説明

表示装置および表示装置の製造方法

【課題】高精度に補助配線上の有機層を一括除去可能であり、これにより歩留まりの向上および生産性の向上を図ることが可能な有機電界発光素子を備えた表示装置の製造方法、およびこれによって得られる表示装置を提供する。
【解決手段】基板2上の各画素aに下部電極4をパターン形成する。各画素a間に、下部電極4よりも光吸収率の高い導電性材料からなる光吸収層9を備えた構成の補助配線Nを形成する。下部電極4と補助配線Nとが形成された基板2上に、下部電極4を覆う状態で有機層5を形成する。有機層5側からのレーザ光の照射により有機層5の下部に露出した光吸収層9においてレーザ光を熱変換し、光吸収層9の上部における有機層5部分を選択的に除去する。下部電極4との間に有機層5を狭持させると共に有機層5が除去された光吸収層9部分において補助配線Nに接続された上部電極6を、基板2上に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置の製造法および表示装置に関し、特には複数の有機電界発光素子を配列形成してなる表示装置の製造方法、およびこの方法によって得られる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence:EL)を利用した有機電界発光素子(いわゆる有機電界発光素子)は、下部電極と上部電極との間に正孔輸送層や発光層等を積層した有機層を狭持させてなり、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。そしてこのような有機電界発光素子を用いた表示装置(以下、単に表示装置と称する)は、色再現性や応答速度の観点から、優れたフラットパネル型の表示装置として大画面化に向けた開発が進んでいる。
【0003】
上記表示装置は、有機電界発光素子を駆動するための薄膜トランジスタ(thin film transistor:TFT)を備えたアクティブマトリックス駆動とすることで装置の高機能化を図っている。アクティブマトリックス駆動の表示装置においては、TFTを覆う状態で層間絶縁膜が設けられ、この層間絶縁膜上に有機電界発光素子が配列形成されている。層間絶縁膜上には、各有機電界発光素子の下部電極が、TFTに接続された状態で画素毎にパターン形成され、これら下部電極上に有機電界発光素子の有機層が設けられている。また、下部電極との間に有機層を狭持する状態で、各画素の有機電界発光素子に共通のベタ膜として上部電極が設けられている。
【0004】
以上のようなアクティブマトリックス駆動の表示装置においては、TFTが形成された基板と反対側から発光光を取り出す、いわゆる上面発光型とすることが、開口率を確保する上で有効になる。この場合、透明もしくは半透明材料で上部電極を形成する必要があるが、このような材料を各画素に共通のべた膜として設けた上部電極は抵抗値が高く、電圧降下による表示品位の低下が著しい。このため、画素間に下部電極と同一層で補助配線を形成し、この補助配線に上部電極を接続させることで、上部電極の低抵抗化を図っている。
【0005】
ところが、近年の画素サイズおよび画素ピッチの微細化により、RGB各色に対応する画素毎に塗り分けて成膜された有機層が、各画素間に大幅にはみ出して補助配線上を覆い易くなっている。また、上記微細化による有機層の塗り分けの限界から、有機層を各画素に共通のベタ膜として形成する構成では、補助配線上の全面が有機層で覆われることになる。このような場合、補助配線上の有機層によって、補助配線と上部電極とのコンタクトが悪化してしまう。
【0006】
そこで、補助配線上の有機膜を、レーザ照射によるアブレーションによって除去する方法が提案されている。この場合、補助配線に対応する位置に開口部を有するマスクを用いることにより、レーザ光(輻射線)の照射部を画定し、補助配線上の有機層部分を選択的にアブレーションする。また、補助配線に対して位置合わせをしてレーザ光線を照射することにより、補助配線上の有機層部分を選択的にアブレーションする(以上、下記特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2005−11810号公報(特に第31段落および第32段落参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、補助配線に対するマスクの開口部の合わせズレや、補助配線に対するレーザ光の照射位置ずれが発生し易く、歩留まりの低下を引き起こす要因になる。また特に、マスクを用いる方法では、マスクを用いることにより製造コストが上昇する。そして、補助配線に位置合わせしてレーザ光線を照射する方法では、レーザ光の一括照射と比較して処理時間が掛かるため、生産効率が低下する。
