説明

表面処理銅箔、キャリア付き極薄銅箔、フレキシブル銅張積層板及びポリイミド系フレキシブルプリント配線板

【課題】基板の屈折性を確保し、極薄銅箔と基板との接着強度に優れるキャリア付き極薄銅箔を提供すること。
【解決手段】本発明のキャリア付き極薄銅箔は、キャリア箔、剥離層、極薄銅箔がこの順に積層されているキャリア付き銅箔の前記極薄銅箔表面に、Ni量にして0.03〜3.0mg/dm含有するNi層又は/及びNi合金層が形成され、該Ni層又は/及びNi合金層の上にCr量にして0.03〜1.0mg/dm含有するクロメートからなる表面処理層が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア付き極薄銅箔、該キャリア付き極薄銅箔を用いて作成したポリイミド系フレキシブル銅張積層板及びポリイミド系フレキシブルプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、プリント配線板、多層プリント配線板、チップオンフィルム用配線板等の基礎となるプリント配線基板に用いる銅箔は、樹脂基板等に熱圧着する側の表面を粗化面とし、この粗化面で該基板に対するアンカー効果を発揮させ、これにより、該基板と銅箔との接合強度を高めてプリント配線基板としての信頼性を確保している。
この配線板は、各種電子部品の高度集積化に対応して、配線パターンも微細な線幅や線間ピッチ、いわゆるファインパターンプリント配線板としての要求が高まってきている。例えば、半導体パッケージに使用されるプリント配線板の場合は、線幅や線間ピッチがそれぞれ30μm前後という高密度極微細配線を有するプリント配線板の提供が要求されている。このようなファインパターンプリント配線板用の銅箔として、厚い銅箔を用いると、エッチングによる配線回路形成時のエッチング時間が長くなり、その結果、形成される配線パターンの側壁の垂直性が崩れ、形成する配線パターンの配線線幅が狭い場合には断線に結びつくこともある。従って、ファインパターン用途に使われる銅箔としては、厚さ9μm以下の銅箔が要望され、現在では、厚さが5μm程度の銅箔が最も多く使用され、更に薄箔化が求められている。
【0003】
しかし、このような薄い銅箔(以下、極薄銅箔と云うことがある)は機械的強度が弱く、プリント配線基板の製造時に皺や折れ目が発生しやすく、銅箔切れを起こすこともあるため、ファインパターン用途に使われる極薄銅箔としてはキャリアとしての金属箔(以下、「キャリア箔」という)の片面に剥離層を介して極薄銅箔層を直接電着させたキャリア付き極薄銅箔が使用されている。
上述したように、現在多用されている5μm厚さの銅箔はキャリア付き極薄銅箔として提供されている。
キャリア付き極薄銅箔は、キャリア箔の片面に、剥離層と電気銅めっき層がこの順序で形成されたものであり、該電気銅めっき層の表面が粗化面に仕上げた粗化処理層が設けられている。
【0004】
一方、近年、電子機器のメモリ容量の増加に伴い、電子機器では、配線の狭ピッチ化や、高密度実装化が進んでいる。それに伴い、フレキシブルプリント配線板として利用されるフレキシブル銅張積層板に対する使用環境も苛酷化され、機械的物性の要求水準もより高くなってきている。また、最近の高密度実装化に伴い、電子機器の筐体内に収納されるフレキシブルプリント配線板では、屈曲部が増えると共に、屈曲部を形成する2つの面のなす角度が小さくなってきている。このような使用条件を克服する配線基板の基材として機械的物性、耐屈曲性に優れるポリイミドフィルムが採用されるようになってきている。前記屈曲性を向上させ、かつ電子機器の高密度実装を実現するためには、ポリイミドフィルムの厚みを可能な限り薄くする必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、ポリイミドフィルム基板の厚さを薄くすると、極薄銅箔との接着性に問題がでてくる。即ち、基板に銅箔を接着させるには銅箔表面に粗化処理層を設けている。しかし、銅箔表面に設ける現状の粗化処理層をそのまま採用すると、粗化処理層表面の凹凸が薄い基板に食い込むため、この基板を積層すると基板間の絶縁距離が不足することとなる。絶縁距離不足を解消するため銅箔表面の凹凸を小さくすると、基板と銅箔との接着強度が減少し、両者を積層することが困難となる。
