説明

表面実装用接着剤およびそれを含む実装構造体、ならびに実装構造体の製造方法

【課題】表面実装用接着剤を塗布する際の不良を抑制し、塗布安定性を向上させる。
【解決手段】エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、第1フィラーと、第2フィラーとを含み、第2フィラーの比重が、第1フィラーの比重の1.1〜3倍であり、第2フィラーの硬度が、第1フィラーの硬度よりも大きく、第1フィラーは、最大粒径が1〜100μmであり、第2フィラーは、最大粒径が1〜100μmであり、比重が1.7〜4.5であり、かつ修正モース硬度が2〜12であり、第1フィラーと第2フィラーとの重量比が、1:3〜3:1であり、全体としての比重が、1.2〜1.5である表面実装用接着剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気製品の回路基板に電子部品を固定するために用いる表面実装用接着剤、ならびにこの表面実装用接着剤を用いた実装構造体および実装構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化に伴い、回路基板の薄型化や電子部品の実装の高密度化が要求されている。これらの要求に対応するため、チップ部品やCSP(チップサイズパッケージ)、IC等の電子部品の小型化および高性能化、ならびに回路基板の狭ピッチ配線化による微細配線化が行われている。これにより、電子部品の集積度が向上するとともに、電子部品の単価が上昇している。更に、電子部品を実装した回路基板1枚あたりの付加価値も向上することによって、回路基板1枚あたりの単価も上昇する傾向にある。
【0003】
電子部品を回路基板に実装する場合、回路基板の所定の位置に、熱硬化性接着剤を塗布して、その位置に電子部品を搭載する。その後、加熱を行い、熱硬化性接着剤を硬化させて、部品を回路基板の所定の位置に仮止めする。そして、回路基板と電子部品との接合部分にフラックスを塗布し、回路基板を溶融はんだに浸漬する。これにより、電子部品と回路基板とが電気的に接続され、実装構造体が得られる。
【0004】
表面実装用接着剤の塗布方法としては、例えば、エア式や、ネジ式が挙げられる。エア式は、空気圧によりシリンジからノズルへと表面実装用接着剤を供給する方法である。エア式では、空気圧のみで表面実装用接着剤の塗布量を制御するため、シリンジ内における表面実装用接着剤量の減少に伴って、塗布量が変化しやすく不安定である。
【0005】
ネジ式は、空気圧とネジの回転を介して表面実装用接着剤を所定の位置に供給する方法である。ネジ式では、空気圧およびネジによって塗布量を制御するため、塗布量の安定性が向上する。このため、例えば、0.6mmφ程度の塗布径で表面実装用接着剤を塗布する際には、特許文献1のように、ネジ式が一般的に用いられる。
【0006】
特許文献2は、半導体チップ用の絶縁性接着剤において、フィラーを分散させる樹脂の平均分子量や粘度を一定にすることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−135927号公報
【特許文献2】国際公開第99/60622号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1および2の表面実装用接着剤は、フィラーを含んでいる。表面実装用接着剤の塗布は、0.07s/shot程度の高速なサイクルで行われるため、フィラーの物性を最適化しなければ、塗布の際に以下のような塗布不良が生じることがある。
【0009】
第一に、ノズルと回路基板とを接触させて、表面実装用接着剤を回路基板に供給する際、ノズルが回路基板に押圧されるため、供給しようとする表面実装用接着剤の一部が圧力で飛び散ることがある。
【0010】
第二に、表面実装用接着剤がスムーズに回路基板上に滴下されなければ、表面実装用接着剤を所定の位置に塗布した後、ノズルが次の所定の位置に移動する際、表面実装用接着剤の飛び散りや糸曳きが生じる。
【0011】
