説明

表示装置の製造方法および表示装置

【課題】反射鏡膜を形成するための複雑な後工程を不要とすることができると共に、有機発光素子の劣化を抑えることができる表示装置の製造方法および表示装置を提供する。
【解決手段】駆動用基板11に有機発光素子10R,10G,10Bを形成し、発光パネル10を形成する。基体21に、有機発光素子10R,10G,10Bの各々に対応する凸状の反射素子24を設けて、反射板20を形成する。発光パネル10と反射板20とを、発光パネル10の周縁に沿って形成した接着層30により貼り合わせ、発光パネル10と反射板20との間の空間を真空層40とする。有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光を、反射素子24の側面24Aと真空層40との界面により反射させる。従来の金属等の反射鏡膜による吸収損失を抑え、光取り出し効率を更に向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子(有機EL(Electroluminescence )素子)を用いた発光パネルの光取り出し側に、輝度向上のための反射板を配置する表示装置の製造方法および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子などの自発光素子は、基板に、第1電極,発光層を含む層および第2電極を順に有し、第1電極と第2電極との間に直流電圧を印加すると発光層において正孔−電子再結合が起こり、光を発生するものである。発生した光は、第1電極および基板の側から取り出される場合もあるが、第2電極の側から、つまり開口率を上げるためにTFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)や配線を含む回路とは反対側から取り出される場合もある。
【0003】
自発光素子を用いた表示装置の一例として、有機発光素子を用いた表示装置がある(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この従来の表示装置では、発光層で発生した光が全反射等で装置内から取り出されず、その光利用効率は良いとはいえない。そのため、有機発光素子の直上に、反射板(リフレクター)といわれる光学部品を配設することで光取り出し効率の向上を図ることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この反射板は、ガラス等の基体に、複数の突起状の反射素子を配置したものであり、反射素子の側面には反射鏡膜が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−227519号公報
【特許文献2】特開2007−248484号公報
【特許文献3】特開2004−164912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の反射板の製造方法では、反射素子を形成したのち、その側面に反射鏡膜を形成するための後工程が必要となっていた。そのため、この従来の反射板の製造方法では、大面積の成膜工程および研磨工程を要し、大きな手間がかかり、コストアップおよび歩留まり低下を招く要因となっていた。また、反射鏡膜の反射率は、例えばアルミニウム(Al)の場合、最大でも90%程度であり、吸収による損失があった。
【0006】
なお、ちなみに、特許文献3では、発光層から出力された光を伝達する伝達層に凹部24を設けて、この凹部24の側面24aを全反射面として機能させることが記載されている。凹部24の内部は気体が満たされているか、またはほぼ真空とされている。しかし、特許文献1では、凹部24の内部をほぼ真空とするための具体的な製造方法については記載されていない。また、凹部24を気体で満たした場合には、有機発光素子が水分等の影響により劣化してしまい、信頼性を低下させるおそれがあった。
【0007】
また、特許文献3では、基板11と透明部材22を位置合わせして、減圧雰囲気で接触させる際に、接着層17を基板11の全面にスピンコートするようにしていたので、特に基板が大きくなってきた場合に均一に塗布することが困難になるという問題が生じていた。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、反射鏡膜を形成するための複雑な後工程を不要とすることができると共に、有機発光素子の劣化を抑えることができる表示装置の製造方法および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による表示装置の製造方法は、以下の(A)〜(D)の工程を含むものである。(A)基板上の表示領域に、複数の有機発光素子を形成して発光パネルを形成する工程
(B)基体上に、複数の有機発光素子の各々に対応する凸状の反射素子を形成して反射板を形成する工程
(C)発光パネルの周縁に沿って接着層を形成する工程
