説明

表示装置の保護体

【課題】被着体と保護体を空気の混入無く粘着し,表示体に施された光隠蔽膜等に対しても気泡,空洞を生じること無く,且つ貼り直しによる位置修正と引き剥がしによる再生ができる表示装置の保護体を提供する。
【解決手段】表示体を成す被着面上に,アクリル系又はウレタン系樹脂を主成分とした厚み10〜3000μm,伸び率50〜350%の粘着弾性体から成る応力緩和層を配置し,該応力緩和層の少なくとも片面に,不揮発成分粘度2000cps以下の厚み0.1〜500μmの親水性液状層を介して厚さ0.1〜7mmのガラス又は樹脂板から成る透明保護体を前記被着面に対して貼着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,表示装置の保護体に関し,より詳しくは,ガラス又は樹脂板から成る透明保護体を,前記表示装置の(偏光板を含む)表示体を成す被着面上に貼着するに際して,貼り直しが可能で気泡が混在した空洞がなく,且つ,透明性をも損なうことなく粘着して,且つ光反射低減効果が得られ,更に前記表示体の表面の一部に印刷又は光隠蔽フィルムが貼られていても気泡,空洞が生じることなく,表示体及び保護体の応力緩和と飛散防止効果が得られる表示装置の保護体に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ,広告板,携帯電話などの表示体(ディスプレイ)の躯体である液晶(LCD),PDP(プラズマディスプレイパネル),有機ELなどの(偏光板を含む;以下同じ)表示体の保護体としてアクリル樹脂板,強化ガラスなどが用いられているが,この表示体と保護体の間は表示躯体の保護のため,衝撃緩衝用の空間となっている。一方この空間の光屈折率1に対して差がガラス板との光屈折率の差となり外からの入射光と表示側の出射光の反射界面を増すこととなり1界面で2〜3%でこの空間の界面2点を反射率が4〜6%と増し,結果輝度が12%前後阻害を受ける因子となっている。
【0003】
この表示体に対して光反射防止の解決として,表示体の表面,保護体表面又は両面に反射防止膜を光の波長より小さい300nm前後のナノ粒径の無機,酸化金属などを一層また多層でスパッタ,蒸着法又はコーティング,エッチングなどが表示体に供せられているが透明性を維持しながらナノ粒径の分布形成と厚みなどを再現していくには難度が高く,且つ,真空や粒径分布の多層と負荷が大きいため高価である。これに対して液状熱硬化型接着,UV(紫外線)架橋シロップ封入,シリコンゲル,ウレタンゲル,アクリル系粘着層などの形成が提案されている。液封入型でアクリルシロップ,ウレタンシロップなどのUV(紫外線)後架橋,加熱硬化型は,液注入時,空気が抜けづらく更に硬化収縮時の歪とスペーサー(塗布の厚みと液漏れ防止)の設計,封入時の液ダレ,と工程で時間がかかり煩雑となりやすい。熱硬化型接着も同様である。
【0004】
太陽光発電の受光発電ガラス板(ソーラーパネル)の積層接着フィルムとして熱可塑性のEVAフィルム(エチレン酢酸ビニル)厚み300μm相当が使用されているがこれらのガラス板と受光素子板との積層にはEVAフィルムに脱泡対策として2〜10μm前後の微細凹凸処理が付され,オートクレーブ法などでEVAフィルムの融点近傍で30分から3時間加圧,加温をしている。しかし,EBAの分子配向に無秩序な光学の複屈折などが生じ表示光学用では適さない。
【0005】
加えて,粘着シート,ゲルシートなどを用いて表示体とガラス板又はアクリル板などの板同士の貼り合わせにおいて空気を逃しながら貼着することは極めて困難である。これらは加温,加圧,又は長時間での加温,加圧でも解決できない。
【0006】
これに対して特開2005−319752号公報の真空引き抜き積層法が提案されている。
【0007】
又,今日,携帯電話を中心にタッチパネル化が進んできた。携帯電話は通話という機能からワンセグ,ゲームなどと,より画像を楽しむ方向に進み,家庭用テレビ,パソコンなどと違い画像を明るくするための電源は限られており,又,光源を強くしても屋外で見る場合,従来の光反射からは逃れられない。
【0008】
家庭用テレビ,パソコンの表示体もこの傾向が進む。特に携帯電話はこの傾向が顕著であり,このタッチパル化の課題は指圧からLCDなど躯体を保護しなければならず,従前の表示体の側端(窓枠)に緩衝材としてウレタン系,オレフィン系の発泡体が厚み0.2〜0.6領域とするものが提供されている。しかしタッチパネル化となればこの側端(窓枠)のみで経時応力緩衝に応えられない可能性が高い。
【0009】
表示画像の輝度向上として,保護体の表面反射を減らすため,反射率や入射角度依存性を抑え波長域を拡げるために,多層のコーティング膜が必要となり,工程が複雑な反射防止コーティング法が採用されている。
【0010】
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−319752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら,従前の保護体には,下記に示すような問題がある。
【0013】
(1)接着剤注入法は気泡が抜け難く塗布厚みのスペーサー(塗布治具)管理,硬化収縮での歪による隙間が生じやすい。
【0014】
(2)透明粘着フィルム付きガラス板とガラス板などの板同士を粘着すると真空雰囲気下でないと空気の混入が避けられず,鮮明な光透過の表示体が得られない。
【0015】