第三に、ノズルに対する表面実装用接着剤の濡れ性が不充分であると、塗布を続けるうちにノズルに表面実装用接着剤が付着、滞留する場合がある。これにより、塗布量が不安定になったり、ノズルつまりが生じたりする。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するために、表面実装用接着剤を塗布する際の不良の発生を抑制し、安定した塗布性を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題に鑑み、本発明は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、第1フィラーと、第2フィラーとを含み、第2フィラーの比重が、第1フィラーの比重の1.1〜3倍であり、第2フィラーの硬度が、第1フィラーの硬度よりも大きく、第1フィラーは、最大粒径が1〜100μmであり、第2フィラーは、最大粒径が1〜100μmであり、比重が1.7〜4.5であり、かつ修正モース硬度が2〜12であり、第1フィラーと第2フィラーとの重量比が、1:3〜3:1であり、全体としての比重が、1.2〜1.5である、表面実装用接着剤を提供する。
【0014】
本発明では表面実装用接着剤に対して、第1フィラーに加えて、比重および硬度が比較的大きい第2フィラーをさらに混合している。これにより、表面実装用接着剤全体としての比重が大きくなり、表面実装用接着剤をより安定して塗布することができる。さらに、塗布装置が移動する際の表面実装用接着剤の飛び散りや、糸曳き等の不良の発生を抑制し、表面実装用接着剤の塗布量を安定化することができる。
【0015】
第1フィラーは、比重が1.5〜3であることが好ましい。
第1フィラーの修正モース硬度は、1〜3であることが好ましい。
第1フィラーは、タルクであることが好ましく、第2フィラーは、アルミナであることが好ましい。
第1フィラーの平均粒径は、0.5〜50μmであることが好ましい。
第2フィラーの平均粒径は、0.5〜80μmであることが好ましい。
本発明の表面実装用接着剤は、90〜150℃で硬化させる場合に特に有用である。
【0016】
また、本発明は、回路基板と、回路基板の所定の部分に配置された電子部品と、回路基板と電子部品との間に配置された上記の表面実装用接着剤の硬化物と、回路基板と電子部品とを電気的に接続しているはんだ部と、を備えた、実装構造体を提供する。
さらに、本発明は、上記の表面実装用接着剤を、回路基板の所定の部分に供給する工程と、回路基板の所定の部分に、電子部品を配置する工程と、所定の温度で回路基板を加熱して、表面実装用接着剤を硬化させる工程と、を含む、実装構造体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、表面実装用接着剤、特に90〜150℃の低温で硬化する表面実装用接着剤を回路基板に塗布する際の塗布不良を抑制することができる。さらに、ノズルへの表面実装用接着剤の付着を抑制することができるため、回路基板に対する表面実装用接着剤の塗布量を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】表面実装用接着剤の塗布装置の一例を示す概略図である。
【図2】表面実装用接着剤の塗布装置の要部の一部を断面にした図である。
【図3】本発明の表面実装用接着剤を含む実装構造体の一例を示す概略断面図である。
【図4】表面実装用接着剤の塗布における飛び散り不良の一例を示す概略図である。
【図5】表面実装用接着剤の塗布における糸曳き不良の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の表面実装用接着剤は、第1フィラーに加えて、さらに、比重および硬度が比較的大きい第2フィラーを含む。これにより、表面実装用接着剤全体としての比重が大きくなり、表面実装用接着剤をより安定して塗布することができる。さらに、塗布装置が移動する際の表面実装用接着剤の飛び散りや、糸曳き等を抑制し、表面実装用接着剤の塗布量を安定化することができる。
【0020】
表面実装用接着剤が、硬度が大きい第2フィラーのみを含む場合、表面実装用接着剤のチキソ性が低下するため、ノズルからの表面実装用接着剤のたれ落ちが生じやすくなる。一方、表面実装用接着剤が、硬度の低い第1フィラーのみを含む場合、ノズルに表面実装用接着剤が過剰に付着する。
【0021】
本発明の表面実装用接着剤においては、エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、第1フィラーと、第2フィラーとを含み、第2フィラーの比重が、第1フィラーの比重の1.1〜3倍であり、第2フィラーの硬度が、第1フィラーの硬度よりも大きい。第2フィラーの比重は、第1フィラーの比重の1.1〜1.5倍であることが好ましい。
