説明

被塗布部材の処理装置および処理方法並びに液晶ディスプレイ用部材の製造方法

【課題】液晶ディスプレイに必要な塗布膜を形成する低粘度の液体材料を減圧乾燥しても、膜厚が均一でむらのない塗布膜を形成する減圧乾燥手段を提供する。そしてそれによって低コストで高品質のカラーフィルターやTFTアレイ基板等の液晶ディスプレイ用部材を高い生産性で製造できる液晶ディスプレイ用部材の製造方法も提供する。
【解決手段】枚葉状の被塗布部材の下面を複数の支持体で支持し、被塗布部材上の液体材料の液体成分を蒸発させて塗布膜を形成する被塗布部材の処理装置であって、支持体は被塗布部材と接触する支持部に向かって先細りとなる板状形状で、支持部の厚さが150μm以下である被塗布部材の処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばカラー液晶ディスプレイ用カラーフィルタやTFT用アレイ基板等の液晶ディスプレイ用部材を製造する分野に主として使用されるものであり、詳しくはガラス基板などの枚葉状の被塗布部材表面に膜厚が均一でむらのない塗布膜を多数枚にわたって形成するために必要な乾燥技術に関わる被塗布部材の処理装置および処理方法並びに液晶ディスプレイ用部材の製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー液晶用ディスプレイは、カラーフィルタ、TFT用アレイ基板などにより構成されているが、カラーフィルタ、TFT用アレイ基板ともに、低粘度の液体材料を塗布液として塗布して乾燥させ、塗布膜を形成する製造工程が多く含まれている。たとえば、カラーフィルタの製造工程では、枚葉状の被塗布部材であるガラス基板上に黒色のフォトレジスト材の塗布膜を形成し、フォトリソ法により塗布膜を格子状に加工した後に、格子間に赤色、青色、緑色のフォトレジスト材の塗布膜を同様の手法により順次形成していく。その他にも、フォトレジスト材を塗布して塗布膜を形成後、カラーフィルタとTFT用アレイ基板との間に注入される液晶のスペースを確保する柱を形成したり、カラーフィルタ上の表面の凹凸を平滑化するためのオーバーコート塗布膜を形成する製造工程や、TFT用アレイ基板に所定のパターンを形成するためにフォトレジスト材の塗布膜を形成する製造工程などもある。
この塗布膜形成のための液体材料である塗布液の被塗布部材への塗布装置としては、塗布液の消費量や消費電力の削減、さらに2m角以上という超大型基板に対応する装置の大型化が容易であるなどの理由によりスリットコータが使用される。また被塗布部材の上面に塗布された塗布液の溶剤成分を蒸発させて乾燥を行う乾燥装置には、塗布液が1〜50mPaS程度の低粘度であることもあって、減圧乾燥装置が多く用いられる。減圧乾燥装置は、塗布液が全面にわたって塗布された被塗布部材を密閉容器内にいれ、常温にて絶対圧で30〜60Pa程度まで減圧して、塗布液の溶剤を蒸発させることで、乾燥を行うものである。減圧乾燥装置による乾燥によって被塗布部材の上面に固体の塗布膜が形成され、わずかに残存している溶剤を完全に蒸発させるために、このあとで100〜120℃程度の加熱処理、いわゆるプリベークが行われる。減圧乾燥を行うにあたっては、被塗布部材は通常その下面をプロキシミティピンと呼ばれる支持体で被塗布部材のたわみが最小となる複数位置で支持され、たわみによる被塗布部材の傾きによって低粘度の塗布液が流れて塗布膜厚さの不均一が生じないように配慮されている(例えば特許文献1)。しかしながら、通常よく見られる円錐形状で接触部が球状となっているプロキシミティピンで支持されて減圧乾燥を終えた被塗布部材を見ると、図6に示されるようにプロキシミティピンで支持された部分は他の部分とは様子が異なっていて、むら100として視認できる。このむら100をよく見ると、円錐形状のプロシキミティピンの球状部分と被塗布部材が接触する部分は濃いむら102として見え、接触部分のその周囲は薄い、ぼんやりとした薄むら104として見える。減圧乾燥中には液体蒸発により発生する蒸発潜熱の作用によって被塗布部材の温度が常温よりも若干低くなる。それによって被塗布部材とプロキシミティピンとの間に温度差が生じ、プロキシミティピンから加熱されるような形になって、被塗布部材のプロキシミティピンと接触する部分が早く蒸発して膜厚が周囲よりわずかに薄くなる。