表面凸凹検出装置および表面凸凹検出方法
【課題】効率的に被検査物の表面の凹凸を検出する表面凹凸検査装置を提供すること。
【解決手段】ラインセンサ2、ラインセンサと並行で、複数位相の明暗パターンを生成する照明装置1、ラインセンサで撮像された線状の撮像データをフレーム画像に合成する演算装置5を具備し、同一の撮像対象ラインに対し、照射角度の異なる複数位相の明暗パターンが照明されるように構成される。ラインセンサ2は、同一の撮像対象ラインで反射された照射角度の異なる複数位相の明暗パターンからの光を、該明暗パターンの切り替えと同期して複数の線状の撮像データとして取得する。演算装置5は、ラインセンサで取得された線状の撮像データをフレーム画像に合成する際に、複数位相のうち同一の位相の撮像データ同士を合成することにより位相毎の複数の面画像を生成するとともに、生成した複数の面画像に対して同一の画像処理を施す。
【解決手段】ラインセンサ2、ラインセンサと並行で、複数位相の明暗パターンを生成する照明装置1、ラインセンサで撮像された線状の撮像データをフレーム画像に合成する演算装置5を具備し、同一の撮像対象ラインに対し、照射角度の異なる複数位相の明暗パターンが照明されるように構成される。ラインセンサ2は、同一の撮像対象ラインで反射された照射角度の異なる複数位相の明暗パターンからの光を、該明暗パターンの切り替えと同期して複数の線状の撮像データとして取得する。演算装置5は、ラインセンサで取得された線状の撮像データをフレーム画像に合成する際に、複数位相のうち同一の位相の撮像データ同士を合成することにより位相毎の複数の面画像を生成するとともに、生成した複数の面画像に対して同一の画像処理を施す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物の表面の凹凸を検査する表面凹凸検査技術に係り、特に簡素な構造および処理で被検査物となる塗装面や金属表面の凹凸の有無を検査することが可能な表面凸凹検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査物の表面を検査する従来の表面検査技術としては、例えば、特開2002−257528号公報(特許文献1)、特開2001−349716号公報(特許文献2)、特許第4190636号公報(特許文献3)などに開示されたものがある。
【0003】
(a)特開2002−257528号公報(特許文献1)には、被検査物表面に正弦波状の分布を持つ光を当てて、ラインセンサにより順次撮像したライン状画像を合成し、位相シフト法により三次元画像を再構成するようにした三次元形状測定装置が提案されている。例えば、複数の光源を、それぞれ被検査物表面での格子パターンの位相がπ/2となるように整列し、それぞれの光源を、1ラインを撮像するたびに生成されるライン同期信号毎に、順次点灯・消灯することにより、位相シフトパターンを発生し、画像処理として位相シフト計算を行うことにより表面の凹凸を検出するようにしている。
【0004】
(b)特開2001−349716号公報(特許文献2)には、格子状照明を用いて検体の表面に明部と暗部との境界が明瞭な状態で照明を行い、検体の表面で該境界が通過する近傍を撮像し、凹凸欠陥が存在すると、境界が通過する際に明暗反転部が生じるので、この明暗反転部を検出することにより画像の動きとして凹凸欠陥の有無を判断するようにした表面凹凸検査装置が提案されている。
【0005】
(c)特許第4190636号公報(特許文献3)には、被検査対象物に投射した光の全反射光がラインセンサカメラに達するように配置した明視野用光源と、被検査対象物に投射した光の全反射光がほとんどラインセンサカメラに達しないように配置した暗視野用光源の2つ、もしくはそれ以上の光源で異なる方向から照明し、撮像手段として一台のラインセンサカメラを設け、被検査対象物の移動中に、ラインセンサカメラが1ラインのスキャン行うごとに、暗視野用の光源と明視野用の光源を交互に切り替えることにより、一台のラインセンサカメラで複数の異なる光源の照射により撮影された画像を得、その後、それぞれ別の用途に利用するようにした表面検査装置が提案されている。例えば、明視野用光源により表面に付着した汚れの検出や比較的凹凸の少ない傷の検出を、暗視野用光源により凹凸の大きな傷の検出を行うなど、一回のスキャンで2つの目的の検出を行うようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術は、それぞれ格子状のスリットをもつ照明とラインセンサを組み合わせて、非検査物の撮像を行い、その後の画像処理で表面検査を行うものである。
【0007】
しかしながら、上記従来技術はそれぞれ次のような問題点がある。
(a)特開2002−257528号公報(特許文献1)においては、スリット照明の光は正弦波上の分布を持つ必要があり、かつ、位相シフト法の計算が必要であり、照明構造、画像処理ともに複雑であるという問題点がある。
【0008】
(b)特開2001−349716号公報(特許文献2)においては、明暗パターンを連続的に追跡し、その不連続点「ずれ」を検出することが必要であり、この画像処理も比較的複雑なものとなるという問題点がある。
【0009】
(c)特許第4190636号公報(特許文献3)においては、明視野用光源と暗視野用光源を異なる方向に配置し、これら異なる光源により得た画像を、それぞれ異なる検出目的のために使っているので、異なる光源により得た画像それぞれに対して画像処理を行わなくてはならず、画像処理や制御が比較的多くなるという問題がある。
【0010】
本発明は、これらの問題点に鑑み、実現容易な簡単な構成の照明装置とラインセンサから得られる複数の合成画像に対して同一の画像処理を施すことによって効率的に被検査物の表面の凹凸を検出する表面凹凸検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る表面凹凸検出装置は、上記目的を達成するために以下の構成を備えている。
【0012】
a)撮像用ラインセンサと、前記撮像用ラインセンサと並行の、複数の異なる位相の照明による明暗パターン(以下、複数位相の明暗パターン)を生成する照明装置と、前記撮像用ラインセンサで撮像された線状の撮像データをフレーム画像に合成する演算装置を具備し、同一の撮像対象ラインに対し、照射角度の異なる複数位相の明暗パターンが照明されるように構成され、
