説明

表面構造を特性決定する方法および材料の変性、新たな開発および製造のためのその使用

本発明は、(I)化学的硬化性インプリント材料を使用して
(1.1)物品の損傷されない表面
(1.2)機械的作用および/または化学的作用によりおよび/または放射線および/または熱の作用により損傷された物品の表面および/または
(1.3)機械的作用および/または化学的作用によりおよび/または放射線および/または熱の作用により損傷された、物品の表面に取り付けられた試験体の表面
の少なくとも1つの位置のインプリントを取り、
(II)インプリント材料を硬化し、損傷の画像のネガを形成し、
(III)表面構造の%での面積割合および/または損傷の画像中の表面の損傷の%での面積割合をネガの光学顕微鏡写真により画像分析により決定する
ことにより表面構造を特性決定する方法に関する。本発明は更に材料を変性、開発および/または製造するための前記方法の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面構造、特に表面の損傷を特性決定する新しい方法に関する。本発明は更に材料の変性、新たな開発および製造の際の新しい方法の使用に関する。
【0002】
物品の表面構造は物品の技術的特性、使用価値および寿命に関して基本的に重要である。従って材料の変性、新たな開発および製造には表面構造の正確な認識が不可欠である。
【0003】
更にあらゆる種類の物品の表面がしばしば機械的作用および化学的作用によりまたはエネルギーの多い放射線の作用により破損することは日常の出来事である。これらの表面の破損は物品を使用不能にし、使用者が経済的に大きい不利益になることがある。
【0004】
表面の破損は作用に応じて腐食、燃焼、そり、ざらつき、引っ掻き傷、溝、穿孔、切断面、割れ目、孔および/または大きい面積の剥がれまたははげ落ちの形を有する。表面の障害は特に滑らかな、光沢のある、磨かれ、研磨された、装飾的な、透明なおよび/または光を反射する表面において眼により特に妨害が目立つものにする。表面の損傷は機械の可動部品の焼き付け、材料の腐食、または電気部品の短絡のような重大な後続破損を生じることがある。
【0005】
有機、無機および/または有機金属材料からなる物品、特に滑らかな、光沢のある、磨かれた、研磨した、装飾的な、透明なおよび/または光を反射する表面を有する、ガラス、金属、熱可塑性プラスチックおよび熱硬化性プラスチック、セラミック、無機物、皮革、織物、木材、紙および/またはこれらの材料の複合体からなる物品の製造者および使用者は、材料が機械的作用によりなおわずかに、理想的な場合はもはや破損しないように材料を変性し、または全く新しく開発することによりこれらの問題を最小にするかまたはできるだけ避けることが求められる。
【0006】
このために、表面を保護する手段の成果を客観的に確認することができ、材料の変性、新たな開発および/または製造を意図的に促進することができる、表面構造、特に表面の破損、例えば機械的作用および/または化学的作用および/または放射線および/または熱の作用により生じる破損の形成を客観的に特性決定する方法が必要である。
【0007】
物品はしばしば高い経済的価値を有し、この方法は破壊されずに運転しなければならない。実験室の試験で達成できないかまたは容易に達成できないきわめて大きい物品もある。従ってこの方法は実際の条件下で、いわば現場で実施できなければならない。
【0008】
このような方法は製造者および使用者の長く持続する要求にもかかわらずなお提供されない。
【0009】
例えばほとんどすべての自動車の所有者が自動洗車装置で自動車の洗浄の際に自動車塗装のかき傷、すなわち洗浄かき傷の形成を生じる不快な経験をする。洗浄のたびに新しい洗浄かき傷が加えられ、自動車塗装の光学的特性が時間の経過で連続して劣化し、これが自動車のかなりの価値の損失を生じる。この真の洗浄かき傷はいわゆるにせの洗浄かき傷、すなわち自動洗車装置の洗浄により生じる残留液中のかき傷と異なり、事後の研磨によりもはや除去できない。更にこのかき傷は特に日光でまさに暗い塗装の場合に光学的に目立つ。
【0010】