【0009】
そこで本発明は、高精度に補助配線上の有機層を一括除去可能であり、これにより歩留まりの向上および生産性の向上を図ることが可能な有機電界発光素子を備えた表示装置の製造方法、およびこれによって得られる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するための本発明の表示装置は、下部電極と上部電極との間に有機層を狭持してなる有機電界発光素子を基板上に複数配列してなる表示装置である。この表示装置は、基板上の各画素にパターン形成された下部電極と、基板上の画素間に設けられた補助配線とを備えている。このうち補助配線は、下部電極よりも光吸収率の高い導電性材料からなる光吸収層を備えている。またこれらの下部電極と補助配線とが形成された基板上には、下部電極を覆うと共に、補助配線における光吸収層部分を露出する状態で有機層が設けられている。そして、この有機層上には、下部電極との間に前記有機層を狭持すると共に、有機層から露出された前記光吸収層において補助配線に接続された上部電極が設けられている。
【0011】
また本発明は、このような表示装置の製造方法でもあり、次の手順を行うことを特徴としている。先ず、基板上の各画素に下部電極をパターン形成する。これと共に、基板上の各画素間に、下部電極よりも光吸収率の高い導電性材料からなる光吸収層を備えた補助配線を形成する。次に、下部電極と補助配線とが形成された基板上に、少なくとも当該下部電極を覆う状態で有機層を形成する。その後、有機層側からのレーザ光の照射により、有機層の下部に露出している光吸収層においてレーザ光を熱変換し、当該光吸収層の上部の有機層部分を選択的に除去する。しかる後、下部電極との間に有機層を狭持させると共に、上述したように有機層が除去された光吸収層部分において補助配線に接続された上部電極を、基板上に形成する。
【0012】
このような構成の本発明では、有機層下に配置される下部電極と補助配線とを異なる構成としている。すなわち、補助配線には、下部電極よりも光吸収率の高い導電性材料で構成された光吸収層を設け、この光吸収層を露出させた構成としている。これにより、光吸収層の露出側から照射した光を、下部電極では吸収させずに補助配線における光吸収層のみで吸収させて熱に変換し、その熱によって補助配線(光吸収層)上の有機層を除去することができる構成となっている。つまり、選択的な光照射によらず、全面に対する光照射によって、補助配線を構成する光吸収層上の有機層が、補助配線に対して位置ずれすることなく高精度に選択的に除去されるようになる。そして、この有機層が除去された部分において、補助配線のみに上部電極が接続されることになる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、選択的な光照射によらず、全面に対する光照射によって、補助配線上の有機層を高精度に選択除去することが可能であるため、補助配線を接続させることで上部電極の電圧降下を防止した構成の有機電界発光素子を用いた表示装置の製造において、歩留まりの向上および生産性の向上を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
<第1実施形態>
図1は本第1実施形態に係る表示装置を説明するための平面模式図である。この図に示す表示装置1は、アクティブマトリックス駆動の表示装置であり、基板2上の各画素aに対応させて複数の有機電界発光素子ELを配列形成してなる。また、画素a−a間には、以下に説明するように有機電界発光素子ELに接続された補助配線Nが設けられている。
【0016】
図2は、本第1実施形態に係る表示装置1の構成を説明するための断面模式図であり、図1におけるA−A’断面に相当している。
【0017】
図2に示すように、基板2上には、薄膜トランジスタTrやここでの図示を省略した容量素子などを備えた画素回路が設けられており、この画素回路を覆う状態で層間絶縁膜3が設けられている。そして、この層間絶縁膜3上に、有機電界発光素子ELが配置された構成となっている。
【0018】
