説明

表面保護シート

【課題】支持基材上に粘着剤層を備える表面保護シートであって、粘着剤層が支持基材に対して高い投錨力を有し、被着体に貼り付けた後に剥離した際に糊残りが発生しない、新規な表面保護シートを提供する。
【解決手段】本発明の表面保護シートは、支持基材の最外層の一方である表面層(I)上に粘着剤層を備える表面保護シートであって、該粘着剤層が熱可塑性エラストマーを含み、該表面層(I)が直鎖状低密度ポリエチレンを50重量%を超えて含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
表面保護シートは、金属板、樹脂板、ガラス板などの被着体に貼り付けて保護するため等に用いられる。
【0003】
表面保護シートに求められる特性としては、被着体に貼り付けた後の加工や運搬の際に被着体に傷がつかないこと、被着体に貼り付けた際に浮きや剥がれがないこと、粘着剤層が支持基材に対して高い投錨力を有すること、被着体に貼り付けた後に剥離した際に糊残りが発生しないこと、等が挙げられる。
【0004】
表面保護シートの粘着剤層に用い得る粘着剤としては、従来一般に、天然ゴムや変性天然ゴムに粘着付与剤等を配合した天然ゴム系粘着剤が用いられている。しかし、天然ゴム系粘着剤は、耐候性に劣る等の理由により、被着体に貼り付けた後に剥離した際に糊残りが発生することが多い。
【0005】
そこで、被着体に貼り付けた後に剥離した際の糊残りの発生を抑制し得る粘着剤として、スチレン系熱可塑性エラストマーが提案されている(特許文献1〜4)。
【0006】
しかし、スチレン系熱可塑性エラストマーを含む粘着剤層は、従来の支持基材に対する投錨力が不足しているという不都合がある。この投錨力の不足により、結局、被着体に貼り付けた後に剥離した際の糊残りの発生が抑制できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−12956号公報
【特許文献2】特開平9−104848号公報
【特許文献3】特開平5−194923号公報
【特許文献4】特開2003−119435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、支持基材上に粘着剤層を備える表面保護シートであって、粘着剤層が支持基材に対して高い投錨力を有し、被着体に貼り付けた後に剥離した際に糊残りが発生しない、新規な表面保護シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の表面保護シートは、支持基材の最外層の一方である表面層(I)上に粘着剤層を備える表面保護シートであって、該粘着剤層が熱可塑性エラストマーを含み、該表面層(I)が直鎖状低密度ポリエチレンを50重量%を超えて含む。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記表面層(I)の算術平均表面粗さRa1が0.5μm以下である。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記支持基材が2層以上の構造からなり、上記表面層(I)の反対側の最外層として算術平均表面粗さRa2が0.5μm〜2.0μmである表面層(II)を有する。
好ましい実施形態においては、上記支持基材が3層以上の構造からなり、中間層の1つとして機械物性コントロール層を有する。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記表面層(I)の厚みが2μm〜20μmである。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記表面層(II)の厚みが2μm〜20μmである。
【0014】
好ましい実施形態においては、上記粘着剤層中の熱可塑性エラストマーの含有割合が50重量以上である。
【0015】
好ましい実施形態においては、上記表面層(I)中の直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.942g/cm以下である。
【0016】
好ましい実施形態においては、本発明の表面保護シートは、ヘイズ値が20%〜80%である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、支持基材上に粘着剤層を備える表面保護シートであって、粘着剤層が支持基材に対して高い投錨力を有し、被着体に貼り付けた後に剥離した際に糊残りが発生しない、新規な表面保護シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好ましい実施形態による表面保護シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.表面保護シートの全体構成
本発明の表面保護シートは、支持基材と粘着剤層を備える。支持基材は最外層の一方として表面層(I)を有する。粘着剤層は表面層(I)上に備えられる。
【0020】
図1は、本発明の好ましい実施形態による表面保護シートの概略断面図である。表面保護シート100は、支持基材1と粘着剤層2を備える。支持基材1は、最外層の一方として表面層(I)10を有する。支持基材1は、好ましくは、図1に示すように、表面層(I)10の反対側の最外層として表面層(II)20を有し、中間層として機械物性コントロール層30を有する。本発明の表面保護シートは図1に示される具体的態様には限定されず、例えば、中間層を複数有していても良いし、中間層を有していなくても良い。また、支持基材は2層以上の構造からなっていても良いし、3層以上の構造からなっていても良い。
【0021】
本発明の表面保護シートの総厚みは、用途に応じて、任意の適切な厚みに設定し得る。好ましくは10μm〜200μm、より好ましくは15μm〜150μm、さらに好ましくは20μm〜100μmである。
【0022】
本発明の表面保護シートのヘイズ値は、好ましくは20%〜80%であり、好ましくは30%〜75%である。表面保護シートのヘイズ値がこのような範囲であれば、当該表面保護シートは外観調整用途に適した外観を有する。外観調整することにより、スキージの滑り性や気泡抜け性、気泡視認性、高級感、表面保護材視認性(表面保護シートを貼付していることがわかること)等の機能を付与することができる。
