説明

表面浸食性ポリエステルによる薬剤送達コーティングを備える埋め込み式医療デバイス

本発明は、表面浸食特性を示す薬剤貯留層用ポリエステルを用いてデバイス上に被覆した治療用薬剤を含む、埋め込み式医療デバイスに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
[0001]本発明は、ポリマー化学、医薬品化学、材料科学、及び医療デバイスの各分野に関する。
[背景]
【0002】
[0002]以下の論述は、本発明の理解の補助となる背景情報のみを意図するものであり、本節の一切の内容は、本発明の先行技術であることを意図せず、またそのように解釈すべきものではない。
【0003】
[0003]1980年代初頭、約30年間にわたり医学界が使用してきた埋め込み式医療デバイスの有用性は拡張されて、局所的な薬剤送達を含むようになった。埋め込み式デバイスは、薬剤をその構造内に直接組み込むか、又はより一般的には、デバイス表面に付着させたコーティング内に組み込んで製造できることが判明した。いずれの場合においても、治療部位にデバイスが送達され、薬剤が放出されるまで、薬剤は外界から遮断された。局所的薬剤送達の利点は明白である。
【0004】
[0004]部位特異的な送達は、薬剤の高い局所的な濃度と、低い全身曝露レベル及び望ましくない副作用可能性の低下とを同時に確立することを可能にする。こうして、例えば、抗血栓剤の全身送達に伴いうる出血性合併症を回避できる。同様に、抗腫瘍剤を腫瘍部又は腫瘍内のみに送達することによって、該薬剤のすべての生細胞に対する拡散的毒性を悪性細胞に集中させることができる。局所的送達は、さまざまな理由により他の手段では送達しにくい薬剤の使用をも可能とする。該薬剤は、例えば、生理学的条件下では分解しやすいため、全身投与すると治療部位に到達する前に生分解する薬剤、及び基本的に水性である生理学的溶液には実質的に不溶であるため、ほぼ投与直後に沈殿し固着する薬剤を含む。
【0005】
[0005]当然ながら、局所的送達を用いることで薬剤使用を低下させうることも、実質的な経費的有益性を構成しうる。
【0006】
[0006]薬剤の局所的送達の一技術は、ポリマー担体中に薬剤を分散させて治療部位に位置すれば薬剤を送達できる「薬剤貯留体」を作製することに関わる。薬剤貯留体ポリマーは、生体適合性でなければならない、すなわち、その原型を保って、合成したままの状態、及び、かなりの程度分解する場合はその分解産物が、生組織に対して毒性又は傷害性であってはならないか、或いは毒性又は傷害性が少なくとも最小限度となるべきである。さらに、該ポリマー又はその分解産物が、生組織内において免疫反応を起こさないか、或いはここでも、引き起こす免疫反応が少なくとも最小限度及び/又は制御可能となるべきである。
【0007】
[0007]局所的薬剤送達に関する進行中の一研究分野は、薬剤放出プロファイルの制御である。薬剤貯留体として用いるポリマーの物理的及び化学的特性が、ポリマー内に分散した薬剤の放出プロファイルを大部分制御する。例えば、薬剤貯留体ポリマーが耐久性である場合、すなわち、該ポリマーが生理学的環境において安定でありほとんど生分解しない場合、薬剤が該貯留体から溶出する主要な機構は、体液への曝露により該ポリマーがあらかじめ膨潤するか否かに関わらず、該ポリマーマトリックスからの単純且つ受動的な拡散による。しかしながら、受動的拡散により達せられる薬剤放出プロファイルは、最適ではあり得ない。貯留体ポリマーが架橋されているか否かといった条件、並びにもし架橋されている場合は、架橋マトリックスの構造、特に細孔のサイズ、及び薬剤が該ポリマー表面に到達するために経なければならない経路の複雑さが、放出プロファイルに影響を及ぼす。薬剤そのものの物理的な寸法のほか、埋め込み式デバイスの形状及び該貯留層の形状も、放出プロファイルに影響する。例えば、デバイスに被覆したポリマー薄膜からの放出は、デバイス表面に付着させたミクロスフェア又はナノスフェアからの放出とは実質的に異なる場合がある。該貯留体の厚さ、又は、微粒子の場合には該貯留体の平均直径も、薬剤放出に影響を及ぼす。
【0008】
[0008]薬剤貯留体として耐久性ポリマーを用いるのとは別の選択肢は、生分解性ポリマーを用いることである。分子量、分子量分布、滅菌履歴、形状、アニーリング、加工条件、イオン基の存在、立体配置構造など多数のパラメータが、ポリマー分解特性の決定に寄与するのに対し、生分解性を決定する主要因子は、化学的組成である。すなわち、生分解性ポリマーは、in vivoにおける生分解を受けやすいように選択したモノマー同士を結合する結合官能基を有する。該分解は酵素に触媒されることが多いが、pHなど他の生理学的因子によっても影響を受ける場合がある。生分解性ポリマーは、表面浸食性及びバルク浸食性の二大類型に分類できる。
【0009】
[0009]表面浸食性ポリマーは、疎水性となる傾向があり、ポリマーバルク内への水の浸透が引き起こす質量損失よりも大きな質量損失を、ポリマー表面において引き起こす。表面浸食は、一般に、制御された予測可能な速度で生じる。したがって、曝露されるポリマーの表面積が変化しないと仮定すれば、ポリマーマトリックス内部に含まれる薬剤は、浸食の進行に応じ一定の速度で放出される。表面浸食性ポリマーは、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリケタールを含む。ポリケタールを例外として、これらポリマーの分解産物は、酸を含む。この分解は、酸により触媒されるほか、酵素によっても触媒されるので、自己触媒反応の生じる場合がある。
【0010】
[0010]自己触媒反応は、ポリマーの分解産物自身が、該ポリマーの分解をさらに触媒できる場合に生じる。より多くの触媒が相次いで集積することで、分解速度の上昇が生じる。一方、表面浸食性ポリマーの場合、酸性の分解産物が該ポリマー表面から速やかに洗い流され、さらなる分解を実質的に自己触媒するのに十分な高濃度では存在しないため、通常自己触媒現象は生じない。
【0011】
[0011]表面浸食性ポリマーの分解産物は、in vivoでの使用を意図する任意のポリマーと同様、生体適合性でなければならない。このようなポリマーは数多く知られており、治療用薬剤の薬剤放出制御に用いる埋め込み式医療デバイスにおいて使用されているが、一般に、それらの分解産物がまったくの無毒性であることはまれであり、その使用は、一般に注意深く監視しなければならない。
【0012】
[0012]一方、ポリラクチド、ポリグリコリド、及びこれらのコポリマーは、大半がin vivoにおいて無毒性である。これらは、生分解性縫合糸を初めとして、20年以上にわたりin vivoで用いられている。それらの人気は、それらの分解産物である乳酸及びグリコール酸が、in vivoでの生成と同時にクレブス回路に入り、その後二酸化炭素及び水に変換されることが可能な天然化合物であるという事実に発している。したがって、これらポリマー及びその分解産物は、既に危機にさらされていることの多い患者の生理学的状態に対して、さらにストレスを加えることがわずかしかないか又は全くない。ただし、ポリラクチド及びポリグリコリドは、バルク浸食性ポリマーである。
【0013】
