説明

表面機能層を有する車載用パネル部材

【課題】表面機能層を有する車載用パネル部材を提供する。
【解決手段】厚みが0.05〜2mm、融点が220℃以上、200℃での収縮率が5%〜40%であるキャリアフィルムの表面に機能層が設けられ、かつ機能層側の表面に熱硬化性接着層が設けられた機能層を有するフィルム6を、一方の金型と他方の金型との間に配置し、該金型を型締めして成形キャビティを形成した後、該キャビティ内に熱可塑性樹脂組成物5を射出する工程および成形体よりフィルムを剥がす工程を含む、方法により、表面に機能層を付与された樹脂成形体よりなる車載用パネル部材7を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に機能層を有する車載用パネル部材に関する。詳しくは、本発明は、表面に機能層を有する、外観の優れた車載用パネル部材に関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーションやカーオーディオに代表される車載機器のパネル部材に透明の熱可塑性樹脂を用いる試みは従来から実施され、その目的は、熱可塑性樹脂の優れたデザイン性により他機種との差別化を図ることにある。熱可塑性樹脂の中でも、特にアクリル樹脂はその優れた透明度と高い耐擦傷性からパネル部材に用いられることが多い(特許文献1)。しかしながらアクリル樹脂は耐衝撃性に乏しく、破壊の際には鋭利な形状に砕けることから、衝突等の危険がある車載機器の部材として、安全性が十分でないと考えられている。一方、高い耐衝撃性を有する透明樹脂としてポリカーボネートが挙げられるが、耐擦傷性に乏しく、ハードコートが必須となる。開口部、曲面等の複雑な形状にハードコートを施す方法としては、射出成形中に箔転写することにより成形体表面にハードコートを始めとする機能層を付与する方法が開示されている(特許文献2)。しかしながら射出成形中の箔転写により機能層を付与する場合、箔転写フィルムの耐熱性の乏しさから成形条件の幅が狭くなり、成形体表面に虹色の模様が発生する等、良好な外観を有する透明成形体を得られないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−64550号公報
【特許文献2】特開2009−226615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記問題に鑑みてなされたものであり、表面機能層を有する車載用パネル部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、キャリアフィルムの特性を最適化し、射出成形法との組合せにより、成形中に箔転写をしても、成形体表面に虹模様等のない、良好な外観を有する樹脂成形体を得る方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によれば、上記課題を解決する手段として、厚みが0.05〜2mm、融点が220℃以上、JIS C 2318における200℃での収縮率が5%〜40%であるキャリアフィルムの表面に機能層が設けられ、かつ機能層側の表面に熱硬化性接着層が設けられた機能層を有するフィルムを、一方の金型と他方の金型との間に配置し、該金型を型締めして成形キャビティを形成した後、該キャビティ内に熱可塑性樹脂を射出する工程および成形体よりフィルムを剥がす工程を含む、射出成形法により表面に機能層を付与された樹脂成形体よりなる車載用パネル部材が提供される。
【0007】
以下、本発明の詳細について説明する。
<表面に機能層を有するフィルム>
本発明で使用される表面に機能層を有するフィルムとは、そのベースとなるキャリアフィルムの表面に機能層を積層したフィルムであり、該キャリアフィルムの融点は220℃以上であり、250℃以上が好ましく、260℃以上がより好ましい。融点が220℃より低い場合、射出成形時に溶融樹脂の熱によってフィルムが成形体に融着する。なお、フィルムの融点の上限は特に限定されないが、400℃以下が好ましい。
【0008】
上記キャリアフィルムのJIS C 2318における200℃での収縮率は5%〜40%であり、10%〜30%が好ましく、15%〜25%がより好ましい。フィルムの収縮率が5%より小さい場合、射出成形時に皺を生じ、40%より大きい場合、成形時に波打ちを生じ外観品質が悪化する。
【0009】
かかる特性を有するキャリアフィルムの製造方法として、MD方向に3〜6倍延伸し、TD方向に2〜5倍延伸し、その後、熱固定処理として融点−150℃〜融点−70℃の温度で熱固定する方法が好ましい。
【0010】
上記キャリアフィルムの厚みは0.05mm〜2.0mmであり、0.05mm〜0.4mmが好ましく、0.05〜0.3mmがより好ましい。フィルムの厚みが0.05mmより薄い場合、腰が足りず成形時に皺になるとともにフィルムが成形体へ融着しやすくなり、2.0mmより厚い場合は形状追従性が損なわれる。
【0011】
