説明

被めっき層形成用組成物、金属パターン材料の作製方法、及び金属パターン材料

【課題】エネルギー付与により高感度で硬化し、水溶液による現像により高解像度のめっき触媒又はその前駆体に対する吸着性に優れた被めっき層パターンを形成し得る被めっき層形成用組成物、基板との密着性に優れた高解像度の金属パターンを簡易に形成しうる金属パターン材料の作製方法、及びこれにより得られた金属パターン材料を提供する。
【解決手段】めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、及び、ラジカル重合性基を有するポリマー1質量%〜20質量%と、水不溶性の光重合開始剤とを、20質量%〜99質量%の水溶性可燃性液体と水とを含有する混合溶剤に溶解してなる被めっき層形成用組成物、これを用いた金属パターン材料の作製方法、並びに、該作製方法により得られた金属パターン材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被めっき層形成用組成物、金属パターン材料の作製方法、及び金属パターン材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絶縁性基板の表面に金属パターンによる配線を形成した金属配線基板が、電子部品や半導体素子に広く用いられている。
かかる金属パターン材料の作製方法としては、主に、「サブトラクティブ法」が使用される。このサブトラクティブ法とは、基板表面に形成された金属膜上に、活性光線の照射により感光する感光層を設け、この感光層を像様露光し、その後現像してレジスト像を形成し、次いで、金属膜をエッチングして金属パターンを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
【0003】
この方法により得られる金属パターンにおいては、基板表面に凹凸を設けることにより生じるアンカー効果により、基板と金属膜との間の密着性を発現させている。そのため、得られた金属パターンの基板界面部の凹凸に起因して、金属配線として使用する際の高周波特性が悪くなるという問題点があった。また、基板表面に凹凸化処理するためには、クロム酸などの強酸で基板表面を処理するが必要であるため、金属膜と基板との密着性に優れた金属パターンを得るためには、煩雑な工程が必要であるという問題点があった。
【0004】
この問題を解決するため、基板の表面にプラズマ処理を行い、基板表面に重合開始基を導入し、その重合開始基からモノマーを重合させて、基板表面に極性基を有する表面グラフトポリマーを生成させるという表面処理を行うことで、基板の表面を粗面化することなく、基板と金属膜との密着性を改良させる方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
また、基材との密着性に優れた金属パターン(めっき膜)を得る方法として、基材上に、該基材と結合したグラフトポリマーを生成させてポリマー層を形成し、このポリマー層に対してめっきを施して、得られた金属膜をエッチングする方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Advanced Materials 2000年 20号 1481−1494
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第08/050715号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1に記載の方法では、グラフトポリマーを形成するための化合物として、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基と重合性基とを有するポリマーが用いられており、このポリマーは水溶液に対する親和性が低いため、基材上に形成されるポリマー層を部分的に水溶液で現像する際には高アルカリ水が必要であり、かつ、長い時間を要する。
そこで、本発明は、この技術の欠点を考慮してなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
【0009】
即ち、本発明の第1の目的は、エネルギー付与により高感度で硬化するとともに水溶液による現像により高解像度の、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性に優れた被めっき層パターンを形成し得る被めっき層形成用組成物を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、基板との密着性に優れた高解像度の金属パターンを、水溶液による現像を用いて簡易に形成しうる金属パターン材料の作製方法、及びこれにより得られた金属パターン材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、以下に示す手段により上記目的を達成しうることを見出した。
即ち、本発明の被めっき層形成用組成物は、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、及び、ラジカル重合性基を有するポリマー1質量%〜20質量%と、水不溶性の光重合開始剤とを、20質量%〜99質量%の水溶性可燃性液体と水とを含有する混合溶剤に溶解してなることを特徴とする。
ここで、水不溶性の光重合開始剤は、前記ポリマーに対して1質量%〜20質量%の範囲で含有することが好ましい。また、水溶性可燃性液体としては、アルコール系溶剤であることが好ましい。
本発明において、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、及び、ラジカル重合性基を有するポリマーにおけるめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基は、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基或いはイオン性の極性基であることが好ましい。なお、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、及び、ラジカル重合性基を有するポリマーは、下記式(A)で表されるユニット及び式(B)で表されるユニットを含む共重合体であることが好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
上記式(A)及び式(B)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y、及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L、及び、Lは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成するイオン性極性基を表す。
【0013】
式(B)で表されるユニットにおいて、Wはカルボン酸基であることが好ましく、また、Wがカルボン酸基であり、且つ、LのXとの連結部に4員〜8員の環構造を有する態様が好ましく、更に、Wがカルボン酸基であり、且つ、Lの鎖長が6原子〜18原子である態様も好ましい。
更に、式(B)で表されるユニットにおいて、Wがカルボン酸基であり、且つ、X及びLが単結合であることも好ましい態様の1つである。
また、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成するイオン性極性基、及び、ラジカル重合性基を有するポリマーは、さらに、下記式(C)で表されるユニットを共重合成分として含んでいてもよい。
【0014】
【化2】

【0015】
上記式(C)中、Rは、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Uは、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Lは、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Vはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性の官能基を表す。
式(C)で表されるユニットにおいて、Vはシアノ基又はエーテル基であることが好ましい。
【0016】
本発明の金属パターン材料の作製方法は、(1)基板上に、本発明の被めっき層形成用組成物を塗布した後、該被めっき層形成用塗布膜に対してエネルギーを付与して、エネルギーを付与された領域の当該被めっき層形成用塗布膜を硬化させる工程と、(2)前記基板上の前記被めっき層形成用塗布膜の未硬化領域を水溶液で現像し、パターン状の被めっき層を形成する工程と、(3)該パターン状の被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(4)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
ここで、エネルギー付与が、波長355〜365nm露光により行われることが好ましい。
【0017】
本発明の金属パターン材料は、本発明の金属パターン材料の作製方法により得られたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、エネルギー付与により高感度で硬化するとともに、水溶液による現像で高解像度の、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性に優れた被めっき層パターンを形成し得る被めっき層形成用組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、基板との密着性に優れた金属パターンを、水溶液による現像を用いて簡易に形成しうる金属パターン材料の作製方法、及びこれにより得られた金属パターン材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
<被めっき層形成用組成物>
本発明の被めっき層形成用組成物は、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、及び、ラジカル重合性基を有するポリマーを含有することを特徴とする。
以下、本発明に用いられるめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、及び、ラジカル重合性基を有するポリマーを、適宜、「特定ポリマー」と称して説明する。
【0020】
〔特定ポリマー〕
本発明における特定ポリマーは、その分子内に、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基であるイオン性極性基(以下、イオン性相互作用性基と称する。)、及び、ラジカル重合性基を有することを特徴としている。
特定ポリマー中の相互作用性基としては、イオン性極性基を含むことが好ましいが、金属と多座配位を形成可能な基であれば特に制限はなく、前記イオン性極性基の他、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などの非解離性官能基(解離によりプロトンを生成しない官能基)を、さらに含んでいてもよい。
【0021】
このように、特定ポリマー中の相互作用性基の最適な態様としては、イオン性極性基が挙げられる。イオン性極性基は、めっき触媒又はその前駆体を吸着させる機能を有するとともに、さらに、特定ポリマーの水溶液による現像性を付与しうるという機能をも有する。このようなイオン性極性基としては、具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、ボロン酸基が挙げられる。中でも、適度な酸性(他の官能基を分解しない)という点から、カルボン酸基が好ましく、電気配線として必要な低吸水性と相互作用性とを両立するという観点からは、特に、脂環構造と直接結合しているカルボン酸基(脂環式カルボン酸基)、ポリマー主鎖から離れたカルボン酸基(長鎖カルボン酸基)が好ましい。
【0022】
このようなイオン性極性基は、以下に説明する、特定ポリマーの一部に付加・置換させることで、特定ポリマー中に導入していてもよいし、また、上記のようなイオン性極性基がペンダントされたモノマー(ユニット)を共重合することで、特定ポリマー中に導入してもよい。
また、本発明におけるイオン性相互作用性基としては、カルボン酸基であることが更に好ましい。
【0023】
このようなイオン性極性基は、イオン性極性基がペンダントされたモノマーを共重合することで特定ポリマー中に導入してもよいし、予め合成されたポリマー(例えば、ラジカル重合性基を有するポリマー)の一部に付加・置換させることで、特定ポリマー中に導入してもよい。
【0024】
また、本発明に係る特定ポリマーには、さらに、金属と多座配位を形成可能な非イオン性の相互作用性基、即ち、前記含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などの非解離性官能基を含んでいてもよい。
前記非解離性官能基としては、具体的には、金属イオンと配位形成可能な基、含窒素官能基、含硫黄官能基、含酸素官能基などが好ましく、具体的には、イミド基、ピリジン基、3級のアミノ基、アンモニウム基、ピロリドン基、アミジノ基、トリアジン環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール基、ベンズイミダゾール基、キノリン基、ピリミジン基、ピラジン基、ナゾリン基、キノキサリン基、プリン基、トリアジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピロリジン基、ピラゾール基、アニリン基、アルキルアミン基構造を含む基、イソシアヌル構造を含む基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、ジアゾ基、アジド基、シアノ基、シアネート基(R−O−CN)などの含窒素官能基、水酸基、カーボネート基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、N−オキシド構造を含む基、S−オキシド構造を含む基、N−ヒドロキシ構造を含む基などの含酸素官能基、チオフェン基、チオール基、チオシアヌール酸基、ベンズチアゾール基、メルカプトトリアジン基、チオエーテル基、チオキシ基、スルホキシド基、スルホン基、サルファイト基、スルホキシイミン構造を含む基、スルホキシニウム塩構造を含む基、スルホン酸エステル構造を含む基などの含硫黄官能基、ホスフォート基、ホスフォロアミド基、フォスフィン基などの含リン官能基、塩素、臭素などのハロゲン原子を含む基、及び不飽和エチレン基等が挙げられる。また、隣接する原子又は原子団との関係により非解離性を示す態様であれば、イミダゾール基、ウレア基、チオウレア基を用いてもよい。更には、例えば、シクロデキストリンや、クラウンエーテルなどの包接能を有する化合物に由来する官能基であってもよい。
中でも、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いことから、エーテル基(より具体的には、−O−(CH−O−(nは1〜5の整数)で表される構造)、又はシアノ基が特に好ましく、シアノ基が最も好ましいものとして挙げられる。
【0025】
一般的に、前記イオン性極性基の導入により特定ポリマーが高極性になるほど吸水率が高くなる傾向であるが、シアノ基は被めっき層中にて互いに極性を打ち消しあうように相互作用しあうため、このような官能基をさらに導入することにより、膜が緻密になり、且つ、被めっき層全体としての極性が下がるため、高極性にもかかわらず吸水性が低くなる。また、被めっき層の良溶剤にて触媒を吸着させることで、シアノ基が溶媒和されてシアノ基間の相互作用がなくなり、めっき触媒と相互作用できるようになる。以上のことから、シアノ基を有する被めっき層は低吸湿でありながら、めっき触媒とはよく相互作用をする、相反する性能を発揮する点で、好ましい。
【0026】
また、特定ポリマー中のラジカル重合性基は、エネルギー付与により直接、又は、共存するラジカル発生剤から発生したラジカルにより重合しうる官能基であれば特に制限されないが、具体的には、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基、ビニル基、スチリル基などが挙げられる。中でも、ラジカル重合反応性、合成汎用性の点から、(メタ)アクロリロイル基、(メタ)アクリルアミド基が好ましい。
【0027】
このようなラジカル重合性基は、ラジカル重合性基がペンダントされたモノマーを共重合することで特定ポリマー中に導入してもよいし、予め合成されたポリマー(例えば、イオン性極性基及び相互作用性基を有するポリマー)の一部に付加・置換させることで、特定ポリマー中に導入してもよい。
【0028】
本発明における特定ポリマーは、下記式(A)で表されるユニット及び下記式(B)で表されるユニットを含む共重合体であることが好ましい。
【0029】
【化3】

【0030】
上記式(A)及び式(B)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y、及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L、及び、Lは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成するイオン性極性基を表す。
【0031】
〜Rが、置換若しくは無置換のアルキル基である場合、無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられ、また、置換アルキル基としては、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換された、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
なお、Rとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子が好ましい。
としては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
更に、特定ポリマーの柔軟性の観点から、R、及びRはいずれも水素原子であることが好ましい。
【0032】
X、Y、及びZが、置換若しくは無置換の二価の有機基の場合、該二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。
X、Y、及びZは、好ましくは、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基であり、より好ましくは、単結合、エステル基、アミド基、最も好ましくは、単結合、エステル基である。
【0033】
また、L、及び、Lは、それぞれ、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい態様の1つである。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。中でも、L、及びLはそれぞれ総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、総炭素数とは、例えば、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。Lの場合も同様である。
具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、フェニレン基、及びこれらの基が、メトキシ基、ヒドロキシ基、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等で置換されたもの、更には、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0034】
特に、式(B)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると環状構造により疎水性を示しやすいという点から、Wがカルボン酸基であり、且つ、LのWとの連結部に4員〜8員の環構造を有することが好ましい。ここで、4員〜8員の環構造としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、フェニル基が挙げられ、中でも、シクロヘキシル基、フェニル基が好ましい。即ち、この態様では、式(B)で表されるユニットの末端が脂環式カルボン酸基となる。
また、式(B)で表されるユニットにおいては、適度な酸性(他の官能基を分解しない)、アルカリ水溶液中では親水性を示し、水を乾燥すると長鎖アルキル基構造により疎水性を示しやすいという点から、Vがカルボン酸基であり、且つ、Lの鎖長が6原子〜18原子であることが好ましい。ここで、Lの鎖長とは、式(B)中のXとWとの距離を表し、UとVとの間が6原子〜18原子の範囲で離間していることが好ましいことを意味する。Lの鎖長として、より好ましくは、6原子〜14原子であり、更に好ましくは、6原子〜12原子である。
【0035】
一方、式(B)で表されるユニットにおいて、Wがカルボン酸基であり、且つ、X及びLが単結合であることも好ましい態様の1つである。
この態様であると、金属パターン形成直後において、基板と金属パターンとの密着性を高めることができ、また、被めっき層の水に対する耐性を高めることができる。
【0036】
本発明における特定ポリマーは、さらに、下記式(C)で表されるユニットを含んでもよい。
【0037】
【化4】

