表面性状測定機
【課題】傾き角度を任意の角度に変更した場合でも正確な測定ができ、メモリ容量も少なく、新たなスタイラスの使用でもユーザに対する作業負担を軽減できる表面性状測定機。
【解決手段】質量の異なる第2測定アーム24Bが取り付けられた測定アーム24の種類毎に、測定アーム全体の質量M、支点(回転軸23)からスタイラス26Bまでのアーム長L、測定アームが水平姿勢時において測定アームの水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを記憶した測定アームテーブルと、測定アーム指定手段と、検出手段の傾斜角度θ1を検出する傾斜角度検出器と、指定された測定アームのM、L、GxおよびGzを測定アームテーブルから読み出し、これらと傾斜角度検出器で検出された傾斜角度θ1とから、測定アームの水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差を演算し、この差を補正値として測定力を調整する制御装置とを備える。
【解決手段】質量の異なる第2測定アーム24Bが取り付けられた測定アーム24の種類毎に、測定アーム全体の質量M、支点(回転軸23)からスタイラス26Bまでのアーム長L、測定アームが水平姿勢時において測定アームの水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを記憶した測定アームテーブルと、測定アーム指定手段と、検出手段の傾斜角度θ1を検出する傾斜角度検出器と、指定された測定アームのM、L、GxおよびGzを測定アームテーブルから読み出し、これらと傾斜角度検出器で検出された傾斜角度θ1とから、測定アームの水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差を演算し、この差を補正値として測定力を調整する制御装置とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性状測定機に関する。詳しくは、被測定物の表面に接触させるスタイラスを有する測定アームの姿勢に関わらず測定力を一定にできる表面性状測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面にスタイラスを接触させた状態において、スタイラスを被測定物の表面に沿って移動させ、このとき、被測定物の表面形状や表面粗さによって生じるスタイラスの変位(スタイラスの移動方向に対して直交する方向の変位)を検出し、このスタイラスの変位から被測定物の表面形状や表面粗さ等の表面性状を測定する表面性状測定機が知られている。
【0003】
表面性状測定機のなかには、被測定物の各種形状の測定部位を測定できるように、予め各種形状のスタイラス(測定アーム)を用意しておき、被測定物の測定部位形状に応じて最適なスタイラスに交換して測定できるようにするとともに、被測定物の傾斜面を測定できるように、スタイラス(測定アーム)を含む検出器本体を傾斜できるようにし、更に、これらの組み合わせに適した測定力に自動的に調整できるようにしたものが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、スタイラスホルダの種類、スタイラスの種類、測定方向、検出器本体の傾き角度の組み合わせ毎に測定力指令値をテーブルに予め記憶させておき、スタイラスホルダやスタイラスが交換されたとき、ユーザが、スタイラスホルダの種類、スタイラスの種類、測定方向を指定し、これらの指定結果と角度検出手段で検出された検出器本体の傾き角度に対応する測定力指令値をテーブルから読み出し、この読み出した測定力指令値に従って測定力を自動的に調整する技術が示されている。
【0005】
これにより、スタイラスホルダの種類やスタイラスの種類の組み合わせだけでなく、測定方向(例えば、上向き、下向き)や本体の傾き角度を含めて最適な測定力に調整することができる。すなわち、スタイラスやホルダを交換したり、測定方向や角度が変化しても、所定の測定力に調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3992853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、スタイラスホルダの種類、スタイラスの種類、検出器本体の傾き角度の組み合わせ毎に予め測定力指令値をテーブル化し、メモリに記憶しておく必要がある。
被測定物の形状によっては、テーブルに登録された傾き角度以外で使用したい場合があるが、特許文献1に記載の技術では、使用したい傾き角度での測定力指令値が登録されていないため、正確な測定が行えない。
【0008】
また、検出器本体の傾き角度を細かく指定可能にすると、必要とされるメモリ容量が著しく増大する。
さらには、未登録のスタイラスを使用したい場合、ユーザが、使用したい新たなスタイラスと、スタイラスホルダの種類、測定方向、傾き角度毎の測定力指令値を求めて登録しておかなければならないため、ユーザの作業負担が大きい。
【0009】
本発明の目的は、検出手段移動機構の傾き角度を任意の角度に変更した場合でも正確な測定を行うことができ、しかも、メモリ容量も少なくでき、更に、新たなスタイラスを使用したい場合でもユーザに対する作業負担を軽減できる表面性状測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の表面性状測定機は、本体に支持軸を支点として円弧運動可能に支持され先端にスタイラスを有する測定アーム、前記測定アームの円弧運動量を検出する変位検出器、および、前記測定アームを円弧運動方向へ付勢し前記スタイラスに測定力を付与する測定力付与手段を有する検出手段と、被測定物を載置するステージと、前記測定アームの軸方向へ前記検出手段を移動させる検出手段移動機構を含み、前記検出手段と前記ステージとを相対移動させる相対移動機構と、前記検出手段移動機構の移動方向を前記ステージに対して傾斜させる検出手段傾斜機構とを備え、前記スタイラスを被測定物の表面に接触させた状態において、前記相対移動機構により前記検出手段と前記ステージとを相対移動させながら前記変位検出器によって前記測定アームの円弧運動量を検出し、この円弧運動量から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機において、前記測定アームは、前記本体に前記支持軸を支点として円弧運動可能に支持された第1測定アームと、前記第1測定アームの先端に着脱機構を介して着脱可能に設けられ先端に前記スタイラスを有する第2測定アームとを含んで構成され、質量の異なる前記第2測定アームが取り付けられた前記測定アームの種類毎に、当該測定アーム全体の質量M、前記支点から前記スタイラスまでのアーム長L、前記測定アームが水平姿勢時において前記測定アームの水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを記憶した測定アームテーブルと、前記測定アームの種類を指定する測定アーム指定手段と、前記検出手段傾斜機構によって傾斜された前記検出手段の傾斜角度情報を与える傾斜角度情報付与手段と、前記測定アーム指定手段で指定された測定アームに関する質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを前記測定アームテーブルから読み出し、これらの情報と前記傾斜角度情報付与手段から与えられる傾斜角度情報とから、測定アームの水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差を演算し、この差を補正値として前記測定力付与手段の測定力を調整する制御装置とを備えた、ことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、被測定物の表面形状に対応して、第2測定アームを交換したのち、測定アーム指定手段によって、交換された第2測定アームを含む測定アームが指定されると、制御装置において、指定された測定アームに関する質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzが測定アームテーブルから読み出され、これらの情報と傾斜角度情報付与手段から与えられる傾斜角度情報とから、測定アームの水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差が演算され、この差が補正値として測定力付与手段の測定力が調整される。
【0012】
従って、測定アームの種類を指定すれば、質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gz、傾斜角度情報から、最適な測定力を演算により求めることができるから、どのような角度をもった被測定物の測定面でも、正確な測定を行うことができる。
また、必要とされるメモリ容量も、第2測定アームを含む測定アームの1種類について、パラメータ1セット分(測定アーム全体の質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gz)だけで済むから、メモリ容量も少なくできる。
さらに、新たな測定アームを使用したい場合でも、測定力指令値の登録は不要で、比較的ユーザでも求めることが簡単なパラメータの登録だけで済むから、ユーザに対する作業負担を軽減できる。
【0013】
本発明の表面性状測定機において、前記傾斜角度情報付与手段は、前記検出手段の傾斜角度を検出する傾斜角度検出器によって構成されている、ことが好ましい。