フィルムの表面における機能層の代表的なものとしては耐擦傷性を有するハードコート層、入射光の反射を防ぐ反射防止層、図柄等が形成された印刷層等が挙げられる。この中でもハードコート層を有するフィルムが好適に用いられる。
【0012】
さらに、機能層を有するフィルムは機能層がある側の最表面に、熱硬化性接着層が設けられているフィルムである。このフィルムを用いることにより成形時の樹脂温度を上げなければならない、高外観が所望される用途の成形体においても良好な接着性を得られる。熱可塑性接着層を用いた場合、射出成形時に接着層流れを生じ、フィルムが融着して外観が損なわれる。なお、熱硬化性接着層としては、例えばブチラール系接着層、エポキシ系接着層、メラミン系接着層等が挙げられ、その中でもブチラール系接着層が好ましい。
【0013】
該機能層を有するフィルムは表面の機能層の下層に印刷層を積層してもよい。印刷層の絵柄、文字の形態は特に限定されるものではない。また、印刷方法についてはグラビア印刷、シルク印刷等の一般的な方法が用いられ、特に限定されるものではないが、グラビア印刷が好ましい。
【0014】
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明で使用される熱可塑性樹脂組成物における熱可塑性樹脂は、各種の重合体または共重合体である。
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、変性PPE樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、およびポリエーテルイミド樹脂等が例示される。これらの中でもポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0015】
かかるポリカーボネート樹脂は、通常使用されるビスフェノールA型ポリカーボネート以外にも、他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂であってもよい。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。ポリカーボネート樹脂はまた3官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、さらに脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、または二価の脂肪族または脂環族アルコールを共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは1.3×10〜4.0×10、より好ましくは1.5×10〜3.0×10、更に好ましくは2.0×10〜2.8×10である。芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0016】
他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂の具体例としては、下記のものが好適に例示される。
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100mol%中、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称)成分が20〜80mol%(より好適には40〜75mol%、更に好適には45〜65mol%)であり、かつ9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称)成分が20〜80mol%(より好適には25〜60mol%、更に好適には35〜55mol%)である今日十号ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100mol%中、ビスフェノールA成分が10〜95mol%(より好適には50〜90mol%、更に好適には60〜85mol%)であり、かつBCF成分が5〜90mol%(より好適には10〜50mol%、更に好適には15〜40mol%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100mol%中、BPM成分が20〜80mol%(より好適には40〜75mol%、更に好適には45〜65mol%)であり、かつ1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン成分が20〜80mol%(より好適には25〜60mol%、更に好適には35〜55mol%)である共重合ポリカーボネート
【0017】
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号広報、特開平8−27370号広報、特開2001−55435号広報及び特開2002−117580号広報等に詳しく記載されている。
【0018】
