説明

表面波装置及びその製造方法

【課題】周波数温度特性が良好であり、電気機械結合係数が大きく、かつ伝搬損失が小さい表面波装置を提供する。
【解決手段】20°〜48°回転Y板X伝搬LiTaOからなる圧電基板2と、圧電基板2上に形成されており、タングステンからなり、かつ膜厚をH、表面波の波長をλとしたときに、規格化膜厚H/λが0.0025〜0.06の範囲にあるIDT3と、IDT3を覆うように圧電基板2上に形成されており、かつ規格化膜厚Hs/λが0.10〜0.40の範囲にあるSiO膜とを備える表面波装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば表面波フィルタなどに用いられる表面波装置に関し、より詳細には、LiTaO基板を用いた表面波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯域フィルタとして、40°〜42°回転Y板X伝搬LiTaO基板を用いた表面波装置が知られている(例えば、下記の非特許文献1)。RF帯の帯域フィルタでは、上記40°〜42°回転Y板X伝搬LiTaO基板上に、波長λで規格化された膜厚H/λが0.08〜0.10であるAl膜によりIDTが形成されていた。
【0003】
上記のように、40°〜42°回転Y板X伝搬LiTaO基板を用いた従来の表面波装置では、周波数温度特性TCFが−33ppm/℃と比較的大きいため、より一層温度特性が良好である仕様を十分に満たすことができなかった。なお、従来、表面波装置の周波数温度特性TCFを改善する方法として、LiTaO基板上にAlからなるIDTを形成した後に、SiO層を形成する方法が知られている(下記の特許文献1)。
【非特許文献1】1997年電子情報通信学会総合大会論文集:SA−10−6、第500頁−501頁
【特許文献1】特開平2−295212号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、AlからなるIDTを用いた共振子やフィルタを形成する場合、大きなKsawや反射係数を得るには、後述の図4や図12に示すように、IDTの電極膜厚H/λ(Hは膜厚、λは表面波の波長)は、0.08〜0.10とかなり厚くしなければならない。このように、AlからなるIDTがかなり厚くされているため、図13(a)に示されているIDTが形成されている部分において、周波数温度特性を改善するためにSiO膜がその上に形成されると、図13(b)に示すように、SiO膜において大きな段差が生じ、SiO膜にクラックが生じることがあった。そのため、クラックの発生により、弾性表面波フィルタのフィルタ特性が悪化しがちであった。
【0005】
加えて、AlからなるIDTの電極膜厚が厚いため、SiO膜の形成によるIDTの電極表面の凹凸を被覆する効果が十分でなく、それによって、周波数温度特性が十分に改善されないことがあった。
【0006】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、回転Y板X伝搬のLiTaO基板を用いた弾性表面波装置において、SiO膜の形成により周波数温度特性を改善し得るだけでなく、IDTの電極膜厚を薄くすることにより、SiO膜におけるクラックを防止することができると共に減衰定数も大幅に低減でき、従って目的とするフィルタ特性などの電気的特性を得ることができ、かつIDTにおける電気機械結合係数及び反射係数が十分な大きさとされる、弾性表面波装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る表面波装置は、20°〜48°回転Y板X伝搬LiTaOからなる圧電基板と、前記圧電基板上に形成されており、膜厚をH、表面波の波長をλとしたときに、規格化膜厚H/λが0.0025〜0.06であるタングステンよりなるIDTと、前記IDTを覆うように前記圧電基板上に形成されており、表面波の波長で規格化された膜厚Hs/λが0.10〜0.40であるSiO膜とを備える。
【0008】
本発明に係る表面波装置のある特定の局面では、上記IDTの規格化膜厚H/λは、0.012〜0.053、より好ましくは、0.015〜0.042の範囲とされる。
【0009】
本発明に係る表面波装置の別の特定の局面では、上記圧電基板は、25°〜45°回転Y板X伝搬LiTaO基板により構成される。
【0010】
本発明においては、タングステン電極を用いることにより、Alを用いた場合に比べ、図4,図12に示すように、薄い電極膜厚で大きな電気機械結合係数と反射係数が得られる。