【0023】
B.支持基材
支持基材は、多層構造からなり、最外層の一方として表面層(I)を少なくとも有する。支持基材は、好ましくは、表面層(I)の反対側の最外層として表面層(II)を有し、中間層として機械物性コントロール層を有する。
【0024】
B−1.機械物性コントロール層
機械物性コントロール層は、支持基材において、所望の機械的物性が発現されるように適宜選択される。機械物性コントロール層の厚みは、用途に応じて、任意の適切な厚みを採用し得る。機械物性コントロール層の厚みは、好ましくは10μm〜150μmであり、さらに好ましくは20μm〜100μmである。
【0025】
機械物性コントロール層は、任意の適切な材料を採用し得る。好ましくは、熱可塑性樹脂を含む。
【0026】
上記熱可塑性樹脂としては、溶融押出によりフィルム成形し得る限りにおいて、任意の適切なものを採用し得る。この熱可塑性樹脂としては、例えば、プロピレン系ポリマー、ポリエチレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等のポリオレフィン樹脂およびその変性物;α−オレフィンとビニル化合物(例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル)との共重合体;ポリアミド;ポリエステル;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリ塩化ビニル;等が挙げられる。プロピレン系ポリマーとしては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなどが挙げられる。
【0027】
上記熱可塑性樹脂としてホモポリプロピレンを用いる場合、該ホモポリプロピレンの構造は、アイソタクチック、アタクチック、シンジオタクチックのいずれであってもよい。
【0028】
上記熱可塑性樹脂としてポリエチレンを用いる場合、該ポリエチレンは、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンのいずれであってもよい。
【0029】
機械物性コントロール層において、上記熱可塑性樹脂は、単独で含まれていても良いし、2種以上が含まれていても良い。2種以上が含まれる併用形態としては、ブレンドおよび共重合が挙げられる。
【0030】
上記熱可塑性樹脂は市販品を用いてもよい。市販品の熱可塑性樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の商品名「住友ノーブレン」シリーズ(ブロックポリプロピレン)、サンアロマー社製の商品名「PF」、「PM」、「PC」、「PB」シリーズ(ブロックポリプロピレン)等が挙げられる。
【0031】
機械物性コントロール層は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含有し得る。機械物性コントロール層に含有され得る添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、耐熱安定化剤、充填剤、滑剤等が挙げられる。機械物性コントロール層に含有される添加剤の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0032】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。上記紫外線吸収剤の含有量は、表面保護シートの成形時にブリードアウトしない限りにおいて、任意の適切な含有量を採用し得る。代表的には、機械物性コントロール層中の熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部である。
【0033】
上記耐熱安定化剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物およびシアノアクリレート系化合物等が挙げられる。上記耐熱安定化剤の含有量は、表面保護シートの成形時にブリードアウトしない限りにおいて、任意の適切な含有量を採用し得る。代表的には、機械物性コントロール層中の熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部である。
【0034】
上記充填剤としては、例えば、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、マイカ、硫酸バリウム、ウィスカー、水酸化マグネシウム等の無機充填剤が挙げられる。充填剤の平均粒径は、好ましくは、0.1μm〜10μmである。充填剤の含有量は、機械物性コントロール層中の熱可塑性樹脂100重量部に対して、好ましくは、1重量部〜200重量部である。
【0035】
B−2.表面層(I)
表面層(I)の厚みは、好ましくは2μm〜20μmであり、さらに好ましくは2μm〜15μmであり、特に好ましくは2μm〜10μmである。表面層(I)の厚みが上記のような範囲であれば、均一な厚みでの積層が可能となり、成形性やハンドリングが良好となり、表面層(I)に対する粘着剤層の投錨力が十分に発現でき、本発明の表面保護シート全体の機械的物性も良好となる。
【0036】
表面層(I)の厚みは、機械物性コントロール層の厚みを超えないことが好ましく、機械物性コントロール層の厚みの80%以下であることがより好ましく、機械物性コントロール層の厚みの50%以下であることがさらに好ましい。表面層(I)の厚みがこのような範囲であれば、表面層(I)の機械的物性が本発明の表面保護シート全体の機械的物性や、本発明の表面保護シートのハンドリングが良好となる。
【0037】
表面層(I)の算術平均表面粗さRa1は、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.45μm以下であり、より好ましくは0.35μm以下、さらに好ましくは0.30μm以下、特に好ましくは0.25μm以下、特に好ましくは0.20μm以下、最も好ましくは0.15μm以下である。上記表面層(I)の算術平均表面粗さRa1の下限値は、好ましくは0.01μm以上である。