各有機電界発光素子ELは、層間絶縁膜3に設けた接続孔を介して薄膜トランジスタTrに接続された下部電極4、下部電極4上を覆う有機層5、有機層5を覆う状態で各画素aの有機電界発光素子ELに共通に設けられた上部電極6を備えている。この下部電極4は、例えば陽極(または陰極)として用いられるものであり、反射特性の良好な材料を用いて構成された画素電極としてパターニングされている。また各下部電極4は、その周囲が絶縁膜パターン7で覆われて中央部のみが広く露出した状態となっている。尚、下部電極4が絶縁膜パターン7から露出している部分が発光部となり、例えばここでの画素aに対応する部分となる。また、上部電極6は、陰極(または陽極)として用いられるものであり、各有機EL素子ELに共通の電極としてベタ膜状に形成されている。この上部電極6は、光透過性を有して形成されることにより、この有機電界発光素子ELは、上部電極6側から発光光を取り出す上面発光型として構成されている。
【0019】
そして、上述した構成の有機電界発光素子ELが設けられた画素a間には、下部電極4と同一層に補助配線Nが設けられている。本第1実施形態においては、この補助配線Nが、下部電極4と同一の構成材料からなる高導電層8と、その上部に積層された状態で露出している光吸収層9とで構成されていることが特徴的である。この光吸収層9は、下部電極4および高導電層8よりも光吸収性が高く、光熱変換効率も良好な材料からなることとする。
【0020】
下部電極4と光吸収層9の光吸収率を異ならせることで、レーザ光を照射した場合に、光吸収層9においてはレーザ光が吸収されて熱に変換され、その発熱によって有機層5が除去されるが、下部電極4においては発熱が抑えられる。ここで、上面発光型である表示装置1では、下部電極4として反射特性に優れた材料が用いられる。よって、下部電極4の光吸収率は数%程度であることが多く、光吸収層9としては、光吸収率が少なくとも10%程度以上の材料が用いられることが好ましい。つまり、レーザ光を照射した場合に、光吸収層9においてはレーザ光を吸収してこれを熱に変換しその発熱によって有機層5が除去されるが、下部電極4上には有機層5が残されるように発熱が抑えられることが重要である。このため、光−熱変換効率に差がある材料を用いて下部電極4と光吸収層9が構成されていることが好ましいのである。また、この表示装置1は上面発光型であるため、下部電極4は反射特性および導電性が良好な材料を用いることが好ましい。
【0021】
具体的には、光吸収層9を構成する材料としては、モリブデン、ニッケル、クロム、チタンなどの金属およびこれらの合金が用いられる。一方、下部電極4(さらには高導電層8)を構成する材料としては、銀、アルミニウム、金、白金、などの金属およびこれらの合金が用いられる。
【0022】
またここで、下部電極4の周縁を覆う絶縁性パターン7は、補助配線Nを露出する形状にパターン形成されていることとする。さら、有機層5は、補助配線Nの少なくとも一部、具体的には補助配線Nを構成する光吸収層9を露出する状態で設けられていることとする。そして、上部電極6は、有機層5および絶縁性パターン7から露出された補助配線N部分、すなわち光吸収層9において補助配線Nと接続されている。
【0023】
次に、このような構成の表示装置1の製造方法を、図3および図4の断面工程図に基づいて詳細に説明する。
【0024】
先ず、図3(1)に示すように、一般的なプロセスにより、基板2上の各画素aに薄膜トランジスタTrおよびここでの図示を省略した容量素子などを備えた画素回路を形成する。次に、薄膜トランジスタTrを覆う状態で、ポリイミドのような有機材料やシリコン系無機絶縁膜からなる表面平坦な層間絶縁膜3を形成する。成膜後には一般的なリソグラフィー工程により薄膜トランジスタTrに達する接続孔を形成する。
【0025】
次に、層間絶縁膜3上に、スパッタ法により高導電層8を成膜する。この高導電層8は、下部電極を構成する膜であり、導電性と共に反射特性も良好な材料が用いられ、例えば銀、アルミニウム、金、白金、などの金属およびこれらの合金が用いられる。ここでは一例として銀合金用いて高導電層8を成膜することとする。また、高導電層8は、層間絶縁膜3の接続孔を介して薄膜トランジスタTrに接続された状態で成膜されることとする。
【0026】
その後、高導電層8上に、スパッタ法により光吸収層9を成膜する。この光吸収層9は、高導電層8よりも光吸収率が良好な導電性材料が用いられ、例えばモリブデン、ニッケル、クロム、チタンなどの金属およびこれらの合金が用いられる。ここでは一例としてモリブデンを用いて光吸収層9を成膜することとする。
【0027】
次に、図3(2)に示すように、高導電層8上において光吸収層9をパターニングし、画素a間のみに光吸収層9を残す。この際、ここでの図示は省略したレジストパターンをマスクに用いて光吸収層9をパターンエッチングする。このパターンエッチングは、ドライエッチングもしくはウエットエッチングにより行われる。ここではドライエッチングを行うこととする。この場合、エッチングガスは、CF4/O2が用いられる。エッチング終了後にはレジストパターンを除去する。
