説明

表示装置、表示装置の駆動方法および情報表示システム

【課題】 表示される情報の内容を容易に変更でき、消費電力が少ない表示装置を提供する。
【解決手段】 制御系を、電源制御系と、主制御系と、液晶表示素子駆動系とに分ける。主電源スイッチ192がオンしていると、定常状態では、電源制御系であるサブ制御回路170にのみ給電される。表示装置80の制御に関するイベントが生ずると、給電回路172が導通状態にされることによって主制御系に対する給電が行われ主制御系が動作可能状態になる。表示装置80の制御に関するイベントが液晶表示素子の表示の書き換えを伴う場合には、液晶用給電回路193が導通状態にされることによって液晶表示素子駆動系にも給電される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報を表示することによって多数の人に情報を提供することができる表示装置および情報表示システムに関し、特に、表示される情報の内容を容易に変更できる表示装置、表示装置の駆動方法および情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の人に情報を提供することができる情報提供媒体の一例として、鉄道会社の駅に置かれている発車時刻表がある。図17は、鉄道会社の駅に置かれている発車時刻表の一例を示す説明図である。一般的に、発車時刻表は、一日の全列車の発車時刻に加え、曜日による発車時刻や行き先の違いなど、多くの情報を限られた表示面積のなかに掲示している。このような時刻表は、路線、駅などによって、異なる数字や記号を含むことが多い。そのため、利用者は、所望の列車の発車時刻を見つけにくいことが多い。
【0003】
また、鉄道などの交通機関の駅では、現在駅において何時の発車時刻の列車に乗車すれば、利用者が目的とする行先駅に到着できるかを示す時刻表示が行われている。そのような時刻表示として、終電車に関する終電時刻表がある。しかし、鉄道会社間で、その表示方法は統一されていないので、利用者にとって判読しにくい。
【0004】
また、終電車の発車時刻は、事故の発生等の種々の理由に起因して変更されることがある。一般的に時刻表示のための情報提供媒体は、印字がなされた紙や樹脂板などの印刷媒体である。そのため、終電時刻表の情報を変更することは容易でない。すなわち、終電車の発車時刻の臨時変更に即応することが難しい。終電時刻表の臨時変更に限らず、発車時刻表についても、列車の遅れ等による発車時刻の変更に応じて情報を変更することは容易でない。
【0005】
情報提供媒体として印刷媒体を用いる場合には、時刻表の内容を変更するには、様々な情報を含む時刻表のなかで、変更すべき表示箇所をそれぞれ書き換える必要がある。時刻表の内容を変更する際に、粘着性の裏面剤を備え変更後の情報が記載された白色紙を、時刻表に部分的に貼り付けることによって処置されることもある。
【0006】
また、路線図と終発時刻表とを組み合わせて、利用者が視認しやすくした終電時刻表が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。さらに、乗り換え時間を含めた降車駅別の終電時刻表、駅構内やホームに必要な情報をタイムリーに表示できる仕組みを持った発車時刻表示システムが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
また、携帯電話とインターネットを利用したビジネスも提案されている。例えば、依頼主の要請により、広告業者がインターネットを経由して希望するタイミングにおいて、会員登録をした人々に対して、電子メールの広告をほぼ同時に送信するというものがある。あるいは、KDDI株式会社が提供するPacketOne接続サービスやSMS網起動サービスを用いて、遠隔地から、通信モジュールを組み込んだ機器を所定の範囲で操作することもできる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0008】
【特許文献1】特開平11−249561号公報
【特許文献2】特開平7−302283号公報
【非特許文献1】日経エレクトロニクス、日経BP社、2003年8月4日発行、No.853、p.100−103
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、従来技術では、即応性の情報提供を行うことが難しい。すなわち、情報提供媒体として印刷媒体を用いる場合には、情報の内容を変更する際に、人手によって部分的に書き換えたり、変更後の情報が印字された紙を貼り付ける必要があるので、変更内容を利用者に伝えることができるようになるまでに時間がかかる。また、人手によって変更作業が行われるので、情報の内容変更に関するコストは高い。
【0010】
また、特許文献2に記載されたシステムは、各駅における列車の発車時刻を集中管理するホストコンピュータが設けられ、ホストコンピュータから各駅に設けられている端末装置に、変更後の時刻表などの情報を配信するように構成されている。そのような構成では、例えば一鉄道会社内などの閉じた環境で活用することはできるが、複数の鉄道会社に亘って情報を迅速に配信するようにすることは難しい。仮に、複数の鉄道会社に亘って情報を配信する一つのホストコンピュータを設けたとしても、地震などの発生によって各鉄道会社における各駅の時刻表を臨時に変更する場合には、各鉄道会社から個別に変更後の情報を収集しなければならず、迅速な変更処理を行うことはできない。
【0011】
さらに、特許文献2に記載されたシステムでは、利用者が、時刻表を表示する表示装置としての端末装置を利用可能にするには、端末装置に常時給電されている必要がある。その結果、端末装置の消費電力量が大きくなる。また、電源装置から各端末装置に給電するための電源ラインなどの電力供給設備を設置しなければならず、設置コストが高くなる。さらに、端末装置は、時刻表データを保有するホストコンピュータとLANで接続されているので、LANを敷設する必要があり、そのことからも設置コストが高くなる。
【0012】
そこで、本発明は、表示される情報の内容を容易に変更でき、情報の内容変更に関するコスト、システム構築に関するコストおよび運用コストを低減できるとともに、表示される情報の内容を迅速に変更することができる表示装置、表示装置の駆動方法および情報表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の態様1は、表示データにもとづく情報を表示する表示装置であって、メモリ性を有する表示素子と、表示素子を駆動する駆動回路と、コマンドおよび表示データを入力するインタフェース部と、インタフェース部に入力されたコマンドに応じて、インタフェース部に入力されている表示データにより駆動回路に表示素子の表示を更新させる主制御部と、主制御部がコマンドおよび表示データを入力するときに電源部から主制御部に電力供給され、駆動回路が表示素子の表示を更新するときに電源部から駆動回路に電力供給されるように制御する電源制御部(例えば、サブ制御回路170、液晶用給電回路193)とを含むことを特徴とする表示装置を提供する。
【0014】
態様2は、態様1において、電源部に一次電池のみを設けた表示装置を提供する。
【0015】
態様3は、態様1において、電源部に二次電池を設け、太陽電池で二次電池を充電するようにした表示装置を提供する。
【0016】
態様4は、態様1、2または3において、インタフェース部が、装着された記憶媒体からデータを読み取るローカルインタフェース部(例えば、CFカードインタフェース195やUSBインタフェース196)と、無線伝送路を介して、コマンドおよび表示データを格納するサーバ(例えば、配信サーバ410)をアクセスする無線通信インタフェース部(例えば、PDCアダプタ182)とを含む表示装置を提供する。
【0017】
態様5は、態様1、2、3または4において、電源制御部が、タイムアップ時刻が到来すると主制御部に電力供給することを指定する信号を出力するタイマ回路(例えば、タイムアップ信号を出力する時計回路173)を含む表示装置を提供する。
【0018】
態様6は、態様1、2、3、4または5において、操作に応じて主制御部に電力供給することを指定する信号を出力する電源スイッチ(例えば、メイン制御部用電源スイッチ194)を含む表示装置を提供する。
【0019】
態様7は、態様1〜6のそれぞれにおいて、電源制御部が、赤外線通信によって起動コードを受信すると主制御部に電力供給することを指定する信号を出力する赤外線受信回路を含む表示装置を提供する。
【0020】
態様8は、態様1〜7のそれぞれにおいて、メモリ性を有する表示素子がカイラルネマチック液晶表示素子である表示装置を提供する。
【0021】
態様9は、メモリ性を有する表示素子を4以上備え、そのうちの一の表示素子の表示を更新させる際に、他のすべての表示素子の表示電極に印加される電圧をオフとし、4以上のメモリ性を有する表示素子を、順に書き換えする表示装置の駆動方法を提供する。なお、この態様において、表示素子の表示の書き換えは事前に設定した内蔵プログラムによることができる。また、外部の制御センタからの無線などを介した遠隔制御で実行することができる。あるいは、手動操作により、書き換えを起動することもできる。
【0022】
態様10は、態様1〜8のいずれかの表示装置と、表示装置と無線伝送路を介して情報授受可能であり、表示内容の変更指示に応じて変更後の表示データを作成する表示管理サーバ(例えば、サーバ310)とを備えたことを特徴とする情報表示システムを提供する。
【0023】
態様11は、態様10において、無線伝送路が公衆携帯電話網であり、表示装置がインタフェース部として携帯電話通信モジュールを有する情報表示システムを提供する。
【0024】
態様12は、態様10または11において、表示管理サーバが、表示データとして交通機関における時刻表を作成し、表示装置が、表示素子に時刻表を表示する情報表示システムを提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、表示される情報の内容を容易に変更でき、情報の内容変更に関するコスト、システム構築に関するコストおよび運用コストを低減できるとともに、表示される情報の内容を迅速に変更することができる表示装置を実現できる。また、一つの表示管理サーバから多数の表示装置に表示データを送信することができる汎用性の高いシステムを実現できる。
【0026】
本発明においては、無線LANやPHSなどの従来の通信技術を用いることもできる。また、携帯電話機としてFerica搭載携帯電話機を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の情報表示システムの構成例を示すブロック図である。図1に示す情報表示システムにおいて、パーソナルコンピュータなどの端末装置100は、広域通信ネットワークとしてのインターネット200(第1の通信ネットワーク)を介して、情報表示サービス会社300またはそのサービスを代行する会社等に設置されている表示管理サーバとしてのサーバ310に接続可能である。図1には、サーバ310が情報表示サービス会社300に設置されている例が示されている。
【0028】
サーバ310は、端末装置100から送信された情報にもとづいて、データベース320に表示データを格納したり、データベース320に格納されている表示データを変更したりする。なお、端末装置100には、Webページを閲覧するためのWebブラウザが搭載されているが、端末装置100はパーソナルコンピュータに限られず、端末装置100としてPDAや携帯電話機を使用することもできる。この場合、利用者は、インターネット200を介さずに電話回線網を経由してサーバ310にアクセスすることもできる。この態様において、利用者は、表示変更のタイミングを再設定でき、あるいは、あらかじめ準備された複数の表示情報のデータを選択して決定することができる。
【0029】