従って自動車工業においておよび自動車塗装の顧客において、自動洗車装置で洗浄後に日光または人工の光での目視的評価で、洗浄のかき傷を示さないかまたはきわめて少ない形成を示し、多くの洗浄後にかき傷の程度が全く増加しないかまたはわずかに増加し、自動車塗装の光学的特性が全く劣化しないかまたは少ない劣化を眼で知覚する、長く持続する要求が存在する。
【0011】
この問題を、耐引っ掻き性被膜を生じる被覆剤の開発により解決することはかなり前からすでに試みられた。その際被覆剤から被膜を製造し、その耐引っ掻き性を一般的なおよび公知の引っ掻き試験により測定する。この引っ掻き試験の例は、引っ掻き媒体を有する回転板を決められた力および送りで被膜に負荷を与える回転移動引っ掻き試験、サンドブラスト装置を有する実験洗車装置でのDIN55668によるアムテック試験または振動装置で砂の粒子を衝突させて被膜に負荷を加えるサンド試験である。この試験の結果は製造した自動車での洗浄引っ掻き傷の眼での知覚と相関しないかまたはきわめて悪く相関する。更にこの試験は破壊せずに運転できず、従って製造した自動車に使用できない。従ってこの試験を使用して、日光または人工の光で、眼で評価する際に、洗浄のかき傷の形成を全く示さないかまたはわずかに示し、多くの洗浄の後にかき傷の程度が上昇しないかまたはわずかに上昇し。自動車塗装の光学特性の劣化が眼で知覚されないかまたはわずかに知覚される被膜を生じる被覆物質を意図的に開発することはほとんど不可能である。
【0012】
従って本発明の課題は、すべての形式の表面構造、特に表面の破損、例えば機械的作用および/または化学的作用によりおよび/または放射線および/または熱の作用により生じる損傷の形成を客観的に特性決定する新しい方法を見出すことであり、前記方法は公知試験法の欠点をもはや有せず、有機、無機および/または有機金属材料からなるすべての形式の物品、特にガラス、金属、熱可塑性および熱硬化性プラスチック、セラミック、無機物、皮革、織物、木材、紙および/またはこれらに材料の複合体からなる物品、特に滑らかな、光沢のある、磨かれた、研磨した、装飾的な、透明なおよび/または光を反射する表面を有する物品での、すべての形式の表面構造、特に表面の破損、特にエッチング、燃焼、ざらつき、かき傷、溝、穿孔、切断面、割れ目、孔、そりおよび/または大きい面積の剥がれおよび/またははげ落ちの形の、例えば機械的作用および/または化学的作用によりおよび/または放射線および/または熱の作用により生じる損傷の形成の客観的特性決定を可能にし、その際物品が更に損傷せず、または完全に破壊されないべきである。
【0013】
新規方法は実際に生じる表面の破損だけでなく、標準試験により生じる表面の破損も客観的に特性決定することを可能にして、両方の種類の破損の客観的相関を生じることができるべきである。
【0014】
従って新規方法は実験室だけでなく、きわめて大きい物品も検査できるように、実際に、いわば現場で実施できるべきである。
【0015】
新規方法は。材料の変性、新たな開発および/または製造を意図的に促進できるように、機械的および/または化学的に損傷からおよび/または放射線および/または熱による損傷から表面を保護する手段の成果を客観的に確認することを可能にすべきである。
【0016】
それにより、
(I)化学的硬化性インプリント材料を使用して
(1.1)物品の損傷されない表面
(1.2)機械的作用および/または化学的作用によりおよび/または放射線および/または熱の作用により損傷された物品の表面および/または
(1.3)機械的作用および/または化学的作用によりおよび/または放射線および/または熱の作用により損傷された、物品の表面に取り付けられた試験体の表面
の少なくとも1つの位置のインプリントを取り、
(II)インプリント材料を硬化し、損傷の画像のネガを形成し、
(III)表面構造の%での面積割合および/または損傷の画像中の表面の損傷の%での面積割合をネガの光学顕微鏡写真により画像分析により決定する
ことによる表面構造を特性決定する新規方法が見出された。
【0017】
以下に表面構造を特性決定する新規方法を本発明の方法と記載する。
【0018】
更に材料を変性し、新たに開発し、および/または製造する際の本発明の方法の新規使用が見出された。
【0019】
以下に本発明の方法の新規使用を本発明の使用と記載する。
【0020】
