説明

表面改質された有機固体粒子

【課題】滑り性などの機能が有効に付与された有機固体粒子(例えば、疎水性樹脂粒子)を提供する。
【解決手段】樹脂成分などの溶融可能な有機固体成分(A)と、この有機固体成分(A)を改質するための改質剤(B)とで構成された粒子状の分散相が、オリゴ糖などのマトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体から前記マトリックス成分を(C)を除去することにより得られる有機固体粒子において、前記改質剤(B)を、両親媒性を有する固体状の改質剤で構成する。前記改質剤(B)は、脂肪酸アミドなどの結晶性を有する改質剤であるのが好ましい。前記有機固体成分(A)と改質剤(B)との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=99.5/0.5〜85/15程度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り性などが改質(表面改質)された有機固体粒子(樹脂粒子など)、およびこの有機固体粒子を得るのに有用な分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、滑剤などの改質剤(又は添加剤)を含む樹脂微粒子を得る方法としては、機械的な粉砕法、例えば、改質剤と樹脂とを溶融混錬して得られる樹脂組成物を、クラッシャーなどで粗粉砕した後、ジェットミルなどを用いて微粉砕し、その後風力分級機などにより分級する方法が利用されている。
【0003】
しかし、このような方法では、製造機器が高価であることに加え、得られた粒子も不定形で、粒子サイズにばらつきがある。樹脂粒子のサイズを揃えるためには、分級する必要があり、分級により、利用できないサイズの樹脂粒子が大量に生成するため、経済的にも不利である。また、粒子同士のブロッキング、分散性、流動性などの観点から、球状の粒子が好ましいものの、機械的な粉砕法では、球状の微粒子を得ることは不可能である。
【0004】
予め調製した樹脂粒子および改質剤を用いて、改質剤を含む樹脂粒子を得る方法も開示されている。例えば、特開昭63−125537号公報(特許文献1)には、熱可塑性合成樹脂粒子に帯電防止剤を添加し高剪断力のもとに両者を攪拌混合し、該樹脂粒子の表面層が軟化した状態で該樹脂粒子の表面に帯電防止剤を付着せしめて帯電防止剤含有合成樹脂粒子とする方法が開示されている。
【0005】
また、特開2000−327791号公報(特許文献2)には、ワックスまたは樹脂の粒子の金属石鹸被覆方法であって、(a)水溶性脂肪酸石鹸を含有する、ワックスまたは樹脂の粒子の水分散体と、(b)多価金属化合物の水溶液または水分散体とを、多価金属化合物の水溶性脂肪酸石鹸に対する当量比が0.5〜1.5となるように混合する金属石鹸被覆方法が開示されている。
【0006】
さらに、特公平7−17833号公報(特許文献3)には、平均粒径0.1〜30μmのポリアミド球状粒子の表面を、ドライブレンド法、ウェットブレンド法などによりポリシロキサンで被覆した後、100℃以上に加熱処理するポリアミド粒子の処理方法が開示されている。さらにまた、特開2002−220474号公報(特許文献4)には、流動パラフィンを媒体とするラクタム類のアニオン重合により得られたポリアミド微粒子懸濁液に、ポリアミドに対し、0.2重量%以上、1.0重量%未満のポリシロキサンオイルを添加して撹拌した後ポリアミド微粒子を取り出すことにより、表面がポリシロキサンオイルで被覆されたポリアミド微粒子を製造する方法が開示されている。
【0007】
しかし、これらの方法では、樹脂粒子の表面に帯電防止剤などの改質剤を単に付着させるので、改質剤の改質効果を有効に樹脂粒子に付与することは困難である。特に、ポリアミド樹脂などのように水素結合能を有する樹脂や、ポリスチレン系樹脂のように、π−π相互作用を有する樹脂の粒子において、粒子間の相互作用に打ち勝つだけの改質効果(滑り性など)や凝集抑制効果を付与することは困難である。また、改質剤は樹脂粒子の表面に存在するので、長期にわたって使用したり、高い剪断力が作用するなどの過酷な条件で使用すると、改質剤による改質効果が低下しやすく、樹脂粒子に安定した改質効果を付与できない。さらに、これらの方法では、予め樹脂粒子を調製する必要があり、粒子サイズにバラツキが生じやすい。また、前記特許文献2などの液状の媒体を使用する方法では、樹脂粒子を媒体から固液分離する際に、粒子同士が凝集又は密着しやすく、再分散性が著しく低下する。
【0008】
さらに、樹脂の重合過程において改質剤を添加することにより改質剤を含む樹脂粒子を得る方法も知られている。例えば、特開平5−181315号公報(特許文献5)には、親水性有機液体中に該有機液体に溶解する高分子分散剤を加え、これに前記有機液体には溶解するが、生成する重合体は前記有機液体にて膨潤するか若しくはほとんどが溶解しないビニル単量体を加えて重合させ、得られた粒子表面にエマルジョンワックスを付着後、更に重合を続けて得られる2段重合樹脂粒子を染着してなる静電荷像現像用トナーが開示されている。また、特開平6−73106号公報(特許文献6)には、(メタ)アクリル系モノマーを主成分とする重合性単量体(A)を、−SH、−S−S−、−COOH、−NOおよび−OHからなる群から選ばれる少なくとも1種の構造単位を有し、水に対して実質的に不溶性でかつ前記重合性単量体(A)に対して難溶性である化合物(B)の存在下に水系懸濁重合を行なうことを特徴とする樹脂粒子の製造方法が開示されている。そして、この文献には、前記懸濁重合に際して、可塑剤、重合安定剤、着色剤、蛍光増白剤、磁性粉、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤などの添加剤を配合してもよいことが記載されている。
【0009】
しかし、これらの方法でも、前記と同様に、改質剤による改質効果を十分に樹脂粒子に付与することは困難である。また、これらの方法では、懸濁重合や乳化重合などにより樹脂粒子を得る必要があるため、著しく樹脂の種類が制限される。さらに、重合液中に帯電防止剤などの改質剤を安定に存在させて重合する必要があり、煩雑な重合操作を必要とする。しかも、液状の媒体を必要とするため、前記と同様に、粒子の再分散性が低下しやすい。
【0010】
また、粒子の表面に凹凸を形成することにより、表面平滑度を下げて、粒子の滑り性や粒子の凝集性を改良する方法も知られている。しかし、このような方法では、粒子を構成する樹脂本来の表面エネルギーが低減できるわけではなく、特に、水素結合のような強い化学的相互作用を持ちうる樹脂を用いる場合などにおいては、十分に滑り性や凝集抑制効果を付与できない。
【0011】
一方、マトリックスに分散した樹脂粒子を含む分散体から、マトリックスを除去することにより樹脂粒子を得る方法が知られている。例えば、特開平10−176065号公報(特許文献7)には、微粉末化する熱可塑性樹脂(a)に、他の1種類以上の熱可塑性樹脂(b)を溶融混練することにより、樹脂(a)が分散相を形成し、樹脂(b)が連続相を形成する樹脂組成物を生成させ、樹脂(a)は溶解せず、樹脂(b)が溶解する溶媒及び条件で前記樹脂組成物を洗浄することにより、樹脂(a)の球状微粒子を得る方法が開示されている。この文献には、樹脂(a)に対し、顔料、染料、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、可塑剤、相溶化剤などの各種添加剤を添加してよいことが記載されている。しかし、この方法でも、樹脂微粒子に添加剤の機能を十分に付与できない。しかも、添加剤が、連続相を構成する樹脂(b)側にも分配されるため、添加剤を樹脂の機能剤として有効利用できず、経済的にも不利である。また、この方法では、微粉末化する樹脂は、耐溶剤性に優れた樹脂である必要があるとともに、分散相と連続相とがそれぞれ非相溶である必要もあり、さらに分散相の樹脂の種類によって、連続相の樹脂と溶媒との組み合わせを適切に選択する必要がある。そのため、樹脂同士の組合せが制限されるだけでなく、樹脂と溶媒との組み合わせについても制限される。さらに、分散体を冷却する過程において、非相溶である樹脂同士は、大きな相分離を起こし易いため、一旦生成した分散相が再び集合し、所定形状の微粒子を得ることができなくなる。さらにまた、連続相を形成する樹脂は、製品となる樹脂微粒子にはなんら関与しないため、最終的に回収されるか、あるいは溶解状態のまま廃棄されることになる。しかし、溶液中の樹脂を回収することは、非常に困難であるばかりか、樹脂微粒子の製造コストを上昇させる要因となる。また、樹脂溶液を廃液としてそのまま廃棄した場合、環境への悪影響も懸念される。
【0012】
なお、特開2004−51942号公報(特許文献8)には、樹脂成分(A)及び水溶性助剤成分(B)で構成された分散体であって、助剤成分(B)が、少なくともオリゴ糖(B1)で構成されている分散体、およびこの分散体から、助剤成分(B)を溶出し、樹脂成分(A)で構成された成形体を製造する方法が開示されている。この文献には、(i)前記助剤成分(B)が、海島構造における連続相または共連続相を形成していてもよいこと、(ii)前記分散体は、樹脂成分(A)と助剤成分(B)とを混練することにより調製できることが記載されている。そして、この文献には、前記分散体に、フィラー、可塑剤又は軟化剤、滑剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤)、増粘剤、着色剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を配合してもよいことが記載されている。
【特許文献1】特開昭63−125537号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2000−327791号公報(請求項1)
【特許文献3】特公平7−17833号公報(請求項1)
【特許文献4】特開2002−220474号公報(請求項1)
【特許文献5】特開平5−181315号公報(請求項1)
【特許文献6】特開平6−73106号公報(請求項1)
【特許文献7】特開平10−176065号公報(請求項1、段落番号[0042])
【特許文献8】特開2004−51942号公報(請求項1、12、段落番号[0100][0103][0107])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、滑剤などの改質剤(又は添加剤)の機能(例えば、滑り性、伸展性など)が有効に付与された有機固体粒子(例えば、疎水性樹脂粒子)、およびこの有機固体粒子を得るのに有用な分散体を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、長期に亘って使用しても、滑り性などの改質効果を持続できる有機固体粒子、およびこの有機固体粒子を得るのに有用な分散体を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、高いレベルで凝集を抑制でき、再分散性に優れた有機固体粒子、およびこの有機固体粒子を得るのに有用な分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、樹脂などの溶融可能な有機固体成分と、改質剤(滑剤など)とで構成された分散相粒子が、マトリックスに分散している分散体から、前記マトリックスを溶出などにより除去することにより得られる有機固体粒子(有機固体成分と改質剤とで構成された粒子)において、前記改質剤として、特定の固体状改質剤を用いると、改質剤の機能を有機固体粒子(特に球状粒子)に有効に付与できること、さらには、改質剤による改質効果を長期に亘って持続できることを見い出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明の有機固体粒子は、溶融可能な有機固体成分(A)と、この有機固体成分(A)を改質するための改質剤(B)とで構成された粒子状の分散相が、マトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体から前記マトリックス成分(C)を除去することにより得られる有機固体粒子であって、前記改質剤(B)が、両親媒性を有する固体状の改質剤である有機固体粒子である。前記有機固体成分(A)は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、オキシアルキレン基、エステル基、アミノ基、置換アミノ基、イミノ基、アミド基、およびフェニル基から選択された少なくとも1種を有する樹脂で構成されていてもよい。
【0018】
前記改質剤(B)は、結晶性を有する改質剤(脂肪酸系ワックスなど)で構成してもよい。特に、改質剤(B)は、脂肪酸アミドで構成されていてもよい。本発明の有機固体粒子において、代表的な有機固体成分(A)と改質剤(B)との組み合わせには、有機固体成分(A)がポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびスチレン系樹脂から選択された少なくとも1種の樹脂であり、改質剤(B)が、アミド基が置換されていてもよいC12−36飽和又は不飽和脂肪酸アミドである組み合わせなどが含まれる。
【0019】
本発明の有機固体粒子において、前記有機固体成分(A)と改質剤(B)との割合は、前者/後者(重量比)=99.5/0.5〜85/15程度であってもよい。
【0020】
本発明の有機固体粒子(又は分散体)において、前記マトリックス成分(C)は、水溶性のマトリックス成分であってもよく、代表的には、前記分散体は、非水溶性熱可塑性樹脂(A)と改質剤(B)とで構成された粒子状の分散相が、水溶性のマトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体であってもよい。前記水溶性のマトリックス成分は、例えば、少なくともオリゴ糖で構成されていてもよい。特に、マトリックス成分(C)は、オリゴ糖(C1)と、糖類及び糖アルコールから選択された少なくとも一種の水溶性可塑化成分(C2)とで構成されていてもよい。
【0021】
前記有機固体粒子(又は分散体)において、分散相(有機固体成分(A)と改質剤(B)との総量)と、マトリックス成分(C)との割合(重量比)は、前者/後者=55/45〜1/99程度であってもよい。前記有機固体粒子の平均粒子径は、例えば、0.1〜100μm程度であってもよい。
【0022】
本発明の有機固体粒子は、粒子の凝集性が著しく抑制されており、例えば、25℃および圧力60MPaで圧縮成形した円柱状のタブレットを、圧縮速度1mm/分で破壊試験に供したときに得られる応力/歪み曲線において、応力が上昇から下降に変化する応力を降伏点応力(1)とするとき、降伏点応力(1)が4MPa以下であり、かつ降伏点応力(1)に到達するまでの曲線の直線部分の傾きを見かけの弾性率E(*)とするとき、下記式で表される体積弾性率Kが、35MPa以下であってもよい。
【0023】
K=E(*)×L/A