(3)平滑ガラス板同士を真空の場で粘着することはバッチ式となり,常圧,真空引き抜きと生産性に低い制約を受け,また設備償却費用も過大となりやすい。連続式真空法も同様である。
【0016】
(4)平滑ガラス板と平滑ガラス板などの板同士をオートクレープ法(連続加圧加熱法)で粘着弾性体を粘着する方法もあるが,脱泡の効果は充分ではない。
【0017】
(5)空気の混入を避けるため,あらかじめ平滑ガラス板に水分,アルコールなど塗る方法もあるが,初期の見掛け脱気は可能だが,経時ではガラス板の面歪を吸収できないので,やがて空洞化することとなり,又,温度50〜120℃近傍で更にアウトガス化を生じ,気泡が生じやすい。粘着フィルム,ゲルシート面に塗布しても同様である。
【0018】
(6)粘着弾性体又はゲルシートにあらかじめエンボス転写フィルムで空気抜き残渣痕を付与する方法もあるが,透明な粘着弾性体の分子に配向歪を与えることになり光学用としては不向きである。
【0019】
又,光学歪が生じないようにガラス板同士を貼り合わせる直前に,粘着弾性体にエンボス転写フィルム又は彫刻ロールで空気抜き残渣痕を付与する方法もあるが,弾性体とガラス板の表面交差など更に加圧面交差と加圧勾配と極めて狭い条件が求められ再現が困難である。
【0020】
(7)従来の粘着弾性体は,位置決めなどを誤認した時に貼り直しができないため,部材が無駄となった。
【0021】
(8)表示保護体に光漏れ防止として黒印刷(厚み1〜4μm),黒PETフィルムt(厚み10〜12μm粘着剤込み25〜30μm)が窓枠状に形成されているが,粘着フィルム,粘着弾性体をこの部分をも含み保護体全面に貼り,一方の板と貼り合わせると,経過時間と共に黒印刷,黒PETの厚み段差部の粘着層が歪に対して緩和されず,やがて浮き上がり空洞となりやすい。
【0022】
(9)成膜上靭性強化と型抜き加工性,さらにコールドフロー防止,応力緩和から粘着フィルム,粘着弾性体はやや硬く分子量を(アクリル系で60万〜120万)を高めなければならず,一方,高分子化すると,上記(6)の印刷,PETフィルムの段差を吸収でき難くなる。気泡抜けも更に困難となる。
【0023】
(10)アクリル系樹脂,ポリカーボネート樹脂などの樹脂系は,線膨張,分子配向の残留歪があり保護体との間の歪が表示体であるガラス板に比較して大きく接合内部でこの歪を吸収する為,容易に空洞となりやすい。
【0024】
(11)熱可塑性のEVA(エチレン酢酸ビニルフィルムなどを用いて100〜150℃の融点近傍で積層脱泡は可能だが,表示体駆動体のLCD,有機ELなどは分子特性,熱昇華などでダメージとなりやすく更に熱加圧ともなれば表示特性として致命的ともなりえる。
【0025】
本発明は,上述の問題点を解消するもので,脱気及び初期粘着の緩和機能を有する親水性液状層を採用することにより被着体と保護体を空気の混入なく粘着し,表示体に施された印刷マークと光隠蔽膜に対しても気泡,空洞を生じることなく,且つ貼りなおしによる位置修正と引き剥がしによる再生ができ,更に要求品質である接着性が犠牲にならず,粘弾性による応力緩和と高光透過率,低光反射率効果と共に,保護体例えば,ガラスの破損時における飛散防止が得られる保護体を提供することを目的とする。
【0026】
又,本発明のさらなる目的は,ナノ粒径の光反射防止剤(ITO,ZnO,酸化錫)から成る多層コーティング又は多層真空スパッタなどの難易度の高い反射防止処理が不要で表示画像の輝度を簡便に向上でき,飛散防止効果も得られる表示体,部品の固定方法として空気を混入せずに貼り合わせが可能な方法を提供することにある。
【0027】
本願発明は,粘着弾性体で表示体と保護体の積層時,空洞が生じるのは,被着面と粘着弾性体のいずれかが一方の面平滑の歪を吸収できないこと,一方,一般的に液体はこれらを濡れながら吸収する性質に着目し,親水性液状層と粘着剤を別にし各々の機能を阻害せず完結する手段を開発したものである。
【0028】
ガラス板の歪は,表面交差±0.1〜500μm前後領域では粘着弾性体の粘度2万cps以上では流動性から歪の吸収は難しく,表示体と保護体との貼り合わせ時において強引にポリマーを屈曲させ歪を吸収し,脱気しても経時又は80℃近傍では容易に可逆を成し,結果,空洞となり得る。これに対して,粘着弾性体を低架橋,低分子で実施すると積層板間でのはみ出し,ずれが生じ要求品質は満たされない。特開2005−314595号公報では応力気吸収と再剥離性で提起されているが,これらは板とフィルムの脱気容易な従前の接合法であり,より困難な表示体と保護体同士の積層と脱気には触れていない。
【0029】
本発明は,多年にわたる研究の結果,弾性体に対して親水性液状層を用い粘着弾性体と親水性液状層の液体とを併用することにより容易に粘着して貼り直しも可能となり,且つ流動し濡れながら脱気が図られ液体が経時で共有結合又は化学平衡を成すことによりゲル化が進み異方性も少ないため,透過率の犠牲も少なく,光の低反射率,ポリマー歪の吸収,粘着力など所望の性能が得られるという知見に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成するため,本発明の表示装置の保護体は,表示装置の表示体を成す被着面上に,アクリル系又はウレタン系樹脂を主成分とした厚み10〜3000μm,伸び率50〜350%の粘着弾性体から成る応力緩和層を配置し,該応力緩和層の少なくとも片面に,不揮発成分粘度2000cps以下の厚み0.1〜500μmの親水性液状層を形成して,該親水性液状層を介して厚さ0.1〜7mmのガラス又は樹脂板から成る透明保護体を前記被着面に対して貼着して成ることを特徴とする(請求項1)。