このような構成によれば、検出手段の傾斜角度が傾斜角度検出器によって自動的に検出されるから、ユーザの負担を軽減できる。つまり、ユーザが検出手段の傾斜角度を入力手段から手動入力しなくてもよいので、ユーザの負担を軽減できる。
【0014】
本発明の表面性状測定機において、前記制御装置は、前記測定アーム全体の質量M、前記アーム長L、前記水平方向重心位置Gx、前記上下方向重心位置Gz、前記検出手段の傾斜角度θ1から、前記測定アームの水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差を
差=M×L×(Gx−Gx’)
から求める、ことが好ましい。
ただし、Gx’=√(Gx2+Gz2)×cos(θ3)
θ3=θ2−θ1
θ2=Arctan(Gz÷Gx)
このような構成によれば、測定アーム全体の質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gx、上下方向重心位置Gz、検出手段の傾斜角度θ1から、測定アームの水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差が自動的に演算で求められるから、適切な測定力で測定を実行することができる。
【0015】
本発明の表面性状測定機において、前記測定アーム指定手段は、前記第1測定アームに対して前記第2測定アームが交換された際に、交換された前記第2測定アームを含む測定アーム全体の質量を求める質量算出手段によって構成され、前記制御装置は、前記質量算出手段によって算出された質量に対応する測定アームに関するアーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを前記測定アームテーブルから読み出して演算する、ことが好ましい。
このような構成によれば、第1測定アームに対して第2測定アームが交換されると、交換された第2測定アームを含む測定アーム全体の質量が質量算出手段によって求められる。すると、制御装置において、質量算出手段によって算出された質量に対応する測定アームに関するアーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzが測定アームテーブルから読み出され、自動的に演算が行われる。
従って、第2測定アームを含む測定アームをユーザが指定しなくてもよいから、指定ミスなどもないうえ、ユーザの負担を軽減できる。
【0016】
本発明の表面性状測定機において、前記測定力付与手段は、前記測定アームを前記支持軸を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイルを含んで構成され、前記質量算出手段は、前記変位検出器によって検出される前記測定アームの円弧運動量を監視しながら、前記ボイスコイルに通電する電流を調整し、基準となる測定アームの円弧運動量が予め設定した設定値になった段階の測定力と、交換された測定アームの円弧運動量が予め設定された測定値になった段階の測定力とを対比して、交換した測定アームの質量を求める、ことが好ましい。
このような構成によれば、変位検出器によって検出される測定アームの円弧運動量を監視しながら、ボイスコイルに通電する電流を調整し、基準となる測定アームの円弧運動量が予め設定した設定値になった段階の測定力と、交換された測定アームの円弧運動量が予め設定された測定値になった段階の測定力とを対比して、交換した測定アームの質量を求めるようにしたから、交換した測定アームを自動的に識別できる。従って、ユーザの手間を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る表面性状測定機を示す斜視図。
【図2】同上実施形態のX軸駆動機構およびスタイラス変位検出手段を示す図。
【図3】同上実施形態の測定アームおよび変位検出器の関係を示す平面図。
【図4】同上実施形態の測定アームおよび測定アーム姿勢切替機構を示す図。
【図5】同上実施形態の測定姿勢・測定力制御回路を示す図。
【図6】同上実施形態の制御システムを示すブロック図。
【図7】同上実施形態の測定アームテーブルを示す図。
【図8】同上実施形態において、測定アームのパラメータを示す図。
【図9】同上実施形態において、傾斜姿勢時の測定アームのパラメータを示す図。
【図10】同上実施形態において基準測定アームのバランス調整の手順を示すフロー図。
【図11】同上実施形態において交換された測定アームの質量を求める手順を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<表面性状測定機の説明(図1〜図8参照)>
本実施形態に係る表面性状測定機は、図1に示すように、ベース1と、このベース1上に載置され上面に被測定物を載置するステージ10と、被測定物の表面に接触されるスタイラス26A,26Bを有するスタイラス変位検出手段20と、このスタイラス変位検出手段20とステージ10とを相対移動させる相対移動機構40とを備える。
【0019】
相対移動機構40は、ベース1とステージ10との間に設けられステージ10を水平方向の一方向(Y軸方向)へ移動させるY軸駆動機構41と、ベース1の上面に立設されたコラム42と、このコラム42に上下方向(Z軸方向)へ移動可能に設けられたZスライダ43と、このZスライダ43を上下方向へ昇降させるZ軸駆動機構44と、Zスライダ43に設けられスタイラス変位検出手段20をステージ10の移動方向(Y軸方向)およびZスライダ43の移動方向(Z軸方向)に対して直交する方向(X軸方向:後述する測定アーム24の軸方向)へ移動させるX軸駆動機構45とを備える。
【0020】
従って、相対移動機構40は、ステージ10をY軸方向へ移動させるY軸駆動機構41と、スタイラス変位検出手段20をZ軸方向へ移動させるZ軸駆動機構44と、スタイラス変位検出手段20をX軸方向(測定アーム24の軸方向)へ移動させる検出器移動機構としてのX軸駆動機構45とを含む三次元移動機構によって構成されている。
また、Zスライダ43とX軸駆動機構45との間には、X軸駆動機構45の移動方向をステージ10に対して傾斜させる検出手段傾斜機構としての旋回機構30が設けられている。これにより、X軸駆動機構45とともにスタイラス変位検出手段20が、水平姿勢のほか傾斜姿勢に姿勢変更可能に構成されている。
【0021】
Y軸駆動機構41およびZ軸駆動機構44は、図示省略されているが、例えば、ボールねじ軸と、このボールねじ軸に螺合されたナット部材とを有する送りねじ機構によって構成されている。
X軸駆動機構45は、図2に示すように、Zスライダ43に旋回機構30を介して固定された駆動機構本体46と、この駆動機構本体46にX軸方向と平行に設けられたガイドレール47と、このガイドレール47に沿ってX軸方向へ移動可能に設けられたXスライダ48と、このXスライダ48のX軸方向位置を検出するX軸位置検出器49と、Xスライダ48をガイドレール47に沿って移動させる送り機構50とを備える。
送り機構50は、駆動機構本体46にガイドレール47と平行に設けられXスライダ48に螺合された送りねじ軸51と、駆動源としてのモータ52と、このモータ52の回転を送りねじ軸51に伝達する回転伝達機構53とから構成されている。回転伝達機構53は、例えば、歯車列や、ベルトおよびプーリなどの機構によって構成されている。
【0022】
スタイラス変位検出手段20は、図2に示すように、Xスライダ48にボルト21を介して着脱可能に吊り下げ支持された本体としてのブラケット22と、このブラケット22に支持軸としての回転軸23を支点として上下方向へ揺動可能(円弧運動可能)に支持された測定アーム24と、この測定アーム24の先端に設けられた一対のスタイラス26A,26Bと、測定アーム24の円弧運動量(Z軸方向の変位量)を検出する変位検出器27と、測定アーム24に位置調整可能に設けられたバランスウエイト29と、測定アーム24が円弧運動方向の一方向(例えば、上方向)に付勢される姿勢および他方向(下方向)に付勢される姿勢に切り替える測定アーム姿勢切替機構60と、ブラケット22、測定アーム24、変位検出器27、バランスウエイト29、測定アーム姿勢切替機構60を覆うケーシング28とを含んで構成されている。
【0023】
測定アーム24は、ブラケット22に回転軸23を支点として上下方向へ円弧運動可能に支持された第1測定アーム24Aと、この第1測定アーム24Aの先端に着脱機構25を介して交換可能に取り付けられた第2測定アーム24Bとから構成されている。着脱機構25は、第1測定アーム24Aと第2測定アーム24Bとを磁力によって吸着するマグネット構造になっている。
スタイラス26A,26Bは、第2測定アーム24Bに対して円弧運動方向に突出して設けられている。つまり、第2測定アーム24Bに対して上向きのスタイラス26Aと下向きのスタイラス26Bとが上下方向に直角に突出して設けられている。
【0024】
変位検出器27は、図3に示すように、測定アーム24の円弧運動範囲に沿って設けられ、測定アーム24の円弧運動量に対応した数のパルス信号を出力する位置検出器によって構成されている。具体的には、測定アーム24に設けられ測定アーム24の円弧運動方向に湾曲したスケール27Aと、このスケール27Aに対向して本体としてのブラケット22に取り付けられた検出ヘッド27Bとを備える。スケール27Aの検出面は、測定アーム24の軸線上でかつ測定アーム24の円弧運動面上に配置されている。これにより、スケール27Aの検出面、測定アーム24、スタイラス26A,26Bの先端が同一軸上に配置されることになる。
