説明

表面欠陥検査方法及びその装置

【課題】
装置を大型化することなく、欠陥からの散乱光をより広い領域で効率よく集光して検出することにより微細欠陥を感度よく検出することを可能にする装置及びその方法を提供する。
【解決手段】
試料の表面にレーザを照射する照明手段と、試料からの反射光を検出する反射光検出手段と、検出信号を処理して試料上の欠陥を検出する信号処理手段とを備えた試料の表面の欠陥を検査する装置において、反射光検出手段を、試料からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光を非球面フレネルレンズを用いて集光して検出する散乱光検出部を備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスクや半導体ウェハの基板表面の欠陥を検査する方法及びその装置に係り、特に、光学的に検査して基板表面の凹みや傷及び表面に付着した異物を検出するのに適した表面欠陥検査方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスクや半導体ウェハの基板表面の微細な欠陥を光学的に検査する装置は、検査の高速化及び高感度化が要求されてきている。このうち高感度化に対しては、例えば特許文献1(特開平3−186739号公報)や特許文献2(特開平5−21561号公報)に記載されているように、光源にレーザを用いて照明光の強度を上げて基板からの反射光や散乱光を高感度なセンサで検出する方法がとられている。しかし、照明光のパワー又は強度が強すぎると基板表面にダメージを与えてしまう。そのため、限られた照射強度の照明光で照明された基板表面の欠陥からの反射散乱光を最大限の検出感度で検出する必要がある。この反射散乱光を最大限の検出感度で検出する構成として、特許文献2には光電子増倍部を採用する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−186739号公報
【特許文献2】特開平5−21561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
微細欠陥からの散乱光は、欠陥のサイズが小さくなるほど単位面積当たりの散乱光の光量が減ると共に欠陥上方の全空間に広がる特性を持つ。したがって、同一光量の照明光を用いて微細欠陥を感度よく検出するためには、欠陥からの散乱光をより広い領域で効率よく集光して検出することが必要になる。散乱光をより広い領域(立体角)で集光するためには、基板からの散乱光を集光するための対物レンズを大型化して開口数(NA)を大きく(大開口数化)すればよい。しかし、対物レンズを検査装置に取付ける上で他の部品との干渉を避けるために、現実的には対物レンズを大型化して開口数を大きくすることには限界がある。
【0005】
また、対物レンズを大型化して開口数を大きくすると、この対物レンズで集光した散乱光を検出器の検出面上に収束させるための集束レンズも大型化しなければならず、この大型化したレンズ群を支持する鏡筒も大型化するために検出光学系が大きくなり、装置の小型軽量化を図ることが難しくなる。
【0006】
本発明の目的は、上記した従来技術の問題を解決して、装置を大型化することなく、欠陥からの散乱光をより広い領域で効率よく集光して検出することにより微細欠陥を感度よく抽出することを可能にする表面欠陥検査方法及びその装置を提供することに有る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、表面欠陥検査装置の検出光学系に非球面フレネルレンズ又はフレネルレンズを組合せた構成を採用することにより、装置を大型化することなく、欠陥からの散乱光をより広い領域から集光して検出し、検出した信号を処理して微細欠陥を感度よく抽出することを可能にした。なお、以下の説明においては便宜上非球面レンズを用いた場合について説明するが、球面のフレネルレンズを用いても同様の効果を得ることができる。
【0008】
即ち、本発明では、試料を載置して回転と移動が可能なテーブル手段と、テーブル手段に載置された試料の表面にレーザを照射する照明手段と、照明手段によりレーザが照射された試料からの反射光を検出する反射光検出手段と、反射光検出手段からの検出信号を処理して試料上の欠陥を検出する信号処理手段とを備えた試料の表面の欠陥を検査する装置において、反射光検出手段を、試料からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光を非球面フレネルレンズを用いて集光して検出する散乱光検出部を備えて構成した。