(式中、Lはタブレットの厚み(mm)、Aはタブレットの底面積(mm)を示す。)
また、本発明の有機固体粒子は、滑り性にも優れており、例えば、前記応力/歪み曲線において、降伏点応力(1)から後において、応力が下降から上昇に変化する応力を降伏点応力(2)とするとき、降伏点応力(2)が3MPa以下であってもよい。
【0024】
本発明の有機固体粒子は、有機固体成分(又は粒子)の少なくとも表面に改質剤が存在しており、特に改質剤(B)は、改質剤(B)が粒子表面に突起状物を形成していてもよい。このような本発明の有機固体粒子は、化粧品などに用いることができる。
【0025】
また、本発明には、前記有機固体粒子を得るための分散体であって、有機固体成分(A)と、両親媒性を有する固体状の改質剤(B)とで構成された粒子状の分散相が、マトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体も含まれる。
【0026】
なお、本明細書において、「有機固体成分」とは、固体である限り、炭素系の有機化合物に限らず、ケイ素化合物(シリコーン樹脂など)なども含む意味で用いる。また、本明細書において、「両親媒性を有する」とは、水に溶解するか否かにかかわらず、疎水性基(又は親油性基)と親水性基とを有することを意味する。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、樹脂などの溶融可能な有機固体成分と、特定の改質剤とを組み合わせて分散相を形成した分散体を用いるので、滑剤などの改質剤(又は添加剤)の機能が有効に付与された有機固体粒子を得ることができる。また、本発明では、有機固体粒子の表面だけでなく内部にも改質剤を存在させることができるため、長期に亘って使用しても、改質剤の改質効果を持続可能な有機固体粒子を得ることができる。さらに、高いレベルで凝集を抑制でき、再分散性に優れた有機固体粒子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の有機固体粒子は、溶融可能な有機固体成分(A)と、この有機固体成分(A)を改質するための特定の改質剤(B)とで構成されている。そして、このような本発明の有機固体粒子は、溶融可能な有機固体成分(A)と、この有機固体成分(A)を改質するための改質剤(B)とで構成された粒子状の分散相が、マトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体から前記マトリックス成分を(C)を除去することにより得られる。
【0029】
[分散体]
(A)溶融可能な有機固体成分
溶融可能な有機固体成分(A)としては、通常、水溶性のマトリックス成分(C)に対して非相溶の成分又は疎水性の成分(非水溶性成分)が使用できる。前記有機固体成分(A)は、通常、室温(15〜25℃程度)で固体であり、低分子化合物であってもよく、高分子化合物(又は樹脂)であってもよい。低分子有機固体成分(A)の融点は、40〜280℃(好ましくは50〜270℃、さらに好ましくは70〜260℃)程度であってもよく、100〜260℃程度の比較的高い融点を有する化合物も使用できる。有機固体成分(A)は単独で又は2種以上組合わせて使用できる。
【0030】
通常、有機固体成分(A)としては、樹脂成分又は高分子化合物(以下、単に樹脂ということがある)を用いる場合が多い。前記樹脂には、熱可塑性樹脂[ポリエステル系樹脂(例えば、芳香族ポリエステル系樹脂や脂肪族ポリエステル系樹脂など)、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂(例えば、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルフィド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂など)、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂などの縮合系熱可塑性樹脂;ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂(例えば、ハロゲン含有ビニル系樹脂、ビニルエステル系樹脂又はその誘導体など)などのビニル重合系熱可塑性樹脂;熱可塑性エラストマー;セルロース誘導体などの天然物由来樹脂;熱可塑性シリコーン樹脂など]、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂(シリコーンゴム、シリコーンワニスなど)など)などが含まれる。
【0031】
これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。樹脂成分(A)としては、通常、熱可塑性樹脂、非水溶性樹脂(又は疎水性樹脂、非水溶性熱可塑性樹脂など)を好適に使用できる。以下、代表的な熱可塑性樹脂を例示する。
【0032】
(熱可塑性樹脂)
(1)ポリエステル系樹脂
ポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分、ジオール成分、オキシカルボン酸、ラクトン類を用いた種々の樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリC2−6アルキレン−アリレート系樹脂、C2−6アルキレン−アリレート単位を主成分(例えば、50重量%以上)として含むコポリエステル(例えば、共重合成分が、オキシアルキレン単位を有するポリオキシC2−4アルキレングリコールやC6−12脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸などの非対称性芳香族ジカルボン酸などのコポリエステル)、ポリアリレート系樹脂、液晶性ポリエステルなどの芳香族ポリエステル系樹脂;ポリC2−6アルキレン−オギザレート、ポリC2−6アルキレン−サクシネート、ポリC2−6アルキレン−アジペートなどのポリ(C2−6アルキレングリコール−C2−10脂肪族ジカルボン酸エステル)、ポリオキシカルボン酸系樹脂(例えば、ポリグリコール酸やポリ乳酸、グリコール酸−乳酸共重合体など)、ポリラクトン系樹脂(例えば、ポリカプロラクトンなどのポリC3−12ラクトン系樹脂など)、これらのコポリエステル(例えば、ポリカプロラクトン−ポリブチレンサクシネート共重合樹脂など)などが挙げられる。ポリエステル系樹脂はウレタン結合を含んでいてもよい。さらに、ポリエステル系樹脂は生分解性を有していてもよい。
【0033】
(2)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド系樹脂、脂環族ポリアミド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂などが挙げられ、通常、脂肪族ポリアミド系樹脂が使用される。これらのポリアミド系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0034】
脂肪族ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ジアミン成分(テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのC4−10アルキレンジアミン)と脂肪族ジカルボン酸成分(アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などのC4−20アルキレンジカルボン酸など)との縮合物(例えば、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド1212など)、ラクタム(ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのC4−20ラクタムなど)又はアミノカルボン酸(ω−アミノウンデカン酸などの炭素数C4−20アミノカルボン酸など)の単独又は共重合体(例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/11、ポリアミド6/12など)、これらのポリアミド成分が共重合したコポリアミド(例えば、ポリアミド66/11、ポリアミド66/12など)などが挙げられる。ポリアミド系樹脂のジカルボン酸成分はダイマー酸単位を含んでいてもよい。さらに、ポリアミド系樹脂は生分解性を有していてもよい。
【0035】
(3)ポリウレタン系樹脂
ポリウレタン系樹脂としては、例えば、ジイソシアネート類(ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート類、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート類、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類又はその水添ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ジイソシアネート類又はその水添ジイソシアネート類など)と、ポリオール類(例えば、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなど)と、必要により鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン系樹脂が例示できる。
【0036】
(4)ポリ(チオ)エーテル系樹脂
ポリ(チオ)エーテル系樹脂としては、例えば、ポリオキシアルキレン系樹脂(安定化されたポリオキシメチレングリコール又はホモ又はコポリアセタール系樹脂、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などのポリオキシC2−4アルキレングリコール)、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンエーテルケトン系樹脂、ポリスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィド又はその共重合体などのポリチオエーテル系樹脂)、ポリエーテルケトン系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン系樹脂を含む)などが含まれる。
【0037】
(5)ポリカーボネート系樹脂
ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂などのビスフェノール類をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートなどの脂肪族ポリカーボネートなどが含まれる。
【0038】
(6)ポリスルホン系樹脂
ポリスルホン系樹脂としては、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリールスルホン樹脂などが例示できる。
【0039】
(7)ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂には、α−C2−6オレフィンの単独又は共重合体、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(メチルペンテン−1)などのオレフィンの単独又は共重合体、オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0040】
(8)(メタ)アクリル系樹脂
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリルなど)の単独又は共重合体、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが挙げられる。
【0041】
(9)スチレン系樹脂
スチレン系樹脂としては、スチレン系単量体(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなど)の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−α−メチルスチレン共重合体など)、スチレン系単量体と共重合性単量体との共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、スチレン−無水マレイン酸共重合体など;スチレン−ブタジエンブロック共重合体などのブロック共重合体など;ゴム成分の存在下、少なくともスチレン系単量体をグラフト重合したグラフト重合体、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS、又はゴムグラフトポリスチレン系樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、このABS樹脂のブタジエンゴムBに代えて、エチレンプロピレンゴムE、アクリルゴムA、塩素化ポリエチレンC、酢酸ビニル重合体などのゴム成分を用いたグラフト共重合体(AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂などのAXS樹脂)、アクリロニトリルに代えて(メタ)アクリル系単量体(メタクリル酸メチルなど)を用いたグラフト共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体(MBS樹脂)など)などが挙げられる。
【0042】
(10)ハロゲン含有ビニル系樹脂
ハロゲン含有ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン系樹脂、フッ素樹脂などが例示できる。
【0043】
(11)ビニルエステル系樹脂又はその誘導体
ビニルエステル系樹脂又はその誘導体としては、例えば、カルボン酸ビニルエステルの単独又は共重合体(ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、これらのケン化物(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系樹脂)、ケン化物(ビニルアルコール系樹脂)からの誘導体(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール系樹脂など)などが例示できる。エチレン−ビニルアルコール共重合体において、エチレン含量は5〜40重量%程度であってもよい。
【0044】
(12)セルロース誘導体
セルロース誘導体としては、セルロースエステル類(例えば、セルロースジアセテート、セルローストリアセテートなどのセルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのアシルセルロース;セルロースの無機酸エステルなど)、セルロースエーテル類(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、イソプロピルセルロース、ブチルセルロースなどのアルキルセルロース;ベンジルセルロースなどのアラルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのヒドロキシアルキルアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース;シアノエチルセルロースなど)、セルロースカーバメート類(セルロースフェニルカーバメートなど)などが挙げられる。