(D)発光パネルおよび反射板を真空雰囲気中で接着層により貼り合わせることにより、発光パネルおよび反射板の間の空間を真空層とする工程
【0010】
本発明による表示装置は、以下の(A)〜(D)の構成要件を備えたものである。
(A)基板上の表示領域に、複数の有機発光素子を有する発光パネル
(B)基体上に、複数の有機発光素子の各々に対応する凸状の反射素子を有する反射板
(C)発光パネルの周縁に沿って形成され、発光パネルと反射板とを貼り合わせている接着層
(D)発光パネルおよび反射板の間の空間に形成された真空層
【0011】
本発明の表示装置では、発光パネルおよび反射板の間の空間が真空層とされているので、発光パネル上の有機発光素子で発生した光は、反射素子の先端面から入射し、反射素子の側面と真空層との界面で反射されて外部に取り出される。また、発光パネルおよび反射板の間の空間から水分等が有機発光素子に侵入するおそれがなく、水分等の影響による有機発光素子の劣化が抑えられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表示装置の製造方法によれば、発光パネルの周縁に沿って接着層を形成したのち、発光パネルおよび反射板を真空雰囲気中で接着層により貼り合わせることにより、発光パネルおよび反射板の間の空間を真空層とするようにしたので、反射鏡膜を形成するための複雑な後工程を不要とすることができると共に、有機発光素子の劣化を抑えることができる。
【0013】
本発明の表示装置によれば、発光パネルおよび反射板の間の空間を真空層とするようにしたので、発光パネル上の有機発光素子で発生した光を、反射素子の側面と真空層との界面で反射させることができる。よって、反射鏡膜を形成するための複雑な後工程を不要とすることができると共に、発光パネルおよび反射板の間の空間から水分等が有機発光素子に侵入するおそれをなくすことができ、水分等の影響による有機発光素子の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示装置の構成を表す図である。
【図2】図1に示した画素駆動回路の一例を表す等価回路図である。
【図3】図1に示した表示装置の表示領域における構成を表す断面図である。
【図4】図3に示した反射板を反射素子側から見た構成を表す平面図である。
【図5】図3に示した表示装置を分解して表す斜視図である。
【図6】図3に示した表示装置の製造方法を工程順に表した断面図である。
【図7】図6に続く工程を表す断面図である。
【図8】図7に続く工程を表す断面図である。
【図9】図8に続く工程を表す断面図である。
【図10】図9に続く工程を表す断面図である。
【図11】図10に続く工程を表す断面図である。
【図12】図11に続く工程を表す断面図である。
【図13】図12に続く工程を表す断面図である。
【図14】図3に示した表示装置の放射角度分布を調べた結果を表す図である。
【図15】上記実施の形態の表示装置を含むモジュールの概略構成を表す平面図である。
【図16】上記実施の形態の表示装置の適用例1の外観を表す斜視図である。
【図17】(A)は適用例2の表側から見た外観を表す斜視図であり、(B)は裏側から見た外観を表す斜視図である。
【図18】適用例3の外観を表す斜視図である。
【図19】適用例4の外観を表す斜視図である。
【図20】(A)は適用例5の開いた状態の正面図、(B)はその側面図、(C)は閉じた状態の正面図、(D)は左側面図、(E)は右側面図、(F)は上面図、(G)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施の形態に係る表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などとして用いられるものであり、例えば、駆動用基板11の上に、後述する複数の有機発光素子10R,10G,10Bがマトリクス状に配置されてなる表示領域110が形成されたものである。表示領域110の周辺に、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が形成されている。
【0017】
表示領域110内には画素駆動回路140が形成されている。図2は、画素駆動回路140の一例を表したものである。この画素駆動回路140は、後述する第1電極13の下層に形成され、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、その間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機発光素子10R(または10G,10B)とを有するアクティブ型の駆動回路である。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガー構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
【0018】
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機発光素子10R,10G,10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