【0009】
また、本発明では、試料を載置して回転と移動が可能なテーブル手段と、テーブル手段に載置された試料の表面に第1のレーザを照射して試料からの反射光を検出する第1の照明検出手段と、テーブル手段に載置された試料の表面に第2のレーザを照射して試料からの反射光を検出する第2の照明検出手段と、第1の照明検出手段と第2の照明検出手段とからの検出信号を処理して試料上の欠陥を検出する信号処理手段とを備えた試料の表面の欠陥を検査する装置において、第1の照明検出手段を、試料にレーザを照射する照明部と、レーザを照射された試料からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光を非球面フレネルレンズを用いて集光して検出する散乱光検出部を備えて構成した。
【0010】
また、本発明では、試料を載置して回転と移動が可能なテーブル手段と、テーブル手段に載置された試料の表面にレーザを照射する照明手段と、
照明手段によりレーザが照射された試料からの反射光を検出する反射光検出手段と、反射光検出手段からの検出信号を処理して試料上の欠陥を検出する信号処理手段とを備えた試料の表面の欠陥を検査する装置において、反射光検出手段を、試料からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光をテーブル手段の上方の空間をほぼ全面を覆うように配置された複数の非球面フレネルレンズを用いて集光して検出する散乱光検出部を備えて構成した。
【0011】
更に、本発明では、回転と移動が可能なテーブル上に試料を載置し、テーブルを回転させながら移動させた状態で試料の表面にレーザを照射し、レーザが照射された試料からの反射光を検出し、反射光を検出して得た信号を処理して試料上の欠陥を検出する試料表面の欠陥を検査する方法において、反射光を検出することを、試料からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光を非球面フレネルレンズを用いて集光し、非球面フレネルレンズを用いて集光した散乱光を光電変換器で検出することを含むようにした。
【0012】
更に、本発明では、回転と移動が可能なテーブル上に試料を載置し、テーブルを回転させながら移動させた状態で試料の表面に第1のレーザを照射して試料からの第1の反射光を検出し、テーブルを回転させながら移動させた状態で試料の表面に第2のレーザを照射して試料からの第2の反射光を検出し、第1の反射光を検出して得た信号と第2の反射光を検出して得た信号とを処理して試料上の欠陥を検出する試料表面の欠陥を検査する方法において、第1の反射光を検出することを、試料からの第1の反射光のうち正反射光を除いた第1の散乱光を非球面フレネルレンズを用いて集光し、非球面フレネルレンズを用いて集光した第1の散乱光を光電変換器で検出することを含むようにした。
【0013】
更に、本発明では、回転と移動が可能なテーブル上に試料を載置し、テーブルを回転させながら移動させた状態で試料の表面にレーザを照射し、レーザが照射された試料からの反射光を検出し、反射光を検出して得た信号を処理して試料上の欠陥を検出する試料表面の欠陥を検査する方法において、反射光を検出することを、試料からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光をテーブルの上方の空間をほぼ全面を覆うように配置された複数の非球面フレネルレンズを用いて集光し、複数の非球面フレネルレンズを用いて集光した散乱光を光電変換器で検出することを含むようにした。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、欠陥からの散乱光をより広い領域で効率よく集光して検出することができるようになったので、従来に比べてより微細欠陥を感度よく検出することが可能になった。
【0015】
また、本発明によれば、欠陥からの散乱光をより広い領域で効率よく集光して検出することにより微細欠陥を感度よく検出することを、装置を大型化することなく実現することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施例による表面欠陥検査装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図2】非球面フレネルレンズの断面図及びそれに対応する非球面レンズの断面図である。
