説明

被加工物を電気メッキするための装置及び方法

【課題】 被加工物を電気メッキするための装置及び方法を提供する。
【解決手段】 被加工物(12)を電気メッキするための装置(10)は、主電気メッキ陽極(14)と、補助電気メッキ陽極(16)と、抵抗器(18)とを含む。抵抗器は、主及び補助電気メッキ陽極の1つに電気的に直列に接続される。
主及び補助電気メッキ陽極は、電解液に対して電気的に並列に接続可能である。被加工物(12)を電気メッキする方法は、電解液(20)と、主電気メッキ陽極(14)と、補助電気メッキ陽極(16)とを入手する段階を含む。被加工物と主及び補助電気メッキ陽極とは、電解液に接触させた状態で配置される。電流は、主電気メッキ陽極を通して第1のアンペア数でまた補助電気メッキ陽極を通して異なった第2のアンペア数で印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的には被加工物上に皮膜を施工することに関し、より具体的には、被加工物を電気メッキするための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温酸化及び腐食に対して保護するために、航空機エンジンのタービン翼形部のようなタービン翼形部を白金アルミナイド拡散皮膜で被覆することが知られている。この白金アルミナイド皮膜を形成するために、部品は先ず白金電気メッキされる。タービン翼形部を白金電気メッキするのに電解液Pt(NHHPOを使用することが知られている。
【0003】
公知の電気メッキ法では、主電気メッキ陽極及び補助電気メッキ陽極は、陽極固定具と電解液とに対して電気的に並列に接続される。陰極固定具は、電解液に接触した状態になった被加工物に直列に接続されかつ該被加工物を支持する。陽極固定具と陰極固定具との間に電圧を印加して、被加工物を電気メッキするようにする。しかしながら、Pt(NHHPOのような幾つかの電解液は、複雑な形状上への均一な被着を得るのには適していない。
【0004】
依然として、科学者及び技術者は、被加工物を電気メッキするための改良した装置及び方法の探究を続けている。
【特許文献1】特開平02−107794号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の第1の具体構成は、被加工物を電気メッキするための装置であり、主電気メッキ陽極と、補助電気メッキ陽極と、抵抗器とを含む。抵抗器は、主及び補助電気メッキ陽極の1つに電気的に直列に接続される。主及び補助電気メッキ陽極は、電解液に対して電気的に並列に接続可能である。
【0006】
本発明の第1の方法は、被加工物を電気メッキするためのものであり、幾つかの段階を含む。1つの段階は、電解液と、主電気メッキ陽極と、補助電気メッキ陽極とを入手する段階を含む。別の段階は、被加工物と主及び補助電気メッキ陽極とを電解液に接触させた状態で配置する段階を含む。さらに別の段階は、主電気メッキ陽極を通して第1のアンペア数でまた補助電気メッキ陽極を通して異なった第2のアンペア数で電流を印加する段階を含む。
【0007】
本発明の実施形態の第1の方法及び第1の具体構成の1つの実施例では、被加工物は、2つの翼形部を有し、かつ該2つの翼形部を各々が互いに結合する内側バンド及び外側バンドを有するタービンノズルダブレットであり、主電気メッキ陽極は2つの翼形部の外側に配置され、補助電気メッキ陽極は2つの翼形部間に配置された少なくとも一部分を有し、また抵抗器の抵抗値は、2つの翼形部の翼形部間対向表面上に、抵抗器がない状態で得られる白金被着よりも一層均一な白金被着が得られるように選択される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
添付の図面は、本発明の実施形態を示す。
【0009】
次に図面を参照すると、図1〜図2は、本発明の実施形態を開示する。図1〜図2の実施形態の第1の具体構成は、被加工物12を電気メッキするための装置10である。この装置10は、主電気メッキ陽極14と、補助電気メッキ陽極16と、抵抗器18とを含む。抵抗器18は、主及び補助電気メッキ陽極14及び16の1つに電気的に直列に接続される。主及び補助電気メッキ陽極14及び16は、電解液20に対して電気的に並列に接続可能である(また、1つの構成では電気的に接続される)。特定の構成要素(主電気メッキ陽極のような)を有するものとして装置を説明することは、この装置が少なくとも1つの特定の構成要素(少なくとも1つの主電気メッキ陽極のような)を有することを意味する。
【0010】