このように基板の厚さは薄くしたいが銅箔との接着強度は維持しなければならない、との要望がなされている。
上述したように、ファインパターン化及び優れた屈曲特性を得るためには、極薄銅箔表面の平滑化と粗化処理層の粒子の小径化を行うことが必要であるが、一方で、極薄銅箔と基板間の接着強度を低下させるという問題が発生する。
本発明は、このような問題を解決し、ポリイミドフィルム基板の厚さを薄くし、薄くした基板に極薄銅箔を強固に接着でき、基板の絶縁信頼性を損なわずに、プリント配線として狭ピッチ化、高密度実装化に対処できるキャリア付き極薄銅箔、該極薄銅箔を用いたポリイミド系フレキシブル銅張積層板、並びにポリイミド系フレキシブルプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、基板の屈折性を確保し、極薄銅箔と基板との接着強度に優れるキャリア付き極薄銅箔の開発に成功したものである。
本発明のキャリア付き極薄銅箔は、キャリア箔、剥離層、極薄銅箔がこの順に積層されているキャリア付き銅箔の前記極薄銅箔表面に、Ni量にして0.03〜3.0mg/dm含有するNi層又は/及びNi合金層が形成され、該Ni層又は/及びNi合金層の上にCr量にして0.03〜1.0mg/dm含有するクロメートからなる表面処理層が形成されている。
【0007】
本発明において、前記極薄銅箔表面に平均粒径1μm以下の銅粒による粗化処理層が形成され、該粗化処理層の表面に前記表面処理層が形成されていることが好ましい。
また、前記表面処理層の表面にシランカップリング剤処理が施されていることが好ましい。
【0008】
本発明のポリイミド系フレキシブル銅張積層板は前記キャリア付き極薄銅箔を用いて作成したフレキシブル銅張積層板である。
本発明のポリイミド系フレキシブルプリント配線板は前記ポリイミド系フレキシブル銅張積層板を用いて作成したフレキシブルプリント配線板である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、極薄銅箔とポリイミド系樹脂層との間の接着強度に優れ、絶縁信頼性、配線パターン形成時のエッチング特性に優れ、基板の耐屈曲特性を阻害することのない、優れたキャリア付き極薄銅箔を提供することができる。
また、本発明は前記キャリア付き極薄銅箔を用い、狭ピッチ化、高密度実装化に対処できるフレキシブル銅張積層板、並びにポリイミド系フレキシブル銅張積層板を用いて作成した狭ピッチ、高密度実装フレキシブルプリント配線板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明キャリア付き極薄銅箔において、キャリア箔は、銅、銅合金、アルミ、アルミ合金またはステンレス等の圧延箔もしくは電解銅箔である。キャリア箔の厚みは7μm以上70μm以下が適している。箔の厚さが7μm以下では、キャリア(支持体)としての役割を果たさないため不適であり、70μm以上では生産性等の点で好ましくない。
また、キャリア箔の表面粗さRzは0.1μm〜3μmが好ましい。粗さRzが0.1μm以下では現実的に量産することは困難であり、また3μm以上では、後述するように該キャリア箔表面の粗さが極薄銅箔表面に転写されるためファインパターン化に適さないからである。
【0011】
キャリア箔の少なくとも片面に剥離層を形成する。剥離層はCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、Pまたはこれらの合金またはこれらの水和物で形成することが好ましい。
例えば、二元系合金としては、ニッケルークロム、コバルトークロム、クロム−タングステン、クロム−銅、クロム−鉄、クロムーチタンがあげられる。また、三元系合金としては、ニッケル−鉄−クロム、ニッケル−クロム−モリブデン、ニッケル−クロム−タングステン、ニッケル−クロム−銅、ニッケル−クロム−リン、コバルト−鉄−クロム、コバルト−クロム−モリブデン、コバルト−クロム−タングステン、コバルト−クロム−銅、コバルト−クロム−リン等があげられる。
これらの剥離層を形成する金属及びそれらの水和酸化物は電気めっきにより形成することが好ましい。なお、加熱プレス等高温使用環境における剥離性の安定化を図る上で、剥離層の下地にNi、Feまたはこれらの合金層を設けると効果的である。
【0012】
