説明

表面改質した粒子を含有する硬化性組成物

本発明の対象は、バインダーBM並びに粒子Pを含有する硬化性組成物Zであって、前記バインダーBMが少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有し、かつ前記粒子Pが、この表面上の少なくとも1つのエチレン性不飽和基を提供可能であり、かつ一般式(I)
≡Si−(CR)−A−D−C
[前記式中、
は、水素又は1〜12つの炭素原子を有する炭化水素残基を表し、この炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基、又はNR基により中断されていてよく、
は、水素又は1〜12つの炭素原子を有する炭化水素残基を表し、
Aは、酸素、硫黄、=NR又は=N−(D−C)を表し、
Dは、それぞれ1〜12つの炭素原子を有するカルボニル基、アルキレン残基、シクロアルキレン残基又はアリーレン残基を表し、その際この炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基、又はNR基により中断されていてよく、かつ
Cは、末端の不飽和基を表す]の残基を有する、バインダーBM並びに粒子Pを含有する硬化性組成物Zである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バインダー並びに粒子を含有する硬化性組成物であって、前記バインダーが少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有し、かつ前記粒子が、この表面上の少なくとも1つのエチレン性不飽和基を提供可能である硬化性組成物、並びに前記組成物のコーティングのための使用に関する。
【0002】
ナノスケールの、有機残基で表面改質された充填剤を含有し、そして硬化により高い機械的硬度及び耐化学薬品性を有するコーティングを提供する、ラジカルにより硬化可能であるコーティング組成物は公知である。係るコーティング組成物では、前記粒子表面の適した改質が、前記粒子と、この周囲のポリマーマトリックスとの相容性を保証する。前記粒子表面が加えて、このマトリックスに対する適した反応性を有する場合には、前記粒子表面は前記コーティング系のそのつどの硬化条件下でこのバインダー系と反応し、この硬化の間に前記粒子が化学的に前記マトリックス中に組み込まれることが成功し、これによりしばしばこのコンポジット系の特性プロファイルにポジティブに作用する。
【0003】
ラジカルにより硬化可能である粒子増強コーティング組成物は、特にUS4455205A及びUS4491508Aに記載されていて、例えばコロイドシリカと3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランとの反応及びこれに引き続く、この水性及び/又はアルコール性溶媒の、ラジカルにより架橋可能である有機バインダーとの交換により得られる。係るコーティング組成物は、例えば、熱可塑性基材のコーティングのために使用されてよい。
【0004】
US6306502Bから、耐引掻性コーティングのためのコーティング組成物が公知であり、前記組成物は、コロイドシリカ及びラジカルにより重合可能であるシランから製造されてよい。バインダーとしてこの際、(メタ)アクリルオキシアルキル官能性のイソシアヌラートが使用される。DE10200928A1においては、表面改質したナノ粒子を含有する硬化可能である有機分散液が記載されていて、前記分散液は例えば、親水性の熱分解シリカを、分散工程により、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アルミニウムブチラート及び水を有するジペンタエリトリットペンタアクリラート中に混合することにより製造される。このような分散液は、特にコーティング材、接着剤及びシーラントとして使用される。
【0005】
この公知の粒子含有バインダー系の欠点は、主にその製造によるものである。公知技術によれば、このコーティング系中に含有される粒子は、遊離の水酸化ケイ素官能性(SiOH)又は金属水酸化物官能性(MeOH)を提供可能である粒子を、アルコキシルシランと反応させることにより製造され、前記粒子は、反応性有機官能基として、エチレン性不飽和基、例えばビニル、(メタ)アクリルその他を含有する。公知技術において、粒子の官能化のために使用される全てのアルコキシシランはこの際、これが、改質されるべき粒子のSiOH基又はMeOH基に対して中程度の反応性しか有しない点で共通する。前記粒子の表面官能化は従って、ゆっくり及び/又は不完全にしか進行しない。
【0006】