【0038】
表面層(I)の算術平均表面粗さRa1がこのような範囲であれば、得られる表面保護シートにおいて、粘着剤層が支持基材に対してより高い投錨力を有し、被着体に貼り付けた後に剥離した際に糊残りが発生することをより一層抑制できる。
【0039】
表面層(I)は、直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene:LLDPE)を50重量%を超えて含む。表面層(I)中の直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合は、好ましくは60重量%〜100重量%、より好ましくは70重量%〜100重量%、さらに好ましくは80重量%〜100重量%、特に好ましくは90重量%〜100重量%、最も好ましくは95重量%〜100重量%である。表面層(I)中の直鎖状低密度ポリエチレンの含有割合を上記の範囲とすることにより、得られる表面保護シートにおいて、粘着剤層が支持基材に対して高い投錨力を有し、被着体に貼り付けた後に剥離した際に糊残りが発生しない。
【0040】
上記直鎖状低密度ポリエチレンとしては、任意の適切な直鎖状低密度ポリエチレンを採用し得る。例えば、チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造される直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いて製造される直鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。品質や物性等の点で、メタロセン触媒を用いて製造される直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。表面層(I)中の直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、好ましくは0.942g/cm以下であり、より好ましくは0.910g/cm〜0.935g/cmである。
【0041】
上記直鎖状低密度ポリエチレンは市販品を用いてもよい。市販品の直鎖状低密度ポリエチレンの具体例としては、日本ポリエチレン(株)製の商品名「カーネル」シリーズ、「HARMOREX」シリーズ(メタロセン触媒を用いて製造される直鎖状低密度ポリエチレン)、(株)プライムポリマー社製の商品名「エボリュー」シリーズ(メタロセン触媒を用いて製造される直鎖状低密度ポリエチレン)、「ウルトゼックス」シリーズ(チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造される直鎖状低密度ポリエチレン)等が挙げられる。
【0042】
表面層(I)中の直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートは、好ましくは1g/10min〜50g/10min、より好ましくは1.5g/10min〜40g/10min、さらに好ましくは2.0g/10min〜30g/10minである。表面層(I)中の直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートがこのような範囲であれば、得られる表面保護シートにおいて、粘着剤層が支持基材に対してより高い投錨力を有し、被着体に貼り付けた後に剥離した際に糊残りが発生することをより一層抑制できる。また、表面層(I)中の直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレートがこのような範囲であれば、生産性が良好となり、このような範囲より低いと、同一温度、同一圧力時の押出量が低下し、生産性の低下(コストアップや成膜性の低下)につながる。メルトフローレートは、JISK7210に準じた方法により測定することができる。
【0043】
表面層(I)中の直鎖状低密度ポリエチレンは、1種のみでも良いし、2種以上を併用しても良い。
【0044】
表面層(I)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、直鎖状低密度ポリエチレン以外の、任意の適切な樹脂成分が含まれていても良い。例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、などが挙げられる。
【0045】
表面層(I)は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含有し得る。表面層(I)に含有され得る添加剤としては、例えば、B−1項で説明した添加剤が用いられ得る。
【0046】
B−3.表面層(II)
表面層(II)の厚みは、好ましくは2μm〜20μmであり、さらに好ましくは2μm〜15μmであり、特に好ましくは2μm〜10μmである。表面層(II)の厚みが上記のような範囲であれば、所望の表面粗さや所望のヘイズ値が得やすくなり、本発明の表面保護シート全体の機械的物性が良好となり、本発明の表面保護シートのハンドリングが良好となる。
【0047】
表面層(II)の厚みは、機械物性コントロール層の厚みを超えないことが好ましく、機械物性コントロール層の厚みの80%以下であることがより好ましく、機械物性コントロール層の厚みの50%以下であることがさらに好ましい。表面層(II)の厚みがこのような範囲であれば、表面層(II)の機械的物性が本発明の表面保護シート全体の機械的物性や、本発明の表面保護シートのハンドリングが良好となる。
【0048】
表面層(II)の算術平均表面粗さRa2は0.5μm〜2.0μmであり、好ましくは0.8μm〜1.9μmであり、より好ましくは1.0μm〜1.9μmである。
【0049】
表面層(II)の算術平均表面粗さRa2がこのような範囲であれば、外観調整用途に適した外観を有する表面保護シートを得ることができる。
【0050】
表面層(II)は、算術平均表面粗さRa2は0.5μm〜2.0μmとなるような材料であれば、任意の適切な材料から形成されていて良い。表面層(II)としては、好ましくは、下記の形態A〜形態Cを採用し得る。