【0022】
表面実装用接着剤は、常温で流動性を有し、所定の温度に加熱することで硬化する。硬化後の表面実装用接着剤は固体であり、一般的に粘弾性を有する。この特性により表面実装用接着剤は、例えば、実装構造体の製造工程において、電子部品を回路基板に固定するための接着剤として好適である。回路基板に表面実装用接着剤を塗布する方法としては、エア式、ネジ式等が挙げられるが、ネジ式が好ましい。
【0023】
図1は、表面実装用接着剤の塗布装置の一例を示す概略図であり、図2は、塗布装置の要部であるネジ式の塗布装置の一部を断面にした図である。図1の塗布装置は、ネジ部1と、シリンジ2と、ノズル3と、チューブ7とを備える。シリンジ2とノズル3とは、チューブ7で接続されている。シリンジ2には、表面実装用接着剤4が充填されており、空気圧によりシリンジ2からチューブ7を介してノズル3へ表面実装用接着剤4が供給される。
【0024】
ノズル3の内部には、回転可能なネジ部1が配置される。シリンジ2から供給された表面実装用接着剤4は、ネジ部1と、ノズル3の内側面との間に充填されている。表面実装用接着剤4は、ネジ部1の回転によってノズル3から吐出され、回路基板5に塗布される。ネジ部1の回転速度を変化させることで、表面実装用接着剤4の吐出量を制御することができる。
【0025】
本発明の表面実装用接着剤の全体としての比重は、1.2〜1.5である。全体としての比重が1.2未満であると、表面実装用接着剤の滴下性が低下するため、安定した塗布が困難となる場合がある。一方、全体としての比重が1.5を超えると、表面実装用接着剤中のフィラーの分散性が低下するため、表面実装用接着剤中で沈殿が生じ、塗布性が低下する場合がある。
【0026】
第1フィラーは、比重が1.5〜3であることが好ましい。第1フィラーの比重が1.5未満であると、表面実装用接着剤の粘度を適度に大きくすることができるが、表面実装用接着剤の滴下性の向上が不充分となる場合がある。
【0027】
第1フィラーの修正モース硬度は、1〜3であることが好ましい。第1フィラーの修正モース硬度が1未満であると、ノズルと表面実装用接着剤との密着性が過剰に大きくなり、安定した塗布が困難となる場合がある。修正モース硬度とは、タルクを1、ダイヤモンドを15としたときの、物質の硬さの尺度を示す値である。
【0028】
第1フィラーの平均粒径(D50)は、0.5〜50μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがより好ましい。平均粒径が0.5μm未満であると、表面実装用接着剤の常温での粘度変化が過剰に大きくなる場合がある。一方、平均粒径が50μmを超えると、塗布する際にノズル先端部につまりを生じるなどして、安定した塗布が困難となる場合がある。第1フィラーの平均粒径を0.5〜50μm、好ましくは0.5〜10μmとすることで、表面実装用接着剤の塗布性および保存安定性が大きく向上し、長期間に亘って安定した塗布を行うことができる。
【0029】
具体的な第1フィラーとしては、例えば、タルク、水酸化アルミニウム、活性炭、カーボンブラック、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、重曹(炭酸水素ナトリウム)、消石灰(水酸化カルシウム)、石膏(硫酸カルシウム)、マイカ等が挙げられる。なかでも、タルクを用いることが好ましい。
【0030】
第2フィラーは、比重が1.7〜4.5であり、3〜4であることがより好ましい。第2フィラーの比重が4.5を超えると、表面実装用接着剤中での分散性が低下し、組成物内でフィラーの沈殿が生じる場合がある。
【0031】
第2フィラーの修正モース硬度は、2〜12である。第2フィラーの修正モース硬度が12を超えると、表面実装用接着剤のチキソ性が低下し、安定した塗布が困難となる場合がある。
【0032】
第2フィラーの平均粒径(D50)は、0.5〜80μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましく、10〜20μmであることが特に好ましい。平均粒径が0.5μm未満であると、表面実装用接着剤の常温での粘度変化が大きくなる場合がある。一方、平均粒径が80μmを超えると、塗布する際にノズル先端部につまりを生じるなどして、安定した塗布が困難となる場合がある。第2フィラーの平均粒径を0.5〜80μm、好ましくは10〜50μm、特に好ましくは10〜20μmとすることで、表面実装用接着剤の塗布性および保存安定性が大きく向上し、長期間に亘って安定した塗布を行うことができる。
