説明

表示装置

【課題】W,R,G,B,C,M,Y,BLの全色を表示可能な反射型の表示装置を提供する。
【解決手段】基板間に挟持され電場により屈折率が可変な媒質と、前記媒質に電場を印加して屈折率を変化させる電極と、前記媒質の屈折率の変化に応じてプラズモン共鳴波長が変化する金属ナノ構造とを含むセルを有し、互いにプラズモン共鳴波長域が異なる2種の金属ナノ構造を含むことを特徴とする表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモンを利用した反射型の表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バックライトなどの光源を必要としないディスプレイとして、外光を利用する反射型ディスプレイが知られている。この反射型ディスプレイをカラー化するためにはカラーフィルタが用いられている。このカラーフィルタは赤色透過部と緑色透過部と青色透過部とを交互にマトリクス状に配置してなり、一組の赤色透過部と緑色透過部と青色透過部とによって一つのカラー素子部を構成するようになっている。このようなカラーフィルタを用いた色調表現では、光の利用効率が低く、明るいフルカラー表示ができないという問題点がある。
【0003】
カラーフィルタを使用せずにカラー表示を実現する方法として、屋外白色光で励起可能な局在型プラズモンの利用が考えられている(非特許文献1)。
【0004】
しかし、局在型プラズモンでは周囲の媒質の屈折率変化に対するプラズモン共鳴波長のシフト幅が小さいため、W(白),R(赤),G(緑),B(青),C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),BL(黒)の全色を表示させることができない。
【非特許文献1】Nano letters, Vol 5, p. 1978 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、W,R,G,B,C,M,Y,BLの全色を表示可能な反射型の表示装置(色変換層)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、基板間に挟持され電場により屈折率が可変な媒質と、前記媒質に電場を印加して屈折率を変化させる電極と、前記媒質の屈折率の変化に応じてプラズモン共鳴波長が変化する金属ナノ構造とを含むセルを有し、互いにプラズモン共鳴波長域が異なる2種の金属ナノ構造を含むことを特徴とする表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、互いにプラズモン共鳴波長域が異なる2種の金属ナノ構造のプラズモン共鳴波長を変化させることによって、W,R,G,B,C,M,Y,BLの全色を表示可能な反射型の表示装置(色変換層)を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の表示素子は、周囲の媒質の屈折率により光の吸収波長が変わるナノ構造と、屈折率が制御可能な媒質とを備えた調光層を有する。本発明の表示素子は、前記調光層の媒質に電界を付与して屈折率を変化させる手段としてTFTアレイが設けられた構成、あるいは前記媒質の移動を制御する手段(例えばナノ構造が固定された基板に電界を加えて媒質に対する親和性を変える等)が設けられた構成となっている。そして、かかる構成を基本として、調光層を含む調光セルが複数設けられた構成や、調光層が複数設けられた構成となっている。以下、調光層および本発明の表示素子の具体的な構成について説明する。
【0009】
(調光層)
調光層は周囲媒質の屈折率に応じて色を変えるナノ構造と電場により屈折率が変わる媒質を備える。調光層は表示素子として使用する場合には種々の色を表示する機能を発揮する層である。
【0010】
(1)ナノ構造