これは特に、反応性が非常に少なく、従って粒子の官能化のためには大抵、全く不適当であるモノアルコキシ官能性シランに当てはまる。しかしながらモノ官能性アルコキシシランの使用はまさに、これが十分な反応性で、水添加なしでも完全にSiOH基又はMeOH基と反応し、かつこの粒子の全てのSiOH基又はMeOH基の飽和のために、当モル量だけのシランが必要である場合には、いくつかの場合において特に所望されるものであろう。
【0007】
表面官能化のためにジアルコキシシラン又はトリアルコキシシランが使用される場合には、水の存在下において、この得られたシラノールの加水分解及び縮合により、前記粒子の周囲にシロキサンシェルが形成される。この際の問題となるのは、少ない加水分解反応性及び縮合反応性を有するシランの使用の際に、この形成されたシロキサンシェルが、この表面上でまだなお多数のSiOH官能性を提供可能であることである。係るSiOH官能性の粒子の安定性は、この製造及び貯蔵の条件下で、バインダーの存在下でもやはり、制限される。これは、前記粒子のアグレゲーション又はアグロメレーションを生じる可能性がある。反応性のモノアルコキシシランの使用の際には、これに対して、相互に架橋したシラン分子からなるシランシェルが、前記粒子の周囲に形成されず、前記シランの、前記粒子のMeOH基及び/又はSiOH基に対する直接的な連結を生じる。加えて、モノメトキシシランの使用は、前記粒子の官能化を、水の非存在下においても可能にする。この際、化学量論的反応において、前記粒子の表面上のほとんど全てのMeOH基及び/又はSiOH基は、シランにより飽和される。残留するMeOH基及び/又はSiOH基は、これは前記粒子の安定性を制限するが、これにより大幅に回避することが可能である。
【0008】
WO03/18658及びWO03/14226において、オルガノポリシロキサン並びに有機ポリマーの官能化のために官能化したアルコキシシランが使用され、前記アルコキシシランは、このアルコキシシリル基が、メチレンスペーサーを介して異種原子、例えば酸素又は窒素の異種原子により分離され、かつこれらの両方の基の空間的近接により前記シランの反応性が、このシリル単位の加水分解及び縮合に関して著しく増加することに特徴付けられる。このような、メチレンスペーサーを有する係るシランの向上した反応性は、Monatsh. Chem. 2003,134, 1081-1092にも記載されている。
【0009】
係る高反応性シランはこれまでは、シラン官能性(プレ)ポリマーを製造するために使用され、これは湿分に対して相応して増加した反応性を有し、従って、空気湿分硬化性材料の製造に適する。
【0010】
公知技術により製造されたコーティングの更なる問題として、前記コーティングはしばしば再現可能でない特性を有する。このコーティング特性−特にこのコーティングのより高い機械的硬度並びに再度改善された耐引掻性−の、更なる改善もまた望まれるものである。
【0011】
本発明の基礎となる課題は、公知の系の上述した欠点を示さず、かつ加えて、この公知の系に比べて、この硬化したコーティングの改善した特性プロファイルにより特徴付けられる、化学線又は熱により硬化可能であるコーティング系を提供することである。
【0012】
本発明の対象は、バインダーBM並びに粒子Pを含有する硬化性組成物Zであって、前記バインダーが少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有し、かつ前記粒子が、この表面上の少なくとも1つのエチレン性不飽和基を提供可能であり、かつ一般式I
【0013】
【化1】

[前記式中、
は、水素又は1〜12つの炭素原子を有する炭化水素残基を表し、この炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基、又はNR基により中断されていてよく、
は、水素又は1〜12つの炭素原子を有する炭化水素残基を表し、
Aは、酸素、硫黄、=NR又は=N−(D−C)を表し、
Dは、それぞれ1〜12つの炭素原子を有するカルボニル基、アルキレン残基、シクロアルキレン残基又はアリーレン残基を表し、その際この炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基、又はNR基により中断されていてよく、かつ
Cは、エチレン性不飽和基を表す]
の残基を有する、バインダーBM並びに粒子Pを含有する硬化性組成物Zに関する。
【0014】
前記硬化性組成物Zは、粒子Pを含有し、前記粒子は反応性の、エチレン性不飽和基を含有する一般式Iの残基を用いて表面改質されていて、その際この反応性残基は、このシリル基が、メチレンスペーサーを介して異種原子により分離されていることに特徴付けられる。前記硬化性組成物Zは従って、正確に再現可能である特性を有する。
【0015】
前記粒子Pは有利には、
(a)粒子P1と、(b)一般式II
【0016】
【化2】

