説明

被写体追尾システム

【課題】誤追尾を低減化させる。
【解決手段】追尾を開始するとき、追尾部は撮影画像におけるスキャン領域の位置を設定する(ステップS100)。追尾部はスキャン領域に基づいて第1〜第8の候補領域を設定する(ステップS102)。追尾部はスキャン領域の輝度を2値化する(ステップS103)。追尾部は次の画像データにおける第1〜第8の候補領域の輝度を2値化する(ステップS105)。追尾部は2値化された輝度に基づいて第1〜第8の判定値を算出する(ステップS106)。追尾部は第1〜第8の判定値に基づいて第1〜第4の粗判定値を算出する(ステップS107)。追尾部は第1の判定により被写体の移動方向を粗く判定する(ステップS200)。追尾部は第2の判定により被写体の移動方向を詳細に判定する(ステップS300)。追尾部は第2の判定により判定された移動方向の候補領域をスキャン領域として設定する(ステップS108)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に撮影される撮影画像における特定の被写体の移動を追尾する被写体追尾システムに関する。
【背景技術】
【0002】
連続的に撮影される撮影画像において、所望の被写体の動きを追尾する画像解析が知られている。このような画像解析は、移動する被写体の動きを追尾させながらオートフォーカスを行なうために用いられる。また、監視カメラなどにおいて、特定の人物などを追尾するためにも用いられる。
【0003】
従来の被写体追尾の画像解析について簡単に説明する。まず、撮影する画像の枠内における特定の領域が追尾領域として初期設定される。画像解析が始まると、あるタイミングの追尾領域の画像と次のタイミングにおける追尾領域の周囲の複数の画像とのパターンマッチングが行なわれる。パターンマッチングにより、追尾領域の画像と最も一致性の高い画像を含む領域が追尾領域として再設定される。以後、これを繰返すことにより、追尾領域に含まれる被写体が追尾される。
【0004】
前述の追尾方法では、パターンマッチングを行い一致性の高い画像を含む領域を被写体の移動した領域とみなしている。従って、実際に被写体が移動した領域に含まれる画像が最も一致性の高い画像とならない場合がある。
【0005】
例えば、前述のように移動する被写体に対して合焦させるオートフォーカス機能を有するカメラなどに被写体追尾機能が適用されることがあるが、手振れにより追尾領域の画像と周囲の画像すべてとの一致性が同じように高くなることがある。また、追尾領域に含まれる画像のコントラストが低い場合にもパターンマッチングにより一致性の比較が困難となる。結果として、所望の被写体の誤追尾を起こすことが問題であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明では移動する被写体の誤追尾を低減化した被写体追尾システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の被写体追尾システムは、連続的に撮像される撮影画像内における特定の被写体である追尾対象体の移動を追尾する被写体追尾システムであって、撮影画像における定められた一部の領域を追尾対象体を追尾するための追尾領域に初期設定する初期設定部と、追尾領域から第1の粗方向を正方向成分として有する第1、第2の方向に移動した領域である第1、第2の候補領域を設定し第1の粗方向とは異なる第2の粗方向を正方向成分として有する第3、第4の方向に追尾部から移動した領域である第3、第4の候補領域を設定する候補領域設定部と、第1のタイミングで撮像された撮影画像における追尾領域の画像である基準画像を検出し第1のタイミングの後の第2のタイミングで撮像された撮影画像における前記第1〜第4の候補領域の画像である第1〜第4の候補画像を検出する画像検出部と、基準画像と第1〜第4の候補画像それぞれとの一致性に基づいて、第1のタイミングから第2のタイミングにおける追尾対象体の移動方向が第1の粗方向と第2の粗方向とのいずれであるかを判定する第1の判定部と、追尾対象体の移動方向として判定された粗方向が第1の粗方向であるときに基準画像と第1、第2の候補画像それぞれとの一致性に基づいて追尾対象体の移動方向が第1、第2の方向のいずれであるかを判定し追尾対象体の移動方向として判定された粗方向が第2の粗方向であるときに基準画像と第3、第4の候補画像それぞれの一致性に基づいて追尾対象体の移動方向が前記第3、第4の方向のいずれであるかを判定する第2の判定部と、第2の判定部に追尾対象体の移動方向として判定された方向に移動した候補領域を追尾領域として再設定する再設定部とを備えることを特徴としている。
【0008】
さらに、第1の判定部は2つの画像の一致性に応じた判定値を算出し、基準画像と第1、第2の候補画像それぞれの判定値の和と基準画像と第3、第4の候補画像それぞれの判定値の和とを比較することにより、追尾対象体の移動方向が第1、第2の粗方向のいずれであるかを判定することが好ましい。
【0009】
また、第2の判定部は2つの画像の一致性に応じた判定値を算出し、基準画像と第1、第2の候補画像それぞれの判定値を比較することにより追尾対象体の移動方向が第1、第2の方向のいずれであるかの判定又は基準画像と第3、第4の候補画像それぞれの判定値を比較することにより追尾対象体の移動方向が前記第3、第4の方向のいずれであるかの判定を行なうことが好ましい。
【0010】
また、追尾領域から第1〜第4の候補領域それぞれまでの距離は実質的に等しいことが好ましい。
【0011】
また、候補領域設定部は第1、第2の粗方向とは異なる第3の粗方向を正方向成分として有する第5、第6の方向に追尾領域から移動した領域である第5、第6の候補領域を設定し、画像検出部は第2のタイミングで撮像された撮影画像における第5、第6の候補領域の画像である第5、第6の候補画像を検出する画像検出部と、第1の判定部は基準画像と第1〜第6の候補画像それぞれとの一致性に基づいて第1のタイミングから第2のタイミングにおける追尾対象体の移動方向が第1〜第3の粗方向のいずれの粗方向であるかを判定し、第2の判定部は追尾対象体の移動方向として判定された粗方向が第3の粗方向であるときに基準画像と第5、第6の候補画像それぞれとの一致性に基づいて追尾対象体の移動方向が第5、第6の方向いずれであるかを判定することが好ましい。
【0012】