【0045】
(13)熱可塑性エラストマー
熱可塑性エラストマーには、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0046】
熱可塑性エラストマーがブロック共重合体であるとき、ブロック構造は特に制限されず、トリブロック構造、マルチブロック構造、星形ブロック構造などであってもよい。
【0047】
好ましい樹脂としては、非水溶性樹脂、特に、非水溶性(又は水不溶性)熱可塑性樹脂(又は疎水性熱可塑性樹脂)などが挙げられる。特に、これらの樹脂の中でも、汎用性、コスト、環境適応性などの面から、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などを好適に用いることができる。
【0048】
なお、有機固体成分は、比較的強い分子間相互作用を有する成分(樹脂など)であってもよい。通常、強固な分子間相互作用を有する有機固体成分は、滑剤などの改質剤を表面に有効に付着できないなどの理由により、十分に改質機能(滑り性など)が付与されないことが多い。本発明では、後述するように、両親媒性を有する改質剤を使用するため、水素結合などの分子間相互作用が強固な成分であっても有効に改質できる。このような分子間相互作用を有する有機固体成分としては、例えば、極性基{例えば、酸素原子含有基[例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、オキシアルキレン基(オキシエチレン基などのオキシC2−4アルキレン基など)、エステル基など]、窒素原子含有基(例えば、アミノ基、置換アミノ基(モノ又はジアルキルアミノ基など)、イミノ基、アミド基など)、硫黄原子含有基(例えば、チオ基、スルホ基など)などのヘテロ原子を含有する基、これらの基が塩(例えば、金属塩、アンモニウム塩など)を形成した基など}、ファンデルワールス結合を形成しうる基[例えば、芳香族性を有する基(又は芳香族性基)(例えば、フェニル基、ナフチル基などの置換基を有していてもよいC6−20アリール基、好ましくはC6−15アリール基、さらに好ましくはC6−10アリール基、特にフェニル基など)など]などが挙げられる。これらの基は、単独で又は2種以上組み合わせて有機固体成分が有していてもよい。なお、このような有機固体成分(特に、樹脂)は、通常、強い分子間相互作用を有するものの非水溶性である。このような基(例えば、極性基)は、予め有機固体成分が有していてもよく、有機固体成分に導入してもよい。特に、有機固体成分(A)は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、オキシアルキレン基、エステル基、アミノ基、置換アミノ基、イミノ基、アミド基、およびフェニル基から選択された少なくとも1種を有する樹脂で構成されていてもよい。このような強い分子間相互作用を有する代表的な樹脂(非水溶性樹脂)には、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、酢酸セルロース系樹脂などが挙げられる。
【0049】
樹脂成分の熱変形温度(例えば、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)は、60〜300℃の範囲から選択でき、例えば、80〜260℃、好ましくは100〜240℃(例えば110〜240℃)、さらに好ましくは120〜230℃(例えば130〜220℃)程度である。
【0050】
樹脂成分(熱可塑性樹脂など)の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量で、例えば、5,000〜500,000、好ましくは10,000〜300,000、さらに好ましくは20,000〜150,000程度であってもよい。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量の測定が困難なセルロース誘導体などの熱可塑性樹脂については、粘度平均分子量を採用できる。なお、樹脂成分の重量平均分子量は、樹脂成分の混練時間や混練温度などによっても調節できる。
【0051】
(B)改質剤
本発明では、有機固体成分(A)と、両親媒性を有する固体状の改質剤(B)とを組み合わせることにより、有機固体粒子を有効に改質する。すなわち、前記分散体において、有機固体成分とマトリックス成分とは、通常、非相溶であり、一方の成分(特に有機固体成分)が疎水性であり、他方の成分(特にマトリックス成分)が水溶性である場合が多く、慣用の改質剤を分散体に含有させても、分散相の内部やマトリックスに改質剤が偏在したり、改質剤そのものが分散相を形成するなどにより、改質剤の機能(又は改質効果)を有機固体粒子(又は有機固体粒子の表面)に十分に付与できない。
【0052】
そこで、本発明では、有機固体成分に対する親和性を有するとともに、マトリックスにも適度な親和性を有する両親媒性の固体状改質剤を使用することにより、有機固体粒子の少なくとも表面に確実に改質剤を固体状で存在(又は分配)させて、有機固体粒子を有効に改質することができる。
【0053】
両親媒性を有する固体状の改質剤(以下、単に両親媒性改質剤、固体状改質剤、改質剤などということがある)としては、親水性基と疎水性基(又は親油性基)とを有する改質剤(化合物)が挙げられる。親水性基としては、前記例示の極性基、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキシアルキレン基、エステル基、アミノ基、アミド基、スルホ基など)などが挙げられる。また、疎水性基(又は親油基)としては、例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、ヘキシル基、オクチル基、ラウリル基、パルミチル基、ステアリル基などのC6−40アルキル基、好ましくはC8−36アルキル基、さらに好ましくはC12−34アルキル基などの長鎖アルキル基)、アルケニル基(例えば、ヘキセニル基、オクテニル基、オレイル基などのC6−40アルケニル基、好ましくはC8−36アルケニル基、さらに好ましくはC12−34アルケニル基などの長鎖アルケニル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのアルキル基が置換していていてもよいC6−20シクロアルキル基)などの飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基;アリール基(例えば、フェニル基、メチルフェニル基、デシルフェニル基などのアルキル基が置換していてもよいC6−30アリール基など)などの芳香族炭化水素基など]などが挙げられる。両親媒性改質剤は、これらの親水性基及び/又は疎水性基を単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。
【0054】
両親媒性改質剤は、常温(例えば、25℃)で固体状であればよく、両親媒性改質剤が融点(又は軟化点)を示す場合、融点(又は軟化点)は、25℃以上(例えば、30〜400℃程度)の範囲から選択でき、例えば、35℃以上(例えば、40〜350℃程度)、好ましくは45℃以上(例えば、50〜300℃程度)、さらに好ましくは50〜250℃(例えば、60〜200℃)程度であってもよい。なお、改質剤が、複数の改質剤で構成された混合物である場合、混合物の融点が、上記範囲であってもよい。
【0055】
また、両親媒性改質剤は、非結晶性であってもよく、結晶性を有していてもよい。特に、結晶性を有する両親媒性改質剤を改質剤として用いると、改質剤の機能をより一層有効に発現できる。この理由は定かではないが、結晶性の両親媒性改質剤は、粒子表面で分子鎖の配列方向に親水性基および疎水性基に由来する板状の結晶構造を形成するとともに、さらに隣接する板状結晶が親水性基および疎水性基双方の親和性により分散相(有機固体粒子)表面に沿って(又は粒子の接線方向に沿って)平行又はほぼ平行に板状の層状結晶構造(又はラメラ結晶構造)を形成する。そして、この層状結晶が劈開することにより、効率よく改質剤の改質機能(例えば、滑り性など)を発現できるものと考えられる。
【0056】
なお、結晶性を有する改質剤(結晶性改質剤)の分子量(又は平均分子量又は式量)は、例えば、100〜5000、好ましくは150〜3000、さらに好ましくは200〜2000(例えば、230〜1500)、特に250〜1000程度であってもよい。
【0057】
代表的な両親媒性改質剤には、固体状の帯電防止剤(又は界面活性剤)、両親媒性を有する固体状の滑剤[例えば、脂肪酸系ワックス、高級アルコール類[例えば、ステアリルアルコールなどの炭素数6以上のアルコール類(好ましくは脂肪族C8−40アルコール類、さらに好ましくは脂肪族C10−36アルコール類など)など]などが挙げられる。
【0058】
固体状の界面活性剤としては、固体状であればよく、例えば、アニオン性界面活性剤{例えば、スルホン酸系界面活性剤(例えば、ドデカンスルホン酸ナトリウムなどの飽和又は不飽和脂肪族スルホン酸又はその塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの芳香族スルホン酸又はその塩など)、硫酸エステル系界面活性剤(例えば、硫酸ドデシルナトリウムなど)、リン酸エステル系界面活性剤[例えば、飽和又は不飽和脂肪族リン酸又はその塩(例えば、ドデシルリン酸ナトリウム、ドデシルリン酸カリウム、モノセチルリン酸エステルナトリウム・亜鉛塩など)など]など}、カチオン性帯電防止剤(アルキルアミン酢酸塩などの第1乃至第3級アミン又はその塩、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドなどの第4級アンモニウム塩など)、ノニオン性帯電防止剤[例えば、ポリアルキレンオキシド型界面活性剤(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミンジステアレート、ポリオキシエチレングリセリンステアリン酸エステルなど)、アルカノールアミン類(例えば、ラウリルエタノールアミンなどの長鎖脂肪族アルカノールアミン)など]、両性界面活性剤(例えば、アミノ酸又はその誘導体、ベタイン型両性界面活性剤、タウリン及びその塩、リジン及びその塩など)などが含まれる。界面活性剤は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0059】
好ましい両親媒性改質剤には、脂肪酸系ワックスが含まれる。脂肪酸系ワックスは、滑剤などとして用いられており、滑り性(又は潤滑性)を付与するのに有用な改質剤である。また、脂肪酸アミドなどの脂肪酸系ワックスは、両親媒性を有しているため、滑り性だけでなく、帯電防止性を有しており、滑り性および帯電防止性を付与できる場合が多い。
【0060】
脂肪酸系ワックス(脂肪酸系滑剤)としては、脂肪酸、脂肪酸誘導体などが挙げられる。脂肪酸および脂肪酸誘導体において、脂肪酸としては、飽和脂肪酸[例えば、高級飽和脂肪酸(例えば、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、カルナウバ酸、セロチン酸、モンタン酸、ノナコサノイック酸、メリシン酸、ラクセロン酸、ゲータ酸、セプラスチン酸などの炭素数6以上の飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、C8−40飽和脂肪族モノカルボン酸、好ましくはC12−36飽和脂肪族モノカルボン酸、さらに好ましくは16−34飽和脂肪族モノカルボン酸、特にC18−32アルカンモノカルボン酸)など]、不飽和脂肪酸[例えば、高級不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸、エルカ酸、エルシン酸、リノール酸、リシノレイン酸、エレオステアリン酸などの炭素数12以上の不飽和脂肪族モノカルボン酸(例えば、C14−40不飽和脂肪族モノカルボン酸、好ましくはC16−36不飽和脂肪族モノカルボン酸、さらに好ましくはC18−32不飽和脂肪族モノカルボン酸)など]などが挙げられる。好ましい脂肪酸には、高級飽和脂肪酸(例えば、ステアリン酸などのC18−30アルカンモノカルボン酸など)が含まれる。
【0061】
脂肪酸の誘導体としては、脂肪酸の金属塩、エステル、アミドなどが挙げられる。脂肪酸金属塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウムなど)、遷移金属(例えば、亜鉛、カドミウムなどの周期表第2B族金属など)、周期表第3B族金属(例えば、アルミニウムなど)、周期表第4B族金属(例えば、スズ、鉛など)などの金属と脂肪酸(前記例示の脂肪酸など)との塩[例えば、高級飽和脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸鉛、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸亜鉛など)、高級不飽和脂肪酸金属塩(例えば、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カルシウム、オレイン酸亜鉛、エルカ酸亜鉛など)など]などが挙げられる。
【0062】
脂肪酸エステルは、脂肪酸(前記例示の脂肪酸など)とアルコールとのエステルである。アルコールとしては、モノオール[脂肪族モノオール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなどのC1−30アルカノール、好ましくはC1−18アルカノール、さらに好ましくはC2−10アルカノールなど)など]、ポリオール(又は多価アルコール){例えば、脂肪族ポリオール[例えば、アルカンジオール(エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどのC2−10アルキレングリコール、好ましくはC2−6アルキレングリコールなど)、アルカンポリオール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどのC2−10アルカンポリオール、好ましくはC2−6アルカンポリオールなど)、ポリオールのオリゴマー(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの(ポリ)オキシC2−4アルキレングリコールなど)など]などが挙げられる。
【0063】
脂肪酸アミドは、アミン又はアンモニアの水素原子を脂肪酸(前記例示の脂肪酸など)に対応する酸基で置換した化合物である。アミンは、第1級アミン(又はN−モノ置換アミン)又は第2級アミン(又はN,N−二置換アミン)であってもよく、モノアミン又はポリアミンであってもよい。具体的な脂肪酸アミドには、脂肪酸モノアミド類、脂肪酸ポリアミド(ポリ脂肪酸アミド)類などが含まれる。