また、サーバ310は、専用回線500を介して、サーバ310から受信した表示データを無線通信ネットワーク(第2の通信ネットワーク)を介して表示装置に送信する配信装置としての配信サーバ410と通信可能である。配信サーバ410は、携帯電話網運営会社400または携帯電話網運営会社400のサービスを代行する会社等に設置されている。図1には、配信サーバ410が携帯電話網運営会社400に設置されている例が示されている。
【0030】
配信サーバ410は、ディジタル公衆携帯電話網(特にパケット網)におけるパケット交換機(以下、交換機という。)420に接続されている。交換機420は、ディジタル公衆携帯電話網における基地局600との間でデータの送受信を行う。ただし、配信サーバ410を、交換機420を介さずにパケット網に接続するように構成してもよい。なお、図1には、一つの基地局600のみが示されているが、システム内には多数の基地局が存在する。また、図1には、3つの表示装置80のみを示しているが、システム内にはより多くの表示装置が存在しうる。例えば、鉄道会社の駅の場合、一つの管轄区域に100〜4000駅が存在する。
【0031】
データベース320には、それぞれの表示装置が現在表示している表示内容に対応したデータ(表示データ)が、それぞれの表示装置に対応づけられて格納されている。データベース320において、表示データの形式は、ビットマップ形式でもよいが、JPEGやGIFなどのデータ圧縮された形式でもよい。また、特定の画像作成アプリケーションソフトウェアが用いるファイル形式でもよい。また、データベース320にはテキスト部分のデータのみが格納され、サーバ310が、所定の表示フォーマット(表題や罫線など)のデータを記憶し、データベース320に記憶されているテキストデータと表示フォーマットのデータとを用いて、表示データを作成するように構成してもよい。また、表示データは、端末装置100からの変更要求に応じて、Webページに含められて端末装置100に送信されるので、HTML形式またはXML形式の表示データが、上記のデータ形式の表示データと併せて、または、上記のデータ形式の表示データに代えてデータベース320に記憶されていることが好ましい。
【0032】
サーバ310と配信サーバ410とは、端末装置100から受信した表示内容の変更指示に応じて変更後の表示データを作成し、変更後の表示データを無線通信ネットワークを介して表示装置80に送信する表示管理システムを構成する。また、表示装置80は、PDC(Personal Digital Cellular )アダプタを内蔵し、無線通信によって基地局600を介して、配信サーバ410と通信可能である。
【0033】
以下、表示装置80として、鉄道会社の駅等に設置され時刻表を表示する時刻表示装置をあげて説明する。従って、表示装置80は鉄道会社が情報表示サービス会社300から購入したり、情報表示サービス会社300から貸与されたり、情報表示サービス会社300から購入した第三者から貸与されたりする。また、端末装置100は、鉄道会社内に存在するパーソナルコンピュータなどである。なお、本実施の形態では時刻表示装置を例にするが、本発明の情報表示システムは、時刻表の表示を目的としたシステムに限定されない。
【0034】
図2は、表示装置80を模式的に示す正面図である。表示装置80において、メモリ性を有する表示素子が用いられている。メモリ性とは、駆動電圧が実質的に0Vの状態で、表示情報を保持できる性質をいう。メモリ性を有する表示素子として、例えばコレステリックまたはカイラルネマチック液晶表示素子(以下、CL−LCDということがある)がある。図2に例示する表示装置80は、8枚のカイラルネマチック液晶表示素子1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H(以下、カイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hと表記する。)の前面に前面板(ガラス基板)10が設置された構成である。
【0035】
なお、メモリ性を有する表示素子として、CL−LCDの他に、反強誘電性液晶表示素子(以下、AF−LCDという。)等がある。また、カラー表示ではなくモノクロ4階調程度の表示を行えばよい場合には、マイクロカプセル型電気泳動方式の表示素子を用いてもよい。しかし、表示装置80として、低消費電力化が可能で、マルチカラー表示をすることができるCL−LCDを使用することが好ましい。
【0036】
それぞれのカイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hのサイズは、例えば、横440mm、縦68mmであり、それぞれのカイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hと隣接するカイラルネマチック液晶表示素子との間に、約25mmの間隔が設けられている。一例として、8枚カイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hのうちの7枚は、3時間分の列車の発車時刻を表示する。残りの1枚は、広告表示用として用いられる。なお、平日上り用、平日下り用、休日上り用、休日下り用の全ての時刻表を表示するには、図2に例示する表示装置80を、4つ順に隣接させて、または表裏それぞれ2つを隣接させて、設置すればよい。
【0037】
この場合、各々の表示装置に対して一つの無線通信インタフェース部(例えばPDCモジュール)を設けることもできるが、4つの表示装置を一つの組として、一つの無線通信インタフェース部を設置することが簡便で好ましい。
【0038】
表示装置80には、時刻表を表示する部分の他に、図2において破線で示すように、印刷等の手法によって情報が形成される情報表示領域が設けられていてもよい。情報表示領域は、図1に示す表示装置80では、表示装置80上側に設けられているが、他の部分に設けられていてもよい。そのような情報表示領域には、一般に、鉄道会社や駅名を示す表示、時刻表であることの表示、広告的な表示などの、表示内容が固定的である表示が形成される。
【0039】
図3は、図2におけるP−Q断面の部分断面図である。なお、図3では、カイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hのうちの2枚のカイラルネマチック液晶表示素子1A,1Hのみが示されている。図3において、前面板10とカイラルネマチック液晶表示素子1A,1Hとの間には衝撃吸収性の透明樹脂層12が挟持されている。このように、大型の表示面を有する表示素子の表示面に応力が生じないように柔らかい樹脂が配置される。透明樹脂層12は、人間が通常程度の打撃力を前面板10に与えても、カイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hの表示状態が変化しないようにするためのものである。
【0040】
カイラルネマチック液晶表示素子1A,1Hの背面側に、カイラルネマチック液晶表示素子1A,1Hを駆動する電子回路や内蔵電源などを収容した電気回路ブロック13が配置されている。さらに、それらの部材を保護するように筐体14が設けられ、前面板10と密着するように固定化されている。筐体14には、動作試験用の端子、内蔵電源に充電するための給電端子、および保守用の蓋などが設られていてもよい。図3に示す構成では、表示装置80の上側の2つの隅が、ボルト付き支柱90で壁面91に固定される。なお、表示装置80を、壁面91に固定するのではなく、天井等から吊り下げられるように設置したり、壁面等に設けられた凹部にはめ込むように設置してもよい。
【0041】
前面板10の表側の全面には、反射防止の透明フィルム11が設けられている。透明フィルム11として、アークトップ(登録商標)などの透明ふっ素樹脂フィルムを用いることが好ましい。透明フィルム11は、防護フィルムとしての機能をも備えている。また、前面板10の裏面側において、筐体部分の外側部分(額縁部分)には、表側から利用者が背後を見通すことがないよう、曇りガラス状の半透明フィルム15を設置することが好ましい。これによって、表側から画面領域を視認する利用者が、表示装置80の表示面を視認でき、情報を的確に把握しやすくすることができる。
【0042】
透明樹脂層12の製造方法として、本出願人による、特願2003−420063号、特願2003−420065号、特願2004−214986号に示す技術を用いることができる。
【0043】
すなわち、透明樹脂層12は、透明弾性樹脂によって形成される。カイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hへの応力を可能な限り抑制するため、透明樹脂層12は、低弾性率の材料によって形成することが好ましい。低弾性率の透明弾性樹脂は、樹脂のガラス転移温度が0℃以下、さらに好ましくは−20℃以下であることが好ましい。また、常用温度(25℃)での引っ張り弾性率は100MPa以下、好ましくは10MPa以下がさらに好ましい。特に、1MPa以下がさらに好ましい。
【0044】
透明弾性樹脂の材料として、シリコーン、アクリル、ウレタンなどが考えられるが、好ましい透明弾性樹脂の材料の一つはシリコーン樹脂である。シリコーン樹脂の好ましい一例として、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製の2液型熱硬化性シリコーンSE1740(A/B)を挙げることができる。また、高温時の特性安定性から架橋した分子構造を持つ樹脂が好ましいが、若干流動可能なゲル状の透明樹脂を用いることもできる。その他、透明樹脂層12として特に好ましい材料として、透明ゲル状樹脂が挙げられる。ゲル状樹脂は、ゴム状樹脂などの硬い弾性樹脂と比較して、応力の吸収に優れている。このため、例えば、ヒートサイクル試験における熱膨張の相違に起因するカイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hへの残留応力、あるいは、前面板10を治具によって壁面91に固定することによって前面板10が変形することに起因する応力などを効果的に吸収し、カイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hの表示むらを効果的に抑制することができる。
【0045】
透明ゲル状樹脂を使用する場合、カイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hと前面板10とを効果的に固着するため、透明ゲル状樹脂による透明樹脂層12のちょう度が適切な値に設定される。特に、透明ゲル状樹脂による透明樹脂層12のちょう度の決定において、カイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hへの応力の抑制や位置ずれを考慮することが重要である。カイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hに加えられる応力を可能な限り抑制するには、ちょう度が大きいことが好ましい。しかし、ちょう度が大きすぎる場合には、カイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hを保持することができず、位置ずれが起きる。そのため、透明ゲル状樹脂による透明樹脂層12の1/4ちょう度が、5〜800(JIS K2220)であることが好ましい。さらに好ましくは、10〜500(JIS K2220)である。透明ゲル状樹脂による透明樹脂層12の材料として、シリコーン、アクリル、ウレタンなどが考えられるが、製造工程における気泡の発生を抑制する観点から、表面張力が小さい材料であるシリコーン樹脂を使用することが好ましい。また、ゲル型シリコーン樹脂の好ましい一例として、硬化後にゲル状態を示す2液型硬化性シリコーンが挙げられる。閉空間に硬化樹脂層を形成することから、揮発性溶媒を含む1液型の硬化樹脂ではなく、揮発性溶媒を含まない2液型硬化性シリコーンが好ましい。例えば、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製の2液型熱硬化性シリコーンSE1885(A/B)を使用することによって、透明樹脂層12を形成することができる。
【0046】