技術水準を考慮して、本発明が基礎とする課題を本発明の方法および本発明の使用により解決できることは意想外であり、当業者に予測できないことであった。
【0021】
本発明の方法が公知の試験法の欠点をもはや有せず、有機、無機および/または有機金属材料からなるすべての形式の物品、特にガラス、金属、熱可塑性および熱硬化性プラスチック、セラミック、無機物、皮革、織物、木材、紙および/またはこれらの材料の複合体からなる物品、特に滑らかな、光沢のある、磨かれた、研磨した、装飾的な、透明なおよび/または光を反射する表面を有する物品での、すべての形式の表面構造、特に表面の破損、例えばエッチング、燃焼、そり、ざらつき、かき傷、溝、穿孔、切断面、割れ目、孔および/または大きい面積の剥がれおよび/またははげ落ちの形の、例えば機械的作用および/または化学的作用によりおよび/または放射線および/または熱の作用により生じる損傷の形成の客観的特性決定を可能にし、その際物品が更に損傷せず、または完全に破壊されないことは意想外であった。
【0022】
本発明の方法は実際に生じる表面の破損だけでなく、標準試験により生じる表面の破損の客観的特性決定を可能にし、両方の種類の破損の間に客観的相関を生じることができる。
【0023】
本発明の方法は実験室だけでなく、きわめて大きい物品も検査できるように、実際に、いわばその場で実施することができる。
【0024】
本発明の方法は機械的損傷から表面を保護する手段の成果を客観的に確認することを可能にし、材料の変性、新たな開発および/または製造を意図的に促進することができる。
【0025】
本発明の方法はすべての形式の物品、特に有機、無機および/または有機金属材料からなる物品、特にガラス、金属、熱可塑性および熱硬化性プラスチック、セラミック、無機物、皮革、織物、木材、紙および/またはこれらの材料の複合体からなる物品、特に滑らかな、光沢のある、磨かれた、研磨した、装飾的な、透明なおよび/または光を反射する表面を有する物品の表面構造の特性決定に用いる。
【0026】
本発明の方法は特にこれらの物品の表面の表面構造の特性決定に用いる。
【0027】
本発明の方法の試験物であるといえる物品の例は、
光学部品、例えばミラー、レンズ、プリズム、眼鏡レンズ、窓ガラス、またはフロントガラス、
機械部品、例えばねじ、ボルト、ナット、ピストン、シャフト、歯車または伝導装置、
電気部品、例えば導体板、メモリーチップ、コイル、またはソーラーコレクタ、
装身具、例えば貴金属および/または鉱物からなるもの、例えば宝石および準宝石、
プラスチックフィルムおよびプラスチック成形品および
塗料およびフィルムを含む保護被膜および/または装飾被膜で被覆した物品、例えば移動手段、船舶、鉄道車両、飛行機、自転車、オートバイ、乗用車、トラック、バス、またはこれらの部品、建造物、家具、窓、ドア、工業的小部品、コイル、コンテナ、包装、布製品、フィルム、光学部品、電気部品、機械部品、またはガラス中空体、日常必要なその他の部品。
【0028】
検査すべき物品は前記の材料からなり、相当して形成される大きい物品の代わりに特性を逆推理するために検査する試験体であってもよい。従って試験体は検査すべき大きい物品に依存する種々の形を有することができる。有利に試験体は試験板であってもよい。例えば塗装した自動車車体の代わりに相当して塗装した試験体、特に相当して塗装した試験板を本発明の方法で処理できる。
【0029】
試験体は大きい物品に取り付けることができ、これにより本発明の方法は試験体だけでの試験よりなお実用に適した結果を生じる。例えば本発明の方法を実施するために、相当して塗装した試験体、特に相当して塗装した試験板を。塗装した自動車車体の種々の位置に取り付けることができ、例えば自動洗車装置、特にブラシ洗車装置での塗装した自動車車体の位置により異なる負荷のような位置に依存した作用および影響を検査できる。
【0030】
表面の損傷は種々の原因を有することがある。
【0031】
表面の損傷は機械的作用により、例えば引っ掻き、切断、研磨、摩擦、皮むき、照射、および噴霧およびこれらの作用の組合せにより生じることがある。これらの作用は種々の形および硬度の中実または微粒状物品により、例えばハンマー、ドライバー、きりまたはナイフを含む工具により、鍵、弾丸、ブラシおよび布を含む洗浄装置により、自動車洗車装置、特にブラシ洗車装置を含む洗浄装置、研磨装置、研磨剤、砂、石剤、スチールウールまたは鉱物ウールにより生じることがある。