前記撮像用ラインセンサは、前記同一の撮像対象ラインで反射された前記照射角度の異なる複数位相の明暗パターンからの光を、該明暗パターンの切り替えと同期して複数の線状の撮像データとして取得し、前記演算装置は、前記撮像用ラインセンサで取得された線状の撮像データをフレーム画像に合成する際に、該複数位相のうち同一の位相の撮像データ同士を合成することにより位相毎の複数の面画像を生成するとともに、生成した複数の面画像に対して同一の画像処理を施すことを特徴としている。
【0013】
b)また、前記照明装置は、複数のライン状LEDと、複数の縞状のパターンを有するフィルタと、前記フィルタを透過した前記複数のライン状LEDからの位相の異なる複数位相の光が照射されるスクリーンとを有しており、前記ラインセンサと並行な明暗パターンは該スクリーン上に生成されることを特徴としている。
【0014】
また、前記同一の画像処理は、画像上の輝度変化を検出する特徴強調フィルタ処理、および二値化処理であることを特徴としている。
【0015】
また、前記合成した複数の面画像に対して同一の画像処理を施し、該画像処理は画像上の輝度変化を抽出し、前記複数の面画像に輝度変化が存在する部分を凸凹状の欠陥と判定するものであることを特徴としている。
【0016】
本発明に係る表面凸凹検出方法は、撮像用ラインセンサと、前記撮像用ラインセンサと並行の、複数位相の明暗パターンを生成する照明装置と、前記撮像用ラインセンサで撮像された線状の撮像データをフレーム画像に合成する演算装置を用いた表面凹凸検出方法であって、同一の撮像対象ラインに対し、照射角度の異なる複数位相の明暗パターンを照明し、前記撮像用ラインセンサにより、前記同一の撮像対象ラインで反射された前記照射角度の異なる複数位相の明暗パターンからの光を、該明暗パターンの切り替えと同期して複数の線状の撮像データとして取得し、前記演算装置により、前記撮像用ラインセンサで取得された線状の撮像データをフレーム画像に合成する際に、該複数位相のうち同一の位相の撮像データ同士を合成することにより位相毎の複数の面画像を生成するとともに、生成した複数の面画像に対して同一の画像処理を施すことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記の如き構成を採用することにより、簡素な構造および処理で被検査物の表面の凹凸を検出できる表面凸凹検出装置および表面凸凹検出方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1−A】本発明に係る表面凹凸検出装置の一実施例を示す図である。
【図1−B】図1−Aの光学系の部分を拡大して示した図である。
【図2】カメラコントロールからカメラに送られるトリガー信号と、照明コントロールから照明装置の各ライン状LEDランプに送られる3相(a)あるいは5相(b)を選択した場合のLED点灯信号のタイミングチャートを示す図である。
【図3】被検査物表面の凹凸部と照明の範囲の関係を示す図である。
【図4】図1−Aにおいて、システム構成の都合によりエンコーダの取り付けができない場合に外部で発信回路やその他何らかの方法で作られたタイミング信号をエンコーダの信号の代わりに使用する場合の一実施例を示す図である。
【図5】位相切り替えスイッチSW8aが3相を選択した場合のフレームメモリ6内の画像の様子を示す図である。
【図6】位相1用ライン状LEDランプ1a〜位相5用ライン状LEDランプ1eをライン状に5列並べて照射する場合の照射面(スクリーン面)における光強度を示す図である。
【図7】位相1用ライン状LEDランプ1a〜位相5用ライン状LEDランプ1eをライン状に5列並べて照射する場合の被検査物における光強度を示す図である。
【図8】縞パターンの光学フィルタの特性の一例を示す図である。
【図9】本発明における微細凸凹検出原理を示す図である。
【図10】被検査物(被測定物)の表面に縞状の明暗パターンが照射されている様子の一例である((a)は、表面に凸凹が無い場合、(b)は表面に凸凹がある場合)。
【図11】被検査物(被測定物)の表面に照射された縞状の明暗パターンをラインセンサで撮像することにより、表面の凸凹の有無を検出する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1−Aおよび図1−Bは、本発明に係る被検査物の表面凹凸検出装置の一実施例を示す図である。
図1−Aにおいて、1は複数ラインあるライン状LEDランプを有する照明装置、2はカメラ(ラインセンサ)、3は被検査物(被測定物)、4は搬送装置、5はコンピュータ演算装置、5aは画像処理部、6はフレームメモリ、7はカメラコントロール、8は照明コントロール、SW8aは照明装置1を構成するライン状LEDランプを何相で使用るするかを選択する切り替えスイッチ、9はロータリーエンコーダ、10はタイミングコントローラを示している。
【0020】
図1−Aに示す表面凹凸検出装置において、搬送装置4の回転ローラーが矢印の方向に回転すると、ベルト上の被検査物3は図の右側に向かって移動する。回転ローラーに取り付けられたロータリーエンコーダ9はローラーの回転と共に回転し、パルス信号を発生する。そのパルス信号はタイミングコントローラ10を経てコンピュータ演算装置5に導かれる。図1−Bは、図1−Aの光学系の部分を拡大して示した図である。
【0021】
コンピュータ演算装置5に導かれたパルス信号は、カメラコントロール7を経て、カメラ2にトリガー信号(図2のトリガー信号参照)として供給される。
【0022】
その一方、同じトリガー信号から照明コントロール8を経てLED点灯信号(図2参照)を作り、照明装置の複数ラインあるライン状LEDランプのうちの所定のライン1本のみを点灯する。
【0023】
図2は、カメラコントロール7からカメラ2に送られるトリガー信号と、照明コントロール8から照明装置の各ライン状LEDランプに送られる3相あるいは5相を選択した場合のLED点灯信号のタイミングチャートを示す図である。
【0024】
図2(a)は、照明コントロールの位相切り替えスイッチSW8aが3相を選択した場合を示し、ライン状LEDランプ1aから1cまで順番に繰り返し点灯される。
【0025】
図2(b)は、位相切り替えスイッチSW8aが5相を選択した場合を示し、ライン状LEDランプ1aから1eまで順番に繰り返し点灯される。勿論、位相切り替えスイッチSW8aが4相を選択した場合ライン状LEDランプ1aから1dまで順番に繰り返し点灯される。
【0026】
図3は、被検査物表面の凹凸部と照明の範囲を示す図である。
同図において、3は被検査物、3a,3b,3cは被検査物の表面の凹凸部(欠陥)、3dは照明の範囲を示している。
【0027】