【0064】
脂肪酸モノアミド類としては、飽和脂肪酸モノアミド類、不飽和脂肪酸モノアミド類などが挙げられる。飽和脂肪酸モノアミド類としては、例えば、アルカンカルボン酸モノアミド類などが挙げられる。アルカンカルボン酸モノアミド類には、例えば、アルカンカルボン酸モノアミド[例えば、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アラキン酸アミド、ベヘン酸アミド、モンタン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸アミドなどのC8−40アルカンカルボン酸モノアミド(好ましくはC12−36アルカンカルボン酸モノアミド、さらに好ましくはC16−34アルカンカルボン酸モノアミド、特にC18−32アルカンカルボン酸モノアミドなど)など]、N−置換アルカンカルボン酸モノアミド[例えば、N−メチルパルミチン酸アミド、N−パルミチルパルミチン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−メチルステアリン酸アミド、N,N−ジメチルステアリン酸アミド、N−メチロールステアリン酸アミド、N−パルミチルステアリン酸アミド、N−ヒドロキシエチルステアリン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、N−ヒドロキシエチル−12−ヒドロキシステアリン酸アミド、パルミチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、アラキン酸ジエタノールアミド、ベヘン酸ジエタノールアミド、リグノセリン酸ジエタノールアミド、ステアロアミドエチルステアレート、ステアリン酸アニリドなどのN−置換C8−40アルカンカルボン酸モノアミド(好ましくはN−置換C12−36アルカンカルボン酸モノアミド、さらに好ましくはN−置換C16−34アルカンカルボン酸モノアミド、特にN−置換C18−32アルカンカルボン酸モノアミドなど)など]などが挙げられる。
【0065】
不飽和脂肪酸モノアミド類としては、不飽和脂肪酸モノアミド[例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノレイン酸アミドなどのC8−40不飽和脂肪酸モノアミド、好ましくはC12−36不飽和脂肪酸モノアミド、さらに好ましくはC16−34不飽和脂肪酸モノアミド、特にC18−32不飽和脂肪酸モノアミド]、N−置換不飽和脂肪酸モノアミド(例えば、N−ステアリルエルカ酸アミドなどの置換基を有していてもよいN−置換C8−40不飽和脂肪酸モノアミドなど)などが挙げられる。
【0066】
脂肪酸ポリアミド類としては、ビス脂肪酸アミド類、例えば、飽和脂肪酸ビスアミド類、不飽和脂肪酸ビスアミド類などが含まれる。
【0067】
飽和脂肪酸ビスアミド類としては、アルキレン(又はアルキリデン)ビス(飽和脂肪酸アミド)などが挙げられる。アルキレン(又はアルキリデン)ビス(飽和脂肪酸アミド)としては、例えば、アルキレン(又はアルキリデン)ビス(アルカンカルボン酸アミド)[例えば、N,N’−メチレンビス(ステアリン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(パルミチン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(ステアリン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(ベヘン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(モンタン酸アミド)、N,N’−ヘキサメチレンビス(ステアリン酸アミド)、N,N’−ヘキサメチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸アミド)などのN,N’−C1−12アルキレン(又はアルキリデン)ビス(C8−40アルカンカルボン酸モノアミド)、好ましくはN,N’−C1−10アルキレンビス(C12−36アルカンカルボン酸モノアミド)、さらに好ましくはN,N’−C1−8アルキレンビス(C16−34アルカンカルボン酸モノアミド)、特にN,N’−C1−6アルキレンビス(C18−32アルカンカルボン酸モノアミド)など]などが挙げられる。
【0068】
不飽和脂肪酸ビスアミド類としては、アルキレン(又はアルキリデン)ビス(不飽和脂肪酸アミド)[例えば、N,N’−エチレンビス(オレイン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(エルカ酸アミド)、N,N’−エチレンビス(オクタデカジエニルアミド)、N,N’−エチレンビス(リシノレイルアミド)、N,N’−ヘキサメチレンビス(リシノレイルアミド)などのN,N’−C1−12アルキレン(又はアルキリデン)ビス(C8−40不飽和脂肪酸モノアミド)、好ましくはN,N’−C1−10アルキレンビス(C12−36不飽和脂肪酸モノアミド)、さらに好ましくはN,N’−C1−8アルキレンビス(C16−34不飽和脂肪酸モノアミド)、特にN,N’−C1−6アルキレンビス(C18−32不飽和脂肪酸モノアミド)など]などの他、エチレンジアミン−(ステアリン酸アミド)オレイン酸アミドなどの混酸アミドなども含まれる。
【0069】
これらの脂肪酸系ワックスのうち、脂肪酸アミドは、結晶性(分子結晶性)を有する両親媒性の脂肪酸系ワックスであり、分散相表面に有効に滑り性を付与でき、好適に用いることができる。特に、脂肪酸アミドの中でも、長鎖(又は高級)脂肪酸アミド(例えば、アミド基(アミド基を構成する水素原子)が置換されていてもよいC12−36飽和又は不飽和脂肪酸アミド)、例えば、長鎖飽和脂肪酸モノアミド(例えば、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドなどのC12−36アルカンカルボン酸モノアミド)、長鎖不飽和脂肪酸モノアミド(例えば、エルカ酸アミドなどのC12−36不飽和脂肪酸モノアミドなど)、長鎖脂肪族基が置換した長鎖脂肪酸モノアミド{例えば、N−長鎖アルキル−長鎖脂肪酸モノアミド(例えば、N−ステアリルステアリン酸アミドなどのN−C12−36アルキル−C12−36アルカンカルボン酸モノアミドなどのN−長鎖アルキル−長鎖アルカンカルボン酸モノアミドなど);長鎖脂肪族アシル基が置換した長鎖脂肪酸モノアミド(エステルアミド化合物)[例えば、ステアロアミドエチルステアレートなどのN−(C8−40アシルオキシ−アルキル)C12−36アルカンカルボン酸モノアミド、好ましくはN−(C12−36アシルオキシ−アルキル)C14−34アルカンカルボン酸モノアミド、さらに好ましくはN−(C16−32アシルオキシ−C2−4アルキル)C16−32アルカンカルボン酸モノアミドなどの長鎖脂肪族アシル基が置換した長鎖アルカンカルボン酸モノアミド]などの長鎖脂肪族アシル基が置換した長鎖飽和脂肪酸モノアミド}などの長鎖脂肪族基が置換した長鎖脂肪酸モノアミドなど}、長鎖飽和脂肪酸ビスアミド[例えば、N,N’−エチレンビス(ステアリン酸アミド)などのN,N’−C1−12アルキレン(又はアルキリデン)ビス(C12−36アルカンカルボン酸モノアミド)など]、長鎖不飽和脂肪酸ビスアミド[例えば、N,N’−エチレンビス(オレイン酸アミド)などのN,N’−C1−12アルキレン(又はアルキリデン)ビス(C12−36不飽和脂肪酸モノアミド)など]などが好ましい。
【0070】
脂肪酸系ワックス(例えば、脂肪酸アミド)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0071】
脂肪酸系ワックス(脂肪酸アミドなどの分子性結晶を有する脂肪酸系ワックス)の融点は、例えば、30℃以上(例えば、30〜400℃程度)、好ましくは35〜350℃、さらに好ましくは40〜300℃程度であってもよい。特に、脂肪酸アミドの融点は、350℃以下(例えば、30〜300℃程度)の範囲から選択でき、例えば、40〜250℃、好ましくは50〜230℃(例えば、60〜200℃)、さらに好ましくは70〜180℃、特に75〜160℃(例えば、80〜150℃)程度であってもよい。なお、脂肪酸アミドが、2種以上の混合物である場合、脂肪酸アミド全体の融点が、上記範囲であってもよい。
【0072】
粒子(及び分散体)において、有機固体成分(A)と両親媒性改質剤(B)との割合は、前者/後者(重量比)=99.9/0.1〜50/50(例えば、99.8/0.2〜65/35)、好ましくは99.7/0.3〜80/20(例えば、99.5/0.5〜85/15)、さらに好ましくは99/1〜90/10(例えば、98.5/1.5〜95/5)程度であってもよい。
【0073】
なお、本発明では、前記背景技術の項で記載した方法などを適用しても、滑り性(潤滑性、しっとり感など)を十分に付与することが困難な有機固体成分であっても、有効に滑り性を付与できる。そのため、特に、分散相は、滑り性が良好でない有機固体成分(例えば、ポリアミド系樹脂など)と両親媒性を有する固体状の滑剤(特に、脂肪酸アミド)とで構成してもよい。
【0074】
なお、前記分散体(分散相)は、他の改質剤を含んでいてもよい。他の改質剤としては、慣用の改質剤(又は添加剤)、例えば、可塑剤(又は軟化剤)、充填剤(粉粒状フィラーなど)、光分解性付与剤(アナターゼ型酸化チタンなど)、滑剤[例えば、オイル(例えば、流動パラフィンなどの鉱物油、シリコーンオイルなど)、ワックス(例えば、ポリエチレンワックス、エチレン共重合体ワックス、ポリプロピレンワックスなどのオレフィン系ワックス)石油ワックスなど)などの前記両親媒性改質剤の範疇に属さない滑剤]、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候(光)安定剤、加工安定剤など)、紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物の粉末など)、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤[例えば、染料又は顔料[油溶性染料(ソルベント染料など)、分散染料、バット染料、硫化染料、アゾイック染料(ナフトール染料)、無機顔料(二酸化チタンなどの白色顔料;炭酸カルシウムなどの体質顔料;カーボンブラックなどの黒色顔料;カドミウムレッドなどの赤色顔料;カドミウムイエローなどの黄色顔料;群青などの青色顔料;ニッケル、フェライトなどの強磁性金属粉末など)、有機顔料(アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリノン・ペリレン系顔料、スレン系顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン系顔料、インジゴ又はチオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン化合物など)、蛍光顔料又は染料、蓄光顔料など]、電荷制御剤(ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、アミン系化合物などの正電荷制御剤;サリチル酸金属錯体、アゾ染料金属錯体、銅フタロシアニン染料、ニトロイミダゾール誘導体、尿素誘導体などの負電荷制御剤など)、離型剤、光沢剤、濡れ性改良剤、流動化剤、架橋剤、抗菌剤、防腐剤などが例示できる。分散相(又は有機固体成分)は、これらの他の改質剤を単独で又は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0075】
特に、改質剤は、最終製品である有機固体粒子の用途などに応じて選択でき、例えば、化粧品(ファンデーション、白粉、頬紅など)などの用途では、着色剤、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系吸収剤、ケイ皮酸系吸収剤、p−アミノ安息香酸系吸収剤、サリチル酸系吸収剤、ジベンゾイルメタン系吸収剤、ウロカニン酸又はそのエステル、β−イソプロピルフラノン、β−カロチンなど)、紫外線散乱剤などを含んでいてもよい。また、トナーなどの画像記録材料用途では、例えば、電荷制御剤、流動化剤、ワックス類などを含んでいてもよい。さらに、塗料などの用途では、例えば、架橋剤、耐候(光)安定剤、紫外線吸収剤、流動化剤などを含んでいてもよい。
【0076】
これらの他の改質剤(添加剤)は、それぞれ有効量であればよく、例えば、有機固体成分100重量部に対して、添加剤の総量は、0〜100重量部程度の範囲から選択でき、例えば、0.01〜50重量部(例えば、0.03〜30重量部)、好ましくは0.05〜20重量部(例えば、0.1〜20重量部)、さらに好ましくは0.1〜10重量部(例えば、0.5〜10重量部)程度であってもよい。
【0077】
なお、改質剤の形状は、例えば、粉粒状であってもよい。改質剤を分散相に含有させるため、通常、改質剤(B)の粒子サイズは、所望の分散相(又は有機固体粒子)の粒子サイズより小さくする必要がある。分散相における固体状改質剤(B)の平均粒子径は、例えば、分散相(又は得られる着色粒子)の平均粒子径の50%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下であってもよい。具体的には、分散相における固体状改質剤の平均粒子径は、例えば、2nm〜10μm(例えば、3nm〜1μm)、好ましくは5〜500nm、さらに好ましくは10〜300nm程度であってもよい。
【0078】
(C)マトリックス成分
前記分散体において、マトリックスを構成するマトリックス成分は、有機固体成分(A)[および改質剤(B)]を分散可能な成分であればよい。すなわち、前記マトリックス成分(C)は、有機固体成分(A)および改質剤(B)に対して、通常、相溶性を有しない(又は非相溶性の)成分であればよい。なお、マトリックス(又はマトリックス成分)は、通常、固体(常温で固体)である。このような固体マトリックス成分は、固体であれば、液体のマトリックス成分を含んでいてもよい。なお、水溶性マトリックス成分と、有機固体成分及び改質剤とを組み合わせて分散体を形成した後、後述するように、適宜溶出又は洗浄するなどの方法により、改質剤により改質された有機固体粒子(樹脂粒子など)を形成できる。
【0079】
マトリックス成分としては、有機固体成分(A)と相溶性を有さない成分であって、有機固体成分(A)との溶融混練が可能であれば特に限定されず、非水溶性(又は疎水性)の成分であってもよいが、工業的な観点あるいは環境負荷の観点から、水溶性であることが好ましい。すなわち、マトリックス成分を水溶性のマトリックス成分とすることにより、分散体から、水によりマトリックスを除去できるため、経済的および環境的に有利である。
【0080】