のオルガノシランB又はその加水分解及び/又は縮合生成物と、(c)場合により水との反応により製造可能であり、
その際前記粒子P1は、金属酸化物、金属−ケイ素−混合酸化物、二酸化ケイ素、コロイドシリカ、及びオルガノポリシロキサン樹脂及びこれらの組み合わせから選択された材料からなり、前記材料はMe−OH、Si−OH、Me−O−Me、Me−O−Si、Si−O−Si、Me−OR及びSi−ORから選択された官能基を提供可能であり、
その際、
は、水素又は1〜6つの炭素原子を有する炭化水素残基を表し、この炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基、又はNR基により中断されていてよく、
は、1〜12つの炭素原子を有する炭化水素残基を表し、この炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基、又はNR基により中断されていてよく、
Meは、金属原子を表し、かつ
nは、0、1又は2の値を表し、かつ
、A、D及びCは、前述の意味を有する。
【0017】
前記粒子Pは同様に、有利には、一般式IIのオルガノシランBと、一般式III
【0018】
【化3】

[前記式中、
は、Rの意味合いを有し、
は、置換されていてもよい炭化水素残基を表し、かつ
mは、0、1、2又は3の値を表す]
のアルコキシシランB*との共加水分解により製造可能である。
【0019】
前記炭化水素残基Rは有利には、アルキル残基、シクロアルキル残基又はアリール残基、特にメチル残基、エチル残基又はフェニル残基、特に有利にはメチル残基又はエチル残基である。Rは有利には、アルキル残基、シクロアルキル残基、アリール残基、アリールアルキル残基、特にメチル残基、エチル残基又はフェニル残基、特に有利にはメチル残基である。Rは有利には、水素又はアルキル残基、シクロアルキル残基、アリール残基、アリールアルキル残基、特にメチル残基、特に有利には、前記残基Rは水素である。nは有利には、0又は2の値をとる。本発明の特に有利な実施態様において、nは2の値をとる。前記基Cは、有利には、2〜12つの炭素原子を有する不飽和のアルキル残基、特に有利には2〜6つの炭素原子を有する不飽和のアルキル残基、特にビニル、アクリル、メタクリルである。前記基(−A−D−C)は有利には、以下の残基である:OC(O)C(CH)=CR、OC(O)CH=CR、NHC(O)C(CH)=CR又はNHC(O)CH=CR。特に有利には、前記基は、残基OC(O)C(CH)=CR又はOC(O)CH=CRである。Rのための有利な残基は、有利な残基Rで挙げた。Rは有利には、官能化又は非官能化した、例えば芳香族又は脂肪族の飽和の又は不飽和の、1〜12つの炭素原子を有する炭化水素残基である。Rのための有利な残基は、有利な残基Rで挙げた。Rはまた、CR−A−D−Cの意味をとってもよく、即ちこの場合には一般式IIのオルガノシランBは、アルコキシシランB*と同一である。
【0020】
アルコキシシランB*のための有利な例は、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランである。
【0021】
前記組成物Zは有利にはコーティングとして使用される。特に有利には、前記組成物はこの際、コーティングされた表面の耐引掻性の改善に役立つ。組成物Zから硬化により得られたコーティングは、比較可能なコーティングよりも向上した機械的硬度及び改善した耐引掻性を示し、前記コーティングは、市販の、適度にのみ反応性であるシラン、又はこの加水分解生成物及び/又は縮合生成物で表面改質されている粒子を含有する。
【0022】
アルコキシシリル基と異種原子の間にメチレンスペーサーを有するアルコキシシランBの高い反応性に基づいて、前記化合物は特に、SiOH又はMeOHを有する粒子P1の官能化に適する。Me−O−Me官能性、Me−O−Si官能性、Si−O−Si官能性の粒子の、前記アルコキシシランBを用いた平衡化もまた、前記の高い反応性により容易になり、かつ前記粒子Pの製造のために実施されてよい。前記粒子P1と前記アルコキシシランBとの反応は迅速かつ完全に進行する。
【0023】
前記組成物Z中に含有されたバインダーBMは、1つ又は複数の反応能力のある基を有することが必要で、前記バインダーは有利には、化学線又は熱処理により、自体とこの反応能力のある粒子とのポリマーの形成下で、ラジカル重合、カチオン重合又はアニオン重合を開始することが可能である。反応能力のある基は、エチレン性不飽和官能性を有する基、特にビニル基、メタクリラート基、アクリラート基、アクリルアミド基である。前記バインダーBMはこの際、モノマー化合物、オリゴマー化合物も、又はポリマー化合物をも含有してよい。
【0024】
