光を透過させるために、電極層138を高価な透明材料で形成しなければならず、表示媒体100を安価に製造することができなかった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、製造コストが安価な表示媒体および表示システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、請求項1記載の表示媒体は、透光性を有する透光基板に配設された画素電極と、その画素電極に書き込むデータ信号を供給するデータ電極と、そのデータ電極および前記画素電極よりも前記透光基板側において、そのデータ電極と画素電極とに接続し、光が照射されることに起因して、データ電極と画素電極とを電気的に導通させる光導電体と、前記画素電極に対向して配置された対向電極と、その対向電極と前記画素電極との間に配置され、前記画素電極に書き込まれたデータ信号に応じて駆動される表示層とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の表示媒体は、請求項1記載の表示媒体において、前記画素電極よりも前記透光基板側に形成された容量電極と、その容量電極と前記画素電極との間に配設された絶縁膜とを備えることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の表示媒体は、請求項1または2に記載の表示媒体において、前記光導電体は、複数の画素電極のそれぞれに対し設けられたものであって、その複数の画素電極のそれぞれに対し設けられた光導電体は、各画素電極毎に、互いに分離して配設されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の表示媒体は、請求項1または2に記載の表示媒体において、前記光導電体は、前記データ電極および前記画素電極と、前記透光基板との間に層状に配設されるものであって、前記透光基板の一面を覆うものであることを特徴とする。ここで、「透光基板の一面を覆う」とは、透光基板の全面が光導電体で覆われている場合に限定されるものではなく、少なくとも画素電極が配設された表示領域において、光導電体がベタ状に配設されていることを含む意味である。
【0014】
請求項5記載の表示システムは、透光性を有する透光基板に配設された画素電極と、その画素電極に書き込むデータ信号を供給するデータ電極と、前記データ電極および前記画素電極よりも前記透光基板側において、そのデータ電極と画素電極とに接続し、光が照射されることに起因して、データ電極と画素電極とを電気的に導通させ、光の照射が停止されると、データ電極と画素電極とを非導通とする光導電体と、前記画素電極に対向して配置された対向電極と、その対向電極と前記画素電極との間に配置され、前記画素電極に書き込まれたデータ信号に応じて駆動される表示層とを備えた表示媒体と、その表示媒体に光を照射する光照射手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の表示システムは、請求項5記載の表示システムにおいて、前記表示媒体は、前記画素電極よりも前記透光基板側に形成された容量電極と、その容量電極と前記画素電極との間に配設された絶縁膜とを備えることを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の表示システムは、請求項5または6に記載の表示システムにおいて、前記光照射手段による表示媒体の被照射位置を順次移動させる被照射位置移動手段と、その被照射位置移動手段により移動された被照射位置に応じたデータ信号を、前記データ電極に供給するデータ信号供給手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の表示システムは、請求項7記載の表示システムにおいて、前記データ信号供給手段によるデータ信号の供給中に、前記光照射手段による光の照射を停止する光照射停止手段を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の表示システムは、請求項5から8のいずれかに記載の表示システムにおいて、前記光照射手段は、一方向に配列された光源と、その光源からの光を絞り込んで前記表示媒体に導く導光手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の表示システムは、請求項5から8のいずれかに記載の表示システムにおいて、前記光照射手段は、レーザ光を照射するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の表示媒体によれば、光導電体に光が照射されることに起因してデータ電極と画素電極とが電気的に導通すると、データ電極からのデータ信号が画素電極に書き込まれて表示層が駆動され、表示がされる。ここで、光導電体は、データ電極および画素電極よりも透光基板側に配設されているので、データ電極および画素電極を透明材料で構成しなくても、透光基板側からの光は、光導電体に照射される。したがって、データ電極および画素電極の材料選択の自由度が高く、これらのデータ電極および画素電極を、安価な材料で構成することができるので、表示媒体の製造コストが安価となるという効果がある。
【0021】
なお、「データ電極と画素電極とを電気的に導通させる」とは、光の照射により、データ電極と画素電極とに接続する光導電体が低インピーダンス化し、電気的等価回路としては、導体とみなせるほどに低抵抗化することをいう。
【0022】