この膜厚がわずかに薄くなる部分が、使用する塗布液や被塗布部材の種類によっては濃いむら102として視認される。このようなむらはホットプレートで加熱乾燥する時にも同じように生じる。濃いむら102を見えなくするには、プロキシミティピンから熱伝達量を小さくすればよいとされ、プロキシミティンピンを熱伝導率の小さな樹脂にしたり(例えば特許文献2)、接触面積を小さくするような形状にしたり(例えば特許文献3、4)する工夫がなされているが、完全にむらを見えなくするレベル、あるいはむらを極く軽微にして品質的に影響しないレベルまでには到っていない。また、薄むら104については、プロキシミティピンと被塗布部材の接触面積以上の大きさになっており、プロキシミティピンピンの接触部以外で被塗布部材に近接している部分があたかも裏写りしているように、近接している部分の面積でむらとなる。これは減圧乾燥時にプロキシミティピンの被塗布部材の近接部分と被塗布部材との間のすきまでは、減圧乾燥時開始時には他の部分よりも高い流速で空気が流れるために、その部分の乾燥が他の部分よりも早くなって、周囲よりも膜厚が薄くなるのがむらとして見え、そのために接触部分よりも大きな面積でむらとなると考えられている。公知の手段では、このことまで考慮をしてプロキシミティピンの形状を規定しているものはない。以上の理由で減圧乾燥時にプロキシミティピンで支持される部分やその近接部を含む大きさでむらが残るために、被塗布部材の製品となる部分でのむらを完全になくすには、被塗布部材の製品となる以外の部分をプロキシミティピンで支持せざるをえない。しかし近年被塗布部材が2m角をこえるほど大型化しており、製品以外の部分を支持すると被塗布部材のたわみによる傾きによって塗布液が流れて、塗布膜の膜厚が不均一化する。一方製品部分を支持すると上記のようにむらが発生し、ディスプレイとしての品質が保持できない。すなわち、膜厚が均一でむらなく塗布膜を形成できる減圧乾燥手段がないという問題点があった。
【特許文献1】特開平10−76211号公報(第0014欄〜第0022欄、図1、図2)
【特許文献2】特開2007−226128号公報(第0020欄、第0023欄、図1、図2)
【特許文献3】特開2003−224105号公報(第0010欄〜第0014欄、図1)
【特許文献4】特開2005−243896号公報(第0019欄〜第0020欄、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述の事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、液晶ディスプレイに必要な塗布膜を形成する低粘度の液体材料を減圧乾燥しても、膜厚が均一でむらのない塗布膜を形成する減圧乾燥手段を提供することにある。そしてそれによって低コストで高品質のカラーフィルターやTFTアレイ基板等の液晶ディスプレイ用部材を高い生産性で製造できる液晶ディスプレイ用部材の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記本発明の目的は、以下に述べる手段によって達成される。
本発明になる被塗布部材の処理装置は、上面に液体材料が塗布された枚葉状の被塗布部材の下面を複数の支持体で支持し、被塗布部材上の液体材料の液体成分を蒸発させて塗布膜を形成する被塗布部材の処理装置であって、前記支持体は被塗布部材と接触する支持部に向かって先細りとなる板状形状で、支持部の厚さが150μm以下であることを特徴とする。
【0005】
本発明になる被塗布部材の処理方法は、上面に液体材料が塗布された枚葉状の被塗布部材の下面を支持しながら、被塗布部材上の液体材料の液体成分を蒸発させて塗布膜を形成する被塗布部材の処理方法であって、被塗布部材と接触する支持部に向かって先細りとなる板状形状でかつ支持部の厚さが150μm以下である支持体で、前記被塗布部材の下面を支持しながら液体成分を蒸発させることを特徴とする。
【0006】
