説明

表面測定装置および方法

例えば、バルブ・シートなどの表面構造の寸法と位置を決定する方法を提供する。構造の表面は、例えば、接触プローブを持つ螺旋状の走査パスを用いて測定され、走査から取得された複数のデータ・ポイントは、デジタル化されたイメージを作り出すのに使用される。 デジタル化されたイメージは、表面構造の公称イメージ(例えば、CADデータ)に合わせられる。デジタル化されたイメージの公称イメージからのずれは、表面構造の寸法、位置、および形状ずれのうちの少なくとも一つを決定するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具体的には、表面のデジタル化されたイメージを形成して表面構造を測定する装置および方法に関する。また、本発明は、座標測定機(CMM)、工作機械、関節式連結アーム(articulating arm)などのような座標位置決め機械に設置された2つ以上の軸線に関して表面検知装置を正しい方向に置くことができる関節式連結プローブ・ヘッドを用いた適応走査(adapting scanning)の方法に関する。
【0002】
加工物が製造された後に、機械の作動範囲内で3つの直交する方向X、Y、Zに駆動され得る中空軸を有する座標測定機(CMM)においてそれらを検査することは、一般的である。中空軸は、それが、例えば測定プローブのスタイラスと表面の間の接触によって、検査される加工物の表面を検出する時、信号を生み出す測定プローブを運ぶことができる。
【0003】
一般的に、CMMは、所望の寸法の加工物の完全な検査を実行するために、加工物の様々な位置における座標データの一連の測定値を取得するようにプログラムされたコンピュータを有する。そして、加工物が、容認できる品質をもっているか、あるいは、それが拒絶されるべきであるかについて決定がなされ得る。
【0004】
アナログ(すなわち、走査)接触プローブは、一般に、可撓性のスタイラスを備えるハウジングを含む。スタイラスは表面接触先端を持ち、その静止位置からの撓みがトランスデューサにより測定される。CMM位置とスタイラス撓みとの組み合わせは、スタイラス先端の位置(および、それゆえ、それが接触している表面のポイントの座標)を決定するために使用される。そのようなアナログ・プローブは、特許文献1に記述されている。
【0005】
それは、一般的に、2以上の軸線に関して、測定プローブの方向が変えられることを可能にする関節式連結プローブ・ヘッドに測定プローブを設けることは公知である。そのような関節式連結プローブ・ヘッドは、特許文献2に記述されている。関節式連結プローブは、第1および第2の直交する軸線回りの回転を可能にする。測定プローブが関節式連結プローブ・ヘッドの回転軸線の回りに連続的に位置決めされ、その位置がコンピュータにフィードバックされることを可能にするために、モーターおよびトランスデューサが関節式連結プローブ・ヘッドに設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許第1551218号明細書
【特許文献2】欧州特許第0402440号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術を用いて測定するのが難しいと証明された構造は、バルブ・シートである。バルブ・シートは内燃機関において使用されるため、自動車産業にとって特に重要である。適合不良のバルブは、バルブ・ディスクとバルブ・シートの間のシール不良のせい、あるいは、バルブが十分に開くことを阻害するバルブ・シートの位置により、エンジンの効率に影響する。適合不良を生じさせるバルブ・シートの加工には4つの主要なファクターがある。バルブが適切に開閉することを妨げるバルブ本体のバルブ・シートの高さ;滑らかな円形で無い場合に適切な適合を阻害し、漏れを生じさせる可能性のあるバルブ・シートの形状;適合に影響を与える、バルブ本体のバルブ・シートの横方向の位置の誤差;そして、バルブ・ディスクとバルブ・シートの間でのみ線接触を起こす可能性のあるバルブ本体のバルブ・シートの角度誤差である。
【0008】