適したモノマー化合物及びオリゴマー化合物の例は、ヘキサンジオールジアクリラート、ペンタエリトリットトリアクリラート、ジペンタエリトリットペンタアクリラート、トリエチレングリコールジアクリラートその他である。適したポリマーバインダーBMの例は、エチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリルコポリマー、ポリエステル−(メタ)アクリラート、不飽和ポリエステル、ウレタン−(メタ)アクリラート、シリコーン−(メタ)アクリラートである。
【0025】
化学線とは、赤外線(NIR)、可視線、紫外線(UV)の、並びにレントゲン線の範囲の電磁線が理解される。
【0026】
前記組成物Zは、粒子P1として、全ての、金属酸化物粒子及び金属混合酸化物粒子(例えば、酸化アルミニウム、例えばコランダム、他の金属及び/又はケイ素とのアルミニウム混合酸化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄その他)、酸化ケイ素粒子(例えばコロイドシリカ、熱分解シリカ、沈殿シリカ、シリカゲル)、又は酸化ケイ素化合物(このケイ素の複数の原子価が有機残基を備えている酸化ケイ素化合物)(例えばシリコーン樹脂)が使用されてよいことに特徴付けられる。前記粒子P1は更に、前記粒子がその表面で、金属官能性(MeOH)、水酸化ケイ素官能性(SiOH)、Me−O−Me官能性、Me−O−Si官能性及び/又はSi−O−Si官能性を提供可能であることに特徴付けられ、前記官能性を介して前記オルガノシランBとの反応を行ってよい。前記粒子P1は有利には、1000nmよりも小さい、特に有利には100nmよりも小さい平均粒径を有し、その際この粒子サイズは、透過型電子顕微鏡により測定される。
【0027】
本発明の有利な実施態様において、前記粒子P1は熱分解シリカからなる。本発明の更なる有利な実施態様において、粒子P1として、コロイドシリカ又は金属酸化物が使用され、これらは有利には、ミクロン未満のサイズの相応する酸化物粒子の分散液として、水性又は有機性溶媒中で存在する。この際有利には、金属、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、タンタル、タングステン、ハフニウム、鉛の酸化物が使用されてよい。有利には、水性のSiOゾルが使用され、これは有利には一般式IIのオルガノシランBと、n=2の際に、反応する。
【0028】
同様に有利には、更に一般式IV
【0029】
【化4】

[前記式中、
は、OR官能基、OH官能基、場合によりハロゲン置換、ヒドロキシル置換、アミノ置換、エポキシ置換、チオール置換、(メタ)アクリル置換、又はNCO置換した、1〜18つの炭素原子を有する炭化水素残基を表し、その際この炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基、又はNR基により中断されていてよく、
は、1〜18つの炭素原子を有する、場合により置換した一価の炭化水素残基を表し、
eは、0以上の値を表し、
fは、0以上の値を表し、
gは、0以上の値を表し、かつ
hは、0以上の値を表し、但し、e+f+g+hの合計は、少なくとも1、有利には少なくとも5である]のシリコーン樹脂からなる粒子P1が使用される。
【0030】
組成物Zのために、1つ又は複数の異なる粒子の種類Pが使用されてよい。従って、例えば、ナノスケールのSiOの他に、ナノスケールのコランダムをも含有するコーティング系が製造される。
【0031】
コーティング系Z中に含有される、この総質量に対する粒子Pの量は有利には少なくとも5質量%、より有利には少なくとも10質量%、特に有利には少なくとも15質量%、特に最大で90質量%である。
【0032】
前記組成物Zの製造は有利には、二工程方法において行われる。この第一工程において、前記粒子Pが製造される。第二工程において、官能化された粒子Pが前記バインダーBM中に導入される。
【0033】
有利な方法において、前記粒子P1と、オルガノシランBとの反応により得られた粒子Pは、これが前記バインダーBM中に導入される前に清浄化される。前記手法は、特に、製造工程中に生じた汚染物が、この硬化したコーティングの特性プロフィルに負に作用する場合に推奨される。前記粒子Pの清浄化は例えば、この粒子を生じさせ、引き続き適した溶媒で洗浄することにより行われてよい。
【0034】
代替法において、前記組成物は、前記粒子P1をバインダーBMの存在下で前記シランBを用いて官能化させることにより製造される。両方の製造方法において、前記粒子P1は、水性溶媒中の、又は水不含の溶媒中においても分散液として、また固体の状態でも存在してもよい。
【0035】