CL−LCDは相転移型の動作を有する。相転移型とは、入射光の一部を選択反射するプレナー状態(以下、PL状態という。)および入射光を散乱させるフォーカルコニック状態(以下、FC状態という。)の少なくとも2状態で安定であり、電極間に所定の電圧を印加することで、液晶をPL状態またはFC状態に転移させることができることをいう。
【0047】
図4は、CL−LCDを2層積層して形成した液晶表示素子20の模式的断面図である。液晶表示素子20は、図2に示すカイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hのそれぞれに相当する。CL−LCDを駆動するために、一般に、単純マトリクス駆動法が用いられる。行電極26を設けた第1基板22と列電極27を設けた第2基板23の電極面を直交配置するように対向させる。第1基板22と第2基板23は周辺シール材24を介して圧着され、セル空間が形成され、その内部にカイラルネマチック液晶層25が注入される。
【0048】
第2基板23には引出電極群28が形成されている。第2基板23の列電極27は、引出電極群28内の所定の電極に直接接続されているが、第1基板22の行電極26は、周辺シール材24に含まれている導電ビーズなどのトランスファ材を介して引出電極群28内の所定の電極と導通がとられている。トランスファ材を使用せずに、引出電極群28を第1基板22と第2基板23とのそれぞれに形成してもよい。第1基板22の裏面側には、黒色の艶消し塗料が着色層29として塗布されている。
【0049】
対向して配置された行電極26と列電極27との間に印加される電圧によってカイラルネマチック液晶層25が駆動され、その相状態の転移が制御され表示が行われる。CL−LCDでは、偏光板を用いずに表示を行うことができる。そして、CL−LCDは第2基板23の引出電極群28に、一旦電圧を印加して所定の表示状態に置いた後に、電源を遮断しても、その表示状態が維持される。なお、AF−LCDでは、表示状態を保持するために保持電圧を印加する必要がある。また、上記のように、メモリ性の表示素子として、電気泳動素子を用いることもできる(特表2001−500172号参照)。
【0050】
さらに、CL−LCDにおいて、保持された表示状態を他の表示状態に転移させるには、再度所定の電圧を印加すればよい。その際に、一旦表示面の全面を消去してから、次の表示に必要な電圧を印加することが好ましい。すなわち、使用上の観点から直前の表示を完全に消去した後に、新しい表示に書き換えることが好ましい。通常、表示面全体をPL状態にすることで、選択反射の色を描画し、FC状態にすることで微散乱状態におき、裏面側の艶消し色(黒色塗料)を表示させ、表示を行うことができる(例えば、特開2001−337314号公報参照)。本実施の形態では、CL−LCDは2層構造とされ、相互に補色関係の選択反射波長を備えるカイラルネマチック液晶表示素子が用いられる。
【0051】
そして、本実施の形態では、2層型液晶セルの各選択反射波長を設定することにより、表側から白色、黒色、青色、橙色の4色を呈するように構成する。さらに、上記の4色に加えて、例えば、茶色、紺色、灰色、水色の4色を表示することも可能である。液晶パネルのドットマトリックスに対応する画素は自由に表示を変更することができる。また、あらかじめソフトウェア処理により、あるカラー表示画面の、それぞれの画素の色データを変換して、カイラルネマチック液晶表示素子における所定のマルチカラー表示に適した画像データを生成することができる。
【0052】
図5は、サーバ310の機能構成を、データベース320とともに示すブロック図である。記憶装置としてのデータベース320は、サーバ310に組み込まれていてもよい。図5に示す構成において、通信制御部311は、インターネット200を介して通信を行う際のプロトコル制御等を行うとともに、専用回線500を介して配信サーバ410と通信を行う際のプロトコル制御等を行う。
【0053】
Webページ作成部312は、端末装置100の操作者が、表示内容の変更箇所を示す情報および変更後のデータを入力できるようにWebページを作成して通信制御部311に出力する。ここでは、表示内容として時刻表を例にしているので、例えば、Webページ作成部312は、データベース320に既に記憶されている時刻表のデータを含むWebページを作成し、通信制御部311を介して端末装置100に提供する。
【0054】
そして、端末装置100のWebブラウザが端末装置100の表示部に表示させたWebページにおいて、変更指示(変更箇所、および変更箇所の変更後のデータ)を入力した場合には、Webブラウザにより送信された変更指示を、通信制御部311を介してデータ更新部313が受信する。表示内容変更手段としてのデータ更新部313は、変更指示に従って、データベース320に記憶されている表示内容を変更する。また、変更後の表示データを表示データ送信部315に出力する。
【0055】
表示データ送信部315は、必要であるならば、表示データのデータ形式を、表示装置80が受信可能なデータ形式に変更する。例えば、表示装置80がJPEG形式の表示データを受信するように構成されている場合、すなわちJPEG形式のデータをビットマップデータに変換する機能を備えている場合には、表示データ送信部315は、データ更新部313から入力した表示データのデータ形式をJPEG形式に変換する。そして、データ形式変換後の表示データを通信制御部311に出力する。通信制御部311は、表示データを専用回線500を介して配信サーバ410に送信する。
【0056】
また、データ更新部313は、表示データの変更を行った場合には、その旨を、課金制御部314に通知する。データベース320には、それぞれの表示装置80または複数の表示装置を一グループとして、グループ毎の課金データを記憶する課金情報記憶手段としての記憶領域が設けられている。例えば、鉄道会社における一つの駅に設けられている各表示装置が一グループとされたり、一つの鉄道会社における全ての表示装置が一グループとされる。もちろん、一つの鉄道会社における全ての表示装置のそれぞれに応じて課金データを記憶する記憶領域が設けられていてもよい。
【0057】
課金方式として、例えば、基本料金+従量料金の方式が用いられる。すなわち、月々または年間の基本料金が一定額に定められ、表示データの変更がなされる度に所定の料金が追加される。課金データを記憶する記憶領域には、所定期間(例えば1ヶ月または1年)における課金額を示す課金データが記憶される。課金制御部314は、データ更新部313から表示データの変更を行った旨の通知を受けると、所定の料金に相当する値を、記憶領域の課金データに加算する。情報表示サービス会社300の担当者は、記憶領域に記憶されている課金データを、所定期間が経過する毎に記憶領域から出力する。担当者は、表示装置の保有者または表示装置の貸与を受けている者に、課金データに応じた使用料を請求する。
【0058】
なお、図5に示す構成において、Webページ作成部312、データ更新部313、課金制御部314および表示データ送信部315は、プログラムに従って動作するサーバ310のCPUによって実現される。通信制御部311は、プログラムに従って動作するサーバ310のCPUと、ハードウェアの通信装置とによって実現される。また、Webページ作成部312と通信制御部311とによって、端末装置100にWebページを送信するWebページ送信手段が実現される。データ更新部313は、変更後の表示データを作成する表示内容変更手段の実現例である。また、表示データ送信部315と通信制御部311とによって、変更した表示内容を配信サーバ410に送信する変更表示データ送信手段が実現される。
【0059】
図6は、配信サーバ410の構成例を示すブロック図である。図6に示す構成において、通信制御部411は、専用回線500を介してサーバ310と通信を行う際のプロトコル制御等を行う。制御部412は、サーバ310から送信された変更後の表示データを通信制御部411を介して受信し、受信した表示データを記憶部413に一時記憶させる。記憶部413には、複数の表示装置80のそれぞれに応じた記憶領域が確保されている。制御部412は、サーバ310から送信された変更後の表示データを、その表示データが表示されるべき表示装置に対応した記憶領域に記憶させる。また、記憶部413には、表示装置の制御部に実行させる処理を指定するコマンドも記憶される。そのようなコマンドは、例えば、端末装置100からサーバ310を介して配信サーバ410に送信される。
【0060】
交換機インタフェース415は、交換機400にデータを送り込むときのプロトコル制御等を行う。交換機インタフェース415は、ディジタル公衆携帯電話網に配信サーバ410を接続するためのゲートウェイに相当する。
【0061】
図6に示す構成において、制御部412は、プログラムに従って動作する配信サーバ410のCPUによって実現される。通信制御部411および交換機委415は、プログラムに従って動作する配信サーバ410のCPUと、ハードウェアの通信装置とによって実現される。
【0062】
システム内に存在する各表示装置80を、あらかじめ決められている時刻になると、公衆携帯電話網を介して配信サーバ410をアクセスし、配信サーバ410の記憶部413に記憶されているコマンドや表示データをダウンロードするように構成することもできる。その場合、表示装置80の運用開始後に、あらかじめ通知された時刻を変更可能である。
【0063】
表示装置80を、あらかじめ決められている時刻になると配信サーバ410をアクセスするように構成した場合に、利用者は、あらかじめ設定した通信を行うタイムウィンドウを設定することができる。また、1日あたりのタイムウィンドウの数も自由である。定常状態において、例えば、1日に1回、管理装置(表示管理システム)に対して、表示装置80が自己の情報(内蔵データロガーによる温度、電池の電圧など)を送信する。異常を検出した場合、システム管理者に通知をし、適切な対応をとるようにする。利用者が表示情報の変更を希望する場合には、サーバ310からその情報を送り出すことができる。また、専用回線500を経由する通信の回数で、追加の作業に応じた課金をすることができる。定常状態において、表示データの送信を行わないようにする。そして、利用者が設定した状況においてのみ、表示データを表示装置80に送信するようにする。
【0064】
表示装置80の設置台数が非常に多い場合には、それぞれの表示変更を可能とするタイムウィンドウ(表示装置が配信サーバ410をアクセスできる時間帯)をあらかじめずらしておき、各の表示装置80が、配信サーバ410から、順に、表示データを受信できるようにすればよい。
【0065】
また、表示装置80は、通信路を介してサーバ側と情報の送受信を行うだけでなく、表示装置80に付随する外部機器インタフェース(例えば、USB(Universal Serial Bus)、ブルートゥース(登録商標:Bluetooth )にもとづくインタフェースなど)と情報の送受信を行うことができる。すなわち、それらのインタフェースを介して接続された外部機器から、種々の指令を受信したり、それらのインタフェースを介して種々のデータを外部機器に送信する。
【0066】
さらに、表示装置80の稼働時の消費電力を低減するために、制御系を、電源制御系と、主制御系と、液晶表示素子駆動系とに分ける。表示装置80に設けられている主電源スイッチがオンしていると、定常状態(表示装置80の制御に関するイベントが生じていない状態であって、表示を行っている状態)では、電源制御系にのみ給電(電力供給)される。すなわち、表示装置80に設けられている主電源スイッチがオンしている状態では、電源制御系には常時給電される。表示装置80の制御に関するイベントが生ずると、主制御系に対する給電が行われ主制御系が動作可能状態になる。表示装置80の制御に関するイベントが液晶表示素子の表示の書き換えを伴う場合には、液晶表示素子駆動系にも給電される。
【0067】