【0031】
また,前記応力緩和層は,三次元架橋高分子粘着ゲルの粘着弾性体から成り,前記応力緩和層の少なくとも片面に,前記親水性液状層を厚み0.1〜500μmに形成し,該親水性液状層が経時とともに前記応力緩和層と2次ゲル化ないし化学平衡を成すことにより,前記被着体及び透明保護体の歪みを吸収して,前記透明保護体が前記被着面に貼着されて成ることを特徴とする(請求項2)。
【0032】
前記粘着弾性体の粘着力は2〜40N/25mm幅(JIS-Z-0237)とすることができる(請求項3)。
【0033】
さらに,前記親水性液状層の沸点が60〜400℃以下,粘度2000cps以下,不揮発成分厚み0.5〜500μmの範囲とすることができる(請求項4)。
【0034】
また,厚み10〜100μm,光透過率85%以上の,延伸ポリエステル(PET),又はポリカーボネート(PC)から成る基材に,前記応力緩和層を,総厚み45〜2000μmの範囲で塗布形成し,該応力緩和層の少なくとも片面に前記親水性液状層を形成し,該親水性液状層を介して厚み0.1〜7mmの前記透明保護体を前記被着面に貼着して前記保護体を提供することができる(請求項5)。
【0035】
さらに,前記応力緩和層及び親水性液状層の光屈折率は1.3〜1.57の範囲で,光透過率80〜99%の範囲であることを特徴とする(請求項6)。
【0036】
前記アクリル系の粘着弾性体は,官能基を有するものとしてアクリル酸,アクリル酸エチル,アクリル酸メチル,アクリル酸2エチルヘキシル,アクリル酸ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸イソノニル,アクリル酸ジメチルアミノエチル,アクリル酸メトキシエチル,アクリル酸ステアリル,アクリル酸イソオクチル,アクリル酸N−オクチル,アクリル酸2ヒドロキシエチル,アクリル酸ヒドロキシプロピル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸ブチル,メタクリル酸2ヒドロキシエチル,メタクリル酸2ヒドロキシプロピル,メタクリル酸シクロヘキシル,トリメチロールプロパントリメタクリレート,メタクリル酸ターシャリーブチル,無水マレイン酸,無水イタコン酸,無水シトラコン酸である(請求項7)。
【0037】
前記親水性液状層を成す親水性液状体は,アクリル酸類,脂肪酸類,高価アルコール,カルボン酸エステル類などの親水性で分子量1000g/mol以下,不揮発粘度は2000cps以下のモノマー又はオリゴマーから構成することができる(請求項8)。
【0038】
前記親水性液状層にゲル化剤として,フタル酸塩ジオクチル,フタル酸ジブチル(DBP),フタル酸ジイソニル(DINP),フタル酸ジイデシル(DIDP)等フタル酸エステル系,ポリエステル系,ポリエーテル系,アジピン酸エステル系,クエン酸エステル系,マレイン酸エステル系,安息香酸エステル系,セパシン酸エステル系,リン酸エステル系,オレイン酸,植物油系,エポキシ化植物系からなる群より選択され,相溶性改質の界面活性剤を除き少なくとも1種の添加剤を含み構成することができる(請求項9)。
【0039】
前記添加剤は,前記ゲル化剤からなる群より選択される少なくとも1種であって,相溶性と透明性から光透過率80%以上であることが好ましい(請求項10)。
【0040】
前記添加剤は,前記ゲル化剤に溶剤を含み,塗布乾燥して,前記透明保護体を前記被着面に貼着して構成することができる(請求項11)。
【0041】
前記非相溶性改質として使用できる界面活性剤は,弱酸性陰イオン系が最も好ましく,非イオン系,陽イオン系,両性イオン系いずれか一種以上であることが好ましい(請求項12)。
【発明の効果】
【0042】
本発明の粘度1〜2000cps(22℃雰囲気)の親水性液状層を,予めガラス又は粘着フィルムもしくは粘着弾性体に厚み0.1〜500μm好ましくは5〜40μm塗布することにより,貼り付け時,空気を逃しながら良好に粘着する。更には位置間違いによる修正も可能である。
【0043】
これは低粘凋性のモノマー又はオリゴマーが,被着体のガラス板面をレベリングしながら表示体と保護体の自着圧と加圧力により脱気を促しながら濡れ,粘着弾性体の三次元架橋構造を切断することなく,やがて化学ゲル化,又は化学平衡及びリビング重合を成し接着が完了する構造である。
【0044】
溶液接着剤の塗布,厚み,硬化管理などと比べ施工性も良好である。また,後述するように,多岐な利用分野に亘り,LCD(液晶テレビ),広告表示体,PDP(プラズマテレビ)などの表示体の保護,車両の制振板貼合等,用途に応じて粘着力,厚さや材質を自在に設計することができ,粘着フィルムもしくはゲルシートの適用範囲を広げることができる。
【0045】
従前の表示体では,屋外での視認性は光反射で劣り,航空機用などを含め高度要求には難があった。又フレアーやゴーストの原因となるガラス表面の表面反射をできるだけ減らす必要があり,これまでは反射防止コーティングが用いられてきた。しかし反射率や入射角度依存性を抑止したり,波長域を拡げるためには,希少金属のITOなどの多層スパッタリング,酸化金属など非常に多層のコーティング膜が必要となり,工程が複雑で高価なものとなってしまい限界があった。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の親水性液状層の効果を示す実験方法の概略図。