この際前記粒子P1の水性又は非水性の分散液が使用される場合には、この相応する溶媒は、前記粒子P又はP1の、前記バインダーBM中への導入後に通常は除去される。この溶媒の除去はこの際、有利には蒸留により行われ、この除去は、前記粒子P1と前記シランBとの反応の前又は後に行われてよい。
【0036】
有利に使用されるシランBの例は、アクリルオキシメチルトリメトキシシラン、アクリルオキシメチルメチルジメトキシシラン、アクリルオキシメチルジメチルメトキシシラン、アクリルオキシメチルトリエトキシシラン、アクリルオキシメチルメチルジエトキシシラン、アクリルオキシメチルジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシメチルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシメチルジメチルメトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルメチルジエトキシシラン、及びメタクリルオキシメチルジエチルメトキシシランである。
【0037】
本発明の特に有利な実施態様において、シランBとして、n=2を有する一般式(II)のモノアルコキシシリル官能性シラン、例えば(メタ)アクリルオキシメチルジメチルモノメトキシシラン又は(メタ)アクリルオキシメチルジメチルモノエトキシシランが使用される。
【0038】
前記粒子の官能化のために、シランB単独で、又は様々なシランBの混合物、又はシランBと他のアルコキシシランとからなる混合物をも使用してよい。
【0039】
前記組成物Zは加えて、慣用の溶媒並びに、調合物中で通常の添加剤及び助剤を含有してよい。この際、特にレベリング助剤、界面活性剤、付着促進剤、光安定剤、例えばUV吸収剤及び/又はラジカル捕捉剤、チキソトロピー剤並びに更なる固形物及び充填剤が挙げられるものである。そのつど所望の特性プロファイルの達成のために、係る助剤は前記組成物にも、またこの硬化した材料にも有利である。これは特に、前記組成物Zが、コーティングとして使用されるものである場合に当てはまる。同様に、このコーティング調合物は、染料及び/又は顔料をも含有してよい。
【0040】
前記組成物Zの硬化は有利には、化学線又は熱により開始したラジカル重合により、エチレン性不飽和基のために必要である条件下で、通常の、当業者に公知の様式で行われる。
【0041】
前記重合は例えば、UV線放射により、適した光開始剤、例えばDarocur(R)1178、Darocur(R)1174、Irgacure(R)184、Irgacure(R)500の添加により行われる。前記光開始剤は、通常は0.1〜5質量%の量で使用される。熱により前記重合が、有機過酸化物、例えば過オキシジカルボン酸、又はアゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリルの添加により実施される。
【0042】
本発明の特に有利な実施態様において、前記組成物Zは少なくとも1つの光開始剤を含有し、このコーティングの硬化は、UV線により行われる。本発明の更なる有利な実施態様において、前記組成物Zの硬化は電子線により行われる。
【0043】
前記組成物Zの硬化により得られるコーティングは、優れた機械的特性を有する。公知の材料に比較して、例えばこの耐引掻性は著しく改善された。
【0044】
本発明の更なる対象は、前記組成物Zの、任意の基材のコーティングのための使用である。有利な基材は例えば、酸化性材料、例えばガラス、金属、木材又はプラスチック、例えばポリカルボナート、ポリブチレンテレフタラート、ポリメチルメタクリラート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンである。
【0045】
この塗布されたコーティングは、耐引掻性、耐摩耗性、耐化学薬品性の改善のために、又は付着防止特性に影響を及ぼすために用いられる。前記組成物Zの塗布は、任意の方法、例えば浸漬法、スプレー法、及び流延法により行われてよい。「ウェットインウェット」法による塗布もまた可能である。
【0046】
上記の式の全ての記号はそれぞれ互いに無関係な意味を有する。全ての式においてケイ素原子は四価である。
【0047】
他に挙げられていない限りは以下の実施例において全ての量及びパーセントの記載は、質量に対するもので、全ての圧力は0.10MPa(abs.)、かつ全ての温度は20℃である。
【0048】
実施例1:
SiOオルガノゾル(Nissan Chemicals社のIPA−ST(R)、30質量%のSiO、12nm)20.00gに、1分間のうちにメタクリラートメチルジメチルメトキシシラン2.00gを滴加し、この混合物を16時間60℃に温めた。前記混合物の室温への冷却後、ヘキサンジオールジアクリラート15.00gを添加し、引き続きイソプロパノールを減圧下で留去した。この透明な分散液は29質量%のSiOを含有した。