【0051】
表面層(II)は、好ましくは、ポリエチレンおよびプロピレン系ポリマーを含む(形態A)。
【0052】
プロピレン系ポリマーとしては、例えば、任意の適切なプロピレン系ポリマーを採用し得る。プロピレン系ポリマーとしては、具体的には、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなどが挙げられる。また、プロピレン系ポリマーとして、メタロセン触媒を用いて得られるポリプロピレンを用いても良い。
【0053】
上記ポリエチレンおよびプロピレン系ポリマーは市販品を用いてもよい。
【0054】
市販品のポリエチレンの具体例としては、東ソー社製の商品名「ペトロセン209」、日本ポリエチレン社製の商品名「ノバテックLD LJ803」、「ノバテックLD LC701」、「ノバテックLD LC720」等が挙げられる。
【0055】
市販品のプロピレン系ポリマーの具体例としては、住友化学(株)製の商品名「住友ノーブレン」シリーズ、日本ポリプロ(株)製の商品名「ノバテックPP」シリーズ、日本ポリプロ(株)製の商品名「WINTEC(ウィンテック)」、「WELNEX(ウェルネックス)」シリーズ、サンアロマー社製の商品名「PF」、「PC」、「PM」、「PB」、「PS」、「PH」シリーズ等が挙げられる。
【0056】
上記ポリエチレンとプロピレン系ポリマーとの重量比は、所望のヘイズ値および/または表面粗さに応じて任意の適切な重量比を採用し得る。当該重量比(ポリエチレン:プロピレン系ポリマー)は、好ましくは10:90〜90:10であり、さらに好ましくは20:80〜80:20であり、特に好ましくは30:70〜70:30である。
【0057】
表面層(II)は、好ましくは、プロピレン系ポリマーおよびオレフィン系熱可塑性エラストマーを含む(形態B)。
【0058】
プロピレン系ポリマーとしては、例えば、形態Aで説明したプロピレン系ポリマーが用いられ得る。
【0059】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、いわゆるTPOと称されるオレフィン系熱可塑性エラストマーであれば、任意の適切なオレフィン系熱可塑性エラストマーを採用し得る。オレフィン系熱可塑性エラストマーは、代表的には、ポリエチレンまたはポリプロピレンからなるハードセグメント部分とゴム成分(水素添加(スチレン)ブタジエンラバーやエチレン−プロピレンゴム(EPDM、EPM、EBMなど))であるソフトセグメント部分とを有する。
【0060】
上記プロピレン系ポリマーおよびオレフィン系熱可塑性エラストマーは市販品を用いてもよい。
【0061】
市販品のプロピレン系ポリマーの具体例としては、例えば、形態Aで説明した市販品のプロピレン系ポリマーが挙げられる。
【0062】
市販品のオレフィン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、サンアロマー(株)社製の商品名「キャタロイ」シリーズ等が挙げられる。
【0063】
上記プロピレン系ポリマーとオレフィン系熱可塑性エラストマーとの重量比は、所望のヘイズ値および/または表面粗さに応じて任意の適切な重量比を採用し得る。当該重量比(プロピレン系ポリマー:オレフィン系熱可塑性エラストマー)は、好ましくは20:80〜80:20であり、さらに好ましくは30:70〜70:30であり、特に好ましくは40:60〜60:40である。
【0064】
表面層(II)は、好ましくは、ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む(形態C)。
【0065】
上記ポリエチレンおよびエチレン−酢酸ビニル共重合体は市販品を用いてもよい。
【0066】
市販品のポリエチレンの具体例としては、例えば、形態Aで説明した市販品のポリエチレンが挙げられる。
【0067】
市販品のエチレン−酢酸ビニル共重合体の具体例としては、三井デュポンポリケミカル社製の「エバフレックス」シリーズ等が挙げられる。
【0068】
上記ポリエチレンとエチレン−酢酸ビニル共重合体との重量比は、所望のヘイズ値および/または表面粗さに応じて任意の適切な重量比を採用し得る。当該重量比(ポリエチレン:エチレン−酢酸ビニル共重合体)は、好ましくは20:80〜80:20であり、さらに好ましくは30:70〜80:20であり、特に好ましくは30:70〜70:30である。
【0069】
表面層(II)中に含まれる各種樹脂成分は、1種のみでも良いし、2種以上を併用しても良い。
【0070】
表面層(II)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記形態A〜形態Cで説明した樹脂以外の、任意の適切な樹脂成分が含まれていても良い。
【0071】
表面層(II)中には、長鎖アルキル系剥離剤が含まれていても良い。表面層(II)が長鎖アルキル系剥離剤を含めば、例えば、ロール形態で保管するなどの、粘着テープ同士が重なっている状態における、表面層(II)と粘着剤層との貼り付きを防止することができる。また、表面層(II)をセパレーター層で覆う必要もないので、所望のヘイズ値および表面粗さを有する粘着テープを容易に得ることができる。
【0072】
長鎖アルキル系剥離剤は、長鎖アルキル系高分子を含む。長鎖アルキル系高分子は、任意の適切な加熱溶媒中で、反応性基を有する高分子と、当該反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とを反応させて得ることができる。当該反応時には、必要に応じて触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば、スズ化合物や三級アミン等が挙げられる。
【0073】