【0038】
式(C)で表されるユニットにおいて、Vはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基を表し、この非解離性官能基としては前述したものが挙げられる。中でも、Vは、極性が高く、めっき触媒等への吸着能が高いといった点で、シアノ基又はエーテル基であることが好ましい。
上記式(C)中、Rは、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Uは、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Lは、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表す。ここで、Rとしては、水素原子、メチル基、或いは、ヒドロキシ基又は臭素原子で置換されたメチル基が好ましい。
Uが置換若しくは無置換の二価の有機基の場合、該二価の有機基としては、置換若しくは無置換の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の芳香族炭化水素基が挙げられる。
Uは、好ましくは、単結合、エステル基、アミド基、エーテル基であり、より好ましくは、単結合、エステル基、又はアミド基であり、最も好ましくは、単結合又はエステル基である。
は単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、二価の有機基であることが好ましい。Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基は、直鎖、分岐、若しくは環状のアルキレン基、芳香族基、又はこれらを組み合わせた基であることが好ましい態様の1つである。該アルキレン基と芳香族基とを組み合わせた基は、更に、エーテル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレア基を介していてもよい。なかでも、Lは総炭素数が1〜15であることが好ましく、特に無置換であることが好ましい。なお、ここで、総炭素数とは、Lで表される置換若しくは無置換の二価の有機基に含まれる総炭素原子数を意味する。
【0039】
特定ポリマーが、式(A)で表されるユニット及び式(B)で表されるユニットの共重合である場合、式(A)で表されるユニットは、反応性(硬化性、重合性)及び合成の際のゲル化の抑制の点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5mol%〜30mol%である。
式(B)で表されるユニットは、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性、水溶液による現像性、耐湿密着性の点から、共重合ユニット全体に対し20mol%〜90mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは50mol%〜90mol%である。特に好ましくは70mol%〜90mol%である。
具体的には、例えば、特開2008−166435公報に記載の方法などにより合成されるポリマーを用いることができる。
【0040】
特定ポリマーが、式(A)で表されるユニット、式(B)で表されるユニットに加えて、さらに式(C)で表されるユニットを含む共重合である場合、
式(A)で表されるユニットは、反応性(硬化性、重合性)及び合成の際のゲル化の抑制の点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜50mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは5mol%〜30mol%である。
式(B)で表されるユニットは、水溶液による現像性と耐湿密着性の点から、共重合ユニット全体に対し20mol%〜70mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは20mol%〜60mol%である。特に好ましくは30mol%〜50mol%である。この範囲にて、より現像性と耐湿密着力を両立することができる。
式(C)で表されるユニットは、めっき触媒又はその前駆体に対する吸着性の観点から、共重合ユニット全体に対し5mol%〜80mol%で含まれることが好ましく、更に好ましくは10mol%〜70mol%である。
【0041】
なお、特定ポリマーにおいて前記式(B)で表されるユニット中に存在するイオン性極性価(イオン性極性基がカルボン酸基やスルホン酸基などの酸基である場合は酸価)としては、1.5mmol/g〜10.0mmol/gが好ましく、1.7mmol/g〜5.0mmol/gがより好ましく、1.9mmol/g〜5.0mmol/gが更に好ましく、2.5mmol/g〜4.5mmol/gが特に好ましい。イオン性極性価がこの範囲であることで、水溶液での現像性付与と湿熱経時時の密着力低下の抑制とを両立させることができる。
なお、イオン性極性を有するユニットの分子量により最適なユニット数とイオン性極性価は変化するが、その場合はイオン性極性価が上記範囲に入ることを優先とする。
【0042】
本発明における特定ポリマーの具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
なお、これらの具体例の重量平均分子量は、いずれも、3000〜150000の範囲である。
【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
(特定ポリマーの合成方法)
また、本発明の特定ポリマーのうち、ユニット(A)〜ユニット(C)のすべてを含むポリマーの合成方法について以下に説明する。
本発明における該特定ポリマーは、前述のラジカル重合性基、及びイオン性極性基を有し、さらに、非解離性の相互作用性基を有するポリマーであれば特に限定されないが、相互作用性基、ラジカル重合性基、及びイオン性極性基のそれぞれを側鎖に有するポリマーであることが好ましい。本発明における特定ポリマーは、式(A)で表されるユニット〜式(C)で表されるユニットを含む共重合体のような、相互作用性基を有するユニット、ラジカル重合性基を有するユニット、及びイオン性極性基を有するユニットを含む共重合体であることが好ましい。
以下、この非解離性の相互作用性基を有するユニット、ラジカル重合性基を有するユニット、及びイオン性極性基を有するユニットを含む共重合体の態様を有する特定ポリマーと、その合成方法について説明する。
【0046】
上記のような共重合体の態様を有する特定ポリマーは、以下のように合成できる。
合成方法としては、下記のi)〜iii)が挙げられる。
i)非解離性の相互作用性基を有するモノマーと、ラジカル重合性基を有するモノマーと、イオン性極性基を有するモノマーと、を共重合する方法、
ii)非解離性の相互作用性基を有するモノマーと、二重結合前駆体を有するモノマーと、イオン性極性基を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、
iii)非解離性の相互作用性基を有するモノマー及びイオン性極性基を有するモノマーを用いて合成され、且つ、反応性基を有するポリマーに、該ポリマー中の反応性基と反応しうるラジカル重合性基を有するモノマーを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法
これらの中でも、好ましいのは、合成適性の観点から、ii)の方法、及び、iii)の方法である。
以上のように、ラジカル重合性基は、ラジカル重合性基がペンダントされたモノマーを共重合することで特定ポリマー中に導入してもよいし、予め合成されたポリマー(例えば、イオン性極性基及び相互作用性基を有するポリマー)の一部に付加・置換させることで、特定ポリマー中に導入してもよい。この方法については、前記特開2008−166435公報に詳細に記載されている。
【0047】
なお、合成方法i)〜iii)において特定ポリマーを合成する際には、得られる特定ポリマーの吸水性を低下させるため、また、疎水性を向上させるために、他のモノマーを共重合成分として用いてもよい。他のモノマーとしては、一般的な、ラジカル重合系のモノマーが用いられ、ジエン系モノマー、アクリル系モノマー等が挙げられる。中でも、無置換アルキルのアクリル系モノマーが好ましい。具体的には、ターシャリーブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルメタクリレートなどが好ましく使用できる。
【0048】
上記の合成方法i)〜iii)で用いられる相互作用性基を有するモノマーとしては、前記した非解離性官能基を有するモノマーであればいかなるモノマーも使用可能であるが、例えば、具体的には、以下に示すものが挙げられる。
これらは1種を単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0049】
即ち、非解離性官能基を有するモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、シアノエチルアクリレート、1−メチル−シアノメチルアクリレート、2−ニトロ−エチルアクリレート、2−シアノ−エチルアクリルアミド、1−メチル−シアノメチルメタクリルアミド、4−シアノ−フェニルアクリレート、N−シアノエチル−N−エチル−アクリルアミド、3−シアノ−プロピルアクリレート、2−シアノ−2−メチル−エチルアクリレート、4−シアノ−ブチルアクリレート、5−シアノ−ペンチルアクリレート、6−シアノ−ヘキシルアクリレート、1−シアノ−メチルアクリレート、1−シアノ−シクロヘキシルアクリレート、p−シアノ−スチレン、4−シアノ−2,2−ジエチル−ブチルメタクリレート、更に、下記の化合物が挙げられる。
【0050】
【化7】

【0051】
また、合成方法i)〜iii)で用いられるイオン性極性基を有するモノマーとしては、前記したイオン性極性基を有するモノマーであればいかなるモノマーも使用可能であるが、例えば、具体的には、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、又はボロン酸基を有するモノマーが用いられ、より具体的には、以下に示すものが挙げられる。
これらは1種を単独で使用してもよい、2種以上を併用してもよい。
【0052】
即ち、イオン性極性基を有するモノマーとしては、アクリル酸、フマル酸、メタクリル酸、4−安息香酸ビニル、更に、下記の化合物が挙げられる。
【0053】
【化8】

【0054】
また、カルボキシル基含有のモノマーとして、東亞合成製のアロニクスM−5300、M−5400、M−5600、三菱レーション製のアクリルエステルPA、HH、共栄社化学製のライトアクリレート HOA−HH、中村化学製のNKエステルSA、A−SAなどを用いることもできる。
【0055】
前記i)の合成方法で用いられるラジカル重合性基を有するモノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート及び、特開2008−166435公報段落番号〔0027〕に記載の化合物や、以下の化合物などが挙げられる。
【0056】
【化9】

【0057】
前記ii)の合成方法で用いられる二重結合前駆体を有するモノマーとしては、特開2008−166435公報の段落番号〔0027〕に記載の一般式で表される化合物が挙げられ、具体的には同〔0029〕記載の化合物や下記化合物などが挙げられる。
【0058】
【化10】