[0013]バルク浸食性の生分解性ポリマーは、親水性、すなわち水相溶性である傾向がある。これら水相溶性ポリマーは、水を吸収し、それとともに生理学系の、酵素及びその他の生分解原因成分を吸収する。吸収された成分は、表面浸食速度に匹敵する速度で、該ポリマーの内部分解を引き起こす。すなわち、ポリマーマトリックス全体において同時に分解が生じる。ポリマーのバルク内で段階的分解が生じ、薬剤がポリマーマトリックス全体から偶発的な仕方で放出されるので、結果は、きわめて複雑な薬剤放出プロファイルとなり得る。表面浸食性ポリマーで得られるような、なめらかで直線的な放出プロファイルと異なり、患者の健康及び安全性にとって有害でありうる、大量の薬剤の急激な放出が生じる場合がある。ポリラクチド及びポリグリコリドといったポリエステルの場合、自己触媒反応がこの状況を悪化させる。表面浸食性ポリマーと異なり、バルク浸食性ポリマーがその成分である酸に分解する場合、酸は長期間にわたり残りのポリマーマトリックス内部に捕捉されたままとなり、そこでさらなる分解を触媒し、これが組み込まれた治療用薬剤の放出プロファイルをさらに複雑化させる。
【0014】
[0014]バルク浸食性ポリマーが、使用時に、バルク浸食特性よりも表面浸食特性を示すように、該ポリマーを操作する方法が望ましい。本発明は、このような方法を提供する。
【0015】
[概要]
[0015]したがって、本発明の一態様は、生体適合性の生分解性ポリマーを含み、医療デバイスの表面に約100mm−1〜約1000mm−1の表面積対体積比で配置されるポリマー層と、薬剤/ポリマーの重量/重量比(wt/wt比)が約1:5〜約5:1でポリマー層内に分散される治療用薬剤とを備える、埋め込み式医療デバイスに関する。
【0016】
[0016]本発明の一態様において、表面は、外表面、及び、場合によってはエッジ面の全部又は一部である。
【0017】
[0017]本発明の一態様において、表面は、内腔面、及び、場合によってはエッジ面の全部又は一部である。
【0018】
[0018]本発明の一態様において、ポリマー層は、約100mm−1〜約500mm−1の表面積対体積比を有する。
【0019】
[0019]本発明の一態様において、ポリマー層は、約100mm−1〜約250mm−1の表面積対体積比を有する。
【0020】
[0020]本発明の一態様において、薬剤/ポリマーのwt/wt比は、約1:2〜約2:1である。
【0021】
[0021]本発明の一態様において、薬剤/ポリマーのwt/wt比は、約1:1である。
【0022】
[0022]本発明の一態様において、生体適合性の生分解性ポリマーは、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(メソ−ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(メソ−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、及びポリ(エチレングリコール−co−ブチレンテレフタレート)(POLYACTIVE[登録商標])、ポリ(エステルアミド)からなる群から選択される。
【0023】
[0023]本発明の一態様において、生体適合性の生分解性ポリマーは、約20〜約600キロダルトンの分子量を有する。
【0024】
[0024]本発明の一態様において、生体適合性の生分解性ポリマーは、約40〜約200キロダルトンの分子量を有する。
【0025】
[0025]本発明の一態様において、生体適合性の生分解性ポリマーは、約50〜約70キロダルトンの分子量を有する。
【0026】
[0026]本発明の一態様において、生体適合性の生分解性ポリマーは、実質的にアモルファスである。
【0027】
[0027]本発明の一態様において、アモルファスで生体適合性の生分解性ポリマーは、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(メソ−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)、及びポリ(メソ−ラクチド−co−グリコリド)からなる群から選択される。
【0028】
[0028]本発明の一態様において、治療用薬剤は、アクチノマイシンD、パクリタキセル、ドセタキセル、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、ドキソルビシン塩酸塩、マイトマイシン、ヘパリンナトリウム、低分子量へパリン、ヘパリノイド、疎水性対イオンを有するヘパリン誘導体、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換えヒルジン、及びトロンビン、アンギオペプチン、カプトプリル、シラザプリル、リシノプリル、ニフェジピン、コルヒチン、線維芽細胞成長因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(u−3脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン、モノクローナル抗体、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニンブロッカー、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン、酸化窒素、ペミロラストカリウム、アルファ−インターフェロン、遺伝子組換え上皮細胞、ラパマイシン、エベロリムス、バイオリムス、デキサメタゾン、及び17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシンからなる群から選択される。
【0029】
[0029]本発明の一態様において、治療用薬剤は、抗増殖剤である。
【0030】
[0030]本発明の一態様において、治療用薬剤は、エベロリムスである。
【0031】
[0031]本発明の一態様において、治療用薬剤は、17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシンである。
【0032】
[0032]本発明の一態様において、埋め込み式医療デバイスは、さらに、表面とポリマー層との間のデバイス表面に塗布された下塗層を備える。
【0033】
[0033]本発明の一態様において、該下塗層は、ポリ(モノクロロパラキシリレン)(PARYLENE C[登録商標])、ポリアクリレート、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリメタクリレート、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(メソ−ラクチド)、ポリ(メソ−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、及びポリ(エチレングリコール−co−ブチレンテレフタレート)(POLYACTIVE[登録商標])、ポリ(エステルアミド)からなる群から選択したポリマーを含む。
【0034】
[0034]本発明の一態様において、該下塗層は、ポリ(n−ブチルメタクリレート)及びPARYLENE C[登録商標]からなる群から選択したポリマーを含む。
【0035】