【0028】
次いで、図3(3)に示すように、高導電層8をパターニングすることにより、画素aに対応した形状の下部電極4を形成する。またこのパターニングにより、高導電層8からなる下部電極4とは絶縁された状態で、画素a間に補助配線Nの形状となる高導電層8を残す。この際、ここでの図示は省略したレジストパターンをマスクに用いて高導電層8をパターンエッチングする。このパターンエッチングは、ドライエッチングもしくはウエットエッチングにより行われる。ここではウエットエッチングを行うこととする。この場合、エッチャントとしては混酸が用いられる。エッチング終了後にはレジストパターンを除去する。このように下部電極4と補助配線Nの一部である高導電層8とを同一層としたことにより、工程の追加が抑えられる。
【0029】
以上により、高導電層8とこの上部に光吸収層9を積層してなる補助配線Nを形成する。この補助配線Nは、下層の高導電層8によって配線形状が保たれており、この上部の少なくとも一部またな全部に光吸収層9が積層された状態となっていることとする。
【0030】
ここで、高導電層8とこの上部の光吸収層9とで構成される補助配線Nは、高導電層8と光吸収層9とで補助配線Nの配線形状が保たれていれば良く、全ての箇所において積層されている必要はない。ただし、高導電層8によって補助配線Nの配線形状が保たれていることにより、補助配線Nの抵抗が低く保たれるため、より好ましい。また、光吸収層9は、補助配線Nの配線形状として連続した形状でパターニングされている必要はなく、以下に説明するように、補助配線Nと上部電極とが接続される部分のみに設けられていれば良い。
【0031】
また、下部電極4および補助配線Nは、上述した構成に保たれていれば、以上の図3(1)〜図3(3)を用いて説明した工程手順での形成に限定されることはない。例えば、下部電極4と、補助配線Nにおける高導電層8とを、同一工程でパターン形成した後に、補助配線Nにおける光吸収層9をパターン形成しても良い。
【0032】
次に、図3(4)に示すように、下部電極4の周縁を覆う形状の絶縁性パターン7を形成する。ここでは、有機材料またはシリコン系の無機材料からなる絶縁膜を形成した後、フォトリソグラフィー工程により、絶縁性パターン7を形成する。この際、下部電極4の中央部を露出させる状態で周縁を覆うとともに、補助配線Nにおける少なくとも光吸収層9を露出させる形状に絶縁性パターン7を形成する。尚、絶縁性パターン7は、補助配線Nにおける光吸収層9の少なくとも一部または全部を露出させていれば、他の部分は覆っていても良く、また補助配線Nの全体部分を露出していても良い。
【0033】
次に、図4(5)に示すように、基板2上の全面を覆う状態で、有機膜5を成膜する。この有機膜5は、少なくとも有機発光層を備えており、複数層を順次成膜した積層構造として形成される。この有機膜5を構成する材料は、一般的は有機電界発光素子の有機膜と同様であって良い。また成膜方法は、蒸着法、CVD法、印刷法、インクジェット法等の中から用いる材料によって適宜選択された一般的な成膜方法によって成膜される。例えば、低分子系材料であれば、蒸着成膜が行われる。
【0034】
尚、この有機層5は、基板2上の全面を覆うように成膜されることに限定されず、各画素a毎にパターン成膜されても良い。ただし、有機層5は、下部電極4上を完全に覆う必要があるため、この場合であっても絶縁性パターン7上および補助配線N上にまではみ出して形成されることになる。
【0035】
次に、図4(6)に示すように、有機層5の上方からレーザ光Lhを照射する。これにより、有機層5下の光吸収層9においてレーザ光Lhを熱変換し、光吸収層9の上部に配置された有機層9を部分的に選択除去する。この際、補助配線Nを構成する光吸収層9に対しての吸収が高く、高導電層9を用いて構成された下部電極4に対しての吸収が低い波長のレーザ光Lhを照射することが重要である。さらに、光吸収層9において変換されされた熱によって、この光吸収層9の上部に位置する有機層5が除去される程度の照射量でレーザ光Lhを照射する。
【0036】
そして、このようなレーザ光Lhの照射は、基板2の全面に対して非選択的に行われることとする。この場合、図5に示すように、レーザ光Lhの照射面sを長尺状とし、この長尺状の照射面sを補助配線Nに沿った一方向に所定速度で移動させても良い。また、レーザ光Lhの照射面s’を画素aよりも充分に広い形状とし、この広い照射面s’を基板2表面に対してステップ移動させても良い。
【0037】