このような水溶性のマトリックス成分としては、有機固体成分や改質剤の種類にもよるが、例えば、水溶性樹脂[例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体など)、ビニルアルコール系重合体(例えば、ポリビニルアルコールなど)水溶性アクリル系樹脂、水溶性スチレン系樹脂、ポリビニルピロリドンなどの水溶性合成樹脂;セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなどのアルキル−ヒドロキシアルキルセルロースなどのヒドロキシル基を有するセルロース誘導体、カルボキシメチルセルロースなどのカルボキシアルキルセルロース、エチルセルロースなどのアルキルセルロースなどのセルロースエーテル類など)など]、糖類又はその誘導体[例えば、単糖類(例えば、グルコースなど)、オリゴ糖、多糖類(例えば、デンプンなど)、糖アルコールなど]などが挙げられる。これらのマトリックス成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0081】
特に、有機固体粒子のコントロール性及び製造効率、広範な有機固体粒子(例えば、樹脂)に対する適用性などの観点から、マトリックス成分は、少なくともオリゴ糖(C1)で構成していてもよい。すなわち、オリゴ糖は、糖類でありながら、樹脂成分などと均一に混練可能である場合が多く、幅広い種類の有機固体成分(樹脂)との組み合わせであっても、効率よくマトリックスを形成できる。また、オリゴ糖は、糖類であるので、前記水溶性樹脂などに比べて、分散体から溶出により除去しやすく、後述する有機固体粒子の生産性を高めることができる。オリゴ糖で構成されたマトリックス成分については、特開2004−51942号公報を参照することもできる。
【0082】
(C1)オリゴ糖
オリゴ糖(C1)は、2〜10分子の単糖類が、グリコシド結合を介して脱水縮合したホモオリゴ糖と、少なくとも2種類以上の単糖類及び/又は糖アルコールが、2〜10分子グリコシド結合を介して脱水縮合したヘテロオリゴ糖とに大別される。オリゴ糖(C1)としては、例えば、二糖類乃至十糖類が挙げられ、通常、二糖類乃至六糖類のオリゴ糖が使用される。オリゴ糖は、通常、常温で固体である。なお、これらのオリゴ糖は、無水物でもよい。また、オリゴ糖において、単糖類と糖アルコールとが結合していてもよい。なお、オリゴ糖は複数の糖成分で構成されたオリゴ糖組成物であってもよい。このようなオリゴ糖組成物であっても単にオリゴ糖という場合がある。オリゴ糖(又はオリゴ糖組成物)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0083】
二糖類としては、トレハロース(例えば、α,α−トレハロース、β,β−トレハロース、α,β−トレハロースなど)、コージービオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオースなどのホモオリゴ糖;ラクトース、スクロース、パラチノース、メリビオース、ルチノース、プリメベロース、ツラノースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
【0084】
三糖類としては、マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、セロトリオースなどのホモオリゴ糖;マンニノトリオース、ソラトリオース、メレジトース、プランテオース、ゲンチアノース、ウンベリフェロース、ラクトスクロース、ラフィノースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
【0085】
四糖類としては、マルトテトラオース、イソマルトテトラオースなどのホモオリゴ糖;スタキオース、セロテトラオース、スコロドース、リキノース、パノースの還元末端に糖又は糖アルコールが結合したテトラオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。
【0086】
これらの四糖類のうち、パノースの還元末端に単糖類又は糖アルコールが結合したテトラオースは、例えば、特開平10−215892号公報に開示されており、パノースの還元末端に、グルコース、フルクトース、マンノース、キシロース、アラビノースなどの単糖類や、ソルビトール、キシリトール、エリスリトールなどの糖アルコールが結合したテトラオースが例示できる。
【0087】
五糖類としては、マルトペンタオース、イソマルトペンタオースなどのホモオリゴ糖;パノースの還元末端に二糖類が結合したペンタオースなどのヘテロオリゴ糖が挙げられる。パノースの還元末端に二糖類が結合したペンタオースは、例えば、特開平10−215892号公報に開示されており、パノースの還元末端に、スクロース、ラクトース、セロビオース、トレハロースなどの二糖類が結合したペンタオースが例示できる。
【0088】
六糖類としては、マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどのホモオリゴ糖などが挙げられる。
【0089】
オリゴ糖は、有機固体成分との溶融混練性の観点から、少なくとも四糖類で構成されているのが好ましい。
【0090】
オリゴ糖は、多糖類の分解により生成するオリゴ糖組成物であってもよい。オリゴ糖組成物は、通常、四糖類を含んでいる。オリゴ糖組成物としては、例えば、デンプン糖(デンプン糖化物)、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、フルクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖などが挙げられる。
【0091】
例えば、デンプン糖は、デンプンに酸又はグルコアミラーゼなどを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、複数個のグルコースが結合したオリゴ糖の混合物であってもよい。デンプン糖としては、例えば、東和化成工業(株)製の還元デンプン糖化物(商品名:PO−10、四糖類の含有量90重量%以上)などが挙げられる。
【0092】
ガラクトオリゴ糖は、ラクトースにβ−ガラクトシダーゼなどを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、ガラクトシルラクトースとガラクトース−(グルコース)の混合物(nは1〜4の整数)であってもよい。
【0093】
カップリングシュガーは、デンプンとスクロースにシクロデキストリン合成酵素(CGTase)を作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、(グルコース)−スクロースの混合物(nは1〜4の整数)であってもよい。
【0094】
フルクトオリゴ糖(フラクトオリゴ糖)は、砂糖にフルクトフラノシダーゼを作用させて得られるオリゴ糖組成物であり、スクロース−(フルクトース)の混合物(nは1〜4の整数)であってもよい。
【0095】
これらのオリゴ糖組成物において、溶融混練での急激な粘度低下を防止するため、オリゴ糖組成物中の三糖類、四糖類(特に四糖類)の含有量は、例えば、60重量%以上(60〜100重量%)、好ましくは70重量%以上(70〜100重量%)、さらに好ましくは80重量%以上(80〜100重量%)、特に90重量%以上(90〜100重量%)であってもよい。
【0096】
オリゴ糖は還元型(マルトース型)であってもよく、非還元型(トレハロース型)であってもよいが、還元型のオリゴ糖は、耐熱性に優れるため好ましい。
【0097】
還元型のオリゴ糖としては、遊離のアルデヒド基又はケトン基を有し、還元性を示す糖であれば、特に限定されず、例えば、コージービオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、パラチノース、メリビオース、ルチノース、プリメベロース、ツラノースなどの二糖類;マルトトリオース、イソマルトトリオース、パノース、セロトリオース、マンニノトリオース、ソラトリオースなどの三糖類;マルトテトラオース、イソマルトテトラオース、セロテトラオース、リキノースなどの四糖類;マルトペンタオース、イソマルトペンタオースなどの五糖類;マルトヘキサオース、イソマルトヘキサオースなどの六糖類などが挙げられる。
【0098】
一般的に、前記オリゴ糖は、天然物である多糖類の誘導体あるいはそれらの還元によって製造される天然物由来の製造物であるため、環境への負荷を低減できる。
【0099】
混練により、効果的に有機固体成分と助剤成分とを分散させるためには、オリゴ糖の粘度は高いのが望ましい。具体的には、B型粘度計を用いて温度25℃で測定したとき、オリゴ糖の50重量%水溶液の粘度は、例えば、1〜500Pa・s、好ましくは2〜250Pa・s(例えば、3〜100Pa・s)、さらに好ましくは4〜50Pa・s(例えば、6〜50Pa・s)程度である。
【0100】
また、オリゴ糖(C1)の融点又は軟化点は、有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度(例えば、有機固体成分(A)の融点又は軟化点、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)より高いのが好ましい。なお、融点又は軟化点を示さず、熱分解するオリゴ糖[例えば、還元デンプン糖化物などのデンプン糖など]では、分解温度をオリゴ糖の「融点又は軟化点」としてもよい。オリゴ糖の融点又は軟化点は、有機固体成分(A)の種類などに応じて、70〜300℃の範囲で選択でき、例えば、90〜290℃、好ましくは100〜280℃(例えば、110〜270℃)、さらに好ましくは120〜260℃(例えば、130〜260℃)程度であってもよい。なお、一般にオリゴ糖の無水物は、高い融点又は軟化点を示す。オリゴ糖の融点又は軟化点と、有機固体成分(A)の熱変形温度との温度差は、例えば、1〜80℃、好ましくは10〜70℃、さらに好ましくは15〜60℃程度である。
【0101】
また、水溶性マトリックス成分は、さらに前記オリゴ糖を可塑化するための水溶性可塑化成分(C2)を含んでいてもよい。オリゴ糖(C1)と水溶性可塑化成分(C2)とを組み合わせると、有機固体成分(A)との混練において、水溶性マトリックス成分(C)の粘度を調整できる。
【0102】
(C2)水溶性可塑化成分
水溶性可塑化成分(C2)としては、オリゴ糖(C1)が水和して水飴状態となる現象を発現できるものであればよく、例えば、糖類、糖アルコールなどが使用できる。これらの可塑化成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0103】
(a)糖類
糖類としては、オリゴ糖(C1)を有効に可塑化するために、通常、単糖類及び/又は二糖類が使用される。これらの糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0104】
単糖類としては、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、オクトース、ノノース、デコースなどが挙げられる。これらの化合物は、アルドースやケトースであってもよく、ジアルドース(糖の誘導体であって炭素鎖両末端がアルデヒド基である化合物、例えば、テトラアセチルガラクトヘキソジアルドース、イドヘキソジアルドース、キシロペントジアルドース等)、複数のカルボニル基を有する単糖類(オソン、オノース等のアルドアルコケトース等)、メチル基を有する単糖類(アルトロメチロースなどのメチル糖等)、アシル基(特にアセチル基などのC2−4アシル基等)を有する単糖類(前記アルドースのアセチル体、例えば、アルデヒドグルコースペンタアセチル化合物などのアセチル体など)、カルボキシル基が導入された糖類(糖酸またはウロン酸等)、チオ糖、アミノ糖、デオキシ糖などであってもよい。
【0105】
このような単糖類の具体例としては、例えば、テトロース(エリトロース、トレオロース等)、ペントース(アラビノース、リボース、リキソース、デオキシリボース、キシロース等)、ヘキソース(アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、フコース、ラムノース、タロース、ガラクチュロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン等)などが例示できる。
【0106】
また、単糖類は、ヘミアセタール結合により環状構造を形成した環状異性体であってもよい。単糖類は、旋光性を有している必要はないが、D形、L形、DL形のいずれであってもよい。これらの単糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0107】
二糖類としては、オリゴ糖(C1)を可塑化できるものであれば、特に制限されず、例えば、前記二糖類のうち、低融点または低軟化点を有する二糖類(例えば、ゲンチオビオース、メリビオース、トレハロース(二水化物)など)、前記単糖類のホモ及びヘテロ二糖類に相当する二糖類(例えば、グルクロン酸とグルコースとがα−1,6グリコシド結合したグルクロノグルコースなどのアルドビオウロン酸など)が例示できる。
【0108】
糖類は、熱安定性に優れるため、還元糖が好ましく、そのような糖類としては、遊離の単糖類の他、前記二糖類のうち、低融点又は低軟化点の還元糖(例えば、ゲンチオビオース、メリビオースなど)が挙げられる。
【0109】
(b)糖アルコール
糖アルコールとしては、アルジトール(グリシトール)などの鎖状糖アルコールであってもよく、イノシットなどの環式糖アルコールであってもよいが、通常は、鎖状糖アルコールが使用される。これらの糖アルコールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0110】
鎖状糖アルコールとしては、テトリトール(トレイトール、エリスリトールなど)、ペンチトール[ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール(アドニトール)、キシリトール、リキシトールなど]、ヘキシトール[ソルビトール、マンニトール、イジトール、グリトール、タリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、アロズルシトール(アリトール)、アルスリトール]、ヘプチトール、オクチトール、ノニトール、デキトール、及びドデキトールなどが挙げられる。
【0111】
これらの糖アルコールのうち、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール、マンニトールなどが好ましい。糖アルコールは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトール、およびソルビトールから選択された少なくとも1つの糖アルコールを含む場合が多い。
【0112】