また、第1の粗方向と第3の粗方向は互いに逆向きであり第1の粗方向と第2の粗方向は互いに垂直であり第1の粗方向と第1の方向とは同じ方向であり第2の粗方向と第3の方向とは同じ方向であり第3の粗方向と第5の方向とは同じ方向であり第2の方向は第2の粗方向を正方向成分として含み第4の方向は第3の粗方向を正方向成分として含み、候補領域設定部は追尾領域から第3の方向の逆向きの方向である第7の方向及び第7の方向と第1の方向とを正方向成分として含む第8の方向に移動した領域である第7、第8の領域である第7、第8の候補領域を設定し、画像検出部は第2のタイミングで撮像された撮影画像における第7、第8の候補領域の画像である第7、第8の候補画像を検出する画像検出部と、第1の判定部は基準画像と第1〜第8の候補画像それぞれとの一致性に基づいて第1のタイミングから第2のタイミングにおける追尾対象体の移動方向が第1、第3、第5、第7の方向のいずれの方向であるかを判定し、第2の判定部は追尾対象体の移動方向として判定された方向が第1の方向であるときに基準画像と第1、第2、第8の候補画像それぞれとの一致性に基づいて追尾対象体の移動方向が第1、第2、第6の方向のいずれであるかを判定し追尾対象体の移動方向として判定された方向が第3の方向であるときに基準画像と第2〜第4の候補画像それぞれとの一致性に基づいて追尾対象体の移動方向が第2〜第4の方向のいずれであるかを判定し追尾対象体の移動方向として判定された方向が第5の方向であるときに基準画像と第4〜第6の候補画像それぞれとの一致性に基づいて追尾対象体の移動方向が第4〜第6の方向のいずれであるかを判定し、追尾対象体の移動方向として判定された方向が第7の方向であるときに基準画像と第6〜第8の候補画像それぞれとの一致性に基づいて追尾対象体の移動方向が第6〜第8の方向のいずれであるかを判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、移動する被写体の追尾の精度を向上させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態を適用した被写体追尾システムを有するデジタルカメラの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【0015】
デジタルカメラ10は、撮影光学系11、撮像素子12、AFE(Analog Front End)13、DSP(Digital Signal Processor)23、操作入力部14、及びレンズ駆動部15等によって構成される。
【0016】
撮影光学系11は、撮像素子12に光学的に接続される。撮影光学系11を透過する被写体の光学像が撮像素子12の受光面に入射される。撮像素子12は、例えばCCDである。受光面において被写体の光学像が受光されることにより、光学像に相当する画像信号が生成される。
【0017】
撮影光学系11は、フォーカスレンズ(図示せず)やズームレンズ(図示せず)などの複数のレンズにより構成される。フォーカスレンズ及びズームレンズは光軸方向に移動自在である。フォーカスレンズを移動させることにより被写体像を撮像素子12の受光面に結像させることが出来る。ズームレンズをフォーカスレンズに対して相対的に移動させることにより撮影光学系11の焦点距離を調整可能である。
【0018】
フォーカスレンズ及びズームレンズは、操作者により手動で光軸方向に移動させることが可能である。或いは、フォーカスレンズ及びズームレンズはレンズ駆動部15によって駆動され、移動させることも可能である。特に、フォーカスレンズを移動させることによる合焦位置調整は、後述するようにオートフォーカス(AF)機能を実行することにより自動的に行わせることが可能である。
【0019】
撮影光学系11と撮像素子12の間には、絞り16とシャッタ17とが配置される。絞り16の開度を調整することにより、撮像素子12の受光面に入射する光の照度が調整される。シャッタ17の開閉により被写体光束の通過と遮光が切替えられる。絞り16は絞り駆動部18によって駆動され、開度調整が行なわれる。シャッタ17はシャッタ駆動部19によって駆動され、開閉が実行される。
【0020】
なお、レンズ駆動部15、絞り駆動部18、及びシャッタ駆動部19は、DSP23に接続され、それぞれの動作は、DSP23によって制御される。
【0021】
撮像素子12は、AFE13を介してDSP23に接続される。DSP23からAFE13にクロック信号が出力される。AFE13は、クロック信号に基づいてフレーム信号及び撮像素子駆動信号を生成する。撮像素子駆動信号は撮像素子12に送信される。撮像素子12は、撮像素子駆動信号に基づいて画像信号を生成する。
【0022】
なお、撮像素子12の受光面には、マトリックス状に画素が配列される。例えば、有効画素領域にはm×nに等分割された位置それぞれに画素が配列される。各画素における受光量に応じて画素信号が生成される。画像信号は、有効画素領域における複数の画素が生成する複数の画素信号によって形成される。
【0023】
生成した画像信号はAFE13に送信される。画像信号はAFE13において相関二重サンプリング、ゲイン調整、及びA/D変換が施され、画像データに変換される。画像データはDSP23に送信される。
【0024】
DSP23には、信号処理の作業用のメモリであるDRAM(Dynamic Random Access Memory)20が接続される。DSP23に送信された画像データは、DRAM20に一時格納される。DSP23により、DRAM20に格納された画像データに対して所定のデータ処理が施される。
【0025】
DSP23には、液晶モニタ21が接続される。所定のデータ処理が施された画像データは、液晶モニタ21に送信される。送信された画像データに相当する画像が液晶モニタ21に表示可能である。
【0026】
また、DSP23には、外部カードインターフェース22が接続される。後述するレリーズ動作を実行するときに、所定の信号処理の施された画像データは外部カードインターフェース22に接続される外部メモリ(図示せず)に格納される。
【0027】
また、DSP23には、デジタルカメラ10を操作するためのコマンド入力を行なうための操作入力部14が接続される。操作入力部14は、レリーズボタン(図示せず)、多機能十字キー(図示せず)、電源ボタン(図示せず)などによって構成される。操作者による操作入力部14へのコマンド入力に応じて、DSP23はデジタルカメラ10の各部位に必要な動作を行なわせる。
【0028】