なお、好適には、光導電体は、所定の波長の光が照射されたとき、または所定の閾値以上の強度の光が照射されたとき、データ電極と画素電極とを電気的に導通させるものであり、光が照射されたとしても、条件を満たさない波長または強度の光であれば、データ電極と画素電極とを非導通のままとするものである。このようにすれば、自然光や、照明の明かりなど、予期しない光により、光導電体が低抵抗化することが抑制できる。
【0023】
請求項2記載の表示媒体によれば、請求項1記載の表示媒体の奏する効果に加え、画素電極よりも透光基板側に形成された容量電極と、その容量電極と前記画素電極との間に配設された絶縁膜とを備えるので、画素電極と容量電極との間の絶縁膜がコンデンサの役割を果たし、画素電極に書き込まれたデータ信号を保持することができる。よって、データ信号の供給時間を短くすることができ、書き込みに要する時間を短縮できるという効果がある。
【0024】
請求項3記載の表示媒体によれば、請求項1または2に記載の表示媒体の奏する効果に加え、光導電体は、各画素電極毎に、互いに分離して配設されているため、目的とする画素電極にのみ、データ信号を書き込むことができる。よって、高品位表示を実現できるという効果がある。
【0025】
請求項4記載の表示媒体によれば、請求項1または2に記載の表示媒体の奏する効果に加え、光導電体は、データ電極および画素電極と、透光基板との間に層状に配設されるものであって、透光基板の一面を覆うものであるので、例えば、スピンコートで光導電体層を一面に形成するなど、製造が容易であり、製造コストがより安価となるという効果がある。
【0026】
請求項5記載の表示システムによれば、光導電体に光が照射されることに起因してデータ電極と画素電極とが電気的に導通すると、データ電極からのデータ信号が画素電極に供給され、その画素電極に書き込まれたデータ信号に応じて表示層が駆動され、表示がされる。ここで、光導電体は、データ電極および画素電極よりも透光基板側に配設されているので、データ電極および画素電極を透明材料から構成しなくても、透光基板側からの光は、光導電体に照射される。換言すれば、データ電極および画素電極の材料選択の自由度が高く、これらのデータ電極および画素電極を、安価な材料から構成することができるので、表示媒体の製造コストが安価となるという効果がある。
【0027】
また、光が照射されていない場合、データ電極と画素電極とは非導通とされるので、データ信号は画素電極に書き込まれない。したがって、例えば、1画素ずつデータ信号を書き込む、あるいは1ラインずつデータ信号を書き込むなど、所定領域毎にデータ信号を書き込むことができる。よって、表示媒体に表示させるパターン全体を、書込装置側で一旦生成し、それを表示媒体に投影する場合に比較して、構成が簡便であり、製造コストが安価となるという効果がある。
【0028】
請求項6記載の表示システムによれば、請求項5記載の表示システムの奏する効果に加え、表示媒体が、画素電極よりも透光基板側に形成された容量電極と、その容量電極と前記画素電極との間に配設された絶縁膜とを備えるので、画素電極と容量電極との間の絶縁膜がコンデンサの役割を果たし、画素電極に書き込まれたデータ信号を保持することができる。よって、各画素電極に対するデータ信号の書込時間を短縮できるという効果がある。
【0029】
請求項7記載の表示システムによれば、請求項5または6に記載の表示システムの奏する効果に加え、被照射位置移動手段により、表示媒体の被照射位置が順次移動され、その移動された被照射位置に応じたデータ信号がデータ電極に供給されるので、所定領域毎に順次、データ信号を書き込むことができる。よって、構成が簡便であり、製造コストが安価となるという効果がある。
【0030】
請求項8記載の表示システムによれば、請求項7記載の表示システムの奏する効果に加え、データ信号の供給中に、光照射手段による光の照射が停止されるので、データ信号が停止されるよりも先に、データ電極と画素電極とが非導通とされる。よって、データ信号の停止の影響が画素電極に及ぶことを抑制し、高品位表示を実現できるという効果がある。
【0031】
請求項9記載の表示システムによれば、請求項5から8のいずれかに記載の表示システムの奏する効果に加え、光照射手段は、一方向に配列された光源と、その光源からの光を絞り込んで表示媒体に導く導光手段とを備えるので、ごく狭い領域にのみ光を照射することができ、高精細な表示をすることができるという効果がある。
【0032】
請求項10記載の表示システムによれば、請求項5から8のいずれかに記載の表示システムの奏する効果に加え、光照射手段は、レーザ光を照射するものであるので、ごく狭い領域にのみ光を照射することができ、高精細な表示をすることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態における表示媒体10を説明する図である。
【0034】
図1に示すように、表示媒体10は、透光基板12と、その透光基板12に対向配置された対向基板14と、対向基板14の周縁に沿って設けられた封止材16とが主に設けられている。なお、詳しくは図2を参照しつつ後述するが、透光基板12と対向基板14との間には、帯電粒子を含む表示層26(図2参照)が充填されており、縁辺が封止材16によって封止されている。また、透光基板12には、互いに平行な複数本のデータ電極20が配設されており、各データ電極20は、その一端が、対向基板14の外周側に露出している。詳しくは、図3を参照して後述するが、データ電極20に供給したデータ信号に応じて、表示層26(図2参照)が駆動され、対向基板14に画像が表示される。なお、透光基板12の上面には、絶縁膜15が被覆されているが、図面が複雑化されることを防ぐため、図1においては図示を省略している。
【0035】
