説明

表示装置およびカメラ

【課題】複数の表示を行う表示装置において小型化を図ることができる表示装置の提供。
【解決手段】照明光を出射する光源11と、照明光が入射し、複数の再生像に対応する複数の再生光を出射するホログラム素子12と、複数の再生光L1〜L5の光路中に配設され、再生光L1〜L5を選択的に透過する遮光素子13とを備え、遮光素子13を透過した再生光により表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置およびその表示装置を備えたカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラのファインダ内表示装置として、例えば特許文献1に開示されているような表示装置が知られている。その表示装置では、表示板に設けられた表示部をLEDで照明し、表示部で反射された照明光を接眼光学系を介して観察するような構成としている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−281752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の装置では、表示板に設けられた表示部の数だけLEDを設ける必要があり、表示部の数が増えるほど照明光学系が大きくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による表示装置は、照明光を出射する光源と、照明光が入射し、複数の再生像に対応する複数の再生光を出射するホログラムと、複数の再生光の光路中に配設され、再生光を選択的に透過する遮光素子とを備え、遮光素子を透過した再生光により表示を行うことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の表示装置において、ホログラムは計算機ホログラムであることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の表示装置において、遮光素子を液晶ホログラム素子としたものである。
請求項4の発明によるカメラは、請求項1〜3のいずれか一項に記載の表示装置を備えたことを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4に記載のカメラにおいて、表示が撮影情報を表示する標識であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ホログラムを用いて照明光から複数の再生光を出射せ、それらの再生光を選択的に用いて表示を行うようにしたので、表示装置の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は本発明による表示装置の一実施の形態を説明する図であり、表示装置をカメラのファインダ内表示装置に適用したものである。図1は一眼レフカメラを例に示したものであり、カメラボディに1には撮影レンズ2を備えたレンズ鏡筒3が装着されている。
【0008】
4は撮影レンズ2により結像された被写体像を撮像する撮像素子であり、CCD素子や銀塩フィルムなどが用いられる。撮像素子4の前方には、メインミラー5が設けられている。図1は非露光時の状態を示したものであり、メインミラー5は光軸上に配置されている。露光時には、メインミラー5は光路外の待避位置へと移動し、被写体像が撮像素子4上に投影される。
【0009】
図1に示す非露光時においては、撮影レンズ2からの被写体光はメインミラー5で反射され、撮像素子4の撮像面と光学的に等価な位置に設けられた焦点板6上に結像する。焦点板6上に結像された被写体像は、表示板7、ペンタプリズム8および接眼レンズ9を介して観察される。
【0010】
本実施の形態のカメラは、ファインダ内表示装置として光源11、ホログラム素子12、遮光素子13および投影光学系10を備えており、投影光学系10にはレンズ100,101が設けられている。レンズ101は、レンズ面と、レンズ100からの光をペンタプリズム8方向へ反射する反射面とを有している。光源11には発光光量の大きな光源として半導体レーザーを用いている。
【0011】
投影光学系10からペンタプリズム8へと出射された複数の表示光は、ペンタプリズム8を透過して焦点板6の上方近傍に設けられた表示板7に入射する。表示板7にはマイクロプリズムによる表示部70が形成されており、表示光は表示部70のマイクロプリズムによりペンタプリズム8方向へと反射され、接眼レンズ9を介して観察される。すなわち、表示が被写体像に重畳されて観察される。
【0012】
[ファインダ内表示装置の説明]