【図3】第1の実施例における第2の光電変換器37の出力信号の例を示すグラフである。
【図4】第1の実施例における検査結果を出力したGUIの一例を示す表示画面の正面図である。
【図5A】第2の実施例に係る検査装置の概略の構成を示す平面のブロック図である。
【図5B】第2の実施例に係る検査装置の照明光学系220と検出光学系230との概略の構成を示す正面のブロック図である。
【図6】第2の実施例における検出光学系230で検出する欠陥の範囲601と、検出光学系30で検出する欠陥の範囲602と、検出光学系230と30とを合成して検出する欠陥の範囲603とを示す図である。
【図7A】第3の実施例における検査装置の概略の構成を示す平面図である。
【図7B】第3の実施例における検査装置の概略の構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を磁気ディスクの欠陥検査装置に起用した例を図を用いて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本実施例による磁気ディスクの欠陥検査装置の全体構成を示す図である。欠陥検査装置は大きくは、検査対象の試料を載置するテーブル部10、照明光学系20、検出光学系30、信号処理・制御系40で構成されている。
【0019】
テーブル部10は、試料100を載置して回転可能なテーブル1、テーブル1を回転の主軸に直角な方向に移動可能なステージ2を備えている。
【0020】
照明光学系20はレーザ光源21、レーザ光源21から発射されたレーザを試料100の表面に集束させる集束レンズ22を備えている。
【0021】
検出光学系30は、照明光学系20により照明された試料100からの反射光(正反射光と散乱光)のうち散乱光を集光する対物レンズに相当する第1の非球面フレネルレンズ31、集光された散乱光を集束させる集束レンズに相当する第2の非球面フレネルレンズ32、第2の非球面フレネルレンズ32で集束された散乱光を高感度に検出する第1の光電変換器33(例えば、アバランシェ・フォトダイオード(APD)や光電子増倍管(PMT)など)、試料100からの反射光(正反射光と散乱光)のうち正反射光を反射して光路を切替えるミラー34、光路を切替えられた正反射光を集光させる集光レンズ35、集光された正反射光を検出するための複数の検出素子(素子アレイ)を備えた第2の光電変換器37(例えば複数の画素を有するフォトダイオードアレイまたはアバランシェ・フォトダイオードアレイ)を備えている。
【0022】
図2の(a)は通常の光学レンズ310を示し、(b)にはそれと同じ開口を有する非球面フレネルレンズ320の例を示す。この図からもわかるように、非球面フレネルレンズ320は、同じ開口を有する通常の光学レンズ310と比べて、比較的薄い寸法で形成することができる。本実施例においては、このような特性を持つ非球面フレネルレンズを、第1の非球面フレネルレンズ31及び第2の非球面フレネルレンズ32として用いる。
【0023】
信号処理・制御系40は、第1の光電変換器33からの出力をA/D変換し増幅する第1のA/D変換部41、第2の光電変換器36からの出力をA/D変換し増幅する第2のA/D変換部42、第1のA/D変換部41と第2のA/D変換部42との出力を受けて信号処理する信号処理部43、信号処理部43で処理された結果を記憶する記憶部44、信号処理部43で処理された結果を出力する表示画面を備えた出力部45、全体を制御する全体制御部46を備えている。
【0024】
次に、各部の動作を説明する。
テーブル部10は全体制御部47で制御されて、試料100を載置した状態でテーブル1を回転させると共に、テーブル1の回転と同期してステージ2をテーブル1の回転 の主軸に直角な方向に移動させる。
【0025】
テーブル部10により試料100を回転、移動させながら、全体制御部47で制御されている照明光学系20のレーザ光源21から発射したレーザを集束レンズ22で試料100の表面に集束させて照射する。
【0026】
レーザが照射された試料100の表面からは、表面の欠陥や傷、面の微小な凹凸(荒れ)などの状態に応じた反射光(散乱光と正反射光)が発生する。このとき、散乱光は試料100の表面の欠陥の大きさに応じて分布する。すなわち、大きな欠陥や傷からの散乱光は比較的強い強度で指向性を持って分布し、微小な欠陥や傷からの散乱光は比較的弱い強度で等方的に分布する。
【0027】