透光基板12及び対向基板14は、いずれも、透光性を有する基板であって、その材質として、ガラス、合成樹脂、天然樹脂などが挙げられる。好ましい透光基板12及び対向基板14の材質は、可撓性を示す合成樹脂であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)やポリフェニレンサルファイド(PPS)などのポリエステル系樹脂、アラミド、ポリイミド、ナイロン、ポリプロピレン、硬質ポリエチレン(高密度ポリエチレン)などが挙げられる。これらの合成樹脂の中でも、透明性、強度、耐熱性の点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイドが特に好ましい材質である。透光基板12及び対向基板14として、上記のような可撓性を示す材質を用いることにより、表示媒体10全体が可撓性を示すものにすることができる。
【0036】
次に、図2を参照して、表示媒体10の構造についてより具体的に説明する。図2(a)は、表示媒体10の透光基板12に配設された電極を模式的に示す図であり、図2(b)は、表示媒体10の一部を拡大して示す断面図である。なお、図2(b)の断面図は、光導電体18を通り、且つ、データ電極20に対して略直交する切断線(図2(a)のIIb−IIb線参照)で切断した場合の断面を図示したものであるが、図2(b)の断面図で図示されている保護層24、表示層26、対向電極34、対向基板14は、図2(a)おいては、図面の複雑化を防ぐために図示を省略している。
【0037】
図2(b)に示すように、透光基板12には、対向基板14に対向する側の面に、容量電極13、絶縁膜15、光導電体18、データ電極20、画素電極22が配設されている。また、対向基板14の透光基板12に対向する側の略全面には、対向電極34が設けられている。なお、以下は、データ電極20の長手方向を表示媒体10のY方向と称し、データ電極20の長手方向に直交する方向を表示媒体20のX方向と称して説明を進める。
【0038】
光導電体18は、所定の波長の光が照射されると、低抵抗化し、所定の波長の光が照射されないとき、高い抵抗値を示す材料で構成された部材であり、例えば、フタロシアニン、ポリビニルカルバゾールのような有機材料や、アモルファスシリコンのような無機材料や、酸化亜鉛、酸化チタンのような無機酸化物などから構成される。図2(b)に示すように、光導電体18は、データ電極20と画素電極22よりも透光基板12側において、データ電極20と画素電極22との両方に接続して配設される。光が照射されることによって、光導電体18が低抵抗化し(光導電体18がオンとなり)、データ電極20と画素電極22との間が電気的に導通する。一方、光の非照射時は、光導電体18が元の抵抗値に戻り(光導電体18がオフとなり)、データ電極20と画素電極22との間が電気的に非導通となる。このように、光導電体18は、データ電極20と画素電極22との間において、スイッチとして機能する。
【0039】
データ電極20は、複数本の略平行なライン状に形成された電極である。各データ電極20に対しては、所定の間隔をあけて、それぞれ複数の画素電極22が設けられており、各データ電極20は、その複数の画素電極22に書き込むためのデータ信号を供給する。データ電極20と画素電極22は互いに離れて配設されており、且つ、スイッチとして機能する光導電体18を介して接続されているから、データ電極20に電圧(データ信号)が印加された場合、光導電体18がオンとなっている箇所のみ、画素電極22にデータ信号が供給され、光導電体18がオフとなっている箇所では、画素電極22にデータ信号が供給されない。
【0040】
画素電極22は、X方向およびY方向に並べて複数個行列状に配設される。1の画素電極22がカバーする領域が、表示媒体10の1画素に相当し、配設された全ての画素電極22がカバーする領域が、表示媒体10の表示領域に相当する。図2(a)に示すように、Y方向(図2(a)における縦方向)に並ぶ一列の画素電極22は、光導電体18を介して配設された1つのデータ電極20からのデータ信号が書き込まれる。画素電極22にデータ信号が書き込まれると、後述する対向電極34との間に電界が発生し、表示層26(共に図2(b)参照)を駆動することができる。
【0041】
図2(b)に示すように、各画素電極22の透光基板12側の下層には、画素電極22と対向する位置に容量電極13が配設されている。一つの画素電極22に対応して一つの容量電極13が配設されている。容量電極13と画素電極22との間には、透光基板12の上面を覆う絶縁膜15が配設されている。この容量電極13は接地されており、画素電極22と容量電極13との間の絶縁膜15がコンデンサの役割を果たし、光導電体18がオフとなった後も、画素電極22に書き込まれたデータ信号が保持される。尚、本実施形態では容量電極13が設けられたものとして説明するが、容量電極13はなくても良い。
【0042】
なお、容量電極13、データ電極20、画素電極22、対向電極34はいずれも、導電性を有するものであれば、特にその材料には限定されず、金属、半導体、導電性樹脂、導電性塗料、導電性インク、無機透明導電体などの種々の材料により構成することができる。特に、データ電極20、画素電極22は、透明な電極材料で構成する必要はなく、安価な電極材料で構成することができる。
【0043】
上述したように、光導電体18をスイッチとして機能させるためには、光導電体18に光を照射する必要がある。しかしながら、本実施形態の表示媒体10によれば、光導電体18が、電極(データ電極20及び画素電極22)よりも透光基板12側に配設されているので、電極を不透明な材料で構成したとしても、透光基板12側から照射された光を、光導電体18に到達させることができるからである。
【0044】