剥離層の上に極薄銅箔を形成する。極薄銅箔の形成は、硫酸銅、ピロリン酸銅、スルファミン酸銅、シアン化銅等の電解浴を使用して形成する。
なお、極薄銅箔の形成は、剥離層を安定に存在させるためにpH3〜12の間にある銅めっき浴を使用することが好ましい。これらのめっき浴を使用することで剥離層の剥離性を損なわずにめっきを行うことができる。
また、剥離層上へのめっきは、その剥離性ゆえに、均一なめっきを行うことが非常に難しいことから、めっき条件によっては形成される極薄銅箔にピンホールの数が多くなることがある。このような条件のもとでのめっきでは、先ず剥離層の上にストライク銅めっきを行い、ストライクめっき層の上に更に銅をめっきすることで剥離層上に均一なめっきを施すことができ、極薄銅箔のピンホールの数を著しく減少することができる。
【0013】
ストライクめっきで付着させる銅めっき厚は0.001μm〜1μmが好ましく浴種によってその条件はいろいろであるが、電流密度としては、0.1A/dm〜20A/dm、めっき時間は0.1秒以上が好ましい。電流密度が0.1A/dm以下では、剥離層上にめっきを均一にのせることが難しく、また20A/dm以上ではめっき液の金属濃度を薄めているストライクめっきでは、焼けめっきが発生し、均一な銅めっき層を得られないため好ましくない。まためっき時間は、0.1秒以下では十分なめっき層を得るためには短かすぎて好ましくない。ストライクめっきにより剥離層上にピロリン酸銅めっき浴で剥離層の剥離性を損なわないように0.01μm以上の銅めっき層をつけた後、銅めっきを硫酸系浴、スルファミン酸浴、ピロリン酸浴、シアン浴にしてめっきを行い、所望のめっき厚の極薄銅箔とする。なお、光沢めっきを行う場合は市販の光沢剤を使用しても良く、または、メルカプト基を有する化合物、塩化物イオン、並びに分子量10,000以下の低分子量膠又は/及び高分子多糖類を添加した銅めっき液で製箔しても良い。
なお、剥離層上に形成する極薄銅箔の表面は平滑であることが好ましいことから柱状結晶より粒状結晶の方が望ましい。
【0014】
本発明の第1は、キャリア付き極薄銅箔のポリイミド系樹脂基板と接触(接着)する面に、Ni層又は/及びNi合金層(以下Ni層という)を設ける。このNi層を設けることにより、ポリイミド系樹脂基板とキャリア付き極薄銅箔との密着強度を粗化処理なし、または粗化処理の程度を低減(微細化)させて従来通りレベルの接着強度とすることができる。このようなNi層は、電気めっき法、無電解めっき法、蒸着法、スパッタ法などにより形成できる。なお、これらの形成方法の内、Ni層の厚さを制御し易い等の点から電気めっき法が好ましい。電気めっき浴としては、硫酸ニッケルめっき浴、スルファミン酸ニッケルめっき浴、ピロリン酸ニッケルめっき浴等が挙げられる。なお、コストの点からは、安い硫酸ニッケル浴を好ましく使用することができる。
キャリア付き極薄銅箔表面に設けるNi層の被覆量としては、少なすぎると樹脂層の接着強度が低下し、多すぎるとパターン形成のエッチング時にファインパターンの形成が困難になるので、少なくとも金属Ni換算で0.03〜3.0mg/dm、好ましくは0.05〜1.0mg/dmである。
【0015】
本発明の第2はキャリア付き極薄銅箔のポリイミド系樹脂基板と接触(接着)する面にクロメート層を設ける。キャリア付き極薄銅箔表面にクロメート層を設けることによりポリイミド系樹脂基板とキャリア付き極薄銅箔との密着強度を粗化処理なし、または粗化処理の程度を低減(微細化)させて従来通りレベルの接着強度とすることができる。クロメート層は、一般的なクロメート処理により形成することができ、クロメート層の被覆量としては、少なすぎると樹脂層の接着強度が低下し、多すぎるとパターン形成のエッチング時に、ファインパターンの形成が困難となるので、金属Cr換算で0.03〜1.0mg/dm、好ましくは0.05〜0.5mg/dmである。
【0016】
本発明の第3はキャリア付き極薄銅箔のポリイミド系樹脂基板と接触(接着)する面にCr層又は/及びCr合金層(以下Cr層という)を設ける。キャリア付き極薄銅箔表面にCr層を設けることにより、ポリイミド系樹脂基板とキャリア付き極薄銅箔との密着強度を粗化処理なし、または粗化処理の程度を低減(微細化)させて従来通りレベルの接着強度とすることができる。Cr層は、一般的なクロム処理により形成することができる。クロム層の被覆量は少なすぎると樹脂層の接着強度が低下し、多すぎるとパターン形成のエッチング時に、ファインパターンの形成が困難となるので、Cr量換算で0.03〜1.0mg/dm、好ましくは0.05〜0.5mg/dmである。