そして、このようなレーザ光Lhの照射を行うためには、図4(2)に示すように、例えば励起光源101から発振されたレーザ光Lhの光路に、可動ミラー(ガルバノミラー)102を配置し、この可動ミラーを基板2側に向いた所定角度で動かすことにより、基板2の表面側に対して照射位置を移動させたレーザ光Lhの照射が行われる。また、上述したレーザ光Lhの照射面は、可動ミラー102で反射させたレーザ光Lhの光路上に配置した光学素子(ビームエクスパンダ)を含むレンズ系103によって拡大されて整形される。尚、レーザ光Lhの照射面を整形するためのレンズ系は、励起光源101と可動ミラー102との間に追加配置しても良い。
【0038】
また以上のようにして、補助配線Nにおける光吸収層9上の有機層5部分を選択的に除去した後には、先の図2に示したように、基板2上の全面を覆う状態で、光透過性を有する材料からなる上部電極6を成膜する。光透過性を有する材料としては、薄い金属膜やITO(酸化インジウムスズ)のような透明導電性材料が用いられ、ここでは例えばマグネシウム合金からなる上部電極6を成膜する。このような上部電極6は、蒸着成膜、スパッタ法、またはCVD法などによって成膜する。
【0039】
以上のような上部電極6は、有機層5と絶縁性パターン7とによって下部電極4に対して絶縁された状態となる。また、この上部電極6は、有機層5が除去された部分に露出する光吸収層9において補助電極Nと接続された状態となる。そして、このような下部電極4と上部電極6との間に有機層5を狭持してなる有機電界発光素子ELが形成される。
【0040】
また以上の後には、ここでの図示は省略したが、一般的なスパッタリング法、CVD法、蒸着法などによって、上部電極6上に窒化シリコン(SiN)や酸化シリコン(SiOx)等からなる保護膜が成膜され、表示装置1を完成させる。
【0041】
以上の説明した第1実施形態の製造方法によれば、図4(6)に示されるように、有機層5下に配置される下部電極4と補助配線Nとを異なる構成としている。すなわち、補助配線Nには、下部電極4よりも光吸収率の高い導電性材料で構成された光吸収層9を設け、この光吸収層9を露出させた構成としている。
【0042】
そして、これらを覆う有機層5側からレーザ光Lhを全面に照射することにより、このレーザ光Lhを光吸収層9のみで吸収させて熱に変換し、その熱によって補助配線Nを構成する光吸収層9上の有機層5部分のみを選択的に除去している。このため、高コストなマスクを用いたり、また手間の掛かる位置合わせを行うことなく、基板2上の全面に対するレーザ光Lhの照射によって、補助配線Nを構成する光吸収層9上の有機層5を、補助配線Nに対して位置ずれすることなく高精度に選択的に除去することができる。そして、図2に示したように、この有機層5が除去された部分において、補助配線Nのみに上部電極6を接続させることが可能になる。
【0043】
以上の結果、補助配線Nを接続させることで上部電極6の電圧降下を防止した構成の有機電界発光素子ELを用いた表示装置1の製造において、歩留まりの向上および生産性の向上を図ることが可能になる。
【0044】
しかも、上記第1実施形態においては、光吸収層9を有機層5側に露出させた補助配線Nの構成とし、基板2側からではなく有機層5側からのレーザ光Lhの照射によって有機層5の部分的な除去が行われる。このため、下部電極4よりも基板2側に配置されている薄膜トランジスタTrを含む画素回路に対して、レーザ光Lhの影響が及ぼされることはない。つまり、基板2側からレーザ光Lhを照射した場合には、薄膜トランジスタTrを含む画素回路の構成材料が光吸収材料で構成されていると、この材料部分において光−熱変換が起こり発熱する。この場合、補助配線Nとは別の有機層5部分が除去される懸念もあり、目的とする補助配線N上の有機層5部分を選択的に除去できないが、本第1実施形態の方法によれば、このような懸念もないのである。
【0045】
<第2実施形態>
図6は、本第2実施形態に係る表示装置1’の構成を説明するための断面模式図である。この図6は、先の図1におけるA−A’断面に相当している。そして、図6(a)に示す第2実施形態の表示装置1’と、第1実施形態で説明した表示装置1との異なるところは、補助配線N’の構成にあり、他の構成は同様であることとする。
【0046】
すなわち表示装置1’における補助配線N’は、下部電極4よりも光吸収性が高く、光熱変換効率が良好な材料からなる光吸収層のみで構成されているのである。
【0047】
そして、このような構成の表示装置1’の製造においては、図6(b)に示すように、層間絶縁膜3の形成までを先の第1実施形態と同様に行った後、この層間絶縁膜3上に、補助配線N’と下部電極4とをそれぞれパターン形成する。この際、下部電極4の表面状態を確保するためには補助配線N’をパターン形成した後に、下部電極4をパターン形成する方が好ましい。