【0011】
本発明に係る弾性表面波装置のさらに他の特定の局面では、IDTの上面と、SiO膜との間に密着層が形成され、それによってSiO膜の膜剥がれを抑制することができる。この場合、密着層は、IDTの上面だけでなく、LiTaO基板とSiO膜の界面にも形成されてもよい。また、上記密着層は、IDTの上面だけでなく、IDTとSiO膜の界面のほぼ全領域に形成されてもよい。すなわち、IDTの側面にも密着層が形成されていてもよい。
【0012】
本発明に係る弾性表面波装置のさらに別の特定の局面では、LiTaO基板上に、IDT以外の、少なくともバスバー及び外部との接続用電極パッドを含む複数の電極がさらに形成されており、該複数の電極が、タングステンからなる下地電極層と、下地電極層上に形成されており、AlまたはAl合金からなる上層金属層とを有する下地金属層が、IDTと同じ工程で形成されることができ、さらに上層金属層がAlまたはAl合金からなるため、SiO膜の密着強度が高められるとともに、上記電極のコストを低減することができる。さらに、Alによるウェッジボンド性も高められる。
【0013】
本発明に係る弾性表面波装置では、好ましくは、表面波として漏洩弾性表面波が用いられ、本発明に従って、周波数温度特性に優れ、電気機械結合係数及び反射係数の大きなIDTを有する、伝搬定数の小さい漏洩弾性表面波を利用した弾性表面波装置を提供することができる。
【0014】
本発明の弾性表面波装置の製造方法は、20°〜48°回転Y板X伝搬のLiTaO基板を用意する工程と、前記LiTaO基板上に少なくとも1つのIDTをタングステンを主成分とする金属を用いて形成する工程と、前記IDTを形成した後に、周波数調整を行う工程と、前記周波数調整後に、前記IDTを被覆するように前記LiTaO基板上にSiO膜を形成する工程とを備えることを特徴とする。上記タングステンを主成分とする金属を用いてIDTが形成されるとは、IDTがタングステンからなる場合、及びタングステンを主成分とする合金からなる場合の他、タングステンからなる金属層と、他の金属層との積層構造からなり、タングステン層が積層構造の主たる金属層を占める場合を含むものとする。
【0015】
本発明の製造方法の特定の局面では、IDTが、密度が7100kg/m以上の金属からなる電極と、タングステン電極とが積層されている構造を有する。タングステンは、Alに比べて密度が高く、薄い電極膜厚で電気機械結合係数が大きくかつ反射係数が大きなIDTを容易に構成することができるため、SiO膜のクラックを防止することができる。さらに、SiO膜によって減衰定数を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る表面波装置では、20°〜48°回転Y板X伝搬LiTaOからなる圧電基板上に、規格化膜厚H/λが0.0025〜0.06であり、かつタングステンよりなるIDTが形成されており、IDTを覆うように、Hs/λ=0.10〜0.40のSiO膜が形成されている、SiO膜により周波数温度係数TCFが改善され、タングステン膜よりなるIDTの膜厚H/λが上記特定の範囲とされているため、電気機械結合係数と反射係数が大きく、さらにLiTaO基板の回転角が上記特定の範囲とされているため、減衰定数が小さくされる。よって、周波数温度特性に優れ、大きな電気機械結合係数を有し、かつ伝搬損失が少ない表面波装置を提供することが可能となる。
【0017】
特に、IDTの膜厚H/λが0.012〜0.053の範囲にある場合には、電気機械結合係数を効果的に高めることができる。
【0018】
また、上記LiTaOからなる圧電基板の回転角が25°〜45°の範囲である場合には、減衰定数をより一層小さくすることができる。
【0019】
また、タングステン電極が薄いため、このタングステン電極IDT上にSiOが成膜されてもSiOに大きな段差やクラックができないため、Al電極の場合に生じるそれらに起因した挿入損失等の特性の劣化もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施例を説明することにより、本発明を詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る表面波装置の略図的断面図である。表面波装置1は、縦結合共振子型表面波フィルタであり、20°〜48°回転Y板X伝搬LiTaOからなる圧電基板2を有する。圧電基板2上に、タングステン膜よりなるIDT3a,3b及び反射器5a,5bが形成されている。IDT3a,3bの規格化膜厚H/λ(HはIDTの厚み、λは中心周波数における波長を示す)は0.0025〜0.06の範囲とされている。また、IDT3a,3bを覆うように、圧電基板2上に、SiO膜4が形成されている。SiO膜4の規格化膜厚Hs/λ(HsはSiO膜の厚み、λは中心周波数における表面波の波長)は0.10〜0.40の範囲とされている。