レーザが照射された試料100の表面からの反射光のうち正反射光は、試料100に入射するレーザの入射角度と同じ出射角度側(正反射光の光路上)に配置されたミラー34で反射されて集光レンズ35の方向に進み、集光レンズ35で集光され、結像レンズ36に入射して第2の光電変換器37の撮像面に正反射光の像が結像され、第2の光電変換器37により検出(撮像)される。ミラー34は、正反射光以外の光(散乱光)を反射しないように、十分に小さい形状に形成されている。
【0028】
一方、レーザが照射された試料100の表面からの反射光でミラー34で反射されなかった光(散乱光)のうち対物レンズの役目をする第1の非球面フレネルレンズ31に入射した光は集光され、集束レンズの役目をする第2の非球面フレネルレンズ32に入射して第1の光電変換器33の検出面(図示せず)上に集束し、高感度な第1の光電変換器33で検出される。
【0029】
ここで、第1の非球面フレネルレンズ31及び第2の非球面フレネルレンズ32は従来の光学レンズに比べて薄く軽量であるために、それらを収納する鏡筒(図示せず)を従来の光学レンズの鏡筒に比べて比較的コンパクトに作ることが可能になり、試料上面における設置位置の自由度が増して開口数(NA)を0.6以上(従来の光学レンズを用いた場合のNAは0.4以下)で設計することが可能になる。その結果、前述したように微小な欠陥からの散乱光は基板の上方にほぼ等方的に分布するために、検出感度が同じであれば検出信号のレベルは検出面の面積に比例するので、従来の光学レンズ系で構成した検出光学系で検出する場合に比べて大きい検出信号を得ることができる。即ち、同じ検出信号レベルで比較すると従来と比べてより小さい欠陥からの散乱光を検出できることになる。
【0030】
A/D変換部41と42とは、それぞれ第1の光電変換器33または第2の光電変換器37から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、増幅して出力する。
【0031】
A/D変換部41と42から出力されたデジタル信号は信号処理部43に入力し、信号処理部43においては、デジタルに変換された第1の光電変換器33からの出力信号と第2の光電変換器37からの出力信号とを両方又はその一方を用いて処理して試料100の表面に存在する欠陥を検出し、テーブル部10を制御する全体制御部47から得られる試料100上のレーザ照射位置情報を用いて、検出した欠陥の基板100上の位置を特定する。さらに、信号処理部43においては、第1の光電変換器33と第2の光電変換器37とからの検出信号の特徴にもとづいて検出した欠陥の種類を特定する。
第2の光電変換器37を備えた検出光学系は、試料100からの正反射光を集光レンズ35で集光して検出する。第2の光電変換器37は複数の検出画素がアレイ状に配置されており、集光レンズ35で集光された欠陥を含む試料100からの反射光強度の変化、及び偏り(分布)を検出する。図3(a)は緩やかな凸欠陥を含む領域からの反射光強度の分布を示し、図3(b)は緩やかな凹欠陥を含む領域からの反射光強度の分布を示す。これらの図より、緩やかな凸欠陥を含む領域からの反射光強度は減少し、緩やかな凹欠陥を含む領域からの反射光強度は増大することがわかる。
【0032】
一方、図3には示していないが、試料100表面に異物が付着した領域からの正反射光の強度の分布は凸欠陥を含む領域からの反射光強度の分布と同様に減少するが、その広がり(反射光強度分布を検出する素子アレイの数)が緩やかな凸欠陥を含む領域からの正反射光の場合に比べて大きくなる。
【0033】
このように、欠陥の種類により試料100からの正反射光の分布の仕方が異なるので、この反射光強度分布の特徴を抽出して凹欠陥、凸欠陥、異物を識別することができる。また、第1の光電変換器33及び第2の光電変換器37で検出した試料100からの反射光強度の分布の数の情報を用いて検出した各欠陥のサイズレベル(例えば、大、中、小)を判定することができる。
【0034】
信号処理部43で判定した結果は、欠陥の位置情報と共に記憶部45に記憶されると共に、図4に示すように、出力部46の画面461上にマップ形式462で、欠陥表示選択部463で選択した欠陥を種類ごと、及びサイズごとに識別できるようにして表示する。
【0035】
本実施例に拠れば、従来と比べてより小さい欠陥からの散乱光を検出できるようになったので、例えばスクラッチ欠陥について、従来の光学レンズを用いた検出光学系では数100nm程度の大きさのものまでしか検出できなかったのに対して、本実施例による検出光学系では100nm程度の大きさのものまで検出することが可能になった。
【0036】