【0032】
表面損傷は電気化学的作用を含む化学的作用、例えば水、酸、塩基、塩、還元剤、酸化剤、有機溶剤または他の化学物質により、およびプラズマ、火およびこれらの作用の組合せにより生じることがある。
【0033】
表面損傷は更に放射線により、例えば電磁線、例えば赤外線、近赤外線(NIR)、可視光線、UV線、X線またはγ線、粒子線、例えば電子線、α線、β線、陽子線、または中性子線により生じることがある。
【0034】
特に表面損傷は熱い媒体および/またはIR線により伝達できる熱により生じることがある。
【0035】
本発明の方法において、化学的硬化性インプリント材料を使用して
物品の損傷されない表面、
機械的作用および/または化学的作用によりおよび/または放射線および/または熱の作用により損傷された物品の表面および/または
機械的作用および/または化学的作用によりおよび/または放射線および/または熱の作用により損傷された、物品の表面に取り付けられた試験体の表面
の少なくとも1つの位置のインプリントを取る。インプリント材料を硬化し、こうして塗料の引っ掻き傷の損傷の画像のネガを形成する。
【0036】
有利に試験の品質が低下しないように、この工程の前に少なくとも1つまたは複数の検査すべき表面領域で不純物を温和に除去する。
【0037】
本発明の方法に使用される化学的硬化性インプリント材料は検査すべき表面を攻撃してはならないおよび/または目に見える痕跡を残してはならない。有利にオレフィン性不飽和二重結合、特にアクリレート基を有する材料、特にシリコーンをベースとする材料を使用する。これらのインプリント材料は、きわめて小さい窪みに侵入し、従ってきわめて小さい細部を再現できるので、歯科分野でしばしば使用される。前記材料は例えばHeraeus社からProvil Novo(登録商標)およびProvil Novamedium(登録商標)の名称で販売されている。
【0038】
有利に化学的硬化性インプリント材料を有利に3〜4cmの直径の有利に円形の板の形で、有利に円形の金属インプリント、特にアルミニウムインプリントを使用して検査すべき表面に加圧する。金属インプリントの押し当てる面は有利にインプリント材料の板の直径に匹敵するかまたは同じ直径を有する。有利に金属インプリントはインプリント材料からなる板に自然に付着する。インプリント材料を金属インプリントの下で硬化し、その後硬化したインプリント材料からなる板から金属インプリントを取り出し、インプリント材料の硬化した板(ネガ)を検査すべき表面から取り出すことができる。
【0039】
ネガを液体プラスチック材料と接触させ、ネガと接触した液体プラスチック材料を硬化することによりネガからポジを製造することができ、その後得られたポジをネガから除去する。
【0040】
その際有利に表面構造の画像または損傷の画像を有するネガを上に向かって適当な寸法の容器の底面に配置し、液体プラスチック材料で被覆する。
【0041】
液体プラスチック材料として、物理的および/または化学的硬化により硬化する、通常の、公知の物理的および/または化学的硬化性被覆材料を使用できる。
【0042】
1種、特に1種の有機溶剤、有利に芳香族溶剤、特にキシレン中で少なくとも1種の、特に1種のポリマー、有利に熱可塑性ポリマー、特にポリスチレンを使用する。その際有機溶剤を蒸発することにより液体プラスチック材料が硬化する。
【0043】
得られたポジはAFM(原子力間顕微鏡分析)およびREM(走査型電子顕微鏡分析)による検査に特に適している。これらの検査は本発明の方法の価値ある補足を生じることができる。
【0044】
本発明の方法においてネガおよびポジ、特にネガを直接光学顕微鏡写真に使用できる。有利に予め貴金属、有利に金または金/パラジウム、特に金でスパッタリングする。
【0045】
光学顕微鏡写真のために有利に高分解能デジタルカメラを使用する。このデジタルカメラの例はColorView12、SIS(Soft Imaging System)である。
【0046】
このデジタルカメラを光学顕微鏡に取り付ける。適当な光学顕微鏡の例はオリンパス顕微鏡BH3−MJLである。