また、表示装置80が、外部から電力供給を受けなくても半永久的に動作するように、表示装置80には、二次電池が備えられている。また、二次電池を逐次充電する太陽電池が、受光面を外部に向けて設置されている。太陽電池として、効率が0.5A/1000ルックスのものを用いることができ、その場合には、常時給電される電源制御系の最大消費電流が500μA以下、液晶表示素子駆動系にも給電されているときの最大消費電流が1A以下であることが好ましい。
【0068】
電源は、一次電池のみとする場合、二次電池に太陽電池を併用し充電しながら用いる場合の2方式を用いることができる。一次電池の場合には、たとえば、1個あたり2.2A(3V)のものを3直列×9並列=27個を1パックとして設ける。大きさは、142mm×156mm×19mm程度である。直並列に構成した電池の合計で、19.8Ah(9V出力)の電源となる。
【0069】
この一次電源の構成で、8連装のパネル構成において、1回/1日の半自動タイマー起動による表示書き換えの場合で、およそ1年間連続運転をすることができる。1年後、電源パックを交換することで、その後、自動運転を継続することができる。電源パックは、表示装置80の筐体の上面などに設けた蓋から容易に交換することができる。もちろん、用いる電源容量と表示の書き換え頻度の関係で連続使用日数が決まる。1回/一日の書き換え頻度で、例えば、半年以上、あるいは1年以上であれば、事実上メインテナンスフリーにすることができるので好ましい。所望の使用条件に応じて、公称電圧、放電容量、出力密度、自己放電、および使用環境による変動要素を考慮し、一次電池の種別、数量を算定すればよい。
【0070】
これに対して二次電池と太陽電池を併用する方式は以下の通りである。二次電池のみでの電力供給は、自己放電によって電圧降下が生じるので、必要とする使用電圧を維持するのことが難しい。そのため、二次電池に対して太陽電池で充電しながら用いるように構成する。例えば、二次電池としてリチウムポリマー電池を採用し、7.4Vで1200mAhまたは7.4Vで3450mAh程度のものを用いる。定格出力電圧は7.4Vである。
【0071】
これに対して、太陽電池の仕様を、定格出力を500mAに設定する。外光がおよそ1000ルックスの場合に、公称最大出力電圧(Vpm)が10.0V、公称最大動作電流が4.5mAである(予想値)。これによって、1回/1日の書き換え頻度で、ほぼ連続運転することができる。たとえば、パネルを8連装する構成の場合で、タイマーによる1回/1日自動書き換えで、連続運転を実現することができる。事実上の連続無人運転である。あらかじめ設定した内蔵プログラムで動作させる。屋外における一般照明光であっても、1000ルックス程度を容易に得ることができるので、本発明の表示装置80について、この方式の電源仕様を適用できる。
【0072】
外光による電力補充をより積極的に行うことができれば、表示装置80の書き換え頻度を上げることができる。つまり、商用電源による電力供給なしに、表示情報をより高頻度で書き換えし、連続運転することができるようになる。
【0073】
また、任意の表示情報をより高頻度で行うことが必要になる場合は、USBメモリなどのローカルメモリや無線通信によって、外部から表示装置80に新しい表示情報を入力し、表示素子の表示を書き換えるようにする。無線通信を用いる場合は、その回数、通信時間、ダウンロードするデータ容量によって、相応する電力を消費することになる。その消費した分を太陽電池の起電力で二次電池に補充することができれば、やはり連続運転させることができる。数千ルックス程度あれば無線通信による動作管理をほぼ連続して行うことができる。
【0074】
図7は、表示装置80における電気回路ブロック13の回路構成例を、カイラルネマチック液晶表示素子とともに示すブロック図である。なお、図7には、図2に示されたカイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hのうち、カイラルネマチック液晶表示素子1Aとそれを駆動する駆動回路189のみが例示されている。PDCアダプタ182は、アンテナ181を介して基地局600とPDC方式の通信を行う回路である。メイン制御部183は、例えばマイクロコンピュータ(MPU)で実現され、PDCアダプタ182が表示データを受信すると、必要ならばデータ形式の変換を行って、表示データをメモリ回路188に記憶させる。メモリ回路188として、例えば不揮発性のフラッシュメモリ(フラッシュROM)が用いられる。従って、メモリ回路188は、記憶すべき表示データが更新されるとき以外の期間では給電を受ける必要はない。
【0075】
また、制御部183は、所定の時期に、駆動回路189に表示データを与えて、カイラルネマチック液晶表示素子1Aの表示内容を、表示データにもとづいて書き換えさせる。書き換えの方法は、既に説明したとおりである。なお、カイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hの表示を更新させる際に、メイン制御部183は、いずれかのカイラルネマチック液晶表示素子に対応した駆動回路がそのカイラルネマチック液晶表示素子の書き換えを行っているときには、他のカイラルネマチック液晶表示素子に対応した駆動回路に駆動動作を行わないように制御する。すなわち、メモリ性を有する複数の表示素子(例えば、4以上、本実施の形態では8)を備えている場合に、そのうちの一の表示素子の表示を更新させる際に、他のすべての表示素子の表示電極に印加される電圧をオフとし、複数のメモリ性を有する表示素子を順に書き換える。ある表示素子の表示を書き換えを行う際に、他の表示素子の表示はそのメモリ性表示機能によって維持され、電力消費を伴う事実上の書き換え駆動を行わないように設定することができる。各表示素子の電源、駆動信号、制御信号の設計はシステム構築上任意性があるが、そのなかで、大きな電力を消費する回路系の動作を適宜制御し、全体の消費電力を低減化させる。
【0076】
表示装置80には、各種のセンサが組み込まれていることが好ましい。図7には、温度センサ185、湿度センサ186および電圧センサ187が例示されている。温度センサ185および湿度センサ186は、カイラルネマチック液晶表示素子1Aの近傍に設置され、カイラルネマチック液晶表示素子1Aの周囲の温度および湿度を検出する。電圧センサ187は、電池190の出力電圧を検出する。本実施の形態では、温度センサ185および湿度センサ186の出力はデータ収集回路184を介してメイン制御部183に入力される。電圧センサ187の出力は、サブ制御回路170に入力される。
【0077】
また、表示装置80において、メイン制御部183には、1つ以上の外部機器インタフェース(ローカルインタフェース)が接続される。図7に示す構成では、CF(CompactFlash)カードを装着するためのソケットを含むCFカードインタフェース195と、USBコネクタを含むUSBインタフェース196とが接続されている。なお、それらの2つは外部機器インタフェースの一例であって、表示装置80には、ブルートゥース(登録商標:Bluetooth )、無線LANインタフェースなど、他のインタフェースが搭載されてもよい。なお、ここで、インタフェースとは、インタフェース回路を意味する。
【0078】
本実施の形態では、CFカードインタフェース195およびUSBインタフェース196が表示装置80に搭載されているので、表示装置80にCFカードやUSBメモリを接続することができる。従って、配信サーバ410からメイン制御部183に対して各種指令(コマンド)や表示データを与えることができるとともに、CFカードやUSBメモリからも、メイン制御部183に対してコマンドや表示データを与えることができる。メイン制御部183に与えられたコマンドや表示データは、メモリ回路188におけるフラッシュROMに格納される。
【0079】
なお、本実施の形態では、主制御系には、PDCアダプタ182、メイン制御部183およびメモリ回路188と、メイン制御部183に接続されている回路部分(ただし、駆動回路189を除く。)が含まれる。また、主制御系に給電されているときには、データ収集回路184、CFカードインタフェース195およびUSBインタフェース196にも給電される。また、駆動回路189は、液晶表示素子駆動系に含まれる。
【0080】
図7に示す構成では、電源として、化学的反応によって起電力を生じさせ、かつ、充電可能な電池(二次電池)190が用いられている。さらに、受光によって発電し、二次電池を逐次充電する太陽電池191が備えられている。
【0081】
表示装置80には、電源制御系としての機能するサブ制御回路(電源管理回路)170が備えられている。また、表示装置80には、主電源スイッチ192が設けられている。主電源スイッチ192が操作されてオン状態に設定されると、電池190からの電力が、サブ制御回路170に供給される状態になる。また、サブ制御回路170に設けられている給電回路172が給電可能状態(導通状態)に設定されると、電池190からの電力が、主制御系にも供給される状態になる。
【0082】
サブ制御回路170には、給電回路172の状態を制御するサブCPU171が搭載されている。サブCPU171には、表示装置80に設けられているメイン制御部用スイッチ電源194の出力信号、時計回路(タイマIC)173の出力信号、赤外線受信回路174の出力信号、および電圧センサ187からの信号が入力される。
【0083】
サブ制御回路170に電池190から給電されている状態で、メイン制御部用電源スイッチ194が人手によって操作されると、操作にもとづく出力信号がサブCPU171に入力される。サブCPU171は、メイン制御部用スイッチ電源194からの出力信号が入力された場合には、給電回路172を導通状態(電池190からの電流が主制御系側に供給される状態)に設定する。このような制御を行うことによって、メイン制御部用電源スイッチ194を操作することによって、主制御系を動作状態にさせることができる。
【0084】
また、時計回路173は、現在時刻を計時するとともに、現在時刻が、あらかじめ設定されているタイムアップ時刻に一致したときに、出力信号として、サブCPU171に対してタイムアップ信号を出す。サブCPU171は、時計回路173からのタイムアップ信号が入力された場合にも、給電回路172を導通状態に設定する。このような制御を行うことによって、1日のうちであらかじめ決められている時刻に主制御系を動作状態にさせることができる。
【0085】
赤外線受信回路174は、例えばIrDA(Infrared Data Association)規格にもとづく赤外線信号を受信する機能を有する回路である。そして、直接通信(公衆通信網を介さない通信)によって、担当者等の操作によって動作する赤外線送信回路(図示せず)から、あらかじめ決められている起動コードを受信すると、サブCPU171に対して出力信号を出す。サブCPU171は、赤外線受信回路174からの出力信号が入力された場合にも、給電回路172を導通状態に設定する。このような制御を行うことによって、保守員等が赤外線送信回路を組み込んだユニットを操作することによって、主制御系を動作状態にさせることができる。なお、赤外線受信回路174を単に光−電気変換回路として、サブCPU171が、赤外線受信回路174の出力信号から起動コードを認識するように構成してもよい。
【0086】
電圧センサ187は、電池190の出力電圧を検出する。また、電池190の出力電圧があらかじめ決められている電圧にまで低下すると、アラーム信号を出力する。サブCPU171は、電圧センサ187からアラーム信号が出力されたときに、給電回路172を導通状態に設定する。さらに、サブCPU171は、電圧センサ187を介して電池190の出力電圧値を把握して、電池190の出力電圧値があらかじめ決められている電圧にまで低下すると、給電回路172を導通状態に設定するようにしてもよい。このような制御を行うことによって、電池190の出力電圧が低下したときに、例えば、メイン制御部183が、カイラルネマチック液晶表示素子1Aに警報情報を表示させることが可能になる。
【0087】
また、メイン制御回路183は、カイラルネマチック液晶表示素子1Aの表示を更新するときにのみ液晶用給電回路193を導通状態にする。液晶用給電回路193が導通状態になると、駆動回路189が給電される状態になる。