例えば、レリーズボタンを半押しすることにより第1のスイッチ(図示せず)がONに切替わり、露出調整及び合焦位置調整が行われる。すなわち、露出調整において絞り16の開度、シャッタスピード調整、及びDSP23におけるゲイン調整が行なわれる。合焦位置調整において、後述するように所望の被写体光束を撮像素子12の受光面に結像させるように、フォーカスレンズ(図示せず)が駆動される。
【0029】
また、レリーズボタンを全押しすることにより第2のスイッチ(図示せず)がONに切替わりシャッタ17の開閉、静止画像の撮像を行なうように撮像素子12が駆動される。
【0030】
DSP23の内部構成について、図2を用いてさらに詳細に説明する。図2は、DSP23の内部構成を概略的に示すブロック図である。DSP23には、前段データ処理部23p1、後段データ処理部23p2、追尾部30(被写体追尾システム)、AF調整部23a、及び制御部23cによって構成される。
【0031】
前段データ処理部23p1には、AFE13から画像データが送信される。前段データ処理部23p1によって画像データはDRAM20に格納される。また、画像データに対して、色補間処理、ホワイトバランス処理、及び輝度信号生成処理等の所定のデータ処理が施される。また、所定のデータ処理の施された画像データは、後段データ処理部23p2に送信される。
【0032】
後段データ処理部23p2においても、画像データに対してクランプ処理やブランキング処理等の所定のデータ処理が施される。後段データ処理部23p2において所定のデータ処理を施した画像データは液晶モニタ21及び外部カードインターフェース22を介して外部メモリに送信される。
【0033】
追尾部30及びAF調整部23aにも、前段データ処理部23p1から画像データが送信される。送信された画像データに基づいて、追尾部30及びAF調整部23aにより、所望の被写体を撮像素子12の受光面に結像させるためのフォーカスレンズの駆動位置が求められる。
【0034】
更に説明すると、追尾部30により、撮影画像全体の中の何処かの領域がスキャン領域(追尾領域)に設定される。なお、スキャン領域とは、受光面に合焦させる所望の被写体を含ませるための領域である。所望の被写体である追尾対象体が撮影画像の中で移動する場合には、移動する領域を連続的にスキャン領域に設定することにより、追尾対象体を追尾することが可能である。
【0035】
AF調整部23aにより、スキャン領域に含まれる被写体を受光面に結像させるためのフォーカスレンズの駆動位置が求められる。なお、フォーカスレンズの駆動位置は、コントラスト方式、すなわち、フォーカスレンズを移動させながらスキャン領域のコントラストを検出し、コントラストを最大にさせるフォーカスレンズの位置をフォーカスレンズ駆動位置として求める方式に基づいて、実行される。なお、フォーカスレンズの駆動位置は、従来公知のいかなるAF動作により求められても良い。例えば、公知の位相差方式によって焦点検出を行なわせる構成と組合わせても良い。
【0036】
なお、デジタルカメラ10には、撮影画像全体の中の特定の位置の被写体を合焦させる固定AF機能と撮影画像の中で移動中の被写体を合焦させる追尾AF機能とが設けられる。いずれかのAF機能を実行させるかは、操作入力部14に対するコマンド入力により選択可能である。
【0037】
制御部23cには、操作入力部14からコマンド入力に応じた入力信号が送信される。受信した入力信号に応じて、前段データ処理部23p1、後段データ処理部23p2、追尾部30、及びAF調整部23aの動作の制御及びデジタルカメラ10の各部位の制御が、制御部23cによって実行される。
【0038】
例えば、前述の露出調整を行うときに、絞り駆動部18による絞り16の駆動は、制御部23cに制御される。また、シャッタ17の開閉を行うときに、シャッタ駆動部19によるシャッタ17の開閉は、制御部23cにより制御される。
【0039】
また、合焦位置調整を行うときに、レンズ駆動部15によるフォーカスレンズの駆動は、制御部23cにより制御される。制御部23cには、AF調整部23aが求めたフォーカスレンズの駆動位置に相当するレンズ位置信号が送信される。制御部23cによるレンズ駆動部15の制御は、レンズ位置信号に基づいて実行される。
【0040】
次に、追尾部30の構成及び動作について、図3〜図5を用いて詳細に説明する。図3は、追尾部30の内部構成を概略的に示すブロック図である。追尾部30は、画素ブロック算出部31、スキャン領域初期設定部32、候補領域設定部33、画像認識部34、及びスキャン領域設定部35によって構成される。なお、各部位の動作は制御部23cにより制御される。
【0041】
追尾AF機能を実行するときには、前段データ処理部23p1から有効画素領域の各画素の輝度がデータとして、画素ブロック算出部31に入力される。画素ブロック算出部31では、追尾の処理を容易にするために画素ブロックの輝度が計算される。
【0042】
画素ブロック12bとは、図4に示すように、有効画素領域AAを例えば20×20に等分割した領域であって、互いに隣合う複数の画素、例えば10×10個の画素12pによって形成される。画素ブロック12bの輝度は、画素ブロック12bを形成する画素12pの輝度の平均値を算出することにより求められる。画素ブロック12bの輝度はデータとして画像認識部34に送られる。
【0043】
また、AF機能を実行するときには、スキャン領域初期設定部32により撮像素子12の有効画素領域AAの中心がスキャン領域の中心に定められる。中心の位置が定められることによりスキャン領域の初期設定が行なわれる。
【0044】
図5に示すように、スキャン領域SAは、領域の中心Cから上下に6行4列に並んだ画素ブロック12bと中心Cから左右に4行6列に並んだ画素ブロック12bとによって形成される。
【0045】
なお、有効画素領域AAには縦方向と横方向に延びる2つの画素ブロック12bの境界線があるが、その交点のいずれかをスキャン領域SAの中心Cに定め、任意の位置にスキャン領域SAを設定可能である。スキャン領域SAの設定は操作入力部14に対するコマンド入力により行われる。
【0046】
初期設定されたスキャン領域SAがデータとして、候補領域設定部33に送信される。候補領域設定部33では、スキャン領域SAから周囲の8方向に移動させたスキャン領域SAと同じ形態の領域が候補領域に設定される。
【0047】