【0047】
有利にレンズ倍率5:1〜100:1、有利に5:1〜50:1、特に10:1〜20:1を使用する。
【0048】
有利に少なくとも2個、有利に少なくとも5個、より有利に少なくとも8個、特に10個の測定領域を撮影する。
【0049】
有利に測定領域は200×100μm〜1500×1000μm、特に300×200μm〜1200×950μmの面積を有する。
【0050】
画像写真、画像分析および画像保管のために、有利に画像処理プログラム、例えば画像処理プログラムAnalysis(登録商標)、特にAnalysis(登録商標)ProVersion、SISを使用する。
【0051】
有利に画像写真においてカラー写真、特に12ビットカラー写真を撮影する。
【0052】
画像分析は有利に以下の工程を含む。
(1)オリジナル画像および色合い補正手段の製造
(2)緑の抽出物、特に8ビットの緑の抽出物の製造
(3)二成分の画像および画像フィルタ−の閾値の設定、製造
(4)粒子の分離および場合により浸食および拡張
(5)検出、すなわち表面構造または表面損傷、例えば引っ掻き傷、その他の表面損傷の識別および等級分け
(6)エクセルプログラムへの翻訳
(8)5〜20個、特に10個の測定領域からの統計の製造
(9)評価。
【0053】
有利に表面構造または表面損傷、例えば引っ掻き傷の検出(5)のために二成分の画像(3)において以下の形状パラメーターを定義する。
(a)粒子面積(表面構造または表面損傷、例えば引っ掻き傷)=(ピクセルの数)×(X方向およびY方向の補正係数)
(b)アスペクト比=包囲する粒子の長方形の高さ/幅の最大比および
(c)形状係数=4πa/U、a=面積、U=周囲の長さ。
【0054】
これにより丸い粒子では形状係数は1であり、ほかの粒子では1未満である。形状パラメーターにより表面構造または表面損傷、例えば引っ掻き傷がない対象または粒子は引き続く評価から排除することができる。
【0055】
引き続き有効とわかった粒子を等級分け、すなわち相当する大きさの等級に分け、それぞれの頻度で確定することができる。有利に粒子を面積または幅により、特に幅により等級分けする。
【0056】
有利に面積による粒子の等級分けは少なくとも10、特に20の面積等級で行い、例えば引っ掻き傷の場合は1〜200μmの面積等級で行う。
【0057】
有利に幅による粒子の等級分けは少なくとも5、有利に8、特に10のFeret−min幅等級で、例えば引っ掻き傷の場合は20μmまでのFeret−min幅等級で行い、その際Feret−minは向かい合う粒子縁部の平行な接線の最小間隔として定義される。
【0058】
Feret−min幅等級の等級分けの代わりに粒子の平均幅により等級分けすることができ、その際平均幅は面積とFeret−max(=粒子の長さ)の商として定義される。
【0059】
面積による等級分けにおいて、それぞれの面積等級の%での表面構造面積割合または表面損傷面積割合、例えば%での引っ掻き傷面積割合およびすべての面積等級の%での全表面構造面積割合および全表面損傷面積割合、例えば%での全引っ掻き傷面積割合が決定される。
【0060】
幅による等級分けにおいてそれぞれの幅等級の%での表面構造面積割合または表面損傷面積割合、例えば%での引っ掻き傷面積割合および全部の幅等級の%での全表面構造面積割合および全表面損傷面積割合、例えば%での全引っ掻き傷面積割合が決定される。
【0061】
本発明の方法で実施される画像分析検査の結果を引き続き検査される表面の使用技術的特性と相関させることができる。この相関から該当する表面もしくは物品を形成する材料の目的に合わせた変性、新たな開発および/または製造のきわめて良好な、重要な結論を引き出すことができる。
【0062】
本発明の特に有利な使用において、例えばブラシ洗車装置での多くの洗浄により引っかかれた自動車車体の被覆を日光で目視的に評価し、有利に1(目に見える引っ掻き傷が全くないかまたはきわめて少ない、きわめて少ない引っ掻き傷)から6(きわめて多くの目に見える引っ掻き傷、きわめて激しい引っ掻き傷)までの評点で評価し、それぞれの評点を本発明の方法で決定した%での全引っ掻き傷面積割合およびそれぞれのFeret−min幅等級の%での引っ掻き傷面積割合と相関させる。