【0088】
本実施の形態では、表示素子としてメモリ性を有するカイラルネマチック液晶表示素子1Aが用いられているので、給電を受けなくても表示装置80は表示内容を維持することができる。換言すれば、メモリ性を有する表示素子を用いた場合には、電力供給に関するメンテナンスをほぼフリーにすることができ、表示装置80を実用的なものにすることができる。
【0089】
なお、カイラルネマチック液晶表示素子1Aは、長期間にわたって表示データの再書き込みがなされなくても表示内容を維持できるのであるが、1日に1回、または1週間に1回など、所定期間毎に表示データの再書き込み(リフレッシュ)を行うことが好ましい。例えば、メイン制御部183は、給電されている期間において、PDCアダプタ182が変更後の表示データを受信しなかった場合でも、メモリ回路188に記憶されている表示データを駆動回路189に出力して、カイラルネマチック液晶表示素子1Aの表示内容を、表示データにもとづいて書き換えさせる。変更後の表示データを受信しなかった場合には書き換えの前後で表示内容は変わらないはずであるが、このような制御を行えば、何らかの原因によってカイラルネマチック液晶表示素子1Aの表示内容が変わっている場合に、正常な表示内容に戻すことができる。
【0090】
また、アンテナ181は、表示装置80に内蔵されていることが好ましいが、筐体14が金属製である場合には、表示装置80の外部に露出させる。その場合、アンテナ181を、樹脂等のカバーで保護することが好ましい。
【0091】
また、メイン制御部183は、USBメモリやCFカードが装着され、給電が開始されると、USBメモリまたはCFカードから表示データまたはコマンドを取得した直後に、データ収集回路184から温度センサ185および湿度センサ186の検出信号を入力して、USBメモリまたはCFカードに書き込むようにしてもよい。また、サブ制御回路170から送信された電圧センサ187の検出値に応じた状態情報(ステータス情報)を、USBメモリまたはCFカードに書き込むようにしてもよい。
【0092】
また、図7にはカイラルネマチック液晶表示素子1Aのみが例示されているが、他のカイラルネマチック液晶表示素子1B〜1Hのそれぞれに対応して駆動回路が設けられている。各駆動回路はメイン制御部183に接続され、メイン制御部183は、各駆動回路に対して、対応するカイラルネマチック液晶表示素子1A〜1Hが表示すべき表示内容の表示データを出力する。
【0093】
次に、図8、図9および図11のフローチャートを参照して、電源制御系および主制御系の動作例を説明する。図8は、サブCPU171の動作例を示すフローチャートである。図8に示す例では、主電源スイッチ192によって給電が開始された後、サブCPU171は、時計回路173からタイムアップした旨の通知があると(ステップS11)、給電回路172をオン(導通状態に設定)する(ステップS15)。また、サブCPU171は、メイン制御部用スイッチ電源194から出力信号が出力されたときにも(ステップS12)、給電回路172をオンする(ステップS15)。さらに、赤外線送信回路から起動コードが送信されたことを赤外線受信回路174を介して認識したときにも(ステップS13)、給電回路172をオンする(ステップS15)。また、サブCPU171は、電圧センサ187からアラーム信号が出力されたときにも(ステップS14)、給電回路172をオンする(ステップS15)。なお、ステップS14において、サブCPU171は、電圧センサ187を介して電池190の出力電圧値を把握し、電池190の出力電圧値があらかじめ決められている電圧にまで低下したことを認識したときにも、給電回路172をオンする。その場合、サブCPU171は、電池190の出力電圧値が低下していることを示すアラームステータスを保持する。
【0094】
その後、メイン制御部183から問い合わせまたはコマンドを受信した場合に(ステップS16)、コマンドが電源オフ要求のコマンドであれば(ステップS17)、サブCPU171は、給電回路172をオフ(非導通状態に設定)する(ステップS18)。ステップS18の処理によって、主制御系に給電されない状態になる。
【0095】
メイン制御部183から問い合わせを受信した場合、または、メイン制御部183から受信したコマンドが電源オフ要求のコマンドでない場合には、サブCPU171は、受信した問い合わせまたはコマンドに応じた処理を実行する(ステップS19)。そして、ステップS16に戻る。問い合わせとして、起動原因の問い合わせ、アラームステータスの問い合わせ、時計回路173のタイムアップ原因などがある。コマンドに応じた処理として、起動原因をメイン制御部183に送信する処理、アラームステータスをメイン制御部183に送信する処理、時計回路173に現在時刻を設定する処理、時計回路173にタイムアップ時刻を設定する処理などがある。
【0096】
図9は、主制御系に給電が開始されてから実行されるメイン制御部183の動作を示すフローチャートである。図9に示す例では、メイン制御部183は、まず、サブCPU171に起動原因すなわち主制御系に給電開始した原因を問い合わせる(ステップS31)。サブCPU171は、ステップS19において、起動原因を送信する。
【0097】
サブCPU171から、起動原因がアラーム信号によるもの(電池190の出力電圧値があらかじめ決められている電圧にまで低下したことを含む)、すなわちバッテリアラームであることが通知されたときには(ステップS32)、メイン制御部183は、警報として、アラームステータスまたは所定の警報文字情報を、カイラルネマチック液晶表示素子に表示させる。また、PDCアダプタ182を介してアラームステータスを配信サーバ410に送信したり、USBメモリまたはCFカードに出力する(ステップS33)。そして、サブCPU171に、電源オフ要求のコマンドを送信する(ステップS34)。
【0098】
なお、メイン制御部183は、電圧センサ187からアラーム信号が出力されたこと、または電池190の出力電圧値があらかじめ決められている電圧にまで低下したことを原因として主制御系に給電開始された場合以外の場合でも、サブCPU171にアラームステータスを問い合わせることが好ましい。
【0099】
サブCPU171から、起動原因が時計回路173からのタイムアップ信号であることが通知されたときには(ステップS35)、メイン制御部183は、ステップS61の処理を実行する。
【0100】
サブCPU171から、起動原因が時計回路173からのタイムアップ信号でないことが通知されたときには、すなわち、起動原因がメイン制御部用スイッチ電源194から出力信号が入力されたこと、または赤外線送信回路から起動コードが送信されたことである場合には(ステップS35)、メイン制御部183は、ステップS36の処理を実行する。
【0101】
ステップS36では、メイン制御部183は、USBインタフェース196およびCFカードインタフェース195を介して、USBメモリまたはCFカードが装着されているか否か確認する。USBメモリまたはCFカードが装着されている場合には、メイン制御部183は、USBメモリまたはCFカードからコマンドを読み出す(ステップS37)。なお、コマンドを読み出せなかった場合には、ステップS36の判断が「N」であったとする。コマンドを読み出せた場合には、読み出したコマンドに応じた制御を実行する(ステップS41)。そして、サブCPU171に、電源オフ要求のコマンドを送信する(ステップS42)。
【0102】
USBメモリおよびCFカードが装着されていない場合、または装着されているがコマンドを読み出せなかった場合には、メイン制御部183は、PDCアダプタ182に対して配信サーバ410をアクセスするように指示する(ステップS38)。PDCアダプタ182は、指示に応じて、アンテナ181を介して基地局600とPDC方式の通信を行い、配信サーバ410の記憶部413に格納されているコマンドを取得する。配信サーバ410の記憶部413にコマンドが格納されていない場合には、PDCアダプタ182は、コマンドを取得できない。PDCアダプタ182は、コマンドを取得できた場合には、取得したコマンドをメイン制御部183に出力する。コマンドを取得できなかった場合には、その旨をメイン制御部183に通知する。
【0103】
メイン制御部183は、メイン制御部183からコマンドを入力した場合には、取得したコマンドに応じた制御を実行する(ステップS39,S40,S41)。そして、サブCPU171に、電源オフ要求のコマンドを送信する(ステップS42)。
【0104】
ステップS51では、メイン制御部183は、まず、監視用タイマをセットする(ステップS51)。そして、監視用タイマがタイムアウトするまで、USBメモリおよびCFカードからコマンドを読み出す処理を試みる(ステップS52,S53)。監視用タイマがタイムアウトする前に、USBメモリまたはCFカードが装着され、USBメモリまたはCFカードからコマンドを読み出せた場合には(ステップS52,S55)、読み出したコマンドに応じた制御を実行する(ステップS41)。そして、サブCPU171に、電源オフ要求のコマンドを送信する(ステップS42)。監視用タイマがタイムアウトした場合には、サブCPU171に、電源オフ要求のコマンドを送信する(ステップS54)。ステップS51〜S54の処理によって、保守員等は、USBメモリまたはCFカードからのコマンドをメイン制御部183に読み取らせるときに、メイン制御部用電源スイッチ194を操作してからUSBメモリまたはCFカードを装着することができ、操作性が向上する。また、ステップS51〜S54の処理によって、誤ってメイン制御部用電源スイッチ194が操作されたような場合に、長期間に亘って主制御系に給電されてしまうことが防止される。
【0105】
ステップS61では、メイン制御部183は、サブCPU171に対してタイムアップ原因を問い合わせる。そして、メイン制御部183は、サブCPU171から送信されたタイムアップ原因に応じた制御を実行する(ステップS62)。本実施の形態では、時計回路173は複数(例えば、5個)のタイマを有する。時計回路173において、それぞれのタイマに応じたタイムアップ時刻を設定可能である。よって、例えば、第1のタイマがタイムアップしたときには第1の所定の処理(例えば、カイラルネマチック液晶表示素子のリフレッシュ)を行い、第2のタイマがタイムアップしたときには第2の所定の処理(例えば、アラームステータスの出力)を行うといった使い方をすることができる。
【0106】
起動原因が時計回路173からのタイムアップ信号である場合には、メイン制御部183は、起動原因がメイン制御部用スイッチ電源194から出力信号が入力されたこと、または赤外線送信回路から起動コードが送信されたことである場合とは異なり、メモリ回路188に記憶されている処理内容に従って処理を実行する。すなわち、メイン制御部183は、起動原因が時計回路173からのタイムアップ信号である場合には、USBメモリやCFカードからデータを読み取ったり、配信サーバ410をアクセスする処理を行わない。時計回路173の各タイマがタイムアップしたときの処理内容は、メモリ回路188に含まれるフラッシュROMに記憶されている。メモリ回路188に記憶されている処理内容の例については後述する。
【0107】
その後、サブCPU171に、電源オフ要求のコマンドを送信する(ステップS63)。
【0108】
以上のような制御によって、1日のうちであらかじめ決められている時刻に主制御系にあらかじめ決められている処理を実行させることができる。また、保守員等の操作に応じて、主制御系を動作状態にさせ、メイン制御部183に、USBメモリ、CFカードまたは配信サーバ410からコマンドを取り込ませることができる。なお、上述した説明から明らかなように、保守員等は、配信サーバ410からコマンドを取り込ませたい場合には、USBメモリおよびCFカードを表示装置80に装着せずに、メイン制御部用電源スイッチ194を操作したり、赤外線送信回路を内蔵するユニットから起動コードを表示装置80に与えればよい。
【0109】