ナノ構造は局在型表面プラズモンによる発色機能を有しており、電界(電圧)の印加、磁気の印加、温度のいずれかを調整することで周囲媒質の屈折率を制御し、可視域の所望の波長で吸光させて発色する。このプラズモン吸収による発色は電子のプラズマ振動に起因し、ナノ構造中の自由電子が光電場により揺さぶられることで表面に電荷が現れ、非線形分極が生じるためとされている。プラズモンによる発色は寸法が数nm〜数十nm程度のナノ構造において見られるものであり、彩度や光線透過率が高く、耐久性に優れている。色表示への応用を考慮すると寸法ばらつきが小さいことが望ましい。
【0011】
ナノ構造の体積平均粒径としては10〜100nmであることが好ましく、実用的で色の強さが良好である。ナノ構造の屈折率感度は、ナノ構造を構成する材料や形状、体積平均粒径に依存する。そのため、これらを制御することにより所望の波長で発色させることができ、本発明の表示素子をカラー表示素子とすることができる。さらに形状異方性を持つナノ構造(例えばロッド形状)においては吸光波長が偏光方向により異なってくる他、隣接するナノ構造間の距離がおよそ200nmより小さくなるとプラズモン間の結合が生じ、新たな吸光波長のピークが発生するため、ナノ構造の配置、特に形状異方性がある場合はその向きも含めて調整する必要がある。十分な濃度の色を表示させるには基板上に固定されたナノ構造の数を増加させれば良いが、前記プラズモン間の結合を防ぐため、隣接するナノ構造間の距離は平均体積粒径の2倍以上であることが必要である。これがナノ構造の面密度の上限値を与える。
【0012】
ナノ構造としては、金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子、および金属ナノパターンがある。金属ナノパターンは以下のような方法によって形成することができる。例えばナノ細孔を持ったアルミナメンブレンをマスクにして蒸着、またはスパッタにより作製しても良い。この場合、金ナノ構造の形状と配置はナノ細孔の断面に依存し、高さは金属の成膜時間で制御することができる。あるいは、自己組織化的に配列した微小球をマスクにして金属を蒸着、またはスパッタした後で微小球を取り除くことで作製しても良い。この場合、金ナノ構造の形状は三角形であり、三角形の寸法と配置は使用する微小球の直径に依存する。高さは金の成膜時間で制御することができる。あるいは、EBリソグラフィーで作製しても良い。まず基板上に一様な金属薄膜を堆積後、この上にEBレジストを塗布して電子線を照射してレジストパターンを作製し、作製したレジストパターンをマスクにして下地の金属薄膜をエッチングする。得られる金属ナノ構造はディスク形状であり、形状と配置はレジスト描画パターンで定義することができ、高さは金属の成膜時間で制御することができる。
【0013】
金属、及び半導体ナノ粒子の場合は、ナノ粒子の分散液を基板上に滴下し、自然乾燥させることによる基板上への物理吸着であっても良いし、ナノ粒子の周囲で弱く帯電した分散材と逆の極性に帯電した官能基、またはナノ粒子自体と強く化学結合する部位を有する自己組織化単分子膜(SAM)を基板上に作製し、このSAMを介してナノ粒子を基板に固定する方法であっても良い。ナノ構造の形状は使用するナノ粒子の形状に依存し、隣接粒子間の距離はナノ粒子間に作用する斥力と、基板表面とナノ粒子との吸着力の強さにより決定される。
【0014】
金属ナノ粒子を構成する金属成分としては、貴金属(金、銀、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等)や銅等が挙げられる。前記金属の中でも、金、銀、白金、または、これらのうち少なくとも1種を含む合金が好ましく、金、及び銀の少なくともいずれかを含むことがより好ましい。半導体ナノ粒子を構成する半導体成分としてはカドミウムセレンが挙げられる。
【0015】
プラズモン共鳴のピーク波長、及び周囲媒質の屈折率変化に対するプラズモン共鳴のピーク波長のシフト量は、金属ナノ構造の形状、及び隣接粒子間の距離に依存することを考慮すると、所望の表示特性が出せるよう、形状と配置を計算した上でEBリソグラフィーにより作製することが望ましい。
【0016】