[0035]本発明の一態様は、表面に表面積対体積比が約100mm−1〜約1000mm−1となるように配置された生体適合性の生分解性ポリマー層を備え、該ポリマー層がさらに約1:5〜約5:1の薬剤/ポリマーのwt/wt比で治療用薬剤を含む埋め込み式医療デバイスを、治療を必要とする患者の血管系内の部位へ配備するステップと、該埋め込み式医療デバイスを該部位に設置するステップとを含む血管疾患の治療法である。
【0036】
[0036]本発明の一態様において、上記方法における配備するステップは、カテーテルの使用を含む。
【0037】
[0037]上記方法の一態様において、薬剤/ポリマーのwt/wt比は、約1:2〜約2:1である。
【0038】
[0038]上記方法の一態様において、薬剤/ポリマーのwt/wt比は、約1:1である。
【0039】
[0039]上記方法の一態様において、生体適合性の生分解性ポリマーは、約20kDa〜約600kDaの数平均分子量を有する。
【0040】
[0040]上記方法の一態様において、生体適合性の生分解性ポリマーは、約40kDa〜約200kDaの数平均分子量を有する。
【0041】
[0041]上記方法の一態様において、数平均分子量は、約50kDa〜約100kDaである。
【0042】
[0042]上記方法の一態様において、生体適合性の生分解性ポリマーは、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(メソ−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(メソ−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、及びポリ(エチレングリコール−co−ブチレンテレフタレート)(POLYACTIVE[登録商標])、ポリ(エステルアミド)からなる群から選択される。
【0043】
[0043]上記方法の一態様において、生体適合性の生分解性ポリマーは、実質的にアモルファスである。
【0044】
[0044]上記方法の一態様において、アモルファスで生体適合性の生分解性ポリマーは、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(メソ−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−co−グリコリド)、及びポリ(メソ−ラクチド−co−グリコリド)からなる群から選択される。
【0045】
[0045]上記方法の一態様において、血管疾患は、再狭窄である。
【0046】
[0046]上記方法の一態様において、血管疾患は、不安定プラークである。
【0047】
[0047]上記方法の一態様において、治療用薬剤は、エベロリムス及び17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシンからなる群から選択される。
【0048】
[詳細な説明]
定義
[0048]本明細書で用いる単数形の使用は、特に記さない限り複数形の使用を含む。すなわち、「a」及び「the」は、該冠詞が修飾するすべてのものの1つ又は複数を指す場合がある。例えば、「薬剤」(“a pharmaceutical agent”)は、1つの薬剤又は2つ以上の薬剤を含む。同様に、「ポリマー」(“a polymer”又は“the polymer”)は、1つのポリマー又は複数のポリマーを指す場合がある。
【0049】
[0049]本明細書で用いる「約」(“about”又は“approximately”)という用語は、そのように修飾されるパラメータが、正確に本明細書で記す値又は値の範囲である必要がないが、それでも本発明の適用範囲内には収まることを意味する。状況及び当業者の知識が、表示の値又は値の範囲からさらに大きく逸脱することを要求する場合もあるが、控え目に述べても、「約」(“about”又は“approximately”)は、そのように修飾される値の少なくとも±15%、一部の実施形態においては、該値の少なくともプラス又はマイナス5%であると解釈すべきである。
【0050】
[0050]本明細書で用いる本発明の要素を修飾するために用いる際の「場合による」又は「場合により」とは、該要素が存在してもしなくてもよく、いずれの場合も本発明の範囲内に属することを意味する。
【0051】
[0051]本明細書で用いる「生分解性」とは、ポリマー鎖におけるモノマー由来部分同士を結合する結合がin vivoにおいて開裂し、該ポリマーがますます小さな断片に分解され、生体が該断片を吸収及び代謝、又は分泌できるほど十分に小さな断片となるまで分解されることを指す。本発明の一部の実施形態に関する生分解の主要機構は、酵素が触媒するエステル基の加水分解である。
【0052】
[0052]本明細書で用いる「生体適合性」とは、生組織に対して毒性でないか又は少なくとも毒性が最小限度であり、生組織を傷害しないか又は少なくとも傷害が最小限度及び可逆性であり、並びに/或いは生組織において免疫反応を引き起こさないか又は少なくとも免疫反応が最小限度及び/若しくはコントロール可能である、すべての無変化ポリマー及びその生分解産物を指す。
【0053】
[0053]本明細書で用いる「血管系」とは、全身に血液を運ぶ、動脈、静脈及び毛細血管を指す。これは、心血管系、頸動脈系、末梢血管系、及び以上の各血管系と心臓との間の循環系を完結させる静脈を含むが、以上に限定されない。心血管系は、心臓と体内の全部分との間の全般的な循環系である。頸動脈系は、血液を脳に供給する。末梢血管系は、腕、脚、腎臓、及び肝臓などの(以上に限定されない)末梢器官へ及び該器官から血液を運ぶ。
【0054】
[0054]本明細書で用いる「血管疾患」とは、冠動脈疾患若しくは障害、頸動脈疾患若しくは障害、及び/又は当技術分野で知られている若しくは知られつつある末梢動脈疾患若しくは障害を指す。
【0055】
[0055]特に、現時点において、本発明の埋め込み式医療デバイスは、アテローム性動脈硬化、再狭窄、及び不安定プラークの治療又は予防に用いてよい。
【0056】
[0056]アテローム性動脈硬化とは、動脈内壁における脂肪性物質、コレステロール、細胞老廃物などの堆積から生じる線維性プラークの形成が、該動脈内腔の狭窄/閉塞をもたらす動脈内膜の疾患である。脳、心臓、腎臓及び他の重要器官の動脈ほか、腕や脚の動脈が罹患する場合もある。脳動脈、特に頸動脈のアテローム性動脈硬化は、脳卒中を生じる場合があり、心臓動脈のアテローム性動脈硬化は、心筋梗塞、すなわち心臓発作を生じる場合がある。
【0057】
[0057]再狭窄とは、かつて血管形成術を実施したのと同じ部位における動脈の再度の狭窄又は閉塞(すなわち、狭窄の再発)を指す。該疾患は、通常、平滑筋細胞増殖の再発を伴う血栓症及び血管傷害に起因する。血管形成術がもたらす血管の開存を維持するための埋め込み式ステントがなかった時代は、手術を受けて3〜6カ月以内に、患者の40〜50%が再狭窄を示した。ステント以前における血管形成術後の再狭窄は、手術部位における新生内膜過形成におもに起因した。ステントは再狭窄の発現を大幅に低下させたが、ステント自体も、埋め込み部位における異常な組織成長に起因する再狭窄を生じやすい。この形式の再狭窄も、ステント設置の3〜6カ月後に生じる傾向があるが、抗凝血剤の使用は効果がない。むしろ、ステント設置部位における局所的送達により再狭窄の発症を低下させる目的で、シロリムス、並びに、より最近ではエベロリムス及び17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシンなどの薬剤が使用又は示唆されている。