【0033】
具体的な第2フィラーとしては、例えば、アルミニウム、アルミナ、活性アルミナ、珪砂、酸化チタン、シリカ等が挙げられる。なかでも、アルミナを用いることが好ましい。
【0034】
第1フィラーおよび第2フィラーの最大粒径は、それぞれ1〜100μmであり、1〜10μmであることがより好ましい。最大粒径が1μm未満であると、表面実装用接着剤の常温での粘度変化が過剰に大きくなる場合がある。一方、最大粒径が100μmを超えると、塗布する際にノズル先端部につまりを生じるなどして、安定した塗布が困難となる場合がある。
【0035】
第1フィラーと第2フィラーとの重量比は、1:3〜3:1であり、1:1.5〜1:1であることが特に好ましい。第1フィラーの第2フィラーに対する重量比が3を超えると、ノズルに表面実装用接着剤が過剰に付着し、塗布量が不安定になる場合がある。一方、第2フィラーの第1フィラーに対する重量比が3を超えると、表面実装用接着剤のチキソ性が低下するため、ノズルからの表面実装用接着剤のたれ落ちが生じやすくなる場合がある。第1フィラーと第2フィラーとの重量比を1:3〜3:1、好ましくは1:1.5〜1:1とすることで、表面実装用接着剤の塗布性および保存安定性が大きく向上し、長期間に亘って安定した塗布を行うことができる。
【0036】
本発明の表面実装用接着剤の硬化物は、20〜120℃、好ましくは30〜100℃、特に好ましくは35〜80℃のガラス転移点(Tg)を有することが好ましい。ガラス転移点が20℃未満であると、電子部品を十分に固定できない場合がある。一方、ガラス転移点が120℃を超えると、回路基板のリペア性が低下する場合がある。
【0037】
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、低温硬化性およびリペア性を向上させる観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物を用いることが好ましい。
【0038】
硬化剤は特に限定されないが、例えば、アミン系硬化剤、チオール系硬化剤等を用いることが好ましい。アミン系硬化剤としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロプレンジアミン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。
【0039】
チオール系硬化剤としては、例えば3−メルカプトプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸トリデシル、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ブタンジオールビスチオグリコレートなどのグリコール酸誘導体から選ばれる化合物などが挙げられる。これらは1種のみ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0040】
硬化剤の量は、エポキシ樹脂100重量部に対して30〜200重量部であることが好ましい。硬化剤の量が30重量部未満であると、表面実装用接着剤の硬化温度が高くなりすぎる場合がある。一方、硬化剤の量が200重量部を超えると、表面実装用接着剤の保存安定性が低下する場合がある。
【0041】
硬化促進剤は特に限定されないが、例えば、イミダゾール系硬化促進剤を用いることが好ましい。イミダゾール系硬化促進剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールまたはこれらの誘導体、イミダゾール誘導体のトリメリット酸塩、イミダゾール誘導体のイソシアヌル酸塩等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
硬化促進剤の量は、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.5〜20重量部であることが好ましい。硬化促進剤の量が0.5重量部未満であると、表面実装用接着剤の硬化温度が高くなりすぎる場合がある。一方、硬化促進剤の量が20重量部を超えると、表面実装用接着剤の保存安定性が低下する場合がある。