また、本実施例に拠れば、非球面フレネルレンズを組合せて高NAの検出光学系をコンパクトに構成できるようになったので、装置を大型化することなくより微細な欠陥を検出することが可能になった。
【実施例2】
【0037】
第2の実施例として、第1の実施例で説明した光学系と従来の検出光学系とを組合せた複数の検出光学系を備えた検査装置について図を用いて説明する。
【0038】
図5Aは、本発明による照明光学系20と検出光学系30とを従来の照明光学系220及び検出光学系230と組合せた構成の平面図を示す。一方、図5Bには従来の照明光学系220と検出光学系230の正面図を示す。本発明による照明光学系20と、レーザ光源221と集光レンズ222とを備えた従来の照明光学系220とは、基本的に同じ構成となっている。検出光学系230からの出力と検出光学系30からの出力とは、第1の実施例で説明した信号処理・制御部40に相当する構成の信号処理部で処理されて欠陥が検出されるが、図5Bでは、簡略化のために、第1の実施例で説明した信号処理・制御部40に相当する構成の説明を省略する。
【0039】
従来の検出光学系230は、対物レンズ231を透過した試料100からの反射光のうちミラー232で光路を切替えられなかった反射光(散乱光)を光電変換素子233で検出する構成になっている。一方、ミラー232で光路を切替えられた試料100からの正反射光は、レンズ234で集光されて受光素子235の検出面上に集光されて検出される。
【0040】
照明光学系220による試料100上のレーザの照射位置と照明光学系20による試料100上のレーザの照射位置との関係を予め調整しておくことにより、照明光学系220と照明光学系20とで同時に試料100を照明してそれぞれの反射光を検出光学系230と検出光学系30とで検出したそれぞれの信号は、互いの試料100上の位置関係がわかっているので、それぞれの検出信号をつき合わせて同一欠陥の検出信号を特定して処理することが可能になる。
【0041】
その結果、図6に示すように検出光学系230での検出可能な範囲601(数100nm〜数100μm)と検出光学系30での検出可能な範囲602(数10nm〜数10μm)とを組み合わせることができ、装置全体として欠陥検出が可能な範囲603(数10nm〜数100μm)を検出光学系230又は検出光学系30をそれぞれ単体で用いた場合に比べて拡大することができる。
【実施例3】
【0042】
第3の実施例として、第1の実施例で説明した非球面フレネルレンズで試料100の上方をほぼ全面に渡って覆うように構成した例を、図を用いて説明する。
【0043】
非球面フレネルレンズはプラスチックで形成することができ、それを用いれば任意の形状に加工することが可能である。また、素材がプラスチックであるために軽量であり、所望の形状に加工した複数の非球面フレネルレンズを繋ぎ合せて用いる場合に、それらを接続する部材は通常のガラスレンズを用いる場合と比べて強度を必要としないので、比較的スリムな構造にすることができる。
【0044】
欠陥の検出感度を高めるためには、欠陥からの散乱光を可能な限り多く集光し、これを高感度の光電変換器で検出すればよい。
【0045】
前述したように、欠陥からの散乱光は、欠陥が微小になるほど欠陥の上方の全空間に広がる特性を持っている。したがって、この散乱光を効率よく集光するには、積分球を用いればよい。しかし、積分球は表面付近の迷光をも一緒に集光するので検出信号S/Nを低下させてしまう。また、一般的な積分球は内壁の反射率が完全に100%とならない点、および入射光窓、出射光窓、試料窓のサイズによる集光効率の低下があり、全体の集光効率(試料100で発生した反射光のうち検出器に入射する割合)が50%以下と低くなってしまう。
【0046】
そこで、本実施例においては、積分球と同等以上の集光効率及び指向性のある散乱を行う欠陥に対する検出能力を保持し、且つ、迷光を排除して欠陥からの散乱光を集光することが可能な光学系として、図7Aに示すような複数の非球面フレネルレンズ731〜742を多面体構造(図7Aの場合は6面体)に組み合わせた。即ち、対物レンズに相当する内側の多面体を非球面フレネルレンズ731、733,735,737,739および741で構成し、集束レンズに相当する外側の多面体を非球面フレネルレンズ732、734,736,738,740および742で構成した。これらの内側の多面体を構成する非球面フレネルレンズ731、733,735,737,739、741は接続部材761で、また、外側の多面体を構成する非球面フレネルレンズ732、734,736,738,740、742は接続部材762で繋ぎ合わせられている。
【0047】
接続部材761及び762は比較的スリムな構造であるために試料100からの散乱光を検出する上で遮光する面積をより少なくすることが可能になり、集光効率として80%程度を確保することができる。(例えば、複数の非球面フレネルレンズ731〜742をそれぞれプラスチックシートレンズをカットして形成し、このカットしたそれぞれのプラスチックシートレンズを透明接着剤により張り合わせることにより内側の多面体構造及び外側の多面体構造を形成することが可能である。)
このような多面体構造において、図7Bに示すようにレーザ光源721から発射されたレーザは集光レンズ722を透過した後、上面の非球面フレネルレンズ741および742に設けた穴743を通過して多面体の中心位置で試料100の表面に照射される。試料100の表面からの反射光のうち正反射光は上面の非球面フレネルレンズ741および742に設けた穴744を通過して対物レンズ735に入射し、結像レンズ736で光電変換器737の撮像面に正反射光の像が結像されて検出される。
【0048】
一方、試料100からの反射光のうちの上方の全空間に広がった散乱光は、試料100の上方のほぼ全空間を覆うように配置された多面体の内側の非球面フレネルレンズ731、733,735,737,739および741に入射し、集束レンズに相当する外側の多面体を構成する非球面フレネルレンズ732、734,736,738,740および742を通って集束される。
【0049】
各非球面フレネルレンズ732、734,736,738,740および742の共役点にはガラスファイバ751〜756の一方の端面がそれぞれ配置されており、入射した散乱光はガラスファイバ751〜756の他方の端面から出射し、この他方の端面の直前に配置された高感度な光電変換器757で検出される。ガラスファイバ751〜756の一方の端面がそれぞれ各非球面フレネルレンズ732、734,736,738,740および742の共役点に配置されていることにより、迷光がガラスファイバ751〜756の一方の端面に入射することを防止でき、検出信号のS/Nの低下を防止することができる。
【0050】
この光電変換器757で散乱光を検出して得られた信号の処理は、第1の実施例と同じであるので記載を省略する。
【0051】
図7A及び図7Bに示した構成では、多面体の内側の非球面フレネルレンズ731、733,735,737,739、741と外側の多面体を構成する非球面フレネルレンズ732、734,736,738,740、742とをそれぞれ間隔をあけて設置されているが、それぞれ対応する多面体の内側の非球面フレネルレンズと外側の多面体を構成する非球面フレネルレンズとを密着させて設置しても良い。
また、本実施例では、各非球面フレネルレンズ732、734,736,738,740、742の共役点にガラスファイバ751〜756の一方の端面を配置して、ガラスファイバ751〜756に入射した散乱光を高感度な光電変換器757に導く構成としたが、各非球面フレネルレンズ732、734,736,738,740、742の共役点にガラスファイバ751〜756の代わりに迷光を遮光するためのピンホールを設けた遮光板を設置し、この遮光板のピンホールを通過した光を高感度な光電変換器を配置する構成にしても良い。この場合、光電変換器の数が6個必要になるが、それぞれの出力を個別に処理することにより、欠陥ごとの散乱指向性の情報を得ることが可能になり、検出した欠陥の分類の精度を上げることが可能になる。
【0052】
本実施例に拠れば、迷光を遮断して比較的高い集光効率で試料100からの散乱光を検出することにより、S/Nの高い信号を得ることが可能になり、より微細な欠陥(数10nm以上)の検出を可能にした。
【0053】
なお、上記実施例1乃至3においては、非球面フレネルレンズを用いた例で説明したが、これを球面フレネルレンズに置き換えても良い。
【符号の説明】
【0054】
1・・・回転テーブル 2・・・ステージ 10・・・テーブル部 20・・・照明光学系 21・・・レーザ光源 22・・・集光レンズ 30・・・検出光学系 31、32・・・非球面フレネルレンズ 33・・・第1の光電変換器 34・・・ミラー 35・・・対物レンズ 37・・・第2の光電変換器 40・・・信号処理・制御部 41,42・・・A/D変換器 43・・・信号処理部 44・・・記憶部 45・・・出力部 46・・・全体制御部