候補領域として設定するためのスキャン領域からの方向は、第1〜第8の方向が定められている。図5において、上下左右の4方向がそれぞれ第1、第5、第3、第7の方向に定められる。また、図5において、左上方向、左下方向、右下方向、右上方向がそれぞれ第2、第4、第6、第8の方向に定められる。
【0048】
スキャン領域SAから第1の方向に画素ブロック12b一つ分移動させた領域が第1の候補領域CA1に設定される(図6参照)。スキャン領域SAから第2の方向に画素ブロック12b一つ分移動させた領域が第2の候補領域CA2に設定される(図7参照)。スキャン領域SAから第3の方向に画素ブロック12b一つ分移動させた領域が第3の候補領域CA3に設定される(図8参照)。スキャン領域SAから第4の方向に画素ブロック12b一つ分移動させた領域が第4の候補領域CA4に設定される(図9参照)。スキャン領域SAから第5の方向に画素ブロック12b一つ分移動させた領域が第5の候補領域CA5に設定される(図10参照)。スキャン領域SAから第6の方向に画素ブロック12b一つ分移動させた領域が第6の候補領域CA6に設定される(図11参照)。スキャン領域SAから第7の方向に画素ブロック12b一つ分移動させた領域が第7の候補領域CA7に設定される(図12参照)。スキャン領域SAから第8の方向に画素ブロック12b一つ分移動させた領域が第8の候補領域CA8に設定される(図13参照)。
【0049】
設定された第1〜第8の候補領域CA1〜CA8がデータとして、画像認識部34に送信される。また、スキャン領域初期設定部32に初期設定されたスキャン領域SAがデータとして、画像認識部34にも送信される。さらに、画像認識部34には、AFE13から画像データが送られる。
【0050】
画像認識部34では、各フレームの画像データの中からスキャン領域SA及び第1〜第8の候補領域CA1〜CA8における画像に相当するデータ成分が抽出される。なお、抽出されるデータ成分は、各領域を形成する画素ブロック12bの輝度に相当する。
【0051】
例えば、第1のタイミングで送られる画像データにおけるスキャン領域SAでは図14に示すように、左から右、上から下の画素ブロック12bの順番に、120、30、60、55、70、110、100、70、40、105、40、85、95、65、25、40、150、120、60、30、25、45、100、120、110、95、80、50、90、75、80、20が輝度として抽出される。
【0052】
抽出されたデータ成分に基づいて、スキャン領域SA及び第1〜第8の候補領域CA1〜CA8における各画素ブロック12bの輝度の2値化が行なわれる。すなわち、各領域に含まれる複数の画素ブロック12bにおける輝度の平均値が求められ、平均値より大きな輝度である画素ブロック12bの輝度は1に変換され、平均値より小さな輝度である画素ブロック12bの輝度は0に変換される。
【0053】
図14に示したスキャン領域の輝度の平均値は73.75であり、それぞれの画素ブロック12bの輝度は2値化により図15に示すように、左から右、上から下の画素ブロック12bの順番に1、0、0、0、0、1、1、0、0、1、0、1、1、0、0、0、1、1、0、0、0、0、1、1、1、1、1、0、1、1、1、0に変換される。
【0054】
2値化された各画素ブロック12bの輝度はデータとして、領域毎にスキャン領域設定部35に送られる。スキャン領域設定部35では、スキャン領域SAに含まれる被写体が次のタイミングの撮像により生成される画像データにおいて、第1〜第8の候補領域CA1〜CA8のいずれに移動したかが推測される。なお、この推測は、スキャン領域における各画素ブロック12bの2値化された輝度と次のタイミングの画像データの第1〜第8の候補領域CA1〜CA8それぞれにおける各画素ブロック12bの2値化された輝度とに基づいて行なわれる。
【0055】
第1〜第8の候補領域CA1〜CA8の中からの選択は、第1〜第8の判定値の算出、第1の判定、及び第2の判定によって行なわれる。それぞれの動作について以下に詳細に説明する。
【0056】
第1〜第8の判定値とは、スキャン領域SAの画像と第1〜第8の候補領域CA1〜CA8それぞれの画像との一致性を示す計算値である。第1〜第8の判定値は、スキャン領域SA内と第1〜第8の候補領域CA1〜CA8内において相対的に同じ位置にある画素ブロック12bにおける2値化された輝度を比較し、不一致となる画素ブロック12bの個数を数えることにより算出される。従って、第1〜第8の判定値が低い程、スキャン領域SAの画像との一致性が高いと推測される。
【0057】
スキャン領域設定部35はEXOR回路(図示せず)を有しており、両画素ブロック12bにおける2値化された輝度がEXOR回路に入力される。両画素ブロック12bにおける2値化された輝度が一致するときには0が返され、2値化された輝度が異なるときには1が返される。
【0058】
例えば、第1の候補領域CA1における2値化された輝度は、図16に示すような値を有している。スキャン領域SA内と第1の候補領域CA1内の相対的位置が同じ画素ブロック12bすべてに対して、2値化された輝度がEXOR回路に入力されると、左から右、上からの下の画素ブロック12bの順番に1、0、0、1、1、0、0、1、0、1、1、0、0、0、0、1、0、1、0、1、0、0、0、0、1、0、0、0、1、0、0、0の値が出力される。スキャン領域SAと第1の候補領域CA1との比較において、EXOR回路から1の値が出力された回数が第1の判定値U(exor)として数えられる。
【0059】
同様に、スキャン領域SAと第2の候補領域CA2との比較が行なわれ、EXOR回路から1の値が出力された回数が第2の判定値UL(exor)として数えられる。同様に、スキャン領域SAと第3の候補領域CA3との比較が行なわれ、EXOR回路から1の値が出力された回数が第3の判定値L(exor)として数えられる。同様に、スキャン領域SAと第4の候補領域CA4との比較が行なわれ、EXOR回路から1の値が出力された回数が第4の判定値DL(exor)として数えられる。同様に、スキャン領域SAと第5の候補領域CA5との比較が行なわれ、EXOR回路から1の値が出力された回数外第5の判定値D(exor)として数えられる。同様に、スキャン領域SAと第6の候補領域CA6との比較が行なわれ、EXOR回路から1の値が出力された回数が第6の判定値DR(exor)として数えられる。同様に、スキャン領域SAと第7の候補領域CA7との比較が行なわれ、EXOR回路から1の値が出力された回数が第7の判定値R(exor)として数えられる。同様に、スキャン領域SAと第8の候補領域CA8との比較が行なわれ、EXOR回路から1の値が出力された回数が第8の判定値UR(exor)として数えられる。