【0058】
[0058]不安定プラークとは、脂質核を動脈内腔から隔てる極薄の隔壁を有するアテローム性プラークを指す。隔壁が薄いために、該プラークは破裂しやすく又は破裂に弱くなる。該プラークが破裂すると、組織因子、脂質及びコレステロール結晶が血流に曝露され、該内腔の狭窄又は完全な閉塞を生じうる凝血塊を形成させる。該残屑は、動脈内腔に放出され、血流により血管系の他の部分に運ばれ、残屑粒子の大きさにより、毛細血管などの小血管に捕捉され、重篤な結果に至る可能性のある閉塞を生じる。さらに、アテロームの破裂は、動脈内腔からアテローム組織内への出血を生じ、該内腔を狭窄又は完全に閉塞しうる程度にまで該アテロームのサイズを増大させる場合がある。加えて、アテローム破裂部位における凝血塊の形成自体が、該内腔の狭窄又は完全な閉塞を生じることもある。
【0059】
[0059]本明細書で用いる血管疾患への罹患が「既知である又は疑われる」とは、患者が該疾患に罹患していることの確実さの程度を指す。「既知である」疾患に罹患するとは、診断のための検査が、患者の血管系の妥当で十分に限定された領域に位置する特定の血管疾患を、妥当な確実さで明らかにしたことを意味する。このような血管疾患の非限定的な例は、再狭窄であり、患者の血管系における該疾患の診断及び場所は当技術分野において十分に確立されている。「疑われる」血管疾患の非限定的な例とは、患者の血管系における診断及び/又は場所の特定が困難な不安定プラークである。血管系の罹患領域における非罹患領域と比較した温度差といった指標が、診断のための有用性ゆえに検討されているが、現時点では、不安定プラークの診断及び場所特定化の十分に確実な方法は知られていない。ただし、不安定プラークが、冠動脈口から遠位側に向けて測定するときの、主冠動脈の最初の三分の一の部分において、もっとも頻繁に生じる傾向があることは、比較的十分に確立されている。
【0060】
[0060]本明細書で用いる「埋め込み式医療デバイス」とは、外科的又は内科的に患者の体内に、或いは医療的介入により自然の開口部に全体的又は部分的に導入し、手術後該箇所に留置することを目的とするあらゆる種類の器具を指す。埋め込み期間は、基本的に永久であってよい、すなわち、患者の残りの生涯にわたって、該デバイスが生分解するまで、又は該デバイスを物理的に除去するまで、適所に留置することを目的としてよい。埋め込み式医療デバイスの例は、埋め込み式心臓ペースメーカー及び心除細動器;前記デバイスのリード及び電極;神経刺激機、膀胱刺激機、括約筋刺激機及び横隔膜刺激機などの埋め込み式器官刺激機、蝸牛インプラント;プロテーゼ、血管グラフト、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、ステントグラフト、グラフト、人工心臓弁、及び脳脊髄液シャントを含むが、以上に限定されない。当然ながら、治療用薬剤の局所的な送達のみを目的として特別に設計される埋め込み式医療デバイスが、本発明の適用範囲内にある。該埋め込み式医療デバイスは、治療用薬剤を含む付着層で被覆することのできる任意の生体適合性材料から構成してよい。
【0061】
[0061]事実上任意の材料、すなわち現時点で埋め込み式医療デバイスの製造に有用であることが知られている材料及び将来において有用であることが判明しうる材料から製造される埋め込み式医療デバイスを、本発明のコーティングとともに用いてよい。例えば、本発明とともに有用な埋め込み式医療デバイスは、コバルト−クロム合金(ELGILOY、L−605)、コバルト−ニッケル合金(MP−35N)、316Lステンレス鋼、高窒素ステンレス鋼、例えば、BIODUR 108、ニッケル−チタン合金(NITINOL)、タンタル、白金、白金−イリジウム合金、金、及び以上の組合せを含むが以上に限定されない1つ又は複数の生体適合性金属又はその合金から製造してよいが、これに限定されない。
【0062】
[0062]或いは、埋め込み式医療デバイスは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレア、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリビニルハライド、ポリビニリデンハライド、ポリビニルエーテル、ポリビニル芳香族、ポリビニルエステル、ポリアクリロニトリル、アルキド樹脂、ポリシロキサン、及びエポキシ樹脂を含むが以上に限定されない1つ又は複数の生体適合性で耐久性のポリマーから製造してよい。
【0063】
[0063]現時点で好ましい埋め込み式医療デバイスは、ステントである。ステントとは、一般に、患者体内において組織を適所に保持するために用いる任意のデバイスを指す。ステントの一部は、腫瘍(例えば、胆管、食道、気道/気管支等における)、良性の膵臓疾患、冠動脈疾患、頸動脈疾患、並びにアテローム性動脈硬化、再狭窄、及び不安定プラークなどの末梢動脈疾患を含むが以上に限定されない疾患又は障害に起因して血管が狭窄又は閉塞する場合に、患者の体内で血管の開存を保つために用いるステントである。ステントは、不安定プラーク近傍の血管壁を強化し、プラークの破裂に対する保護壁として作用する目的で用いることができる。ステントは、神経動脈、頸動脈、冠動脈、肺動脈、大動脈、腎動脈、胆動脈、腸骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈のほか、血管系の他の領域にも用いることができるが、以上に限定されない。ステントは、血栓症、再狭窄、出血、血管の切開又は穿孔、血管動脈瘤、慢性完全閉塞、跛行、吻合部における増殖、胆管閉塞、及び尿管閉塞などの(以上に限定されない)疾患又は障害の治療又は予防に用いることができる。
【0064】
[0064]血管ステントは、ポリマーのチューブ形状への押し出しを含む多数のよく知られた方法のいずれによって成形してもよい。次いで、該チューブに一定の可撓性及び拡張性を与える複数の背柱又は支柱を設定するため、あらかじめ選択した孔隙のパターンをチューブに成形することができる。或いは、薬剤を添加したポリマーを、例えばステンレス鋼製の、ステントの選択した表面に塗布してもよい。例えば、溶融したポリマー中にステントを浸漬、又は、液体若しくは溶解形態のポリマーをステントに噴霧することができる。或いは、ポリマーをチューブ形状に押し出した後、ステンレス鋼製、又は他の好適な金属材料製若しくは合金製のチューブとともに共延伸成形してもよい。2本のポリマー製チューブを、一本は金属製チューブの外側に設置し、もう一本は金属製チューブの内側に設置して、金属製チューブとともに共延伸成形することにより、多層壁面を有するチューブを成形する。次いで、チューブ壁面に穿孔し、あらかじめ選択したパターンの背柱又は支柱を設定することにより、チューブに望ましい可撓性及び拡張性を与え、ステントを作製する。
【0065】
[0065]上述の使用以外に、患者体内の特定の治療部位に治療用薬剤を局所的に送達するために、ステントを配備してもよい。実際、治療用薬剤の送達がステントの唯一の目的であってもよく、又は、ステントには上述した別の目的をおもに意図しながら、薬剤送達が補助的有益性を提供するのでもよい。