【0017】
本発明の第4は、キャリア付き極薄銅箔の基板と接触する面にNi層とクロメート層とを設ける。キャリア付き極薄銅箔表面に設けるNi層はNi量にして0.03〜3.0mg/dm含有する層とすることが好ましく、その上に、Cr量にして0.03〜1.0mg/dm含有するクロメート層を設ける。Ni層上にクロメート層を設けることにより、ポリイミド基板との接着強度を適切に向上することができる。
【0018】
本発明の第5はキャリア付き極薄銅箔の基板と接触する面にNi層とCr層とを設ける。該キャリア付き極薄銅箔表面に設けるNi層はNi量にして0.03〜3.0mg/dm含有する層とすることが好ましく、その上にCr量にして0.03〜1.0mg/dm含有するCr層を設ける。Ni層上にCr層を設けることによりポリイミド基板との接着強度を適切に向上することができる。
【0019】
前記銅箔表面にNi層、クロメート層又はCr層を形成したキャリア付き極薄銅箔(以下表面処理キャリア付き極薄銅箔という)表面上には、シランカップリング剤を塗布することが好ましい。シランカップリング剤は、ビニル系シラン、エポキシ系シラン、スチリル系シラン、メタクリロキシ系シラン、アクリロキシ系シラン、アミノ系シラン、ウレイド系シラン、クロロプロピル系シラン、メルカプト系シラン、スルフィド系シラン、イソシアネート系シラン等の一般に市販されているシランカップリング剤を使うことができる。特にポリイミド基板との接着性を高めるには、エポキシ系シラン、アミノ系シランが好適である。
また、表面処理キャリア付き極薄銅箔に防錆処理を施すと良い。防錆処理としてはZn処理又は/及びZn−クロメート処理、ベントリ処理などがある。
【0020】
前記表面処理キャリア付き極薄銅箔を用い、該表面処理キャリア付き極薄銅箔をポリイミド系基板に積層することで、接着強度に優れ、絶縁信頼性、屈曲特性、ファインパターン用途に優れたフレキシブル銅張及び、該銅張積層板を加工したフレキシブルプリント配線板を作製することができる。
【実施例】
【0021】
次に、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。
なお、以下の実施例は、本発明の一般的な説明をする目的で記載するものであり、何ら限定的意味を持つものではない。
【0022】
1、実施例におけるめっき、表面処理条件
(1)キャリア付き極薄銅箔の極薄銅箔作製条件
めっき浴:
Cu :30〜130g/l
SO :80〜140g/l
電流密度 :10〜70a/dm
浴温 :30〜60℃
【0023】
(2)極薄箔表面(剥離層と反対側の面)の粗化処理条件
めっき浴:
Cu :20〜35g/l
SO :110〜160g/l
電流密度 :10〜50a/dm
浴温 :15〜35℃
【0024】
(3)Niめっき処理条件(めっき浴):
NiSO/7HO :220〜360g/l
BO :20〜50g/l
電流密度 :1〜5a/dm
浴温 :15〜35℃
【0025】
(5)Crめっき処理条件(めっき浴):
CrO :10〜300g/l
SO :0.1〜3g/l
電流密度 :1〜10a/dm
浴温 :15〜35℃
【0026】
(6)クロメート処理条件(処理浴):
CrO :0.5〜3g/l
電流密度 :1〜4a/dm
浴温 :15〜30℃
【0027】
(7)シランカップリング剤処理
3-アミノプロピルトリエトキシシラン :0.1〜0.5%溶液を塗布
【0028】
以下の実施例1〜11で使用したキャリア付き極薄銅箔は、キャリア箔として、Tiドラムをカソードとして作成した厚さ35μmの銅箔を使用し、このキャリア銅箔の表面にCr付着量にして0.001〜3.0mg/dmの剥離層を形成し、該剥離層上に厚さ3.0μmの極薄銅箔を形成したものである。
【0029】
実施例1
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、Ni量にして0.2mg/dmのNiめっき処理を施した。
【0030】
実施例2
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、Ni量にして1.0mg/dmのNiめっき処理を施した。