【0048】
その後、第1実施例と同様に、光吸収層9からなる補助配線Nの一部または全部を露出させた形状の絶縁性パターンを形成し、次いで全面に有機層5を成膜した後、この有機層5側からレーザ光Lhを全面照射する。これにより、有機層5下の光吸収層9からなる補助配線N’においてレーザ光Lhを熱変換し、補助配線N’の上部に配置された有機層9を部分的に選択除去する。
【0049】
以上のような第2実施形態では、下部電極4よりも光吸収率の高い光吸収層9によって補助電極N’を構成し、これらを覆う有機層5側からレーザ光Lhを全面に照射することにより、このレーザ光Lhを光吸収層9のみで吸収させて熱に変換し、その熱によって補助配線Nを構成する光吸収層9上の有機層5部分のみを選択的に除去している。したがって、第1実施形態と同様に、高コストなマスクを用いたり、また手間の掛かる位置合わせを行うことなく、基板2上の全面に対するレーザ光Lhの照射によって、補助配線N’上の有機層5を、補助配線Nに対して位置ずれすることなく高精度に選択的に除去することができる。そして、補助配線N’を接続させることで上部電極6の電圧降下を防止した構成の有機電界発光素子ELを用いた表示装置1’の製造において、歩留まりの向上および生産性の向上を図ることが可能になる。
【0050】
<第3実施形態>
図7は、本第3実施形態に係る表示装置1”の構成を説明するための断面模式図である。この図7は、先の図1におけるA−A’断面に相当している。そして、図7(a)に示す第3実施形態の表示装置1”と、第1実施形態で説明した表示装置1との異なるところは、補助配線N”の構成にあり、他の構成は同様であることとする。
【0051】
すなわち表示装置1”における補助配線N”は、光吸収層9の上層に、下部電極4と同じ材料からなる高導電層8が設けられ、高導電層8が除去された部分から光吸収層9が露出された構成となっている。
【0052】
このような構成の表示装置1”の製造においては、図7(b)に示すように、層間絶縁膜3の形成までを先の第1実施形態と同様に行った後、この層間絶縁膜3上に、先ず補助配線N”における光吸収層9をパターン形成する。その後、光吸収層9が形成された層間絶縁膜3上に、上部電極4および補助配線N”における高導電層8をパターン形成する。この際、光吸収層9と高導電層8とで補助配線N”を構成すると共に、高導電層8が除去された部分から光吸収層9が露出させた構成とすることが重要である。
【0053】
以上の後には、第1実施例と同様に、補助配線N”における光吸収層9の一部または全部を露出させた形状の絶縁性パターン7を形成し、次いで全面に有機層5を成膜した後、この有機層5側からレーザ光Lhを全面照射する。これにより、有機層5下の補助配線N”を構成する光吸収層9においてレーザ光Lhを熱変換し、光吸収層9の上部に配置された有機層9を部分的に選択除去する。
【0054】
以上のような第3実施形態では、第1実施形態と同様に、下部電極4よりも光吸収率の高い光吸収層9を用いて補助電極N’を構成し、これらを覆う有機層5側からレーザ光Lhを全面に照射することにより、このレーザ光Lhを光吸収層9のみで吸収させて熱に変換し、その熱によって補助配線Nを構成する光吸収層9上の有機層5部分のみを選択的に除去している。したがって、第1実施形態と同様に、補助配線N’を接続させることで上部電極6の電圧降下を防止した構成の有機電界発光素子ELを用いた表示装置1”の製造において、歩留まりの向上および生産性の向上を図ることが可能になる。
【0055】
また、光吸収層9上に高導電層8を設けた補助配線N”構成とすることにより、高導電層8と同一工程で形成される下部電極4上において光吸収層9がパターニングされることがないため、下部電極4の表面状態が確保される。また、光吸収層9と共に高導電層8によって補助配線N”が構成されるため、補助配線N”の抵抗値を小さくすることができる。
【0056】
以上の各実施形態においては、光吸収層を下部電極と同一層に形成したが、光吸収層は下部電極と同一層に形成しない場合であっても、同様の効果を得ることができる。すなわち、下部電極よりも光−熱変換効率の高い材料からなる光吸収層を、基板上に露出させた状態で配置し、その上方に形成した有機膜上からの光照射により、有機膜の一部を選択的に除去することができる構造であれば良い。例えば、TFTと同一層に光吸収層を形成し、基板表面から露出させるような構造にしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る表示装置を説明するための平面模式図である。