また、図2(b)に示すように、透光基板12におけるデータ電極20および画素電極22の形成面には、保護膜24が設けられている。この保護膜24によって、後述する電気泳動媒体32と電極(データ電極20および画素電極22)との直接接触が防止されるので、表示媒体10における電極(データ電極20および画素電極22)の劣化を防止することができる。この保護膜24は、撥水性、撥油性、耐食性、耐薬品性などに優れているという点から、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウムのような無機酸化物薄膜や、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、フッ素樹脂などの高分子樹脂薄膜など含から構成することができる。なお、対向基板14における対向電極34の形成面にも耐液性の保護膜が設けられているが、図面が複雑化されることを防ぐために、図2(b)では、対向基板14側の保護膜の図示は省略する。
【0045】
表示層26は、正又は負に帯電された帯電粒子(白色帯電粒子28および黒色帯電粒子30)を含む液体の電気泳動媒体32から構成される層である。この表示層26は、表示媒体10における透光基板側12の画素電極22と、対向電極34との間に設けられ、画素電極22に書き込まれたデータ信号に応じて駆動される。
【0046】
白色帯電粒子28は、顔料または染料で白色に染色された樹脂で構成され、例えば、正に帯電されている。黒色帯電粒子30は、顔料または染料で黒色に染色された樹脂から構成され、白色帯電粒子28とは逆の極性に帯電されている。
なお、電気泳動媒体32は、電気抵抗が高い(絶縁性が高い)透明な溶媒が好ましく、例えば、シリコーンオイルのようなオイル状のポリシロキサンなどが挙げられる。
【0047】
白色帯電泳動粒子28が正に帯電し、黒色帯電粒子30が負に帯電している場合の表示原理について説明する。まず対向電極34を共通電極とし、画素電極22にプラスのデータ信号が書き込まれると、正に帯電した白色帯電粒子28は、対向電極34側に集まるために、対向基板14側から見た観測者サイドでは白表示の画素となる。一方、白色帯電粒子28と逆の極性に帯電している黒色帯電粒子30は、画素電極22側に集まり、視認されない。これとは逆に、画素電極22に負のデータ信号が書き込まれると、黒色帯電粒子30が対向電極34側に集まるため、対向基板14側から見た観測者サイドでは黒色が観測され黒表示の画素となる。
【0048】
図3を参照して、各データ電極へ供給されるデータ信号と、表示状態との関係について説明する。図3(a)は、各データ電極20に供給されるデータ信号を示す図であり、図3(b)は、図3(a)で示すデータ信号が、各画素電極22に書き込まれたときの表示状態を模式的に示す図である。
【0049】
図3では、X方向に並ぶ1ライン分の画素電極22に、データ信号を書き込む場合を例にとって説明する。まず、図3(a)に示すように、−10Vまたは+10Vのいずれかのデータ信号が各データ電極20に供給されたものとして説明する。一方、データ信号の書き込みを所望する1ラインに対しては、表示媒体10の投光基板12側から、所定波長の光Lが照射される。このようにすれば、光Lが照射された1ラインのみ、光導電体18がオンとなり、光Lが照射されない他のラインの光導電体18はオフとなる。よって、光Lが照射された1ライン分の画素電極22にのみ、データ信号が書き込まれる。
【0050】
そして、図3(b)に示すように、各画素電極22に書き込まれたデータ信号に応じて表示層26が駆動される。例えば、画素電極22に+10Vのデータ信号が書き込まれた画素は、正に帯電した白色帯電粒子28(図2(b)参照)が対向基板14側に移動して、対向基板14側から見た観測者サイドでは白表示の画素となる。一方、画素電極22に−10Vのデータ信号が書き込まれた画素は、負に帯電した黒色帯電粒子30(図2(b)参照)が対向基板14側に移動して、対向基板14側から見た観測者サイドでは黒表示の画素となる。
【0051】
なお、光Lの照射を停止した後は、光導電体18がオフとなる。ここで、画素電極22の下層には、容量電極13(図2(b)参照)が配設されているので、画素電極22に書き込まれたデータ信号はすぐには消滅せず、しばらくの間、保持される。さらに、そのままの状態が長時間経過すると、画素電極22に書き込まれたデータ信号は、失われるが、帯電粒子(白色帯電粒子28および黒色帯電粒子30)は、静電吸着や分子間力などによって各電極(画素電極22または対向電極34)側にとどまり、表示状態は保持される。
【0052】
第1実施形態の表示媒体10によれば、データ電極20と画素電極22との間に光導電体18を配設することにより、光を利用して、データ電極20と画素電極22との間に流れる電流を制御することができる。よって、各画素毎に電界効果型トランジスタを設ける必要がなく、表示媒体10を安価に構成することができる。
【0053】
また、各光導電体18は、複数の画素電極22のそれぞれに対し設けられたものであり、各光導電体18は、各画素電極22毎に、互いに分離して配設されている。換言すれば、1の画素電極22に接続する1の光導電体18は、隣り合う他の画素電極22とは非接触である。よって、1の光導電体18がオンとなったときには、その光導電体18に接触した1の画素電極22のみにデータ信号が書き込まれ、隣り合う他の画素電極22には影響を及ぼさないから、高品位表示を実現できる。
【0054】
図4から図6を参照して、本発明の第2実施形態である表示システム40について説明する。図4は、第2実施形態の表示システム40の外観構成を示す斜視図である。図4に示すように、表示システム40は、上述した第1実施形態の表示媒体10と、書込装置50とを備えている。この表示システム40において、表示媒体10と書込装置50とは別体に構成されている。よって、書込装置50により、表示媒体10に画像を書き込んだ後は、表示媒体10を書込装置50から取り外して、自由に携帯することができる。上述したように、本実施形態の表示媒体10によれば、データ信号の供給停止後も、表示状態が維持されるので、表示媒体10を書込装置50から取り外して携帯する場合においても、表示媒体10に書き込まれた画像は消えずに保持される。