【0060】
第1〜第8の判定値U(exor)、UL(exor)、L(exor)、DL(exor)、D(exor)、DR(exor)、R(exor)、UR(exor)が求められると、次に第1の判定が行なわれる。
【0061】
第1の判定では、被写体の大まかな移動方向である粗方向が第1、第3、第5、第7の方向の中のいずれであるかの判定が行なわれる。先ず、粗方向の判定のために第1〜第4の粗判定値が算出される。
【0062】
第1、第2、第8の判定値U(exor)、UL(exor)、UR(exor)の合計値が、第1の粗判定値UUとして算出される。また、第2〜第4の判定値UL(exor)、L(exor)、DL(exor)の合計値が、第2の粗判定値LLとして算出される。また、第4〜第6の判定値DL(exor)、D(exor)、DR(exor)の合計値が第3の粗判定値DDとして算出される。また、第6〜第8の判定値DR(exor)、R(exor)、UR(exor)の合計値が第4の粗判定値RRとして算出される。
【0063】
第1〜第4の粗判定値UU、LL、DD、RRの中の最小値が判定される。最小値となる粗判定値に対応する方向が、被写体の移動した粗方向であると判定される。第1〜第4の粗判定値に対応する方向は、それぞれ第1、第3、第5、第7の方向である。
【0064】
第2の判定においては、第1の判定により判定された粗方向を正方向成分として含む方向の中から、被写体が移動した方向の判定が行なわれる。すなわち、第1の粗判定値UUが最小であるときは、被写体の移動方向は第1、第2、第8の方向のいずれかの方向であると判定される。第2の粗判定値LLが最小であるときは、被写体の移動方向は第2〜第4の方向いずれかの方向であると判定される。第3の粗判定値DDが最小であるときは、被写体の移動方向は第4〜第6の方向いずれかの方向であると判定される。第4の粗判定値RRが最小であるときは、被写体の移動方向は第6〜第8の方向いずれかの方向であると判定される。
【0065】
具体的には、選択された粗方向に含まれる3方向に対応する3つの判定値の最小値が判定される。最小値であると判定された判定値に対応する候補領域が被写体の移動した領域であると判定され、選択される。選択された候補領域は、スキャン領域SAとして再設定される。
【0066】
なお、固定AF機能を実行させるときには、追尾部30の中でスキャン領域初期設定部32のみが駆動され、画素ブロック算出部31、候補領域設定部33、画像認識部34、及びスキャン領域設定部35の駆動は停止される。
【0067】
スキャン領域初期設定部32の駆動により設定されたスキャン領域SAは画像認識部34及びスキャン領域設定部35を介してAF調整部23aにデータとして送られる。なお、追尾AF機能と異なり、スキャン領域SAは最初に設定されたスキャン領域SAのまま固定される。
【0068】
次に、追尾AF機能を実行するときに追尾部30において行なわれるスキャン領域SAの設定のために行なわれる処理を図17〜図19のフローチャートを用いて説明する。図17は、スキャン領域SAの設定のために行なわれる処理を説明するためのフローチャートである。図18は、第1の判定を実行するときの処理を説明するためのフローチャートである。図19は、第2の判定を実行するときの処理を説明するためのフローチャートである。
【0069】
追尾AF機能を実行させるとき、すなわち追尾AF機能実行に切替えるコマンド入力をした後にレリーズボタンが半押しされたときに本処理が開始される。なお、本処理は、デジタルカメラ10の電源がOFFに切替えられるか、追尾AF機能の実行が解除されるまで繰返される。
【0070】
ステップS100において、スキャン領域の初期設定が行なわれる。操作者によるコマンド入力により定められた撮影画像の枠内の点を中心Cとしてスキャン領域SAが設定される。次のステップS101において、追尾部30に1フレームの画像データが受信される。
【0071】
画像データを受信するとステップS102に進む。ステップS102では、設定されたスキャン領域SAに基づいて、第1〜第8の候補領域CA1〜CA8の設定が行なわれる。次のステップS103において、ステップS101で受信した画像データからスキャン領域SAのデータ成分が抽出される。抽出されたデータ成分に基づいて、スキャン領域SAの画素ブロック12bの輝度が2値化される。
【0072】
スキャン領域SAの輝度の2値化の次に、ステップS104に進む。ステップS104では、次のフレームで生成された画像データが追尾部30に受信される。
【0073】
次のステップS105では、ステップS104で受信した画像データから第1〜第8の候補領域CA1〜CA8のデータ成分が抽出される。抽出されたデータ成分に基づいて第1〜第8の候補領域CA1〜CA8それぞれの画素ブロック12bの輝度が2値化される。2値化の終了後、ステップS106に進む。
【0074】
ステップS106では、スキャン領域SAにおける2値化された輝度と第1〜第8の候補領域CA1〜CA8における2値化された輝度とに基づいて、第1〜第8の判定値U(exor)、UL(exor)、L(exor)、DL(exor)、D(exor)、DR(exor)、R(exor)、UR(exor)が算出される。
【0075】
次にステップS107に進み、第1〜第8の判定値U(exor)、UL(exor)、L(exor)、DL(exor)、D(exor)、DR(exor)、R(exor)、UR(exor)により、第1〜第4の粗判定値UU、LL、DD、RRが算出される。
【0076】
次にステップS200において、第1の判定のサブルーチンが実行されることにより、第2の判定を行なうために用いる3つの判定値が選択される。第1の判定のサブルーチンが終了すると、ステップS300において、第2の判定のサブルーチンが実行される。第2の判定のサブルーチンが実行されることにより、ステップS102の画像データにおいてスキャン領域SAに含まれる被写体をステップS104の画像データにおいて含む領域が、第1〜第8の候補領域CA1〜CA8の中から選択される。
【0077】
第2の判定のサブルーチンが終了すると、ステップS108において選択された候補領域が新たにスキャン領域SAとして設定される。ステップS108の処理の後は、ステップS102に戻り、ステップS102〜ステップS108の処理が繰返される。