【0043】
表面実装用接着剤の調製方法について説明する。
エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤とを混合してベースレジンを調製する。ベースレジンと、第1フィラーと、第2フィラーとを混合、脱泡することで、表面実装用接着剤が得られる。混合、脱泡に用いる手段および装置は特に限定されず、当業者であれば適宜選択することができる。
【0044】
ベースレジンと、フィラー(第1フィラーと第2フィラーの合計)との重量比は、表面実装用接着剤の粘度やチキソ性の観点から、1.5:1〜3:1であることが好ましく、1.5:1〜2:1であることが更に好ましい。ベースレジンと、フィラーとの重量比を1.5:1〜3:1、好ましくは1.5:1〜2:1とすることで、表面実装用接着剤の塗布性および保存安定性が大きく向上し、長期間に亘って安定した塗布を行うことができる。
【0045】
次に、本発明の実装構造体について説明する。図3は、実装構造体の一例を示す概略断面図である。実装構造体は、配線部12を有する回路基板11と、リード部14を有する電子部品13と、回路基板11と電子部品13との間に配置された表面実装用接着剤の硬化物15と、はんだ部16と、を備える。電子部品13は回路基板11上に配置されており、リード部14と配線部12とが対応する位置に配置されている。回路基板11の配線部12と、電子部品13のリード部14とは、はんだ部16によって電気的に接続されている。電子部品としては、例えばCCD素子、フォログラム素子、チップ部品等が挙げられるが、特に限定はない。このような実装構造体は、例えばDVD、携帯電話、ポータブルAV機器、デジタルカメラ等の機器に内蔵されている。上記の表面実装用接着剤は塗布性に優れることから、実装構造体の生産性が大きく向上する。
【0046】
本発明の実装構造体の製造方法は、上記の表面実装用接着剤を、回路基板の所定の部分に供給する工程と、回路基板の所定の部分に、電子部品を配置する工程と、所定の温度で回路基板を加熱して、表面実装用接着剤を硬化させる工程と、を含む。
【0047】
表面実装用接着剤を、回路基板の所定の部分にネジ式等の方法で供給する。表面実装用接着剤を供給した位置に、電子部品を実装機などで配置する。このとき、電子部品のリード部と、回路基板の配線部とが対応するように配置する。その後、リフロー炉等を用いて、所定の温度、例えば90〜150℃で表面実装用接着剤を硬化させて、電子部品を回路基板に固定する。その後、例えばフローはんだ接続によって、電子部品のリード部と、回路基板の配線部とをはんだ接続することで、実装構造体が得られる。
【0048】
90〜150℃のような比較的低い温度で硬化する表面実装用接着剤において、従来と同様のフィラーを用いた場合、塗布装置のノズルがつまりやすくなる。本発明では、フィラーの配合を調整しているため、通常より低い温度、例えば120℃以下、さらには100℃以下で硬化する表面実装用接着剤を用いた場合でも、ノズルのつまりを大きく抑制することができる。よって、本発明の表面実装用接着剤は、低温で硬化させる場合に特に有用である。ノズルのつまりを抑制できる理由の詳細は明らかではないが、第1フィラーと第2フィラーとを含む表面実装用接着剤は適度な比重を有する。これにより、塗布を行う際の落下性に優れ、ノズルに残留物が付着しにくくなるため、つまりを抑制できると考えられる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明を具体的に説明する。
成分として、以下に記載するものを用いて、各実施例および比較例の表面実装用接着剤を調製した。
1.ベースレジン:液状エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤を含む、味の素(株)製のXBM5000
液状エポキシ樹脂:ビスフェノールA型・F型混合樹脂
硬化剤:アミン系
硬化促進剤:イミダゾール系
2.第1フィラー:タルク
3.第2フィラー:アルミナ、シリカゲル、ジルコンまたはシリコンカーバイド
各フィラーの特性を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
ベースレジンとして、エポキシ樹脂、硬化剤および硬化促進剤を含む、味の素(株)製のXBM5000を用いた。ベースレジンと、第1フィラーと、第2フィラーと十分に混合、脱泡して表面実装用接着剤を調製した。