図2は、ファインダ内表示装置による表示光の生成を説明する図である。光源11から出射されたレーザー光をホログラム素子12に照射すると、レーザー光がホログラム素子12により回折されて複数の再生光(回折光)L1〜L5が出射される。本実施の形態のホログラム素子12は計算機ホログラム(Computer Generated Hologram)と呼ばれるものであって、ここでは、矩形断面を有する5つの分散光が再生光L1〜L5として出射されるようなホログラム(回折格子)が形成されている。
【0013】
通常、レーザー2光束干渉によって物体光と参照光による干渉縞を形成し、その干渉縞を記録材に記録することでホログラムが形成される。ホログラムには物体の情報が干渉縞という形で記録され、ホログラムに再生照明光を照射すると、物体光と同一の波面を有する再生光がホログラムから出射される。計算機ホログラムは、この干渉縞を計算により求め、それを記録材に記録したものである。そのため、計算機ホログラムでは干渉縞を作るための物体が実在しなくても良く、架空の物体の三次元画像を得ることが可能である。
【0014】
ホログラム素子12から出射された再生光L1〜L5は、遮光素子13に入射する。遮光素子13の再生光L1〜L5が入射する領域には、遮光部131〜135が形成されている。遮光部131〜135は透過状態と不透過状態とを切り替えることができ、図2に示す例では全ての遮光部131〜135が透過状態となっている。遮光部131〜135を透過した再生光L1〜L5は、表示板7の各表示部70に入射する。後述するように、表示部70にはマイクロプリズムによる表示パターンが形成されており、ここでは、一例としてオートフォーカスエリアを表示するための表示パターンが5つ形成されている。
【0015】
図3は表示板7の表示部70付近の断面図である。表示板7はアクリル等の透明部材により形成されており、表示部70以外の部分は平滑な平行平板になっている。平行平板部分を通過する焦点板6からの被写体光Fは、何の影響も受けずに上方へと通過し、ペンタプリズム8および接眼レンズ9を介して観察される。
【0016】
一方、表示部70は、マイクロプリズム700の設けられた領域が、図2に示すようにオートフォーカスエリアマークと同一形状に形成されたものである。表示板7における再生光L1〜L5の各照射領域には、表示部70がそれぞれ形成されている。矩形断面の再生光L2が表示板7の表示部70を含む領域に照射されると、表示部70に入射した再生光L2は、図3に示すようにマイクロプリズム700の反射面により2回反射され、接眼レンズ方向へと出射される。その結果、表示部70と同一形状のオートフォーカスエリアマークが、接眼レンズ9を通して観察されることになる。他の再生光L1,L3〜L5についても同様である。
【0017】
なお、被写体光Fはマイクロプリズム700により屈折されるので、表示部70に再生光L1〜L5が入射していない場合には、表示部70はマイクロプリズム700が形成されていない平行平板部分に比べて若干暗く観察されることになる。
【0018】
上述したように、計算機ホログラムにおいては、オートフォーカスエリアマークに限らず様々な形状のマークに対応する波面を再生光として容易に形成することができる。そのため、図2に示したような矩形断面形状の分散光を形成する代わりに、図2に示す表示部70と同一形状の再生光を形成することもできる。この場合には、再生光がオートフォーカスエリアマークと同一形状となっているため、マイクロプリズム700が形成される領域の形状はオートフォーカスエリアマークと同一形状でなくても構わない。
【0019】
次に、遮光素子13について説明する。上述したように、遮光素子13の各遮光部131〜135は、各々独立して透過状態と不透過状態とを切り替えることができる。そのため、図4に示すように遮光部132,134を透過状態にし、遮光部131,133,135を不透過状態とすることで、再生光L2,L4のみを選択的に透過させることができる。その結果、再生光L2,L4によるオートフォーカスエリアマークだけが接眼レンズを通して観察される。図4に示す例では、ホログラム素子12が、オートフォーカスエリアマークと同形状の再生像を再生する再生光L1〜L5を形成する場合を示した。なお、図4の表示板7では、マイクロプリズム700が形成されている領域である表示部70の図示を省略した。
【0020】
このような遮光素子13としては、ポリマーネットワーク液晶素子、液晶ホログラム素子、ゲストホスト液晶素子およびエレクトロクロミック素子などや、メカニカルなシャッタ機構を用いることができる。
【0021】