【0022】
本実施例では上記のように、20°〜48°回転Y板X伝搬LiTaOからなる圧電基板2と、H/λ=0.0025〜0.06であるタングステンよりなるIDT3a,3bと、Hs/λ=0.10〜0.40の範囲にあるSiO膜4とを用いているため、周波数温度係数TCFが小さく、電気機械結合係数Kが大きく、かつ伝搬損失が小さい表面波装置を提供することができる。これを、以下の具体的な実験例に基づき説明する。
【0023】
LiTaO基板を伝搬する表面波としては、レイリー波の他に、漏洩弾性表面波が存在する。漏洩弾性表面波は、レイリー波に比べて音速が速く、電気機械結合係数が大きい。しかしながら、漏洩弾性表面波は、エネルギーを基板内部に放射しながら伝搬する波である。従って、漏洩弾性表面波は、伝搬損失の原因となる減衰定数を有する。
【0024】
図2は、回転Y板X伝搬LiTaOにおけるオイラー角(0,θ,0)のθと、基板表面が電気的に短絡された場合の減衰定数(伝搬損失)αとの関係を示す。なお、回転角=θ−90度の関係である。
【0025】
図2から明らかなように、オイラー角のθが124〜126°の範囲で減衰定数は小さい。この範囲を外れると、減衰定数は大きくなる。
【0026】
また、比較的膜厚が厚いAlからなるIDTを形成した場合には、θ=130°〜132°で減衰定数が小さくなることが知られている(例えば、前述した非特許文献1)。従って、従来、AlからなるIDTと、LiTaO基板とを組み合わせた構成では、θ=130°〜132°の回転Y板X伝搬のLiTaO基板が用いられていた。
【0027】
図3は、回転Y板X伝搬LiTaO基板におけるオイラー角(0,θ,0)のθと電気機械結合係数Kとの関係を示す。オイラー角のθが100°〜120°の範囲で大きな電気機械結合係数Kが得られることがわかる。しかしながら、θ=100°〜120°の範囲では、前述の図2から明らかなように減衰定数が大きい。従って、このようなオイラー角のLiTaO基板を用いることはできないことがわかる。
【0028】
図4は、36°回転Y板X伝搬[オイラー角で(0°,126°,0°)]のLiTaO基板上に、電極膜として、タングステン膜またはアルミニウム膜を形成した場合の該電極膜の規格化膜厚H/λ(Hは膜厚を、λは表面波装置の中心周波数における波長を示す)と、電気機械結合係数Kとの関係を示す。タングステン膜の規格化膜厚H/λ=0.0025〜0.085の範囲では、電気機械結合係数Kは、H/λ=0(成膜しなかった場合)の場合の電気機械結合係数の1.2倍以上となり、H/λ=0.012〜0.053では、1.5倍以上となり、H/λ=0.015〜0.042では、1.6倍以上となることがわかる。
【0029】
従って、H/λ=0.0025〜0.085とすることにより、電気機械結合係数Kを高めることができることがわかる。
【0030】
なお、タングスンテ膜の規格化膜厚が0.06を超えると、タングステンから得られるIDTの作製が困難となることがある。従って、好ましくは、タングステン膜の規格化膜厚H/λは、0.0025〜0.06、より好ましくは0.012〜0.053、さらに好ましくは0.015〜0.042であることがわかる。
【0031】
次に、SiO膜をLiTaO基板上に形成した場合の周波数温度係数TCFの改善効果を説明する。図5は、θ=113°、126°及び129°の(0,θ,0)の各LiTaO基板上にSiO膜を成膜した場合の周波数温度係数TCFの変化を示す図である。
【0032】
図5から明らかなように、θが113°,126°及び129°のいずれの場合においても、SiOの規格化膜厚Hs/λ(HsはSiO膜の膜厚を、λは表面波装置の中心周波数における波長を示す)が0.10〜0.45の範囲において、TCFが−24〜+17ppm/℃の範囲にはいることがわかる。もっとも、SiO膜の成膜には時間を要するため、SiO膜の膜厚Hs/λは0.40以下であることが望ましい。従って、好ましくは、SiO膜の膜厚Hs/λは、0.10〜0.40の範囲であり、それによって、短時間で成膜でき、かつTCFを−20〜+17ppm/℃の範囲とすることができる。