次に、本実施の形態において用いられるコマンド例を図10の説明図を参照して説明する。図10(A)は、主制御系の起動原因がメイン制御部用スイッチ電源194からの出力信号および赤外線受信回路174からの出力信号である場合に使用されるコマンドである。具体的には、配信サーバ410、USBメモリまたはCFカードからメイン制御部183に、図10(A)に例示するコマンドが与えられる。
【0110】
(1)「システム変数をフラッシュROMに設定」のコマンドは、例えばカイラルネマチック液晶表示素子の枚数やドット数などをフラッシュROMに設定することを指示するコマンドである。メイン制御部183は、(1)のコマンドを取得すると、ステップS41の処理において、コマンドで指定されたデータをフラッシュROMに書き込む。
【0111】
(2)「タイマ設定、タイムの起動時間の設定」のコマンドは、サブ制御回路170に搭載されている時計回路173が有するタイマを有効にしたり、有効になっているタイマに設定するタイムアップ時刻を指定するコマンドである。メイン制御部183は、(2)のコマンドを取得すると、ステップS41の処理において、サブCPU171にそのコマンドを送信する。サブCPU171は、ステップS19の処理で、指定されたタイマを有効にしたり、有効になっているタイマに指定されたタイムアップ時刻を設定する。
【0112】
(3)「表示データの格納」のコマンドは、表示データをメモリ回路188に格納することを指定するコマンドである。メイン制御部183は、(3)のコマンドを取得すると、ステップS41の処理において、メモリ回路188におけるフラッシュROMに表示データを格納する。なお、(3)のコマンドには、表示データが付随している。
【0113】
(4)「表示データの表示、消去」のコマンドは、メモリ回路188に格納されている表示データでカイラルネマチック液晶表示素子の表示を更新したり、カイラルネマチック液晶表示素子の表示を消去することを指定するコマンドである。メイン制御部183は、(4)のコマンドを取得すると、ステップS41の処理において、液晶表示素子駆動系に給電させるとともに、駆動回路189にカイラルネマチック液晶表示素子の表示の更新や消去のための駆動を実行させる。
【0114】
(5)「現在時刻設定」のコマンドは、サブ制御回路170に搭載されている時計回路173が計時する現在時刻の再設定を指定するコマンドである。メイン制御部183は、(5)のコマンドを取得すると、ステップS41の処理において、サブCPU171にそのコマンドを送信する。サブCPU171は、ステップS19の処理で、時計回路173の現在時刻を再設定する。なお、(5)のコマンドには、時刻データが付随している。
【0115】
(7)「バッテリアラームなどのステータス要求」のコマンドは、ステータスの送信を要求するコマンドである。メイン制御部183は、(5)のコマンドを取得すると、ステップS41の処理において、データ収集回路184から温度センサ185および湿度センサ186の検出信号を入力するとともに、サブCPU171に対してアラームステータスなどのステータスを問い合わせる。サブCPU171は、ステップS19の処理で、問い合わせに応じて、保持しているステータスをメイン制御部183に送信する。メイン制御部183は、ステップS41の処理において、温度センサ185および湿度センサ186の検出信号にもとづく検出値とステータスとを取得する。そして、USBメモリまたはCFカードからコマンドを受信した場合には、検出値とステータスとをUSBメモリまたはCFカードに書き込む。配信サーバ410からコマンドを受信した場合には、PDCアダプタ182を介して配信サーバ410検出値とステータスとを送信する。
【0116】
配信サーバ410は、表示装置80から各検出値とステータスとを受信したら、各検出値およびステータスを表示管理サーバとしてのサーバ310に送信する。サーバ310は、データベース320において表示装置毎に設けられている記憶領域に検出値を保存する。記憶領域に記憶されている検出値は、情報表示サービス会社300の担当者によって記憶領域から出力される。すなわち、情報表示サービス会社300の担当者は、サーバ310に接続されている表示部に表示させたり、印刷装置に印刷させたりする。そして、検出値が異常値を示している場合には、保守員を表示装置の設置場所に派遣する。
【0117】
また、検出値とステータスとがUSBメモリまたはCFカードに書き込まれた場合には、USBメモリまたはCFカードを表示装置80に装着した保守員等が、USBメモリまたはCFカードを取り外す。そして、自身が保持している無線端末装置にUSBメモリまたはCFカードを装着し、その内容を無線端末装置からサーバ310に送信させる。あるいは、USBメモリまたはCFカードをサーバ310の設置場所に持ち帰り、USBメモリまたはCFカードからサーバ310に入力する。USBメモリまたはCFカードを介して検出値とステータスとを入力した場合にも、サーバ310は、表示装置80から配信サーバ410経由で検出値とステータスとを受信した場合と同様の処理を行う。
【0118】
図10(A)に示す(8)「電源オフ要求」のコマンドは、配信サーバ410,USBメモリまたはCFカードから入力されるコマンドではなく、メイン制御部183が独自にサブCPU171に対して発行する。(8)「電源オフ要求」のコマンドに関する処理は既に説明したとおりである。
【0119】
図10(B)は、主制御系の起動原因が時計回路173からのタイムアップ信号である場合に使用されるコマンドである。起動原因が時計回路173からのタイムアップ信号である場合には、(4)〜(8)のコマンドが使用される。(6)「次タイマのタイマ時刻の設定」のコマンドは、時計回路173のタイマに、その時点の後にタイムアップすべき時刻を設定することを指定するコマンドである。
【0120】
メイン制御部183は、起動原因が時計回路173からのタイムアップ信号である場合には、タイムアップ原因に応じて、メモリ回路188に記憶されている処理内容に従って処理を実行する。よって、メモリ回路188には、(4)〜(7)のコマンドに応じた処理内容が、タイムアップ原因に対応付けられて記憶されている。なお、「タイムアップ原因に対応付けられて」ということは、具体的には、時計回路173の複数のタイマのそれぞれに応じてということである。また、(8)「電源オフ要求」のコマンドは、メイン制御部183によって独自に発行されるので、メモリ回路188に記憶されていなくてよい。
【0121】
本実施の形態では、起動原因が時計回路173からのタイムアップ信号である場合には、メイン制御部183は、USBメモリやCFカードからデータを読み取ったり、配信サーバ410をアクセスする処理を行わないが、そのような処理も行うように構成してもよい。その場合には、例えば、「サーバをアクセスする」というコマンドを定義し、メモリ回路188に、そのコマンドに応じた処理内容を記憶するようにしておけばよい。
【0122】
また、図10に示すコマンドは一例であって、それ以外のコマンドを定義することは、もちろん可能である。
【0123】
図11は、ステップS41のコマンドに応じた制御の一例を示すフローチャートである。コマンドに応じた制御において、取得したコマンドが(4)「表示データの表示、消去」のコマンドである場合には、メイン制御部183は、液晶用給電回路193をオン(導通状態:駆動回路189に給電される状態)する(ステップS71,S73)。そして、「表示データの表示、消去」のコマンドが「消去」を示しているときには、駆動回路189に、消去用データでカイラルネマチック液晶表示素子1Aの表示内容を更新させる(ステップS74,S75)。「表示データの表示、消去」のコマンドが「表示」を示しているときには、駆動回路189に、メモリ回路188に記憶されている表示データでカイラルネマチック液晶表示素子1Aの表示内容を更新させる(ステップS74,S76)。そして、液晶用給電回路193をオフ(非導通状態:駆動回路189に給電されない状態)する(ステップS77)。取得したコマンドが(4)「表示データの表示、消去」のコマンド以外のコマンドである場合には、メイン制御部183は、図10を参照して既に説明したような処理を行う(ステップS72)。
【0124】
以上に説明したような制御によって、以下のような使用法を行うことができる。すなわち、主電源スイッチ192がオンしている状態において、保守員等が、コマンドが記憶されたUSBメモリまたはCFカードを表示装置80に装着し、メイン制御部用電源スイッチ194を押下することによって主制御系に給電させる。または、コマンドが記憶されたUSBメモリまたはCFカードを表示装置80に装着し、赤外線送信回路を内蔵するユニットから表示装置80に対して起動コードを送信することによって主制御系に給電させる。そして、メイン制御部183に、USBメモリまたはCFカードに記憶されているコマンドに応じた制御を実行させる。このような使用法によれば、突発的に表示内容を変更することが求められたときに、直ちに表示内容を変更できる。
【0125】
次に、一例として、配信サーバ410を介して表示装置80の表示内容を更新する場合の更新方法を説明する。表示装置80の表示内容の書き換えが必要になると、すなわち、時刻表を変更する必要が生じた場合には、鉄道会社の担当者は、端末装置100をインターネット200を介してサーバ310に接続する。すると、端末装置100のWebブラウザは、端末装置100の操作者に変更指示を入力させるためのWebページをダウンロードする。最初のページは、例えば、IDやパスワードを入力するためのページである。端末装置100の操作者には、表示装置80の表示内容を変更するための操作を可能にするIDおよびパスワードが発行されている。また、IDやパスワードは、サーバ310において、表示装置80に対応づけられて保存されている。特定のIDおよびパスワードが端末装置100に入力され、端末装置100からサーバ310に送信された場合、その端末装置100の操作者は、特定の表示装置80のみの表示内容の変更が可能になる。
【0126】
なお、IDおよびパスワードを、複数の表示装置に対応させることもできる。例えば、1つの駅に設置されている複数の表示装置に対して一つのIDおよびパスワードが発行されたり、一つの鉄道会社に対して一つのIDおよびパスワードが発行されるようにしてもよい。その場合には、端末装置100の操作者は、複数の表示装置の表示内容を変更するための操作を行うことができる。
【0127】
サーバ310のWebページ作成部312は、端末装置100から送信されたIDおよびパスワードに対応した表示装置についての表示データをデータベース320から読み出す。そして、読み出した表示データを含むWebページを作成して端末装置100に送信する。複数の表示装置に対して一つのIDおよびパスワードが発行されている場合には、Webページ作成部312は、操作者が表示内容を変更しようとする表示装置を特定させるためのWebページを端末装置100に送信し、操作者に、表示装置を特定させる。
【0128】
図12は、Webページ(具体的には、Webブラウザが端末装置100の表示部に表示させた画面)の一例を示す説明図である。ただし、図12には画面の一部のみが示されている。図12に示す例では、図12(A)に示すような変更箇所の指定を促す画面が端末装置100の表示部に表示される。端末装置100の操作者がマウス等の入力装置を用いて変更箇所を指定すると、端末装置100のWebブラウザは、変更箇所を指定したことを示す情報をサーバ310に送信する。すると、Webページ作成部312は、図12(B)に示すような更新データ(変更箇所の変更後のデータ)の入力を促すWebページを端末装置100に送信する。端末装置100のWebブラウザは、図12(B)に示すような画面を表示部に表示させる。
【0129】