(2)媒質
媒質は無色透明であり、電圧を印加することで屈折率を制御することができる。屈折率を制御する方式としては、媒質を動かさずに媒質自体の屈折率を電界によって変える方式と、ナノ構造が固定された基板に電圧を印加して、基板と媒質との親和性を変えることにより電圧に応じてナノ構造と媒質との接触・非接触を切り替える方式(エレクトロウェッティング)がある。前者の方式の媒質としては液晶が挙げられる。例えばナノ構造が直径80nmの金の真球の場合、液晶の屈折率が1.5から1.85に変化すれば、マゼンタ〜透明まで発色する。この場合、液晶としてはシアノビフェニル系ネマチック液晶4−シアノ4’−ペンチルビフェニル(5CB)(Aldrich社製)の他、シアノ系液晶、フッ素系液晶が挙げられる。後者の方式の媒質としては透明なオイルであれば特に材料に指定はない。
【0017】
(3)基板
基板は透明で絶縁性であれば良く、材料について特に限定はない。通常はガラス基板が望ましい。
【0018】
(4)電極
調光層に電圧印加する方式としては、電極を櫛形にして調光層の面内方向に印加する方式と、前記媒質を上部電極と下部電極間に挟持して調光層の厚み方向に印加する方式がある。
【0019】
前者の方式の場合、電極とナノ構造は同一面内に作製されている。具体的には、まずナノ構造を電極のスペースを空けて作製する。ナノ構造を作製後、レジストを全面にスピンコート塗布し、ナノ構造のパターンと電極のパターンが重ならないように位置あわせをした上で、フォトリソグラフィーによりレジストを描画し、レジストパターンをマスクとしてリフトオフにより、電極を作製する。
【0020】
ナノ構造がナノ粒子の場合、ナノ粒子の固定化にはナノ粒子及び基板表面を修飾した有機分子間の選択的な化学結合が利用されるが、このとき基板表面を修飾する有機分子を予め電極のスペースを空けるようにパターニングしておき、基板表面全体にナノ粒子分散液を滴下して、基板表面上の有機分子膜上にのみ選択的にナノ粒子を固定する。このとき、電極のスペースに吸着した余剰なナノ粒子は、分散液滴下後のリンス工程により洗い流す。
【0021】
金属ナノ構造をEBリソグラフィーで作製する場合は、まず基板上に一様な金属薄膜を堆積後、この上にEBレジストを塗布して、EBリソグラフィーにより電極とナノ構造のレジストパターンを同時に作製しても良い。作製したレジストパターンは下地の金属薄膜をエッチングするためのマスクとして使用する。また、電極のパターンをEBリソグラフィーで描画するとスループットが極端に低下する場合は、基板上に一様な金属薄膜を堆積後、この上にネガ型のEBレジストを塗布してナノ構造のレジストパターンのみを作製し、作製したレジストパターンをマスクにして下地の金属薄膜をエッチングする。電極は金属ナノ構造を作製後、基板表面全体にフォトリソグラフィーのレジストを塗布し、金属ナノ構造のパターンと電極のパターンが重ならないように位置あわせをした上で、フォトリソグラフィーによりレジストを描画し、レジストパターンをマスクとしてリフトオフにより、電極を作製する。
【0022】
後者の方式の場合、上部基板の対向面および下部基板表面に金属薄膜電極が形成されている。調光層が多層構造の場合は上部基板と下部基板の間に中間基板が挿入されている。例えば2層構造の場合、挿入される中間基板は1枚で、上部基板の対向面、中間基板の表面と対向面、および下部基板の表面に薄膜電極が形成されている。
【0023】
電極が形成されている表面および対向面には電圧を供給する手段としてTFTアレイが作製されている。また、電極はITOなど透明であることが望ましい。
【0024】
(表示方式)
使用するナノ構造が1種類の場合は、単一のナノ構造で可視全域の色を発色させる。ナノ構造が複数種の場合、調光層は積層構造となる。3種類の場合は調光層の各層において、発色を透明〜赤、透明〜緑、透明〜青で各々独立に制御することでフルカラー表示を行う。2種類の場合は、短波長領域でシフトが起こるナノ構造の媒質と長波長領域でシフトが起こるナノ構造の媒質の屈折率を独立に制御することにより、任意の色光を表示させることができる。以下、2種類のナノ構造を用いてフルカラーを発色させる方法を説明する(図1)。図1の横軸は波長、縦軸は吸収スペクトルの強度を示す。また、図1の破線のスペクトルは目視では透明であることを示す。