【0019】
図3は、図1に示した表示装置の表示領域110における断面構成を表したものである。この表示装置は、発光パネル10の光取り出し側に反射板20を有している。発光パネル10と反射板20とは、発光パネル10の周縁に沿って形成された接着層30により貼り合わせられており、発光パネル10と反射板20との間の空間は真空層40となっている。これにより、この表示装置では、反射板20に反射鏡膜を形成するための複雑な後工程を不要とすることができると共に、有機発光素子10R,10G,10Bの劣化を抑えることができるようになっている。
【0020】
発光パネル10は、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などよりなる駆動用基板11に、赤色の光を発生する有機発光素子10Rと、緑色の光を発生する有機発光素子10Gと、青色の光を発生する有機発光素子10Bとが、順に全体としてマトリクス状に形成されたものである。なお、有機発光素子10R,10G,10Bは短冊形の平面形状を有し、隣り合う有機発光素子10R,10G,10Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。
【0021】
有機発光素子10R,10G,10Bは、それぞれ、駆動用基板11の側から、上述した画素駆動回路140および平坦化層12を間にして、陽極としての第1電極13、絶縁膜14、後述する発光層を含む有機層15、および陰極としての第2電極16がこの順に積層された構成を有し、必要に応じて保護膜17により被覆されている。
【0022】
第1電極13は、有機発光素子10R,10G,10Bの各々に対応して形成され、絶縁膜14により互いに電気的に分離されている。また、第1電極13は、発光層で発生した光を反射させる反射電極としての機能を有しており、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。第1電極13は、例えば、厚みが100nm以上1000nm以下であり、アルミニウム(Al)あるいはアルミニウム(Al)を含む合金、または、銀(Ag)あるいは銀(Ag)を含む合金により構成されている。また、第1電極13は、クロム(Cr),チタン(Ti),鉄(Fe),コバルト(Co),ニッケル(Ni),モリブデン(Mo),銅(Cu),タンタル(Ta),タングステン(W),白金(Pt)あるいは金(Au)などの他の金属元素の単体または合金により構成されていてもよい。
【0023】
絶縁膜14は、第1電極13と第2電極16との絶縁性を確保すると共に発光領域を正確に所望の形状にするためのものであり、例えば、感光性のアクリル,ポリイミド,ポリベンズオキサゾールなどの有機材料、または酸化シリコン(SiO2 )などの無機絶縁材料により構成されている。絶縁膜14は、第1電極13の発光領域に対応して開口部を有している。なお、有機層15および第2電極16は、発光領域だけでなく絶縁膜14の上にも連続して設けられていてもよいが、発光が生じるのは絶縁膜14の開口部だけである。
【0024】
有機層15は、例えば、第1電極13の側から順に、正孔注入層,正孔輸送層,発光層および電子輸送層を積層した構成を有するが、これらのうち発光層以外の層は必要に応じて設ければよい。また、有機層15は、有機発光素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっていてもよい。正孔注入層は、正孔注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層は、発光層への正孔輸送効率を高めるためのものである。発光層は、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層は、発光層への電子輸送効率を高めるためのものである。なお、電子輸送層と第2電極16との間には、LiF,Li2 Oなどよりなる電子注入層(図示せず)を設けてもよい。
【0025】
有機発光素子10Rの正孔注入層の構成材料としては、例えば、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)が挙げられる。有機発光素子10Rの正孔輸送層の構成材料としては、例えば、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)が挙げられる。有機発光素子10Rの発光層の構成材料としては、例えば、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したものが挙げられる。有機発光素子10Rの電子輸送層の構成材料としては、例えば、Alq3 が挙げられる。
【0026】