上記の熱可塑性樹脂組成物は、上記の透明性を損なわない範囲において、従来公知の各種の添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、離型剤、摺動剤、赤外線吸収剤、光拡散剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、強化充填材、衝撃改質剤、光触媒系防汚剤、およびフォトクロミック剤等が例示される。尚、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、および離型剤等は、従来上記の熱可塑性樹脂における公知の適正量を配合できる。かかる量が樹脂の透明性を阻害することが稀であるからである。
【0019】
また熱可塑性樹脂組成物は、通常必要な添加剤を熱可塑性樹脂と溶融混練したペレットの形状で射出成形機に供給される。かかる供給時は水分含有量を十分に低減されることが必要である。ポリカーボネート樹脂のごとき水分吸収性の高い熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物は、十分に乾燥され射出成形機に供給されることが必要である。溶融混練は、従来公知の溶融混練機が利用でき、特にベント式二軸押出機が好適である。また押出中に生じた異物を除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置することが好ましい。ペレット化に際して外部の埃等の影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。更にペレットの製造場所から射出成形機への運搬には、従来光情報記録媒体の基盤製造用ペレットに利用される、各種の防塵コンテナが利用できる。
【0020】
<車載用パネル部材>
本発明の製造方法で製造される車載用パネルの厚みは2mm〜30mmの範囲が好ましく、2mm〜20mmが更に好ましく、2mm〜15mmが最も好ましい。厚みが2mmより薄い場合、射出成形時に樹脂のせん断によってフィルムが変形してしまう場合がある。また、厚みが30mmより厚い場合、射出成形時のフィルムへの熱負荷が大きくなりフィルムが融着する可能性が高くなる。
【0021】
上記車載用パネルは機能層を付与される表面において、絞り形状および/または少なくとも1つの開口部を有する樹脂成形体であることが好ましい。絞り形状においては、その絞り比が0.12以上が好ましく、0.20以上が更に好ましい。絞り比が0.12より小さい場合、或いは開口部のない形状の場合、従来の技術でも成形可能である。尚、絞り比とは機能層付与部における「凹凸の高さ/投影面積と等価な円の直径」で表される。
【0022】
<車載用パネル部材の成形方法>
本発明の製造方法は以下の工程を含む製造方法である。また、樹脂の射出成形方法としては一般的な単色成形でもよいし、意匠や機能を向上させるべく、2色成形や、金型を急速に加熱冷却するヒートアンドクール成形や電気加熱成形、電磁誘導過熱成形を用いてもよい。
【0023】
(工程−1)
工程−1は厚みが0.05〜2.0mm、融点が220℃以上、JIS C 2318における200℃での収縮率が5%〜40%であるキャリアフィルムの表面に機能層が設けられ、かつ機能層側の表面に熱硬化性接着層が設けられた表面に機能層を有するフィルムを、一方の金型と他方の金型との間に配置し、該金型を型締めして成形キャビティを形成した後、該キャビティ内に熱可塑性樹脂組成物を射出する工程である。ここで、本発明でいうところの成形キャビティとは、可動側金型と固定側金型との型締めにより形成した成形用空間のことを指す。
【0024】
本発明において溶融樹脂組成物は、表面に機能層を有するフィルムを一方の金型と他方の金型との間に配置した後に予め圧縮ストローク分だけ余分に開いた金型キャビティ内に射出充填されることが好ましい。
この射出圧縮成形においては、圧縮ストロークと樹脂板の厚みとの合計量は、目的とする樹脂板の厚みに対して、好ましくは1.01〜3倍の範囲、より好ましくは1.05〜2倍の範囲、更に好ましくは1.1〜1.8倍の範囲である。金型同士が中間型締め状態に型締めされた金型キャビティ内へ溶融した熱可塑性樹脂組成物を射出した後に最終型締めを行う。この最終型締めは閉鎖されたキャビティ中で行うことも、一部開放されたキャビティ中で行うこともできる。閉鎖されたキャビティとは、樹脂の流動する余地の無い閉ざされた状態のキャビティをいう。かかるキャビティは、ホットランナのバルブの閉鎖、および完全なゲートシールにより達成される。更にシリンダ側から付加する樹脂圧力と圧縮圧力との平衡が維持された状態が含まれる。一方、一部開放されたキャビティとは、樹脂の流動する余地がある開放されたキャビティをいう。例えば、オープンノズルで樹脂が大きくフローバックされる場合や、捨てキャビが設けられて樹脂が圧縮によって流入する場合等がある。成形体の品質を安定化させるためより好ましいのは閉鎖されたキャビティにおいて圧縮を行う方法である。