【0059】
また、前記ii)の合成方法において、二重結合前駆体を二重結合に変換するには、同公報の段落番号〔0032〕〜〔0036〕に記載の方法をとることができる。
【0060】
前記iii)の合成方法において用いられるポリマーは、相互作用性基を有するモノマー、イオン性極性基を有するモノマー、二重結合導入のための反応性基を有するモノマーと、をラジカル重合することにより合成される。このとき、イオン性極性基と反応性基は同一であってもよい。
二重結合導入のための反応性基を有するモノマーとしては、反応性基として、カルボキシル基、ヒドロキシ基、エポキシ基、又はイソシアネート基を有するモノマーが挙げられる。
【0061】
カルボキシル基含有のモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、安息香酸ビニル、東亞合成製のアロニクスM−5300、M−5400、M−5600、三菱レーション製のアクリルエステルPA、HH、共栄社化学製のライトアクリレート HOA−HH、中村化学製のNKエステルSA、A−SAなどが挙げられる。
ヒドロキシ基含有のモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1−(メタ)アクリロイル−3−ヒドロキシ−アダマンタン、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−(ヒドロキシメチル)−(メタ)アクリレート、2−(ヒドロキシメチル)−(メタ)アクリレートのメチルエステル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,5−ジヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシメチル−4−(メタ)アクリロイルメチル−シクロヘキサン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−アクリロイロキシプロピルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、1−メチル−2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルフタル酸、東亞合成(株)製のアロニクスM−554、M−154、M−555、M−155、M−158、日本油脂(株)製のブレンマーPE−200、PE−350、PP−500、PP−800、PP−1000、70PEP−350B、55PET800、以下の構造を有するラクトン変性アクリレートが使用できる。
CH=CRCOOCHCH[OC(=O)C10OH
(R=H又はMe、n=1〜5)
【0062】
なお、ヒドロキシ基含有モノマーとしてヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを用いる場合、高分子量体のポリマーを合成するといった観点から、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する2官能アクリレートを除去した原料を用いることができる。
精製の方法としては、蒸留、カラム精製が好ましい。更に好ましくは、下記(I)〜(IV)の工程を順次経ること精製される方法である。
(I)ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートと、該ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを合成する際に副生する2官能アクリレートと、を含む混合物を、水に溶解する工程
(II)得られた水溶液に、水と分離する第1の有機溶剤を加えた後、該第1の有機溶剤と前記2官能アクリレートとを含む層を水層から分離する工程
(III)前記水層に、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートよりも水溶解性の高い化合物を溶解する工程
(IV)前記水層に第2の有機溶剤を加えて、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートを抽出した後、濃縮する工程
【0063】
また、エポキシ基を有するモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、ダイセル化学製のサイクロマーA、Mなどが使用できる。
イソシアネート基を有するモノマーとしては、昭和電工製のカレンズAOI、MOIが使用できる。
なお、iii)の合成方法において用いられるポリマーは、更に他の共重合成分を含んでいてもよい。
【0064】
前記iii)の合成方法において、反応性基を有するポリマーと反応させる重合性基を有するモノマーとしては、ポリマー中の反応性基の種類によって異なるが、以下の組合せの官能基を有するモノマーを使用することができる。
即ち、(ポリマーの反応性基、モノマーの官能基)=(カルボキシル基、カルボキシル基)、(カルボキシル基、エポキシ基)、(カルボキシル基、イソシアネート基)、(カルボキシル基、ハロゲン化ベンジル)、(水酸基、カルボキシル基)、(水酸基、エポキシ基)、(水酸基、イソシアネート基)、(水酸基、ハロゲン化ベンジル)(イソシアネート基、水酸基)、(イソシアネート基、カルボキシル基)、(エポキシ基、カルボキシル基)等を挙げることができる。
上記のような官能基を有するモノマーとして、具体的には、アクリル酸、グリシジルアクリレート、サイクロマーA(ダイセル化学製)、カレンズAOI(昭和電工製)、メタクリル酸、グリシジルメタクリレート、サイクロマーM(ダイセル化学製)、カレンズMOI(昭和電工製)を使用することができる。
【0065】
以上のようにして合成された本発明における特定ポリマーは、共重合ユニット全体に対し、重合性基含有ユニット、イオン性極性基含有ユニットの割合は、既述の範囲であることが好ましいが、特に好ましくは、以下に示す態様である。
特定ポリマーでは、相互作用性基含有ユニットの含有割合が40mol%〜60mol%で、且つ、ラジカル重合性ユニットの含有割合が10mol%〜20mol%で、且つ、イオン性極性基含有ユニットの含有割合が30mol%〜50mol%であることが、最も好ましい態様である。
なお、特定ポリマーのイオン性極性価(あるいは酸価)は、1.5mmol/g〜10.0mmol/gの範囲であることが好ましく、1.7mmol/g〜5.0mmol/gがより好ましく、1.9mmol/g〜5.0mmol/gの範囲であることが更に好ましく、2.5mmol/g〜4.5mmol/gの範囲であることが特に好ましい。酸価がこの範囲であることで、水溶液での現像性付与と湿熱経時時の密着力低下の抑制とを両立させることができる。
なお、イオン性極性を有するユニットの分子量により最適なユニット数とイオン性極性価は変化するが、その場合はイオン性極性価が上記範囲に入ることを優先とする。
【0066】
なお、特定ポリマーに含まれるユニットは上述の2種或いは、所望により含まれる非解離性極性基を含むユニットを加えた3種に限定されるわけではない。例えば、特定ポリマーの合成に際し、重合性基をポリマーに反応させて導入する場合、設計値どおりに100%導入することが困難なことがあり、重合性基を導入すべき共重合ユニットに少量の未反応部分が残存する場合がある。このような場合には、重合性基及びイオン性極性基のいずれも含まない第3或いは第4のユニットとなる可能性もある。
【0067】
本発明における特定ポリマーの重量平均分子量は、3000以上15万以下が好ましく、更に好ましくは5000以上10万以下である。特に、重合感度の観点から、本発明における特定ポリマーの重量平均分子量は、20000以上であることが好ましい。更には、光硬化させて得られる被めっき層の膜厚を厚くし、めっき触媒又はその前駆体をより多く吸着させるといった観点から、重量平均分子量は60000以上であることが最も好ましい。上限値は15万であることが好ましい。
なお、ここで記載の重量平均分子量とは、GPC(使用溶剤:N−メチルピロリドン)を用いてポリスチレン換算により測定される値であり、例えば、次の条件で測定することができる。
・カラム:ガードカラム TOSOH TSKguardcolum Super AW-H
分離カラム TOSOH TSKgel Super AWM-H(サイズ6.0mm×15cmを3本連結)
・溶離液:N−メチルピロリドン(LiBr10mM含有)
・流速:0.35mL/min
・検出方法:RI
・温度:カラム40℃、インレット40℃、RI40℃
・サンプル濃度:0.1wt%
・注入量:60μL
また、本発明における特定ポリマーの重合度としては、20量体以上のものを使用することが好ましく、更に好ましくは30量体以上のものである。また、1500量体以下が好ましく、1000量体以下がより好ましい。
【0068】
本発明の被めっき層形成用組成物は、後述するように、溶剤として水と水溶性可燃性液体との混合溶剤を用いる。
上述の特定ポリマーは、組成物全体に対して、1質量%〜20質量%の範囲で含有することが好ましく、より好ましい範囲は、2質量%〜10質量%である。
【0069】
〔20質量%〜99質量%の水溶性可燃性液体と水とを含有する混合溶剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物は、前述の特定ポリマーに加え、この特定ポリマーを溶解しうる水溶性可燃性液体と水とを含有する混合溶剤を含有する。本発明における水溶性可燃性液体と水とを含有する混合溶剤は、全溶剤中に水溶性可燃性液体を20質量%〜99質量%を含有することを要する。ここで、水溶性可燃性液体以外の残分は水である混合溶剤であることが好ましい。混合溶剤中の水溶性可燃性液体の含有量は30質量%〜80質量%の範囲であることが好ましく、35質量%〜60質量%の範囲であることがより好ましい。
<水溶性可燃性液体>
水溶性可燃性液体と水との混合溶剤に用いられる水溶性可燃性液体としては、水に常温(25℃)において1質量%以上溶解する可燃性液体であれば特に限定されない。また、本明細書における可燃性液体とは、消防法における可燃性液体類を意味する。
水溶性可燃性液体としては、例えば、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などの有機溶剤が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、γ−ブチロラクトン、ヒドロキシアセトンなどが挙げられる。
エステル系溶剤としては、酢酸2−(2−エトキシエトキシ)エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチルなどが挙げられる。
【0070】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1−メトキシー2−プロパノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、3−アセチル−1−プロパノール、2−(アリルオキシ)エタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−アミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、(±)−2−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノエタノール、2,3−エポキシ−1−プロパノール、エチレングリコール、2−フルオロエタノール、ジアセトンアルコール、2−メチルシクロヘキサノール、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、グリセリン、2,2’,2’’−ニトリロトリエタノール、2−ピリジンメタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]エタノール、2,3−ブタンジオール、2−ブトキシエタノール、2,2’−チオジエタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、ジグリセリン、2,2’−メチルイミノジエタノール、1,2−ペンタンジオールなどが挙げられる。他に、アルコール系溶剤には、3−アミノ−1−プロパノール、メタクリル酸トリフルオロエチル、ペンタデカフルオロオクタノールなどのアルコール誘導体も含まれる。
【0071】
エーテル系溶剤としては、ビス(2−エトキシエチル)エーテル、ビス[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]エーテル、1、2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−[2−(2−クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、2−エトキシエタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−イソブトキシエタノール、2− 2−イソブトキシエトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシ酢酸、2−メトキシエタノールなどが挙げられる。
グリコール系溶剤としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどが挙げられる。
アミン系溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
チオール系溶剤としては、メルカプト酢酸、2−
ハロゲン系溶剤としては、3−ブロモベンジルアルコール、2−クロロエタノール、3−クロロ−1,2−プロパンジオールなどが挙げられる。
上記溶剤以外の水溶性可燃性液体に包含される溶剤としては、乳酸メチル、乳酸エチル、モルホリン、N−エチルモルホリン、ぎ酸、酢酸などが挙げられる。
混合溶剤中に含まれる水溶性可燃性液体は、総含有量が上記範囲であれば、1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0072】
〔水アルコール混合溶剤〕
前記水と水溶性可燃性液体とを含有する混合溶剤の最適な態様として、水溶性可燃性液体としてアルコール系溶剤を用いる水アルコール混合溶剤が挙げられる。
水アルコール溶剤は、全溶剤中にアルコールを20質量%〜99質量%を含有することを要する。ここで、アルコール以外の残分は水である混合溶剤であることが好ましい。混合溶剤中のアルコールの含有量は30質量%〜80質量%の範囲であることが好ましく、35質量%〜60質量%の範囲であることがより好ましい。
混合溶剤に使用されるアルコール系溶剤としては、前記したアルコール類及びアルコール誘導体が挙げられ、好適なものとして、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノールの如きアルコール系溶剤などが挙げられる。
混合溶剤中に含まれるアルコール系溶剤は1種でもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0073】
また、本発明における最適な溶剤であるアルコールと水とを含有する水アルコール混合溶剤には、前記アルコールに加えて、酢酸の如き酸、アルコールに包含されない他の水溶性可燃性液体であるアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンの如きケトン系溶剤、ホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンの如きアミド系溶剤、アセトニトリル、プロピロニトリルの如きニトリル系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチルの如きエステル系溶剤、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの如きカーボネート系溶剤、この他にも、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤、チオール系溶剤、ハロゲン系溶剤などを併用してもよい。これら併用可能な溶剤を用いる場合にも、混合溶剤中のアルコールの含有量は20質量%〜99質量%の範囲にあることを要する。
また、非極性の相互作用性基であるシアノ基を有する特定ポリマーを含有する被めっき層形成用組成物を調整する場合は、取り扱い安さから、併用される溶剤は、沸点が40℃〜200℃の溶剤が好ましく、60℃〜158℃がより好ましく、65℃〜120℃が更に好ましい。
【0074】
本発明における混合溶剤を調整するための水溶性可燃性液体の沸点は、蒸散のし易さの観点から、60℃〜158℃が好ましく、65℃〜120℃がより好ましい。特に好適な水と混合しうるアルコール系溶剤としては、例えば、メタノール(沸点:65℃)、エタノール(沸点:78℃)、イソプロピルアルコール(沸点:82℃)、n−プロピルアルコール(沸点:97℃)、1−メトシキ−2−プロパノール(沸点:119℃)などが好ましく挙げられる。
【0075】
本発明においては、上述のように、水と水溶性可燃性液体との混合溶剤を用いるが、作業のし易さの観点から、水溶性可燃性液体の引火点としては30℃以上のものが好ましく、40℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。
なお、本発明における引火点は、JIS−K2265に準拠するダク密閉式によって得られた測定値を意味する。
【0076】
−水−
本発明の被めっき層形成用組成物において溶剤として使用される水は、不純物を含まないことが好ましく、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などが好ましく、脱イオン水や蒸留水がより好ましい。
【0077】
−特定ポリマーの溶解性を高めるための添加剤−
本発明の被めっき層形成用組成物は、少なくとも水溶性可燃性液体を20質量%〜99質量%と、水とを含有する水溶性可燃性液体と水との混合溶剤を使用するが、特定ポリマーの溶解性を高めるために、さらに、添加剤を使用してもよい。
本発明においては、溶質である特定ポリマーのイオン性極性基として、カルボン酸基などの酸性基を有する場合、この酸性基をカルボン酸ナトリウムなどの塩とすることで、この特定ポリマーは、水アルコール混合溶剤に溶解し易くなる。カルボン酸基をカルボン酸ナトリウムに変換するために使用する添加剤としては、塩基性の化合物が使用することができ、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、アンモニア、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)などが使用できる。なかでも、好ましい添加剤として、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられ、水溶性化の度合い、最適な塩基性度の観点から、特に、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、及び、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0078】
〔水不溶性の光重合開始剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物は、エネルギー付与に対する感度を高めるために、水不溶性の光重合開始剤を含有する。
本発明における水不溶性の光重合開始剤とは、常温(25℃)の水に対し、光重合開始剤0.1質量%を添加し、攪拌後、10分間静置し、10分静置した後に目視で沈殿物が見られる化合物を指す。
使用される水不溶性の光重合開始剤は、吸収波長域が、250nm〜400nmの範囲に吸光ピークを持つものが好ましく、更に好ましくは280nm〜360nmの範囲に吸光ピークを持つ化合物である。
【0079】
本発明に好適に用いうる水不溶性の光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾインエチルエーテル、メチルベンゾインエーテル、エチルベンゾインエーテル、ブチルベンゾインエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルの如きベンゾイン化合物及びその誘導体;ベンジルジメチルケタールの如きベンジルケタール系化合物及びその誘導体;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きヒドロキシケトン系化合物及びその誘導体;ベンゾフェノン、4−フェニル−ベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノンの如きベンゾフェノン系化合物及びその誘導体;ミヒラーケトン、アンソロン、1−ベンゾイルシクロヘキサノン−1−オール、2−ヒドロキシ−2,2−ジメチルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンの如きアセトフェノン系化合物及びその誘導体;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−(メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オンの如きα−アミノアルキルフェノン系化合物及びその誘導体;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドの如きビスアシルフォスフィノキサイド系化合物及びその誘導体;2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネート、ビスアシルフォスフィンオキシドの如きアシルフォスフィンオキサイド系化合物及びその誘導体;イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンの如きチオキサントン系化合物及びその誘導体;エチルアントラキノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、β−メチルアントラキノン、tert−ブチルアントラキノンの如きアントラキノン系化合物及びその誘導体;1,2−オクタンジオン,1−(4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム))、エタノン,1−(9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル)−1−(o−アセチルオキシム)の如きオキスムエステル系化合物及びその誘導体が挙げられるが、水不溶性の開始剤であれば、これらに限定されるものではない。
これらのなかでも、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−(メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、1,2−オクタンジオン,1−(4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム))、エタノン,1−(9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル)−1−(o−アセチルオキシム)が好ましいものとして挙げられる。
【0080】
本発明の被めっき層形成用組成物には、水不溶性の光重合開始剤を1種のみ用いてもよく、2種類以上併用してもよい。その際、1種類以上の好ましい吸光ピ−クを持つ光開始剤と1種類以上のそれ以外の吸光ピークを持つ光開始剤を組み合わせてもよい。
水不溶性の光重合開始剤の含有量としては、前記特定ポリマーに対し1質量%〜20質量%であることが好ましく、5質量%〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0081】
〔増感剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物には、エネルギー付与が露光で行われる場合、その露光に対する感度をより高める目的で、前記水不溶性の光重合開始剤に加え、増感剤を含有させることもできる。
増感剤は、活性エネルギー線により励起状態となり、光重合開始剤と相互作用(例えば、エネルギー移動、電子移動等)することにより、ラジカルの発生を促進することが可能である。
【0082】
本発明に使用しうる増感剤としては、特に制限はなく、公知の増感剤の中から適宜選択することができる。このような増感剤としては、ベンゾフェノン誘導体、ベンズアンスロン誘導体、キノン類、アントラキノン類、芳香族ニトロ化合物、ナフトチアゾリン誘導体、ベンゾチアゾリン誘導体、キサントン類、ナフトチアゾール誘導体、ケトクマリン化合物、ベンゾチアゾール誘導体、ナフトフラノン化合物、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物フルオレノン化合物等を挙げることができる。
具体的には、ミヒラーケトン、N,N′−ジエチルアミノベンゾフェノン、ベンズアンスロン、(3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズ)アンスロンピクラミド、5−ニトロアセナフテン、2−ニトロフルオレン、2−ジベンゾイルメチレン−3−メチルナフトチアゾリン、3,3−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2,4,6−トリフェニルチアピリリウムパークロレート、2−(p−クロルベンゾイル)ナフトチアゾール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、9−フルオレノン、2−クロロ−9−フルオレノン、2−メチル−9−フルオレノン、9,10−アントラキノン、2−エチル−9,10−アントラキノン、2−t−ブチル−9,10−アントラキノン、2,6−ジクロロ−9,10−アントラキノン、キサントン、2−メチルキサントン、2−メトキシキサントン、ジベンザルアセトン、p−(ジメチルアミノ)フェニルスチリルケトン、p−(ジメチルアミノ)フェニル−p−メチルスチリルケトン等が挙げられる。
【0083】
さらに、メロシアニン色素類、例えば、2−(ヘテロサイクリルカルボニルメチレン)ベンゾ(又はナフト)チアゾリン、2−(ジヘテロサイクルカルボニルメチレン)ベンゾ(又はナフト)チアゾニン、2−ジベンゾイルメチレンベンゾ(又はナフト)チアゾリン類で、2−〔ビス(2−フロイル)メチレン〕−3−メチルベンゾチアゾリン、2−〔ビス(2−テノイル)メチレン〕−3−メチルベンゾチアゾニン、2−〔ビス(2−フロイル)メチレン〕−3−メチルナフトチアゾリン、2−〔ビス(2−フロイル)メチレン〕−3−メチルナフトチアゾリン、2−(2−フロイル)メチレン−3−メチルベンゾチアゾリン、2−ベンゾイルメチレン−3−メチルベンゾチアゾリン、2−ビス(ベンゾイルメチレン)ベンゾチアゾリン、2−ビス(ベンゾイルメチレン)ナフトチアゾリンやチオバルビツール酸環を有するチアゾール、ベンゾチアゾール、ナフトチアゾール、ベンゾセレナゾール系の増感色素が挙げられる。
【0084】
その他、増感剤としては、塩基性核を有する増感剤、酸性核を有する増感剤、蛍光増白剤を有する増感剤などを用いることもできる。
【0085】
これらの増感剤は、本発明の被めっき層形成用組成物中、特定ポリマーの質量に対して、1質量%〜30質量%程度の量で含有させることが好ましい。
【0086】
〔界面活性剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物は、界面活性剤を含有していてもよい。