有機発光素子10Gの正孔注入層の構成材料としては、例えば、m−MTDATAあるいは2−TNATAが挙げられる。有機発光素子10Gの正孔輸送層の構成材料としては、例えば、α−NPDが挙げられる。有機発光素子10Gの発光層の構成材料としては、例えば、Alq3 にクマリン6(Coumarin6)を3体積%混合したものが挙げられる。有機発光素子10Gの電子輸送層の構成材料としては、例えば、Alq3 が挙げられる。
【0027】
有機発光素子10Bの正孔注入層の構成材料としては、例えば、m−MTDATAあるいは2−TNATAが挙げられる。有機発光素子10Bの正孔輸送層の構成材料としては、例えば、α−NPDが挙げられる。有機発光素子10Bの発光層の構成材料としては、例えば、スピロ6Φ(spiro6Φ)が挙げられる。有機発光素子10Bの電子輸送層の構成材料としては、例えば、Alq3 が挙げられる。
【0028】
第2電極16は、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。また、第2電極15は、ITO(インジウム・スズ複合酸化物)またはIZO(インジウム・亜鉛複合酸化物)により構成されていてもよい。
【0029】
保護膜17は、例えば、厚みが500nm以上10000nm以下であり、酸化シリコン(SiO2 ),窒化シリコン(SiN)などにより構成されている。
【0030】
図4は、反射板20の平面構成を表したものである。この反射板20は、有機発光素子10R,10G,10Bからの光取り出し効率を高めて輝度を向上させるためのものであり、発光パネル10の光取り出し側すなわち第2電極16側に設けられている。反射板20は、透明な基体21の表面に、カラーフィルタ22およびブラックマトリクスとしての遮光膜23が形成され、カラーフィルタ22の上に反射素子24が設けられた構成を有している。
【0031】
基体21は、例えば、ガラス、耐熱性樹脂よりなる樹脂基板あるいは樹脂フィルム、または溶融石英により構成されている。
【0032】
カラーフィルタ22および遮光膜23は、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光を取り出すと共に、有機発光素子10R,10G,10B並びにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するためのものである。
【0033】
カラーフィルタ22は、反射素子24の下に形成されると共に赤色フィルタ22R,緑色フィルタ22Gおよび青色フィルタ22Bを有しており、有機発光素子10R,10G,10Bに対応して順に配置されている。赤色フィルタ22R,緑色フィルタ22Gおよび青色フィルタ22Bは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ22R,緑色フィルタ22Gおよび青色フィルタ22Bは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
【0034】
遮光膜23は、赤色フィルタ22R,緑色フィルタ22Gおよび青色フィルタ22Bの境界に沿って設けられている。遮光膜23は、例えば黒色の着色剤を混入した光学濃度が1以上の黒色の樹脂膜、または薄膜の干渉を利用した薄膜フィルタにより構成されている。このうち黒色の樹脂膜により構成するようにすれば、安価で容易に形成することができるので好ましい。薄膜フィルタは、例えば、金属,金属窒化物あるいは金属酸化物よりなる薄膜を1層以上積層し、薄膜の干渉を利用して光を減衰させるものである。薄膜フィルタとしては、具体的には、クロムと酸化クロム(III)(Cr23 )とを交互に積層したものが挙げられる。なお、遮光膜23は必ずしも設けなくてもよい。
【0035】
反射素子24は、例えば円錐台形状を有しており、その下面はカラーフィルタ22に接し、上面は平坦面であると共に下面よりも面積が小さくなっている。反射素子24は、例えば、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂などの樹脂により構成されているが、低融点ガラスにより構成されていてもよい。
【0036】
この反射板20は、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光を、反射素子24の側面24Aと真空層40との界面により反射させるものである。これにより、この表示装置では、従来の金属等の反射鏡膜による吸収損失を抑え、光取り出し効率を更に向上させることができるようになっている。
【0037】
反射素子24の側面24Aは、例えば、直線テーパの断面形状であってもよく、または非球面多項式で近似できる曲面形状であってもよい。特に、非球面多項式で近似できる曲面形状が望ましい。反射素子24の下部に当たった光および反射素子24の上部に当たった光のどちらに対しても全反射条件を満たしやすく、光を基体21側へ立ち上げるのに有利であるからである。直線テーパの断面形状とした場合、反射素子24の下部に当たった光は全反射条件を満たしにくくなるものの、全体として反射板20がない場合よりは十分に光取り出し効率を高めることができる。
【0038】