【0031】
実施例3
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、Cr量にして0.1mg/dmのクロメート処理を施した。
【0032】
実施例4
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、Cr量にして0.5mg/dmのクロメート処理を施した。
【0033】
実施例5
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、Cr量にして0.5mg/dmのCrめっき処理を施した。
【0034】
実施例6
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、Ni量にして0.2mg/dmのNiめっき処理を施し、更に金属Cr量にして0.1mg/dmのクロメート処理を施した。
【0035】
実施例7
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、Ni量にして0.2mg/dmのNiめっき処理を施し、更に金属Cr量にして0.1mg/dmのCrめっき処理を施した。
【0036】
実施例8
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、Ni量にして0.4mg/dmのNiめっき処理、金属Cr量にして0.2mg/dmのクロメート処理を施した。
【0037】
実施例9
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、Ni量にして0.4mg/dmのNiめっき処理し、金属Cr量にして0.2mg/dmのクロメート処理を施し、更にシランカップリング剤処理を施した。
【0038】
実施例10
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、粗化銅粒量0.02g/dmの粗化処理を施し、更にNi量にして0.4g/dmのNiめっき処理、金属Cr量にして0.2mg/dmのクロメート処理、シランカップリング剤処理を施した。
【0039】
実施例11
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、粗化銅粒量0.08g/dmの粗化処理を施し、Ni量にして0.4mg/dmのNiめっき処理、金属Cr量にして0.2mg/dmのクロメート処理、シランカップリング剤処理を施した。
【0040】
比較例1
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、金属Cr量にして0.02mg/dmのクロメート処理を施した。
【0041】
比較例2
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、Ni量にして0.01mg/dmのNiめっき処理を施した。
【0042】
比較例3
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、Zn量にして0.1mg/dmのZnめっき処理を施し、更に金属Cr量にして0.02mg/dmのクロメート処理を施した。
【0043】
比較例4
キャリア銅箔付き極薄銅箔の表面(キャリア箔に接着している面と反対側の面)に、Zn量にして0.12mg/dmのZnめっき処理を施し、更に金属Cr量にして0.02mg/dmのクロメート処理を施した。
【0044】
実施例1乃至11及び比較例1乃至4に付き「粗化銅粒子」の平均粒径、表面粗さRz、金属付着量、ピール強度を測定し、その結果を表1、2に示した。
【0045】
表中のピール強度は、表面処理を施したキャリア付き極薄銅箔に、ポリアミック酸ワニスを塗布し、発泡が起こらないように段階的に乾燥した後、窒素雰囲気下において330℃(30分間)でイミド化することにより、25μm厚のポリイミド系フレキシブル銅張積層板を作成し、キャリア付き極薄銅箔にパターン加工を施し、23℃における接着強度(ピール強度)(kN/m)を測定した結果である。
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
各実施例と比較例とを表1、表2で比較する。