【0033】
従来、LiTaO基板上に、Al電極を形成し、さらにSiO膜を形成することにより、レイリー波などのTCFが改善されるという報告がいくつか存在する(例えば、特許文献1など)。しかしながら、LiTaO基板−タングステンからなる電極−SiO膜の積層構造において、電極の膜厚や漏洩弾性表面波の減衰定数を考慮にいれて実験が行われた報告は存在しない。
【0034】
図6及び図7は、オイラー角(0°,120°,0°)と、(0°,140°,0°)の各LiTaO基板上に、種々の膜厚のタングステンからなるIDTと、種々の膜厚のSiO膜とを形成した場合の減衰定数を示す図である。
【0035】
図6から明らかなように、θ=120°では、SiOの膜厚Hs/λが0.1〜0.40かつタングステンよりなる電極の規格化膜厚H/λが0.0〜0.10の範囲において、減衰定数が小さいことがわかる。他方、図7から明らかなように、θ=140°では、タングステンからなる電極の規格化膜厚H/λが0.0〜0.10の範囲では、SiO膜の膜厚の如何に係わらず、減衰定数が大きくなっていることがわかる。
【0036】
すなわち、TCFの絶対値を小さくし、大きな電気機械結合係数を得、かつ減衰定数を小さくするには、LiTaO基板のカット角、SiO膜の厚み及びタングステンからなる電極の膜厚の3つの条件を考慮しなければならないことがわかる。
【0037】
図8〜図11は、SiO膜の規格化膜厚Hs/λ及びタングステンからなる電極膜の規格化膜厚H/λを変化させた場合の、θ(度)と減衰定数との関係を示す。
【0038】
図8〜図11から明らかなように、タングステンからなる電極の規格化膜厚H/λが0.012〜0.053及び0.015〜0.042において、SiO膜の膜厚と、最適なθとの関係は、下記の表1及び表2に示す通りとなる。なお、この最適θは、タングステン電極の電極指幅のばらつきや単結晶基板のばらつきにより−2°〜+4°程度ばらつくことがある。なお、図中、図示していない膜厚は比例配分による。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
すなわち、表1及び表2から明らかなように、タングステンよりなる電極の膜厚H/λが、0.012〜0.053の場合、温度特性を改善するために、SiO膜の膜厚を0.1〜0.4の範囲とした場合、LiTaOのオイラー角におけるθは、110〜140°の範囲、すなわち、回転角で20°〜50°の範囲、より好ましくは、表1に示すオイラー角を選択すればよいことがわかる。
【0042】
同様に、表2から明らかなように、タングステン膜からなる電極の規格化膜厚が0.015〜0.042であり、周波数温度特性を改善するために、SiO膜の膜厚を0.1〜0.4の範囲とした場合には、LiTaO基板のオイラー角は110°〜138°の範囲とすればよく、より好ましくはSiO膜の膜厚に応じて表2のオイラー角を選択すればよいことがわかる。
【0043】
ここで、表1及び表2における「LiTaOのオイラー角」の範囲は、減衰定数が0.05以下の範囲を規定したものである。また、表1及び表2におけるLiTaOのオイラー角の「より好ましい」範囲は、減衰定数が0.025以下に規定したものである。また、タングステンからなる電極膜の規格化膜厚が0.012、0.015、0.042、0.053である場合のSiO膜の膜厚とオイラー角の関係は、図8〜図11に示すタングステンからなる電極膜の規格化膜厚から換算して求めたものであり、それによって、表1及び表2のSiO膜の膜厚とオイラー角の値を求めている。
【0044】
また、図14(a),(b)は、上記実施例の弾性表面波フィルタにおける表面の走査型電子顕微鏡写真である。ここでは、H/λ=0.025の規格化膜厚のタングステンからなるIDT上に、規格化膜厚Hs/λ=0.3のSiO膜が形成されている前後の場合の結果が示されている。図14(b)の成膜後の写真から明らかなように、SiO膜の表面にクラックは見られず、従って、クラックによる特性の劣化も生じ難いことがわかる。Al電極指に比べタングステン電極は薄い膜厚で大きな電気機械結合係数と反射係数が得られる。そのため、薄いタングステン電極の上にSiOが成膜されていても、図14(b),(c)に示すように、SiOに大きな段差やクラックが生じないという利点がある。
【0045】