なお、システム構成の都合によりエンコーダ9の取り付けができない場合は、図4に示すように、外部で発信回路やその他何らかの方法で作られたタイミング信号をエンコーダ9の信号の代わりに使うことも可能である。
【0028】
図4における照明装置1、カメラ(ラインセンサ)2、被検査物(被測定物)3、コンピュータ演算装置5、画像処理部5a、フレームメモリ6、カメラコントロール7、照明コントロール8、および切り替えスイッチSW8aは、図1に示したものと同じ構成であってもよい。
【0029】
《取り込まれた元画像と位相画像との関係》
カメラ2は、トリガー信号1回毎に画像信号1ライン分をコンピュータ演算装置5内のフレームメモリ6に取り込む。
【0030】
図5は、位相切り替えスイッチSW8aが3相を選択した場合のフレームメモリ6内の画像の様子を示している。
同図において、(a)に示す元画像11は、位相1、位相2、位相3、位相1、位相2、位相3、・・・と繰り返される状態で順次取り込まれている状態を示しており、同図(b)〜(d)に示す11a〜11cは位相毎に分割した状態で示している。
【0031】
元画像の位置(x,y)、各位相の画像の位置(i,j)としてその値をImg(x,y)で定義すると、
(a)位相切り替えスイッチSW8aが『3相を選択した場合』
元画像の位置(x,y)と、
位相1画像の位置(i,j)(図の11j0で表示)、及び、その値aの関係は、
x=i,y=3*j+0,a=Img(i,3*j+0)
位相2画像の位置(i,j)(図の11j1で表示)、及び、その値bの関係は、
x=i,y=3*j+1,b=Img(i,3*j+1)
位相3画像の位置(i,j)(図の11j2で表示)、及び、その値cの関係は、
x=i,y=3*j+2,c=Img(i,3*j+2)
で示される。
【0032】
(b)位相切り替えスイッチSW8aが『4相を選択した場合』
元画像の位置(x,y)と、
位相1画像の位置(i,j)、及び、その値aの関係は、
x=i,y=4*j+0,a=Img(i,4*j+0)
位相2画像の位置(i,j)、及び、その値bの関係は、
x=i,y=4*j+1,b=Img(i,4*j+1)
位相3画像の位置(i,j)、及び、その値cの関係は、
x=i,y=4*j+2,c=Img(i,4*j+2)
位相4画像の位置(i,j)及び、その値dの関係は、
x=i,y=4*j+3,d=Img(i,4*j+3)
で示される。
【0033】
(c)位相切り替えスイッチSW8aが『5相を選択した場合』
元画像の位置(x,y)と、
位相1画像の位置(i,j)、及び、その値aの関係は、
x=i,y=5*j+0,a=Img(i,5*j+0)
位相2画像の位置(i,j)、及び、その値bの関係は、
x=i,y=5*j+1,b=Img(i,5*j+1)
位相3画像の位置(i,j)、及び、その値cの関係は、
x=i,y=5*j+2,c=Img(i,5*j+2)
位相4画像の位置(i,j)、及び、その値dの関係は、
x=i,y=5*j+3,d=Img(i,5*j+3)
位相5画像の位置(i,j)、及び、その値eの関係は、
x=i,y=5*j+4,e=Img(i,5*j+4)
で示される。
【0034】
《照明装置の説明》
図6は、位相1用ライン状LEDランプ1a、位相2用ライン状LEDランプ1b、位相3用ライン状LEDランプ1c、位相4用ライン状LEDランプ1d、位相5用ライン状LEDランプ1eを、ライン状に5列並べて照射する場合の照射面(スクリーン面)における光強度を示している。
【0035】
スクリーン1gには、光学フィルタ1fを透過したライン状LEDランプの光が照射され、その強さ(明るさ)は、図の奥から手前(x方向)は均一で、右から左(y方向)は、図6に示したように、両サイドは弱く中央部が明るい台形波状となるように取り付けられている。
【0036】
図6では、位相3用ライン状LEDランプ1cが点灯している状態の明るさを示しており、LEDランプ1aまたは1eが点灯すれば1点鎖線及び点線のように明るさの波が移動する。
【0037】
照明装置1にある光学フィルタ1fはスクリーン1gに密着しても良いし、少し離れていても良い。
【0038】
図7は、位相1用ライン状LEDランプ1a、位相2用ライン状LEDランプ1b、位相3用ライン状LEDランプ1c、位相4用ライン状LEDランプ1d、位相5用ライン状LEDランプ1eを、ライン状に5列並べて照射する場合の被検査物の表面における光強度を示している。
【0039】
光学フィルタ1fを透過したLEDランプの光が照射されたスクリーン上に形成された図6に示す光強度パターンにより、被検査物上には、図に示す波形の明るさパターンの光が照射される。
【0040】
図7では、位相3用ライン状LEDランプ1cが点灯している状態の被検査物上の明るさを示しており、LEDランプ1aまたは1eが点灯した場合は1点鎖線または点線に示すような照明範囲に明るさの波形が移動する。
【0041】
図8は、縞パターンの光学フィルタの特性の一例を示す図で、同図(a)が縞パターンを有する光学フィルタを示し、同図(b)がその透過率を示している。同図に示すように、縞パターンを有する光学フィルタのうち、斜線で示す部分の透過率は低く、斜線以外の部分は透過率が高くなっている。
【0042】
《微細凸凹検出原理の説明》
図9は、本発明における微細凸凹検出原理を説明するための図である。
カメラとスクリーンは法線を挟んで角度θの角度になるように対称的に取付けられており、カメラは注目点P0に焦点が合っているものとする。
【0043】
注目点P0が平面で鏡面反射する被検査物の場合、カメラはスクリーン上のS0点の明るさに比例した値を検出している筈である。
注目点P0が平面に対して角度αだけ傾いたとすると、法線は同じく角度αだけ傾くため、スクリーン上のS0点は角度2αずれた位置Sα点に移動する。
【0044】
注目点P0とスクリーン上のS0点の距離をLとすると、これらの関係式は、
((Sα−S0)/L)=tan(2α)
となり、展開して、
Sα=L*tan(2α)+S0
で表せる。
【0045】
一例として、
L=100mm,α=1°,S0=0mmのとき、Sα=3.49mm
L=100mm,α=−1°,S0=0mmのとき、Sα=−3.49mm
L=100mm,α=2°,S0=0mmのとき、Sα=6.99mm
L=100mm,α=−2°,S0=0mmのとき、Sα=−6.99mm
となる。
【0046】
これはスクリーン全面が一様に同じ明るさで光っていれば、被検査物に微細凸凹がありSαが変化してもカメラで認識される明るさには変化が生じないことは明らかである。
【0047】
しかし、スクリーン上に明暗の縞パターンがあって明るさが位置により変化していれば、スクリーン上の明るさはSα点の位置に依存して異なることになる。