【0025】
青〜シアン、及びマゼンタを表示させる時は、短波長領域でシフトが起こる金属ナノ構造の共鳴ピークを紫外域にシフトさせ、長波長領域でシフトが起こる金属ナノ構造の共鳴ピークを緑〜赤の波長域で変化させる。
【0026】
黄〜赤を表示させる時は、長波長領域でシフトが起こる金属ナノ構造の共鳴ピークを赤外域にシフトさせ、短波長領域でシフトが起こる金属ナノ構造の共鳴ピークを青〜シアンの波長域で変化させる。
【0027】
緑を表示させる時は、長波長領域でシフトが起こる金属ナノ構造の共鳴ピークを赤の波長に、短波長領域でシフトが起こる金属ナノ構造の共鳴ピークを青の波長に変化させる。
【0028】
白を表示させる時は長波長領域でシフトが起こる金属ナノ構造の共鳴ピークを赤外域に、短波長領域でシフトが起こる金属ナノ構造の共鳴ピークを紫外域にシフトさせ、反射板の下地の白を表示させる。
【0029】
黒を表示させる時は、短波長領域でシフトが起こる金属ナノ構造を複数層と長波長領域でシフトが起こる金属ナノ構造を複数層作製し、これらの層で可視域の光をすべて吸収することにより黒を表示させる。
【0030】
電場により屈折率が変化する媒質は、短波長領域でシフトが起こるナノ構造と長波長領域でシフトが起こるナノ構造で共通であっても良いし、中間基板を用いて調光層を上層と下層に区切って異なる媒質を使用しても良い。
【実施例】
【0031】
以下に本発明による実施の形態を示す。
【0032】
[実施例1]
図2(a)および(b)に本発明における実施の一形態を示す。図2(a)は断面図、図2(b)は平面図である。
【0033】
図2ではセルが中間基板2を介した2層構造となっており、上部基板3の対向面には媒質21の屈折率を変化させるためのインプレイン電極22(櫛形構造)が、中間基板2の基板上には媒質21の屈折率変化に応じて可視域から赤外の長波長領域でプラズモン共鳴のピーク波長をシフトさせる金ナノ構造23が作製されている。電極22はフォトリソグラフィーまたはEBリソグラフィーにより作製される。電極材料としてはITOなどの透明電極が望ましい。媒質21、11の材料としては電場により屈折率が変化するものであれば良く、例えば液晶が挙げられる。金ナノ構造23は直径80nmの真球形状であり、液晶の屈折率が1.5から1.85に変化すれば吸収波長は緑から赤外まで変化する。液晶にはシアノビフェニル系ネマチック液晶4−シアノ4’−ペンチルビフェニル(5CB)(Aldrich社製)の他、シアノ系液晶、フッ素系液晶が挙げられる。
【0034】
中間基板2の対向面には媒質11の屈折率を変化させるための電極12が、下部基板1の基板上には下層内の媒質11の屈折率変化に応じて紫外域から可視域の短波長領域でプラズモン共鳴のピーク波長をシフトさせる銀ナノ構造13が作製されている。液晶で変えられる屈折率はだいたい1.5から1.9の範囲であるのに対し、銀ナノ構造を真球形状(直径80nm)とした場合、吸収波長を紫外からシアンとするために必要な屈折率は1.15から1.55と見積もられる。したがって、液晶を用いる場合、銀ナノ構造は真球ではなく、楕円形状が望ましい。一般に楕円形状の吸収スペクトルの形状はピークが2つに分裂するため、分裂後の短波長側のピークを液晶の屈折率の範囲(1.5から1.9)で常に紫外領域、長波長側のピークを液晶の屈折率の範囲(1.5から1.9)で紫外からシアンとなるようにすれば良い。また、あらゆる偏光を持った入射光に対して色変化を呈するようにするため、銀ナノ構造13はロッドの長軸が一方向に揃っているのではなく、あらゆる方向に分散するように配置することが望ましい。また、液晶にはシアノビフェニル系ネマチック液晶4−シアノ4’−ペンチルビフェニル(5CB)(Aldrich社製)の他、シアノ系液晶、フッ素系液晶が挙げられる。電極12の作製方法と材質については上記と同様である。