本発明に係る弾性表面波装置の製造に際しては、回転Y板X伝搬LiTaO基板上にタングステンを主成分とする金属からなるIDTを形成した後、その状態において周波数調整を行い、しかる後減衰定数αを小さくし得る範囲の膜厚のSiO膜を成膜することが望ましい。これを、図15及び図16を参照して説明する。図15は、オイラー角(0°,126°,0°)の回転Y板X伝搬LiTaO基板上に、種々の厚みH/λのタングステンからなるIDT及び種々の膜厚Hs/λのSiO膜を形成した場合の漏洩弾性表面波の音速の変化を示す。また、図16は、同じオイラー角のLiTaO基板上に、種々の膜厚H/λのタングステンからなるIDTを形成した場合、その上に形成されるSiO膜の規格化膜厚Hs/λを変化させた場合の漏洩弾性表面波の音速の変化を示す。図15と図16を比較すれば明らかなように、タングステンの膜厚を変化させた場合の方が、SiO膜の膜厚を変化させた場合よりも表面波の音速の変化がはるかに大きい。従って、SiO膜の形成に先立ち、周波数調整が、行われることが望ましく、例えば、レーザーエッチングやイオンエッチングなどによりタングステン(W)からなるIDTを形成した後に周波数調整を行うことが望ましい。
【0046】
なお、本発明は、上記のように、20°〜48°回転Y板X伝搬LiTaOからなる圧電基板、H/λ=0.0025〜0.06であるタングステンよりなるIDTと、Hs/λ=0.10〜0.40であるSiO膜とを有することを特徴とするものであり、従って、IDTの数及び構造等については特に限定されない。すなわち、本発明は、図1に示した表面波装置だけでなく、上記条件を満たす限り、様々な表面波共振子や表面波フィルタ等に適用することができる。
【0047】
また、タングステン電極の下や上に電極の密着強度を向上させるためやボンディングを容易とするために、TiやCr,Al等を薄く成膜してもよい。
【0048】
タングステンを主成分という意味は、タングステンと他の電極と積層された場合、厚みの比をいうのではなくて、密度と厚みを乗じた重量比で半分以上という意味である。
【0049】
なお、タングステンの上あるいは下に、7100kg/m以上の密度をもつTa、Au、Pt、Cu、Ag、Cr等の金属からなる電極と同じ程度の割合で積層してもタングステン電極単層と同じ効果をもつことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施例に係る表面波装置を示す模式的平面図。
【図2】オイラー角(0,θ,0)のLiTaO基板のθと、減衰定数αとの関係を示す図。
【図3】オイラー角(0,θ,0)のLiTaO基板におけるθと電気機械結合係数Kとの関係を示す図。
【図4】オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaO基板上にタングステンまたはアルミニウムからなる電極膜を形成した構造における電極膜の規格化膜厚H/λと、電気機械結合係数Kとの関係を示す図。
【図5】オイラー角(0°,113°,0°)、(0°,126°,0°)及び(0°,129°0,0°)の各LiTaO基板上にSiO膜を形成した場合のSiO膜の規格化膜厚Hs/λと、周波数温度係数TCFとの関係を示す図。
【図6】オイラー角(0°,120°,0°)のLiTaO基板上に、様々な厚みのSiO膜及び様々な厚みのタングステンからなるIDTを形成した構造における減衰定数αの変化を示す図。
【図7】オイラー角(0°,140°,0°)のLiTaO基板上に、様々な厚みのSiO膜及び様々な厚みのタングステンからなるIDTを形成した構造における減衰定数αの変化を示す図。
【図8】オイラー角(0°,θ,0°)のLiTaO基板上に、様々な厚みのタングステンよりなる電極膜を形成し、さらに規格化膜厚Hs/λ=0.1のSiO膜を形成した表面波装置におけるθと、タングステンよりなる電極膜の規格化厚みH/λと、減衰定数αとの関係を示す図。
【図9】オイラー角(0°,θ,0°)のLiTaO基板上に、様々な厚みのタングステンよりなる電極膜を形成し、さらに規格化膜厚Hs/λ=0.2のSiO膜を形成した表面波装置におけるθと、タングステンよりなる電極膜の規格化厚みH/λと、減衰定数αとの関係を示す図。
【図10】オイラー角(0°,θ,0°)のLiTaO基板上に、様々な厚みのタングステンよりなる電極膜を形成し、さらに規格化膜厚Hs/λ=0.3のSiO膜を形成した表面波装置におけるθと、タングステンよりなる電極膜の規格化厚みH/λと、減衰定数αとの関係を示す図。