【0052】
第1フィラーには、比較的安価に入手可能であるタルクを用いた。タルクの最大粒径は10μmとした。タルクは、滑石を粉末状に粉砕したものである。滑石は、珪酸塩鉱物の一種であり、組成式はMg3Si410(OH)2で表される。白色または淡緑色を示し、鉱物の中では最も柔らかいものの一つである。タルクの特性を表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
得られた表面実装用接着剤について、以下に記載する特性(a)〜(c)の評価を行った。なお、表面実装用接着剤の塗布条件は、塗布温度35℃、塗布圧力0.14MPa、ネジの回転速度160rpmとした。
【0055】
(a)保存安定日数
E型粘度計(東機産業(株)製のRC−550)を用いて、調製した直後の表面実装用接着剤の粘度N0を測定した。表面実装用接着剤を10±1℃の恒温槽で保存し、同温度で所定の時間経過毎に粘度N1を測定した。N1≧1.2×N0となった時点の保存期間を、表面実装用接着剤の保存安定日数とした。保存安定日数が180日以上であるとき、表面実装用接着剤は好ましい保存日数を有すると判断した。
【0056】
(b)塗布性
φ0.33mmの1点打ちノズルを備えるネジ式の接着剤塗布装置(パナソニックファクトリーソリューションズ(株)製の高速接着剤塗布機、NM−DC15)に、表面実装用接着剤を供給した。10分間放置後、表面実装用接着剤を回路基板に塗布した。塗布は、各表面実装用接着剤毎に10000点行った。塗布径の許容範囲は0.6±0.1mmとした。回路基板はレジスト塗布済基板(100×200mm、厚さ1.6mm)を用い、回路基板1枚当りの塗布点数を1000点とした。これにより、表面実装用接着剤のCp(工程能力指数)値および塗布不良の発生数を求めた。工程能力指数は、{(許容範囲の上限値)−(許容範囲の下限値)}/6×(塗布径の標準偏差)により求めた。
【0057】
表面実装用接着剤の塗布不良数は、以下の方法で求めた。
10分後にノズルから表面実装用接着剤がたれ落ちた場合や、10分後にノズルから表面実装用接着剤を吐出することができなかった(吐出不良)場合、NGとした。
【0058】
飛び散り不良の一例を図4に示す。回路基板20において、目標とする位置21から離れた部分22に表面実装用接着剤が塗布された場合、飛び散り不良とした。
糸曳き不良の一例を図5に示す。回路基板20に塗布された表面実装用接着剤が、目標とする位置21の円周から0.2mm以上はみ出した糸曳き部23を形成した場合、糸曳き不良とした。
Cp値が1.3以上であり、かつ回路基板1枚あたりの塗布不良数が5点以下であるとき、表面実装用接着剤は好ましい塗布性を有すると判断した。
【0059】
(c)連続塗布安定性
各表面実装用接着剤について、(b)と同様の方法で1日毎に10000点塗布を行い、何日間安定して塗布できるかを評価した。回路基板1枚あたりの塗布不良数が5点を超えた時点の塗布日数を記録した。7日間安定して塗布が可能であるとき、表面実装用接着剤は好ましい連続塗布安定性を有すると判断した。
【0060】
各表面実装用接着剤について、上記(a)〜(c)の結果のもとに総合的な評価を行った。具体的には、保存安定日数が180日以上であり、Cp値が2以上であり、かつ連続安定塗布日数が20日以上である場合、総合評価を「◎:very good」とした。
保存安定日数が180日以上であり、Cp値が2.0以上であり、かつ連続安定塗布日数が15日〜19日である場合、総合評価を「○:good」とした。
保存安定日数100日未満、Cp値1.0未満、または連続安定塗布日数7日未満である場合、総合評価を「×:poor」とした。
【0061】
《実施例1〜3および比較例1〜2》
第2フィラーの粒径について検討を行った。
第2フィラーには、アルミナを用い、第1フィラーおよび第2フィラーの重量比を1:2とした。ベースレジンとフィラーの重量比を2:1とした。アルミナの最大粒径を0.1、1、10、100または150とし、それぞれ評価を行なった。結果を表3に示す。
【0062】
【表3】

【0063】
アルミナの最大粒径が0.1μmである場合、表面実装用接着剤の常温での粘度変化が大きくなりやすく、保存安定日数が短くなっていた。また、塗布性も低下していた。一方、第2フィラーの最大粒径が150μmである場合、表面実装用接着剤の粘度変化が小さく、保存安定日数が延びていた。しかし、第2フィラーの粒径が過剰に大きいため、ノズル先端部でつまりを生じ、塗布性が低下した。