【図2】本発明の親水性液状体の工程における搬送と,塗布による親水性液状層の形成を示す工程の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
〔粘着弾性体〕
本発明に供せられる粘着弾性体は,ウレタン系熱架橋型とアクリル酸類のモノマー及び/又はオリゴマーを主剤とする紫外線架橋型アクリル系樹脂材料に紫外線を照射して架橋させることと熱により架橋されることにより得た,粘着性と弾性とを備えた組成物である。
【0048】
このようにして得た粘着弾性体は,高透明性と高い粘弾性を有することから,被着物に対する接着性が良好であると共に,親水性液状層に親和性を有し,加えて粘着弾性体の架橋が外れ可塑化してコールドフローすることなく被着材の表面形状に対する高い追従性を有し,高い透明性と反射低減,応力緩和性,飛散防止効果,気密性等を実現することができる。また,その柔軟性からロール状に巻き取ることが可能で,長尺の状態で連続して加工等を行うことが可能であり,高生産性,高歩留まりが得られる。
【0049】
組成
粘着弾性体の主剤
主剤である前述のアクリル酸類のモノマー及び/又はオリゴマーとしては,一例として以下のものを使用することができる。官能基を有するモノマーとして,例えば,アクリル酸,メタアクリル酸,テトラヒドロフタル酸,イタコン酸,シトラコン酸,クロトン酸,イソクロトン酸,ノルボルネンジカルボン酸,ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸が挙げられ,また,これらの誘導体として,無水マレイン酸,無水イタコン酸,無水シトラコン酸,テトラヒドロ無水フタル酸,ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物,また,例えば,(メタ)アクリル酸アミノエチル,(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル,(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル,(メタ)アクリル酸アミノプロピル,(メタ)アクリル酸フェニルアミノエチル,(メタ)アクリル酸シクロヘキシルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル系誘導体類,N−ビニルジエチルアミン,N−アセチルビニルアミン等のビニルアミン系誘導体類,アリルアミン,メタクリルアミン,N−メチルアクリルアミン等のアリルアミン系誘導体,N,N−ジメチルアクリルアミド,N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド,アクリルアミド,N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系誘導体,p−アミノスチレン等のアミノスチレン類,6−アミノヘキシルコハク酸イミド,2−アミノエチルコハク酸イミド等のアミノ基含有エチレン性不飽和結合を有するモノマーを適宜好適に使用することができる。
【0050】
また,これらの他,アクリル酸エチル,アクリル酸メチル,アクリル酸2エチルヘキシル,アクリル酸ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸イソノニル,アクリル酸ジメチルアミノエチル,アクリル酸メトキシエチル,アクリル酸ステアリル,アクリル酸イソオクチル,アクリル酸N−オクチル,アクリル酸2ヒドロキシエチル,アクリル酸ヒドロキシプロピル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸ブチル,メタクリル酸2ヒドロキシエチル,メタクリル酸2ヒドロキシプロピル,メタクリル酸シクロヘキシル,トリメチロールプロパントリメタクリレート,メタクリル酸ターシャリーブチル,ポリエステルなどを用いることができる。
【0051】
これらの主剤は,これを2種以上組合せて使用しても良い。
【0052】
上述のモノマー又はオリゴマーに対して架橋構造を形成させるに,2官能以上の多官能性モノマーを適宜好適に使用することができる。
【0053】
その他官能性モノマーとして,例えば,エチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート,ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート,N−メチロールアクリルアマイド等を適宜用いることできる。
【0054】
補助材料
紫外線の照射によって前述の粘着弾性体と成る紫外線架橋型アクリル系樹脂材料には,主剤である上述のアクリル酸類のモノマー及び/又はオリゴマーの他,光重合開始剤,紫外線架橋促進剤(増感剤)などが配合されている。
【0055】
補助材料としては,他に,フィラーを含めるものとしても良く,このようなフィラーとしては,光反射防止剤としての無機金属系フィラー,硬度,接着性の改質を目的とした酢酸ビニル,スチレン,タッキファイヤー(粘着付与剤)類を配合することも支障はない。但し,無機金属系フィラー,酢酸ビニル,スチレン,タッキファイヤーの添加は,粘着弾性体のZ方向(厚み方向)における光複屈折を生じさせて透視性を低下させ,特に粘着弾性体の厚みを10〜3000μmに形成する本発明では,透視性の低下が著しいことから,透視性が要求される用途で使用される粘着フィルムもしくはシートを得る場合には,これらの添加は行わないか,比較的少量に止めることが好ましい。又はキャスト工程フィルムは光透過率向上から平滑性に富む延伸PETフィルムが好適である。