【0025】
最終型締め工程において、可動側金型パーティング面と固定側金型のそれとは接触(以下“型面タッチ”と称する場合がある)しないことが好ましい。型面タッチがある場合、所定の圧力が樹脂に十分に伝わることがなくなり、寸法精度に優れた低歪みの成形体は得難くなる。可動側金型のパーティング面と固定側金型のそれとの距離は、好ましくは0.05〜3mmの範囲、より好ましくは1〜2mmの範囲である。3mmを超える設定とした場合には成形体の形状によっては可動側金型の倒れが生じ製品にバラツキが生じやすくなる。また、0.05mm未満の場合には十分な制御が困難となり、連続の成形において型面タッチが生ずる場合がある。
フィルムの配置方法としては金型の上方或いは下方に配置されたフィルムロールを他方に巻き取り送る方法や、枚葉にカットされたフィルムをロボットアーム等により金型内に配置する方法等がある。
【0026】
(工程−2)
工程−2は成形体よりフィルムを剥がす工程である。成形体よりフィルムを剥がす方法としては、枚葉にカットされたフィルムを使用する場合は手作業にて引き剥がす方法、フィルムロールを使用する場合は、取り出し機やロボットアームにて引き剥がす方法、及びフィルムを配置した金型の他方の金型に若干のアンダーカット部を設けることにより型開き時に引き剥がす方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0027】
本発明により提供される樹脂成形体は、表面に機能層を有しながら開口部や曲面等高いデザイン性と良好な外観を有する。したがって、上述のとおり、これらの特性が求められる車載機器のパネル部材として非常に有用である。よってその奏する工業的効果は別格のものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1〜10、比較例1〜7に用いた金型及び車載用パネル部材の形状である。なお、図は成形金型の概要を模式的に示しており、ゲート、エジェクタピン等の詳細構造は省略してある。
【図2】実施例11に用いた金型及び車載用パネル部材の形状である。なお、図は成形金型の概要を模式的に示しており、ゲート、エジェクタピン等の詳細構造は省略してある。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者らが現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、熱可塑性樹脂及び、表面に機能層を有するフィルムとしては以下のものを用いた。
【0031】
(I)熱可塑性樹脂
A−1:ポリカーボネート樹脂[帝人化成(株)製パンライトL−1225Y(商品名)]
A−2:PMMA樹脂[三菱レイヨン(株)製VH−001(商品名)]
【0032】
(II)表面に機能層を有するフィルム
B−1:フィルム厚み0.05mmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムをキャリアフィルムとし、その表面に剥離層と、機能層としてハードコート層、最表面にブチラール系の熱硬化性接着層を積層したフィルム(キャリアフィルムの融点269℃、200℃における収縮率15%)[尾池工業(株)製]
B−2:キャリアフィルムの200℃における収縮率が5%である以外はB−1と同様のフィルム
B−3:フィルム厚み0.05mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをキャリアフィルムとし、その表面に剥離層と、機能層としてハードコート層、最表面にブチラール系の熱硬化性接着層を積層したフィルム(キャリアフィルムの融点258℃、200℃における収縮率15%)[尾池工業(株)製]
B−4:フィルム厚み0.05mmのポリカーボネート(PC)フィルムをキャリアフィルムとし、その表面に剥離層と、機能層としてハードコート層、最表面にブチラール系の熱硬化性接着層を積層したフィルム(キャリアフィルムの融点240℃、200℃における収縮率15%)
B−5:キャリアフィルムの200℃における収縮率が35%である以外はB−1と同様のフィルム
B−6:キャリアフィルムの厚みが1.5mmであること以外はB−1と同様のフィルム
B−7:機能層が反射防止層であること以外はB−1と同様のフィルム
B−8:機能層の下層に印刷層があること以外はB−1と同様のフィルム
B−9:接着層がアクリルアミド系の熱可塑性接着層である以外はB−1と同様のフィルム
B−10:フィルム厚み0.05mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルムをキャリアフィルムとし、その表面に剥離層と、機能層としてハードコート層、最表面にブチラール系の熱硬化性接着層を積層したフィルム(キャリアフィルムの融点180℃、200℃における収縮率15%)
B−11:キャリアフィルムの厚みが0.03mmであること以外はB−1と同様のフィルム