Ni量を0.2mg/dm被覆した実施例1、Ni量を1.0mg/dm被覆した実施例2、クロメート層を金属Cr量で0.1mg/dm被覆した実施例3、クロメート層を金属Cr量として0.5mg/dm被覆した実施例4、クロム層を金属Cr量として0.5mg/dm被覆した実施例5、Ni量を0.2mg/dm被覆し、更にクロメート層を金属Cr量として0.1mg/dm被覆した実施例6、Ni量を0.2mg/dm被覆し、更にCr層を金属Cr量として0.1mg/dm被覆した実施例7は比較例1〜3に比較してピール強度が向上している。
【0049】
Ni量を0.4mg/dm被覆し、更にクロメート層を金属Cr量として0.2mg/dm被覆した実施例8は実施例6よりもNi量、金属Cr量を多く被覆したことにより、ピール強度が更に向上した。
【0050】
実施例9は実施例8に対して、さらにシランカップリング剤処理を施したことにより、ピール強度が更に向上した。
【0051】
実施例10は実施例9に対して、粗化処理(粗化銅粒量0.02g/dm)を施したことにより、ピール強度が更に向上した。
【0052】
実施例11は実施例10に対して、粗化処理(粗化銅粒量0.08g/dm)を多く施したことにより、ピール強度が更に向上した。
【0053】
実施例及び比較例で作成した表面処理キャリア付き極薄銅箔に、ポリアミック酸ワニスを塗布し、発泡が起こらないように段階的に乾燥した後、窒素雰囲気下において330℃(30分間)でイミド化することにより、25μm厚のポリイミド系フレキシブル銅張積層板を作成し、キャリア箔を除去した後、極薄銅箔にパターン加工を施した。その結果、実施例で作成したキャリア付き極薄銅箔を表面処理したものでは高ピール強度を維持しつつ、配線ピッチL/S=25/25のファインパターンを形成することができた。また、絶縁信頼性も確保された。
なお、比較例においても実施例と同じ条件で配線ピッチL/S=25/25のファインパターンを形成したが、何れもピール強度が不足し、満足する配線板を作成することができなかった。
【0054】
本発明のキャリア付き極薄銅箔は、極薄銅箔の表面にNi、クロメート、Cr層からなる表面処理を施すことにより、ポリイミド基板との間で高いピール強度を得ることができる。また、低粗度であることより、絶縁信頼性、屈曲特性、ファインパターン用途に優れたフレキシブル銅張積層板用キャリア付き極薄銅箔、また、該キャリア付き極薄銅箔を使用したフレキシブル銅張積層板及びフレキシブルプリント配線板を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア箔、剥離層、極薄銅箔がこの順に積層されているキャリア付き極薄銅箔の前記極薄銅箔表面に、Ni量にして0.03〜3.0mg/dm含有するNi層又は/及びNi合金層が形成され、該Ni層又は/及びNi合金層の上にCr量にして0.03〜1.0mg/dm含有するクロメートからなる表面処理層が形成されているキャリア付き極薄銅箔。
【請求項2】
前記極薄銅箔表面を平均粒径1μm以下の銅粒により粗化処理層が形成され、該粗化処理層の表面に前記表面処理層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のキャリア付き極薄銅箔。
【請求項3】
前記表面処理層の表面にシランカップリング剤処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載のキャリア付き極薄銅箔。
【請求項4】
請求項1に記載のキャリア付き極薄銅箔を用いて作成したポリイミド系フレキシブル銅張積層板。
【請求項5】
請求項4に記載のポリイミド系フレキシブル銅張積層板を用いて作成したポリイミド系フレキシブルプリント配線板。

【公開番号】特開2010−6071(P2010−6071A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191801(P2009−191801)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【分割の表示】特願2005−189763(P2005−189763)の分割
【原出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】