【図11】オイラー角(0°,θ,0°)のLiTaO基板上に、様々な厚みのタングステンよりなる電極膜を形成し、さらに規格化膜厚Hs/λ=0.4のSiO膜を形成した表面波装置におけるθと、タングステンよりなる電極膜の規格化厚みH/λと、減衰定数αとの関係を示す図。
【図12】オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaO基板上に、様々な厚みのタングステンまたはアルミニウムよりなる電極膜を形成した場合の電極膜の膜厚と、電極指の反射係数との関係を示す図。
【図13】(a)は、オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaO基板上に、膜厚H/λ=0.08のアルミニウム電極からなるIDTが形成された表面、(b)は、その上に厚みHs/λ=0.3のSiOが成膜された表面、(c)は、その断面を示す各走査型電子顕微鏡写真を示す図。
【図14】(a)は、オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaO基板上に、厚みH/λ=0.025のタングステンからなるIDTが形成された表面、(b)は、その上に厚みHs/λ=0.3のSiOが成膜された表面、(c)は、その断面を示す各走査型電子顕微鏡写真を示す図。
【図15】オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaO基板上にタングステンからなるIDTを形成し、さらにSiO膜を形成した場合のタングステン膜の膜厚と、SiO膜の膜厚と、音速との関係を示す図。
【図16】オイラー角(0°,126°,0°)のLiTaO基板上にタングステンからなるIDTを形成し、さらにSiO膜を形成した場合のタングステン膜の膜厚と、SiO膜の膜厚と、音速との関係を示す図。
【符号の説明】
【0051】
1…表面波装置
2…圧電基板
3a,3b…IDT
4…SiO
5a,5b…反射器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20°〜48°回転Y板X伝搬LiTaOからなる圧電基板と、
前記圧電基板上に形成されており、膜厚をH、表面波の波長をλとしたときに、規格化膜厚H/λが0.0025〜0.06であるタングステンよりなるIDTと、
前記IDTを覆うように前記圧電基板上に形成されており、表面波の波長で規格化された膜厚Hs/λが0.10〜0.40であるSiO膜とを備える、表面波装置。
【請求項2】
前記IDTの規格化膜厚H/λが、0.012〜0.053の範囲にある、請求項1に記載の表面波装置。
【請求項3】
前記IDTの規格化膜厚H/λが、0.015〜0.042の範囲にある、請求項2に記載の表面波装置。
【請求項4】
前記圧電基板が、25°〜45°回転Y板X伝搬LiTaO基板である、請求項1または2に記載の表面波装置。
【請求項5】
20°〜48°回転Y板X伝搬のLiTaO基板を用意する工程と、前記LiTaO基板上に少なくとも1つのIDTをタングステンを主成分とする金属を用いて形成する工程と、前記IDTを形成した後に、周波数調整を行う工程と、前記周波数調整後に、前記IDTを被覆するように前記LiTaO基板上にSiO膜を形成する工程とを備える、請求項1〜3のいずれかに記載の表面波装置の製造方法。
【請求項6】
前記IDTが、密度が7100kg/m以上の金属からなる電極と、タングステン電極とが積層されている構造を有する、請求項5に記載の表面波装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図15】
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【図16】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−136238(P2008−136238A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29471(P2008−29471)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【分割の表示】特願2002−336940(P2002−336940)の分割
【原出願日】平成14年11月20日(2002.11.20)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】