上記反応性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、無水マレイン酸基等が挙げられる。当該反応性基を有する高分子としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも好ましくはエチレン−ビニルアルコール共重合体である。なお、エチレン−ビニルアルコール共重合体とはエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分けん化物も含む概念であり、ポリビニルアルコールとはポリ酢酸ビニルの部分けん化物も含む概念である。
【0074】
上記アルキル基の炭素数は、好ましくは8個〜30個、さらに好ましくは12個〜22個である。上記アルキル基の炭素数が、このような範囲であれば、優れた剥離性を有する表面層(II)を得ることができる。このようなアルキル基の具体例としては、ラウリル基、ステアリル基、ベヘニル基等が挙げられる。このようなアルキル基を有する化合物(すなわち、上記反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物)としては、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、ステアリルイソシアネート等のイソシアネート;酸クロライド、アミン、アルコール等が挙げられる。中でも好ましくは、イソシアネートである。
【0075】
長鎖アルキル系高分子の重量平均分子量は、好ましくは10000〜1000000であり、さらに好ましくは20000〜1000000である。長鎖アルキル系高分子の重量平均分子量がこのような範囲であれば、優れた剥離性を有する表面層(II)を得ることができる。
【0076】
表面層(II)中における長鎖アルキル系剥離剤の含有割合は、好ましくは1重量%〜50重量%であり、さらに好ましくは2重量%〜30重量%であり、特に好ましくは5重量%〜20重量%である。含有割合が1重量%より少ない場合、長鎖アルキル系剥離剤を添加した効果が得られないおそれがある。含有割合が50重量%より多い場合、ブリード物が発生するおそれがある。
【0077】
表面層(II)は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含有し得る。表面層(II)に含有され得る添加剤としては、例えば、B−1項で説明した添加剤が用いられ得る。
【0078】
B−4.他の層
本発明の表面保護シートは、必要に応じて任意の適切な、他の層をさらに有していてもよい(図示せず)。他の層は、支持基材における、最外層の一方としての表面層(I)以外の層として有し得る。
【0079】
C.粘着剤層
粘着剤層の厚みは、好ましくは1μm〜300μmであり、さらに好ましくは2μm〜100μmであり、特に好ましくは3μm〜50μmである。
【0080】
粘着剤層のヘイズ値は、本発明の表面保護シートのヘイズ値が20%〜80%となる限りにおいて、任意の適切な値を採用し得る。粘着剤層のヘイズ値は、好ましくは、1%〜80%であり、さらに好ましくは10%〜60%である。粘着剤層のヘイズ値がこのような範囲であれば、外観調整用途に適した外観を有する表面保護シートを得ることができる。
【0081】
粘着剤層は、熱可塑性エラストマーを含む。粘着剤層中の熱可塑性エラストマーの含有割合は、好ましくは50重量%〜100重量%、より好ましくは50重量%〜95重量%、さらに好ましくは50重量%〜90重量%である。粘着剤層中の熱可塑性エラストマーの含有割合が上記範囲に収まることにより、得られる表面保護シートにおいて、被着体に十分に接着し、かつ粘着剤層が支持基材に対してより高い投錨力を有し、被着体に貼り付けた後に剥離した際に糊残りが発生することをより一層抑制できる。
【0082】
熱可塑性エラストマーとしては、任意の適切な熱可塑性エラストマーを採用し得る。例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。熱可塑性エラストマーは、1種のみでも良いし、2種以上を併用しても良い。
【0083】
上記熱可塑性エラストマーとして、好ましくは、スチレン系熱可塑性エラストマーである。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(SEB)等のスチレン系AB型ジブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS))、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS))、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)等のスチレン系ABA型トリブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン(SBSB)等のスチレン系ABAB型テトラブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン−スチレン(SBSBS)等のスチレン系ABABA型ペンタブロック共重合体;これら以上のAB繰り返し単位を有するスチレン系マルチブロック共重合体;スチレン−ブタジエンラバー(SBR)等のスチレン系ランダム共重合体のエチレン性二重結合を水素添加した水素添加物;等が挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーは市販品を用いてもよい。
【0084】
市販品のスチレン系熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、クレイトンポリマー社製の「G1657」(スチレン系エラストマー)などが挙げられる。
【0085】
スチレン系熱可塑性エラストマー以外の熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えば、CEBC(JSR(株)製、ダイナロン6000シリーズ)、SEBC(JSR(株)製、ダイナロン4000シリーズ)が挙げられる。
【0086】
粘着剤層は、スチレン系熱可塑性エラストマー以外に、任意の適切な粘着剤を含んでいても良い。このような粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
【0087】