【0066】
[0066]開存維持のために用いるステントは、通常、圧縮した状態で標的部位に送達された後、挿入先の血管に合わせて拡張する。標的位置に置かれたら、ステントは自己拡張型又はバルーン拡張型のいずれであってもよい。いずれにせよ、ステントの拡張ゆえに、ステント上のコーティングは、可撓性であり伸長可能でなければならない。本発明のポリマー製コーティングは、これらの特性を示す。
【0067】
[0067]本明細書で用いる「貯留体」又は「貯留層」とは、埋め込み式医療デバイス表面に単層で配置され、その三次元的構造の内部に、該デバイスを患者体内の望ましい場所に設置するとマトリックスから周囲環境へと放出される、治療用薬剤を分散させているポリマーを指す。貯留体は、本明細書で被覆層について示したすべての特性を有するテープ又はテープ類の形状をしたポリマー単独層を指す場合もある。該テープは、通常、バルク浸食性ポリマーから構成されるが、表面浸食性ポリマーの生分解性特性をも示す。
【0068】
[0068]本明細書で用いる「コーティング」とは、埋め込み式医療デバイス表面に配置される単層又は複層の1つ又は複数の物質を指す。したがって、貯留層と埋め込み式医療デバイス表面との間のデバイス表面に直接塗布された下塗層、及び貯留層の上に配置されたトップコートと同様、貯留層のみがコーティングを構成してもよい。以上のいずれの層の組合せも、同様にコーティングを構成する。コーティングのいずれの意味が、文脈上、本明細書で記す本発明のいずれか特定の態様にあることを意図するかは、当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0069】
[0069]本明細書で用いる、埋め込み式医療デバイスの「表面」とは、外表面すなわち外界と直接に接触する表面、及び/又は該デバイスが内腔を備える場合は内表面、及び/又は外表面と内腔とを接続する該デバイスのエッジを指す。特に断らない限り、「表面」とは、以上のすべて又は任意の組合せを指す。
【0070】
[0070]本明細書で用いる、表面の上に層を「配置する」とは、埋め込み式医療デバイス表面又は既に配置した層が形成する表面の上に、ポリマー層を形成することを意味する。該層は、現時点で噴霧、浸漬、電着、ロールコーティング、刷毛塗り、直接の液滴塗布、及び鋳造を含むが以上に限定されない、現時点で知られている又は将来において知られうるいずれの手段によっても形成することができる。
【0071】
[0071]本明細書で用いる、デバイス表面の「上に」又は既に配置した層が形成する表面の上に層を配置するとは、指示された表面と外界との間に該層を塗布することを指すが、指示された表面と直接に接触する必要はない。すなわち、表面の「上に」配置する層と該表面自体との間には、スペーシング層、タイミング層などの(以上に限定されない)、1つ又は複数の付加層があってよい。
【0072】
[0072]上記と対照的に、表面「上に塗布する」及びその変化形は、指示された表面上に直接及び接してポリマー層を形成することを指す。
【0073】
[0073]本明細書で用いる、患者血管系内の部位へデバイスを「配備する」とは、当技術分野でよく知られる任意の数の技術により該デバイスを送達することを指す。例えば、このような技術は、デバイスをカテーテルの遠位端に取り付けた後、治療対象が心血管動脈である場合は、大腿動脈などの(以上に限定されない)遠隔の導入部位において患者の血管系に導入するステップを含んでよいが、これに限定されない。罹患していることが知られる又は疑われる部位に到達するまで、該血管系を介してカテーテルを誘導する。該部位において、埋め込み式医療デバイスをカテーテルの遠位端からリリースした後、該動脈内に埋め込まれたデバイスを残して、カテーテルを引き抜く。
【0074】
[0074]本明細書で用いる「表面積対体積」比とは、mm単位のポリマー層表面積をmm単位の該層体積、すなわち、該層の厚さを乗じた該表面積で除する除法の結果を指す。本明細書で用いる「表面積」とは、体内又は外界に曝露される面積を意味する。測定は、コーティング工程において用いられたであろうすべての溶媒を該層から実質的に除去した後でのみ行う。得られる数値は、mm/mm又は1/mm又はmm−1の単位を有する。
【0075】
[0075]本明細書で用いる「薬剤/ポリマーのwt/wt比」とは、「治療用薬剤/ポリマーのwt/wt比」と同義で互換的に用い、埋め込み式医療デバイス上に被覆されたポリマー層中の治療用物質総重量を、該層中のポリマー総重量(各重量を同一の測定単位で表す)で除した結果を指す。
【0076】
[0076]本明細書で用いるポリマー関連の分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを用いて決定される、数平均分子量を指す。
【0077】
[0077]本明細書で用いる「下塗層」とは、後続して塗布する層の接着を向上させるために、埋め込み式医療デバイスの表面に直接塗布するポリマー層を指す。有用な下塗層は、ポリエステラミド(PEA)、Parylene C(登録商標)、ポリアクリレート、及びポリメタクリレート(例えば、ポリ(ブチルメタクリレート))などのポリマーを含むが以上に限定されない。
【0078】
[0078]本明細書で用いる「治療用薬剤」とは、患者に投与すると、患者の健康及び福利に有益な影響を及ぼす物質を指す。治療用薬剤は、小分子薬剤、高分子薬剤、放射性同位元素、ペプチド、抗体、タンパク質、酵素、オリゴヌクレオチド、DNA、RNA、リポソーム、以上のいずれかを内部に封入したミクロ粒子又はナノ粒子、或いは以上の薬剤のいずれかを含みうる空のナノ粒子であってもよいが、以上に限定されない。或いは、治療用薬剤は、将来において使用可能となりうるナノ粒子状物質であってよい。
【0079】
[0079]本発明のポリマーとともに用いてよい治療用薬剤の非限定的な具体例は、以下を含むが、これらに限定されない。
アクチノマイシンD又はその誘導体若しくは同族体などの抗増殖剤。アクチノマイシンDは、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI、アクチノマイシンX、及びアクチノマイシンCとしても知られる。
パクリタキセル、ドセタキセル、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、ドキソルビシン塩酸塩、マイトマイシンなどの(以上に限定されない)抗腫瘍剤及び/又は抗分裂剤;
ヘパリンナトリウム、低分子量へパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン、プロスタサイクリンデキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換えヒルジン、及びトロンビンなどの(以上に限定されない)抗血小板剤、抗凝血剤、抗フィブリン剤、及び抗トロンビン剤;
アンギオペプチンなどの(以上に限定されない)細胞増殖抑制剤又は抗増殖剤;