図1〜図2の実施形態の第1の具体構成の1つの実施可能例では、抵抗器18は、補助電気メッキ陽極16に電気的に直列に接続される。同一の又は異なった実施可能例では、被加工物12は被加工物形状を有し、補助電気メッキ陽極16は、被加工物形状に少なくとも部分的に一致した補助陽極形状を有する。1つの実施例では、被加工物は、2つの翼形部24及び26を有し、かつ該2つの翼形部24及び26を各々が互いに結合する内側バンド28及び外側バンド30を有するタービンノズルダブレット22である。1つの変更例では、抵抗器18は可変抵抗器である。別の変更例では、抵抗器18は、固定抵抗器である。
【0011】
図1〜図2の実施形態の第2の具体構成は、2つの翼形部24及び26を有し、かつ該2つの翼形部24及び26を各々が互いに結合する内側バンド28及び外側バンド30を有するタービンノズルダブレット22を電気メッキするための装置10である。この装置10は、主電気メッキ陽極14と、補助電気メッキ陽極16と、抵抗器18とを含む。主電気メッキ陽極14は、2つの翼形部24及び26の外側に配置可能である(また、1つの構成では配置される)。補助電気メッキ陽極16は、2つの翼形部24及び26間に配置可能である(また、1つの構成では配置された)少なくとも一部分を有する。抵抗器18は、補助電気メッキ陽極16に電気的に直列に接続される。主及び補助電気メッキ陽極14及び16は、電解液20に対して電気的に並列に接続可能である。
【0012】
図1〜図2の実施形態の第2の具体構成の1つの実施可能例では、電解液20は、2つの翼形部24及び26と、また主及び補助電気メッキ陽極14及び16と接触した状態で配置される。材料の1つの選択例では、電解液20は、Pt(NHHPOを含む(1つの実施例では本質的にPt(NHHPOからなる)。1つの変更例では、抵抗器18は、可変抵抗器である。別の変更例では、抵抗器18は、2つの翼形部24及び26の翼形部間対向表面上への白金被着を、抵抗器がない状態での白金被着よりも実質的に増大させかつ被着した白金のあらゆる実質的なブリスタリング(膨れ)を回避するように選択された抵抗値を有する固定抵抗器である。1つの実施例は、2つの翼形部間に配置可能である補助電気メッキ陽極16の一部分は、陽極メッシュ(補助電気メッキ陽極の電気機械的活性部分)で覆われた実質的にプレートの形状を有する。
【0013】
本発明の第1の方法は、被加工物12を電気メッキするためのものであり、幾つかの段階を含む。1つの段階は、電解液20と、主電気メッキ陽極14と、補助電気メッキ陽極16とを入手する段階を含む。別の段階は、被加工物12と主及び補助電気メッキ陽極14及び16とを電解液20に接触させた状態で配置する段階を含む。さらに別の段階は、主電気メッキ陽極14を通して第1のアンペア数でまた補助電気メッキ陽極16を通して異なった第2のアンペア数で電流を印加する段階を含む。
【0014】
第1の方法の1つの使用例では、被加工物12は、2つの間隔を置いて配置された被加工物部分を含み、主電気メッキ陽極14は、2つの間隔をおいて配置された被加工物部分の外側に配置され、また補助電気メッキ陽極16は、2つの間隔を置いて配置された被加工物部分間に配置された少なくとも一部分を有する。材料の1つの選択例では、電解液20は、Pt(NHHPOを含む(また、1つの実施例では本質的にPt(NHHPOからなる)。1つの変形例では、第2のアンペア数は、2つの間隔を置いて配置された被加工物部分間の被加工物12の領域上への白金被着を、第1及び第2のアンペア数が等しい場合の白金被着よりも実質的に増大させるように選択され、かつ被着した白金のブリスタリングを実質的に回避するように選択される。第1の方法の1つの使用例では、被加工物12は、2つの翼形部24及び26を有し、かつ該2つの翼形部24及び26を各々が互いに結合する内側バンド28及び外側バンド30を有するタービンノズルダブレット22である。
【0015】
本発明の第2の方法は、2つの翼形部24及び26を有し、かつ該2つの翼形部24及び26を各々が互いに結合する内側バンド28及び外側バンド30を有するタービンノズルダブレット22を電気メッキするためのものである。この第2の方法は、幾つかの段階を含む。1つの段階は、Pt(NHHPOを含む(また、1つの実施例では本質的にPt(NHHPOからなる)電解液20を入手する段階を含む。別の段階は、主電気メッキ陽極14と、補助電気メッキ陽極16と、抵抗器18と、陽極固定具34とを入手する段階を含む。さらに別の段階は、2つの翼形部24及び26と主及び補助電気メッキ陽極14及び16とを電解液20に接触させた状態で配置する段階を含む。さらに別の段階は、陽極固定具34及び電解液20と並列電気接続状態になった2つのブランチ36及び38を有し、2つの並列ブランチ36及び38の一方36は主電気メッキ陽極14を含み、また2つの並列ブランチ34及び36の他方38は直列接続状態で補助電気メッキ陽極16及び抵抗器18を含む回路を形成する段階を含む。さらに別の段階は、タービンノズルダブレット22と陽極固定具34との間に電圧を印加する段階を含む。1つの実施例では、補助電気メッキ陽極16は、形状一致陽極である。