本発明に用いられる界面活性剤は、前述の溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0087】
〔可塑剤〕
また、本発明の被めっき層形成用組成物には、必要に応じて可塑剤を添加することもできる。使用できる可塑剤としては、一般的な可塑剤が使用でき、フタル酸エステル類(ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジブチルエステル、ジ−2−エチルヘキシルエステル、ジノルマルオクチルエステル、ジイソノニルエステル、ジノニルエステル、ジイソデシルエステル、ブチルベンジルエステル)、アジピン酸エステル類(ジオクチルエステル、ジイソノニルエステル)、アゼラインサンジオクチル、セバシンサンエステル類(ジブチルエステル、ジオクチルエステル)リン酸トリクレシル、アセチルクエン酸トリブチル、エポキシ化大豆油、トリメリット酸トリオクチル、塩素化パラフィンやジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンのような高沸点溶剤も使用することができる。
【0088】
〔重合禁止剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物には、必要に応じて、重合禁止剤を添加することもできる。使用できる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ジターシャリーブチルハイドロキノン、2,5−ビス(1,1,3,3−テトラメチルブチル)ハイドロキノンなどのハイドロキノン類、p−メトキシフェノール、フェノールなどのフェノール類、ベンゾキノン類、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニロキシ フリーラジカル)、4−ヒドロキシTEMPOなどのフリーラジカル類、フェノチアジン類、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン、そのアルミニウム塩などのニトロソアミン類、カテコール類を使用することができる。
【0089】
〔硬化剤、硬化促進剤〕
また、後述のように、本発明の被めっき層形成用組成物を用いて密着補助層上に被めっき層を形成する場合、密着補助層の硬化を進めるために、被めっき層形成用組成物に硬化剤及び/又は硬化促進剤を添加することができる。例えば、密着補助層にエポキシ化合物が含まれる場合の硬化剤及び/又は硬化促進剤として、重付加型では、脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、酸無水物、フェノール、フェノールノボラック、ポリメルカプタン、活性水素を2個以上持つ化合物等、触媒型としては、脂肪族第三アミン、芳香族第三アミン、イミダゾール化合物、ルイス酸錯体などが挙げられる。
また、熱、光、湿気、圧力、酸、塩基などにより硬化開始するものとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリアミドアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒラジド、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスフェノールAノボラック、トリフェニルメタンノボラック、ビフェニルノボラック、ジシクロペンタジエンフェノールノボラック、テルペンフェノールノボラック、ポリメルカプタン、ポリサルファイド、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール−トリ−2−エチルヘキシル酸塩、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−(2−メチルイミダゾリル−(1))−エチルS−トリアジン、BFモノエチルアミン錯体、ルイス酸錯体、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、メラミン誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアミン塩、アミンイミド化合物、芳香族ジアゾニウム塩、ジアーリルヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、トリアリールセレニウム塩、ケチミン化合物などが挙げられる。
【0090】
これらの硬化剤及び/又は効果促進剤は、被めっき層形成用組成物の塗布性、基板やめっき膜との密着性などの観点から、溶剤を除去した残りの不揮発成分の0〜50質量%程度まで添加することが好ましい。
なお、硬化剤及び/又は硬化促進剤は密着補助層に添加してもよく、その場合は、密着補助層に添加した量と被めっき層形成用組成物中に添加した総和量で上記範囲を満たすことが好ましい。
【0091】
〔その他の添加剤〕
本発明の被めっき層形成用組成物には、更に、ゴム成分(例えば、CTBN)、難燃化剤(例えば、りん系難燃化剤)、希釈剤やチキソトロピー化剤、顔料、消泡剤、レベリング剤、カップリング剤などを添加してもよい。また、これらの添加剤は必要に応じて密着補助層に添加してもよい。
【0092】
本発明の被めっき層形成用組成物として、特定ポリマーと各種の添加剤とを適宜混合した組成物を用いることで、形成された被めっき層の物性、例えば、熱膨張係数、ガラス転移温度、ヤング率、ポアソン比、破断応力、降伏応力、熱分解温度などを最適に設定することができる。特に、破断応力、降伏応力、熱分解温度については、より高い方が好ましい。
得られた被めっき層は、温度サイクル試験や熱経時試験、リフロー試験などで熱耐久性を測定することができ、例えば、熱分解に関しては、200℃環境に1時間曝した場合の質量減少が20%以下であると、十分に熱耐久性を有していると評価できる。
【0093】
本発明の被めっき層用組成物は、前述の水と水溶性可燃性液体との混合溶剤中に、本発明の要件である特定ポリマーと水不溶性の光重合開始剤とが溶解して含有されることを特徴とする。即ち、水不溶性の光重合開始剤は、本発明における如き水と水溶性可燃性液体との混合溶剤には溶解し、本発明の組成物は均一な溶液の態様を示し、水不溶性の光重合開始剤や増感色素が固体分散された状態で存在する組成物は本発明の被めっき層用組成物には包含されない。
本発明においては、被めっき層用組成物が、特定ポリマーと光重合開始剤とが溶解されてなる均一な溶液であることにより、不溶化物を含有する固体分散液に比較して、これを用いることで、より解像度に優れた被めっき層パターンが形成される。
前記特定ポリマーと水不溶性の光重合開始剤とが溶解していることは、被めっき層用組成物、即ち、特定ポリマー1質量%〜20質量%と、水不溶性の光重合開始剤とを、全溶剤中に水溶性可燃性液体を20質量%〜99質量%と水とを含有する溶剤中に添加し、攪拌しながら溶解させることで得られる組成物を調製後、室温(25℃)にて10分間静置し、目視にて観察することで確認される。目視で調整後10分間静置した組成物(溶液)を確認した場合、沈殿が見られないものは「溶解している」と判定し、沈殿が確認された場合は「溶解していない」と判定する。
【0094】
<金属パターン材料の作製方法>
本発明の金属パターン材料の作製方法は、(1)基板上に、本発明の被めっき層形成用組成物を塗布した後、該被めっき層形成用塗布膜に対してエネルギーを付与して、その領域の当該被めっき層形成用塗布膜を硬化させる工程と、(2)前記基板上の前記被めっき層形成用塗布膜の未硬化部を水溶液で現像し、パターン状の被めっき層を形成する工程と、(3)該パターン状の被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、(4)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、を有することを特徴とする。
以下、この(1)〜(4)の各工程について説明する。
【0095】
〔(1)工程〕
本発明の金属パターン材料の作製方法における(1)工程では、基板上に、本発明の被めっき層形成用組成物を塗布した後、該被めっき層形成用塗布膜に対してエネルギーを付与して、エネルギー付与領域の当該被めっき層形成用塗布膜を硬化させる。
本発明においては、被めっき層中の、特定ポリマーが、分子内のラジカル重合性基により基板に結合していることが好ましい態様である。
【0096】
本発明の被めっき層形成用組成物を基板に塗布する場合には、その塗布量は、めっき触媒又はその前駆体との充分な相互作用形成性の観点からは、固形分換算で、0.1g/m〜10g/mが好ましく、特に0.5g/m〜5g/mが好ましい。
なお、基板上に、特定ポリマーを含有する組成物を塗布し、乾燥させて、特定ポリマーを含有する層を形成する場合、塗布と乾燥との間に、20℃〜40℃で0.5時間〜2時間放置させて、残存する溶剤を除去してもよい。
【0097】
本発明の被めっき層形成用組成物の基板への塗布は、基板を、該被めっき層形成用組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、後述するように、被めっき層形成用組成物からなる層を基板表面(密着補助層表面)に、塗布法により形成することが好ましい。
なお、基板が樹脂フィルムであって、この樹脂フィルムの両面に対して被めっき層を形成する場合にも、被めっき層を両面同時に形成し易いといった観点から、塗布法を用いることが好ましい。
【0098】
(エネルギー付与)
本工程では、基板に本発明の被めっき層形成用組成物を塗布した後、この被めっき層形成用塗布膜に対し、エネルギー付与を行う。
エネルギー付与には、加熱や露光などが用いられることが好ましく、また、加熱と露光を併用してもよい。なお、パターン像の形成容易性の観点からは、露光が用いられることが好ましい。
露光には、UVランプ、可視光線などによる光照射等が用いられる。光源としては、好ましくは、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、等がある。他に、放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、赤外線レーザーによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や、赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
なかでも、感度及び解像度の観点から、250nm〜400nmの露光波長で露光することが好ましく、より好ましくは、280nm〜370nmの露光波長である。
露光時間としては、特定ポリマーの反応性及び光源により異なるが、通常、露光工程全体で1秒〜5時間の範囲である。例えば、露光工程でレーザを用いる場合、10〜300μmのビーム径のレーザで、長さ10cmの線を10本などの露光であれば、数秒〜数分で描かれ、1ヶ所当たりの露光時間は1秒を下回ることもある。
また、露光エネルギーとしては、10〜8000mJ程度であればよく、好ましくは、100mJ〜3000mJの範囲である。
【0099】
エネルギー付与の方法として、パターン状に加熱を行う場合、赤外線や遠赤外線による露光が用いられる。
なお、パターン露光後の付加的なエネルギー付与として加熱を用いることもできる。付加的な加熱処理工程を実施する場合、送風乾燥機、オーブン、ホットプレート、赤外線乾燥機、加熱ドラムなどを用いることができる。
【0100】
上記のようなエネルギー付与が行われると、その領域でのみ特定ポリマーの硬化反応が生起する。その結果、基板上では、本発明の被めっき層形成用組成物のエネルギー付与領域のみが硬化することとなる。
【0101】
(基板)
本工程で用いられる基板としては、形状保持性を有するものであればよく、その表面が、前述の特定ポリマーと化学結合しうる機能を有することが好ましい。具体的には、基板自体が露光によりラジカルを発生しうるものであるか、基材上に、露光によりラジカルを発生しうる中間層(例えば、後述する密着補助層)を設け、この基材と中間層とで基板が構成されていてもよい。
【0102】
(基材、基板)
本発明に使用される基材は、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリイミド、エポキシ、ビスマレインイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が含まれる。本発明に使用される基材としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂が好ましい。
なお、これらの基材表面が、特定ポリマーが直接化学結合した状態を形成しうる機能を有している場合には、その基材そのものを基板として用いてもよい。
【0103】
本発明における基板として、特開2005−281350号公報の段落番号[0028]〜[0088]に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドを含む基材を用いることもできる。
【0104】
また、本発明の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等に適用することができる。このような用途に用いる場合は、以下に示す、絶縁性樹脂を含んだ基板、具体的には、絶縁性樹脂からなる基板、又は、絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板を用いることが好ましい。
【0105】
絶縁性樹脂からなる基板、絶縁性樹脂からなる層を得る場合には、公知の絶縁性樹脂組成物が用いられる。この絶縁性樹脂組成物には、主たる樹脂に加え、目的に応じて種々の添加物を併用することができる。例えば、絶縁層の強度を高める目的で、多官能のアクリレートモノマーを添加する、絶縁体層の強度を高め、電気特性を改良する目的で、無機、若しくは有機の粒子を添加する、などの手段をとることもできる。
なお、本発明における「絶縁性樹脂」とは、公知の絶縁膜や絶縁層に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂であることを意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
【0106】
絶縁性樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、イソシアネート系樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体等が挙げられる。
【0107】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート等が挙げられる。
その他の熱可塑性樹脂としては、1,2−ビス(ビニルフェニレン)エタン樹脂(1,2−Bis(vinylphenyl)ethane)、若しくはこれとポリフェニレンエーテル樹脂との変性樹脂(天羽悟ら、Journal of Applied Polymer Science Vol.92,1252−1258(2004)に記載)、液晶性ポリマー(具体的には、クラレ製のベクスターなど)、フッ素樹脂(PTFE)などが挙げられる。
【0108】
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これはそれぞれの欠点を補いより優れた効果を発現する目的で行われる。例えば、ポリフェニレンエーテル(PPE)などの熱可塑性樹脂は熱に対しての耐性が低いため、熱硬化性樹脂などとのアロイ化が行われている。たとえば、PPEとエポキシ、トリアリルイソシアネートとのアロイ化、或いは重合性官能基を導入したPPE樹脂とそのほかの熱硬化性樹脂とのアロイ化として使用される。またシアネートエステルは熱硬化性の中ではもっとも誘電特性の優れる樹脂であるが、それ単独で使用されることは少なく、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、熱可塑性樹脂などの変性樹脂として使用される。これらの詳細に関しては、“電子技術”2002/9号、P35に記載されている。また、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂及び/又はフェノール樹脂を含み、熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂及び/又はポリエーテルスルフォン(PES)を含むものも誘電特性を改善するために使用される。
【0109】
絶縁性樹脂組成物には、架橋を進めるために重合性の二重結合を有する化合物のようなもの、具体的には、アクリレート、メタクリレート化合物を含有していてもよく、特に多官能のものが好ましい。そのほか、重合性の二重結合を有する化合物として、熱硬化性樹脂、若しくは熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等に、メタクリル酸やアクリル酸等を用い、樹脂の一部を(メタ)アクリル化反応させた樹脂を用いてもよい。
【0110】
本発明における絶縁性樹脂組成物には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
【0111】
更に、この絶縁性樹脂組成物には必要に応じて一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種又は二種以上配合してもよい。中でも、充填材としてはシリカを用いることが好ましい。
また、更に、この絶縁性樹脂組成物には、必要に応じて着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、などの各種添加剤を一種又は二種以上添加してもよい。
【0112】
これらの材料を絶縁性樹脂組成物に添加する場合は、いずれも、樹脂に対して、1質量%〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは10質量%〜80質量%の範囲で添加される。この添加量が、1質量%未満である場合は、上記の特性を強化する効果がなく、また、200質量%を超えると場合には、樹脂特有の強度などの特性が低下する。
【0113】
このような用途に用いる場合の基板として、具体的には、1GHzにおける誘電率(比誘電率)が3.5以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。また、1GHzにおける誘電正接が0.01以下である絶縁性樹脂からなる基板であるか、又は、該絶縁性樹脂からなる層を基材上に有する基板であることが好ましい。
絶縁性樹脂の誘電率及び誘電正接は、常法により測定することができる。例えば、「第18回エレクトロニクス実装学会学術講演大会要旨集」、2004年、p189、に記載の方法に基づき、空洞共振器摂動法(例えば、極薄シート用εr、tanδ測定器、キーコム株式会社製)を用いて測定することができる。
このように、本発明においては誘電率や誘電正接の観点から絶縁樹脂材料を選択することも有用である。誘電率が3.5以下であり、誘電正接が0.01以下の絶縁性樹脂としては、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、シアネートエステル樹脂、ビス(ビスフェニレン)エタン樹脂などが挙げられ、更にそれらの変性樹脂も含まれる。
【0114】
本発明に用いられる基板は、半導体パッケージ、各種電気配線基板等への用途を考慮すると、表面凹凸が500nm以下であることが好ましく、より好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下、最も好ましくは20nm以下である。この基板の表面凹凸(中間層や密着補助層が設けられている場合はその層の表面凹凸)が小さくなるほど、得られた金属パターン材料を配線等に適用した場合に、高周波送電時の電気損失が少なくなり好ましい。
【0115】
本発明においては、基板が板状物、例えば、樹脂フィルム(プラスチックフィルム)であれば、その両面に(1)工程を施し、後述する(2)工程を経れば、樹脂フィルムの両面に被めっき層を形成することができる。
このように樹脂フィルム(基板)の両面に被めっき層が形成された場合には、更に、後述する(3)工程、及び(4)工程を行うことで、両面に金属膜が形成された金属パターン材料を得ることができる。
【0116】
(密着補助層)
本発明のパターン形成に用いる基板には、さらに密着補助層を設けてもよい。以下、本発明における密着補助層について説明する。なお、基材が板状物であれば、その両面に密着補助層を形成してもよい。
密着補助層は、基板と被めっき層との密着を確保する中間層であり、この層は基板と被めっき層に親和性があるものでもよく、硬化時に特定ポリマーと反応し、化学結合を形成してもよい。
密着補助層としては、基材との密着性が良好な樹脂組成物、及び、露光によりラジカルを発生しうる化合物を用いて形成されることが好ましい。なお、樹脂組成物を構成する樹脂が、ラジカルを発生しうる部位を有する場合には、ラジカルを発生しうる化合物を別途添加する必要はない。
【0117】
本発明における密着補助層としては、例えば、基材が、多層積層板、ビルドアップ基板、若しくはフレキシブル基板の材料として用いられてきた公知の絶縁樹脂からなる場合には、該基材との密着性の観点から、密着補助層を形成する際に用いられる樹脂組成物としても、絶縁樹脂組成物が用いられることが好ましい。
以下、基材が絶縁樹脂からなり、密着補助層が絶縁樹脂組成物から形成される態様について説明する。
【0118】
密着補助層を形成する際に用いられる絶縁樹脂組成物は、基材を構成する電気的絶縁性の樹脂と同じものを含んでいてもよく、異なっていてもよいが、ガラス転移点や弾性率、線膨張係数といった熱物性的が近いものを使用することが好ましい。具体的には、例えば、基材を構成する絶縁樹脂と同じ種類の絶縁樹脂を使用することが密着の点で好ましい。
また、これ以外の成分として、密着補助層の強度を高める、また、電気特性を改良するために、無機若しくは有機の粒子を添加してもよい。
【0119】
なお、本発明において、密着補助層に使用される絶縁樹脂とは、公知の絶縁膜に使用しうる程度の絶縁性を有する樹脂を意味するものであり、完全な絶縁体でないものであっても、目的に応じた絶縁性を有する樹脂であれば、本発明に適用しうる。
絶縁樹脂の具体例としては、例えば、熱硬化性樹脂でも熱可塑性樹脂でもまたそれらの混合物でもよく、例えば、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シソシアネート系樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド、ABS樹脂、ニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0120】
また、密着補助層に用いられる絶縁樹脂としては、めっき触媒受容性の感光性樹脂組成物と相互作用を形成し得る活性点を発生させる骨格を有する樹脂を用いることもできる。例えば、特開2005−307140号公報の段落番号〔0018〕〜〔0078〕に記載の重合開始部位を骨格中に有するポリイミドが用いられる。
【0121】
本発明における密着補助層は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、目的に応じて、種々の化合物を添加することができる。
具体的には、例えば、加熱時に応力を緩和させることができる、ゴム、SBRラテックスのような物質、膜性改良のためのバインダー、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤などが挙げられる。
【0122】
また、本発明における密着補助層には、樹脂被膜の機械強度、耐熱性、耐候性、難燃性、耐水性、電気特性などの特性を強化するために、樹脂と他の成分とのコンポジット(複合素材)も使用することができる。複合化するのに使用される材料としては、紙、ガラス繊維、シリカ粒子、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂などを挙げることができる。
【0123】
更に、この密着補助層には、必要に応じて、一般の配線板用樹脂材料に用いられる充填剤、例えば、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウムなどの無機フィラー、硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリルポリマーなどの有機フィラーを一種又は二種以上配合してもよい。
【0124】
また、更にこの密着補助層には、必要に応じて、着色剤、難燃剤、接着性付与剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤を、一種又は二種以上添加してもよい。
【0125】
これらの材料を添加する場合は、いずれも、主成分となる樹脂に対して、0質量%〜200質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0質量%〜80質量%の範囲で添加される。密着補助層と隣接する基材とが、熱や電気に対して同じ若しくは近い物性値を示す場合には、これら添加物は必ずしも添加する必要はない。添加物を、樹脂に対して200質量%を超える範囲で用いる場合には、樹脂自体が本来有する強度などの特性が低下する懸念がある。
【0126】
密着補助層には、前述のように、樹脂組成物と露光によりラジカルを発生しうる化合物が用いられることが好ましい。
ここで、露光によりラジカルを発生しうる化合物としては、従来公知の光重合開始剤や感光性樹脂などが用いられる。
この光重合開始剤としては、具体的には、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン(4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、の如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類;トリフェニルスルホニウムクロライド、トリフェニルスルホニウムペンタフルオロフォスフェートなどのスルホニウム塩、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムサルフェートなどのヨードニウム塩などが挙げられる。
【0127】
密着補助層に含有させる光重合開始剤(露光によりラジカルを発生しうる化合物)の量は、固形分で0.1質量%〜50質量%であることが好ましく、1.0質量%〜30質量%であることがより好ましい。
【0128】
本発明における密着補助層の厚みは、一般に、0.1μm〜10μmの範囲であり、0.5μm〜7μmの範囲であることが好ましい。密着補助層を設ける場合、厚みが上記一般的な範囲であれば、隣接する基材や、被めっき層との十分な密着強度が得られ、また、一般の接着剤を用いるのに比較して薄層でありながら、その接着剤による層と同様の密着性が達成される。
【0129】
また、本発明における密着補助層の表面は、形成されるめっき金属膜の物性を向上させる観点から、JIS B 0601(1994年)、10点平均高さ法で測定した表面粗さRzが3μm以下であるものが好ましく、Rzが1μm以下であることがより好ましい。密着補助層の表面平滑性が上記値の範囲内、即ち、平滑性が高い状態であれば、回路が極めて微細な(例えば、ライン/スペースの値が25/25μm以下の回路パターン)プリント配線板を製造する際に、好適に用いられる。
【0130】
密着補助層は基材表面に、塗布法、転写法、印刷法などの公知の層形成方法を適用して形成される。