【0064】
第2フィラーの最大粒径が1μm、10μmまたは100μmである場合、いずれも表面実装用接着剤の常温での粘度変化を抑制しつつ、ノズル先端部でのつまりも抑制することができた。これらの表面実装用接着剤の保存安定日数はいずれも180日以上であり、かつ塗布性も良好であった。
【0065】
《実施例4および比較例3〜5》
第2フィラーの比重および硬度について検討を行った。
第2フィラーは、最大粒径10μmのアルミナ(実施例4)、シリカゲル(比較例3)、ジルコン(比較例4)またはシリコンカーバイド(比較例5)をそれぞれ用いた。第1フィラーおよび第2フィラーの重量比は1:2とした。ベースレジンと、フィラーの重量比を2:1とし、それぞれ評価を行った。結果を表4に示す。
【0066】
【表4】

【0067】
第2フィラーの比重について検討する。
表面実装用接着剤が、比重が1より小さいシリカゲルを含む場合、表面実装用接着剤の粘度変化が過剰に大きくなっていた。そのため、保存安定日数が極端に短く、安定した塗布ができなかった。
【0068】
表面実装用接着剤が、比重が4.5より大きいジルコン(比重4.7)を含む場合、ベースレジン内での分散性が低下し、表面実装用接着剤中にフィラーの沈殿が生じた。そのため、保存安定日数はある程度延びたものの、安定した塗布ができなかった。
【0069】
表面実装用接着剤が、比重が4.5以下であるアルミナ(比重3.9)を含む場合、分散性を損なうことなく、滴下性が向上していた。そのため、得られた表面実装用接着剤の保存安定日数は180日以上であり、かつ塗布性も良好であった。
【0070】
第2フィラーの硬度について検討する。
表面実装用接着剤が、修正モース硬度が13であるシリコンカーバイドを含む場合、混合した際にフィラー全体として硬度が上がり、チキソ性を保つことができず、ノズルとの濡れ性が低下して表面実装用接着剤のたれ落ちが見られた。そのため、安定した塗布ができなかった。一方、表面実装用接着剤が、修正モース硬度が12であるアルミナを含む場合、チキソ性が適度に保たれるため、ノズルとの濡れ性が低下せず、表面実装用接着剤のたれ落ちが抑制されていた。そのため、保存安定日数が180日以上であり、かつ塗布性の良好な表面実装用接着剤が得られた。
【0071】
ジルコンを含む場合、表面実装用接着剤のチキソ性はある程度保たれていたが、保存安定性(118日)および連続安定塗布日数(5日)はともに不充分であった。
【0072】
これらの結果から、第2フィラーは、比重が1.7〜4.5であり、かつ修正モース硬度が2〜12であることが重要であることが確認された。
【0073】
《実施例5〜8および比較例6、7》
第1フィラーと第2フィラーとの重量比について検討した。
実施例5〜8および比較例6〜7において、ベースレジンとフィラーとの重量比は、いずれも2:1とした。第1フィラーと第2フィラーとの重量比を表5および結果を表5に示す。
【0074】
【表5】

【0075】
第1フィラーと第2フィラーとの重量比を1:4とした場合、チキソ性が低下して表面実装用接着剤のたれ落ちが見られた。第1フィラーと第2フィラーとの重量比を4:1とした場合、ノズルに付着する表面実装用接着剤の量が多くなり、安定した塗布ができなかった。
【0076】
第1フィラーと第2フィラーとの重量比が1:3〜3:1である場合、チキソ性が適度に保たれ、表面実装用接着剤のたれ落ちが抑制されていた。また、ノズルへの表面実装用接着剤の付着も抑制できた。そのため、保存安定日数が180日以上であり、かつ塗布性の良好な表面実装用接着剤が得られた。
【0077】
《比較例8〜10》
表面実装用接着剤全体としての比重について検討した。
第2フィラーにはアルミナ(最大粒径10μm)を用いた。第1フィラーおよび第2フィラーの重量比を1:2とした。ベースレジンと、第1フィラーおよび第2フィラーの合計との重量比は、1:1、2:1、3:1または5:1として、評価を行った。結果を表6に示す。
【0078】
【表6】

【0079】
ベースレジンと、第1フィラーおよび第2フィラーの合計との重量比をそれぞれ3:1、5:1とした場合、表面実装用接着剤全体としての比重はいずれも1.2未満であった。これらの表面実装用接着剤は滴下性が低く、安定した塗布ができなかった。
【0080】