バルブ・シートは、従来技術によって測定するには、難しく、時間を無駄に消費する。一般的には、バルブは、バルブ・シートの頂部から底部へ向かう4本のラインに沿った測定値を取得することにより測定され、各ラインは、バルブ・シートの円周に関して90度間隔で配置される。これらの測定値は、バルブ・シートのプロフィールが決定されることを可能にする。バルブ・シートの円周は、特定の高さで円形測定パスに追従することによって測定され、形状及びガイドとの同心性が決定される。一般に、これらの測定値が、CMMの中空軸に設置されたアナログ接触プローブによって取得され、測定が遅いという不利益を有する。測定値は、バルブ・シートの直径が公差内にあるかどうかを決定するために用いられる。しかしながら、データが4本の測定ラインのみ利用可能である(すなわち、それらの間ではない)。また、測定ポイントの分布によって、バルブ・シートの真円度を決定することが難しい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点は、表面構造の寸法および位置を決定する方法を提供し、この方法は、
(a)構造の表面測定から取得された複数のデータ・ポイントから、表面構造のデジタル化されたイメージを作り出すステップと、
(b)表面構造の公称イメージ(a nominal image)に、デジタル化されたイメージを合わせる(fitting)ステップと、
(c)デジタル化されたイメージの公称イメージからのずれを決定し、それにより、表面構造の寸法、位置および形状ずれの少なくとも一つを決定するステップと、を備える。
【0010】
構造の表面測定から取得された複数のデータ・ポイントは、座標位置決め装置に設置された表面検知装置を使用することにより収集される。表面検知装置は、測定プローブを含んでいてもよい。表面検知装置は、2以上の軸線回りの測定プローブの回転を可能にする関節式連結プローブ・ヘッドに設置されることが好ましい。表面検知装置は、接触プローブであることが好ましい。座標位置決め装置は、座標測定機(CMM)、工作機械、非直交座標系機械、関節式連結アーム、ロボットアーム、またはマニュアルのCMMを含んでいてもよい。
【0011】
デジタル化されたイメージを作り出すステップは、ソフトウェアにおいて実行される(すなわち、コンピュータ・プログラムによる)ことが好ましい。コンピュータ・プログラムは、CD、USBスティック、その他のメディアのようなキャリアに提供され、該キャリアは、コンピュータにロードされた時に本発明を実行することが好ましい。また、コンピュータ・プログラムはインターネットから直接ダウンロードできる。
【0012】
ステップ(b)において、デジタル化されたイメージを公称イメージに合わせるステップは、最小自乗法などの、最適適合法により実行されることが好ましい。複数のデータ・ポイントは、表面構造の表面領域より広い表面領域と関連することが好ましい。デジタル化されたイメージの異なる区画は、公称イメージに、順に合致される。個々の区画は、表面構造の中心線に沿って、異なる位置にあってもよい。
【0013】
公称イメージは、表面構造のCADイメージを含んでいてもよい。
【0014】
ステップ(c)において決定された公称イメージからのデジタル化されたイメージのずれは、部分内の表面構造の側部の位置、部分内の表面構造の高さ、および部分内の表面構造の角度を決定するために用いられる。 このずれは、表面構造の座標を決定するか、または表面構造が公称データについての公差内にあるかどうかを決定するために用いられる。
【0015】
複数のデータ・ポイントは構造の接触表面測定から取得されることが好ましい。
【0016】
表面測定値はスパイラル状の測定プロフィールから収集されることが好ましい。
【0017】
本発明の第2の観点は、表面構造の寸法と位置を決定するためのコンピュータ・プログラムであって、コンピュータにおいて実行される時、上で概説されたステップを実行するように構成されたコードを含むコンピュータ・プログラムを提供する。
【0018】
本発明の第3の観点は、表面構造を走査する方法であって、表面構造は、中心線および不均一な半径を有し、2以上の軸線回りの回転を可能にする関節式連結ヘッドに設置された表面検知装置を使用し、関節式連結プローブ・ヘッドは、座標位置決め装置に設置され、表面プロフィールの中心線に沿って関節式連結プローブ・ヘッド移動させるように座標位置決め装置をプログラミングするステップと、表面検知装置を一定の半径の円をなして移動させるように、関節式連結プローブ・ヘッドをプログラミングするステップと、測定値が取得されている間、測定プローブがその測定範囲内にあるかを決定するステップと、表面検知装置がその測定値をその測定範囲内に維持するための角度に位置決めされるように、関節式連結ヘッドの動きを適合させるステップと、を有する方法を提供する。
【0019】
表面検知装置は、測定プローブであることが好ましい。測定プローブは、接触測定プローブであり、アナログ・プローブであることがさらに好ましい。
【0020】
測定は、接触測定が好ましい。
【0021】
本発明の第4の観点は、表面構造を走査する装置であって、表面構造は中心線および不均一な半径を有し、2以上の軸線回りの回転を可能にする関節式連結ヘッドであって、座標位置決め装置に設置されている関節式連結プローブ・ヘッドに設置された表面検知装置、およびコンピュータを使用し、コンピュータは、表面プロフィールの中心線に沿って関節式連結プローブ・ヘッドを移動させるように座標位置決め装置をプログラミングするステップと、表面検知装置を一定の半径の円をなして移動させるように、関節式連結プローブ・ヘッドをプログラミングするステップと、測定値が取得されている間、測定プローブがその測定範囲内にあるかを決定するステップと、表面検知装置がその測定値をその測定範囲内に維持するための角度に位置決めされるように、関節式連結ヘッドの動きを適合させるステップと、を実行することが可能である、装置を提供する。
【0022】
本発明の第5の観点は、バルブ・シートの寸法と位置を決定する方法であって、
(a)スパイラル状のパスに沿って前記バルブ・シートの表面を測定するステップと、
(b)前記バルブ・シートの表面測定から取得された複数のデータ・ポイントから前記バルブ・シートの表面のデジタル化されたイメージを形成するステップと、
(c)前記バルブ・シートの表面の公称イメージに、前記デジタル化されたイメージを合わせるステップと、
を含む方法を提供する。
【0023】
ステップ(a)での測定は、接触測定であることが好ましい。
【0024】
好ましい実施形態においては、本方法は、デジタル化されたイメージの公称イメージからのずれを決定するさらなるステップを含んでいる。このずれは、表面構造の寸法、位置、および形状のずれの少なくとも一つを決定するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】バルブ本体のバルブ・シートの斜視図である。
【図2】図1のバルブ・シートの側断面図である。
【図3】バルブ・ディスクの側面図である。
【図4】座標測定機に設置された関節式連結プローブ・ヘッドの斜視図である。
【図5】関節式連結プローブ・ヘッドと測定プローブの斜視図である。
【図6】関節式連結プローブ・ヘッドに設置された測定プローブにより測定されているバルブ・シートの概略図である。
【図7】表面構造の寸法および位置を決定するステップを示すフローチャートである。
【図8】バルブ・シートのデジタル化されたデータの概略図である。
【図9】バルブ・シートの円錐面の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の好ましい実施形態例が添付図面を参照してここで説明される。
図1および図2はバルブ・シートの斜視図および断面図をそれぞれ示す。図3は、バルブ・シートへ挿入されるバルブ・ディスクの側面図を示す。例えば、これらのバルブは、自動車のエンジンのシリンダ・ヘッドにおいて見られるタイプである。
【0027】
バルブ・シート10はバルブ本体12に配置される。バルブ・シートは、円筒形の開口16の開口に連なる、バルブ本体の凹部を画定する円錐面14を備える。バルブ・ディスク18は、バルブ・シートの円筒形の開口内にぴったりと合致する大きさに作られている円柱状のステム20を含む。ディスク部材22は、ステム20の一端部に設けられ、このディスク部材22はその周囲面に円錐面24を有する。バルブ・ディスクのバルブ・シート及びディスク部材は、バルブ・ディスクがバルブ・シート内に挿入されると、シールを形成する対応する円錐面14、24を有する。
【0028】
バルブ・シートとバルブ・ディスクの円錐面の間における良好な適合は、バルブの良好な作動のために必要である。しかしながら、バルブ・シートの円錐面が不正確に形成されるか、または、位置決めされると、シールの品質が低下する。例えば、バルブ・シートの円錐面は不正確な大きさであるかもしれないし、または、正確な円形でないかもしれない。円錐面は誤った横方向位置または誤った高さに加工され、あるいは、誤った角度で加工されているかもしれない。
【0029】
図4は、本発明に係るバルブ・シートを測定するために使用される装置を示す。バルブ・シートを含む加工物は、座標測定機(CMM)30のような座標位置決め装置に設置される。CMM30は、加工物が設置され得るテーブル32を有する。Zカラムは、テーブル32に対してX、Y、およびZ方向に可動であり、この動きは、X、Y、およびZ方向それぞれに移動可能な一連のキャリッジ36、38、34によって可能となり、キャリッジ各々には、ベアリング機構、モーター、およびトランスデューサ(不図示)が設けられている。
【0030】