【0056】
熱硬化型でなく紫外線架橋型の場合は窒素パージ又はガスバリヤーフイルムにてアクリル系樹脂材料の両面を被覆した状態で行う。
【0057】
このガスバリヤー性フィルムとしては,酸素透過度が10000cc/cm2.24h20℃.90%RH「JIS-K-7126」以下であればPE,PPなどのオレフィン系フィルム,PETフィルム,紙−樹脂ラミネート又はコーテッド紙など,いずれを使用しても良く,その材質は問わないが,紫外線ランプの熱線対応,反応熱,ガスバリヤー性,仕上がり面の平滑性から延伸PETフィルムの使用が好適である。
【0058】
ガスバリヤーフィルムのうち,ここで剥離されるものには,アクリル系樹脂材料の塗布面にシリコーン系などの剥離剤を塗布しておくことが好ましい。
【0059】
粘着弾性体のコーティング,シーティング方法は溶液型,無溶剤型いずれもコンマナイフコーター,ダイコーター,リーバースコーターなどで,無溶剤型ならば押出法,カレンダーでも構わないが,気泡防止からダイコーターが好適である。
【0060】
親水性液状層
親水性液状層を成す親水性液状体は,グリセリン等の多価アルコール類を主とし分子量1000g/mol以下,不揮発粘度は2000cps以下である。相溶性があり光透過率80%以上の範囲で酸類,脂肪酸類,粘着弾性体と同様のモノマー,オリゴマーを使用できる。
【0061】
また,アジピン酸エステル系,クエン酸エステル系,マレイン酸エステル系,安息香酸エステル系,セパシン酸エステル系,リン酸エステル系,オレイン酸,植物油系,エポキシ化植物系がある。詳細について以下の通りである。
【0062】
カルボン酸エステル類としては,エチルアセトアセテート,プロピルアセトアセテート,ブチルアセトアセテート,t−ブチルアセトアセテート,エチルベンゾイルアセテート等が挙げられ,o−カルボニルフェノールとしては,2−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド,2’−ヒドロキシ−アセトフェノン,メチル−2−ヒドロキシベンゾエート,フェニル−2−ヒドロキシベンゾエー安息香酸,o−トルイル酸,m−トルイル酸,p−トルイル酸,4−tert−ブチル安息香酸,1−ナフトエ酸,又は2−ナフトエ酸,ラウリン酸,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,アラキン酸,又はベヘン酸,グリコール酸,2−ヒドロキシ−n−酪酸,2−ヒドロキシカプロン酸,2−ヒドロキシ−3,3−ジメチルγ−ブチロラクトン,酪酸,2−ヒドロキシ−,3−メチル酪酸,2−ヒドロキシイソカプロン酸,β−プロピオラクトン,δ−バレロラクトン,ε−カプロラクトン,4−メチルカプロラクトン,3,5,5−トリメチルカプロラクトン,3,3,5−トリメチルカプロラクトン。
【0063】
脂肪酸エステルとしては,小麦胚芽油,向日葵油,葡萄種油,胡麻油,トウモロコシ油,アプリコット油,ヒマシ油,カリテバター,アボガド油,オリーブ油,大豆油,スイートアーモンド油,ヤシ油,菜種油,綿実油,ヘーゼルナッツ油,マカダミア油,ホホバ油,アルファルファ油,ポピー油,カボチャ油,骨髄油,クロフサスグリ種油,マツヨイグサ油,キビ油,大麦油,キノーア油,ライ麦油,ベニバナ油,キャンドルナッツ油,トケイソウ油及びジャコウバラ油,パーセリン油(セトステアリルオクタノエート),イソプロピルミリステート,イソプロピルパルミテート,C12−C15アルキルベンゾエート,ヘキシルラウレート,ジイソプロピルアジペート,イソノニルイソノナノエート,2−エチルヘキシルパルミテート,イソステアリルイソステアレート,アルキル又はポリアルキルオクタノエート,プロピレングリコールジオクタノエート等のデカノエート又はリシノレート;イソステアリルラクテート及びジイソステアリルマレート等のヒドロキシル化エステル;及び,ペンタエリトリトールエステル,ジ(2−エチルヘキシル)アジペート,ジイソノニルアジペート,ジ(2−エチルヘキシル)セバケート,ジ(2−エチルヘキシル)アゼレート,ジイソノニルシクロヘキサン−1,2−ジカルボキシレート,オレイン酸,リノレン酸又はリノレイン酸,トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート,ジフェニル2−エチルヘキシルホスフェート,ジフェニルクレシルホスフェート,又はトリクレシルホスフェート,アジピン酸ジ−1−ブチル,アジピン酸ジ−n−オクチル,セバシン酸ジ−n−ブチル,アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシルなどの脂肪族二塩基酸エステル系,リン酸ジフェニル−2−エチルヘキシル,リン酸ジフェニルオクチルなどのリン酸エステル系,アセチルクエン酸トリブチル,アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル,クエン酸トリブチルなどのヒドロキシ多価カルボン酸エステル系,アセチルリシノール酸メチル,ステアリン酸アミルなどの脂肪酸エステル系,グリセリントリアセテート,トリエチレングリコールジカプリレートなどの多価アルコールエステル系,エポキシ化大豆油,エポキシ化アマニ油脂肪酸ブチルエステル,エポキシステアリン酸オクチルなどのエポキシ系可塑剤,ポリプロピレングリコールセバシン酸エステル,メタアクリル酸メチル,メタアクリル酸エチル,メタアクリル酸n−プロピル,メタアクリル酸n−ブチル,メタアクリル酸イソブチル,メタアクリル酸n−ペンチル,メタアクリル酸n−ヘキシル,メタアクリル酸n−ヘプチル,メタアクリル酸n−オクチル,メタアクリル酸2−エチルヘキシル,メタアクリル酸ノニル,メタアクリル酸デシル,メタアクリル酸ドデシル,メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸脂肪族炭化水素(たとえば炭素数1〜18のアルキル)エステル;メタアクリル酸シクロヘキシル,メタアクリル酸イソボルニルなどのメタアクリル酸脂環式炭化水素エステル;メタアクリル酸ベンジルなどのメタアクリル酸アラルキルエステル;メタアクリル酸フェニル,メタアクリル酸トルイルなどのメタアクリル酸芳香族炭化水素エステル;メタアクリル酸2−メトキシエチル,メタアクリル酸3−メトキシブチルなどのメタアクリル酸とエーテル性酸素を有する官能基含有アルコールとのエステル;メタアクリル酸トリフルオロメチル,メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル,メタアクリル酸2−トリフルオロメチルエチル,メタアクリル酸2−トリフルオロエチル,メタアクリル酸2−パーフルオロエチルエチル,メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル,メタアクリル酸2−パーフルオロエチル,メタアクリル酸パーフルオロメチル,メタアクリル,酸ジパーフルオロメチルメチル,メタアクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル,メタアクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル,メタアクリル酸2−パーフルオロデシルエチル,メタアクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどのメタアクリル酸フッ化アルキルエステルが挙げられ
【0064】
エチレングリコール,グリセリン等の多価アルコール類は親水性であり,グルコール誘導体,グリセリン誘導体,ポリエーテル系重合型可塑剤,コハク酸,アジピン酸,アゼライン酸,セバシン酸,ドデカン二酸,マレイン酸,又,本発明の性能を阻害しない範囲でリンゴ酸,酒石酸,クエン酸も用いられる。
【0065】
界面活性剤,ここでは相溶性の改質の界面活性剤としては,陰イオン系として,硫酸エステル型,脂肪酸塩型,スルホン酸型,リン酸エステル型等のラウレス硫酸ナトリウム,ジステリア酸グリコール,ココイルグルタミン酸,ポリオクタニウム−10,ジメチコン,αオリフインスルホン酸塩,アルカンスルホン酸塩,直鎖アルキルベンゼン系,脂肪酸系,高級アルコール系などがある。
【0066】
非イオン系としてモノラウリン酸ポリエチレングリコール,モノオレイン酸ポリエチレングリコール,モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンセチルエーテル,ポリオキシエチレンオイルエーテル,ポリオキシエチレンアルキル12−14エーテル,アルキルグリコシド,しょ糖脂肪酸エステル,ソルビタン脂肪酸エステルなどがある。
【0067】
陽イオン系としてはアミン塩系,第四アンモニウム系などがある。
【0068】
両イオン系としてアミノオキシド,アルキルベタイン,アミノ酸系などがある。
【0069】
親水性液状のphを鑑みて選択をする。粘弾性体は弱酸性から陰イオンが好適である。
【0070】
これらの成分は相溶性と透明性から光透過率80%以上となる2成分以上の組み合わせでもよい。又薄く塗布するために低粘度化を図るため溶剤を併用して塗布することも任意である。但し貼合わせをする際には熱風などで乾燥させ残留溶剤がない事が必須であり,これを怠るとアウトガス(気泡)の要因となりやすい。
【0071】
不揮発分の粘度は2000cps以下で好ましくは500cps以下で,濡れ性と貼り直しを容易とするため50cps以下がより好ましい。
【実施例1】
【0072】
配合例1
アクリル酸2エチルヘキシル100重量部に対して,アクリル酸ブチルを30重量部のアクリルシロップに対して,光重合開始剤の日本チバガイギー(株)製のイルガキュアー184:チバ・スペシャル・ケミカル社製)0.2重量部と紫外線架橋促進剤(M−5A:綜研化学社製)0.5重量部を序々に添加して攪拌する。
【0073】
成膜はダイコーターで押し出しPET50μmフイルムシリコン処理品上にキャストしガスバリヤーフイルムとしてPET38μmシリコン剥離フィルムにて被覆嫌気し紫外線で架橋(下記UV照射)を得た。
【0074】
紫外線架橋法はUV照射装置(ブラックライトFL40SBL:NEC製40W×2灯 波長域200〜280nm/UV照射500mW/cm2波長365nm水銀灯で2〜3min)で照射した。
【0075】
以上により,配合例1として,粘着弾性体組成物を得た。
【0076】