B−12:キャリアフィルムの厚みが2.3mmであること以外はB−1と同様のフィルム
B−13:200℃における収縮率が1%であること以外はB−1と同様のフィルム
B−14:200℃における収縮率が45%であること以外はB−1と同様のフィルム
【0033】
(III)評価項目
(1)外観
成形体平坦部を偏光サングラスを通して観察し、下記の通り評価を実施した。高外観を所望される車載用パネルとしては評価2、或いは3である必要がある。
1:全体にわたって虹模様が見える。
2:局所的に薄い虹模様が見える。
3:虹模様が見えない。
4:虹模様は見えないが、シボ状の外観不良を生じた。
(2)シワ
成形体のシワの有無を目視で観察し、下記の通り評価を実施した。高外観を所望される車載用パネルとしては、評価3、或いは4である必要がある。
1:無数のシワがある。
2:数本のシワがある。
3:シワは無いが若干凹形状。
4:シワが無く良好
(3)フィルムの成形体への融着
成形体をSEMにて観察し、キャリアフィルムへの融着の有無について下記の通り評価を実施した。生産性の観点から、評価3である必要がある。
1:フィルムが成形体に融着し剥がれない。
2:フィルムが成形体に融着し剥がし難い。
3:融着は無い。
(4)形状
機能層を有するフィルムがついた成形体の形状を観察し、下記の通り評価を実施した。
○:フィルムが金型に密着し隙間を生じず、所望の形状の成形体が得られた。
×:金型とフィルムの間に隙間を生じ、所望の形状の成形体を得られなかった。
(5)鉛筆硬度
JIS K 5600−5−4に示される鉛筆硬度の評価を実施した。なお、鉛筆硬度はH以上が必要である。
(6)機能層の剥離
成形体をFT−IRにて観察し、機能層の剥離の有無について下記の通り評価を実施した。
○:機能層の剥離は認められなかった。
×:機能層の剥離が認められた。
【0034】
[実施例1]
以下の成形方法に従い、表面に機能層を有する車載用パネル部材を作製した。
ポリカーボネート樹脂(A−1)のペレットを120℃にて5時間熱風乾燥機で乾燥した後、成形機としてシリンダ径50mmφ、型締力46,950kNの日精樹脂工業製FN8000射出成形機及び図1の金型を使用し、フィルム(B−1)を用いて射出成形により車載用パネル部材を成形した。成形はシリンダ温度320℃、ホットランナ設定温度320℃、金型温度は固定側、可動側ともに100℃、および冷却時間20秒で行った。フィルムは、枚葉にしたフィルムを用い、可動側のパーティング面に両面テープを用いて貼り付けて設置した。また、車載用パネル部材よりのフィルムの剥ぎ取りは手作業にて実施した。
車載用パネル部材は図1に示すとおり、機能層を付与される表面に最大絞り比0.33の形状と5つの開口部を有し、かつ付与される表面の面積が30,000mm、長さ150mm、幅200mm、および厚み2mmの成形体である。
【0035】
[実施例2]
成形におけるシリンダ温度を300℃、ホットランナ温度を300℃とした以外は実施例1と同様にして成形を実施した。
【0036】
[実施例3]
使用するフィルムをフィルム(B−2)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0037】
[実施例4]
使用するフィルムをフィルム(B−3)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0038】
[実施例5]
使用するフィルムをフィルム(B−4)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0039】
[実施例6]
使用するフィルムをフィルム(B−5)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0040】
[実施例7]
使用するフィルムをフィルム(B−6)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0041】
[実施例8]
使用するフィルムをフィルム(B−7)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0042】
[実施例9]
使用するフィルムをフィルム(B−8)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0043】
[実施例10]
使用樹脂をPMMA(A−2)とし、シリンダ温度250℃、ホットランナ温度250℃、金型温度は固定側可動側ともに60℃とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0044】
[実施例11]
以下の成形方法に従い、表面に機能層を有する車載用パネル部材を作製した。