バランスウエイト29は、回転軸23を支点として第1測定アーム24A側の重量と、第2測定アーム24B側の重量とがバランスするように、測定アーム24の軸方向へ位置調整可能に設けられている。具体的には、バランスウエイト29は、止めねじにより測定アーム24の所望位置に固定される。あるいは、測定アーム24に雄ねじを形成し、この雄ねじにバランスウエイト29を位置調整可能に螺合してもよい。
【0025】
測定アーム姿勢切替機構60は、図4に示すように、第1測定アーム24Aの途中に設けられた円筒状の磁石61と、この磁石61内を通って本体としてのブラケット22に固定され測定アーム24を回転軸23を支点として円弧運動方向の一方向(上方向)および他方向(下方向)へ付勢するボイスコイル62によって構成され、測定姿勢・測定力制御回路70からの指令で制御される。測定姿勢・測定力制御回路70からの指令により、ボイスコイル62に電流が流されると、ボイスコイル62から発生する電磁力と磁石61の磁力により、測定アーム24の磁石61がボイスコイル62に引きつけられ、測定アーム24の先端が上方向または下方向へ付勢される姿勢に切り替えられる。
ここに、測定アーム姿勢切替機構60は、測定アーム24を回転軸23を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイル62を含み、測定アーム24を円弧運動方向へ付勢しスタイラス26A,26Bに測定力を付与する測定力付与手段を兼ねている。
【0026】
測定姿勢・測定力制御回路70は、図5に示すように、後述する制御装置101から出力される測定力指令値に応じた電圧を発生する指令信号発生手段72と、この指令信号発生手段72からの電圧(デジタル信号)をアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータ73と、このデジタルアナログコンバータ73からの電圧を電流に変換し測定アーム姿勢切替機構60のボイスコイル62に与える定電流回路76とを含んで構成されている。
【0027】
図6は、本表面性状測定機の制御システムを示している。
制御装置101には、Y軸駆動機構41、Z軸駆動機構44、X軸駆動機構45、旋回機構30、X軸駆動機構45の傾斜角度を検出する傾斜角度検出器31、スタイラス変位検出手段20に含まれる変位検出器27、測定アーム姿勢切替機構60(これは、測定姿勢・測定力制御回路70を介して)が接続されているとともに、入力手段102、出力手段103、記憶装置104などが接続されている。なお、傾斜角度検出器31は、旋回機構30によって傾斜されたスタイラス変位検出手段20の傾斜角度θ1情報を与える傾斜角度情報付与手段を構成している。
【0028】
記憶装置104には、変位検出器27によって検出されるデータを記憶する記憶部のほかに、測定アームテーブル105や、傾斜角度記憶部106などが設けられている。
測定アームテーブル105には、図7に示すように、質量の異なる第2測定アーム24B(A21〜A27)が取り付けられた測定アーム24の種類毎に、当該測定アーム全体の質量M、測定アーム24の支点(回転軸23)からスタイラス26A,26Bまでのアーム長L、測定アーム24が水平姿勢時において測定アーム24の水平方向重心位置Gx(支点からのX軸方向位置)および上下方向重心位置Gz(支点からのZ軸方向位置)が記憶されている。なお、図8は、測定アーム24が水平姿勢時において、アーム長L、測定アーム24の水平方向重心位置Gx、および、上下方向重心位置Gzを示している。
【0029】
傾斜角度記憶部106には、傾斜角度検出器31によって検出されるX軸駆動機構45の傾斜角度θ1が記憶される。
入力手段102からは、測定アーム24の種類を指定する情報が入力される。ここに、入力手段102は、測定アーム指定手段を兼ねている。
【0030】
制御装置101は、入力手段102で指定された測定アーム24に関する質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを測定アームテーブル105から読み出し、これらの情報と傾斜角度記憶部106から与えられる傾斜角度θ1情報とから、測定アーム24の水平姿勢時の測定力と測定アーム24の傾斜姿勢時の測定力との差を演算し、この差を補正値として測定力付与手段としての測定アーム姿勢切替機構60の測定力を調整する。
具体的には、測定アーム全体の質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gx、上下方向重心位置Gz、検出手段の傾斜角度θ1から、測定アーム24の水平姿勢時の測定力と測定アーム24の傾斜姿勢時の測定力との差を、次式(1)から求める。
差=M×L×(Gx−Gx’) …(1)
から求める。ただし、
Gx’=√(Gx2+Gz2)×cos(θ3) …(2)
θ3=θ2−θ1 …(3)
θ2=Arctan(Gz÷Gx) …(4)
【0031】
また、制御装置101は、第1測定アーム24Aに対して第2測定アーム24Bが交換された際に、測定アーム姿勢切替機構60のボイスコイル62に通電する電流を調整して測定アーム24のバランスを調整するバランス調整手段を構成している。具体的には、変位検出器27によって検出される測定アーム24の円弧運動量を監視しながら、ボイスコイル62に通電する電流を調整し、測定アーム24の円弧運動量が予め設定した設定値になった段階でバランス調整を完了させるバランス調整手段を構成している。
【0032】
<測定方法の説明(図9参照)>
測定にあたって、被測定物の測定面に適したスタイラス26A,26Bを有する第2測定アーム24Bに交換する。これには、第1測定アーム24Aに対して、着脱機構25を介して、交換する第2測定アーム24Bを吸着保持させる。
続いて、X軸駆動機構45の移動方向が被測定物の測定面と平行となるように、旋回機構30を旋回させる。旋回機構30を旋回させると、X軸駆動機構45とともに、スタイラス変位検出手段20が傾斜されるから、X軸駆動機構45の移動方向を被測定物の測定面と平行となるように調整する。すると、X軸駆動機構45およびスタイラス変位検出手段20の傾斜角度θ1が傾斜角度検出器31によって検出され、傾斜角度記憶部106に記憶される。
【0033】
この後、測定アーム24のスタイラス26Bを被測定物の上面に位置させたのち、入力手段102において、交換した第2測定アーム24Bを含む測定アーム24の種類を入力する。
すると、制御装置101は、入力された種類の測定アーム24に対応する質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを測定アームテーブル105から読み出し、これらの情報と傾斜角度記憶部106に記憶された傾斜角度θ1とから、測定アーム24の水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差を、次式から演算する。
差=M×L×(Gx−Gx’) …(1)
ただし、Gx’=√(Gx2+Gz2)×cos(θ3) …(2)
θ3=θ2−θ1 …(3)
θ2=Arctan(Gz÷Gx) …(4)
なお、図9は、測定アーム24の傾斜姿勢時において、測定アーム24の重心位置Gx’、θ1〜θ3を示している。
【0034】
続いて、制御装置101は、演算して求めた差を補正した測定力指令値を測定姿勢・測定力制御回路70へ与える。すると、測定姿勢・測定力制御回路70によって、測定力指令値に応じた電流が、測定アーム姿勢切替機構60のボイスコイル62に与えられる結果、スタイラス26Bが測定力指令値で被測定物の測定面に接触される。この状態において、相対移動機構40によりスタイラス変位検出手段20とステージ10とを測定アーム24の軸方向へ相対移動させると、変位検出器27によって測定アーム24の円弧運動量が検出され、この円弧運動量から被測定物の表面性状が測定される。
【0035】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、測定アーム24の種類を指定すれば、質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gz、傾斜角度θ1から、最適な測定力を演算により求めることができるから、どのような角度をもった被測定物の測定面でも、正確な測定を行うことができる。
また、必要とされるメモリ容量も、第2測定アーム24Bを含む測定アーム24の1種類について、パラメータ1セット分(測定アーム全体の質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gz)だけで済むから、メモリ容量も少なくできる。
さらに、新たな測定アーム24を使用したい場合でも、測定力指令値の登録は不要で、比較的ユーザでも求めることが簡単なパラメータ(測定アーム全体の質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gz)の登録だけで済むから、ユーザに対する作業負担を軽減できる。
【0036】
特に、本実施形態では、スタイラス変位検出手段20の傾斜角度を検出する傾斜角度検出器31を備えているから、スタイラス変位検出手段20の傾斜角度を自動的に検出することができる。従って、ユーザがスタイラス変位検出手段20の傾斜角度を入力手段102から手動入力しなくてもよいので、ユーザの負担を軽減できる。
【0037】
<変形例(図10および図11参照)>