【0035】
上部20と下部10の配置は入れ替わっていても良いし、媒質21と媒質11は同一の材料であっても良い。また、中間基板2、上部基板3、下部基板1は透明である。
【0036】
[実施例2]
図3に本発明における実施の一形態を示す。図3ではセルが中間基板2を介した2層構造となっており、媒質21の屈折率を変化させるために上部基板3の対向面に薄膜電極222および中間基板2の基板上に薄膜電極221が作製されている。薄膜電極221上には媒質21の屈折率変化に応じて可視域から赤外の長波長領域でプラズモン共鳴のピーク波長をシフトさせる金ナノ構造23が作製されている。薄膜電極221、222の材料としてはITOなどの透明電極が望ましい。媒質21、11の材料としては電場により屈折率が変化するものであれば良く、例えば液晶が挙げられる。金ナノ構造23は直径80nmの真球形状であり、液晶の屈折率が1.5から1.85に変化すれば吸収波長は緑から赤外まで変化する。液晶にはシアノビフェニル系ネマチック液晶4−シアノ4’−ペンチルビフェニル(5CB)(Aldrich社製)の他、シアノ系液晶、フッ素系液晶が挙げられる。媒質11の屈折率を変えるために、中間基板1の対向面に薄膜電極122および下部基板1の基板上に薄膜電極121が作製されている。下部基板1には媒質11の屈折率変化に応じて紫外域から可視域の短波長領域でプラズモン共鳴のピーク波長をシフトさせる銀ナノ構造13が作製されている。液晶で変えられる屈折率はだいたい1.5から1.9の範囲であるのに対し、銀ナノ構造を真球形状(直径80nm)とした場合、吸収波長を紫外からシアンとするために必要な屈折率は1.15から1.55と見積もられる。したがって、液晶を用いる場合、銀ナノ構造は真球ではなく、楕円形状が望ましい。一般に楕円形状の吸収スペクトルの形状はピークが2つに分裂するため、分裂後の短波長側のピークを液晶の屈折率の範囲(1.5から1.9)で常に紫外領域、長波長側のピークを液晶の屈折率の範囲(1.5から1.9)で紫外からシアンとなるようにすれば良い。また、あらゆる偏光を持った入射光に対して色変化を呈するようにするため、銀ナノ構造13はロッドの長軸が一方向に揃っているのではなく、あらゆる方向に分散するように配置することが望ましい。また、液晶にはシアノビフェニル系ネマチック液晶4−シアノ4’−ペンチルビフェニル(5CB)(Aldrich社製)の他、シアノ系液晶、フッ素系液晶が挙げられる。
【0037】
上層20と下層10の配置は入れ替わっていても良いし、媒質11と媒質21は同一の材料であっても良い。また、中間基板2、上部基板3、下部基板1は透明である。
【0038】
[実施例3]
図4(a)および(b)に本発明における実施の一形態を示す。図4(a)は断面図、図4(b)は平面図である。図4ではセルの上部基板3に媒質11の屈折率を変化させるための電極32と媒質の屈折率変化に応じて可視域から赤外の長波長領域でプラズモン共鳴のピーク波長をシフトさせる金ナノ構造33が同一面内に作製されている。まず基板上に金ナノ構造33を、電極32のスペースを空けて作製する。金ナノ構造33を作製後、レジストを全面にスピンコート塗布し、金属ナノ構造33のスペースと電極32のスペースが重ならないように位置あわせをした上で、フォトリソグラフィーまたはEBリソグラフィーによりレジストを描画し、レジストパターンをマスクとしてリフトオフにより、電極32を作製する。金ナノ構造4は直径80nmの真球形状であり、液晶の屈折率が1.5から1.85に変化すれば吸収波長は緑から赤外まで変化する。媒質11の材料としては電場により屈折率が変化するものであれば良く、液晶が挙げられる。液晶としてはシアノビフェニル系ネマチック液晶4−シアノ4’−ペンチルビフェニル(5CB)(Aldrich社製)の他、シアノ系液晶、フッ素系液晶が挙げられる。セルの下部基板1に媒質11の屈折率を変化させるための電極12と媒質の屈折率変化に応じて紫外から可視域の短波長領域でプラズモン共鳴のピーク波長をシフトさせる銀ナノ構造13がそれぞれ同一面内に作製されている。銀ナノ構造13は前記の楕円形状であり、長軸が一方向に揃っているのではなく、あらゆる方向に分散するように配置されている。電極12と銀ナノ構造13の作製方法については上記と同様である。