本発明になる液晶ディスプレイ用部材の製造方法は、請求項2に記載の被塗布部材の処理方法を用いて塗布膜を形成し、液晶ディスプレイ用部材を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明になる被塗布部材の処理装置および処理方法を用いれば、被塗布部材との接触部が厚さ150μm以下である板状形状の支持体で線接触で支持して接触面積を極小にしているのであるから、支持体から被塗布部材への熱伝達がほとんどなく、被塗布部材の支持体接触部分のむらの発生を抑制することができ、むらが非常に発生しやすい液体材料でも極めて軽微なむらにとどめることができる。また被塗布部材と接触する支持部に向かって先細りとなる板状形状によって、支持体で被塗布部材に近接する部分の面積も極小となっているのであるから、接触部以外のいわゆる裏写りによるむらの発生を抑制することができるとともに、むらが非常に発生しやすい液体材料でも極めて軽微なむらにとどめることができる。
またむらが発生しないあるいはむらを極めて軽微にとどめて製品品質には影響及ばさないために、被塗布部材の製品部分でも支持可能となって、被塗布部材のたわみを極小とする位置で支持するために被塗布部材の傾きも極小となる。その結果低粘度の液体材料を使用しても液流れが生じず、被塗布部材上に形成される塗布膜の膜厚を均一にすることが可能となる。
【0008】
本発明になる液晶ディスプレイ用部材の製造方法によれば、上記の優れた被塗布部材の処理方法を用いて液体材料の液体成分を蒸発させて被塗布部材上に塗布膜を形成して液晶ディスプレイ用部材製造するのであるから、膜厚が均一でむらのない塗布膜を有した高品質の液晶ディスプレイ用部材を高い生産性で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明の好ましい一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る支持体50を含む減圧乾燥装置1の概略正面断面図、図2は本発明による支持体50の詳細図、図3は別の支持体60の詳細図、図4はさらに別の支持体70の概略側面図、図5はさらにまた別の支持体80の概略側面図、である。
【0010】
まず図1を参照すると、本発明の支持体50を装備した減圧乾燥装置1が示されている。この減圧乾燥装置1は支持体50の他に、本体4、上蓋2、リフトピンユニット10、本体4と密着しているシール6、真空配管32、大気配管36、真空ポンプ30が備えられている。支持体50は本体4の中に複数個配置されており、被塗布部材である基板Aの下面を支持している。基板Aの上面には乾燥後に塗布膜となる液体材料である塗布液Bが塗布されている。基板Aが支持体50に支持された状態で、上蓋2が図示されていない駆動源によって昇降し、シール面8がシール6に接触することにより、上蓋2と本体4との間で密閉空間20を構成する。リフトピンユニット10は、基板Aを実際に最上部13で支持して支持体50との受け渡しを行うリフトピン12、複数のリフトピン12を保持するベース板14、ベース板14を上下方向に昇降させるエアーシリンダー16、ベース板14と本体4の間でリフトピン12を完全に覆ってシールするジャバラ18、より構成される。ジャバラ18は、リフトピン12が本体4を通過するために本体4に設けられた貫通穴22があっても、密閉空間20の密閉度を維持するためのものである。リフトピン12は上述の通り、基板Aを支持体50上に載置したり、支持体50に載置されている基板Aを取り出したりするために使用するものである。したがって、リフトピン12の最上部13は、リフトピン12が最上点位置にある時に支持体50の支持部52より上側に高い位置にある。一方リフトピン12が最下点位置にある時には、リフトピン12の最上部13は支持体50の支持部52より下側に低い位置にある。さらに、上蓋2が最上点位置にある時には、上蓋2の最下面となるシール面8は、最上点位置にあるリフトピン12の最上部13よりも、上側に高い位置にあって、減圧乾燥装置1の外部から基板Aを水平搬送して、リフトピン12に受け渡すことができるとともに、リフトピン12に支持されている基板Aを、減圧乾燥装置1の外部に搬送することができる。さらに密閉空間20は、本体4に設けられた複数の排気路40の入口である排気路入口42から、排気路40、配管32、真空開閉バルブ34を介して真空ポンプ30に連通しており、真空ポンプ30の作用によって、密閉空間20を所定の真空度にまで減圧させることができる。真空ポンプ30により到達させることのできる真空度としては、好ましくは絶対圧で10〜150Pa、より好ましくは30〜100Paである。また密閉空間20には上蓋2を貫通して大気配管36が接続されている。大気配管36の途中には大気開閉バルブ38が接続されている。密閉空間20を減圧するときには、大気開閉バルブ38を閉、真空開閉バルブ34を開とし、減圧乾燥が終了して密閉空間20を大気圧に戻す時には、真空開閉バルブ34を閉としてから、大気開閉バルブ38を開とする。