粘着剤層は、必要に応じて、他の成分を含有し得る。他の成分としては、例えば、オレフィン系樹脂;シリコーン系樹脂;液状アクリル系共重合体;ポリエチレンイミン;脂肪酸アミド;リン酸エステル;一般的な添加剤;等が挙げられる。粘着剤層に含有される他の成分の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。添加剤としては、例えば、粘着付与剤;軟化剤;老化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤;紫外線吸収剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカや酸化亜鉛、酸化チタン等の充填剤または顔料;等が挙げられる。
【0088】
粘着付与剤の配合は接着力の向上に有効である。粘着付与剤の配合量は凝集力の低下による糊残り問題の発生を回避するため、被着体に応じて任意の適切な配合量に適宜決定される。通常、粘着剤を形成する樹脂材料100重量部に対し、好ましくは0〜60重量部、より好ましくは0〜50重量部、さらに好ましくは0〜40重量部である。
【0089】
粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体系や脂環式系共重合体等の石油系樹脂、クマロン−インデン系樹脂、テルぺン系樹脂、テルぺンフェノール系樹脂、重合ロジン等のロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂、キシレン系樹脂またはこれらの水添物などが挙げられる。粘着付与剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0090】
粘着付与剤としては、剥離性や耐候性などの点から、例えば、荒川化学工業社製の「アルコンP−125」などの、水添系の粘着付与剤が好ましい。なお、粘着付与剤は、オレフィン樹脂や熱可塑性エラストマーとのブレンド物として市販されているものを使用することもできる。
【0091】
軟化剤の配合は接着力の向上に有効である。軟化剤としては、例えば、低分子量のジエン系ポリマー、ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエンやそれらの誘導体が挙げられる。該誘導体としては、例えば、片末端または両末端にOH基やCOOH基を有するものを例示できる。具体的には、水添ポリブタジエンジオール、水添ポリブタジエンモノオール、水添ポリイソプレンジオール、水添ポリイソプレンモノオールなどが挙げられる。被着体に対する接着性の向上をより抑制するためには、水添ポリブタジエンや水添ポリイソプレン等のジエン系ポリマーの水添物やオレフィン系軟化剤等が好ましい。具体的には、クラレ社製の「クラプレンLIR−200」等が挙げられる。これら軟化剤は、1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0092】
軟化剤の分子量は、任意の適切な量に適宜設定できる。軟化剤の分子量が小さくなりすぎると粘着層からの被着体への物質移行や重剥離化等の原因となるおそれがあり、一方、軟化剤の分子量が大きくなりすぎると接着力の向上効果に乏しくなる傾向があることから、軟化剤の数平均分子量は、好ましくは5000〜100000、より好ましくは10000〜50000である。
【0093】
軟化剤を使用する場合、その添加量は、任意の適切な量を採用し得る。軟化剤の添加量が多くなりすぎると、高温や屋外暴露時での糊残りが増加する傾向にあることから、粘着剤を形成する樹脂材料100重量部に対して、好ましくは40重量部以下、より好ましくは20重量部以下、さらに好ましくは10重量部以下である。粘着剤を形成する樹脂材料100重量部に対して軟化剤の添加量が40重量部を超えると、高温環境下、屋外暴露下での糊残りが顕著となる。
【0094】
粘着剤層は、必要に応じて、片面または両面が表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ放電処理、紫外線照射処理、火炎処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理等が挙げられる。
【0095】
D.表面保護シートの製造方法
本発明の表面保護シートは、任意の適切な方法で製造することができる。代表的には、共押出しによって支持基材を製造して該支持基材上に粘着剤をホットメルト塗工する方法(製造方法1)、共押出しによって支持基材を製造して該支持基材上に粘着剤が溶解した有機溶媒塗布液または粘着剤が水分散したエマルション液を塗工する方法(製造方法2)、支持基材の各層を形成する材料および粘着剤層を形成する材料を共押出しする方法(製造方法3)、などが挙げられる。
【0096】
共押出し法は、押出し機および共押出し用ダイを用いて、インフレーション法、Tダイ法などに準じて行うことができる。
【0097】
上記製造方法1または2により本発明の表面保護シートを製造する場合、粘着剤層が設けられる支持基材の表面、すなわち表面層(I)の表面に易接着処理を施しても良い。易接着処理としては、例えば、コロナ放電処理、イトロ処理(ケイ酸化炎処理)、アンカーコート処理等が挙げられる。
【0098】
上記製造方法2における有機溶媒としては、任意の適切なものを採用し得る。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル系溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられる。このような有機溶媒は、1種のみで用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0099】
上記製造方法2により本発明の表面保護シートを製造する場合、有機溶媒塗布液中に架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン架橋剤等が挙げられる。
【0100】
上記製造方法2により本発明の表面保護シートを製造する場合の塗工方法は、任意の適切な塗工方法を採用し得る。塗工方法としては、例えば、バーコーター、グラビアコーター、スピンコーター、ロールコーター、ナイフコーター、アプリケーター等を用いる方法が挙げられる。