端末装置100の操作者が更新データを入力し、さらに、図12(C)に示す確認画面において確認の意思表示を行うと、すなわち「OK」の箇所をマウスでクリック等すると、端末装置100のWebブラウザは、変更箇所を示すデータと更新データとをサーバ310に送信する(図8におけるステップS1)。サーバ310において、データ更新部313は、通信制御部311を介して変更箇所を示すデータと更新データとを受信し、データベース320に記憶されている表示データの該当個所を更新データで置き換える(ステップS2)。すなわち、変更後の表示データを作成してデータベース320に記憶させる(ステップS3)。Webページ作成部312は、さらに、図12(D)に示すようなWebページを端末装置100に送信し、端末装置100の操作者がさらに変更を行う意思表示を行った場合には、すなわち「継続」の箇所をマウスでクリック等すると、図12(A)に示すWebページを再度送信する。Webページ作成部312は、図12(A)に示すWebページを再度送信する場合には、すでに変更されている箇所については変更後のデータを反映させる。
【0130】
以上のようにして、表示装置80の表示内容を更新するための更新データが端末装置100からサーバ310に送信されるが、図12に示すWebページは一例であって、Webページのデザインや変更箇所および更新データの入力の仕方は、図12に示す例に限られない。
【0131】
データ更新部313は、変更後の表示データを作成してデータベース320に記憶させた後、変更後の表示データを表示データ送信部315に出力する。表示データ送信部315は、通信制御部311に、変更後の表示データを、その表示データが表示されるべき表示装置を示すデータ(表示装置特定データ)とともに通信制御部311に出力する。通信制御部311は、表示データと表示装置特定データとを専用回線500を介して配信サーバ410に送信する。また、データ更新部313は、表示データの変更を行った旨を、課金制御部314に通知する。課金制御部314は、表示データの変更に対してあらかじめ決められている料金に相当する値を、記憶領域の課金データに加算する課金処理を実行する。
【0132】
なお、サーバ310における課金制御部314は、表示データを送信したときに課金処理を行ったが、課金処理を行うタイミングは表示データを送信したときに限られない。例えば、表示装置80が表示データを受信してメモリ回路188に記憶させた後、メモリ回路188に記憶されているデータをディジタル公衆携帯電話網および配信サーバ410を介してサーバ310に返送するように構成してもよいのであるが、そのように構成した場合には、サーバ310は、返送された表示データによって、表示データが正しく送信されたことを確認したら課金処理を実行するようにしてもよい。
【0133】
配信サーバ410において、制御部412は、サーバ310から送信された変更後の表示データを通信制御部411を介して受信し、受信した表示データを、表示装置特定データで特定される表示装置に対応した記憶部413における記憶領域に一時記憶する。そして、制御部412は、ディジタル公衆携帯電話網を介して表示装置80からアクセスされると、記憶部413における記憶領域に記憶されている表示データを、「表示データの格納」を示すコマンドおよび表示データの送信先の表示装置80を示すデータとともに、交換機インタフェース415を介して交換機420に送信する。交換機420は、表示データの送信先の表示装置80が存在するエリアの基地局600に対して「表示データの格納」および表示データを送信する。基地局600は、「表示データの格納」および表示データを無線通信によって表示装置80に送信する。
【0134】
上述したように、基地局600が表示データを表示装置80に送信する時点では、表示装置80の主制御系は起動している。PDCアダプタ182がアンテナ181を介して(3)「表示データの格納」のコマンドを受信すると、制御部183は、そのコマンドに付随する表示データをメモリ回路188に記憶させる。つまり、新たに受信された表示データで、メモリ回路188の記憶内容を更新する。また、制御部183は、(4)「パネルへの表示、消去」のコマンドを受信すると、駆動回路189に表示データを与えて、カイラルネマチック液晶表示素子の表示内容を、メモリ回路188に記憶されている表示データにもとづいて書き換えさせる。
【0135】
以上に説明したように、本実施の形態では、サーバ310と配信サーバ410とによる表示管理システムが、表示装置80からのアクセスに応じて、ディジタル公衆携帯電話網を介して表示装置80に対して、変更後の表示データを送信する。よって、表示装置80に表示される情報の内容を容易に変更でき、情報の内容変更に関するコストを低減できる。また、一つの表示管理システムから多数の表示装置に表示データを送信することができる汎用性の高いシステムが実現される。
【0136】
また、表示装置80には、赤外線受信回路174およびメイン制御部用電源スイッチ194が設けられ、保守員等の操作によって主制御系への給電を開始させることができる。よって、コマンドが書き込まれたUSBメモリやCFカードを保守員等が表示装置80に装着することによって、即時的に、表示内容を書き換えることもできる。従って、突発的に表示内容を変更することが求めらても、直ちに表示内容を変更できる。
【0137】
また、上記の実施の形態では、サーバ310と配信サーバとが専用回線500で接続されている形態を例示したが、セキュリティと通信速度を確保できるのであれば、専用回線500に代えて、他の回線、例えば一般回線(公衆回線)を用いてもよい。
【0138】
また、上記の実施の形態では、第1の通信ネットワークとしてインターネット100を例示したが、端末装置100が、サーバ310、またはサーバ310の機能と配信サーバ410の機能とを兼ね備えた表示管理システム(例えば1つのサーバ装置で構成される。)に対して変更指示を第1の通信ネットワークを介して送信できるのであれば、第1の通信ネットワークとして、インターネット100に代えて、他の通信ネットワークを用いもよい。また、第2の通信ネットワークとして公衆携帯電話網を例示したが、配信サーバ410、またはサーバ310の機能と配信サーバ410の機能とを兼ね備えた表示管理システムが、多数の表示装置80に対して表示データを第2の通信ネットワークを介して送信できるのであれば、第2の通信ネットワークとして、公衆携帯電話網に代えて、他の通信ネットワークを用いもよい。
【0139】
さらに、サーバ310、またはサーバ310の機能と配信サーバ410の機能とを兼ね備えた表示管理システムが、表示装置80に対して送信する表示データは、暗号化されていてもよい。
【実施例】
【0140】
(実施例1)
以下、図13を参照して第1の実施例を説明する。図13に示す表示装置81におけるカイラルネマチック液晶表示素子1A〜1H(LCDパネル)は、上記の実施の態様で説明したものと同様である。また、制御系の構成も、図7示したような構成である。本例では、LCDパネルを複数縦に配設する。LCDパネルの上側に駅名表示82、下側に路線図83を表示するようにしている。これらの駅名表示82と路線図83は、利用客にとっては、固定情報なので表示可変型の表示素子を用いる必要がなく、印刷物あるいは簡易に変更できる固定表示部材であってもよい。
【0141】
太陽電池は外光から電力を得るために用いる。8連装のLCDパネルの書き換えを行う。表示装置の内部に二次電池を配置する。例えば、1回/1日の表示書き換えに消費する電力を太陽電池の起電力でまかなうことができ、通常の表示書き換え動作だけであるならば、ほぼ半永久的動作を継続することができる。
【0142】
外部からの無線通信で、表示を自由に書き換える場合には、通信系回路に電力を供給する必要がある。この場合は、より多くの電力を必要とするので、太陽電池パネルから、より多くの光を受光するようにすればよい。それには、平均的な外光の強さ、照明光の強さに応じて、太陽電池のパネルサイズを調整すればよい。
【0143】
太陽電池のパネル84は、表示装置81の上側に設置し、太陽光、照明光を受光できるように適度な角度と方向を与えて設置する。たとえば、1本の支持棒85、または2本の支持棒で表示装置81の上辺に固定することが好ましい。有効利用できる光束をほぼ90度で受光できるように太陽電池のパネル面を自由に変更できるよう、半固定方式であることが好ましい。
【0144】
表示の書き換えは、平日モードと土日モードを、金曜日の夜、日曜日の夜のそれぞれの終電後、利用客がいなくなってから行うことができる。この場合は、通常の利用時間帯において、事実上電力を消費せず、不要な電波を発生することもない。この場合は、内蔵するタイマ回路および制御プログラムによって、表示の書き換えのタイミングを自動的に起動するようにすればよい。たとえば、半年〜1年の無人運転を実行することもできる。そのような、自動運転の間に、ネット等と無線機能を介して、外部から表示情報を任意に書き換えることもできる。
【0145】
例えば、路線部の表示部に可変表示のLCDパネルを配設し、そこに、広告を表示することもできる。あるいは、緊急時には、交通機関の利用客に対する臨時情報を提供することもできる。商用電源網に大規模な故障が生じても、内蔵電源等によって、一定時間の間、継続して表示動作を行い、利用客に必要な情報を提供することもできる。
【0146】
また、表示装置81には、ローカルに送受信する機能を設けて、利用客とオンデマンド方式で、時刻表データその他、交通関係の情報や、その他一般の情報をリアルタイムにダウンロードできる機能を備えてもよい。
【0147】
(実施例2)
図14の表示装置71は、交通機関の時刻表に用いる仕様のものである。全体の中央部に、8枚の電子ペーパ型表示素子、本例ではメモリ性の液晶表示素子2A〜2H(以下、たんにパネルともいう。)を8枚備えている。この表示装置71は、駅、飛行場、一般のビル、ホテル、病院、広場、展示場、結婚式場、遊園地、等に設置し、場内説明、交通機関の発車時刻(到着時刻)、フロアガイド、域内・周辺の地図等を表示するのに好適である。なお、メモリ性の動作モードを備えた表示情報伝達システムの基本的な考え方については、本出願人らによる特開2003−316289号に示されている。
【0148】
図14の構成のものは、高さ:1900mm、横:850mm、奥行き:80mmの薄型仕様のものである。屋外の壁際に設置しやすく、基本的に商用電源が不要なので、任意の場所に設置することができるので好ましい。図15は図14の正面図における、A−A’断面図、図16は、B−B’断面図を示す。両側の二本の柱の前面に透明ガラス板による前面板を配置し、その背面側に表示素子が配設されている。
【0149】
表示領域の周りは暗色系のセラミック被膜を配して、耐久性のある背景領域75を構成するようにしている。この背景領域のなかに、上部、中央部、下部の3箇所に表示領域を設けている。上部表示領域72と下部表示領域73は、半固定方式の表示情報を設置する。例えば、通常の印刷物でよい。中央部表示領域74には、表示を可変できる電子ペーパー型の表示素子を複数枚配置する。情報量にもよるが、4枚以上設置すれば、大容量の情報表示を実現できる。上述したように、低消費電力、表示の高精細性、制御のしやすさ等からメモリ型液晶表示素子が特に好適である。
【0150】
電源、表示素子、駆動回路、通信回路、制御回路、等の電子回路は、表示領域の背面側の筐体の中に設置されている。また、外部との通信機能を持っており、頭頂部に設置したアンテナで外部の制御センタと無線通信するようになっている。
【0151】
本例では、電子ペーパー型の表示素子を複数配置し、それと半固定表示と組み合わせることによって、全体として1つの意味のある表示情報を提供することに特徴がある。その際に、可変型の表示領域の表示制御を上述したようにすることで、装置全体の消費電力を低減させることができる。
【0152】
以下、このような表示装置71を駅の時刻表示に用いる場合を説明する。まず、中央部の表示領域はメモリ型の液晶表示素子によって構成される。最上部に位置するパネルは表示する内容が休日か、平日のものであるかを示すように設定する。
【0153】
また、同じパネルのなかで、交通機関の路線の行き先、あるいは、前の駅と次駅を表示するようにする。必要に応じて、複数の言語で表示を行う。たとえば、休日の場合に「休日標準時刻表」及び「DEF方面」とかを表示する。平日の場合に「平日標準時刻表」及び「DEF方面」と表示する。また、情報を表示する当該交通機関の名称・商標・ロゴなどを合わせて表示し、利用者にとって、より視認性を高めることができる。