【0055】
書込装置50は、概ね直方体の外形であり、主に、本体52と、プラテンガラス54と、光照射装置58と、カバー60とが設けられている。書込装置50は、主に不図示のコンピュータと接続されて、該コンピュータから送信された画像データに基づいて、表示媒体10にデータ信号を供給し、画像を書き込むものである。
【0056】
本体52は、概ね直方体の外形であり、上面は大きく開口されている。そして、その開口部に、例えば、ガラス板など透明な板状部材で構成されるプラテンガラス54が嵌め込まれている。本体52の内部には、光照射装置58の移動スペースや、光照射装置58を支持する部材および駆動させる機能などを配設するスペースが確保されているため、本体52の上面は、プラテンガラス54よりも大きく形成されている。
【0057】
プラテンガラス54は、平面視で長方形に形成されており、表示媒体10を載置することが可能な大きさを有する。図4に示すように、プラテンガラス54は、本体52の上面よりも低い位置に嵌め込まれているので、プラテンガラス54の縁辺と、本体52の上面との間には段差56が存在している。この段差56を利用して、プラテンガラス54の縁辺と、表示媒体10の縁辺とを位置合わせし、表示媒体10をプラテンガラス54上の所定の位置に正確に載置することができる。
【0058】
光照射装置58は、一方向に配列された光源が設けられており、光源を発光させることにより、上方(すなわち、プラテンガラス54側)に向かって、所定波長のライン状の光(以下、ライン光と称する)を照射する。この光照射装置58は、本体52内において、光源の配列方向に対し、垂直な方向に往復移動可能に設けられている。以下、光照射装置58における光源の配列方向を、光照射装置58のX方向と称し、光照射装置58の往復移動方向を、光照射装置58のY方向と称する。
【0059】
本実施形態の光照射装置58は、表示媒体10において、X方向に並ぶ1ライン分の光導電体18を一度に照射することができるものとして説明する。この光照射装置58は、光源から発光したライン状の光をさらに絞り込んで表示媒体10に導くシリンドリカルレンズ(特許請求の範囲に記載の導光手段の一例)を内包する。このようにすれば、表示媒体10の極めて狭い範囲のみを照射することができるので、高精細な画像の書き込みが可能である。
【0060】
カバー60は、背面側の蝶番(図示せず)を介して、本体52に開閉自在に取り付けられてなる。対向基板14側を上にして、プラテンガラス54上に表示媒体10を載置し、カバー60を閉じると、カバー60の下面が表示媒体10の上面に接する。このカバー60の下面には、データ信号出力端子62が設けられている。このデータ信号出力端子62は、表示媒体10において露出するデータ電極20と同じ数、形成されている。
【0061】
図4に示すように、表示媒体10の左上角とプラテンガラス54の左上隅とが合うように位置合わせして表示媒体10を載置し、カバー60を閉じると、表示媒体10において露出するデータ電極20と、カバー60に設けられたデータ信号出力端子62とが1対1に接触し、電気的な接点がとられる。この接点を介して、表示媒体10にデータ信号が供給される。
【0062】
書込装置50によれば、光照射装置58により、表示媒体10にX方向に並ぶ1ライン分の光導電体18に光を照射し、表示媒体10にデータ信号を供給することで、1ライン分の画素電極22に、データ信号を書き込むことができる。そして、1ライン分のデータ信号書き込み後は、光照射装置58を、書込装置50および表示媒体10のY方向に1ライン分移動させ、表示媒体10において、次の1ラインにデータ信号を書き込む。このような動作を繰り返すことにより、全ライン分の画素電極22にデータ電極を書き込み、表示媒体10に所望の画像を表示させることができる。
【0063】
図5は、上述した書込装置50の電気的な構成を示すブロック図である。図5に示すように、書込装置50は、CPU70と、ROM72と、RAM74と、インターフェイス(以下、I/Fと表記)76と、光照射装置58と、光照射装置駆動モータ78と、データ信号生成回路80とが設けられており、これらはバスを介して接続されている。
【0064】
CPU70は、この書込装置50を総括的に制御する中央演算処理であり、図6のフローチャートで示す処理を実行するプログラムなどの各種プログラムを実行する。ROM72は、CPU70により実行される各種制御プログラムや固定値データを記憶する不揮発性のメモリであり、RAM74は、CPU70により実行される各種処理に必要なデータやプログラムを一時的に記憶するものである。
【0065】
I/F76は、パーソナルコンピュータ(PC)などの外部装置を有線接続又は無線接続するためのインターフェイスであり、このI/F76を介して接続されたパーソナルコンピュータ(PC)などの外部装置とのデータの入出力を制御するものである。
【0066】
光照射装置駆動モータ78は、上述した光照射装置58を、書込装置50のY方向(図4参照)に設けられた搬送用レールの長手方向に沿って往復移動させるためのモータであり、その駆動はCPU70により制御される。データ信号生成回路80は、I/F76を介して入力された画像データに従ってデータ信号を生成し、データ信号出力端子62に供給するものである。
【0067】