密着補助層は、所望により、印刷法(例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法、インプリント法など)や、現像法(例えば、湿式エッチング、乾式エッチング、アブレーション、光による硬化・可塑化(ネガ型/ポジ型)など)などでパターン化されてもよい。
【0131】
また、密着補助層は基材上に形成された後、何らかのエネルギーを与えて硬化処理を行ってもよい。与えるエネルギーとしては、光、熱、圧力、電子線などが挙げられるが、本実施形態においては熱又は光が一般的であり、熱の場合は、60℃〜300℃の熱を5分〜120分加えることが好ましい。また、加熱硬化の条件は、基材の材料の種類、密着補助層を構成する樹脂組成物の種類等で異なり、これらの素材の硬化温度にもよるが、120℃〜220℃で20分〜120分の範囲で選択されることが好ましい。
【0132】
この硬化処理は密着補助層の形成後すぐに行ってもよく、密着補助層形成後に5分〜10分程度の予備硬化処理を行っておけば、密着補助層形成後に行われる他のすべてのそれぞれの工程を行ったあとに実施してもよい。
【0133】
密着補助層の形成後、その表面に形成される被めっき層に対する密着性向上の目的で、乾式及び/又は湿式法により表面を粗化してもよい。乾式粗化法としては、バフ、サンドブラスト、等の機械的研磨やプラズマエッチング等が挙げられる。一方、湿式粗化法としては、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸、等の酸化剤や、強塩基や樹脂膨潤溶剤を用いる方法等の化学薬品処理が挙げられる。
【0134】
〔(2)工程〕
本発明の金属パターン材料の作製方法における(2)工程では、前記(1)工程後、基板上の被めっき層形成用組成物の未硬化領域を水溶液で現像し、パターン状の被めっき層を形成する。
【0135】
(水溶液による現像)
本工程で用いられる水溶液としては、酸性水溶液、中性水溶液、アルカリ性水溶液が挙げられる。
酸性水溶液としては、塩酸水溶液、硫酸水溶液、硝酸水溶液が用いられる。
また、中性水溶液としては水に界面活性剤を溶解させたものが用いられアニオン性、ノニオン系、カチオン系の界面活性剤を使用することができる。
中でも、アルカリ水溶液が好ましく、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウムの水溶液が用いられる。
これらの水溶液の濃度は0.01質量%〜10質量%である。濃度はイオン性極性性基のpKaや所望とする現像時間により決められる。
【0136】
また、現像方法としては、シャワー洗浄、浸漬法などが使用できる。また、現像液を攪拌して、そこへ基板を浸漬して現像することもできる。
現像条件としては、現像温度は室温〜50℃が好ましく、現像時間は5秒〜10分が好ましい。
【0137】
上記のような現像により、基板上には、パターン状の被めっき層が形成される。
得られた被めっき層は、めっき触媒又はその前駆体との充分な相互作用形成性の観点から、膜厚が、0.2μm〜1.5μmであることが好ましく、0.3μm〜1.5μmがより好ましく、0.6μm〜1.2μmが特に好ましい。
【0138】
〔(3)工程〕
本発明の金属パターン材料の作製方法における(3)工程では、前記(2)工程において形成された被めっき層に、めっき触媒又はその前駆体を付与する。
本工程においては、被めっき層を構成する特定ポリマーが有する相互作用性基が、その機能に応じて、付与されためっき触媒又はその前駆体を付着(吸着)する。
ここで、めっき触媒又はその前駆体としては、後述する(4)工程における、めっきの触媒や電極として機能するものが挙げられる。そのため、めっき触媒又はその前駆体は、(4)工程におけるめっきの種類により決定される。
なお、ここで、本工程において用いられるめっき触媒又はその前駆体は、無電解めっき触媒又はその前駆体であることが好ましい。
【0139】
(無電解めっき触媒)
本発明において用いられる無電解めっき触媒は、無電解めっき時の活性核となるものであれば、如何なるものも用いることができ、具体的には、ものであり、自己触媒還元反応の触媒能を有する金属(Niよりイオン化傾向の低い無電解めっきできる金属として知られるもの)などが挙げられ、具体的には、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、触媒能の高さから、Ag、Pdが特に好ましい。
この無電解めっき触媒は、金属コロイドとして用いてもよい。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができる。
【0140】
(無電解めっき触媒前駆体)
本工程において用いられる無電解めっき触媒前駆体とは、化学反応により無電解めっき触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には、上記無電解めっき触媒として挙げた金属の金属イオンが用いられる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解めっき触媒である0価金属になる。無電解めっき触媒前駆体である金属イオンは、被めっき層へ付与した後、無電解めっき浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解めっき触媒としてもよいし、無電解めっき触媒前駆体のまま無電解めっき浴に浸漬し、無電解めっき浴中の還元剤により金属(無電解めっき触媒)に変化させてもよい。
【0141】
実際には、無電解めっき前駆体である金属イオンは、金属塩を用いて被めっき層上に付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO、MCln、M2/n(SO)、M3/n(PO)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、配位可能な官能基の種類数、及び触媒能の点で、Agイオン、Pdイオンが好ましい。
【0142】
本発明で用いられる無電解めっき触媒又はその前駆体の好ましい例の一つとして、パラジウム化合物が挙げられる。このパラジウム化合物は、めっき処理時に活性核となり金属を析出させる役割を果たす、めっき触媒(パラジウム)又はその前駆体(パラジウムイオン)として作用する。パラジウム化合物としては、パラジウムを含み、めっき処理の際に核として作用すれば、特に限定されないが、例えば、パラジウム(II)塩、パラジウム(0)錯体、パラジウムコロイドなどが挙げられる。
【0143】
パラジウム塩としては、例えば、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、臭化パラジウム、炭酸パラジウム、硫酸パラジウム、ビス(ベンゾニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(エチレンジアミン)パラジウム(II)塩化物などが挙げられる。なかでも、取り扱いやすさと溶解性の点で、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、硫酸パラジウム、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)が好ましい。
パラジウム錯体としては、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム錯体、ジパラジウムトリスベンジリデンアセトン錯体などが挙げられる。
パラジウムコロイドは、パラジウム(0)から構成される粒子で、その大きさは特に制限されないが、液中での安定性の観点から、5nm〜300nmが好ましく、10nm〜100nmがより好ましい。パラジウムコロイドは、必要に応じて、他の金属を含んでいてもよく、他の金属としては、例えば、スズなどが挙げられる。パラジウムコロイドとしては、例えば、スズ−パラジウムコロイドなどが挙げられる。なお、パラジウムコロイドは、公知の方法で合成してもよいし、市販品を使用してもよい。例えば、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、パラジウムイオンを還元することによりパラジウムコロイドを作製することができる。
【0144】
また、本発明で用いられる無電解めっき触媒又はその前駆体としては、選択的に被めっき層に吸着させることができるといった観点から、銀、及び銀イオンが好ましい別の例として挙げられる。
めっき触媒前駆体として銀イオンを用いる場合、以下に示すような銀化合物が解離したものを好適に用いることができる。銀化合物の具体例としては、硝酸銀、酢酸銀、硫酸銀、炭酸銀、シアン化銀、チオシアン酸銀、塩化銀、臭化銀、クロム酸銀、クロラニル酸銀、サリチル酸銀、ジエチルジチオカルバミン酸銀、ジエチルジチオカルバミド酸銀、p−トルエンスルホン酸銀が挙げられる。この中でも、水溶性の観点から硝酸銀が好ましい。
【0145】
無電解めっき触媒である金属、或いは、無電解めっき前駆体である金属塩を被めっき層に付与する方法としては、金属を適当な分散媒に分散した分散液、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その分散液又は溶液を被めっき層上に塗布するか、或いは、その分散液又は溶液中に被めっき層が形成された基板を浸漬すればよい。
【0146】
また、前記(1)工程において、基板上に、本発明の被めっき層形成用組成物を塗布するが、この組成物中に、無電解めっき触媒又はその前駆体を添加する方法を用いてもよい。つまり、特定ポリマーと、無電解めっき触媒又はその前駆体と、を含有する組成物(本発明の被めっき層形成用組成物)を、基板上に接触させて、露光・現像を行うことにより、めっき触媒又はその前駆体を含有する被めっきパターン(パターン状の被めっき層)を形成することができる。なお、この方法を用いれば、本発明における(1)工程〜(3)工程が1工程で行えることになる。
【0147】
なお、基板として樹脂フィルムを用い、該樹脂フィルムの両面に対して被めっき層が形成されている場合には、その両面の被めっき層に対して同時に無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させるために、上記の浸漬法を用いることが好ましい。
【0148】
上記のように無電解めっき触媒又はその前駆体を接触させることで、被めっき層中の相互作用性基に、ファンデルワールス力のような分子間力による相互作用、又は、孤立電子対による配位結合による相互作用を利用して、無電解めっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
このような吸着を充分に行なわせるという観点からは、分散液、溶液、組成物中の金属濃度、又は溶液中の金属イオン濃度は、0.001質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.005質量%〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。
また、接触時間としては、30秒〜24時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0149】
なお、無電解めっき触媒又はその前駆体を含有する溶液、分散液、或いは組成物にパラジウム化合物を用いる場合、パラジウム化合物は、溶液、分散液、或いは組成物の全量に対して、0.001質量%〜10質量%の範囲で用いることが好ましく、0.05質量%〜5質量%で用いることがより好ましく、更に0.10質量%〜1質量%で用いることが好ましい。
また、無電解めっき触媒前駆体を含有する溶液に銀化合物を用いる場合、銀化合物は、溶液の全量に対して、0.1質量%〜20質量%の範囲で用いることが好ましく、0.5質量%〜15質量%の範囲で用いるがより好ましく、更に1質量%〜10質量%の範囲で用いるが好ましい。
どちらの化合物を用いる場合であっても、含有量が少なすぎると後述するめっきの析出がし難くなり、含有量が多すぎると、所望とされない領域までめっきが析出したり、エッチング残渣除去性が損なわれたりすることがある。
【0150】
被めっき層のめっき触媒又はその前駆体の吸着量に関しては、使用する無電解めっき触媒又はその前駆体の種類にもよるが、例えば、銀イオンの場合は、無電解めっきの析出性の観点から、300mg/m以上が好ましく、500mg/m以上がより好ましく、600mg/m以上が更に好ましい。また、基板との密着力の高い金属パターンを作製するという観点からは、被めっき層の銀イオンの吸着量は1000mg/m以下であることが好ましい。
また、パラジウムイオンの場合、被めっき層の吸着量は、無電解めっきの析出性の観点から、5mg/m以上が好ましく、10mg/m以上がより好ましい。また、基板との密着力の高い金属パターンを作製するという観点からは、被めっき層のパラジウムイオンの吸着量は1000mg/m以下であることが好ましい。
【0151】
(その他の触媒)
本発明において、後述の(4)工程において、被めっき層に対して、無電解めっきを行わず直接電気めっきを行うために用いられる触媒としては、0価金属を使用することができる。この0価金属としては、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられ、中でも、多座配位可能なものが好ましく、特に、相互作用性基(シアノ基)に対する吸着(付着)性、触媒能の高さから、Pd、Ag、Cuが好ましい。
【0152】
(有機溶剤、及び水)
上記のようなめっき触媒又は前駆体は、前述のように、分散液や溶液(触媒液)として被めっき層に付与される。
本発明における触媒液には、有機溶剤や水が用いられる。
この有機溶剤を含有することで、被めっき層に対するめっき触媒又は前駆体の浸透性が向上し、相互作用性基に効率よくめっき触媒又はその前駆体を吸着させることができる。
【0153】
本発明における触媒液には、水を用いてもよく、この水としては、不純物を含まないことが好ましく、そのような観点からは、RO水や脱イオン水、蒸留水、精製水などを用いるのが好ましく、脱イオン水や蒸留水を用いるのが特に好ましい。
【0154】
めっき触媒液の調製に用いられる有機溶剤としては、被めっき層に浸透しうる溶剤であれば特に制限は無いが、具体的には、アセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、エチレングリコールジアセテート、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、アセトフェノン、2−(1−シクロヘキセニル)、プロピレングリコールジアセテート、トリアセチン、ジエチレングリコールジアセテート、ジオキサン、N−メチルピロリドン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブなどを用いることができる。
【0155】
また、その他の有機溶剤としては、ダイアセトンアルコール、γブチロラクトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコールターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4ジオキサン、n−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。
【0156】
特に、めっき触媒又はその前駆体との相溶性、及び被めっき層への浸透性の観点では水溶性の有機溶剤が好ましく、アセトン、ジメチルカーボネート、ジメチルセロソルブ、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルが好ましい。
【0157】
更に、本発明における触媒液には、目的に応じて他の添加剤を含有することができる。
他の添加剤としては、例えば、膨潤剤(ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル類等の有機化合物など)や、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、双性、ノニオン性及び低分子性又は高分子性など)などが挙げられる。
【0158】
以上説明した(3)工程を経ることで、被めっき層中の相互作用性基とめっき触媒又はその前駆体との間に相互作用を形成することができる。
【0159】
〔(4)工程〕
本発明の金属パターン材料の作製方法における(4)工程では、無電解めっき触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対し、めっきを行うことで、めっき膜が形成される。形成されためっき膜は、優れた導電性、密着性を有する。
本工程において行われるめっきの種類は、無電解めっき、電気めっき等が挙げられ、前記(3)工程において、被めっき層との間に相互作用を形成しためっき触媒又はその前駆体の機能によって、選択することができる。
つまり、本工程では、めっき触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対し、電気めっきを行ってもよいし、無電解めっきを行ってもよい。
中でも、本発明においては、被めっき層中に発現するハイブリッド構造の形成性及び密着性向上の点から、無電解めっきを行うことが好ましい。また、所望の膜厚のめっき層を得るために、無電解めっきの後に、更に電気めっきを行うことがより好ましい態様である。
以下、本工程において好適に行われるめっきについて説明する。
【0160】
(無電解めっき)
無電解めっきとは、めっきとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解めっきは、例えば、無電解めっき触媒が付与された基板を、水洗して余分な無電解めっき触媒(金属)を除去した後、無電解めっき浴に浸漬して行なう。使用される無電解めっき浴としては一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
また、無電解めっき触媒前駆体が付与された基板を、無電解めっき触媒前駆体が被めっき層に吸着又は含浸した状態で無電解めっき浴に浸漬する場合には、基板を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解めっき浴中へ浸漬される。この場合には、無電解めっき浴中において、めっき触媒前駆体の還元とこれに引き続き無電解めっきが行われる。ここで使用される無電解めっき浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解めっき浴を使用することができる。
なお、無電解めっき触媒前駆体の還元は、上記のような無電解めっき液を用いる態様とは別に、触媒活性化液(還元液)を準備し、無電解めっき前の別工程として行うことも可能である。触媒活性化液は、無電解めっき触媒前駆体(主に金属イオン)を0価金属に還元できる還元剤を溶解した液で、液全体に対する該還元剤の濃度が0.1質量%〜50質量%、好ましくは1質量%〜30質量%がよい。還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランのようなホウ素系還元剤、ホルムアルデヒド、次亜リン酸などの還元剤を使用することが可能である。
浸漬の際には、無電解めっき触媒又はその前駆体が接触する被めっき層表面付近の無電解めっき触媒又はその前駆体の濃度を一定に保つ上で、攪拌或いは揺動を加えながら浸漬することが好ましい。
【0161】
一般的な無電解めっき浴の組成としては、溶剤の他に、1.めっき用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このめっき浴には、これらに加えて、めっき浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
【0162】
めっき浴に用いられる有機溶剤としては、水に可溶な溶剤である必要があり、その点から、アセトンなどのケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好ましく用いられる。
【0163】
無電解めっき浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
【0164】
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物が選択される。
例えば、銅の無電解めっきの浴は、銅塩としてCuSO、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤、トリアルカノールアミンなどが含まれている。
また、CoNiPの無電解めっきに使用されるめっき浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解めっき浴は、金属イオンとして(Pd(NH)Cl、還元剤としてNH、HNNH、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのめっき浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0165】
このようにして形成される無電解めっきによるめっき膜の膜厚は、めっき浴の金属イオン濃度、めっき浴への浸漬時間、或いは、めっき浴の温度などにより制御することができるが、導電性の観点からは、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm〜2μmであることがより好ましい。
ただし、無電解めっきによるめっき膜を導通層として、後述する電気めっきを行う場合は、少なくとも0.1μm以上の膜が均一に付与されていればよい。
また、めっき浴への浸漬時間としては、1分〜6時間程度であることが好ましく、1分〜3時間程度であることがより好ましい。
【0166】
以上のようにして得られた無電解めっきによるめっき層は、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により、被めっき層中にめっき触媒やめっき金属からなる微粒子が高密度で分散していること、また更に被めっき層上にめっき金属が析出していることが確認される。被めっき層とめっき層との界面は、樹脂複合体と微粒子とのハイブリッド状態であるため、被めっき層(有機成分)と無機物(めっき触媒金属又はめっき金属)との界面が平滑(例えば、1mmの領域でRaが1.5μm以下)であっても、密着性が良好となる。
【0167】
(電気めっき)
本工程おいては、前記(3)工程において付与されためっき触媒又はその前駆体が電極としての機能を有する場合、その触媒又はその前駆体が付与された被めっき層に対して、電気めっきを行うことができる。
また、前述の無電解めっきの後、形成されためっき膜を電極とし、更に、電気めっきを行ってもよい。これにより基板との密着性に優れた無電解めっき膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ金属膜を容易に形成することができる。このように、無電解めっきの後に、電気めっきを行うことで、金属膜を目的に応じた厚みに形成しうるため、本発明の金属膜を種々の応用に適用するのに好適である。
【0168】
本発明における電気めっきの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気めっきに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
【0169】
また、電気めっきにより得られる金属膜の膜厚は、めっき浴中に含まれる金属濃度、又は、電流密度などを調整することで制御することができる。
なお、得られた金属パターン材料を一般的な電気配線などに適用する場合の金属膜の膜厚は、導電性の観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm〜30μmがより好ましい。
なお、電気配線の厚みは、電気配線の線幅が狭くなる、すなわち微細化するほどアスペクト比を維持するために薄くなる。従って、電気めっきによって形成されるめっき層の層厚は、上記に限定されず、任意に設定できる。
【0170】
上述のめっき膜の他の製造方法としては、上述の(a)工程において被めっき層を形成する際、被めっき層形成用組成物にめっき触媒又はその前駆体を予め混合しておき、上述の塗布法、押出成形法、ラミネート法を用いて、基板上に被めっき層を積層する方法も挙げられる。
この方法の場合、上述の(c)工程を実施することなく、めっき触媒又はその前駆体を含有する被めっき層をひとつの工程で作製することができ、作業効率及び生産性の観点から好ましい。
【0171】
<金属パターン材料>
本発明の金属パターン材料の作製方法の各工程を経ることで、本発明の金属パターン材料を得ることもできる。
なお、本発明の金属パターン材料の作製方法において、基板として樹脂フィルム等を用いれば、その樹脂フィルムの両面に金属パターンが形成された金属パターン材料を得ることができる。
本発明の金属パターン材料は、基板に対する金属パターンの密着力に優れる。
【0172】
本発明の金属パターン材料は、表面の凹凸が500nm以下(より好ましくは100nm以下)の基板上の局所的に、めっき膜を設けたものであることが好ましい。また、基板と金属パターンとの密着性が碁盤の目試験で100目中10目以下であることが好ましい。即ち、基板表面が平滑でありながら、基板と金属パターンとの密着性に優れることを特徴とする。
【0173】
なお、基板表面の凹凸は、基板を基板表面に対して垂直に切断し、その断面をSEMにより観察することにより測定した値である。
より詳細には、JIS B 0601に準じて測定したRz、即ち、「指定面における、最大から5番目までの山頂のZデータの平均値と、最小から5番目までの谷底の平均値との差」で、500nm以下であることが好ましい。
【0174】
本発明の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料は、例えば、半導体チップ、各種電気配線板、FPC、COF、TAB、アンテナ、多層配線基板、マザーボード、等の種々の用途に適用することができる。
【実施例】
【0175】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
【0176】
〔実施例1〕
[基板の作製]
ガラスエポキシ基板上に、密着補助層として、jER806(ビスフェノールF型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン製)12.3質量部、LA7052(フェノライト、硬化剤:大日本インキ化学工業)4.3質量部、YP50−35EK(フェノキシ樹脂、東都化成製)20.9質量部、シクロヘキサノン62.5質量部、及び2−エチル−4−メチルイミダゾール(硬化促進剤)0.1質量部を混合した混合溶液を、ろ布(メッシュ#200)にて濾過し、調製した塗布液をスピンコート法(条件:乾燥後皮膜厚6μm)にて塗布し、乾燥して基板A1を得た。
【0177】
[合成例1:特定ポリマーAの合成]
500mlの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、窒素気流下、65℃まで加熱した。そこへ、下記構造のモノマーM:20.7g、2−シアノエチルアクリレート(東京化成製)20.5g、アクリル酸(東京化成製)14.4g、V−65(和光純薬製)1.0gのN,N−ジメチルアセトアミド20g溶液を、4時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間撹拌した。その後、N,N−ジメチルアセトアミド91gを足し、室温まで反応溶液を冷却した。
【0178】
【化11】