【0039】
電極32、金ナノ構造33と電極12、銀ナノ構造13の配置は入れ替わっても良い。また、上部基板3、下部基板1は透明である。
【0040】
[実施例4]
図5に本発明における実施の一形態を示す。図5ではセルが3層構造となっており、上層5では吸光波長を赤〜赤外とすることでシアン〜透明、中間層6では吸光波長を紫外〜青とすることで透明〜イエロー、下層7では吸光波長を緑〜赤外とすることでマゼンタ〜透明を表示する。黒は上層5で赤、中間層6で青、下層7で緑を同時に吸収させることで表示、白は3層の表示を全て透明にして下地の反射板の色を表示させる。本実施形態では、エレクトロウェッティングにより媒質の屈折率を変える。
【0041】
上層5では上板3が有機膜351により撥水処理されており、有機膜351上に金ナノ粒子354が固定されている。金ナノ粒子354の固定は、分散液を塗布後に自然乾燥させることによる物理吸着である。上層5には水系溶媒352と油系溶媒353が充填されており、電圧が供給されていない状態では上部基板3が疎水性のため油系溶媒353が金ナノ粒子354の周囲媒質となり、金ナノ粒子354による吸光波長は赤外となる。電圧が有機膜351に印加されると上部基板3が親水性に切り替わって水系溶媒352が金ナノ粒子354の周囲媒質となり、金ナノ粒子354による吸光波長は赤となる。このとき油系溶媒353はブラックマトリクス4の下に隠れている。油系溶媒353は屈折率の大きいものが望ましく、パラフィン油、ベンゼン、シリコーンオイルなどが挙げられる。水系溶媒352は屈折率の小さいものが望ましく、水、空気が挙げられる。
【0042】
中間層6では中間基板2が有機膜251により撥水処理されており、有機膜251上に銀ナノ粒子254が固定されている。銀ナノ粒子254の固定は、分散液を塗布後に自然乾燥させることによる物理吸着である。中間層6には水系溶媒252と油系溶媒253が充填されており、電圧が供給されていない状態では中間基板2が疎水性のため油系溶媒253が銀ナノ粒子254の周囲媒質となり、銀ナノ粒子254による吸光波長は青となる。電圧が有機膜251に印加されると中間基板2が親水性に切り替わって水系溶媒252が銀ナノ粒子254の周囲媒質となり、銀ナノ粒子254による吸光波長は紫外となる。このとき油系溶媒253はブラックマトリクス4の下に隠れている。油系溶媒253は屈折率の大きいものが望ましく、パラフィン油、ベンゼン、シリコーンオイルなどが挙げられる。水系溶媒252は屈折率の小さいものが望ましく、水、空気が挙げられる。
【0043】
下層7では下部基板1が有機膜151により撥水処理されており、有機膜151上に金ナノ粒子154が固定されている。金ナノ粒子154の固定は、分散液を塗布後に自然乾燥させることによる物理吸着である。下層7には水系溶媒152と油系溶媒153が充填されており、電圧が供給されていない状態では下部基板1が疎水性のため油系溶媒153が金ナノ粒子154の周囲媒質となり、金ナノ粒子154による吸光波長は赤外となる。電圧が有機膜151に印加されると下部基板1が親水性に切り替わって水系溶媒152が金ナノ粒子154の周囲媒質となり、金ナノ粒子154による吸光波長は緑となる。このとき油系溶媒153はブラックマトリクス4の下に隠れている。油系溶媒153は屈折率の大きいものが望ましく、パラフィン油、ベンゼン、シリコーンオイルなどが挙げられる。水系溶媒152は屈折率の小さいものが望ましく、水、空気が挙げられる。
【0044】
また、前記の各層5、6、7は並置された構造でも良い。この場合、1画素は5、6、7の3つのサブピクセルで構成される。各色を表示させる時の駆動方法は積層構造の場合と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1および第2の金属ナノ構造のプラズモン共鳴波長のシフトを利用して表示色を変える方法を説明する図。