731〜742・・・非球面フレネルレンズ 751〜756・・・光ファイバ 757・・・光電変換器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を載置して回転と移動が可能なテーブル手段と、
該テーブル手段に載置された試料の表面にレーザを照射する照明手段と、
該照明手段によりレーザが照射された前記試料からの反射光を検出する反射光検出手段と、
該反射光検出手段からの検出信号を処理して前記試料上の欠陥を検出する信号処理手段と、
を備えた試料の表面の欠陥を検査する装置であって、
前記反射光検出手段は、前記試料からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光を非球面フレネルレンズを用いて集光して検出する散乱光検出部を有していることを特徴とする表面欠陥検査装置。
【請求項2】
前記反射光検出手段の散乱光検出部は、前記試料からの散乱光を集光する第1の非球面フレネルレンズと、該第1の非球面フレネルレンズで集光された散乱光を集束させる第2の非球面フレネルレンズと、該第2の非球面フレネルレンズで集束された散乱光を検出する光電変換器を備えていることを特長とする請求項1記載の表面欠陥検査装置。
【請求項3】
前記第1の非球面フレネルレンズと前記第2の非球面フレネルレンズとを密着させて配置したことを特徴とする請求項2記載の表面欠陥検査装置。
【請求項4】
前記反射光検出手段は、前記試料からの反射光の中から正反射光を抽出して該抽出した正反射光を検出する正反射光検出部を更に有することを特長とする請求項1記載の表面欠陥検査装置。
【請求項5】
試料を載置して回転と移動が可能なテーブル手段と、
該テーブル手段に載置された試料の表面に第1のレーザを照射して前記試料からの反射光を検出する第1の照明検出手段と、
該テーブル手段に載置された試料の表面に第2のレーザを照射して前記試料からの反射光を検出する第2の照明検出手段と、
前記第1の照明検出手段と前記第2の照明検出手段とからの検出信号を処理して前記試料上の欠陥を検出する信号処理手段と、
を備えた試料の表面の欠陥を検査する装置であって、
前記第1の照明検出手段は、前記試料にレーザを照射する照明部と、該レーザを照射された試料からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光を非球面フレネルレンズを用いて集光して検出する散乱光検出部を有していることを特徴とする表面欠陥検査装置。
【請求項6】
前記第1の照明検出手段の散乱光検出部は、前記試料からの散乱光を集光する第1の非球面フレネルレンズと、該第1の非球面フレネルレンズで集光された散乱光を集束させる第2の非球面フレネルレンズと、該第2の非球面フレネルレンズで集束された散乱光を検出する光電変換器を備えていることを特長とする請求項5記載の表面欠陥検査装置。
【請求項7】
前記第1の照明検出手段は、前記試料からの反射光の中から正反射光を抽出して該抽出した正反射光を検出する正反射光検出部を更に有することを特長とする請求項5記載の表面欠陥検査装置。
【請求項8】
試料を載置して回転と移動が可能なテーブル手段と、
該テーブル手段に載置された試料の表面にレーザを照射する照明手段と、
該照明手段によりレーザが照射された前記試料からの反射光を検出する反射光検出手段と、
該反射光検出手段からの検出信号を処理して前記試料上の欠陥を検出する信号処理手段と、
を備えた試料の表面の欠陥を検査する装置であって、
前記反射光検出手段は前記試料からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光を前記テーブル手段の上方の空間をほぼ全面を覆うように配置された複数の非球面フレネルレンズを用いて集光して検出する散乱光検出部を有していることを特徴とする表面欠陥検査装置。
【請求項9】
前記反射光検出手段の散乱光検出部は、前記テーブル手段の上方の空間をほぼ全面を覆うように配置されて前記試料からの散乱光を集光する第1の非球面フレネルレンズ群と、該第1の非球面フレネルレンズ群で集光されたそれぞれの散乱光を集束させる第2の非球面フレネルレンズ群と、該第2の非球面フレネルレンズ群で集束されたそれぞれの散乱光を検出する光電変換器を備えていることを特長とする請求項8記載の表面欠陥検査装置。
【請求項10】
前記第1の非球面フレネルレンズ群のそれぞれの非球面フレネルレンズと該それぞれの非球面フレネルレンズに対応する前記第2の非球面フレネルレンズ群の非球面フレネルレンズとを密着させて配置したことを特徴とする請求項9記載の表面欠陥検査装置。