【0101】
本発明の表面保護シートには剥離剤を含ませても良い。剥離剤としては、例えば、長鎖アルキル系剥離剤やシリコーン系剥離剤が挙げられる。本発明の表面保護シートに剥離剤を含ませる方法としては、例えば、上記製造方法1〜3において、表面層(II)に含ませて共押出する方法や、上記製造方法1〜3において、支持基材を形成した後に、剥離剤を溶剤等に溶解して塗布する方法などが挙げられる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。また、部は重量部を意味する。
【0103】
≪算術平均粗さRa1≫
支持基材の粘着剤層と接しない表面層(II)の表面を、両面テープにてスライドガラスに貼合せた後、支持基材の粘着剤層と接する表面層(I)の表面について、光学式プロファイラー NT9100(Veeco社製)を使用して、Measurement Type:VSI(Infinite Scan)、Objective:10.0X、FOV:1.0X、Modulation Threshold:0.1%の条件で、n=3で測定した。測定後、Terms Removal:Tilt Only(Plane Fit)、Window Filtering:Fourier Filtering、Fourier Filtering(High Pass/Gaussian/High Cut Off 5 /mm)にてデータ解析を行った時に表示される算術平均粗さRaをRa1とした。
≪算術平均粗さRa2≫
支持基材の粘着剤層と接する表面層(I)の表面を、両面テープにてスライドガラスに貼合せた後、支持基材の粘着剤層と接しない表面層(II)の表面について、光学式プロファイラー NT9100(Veeco社製)を使用して、Measurement Type:VSI(Infinite Scan)、Objective:2.5X、FOV:1.0X、Modulation Threshold:0.1%の条件で、n=3で測定した。測定後、Terms Removal:Tilt Only(Plane Fit)、Window Filtering:Noneにてデータ解析を行った時に表示される算術平均粗さRaをRa2とした。
【0104】
≪ヘイズ≫
ヘイズメーター HM−150((株)村上色彩技術研究所社製)を使用して測定した。ヘイズは、JISK7136に準拠し、ヘイズ(%)=Td/Tt × 100(Td:拡散透過率、Tt:全光線透過率)により算出した。
【0105】
≪投錨力≫
表面保護シートの粘着剤層の表面同士を線圧78.5N/cm、速度300mm/分にて貼り合せ、十分に強度がある固定用板(例えば、SUS430BA板)に、両面テープで、表面保護シートの粘着剤層面と反対側の表面を貼付けた。
貼付け30分後にインストロン型引張り試験機((株)島津製作所社製、オートグラフ)を用い、引張り速度300mm/分、180°ピールの条件で、先に粘着剤層同士を貼付した表面保護シートの一方を剥離した。この時、固定用板側の、表面保護シートの支持基材と粘着剤層間における破壊(投錨破壊)が生じたサンプルについて、その破壊に必要な力を投錨力(N/20mm)とした。
また、剥離時に、固定用板側の表面保護シートの支持基材と粘着剤層間以外で破壊が生じたサンプルについては、投錨破壊が生じないと判断した(表1中では、「−」と記載)。
【0106】
≪糊残り≫
被着体として、アクリル板(三菱レーヨン(株)社製、アクリライトL)、ABS板、SUS板(SUS430BA)を使用した。なお、SUS板については、トルエンでその表面を洗浄したものを用いた。
各被着体に、表面保護シートを、線圧78.5N/cm、速度300mm/分にて貼付け、80℃で1日間放置した。
その後、室温に戻し、表面保護シートを速度300mm/分、90°ピールの条件で剥離し、各被着体表面への糊残りの有無を目視にて観察した。
○:糊残りが無し
×:糊残りが有り
【0107】
[実施例1]
支持基材の形成材料として、以下の材料を準備した。
(粘着剤層と接しない表面層(II)の形成材料):ランダムポリプロピレン(日本ポリプロ(株)社製、ノバテックPP EG8)50部と、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)社製、ノバテックLD LJ803)50部との混合物を準備した。
(機械物性コントロール層の形成材料):ブロックポリプロピレン(住友化学(株)社製、ノーブレン KS23f8)を準備した。
(粘着剤層と接する表面層(I)):直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)社製、カーネル KF283)を準備した。
上記の支持基材の形成材料をTダイ溶融共押出により成形し、支持基材(1)を得た。粘着剤層と接しない表面層(II)の厚みは8μm、機械物性コントロール層の厚みは40μm、粘着剤層と接する表面層(I)の厚みは8μmであった。
別途、粘着剤層の形成材料として、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)(クレイトンポリマー社製、G1657)100部と、粘着付与剤(荒川化学工業(株)社製、アルコンP−125)30部との混合物を準備した。
上記の粘着剤層の形成材料を希釈溶剤(トルエン)に溶解し、支持基材(1)に塗布乾燥させ、厚さ5μmの粘着剤層を形成し、表面保護シート(1)を得た。
表面保護シート(1)の評価結果を表1に示した。
【0108】
[実施例2]
粘着剤層と接する表面層(I)の形成材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)社製、カーネル KF283)に代えて、直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)社製、HARMOREX NF464)を用いた以外は、実施例1と同様にして、表面保護シート(2)を得た。
表面保護シート(2)の評価結果を表1に示した。
【0109】
[実施例3]