本発明は、前述の実施形態に限定されるものでなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、測定にあたって、入力手段102において、交換した第2測定アーム24Bを含む測定アーム24の種類を入力するようにしたが、制御装置101のバランス調整手段を利用して、交換された第2測定アームを含む測定アーム全体の質量を算出し、この算出した質量に対応する測定アーム24に関するアーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを測定アームテーブル105から読み出して演算するようにしてもよい。ここに、制御装置101のバランス調整手段は質量算出手段を構成している。
【0038】
具体的には、まず、基準測定アーム(第1測定アーム24Aに対して、基準質量の第2測定アーム24Bが取り付けられた測定アーム)について、図10に示す処理を行う。
ステップ(以下、STと略す)1において、制御装置101から測定力0mNの設定指令を出力したのち、ST2において、変位検出器27の値監視を開始する。
ST3において、制御装置101からある測定力の設定指令を出力すると、ST4において、制御装置101は、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内であるかをチェックする。
ST4において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内でない場合には、つまり、基準測定アーム24のバランスが大きく崩れてしまった場合には、ST5へ進み、変位検出器27の値が変化する方向とは逆の方向に測定力の設定指令を出力し、ST4において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内になるまでST5の処理を繰り返す。
ST4において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内になると、ST6において、測定アーム24のバランスがとれたと判断し、処理を終了する。
【0039】
続いて、交換後の測定アーム24について、図11に示す処理を行う。
ST1〜ST6までは、図10と同じである。
ST7において、基準測定アーム24のバランス時の測定力Aと、交換測定アーム24のバランス時の測定力Bとを比較し、交換測定アーム24の質量を次式から算出する。
交換測定アームの質量=測定力A−測定力B
つまり、変位検出器27によって検出される測定アーム24の円弧運動量を監視しながら、ボイスコイル62に通電する電流を調整し、基準となる測定アーム24の円弧運動量が予め設定した設定値になった段階の測定力と、交換された測定アーム24の円弧運動量が予め設定された測定値になった段階の測定力とを対比して、交換した測定アーム24の質量を求めるようにしたから、第2測定アーム24Bを含む測定アーム24をユーザが指定しなくてもよい。従って、指定ミスなどもないうえ、ユーザの負担を軽減できる。
【0040】
前記実施形態では、スタイラス変位検出手段20やX軸駆動機構45の傾斜角度θ1を傾斜角度検出器31によって検出し、この検出した傾斜角度θ1を利用して、制御装置101が演算するようにしたが、スタイラス変位検出手段20やX軸駆動機構45の傾斜角度θ1については、入力手段102から手動入力するようにしてもよい。
【0041】
前記実施形態では、測定アーム姿勢切替機構60を、測定アーム24を回転軸23を支点として円弧運動方向の一方向および他方向へ付勢するボイスコイル62を含んで構成したが、これに限られない。例えば、リニアモータ機構を用いた機構であってもよい。
また、円弧運動方向については、上記実施形態では上下方向であったが、水平方向であってもよく、あるいは、上下方向や水平方向以外の斜め方向へ揺動する構造でもよい。
【0042】
前記実施形態では、測定アーム24の先端に一対のスタイラス26A,26Bを有する第2測定アーム24Bについて説明したが、必ずしも一対のスタイラスを有する構造でなくてもよい。測定部位に適したスタイラスを有する測定アームに交換できれば、どのような構造であってもよい。
【0043】
また、相対移動機構40は、ステージ10をY軸方向へ、スタイラス変位検出手段20をX軸方向およびZ軸方向へ移動可能に構成したが、これに限られない。要するに、ステージ10とスタイラス変位検出手段20とが三次元方向へ移動可能であれば、どちらが移動する構造であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、被測定物の傾斜面などを測定する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
10…ステージ、
20…スタイラス変位検出手段、
22…ブラケット(本体)
23…回転軸(支持軸、支点)、
24…測定アーム、
24A…第1測定アーム、
24B…第2測定アーム、
25…着脱機構、
26A,26B…スタイラス、
27…変位検出器、
30…旋回機構(検出手段傾斜機構)、
31…傾斜角度検出器(傾斜角度付与手段)、
40…相対移動機構、
45…X軸駆動機構(検出器移動機構)、
60…測定アーム姿勢切替機構(測定力付与手段)、
62…ボイスコイル、
70…測定姿勢・測定力制御回路(速度制御機構)、
101…制御装置(バランス調整手段、質量算出手段)、
102…入力手段(測定アーム指定手段)、
105…測定アームテーブル、
Gx…水平方向重心位置、
Gz…上下方向重心位置、
L…アーム長、
M…質量、
θ1…傾斜角度。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性状測定機に関する。詳しくは、被測定物の表面に接触させるスタイラスを有する測定アームの姿勢に関わらず測定力を一定にできる表面性状測定機に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面にスタイラスを接触させた状態において、スタイラスを被測定物の表面に沿って移動させ、このとき、被測定物の表面形状や表面粗さによって生じるスタイラスの変位(スタイラスの移動方向に対して直交する方向の変位)を検出し、このスタイラスの変位から被測定物の表面形状や表面粗さ等の表面性状を測定する表面性状測定機が知られている。
【0003】
表面性状測定機のなかには、被測定物の各種形状の測定部位を測定できるように、予め各種形状のスタイラス(測定アーム)を用意しておき、被測定物の測定部位形状に応じて最適なスタイラスに交換して測定できるようにするとともに、被測定物の傾斜面を測定できるように、スタイラス(測定アーム)を含む検出器本体を傾斜できるようにし、更に、これらの組み合わせに適した測定力に自動的に調整できるようにしたものが提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、スタイラスホルダの種類、スタイラスの種類、測定方向、検出器本体の傾き角度の組み合わせ毎に測定力指令値をテーブルに予め記憶させておき、スタイラスホルダやスタイラスが交換されたとき、ユーザが、スタイラスホルダの種類、スタイラスの種類、測定方向を指定し、これらの指定結果と角度検出手段で検出された検出器本体の傾き角度に対応する測定力指令値をテーブルから読み出し、この読み出した測定力指令値に従って測定力を自動的に調整する技術が示されている。
【0005】
これにより、スタイラスホルダの種類やスタイラスの種類の組み合わせだけでなく、測定方向(例えば、上向き、下向き)や本体の傾き角度を含めて最適な測定力に調整することができる。すなわち、スタイラスやホルダを交換したり、測定方向や角度が変化しても、所定の測定力に調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3992853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、スタイラスホルダの種類、スタイラスの種類、検出器本体の傾き角度の組み合わせ毎に予め測定力指令値をテーブル化し、メモリに記憶しておく必要がある。
被測定物の形状によっては、テーブルに登録された傾き角度以外で使用したい場合があるが、特許文献1に記載の技術では、使用したい傾き角度での測定力指令値が登録されていないため、正確な測定が行えない。
【0008】
また、検出器本体の傾き角度を細かく指定可能にすると、必要とされるメモリ容量が著しく増大する。
さらには、未登録のスタイラスを使用したい場合、ユーザが、使用したい新たなスタイラスと、スタイラスホルダの種類、測定方向、傾き角度毎の測定力指令値を求めて登録しておかなければならないため、ユーザの作業負担が大きい。
【0009】