【0016】
第2の方法の1つの変更例では、抵抗器18は、可変抵抗器である。1つの変形例ではさらに、付加的なタービンノズルダブレット22に対して可変抵抗器の様々な抵抗値で第2の方法の上記段階を反復する段階を含む。この変形例の1つの拡大例ではさらに、2つの翼形部24及び26の翼形部間対向表面上への白金被着を、抵抗器がない状態での白金被着よりも実質的に増大させかつ被着した白金のあらゆる実質的なブリスタリング(膨れ)を回避するような様々な抵抗値の1つを選択する段階を含む。1つの任意選択例では、可変抵抗器の抵抗は様々な抵抗値の選択した1つに設定され、その後、第2の方法の段階が、他のタービンノズルダブレット22を電気メッキするために反復される。第2の方法の別の変更例では、抵抗器18は、2つの翼形部24及び26の翼形部間対向表面上への白金被着を、抵抗器がない状態での白金被着よりも実質的に増大させかつ被着した白金のあらゆる実質的なブリスタリング(膨れ)を回避するような選択した抵抗値を有する固定抵抗器である。
【0017】
図1〜図2の実施形態の方法及び具体構成のいずれかのこれまでに説明した実施可能例、実施例、変更例などは、図1〜図2の実施形態の方法及び具体構成のその他のいずれか1つ又はそれ以上又は全てに対して同様に適用可能であることに注目されたい。本発明の実施形態のこれまでに説明した方法及び具体構成のいずれか1つ又はそれ以上又は全てにおいては、陰極固定具40及び整流器42を含む。1つの構成では、陰極固定具40は、被加工物12(タービンノズルダブレット22のような)を支持し、かつ該被加工物に電気的に接続される。1つの変形例では、整流器42は、陽極固定具34及び陰極固定具40に電気的に接続される。1つの変更例では、電流の方向は図1に矢印44で示すような方向である。1つの使用例では、主電気メッキ陽極14は、フラットスクリーンの形状を有する。1つの適用例では、それに限定されないが、例えば幾つかの被加工物を一度に電気メッキする場合に、付加的な主及び補助電気メッキ陽極を使用する。
【0018】
出願人は、本質的にPt(NHHPOからなる電解液20を使用し、ほぼ290平方センチメートルの表面面積を有する主電気メッキ陽極14を使用し、またほぼ3.2平方センチメートルの表面面積を有する陽極メッシュ部分を備えた補助電気メッキ陽極16を使用して、ほぼ206平方センチメートルの表面面積を有するタービンノズルダブレット22を電気メッキする第1のセットの実験を行った。電流の全てが主電気メッキ陽極14を通ってのみ流れるようにした場合、翼形部24及び26間には十分な白金が被着しなかった。電流の全てが補助電気メッキ陽極16を通ってのみ流れるようにした場合、結果は陽極分極でありメッキが生じなかった。等しい電流が主及び補助電気メッキ陽極14及び16を通って流れるようにした場合、翼形部24及び26間に過剰な白金が被着した。
【0019】
出願人は、第1のセットに類似した第2のセットの実験を行い、その実験において、0〜5000オームの可変抵抗器を使用し、タービンノズルダブレット22と補助電気メッキ陽極16との間の電圧VAを測定し、またタービンノズルダブレット22と主電気メッキ陽極14との間の電圧VPを測定した。VP=VA=2.2ボルトdc(直流)での1つの実験では、翼形部24及び26間に白金ブリスタが観察された。VP=2.3ボルト及びVA=1.0ボルトでの別の実験では、翼形部間にブリスタは観察されなかったが、翼形部間には薄い白金層のみが被着した。VP=2.3ボルト及びVA=1.6ボルトでのさらに別の実験では、翼形部間にブリスタは全く観察されず、また翼形部間に若干厚めの白金層が被着した。VP=1.7ボルト及びVA=1.7ボルトでのさらに別の実験では、翼形部間にブリスタは全く観察されず、また翼形部間に許容可能な白金層が被着した。1つの任意選択例では、タービンノズルダブレット22の製造での電気メッキにおいては、可変抵抗器を固定抵抗器と置き換えることになる。
【0020】