【0049】
実施例2:
SiOオルガノゾル(Nissan Chemicals社のIPA−ST(R)、30質量%のSiO、12nm)20.00gに、1分間のうちにメタクリラートメチルジメチルメトキシシラン0.66gを滴加し、この混合物を16時間60℃に温めた。前記混合物の室温への冷却後、ヘキサンジオールジアクリラート15.00gを添加し、引き続きイソプロパノールを減圧下で留去した。この透明な分散液は29質量%のSiOを含有した。
【0050】
実施例3:
水性のSiOゾル(Grace Davison社のLUDOX(R) AS40、40質量%のSiO、pH=9.1、22nm)20.00gに、60分間のうちにエタノール20mlを、5分間のうちにメタクリラートメチルトリメトキシシラン2.00gを滴加し、この混合物を16時間60℃に温めた。前記混合物の室温への冷却後、ヘキサンジオールジアクリラート15gを添加し、引き続きエタノール及び水をアゼオトロープとして留去した。この透明な分散液は35質量%のSiOを含有した。
【0051】
実施例4:
水性のSiOゾル(Grace Davison社のLUDOX(R) AS40、40質量%のSiO、pH=9.1、22nm)20.00gに、60分間のうちにエタノール15mlを、5分間のうちにメタクリラートメチルジメチルメトキシシラン2.00gを滴加し、この混合物を16時間60℃に温めた。前記混合物の室温への冷却後、ヘキサンジオールジアクリラート15gを添加し、引き続きエタノール及び水をアゼオトロープとして留去した。この透明な分散液は29質量%のSiOを含有した。
【0052】
実施例5:
SiOオルガノゾル(Nissan Chemicals社のIPA−ST(R)、30質量%のSiO、12nm)20.00gに、1分間のうちにメタクリラートメチルジメチルメトキシシラン2.00gを滴加し、この混合物を16時間60℃に温めた。この溶媒の留去後、この残留物を100ml(5×20ml)のペンタンで洗浄した。エタノール10ml中のこの得られた固形物2.90gの分散液にHDDA7.10gを添加し、この溶媒を留去した。29質量%のSiO含量を有する透明な分散液を得た。
【0053】
比較例1:
SiOオルガノゾル(Nissan Chemicals社のIPA−ST(R)、30質量%のSiO、12nm)26.7gに、1分間のうちにヘキサンジオールジアクリラート15.00gを添加し、30分間撹拌し、引き続きイソプロパノールを減圧下で留去した。この透明な分散液は35質量%のSiOを含有した。
【0054】
比較例2:
SiOオルガノゾル(Nissan Chemicals社のIPA−ST(R)、30質量%のSiO、12nm)20.00gと水10gとの混合物に、1分間のうちにメタクリラートプロピルトリメトキシシラン2.00gを滴加した。この混合物を16時間60℃に温めた。室温への冷却後、ヘキサンジオールジアクリラート15gを添加し、引き続きイソプロパノール及び水を共沸により留去した。この透明な分散液は29質量%のSiOを含有した。
【0055】
実施例6:
塗膜フィルムの製造
実施例1、2、3、4及び5、比較例1及び2からのコーティング材料並びに、純粋な1,6−ヘキサンジオールジアクリラートからなるコーティングを、そのつどフィルムスプレッダー装置、Erichsen社のCoatmaster(R) 509 MC(間隙高さ80μmのナイフを有する)を用いて、ガラスプレート上にナイフコーティングした。引き続き得られたコーティングフィルムを窒素下で、Dr.Hoenle社のUVA−Cube、UVA−Print100 CV1型中で、約60mW/cmのランプ出力で、放射時間60秒で硬化させた。全てのコーティング調合物からこの際、光学的に良好でかつ平滑なコーティングが得られた。全ての5つのコーティングの光沢は、−光沢測定装置、Byk社のMicro gloss 20゜を用いて測定した−全ての6つの塗料で約155の光沢単位であった。
【0056】
実施例7:
塗膜フィルムの耐引掻性の評価
実施例6から製造された塗膜フィルムの耐引掻性を、Peter−Dahnによる研磨試験装置を用いて算出した。このために、45×45mmの面積及び1kgの質量を有するScheuervlies Scotch Brite(R)07558を負荷し、500回引っ掻いた。この引掻試験の開始前に、また終了後にも、このそれぞれのコーティングの光沢を、光沢測定装置、Byk社のMicro gloss 20゜を用いて測定した。このそれぞれのコーティングの耐引掻性に関する程度として、光沢損失を測定した(それぞれ3つの塗料試料からの平均値):
【0057】
【表1】

表1:Peter−Dahnによる引掻試験の際の光沢損失