本発明の目的は、検出手段移動機構の傾き角度を任意の角度に変更した場合でも正確な測定を行うことができ、しかも、メモリ容量も少なくでき、更に、新たなスタイラスを使用したい場合でもユーザに対する作業負担を軽減できる表面性状測定機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の表面性状測定機は、本体に支持軸を支点として円弧運動可能に支持され先端にスタイラスを有する測定アーム、前記測定アームの円弧運動量を検出する変位検出器、および、前記測定アームを円弧運動方向へ付勢し前記スタイラスに測定力を付与する測定力付与手段を有する検出手段と、被測定物を載置するステージと、前記測定アームの軸方向へ前記検出手段を移動させる検出手段移動機構を含み、前記検出手段と前記ステージとを相対移動させる相対移動機構と、前記検出手段移動機構の移動方向を前記ステージに対して傾斜させる検出手段傾斜機構とを備え、前記スタイラスを被測定物の表面に接触させた状態において、前記相対移動機構により前記検出手段と前記ステージとを相対移動させながら前記変位検出器によって前記測定アームの円弧運動量を検出し、この円弧運動量から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機において、前記測定アームは、前記本体に前記支持軸を支点として円弧運動可能に支持された第1測定アームと、前記第1測定アームの先端に着脱機構を介して着脱可能に設けられ先端に前記スタイラスを有する第2測定アームとを含んで構成され、質量の異なる前記第2測定アームが取り付けられた前記測定アームの種類毎に、当該測定アーム全体の質量M、前記支点から前記スタイラスまでのアーム長L、前記測定アームが水平姿勢時において前記測定アームの水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを記憶した測定アームテーブルと、前記測定アームの種類を指定する測定アーム指定手段と、前記検出手段傾斜機構によって傾斜された前記検出手段の傾斜角度情報を与える傾斜角度情報付与手段と、前記測定アーム指定手段で指定された測定アームに関する質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを前記測定アームテーブルから読み出し、これらの情報と前記傾斜角度情報付与手段から与えられる傾斜角度情報とから、測定アームの水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差を演算し、この差を補正値として前記測定力付与手段の測定力を調整する制御装置とを備えた、ことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、被測定物の表面形状に対応して、第2測定アームを交換したのち、測定アーム指定手段によって、交換された第2測定アームを含む測定アームが指定されると、制御装置において、指定された測定アームに関する質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzが測定アームテーブルから読み出され、これらの情報と傾斜角度情報付与手段から与えられる傾斜角度情報とから、測定アームの水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差が演算され、この差が補正値として測定力付与手段の測定力が調整される。
【0012】
従って、測定アームの種類を指定すれば、質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gz、傾斜角度情報から、最適な測定力を演算により求めることができるから、どのような角度をもった被測定物の測定面でも、正確な測定を行うことができる。
また、必要とされるメモリ容量も、第2測定アームを含む測定アームの1種類について、パラメータ1セット分(測定アーム全体の質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gz)だけで済むから、メモリ容量も少なくできる。
さらに、新たな測定アームを使用したい場合でも、測定力指令値の登録は不要で、比較的ユーザでも求めることが簡単なパラメータの登録だけで済むから、ユーザに対する作業負担を軽減できる。
【0013】
本発明の表面性状測定機において、前記傾斜角度情報付与手段は、前記検出手段の傾斜角度を検出する傾斜角度検出器によって構成されている、ことが好ましい。
このような構成によれば、検出手段の傾斜角度が傾斜角度検出器によって自動的に検出されるから、ユーザの負担を軽減できる。つまり、ユーザが検出手段の傾斜角度を入力手段から手動入力しなくてもよいので、ユーザの負担を軽減できる。
【0014】
本発明の表面性状測定機において、前記制御装置は、前記測定アーム全体の質量M、前記アーム長L、前記水平方向重心位置Gx、前記上下方向重心位置Gz、前記検出手段の傾斜角度θ1から、前記測定アームの水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差を
差=M×L×(Gx−Gx’)
から求める、ことが好ましい。
ただし、Gx’=√(Gx2+Gz2)×cos(θ3)
θ3=θ2−θ1
θ2=Arctan(Gz÷Gx)
このような構成によれば、測定アーム全体の質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gx、上下方向重心位置Gz、検出手段の傾斜角度θ1から、測定アームの水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差が自動的に演算で求められるから、適切な測定力で測定を実行することができる。
【0015】
本発明の表面性状測定機において、前記測定アーム指定手段は、前記第1測定アームに対して前記第2測定アームが交換された際に、交換された前記第2測定アームを含む測定アーム全体の質量を求める質量算出手段によって構成され、前記制御装置は、前記質量算出手段によって算出された質量に対応する測定アームに関するアーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを前記測定アームテーブルから読み出して演算する、ことが好ましい。
このような構成によれば、第1測定アームに対して第2測定アームが交換されると、交換された第2測定アームを含む測定アーム全体の質量が質量算出手段によって求められる。すると、制御装置において、質量算出手段によって算出された質量に対応する測定アームに関するアーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzが測定アームテーブルから読み出され、自動的に演算が行われる。
従って、第2測定アームを含む測定アームをユーザが指定しなくてもよいから、指定ミスなどもないうえ、ユーザの負担を軽減できる。
【0016】
本発明の表面性状測定機において、前記測定力付与手段は、前記測定アームを前記支持軸を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイルを含んで構成され、前記質量算出手段は、前記変位検出器によって検出される前記測定アームの円弧運動量を監視しながら、前記ボイスコイルに通電する電流を調整し、基準となる測定アームの円弧運動量が予め設定した設定値になった段階の測定力と、交換された測定アームの円弧運動量が予め設定された測定値になった段階の測定力とを対比して、交換した測定アームの質量を求める、ことが好ましい。
このような構成によれば、変位検出器によって検出される測定アームの円弧運動量を監視しながら、ボイスコイルに通電する電流を調整し、基準となる測定アームの円弧運動量が予め設定した設定値になった段階の測定力と、交換された測定アームの円弧運動量が予め設定された測定値になった段階の測定力とを対比して、交換した測定アームの質量を求めるようにしたから、交換した測定アームを自動的に識別できる。従って、ユーザの手間を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る表面性状測定機を示す斜視図。
【図2】同上実施形態のX軸駆動機構およびスタイラス変位検出手段を示す図。
【図3】同上実施形態の測定アームおよび変位検出器の関係を示す平面図。
【図4】同上実施形態の測定アームおよび測定アーム姿勢切替機構を示す図。
【図5】同上実施形態の測定姿勢・測定力制御回路を示す図。
【図6】同上実施形態の制御システムを示すブロック図。
【図7】同上実施形態の測定アームテーブルを示す図。
【図8】同上実施形態において、測定アームのパラメータを示す図。
【図9】同上実施形態において、傾斜姿勢時の測定アームのパラメータを示す図。
【図10】同上実施形態において基準測定アームのバランス調整の手順を示すフロー図。
【図11】同上実施形態において交換された測定アームの質量を求める手順を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<表面性状測定機の説明(図1〜図8参照)>
本実施形態に係る表面性状測定機は、図1に示すように、ベース1と、このベース1上に載置され上面に被測定物を載置するステージ10と、被測定物の表面に接触されるスタイラス26A,26Bを有するスタイラス変位検出手段20と、このスタイラス変位検出手段20とステージ10とを相対移動させる相対移動機構40とを備える。
【0019】
相対移動機構40は、ベース1とステージ10との間に設けられステージ10を水平方向の一方向(Y軸方向)へ移動させるY軸駆動機構41と、ベース1の上面に立設されたコラム42と、このコラム42に上下方向(Z軸方向)へ移動可能に設けられたZスライダ43と、このZスライダ43を上下方向へ昇降させるZ軸駆動機構44と、Zスライダ43に設けられスタイラス変位検出手段20をステージ10の移動方向(Y軸方向)およびZスライダ43の移動方向(Z軸方向)に対して直交する方向(X軸方向:後述する測定アーム24の軸方向)へ移動させるX軸駆動機構45とを備える。
【0020】