【0048】
被検査物の表面の注目点P0の位置に微細凸凹があり、平面に対して角度αだけ傾いていた場合には、カメラ2はスクリーンのSα点の輝度(明るさ)を受光するので、該カメラ2が受光した光の強度の変化に基づいて被検査物の表面に傾斜(傾き)すなわち凹凸があることを認識することができる。微細凸凹は、通常、連続した角度で変化しているため本方法により検出が容易となる。微細凹凸部において平面に対して角度αだけ傾斜した部分がある場合は、このSα点の位置に依存したスクリーン上の明るさ(光強度)がカメラ2によって認識され、ライン状の画像データとしてフレームメモリ6に取り込まれる。
【0049】
《画像合成と検出フィルタ》
撮像されたフレームメモリ内のライン状の画像データは、上記説明した各位相が揃った画像データ同士(すなわち、位相1の画像データ同士、位相2の画像データ同士、位相3の画像データ同士)が並べられ、それぞれの位相毎に一枚の画像を構成するように成す。例えば照明が三相ならば三枚の画像が得られ、5相ならば5枚の画像が得られる。
【0050】
各位相の画像はそれぞれの位相で同一の反射を撮像したことになり、もし非検査物表面に不連続な凸凹があると、上記説明のように、反射角が変わる分、輝度の変化として撮像されることになる。
【0051】
図10は、被検査物(被測定物)の表面に縞状の明暗パターンが照射されている様子の一例である。
図10(a)は、表面に凸凹が無い場合であり、その位相から照明・撮像しても縞状パターンの明暗の界面は直線であり、歪などの不連続点(線)はない。
図10(b)は、表面に凸凹がある場合で、上記凸凹検出原理の説明で説明したように、反射角の変化に応じた歪などの不連続点・線が生じ、その部分に凸凹状の欠陥があることを示している。
【0052】
図11は、被検査物(被測定物)の表面に照射された縞状の明暗パターンをラインセンサで撮像することにより、表面の凸凹の有無を検出する方法を説明するための図である。
【0053】
同図は、図10(b)に示す表面に凸凹がある場合の縞状の明暗パターンを、ラインセンサで縞状の明暗パターンに並行に直線状にスキャンした場合の線画像を示している。
【0054】
同図に示すように、表面に凸凹がある場合の歪などの不連続点のある縞状の明暗パターンを、ラインセンサで縞状の明暗パターンに並行に直線状に、かつ該不連続点を横切るようにスキャンした場合の撮像結果である線画像には、明暗あるいは輝度の不連続点(線)が生じ、これにより被検査物の表面上に凹凸が存在することを検出することができる。
【0055】
このようにして得られた線画像を、同一の位相で照明・撮像したものを集めて再合成すれば、その凸凹欠陥位置は明暗の異なる領域として反映されることになる。
【0056】
また、単一の位相の照明の場合、縞状の繰り返しパターンの間隔の整数倍の反射での輝度変化が検出できなくなるという問題があったが、本発明では、位相が異なる複数の照明を用いることによりこれを解消することができる。
【0057】
凸凹欠陥の検出は、これら複数の画像に対し、例えば、輝度変化を強調するフィルタやその後の2値化処理を行い、それぞれの画像において輝度の特異部分を抽出すればよい。2値化処理を行えば、凸凹すなわち表面の欠陥は、その有無という情報として得られ、最終的には、この情報を凹凸欠陥なしの良品/凹凸欠陥ありの不良品(OK/NG)の検査結果とすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1:照明装置
1a〜1e:ライン状LEDランプ
1f:光学フィルタ
1g:スクリーン
2:カメラ(ラインセンサ)
3:被検査物(被測定物)
3a〜3c:被検査物の表面の凹凸部(凹凸状の欠陥)
3d:照明の範囲
4:搬送装置
5:コンピュータ演算装置
6:フレームメモリ
7:カメラコントロール
8:照明コントロール
9:ロータリーエンコーダ
10:タイミングコントローラ
11:元画像
11a〜11c:位相毎に分割した画像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開2002−257528号公報
【特許文献2】特開2001−349716号公報
【特許文献3】特許第4190636号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物の表面の凹凸を検査する表面凹凸検査技術に係り、特に簡素な構造および処理で被検査物となる塗装面や金属表面の凹凸の有無を検査することが可能な表面凸凹検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査物の表面を検査する従来の表面検査技術としては、例えば、特開2002−257528号公報(特許文献1)、特開2001−349716号公報(特許文献2)、特許第4190636号公報(特許文献3)などに開示されたものがある。
【0003】
(a)特開2002−257528号公報(特許文献1)には、被検査物表面に正弦波状の分布を持つ光を当てて、ラインセンサにより順次撮像したライン状画像を合成し、位相シフト法により三次元画像を再構成するようにした三次元形状測定装置が提案されている。例えば、複数の光源を、それぞれ被検査物表面での格子パターンの位相がπ/2となるように整列し、それぞれの光源を、1ラインを撮像するたびに生成されるライン同期信号毎に、順次点灯・消灯することにより、位相シフトパターンを発生し、画像処理として位相シフト計算を行うことにより表面の凹凸を検出するようにしている。
【0004】
(b)特開2001−349716号公報(特許文献2)には、格子状照明を用いて検体の表面に明部と暗部との境界が明瞭な状態で照明を行い、検体の表面で該境界が通過する近傍を撮像し、凹凸欠陥が存在すると、境界が通過する際に明暗反転部が生じるので、この明暗反転部を検出することにより画像の動きとして凹凸欠陥の有無を判断するようにした表面凹凸検査装置が提案されている。
【0005】