ポリカーボネート樹脂(A−1)のペレットを120℃にて5時間熱風乾燥機で乾燥した後、成形機としてシリンダ径110mmφ、型締力15,700kNの名機製作所製M1600NS−DM射出成形機及び図1の金型を使用し、フィルム(B−1)を用いて射出圧縮成形により車載用パネル部材を成形した。該成形機は、特開2003−048241号公報の実施例に記載されたと同じ平行度矯正機構を有するものである。金型取り付け板の四隅に配置された平行度強制機構の各機構の保持圧力を調整することにより、金型の平行度をtanθが0.00005以下となるよう調整した。成形はシリンダ温度320℃、ホットランナ設定温度320℃、金型温度は固定側、可動側ともに100℃、中間型締め位置から最終型締め位置までのストロークであるプレスストローク2mm、および圧縮加圧時間30秒で行った。フィルムは、枚葉にしたフィルムを用い、可動側のパーティング面に両面テープを用いて貼り付けて設置した。また、車載用パネル部材よりのフィルムの剥ぎ取りは手作業にて実施した。
車載用パネル部材は図2に示すとおり、機能層を付与される表面に最大絞り比0.33の形状と5つの開口部を有し、かつ付与される表面の面積が30,000mm、長さ150mm、幅200mm、および厚み2mmの成形体である。
【0045】
[比較例1]
フィルムを使用しないこと以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0046】
[比較例2]
使用するフィルムをフィルム(B−9)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0047】
[比較例3]
使用するフィルムをフィルム(B−10)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0048】
[比較例4]
使用するフィルムをフィルム(B−11)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0049】
[比較例5]
使用するフィルムをフィルム(B−12)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0050】
[比較例6]
使用するフィルムをフィルム(B−13)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0051】
[比較例7]
使用するフィルムをフィルム(B−14)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
実施例1〜11および比較例1〜7の評価結果を表1および表2に記載した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【符号の説明】
【0054】
1 可動側金型
2 フィルム固定ブロック
3 固定側金型
4 開口部押し当てピン
5 溶融樹脂
6 フィルム
7 車載用パネル部材本体
8 開口部
9 可動側金型
10 フィルム固定ブロック
11 額縁ブロック
12 固定側金型
13 開口部押し当てピン
14 溶融樹脂
15 フィルム
16 車載用パネル部材本体
17 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが0.05〜2mm、融点が220℃以上、200℃での収縮率が5%〜40%であるキャリアフィルムの表面に機能層が設けられ、かつ機能層側の表面に熱硬化性接着層が設けられた機能層を有するフィルムを、一方の金型と他方の金型との間に配置し、該金型を型締めして成形キャビティを形成した後、該キャビティ内に熱可塑性樹脂組成物を射出する工程および成形体よりフィルムを剥がす工程を含む、射出成形法により成形された、表面に機能層を付与された樹脂成形体よりなる車載用パネル部材。
【請求項2】
該機能層を付与される表面に絞り比が0.12以上の形状および/または少なくとも一つの開口部を有した請求項1に記載の車載用パネル部材。
【請求項3】
射出成形法が射出圧縮成形法である請求項1または2に記載の車載用パネル部材。
【請求項4】
表面の機能層がハードコートあるいは反射防止層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車載用パネル部材。
【請求項5】
表面の機能層の下層に印刷層があることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車載用パネル部材。
【請求項6】
熱可塑性樹脂が芳香族ポリカーボネート樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の車載用パネル部材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−218271(P2012−218271A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85497(P2011−85497)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】