【0154】
このように、1台の表示装置71を平日と休日の時刻を切替えて表示を行うモードで使用することができる。また、2台を併設して、一方を休日表示、他方を平日表示にして、同時に「休日」と「平日」の両方の時刻表示を提供するように設定することもできる。その場合、表示装置を固定した前面板の全体を180度回転させて配置し、2台を左右隣り合わせに併設して用いることができるように、予めデザインすることが好適である。寸法・デザインの異なるも表示装置を別途準備する必要がないので好ましい。
【0155】
列車等の時刻は、最上部のパネルを除いた下側の7枚のパネルの表示領域を、それぞれ水平方向に3分割して、それらの表示に用いる。それぞれの分割した1行単位に、1時間毎の交通機関等の時刻を表示する。左端には、時間を表示する。列車、バス、船、飛行機等の発車時刻である。
【0156】
3行/1枚のパネルの背景色を交互に異なる色に設定することにより、利用者の視認性を高めることができる。現在時刻が、全体のどの部分に位置しているのか、さらに、その時間帯(水平方向)のなかの、何分(なんぷん)の列車の時刻であるのかを、利用者が容易に判別しやすくなる。本例では、最上部のパネルから、各分割行ごとの、それらの列車の時刻表示をする領域の背景色を「白・水色・白」、「水色・白・水色」、「白・水色・白」、・・・「白・水色・白(余白部)」に設定する。各分割行の時間を表示する左端の領域は青地に白抜きで時刻の文字を表示する。
【0157】
休日の場合は、上記の「水色」の部分を「オレンジ」にして表示をする。各列車の時刻(分の表示)は、白または水色(休日の場合はオレンジ)を背景地として黒で表示をする。パネルの下側の2枚の右側部を、白地に設定し、そこに「符号の説明(行き先駅の略称)」などの補足説明のための表示を付けることができる。
【0158】
休日の場合は、「白・オレンジ・白」、「オレンジ・白・オレンジ」、「白・オレンジ・白」、・・・「白・オレンジ・白」に設定する。各分割行の時間を表示する左端の領域は濃いオレンジ地に白抜きの表示とする。
【0159】
時間の表示は次のように設定する。上部のパネルから順に、「5,6,7」、「8,9,10」、「11,12,13」、「14,15,16」、「17,18,19」、「20,21,22」、及び「23,0,(空白)」に設定する。いわゆる、始発から終電までの発車時刻を表示することができる。最後の分割行は余白であり、列車等の時間表示をする部分を白地に設定する。
【0160】
また、列車により運行速度が異なる路線においては、各駅停車の列車は黒、快速は青、急行は茶、等の色を割り当てることによって表示をすることもできる。利用者が容易に視認し、時刻データを判別しやすくするためである。
【0161】
これらの表示は、フルドットマトリックスの画素の構成が「約0.3mm×約0.3mm」であり、画素間が0.01mmである。横方向が1440、縦方向が220ドットの高密度・高精細のカイラルネマチック表示素子を用いている。そのため極めて良好な高品位の表示を実現できる。もちろん、画素サイズや、パネルのアスペクト比、全体の画素数などは、適用可能な製造技術・材料の範囲で、必要に応じて所望の表示性能のものを設計・製造し、本発明の表示装置のなかに組み込むことができる。
【0162】
このようなメモリ性の液晶表示素子は、特開2003−315763号公報に示した技術を適用することができる。2枚構成の場合であったも、ディザ法により、良好なマルチカラーを達成でき、システム全体の構成を簡略化できる。また、表示素子を3枚組み合わせたフルカラー表示も可能である。
【0163】
表示の書き換えを行う場合、上述したように、それぞれのパネルを1枚ずつ駆動し、その表示を書き換える。装置全体で同時に消費する電力を低減でき、電源回路の大きさと容量をコンパクト化できるからである。
【0164】
次に、本発明の表示装置をビルの案内表示に用いる場合を説明する。ビルの入り口や、フロント近傍に設置する場内の案内板である。上記の例における、表示装置の表示領域に、各フロアーの企業・組織の名称の表示を行う。
【0165】
あるいは、アルファベット順、アイウエオ順に表示をすることもできる。全体の表示領域の一部に、臨時の情報を表示できるように臨時情報の表示領域を区分けして設定できる。また、その情報表示を色、縁取り等によってハイライトさせ、利用者の視認性をより高めることもできる。
【0166】
例えば、場内・域内で、一日、週単位で行われるイベントなどをタイムリーに表示することに適している。また、ビル内の居住者が移動した場合に、それらの表示の変更について、容易に対応することができる。表示可変型の電子ペーパー型表示素子を用いているからである。
【0167】
なお、上記の各実施例では、8連装のパネルを例示したが、より少ない数のパネルを用いてもよい。一例として、4連装のパネルを用いてもよい。4連装のパネルを時刻表として用いる場合に、例えば、1日中の時刻表を表示するのではなく、数時間分の時刻表を表示するようにして、適宜書き換えるようにすればよい。上述したように、本発明では書き換えは容易である。
【0168】
以上のように、本発明の情報表示システムは、時刻表をはじめとして、広く、情報を視覚によって複数人に伝達し、かつ、適宜表示内容が変更されるような用途に用いることができる。
【0169】
例えば、鉄道会社の駅に限らず、空港や港湾などにおいて、交通機関における乗り物の発着時刻等の情報や広告情報を表示する用途に使用することができる。
【0170】
また、ガソリンスタンド(交通機関の燃料補給地)、百貨店、コンビニエンスストア、レストランなどにおいて商品情報を表示する用途に使用することができる。また、ホテル、病院、金融機関等のサービス会社、役所、学校、式場、ゲームセンターなどにおいて、各種案内情報やサービス情報等を表示する用途に使用することができる。
【0171】
また、展示場、会議場、博物館、美術館、劇場、映画館、音楽会場、図書館、会社などにおいて、通知や催し物情報を表示する用途に使用することができる。
【0172】
さらに、公園や道路などの屋外の所定場所に設置され、不特定多数の公衆に、広告情報、注意情報その他の情報を伝達する用途に使用することができる。
【0173】
上記の例では、もっぱら不特定多数の利用者に特定の情報を視認できるように構成したが、対象となる利用者をあらかじめ特定したうえで、情報を与えるように構成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0174】
本発明は、表示装置によって多数の人に情報を提供したり、遠隔地の人に情報を提供したり、表示装置に表示される情報の内容が適宜変更されるような用途に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】情報表示システムの構成例を示すブロック図。
【図2】表示装置を模式的に示す正面図。
【図3】図2におけるP−Q断面の部分断面図。
【図4】CL−LCDを用いた液晶表示素子の模式的断面図。
【図5】サーバの機能構成を示すブロック図。
【図6】配信サーバの構成例を示すブロック図。
【図7】表示装置における電気回路ブロックの回路構成例を示すブロック図。
【図8】サブCPUの動作例を示すフローチャート。
【図9】メイン制御部の動作例を示すフローチャート。
【図10】コマンド例を示す説明図。
【図11】コマンドに応じた制御例を示すフローチャート。
【図12】Webページの一例を示す説明図。
【図13】第1の実施例を示す説明図。
【図14】第2の実施例を示す正面図。
【図15】第2の実施例を示す断面図。
【図16】第2の実施例を示す断面図。
【図17】発車時刻表の一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0176】
1A〜1H カイラルネマチック液晶表示素子
71,80,81 表示装置
100 端末装置
170 サブ制御回路
171 サブCPU
172 給電回路
173 時計回路
174 赤外線受信回路
182 PDCアダプタ
183 メイン制御部
187 電圧センサ
188 メモリ回路
189 駆動回路
192 主電源スイッチ
193 液晶用給電回路
194 メイン制御部用電源スイッチ
195 USBインタフェース
196 CFカードインタフェース
200 インターネット
310 サーバ
320 データベース
410 配信サーバ
600 基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示データにもとづく情報を表示する表示装置において、
メモリ性を有する表示素子と、
表示素子を駆動する駆動回路と、
コマンドおよび表示データを入力するインタフェース部と、
インタフェース部に入力されたコマンドに応じて、インタフェース部に入力されている表示データにより駆動回路に表示素子の表示を更新させる主制御部と、
主制御部がコマンドおよび表示データを入力するときに電源部から主制御部に電力供給され、駆動回路が表示素子の表示を更新するときに電源部から駆動回路に電力供給されるように制御する電源制御部とを含む
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
電源部に一次電池のみを設けた
請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
電源部に二次電池を設け、太陽電池で二次電池を充電するようにした
請求項1記載の表示装置。
【請求項4】
インタフェース部は、装着された記憶媒体からデータを読み取るローカルインタフェース部と、無線伝送路を介して、コマンドおよび表示データを格納するサーバをアクセスする無線通信インタフェース部とを含む
請求項1、2または3記載の表示装置。
【請求項5】
電源制御部は、タイムアップ時刻が到来すると主制御部に電力供給することを指定する信号を出力するタイマ回路を含む
請求項1、2、3または4記載の表示装置。
【請求項6】
操作に応じて主制御部に電力供給することを指定する信号を出力する電源スイッチを含む
請求項1、2、3、4または5記載の表示装置。
【請求項7】
電源制御部は、赤外線通信によって起動コードを受信すると主制御部に電力供給することを指定する信号を出力する赤外線受信回路を含む
請求項1〜6のいずれか1項記載の表示装置。
【請求項8】
メモリ性を有する表示素子がカイラルネマチック液晶表示素子である
請求項1〜7のいずれか1項記載の表示装置。
【請求項9】
メモリ性を有する表示素子を4以上備え、そのうちの一の表示素子の表示を更新させる際に、他のすべての表示素子の表示電極に印加される電圧をオフとし、
4以上のメモリ性を有する表示素子を、順に書き換えする表示装置の駆動方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項記載の表示装置と、
表示装置と無線伝送路を介して情報授受可能であり、表示内容の変更指示に応じて変更後の表示データを作成する表示管理サーバとを備えた
ことを特徴とする情報表示システム。
【請求項11】
無線伝送路は、公衆携帯電話網であり、
表示装置は、インタフェース部として携帯電話通信モジュールを有する
請求項10記載の情報表示システム。
【請求項12】
表示管理サーバは、表示データとして交通機関における時刻表を作成し、
表示装置は、表示素子に時刻表を表示する
請求項10または11記載の情報表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−330513(P2006−330513A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156285(P2005−156285)
【出願日】平成17年5月27日(2005.5.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.COMPACTFLASH
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】