【0078】
次にステップS200で実行される第1の判定のサブルーチン及びステップS300で実行される第2の判定のサブルーチンについて説明する。ステップS200のサブルーチンが開始すると、先ずステップS201において第1の粗判定値UUと第3の粗判定値DDのいずれが小さいかが判定される。第1の粗判定値UUが小さいときは、ステップS202に進む。
【0079】
ステップS202では、第1の粗判定値UUと第2の粗判定値LLとのいずれが小さいかが判定される。第1の粗判定値UUが小さいときは、ステップS203に進む。ステップS203では、第1の粗判定値UUと第4の粗判定値RRとのいずれが小さいかが判定される。第1の粗判定値UUが小さいときは、ステップS204に進む。
【0080】
ステップS204では、被写体の移動した粗方向が第1の方向であると判定される。第1の粗判定値UUを算出するための第1、第2、第8の判定値U(exor)、UL(exor)、UR(exor)が第2の判定を行なうために選択される。第1の判定値U(exor)が第1の確定用判定値N1に設定される。第2の判定値UL(exor)が第2の確定用判定値N2に設定される。第8の判定値UR(exor)が第3の確定用判定値N3に設定される。
【0081】
ステップS201において、第3の粗判定値DDが小さいときはステップS205に進む。ステップS205では、第3の粗判定値DDと第2の粗判定値LLとのいずれが小さいかが判定される。第3の粗判定値DDが小さいときは、ステップS206に進む。ステップS206では、第3の粗判定値DDと第4の粗判定値RRとのいずれが小さいかが判定される。第3の粗判定値DDが小さいときは、ステップS207に進む。
【0082】
ステップS207では、被写体の移動した粗方向が第3の方向であると判定される。第3の粗判定値DDを算出するための第4〜第6の判定値DL(exor)、D(exor)、DR(exor)が第2の判定を行なうために選択される。第5の判定値D(exor)が第1の確定用判定値N1に設定される。第4の判定値DL(exor)が第2の確定用判定値N2に設定される。第6の判定値DR(exor)が第3の確定用判定値N3に設定される。
【0083】
ステップS202又はステップS205において第2の粗判定値LLの方が小さいときは、ステップS208に進む。ステップS208では、第2の粗判定値LLと第4の粗判定値RRとのいずれが小さいかが判定される。第2の粗判定値LLが小さいときは、ステップS209に進む。
【0084】
ステップS209では、被写体の移動した粗方向が第2の方向であると判定される。第2の粗判定値LLを算出するための第2〜第4の判定値UL(exor)、L(exor)、DL(exor)が第2の判定を行なうために選択される。第3の判定値L(exor)が第1の確定用判定値N1に設定される。第2の判定値UL(exor)が第2の確定用判定値N2に設定される。第4の判定値DL(exor)が第3の確定用判定値N3に設定される。
【0085】
ステップS203、ステップS206、又はステップS208において第4の粗判定値RRの方が小さいときは、ステップS210に進む。
【0086】
ステップS210では、被写体の移動した粗方向が第4の方向であると判定される。第4の粗判定値RRを算出するための第6〜第8の判定値DR(exor)、R(exor)、UR(exor)が第2の判定を行なうために選択される。第7の判定値R(exor)が第1の確定用判定値N1に設定される。第8の判定値UR(exor)が第2の確定用判定値N2に設定される。第6の判定値DR(exor)が第3の確定用判定値N3に設定される。
【0087】
ステップS204、ステップS207、ステップS209、又はステップS210の処理の後に、第1の判定のサブルーチンは終了し、ステップS300の第2の判定のサブルーチンが開始される。
【0088】
ステップS300のサブルーチンを開始すると、先ずステップS301において第1の確定用判定値N1と第2の確定用判定値N2とのいずれが小さいかについての判定が行なわれる。第1の確定用判定値N1の方が小さいときにはステップS302に進む。
【0089】
ステップS302では、第1の確定用判定値と第3の確定用判定値N3とのいずれが小さいかについての判定が行なわれる。第1の確定用判定値N1の方が小さいときにはステップS303に進む。
【0090】
ステップS303では、被写体の移動した方向が第1の確定用判定値N1に設定された判定値に対応する方向と判定される。設定された判定値に対応する候補領域がステップS108においてスキャン領域に設定される候補領域として選択される。
【0091】
ステップS301において、第2の確定用判定値N2の方が小さいときにはステップS304に進む。ステップS304では、第2の確定用判定値N2と第3の確定用判定値N3とのいずれが小さいかについての判定が行なわれる。第2の確定用判定値N2の方が小さいときにはステップS305に進む。
【0092】
ステップS305では、被写体の移動した方向が第2の確定用判定値N2に設定された判定値に対応する方向にと判定される。設定された判定値に対応する候補領域がステップS108においてスキャン領域に設定される候補領域として選択される。
【0093】
ステップS302又はステップS304において、第3の確定用判定値N3の方が小さいときにはステップS306に進む。
【0094】
ステップS306では、被写体の移動した方向が第3の確定用判定値N3に設定された判定値に対応する方向と判定される。設定された判定値に対応する候補領域がステップS108においてスキャン領域に設定される候補領域として選択される。
【0095】
ステップS303、ステップS305、又はステップS306の終了後、第2の判定のサブルーチンは終了し、ステップS108に進む。
【0096】
以上のような構成である本実施形態の被写体追尾システムによれば、被写体の誤追尾を低減化することが可能である。従来のようなパターンマッチングでは本実施形態における第1〜第8の判定値だけを比較し、最小の判定値に対応する候補領域を追尾先の領域と判定していた。しかし、実際に移動先でない領域の判定値が偶然に最小となることが起こりえるため、誤追尾が発生することになる。
【0097】