【0011】
次に図2を見ると、本発明の支持体50の詳細が示されている。図2(a)は正面図、図2(b)は側面図であり、基板Aが一点鎖線で示されている。支持体50は、ベース56と、ベース56上に固定された厚さT1の板状形状である胴部54と、胴部54の上部にある厚さT2の支持部52と、より構成されている。そして支持部52の上部で基板Aの下面を支持して接触している。胴部54の上部には、基板Aの下面と略平行に形成された上部59が設けられている。図2(a)より胴部54は、基板Aと接触する支持部52に向かうにしたがって先細り形状となっている。また図2(b)より、支持部52の厚さT2は胴部54の厚さT1より小さくしており、支持体50は基板Aとの接触部に向かって厚さが段階的に減少するように形成されている。また厚さT2の支持部52は上下方向に長さL2となっている。図2(a)を再び見ると、支持部52は上向きのR形状(円弧形状)となっており、Rの頂点で基板Aの下面を支持する。基板A支持時に、支持部52と基板Aとは線接触することになるが、この線接触時の線幅は厚さT2となる。また胴部54と支持部52の先細り形状はテーパ角θで定められ、テーパ角θは好ましくは5〜45度、より好ましくは10〜30度とする。この範囲より小さいと基板Aを支持する強度が不足し、この範囲より大きいと先細りのテーパとなっているテーパ部58が、基板A支持時に基板Aの下面と近接する面積が大きすぎて、減圧乾燥時にむらを発生ささせてしまう。また支持部52の厚さT2は好ましく30〜150μm、より好ましくは50〜100μmとする。この範囲より小さいと基板Aを支持する強度が不足して支持部52が座屈して破損し、この範囲より大きいと基板Aを線接触支持する線幅が大きくなって、減圧乾燥時にむらが発生してしまう。また胴部54の厚さT1は、好ましくは200〜1000μm、より好ましくは300〜600μmとする。この範囲より小さいと基板Aを支持する強度が不足して座屈し、この範囲より大きいと基板A支持時に上部59と基板Aの下面との間に減圧乾燥開始時の空気流速を早くするほどの大きさのすきまを構成することになり、上部59の形状が減圧乾燥時にいわゆる裏写りによるむらとなってしまう。さらに支持部52の長さL2は、好ましくは0.5〜5mm、より好ましくは1〜3mmとする。この範囲より大きいと厚さT2の支持部52が基板Aを支持する時の剛性が不足して座屈を生じ、この範囲より小さいと、胴部54の上部59が基板に近接しすぎて、上述したように上部59の形状が減圧乾燥時にむらとなって現れてしまう。また支持部52を正面から見たときのR形状のRの大きさは、好ましくは0.5〜5mm、より好ましくは1〜3mmとする。この範囲より小さいと基板Aを支持する時の強度が不足し、この範囲より大きいと支持部52のR形状部が弾性変形して基板Aを支持する時の接触長さが大きくなって、むら軽減作用が減じてしまう。さらに支持体50の材質は、胴部54と支持部52は熱伝導率が小さい合成樹脂であることが好ましく、PET、PEEK、PP、PPS、ポリイミド樹脂、高密度ポリエチレン樹脂等が、基板Aを支持するための強度も有しているので、より好ましい。ベース56については、基板A支持時に基板Aの下面と相対する面を合成樹脂で構成し、その下側を金属、セラミックス等の比重がより高い材料で構成してもよい。これによって、支持体50を減圧乾燥機1に配置する時に、支持体50の重心が低い位置となるのでより安定化する。
【0012】