カプトプリル、シラザプリル、又はリシノプリルなどのアンギオテンシン転換酵素阻害剤;ニフェジピンなどのカルシウムチャネル遮断剤;コルヒチン、線維芽細胞成長因子(FGF)アンタゴニスト;魚油(ω−3脂肪酸);ヒスタミンアンタゴニスト;ロバスタチン、血小板由来成長因子(PDGF)受容体特異的なモノクローナル抗体などの(以上に限定されない)モノクローナル抗体;ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニンブロッカー、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン(PDGFアンタゴニスト)、及び酸化窒素;ペミロラストカリウムなどの(以上に限定されない)抗アレルギー剤;アルファ−インターフェロン、遺伝子組換え上皮細胞、タクロリムス、クロベタゾール、デキサメタゾン及びその誘導体、並びに40−O−(2−ヒドロキシエチル)ラパマイシン(EVEROLIMUS[登録商標])、40−O−(3−ヒドロキシプロピル)ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾリルラパマイシン及び17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン及びバイオリムスなどのラパマイシン、その誘導体及び同族体、などの(以上に限定されない)他の治療用薬剤。
【0080】
[0080]本明細書で用いる「低分子量へパリン」とは、非分画へパリン断片を指す。非分画へパリンが、分子量約3,000〜約30,000DAの範囲の高度に硫酸化した多糖鎖の不均一混合物であるのに対し、低分子量へパリンは、約4,000〜約6,000DAの間の分子量を有する。「低分子量へパリン」という用語及び該用語が指す分子は、当業者によく知られている。
【0081】
[0081]本明細書で用いる「ヘパリノイド」とは、へパリンと構造的に類似する、天然及び合成の高度に硫酸化された多糖類を指す。ヘパリノイドの例は、ダナパロイドナトリウム、フォンダパリヌクス、及びイドラパリナックスであるが、以上に限定されない。低分子量へパリンと同様に、ヘパリノイドは、当業者によく知られている。
【0082】
[0082]治療用薬剤のほかに、本発明の埋め込み式医療デバイス上に配置する1つ又は複数の層は、その内部に1つ又は複数の生体に有益な薬剤を分散させてよい。治療用薬剤が、その治療的又は予防的効果を開始するために、コーティング層から外界へ放出されなければならないのに対し、生体に有益な薬剤は、実質的にコーティング内又はコーティング上に滞留する間に効果を及ぼすという点で、生体に有益な薬剤は治療用薬剤と異なる。「実質的に」とは、生体に有益な薬剤の一部がコーティングから漏出しうる場合でも、該剤が有益な効果を及ぼすためにコーティングからの放出が不要(必ずしも有害ではないにせよ)であることを意味する。生体に有益な薬剤は、一般に、非汚染性、血液適合性、能動的に非血栓原性、及び/又は抗炎症性であることにより埋め込み式医療デバイスの生体適合性を向上させる、無毒性、非抗原性、非免疫原性の物質である。
【0083】
[0083]生体に有益な物質の代表例は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)及びポリ(プロピレングリコール)などのポリエーテル;ポリ(エチレンオキシド−co−乳酸)などのコポリ(エーテル−エステル);ポリ(エチレンオキシド)及びポリ(プロピレンオキシド)などのポリアルキレンオキシド;ポリホスファゼン、ホスホリルコリン、コリン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)アクリレート、2−メタクリロイロキシエチルホスホリルコリン(MPC)、及びn−ビニルピロリドン(VP)などのヒドロキシル基含有モノマーのポリマー及びコポリマー;メタクリル酸、アクリル酸、アルコキシメタクリレート、アルコキシアクリレート、及び3−トリメチルシリルプロピルメタクリレートなどのカルボン酸含有モノマーのポリマー及びコポリマー;ポリスチレン−PEG、ポリイソブチレン−PEG、ポリカプロラクトン−PEG(PCL−PEG)、PLA−PEG、ポリ(メチルメタクリレート)−PEG(PMMA−PEG)、ポリジメチルシロキサン−co−PEG(PDMS−PEG)、ポリ(フッ化ビニリデン)−PEG(PVDF−PEG)、PLURONIC(商標)界面活性剤(ポリプロピレンオキシド−co−ポリエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ヒドロキシ官能化ポリ(ビニルピロリドン);フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、デキストラン、デキストリン、ヒアルロン酸、へパリン、グリコサミノグリカン、多糖類、エラスチン、キトサン、アルギネート、シリコーン、PolyActive(商標)などの生体分子、及び以上の組合せを含むが以上に限定されない。PolyActive(商標)とは、ポリ(エチレングリコール)とポリ(ブチレンテレフタレート)とのブロックコポリマーを指す。
【0084】
[0084]本明細書で用いる「治療の」という用語は、疾患若しくは障害、及び/又は患者が該疾患又は障害に罹患したときそれに付随する症状を、治癒又は少なくとも緩和する方法を指す。
【0085】
[0085]本明細書で用いる「予防の」という用語は、第一に患者が疾患又は障害に罹患しないようにする、或いは疾患又は障害の治療後に再罹患しないようにするための方法を指す。
【0086】
[0086]本明細書で用いる「治療に有効な量」とは、既に特定の疾患又は障害の症状を示している患者において望ましい生物学的又は医薬的応答を引き出す治療用薬剤の量を指す。該応答は、疾患又は障害の進行を遅延させる、疾患又は障害の症状を緩和する、或いは疾患又は障害を取り除くことであってよいが、以上に限定されない。
【0087】
[0087]本明細書で用いる「予防に有効な量」とは、第一に、疾患又は障害の発症を防止する又は遅延させる量を指す。また該量は、治療量より少量であってよく、疾患又は障害の再発を防止する又は遅延させる目的で、治療に有効な量での一連の治療(a course or treatment)の完了後に患者に投与する量を指す。
【0088】
[0088]本発明の一態様は、100mm−1〜1000mm−1の範囲にある、きわめて高い表面積対体積比を用いることである。該比が大きいことの効果は、ポリマー製コーティングの表面浸食が生じる面積を、水、酵素、酸などの分解誘発物質のコーティングのバルクへの浸透率を超える、好ましくは大きく超える程度まで増大させることである。その結果は、通常はバルク浸食性ポリマーとして特徴づけられるポリマーであるにもかかわらず、表面浸食性ポリマーの生分解特性を示すポリマー層である。こうしたポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、及びそれらのコポリマーを含むが以上に限定されない。
【0089】
[0089]ポリラクチド及びポリグリコリドに関して現時点で好ましいポリマーは、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(メソ−ラクチド)及び以上のいずれかとグリコリドとのコポリマーを含む。メソ−ラクチドとは、1分子のL−乳酸と1分子のD−乳酸とから調製される環状ラクチドを指す。ポリ(D,L−ラクチド)及びポリ(メソ−ラクチド)の化学組成は同一であるが、ポリ(メソ−ラクチド)がL−乳酸又はD−乳酸に由来する連続二単位のみを有するのに対し、ポリ(D,L−ラクチド)は、2、3、4及びそれ以上の統計学的分布の、連続する光学異性的に同一の、すなわちL又はDの乳酸由来単位を有することから、形態が異なる。