そこで、本実施形態では、第1〜第8の判定値から算出される第1〜第4の粗判定値に基づいて被写体の移動方向を大まかに判定することにより、被写体の移動先の候補が絞り込まれる。移動先で無い領域の判定値が偶然に最小となることがあっても、粗判定値は実際に被写体の移動した方向が最小となる可能性が高い。従って、大まかな移動方向の判定に詳細な方向の判定を行なうことにより、誤追尾を低減化させ追尾精度を向上させることが可能となる。
【0098】
なお、本実施形態において、被写体の移動方向が第1〜第8の方向の8方向のいずれであるかを判定する構成であるが、4方向以上の中から判定される構成であってもよい。例えば、90度ずつ異なる4方向のいずれかを移動方向として判定する構成であれば、第1の判定により隣合う2方向の2組それぞれの合成ベクトルのいずれの方向に移動しているかについての第1の判定を行い、第2の判定において2方向のいずれに移動したかについての第2の判定を行えば良い。
【0099】
また、本実施形態において、第1の判定により被写体の移動方向が大まかに4方向のいずれかの方向であると判定されるが、前述のように2方向以上であれば、何方向の中から判定されても良い。
【0100】
また、本実施形態において被写体の移動した粗方向の判定のための粗判定値は、異なる3方向に対応した判定値により算出される構成であるが、粗方向を正方向成分として含む方向であって異なる2方向以上に対応した判定値により算出されれば良い。この場合第2の判定においては、粗判定値を算出した判定値に対応した数の方向の中から、被写体の移動した方向の判定が行なわれる。
【0101】
また、本実施形態において、第1〜第8の候補領域CA1〜CA8は前のタイミングのフレームの画像データにおけるスキャン領域SAから第1〜第8の方向に1画素ブロック12bずつ移動させた領域であるが、移動させる画素ブロック12bの数はいくつであっても良い。また、移動させる画素ブロック12bの数は、方向に応じて異なっていても良い。ただし、移動させる距離は実質的に同じであることが好ましい。
【0102】
また、本実施形態において、スキャン領域SA及び第1〜第8の候補領域CA1〜CA8の形状は十字形であるがどのような形状であっても良い。
【0103】
また、本実施形態において、スキャン領域SA及び第1〜第8の候補領域CA1〜CA8における画素ブロック12bの輝度の2値化が行なわれているが、2値化でなくても所定の数によって階層化しても良い。更には、階層化しなくても良い。ただし、2値化を行なうことにより第1、第2の判定を高速化することが可能になる。なお、領域ごとにその平均輝度で正規化することにより、蛍光灯のフリッカ等の影響を軽減させることが可能になる。
【0104】
また、本実施形態において、EXOR回路を用いて、スキャン領域SAと第1〜第8の候補領域CA1〜CA8における画素ブロック12bの2値化された輝度が一致しているか否かを判定させているが、例えばEXNOR回路を用いて判定を行なわせても良い。また、他のいずれの手段により一致しているか否かの判定を行なっても良い。
【0105】
また、本実施形態において、撮像素子12の有効画素領域AAには画素がマトリックス状に配列される構成であるが、2次元状に配列されていればよい。
【0106】
また、本実施形態において、追尾部30により所望の被写体を追尾させ、追尾している被写体に対してAF機能を実行させる構成であるが、追尾部30による追尾機能を他の機能に適用することは可能である。例えば、所望の被写体を追尾し、モニタ上に被写体とともに追尾されていることが表示される監視カメラや、移動する被写体を追尾させ、追尾している被写体に対して自動露出補正を行なうカメラなどにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の一実施形態を適用した被写体追尾システムを有するデジタルカメラの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】DSPの内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】追尾部の内部構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】撮像素子の有効画素領域の構成を示す正面図である。
【図5】スキャン領域の形状を説明するための図である。
【図6】スキャン領域に対する第1の候補領域の位置関係を示す図である。
【図7】スキャン領域に対する第2の候補領域の位置関係を示す図である。
【図8】スキャン領域に対する第3の候補領域の位置関係を示す図である。
【図9】スキャン領域に対する第4の候補領域の位置関係を示す図である。
【図10】スキャン領域に対する第5の候補領域の位置関係を示す図である。
【図11】スキャン領域に対する第6の候補領域の位置関係を示す図である。
【図12】スキャン領域に対する第7の候補領域の位置関係を示す図である。
【図13】スキャン領域に対する第8の候補領域の位置関係を示す図である。
【図14】スキャン領域の画素ブロック毎の輝度の一例を示す図である。
【図15】図14に示すスキャン領域の画素ブロックについての2値化した輝度を示す図である。
【図16】第1の候補領域の画素ブロック毎の2値化した輝度の一例を示す図である。
【図17】スキャン領域の設定のために行なわれる処理を説明するためのフローチャートである。
【図18】第1の判定を実行するときの処理を説明するためのフローチャートである。
【図19】第2の判定を実行するときの処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
10 デジタルカメラ
12b 画素ブロック
12p 画素
13 AFE(Analog Front End)
23 DSP(Digital Signal Processor)
23a AF調整部
23c 制御部
23p1 前段データ処理部
30 追尾部
31 画素ブロック算出部
32 スキャン領域初期設定部
33 候補領域設定部
34 画像認識部
35 スキャン領域設定部
AA 有効画素領域
C スキャン領域の中心
CA1〜CA8 第1〜第8の候補領域
SA スキャン領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に撮像される撮影画像内における特定の被写体である追尾対象体の移動を追尾する被写体追尾システムであって、
前記撮影画像における定められた一部の領域を、前記追尾対象体を追尾するための追尾領域に初期設定する初期設定部と、