可塑化成分(C2)は、常温(例えば、15〜20℃程度)で液体(シロップ状)であってもよいが、取扱い性などの点から、通常、固体である場合が多い。マトリックス成分(C)をオリゴ糖(C1)と可塑化成分(C2)とで構成すると、オリゴ糖(C1)が明瞭な融点や軟化点を示さない熱分解性オリゴ糖であっても、有効に可塑化又は軟化できる。
【0113】
可塑化成分(C2)の融点又は軟化点は、通常、有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度(例えば、有機固体成分(A)の融点又は軟化点、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)以下である。なお、可塑化成分の中には、高融点(例えば200℃以上)を有するにも拘わらず、オリゴ糖と共存すると、実際の融点よりも低い温度で融解する物質が存在する。例えば、ペンタエリスリトールは、実際の融点(260℃)より低温(例えば160〜180℃程度)でオリゴ糖に対する可塑化効果を発揮するとともに、自身も融解状態となる。このような高融点の可塑化成分は、単独では有機固体成分(樹脂成分など)の熱変形温度において融解しないため利用できないが、オリゴ糖と組み合わせることによって有効に利用できる。なお、実際の融点より低温でオリゴ糖に対する可塑化効果を発揮する可塑化成分(例えば、ペンタエリスリトールなど)においては、オリゴ糖に対して可塑化効果を発揮する温度を、可塑化成分(C2)の「融点又は軟化点」としてもよい。
【0114】
マトリックス成分(C)の融点又は軟化点は、有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度以上であってもよく、熱変形温度以下であってもよい。有機固体成分(A)及びマトリックス成分(C)は、少なくとも混練温度(又は成形加工温度)において溶融又は軟化すればよい。例えば、マトリックス成分(C)の融点又は軟化点と、有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度との温度差は、0〜100℃の範囲で選択してもよく、例えば、3〜80℃(例えば3〜55℃)、好ましくは5〜60℃(例えば、5〜45℃)、さらに好ましくは5〜40℃(例えば、10〜35℃)程度であってもよい。なお、マトリックス成分(C)の融点又は軟化点と、有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度との温度差が小さい場合(例えば前記温度差が0〜20℃程度である場合)、固化速度の高いマトリックス成分(C)(例えば、糖成分)により短時間で分散形態を固定化できるという利点がある。
【0115】
さらに、マトリックス成分(C)(例えば、オリゴ糖(C1)と可塑化成分(C2)とを含む成分)のメルトフローレートは、例えば、有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度(例えば、有機固体成分(A)の融点又は軟化点、前記ビカット軟化点)より30℃高い温度でJIS K 7210で規定されるメルトフローレートを測定したとき、1以上(例えば、1〜40程度)、好ましくは5以上(例えば、5〜30程度)、さらに好ましくは10以上(例えば、10〜20程度)であってもよい。
【0116】
マトリックス成分(C)において、可塑化成分(C2)の割合(重量比)は、溶融混練に伴って、可塑化成分が凝集などにより局在化せず、オリゴ糖(C1)を効率的に可塑化できる量、例えば、オリゴ糖(C1)/可塑化成分(C2)=99/1〜50/50から選択でき、好ましくは95/5〜60/40、さらに好ましくは90/10〜70/30程度である。
【0117】
分散相(有機固体成分(A)と改質剤(B)との総量)とマトリックス成分(C)との割合(重量比)は、有機固体成分及びマトリックス成分の種類や粘度などに応じて選択でき、特に制限されないが、通常、成形性を損なわない量、例えば、前者/後者=55/45〜1/99、好ましくは50/50〜5/95、さらに好ましくは45/55〜10/90程度である。
【0118】
[有機固体粒子の製造方法]
本発明の有機固体粒子は、前記分散体から前記マトリックス成分を(C)を除去することにより得られる。
【0119】
(分散体の製造方法)
前記分散体は、有機固体成分(A)と改質剤(B)とで構成された粒子状分散相をマトリックス成分(C)に分散できる限り、特に限定されないが、通常、有機固体成分(A)及び改質剤(B)と、マトリックス成分(C)とを混練することにより調製できる。
【0120】
なお、有機固体成分(A)及び改質剤(B)とマトリックス成分(C)との混練方法としては、例えば、(i)有機固体成分(A)と改質剤(B)とマトリックス成分(C)とを混練する方法、(ii)予め改質剤(B)を含む有機固体成分(A)を調製し、この有機固体成分(A)と改質剤(B)とを含む組成物(例えば、樹脂組成物)と、マトリックス成分(C)とを混練する方法などが挙げられる。
【0121】
本発明の分散体は、これらの方法のうち、いずれの方法でも調製できるが、特に、有機固体成分(A)と改質剤(B)とを含む組成物を用いる方法(ii)を好適に利用できる。上記方法(ii)により分散体を調製すると、改質剤(B)をより一層効率よく有機固体成分(A)で構成された分散相(特に分散相のみ)に分配できる。
【0122】
(改質剤(B)を含む有機固体成分(A)の調製方法)
改質剤(B)を含む有機固体成分(A)(又は組成物、以下、単に組成物ということがある)は、有機固体成分(A)に改質剤を含有させることができれば特に限定されず、有機固体成分(A)が樹脂などである場合には、有機固体成分の合成過程(例えば、重合過程)において改質剤(B)を添加する方法などにより調製してもよいが、通常、有機固体成分(A)の少なくとも表面に改質剤を移行させるという観点から、有機固体成分(A)と改質剤(B)とを混合して調製する場合が多い。
【0123】
混合方法としては、慣用の方法、例えば、両成分(成分(A)および成分(B))をドライブレンドする方法、両成分を溶融混合(溶融ブレンド)する方法、両成分を溶媒に溶解(又は分散)して溶媒を除去する方法などを利用できる。特に、有機固体成分(A)と改質剤(B)との溶融混合物(又は溶融混練物)は、有機固体成分と改質剤とを効率よく均一に混合しやすく、また、有機固体成分の内部に存在する改質剤を適度にブリードアウトさせるという観点からも好適に使用できる。
【0124】
有機固体成分(A)と改質剤(B)との溶融混合(溶融混練)は、改質剤の種類などに応じて、有機固体成分および改質剤のうち、少なくとも一方を溶融させることにより行うことができ、通常、少なくとも有機固体成分(特に有機固体成分(A)および改質剤(B))を溶融させて行うことが多い。溶融混練は、慣用の混練機(例えば、単軸もしくは二軸スクリュー押出機、ニーダー、カレンダーロール、バンバリーミキサーなど)を用いて行なうことができる。溶融混練は、これらの混練機(又は混合機又は分散機)を、単独で又は2種以上組み合わせて行ってもよい。
【0125】
溶融混練において、混練温度は、有機固体成分の融点又は軟化点などに応じて調整でき、例えば、120〜300℃、好ましくは130〜280℃、さらに好ましくは150〜260℃(例えば、160〜240℃)程度であってもよい。なお、架橋剤などを他の添加剤として用いる場合には、他の添加剤が変質(反応)しない温度で混練してもよい。混練時間や攪拌速度(回転速度)は、溶融混練に供する両成分の形状や混練機の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、混練時間は、例えば、10秒〜2時間、通常30秒〜1時間、好ましくは1〜40分(例えば、3〜20分)程度であってもよい。
【0126】
なお、混練効率を高めるため、溶融混練に先だって、有機固体成分(A)と改質剤(B)とを、混練機又は混合機(例えば、ヘンシェルミキサー、タンブルミキサー、リボンミキサーなどのミキサー、ボールミルなど)などを用いて、予備混合又は予備混練してもよい。また、溶融混練に供する有機固体成分(A)及び/又は改質剤(B)の形状は、粉粒状、ペレット状などであってもよく、例えば、凍結粉砕機などを用いて粉粒状に加工した粉粒状物であってもよい。また、溶融混練に供する改質剤(B)は、有機固体成分(A)を含むマスターバッチであってもよい。
【0127】
なお、前記溶融混練物は、少なくとも改質剤(B)の全てが有機固体成分(A)と溶融混練されていればよく、全ての有機固体成分(A)と全ての改質剤(B)を含む溶融混練物であってもよく、改質剤(B)を含む有機固体成分(A)のマスターバッチと残りの有機固体成分(A)とで構成された混合物であってもよい。特に、有機固体成分(A)の少なくとも表面に改質剤を存在させるという観点から、予め全ての有機固体成分と全ての改質剤とを溶融混合した溶融混合物を調製するのが好ましい。前記組成物(マトリックス成分との溶融混合に供する組成物)の形状は、特に限定されず、粉粒状、ペレット状などであってもよく、特に粉粒状であってもよい。粉粒状の組成物において、組成物の平均粒子径は、例えば、例えば、0.1μm〜5mm(例えば、0.3μm〜1mm、好ましくは0.5〜300μm(例えば、1〜200μm)、さらに好ましくは2〜100μm程度であってもよい。
【0128】
(マトリックス成分(C)との溶融混合)
有機固体成分(A)及び改質剤(B)とマトリックス成分(C)との混練(溶融混合、溶融混練)は、改質剤の種類などに応じて、少なくともいずれか一つの成分を溶融させることにより行うことができ、特に有機固体成分と(改質剤と)マトリックス成分とを溶融させて行うことが多い。また、前記のように、改質剤(B)を含む有機固体成分(A)のマスターバッチと、残りの有機固体成分(A)と、マトリックス成分(C)とを溶融混合してもよい。溶融混合は、前記と同様に、慣用の混練機(例えば、単軸もしくは二軸スクリュー押出機、ニーダー、カレンダーロールなど)を用いて行なうことができる。また、混練に先立ち、各成分を、予め凍結粉砕機などで粉体状に予備加工したり、有機固体成分(A)及び改質剤(B)(特に、前記組成物)とマトリックス成分とをヘンシェルミキサー、タンブルミキサー、ボールミルなどで予備混練してもよい。
【0129】
溶融混練した組成物(分散体)は、塊状などであってもよいが、マトリックス成分を除去するという観点から、通常、成形(予備成形)に供されて、予備成形体を形成する場合が多い。溶融混練物(組成物、分散体)の成形法としては、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形、カレンダー成形などが挙げられ、通常、生産性や加工の容易さの点から、押出成形又は射出成形が使用される。予備成形体(又は分散体)の形状は、特に制限されず、0次元的形状(粒状、ペレット状など)、1次元的形状(ストランド状、棒状など)、2次元的形状(板状、シート状、フィルム状など)、3次元的形状(管状、ブロック状など)などであってもよい。マトリックス成分の溶出性を考慮すると、ストランド状、棒状、シート状、フィルム状などに加工(成形)することが望ましい。
【0130】
なお、混練温度や成形加工温度は、使用される原材料(例えば、有機固体成分、マトリックス成分)に応じて適宜設定することが可能であり、例えば、90〜300℃、好ましくは110〜260℃(例えば、130〜250℃)、さらに好ましくは140〜240℃(例えば、150〜240℃)、特に170〜230℃(例えば、180〜220℃)程度である。マトリックス成分(例えば、オリゴ糖および可塑化成分)の熱分解を避けるため、混練温度や成形加工温度を230℃以下(例えば、160〜220℃程度)にしてもよい。また、混練時間は、例えば、10秒〜1時間の範囲から選択してもよく、通常30秒〜45分、好ましくは1〜30分(例えば、3〜20分)程度である。
【0131】
混練及び/又は成形加工により得られた溶融物(例えば、予備成形体)は、必要により適宜冷却してもよい。溶融物を冷却すると、分散相と連続相とを効率よく形成できる。また、冷却すると、溶融状態において、有機固体成分(A)及び改質剤(B)と、マトリックス成分(C)とが相溶していても、冷却に伴って、表面張力、結晶化などの固化速度の相違などにより分散相を形成できる。
【0132】
冷却温度は、有機固体成分(樹脂成分など)(A)の熱変形温度、又はマトリックス成分(C)の融点若しくは軟化点よりも少なくとも10℃程度低い温度であればよく、例えば、上記温度(有機固体成分の熱変形温度、又はマトリックス成分の融点若しくは軟化点)より10〜100℃程度低い温度、好ましくは前記温度より15〜80℃程度低い温度、さらに好ましくは前記温度より20〜60℃程度低い温度であってもよい。具体的には、冷却温度は、有機固体成分又は助剤成分の種類に応じて5〜150℃の範囲から選択でき、例えば、10〜120℃(例えば、10〜60℃)、好ましくは15〜100℃(例えば、15〜50℃)、さらに好ましくは20〜80℃(例えば、20〜40℃)程度であってもよい。冷却時間は、有機固体成分やマトリックス成分の種類、冷却温度等に応じて適宜設定でき、例えば、30秒〜20時間の広い範囲から選択してもよく、例えば、45秒〜10時間、好ましくは1分〜5時間(例えば、1分〜1時間)、さらに好ましくは1.5〜30分程度であってもよい。
【0133】
また、有機固体成分とマトリックス成分との相溶性、混練条件(例えば、混練時間、混練温度など)、成形加工温度、冷却条件(例えば、冷却時間、冷却温度など)などを調整することにより、分散相(又は粒子)の平均粒子径を変化させたり、粒度分布幅をさらに狭めることもできる。
【0134】
このようにして得られた分散体は、マトリックス成分(C)が、海島構造における連続相を形成すると共に、有機固体成分(A)と改質剤(B)とで構成された分散相が独立して分散相を形成した相分離構造を有している。
【0135】
そして、このような分散体から、マトリックス成分を速やかに溶出又は抽出などにより除去でき、前記分散相(有機固体成分と改質剤とを含む分散相)を粒子(有機固体粒子)として得ることができる。
【0136】
マトリックス成分の除去方法は、マトリックス成分を除去できる限り限定されないが、通常、前記分散体から、マトリックス成分を溶出する場合が多い。マトリックス成分(C)の溶出(又は洗浄)に用いる溶媒は、分散相を溶解せず、かつマトリックス成分を溶解可能な溶媒であればよく、マトリックス成分の種類に応じて適宜選択できる。特に、マトリックス成分が、水溶性である場合には、溶出のための溶媒として、水性溶媒(又は水性媒体)、例えば、水、水溶性溶媒[例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、エーテル類(セロソルブ、ブチルセロソルブなど)など]などを用いることができる。これらの水性溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。環境への負荷が少なく、工業コストを低減できるため、溶出溶媒として水(特に水単独)を用いるのが好ましい。
【0137】