関節式連結プローブ・ヘッド40は、CMMのZカラム34に設置され、それに設置されている測定プローブのような表面検知装置の回転運動を提供する。関節式連結プローブ・ヘッドは、図5を参照してより詳細に説明される。
【0031】
図5に示されるように、関節式連結走査ヘッド40は、Zカラム34の上に設置される第1のハウジング42により形成された固定部を含む。第1のハウジング42は、モーター(不図示)により第1のハウジング42に対して軸線A1の回りに回転可能な可動部46を支持する。可動部44は、モーター(不図示)によりハウジング46に対して軸線A1実質的に直交する軸線A2の回りに回転可能なシャフト48を同様に支持する第2のハウジング46に固定されている。
【0032】
表面検知装置、この例においては、接触測定プローブ50は、関節式連結プローブ・ヘッドのシャフト48に設置される。接触測定プローブ50には、加プローブハウジング52および工物接触先端56を有する可撓性のスタイラス54を備える。
【0033】
上述した構成は、関節式連結プローブ・ヘッドのモーターが測定プローブ50の加工物接触先端56を軸線A1又はA2の回りに角度的に位置決めし、CMMのモーター(不図示)が関節式連結プローブ・ヘッドをCMMの3次元座標の枠組内のいずれの場所でも直線的に位置決めし、スタイラス先端を、走査される表面と所定の関係に至らせることを可能とする。
【0034】
直線位置トランスデューサ(不図示)は、関節式連結プローブ・ヘッドの直線方向の変位を測定するためにCMMに設けられ、角度位置トランスデューサは、各々の軸線A1およびA2回りのスタイラスの角度変位を測定するために関節式連結プローブ・ヘッド(不図示)に設けられる。測定プローブには、また、スタイラスの撓みを決定するためのトランスデューサが設けられる。
【0035】
CMMおよび関節式連結プローブ・ヘッドの動きは、専用のコントローラまたはパーソナル・コンピュータ(PC)58を備え得るコントローラにより制御される。コントローラは、CMMおよび関節式連結プローブ・ヘッドに駆動コマンド(a drive command)を送り、それらの個々のモーターを動かし、それにより測定プローブを位置決めする。コントローラは、プローブ先端の位置を決定することを可能にする、CMM、関節式連結プローブ・ヘッドおよび測定プローブにおけるトランスデューサからフィードバックを受け取る。
【0036】
関節式連結プローブ・ヘッドは、工作機械のスピンドル、手動式CMM、ロボット・アームまたは関節式連結アームのようなその他のタイプの座標位置決め装置に設置されてもよい。座標測定機が、図4において説明されたような、直交座標タイプの機械に限定されるものではなく、国際公開第95/20747号において記述されるような非直交座標タイプであってもよい。
【0037】
バルブ・シートの円錐面は、不均一な半径(すなわち、円筒面ではなく円錐)を考慮にいれるように走査を適合させることによってではあるが、国際公開第90/07097号に開示されているような内径測定技術を使って測定される。
【0038】
図6は、図4および図5に示した装置により走査されている鉛直方向のバルブ・シートの側面図を示す。
【0039】
第1のステップにおいて、例えば、CADデータまたは直接測定から、バルブ・シートの中心線および最大半径が決定される。また、バルブ・シートの真上、および、バルブ・シートの真下の領域が測定され、したがって、このことは、最大の半径を選ぶ時に考慮される。
【0040】
関節式連結プローブ・ヘッドの回転中心(すなわち、A1およびA2軸線の交点)は、バルブ・シートの中心線と一直線上に揃えられる。関節式連結プローブ・ヘッドのA2ヘッド角度(すなわち、軸A2回りのシャフト48の位置)は、測定プローブ50の加工物接触先端56が、円錐面の真上で、バルブ・シートの内面に接触するように調整される。関節式連結ヘッドのA1ヘッド角度(すなわち、軸線A1回りの部材44の位置)は、加工物接触先端56をバルブ・シートの中心線回りの円形パスで動かすように調整され得る。
【0041】
円錐面を含むバルブ・シートの領域のスパイラル状の走査は、加工物接触先端をA1軸回りの円形パスで動かしながら、中心線に沿って関節式連結プローブ・ヘッドを動かすことにより実行される。スパイラル状のプロフィールの使用は、1回の走査で測定を実行する利点を有し、このプロフィールは、また、関節式連結プローブ・ヘッドのCMMより高い動的応答からも利益を得ている。
【0042】
CMMおよび関節式連結ヘッドのこの動きは、円筒面に沿うスパイラル状の走査パスを作り出す。しかしながら、走査は、測定される領域(すなわち、円錐面)の実際の形状に順応するように、その経過中に、適合される。