前記追尾領域から第1の粗方向を正方向成分として有する第1、第2の方向に移動した領域である第1、第2の候補領域を設定し、前記第1の粗方向とは異なる第2の粗方向を正方向成分として有する第3、第4の方向に前記追尾領域から移動した領域である第3、第4の候補領域を設定する候補領域設定部と、
第1のタイミングで撮像された前記撮影画像における前記追尾領域の画像である基準画像を検出し、前記第1のタイミングの後の第2のタイミングで撮像された前記撮影画像における前記第1〜第4の候補領域の画像である第1〜第4の候補画像を検出する画像検出部と、
前記基準画像と前記第1〜第4の候補画像それぞれとの一致性に基づいて、前記第1のタイミングから前記第2のタイミングにおける前記追尾対象体の移動方向が、前記第1の粗方向と前記第2の粗方向とのいずれであるかを判定する第1の判定部と、
前記追尾対象体の移動方向として判定された粗方向が前記第1の粗方向であるときに前記基準画像と前記第1、第2の候補画像それぞれとの一致性に基づいて前記追尾対象体の移動方向が前記第1、第2の方向のいずれであるかを判定し、前記追尾対象体の移動方向として判定された粗方向が第2の粗方向であるときに前記基準画像と前記第3、第4の候補画像それぞれの一致性に基づいて前記追尾対象体の移動方向が前記第3、第4の方向のいずれであるかを判定する第2の判定部と、
前記第2の判定部に前記追尾対象体の移動方向として判定された方向に移動した候補領域を追尾領域として再設定する再設定部とを備える
ことを特徴とする被写体追尾システム。
【請求項2】
前記第1の判定部は2つの画像の一致性に応じた判定値を算出し、前記基準画像と前記第1、第2の候補画像それぞれの前記判定値の和と、前記基準画像と前記第3、第4の候補画像それぞれの前記判定値の和とを比較することにより、前記追尾対象体の移動方向が前記第1、第2の粗方向のいずれであるかを判定することを特徴とする請求項1に記載の被写体追尾システム。
【請求項3】
前記第2の判定部は2つの画像の一致性に応じた判定値を算出し、前記基準画像と前記第1、第2の候補画像それぞれの前記判定値を比較することにより前記追尾対象体の移動方向が前記第1、第2の方向のいずれであるかの判定、又は前記基準画像と前記第3、第4の候補画像それぞれの前記判定値を比較することにより前記追尾対象体の移動方向が前記第3、第4の方向のいずれであるかの判定を行なうことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の被写体追尾システム。
【請求項4】
前記追尾領域から前記第1〜第4の候補領域それぞれまでの距離は実質的に等しいことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の被写体追尾システム。
【請求項5】
前記候補領域設定部は、前記第1、第2の粗方向とは異なる第3の粗方向を正方向成分として有する第5、第6の方向に前記追尾領域から移動した領域である第5、第6の候補領域を設定し、
前記画像検出部は、前記第2のタイミングで撮像された前記撮影画像における前記第5、第6の候補領域の画像である第5、第6の候補画像を検出する画像検出部と、
前記第1の判定部は、前記基準画像と前記第1〜第6の候補画像それぞれとの一致性に基づいて、前記第1のタイミングから前記第2のタイミングにおける前記追尾対象体の移動方向が、前記第1〜第3の粗方向のいずれの粗方向であるかを判定し、
前記第2の判定部は、前記追尾対象体の移動方向として判定された粗方向が前記第3の粗方向であるときに前記基準画像と前記第5、第6の候補画像それぞれとの一致性に基づいて前記追尾対象体の移動方向が前記第5、第6の方向いずれであるかを判定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の被写体追尾システム。
【請求項6】
前記第1の粗方向と前記第3の粗方向は互いに逆向きであり、前記第1の粗方向と前記第2の粗方向は互いに垂直であり、前記第1の粗方向と前記第1の方向とは同じ方向であり、前記第2の粗方向と前記第3の方向とは同じ方向であり、前記第3の粗方向と前記第5の方向とは同じ方向であり、前記第2の方向は前記第2の粗方向を正方向成分として含み、前記第4の方向は前記第3の粗方向を正方向成分として含み、
前記候補領域設定部は、前記追尾領域から、前記第3の方向の逆向きの方向である第7の方向、及び前記第7の方向と前記第1の方向とを正方向成分として含む第8の方向に移動した領域である第7、第8の領域である第7、第8の候補領域を設定し、
前記画像検出部は、前記第2のタイミングで撮像された前記撮影画像における前記第7、第8の候補領域の画像である第7、第8の候補画像を検出する画像検出部と、
前記第1の判定部は、前記基準画像と前記第1〜第8の候補画像それぞれとの一致性に基づいて、前記第1のタイミングから前記第2のタイミングにおける前記追尾対象体の移動方向が、前記第1、第3、第5、第7の方向のいずれの方向であるかを判定し、
前記第2の判定部は、前記追尾対象体の移動方向として判定された方向が前記第1の方向であるときに前記基準画像と前記第1、第2、第8の候補画像それぞれとの一致性に基づいて前記追尾対象体の移動方向が前記第1、第2、第6の方向のいずれであるかを判定し、前記追尾対象体の移動方向として判定された方向が前記第3の方向であるときに前記基準画像と前記第2〜第4の候補画像それぞれとの一致性に基づいて前記追尾対象体の移動方向が前記第2〜第4の方向のいずれであるかを判定し、前記追尾対象体の移動方向として判定された方向が前記第5の方向であるときに前記基準画像と前記第4〜第6の候補画像それぞれとの一致性に基づいて前記追尾対象体の移動方向が前記第4〜第6の方向のいずれであるかを判定し、前記追尾対象体の移動方向として判定された方向が前記第7の方向であるときに前記基準画像と前記第6〜第8の候補画像それぞれとの一致性に基づいて前記追尾対象体の移動方向が前記第6〜第8の方向のいずれであるかを判定する
ことを特徴とする請求項5に記載の被写体追尾システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−251636(P2007−251636A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72904(P2006−72904)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】