マトリックス成分(C)の溶出は、慣用の方法、例えば、前記分散体(又は予備成形体)を、前記溶媒(特に、水性溶媒)中に浸漬、分散して、マトリックス成分を溶出または洗浄(溶媒に移行)することにより行うことができる。前記分散体(又は予備成形体)を溶媒中に浸漬すると、分散体のマトリックスを形成するマトリックス成分が徐々に溶出し、分散相(又は粒子又はケーク)が、溶出液中に分散される。マトリックス成分の分散及び溶出を促進するため、適宜、撹拌などを行ってもよい。
【0138】
なお、改質剤(B)は、両親媒性であっても、通常、マトリックス成分(C)(特に、水溶性のマトリックス成分)に比べて有機固体成分(A)(特に、疎水性有機固体成分)に対する親和性が高いため、マトリックス相(マトリックス成分(C)及び溶媒)側に実質的に分配されずに、分散相(分散粒子)に分配することができ、改質剤の利用効率を高めることができるため、工業的にも有利である。特に、改質剤として、有機固体成分(A)に対する親和性の度合いが大きい改質剤を用いると、分散相への改質剤の分配率をより一層高めることもでき、溶出液中の改質剤含量を大幅に(実質的に0にまで)低減することもでき、環境負荷も低減できる。
【0139】
マトリックス成分は、例えば、加圧下において、溶出させてもよいが、通常、常圧下(例えば、10万Pa程度)又は減圧下において溶出できる。また、マトリックス成分の溶出温度は、有機固体成分及びマトリックス成分の種類に応じて、適宜設定することができ、通常、有機固体成分の融点又は軟化点未満の温度、例えば10〜100℃、好ましくは25〜90℃、さらに好ましくは30〜80℃(例えば、40〜80℃)程度である。特に、マトリックス成分としてのオリゴ糖(又は少なくともオリゴ糖で構成されたマトリックス成分)は、水性溶媒(特に水)に易溶であるため、大量の水性溶媒を必要としない。また、オリゴ糖は、低分子量であるため、得られる溶出液の粘度も低く、容易に回収できる。
【0140】
有機固体粒子は、慣用の分離(回収)方法、例えば、濾過、遠心分離などを用いて前記粒子が分散された分散液から回収できる。得られた有機固体粒子中には、マトリックス成分が実質的に残留していないことが望ましいが、例えば、洗浄過程のコスト削減などの点から、マトリックス成分が粒子に少量残存していても、得られた粒子に与える悪影響は小さく、特に、オリゴ糖で構成されたマトリックス成分は天然物由来の化合物(食品又は食品添加物なども含む)であるため、安全性も高い。なお、有機固体粒子におけるマトリックス成分(C)の割合は、例えば、3重量%以下であってもよい。
【0141】
また、分離した有機固体粒子(固液分離後のケーク)は、乾燥処理してもよい。本発明で得られる有機固体粒子は、固液分離後のケークを乾燥処理しても、粒子同士の凝集が極めて高いレベルで抑制されており、また、粒子の再分散性を低下させない。乾燥(又は乾燥処理)は、自然乾燥であってもよく、乾燥機(熱風乾燥機など)を用いて行ってもよい。乾燥温度は、溶媒の種類にもよるが、例えば、30〜150℃、好ましくは35〜100℃、さらに好ましくは40〜70℃程度であってもよい。なお、分離後(及び乾燥処理後)の粒子は、必要に応じて、解砕(又は解砕処理)してもよい。なお、アニール処理を行う場合、乾燥温度は、通常50℃未満(例えば、45℃以下、好ましくは40℃以下)であってもよい。
【0142】
また、有機固体粒子には、必要に応じてアニール処理(アニーリング、アニーリング処理、エージング)を施してもよい。すなわち、前記有機固体粒子は、アニール処理されていてもよい。アニール処理により、有機固体粒子において、滑り性、粒子の分散性などの特性をより一層改善できる場合がある。アニール処理において、アニール温度(アニーリング温度、加熱温度)は、粒子を構成する有機固体成分の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、50℃以上(例えば、55〜220℃程度)、好ましくは60℃以上(例えば、65〜200℃程度)、さらに好ましくは70℃以上(例えば、75〜190℃程度)であってもよく、通常70〜180℃(好ましくは75〜170℃)程度であってもよい。アニール温度は、通常、有機固体粒子を構成する有機固体成分の融点をm(℃)とするとき、m℃以下(例えば、m−5(℃)以下、好ましくはm−10(℃)以下、さらに好ましくはm−15(℃)以下)である場合が多い。
【0143】
なお、有機固体成分がガラス転移温度T(℃)を有する結晶性樹脂成分であるとき、アニール温度は、例えば、T−30(℃)以上(例えば、T−20(℃)〜T+200(℃)程度)、好ましくはT−10(℃)〜T+180(℃)、さらに好ましくはT(℃)〜T+150(℃)、特にT+5(℃)〜T+130(℃)程度であり、通常T(℃)以上(例えば、T+10(℃)〜T+120(℃)程度)であってもよい。
【0144】
また、有機固体成分が、明確な結晶融解温度を持たないガラス転移温度T(℃)を有する非晶性樹脂成分であるとき、アニール温度は、例えば、T−50(℃)以上T(℃)未満(例えば、T−40(℃)〜T−3(℃)程度)、好ましくはT−30(℃)〜T−5(℃)、さらに好ましくはT−25(℃)〜T−7(℃)、特にT−20〜T−10(℃)程度であってもよい。
【0145】
アニール時間(アニーリング時間)は、例えば、20分以上(例えば、25分〜12時間程度)、好ましくは30分〜8時間(例えば、40分〜6時間)、さらに好ましくは50分〜5時間(例えば、1〜4時間)、特に80分〜3.5時間(例えば、90分〜3時間)程度であってもよい。
【0146】
アニール処理は、乾燥機、オーブン(循環空気オーブン、空気流オーブンなど)を用いて行うことができる。
【0147】
なお、アニール処理は、有機固体粒子に対して適当な段階で行うことができ、例えば、乾燥処理後の粒子に対して行ってもよく、解砕処理後の粒子に対して行ってもよい。また、アニール処理は、前記分散体からマトリックス成分を除去する前に行ってもよい。このようなアニール処理では、高温アニールによる粒子同士の融着を防止することができる。
【0148】
なお、溶媒で溶出又は抽出されたマトリックス成分は、慣用の分離手段(例えば、蒸留、濃縮、再結晶、乾燥(フリーズドライ)など)を用いて回収できる。また、回収後の粒子は、必要に応じて、分級などの手段により、粒子サイズを揃えてもよい。
【0149】
本発明の有機固体粒子(又は分散相)の平均粒子径(例えば、数平均粒子径)は、特に制限されず、用途に応じて0.1μm〜1mm(例えば、0.1〜800μm)程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜500μm、好ましくは0.1〜100μm(例えば、0.2〜80μm)、さらに好ましくは0.3〜70μm(例えば、0.5〜50μm)、特に0.7〜30μm、通常1〜40μm(例えば、1〜20μm)程度であってもよい。また、有機固体粒子(又は分散相)の平均粒子径は、用途に応じて、例えば、0.1〜15μm(例えば、0.2〜12μm)、好ましくは0.5〜10μm(例えば、1〜8μm)程度であってもよい。
【0150】
本発明では、有機固体粒子(又は分散相)の粒子サイズを均一にして粒度分布を小さくできる。有機固体粒子(又は分散相)の平均粒子径の変動係数(%)([粒子径の標準偏差/平均粒子径]×100)は、例えば、60以下(例えば5〜60程度)、好ましくは55以下(例えば、5〜55程度)、さらに好ましくは50以下(例えば、10〜50程度)であってもよい。
【0151】
また、前記有機固体粒子(又は分散体)において、有機固体粒子(又は分散相)の形状は、粒子状であればよく、例えば、球状、楕円体状、多角体状、角柱状、円柱状、棒状、不定形状などであってもよい。なお、前記分散体における分散相の形状は、通常、マトリックス成分(C)を除去したのちに得られる粒子(有機固体粒子)の形状に対応する。好ましい分散相(又は有機固体粒子)の形状は、球状である。球状分散体(又は球状粒子)には、真球状に限らず、例えば、長径と短径との長さ比が、例えば、長径/短径=1.5/1〜1/1程度である形状も含まれる。長径と短径との長さ比は、好ましくは長径/短径=1.3/1〜1/1(例えば、1.2/1〜1/1)、さらに好ましくは1.1/1〜1/1程度であってもよい。
【0152】
なお、粒子の形状やサイズは、前記溶出溶媒(特に、水性溶媒)に有機固体成分(A)が溶出しない限り、前記分散相の形状やサイズがそのまま維持される。そのため、前記分散相の形状、平均粒子径、平均粒子径の変動係数は、前記有機固体粒子と同様の範囲から選択できる。また、粒子の長径と短径との比も前記有機固体粒子と同様の範囲から選択できる。
【0153】
本発明では、両親媒性の改質剤を用いるため、有機固体粒子の表面に効率よく改質剤を存在させる(分配させる)ことができる。そのため、本発明の有機固体粒子は、前記のように、有機固体成分の少なくとも表面に改質剤が存在しており、改質剤の改質機能(滑り性、伸展性、帯電防止性など)が有効に付与されている。特に、結晶性を有する両親媒性の改質剤は、前記のように、粒子表面に層状結晶構造を形成し、この結晶構造が劈開するためか、粒子表面に突起状物を形成している。そして、この突起状物が、より一層高いレベルで有機固体粒子の滑り性を向上させるようである。
【0154】
また、前記有機固体粒子は、有機固体成分の表面に確実に両親媒性の改質剤が存在しているためか、マトリックス成分を溶出した後であっても、粒子(詳細には固液分離後のケーク)同士の凝集力(又は密着性)が著しく小さい。そのため、前記有機固体粒子は、粒子として再分散させて用いる場合における分散性(再分散性)にも優れている。
【0155】
例えば、本発明の有機固体粒子は、凝集性が高いレベルで抑制されており、25℃および圧力60MPaで圧縮成形した円柱状のタブレット(有機固体粒子のタブレット)を、圧縮速度1mm/分で破壊試験に供したときに得られる応力/歪み曲線において、応力が上昇から下降に変化する応力(上降伏点応力)を降伏点応力(1)とするとき、降伏点応力(1)が、4MPa以下[例えば、0.3〜3.9MPa、好ましくは3.8MPa以下(例えば、0.5〜3.7MPa程度)、さらに好ましくは3.6MPa以下(例えば、0.8〜3.55MPa程度)、特に3.3MPa以下(例えば、1〜3.2MPa程度)]を充足する。特に、本発明の有機固体粒子は、改質剤の種類によっては、前記降伏点応力(1)が、2MPa以下(例えば、0.3〜1.9MPa程度)、好ましくは1.8MPa以下(例えば、0.4〜1.7MPa程度)を満たし、極めて粒子同士の凝集が抑制されている。
【0156】
また、本発明の有機固体粒子は、凝集性の他の指標として、前記応力/歪み曲線において、降伏点応力(1)に到達するまでの曲線の直線部分の傾きを見かけの弾性率E(*)とするとき、下記式で表される体積弾性率Kが、38MPa以下[例えば、1〜36MPa、好ましくは35MPa以下(例えば、2〜34MPa程度)、さらに好ましくは33MPa以下(例えば、3〜32MPa程度)、特に31MPa以下(例えば、4〜30MPa程度)]を充足する。特に、本発明の有機固体粒子は、改質剤の種類によっては、前記体積弾性率Kが、25MPa以下(例えば、1.5〜23MPa程度)、好ましくは15MPa以下(例えば、2.5〜13MPa程度)、さらに好ましくは13MPa以下(例えば、3.5〜12MPa程度)を満たす。
【0157】
K=E(*)×L/A
(式中、Lはタブレットの厚み(mm)、Aはタブレットの底面積(mm)を示す。)
さらに、本発明の有機固体粒子は、粒子の滑り性又は伸展性の指標として、前記応力/歪み曲線において、前記降伏点応力(1)から後において、応力が下降から上昇に変化する応力(下降伏点応力)を降伏点応力(2)とするとき、降伏点応力(2)が、3.2MPa以下[例えば、0.1〜3.1MPa、好ましくは3MPa以下(例えば、0.2〜2.9MPa程度)、さらに好ましくは2.8MPa以下(例えば、0.3〜2.7MPa程度)]を充足する。特に、本発明の有機固体粒子は、改質剤の種類によっては、前記降伏点応力(2)が、1.8MPa以下(例えば、0.15〜1.6MPa程度)、好ましくは1.5MPa以下(例えば、0.25〜1.3MPa程度)、さらに好ましくは1.2MPa以下(例えば、0.3〜1.1MPa程度)、特に1MPa以下(例えば、0.35〜0.9MPa程度)を満たす。
【0158】
なお、本発明の有機固体粒子は、前記のように粒子表面に少なくとも改質剤が存在しているが、通常、有機固体成分又は粒子の表面だけでなく、内部にも改質剤が存在している場合が多い。このような表面および内部に改質剤が存在する粒子(分散相)では、有機固体成分(又は有機固体粒子)の内部に存在する改質剤が、徐々に有機固体成分の表面にブリードアウトする(しみ出す)ためか、改質剤の改質効果を長期に亘って持続させる。そのため、本発明の有機固体粒子では、粒子の表面から、何らかの作用により(例えば、高い剪断力が作用するような過酷な状況での使用などにより)改質剤が脱落や分離したり、長期に亘って使用しても、改質剤の機能を付与し続けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明では、改質剤の機能に応じて、種々の機能を有効に有機固体粒子(分散相、分散相粒子)に付与できる。例えば、改質剤を固体状の両親媒性滑剤で構成すると有機固体粒子(又は分散相又は有機固体成分)に優れた滑り性、伸展性などの機能を有効に付与できる。特に、脂肪酸系ワックス(例えば、脂肪酸アミドなど)などで改質剤(通常、固体状の滑剤)を構成すると、有機固体粒子に高い滑り性や伸展性を付与できるとともに、有機固体粒子におけるこれらの機能を持続させることができる。そして、このような滑剤を含む有機固体粒子は、滑剤を効率よく有機固体粒子表面に存在させることができ、粒子の凝集や密着を高いレベルで抑制又は防止でき、溶媒などに対する再分散性が高い。
【0160】
また、改質剤を帯電防止剤や帯電防止性を有する滑剤(例えば、脂肪酸アミドなど)で構成すると、有機固体粒子の帯電防止性を有効に付与できるため、ハンドリング性(取扱性)に優れた有機固体粒子を得ることができる。しかも、このような有機固体粒子は、付与された帯電防止性を持続できるとともに、小さい粒子径であっても、静電気などによる粉塵爆発を防止できる。
【0161】
このような本発明の有機固体粒子は、改質剤の種類などに応じて、あらゆる分野又は用途に使用でき、例えば、化粧品、インクジェットプリントなどに使用されるインク(ポリマーインクも含む)や着色トナーなどの画像記録材料、塗料やコート剤(粉体塗装又はスラリー塗装用塗料など)、印刷インキの着色剤などに有用である。また、有機固体粒子は、他の微粒子(例えば、無機微粒子など)との混合適性を改良するために使用してもよく、ブロッキング防止剤(例えば、成形体のブロッキング防止剤)、スペーサー(液晶スペーサーなど)、シート又はフィルム用添加剤、半導体のケミカルメカニカルポリッシング(CMP)用の研磨剤などとしても使用できる。
【0162】