従って、相対移動機構40は、ステージ10をY軸方向へ移動させるY軸駆動機構41と、スタイラス変位検出手段20をZ軸方向へ移動させるZ軸駆動機構44と、スタイラス変位検出手段20をX軸方向(測定アーム24の軸方向)へ移動させる検出器移動機構としてのX軸駆動機構45とを含む三次元移動機構によって構成されている。
また、Zスライダ43とX軸駆動機構45との間には、X軸駆動機構45の移動方向をステージ10に対して傾斜させる検出手段傾斜機構としての旋回機構30が設けられている。これにより、X軸駆動機構45とともにスタイラス変位検出手段20が、水平姿勢のほか傾斜姿勢に姿勢変更可能に構成されている。
【0021】
Y軸駆動機構41およびZ軸駆動機構44は、図示省略されているが、例えば、ボールねじ軸と、このボールねじ軸に螺合されたナット部材とを有する送りねじ機構によって構成されている。
X軸駆動機構45は、図2に示すように、Zスライダ43に旋回機構30を介して固定された駆動機構本体46と、この駆動機構本体46にX軸方向と平行に設けられたガイドレール47と、このガイドレール47に沿ってX軸方向へ移動可能に設けられたXスライダ48と、このXスライダ48のX軸方向位置を検出するX軸位置検出器49と、Xスライダ48をガイドレール47に沿って移動させる送り機構50とを備える。
送り機構50は、駆動機構本体46にガイドレール47と平行に設けられXスライダ48に螺合された送りねじ軸51と、駆動源としてのモータ52と、このモータ52の回転を送りねじ軸51に伝達する回転伝達機構53とから構成されている。回転伝達機構53は、例えば、歯車列や、ベルトおよびプーリなどの機構によって構成されている。
【0022】
スタイラス変位検出手段20は、図2に示すように、Xスライダ48にボルト21を介して着脱可能に吊り下げ支持された本体としてのブラケット22と、このブラケット22に支持軸としての回転軸23を支点として上下方向へ揺動可能(円弧運動可能)に支持された測定アーム24と、この測定アーム24の先端に設けられた一対のスタイラス26A,26Bと、測定アーム24の円弧運動量(Z軸方向の変位量)を検出する変位検出器27と、測定アーム24に位置調整可能に設けられたバランスウエイト29と、測定アーム24が円弧運動方向の一方向(例えば、上方向)に付勢される姿勢および他方向(下方向)に付勢される姿勢に切り替える測定アーム姿勢切替機構60と、ブラケット22、測定アーム24、変位検出器27、バランスウエイト29、測定アーム姿勢切替機構60を覆うケーシング28とを含んで構成されている。
【0023】
測定アーム24は、ブラケット22に回転軸23を支点として上下方向へ円弧運動可能に支持された第1測定アーム24Aと、この第1測定アーム24Aの先端に着脱機構25を介して交換可能に取り付けられた第2測定アーム24Bとから構成されている。着脱機構25は、第1測定アーム24Aと第2測定アーム24Bとを磁力によって吸着するマグネット構造になっている。
スタイラス26A,26Bは、第2測定アーム24Bに対して円弧運動方向に突出して設けられている。つまり、第2測定アーム24Bに対して上向きのスタイラス26Aと下向きのスタイラス26Bとが上下方向に直角に突出して設けられている。
【0024】
変位検出器27は、図3に示すように、測定アーム24の円弧運動範囲に沿って設けられ、測定アーム24の円弧運動量に対応した数のパルス信号を出力する位置検出器によって構成されている。具体的には、測定アーム24に設けられ測定アーム24の円弧運動方向に湾曲したスケール27Aと、このスケール27Aに対向して本体としてのブラケット22に取り付けられた検出ヘッド27Bとを備える。スケール27Aの検出面は、測定アーム24の軸線上でかつ測定アーム24の円弧運動面上に配置されている。これにより、スケール27Aの検出面、測定アーム24、スタイラス26A,26Bの先端が同一軸上に配置されることになる。
バランスウエイト29は、回転軸23を支点として第1測定アーム24A側の重量と、第2測定アーム24B側の重量とがバランスするように、測定アーム24の軸方向へ位置調整可能に設けられている。具体的には、バランスウエイト29は、止めねじにより測定アーム24の所望位置に固定される。あるいは、測定アーム24に雄ねじを形成し、この雄ねじにバランスウエイト29を位置調整可能に螺合してもよい。
【0025】
測定アーム姿勢切替機構60は、図4に示すように、第1測定アーム24Aの途中に設けられた円筒状の磁石61と、この磁石61内を通って本体としてのブラケット22に固定され測定アーム24を回転軸23を支点として円弧運動方向の一方向(上方向)および他方向(下方向)へ付勢するボイスコイル62によって構成され、測定姿勢・測定力制御回路70からの指令で制御される。測定姿勢・測定力制御回路70からの指令により、ボイスコイル62に電流が流されると、ボイスコイル62から発生する電磁力と磁石61の磁力により、測定アーム24の磁石61がボイスコイル62に引きつけられ、測定アーム24の先端が上方向または下方向へ付勢される姿勢に切り替えられる。
ここに、測定アーム姿勢切替機構60は、測定アーム24を回転軸23を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイル62を含み、測定アーム24を円弧運動方向へ付勢しスタイラス26A,26Bに測定力を付与する測定力付与手段を兼ねている。
【0026】
測定姿勢・測定力制御回路70は、図5に示すように、後述する制御装置101から出力される測定力指令値に応じた電圧を発生する指令信号発生手段72と、この指令信号発生手段72からの電圧(デジタル信号)をアナログ信号に変換するデジタルアナログコンバータ73と、このデジタルアナログコンバータ73からの電圧を電流に変換し測定アーム姿勢切替機構60のボイスコイル62に与える定電流回路76とを含んで構成されている。
【0027】
図6は、本表面性状測定機の制御システムを示している。
制御装置101には、Y軸駆動機構41、Z軸駆動機構44、X軸駆動機構45、旋回機構30、X軸駆動機構45の傾斜角度を検出する傾斜角度検出器31、スタイラス変位検出手段20に含まれる変位検出器27、測定アーム姿勢切替機構60(これは、測定姿勢・測定力制御回路70を介して)が接続されているとともに、入力手段102、出力手段103、記憶装置104などが接続されている。なお、傾斜角度検出器31は、旋回機構30によって傾斜されたスタイラス変位検出手段20の傾斜角度θ1情報を与える傾斜角度情報付与手段を構成している。
【0028】
記憶装置104には、変位検出器27によって検出されるデータを記憶する記憶部のほかに、測定アームテーブル105や、傾斜角度記憶部106などが設けられている。
測定アームテーブル105には、図7に示すように、質量の異なる第2測定アーム24B(A21〜A27)が取り付けられた測定アーム24の種類毎に、当該測定アーム全体の質量M、測定アーム24の支点(回転軸23)からスタイラス26A,26Bまでのアーム長L、測定アーム24が水平姿勢時において測定アーム24の水平方向重心位置Gx(支点からのX軸方向位置)および上下方向重心位置Gz(支点からのZ軸方向位置)が記憶されている。なお、図8は、測定アーム24が水平姿勢時において、アーム長L、測定アーム24の水平方向重心位置Gx、および、上下方向重心位置Gzを示している。
【0029】
傾斜角度記憶部106には、傾斜角度検出器31によって検出されるX軸駆動機構45の傾斜角度θ1が記憶される。
入力手段102からは、測定アーム24の種類を指定する情報が入力される。ここに、入力手段102は、測定アーム指定手段を兼ねている。
【0030】
制御装置101は、入力手段102で指定された測定アーム24に関する質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを測定アームテーブル105から読み出し、これらの情報と傾斜角度記憶部106から与えられる傾斜角度θ1情報とから、測定アーム24の水平姿勢時の測定力と測定アーム24の傾斜姿勢時の測定力との差を演算し、この差を補正値として測定力付与手段としての測定アーム姿勢切替機構60の測定力を調整する。
具体的には、測定アーム全体の質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gx、上下方向重心位置Gz、検出手段の傾斜角度θ1から、測定アーム24の水平姿勢時の測定力と測定アーム24の傾斜姿勢時の測定力との差を、次式(1)から求める。
差=M×L×(Gx−Gx’) …(1)
から求める。ただし、
Gx’=√(Gx2+Gz2)×cos(θ3) …(2)
θ3=θ2−θ1 …(3)
θ2=Arctan(Gz÷Gx) …(4)
【0031】
また、制御装置101は、第1測定アーム24Aに対して第2測定アーム24Bが交換された際に、測定アーム姿勢切替機構60のボイスコイル62に通電する電流を調整して測定アーム24のバランスを調整するバランス調整手段を構成している。具体的には、変位検出器27によって検出される測定アーム24の円弧運動量を監視しながら、ボイスコイル62に通電する電流を調整し、測定アーム24の円弧運動量が予め設定した設定値になった段階でバランス調整を完了させるバランス調整手段を構成している。
【0032】
<測定方法の説明(図9参照)>
測定にあたって、被測定物の測定面に適したスタイラス26A,26Bを有する第2測定アーム24Bに交換する。これには、第1測定アーム24Aに対して、着脱機構25を介して、交換する第2測定アーム24Bを吸着保持させる。