(c)特許第4190636号公報(特許文献3)には、被検査対象物に投射した光の全反射光がラインセンサカメラに達するように配置した明視野用光源と、被検査対象物に投射した光の全反射光がほとんどラインセンサカメラに達しないように配置した暗視野用光源の2つ、もしくはそれ以上の光源で異なる方向から照明し、撮像手段として一台のラインセンサカメラを設け、被検査対象物の移動中に、ラインセンサカメラが1ラインのスキャン行うごとに、暗視野用の光源と明視野用の光源を交互に切り替えることにより、一台のラインセンサカメラで複数の異なる光源の照射により撮影された画像を得、その後、それぞれ別の用途に利用するようにした表面検査装置が提案されている。例えば、明視野用光源により表面に付着した汚れの検出や比較的凹凸の少ない傷の検出を、暗視野用光源により凹凸の大きな傷の検出を行うなど、一回のスキャンで2つの目的の検出を行うようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術は、それぞれ格子状のスリットをもつ照明とラインセンサを組み合わせて、非検査物の撮像を行い、その後の画像処理で表面検査を行うものである。
【0007】
しかしながら、上記従来技術はそれぞれ次のような問題点がある。
(a)特開2002−257528号公報(特許文献1)においては、スリット照明の光は正弦波上の分布を持つ必要があり、かつ、位相シフト法の計算が必要であり、照明構造、画像処理ともに複雑であるという問題点がある。
【0008】
(b)特開2001−349716号公報(特許文献2)においては、明暗パターンを連続的に追跡し、その不連続点「ずれ」を検出することが必要であり、この画像処理も比較的複雑なものとなるという問題点がある。
【0009】
(c)特許第4190636号公報(特許文献3)においては、明視野用光源と暗視野用光源を異なる方向に配置し、これら異なる光源により得た画像を、それぞれ異なる検出目的のために使っているので、異なる光源により得た画像それぞれに対して画像処理を行わなくてはならず、画像処理や制御が比較的多くなるという問題がある。
【0010】
本発明は、これらの問題点に鑑み、実現容易な簡単な構成の照明装置とラインセンサから得られる複数の合成画像に対して同一の画像処理を施すことによって効率的に被検査物の表面の凹凸を検出する表面凹凸検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る表面凹凸検出装置は、上記目的を達成するために以下の構成を備えている。
【0012】
a)撮像用ラインセンサと、前記撮像用ラインセンサと並行の、複数の異なる位相の照明による明暗パターン(以下、複数位相の明暗パターン)を生成する照明装置と、前記撮像用ラインセンサで撮像された線状の撮像データをフレーム画像に合成する演算装置を具備し、同一の撮像対象ラインに対し、照射角度の異なる複数位相の明暗パターンが照明されるように構成され、
前記撮像用ラインセンサは、前記同一の撮像対象ラインで反射された前記照射角度の異なる複数位相の明暗パターンからの光を、該明暗パターンの切り替えと同期して複数の線状の撮像データとして取得し、前記演算装置は、前記撮像用ラインセンサで取得された線状の撮像データをフレーム画像に合成する際に、該複数位相のうち同一の位相の撮像データ同士を合成することにより位相毎の複数の面画像を生成するとともに、生成した複数の面画像に対して同一の画像処理を施すことを特徴としている。
【0013】
b)また、前記照明装置は、複数のライン状LEDと、複数の縞状のパターンを有するフィルタと、前記フィルタを透過した前記複数のライン状LEDからの位相の異なる複数位相の光が照射されるスクリーンとを有しており、前記ラインセンサと並行な明暗パターンは該スクリーン上に生成されることを特徴としている。
【0014】
また、前記同一の画像処理は、画像上の輝度変化を検出する特徴強調フィルタ処理、および二値化処理であることを特徴としている。
【0015】
また、前記合成した複数の面画像に対して同一の画像処理を施し、該画像処理は画像上の輝度変化を抽出し、前記複数の面画像に輝度変化が存在する部分を凸凹状の欠陥と判定するものであることを特徴としている。
【0016】
本発明に係る表面凸凹検出方法は、撮像用ラインセンサと、前記撮像用ラインセンサと並行の、複数位相の明暗パターンを生成する照明装置と、前記撮像用ラインセンサで撮像された線状の撮像データをフレーム画像に合成する演算装置を用いた表面凹凸検出方法であって、同一の撮像対象ラインに対し、照射角度の異なる複数位相の明暗パターンを照明し、前記撮像用ラインセンサにより、前記同一の撮像対象ラインで反射された前記照射角度の異なる複数位相の明暗パターンからの光を、該明暗パターンの切り替えと同期して複数の線状の撮像データとして取得し、前記演算装置により、前記撮像用ラインセンサで取得された線状の撮像データをフレーム画像に合成する際に、該複数位相のうち同一の位相の撮像データ同士を合成することにより位相毎の複数の面画像を生成するとともに、生成した複数の面画像に対して同一の画像処理を施すことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記の如き構成を採用することにより、簡素な構造および処理で被検査物の表面の凹凸を検出できる表面凸凹検出装置および表面凸凹検出方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1−A】本発明に係る表面凹凸検出装置の一実施例を示す図である。
【図1−B】図1−Aの光学系の部分を拡大して示した図である。
【図2】カメラコントロールからカメラに送られるトリガー信号と、照明コントロールから照明装置の各ライン状LEDランプに送られる3相(a)あるいは5相(b)を選択した場合のLED点灯信号のタイミングチャートを示す図である。
【図3】被検査物表面の凹凸部と照明の範囲の関係を示す図である。
【図4】図1−Aにおいて、システム構成の都合によりエンコーダの取り付けができない場合に外部で発信回路やその他何らかの方法で作られたタイミング信号をエンコーダの信号の代わりに使用する場合の一実施例を示す図である。
【図5】位相切り替えスイッチSW8aが3相を選択した場合のフレームメモリ6内の画像の様子を示す図である。
【図6】位相1用ライン状LEDランプ1a〜位相5用ライン状LEDランプ1eをライン状に5列並べて照射する場合の照射面(スクリーン面)における光強度を示す図である。
【図7】位相1用ライン状LEDランプ1a〜位相5用ライン状LEDランプ1eをライン状に5列並べて照射する場合の被検査物における光強度を示す図である。
【図8】縞パターンの光学フィルタの特性の一例を示す図である。
【図9】本発明における微細凸凹検出原理を示す図である。
【図10】被検査物(被測定物)の表面に縞状の明暗パターンが照射されている様子の一例である((a)は、表面に凸凹が無い場合、(b)は表面に凸凹がある場合)。