【0043】
測定プローブは、規定されたスタイラス撓み範囲(例えば、40〜50ミクロン)のような規定された測定範囲内に保持される。撓みが範囲外にあるならば、関節式連結プローブ・ヘッドのヘッド角度は、その範囲内の撓みに復帰するように調整される。このようにして、走査は表面形状に適合する。
【0044】
図6に示された例では、A2ヘッド角度は、円形走査の半径を減らすように調整され、それにより、プローブを規定されたスタイラス撓み範囲内に維持する。
【0045】
水平方向のバルブ・シートまたはその他の位置にあるバルブ・シートに対して、A1およびA2軸線の組み合わせは、測定プローブをその測定範囲内に保持するように調整される。
【0046】
適合性のある走査によるこの方法は、簡単な走査プロフィールがプログラムされ(すなわち、円筒面)、より複雑な形に適応するように走査の間に適合され、その結果、プログラミングの容易性を与えるという利点を有する。
【0047】
上記の例は、螺旋状の走査を示したけれども、走査は、また、関節式連結プローブ・ヘッドが階段状に中心線に沿って移動する、一連の円形走査を含んでいてもよい。
【0048】
適応性のある走査のこの技術は、その他の表面構造、例えば、ノーズ・コーンに適している。
【0049】
上述した測定システムを使うことの利点は、関節式連結プローブ・ヘッドの高いサンプリング速度によって、測定データの高いポイント密度が迅速に生み出されることを可能にすることにある。また、従来の測定技術は、測定データを収集するために用いることはできるが、要求されるデータ量を取得するために必要な時間は、これらの方法が実用的ではないことを意味している。
【0050】
例えば、12のバルブ・シートおよび36のバルブガイドが、従来技術では約30分かかるのに対して、上記の方法では4分以下で測定できる。
【0051】
接触測定プローブの使用は、測定された領域について細部にわたって詳しい、良好な精度のデータ・ポイントであるという利点を有するが、例えば光学式、静電容量式またはインダクタンス式のプローブなどの非接触測定プローブを使用することもできる。
【0052】
バルブ・シートの測定データが収集されると、それは、図7を参照して説明されるように、バルブ・シートの位置及び/または寸法を決定するために使用される。
【0053】
第1のステップにおいて、デジタル化されたイメージは、表面を測定することにより取得され、それにより、複数のデータ・ポイント58が集められる。
【0054】
説明された測定データを収集する方法は、測定された表面の高いポイント密度をもつデジタル化されたイメージが作り出されることを可能にする。表面は、ここでは、ポイントの離散集合により表される。
【0055】
デジタル化されたデータは、ここで、所望の形態と寸法を有する形状に合わせられる(60)。バルブ・シートの例では、デジタル化されたデータは、最小自乗法を用いて所望の寸法を有する円錐面をもつ円錐へ最適に合わせられる。円錐面の所望の寸法は、設計データ(例えば、CADデータ)から得られる。その他の最良の合致技術として、例えば、例えばチェビシェフ(Chebychev)を使用できる。
【0056】
バルブ・シートは複数の円錐で構成され、関心のある各々の円錐については別々に合致される。
【0057】
デジタル化されたデータは、バルブ・シートの上下からのデータを含み、余分なデータは、合致プロセスまたは合致プロセスの一部の前にトリミング(trimming)されなければならない。
【0058】
図8を参照して、データのトリミング方法の1つを説明する。図8は、走査された領域のデジタル化されたイメージと関連するデータ群(the data cloud)を示す。領域68および70のデータが、それぞれ、バルブ・シートの上の領域およびバルブ・シートの下の領域と関連する測定データであるのに対して、領域66のデータは、バルブ・シートの円錐面と関連する測定データである。
【0059】
データAのバンドが選択され、このバンドは、中心線72に対して直交する方向のデータ群の一部を含む。バンドの高さhは、バルブ・シートの円錐面の高さよりわずかに低く選択される。データAのこのバンドが上記したような円錐に合致される。この方法は、中心線72に沿ってデータAのバンドを上方に動かすことによって繰り返され、種々の重なり合うデータ・バンドが円錐に合致される。図8は、中心線の上で動かされたデータ・バンドB及びデータ・バンドCを示す。データ・バンドがバルブ・シートの円錐面(すなわち、上下の領域ではない)と一致する時、最適な合致が生じるだろう。
【0060】