【0090】
[0090]表面積対体積比を大きくすること以外に、平均分子量の比較的小さなポリマーを用いることが現時点では好ましい。約20kDA〜約600kDAの数平均分子量、好ましくは約40kDA〜約200kDaの数平均分子量、及び現時点でもっとも好ましくは約50kDA〜約100kDAの数平均分子量を用いてよい。特定の理論に固執せずとも、低分子量ポリマーの使用が、大量放出までの遅延を短縮すると考えられる。
【0091】
[0091]本発明の貯留層において、治療用物質対ポリマー比を大きくすることも望ましい。約1:5〜約5:1の、薬剤対ポリマーのwt/wt比を用いてよい。該範囲は約1:2〜2:1であることが好ましく、約1:1の比を用いうることが現時点でもっとも好ましい。以上の範囲は、上記の表面積対体積比及びポリマー分子量とともに、広範囲にわたる放出速度、したがって広範囲にわたる放出プロファイルの達成を可能にし、特に疎水性の治療用薬剤に関して、当技術分野において該バルク浸食性ポリマーについて通常記載される範囲よりも大幅に広い。
【0092】
[0092]現時点では、ポリマーが実質的にアモルファスであることも好ましい。ポリマーが二相である場合、すなわち、ポリマーがアモルファス領域以外に実質的な結晶をも含む場合、表面浸食が大型結晶粒子の放出を生じる可能性があり、これら粒子は毛細血管など直径のより小さな血管を含む血管系領域に移動することがあり、移動先で該粒子が滞留し重篤な副作用を生じることがある。「実質的にアモルファス」とは、10%未満結晶性、好ましくは5%未満結晶性、及び現時点でもっとも好ましくは1%未満結晶性であるポリマーを指す。本明細書で用いる実質的にアモルファスのポリマーは、さらに、浸食の際に大型の結晶粒子を放出しない特性を有する。
【0093】
[0093]上記のパラメータを用いると、通常観察されるのとは大幅に異なる分解特性を有するラクチドポリマー層が得られる。例えば、ポリ(L−ラクチド)に基づく系の吸収は12〜24カ月間で約50%、ポリ(D,L−ラクチド)に基づく系の吸収は6〜9カ月間で約50%であり、構築物の形状に依存すると、文献は報告している。一方、本発明のポリ(D,L−ラクチド)に基づく系は、180日間で、既報とは大幅に異なる60〜70%の吸収を示した。さらに、本発明の系におけるポリマー質量喪失はほぼ直線的であり、表面浸食性ポリマーについて予測されることである。さらにまた、断片化するポリマーの平均分子量が、バルク浸食性ポリマーにおける質量喪失について文献で示唆される水準にまで低下する以前に、該質量喪失は生じる。したがって、本発明の該態様を用いることにより、ポリラクチド、ポリグリコリド及びそれらのコポリマーなどの(以上に限定されない)、通常はバルク浸食性のポリマーが、埋め込み式医療デバイスの貯留層として使用可能であり、表面浸食特性そのままの、又は該特性をきわめてよく近似する生分解特性を示すことが明らかである。
【0094】
実施例1
[0094]14mm、6クレストのステンレス鋼製S−ステントに、2ミクロンのPARYLENE C(登録商標)を被覆する。アセトン中9%w/wの全固溶体(total solids solution)として、エベロリムスとポリ(D,L−ラクチド)の1:1混合物400μgを該被覆上に塗布する。シリンジを用いてコーティングを行うと、内腔面以外の全表面及び側壁面領域の約半分に及ぶコーティングが得られる。該ステントを、約30℃で4時間、−28インチ水銀柱の真空オーブン中に入れてアセトンを除去する。その結果は、平均コーティング厚7ミクロン、及び表面積対体積比140mm−1を有するステントである。
【0095】
実施例2
[0095]アセトン中20%w/wの全固溶体(total solids solution)として、ラパマイシンとポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)の1:2混合物の溶液コーティングにより、20ミクロン厚のフィルムを可撓性の基質上に作製する。60℃で1時間のベーキングによりアセトンを除去した後、被覆した基質を2mm幅の切片に切断し、該ポリマー切片を基質から除去する。得られる切片は、約100mm−1の表面積対体積比を有する。該切片を、透析に用いる血管グラフト吻合部に巻き付け、吻合部における増殖を抑制する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み式医療デバイスであって、
前記医療デバイスの表面に約100mm−1〜約1000mm−1の表面積対体積比で配置された、生体適合性の生分解性ポリマーを含むポリマー層と、
薬剤/ポリマーの重量/重量比(wt/wt比)が約1:5〜約5:1で前記ポリマー層内に分散された治療用薬剤と、
を備える、埋め込み式医療デバイス。
【請求項2】
前記表面が外表面、及び、場合によっては、エッジ面の全部又は一部である、請求項1のデバイス。
【請求項3】
前記表面が内腔面、及び、場合によっては、エッジ面の全部又は一部である、請求項1のデバイス。
【請求項4】
前記ポリマー層が約100mm−1〜約500mm−1の表面積対体積比を有する、請求項1の埋め込み式医療デバイス。
【請求項5】
前記ポリマー層が約100mm−1〜約250mm−1の表面積対体積比を有する、請求項1の埋め込み式医療デバイス。
【請求項6】
薬剤/ポリマーのwt/wt比が約1:2〜約2:1である、請求項1の埋め込み式医療デバイス。
【請求項7】
薬剤/ポリマーのwt/wt比が約1:1である、請求項1の埋め込み式医療デバイス。
【請求項8】
前記生体適合性の生分解性ポリマーが、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(メソ−ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(メソ−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(エステルアミド)、及びポリ(エチレングリコール−co−ブチレンテレフタレート)(POLYACTIVE[登録商標])からなる群から選択される、請求項1の埋め込み式医療デバイス。
【請求項9】
前記生体適合性の生分解性ポリマーが、約20〜約600キロダルトンの分子量を有する、請求項1の埋め込み式医療デバイス。
【請求項10】
前記生体適合性の生分解性ポリマーが、約40〜約200キロダルトンの分子量を有する、請求項1の埋め込み式医療デバイス。
【請求項11】
前記生体適合性の生分解性ポリマーが、約50〜約100キロダルトンの分子量を有する、請求項1の埋め込み式医療デバイス。
【請求項12】
前記生体適合性の生分解性ポリマーが、約20〜約600キロダルトンの分子量を有する、請求項8の埋め込み式医療デバイス。
【請求項13】
前記生体適合性の生分解性ポリマーが、約40〜約200キロダルトンの分子量を有する、請求項8の埋め込み式医療デバイス。
【請求項14】