【図11】被検査物(被測定物)の表面に照射された縞状の明暗パターンをラインセンサで撮像することにより、表面の凸凹の有無を検出する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1−Aおよび図1−Bは、本発明に係る被検査物の表面凹凸検出装置の一実施例を示す図である。
図1−Aにおいて、1は複数ラインあるライン状LEDランプを有する照明装置、2はカメラ(ラインセンサ)、3は被検査物(被測定物)、4は搬送装置、5はコンピュータ演算装置、5aは画像処理部、6はフレームメモリ、7はカメラコントロール、8は照明コントロール、SW8aは照明装置1を構成するライン状LEDランプを何相で使用るするかを選択する切り替えスイッチ、9はロータリーエンコーダ、10はタイミングコントローラを示している。
【0020】
図1−Aに示す表面凹凸検出装置において、搬送装置4の回転ローラーが矢印の方向に回転すると、ベルト上の被検査物3は図の右側に向かって移動する。回転ローラーに取り付けられたロータリーエンコーダ9はローラーの回転と共に回転し、パルス信号を発生する。そのパルス信号はタイミングコントローラ10を経てコンピュータ演算装置5に導かれる。図1−Bは、図1−Aの光学系の部分を拡大して示した図である。
【0021】
コンピュータ演算装置5に導かれたパルス信号は、カメラコントロール7を経て、カメラ2にトリガー信号(図2のトリガー信号参照)として供給される。
【0022】
その一方、同じトリガー信号から照明コントロール8を経てLED点灯信号(図2参照)を作り、照明装置の複数ラインあるライン状LEDランプのうちの所定のライン1本のみを点灯する。
【0023】
図2は、カメラコントロール7からカメラ2に送られるトリガー信号と、照明コントロール8から照明装置の各ライン状LEDランプに送られる3相あるいは5相を選択した場合のLED点灯信号のタイミングチャートを示す図である。
【0024】
図2(a)は、照明コントロールの位相切り替えスイッチSW8aが3相を選択した場合を示し、ライン状LEDランプ1aから1cまで順番に繰り返し点灯される。
【0025】
図2(b)は、位相切り替えスイッチSW8aが5相を選択した場合を示し、ライン状LEDランプ1aから1eまで順番に繰り返し点灯される。勿論、位相切り替えスイッチSW8aが4相を選択した場合ライン状LEDランプ1aから1dまで順番に繰り返し点灯される。
【0026】
図3は、被検査物表面の凹凸部と照明の範囲を示す図である。
同図において、3は被検査物、3a,3b,3cは被検査物の表面の凹凸部(欠陥)、3dは照明の範囲を示している。
【0027】
なお、システム構成の都合によりエンコーダ9の取り付けができない場合は、図4に示すように、外部で発信回路やその他何らかの方法で作られたタイミング信号をエンコーダ9の信号の代わりに使うことも可能である。
【0028】
図4における照明装置1、カメラ(ラインセンサ)2、被検査物(被測定物)3、コンピュータ演算装置5、画像処理部5a、フレームメモリ6、カメラコントロール7、照明コントロール8、および切り替えスイッチSW8aは、図1に示したものと同じ構成であってもよい。
【0029】
《取り込まれた元画像と位相画像との関係》
カメラ2は、トリガー信号1回毎に画像信号1ライン分をコンピュータ演算装置5内のフレームメモリ6に取り込む。
【0030】
図5は、位相切り替えスイッチSW8aが3相を選択した場合のフレームメモリ6内の画像の様子を示している。
同図において、(a)に示す元画像11は、位相1、位相2、位相3、位相1、位相2、位相3、・・・と繰り返される状態で順次取り込まれている状態を示しており、同図(b)〜(d)に示す11a〜11cは位相毎に分割した状態で示している。
【0031】
元画像の位置(x,y)、各位相の画像の位置(i,j)としてその値をImg(x,y)で定義すると、
(a)位相切り替えスイッチSW8aが『3相を選択した場合』
元画像の位置(x,y)と、
位相1画像の位置(i,j)(図の11j0で表示)、及び、その値aの関係は、
x=i,y=3*j+0,a=Img(i,3*j+0)
位相2画像の位置(i,j)(図の11j1で表示)、及び、その値bの関係は、
x=i,y=3*j+1,b=Img(i,3*j+1)
位相3画像の位置(i,j)(図の11j2で表示)、及び、その値cの関係は、
x=i,y=3*j+2,c=Img(i,3*j+2)
で示される。
【0032】
(b)位相切り替えスイッチSW8aが『4相を選択した場合』
元画像の位置(x,y)と、
位相1画像の位置(i,j)、及び、その値aの関係は、
x=i,y=4*j+0,a=Img(i,4*j+0)
位相2画像の位置(i,j)、及び、その値bの関係は、
x=i,y=4*j+1,b=Img(i,4*j+1)
位相3画像の位置(i,j)、及び、その値cの関係は、
x=i,y=4*j+2,c=Img(i,4*j+2)
位相4画像の位置(i,j)及び、その値dの関係は、
x=i,y=4*j+3,d=Img(i,4*j+3)
で示される。
【0033】
(c)位相切り替えスイッチSW8aが『5相を選択した場合』
元画像の位置(x,y)と、
位相1画像の位置(i,j)、及び、その値aの関係は、
x=i,y=5*j+0,a=Img(i,5*j+0)
位相2画像の位置(i,j)、及び、その値bの関係は、
x=i,y=5*j+1,b=Img(i,5*j+1)
位相3画像の位置(i,j)、及び、その値cの関係は、
x=i,y=5*j+2,c=Img(i,5*j+2)
位相4画像の位置(i,j)、及び、その値dの関係は、
x=i,y=5*j+3,d=Img(i,5*j+3)
位相5画像の位置(i,j)、及び、その値eの関係は、
x=i,y=5*j+4,e=Img(i,5*j+4)
で示される。
【0034】
《照明装置の説明》
図6は、位相1用ライン状LEDランプ1a、位相2用ライン状LEDランプ1b、位相3用ライン状LEDランプ1c、位相4用ライン状LEDランプ1d、位相5用ライン状LEDランプ1eを、ライン状に5列並べて照射する場合の照射面(スクリーン面)における光強度を示している。
【0035】
スクリーン1gには、光学フィルタ1fを透過したライン状LEDランプの光が照射され、その強さ(明るさ)は、図の奥から手前(x方向)は均一で、右から左(y方向)は、図6に示したように、両サイドは弱く中央部が明るい台形波状となるように取り付けられている。
【0036】
図6では、位相3用ライン状LEDランプ1cが点灯している状態の明るさを示しており、LEDランプ1aまたは1eが点灯すれば1点鎖線及び点線のように明るさの波が移動する。
【0037】
照明装置1にある光学フィルタ1fはスクリーン1gに密着しても良いし、少し離れていても良い。