図3に示した接着層30は、例えば、熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂により構成されている。なお、発光パネル10の保護膜17と反射素子24の先端面24Bとの間には、反射素子24を発光パネル10に固定するための固定層31が設けられていることが望ましい。固定層31は、例えば熱接着シートまたはポッティング剤により構成されている。なお、固定層31の接着方法は必ずしも熱接着である必要はなく、また、固定層31はシート状のものに限定されない。
【0039】
発光パネル10の表示領域110と接着層30との間には、シート状またはペースト状などのゲッター50が配置されている。ゲッター50の配置箇所や数は特に限定されないが、例えば図5に示したように、表示領域110の周囲を囲むように配置することが好ましい。このようなゲッター50としては、有機発光素子用の水分ゲッター、具体的には、サエス・ゲッターズ社製「DryFlex(登録商標)」または「GDO(ゲッタードライヤー)」(CaO粉末)を用いることが可能である。なお、ゲッター50としては、MEMSデバイスのパッケージやフラットパネルディスプレイに用いられる焼結多孔質非蒸発型ゲッター、具体的には、チタンとZr−V−Feゲッター合金との混合物であるHPTFゲッター、または、純度90%以上のジルコニウムを水素化粉砕したものを用いることも可能である。
【0040】
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
【0041】
図6ないし図13は、この表示装置の製造方法を工程順に表したものである。まず、図6(A)に示したように、上述した材料よりなる駆動用基板11の上に、画素駆動回路140を形成する。
【0042】
次に、図6(B)に示したように、駆動用基板11の全面に、例えばスピンコート法により、例えば感光性ポリイミドよりなる平坦化層12を塗布形成し、露光、現像処理により所定の形状にパターニングすると共に接続孔12Aを形成したのち、焼成する。
【0043】
続いて、図7(A)に示したように、平坦化層12の上に、例えばスパッタ法により、例えば上述した厚みおよび材料よりなる第1電極13を形成したのち、例えばリソグラフィー技術およびエッチングにより、第1電極13を所定の形状にパターニングする。これにより、平坦化層12の上に、複数の第1電極13が形成される。
【0044】
そののち、図7(B)に示したように、駆動用基板11の全面にわたり感光性樹脂を塗布し、露光および現像処理により開口部を設けたのち、焼成して、絶縁膜14を形成する。
【0045】
続いて、図8(A)に示したように、例えば真空蒸着法により、上述した材料よりなる有機発光素子10Rの正孔注入層,正孔輸送層,発光層および電子輸送層を順次成膜し、有機発光素子10Rの有機層15を形成する。そののち、同じく図8(A)に示したように、有機発光素子10Rの有機層15と同様にして、上述した材料よりなる有機発光素子10Gの正孔注入層,正孔輸送層,発光層および電子輸送層を順次成膜し、有機発光素子10Gの有機層15を形成する。続いて、同じく図8(A)に示したように、有機発光素子10Rの有機層16と同様にして、上述した材料よりなる有機発光素子10Bの正孔注入層,正孔輸送層,発光層および電子輸送層を順次成膜し、有機発光素子10Bの有機層15を形成する。
【0046】
有機発光素子10R,10G,10Bの有機層15を形成したのち、図8(B)に示したように、駆動用基板11の全面にわたり、例えば蒸着法により、上述した厚みおよび材料よりなる第2電極16を形成する。以上により、図3に示した有機発光素子10R,10G,10Bが形成される。
【0047】
次に、図9に示したように、第2電極16の上に、上述した厚みおよび材料よりなる保護膜17を形成する。これにより、図3に示した発光パネル10が形成される。
【0048】
また、反射板20を形成する。まず、図10(A)に示したように、上述した材料よりなる基体21の表面に、上述した材料よりなる遮光膜23を成膜し、所定の形状にパターニングする。次いで、同じく図10(A)に示したように、基体21の表面に、赤色フィルタ22Rの材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより赤色フィルタ22Rを形成する。続いて、赤色フィルタ22Rと同様にして、青色フィルタ22Bおよび緑色フィルタ22Gを順次形成する。
【0049】
続いて、図10(B)に示したように、基体21の表面の全面に、スプレーコート等を用いてレジスト(例えばSU−8など、硬化後に光学用途として利用可能な永久レジスト)を塗布したのち、一定温度でプリベークし、厚み50μmないし150μmのレジスト膜61を形成する。
【0050】
そののち、図10(C)に示したように、基体21の表面側から、拡散板62およびマスク63を介して紫外光UVを照射する。この際、基体21とマスク63とは正確に位置決めして露光を行う。続いて、現像を行うことにより、図10(D)に示したように、カラーフィルタ22上に、パラボリックな曲面形状の側面24Aを有する反射素子24が形成される。