デジタル化されたイメージが表面構造の公称イメージに合致されると、デジタル化されたイメージの公称イメージからのずれが決定できる(64)。このデータは、バルブ本体のバルブ・シートの円錐面の横方向の位置と角度を与える。
【0061】
バルブ・シートの円錐面の公称データとの比較は、バルブ・シートが公差内にあるかどうかを決定するために用いられる。バルブ・シートを測定する従来方法と違って、データは、バルブ・シートの単なる領域ではなく、バルブ・シートのすべてに利用可能である。
【0062】
図9は、バルブ・シートがバルブ本体において正しい高さにあるかどうかを決定する方法を示す。直径dの値は、バルブ本体の固定面から既知の高さhにおいて最適に合致したデータを使って決定される。直径dのこの値は、その高さで公称直径と比較され、直径が公差内にあるかが決定される。このことは、hの種々の値について繰り返され得る。このもとは、逆に、既知の直径と整合するように高さを選ぶことによりなされてもよい。
【0063】
上記の実施形態はバルブ・シートの測定を記述したけれども、表面構造を表すために、デジタル化されたデータを使用し、それを公称構造に合わせる方法は、その他の表面構造に適する。その方法は、その他の応用の内で面シールを測定する特に有益な方法である。上記したような中心線に関して表面構造が対称性を有する必要はないが、このことは走査速度を軽減する。
【0064】
座標測定機における関節式連結走査ヘッドの使用が測定データを集めるために説明されたけれども、その他の技術が使用可能である。しかし、上記した技術は、スピードと精度において有利である。
【0065】
この方法は、先行技術とは対照的に、データは全領域について収集され、関心のある領域の直線状または円形状のパスを介して離散的な測定値(discrete measurements)が得られるという利点を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面構造の寸法および位置を決定する方法であって、
(a)前記構造の表面測定から取得された複数のデータ・ポイントから、該表面構造のデジタル化されたイメージを作り出すステップと、
(b)前記表面構造の公称イメージに、デジタル化されたイメージを合わせるステップと、
(c)前記デジタル化されたイメージの前記公称イメージからのずれを決定し、それにより、表面構造の寸法、位置および形状のずれのうちの少なくとも一つを決定するステップと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記構造の表面測定から取得された前記複数のデータ・ポイントは、座標位置決め装置に設置された表面検知装置を使用することにより収集されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面検知装置は、測定プローブを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記表面検知装置は、2以上の軸線回りの測定プローブの回転を可能にする関節式連結プローブ・ヘッドに設置されることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記表面検知装置は、好適には、接触プローブであることを特徴とする請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)において、デジタル化されたイメージを公称イメージに合わせるステップは、最適適合法により実行されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記複数のデータ・ポイントは、前記表面構造の表面領域より広い表面領域と関連することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記デジタル化されたイメージの異なる部分が、公称イメージに、順に合わせられることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(c)において決定された、前記デジタル化されたイメージの前記公称イメージからのずれは、一部分内における前記表面構造の横方向の位置、一部分内における前記表面構造の高さおよび一部分内における前記表面構造の角度のうちの少なくとも一つを決定するために使用されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記複数のデータ・ポイントは、前記構造の接触表面測定から取得されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記表面測定値は、螺旋状の測定プロフィールから収集されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