図6を参照し、上述のように構成された書込装置50によって実行される書込処理について説明する。図6は、第2実施形態の書込装置50で実行される書込処理のフローチャートである。この書込処理は、プラテンガラス54に表示媒体10が載置されてカバー62が閉じられ、書込実行コマンドが入力されることによって起動する。ここで、書込実行コマンドは、書込装置50に設けられた非図示の実行ボタンの操作又はI/F76を介して接続されたPCにおいて行われる所定の操作などによって入力される。
【0068】
この書込処理では、まず、変数Nを「1」とし(S2)、次に、光照射装置駆動モータ78(図5参照)を駆動することにより、表示媒体10のNライン目を照射する位置に、光照射装置58を搬送する(S4)。なお、本実施形態では、Nライン目とは、表示媒体10のデータ電極20が露出した側を先頭としてY方向に数えたライン数である。
【0069】
そして、光照射装置58の搬送完了後、光照射装置58の光源を発光させ、所定波長のライン光を照射する(S6)。これにより、表示媒体10のNライン目にライン光が照射される。次に、データ信号生成回路80(図5参照)を駆動することにより、Nライン目に書き込むべきデータ信号を生成し、データ信号出力端子62を介して表示媒体10のデータ電極20に供給する(S8)。Nライン目にはライン光が照射中であるので、Nライン目の光導電体18のみオンとなっている。したがって、各データ電極20に供給されたデータ信号は、Nライン目の画素電極22にのみ書き込まれ、他のラインの画素電極22には書き込まれない。
【0070】
次に、光照射装置58によるライン光の照射を停止する(S10)。これにより、Nライン目の光導電体18がオフとなる。よって、データ電極20と画素電極22との間は非導通とされ、データ電極20からの画素電極22に対するデータ信号の書き込みは終了する。ここで、表示層26を駆動するためには、所定時間、画素電極22にデータ信号が印加されている必要がある。本実施形態の表示媒体10によれば、画素電極22の下層に配設された容量電極13により、画素電極22に書き込まれたデータ信号は、しばらくの間保持されるので、1ライン分の画素電極22に対するデータ信号の書き込み時間をそれぞれ短くすることができる。その結果、全体として高速で書き込むことができる。
【0071】
次に、データ信号出力端子62からのデータ信号の供給を停止する(S12)。データ信号の供給停止により、データ電極20の電圧が0Vとなるが、これより前に、光導電体18がオフとなっているので、画素電極22が、このデータ信号停止の影響を受けることが抑制され、高品位表示を実現できる。
【0072】
次に、Nに「1」を加算し(S14)、最終ラインまで書き込んだか否かを判断する(S16)。最終ラインまで書き込まれてない場合(S16:No)、S4の処理に戻る。そして、光照射装置58を搬送する(S4)。これにより、被照射位置が、Y方向に隣接する次のラインに移動され(S4)、次のラインに対し、ライン光の照射およびデータ信号の供給が行われる。このようにして処理を繰り返すうちに、表示媒体10の最終ラインまで書き込まれると(S16:Yes)、書込処理を終了する。
【0073】
本実施形態の表示システム40によれば、表示媒体10の被照射位置が1ラインずつ順次移動され、その移動された被照射位置に応じたデータ信号がデータ電極20に供給される。すなわち、データ信号を1ラインずつ順次書き込むことができる。よって、表示媒体に表示させるパターンを、書込装置側で一旦生成し、それを表示媒体に投影していた従来の手法(図10参照)に比較して、書込装置50の構成が簡便であり、製造コストが安価となる。
【0074】
図7および図8を参照して、本発明の第3実施形態の表示システムについて説明する。第3実施形態の表示システムは、第2実施形態の表示システム40における書込装置50に代えて、書込装置90を備える点が異なり、他は共通である。よって、本第3実施形態では、主に書込装置90について説明する。
【0075】
上述した第2実施形態の書込装置50は、ライン状の光を照射するものであった。これに対し、第3実施形態の書込装置90は、スポット状のレーザ光を照射する点が、第2実施形態の書込装置50と異なる。第3実施形態の書込装置90の説明をするに当たり、第2実施形態の書込装置50と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
図7は、第3実施形態における書込装置90の電気的構成を示すブロック図である。図7に示すように、書込装置90は、光照射装置58に代えて、レーザ光照射装置92が設けられている。レーザ光照射装置92は、スポット状のレーザ光(特許請求の範囲に記載の光の一例)を発光するレーザ発光部が設けられ、レーザ光で表示媒体10を走査しながら照射する。なお、このようなレーザ光照射装置92は、公知の構成であるため、構成の詳細な図示および説明は省略する。
【0077】
図8を参照し、書込装置90により実行される書込処理について説明する。図8は、第3実施形態における書込装置90で実行される書込処理のフローチャートである。この書込処理は、プラテンガラス54に表示媒体10が載置されてカバー62が閉じられ、書込実行コマンドが入力されることによって起動する。
【0078】
この書込処理では、まず、変数Mおよび変数Nを「1」とする(S32)。次に、Mライン目におけるN画素目の光導電体18を被照射位置として、レーザ光照射装置80によりレーザ光を照射する(S34)。レーザ光が照射されると、MラインN画素目の光導電体18がオンとなって、N番目のデータ電極20と、MラインN画素目の画素電極22とが導通する。なお、本実施形態では、Mライン目とは、表示媒体10のデータ電極20が露出した側を先頭としてY方向に数えたライン数であり、N画素目とは、表示媒体10の対向基板14に向かって左端を先頭としてX方向に数えた画素数である。