【0063】
意想外にも、目視的な知覚の評価とそれぞれのFeret−min幅等級の%での引っ掻き傷面積割合の相関から、主に2〜10μm、特に4〜10μmの幅を有する引っ掻き傷が引っ掻き傷の目視的な知覚に決定的であり、まれに生じる幅広い引っ掻き傷が決定的でなく、しばしば生じる細かい引っ掻き傷が決定的であるという結論を引き出すことができる。
【0064】
従って本発明の方法は被覆、特に自動洗車装置、特にブラシ洗車装置で該当する自動車を何回も洗浄した後に日光での目による評価で塗料の引っ掻き傷の増加がないかまたはきわめて少ない、ベースコート/クリアコートタイプの色および/または効果を与える多層塗膜を製造するための被覆剤の開発および選択にすぐれて使用することができる。
【0065】
実施例
ブラシ洗車装置で生じる透明塗膜の引っ掻き傷の特性決定
例に関して市販されている二成分クリアコートから製造した透明塗膜で被覆した試験表のシリーズ1を使用した。更に市販されているUV線で硬化するクリアコートから製造した透明塗膜で被覆した試験表のシリーズ2を使用した。
【0066】
試験表の1組(シリーズ1およびシリーズ2からの)を異なる位置でPKW(乗用車)に固定し、ブラシ洗車装置で18回まで洗浄した。引き続き洗車装置洗浄液の存在する残留物を、イソプロパノールを含浸させた糸くずのない紙で除去した。
【0067】
試験表の引っ掻き傷の程度を6人の観察者により日光で目で評価し、点数評価した(評点1:目に見える引っ掻き傷がないかまたはきわめて少ない、きわめて少ない引っ掻き傷がついた、評点6;きわめて多い目に見える引っ掻き傷、きわめて激しく引っ掻き傷がついた)。6個の評点から平均値を形成した。
【0068】
引き続き化学的硬化性インプリント材料(シリコーンをベースとするアクリレート基を有する材料、Provil Novo(登録商標)Heraeusu社)を、直径3.5cmの円形の板の形で、円形アルミニウムインプリントを使用して試験板に加圧した。アルミニウムインプリントの押し当てる面はインプリント材料からなる板と同じ直径を有した。アルミニウムインプリントはインプリント材料からなる板に自然に付着した。インプリント材料をアルミニウムインプリントの下で硬化させ、その後硬化したインプリント材料からなる板からアルミニウムインプリントを除去し、試験板から硬化したインプリント材料の板(ネガ)を取り出した。
【0069】
ネガを光学顕微鏡写真のために金でスパッタリングした。
【0070】
光学顕微鏡写真のために高分解能デジタルカメラ、ColorView12、SIS(Soft Imaging System)社を使用した。デジタルカメラを、オリンパス顕微鏡BH3−MJLに取り付けた。レンズ倍率10:1を使用した。それぞれのポジから10個の測定領域の写真を撮った。それぞれの測定領域は1.149×919μmの面積を有した。画像写真、画像分析および画像保管のために画像処理プログラム Analysis(登録商標)Pro−Version、SIS社を使用した。画像写真の場合に12ビットカラー写真を撮った。
【0071】
画像分析は以下の工程からなっていた。
(1)オリジナル画像および色合い補正手段の製造
(2)緑の抽出物、特に8ビットの緑の抽出物の製造
(3)二成分の画像および画像フィルタ−の閾値を210に設定
(4)粒子の分離および場合により浸食および拡張
(5)検出、すなわち引っ掻き傷、その他の表面損傷の識別およびそれぞれ10個のFeret−min幅等級での等級分け:
等級1:0〜2μm
等級2:2〜4μm
等級3:3〜6μm
等級4:6〜8μm
等級5:8〜10μm
等級6:10〜12μm
等級7:12〜14μm
等級8:14〜16μm
等級9:16〜18μm
等級10:18〜20μm。
(6)エクセルプログラムへの翻訳
(8)それぞれ10個の測定領域からの統計の製造
(9)それぞれの幅等級の%での引っ掻き傷面積割合およびすべての幅等級の%での全引っ掻き傷面積割合を決定する評価。
【0072】
引っ掻き傷の検出(5)のために二成分の画像(3)において以下の形状パラメーターを定義する。
(a)粒子面積(引っ掻き傷)=(ピクセルの数)×(X方向およびY方向の補正係数)