【0038】
図7は、位相1用ライン状LEDランプ1a、位相2用ライン状LEDランプ1b、位相3用ライン状LEDランプ1c、位相4用ライン状LEDランプ1d、位相5用ライン状LEDランプ1eを、ライン状に5列並べて照射する場合の被検査物の表面における光強度を示している。
【0039】
光学フィルタ1fを透過したLEDランプの光が照射されたスクリーン上に形成された図6に示す光強度パターンにより、被検査物上には、図に示す波形の明るさパターンの光が照射される。
【0040】
図7では、位相3用ライン状LEDランプ1cが点灯している状態の被検査物上の明るさを示しており、LEDランプ1aまたは1eが点灯した場合は1点鎖線または点線に示すような照明範囲に明るさの波形が移動する。
【0041】
図8は、縞パターンの光学フィルタの特性の一例を示す図で、同図(a)が縞パターンを有する光学フィルタを示し、同図(b)がその透過率を示している。同図に示すように、縞パターンを有する光学フィルタのうち、斜線で示す部分の透過率は低く、斜線以外の部分は透過率が高くなっている。
【0042】
《微細凸凹検出原理の説明》
図9は、本発明における微細凸凹検出原理を説明するための図である。
カメラとスクリーンは法線を挟んで角度θの角度になるように対称的に取付けられており、カメラは注目点P0に焦点が合っているものとする。
【0043】
注目点P0が平面で鏡面反射する被検査物の場合、カメラはスクリーン上のS0点の明るさに比例した値を検出している筈である。
注目点P0が平面に対して角度αだけ傾いたとすると、法線は同じく角度αだけ傾くため、スクリーン上のS0点は角度2αずれた位置Sα点に移動する。
【0044】
注目点P0とスクリーン上のS0点の距離をLとすると、これらの関係式は、
((Sα−S0)/L)=tan(2α)
となり、展開して、
Sα=L*tan(2α)+S0
で表せる。
【0045】
一例として、
L=100mm,α=1°,S0=0mmのとき、Sα=3.49mm
L=100mm,α=−1°,S0=0mmのとき、Sα=−3.49mm
L=100mm,α=2°,S0=0mmのとき、Sα=6.99mm
L=100mm,α=−2°,S0=0mmのとき、Sα=−6.99mm
となる。
【0046】
これはスクリーン全面が一様に同じ明るさで光っていれば、被検査物に微細凸凹がありSαが変化してもカメラで認識される明るさには変化が生じないことは明らかである。
【0047】
しかし、スクリーン上に明暗の縞パターンがあって明るさが位置により変化していれば、スクリーン上の明るさはSα点の位置に依存して異なることになる。
【0048】
被検査物の表面の注目点P0の位置に微細凸凹があり、平面に対して角度αだけ傾いていた場合には、カメラ2はスクリーンのSα点の輝度(明るさ)を受光するので、該カメラ2が受光した光の強度の変化に基づいて被検査物の表面に傾斜(傾き)すなわち凹凸があることを認識することができる。微細凸凹は、通常、連続した角度で変化しているため本方法により検出が容易となる。微細凹凸部において平面に対して角度αだけ傾斜した部分がある場合は、このSα点の位置に依存したスクリーン上の明るさ(光強度)がカメラ2によって認識され、ライン状の画像データとしてフレームメモリ6に取り込まれる。
【0049】
《画像合成と検出フィルタ》
撮像されたフレームメモリ内のライン状の画像データは、上記説明した各位相が揃った画像データ同士(すなわち、位相1の画像データ同士、位相2の画像データ同士、位相3の画像データ同士)が並べられ、それぞれの位相毎に一枚の画像を構成するように成す。例えば照明が三相ならば三枚の画像が得られ、5相ならば5枚の画像が得られる。
【0050】
各位相の画像はそれぞれの位相で同一の反射を撮像したことになり、もし非検査物表面に不連続な凸凹があると、上記説明のように、反射角が変わる分、輝度の変化として撮像されることになる。
【0051】
図10は、被検査物(被測定物)の表面に縞状の明暗パターンが照射されている様子の一例である。
図10(a)は、表面に凸凹が無い場合であり、その位相から照明・撮像しても縞状パターンの明暗の界面は直線であり、歪などの不連続点(線)はない。
図10(b)は、表面に凸凹がある場合で、上記凸凹検出原理の説明で説明したように、反射角の変化に応じた歪などの不連続点・線が生じ、その部分に凸凹状の欠陥があることを示している。
【0052】
図11は、被検査物(被測定物)の表面に照射された縞状の明暗パターンをラインセンサで撮像することにより、表面の凸凹の有無を検出する方法を説明するための図である。
【0053】
同図は、図10(b)に示す表面に凸凹がある場合の縞状の明暗パターンを、ラインセンサで縞状の明暗パターンに並行に直線状にスキャンした場合の線画像を示している。
【0054】
同図に示すように、表面に凸凹がある場合の歪などの不連続点のある縞状の明暗パターンを、ラインセンサで縞状の明暗パターンに並行に直線状に、かつ該不連続点を横切るようにスキャンした場合の撮像結果である線画像には、明暗あるいは輝度の不連続点(線)が生じ、これにより被検査物の表面上に凹凸が存在することを検出することができる。
【0055】
このようにして得られた線画像を、同一の位相で照明・撮像したものを集めて再合成すれば、その凸凹欠陥位置は明暗の異なる領域として反映されることになる。
【0056】
また、単一の位相の照明の場合、縞状の繰り返しパターンの間隔の整数倍の反射での輝度変化が検出できなくなるという問題があったが、本発明では、位相が異なる複数の照明を用いることによりこれを解消することができる。
【0057】
凸凹欠陥の検出は、これら複数の画像に対し、例えば、輝度変化を強調するフィルタやその後の2値化処理を行い、それぞれの画像において輝度の特異部分を抽出すればよい。2値化処理を行えば、凸凹すなわち表面の欠陥は、その有無という情報として得られ、最終的には、この情報を凹凸欠陥なしの良品/凹凸欠陥ありの不良品(OK/NG)の検査結果とすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1:照明装置
1a〜1e:ライン状LEDランプ
1f:光学フィルタ
1g:スクリーン
2:カメラ(ラインセンサ)
3:被検査物(被測定物)
3a〜3c:被検査物の表面の凹凸部(凹凸状の欠陥)
3d:照明の範囲
4:搬送装置
5:コンピュータ演算装置
6:フレームメモリ
7:カメラコントロール
8:照明コントロール
9:ロータリーエンコーダ
10:タイミングコントローラ
11:元画像