次に図3を見ると、本発明の支持体60の詳細が示されている。図3(a)は正面図、図3(b)は側面図であり、基板Aが一点鎖線で示されている。支持体60は、基板Aと線接触長さL1で線接触する形状の支持部62を備えるように胴部64を形成した他は、支持体50と全く同じである。支持部62と基板Aの下面との線接触長さL1は、好ましくは0.1〜2mm、より好ましくは0.5〜1mmとする。この範囲よりも小さいと、支持部62が基板Aを支持する剛性が不足して座屈する。反対にこの範囲よりも大きいと、接触長さが大きすぎて、支持部62で基板Aの線接触支持する部分のむら軽減作用がいちじるしく低下してしまう。
【0013】
さらに図4を見ると、支持体70の詳細を示す側面図が示されている。支持体70は支持体50で基板Aと略平行な形状であった胴部54の上部59を、一点鎖線で示される基板Aの下面に対して傾き角度φをなす上部76にし、上部76を胴部54に代わって胴部74に設けたものである。傾き角度φは20〜75°が好ましく、これによって上部76の基板Aに近接する部分の面積が小さくなるので、上部76による減圧乾燥時のむらがより一層発生しにくくなる。
【0014】
さらにまた図5を見ると、支持体80の詳細を示す側面図が示されている。支持体80は支持体50をばね支持ベース84上でばね82によって弾性支持するようにしたものである。この構造によって、基板Aのたわみを最小とするために支持体50を多数個配置しても、確実に全ての支持体50で基板Aを支持できる。その結果、基板Aを支持しない支持体50があることで基板たわみが大きくなって、減圧乾燥前に塗布液の流動が生じて塗布膜の膜厚が不均一になることを、完全に防止することができる。
次に減圧乾燥装置1を用いた被塗布部材の処理方法、すなわち基板Aの減圧乾燥方法について説明する。まず前工程で、スリットノズルを使用したスリットコータなどで、塗布液Bが基板Aの上面に均一に所定厚さで塗布される。つぎに図示されていない駆動源を駆動して上蓋2を最上点位置まで上昇させた後に、リフトピンユニット10のエアーシリンダー16を駆動してリフトピン12を最上点位置まで上昇させる。そして基板Aをロボット等により水平搬送して、リフトピン12の最上部13上に基板Aを受け渡す。基板Aがリフトピン12に受け渡されたら、エアーシリンダー16を駆動してリフトピン12を最下点位置まで下降させて、基板Aを支持体50に受け渡す。つづいて、図示されていない駆動源を駆動して上蓋2をシール面8がシール6と十分接触する位置まで下降させる。次に大気開閉バルブ38を閉、真空開閉バルブ34を閉にして、真空ポンプ30を駆動する。真空ポンプ30から真空開閉バルブ34に至る真空配管32の区間が所定の真空度まで減圧されたら、真空開閉バルブ34を開として、密閉空間20の減圧を開始し、所定時間減圧乾燥する。この時に基板Aの下面を支持体50で支持しながら、塗布液の液体成分である溶剤が蒸発していく。溶剤の蒸発が終了して、密閉空間20の真空度が所定の大きさに達したら、真空開閉バルブ34を閉とし、つづいて大気開閉バルブ38を開にする。これによって大気が密閉空間20に導入され、密閉空間20の圧力が大気圧となったら、図示されていない駆動源を駆動して上蓋2を最上点位置まで上昇させる。つづいてリフトピンユニット10のエアーシリンダー16を駆動して、リフトピン12も最上点位置まで上昇させる。この動作によって、基板Aが支持体50からリフトピン12の最上部13に受け渡される。つづいてリフトピン12上にある乾燥が終了して塗布膜が形成されている基板Aを、ロボットによって減圧乾燥装置1外に持ち出し、次工程に搬出する。
【0015】
以上の減圧乾燥時に、支持体50は支持部52で厚さT2が線幅となる線接触にて基板Aを支持しているが、両者間の接触面積が極小となっているために、乾燥時の蒸発潜熱により温度が低下している基板Aへの支持部52からの熱伝達量も極小となる。それによって基板Aの支持部52で支持されている部分の乾燥状況も他の部分とほとんど変わらないために、通常の特性の塗布液を減圧乾燥させるなら、基板Aの支持体50で接触支持されている部分でむらが発生しない。また支持体50は、支持部52と基板Aとの接触部に向かって厚さが段階的にT1からT2へ減少する板状形状であるとともに、適正な先細り形状としているので、支持体50で基板Aに近接する上部59やテーパ部58の面積も極小となる。