【0179】
上記の反応溶液に、4−ヒドロキシTEMPO(東京化成製)0.17g、トリエチルアミン75.9gを加え、室温で4時間反応を行った。その後、反応液に70質量%メタンスルホン酸水溶液112g加えた。反応終了後、水で再沈を行い、固形物を取り出し、下記構造の特定ポリマーAを25g得た。この特定ポリマーAの酸価は4.0mmol/gであった。
【0180】
【化12】

【0181】
[被めっき層形成用組成物Aの調製]
特定ポリマーA(前記構造:重量平均分子量:44000、固形分87質量%):0.30g(7.5質量%)、炭酸水素ナトリウム:0.07g(1.75質量%)、及び、水:1.63g(40.6質量%)を混合攪拌し、特定ポリマーAを溶解させた後、メタノール:2.0g(49.9質量%)及び水不溶性の光重合開始剤(イルガキュア907,チバ・ジャパン(株)社製)0.01g(0.25質量%)を添加し、攪拌することで被めっき層形成用組成物Aを調製した。このときの水アルコール混合溶剤に含まれるメタノールの含有量は55.1質量%である。なお、被めっき層形成用組成物Aの調整後、10分間静置した後に、目視で観察したところ、沈殿物の発生は見られなかった。
【0182】
[被めっき層の形成]
調製された被めっき層形成用組成物Aを、前記基板A1の密着補助層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、80℃にて5分乾燥した。
その後、被めっき層形成用組成物塗布膜に対し、UV露光機(波長:365nm(ソーダガラスを用いて短波側波長カット) 三永電機製作所社製、型番:UVF-502S、ランプ:UXM-501MD)を用い、100mJ〜8000mJの露光エネルギーで、ラインアンドスペース300μmのフォトマスクを介してパターン露光を行った。
露光後の基板を、1質量%NaHCO水溶液中に10分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。
これにより、パターン状の被めっき層を有する基板A2を得た。
[めっき触媒の付与]
被めっき層を有する基板A2を、硝酸銀を1質量%水溶液に、10分間浸漬した後、水に浸漬して洗浄した。
【0183】
[パターン無電解めっき]
上記のようにして、めっき触媒が付与されたパターン状の被めっき層を有する基板A2に対し、下記組成の無電解めっき浴を用い、30℃で30分間、無電解めっきを行って金属パターン材料を得た。得られた無電解銅めっき膜の厚みは1μmであった。