11a〜11c:位相毎に分割した画像
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開2002−257528号公報
【特許文献2】特開2001−349716号公報
【特許文献3】特許第4190636号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像用ラインセンサと、前記撮像用ラインセンサと並行の、複数の異なる位相の照明による明暗パターン(以下、複数位相の明暗パターン)を生成する照明装置と、前記撮像用ラインセンサで撮像された線状の撮像データをフレーム画像に合成する演算装置を具備し、
同一の撮像対象ラインに対し、照射角度の異なる複数位相の明暗パターンが照明されるように構成され、
前記撮像用ラインセンサは、前記同一の撮像対象ラインで反射された前記照射角度の異なる複数位相の明暗パターンからの光を、該明暗パターンの切り替えと同期して複数の線状の撮像データとして取得し、
前記演算装置は、前記撮像用ラインセンサで取得された線状の撮像データをフレーム画像に合成する際に、該複数位相のうち同一の位相の撮像データ同士を合成することにより位相毎の複数の面画像を生成するとともに、生成した複数の面画像に対して同一の画像処理を施すことを特徴とする表面凸凹検出装置。
【請求項2】
前記照明装置は、複数のライン状LEDと、複数の縞状のパターンを有するフィルタと、前記フィルタを透過した前記複数のライン状LEDからの位相の異なる複数位相の光が照射されるスクリーンとを有しており、
前記ラインセンサと並行の複数位相の明暗パターンは該スクリーン上に生成されることを特徴とする請求項1記載の表面凹凸検出装置。
【請求項3】
前記同一の画像処理は、画像上の輝度変化を検出する特徴強調フィルタ処理、および二値化処理であることを特徴とする請求項1または2記載の表面凸凹検出装置。
【請求項4】
前記合成した複数の面画像に対して同一の画像処理を施し、該画像処理は画像上の輝度変化を抽出し、前記複数の面画像に輝度変化が存在する部分を凸凹状の欠陥と判定するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の表面凸凹検出装置。
【請求項5】
撮像用ラインセンサと、前記撮像用ラインセンサと並行の、複数位相の明暗パターンを生成する照明装置と、前記撮像用ラインセンサで撮像された線状の撮像データをフレーム画像に合成する演算装置を用いた表面凹凸検出方法であって、
同一の撮像対象ラインに対し、照射角度の異なる複数位相の明暗パターンを照明し、
前記撮像用ラインセンサにより、前記同一の撮像対象ラインで反射された前記照射角度の異なる複数位相の明暗パターンからの光を、該明暗パターンの切り替えと同期して複数の線状の撮像データとして取得し、
前記演算装置により、前記撮像用ラインセンサで取得された線状の撮像データをフレーム画像に合成する際に、該複数位相のうち同一の位相の撮像データ同士を合成することにより位相毎の複数の面画像を生成するとともに、生成した複数の面画像に対して同一の画像処理を施すことを特徴とする表面凸凹検出方法。
【請求項1】
撮像用ラインセンサと、前記撮像用ラインセンサと並行の、複数の異なる位相の照明による明暗パターン(以下、複数位相の明暗パターン)を生成する照明装置と、前記撮像用ラインセンサで撮像された線状の撮像データをフレーム画像に合成する演算装置を具備し、
同一の撮像対象ラインに対し、照射角度の異なる複数位相の明暗パターンが照明されるように構成され、
前記撮像用ラインセンサは、前記同一の撮像対象ラインで反射された前記照射角度の異なる複数位相の明暗パターンからの光を、該明暗パターンの切り替えと同期して複数の線状の撮像データとして取得し、
前記演算装置は、前記撮像用ラインセンサで取得された線状の撮像データをフレーム画像に合成する際に、該複数位相のうち同一の位相の撮像データ同士を合成することにより位相毎の複数の面画像を生成するとともに、生成した複数の面画像に対して同一の画像処理を施すことを特徴とする表面凸凹検出装置。
【請求項2】
前記照明装置は、複数のライン状LEDと、複数の縞状のパターンを有するフィルタと、前記フィルタを透過した前記複数のライン状LEDからの位相の異なる複数位相の光が照射されるスクリーンとを有しており、
前記ラインセンサと並行の複数位相の明暗パターンは該スクリーン上に生成されることを特徴とする請求項1記載の表面凹凸検出装置。
【請求項3】
前記同一の画像処理は、画像上の輝度変化を検出する特徴強調フィルタ処理、および二値化処理であることを特徴とする請求項1または2記載の表面凸凹検出装置。
【請求項4】
前記合成した複数の面画像に対して同一の画像処理を施し、該画像処理は画像上の輝度変化を抽出し、前記複数の面画像に輝度変化が存在する部分を凸凹状の欠陥と判定するものであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の表面凸凹検出装置。
【請求項5】
撮像用ラインセンサと、前記撮像用ラインセンサと並行の、複数位相の明暗パターンを生成する照明装置と、前記撮像用ラインセンサで撮像された線状の撮像データをフレーム画像に合成する演算装置を用いた表面凹凸検出方法であって、
同一の撮像対象ラインに対し、照射角度の異なる複数位相の明暗パターンを照明し、
前記撮像用ラインセンサにより、前記同一の撮像対象ラインで反射された前記照射角度の異なる複数位相の明暗パターンからの光を、該明暗パターンの切り替えと同期して複数の線状の撮像データとして取得し、
前記演算装置により、前記撮像用ラインセンサで取得された線状の撮像データをフレーム画像に合成する際に、該複数位相のうち同一の位相の撮像データ同士を合成することにより位相毎の複数の面画像を生成するとともに、生成した複数の面画像に対して同一の画像処理を施すことを特徴とする表面凸凹検出方法。
【図1−A】
【図1−B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1−B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−63190(P2012−63190A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206345(P2010−206345)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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