【0051】
発光パネル10および反射板20を形成したのち、図11に示したように、発光パネル10の保護膜17の上に例えば熱接着シートよりなる固定層31を形成し、発光パネル10の周縁に沿って接着層30を形成する。また、発光パネル10の表示領域110と接着層30との間には、シート状またはペースト状などのゲッター50を配置する。続いて、図12に示したように、発光パネル10と反射板20とを位置決めして重ね合わせたのち、図13に示したように、発光パネル10および反射板20を真空チャンバー71に装荷して、排気口72から脱気して真空チャンバー71内部を減圧し、真空雰囲気中で、矢印Pに示したように加圧すると共に矢印Hに示したように加熱することにより、発光パネル10および反射板20を接着層30により貼り合わせる。これにより、発光パネル10および反射板20の間の空間が真空層40となる。以上により、図1ないし図3に示した表示装置が完成する。
【0052】
なお、更に高気密性能を高めるため、予め発光パネル10の外周に、リフトオフ法や蒸着によりタングステン等よりなる加熱用配線パターニングを形成し、低融点ガラス(ソルダーガラス)を用いてガラス塗布を行い、通電により局所加熱して発光パネル10の外周のみをフリットシールするようにしてもよい。このようにすることにより、有機発光素子10R,10G,10Bに損傷を与えるおそれを小さくすることができる。
【0053】
ただし、発光パネル10と反射板20との貼り合わせ方法は、必ずしもこれらの方法には限られず、例えば常温接合を利用することにより、有機発光素子10R,10G,10Bに損傷を与えることなく貼り合わせを行うことが可能である。
【0054】
なお、この製造方法により表示装置を実際に作製し、得られた表示装置を点灯させて放射角度分布を調べたところ、図14に示したように、反射素子の側面にアルミニウム反射鏡膜を蒸着により形成した従来構造に比べて、正面輝度は11%、エネルギー効率は12%向上していることが分かった。これは、例えばアルミニウム反射鏡膜を蒸着により形成した従来構造の場合、アルミニウムの複素屈折率と反射素子の材料の屈折率とから理論的に求めた反射率は最大90%程度であるのに対し、本実施の形態の反射板20は、反射素子24の側面24Aと真空層40との界面での全反射を利用するようにしたので、光の損失がゼロとなるからである。
【0055】
この表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、各有機発光素子10R,10G,10Bに駆動電流Idが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第2電極15,カラーフィルタ22および透明基体21を透過して取り出される。
【0056】
ここでは、発光パネル10および反射板20の間の空間が真空層40とされているので、発光パネル10上の有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光は、反射素子24の先端面から入射し、反射素子24の側面24Aと真空層40との界面により反射されて外部に取り出される。反射素子24の側面24Aを全反射条件を満たす形状とするように調整することにより、光を全反射させて取り出すことができ、光取り出し効率および輝度の向上が可能となる。また、発光パネル10および反射板の間の空間から水分等が有機発光素子10R,10G,10Bに侵入するおそれがなく、水分等の影響による有機発光素子10R,10G,10Bの劣化が抑えられる。
【0057】
このように本実施の形態の表示装置の製造方法では、発光パネル10の周縁に沿って接着層30を形成したのち、発光パネル10および反射板20を真空雰囲気中で接着層30により貼り合わせることにより、発光パネル10および反射板20の間の空間を真空層40とするようにしたので、反射鏡膜を形成するための複雑な後工程を不要とすることができると共に、有機発光素子10R,10G,10Bの劣化を抑えることができる。
【0058】
本実施の形態の表示装置によれば、発光パネル10および反射板20の間の空間を真空層40とするようにしたので、発光パネル10上の有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光を、反射素子24の側面24Aと真空層40との界面で反射させることができる。よって、反射鏡膜を形成するための複雑な後工程を不要とすることができると共に、発光パネル10および反射板20の間の空間から水分等が有機発光素子10R,10G,10Bに侵入するおそれをなくすことができ、水分等の影響による有機発光素子10R,10G,10Bの劣化を抑えることができる。
【0059】
(モジュールおよび適用例)
以下、上記実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