【0079】
次に、データ信号生成回路80(図7参照)により、MラインN画素目の画素電極22に書き込むべきデータ信号を、N番目のデータ電極20に出力する(S36)。上述したように、レーザ光の照射により、MラインN番目の画素電極22とN番目のデータ電極20のみが導通しているから、データ電極20に供給されたデータ信号は、MラインN番目の画素電極22のみに書き込まれ、他の画素電極22には書き込まれない。
【0080】
次に、データ信号出力端子62からのデータ信号の供給を停止する(S40)。次に、Nに「1」を加算し(S42)、Mライン目の全ての画素電極22に対しデータ信号が書き込まれたか否かを判断する(S44)。未だ全ての画素電極22に対しデータ信号が書き込まれてない場合(S44:No)、S34の処理に戻り、レーザ光照射装置80による被照射位置を、X方向に隣接する次の画素電極22に移動させ(S34)、レーザ光の照射およびデータ信号の供給を繰り返す。このようにして処理を繰り返すうちに、Mライン目の全ての画素電極22に対しデータ信号が書き込まれると(S44:Yes)、変数Nを「1」とし(S46)、Mに「1」を加算する(S48)。次に、最終ラインまで書き込んだか否かを判断する(S50)。未だ最終ラインまでデータ信号が書き込まれていない場合(S50:No)、S34の処理に戻り、レーザ光照射装置80による被照射位置を、Y方向に隣接する次のラインの1画素目に移動させ(S34)、レーザ光の照射およびデータ信号の出力を繰り返す。このようにして処理を繰り返すうちに、最終ラインまでの書き込みが終了すると(S50:Yes)、書込処理を終了する。
【0081】
第3実施形態の表示システムによれば、表示媒体10の被照射位置が順次移動され、その移動された被照射位置に応じたデータ信号がデータ電極20に供給されるので、データ信号を、1画素ずつ順次書き込むことができる。よって、表示媒体10に表示させるパターンを、書込装置側で一旦生成し、それを表示媒体に投影していた従来の手法(図10参照)に比較して、書込装置90の構成が簡便であり、製造コストが安価となる。
【0082】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0083】
例えば、表示媒体10において、光導電体18は各画素電極22毎に設けられ、且つ、各画素電極22毎に互いに分離して配設されていた。これに代えて、光導電体18を、透光基板12の一面を覆うように層状に配設してもよい。なお、ここでいう「透光基板12の一面を覆う」とは、透光基板12の全面が光導電体18で覆われている場合に限定されるものではなく、少なくとも画素電極22が配設された表示領域において、光導電体18がベタ状に配設されていることを含む意味である。
【0084】
図9は、変形例の表示媒体10において、透光基板12に配設された電極と光導電体18とを模式的に示す図である。図9に示すように、透光基板12の一面においてベタ状に光導電体18を配設し、さらに、その上層にデータ電極20および画素電極22を配設するようにすれば、光導電体18を、例えば、スピンコートなど安価かつ容易な手法で形成することができる。なお、このように、光導電体18を透光基板12一面に層状に配設した場合、書込装置としては、第3実施形態で説明した、スポット状のレーザ光を照射するタイプの書込装置90が好適に用いられる。十分に絞り込んだレーザ光により、1画素分の光導電体18のごく僅かな領域のみ照射すれば、光導電体18が連続して設けられていたとしても、目的とする画素電極22のみを、データ電極20に導通させ、高精細な画像表示を実現できるからである。
【0085】
また、上述した実施形態の表示媒体10は、モノクロ表示をするものとして説明したが、カラー表示可能に構成された表示媒体にも、本発明を適用することができる。
【0086】
また、上述した実施形態の表示媒体10の表示層26は、帯電粒子28,30を泳動させることにより画像を表示するいわゆる電気泳動法を利用するものであったが、表示層26の構成はこれに限られない。特に、強誘電性液晶など、外部電圧がゼロになっても、表示状態を保つ性質の表示層を、好適に用いることができる。
【0087】
また、上述した実施形態の表示システム40は、使用者が手作業により、プラテンガラス54上に表示媒体10を載置して、表示媒体10にデータ信号を書き込むものであった。これに代えて、例えば、スキャナやコピー機などに設けられる自動紙送り機と同様の構成を書込装置50,90に設け、表示媒体10を自動送りするものであってもよい。このようにすれば、表示媒体10を正確な書き込み位置に送ることができるので、位置合わせのための構成が設けられずとも良い。
【0088】
また、書込装置50の光照射装置58は、ライン光を照射するために一方向に配設された光源が設けられているものとして説明した。この光照射装置58が、プラテンガラス54側からの反射光をレンズにより光電変換素子に導き、光電変換素子が反射光強度に応じた電気信号を出力することによって画像を読み取る、いわゆるラインイメージセンサで構成されたものであってもよい。このようにすれば、書込装置50を、表示媒体10に画像を書き込む装置としてだけではなく、例えば、プラテンガラス54に載置された原稿を読み取るスキャナとしても兼用することができる。
【0089】
また、上述した実施形態では、データ電極20の対向基板14の外周側に露出している部分とデータ信号出力端子62とが接触することによって、データ信号生成回路80と各データ電極20とが電気的に接続されるものとして説明したが、データ信号生成回路80と各データ電極20とが接続されれば、その形態はどのようなものであってもよい。
【0090】