(b)アスペクト比=包囲する粒子の長方形の高さ/幅の最大比および
(c)形状係数=4πa/U、a=面積、U=周囲の長さ。
【0073】
これにより丸い粒子では形状係数は1であり、ほかの粒子では1未満である。形状パラメーターにより、引っ掻き傷がない対象および粒子は引き続く評価から排除することができる。
【0074】
表1は使用した試験板、自動車車体でのその位置、洗浄数、目での観察の評価および全引っ掻き傷面積割合を示す。
【0075】
表1:使用される試験板、自動車車体でのその位置、洗浄数、目視的観察の評価および全引っ掻き傷面積割合
【0076】
【表1】

2K:二成分透明塗料から製造した透明塗膜
UV:UV線で硬化可能な透明塗料から製造した透明塗膜
HLO:ドア後部左上側
HRO:ドア後部右上側
VL;ドア前方左側
VR:ドア前方右側
HRU:ドア後部右下側
HLU:ドア後部左下側
FS:フロントガラス
HS:リアウィンドーガラス。
【0077】
結果は以下に要約されるように理解される。
UV透明塗料から製造した透明塗膜は二成分透明塗料から製造した透明塗膜より引っ掻きに強い。従ってこの方法は異なる透明塗料から製造した透明塗膜の間できわめて良好な区別を生じる。
少ない洗浄の後ですでに明らかな引っ掻き傷が認識できる。従ってきわめて良好な区別を達成するために多くの洗浄が必要でない。
試験板が取り付けられている位置の間で洗車ブラシによる負荷に関してかなりの相違が存在し、空間的観点でも相違がある。
【0078】
全引っ掻き傷面積割合と評点の間の相関係数Rは最もよい値と最も悪い値を含めずに0.8563であり、これはきわめて良好な相関の根拠である。
【0079】
更に評点に依存したそれぞれのFeret−min幅等級に関する相関係数Rを測定し、表2に示す。
【0080】
表2:評点に依存したそれぞれのFeret−min幅等級に関する相関係数R
【0081】
【表2】

【0082】
表2の値は引っ掻き傷の程度の目視的知覚が特に4〜10μmの幅の引っ掻き傷により特徴付けられることを裏付ける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)化学的硬化性インプリント材料を使用して
(1.1)物品の損傷されない表面
(1.2)機械的作用および/または化学的作用によりおよび/または放射線および/または熱の作用により損傷された物品の表面および/または
(1.3)機械的作用および/または化学的作用によりおよび/または放射線および/または熱の作用により損傷された、物品の表面に取り付けられた試験体の表面
の少なくとも1つの位置のインプリントを取り、
(II)インプリント材料を硬化し、損傷の画像のネガを形成し、
(III)表面構造の%での面積割合および/または損傷の画像中の表面の損傷の%での面積割合をネガの光学顕微鏡写真により画像分析により決定する
ことにより表面構造を特性決定する方法。
【請求項2】
ネガからポジを製造する請求項1記載の方法。
【請求項3】
表面構造の%での面積割合および/または損傷の画像中の表面の損傷の%での面積割合をポジの光学顕微鏡写真により画像分析により決定する請求項2記載の方法。
【請求項4】
表面構造または損傷画像をポジによりAFM(原子間力顕微鏡)およびREM(走査型電子顕微鏡)により補足的に特性決定する請求項2記載の方法。
【請求項5】
化学的硬化性インプリント材料としてオレフィン性不飽和二重結合を有する材料を使用する請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
シリコーンをベースとする材料を使用する請求項5記載の方法。
【請求項7】
化学的硬化性インプリント材料を板の形で金属インプリントを使用して物品または試験体の表面に加圧し、金属インプリントの下で硬化させ、金属インプリントをインプリント材料の硬化した板から除去し、インプリント材料の硬化した板(ネガ)を自動車車体または試験板から取り出す請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ネガを液体プラスチック材料と接触させ、これによりネガと接触した液体プラスチック材料を硬化させ、得られたポジをネガから除去することによりネガからポジを製造する請求項2から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ネガおよびポジを光学顕微鏡写真のために貴金属でスパッタリングする請求項1から3および5から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