粘着剤層と接する表面層(I)の形成材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)社製、カーネル KF283)に代えて、直鎖状低密度ポリエチレン((株)プライムポリマー社製、エボリュー SP2120)を用いた以外は、実施例1と同様にして、表面保護シート(3)を得た。
表面保護シート(3)の評価結果を表1に示した。
【0110】
[実施例4]
粘着剤層と接する表面層(I)の形成材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)社製、カーネル KF283)に代えて、直鎖状低密度ポリエチレン((株)プライムポリマー社製、エボリュー SP1071C)を用いた以外は、実施例1と同様にして、表面保護シート(4)を得た。
表面保護シート(4)の評価結果を表1に示した。
【0111】
[実施例5]
粘着剤層と接する表面層(I)の形成材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)社製、カーネル KF283)に代えて、直鎖状低密度ポリエチレン((株)プライムポリマー社製、ウルトゼックス 2021L)を用いた以外は、実施例1と同様にして、表面保護シート(5)を得た。
表面保護シート(5)の評価結果を表1に示した。
【0112】
[比較例1]
粘着剤層と接する表面層(I)の形成材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)社製、カーネル KF283)に代えて、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene:LDPE)(東ソー(株)社製、ペトロセン 186)を用いた以外は、実施例1と同様にして、表面保護シート(C1)を得た。
表面保護シート(C1)の評価結果を表1に示した。
【0113】
[比較例2]
粘着剤層と接する表面層(I)の形成材料として、直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)社製、カーネル KF283)に代えて、高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene:HDPE)(日本ポリエチレン(株)社製、ノバテック HD HF560)を用いた以外は、実施例1と同様にして、表面保護シート(C2)を得た。
表面保護シート(C2)の評価結果を表1に示した。
【0114】
【表1】

【0115】
表1から判るように、本発明の表面保護シートは、粘着剤層が支持基材に対して高い投錨力を有し、被着体に貼り付けた後に剥離した際に糊残りが発生しない。一方、表面層(I)の形成材料として低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンを用いた比較例1〜2では、粘着剤層の支持基材に対する投錨力が実施例に比べて低く、また、被着体の種類によって被着体に貼り付けた後に剥離した際に糊残りが発生している。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の表面保護シートは、電子部品製造用、構造用、自動車用等の各種用途分野において、金属板、樹脂板、ガラス板などの被着体に貼り付けて保護するために好ましく用いることができる。また、外観調整用途、装飾用途、ラベル用途等に用いることもできる。さらに、表面層(II)等を適切に選択することにより、光学部材用、例えばプリズムシートや、塗装鋼板等の表面保護シートとしても好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0117】
1 支持基材
2 粘着剤層
10 表面層(I)
20 表面層(II)
30 機械物性コントロール層
100 表面保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材の最外層の一方である表面層(I)上に粘着剤層を備える表面保護シートであって、
該粘着剤層が熱可塑性エラストマーを含み、
該表面層(I)が直鎖状低密度ポリエチレンを50重量%を超えて含む、
表面保護シート。
【請求項2】
前記表面層(I)の算術平均表面粗さRa1が0.5μm以下である、請求項1に記載の表面保護シート。
【請求項3】
前記支持基材が2層以上の構造からなり、前記表面層(I)の反対側の最外層として算術平均表面粗さRa2が0.5μm〜2.0μmである表面層(II)を有する、請求項1または2に記載の表面保護シート。
【請求項4】
前記支持基材が3層以上の構造からなり、中間層の1つとして機械物性コントロール層を有する、請求項1から3までのいずれかに記載の表面保護シート。
【請求項5】
前記表面層(I)の厚みが2μm〜20μmである、請求項1から4までのいずれかに記載の表面保護シート。
【請求項6】
前記表面層(II)の厚みが2μm〜20μmである、請求項3から5までのいずれかに記載の表面保護シート。
【請求項7】
前記粘着剤層中の熱可塑性エラストマーの含有割合が50重量以上である、請求項1から6までのいずれかに記載の表面保護シート。
【請求項8】
前記表面層(I)中の直鎖状低密度ポリエチレンの密度が0.942g/cm以下である、請求項1から7までのいずれかに記載の表面保護シート。
【請求項9】
ヘイズ値が20%〜80%である、請求項1から8までのいずれかに記載の表面保護シート。


【図1】
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【公開番号】特開2011−116809(P2011−116809A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273108(P2009−273108)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【復代理人】
【識別番号】100121636
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌靖
【Fターム(参考)】