(無電解めっき浴の組成)
・蒸留水 463g
・OPCカッパーT1(奥野製薬工業製) 33g
・OPCカッパーT3(奥野製薬工業製) 55g
・ホルマリン 5.35g
【0184】
[全面無電解めっき]
密着性評価のため、被めっき用組成物Aを用いてフォトマスクを介さずに露光して基板の全面に被めっき用組成物層を形成し、下記の様にして厚さ0.1〜1.5μmのめっき膜を作製した。

(無電解めっき浴の組成)
・蒸留水 774g
・ATSアドカッパーIW−A(奥野製薬工業製) 45mL
・ATSアドカッパーIW−M(奥野製薬工業製) 72mL
・ATSアドカッパーIW−C(奥野製薬工業製) 9mL
・NaOH 1.98g
・2,2’−ビピリジル 1.8mg
【0185】
[全面電気めっき]
続いて、無電解銅めっき膜を給電層として、下記組成の電気銅めっき浴を用い、3A/dmの条件で、電気めっきを20分間行った。得られた電気銅めっき膜の厚みは18μmであった。

(電気めっき浴の組成)
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパーグリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0186】
〔実施例2〕
[被めっき層形成用組成物Bの調製]
上述の合成法で得られた特定ポリマーA(固形分87質量%):0.30g(7.5質量%)、炭酸水素ナトリウム:0.07g(1.75質量%)、及び、水:1.63g(40.6質量%)及びエタノール:2.0g(49.9質量%)を混合攪拌し、特定ポリマーAを溶解させた後、水不溶性の光重合開始剤(イルガキュア907,チバ・ジャパン(株)社製)0.01g(0.25質量%)を添加し、攪拌することで被めっき層形成用組成物Bを調製した。このときの水アルコール混合溶剤に含まれるエタノールの含有量は55.1質量%である。なお、被めっき層形成用組成物Bの調整後、10分間静置した後に、目視で観察したところ、沈殿物の発生は見られなかった。
実施例1にて用いた被めっき層形成用組成物Aに代えて、上記で得られた被めっき層形成用組成物Bを用いた他は、実施例1と同様に行い、銅めっき膜を有する金属パターン材料を得た。
【0187】
〔実施例3〕
[被めっき層形成用組成物Cの調製]
上述の合成法で得られた特定ポリマーA(固形分87質量%):0.30g(7.5質量%)、炭酸水素ナトリウム:0.07g(1.75質量%)、及び、水:1.63g(40.6質量%)を混合攪拌し、特定ポリマーAを溶解させた後、メタノール:2.0g(49.9質量%)及び水不溶性の光重合開始剤(イルガキュア379,チバ・ジャパン(株)社製)0.01g(0.25質量%)を添加し、攪拌することで被めっき層形成用組成物Cを調製した。このときの水アルコール混合溶剤に含まれるメタノールの含有量は55.1質量%である。なお、被めっき層形成用組成物Cの調整後、10分間静置した後に、目視で観察したところ、沈殿物の発生は見られなかった。
実施例1にて用いた被めっき層形成用組成物Aに代えて、上記で得られた被めっき層形成用組成物Cを用いた他は、実施例1と同様に行い、銅めっき膜を有する金属パターン材料を得た。
【0188】
〔実施例4〕
[被めっき層形成用組成物Dの調製]
上述の合成法で得られた特定ポリマーA(固形分87質量%):0.30g(7.5質量%)、炭酸水素ナトリウム:0.07g(1.75質量%)、及び、水:1.63g(40.6質量%)を混合攪拌し、特定ポリマーAを溶解させた後、メタノール:2.0g(49.9質量%)及び水不溶性の光重合開始剤(OXE-2、チバ・ジャパン(株)社製)0.01g(0.25質量%)を添加し、攪拌することで被めっき層形成用組成物Dを調製した。このときの水アルコール混合溶剤に含まれるメタノールの含有量は55.1質量%である。なお、被めっき層形成用組成物Dの調整後、10分間静置した後に、目視で観察したところ、沈殿物の発生は見られなかった。
実施例1にて用いた被めっき層形成用組成物Aに代えて、上記で得られた被めっき層形成用組成物Dを用いた他は、実施例1と同様に行い、銅めっき膜を有する金属パターン材料を得た。
【0189】
〔実施例5〕
[合成例2:特定ポリマーBの合成]
500ml三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド200g、ポリアクリル酸30g、テトラエチルアンモニウムベンジルクロライド2.4g、ジターシャリーペンチルハイドロキノン25mg、及び下記モノマーB 27gを入れ、窒素気流下、100℃、5時間反応させた。
【0190】
【化13】

【0191】
その後、反応液を50g取り、氷浴中で4NNaOHを11.6mL加え、酢酸エチルで再沈を行って固形物を濾取し、水で洗浄、乾燥して下記構造の特定ポリマーB(固形分99質量%、重量平均分子量:16000)を3.1g得た。
【0192】
【化14】