ベースレジンと、第1フィラーおよび第2フィラーの合計との重量比を1:1とした場合、表面実装用接着剤全体としての比重は、1.5を超えていた。得られた表面実装用接着剤は、フィラーの分散性が小さく、表面実装用接着剤中でフィラーの沈殿が生じ、安定した塗布ができなかった。
【0081】
ベースレジンと、第1フィラーおよび第2フィラーの合計との重量比を2:1とした場合、表面実装用接着剤全体としての比重は、1.42であり、1.2以上1.5未満であった(実施例2)。これにより、優れた滴下性および分散性を有し、保存安定日数が180日以上であり、かつ塗布性の良好な表面実装用接着剤が得られた。
【0082】
なお、上記の特性を満たす2種類のフィラーを混合すれば、タルク、アルミナ以外のフィラーにおいても同様な保存安定性、塗布性、連続塗布安定性を有する表面実装用接着剤が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の表面実装用接着剤およびそれを用いた実装構造体は、例えば液晶パネルディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、DVD記録装置、DVD再生装置、音響機器、炊飯器、電子レンジ、照明機器などの家庭用電化製品などに用いることができる。特に、回路基板の組み立てにフローはんだ接続が用いられる様々な電気機器および電子機器の組み立てにおいて、塗布性能が向上し、生産タクトが大きく改善される。
【符号の説明】
【0084】
1 ネジ部
2 シリンジ
3 ノズル
4 表面実装用接着剤
5 回路基板
7 チューブ
10 ネジ式の塗布装置
11 回路基板
12 配線部
13 電子部品
14 リード部
15 表面実装用接着剤の硬化物
16 はんだ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、第1フィラーと、第2フィラーとを含み、
前記第2フィラーの比重が、前記第1フィラーの比重の1.1〜3倍であり、
前記第2フィラーの硬度が、前記第1フィラーの硬度よりも大きく、
前記第1フィラーは、最大粒径が1〜100μmであり、
前記第2フィラーは、最大粒径が1〜100μmであり、比重が1.7〜4.5であり、かつ修正モース硬度が2〜12であり、
前記第1フィラーと前記第2フィラーとの重量比が、1:3〜3:1であり、
全体としての比重が、1.2〜1.5である、表面実装用接着剤。
【請求項2】
前記第1フィラーは、比重が1.5〜3である、請求項1記載の表面実装用接着剤。
【請求項3】
前記第1フィラーの修正モース硬度が、1〜3である、請求項1または2記載の表面実装用接着剤。
【請求項4】
前記第1フィラーが、タルクであり、前記第2フィラーが、アルミナである、請求項1〜3のいずれかに記載の表面実装用接着剤。
【請求項5】
前記第1フィラーの平均粒径が、0.5〜50μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の表面実装用接着剤。
【請求項6】
前記第2フィラーの平均粒径が、0.5〜80μmである、請求項1〜5のいずれかに記載の表面実装用接着剤。
【請求項7】
90〜150℃で硬化する、請求項1〜6のいずれかに記載の表面実装用接着剤。
【請求項8】
回路基板と、
前記回路基板の所定の部分に配置された電子部品と、
前記回路基板と前記電子部品との間に配置された表面実装用接着剤の硬化物と、
前記回路基板と前記電子部品とを電気的に接続しているはんだ部と、を備え、
前記表面実装用接着剤が、請求項1〜7のいずれかに記載の表面実装用接着剤である、実装構造体。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の表面実装用接着剤を、回路基板の所定の部分に供給する工程と、
前記回路基板の所定の部分に、電子部品を配置する工程と、
所定の温度で前記回路基板を加熱して、前記表面実装用接着剤を硬化させる工程と、を含む、実装構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−295968(P2009−295968A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106741(P2009−106741)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】