そのためにテーパ部58と基板Aの間、および上部59と基板Aの間にすきまがあっても、そのすきまを減圧乾燥開始時に空気が通過する時の通過長は極小となり、空気の通過速度もほとんど変化しない。すなわち基板Aの支持体50とのすきま形成部と、基板Aのその他の部分で乾燥状況がほとんど変わらないので、基板Aに近接するテーパ部58や上部59が起因となるいわゆる裏写りによるむらは発生しない。さらにむらが非常に発生しやすい特性の塗布液を減圧乾燥させても、上記の作用により、支持体50の基板Aに接触する部分や基板Aに近接する部分で、製品品質に影響しない極めて軽微なむらにとどめておくことが可能となる。また段階的に減少する厚さT1とT2を適正に選定して最適な板状形状としているので、基板Aとの線接触面積や近接する部分の面積が極小となるにもかかわらず、支持体50に基板Aを十分支持して座屈を生じない剛性をもたせることが可能となっている。
【0016】
以上のように支持体50を使用すれば、減圧乾燥時に支持体50で基板Aを支持することによるむらを発生させない、あるいは製品品質に影響しない極めて軽微なむらにとどめることができる。このことによって基板Aの製品部分でも支持体50で支持可能となって、基板Aのたわみを極小とする位置で基板Aを支持することができるので、基板Aの傾きも極小となる。その結果低粘度の液体材料を使用しても液流れが生じず、基板A上に減圧乾燥後に形成される塗布膜の膜厚を均一にすることができる。
【0017】
なお複数個ある支持体50の減圧乾燥装置1内の配置向きについては、複数個設けられている排気路入口42のうち、各々の支持体50に対して最も近接した位置にある排気路入口42に向かって、各々の支持体50の配置位置から引いた直線と、各胴部54のテーパ角θが形成される面が略平行となる向きに、各々の支持体50を配置することが好ましい。減圧乾燥開始時には空気が複数の排気路40の入口である排気路入口42に向かって流れるが、上記の向きに支持体50が配置されていると、この空気の流れに沿うように各支持体50の胴部54のテーパ角θが形成される面があることになる。これによって空気の流れが支持体50によって妨げられず、支持体50がない部分と空気の流れが変化しないので、空気流れの相違による乾燥状況の違いに起因するむらが発生しない。
【0018】
以上の支持体50による作用と効果は、支持体60、70、80でも同様にしてえられる。
【0019】
以上の本発明が適用できる液体材料である塗布液としては、粘度が1〜100mPaS、より望ましくは1〜50mPaSである。とりわけ溶剤に揮発性の高いもの、たとえばPGMEA、酢酸ブチル、乳酸エチル等を使用している塗布液を塗布するときに有効である。減圧乾燥前の塗布液の厚さは特に制約はないが、好ましくはウェット状態で5〜40μmである。具体的に適用できる塗布液の例としては、上記にあげたカラーフィルター用のブラックマトリックス、RGB色画素形成用塗布液の他、レジスト液、オーバーコート材、柱形成材料、TFTアレイ基板用のポジレジスト等がある。基板Aで示される被塗布部材としてはガラス基板の他に、金属膜が蒸着されたガラス、アルミ等の金属板、セラミック板、シリコンウェハー等を用いてもよい。特にガラス基板に対しては、厚さが好ましくは1.1mm以下、より好ましくは0.7mm以下の時に、むらの発生を効果的に抑制することができる。
【0020】
なお本発明に係る支持体50、60、70、80は、塗布液を塗布された基板をホットプレート等の加熱手段で加熱乾燥させる時の塗布基板の支持手段に適用できる。このような加熱乾燥であっても、支持体50、60、70、80は減圧乾燥の時と同じ作用効果を発揮する。
【実施例】
【0021】
以下実施例により本発明を具体的に説明する。