また、農薬、医薬、塗料(例えば、粉体塗料、船底用塗料など)、コーティング剤、接着剤などのファインケミカル分野における原料又は添加剤などとしても有用である。さらに、農林水産業用、土木用及び建設用フィルムやシートなどに対する添加剤、使い捨てオムツなどの衛生用品材料、生体内分解吸収性を必要とする医用素材、徐放性を必要とする徐放性材料などとしても利用できる。
【0163】
特に、脂肪酸系ワックスや帯電防止剤を含有した粒子は、耐オフセット性に優れたトナー用の粒子などに利用できる。また、化粧品に使用可能な改質剤(脂肪酸及びその誘導体など)を用いた粒子は、ファンデーション、口紅、白粉、頬紅、アイシャドー、マスカラ、毛髪用スプレーなどの化粧品用途に好適に用いることができる。化粧品用途に用いる場合は、例えば、紫外線吸収能を有する化合物や着色剤を含んだ他の粒子を用い、複合化した用途も提案できる。
【0164】
また、本発明の粒子は、RTP(ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping))用粒子として用いることもできる。このようなRTPによる成形体は、本発明の粒子を、レーザービーム加熱により相互に溶融させて結合し、積層しつつ造形を行う方法(RTP法、レーザー焼結法)により得ることができる。
【実施例】
【0165】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0166】
(実施例1〜13及び比較例1〜6)
ヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製、「FM型20L」)を用いて、表1又は表2に示す組成で、樹脂(A)と改質剤(B)とを予備混合した後、ブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)を用いて、表1に示す混練温度および回転速度50rpmで10分間溶融混合(溶融混練)し、冷却して塊状の樹脂組成物(溶融混合物)を得たのち、約5mm角に裁断した。
【0167】
続いて、表1又は表2に示す組成で、得られた樹脂組成物(裁断物)及びマトリックス成分(C)をブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)を用いて、表1又は表2に示す混練温度および回転速度50rpmで10分間溶融混合(溶融混練)し、冷却して塊状の分散体を得たのち、約5mm角に裁断した。
【0168】
得られた分散体(裁断物)を、25℃の純水中に浸漬し、樹脂粒子の懸濁溶液を得た。メンブレン膜(孔径0.45μm,ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し樹脂の微粒子を回収した。回収した微粒子を微粒子に対して重量比で20倍の蒸留水中に分散し、超音波槽において5分間超音波処理して懸濁液を得た。その後、再びメンブレン膜(孔径0.45μm,ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し、樹脂粒子を回収した。
【0169】
回収した樹脂粒子を、熱風乾燥機中に放置して、45℃で8時間乾燥し、その後、メノウ乳鉢とすり棒とを用いて、目視で凝集した部分がなくなるまで粉砕した。
【0170】
(実施例14〜20)
ヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製、「FM型20L」)を用いて、表3に示す組成で、樹脂(A)と改質剤(B)とを予備混合した後、ブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)を用いて、表3に示す混練温度および回転速度50rpmで10分間溶融混合(溶融混練)し、冷却して塊状の樹脂組成物(溶融混合物)を得たのち、約5mm角に裁断した。
【0171】
続いて、表3に示す組成で、得られた樹脂組成物(裁断物)及びマトリックス成分(C)をブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)を用いて、表3に示す混練温度および回転速度50rpmで10分間溶融混合(溶融混練)し、冷却して塊状の分散体を得たのち、約5mm角に裁断した。
【0172】
得られた分散体(裁断物)を、25℃の純水中に浸漬し、樹脂粒子の懸濁溶液を得た。メンブレン膜(孔径0.45μm,ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し樹脂の微粒子を回収した。回収した微粒子を微粒子に対して重量比で20倍の蒸留水中に分散し、超音波槽において5分間超音波処理して懸濁液を得た。その後、再びメンブレン膜(孔径0.45μm,ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し、樹脂粒子を回収した。
【0173】
回収した樹脂粒子を、熱風乾燥機中に放置して、35℃で24時間乾燥し、その後、メノウ乳鉢とすり棒とを用いて、目視で凝集した部分がなくなるまで粉砕した。
【0174】
続いて、粉砕した粒子を、乾燥機中で、表3に示す条件下でアニール処理した。
【0175】
得られた樹脂粒子の各特性を表1〜3に示す。なお、各特性は、以下のようにして評価又は測定した。
【0176】
(粒子の外観および平均粒子径)
得られた粒子を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、FE−SEM、JSM−6700F)により観察し、表面形状及び全体形状の写真を得た。得られた走査型電子顕微鏡写真を用い、写真上に少なくとも200個の粒子が含まれるように任意のサイズの長方形を描き、その長方形内に存在する全粒子の真球換算時の粒子径を採寸した。得られた少なくとも200個の粒子径より、体積平均粒子径および数平均粒子径を得た。
【0177】
(粒子の凝集力及び伸展性)
得られた樹脂粒子1gを、直径20mmの円状の型枠を用いて円柱状のタブレット(直径20mm、高さ3〜5mm)に成形した。成形は23℃で行い、油圧式の手動ポンプを用い、圧力60MPaまで加圧後2分間静置することによりタブレットを得た。
【0178】
得られたタブレットを用い、引張圧縮試験機(テンシロンUCT−5、東洋精機(株)製)を用い、圧縮試験時の歪み−応力曲線を得た。圧縮試験は、直径250mmのステンレス製の台座上にタブレットを置き、圧縮冶具として直径250mmのアルミニウム製の円盤、最大荷重500kgf(500×9.8N)のロードセルを用い、圧縮速度1mm/分、サンプリングレート(データの取り込み速度)1μmの条件で測定を行った。
【0179】
上記測定により採取した歪み−応力曲線より下記数値を算出し、粒子の凝集力及び伸展性の指標とした。なお、参考のため、図1に実施例1で得られた樹脂粒子の歪み−応力曲線を示す。
【0180】
粒子の凝集力:歪み−応力曲線上で、応力が上昇から下降に移行する最初の点を上降伏点とし、このときの応力(上降伏点応力)をタブレットの降伏点、すなわち凝集が崩れ粒子の流動が始まる点として、粒子の凝集力の指標の一つとして用いた。また、上降伏点に至るまでの、歪み応力曲線の直線部分の傾き(見かけの弾性率)より、下記に示す式を用いて体積弾性率を算出し、粒子の凝集力の別の指標とした。
【0181】
体積弾性率K=E(*)×L/A
(式中、E(*)は見かけの弾性率、Lはタブレットの厚み(mm)、Aはタブレットの底面積(mm)を示す。)
粒子の伸展性:上記の上降伏点以降において、応力が最も小さくなる点を下降伏点とし、このときの応力(下降伏点応力)を、粒子を流動させるときに要する初期応力として、粒子の伸展性の指標として用いた。
【0182】
なお、実施例及び比較例では、下記の成分を用いた。
【0183】
(A)樹脂
樹脂1:ナイロン12樹脂(ダイセル・デグサ(株)製、ダイアミドL1640)
樹脂2:ポリスチレン樹脂(東洋ポリスチレン(株)製、GPPS G100C)
樹脂3:共重合ポリエステル樹脂(昭和高分子(株)製、ブタンジオール−コハク酸/アジピン酸三元共重合体、ビオノーレ3001)。
【0184】
(B)改質剤
(B1)固体状の滑剤
B1−1:ステアリン酸アミド(日本化成(株)製、アマイドAP−1、フレーク)
B1−2:エチレンビスステアリン酸アミド(花王(株)製、KAO−WAX EB−P)
B1−3:ベヘン酸アミド(日本化成(株)製、白色粉末)
B1−4:エルカ酸アミド(日本化成(株)製、アルフローP10、薄黄色粉末)
B1−5:ステアロミドエチルステアレート(富岡化学(株)製、SAS、白色粉末)
B1−6:ポリエチレンワックス(三洋化成(株)製、サンワックス151−P、低密度タイプ)
(B2)液体状の滑剤
B2−1:流動パラフィン(出光興産(株)製、フレシアP430)
B2−2:シリコーンオイル(GE東芝シリコーン(株)製、ジメチルシリコーン、TSF458−100)。
【0185】
(C)マトリックス成分
オリゴ糖C1:デンプン糖(東和化成工業(株)製、還元デンプン糖化物PO−10)
糖アルコール(水溶性可塑化成分)C2: ソルビトール(東和化成工業(株)製、ソルビット)。
【0186】
結果を表1〜3に示す。
【0187】
【表1】

【0188】
【表2】

【0189】
【表3】

【0190】
また、図2に、実施例2で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す。図3は、実施例2で得られた樹脂粒子を拡大して撮影した走査型電子顕微鏡写真である。図4は、実施例2で得られた樹脂粒子をさらに拡大して撮影した走査型電子顕微鏡写真である。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】図1は、実施例1で得られた樹脂粒子の歪み−応力曲線である。
【図2】図2は、実施例2で得られた樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】図3は、実施例2で得られた樹脂粒子を拡大して撮影した走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図4は、実施例2で得られた樹脂粒子をさらに拡大して撮影した走査型電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融可能な有機固体成分(A)と、この有機固体成分(A)を改質するための改質剤(B)とで構成された粒子状の分散相が、マトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体から前記マトリックス成分(C)を除去することにより得られる有機固体粒子であって、前記改質剤(B)が、両親媒性を有する固体状の改質剤である有機固体粒子。
【請求項2】
有機固体成分(A)が、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エーテル基、オキシアルキレン基、エステル基、アミノ基、置換アミノ基、イミノ基、アミド基、およびフェニル基から選択された少なくとも1種を有する樹脂で構成されている請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項3】
改質剤(B)が、結晶性を有する改質剤である請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項4】
改質剤(B)が、脂肪酸系ワックスで構成されている請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項5】
改質剤(B)が、脂肪酸アミドで構成されている請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項6】
有機固体成分(A)がポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂およびスチレン系樹脂から選択された少なくとも1種の樹脂であり、改質剤(B)が、アミド基の水素原子が置換されていてもよいC12−36飽和又は不飽和脂肪酸アミドである請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項7】
有機固体成分(A)と改質剤(B)との割合が、前者/後者(重量比)=99.5/0.5〜85/15である請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項8】
マトリックス成分(C)が、少なくともオリゴ糖で構成されている請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項9】
マトリックス成分(C)が、オリゴ糖(C1)と、糖類及び糖アルコールから選択された少なくとも一種の水溶性可塑化成分(C2)とで構成されている請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項10】
分散相と、マトリックス成分(C)との割合(重量比)が、前者/後者=55/45〜1/99である請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項11】
平均粒子径が0.1〜100μmである請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項12】
25℃および圧力60MPaで圧縮成形した円柱状のタブレットを、圧縮速度1mm/分で破壊試験に供したときに得られる応力/歪み曲線において、応力が上昇から下降に変化する応力を降伏点応力(1)とするとき、降伏点応力(1)が4MPa以下であり、かつ降伏点応力(1)に到達するまでの曲線の直線部分の傾きを見かけの弾性率E(*)とするとき、下記式で表される体積弾性率Kが、35MPa以下である請求項1記載の有機固体粒子。
K=E(*)×L/A
(式中、Lはタブレットの厚み(mm)、Aはタブレットの底面積(mm)を示す。)
【請求項13】
応力/歪み曲線において、降伏点応力(1)から後において、応力が下降から上昇に変化する応力を降伏点応力(2)とするとき、降伏点応力(2)が3MPa以下である請求項12記載の有機固体粒子。
【請求項14】
改質剤(B)が粒子表面に突起状物を形成している請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項15】
化粧品に用いる請求項1記載の有機固体粒子。
【請求項16】
請求項1記載の有機固体粒子を得るための分散体であって、有機固体成分(A)と、両親媒性を有する固体状の改質剤(B)とで構成された粒子状の分散相が、マトリックス成分(C)で構成されたマトリックスに分散している分散体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−2224(P2007−2224A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89184(P2006−89184)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】