【0060】
(モジュール)
上記実施の形態の表示装置は、例えば、図15に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、反射板20および接着層30から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
【0061】
(適用例1)
図16は、上記実施の形態の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0062】
(適用例2)
図17は、上記実施の形態の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0063】
(適用例3)
図18は、上記実施の形態の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0064】
(適用例4)
図19は、上記実施の形態の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0065】
(適用例5)
図20は、上記実施の形態の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記実施の形態に係る表示装置により構成されている。
【0066】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、反射板20にカラーフィルタ22および遮光膜23を形成したCF一体型の場合について説明したが、本発明は、カラーフィルタ22または遮光膜23を設けないCFレス構造の場合にも適用可能である。
【0067】
また、例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。例えば、反射素子24は、上記実施の形態で説明したようなレジスト膜61のリソグラフィに限らず、レーザ加工またはマシニング金型成型等の他の方法により形成してもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、有機発光素子10R,10B,10Gの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
【0069】
加えて、本発明の表示装置は、照明装置など、表示以外の他の目的の発光装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
10…発光パネル、10R,10G,10B…有機発光素子、11…駆動用基板、12…第1電極、13…絶縁膜、14…有機層、15…第2電極、16…保護膜、20…反射板、21…基体、22…カラーフィルタ、23…遮光膜、24…反射素子、24A…側面、30…接着層、40…真空層、50…ゲッター、110…表示領域、140…画素駆動回路、Cs…キャパシタ、Tr1…駆動トランジスタ、Tr2…書き込みトランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の表示領域に、複数の有機発光素子を形成して発光パネルを形成する工程と、
基体上に、前記複数の有機発光素子の各々に対応する凸状の反射素子を形成して反射板を形成する工程と、
前記発光パネルの周縁に沿って接着層を形成する工程と、
前記発光パネルおよび前記反射板を真空雰囲気中で前記接着層により貼り合わせることにより、前記発光パネルおよび前記反射板の間の空間を真空層とする工程と
を含む表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記接着層を形成する工程において、前記発光パネルの表示領域の外側にゲッターを配置したのち、前記ゲッターの外側に前記接着層を形成する
請求項1記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
基板上の表示領域に、複数の有機発光素子を有する発光パネルと、
基体上に、前記複数の有機発光素子の各々に対応する凸状の反射素子を有する反射板と、
前記発光パネルの周縁に沿って形成され、前記発光パネルと前記反射板とを貼り合わせている接着層と、
前記発光パネルおよび前記反射板の間の空間に形成された真空層と
を備えた表示装置。
【請求項4】
前記反射板は、前記複数の有機発光素子で発生した光を前記反射素子の側面と前記真空層との界面により反射させる
請求項3記載の表示装置。
【請求項5】
前記発光パネルの表示領域と前記接着層との間にゲッターが配置されている
請求項3または4記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−140896(P2010−140896A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260253(P2009−260253)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】