続いて、X軸駆動機構45の移動方向が被測定物の測定面と平行となるように、旋回機構30を旋回させる。旋回機構30を旋回させると、X軸駆動機構45とともに、スタイラス変位検出手段20が傾斜されるから、X軸駆動機構45の移動方向を被測定物の測定面と平行となるように調整する。すると、X軸駆動機構45およびスタイラス変位検出手段20の傾斜角度θ1が傾斜角度検出器31によって検出され、傾斜角度記憶部106に記憶される。
【0033】
この後、測定アーム24のスタイラス26Bを被測定物の上面に位置させたのち、入力手段102において、交換した第2測定アーム24Bを含む測定アーム24の種類を入力する。
すると、制御装置101は、入力された種類の測定アーム24に対応する質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを測定アームテーブル105から読み出し、これらの情報と傾斜角度記憶部106に記憶された傾斜角度θ1とから、測定アーム24の水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差を、次式から演算する。
差=M×L×(Gx−Gx’) …(1)
ただし、Gx’=√(Gx2+Gz2)×cos(θ3) …(2)
θ3=θ2−θ1 …(3)
θ2=Arctan(Gz÷Gx) …(4)
なお、図9は、測定アーム24の傾斜姿勢時において、測定アーム24の重心位置Gx’、θ1〜θ3を示している。
【0034】
続いて、制御装置101は、演算して求めた差を補正した測定力指令値を測定姿勢・測定力制御回路70へ与える。すると、測定姿勢・測定力制御回路70によって、測定力指令値に応じた電流が、測定アーム姿勢切替機構60のボイスコイル62に与えられる結果、スタイラス26Bが測定力指令値で被測定物の測定面に接触される。この状態において、相対移動機構40によりスタイラス変位検出手段20とステージ10とを測定アーム24の軸方向へ相対移動させると、変位検出器27によって測定アーム24の円弧運動量が検出され、この円弧運動量から被測定物の表面性状が測定される。
【0035】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、測定アーム24の種類を指定すれば、質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gz、傾斜角度θ1から、最適な測定力を演算により求めることができるから、どのような角度をもった被測定物の測定面でも、正確な測定を行うことができる。
また、必要とされるメモリ容量も、第2測定アーム24Bを含む測定アーム24の1種類について、パラメータ1セット分(測定アーム全体の質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gz)だけで済むから、メモリ容量も少なくできる。
さらに、新たな測定アーム24を使用したい場合でも、測定力指令値の登録は不要で、比較的ユーザでも求めることが簡単なパラメータ(測定アーム全体の質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gz)の登録だけで済むから、ユーザに対する作業負担を軽減できる。
【0036】
特に、本実施形態では、スタイラス変位検出手段20の傾斜角度を検出する傾斜角度検出器31を備えているから、スタイラス変位検出手段20の傾斜角度を自動的に検出することができる。従って、ユーザがスタイラス変位検出手段20の傾斜角度を入力手段102から手動入力しなくてもよいので、ユーザの負担を軽減できる。
【0037】
<変形例(図10および図11参照)>
本発明は、前述の実施形態に限定されるものでなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、測定にあたって、入力手段102において、交換した第2測定アーム24Bを含む測定アーム24の種類を入力するようにしたが、制御装置101のバランス調整手段を利用して、交換された第2測定アームを含む測定アーム全体の質量を算出し、この算出した質量に対応する測定アーム24に関するアーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを測定アームテーブル105から読み出して演算するようにしてもよい。ここに、制御装置101のバランス調整手段は質量算出手段を構成している。
【0038】
具体的には、まず、基準測定アーム(第1測定アーム24Aに対して、基準質量の第2測定アーム24Bが取り付けられた測定アーム)について、図10に示す処理を行う。
ステップ(以下、STと略す)1において、制御装置101から測定力0mNの設定指令を出力したのち、ST2において、変位検出器27の値監視を開始する。
ST3において、制御装置101からある測定力の設定指令を出力すると、ST4において、制御装置101は、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内であるかをチェックする。
ST4において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内でない場合には、つまり、基準測定アーム24のバランスが大きく崩れてしまった場合には、ST5へ進み、変位検出器27の値が変化する方向とは逆の方向に測定力の設定指令を出力し、ST4において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内になるまでST5の処理を繰り返す。
ST4において、ある時間内での変位検出器27の値変化量がある範囲以内になると、ST6において、測定アーム24のバランスがとれたと判断し、処理を終了する。
【0039】
続いて、交換後の測定アーム24について、図11に示す処理を行う。
ST1〜ST6までは、図10と同じである。
ST7において、基準測定アーム24のバランス時の測定力Aと、交換測定アーム24のバランス時の測定力Bとを比較し、交換測定アーム24の質量を次式から算出する。
交換測定アームの質量=測定力A−測定力B
つまり、変位検出器27によって検出される測定アーム24の円弧運動量を監視しながら、ボイスコイル62に通電する電流を調整し、基準となる測定アーム24の円弧運動量が予め設定した設定値になった段階の測定力と、交換された測定アーム24の円弧運動量が予め設定された測定値になった段階の測定力とを対比して、交換した測定アーム24の質量を求めるようにしたから、第2測定アーム24Bを含む測定アーム24をユーザが指定しなくてもよい。従って、指定ミスなどもないうえ、ユーザの負担を軽減できる。
【0040】
前記実施形態では、スタイラス変位検出手段20やX軸駆動機構45の傾斜角度θ1を傾斜角度検出器31によって検出し、この検出した傾斜角度θ1を利用して、制御装置101が演算するようにしたが、スタイラス変位検出手段20やX軸駆動機構45の傾斜角度θ1については、入力手段102から手動入力するようにしてもよい。
【0041】
前記実施形態では、測定アーム姿勢切替機構60を、測定アーム24を回転軸23を支点として円弧運動方向の一方向および他方向へ付勢するボイスコイル62を含んで構成したが、これに限られない。例えば、リニアモータ機構を用いた機構であってもよい。
また、円弧運動方向については、上記実施形態では上下方向であったが、水平方向であってもよく、あるいは、上下方向や水平方向以外の斜め方向へ揺動する構造でもよい。
【0042】
前記実施形態では、測定アーム24の先端に一対のスタイラス26A,26Bを有する第2測定アーム24Bについて説明したが、必ずしも一対のスタイラスを有する構造でなくてもよい。測定部位に適したスタイラスを有する測定アームに交換できれば、どのような構造であってもよい。
【0043】
また、相対移動機構40は、ステージ10をY軸方向へ、スタイラス変位検出手段20をX軸方向およびZ軸方向へ移動可能に構成したが、これに限られない。要するに、ステージ10とスタイラス変位検出手段20とが三次元方向へ移動可能であれば、どちらが移動する構造であっても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、被測定物の傾斜面などを測定する場合に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
10…ステージ、
20…スタイラス変位検出手段、
22…ブラケット(本体)
23…回転軸(支持軸、支点)、
24…測定アーム、
24A…第1測定アーム、
24B…第2測定アーム、
25…着脱機構、
26A,26B…スタイラス、
27…変位検出器、
30…旋回機構(検出手段傾斜機構)、
31…傾斜角度検出器(傾斜角度付与手段)、
40…相対移動機構、
45…X軸駆動機構(検出器移動機構)、
60…測定アーム姿勢切替機構(測定力付与手段)、
62…ボイスコイル、
70…測定姿勢・測定力制御回路(速度制御機構)、
101…制御装置(バランス調整手段、質量算出手段)、
102…入力手段(測定アーム指定手段)、
105…測定アームテーブル、
Gx…水平方向重心位置、
Gz…上下方向重心位置、
L…アーム長、
M…質量、
θ1…傾斜角度。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に支持軸を支点として円弧運動可能に支持され先端にスタイラスを有する測定アーム、前記測定アームの円弧運動量を検出する変位検出器、および、前記測定アームを円弧運動方向へ付勢し前記スタイラスに測定力を付与する測定力付与手段を有する検出手段と、