1100×1300mmで厚さ0.7mmの無アルカリガラス基板を洗浄装置に投入した。ウェット洗浄によって基板上のパーティクルを除去後、スリットコータにて塗布幅が1100mmのスリットノズルを用いて100mm/sでブラックマトリックス材を10μm基板全面に塗布した。ブラックマトリックス材には、遮光材にカーボンブラック、バインダーにアクリル樹脂、溶剤にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を使用し、さらに感光剤を添加して、固形分濃度15%、粘度4mPaSに調整したものを用いた。このブラックマトリックス材が塗布された塗布基板をロボットにて減圧乾燥装置1まで搬送し、リフトピン12上に載置した。つづいてリフトピン12を下降させて、支持体50上に塗布基板を載せ替えた。支持体50は、PET製で胴部54のテーパ角θが30°、支持部52のRは2mm、厚さT1=0.5mm、厚さT2=100μm、支持部52の長さL2が2mm、に形成されたものを用いた。そして減圧乾燥装置1の塗布基板が載置される本体4の上の面に、塗布基板の1100mmの方向(短手方向)に基板端部に相当する地点より50mmの位置からピッチ200mmで6点をとり、この6点を通って塗布基板の1300mmの方向(長手方向)に伸びる直線を6本引いた。ついで塗布基板の1300mmの方向に基板端部に相当する地点より25mmの位置からピッチ250mmで6点をとり、この6点を通って塗布基板の1100mmの方向(短手方向)に伸びる直線を6本引いた。そして直交する方向に各々6本ずつある直線の交点となる36箇所で支持体50の支持部52で塗布基板を支持できるように、支持体50を36個配置した。塗布基板が支持体50上に載置されてから、上蓋2を下降させて密閉状態とし、真空ポンプ30を駆動して、減圧を開始した。減圧は大気から2000Paまでを10秒、2000Paから60Paまでを30秒となるように真空ポンプの排気速度を制御し、密閉空間20の到達真空度が60Paに達した時に減圧を停止し、10秒で大気圧まで復帰させた。乾燥完了後に上蓋2を上昇させた後に、リフトピン12を上昇させて支持体50上の塗布基板をリフトピン12上に載せ替え、ロボットでプリベーク工程に搬送した。乾燥した塗布膜が形成された塗布基板を観察したところ、支持体50と塗布基板の接触位置を示すようなむらはなく、さらにその他の乾燥起因のむらは全くなかった。以上のブラックマトリックス材の塗布膜が形成された基板を、プリベーク工程にて、100℃のホットプレートで10分間さらに乾燥した。ついで露光・現像・剥離を行った後、260℃のホットプレートで30分加熱して、キュアを行い、基板の幅方向にピッチが254μm、基板の長手方向にピッチが85μm、線幅が20μm、RGB画素数が1600(基板長手方向)×1200(基板幅方向)、対角の長さが20インチ(基板長手方向に406mm、基板幅方向に305mm)となる格子形状で、厚さが1μmとなるブラックマトリックス膜を、基板内の9箇所(9面取)に作成した。
【0022】
次にウェット洗浄後、R色用塗布液をウェット厚さ20μm、塗布速度100mm/sにてスリットコータで塗布した。R色用塗布液はアクリル樹脂をバインダー、PGMEAを溶媒、ピグメントレッド177を顔料にして固形分濃度12%で混合し、さらに粘度を5mPaSに調整した感光性のものであった。塗布した基板は、同じ減圧乾燥装置1でブラックマトリックス材と同じ条件にて減圧乾燥を行ってから、90℃のホットプレートで10分間さらに乾燥した。ついで露光・現像・剥離を行って、R画素部にのみ厚さ2μmのR色塗膜を残し、260℃のホットプレートで30分加熱して、キュアを行なった。つづいてブラックマトリックス、R色の塗膜を形成した基板に、G色用塗布液をウェット厚さ20μm、塗布速度100mm/sにてスリットコータで塗布後、同じ減圧乾燥装置1でR色用塗布液と同じ条件にて減圧乾燥を行った。つづいて100℃のホットプレートで10分間さらに乾燥した後に、露光・現像・剥離を行って、G色画素部にのみ厚さ2μmのG色塗膜を残し、260度のホットプレートで30分加熱して、キュアを行なった。
【0023】
さらにブラックマトリックス、R色、G色の塗膜を形成した基板に、B色用塗布液をウェット厚さ20μmで塗布速度100mm/sにてスリットコータで塗布後に、同じ減圧乾燥装置1でR色用塗布液と同じ条件にて減圧乾燥を行った。その後、100℃のホットプレートで10分間さらに乾燥し、ついで露光・現像・剥離を行って、B色画素部にのみ厚さ2μmのB色塗膜を残し、260℃のホットプレートで30分加熱して、キュアを行なった。なお、G色用塗布液はR色用塗布液で顔料をピグメントグリーン36にして固形分濃度13%で粘度を4mPaSに調整したもの、B色用塗布液にはR色用塗布液で顔料をピグメントブルー15にして固形分濃度14%で粘度を4mPaSに調整したものであった。