【図2】実施例1における表示装置の断面図および平面図。
【図3】実施例2における表示装置の断面図。
【図4】実施例3における表示装置の断面図および平面図。
【図5】実施例4における表示装置の断面図。
【符号の説明】
【0046】
1…下部基板、2…中間基板、3…上部基板、11…媒質、12…櫛形電極、13…銀ナノ構造、21…媒質、22…櫛形電極、23…金ナノ構造、121…薄膜電極、122…薄膜電極、221…薄膜電極、222…薄膜電極、32…櫛形電極、33…金ナノ構造、4…ブラックマトリクス、151…有機膜、152…水系溶媒、153…油系溶媒、154…金ナノ粒子、251…有機膜、252…水系溶媒、253…油系溶媒、254…金ナノ粒子、351…有機膜、352…水系溶媒、353…油系溶媒、354…金ナノ粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板間に挟持され電場により屈折率が可変な媒質と、前記媒質に電場を印加して屈折率を変化させる電極と、前記媒質の屈折率の変化に応じてプラズモン共鳴波長が変化する金属ナノ構造とを含むセルを有し、互いにプラズモン共鳴波長域が異なる2種の金属ナノ構造を含むことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記2種の金属ナノ構造のプラズモン共鳴波長が、紫外〜可視光の短波長域と可視光〜赤外の長波長域で独立に制御されることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
下部基板と中間基板との間に挟持され電場により屈折率が可変な第1の媒質と、下部基板上または中間基板の対向面上にそれぞれ形成された第1のナノ構造と櫛型電極を含む下層部と、
中間基板と上部基板との間に挟持され電場により屈折率が可変な第2の媒質と、中間基板上または上部基板の対向面上にそれぞれ形成された第2のナノ構造と櫛型電極とを含む上層部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
下部基板と上部基板との間に挟持され電場により屈折率が可変な媒質と、
下部基板上に形成された第1のナノ構造及び櫛型電極と、
上部基板の対向面上に形成された第2のナノ構造及び櫛型電極と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記媒質の屈折率を変化させるための電極が、下部基板上と中間基板の対向面、および中間基板上と上部基板の対向面に成膜された金属薄膜であり、上下方向の電界で媒質の屈折率を変化させることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記ナノ構造が金または銀のナノ構造、及びカドミウムセレンのナノ粒子のうちの2つであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記ナノ構造の体積平均粒径が20〜100nmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記ナノ構造の最近接距離が体積平均粒径の2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項9】
前記媒質の屈折率を変える方法がエレクトロウェッティングであることを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−122453(P2010−122453A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295847(P2008−295847)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】