得られたアクリル系ゲル(粘着弾性体)厚み100μm総厚100μmの透過性(90%以上),粘着ピール力(25N/25mm)の性能を有するアクリル粘着弾性体のロール品を2本ロール(ゴムロールとメタルロール)にて挟み込み片面のPET38μm剥離フィルムを剥がし,この面に平滑なガラス板厚み1.8mm×50mm×70mmを貼り合わせた。この貼り合わせたアクリル粘着弾性体のもう一方のPET50μm剥離フィルムを剥がし,このアクリル粘着弾性体の上面に,親水性液状層を滴下する。
【0077】
詳細には,得られた粘着弾性体であるアクリル系ゲル総厚100μmの透過性(90%以上),粘着ピール力(25N/25mm)の性能を有するアクリル粘着弾性体を平滑なガラス板厚み2.5mm×205mm×260mmに貼り,一方のガラス板同寸法品の片面に親水性である1.2.3−プロパントリオール〔一般花王株式会社製.商品名精製グリセリン/以後グリセリンと言う〕を塗布厚み5〜10μmとなるように前面に均一となるように塗布し,この塗布したグリセリン面に前述の粘弾性体付ガラス板を,粘弾性体面が重なるように積層する。この積層時の加圧は,2本のゴムロールを用い加圧は線圧で3〜5kg/mでゴムロールの硬度は60度である。
【0078】
親水性液状層の効果
気泡を目視観察で初期(室温24℃雰囲気)と70℃/60分後の評価
肉眼での空洞有無の観察評価 ◎は良い。○はやや良い。
接合状態の評価法 官能手指で引き剥がしの可否。
【0079】
【表1】

【0080】
グリセリン塗布後は極性上,約5〜10mm径前後ハジキ4ヶ所が見られ,このため貼り合わせる直後は,空洞が線状〔幅10mm×長さ75mm〕に1ヶ,約20mm,30mm径の空洞が2ヶ所見られた。しかし70℃/60分後には,この空洞が消え,接合も金具での引き剥がしではガラス板が破損する接着であった。
【実施例2】
【0081】
粘着弾性体の配合は,配合例1に対して親水性グリセリンを付加してゲル化を高めたものである。
【0082】
配合例1の100重量部に対してグリセリンを5−10−20−30−40重量部と5水準を作成した。成膜方法と架橋方法は実施例1同様である。
【0083】
得られた粘着弾性体であるアクリル系ゲル総厚100μmの透過性(90%以上),性能を有するアクリル粘着弾性体を平滑なガラス板厚み2.5mm×205mm×260mmの片面に貼り,一方のガラス板同寸法品の片面に親水性液状体を塗布厚み5μmとなるように前面に均一となるように塗布し,この塗布した面に前述の粘弾性体付ガラス板を,粘弾性体面が重なるように積層する。
【0084】
この積層時の加圧は,2本のゴムロールを用い加圧は線圧で3〜5kg/mでゴムロールの硬度は60度である。
【0085】
貼り合わせる時は,前記実施例1と同様であった。気泡も無くガラス板の接合も金具での引き剥がしではガラス板が破損する接着であった。粘弾性体のグリセリン40重量部はグリセリンが過飽和から触感でブリード気味である。グリセリンの添加は20重量部以内が好ましい。
【0086】
貼り合わせ時の手直しが最も容易である。
【実施例3】
【0087】
アクリル系を主成分とする固形分厚さ100μm粘着フィルムの配合
アクリル酸2−エチルヘキシル重量平均分子量900,000,OH官能基6.5(商品名バンロンS−2012根上工業製)を100重量部(固形分35%)に対してアクリル酸ブチル重量平均分子量800,000,OH官能基8.5(商品名SN−50根上工業製)を50重量部(固形分20%),メタクリル酸メチル平均分子量600,000官能基なし(プレコート200DR,根上工業製)を20重量部(固形分20%)加え,更に架橋剤としてコロネートL75(日本ポリウレタン工業製)を0.5重量部,添加し攪拌する。このアクリル溶液の成膜方法は,延伸PET50μmシリーコーン剥離フィルム上にコンマコーターで塗布し120℃で乾燥後,この面に延伸PET25μmシリーコーン剥離フィルムにて保護とした。
【0088】
こうして得た厚み100μmの光透過性(90%以上),粘着ピール力(15N/25mm測定方法JIS-Z-0237に準拠)の性能を有するアクリル粘着弾性体のロール品を2本ロール(ゴムロールとメタルロール)にて挟み込み片面のPET38μm剥離フィルムを剥がし,この面に平滑なガラス板厚み2.5mm×205mm×260mmを貼り合わせた。この貼り合わせたアクリル系粘着弾性体の一方のPET剥離フィルム厚み50μmを剥がし,このアクリル粘着弾性体の上面に,予め,同上寸法のガラス板に水分〔界面活性剤アルキルヒドロキスシスルホペタン水分100重量部に対して0.5重量添加した水分〕を厚み5μmとなるように塗布した面とを積層する。この積層時の加圧は,2本のゴムロールを用い加圧は線圧で3〜5kg/mでゴムロールの硬度は60度である。
【実施例4】
【0089】
親水性液状体の塗布と搬送
図2を参照して,本発明の表示装置の保護体の製造方法について述べる。
【0090】
既知の保護用粘着テープ50であるポリエチレン粘着テープ(LLDPE40μm/アクリル系粘着層10μm構成)粘着力は0.5N/25mm相当品を親水性液状体の塗布と搬送用として用いる。
【0091】
この貼着される表示体であるガラス板40の寸法は50mm×70mm(携帯電話の表示体相当)である。テープ幅をガラス板40の幅より両サイド10mm出るように70mm幅でスリットを行い,このテープの上にガラス板50mm×70mmを載せて塗布ラインへ搬送する。親水性液状体30はグリセリンを使用した。
【0092】
塗布ロールはボトムフィード2本ロール式で塗布する。
【0093】