光学顕微鏡写真のために高分解能デジタルカメラを光学顕微鏡に取り付ける請求項1から3および5から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
5:1〜100:1のレンズ倍率を使用する請求項10記載の方法。
【請求項12】
少なくとも2個の測定領域を撮影する請求項1から3および5から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
測定領域が200×100μm〜1500×1000μmである請求項1から3および5から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
画像撮影、画像分析および画像保管のために画像処理プログラムを使用する請求項1から3および5から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
画像撮影の際にカラー写真を撮る請求項1から3および5から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
画像分析が、以下の工程:
(1)オリジナル画像および色合い補正手段の製造
(2)緑の抽出物の製造
(3)二成分の画像および画像フィルタ−の閾値の設定、製造
(4)粒子の分離および場合により浸食および拡張
(5)検出および等級分け
(6)エクセルプログラムへの翻訳
(8)5〜20個の測定領域からの統計の製造
(9)評価
の工程からなる請求項1から3および5から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
二成分の画像(3)において表面構造または表面損傷の検出(5)のために以下の形状パラメーター:
(a)粒子面積(表面構造または表面損傷)=(ピクセルの数)×(X方向およびY方向の補正係数)
(b)アスペクト比=包囲する粒子の長方形の高さ/幅の最大比および
(c)形状係数=4πa/U、a=面積、U=周囲の長さ。
を定義する請求項16記載の方法。
【請求項18】
表面構造または表面損傷を面積によりまたは幅により等級分けする請求項16または17記載の方法。
【請求項19】
面積による等級分けを少なくとも10の面積等級で行い、幅による等級分けを少なくとも5のFeret−min幅等級で行い、その際Feret−minは向かい合う粒子縁部の平行な接線の最小間隔として定義され、または幅による等級分けを平均幅の少なくとも5の等級で行い、その際平均幅は面積とFeret−max(=粒子の長さ)の商として定義される請求項18記載の方法。
【請求項20】
面積による等級分けにおいて、それぞれの面積等級の%での表面構造面積割合または表面損傷面積割合およびすべての面積等級の%での全表面構造面積割合または全表面損傷面積割合が決定され、幅による等級分けにおいて、それぞれの幅等級の%での表面構造面積割合または表面損傷面積割合およびすべての幅等級の%での全表面構造面積割合または全表面損傷面積割合が決定される請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
材料の変性、新たな開発および/または製造の際に使用する請求項1から20までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2007−533955(P2007−533955A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522277(P2006−522277)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008339
【国際公開番号】WO2005/017508
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】