【0193】
[被めっき層形成用組成物Eの調製]
上述の合成法で得られた特定ポリマーB(固形分99質量%):0.36g(7.2質量%)、炭酸水素ナトリウム:0.19g(3.83質量%)、及び、水:1.75g(35.3質量%)を混合攪拌し、特定ポリマーBを溶解させた後、メタノール:2.66g(53.6質量%)及び水不溶性の光重合開始剤(Irg907:チバ・ジャパン(株)製)0.018g(0.36質量%)を添加し、攪拌することで被めっき層形成用組成物Eを調製した。このときの水アルコール混合溶剤に含まれるメタノールの含有量は53.6質量%である。なお、下記構造の被めっき層形成用組成物Eの調整後、10分間静置した後に、目視で観察したところ、沈殿物の発生は見られなかった。
実施例1にて用いた被めっき層形成用組成物Aに代えて、上記で得られた被めっき層形成用組成物Eを用いた他は、実施例1と同様に行い、銅めっき膜を有する金属パターン材料を得た。
【0194】
〔実施例6〕
[被めっき層形成用組成物Fの調製]
上述の合成法で得られた特定ポリマーA(固形分79質量%):1.40g(10.05質量%)、炭酸水素ナトリウム:0.338g(2.42質量%)、及び、水:2.42g(17.35質量%)を混合攪拌し、特定ポリマーAを溶解させた後、1−メトキシ−2−プロパノール:9.67g(69.39質量%)及び水不溶性の光重合開始剤(OXE−2,チバ・ジャパン(株)社製)0.11g(0.79質量%)を添加し、攪拌することで被めっき層形成用組成物Fを調製した。このときの水アルコール混合溶剤に含まれる1−メトキシ−2−プロパノールの含有量は80.0質量%である。なお、被めっき層形成用組成物Fの調整後、10分間静置した後に、目視で観察したところ、沈殿物の発生は見られなかった。
【0195】
[被めっき層の形成]
また調製された被めっき層形成用組成物Fを、それぞれ前記基板A1の密着補助層上に、厚さ1μmになるように、スピンコート法により塗布し、120℃にて30分乾燥した。
その後、被めっき層形成用組成物塗布膜に対し、UV露光機(波長:365nm(ソーダガラスを用いて短波側波長カット) 三永電機製作所社製、型番:UVF-502S、ランプ:UXM-501MD)を用い、100mJ〜8000mJの露光エネルギーで、ラインアンドスペース300μmのフォトマスクを介してパターン露光を行った。
露光後の基板を、1質量%NaHCO水溶液中に10分間浸漬し、続いて、蒸留水にて洗浄した。
得られた被めっき層に対して、触媒付与以降のプロセスは、実施例1と同様に行い、銅めっき膜を有する金属パターン材料を得た。
【0196】
〔実施例7〕
[被めっき層形成用組成物Gの調製]
上述の合成法で得られた特定ポリマーA(固形分82質量%):0.20g(7.80質量%)、炭酸水素ナトリウム:0.06g(2.23質量%)、及び、水:0.92g(35.89質量%)を混合攪拌し、特定ポリマーAを溶解させた後、1−メトキシ−2−プロパノール:1.37g(53.44質量%)及び水不溶性の光重合開始剤(Irg379,チバ・ジャパン(株)社製)0.016g(0.64質量%)を添加し、攪拌することで被めっき層形成用組成物Gを調製した。このときの水アルコール混合溶剤に含まれる1−メトキシ−2−プロパノールの含有量は59.8質量%である。なお、被めっき層形成用組成物Gの調整後、10分間静置した後に、目視で観察したところ、沈殿物の発生は見られなかった。
実施例6にて用いた被めっき層形成用組成物Fに代えて、上記で得られた被めっき層形成用組成物Gを用いた他は、実施例6と同様に行い、銅めっき膜を有する金属パターン材料を得た。
【0197】
〔実施例8〕
[被めっき層形成用組成物Hの調製]
上述の合成法で得られた特定ポリマーA(固形分82質量%):0.20g(7.80質量%)、炭酸水素ナトリウム:0.06g(2.23質量%)、及び、水:0.92g(35.89質量%)を混合攪拌し、特定ポリマーAを溶解させた後、乳酸メチル:1.37g(53.44質量%)及び水不溶性の光重合開始剤(Irg379,チバ・ジャパン(株)社製)0.016g(0.64質量%)を添加し、攪拌することで被めっき層形成用組成物Hを調製した。このときの水−水溶性可燃性液体混合溶剤に含まれる乳酸メチルの含有量は59.8質量%である。なお、被めっき層形成用組成物Hの調整後、10分間静置した後に、目視で観察したところ、沈殿物の発生は見られなかった。
実施例6にて用いた被めっき層形成用組成物Fに代えて、上記で得られた被めっき層形成用組成物Hを用いた他は、実施例6と同様に行い、銅めっき膜を有する金属パターン材料を得た。
【0198】
〔実施例9〕
[被めっき層形成用組成物Iの調製]
上述の合成法で得られた特定ポリマーA(固形分82質量%):0.20g(7.80質量%)、炭酸水素ナトリウム:0.06g(2.23質量%)、及び、水:0.92g(35.89質量%)を混合攪拌し、特定ポリマーAを溶解させた後、N−エチルモルホリン:1.37g(53.44質量%)及び水不溶性の光重合開始剤(Irg379,チバ・ジャパン(株)社製)0.016g(0.64質量%)を添加し、攪拌することで被めっき層形成用組成物Iを調製した。このときの水−水溶性可燃性液体混合溶剤に含まれるN−エチルモルホリンの含有量は59.8質量%である。なお、被めっき層形成用組成物Iの調整後、10分間静置した後に、目視で観察したところ、沈殿物の発生は見られなかった。
実施例6にて用いた被めっき層形成用組成物Fに代えて、上記で得られた被めっき層形成用組成物Iを用いた他は、実施例6と同様に行い、銅めっき膜を有する金属パターン材料を得た。
【0199】
〔比較例1〕
[被めっき層形成用組成物Jの調製]
前記特定ポリマーA(固形分87質量%):0.70g(6.97質量%)、水:8.56g(85.24質量%)、炭酸水素ナトリウム:0.24g(2.39質量%)、を混合、攪拌しポリマーAを溶解させた液に、メタノール:0.5g(4.98質量%)、水不溶性の光重合開始剤(実施例1で用いたイルガキュア907):0.021g(0.21質量%)、界面活性剤(アクアロンRN−20、第一工業製薬社製):0.021g(0.21質量%)を混合して溶解させた液を攪拌しながら徐々に添加し、光重合開始剤を分散させた。その液を60℃で8時間加熱し、メタノールを除去して、減った重量分の水を加えた後、♯420ろ布(開孔径:60.5μm)を用いてろ過を行い、分散サイズの大きい固形分を除去し、比較例1の被めっき用組成物J(分散液)を作製した。このときの水アルコール混合溶剤に含まれるメタノールの含有量は5.51質量%である。なお、比較例1の被めっき層形成用組成物Jの調整後、10分間静置した後に、目視で観察したところ、沈殿物の発生が見られた。
実施例1にて用いた被めっき層形成用組成物Aに代えて、上記で得られた被めっき層形成用組成物Jを用いた他は、実施例1と同様に行い、銅めっき膜を有する金属パターン材料を得た。
【0200】
〔比較例2〕
[被めっき層形成用組成物Kの調製]
水:8.9g、NaHCO:0.37g、及び、特定ポリマーB(前記構造、固形分99質量%、重量平均分子量:16000)0.66gを混合、攪拌し、ポリマーを溶解させた液に、メタノール:0.5g、非水溶性光開始剤(Irg907):0.021g、界面活性剤(アクアロンRN−20):0.021gを混合して溶解させた液を攪拌しながら徐々に添加する事で、非水溶性光開始剤を分散させた。その液を60℃で8時間加熱し、メタノールを除去して、減った重量分の水を加えた後、♯420ろ布を用いてろ過を行い、分散サイズの大きい固形分を除去し、比較例1の被めっき用組成物K(分散液)を作製した。このときの水アルコール混合溶剤に含まれるメタノールの含有量は0質量%である。なお、比較例2の被めっき層形成用組成物Kの調整後、10分間静置した後に、目視で観察したところ、沈殿物の発生が見られた。
実施例1にて用いた被めっき層形成用組成物Aに代えて、上記で得られた被めっき層形成用組成物Kを用いた他は、実施例1と同様に行い、銅めっき膜を有する金属パターン材料を得た。
【0201】
〔比較例3〕
[被めっき層形成用組成物Lの調製]
実施例1で用いた特定ポリマーA(固形分87質量%):0.30g(7.5質量%)、炭酸水素ナトリウム:0.07g(1.75質量%)、及び、水:1.63g(40.6質量%)、メタノール:2.0g(49.9質量%)を混合攪拌し、特定ポリマーAを溶解させた後、攪拌することで比較例3の被めっき層形成用組成物Lを調製した。
実施例1にて用いた被めっき層形成用組成物Aに代えて、上記で得られた被めっき層形成用組成物Lを用いた他は、実施例1と同様に行った。
【0202】
(パターン形成性評価)
実施例1〜8で得られた被めっき用組成物を用いて作成しためっき膜は、厚さ1μmであり、光学顕微鏡観察よりマスクサイズ±1%以下の高解像度の金属パターンであることが確認された。実施例9で得られた金属パターンは、マスクサイズ±5%以下の高解像度の金属パターンであることが確認された。
比較例1及び比較例2で得られた被めっき用組成物を用いて作製しためっき膜は、厚さ1μmであり、ラインアンドスペース300μmのフォトマスクを用いたが、配線幅が40〜50%増しの金属パターンであることが確認された。ろ布によるろ過を行わない組成物では、配線間が埋まってしまい(配線幅100%以上増しの金属パターン)、高解像度のパターン形成をし難かった。
また、比較例3で得られた水不溶性の光重合開始剤を含有しない被めっき用組成物を用いてパターン作製しようとしたが、膜形成しなかった。
前記実施例及び比較例において得られたパターンのラインアンドスペースを測定し、パターン露光に用いたフォトマスクのラインアンドスペースの線幅に対し、配線幅の変動が1%未満のものを「○」、線幅の変動が1%以上、且つ、5%未満のものを「△」、線幅の変動が5%以上となるものを「×」と評価した。この評価において「○〜△」が実用上問題のないレベルである。結果を下記表1に示す。
【0203】
(密着性評価)
実施例1〜9、比較例1〜2で得られた被めっき用組成物を用いてフォトマスクを介さずに露光して基板の全面に被めっき用組成物層を形成し、全面無電解めっき及び電気めっきにより厚さ18μmのめっき膜を作製した。
得られためっき膜に対して、クロスカット試験(JIS−K 5600)を行った。その結果、100マス中1マスも剥離が見られなかったことから、形成された金属膜は基板に対し十分な密着力が得られていることが分かる。
【0204】
(感度評価)
前記実施例及び比較例において、露光量を3000mJに固定し、被めっき層形成用組成物の塗布膜を硬化した後、現像を行い、膜形成の見られるものを「○」、膜形成の見られないものを「×」と評価した。結果を下記表1に示す。
(乾燥時間評価)
前記実施例及び比較例において、80℃5分で乾燥が十分なものを「◎」、120℃15分で乾燥が十分なものを「○」、120℃60分の乾燥を必要としたものを「△」、それでも不十分なものを「×」とした。
乾燥時間が十分か不十分かの判断は、被めっき層形成用組成物の塗布膜を乾燥後、溶媒残量が膜重量に対して5wt.%以下となった場合に十分と判断し、それ以上だった場合は不十分と判断した。溶媒残量の測定は、塗布膜乾燥後基板の重量から塗布前基板の重量を引いた値を溶媒及び膜の合計重量とし、全面膜硬化後、現像及び乾燥を行った後の基板重量から塗布前基板の重量を引いた値を膜重量として求めた。その結果を下記表1に示す。
【0205】
【表1】

【0206】
実施例1〜9、比較例1〜3の結果より、本発明の被めっき層形成用組成物を用いた実施例は、高感度でパターン形成され、且つ、高解像度の金属パターンを容易に得ることができる。また、実施例1〜7と実施例8、9との対比において、水−水溶性可燃性液体混合溶剤として水アルコール混合溶媒を用いたものは、本発明の効果が著しいことがわかる。他方、水アルコール混合溶剤におけるアルコール量が少なく、水不溶性の光重合開始剤が均一に溶解されない比較例1及び比較例2の組成物では、形成されたパターンの解像度に劣り、水不溶性の光重合開始剤を含有しない比較例3の組成物では、硬化膜を形成し得なかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、及び、ラジカル重合性基を有するポリマー1質量%〜20質量%と、水不溶性の光重合開始剤とを、20質量%〜99質量%の水溶性可燃性液体と水とを含有する混合溶剤に溶解してなる被めっき層形成用組成物。
【請求項2】
前記水不溶性の光重合開始剤を、前記めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、及び、ラジカル重合性基を有するポリマーに対して1〜20質量%の範囲で含有する請求項1に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項3】
前記水溶性可燃性液体がアルコール系溶剤である請求項1又は請求項2に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項4】
前記水不溶性の光重合開始剤が、250nm〜400nmの範囲に吸収ピークを有する化合物である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項5】
前記めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、及び、ラジカル重合性を有するポリマーにおけるめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基が、めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性官能基又はイオン性の極性基である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の被めっき層形成用組成物。
【請求項6】
前記めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、及び、ラジカル重合性を有するポリマーが、下記式(A)で表されるユニット及び式(B)で表されるユニットを含む共重合体である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の被めっき層形成用組成物。
【化1】


上記式(A)及び式(B)中、R〜Rは、夫々独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、X、Y、及びZは、夫々独立して、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、L、及び、Lは、夫々独立して、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Wはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成するイオン性極性基を表す。
【請求項7】
前記めっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する官能基、及び、ラジカル重合性を有するポリマーが、下記式(C)で表されるユニットをさらに含む共重合体である請求項6に記載の被めっき層形成用組成物。
【化2】


上記式(C)中、Rは、水素原子、又は置換若しくは無置換のアルキル基を表し、Uは、単結合、置換若しく無置換の二価の有機基、エステル基、アミド基、又はエーテル基を表し、Lは、単結合、又は置換若しくは無置換の二価の有機基を表し、Vはめっき触媒又はその前駆体と相互作用を形成する非解離性の官能基を表す。
【請求項8】
(1)基板又は密着補助層上に、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の被めっき層形成用組成物を接触させた後、該被めっき層形成用塗布膜に対してエネルギーを付与して、エネルギーを付与された領域の当該被めっき層形成用塗布膜を硬化させる工程と、
(2)前記基板上の前記被めっき層形成用塗布膜の未硬化領域を水溶液で現像し、パターン状の被めっき層を形成する工程と、
(3)該パターン状の被めっき層にめっき触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(4)該めっき触媒又はその前駆体に対してめっきを行う工程と、
を有する金属パターン材料の作製方法。
【請求項9】
前記エネルギーの付与が、波長355〜365nm露光により行われる請求項8に記載の金属パターン材料の作製方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の金属パターン材料の作製方法により得られた金属パターン材料。

【公開番号】特開2011−94192(P2011−94192A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249382(P2009−249382)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】