実施形態の幾つかの方法及び具体構成の記載によって本発明を説明してきたが、特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲をそのような細部に制限又は限定することは、出願人の意図するものではない。なお、特許請求の範囲に記載された符号は、理解容易のためであってなんら発明の技術的範囲を実施例に限縮するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】被加工物を電気メッキするための、本発明の装置の実施形態の概略電気接続図。
【図2】図1の主電気メッキ陽極をタービン翼形部ダブレットの2つの翼形部の外側に設置し、図1の補助電気メッキ陽極を2つの翼形部間に設置し、また解り易くするために図1の電気接続及び残りの構成要素を省略した状態と共に示した、図1の被加工物のタービン翼形部ダブレットの実施例の概略正面図。
【符号の説明】
【0022】
10 電気メッキするための装置
12 被加工物
14 主電気メッキ陽極
16 補助電気メッキ陽極
18 抵抗器
20 電解液
22 タービンノズルダブレット
24、26 翼形部
28 内側バンド
30 外側バンド
34 陽極固定具
40 陰極固定具
42 整流器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物(12)を電気メッキするための装置(10)であって、
a)主電気メッキ陽極(14)と、
b)補助電気メッキ陽極(16)と、
c)前記主及び補助電気メッキ陽極の1つに電気的に直列に接続された抵抗器(18)と、を含み、
前記主及び補助電気メッキ陽極が、電解液(20)に対して電気的に並列に接続可能である、
装置。
【請求項2】
前記抵抗器が、前記補助電気メッキ陽極に直列に接続されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記被加工物が被加工物形状を有し、また前記補助電気メッキ陽極が、前記被加工物形状に少なくとも部分的に一致した補助陽極形状を有する、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記被加工物が、2つの翼形部(24及び26)を有し、かつ前記2つの翼形部を各々が互いに結合する内側バンド(28)及び外側バンド(30)を有するタービンノズルダブレット(22)である、請求項3記載の装置。
【請求項5】
被加工物(12)を電気メッキする方法であって、
a)電解液(20)と、主電気メッキ陽極(14)と、補助電気メッキ陽極(16)とを入手する段階と、
b)前記被加工物と前記主及び補助電気メッキ陽極とを前記電解液に接触させた状態で配置する段階と、
c)前記主電気メッキ陽極を通して第1のアンペア数でまた前記補助電気メッキ陽極を通して異なった第2のアンペア数で電流を印加する段階と、
を含む方法。
【請求項6】
前記被加工物が2つの間隔を置いて配置された被加工物部分を含み、前記主電気メッキ陽極が前記2つの間隔を置いて配置された被加工物部分の外側に配置され、また前記補助電気メッキ陽極が前記2つの間隔を置いて配置された被加工物部分間に配置された少なくとも一部分を有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記電解液が、本質的にPt(NHHPOからなる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記第2のアンペア数が、前記2つの間隔を置いて配置された被加工物部分間の被加工物領域上への白金被着を、第1及び第2のアンペア数が等しい場合の白金被着よりも実質的に増大させるように選択され、かつ被着した白金のブリスタリングを実質的に回避するように選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記被加工物が、2つの翼形部(24及び26)を有し、かつ前記2つの翼形部を各々が互いに結合する内側バンド(28)及び外側バンド(30)を有するタービンノズルダブレット(22)である、請求項8記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−63448(P2006−63448A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242225(P2005−242225)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】