【請求項11】
前記反射光検出手段は、前記試料からの反射光のうち正反射光を検出する正反射光検出部を更に有していることを特徴とする請求項8記載の表面欠陥検査装置。
【請求項12】
回転と移動が可能なテーブル上に試料を載置し、
該テーブルを回転させながら移動させた状態で前記試料の表面にレーザを照射し、
該レーザが照射された前記試料からの反射光を検出し、
該反射光を検出して得た信号を処理して前記試料上の欠陥を検出する
試料表面の欠陥を検査する方法であって、
前記反射光を検出することが、前記試料からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光を非球面フレネルレンズを用いて集光し、該非球面フレネルレンズを用いて集光した散乱光を光電変換器で検出することを含むことを特徴とする表面欠陥検査方法。
【請求項13】
前記散乱光を非球面フレネルレンズを用いて集光することを、前記散乱光を第1の非球面フレネルレンズで集光し、該第1の非球面フレネルレンズで集光した散乱光を第2の非球面フレネルレンズで集束させ、該第2の非球面フレネルレンズで集束させた散乱光を前記光電変換器で検出することを特長とする請求項12記載の表面欠陥検査方法。
【請求項14】
前記反射光を検出する工程において、更に前記試料からの反射光から除いた正反射光を検出し、前記試料上の欠陥を検出する工程において前記散乱光を検出して得た信号と前記正反射光を検出して得た信号とを処理して前記試料上の欠陥を検出することを特長とする請求項12記載の表面欠陥検査方法。
【請求項15】
回転と移動が可能なテーブル上に試料を載置し、
該テーブルを回転させながら移動させた状態で前記試料の表面に第1のレーザを照射して前記試料からの第1の反射光を検出し、
該テーブルを回転させながら移動させた状態で前記試料の表面に第2のレーザを照射して前記試料からの第2の反射光を検出し、
前記第1の反射光を検出して得た信号と前記第2の反射光を検出して得た信号とを処理して前記試料上の欠陥を検出する
試料表面の欠陥を検査する方法であって、
前記第1の反射光を検出することが、前記試料からの第1の反射光のうち正反射光を除いた第1の散乱光を非球面フレネルレンズを用いて集光し、該非球面フレネルレンズを用いて集光した第1の散乱光を光電変換器で検出することを含むことを特徴とする表面欠陥検査方法。
【請求項16】
前記第1の反射光から正反射光を除いた第1の散乱光を非球面フレネルレンズを用いて集光することを、前記試料からの第1の散乱光を第1の非球面フレネルレンズで集光し、該第1の非球面フレネルレンズで集光された散乱光を第2の非球面フレネルレンズで集束させ、該第2の非球面フレネルレンズで集束させた散乱光を前記光電変換器で検出することを特長とする請求項15記載の表面欠陥検査方法。
【請求項17】
回転と移動が可能なテーブル上に試料を載置し、
該テーブルを回転させながら移動させた状態で前記試料の表面にレーザを照射し、
該レーザが照射された前記試料からの反射光を検出し、
該反射光を検出して得た信号を処理して前記試料上の欠陥を検出する
試料表面の欠陥を検査する方法であって、
前記反射光を検出することが、前記試料からの反射光のうち正反射光を除いた散乱光を前記テーブルの上方の空間をほぼ全面を覆うように配置された複数の非球面フレネルレンズを用いて集光し、該複数の非球面フレネルレンズを用いて集光した散乱光を光電変換器で検出することを含むことを特徴とする表面欠陥検査方法。
【請求項18】
前記散乱光を前記テーブルの上方の空間をほぼ全面を覆うように配置された複数の非球面フレネルレンズを用いて集光することを、前記テーブルの上方の空間をほぼ全面を覆うように配置された第1の非球面フレネルレンズ群で前記試料からの散乱光を集光し、該第1の非球面フレネルレンズ群で集光したそれぞれの散乱光を第2の非球面フレネルレンズ群で集束させ、該第2の非球面フレネルレンズ群で集束させたそれぞれの散乱光を光電変換器で検出することを特長とする請求項17記載の表面欠陥検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2011−75406(P2011−75406A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227184(P2009−227184)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】