前記生体適合性の生分解性ポリマーが、約50〜約100キロダルトンの分子量を有する、請求項8の埋め込み式医療デバイス。
【請求項15】
前記生体適合性の生分解性ポリマーが、実質的にアモルファスである、請求項1の埋め込み式医療デバイス。
【請求項16】
前記生体適合性の生分解性ポリマーが、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(メソ−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−co−グリコリド)、及びポリ(メソ−ラクチド−co−グリコリド)からなる群から選択される、請求項15の埋め込み式医療デバイス。
【請求項17】
前記治療用薬剤が、アクチノマイシンD、パクリタキセル、ドセタキセル、メトトレキサート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、ドキソルビシン塩酸塩、マイトマイシン、ヘパリンナトリウム、低分子量へパリン、ヘパリノイド、疎水性対イオンを有するヘパリン誘導体、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体アンタゴニスト抗体、組換えヒルジン、及びトロンビン、アンギオペプチン、カプトプリル、シラザプリル、リシノプリル、ニフェジピン、コルヒチン、線維芽細胞成長因子(FGF)アンタゴニスト、魚油(u−3脂肪酸)、ヒスタミンアンタゴニスト、ロバスタチン、モノクローナル抗体、ニトロプルシド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、プロスタグランジン阻害剤、スラミン、セロトニンブロッカー、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害剤、トリアゾロピリミジン、酸化窒素、ペミロラストカリウム、アルファ−インターフェロン、遺伝子組換え上皮細胞、ラパマイシン、エベロリムス、デキサメタゾン、及び17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシンからなる群から選択される、請求項1の埋め込み式医療デバイス。
【請求項18】
前記治療用薬剤が、抗増殖剤である、請求項1の埋め込み式医療デバイス。
【請求項19】
前記治療用薬剤が、エベロリムスである、請求項18の埋め込み式医療デバイス。
【請求項20】
前記治療用薬剤が、17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシンである、請求項18の埋め込み式医療デバイス。
【請求項21】
表面とポリマー層との間のデバイス表面に塗布された下塗層をさらに備える、請求項1の埋め込み式医療デバイス。
【請求項22】
前記下塗層が、ポリ(モノクロロパラキシリレン)(PARYLENE C[登録商標])、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(メソ−ラクチド)、ポリ(メソ−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、及びポリ(エチレングリコール−co−ブチレンテレフタレート)(POLYACTIVE[登録商標])からなる群から選択したポリマーを含む、請求項21の埋め込み式医療デバイス。
【請求項23】
前記下塗層が、ポリ(n−ブチルメタクリレート)及びPARYLENE C(登録商標)からなる群から選択したポリマーを含む、請求項22の埋め込み式医療デバイス。
【請求項24】
表面に表面積対体積比が約100mm−1〜約1000mm−1となるように配置された生体適合性の生分解性ポリマー層を備え、前記ポリマー層がさらに約1:5〜約5:1の薬剤/ポリマーの重量/重量比(wt/wt比)で治療用薬剤を含む埋め込み式医療デバイスを、治療を必要とする患者の血管系内の部位へ配備するステップと、
前記埋め込み式医療デバイスを前記部位でリリースするステップと
を含む血管疾患の治療法。
【請求項25】
前記配備するステップが、カテーテルの使用を含む、請求項24の方法。
【請求項26】
薬剤/ポリマーのwt/wt比が、約1:2〜約2:1である、請求項24の方法。
【請求項27】
薬剤/ポリマーのwt/wt比が、約1:1である、請求項24の方法。
【請求項28】
生体適合性の生分解性ポリマーが、約20kDa〜約600kDaの数平均分子量を有する、請求項24の方法。
【請求項29】
生体適合性の生分解性ポリマーが、約40kDa〜約200kDaの数平均分子量を有する、請求項24の方法。
【請求項30】
前記数平均分子量が、約50kDa〜約100kDaである、請求項24の方法。
【請求項31】
前記生体適合性の生分解性ポリマーが、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−D,L−ラクチド)、ポリ(メソ−ラクチド)、ポリグリコリド、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(メソ−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、及びポリ(エチレングリコール−co−ブチレンテレフタレート)(POLYACTIVE[登録商標])、及びポリ(エステルアミド)からなる群から選択される、請求項24の方法。
【請求項32】
前記生体適合性の生分解性ポリマーが、実質的にアモルファスである、請求項24の方法。
【請求項33】
前記生体適合性の生分解性ポリマーが、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(メソ−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,Lラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D−ラクチド−co−グリコリド)、及びポリ(メソ−ラクチド−co−グリコリド)からなる群から選択される、請求項32の方法。
【請求項34】
前記血管疾患が、再狭窄である、請求項24の方法。
【請求項35】
前記血管疾患が、不安定プラークである、請求項24の方法。
【請求項36】
前記治療用薬剤が、エベロリムス及び17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシンからなる群から選択される、請求項34の方法。
【請求項37】
前記治療用薬剤が、エベロリムス及び17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシンからなる群から選択される、請求項35の方法。

【公表番号】特表2009−525809(P2009−525809A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−554255(P2008−554255)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/002126
【国際公開番号】WO2007/094940
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】