被測定物を載置するステージと、
前記測定アームの軸方向へ前記検出手段を移動させる検出手段移動機構を含み、前記検出手段と前記ステージとを相対移動させる相対移動機構と、
前記検出手段移動機構の移動方向を前記ステージに対して傾斜させる検出手段傾斜機構とを備え、
前記スタイラスを被測定物の表面に接触させた状態において、前記相対移動機構により前記検出手段と前記ステージとを相対移動させながら前記変位検出器によって前記測定アームの円弧運動量を検出し、この円弧運動量から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機において、
前記測定アームは、前記本体に前記支持軸を支点として円弧運動可能に支持された第1測定アームと、前記第1測定アームの先端に着脱機構を介して着脱可能に設けられ先端に前記スタイラスを有する第2測定アームとを含んで構成され、
質量の異なる前記第2測定アームが取り付けられた前記測定アームの種類毎に、当該測定アーム全体の質量M、前記支点から前記スタイラスまでのアーム長L、前記測定アームが水平姿勢時において前記測定アームの水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを記憶した測定アームテーブルと、
前記測定アームの種類を指定する測定アーム指定手段と、
前記検出手段傾斜機構によって傾斜された前記検出手段の傾斜角度情報を与える傾斜角度情報付与手段と、
前記測定アーム指定手段で指定された測定アームに関する質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを前記測定アームテーブルから読み出し、これらの情報と前記傾斜角度情報付与手段から与えられる傾斜角度情報とから、測定アームの水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差を演算し、この差を補正値として前記測定力付与手段の測定力を調整する制御装置とを備えた、
ことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項2】
請求項1に記載の表面性状測定機において、
前記傾斜角度情報付与手段は、前記検出手段の傾斜角度を検出する傾斜角度検出器によって構成されている、ことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表面性状測定機において、
前記制御装置は、前記測定アーム全体の質量M、前記アーム長L、前記水平方向重心位置Gx、前記上下方向重心位置Gz、前記検出手段の傾斜角度θ1から、前記測定アームの水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差を
差=M×L×(Gx−Gx’)
から求める、ことを特徴とする表面性状測定機。
ただし、Gx’=√(Gx2+Gz2)×cos(θ3)
θ3=θ2−θ1
θ2=Arctan(Gz÷Gx)
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表面性状測定機において、
前記測定アーム指定手段は、前記第1測定アームに対して前記第2測定アームが交換された際に、交換された前記第2測定アームを含む測定アーム全体の質量を求める質量算出手段によって構成され、
前記制御装置は、前記質量算出手段によって算出された質量に対応する測定アームに関するアーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを前記測定アームテーブルから読み出して演算する、ことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項5】
請求項4に記載の表面性状測定機において、
前記測定力付与手段は、前記測定アームを前記支持軸を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイルを含んで構成され、
前記質量算出手段は、前記変位検出器によって検出される前記測定アームの円弧運動量を監視しながら、前記ボイスコイルに通電する電流を調整し、基準となる前記測定アームの円弧運動量が予め設定した設定値になった段階の測定力と、交換された測定アームの円弧運動量が予め設定された測定値になった段階の測定力とを対比して、交換した測定アームの質量を求める、ことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項1】
本体に支持軸を支点として円弧運動可能に支持され先端にスタイラスを有する測定アーム、前記測定アームの円弧運動量を検出する変位検出器、および、前記測定アームを円弧運動方向へ付勢し前記スタイラスに測定力を付与する測定力付与手段を有する検出手段と、
被測定物を載置するステージと、
前記測定アームの軸方向へ前記検出手段を移動させる検出手段移動機構を含み、前記検出手段と前記ステージとを相対移動させる相対移動機構と、
前記検出手段移動機構の移動方向を前記ステージに対して傾斜させる検出手段傾斜機構とを備え、
前記スタイラスを被測定物の表面に接触させた状態において、前記相対移動機構により前記検出手段と前記ステージとを相対移動させながら前記変位検出器によって前記測定アームの円弧運動量を検出し、この円弧運動量から被測定物の表面性状を測定する表面性状測定機において、
前記測定アームは、前記本体に前記支持軸を支点として円弧運動可能に支持された第1測定アームと、前記第1測定アームの先端に着脱機構を介して着脱可能に設けられ先端に前記スタイラスを有する第2測定アームとを含んで構成され、
質量の異なる前記第2測定アームが取り付けられた前記測定アームの種類毎に、当該測定アーム全体の質量M、前記支点から前記スタイラスまでのアーム長L、前記測定アームが水平姿勢時において前記測定アームの水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを記憶した測定アームテーブルと、
前記測定アームの種類を指定する測定アーム指定手段と、
前記検出手段傾斜機構によって傾斜された前記検出手段の傾斜角度情報を与える傾斜角度情報付与手段と、
前記測定アーム指定手段で指定された測定アームに関する質量M、アーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを前記測定アームテーブルから読み出し、これらの情報と前記傾斜角度情報付与手段から与えられる傾斜角度情報とから、測定アームの水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差を演算し、この差を補正値として前記測定力付与手段の測定力を調整する制御装置とを備えた、
ことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項2】
請求項1に記載の表面性状測定機において、
前記傾斜角度情報付与手段は、前記検出手段の傾斜角度を検出する傾斜角度検出器によって構成されている、ことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の表面性状測定機において、
前記制御装置は、前記測定アーム全体の質量M、前記アーム長L、前記水平方向重心位置Gx、前記上下方向重心位置Gz、前記検出手段の傾斜角度θ1から、前記測定アームの水平姿勢時の測定力と測定アームの傾斜姿勢時の測定力との差を
差=M×L×(Gx−Gx’)
から求める、ことを特徴とする表面性状測定機。
ただし、Gx’=√(Gx2+Gz2)×cos(θ3)
θ3=θ2−θ1
θ2=Arctan(Gz÷Gx)
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表面性状測定機において、
前記測定アーム指定手段は、前記第1測定アームに対して前記第2測定アームが交換された際に、交換された前記第2測定アームを含む測定アーム全体の質量を求める質量算出手段によって構成され、
前記制御装置は、前記質量算出手段によって算出された質量に対応する測定アームに関するアーム長L、水平方向重心位置Gxおよび上下方向重心位置Gzを前記測定アームテーブルから読み出して演算する、ことを特徴とする表面性状測定機。
【請求項5】
請求項4に記載の表面性状測定機において、
前記測定力付与手段は、前記測定アームを前記支持軸を支点として円弧運動方向へ付勢するボイスコイルを含んで構成され、
前記質量算出手段は、前記変位検出器によって検出される前記測定アームの円弧運動量を監視しながら、前記ボイスコイルに通電する電流を調整し、基準となる前記測定アームの円弧運動量が予め設定した設定値になった段階の測定力と、交換された測定アームの円弧運動量が予め設定された測定値になった段階の測定力とを対比して、交換した測定アームの質量を求める、ことを特徴とする表面性状測定機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−113715(P2013−113715A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260205(P2011−260205)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
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