表面構造の寸法及び位置を決定するためのコンピュータ・プログラムであって、コンピュータにおいて実行される時に、コンピュータ・プログラムは、請求項1ないし11のいずれかのステップを実行するように構成されたコードを含むことを特徴とするコンピュータ・プログラム。
【請求項13】
バルブ・シートの寸法と位置を決定する方法であって、
(a)螺旋状のパスに沿って前記バルブ・シートの表面を測定するステップと、
(b)前記バルブ・シートの表面測定から取得された複数のデータ・ポイントから前記バルブ・シートの表面のデジタル化されたイメージを作り出すステップと、
(c)前記バルブ・シートの表面の公称イメージに、前記デジタル化されたイメージを合わせるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
ステップ(a)における測定が接触測定であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記デジタル化されたイメージの前記公称イメージからのずれを決定する追加のステップを含むことを特徴とする請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記表面構造の寸法、位置、および、形状のずれのうちの少なくとも一つを決定するために前記ずれを用いるステップを含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
表面構造を走査する方法であって、前記表面構造は、中心線および不均一な半径を有し、2以上の軸線回りの回転を可能にする関節式連結ヘッドに設置された表面検知装置を使用し、前記関節式連結プローブ・ヘッドは座標位置決め装置に設置され、
前記表面プロフィールの中心線に沿って前記関節式連結プローブ・ヘッドを移動させるように前記座標位置決め装置をプログラミングするステップと、
前記表面検知装置を一定の半径の円をなして移動させるように、前記関節式連結プローブ・ヘッドをプログラミングするステップと、
測定値が取得されている間、前記測定プローブが測定範囲内にあるかを決定するステップと、
前記表面検知装置がその測定値をその測定範囲内に維持するための角度に位置決めされるように、前記関節式連結ヘッドの動きを適合させるステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項18】
前記表面検知装置は、測定プローブであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記測定は、接触測定であることを特徴とする請求項17または18に記載の方法でも。
【請求項20】
表面構造を走査する装置であって、前記表面構造は中心線および不均一な半径を有し、2以上の軸線回りの回転を可能にする関節式連結ヘッドに設置された表面検知装置およびコンピュータを使用し、前記関節式連結プローブ・ヘッドは座標位置決め装置に設置され、
前記コンピュータは、前記表面プロフィールの中心線に沿って前記関節式連結プローブ・ヘッド移動させるように前記座標位置決め装置をプログラミングするステップと、
前記表面検知装置を一定の半径の円をなして移動させるように、前記関節式連結プローブ・ヘッドをプログラミングするステップと、
測定値が取得されている間、前記測定プローブが測定範囲内にあるかを決定するステップと、
前記表面検知装置がその測定値をその測定範囲内に維持するための角度に位置決めされるように、前記関節式連結ヘッドの動きを適合させるステップと、
を実行することが可能であることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−525357(P2010−525357A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504831(P2010−504831)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001439
【国際公開番号】WO2008/129305
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(391002306)レニショウ パブリック リミテッド カンパニー (166)
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】