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーBM並びに粒子Pを含有する硬化性組成物Zであって、前記バインダーが少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有し、かつ前記粒子が、この表面上の少なくとも1つのエチレン性不飽和基を提供可能であり、かつ一般式I
【化1】

[前記式中、
は、水素又は1〜12つの炭素原子を有する炭化水素残基を表し、この炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基、又はNR基により中断されていてよく、
は、水素又は1〜12つの炭素原子を有する炭化水素残基を表し、
Aは、酸素、硫黄、=NR又は=N−(D−C)を表し、
Dは、それぞれ1〜12つの炭素原子を有するカルボニル基、アルキレン残基、シクロアルキレン残基又はアリーレン残基を表し、その際この炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基、又はNR基により中断されていてよく、かつ
Cは、エチレン性不飽和基を表す]
の残基を有する、バインダーBM並びに粒子Pを含有する硬化性組成物Z。
【請求項2】
前記粒子Pは、
(a)粒子P1と、(b)一般式II
【化2】

のオルガノシランB又はその加水分解及び/又は縮合生成物と、(c)場合により水との反応により製造可能であり、
その際前記粒子P1は、金属酸化物、金属−ケイ素−混合酸化物、二酸化ケイ素、コロイドシリカ、及びオルガノポリシロキサン樹脂及びこれらの組み合わせから選択された材料からなり、前記材料はMe−OH、Si−OH、Me−O−Me、Me−O−Si、Si−O−Si、Me−OR及びSi−ORから選択された官能基を提供可能であり、
その際、
は、水素又は1〜6つの炭素原子を有する炭化水素残基を表し、この炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基、又はNR基により中断されていてよく、
は、1〜12つの炭素原子を有する炭化水素残基を表し、この炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基、又はNR基により中断されていてよく、
Meは、金属原子を表し、かつ
nは、0、1又は2の値を表し、かつ
、A、D及びCは、請求項1で挙げた意味を有する、請求項1記載の組成物Z。
【請求項3】
前記粒子Pは、請求項2記載の一般式IIのオルガノシランBと、一般式III
【化3】

[前記式中、
は、請求項2記載のRの意味合いを有し、
は、置換されていてもよい炭化水素残基を表し、かつ
mは、0、1、2又は3の値を表す]
のアルコキシシランB*との共加水分解により製造可能である、請求項1記載の組成物Z。
【請求項4】
前記炭化水素残基Rは、メチル残基、エチル残基又はフェニル残基である、請求項2又は3記載の組成物Z。
【請求項5】
前記基(−A−D−C)は、残基OC(O)C(CH)=CR、OC(O)CH=CR、NHC(O)C(CH)=CR又はNHC(O)CH=CRである、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物Z。
【請求項6】
バインダーBM中の前記エチレン性不飽和基は、ラジカル重合、カチオン重合又はアニオン重合できる、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物Z。
【請求項7】
バインダーBM中の前記エチレン性不飽和基は、化学線又は熱処理により重合されてよい、請求項1から6までのいずれか1項記載の組成物Z。
【請求項8】
バインダーBM中の前記エチレン性不飽和基は、ビニル基、メタクリラート基、アクリラート基及びアクリルアミド基から選択される、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物Z。
【請求項9】
前記粒子P1は、1000nmよりも小さい平均粒径を有し、その際この粒子サイズは、透過型電子顕微鏡により測定される、請求項1から8までのいずれか1項記載の組成物Z。
【請求項10】
基材のコーティングのための、請求項1から9までのいずれか1項記載の組成物Zの使用。

【公表番号】特表2007−530719(P2007−530719A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504290(P2007−504290)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002541
【国際公開番号】WO2005/092932
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】