また、上述した第2実施形態の書込処理(図6参照)においては、光照射装置58により1ラインを照射した後、次の1ラインを照射するまでの間に、一旦、光照射装置58によるライン光の照射を停止するものとして説明したが(S10)、これに代えて、ライン光の照射を停止せず、連続して光を照射するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1実施形態における表示媒体を説明する図である。
【図2】(a)は、表示媒体の透光基板に配設された電極を模式的に示す図であり、(b)は、表示媒体の一部を拡大して示す断面図である。
【図3】(a)は、各データ電極に供給されるデータ信号を示す図であり、(b)は、(a)で示すデータ信号が、各画素電極に書き込まれたときの表示状態を模式的に示す図である。
【図4】第2実施形態の表示システムの外観構成を示す斜視図である。
【図5】第2実施形態における書込装置の電気的な構成を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態の書込装置で実行される書込処理のフローチャートである。
【図7】第3実施形態における書込装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】第3実施形態の書込装置で実行される書込処理のフローチャートである。
【図9】変形例の表示媒体において、透光基板に配設された電極と光導電体とを模式的に示す図である。
【図10】従来の表示媒体と、その表示媒体に画像を書き込む書き込み装置との概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
12 透光基板
18 光導電体
20 データ電極
22 画素電極
26 表示層
34 対向電極
58 光照射装置(光照射手段の一例)
92 レーザ光照射装置(光照射手段の一例)
L 光
S4 被照射位置移動手段の一例
S8 データ信号供給手段の一例
S10 光照射停止手段の一例
S34 被照射位置移動手段の一例
S36 データ信号供給手段の一例

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する透光基板に配設された画素電極と、
その画素電極に書き込むデータ信号を供給するデータ電極と、
そのデータ電極および前記画素電極よりも前記透光基板側において、そのデータ電極と画素電極とに接続し、光が照射されることに起因して、データ電極と画素電極とを電気的に導通させる光導電体と、
前記画素電極に対向して配置された対向電極と、
その対向電極と前記画素電極との間に配置され、前記画素電極に書き込まれたデータ信号に応じて駆動される表示層とを備えたことを特徴とする表示媒体。
【請求項2】
前記画素電極よりも前記透光基板側に形成された容量電極と、
その容量電極と前記画素電極との間に配設された絶縁膜とを備えることを特徴とする請求項1記載の表示媒体。
【請求項3】
前記光導電体は、複数の画素電極のそれぞれに対し設けられたものであって、
その複数の画素電極のそれぞれに対し設けられた光導電体は、各画素電極毎に、互いに分離して配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表示媒体。
【請求項4】
前記光導電体は、前記データ電極および前記画素電極と、前記透光基板との間に層状に配設されるものであって、前記透光基板の一面を覆うものであることを特徴とする請求項1または2に記載の表示媒体。
【請求項5】
透光性を有する透光基板に配設された画素電極と、
その画素電極に書き込むデータ信号を供給するデータ電極と、
前記データ電極および前記画素電極よりも前記透光基板側において、そのデータ電極と画素電極とに接続し、光が照射されることに起因して、データ電極と画素電極とを電気的に導通させ、光の照射が停止されると、データ電極と画素電極とを非導通とする光導電体と、
前記画素電極に対向して配置された対向電極と、
その対向電極と前記画素電極との間に配置され、前記画素電極に書き込まれたデータ信号に応じて駆動される表示層とを備えた表示媒体と、
その表示媒体に光を照射する光照射手段とを備えたことを特徴とする表示システム。
【請求項6】
前記表示媒体は、前記画素電極よりも前記透光基板側に形成された容量電極と、
その容量電極と前記画素電極との間に配設された絶縁膜とを備えることを特徴とする請求項5記載の表示システム。
【請求項7】
前記光照射手段による表示媒体の被照射位置を順次移動させる被照射位置移動手段と、
その被照射位置移動手段により移動された被照射位置に応じたデータ信号を、前記データ電極に供給するデータ信号供給手段とを備えることを特徴とする請求項5または6に記載の表示システム。
【請求項8】
前記データ信号供給手段によるデータ信号の供給中に、前記光照射手段による光の照射を停止する光照射停止手段を備えたことを特徴とする請求項7記載の表示システム。
【請求項9】
前記光照射手段は、一方向に配列された光源と、
その光源からの光を絞り込んで前記表示媒体に導く導光手段とを備えることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の表示システム。
【請求項10】
前記光照射手段は、レーザ光を照射するものであることを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−164738(P2008−164738A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351658(P2006−351658)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】