保護用粘着テープにガラス板40を貼り付けることによりガラス板は脱落せず塗布が可能であった。更にガラス板とガラス板との空間の間欠塗布もガラス板の厚みにより自然に行え,特別な制御は不要である。
【0094】
塗布量の制御はBロールとCロールの間隔とBロールとCロールの回転比の2系統で制御する。
【0095】
ガラス板の脱落もく塗布厚みは10〜200μmと任意に塗布が可能であった。Bロール逆回転(Cロールに対して)塗布可能であった。
【0096】
塗布方法についてダイ,ノズルなど押し出し流延もあるが間欠塗布の制約からボトムフィード式で下面塗布が好適であることを本例が示している。
【符号の説明】
【0097】
10 透明保護体
20 粘着弾性体
30 親水性液状層(親水性液状体)
40 表示体
50 保護用粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置の表示体を成す被着面上に,アクリル系又はウレタン系樹脂を主成分とした厚み10〜3000μm,伸び率50〜350%の粘着弾性体から成る応力緩和層を配置し,該応力緩和層の少なくとも片面に,不揮発成分粘度2000cps以下の厚み0.1〜500μmの親水性液状層を形成して,該親水性液状層を介して厚さ0.1〜7mmのガラス又は樹脂板から成る透明保護体を前記被着面に対して貼着して成ることを特徴とする表示装置の保護体。
【請求項2】
前記応力緩和層は,三次元架橋高分子粘着ゲルの粘着弾性体から成り,前記応力緩和層の少なくとも片面に,前記親水性液状層を厚み0.1〜500μmに形成し,該親水性液状層が経時とともに前記応力緩和層と2次ゲル化ないし化学平衡を成すことにより,前記被着体及び透明保護体の歪みを吸収して,前記透明保護体が前記被着面に貼着されて成ることを特徴とする請求項1記載の表示装置の保護体。
【請求項3】
前記粘着弾性体の粘着力は2〜40N/25mm幅(JIS-Z-0237)である請求項1記載の表示装置の保護体。
【請求項4】
前記親水性液状層の沸点が60〜400℃以下,粘度2000cps以下,不揮発成分厚み0.5〜500μmの範囲である請求項1記載の表示装置の保護体。
【請求項5】
厚み10〜100μm,光透過率85%以上の,延伸ポリエステル(PET),又はポリカーボネート(PC)から成る基材に,前記応力緩和層を,総厚み45〜2000μmの範囲で塗布形成し,該応力緩和層の少なくとも片面に前記親水性液状層を形成し,該親水性液状層を介して厚み0.1〜7mmの前記透明保護体を前記被着面に貼着した請求項1記載の表示装置の保護体。
【請求項6】
前記応力緩和層及び親水性液状層の光屈折率は1.3〜1.57の範囲で,光透過率80〜99%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の表示装置の保護体。
【請求項7】
前記アクリル系の粘着弾性体は,官能基を有するものとしてアクリル酸,アクリル酸エチル,アクリル酸メチル,アクリル酸2エチルヘキシル,アクリル酸ブチル,アクリル酸イソブチル,アクリル酸イソノニル,アクリル酸ジメチルアミノエチル,アクリル酸メトキシエチル,アクリル酸ステアリル,アクリル酸イソオクチル,アクリル酸N−オクチル,アクリル酸2ヒドロキシエチル,アクリル酸ヒドロキシプロピル,メタクリル酸メチル,メタクリル酸ブチル,メタクリル酸2ヒドロキシエチル,メタクリル酸2ヒドロキシプロピル,メタクリル酸シクロヘキシル,トリメチロールプロパントリメタクリレート,メタクリル酸ターシャリーブチル,無水マレイン酸,無水イタコン酸,無水シトラコン酸である請求項1記載の表示装置の保護体。
【請求項8】
前記親水性液状層を成す親水性液状体は,アクリル酸類,脂肪酸類,高価アルコール,カルボン酸エステル類などの親水性で分子量1000g/mol以下,不揮発粘度は2000cps以下のモノマー又はオリゴマーから成る請求項1記載の表示装置の保護体。
【請求項9】
前記親水性液状層にゲル化剤として,フタル酸塩ジオクチル,フタル酸ジブチル(DBP),フタル酸ジイソニル(DINP),フタル酸ジイデシル(DIDP)等フタル酸エステル系,ポリエステル系,ポリエーテル系,アジピン酸エステル系,クエン酸エステル系,マレイン酸エステル系,安息香酸エステル系,セパシン酸エステル系,リン酸エステル系,オレイン酸,植物油系,エポキシ化植物系,界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の添加剤を含む請求項8記載の表示装置の保護体。
【請求項10】
前記添加剤は,前記ゲル化剤からなる群より選択される少なくとも1種であって,相溶性と透明性から光透過率80%以上である請求項9記載の表示装置の保護体。
【請求項11】
前記添加剤は,前記ゲル化剤に溶剤を含み,塗布乾燥して,前記透明保護体を前記被着面に貼着した請求項10記載の表示装置の保護体。
【請求項12】
前記界面活性剤は,陰イオン系,非イオン系,陽イオン系,両性イオン系いずれか一種以上である請求項9記載の表示装置の保護体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−167862(P2011−167862A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31326(P2010−31326)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(591015784)共同技研化学株式会社 (10)
【Fターム(参考)】