【0024】
以上ブラックマトリックスにRGB色を着色したものに、柱材とオーバーコート材を塗布後、最後にITOをスパッタリングで付着させた。この製造方法にて、1000枚のカラーフィルターを作成した。得られたカラーフィルターは、支持体50で基板が支持された部分のむらやその他の乾燥むらはもちろん塗布むらもなく、膜厚が均一であるために色度も基板全面にわたって均一で、品質的に申し分ないものであった。
【0025】
さらに、このカラーフィルターをTFTアレイを形成した基板と重ね合わせ、オーブン中で加圧しながら160℃で90分間加熱して、シール剤を硬化させた。このセルに液晶注入を行った後、紫外線硬化樹脂により液晶注入口を封口した。次に、偏光板をセルの2枚のガラス基板の外側に貼り付け、さらに、得られたセルをモジュール化して、液晶表示装置を完成させた。以上のようにして1000枚の液晶表示装置を作成したが、得られた液晶表示装置はいずれもむらや欠点がなく、色度も基板全面に渡って、均一で品質的に申し分ないものであった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る支持体50を含む減圧乾燥装置1の概略正面断面図である。
【図2】本発明による支持体50の詳細図である。
【図3】別の支持体60の詳細図である。
【図4】さらに別の支持体70の概略側面図である。
【図5】さらにまた別の支持体80の概略側面図である。
【図6】むら100を示す平面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 減圧乾燥装置
2 上蓋
4 本体
6 シール
8 シール面
10 リフトピンユニット
12 リフトピン
13 最上部
14 ベース板
16 エアーシリンダー
18 ジャバラ
20 密閉空間
22 貫通穴
30 真空ポンプ
32 真空配管
34 真空開閉バルブ
36 大気配管
38 大気開閉バルブ
40 排気路
42 排気路入口
50 支持体
52 支持部
54 胴部
56 ベース
58 テーパ部
59 上部
60 支持体
62 支持部
64 胴部
70 支持体
74 胴部
76 上部
80 支持体
82 ばね
84 ばね支持ベース
100 むら
102 濃いむら
104 薄むら
A 基板(被塗布部材)
B 塗布液
L1 線接触長さ
L2 支持部52の長さ(厚さT2部分の上下方向長さ)
θ テーパ角
φ 基板Aの下面に対する上部76の傾き角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に液体材料が塗布された枚葉状の被塗布部材の下面を複数の支持体で支持し、被塗布部材上の液体材料の液体成分を蒸発させて塗布膜を形成する被塗布部材の処理装置であって、前記支持体は被塗布部材と接触する支持部に向かって先細りとなる板状形状で、支持部の厚さが150μm以下であることを特徴とする被塗布部材の処理装置。
【請求項2】
上面に液体材料が塗布された枚葉状の被塗布部材の下面を支持しながら、被塗布部材上の液体材料の液体成分を蒸発させて塗布膜を形成する被塗布部材の処理方法であって、被塗布部材と接触する支持部に向かって先細りとなる板状形状でかつ支持部の厚さが150μm以下である支持体で、前記被塗布部材の下面を支持しながら液体成分を蒸発させることを特徴とする被塗布部材の処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の被塗布部材の処理方法を用いて塗布膜を形成し、液晶ディスプレイ用部材を製造することを特徴とする液晶ディスプレイ用部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−204912(P2009−204912A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−47351(P2008−47351)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】