遮光素子13にポリマーネットワーク液晶素子を用いる場合、ポリマーネットワーク液晶を一対のガラス基板の間に挟持した液晶基板において、遮光部131〜135の領域に透明電極を設ける。ポリマーネットワーク液晶はポリマーの3次元網目構造の中に液晶が存在するものであり、遮光部131〜135の透明電極に電圧が印加されていない時には、液晶分子は網目構造の界面に沿って配向している。そのため、入射した再生光に対して液晶は強い散乱を生じさせ再生光はほとんど透過されず、遮光部131〜135は不透過状態となる。なお、遮光部131〜135以外の領域は透明電極が設けられていないので、常に不透過状態となっている。
【0022】
一方、遮光部131〜135の透明電極に電圧を印加すると、遮光部131〜135の液晶分子は電界によって基板垂直方向に配向する。その結果、入射した再生光は散乱されず透過し、遮光部131〜135は透過状態となる。各遮光部131〜135に設けられた透明電極の印加電圧を独立に制御することにより、各々の透過・不透過状態を個別に制御することができる。
【0023】
ゲストホスト液晶素子やエレクトロクロミック素子に関しても、ポリマーネットワーク液晶素子と同様の用い方をすることができる。ゲストホスト液晶素子の場合、分子の長軸方向と短軸方向とで光吸収に異方性を有する染料を一定分子配列の液晶に溶融すると、染料の分子は液晶の分子と平行に配列する。そして、電圧印加・非印加に応じて透明状態と着色状態とを切り替えることができる。エレクトロクロミック素子では、クロミック物質が外部からの電気的な刺激によって酸化還元反応を起こし、クロミック物質の色が可逆的に変化する。
【0024】
また、液晶ホログラム素子は、液晶層とポリマー層とによる干渉縞が形成された液晶板である。液晶層に含まれる異方性液晶分子の配向は、電圧非印加時にはランダムであって、干渉縞が形成された部分は入射光に対して回折格子として機能する。一方、電圧を印加すると液晶分子が基板垂直方向に配向し、干渉縞の回折機能が消失して透明状態となる。回折格子の機能としては、光散乱機能やレンズ機能を持たせることができる。光散乱機能を持たせた場合、電圧非印加時は入射光が散乱されて不透過状態となり、電圧印加時には透明になって透過状態となる。
【0025】
ところで、図2に示すようにホログラム素子12で複数の再生光を発生させた場合、再生光は進行につれて広がる傾向にあるので、レンズ100を挿入して広がりを抑えるようにしている。そこで、遮光板13に液晶ホログラム素子を用いた場合、レンズ100が有するレンズ機能を遮光板13に持たせることができ、レンズ100を省略することができる。例えば、液晶ホログラム素子を2枚重ねて、一方はシャッタとして機能させ、他方はレンズとして機能させる。他方のホログラム素子の場合、電圧非印加時にレンズとして機能することになる。
【0026】
レンズ機能を有するホログラム素子を作製する場合には、まず、液晶と光硬化性モノマーとを混合してモノマー中に液晶を分散させる。そして、その混合物質を挟持した液晶セルを作る。点光源から出射された光束と参照光とを干渉させて明暗の干渉縞を作り、その干渉縞中に液晶セルを配置する。干渉縞明部ではモノマーが硬化してポリマーになり、その部分は屈折率等方領域となる。干渉縞明部にある液晶のほとんどは、硬化の際に干渉縞明部から押し出され干渉縞暗部に移動する。そして、干渉縞暗部は、ほぼ液晶により構成される屈折率異方性領域となる。その結果、屈折率等方領域と屈折率異方性領域による干渉縞(回折格子)が液晶層内に形成され、レンズ機能を有するホログラム素子が形成される。
【0027】
図5は、図1のペンタプリズム8に代えて、中空のペンタミラー18を用いた場合の構成を示したものである。30は表示光学系であり、図1の光源11,ホログラム素子12,遮光素子13,レンズ100,101が設けられている。表示光学系30から出射された再生光Lは表示素子7に入射し、表示光としてペンタミラー18のダハ反射面18aへと反射される。ダハ反射面18aで反射された再生光Lは、正面反射面18bで反射されて接眼レンズ9へと向かう。
【0028】
図6は、本実施の形態の変形例を示す図である。上述した実施の形態では、再生光をペンタプリズム8を介して表示板7に入射させることで表示を被写体像に重畳させたが、この変形例では、表示板7の代わりに重畳光学系20を用いて重畳させるようにした。なお、図6に示した変形例では重畳光学系20を接眼レンズ9の後方に配置したが、接眼レンズ9とペンタプリズム8との間に配置しても良い。
【0029】
重畳光学系20には、偏光分離鏡としての偏光ビームスプリッター21aが形成された光学ブロック21、光学ブロック21の背面に固定された1/4波長板22およびホログラムミラー23が設けられている。ホログラムミラー23および1/4波長板22は被写体光Fに対して略透明な部材で構成されている。