【図2】第1実施形態に係る表示装置の構成を説明するための断面模式図である。
【図3】第1実施形態の表示装置の製造方法を示す断面工程図(その1)である。
【図4】第1実施形態の表示装置の製造方法を示す断面工程図(その2)である。
【図5】レーザ光の照射を説明する図である。
【図6】第2実施形態に係る表示装置の構成を説明するための断面模式図である。
【図7】第3実施形態に係る表示装置の構成を説明するための断面模式図である。
【符号の説明】
【0058】
1,1’,1”…表示装置、2…基板、4…下部電極、5…有機層、6…上部電極、8…高導電層、9…光吸収層、a…画素、EL…有機電界発光素子、Lh…レーザ光、N,N’,N”…補助配線、Tr…薄膜トランジスタ(画素回路)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極と上部電極との間に有機層を狭持してなる有機電界発光素子を基板上に複数配列してなる表示装置において、
基板上の各画素にパターン形成された下部電極と、
前記下部電極よりも光吸収率の高い導電性材料からなる光吸収層を備え、前記基板上の画素間に設けられた補助配線と、
前記下部電極と補助配線とが形成された前記基板上に、当該下部電極を覆うと共に前記補助配線における前記光吸収層部分を露出する状態で設けられた有機層と、
前記下部電極との間に前記有機層を狭持すると共に、当該有機層から露出された前記光吸収層において前記補助配線に接続された上部電極とを備えた
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示装置において、
前記補助配線は、前記光吸収層のみで構成されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の表示装置において、
前記補助配線は、前記光吸収層と共に、当該光吸収層よりも導電性の高い材料からなる高導電層とを用いて構成されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項3記載の表示装置において、
前記高導電層は、前記下部電極と同一材料で構成されている
ことを特徴とする表示装置。
【請求項5】
請求項1記載の表示装置において、
前記基板は、前記下部電極に接続された画素回路を備える
ことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1記載の表示装置において、
前記上部電極は、光透過性を有する
ことを特徴とする表示装置。
【請求項7】
下部電極と上部電極との間に有機層を狭持してなる有機電界発光素子を基板上に複数配列してなる表示装置の製造方法であって、
基板上の各画素に下部電極をパターン形成する工程と、
前記基板上の各画素間に、前記下部電極よりも光吸収率の高い導電性材料からなる光吸収層を備えた補助配線を形成する工程と、
前記下部電極と補助配線とが形成された前記基板上に、少なくとも当該下部電極を覆う状態で有機層を形成する工程と、
前記有機層側からのレーザ光の照射により当該有機層の下部に露出した前記光吸収層において当該レーザ光を熱変換し、当該光吸収層の上部における当該有機層部分を選択的に除去する工程と、
前記下部電極との間に前記有機層を狭持させると共に前記有機層が除去された前記光吸収層部分において前記補助配線に接続された上部電極を、前記基板上に形成する工程とを行う
ことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の表示装置の製造方法において、
前記レーザ光は、前記基板に対する全面に対して照射される
ことを特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項9】
請求項7記載の表示装置の製造方法において、
前記補助配線は、前記光吸収層と共に、当該光吸収層よりも導電性の高い材料からなる高導電層とを用いて構成され、
前記下部電極を形成する工程では、前記高導電層を同時に形成する
ことを特徴とする表示装置の製造方法。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−52966(P2007−52966A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−236298(P2005−236298)
【出願日】平成17年8月17日(2005.8.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】