【0030】
レンズ100から出射された再生光Lは光学ブロック21に入射し、再生光LのS偏光成分が偏光ビームスプリッター21aで反射される。反射されたS偏光は1/4波長板22により円偏光となり、ホログラムミラー23により反射される。ホログラムミラー23は図1のレンズ101に対応するものであり、入射した再生光に対して凹面鏡として機能する。ホログラムミラー23で反射された反射光は逆回りの円偏光として1/4波長板22に入射し、1/4波長板22によりP偏光となる。このP偏光は偏光ビームスプリッター21aを透過し、接眼レンズ9からの被写体光に重畳される。
【0031】
上述した実施の形態は、以下のような作用効果を奏する。
(1)照明光を出射する光源11と、照明光が入射し、複数の再生像に対応する複数の再生光を出射するホログラム(ホログラム素子12)と、複数の再生光L1〜L5の光路中に配設され、再生光L1〜L5を選択的に透過する遮光素子13とを備えたので、一つの照明光から複数の再生光を生成することができ、表示装置の小型化を図ることができる。
(2)また、ホログラムを用いているため、複数種類の再生像に対応する再生光を発生させることができ、様々な形態の表示を一対の光源およびホログラムで行わせることができる。特に、計算機ホログラムを用いた場合、複数種類の再生像を生成する干渉縞を容易に形成することができるとともに、任意の形状の表示を行わせることが可能である。
(3)遮光素子13を液晶ホログラム素子としても良く、その場合には、遮光素子13自体にレンズ機能等も付加することができ、表示装置をさらに小型化することができる。
【0032】
上述した実施の形態では、光源11として半導体レーザーを用いたが、必ずしもこれに限らず、例えば、LED等でも構わない。しかしながら、半導体レーザーの場合には光輝度の光を得ることができるので、複数の再生光を発生させた場合にも明るい表示光を得ることができるという利点がある。なお、上述した実施の形態では、カメラのファインダ内表示を例に説明したが、本発明はカメラに限らず様々な装置の表示装置に適用することができる。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による表示装置の一実施の形態を説明する図であり、表示装置をカメラのファインダ内表示装置に適用したものである。
【図2】ファインダ内表示装置による表示光の生成を説明する図である。
【図3】表示板7の表示部70付近の断面図である。
【図4】遮光部の機能を説明する図である。
【図5】中空ペンタミラー18を用いた場合の構成を示す図である。
【図6】変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
6:焦点板、7:表示板、8:ペンタプリズム、9:接眼レンズ、10:投影光学系、11:光源、12:ホログラム素子、13:遮光素子、70:表示部、131〜135:遮光部、700:マイクロプリズム、L1〜L5:再生光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を出射する光源と、
前記照明光が入射し、複数の再生像に対応する複数の再生光を出射するホログラムと、
前記複数の再生光の光路中に配設され、前記再生光を選択的に透過する遮光素子とを備え、
前記遮光素子を透過した再生光により表示を行うことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記ホログラムは計算機ホログラムであることを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表示装置において、
前記遮光素子は、液晶ホログラム素子であることを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の表示装置を備えたことを特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項4に記載のカメラにおいて、
前記表示は撮影情報を表示する標識であることを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−328220(P2007−328220A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160517(P2006−160517)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】