説明

被接着部材及びその剥離方法

【課題】 従来の接着剤は接着機能のみが重視され、接着された製品が廃棄され又は他に転用される際の状況は殆ど考慮されていない。本発明は、リサイクル等の際に、容易にその機能を消失させられる接着剤と該接着剤を使用して接合された被接着部材及びその剥離方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 電磁波感応性の金属含有物質14を含む接着剤15で第1被着材と第2被着材を接着して得た被接着部材。この被接着部材に電磁波を照射して前記接着剤の接着機能を喪失させ、前記第1被着材と第2被着材を剥離しリサイクルする。リサイクル時には、電磁波を照射するのみで第1被着材と第2被着材を剥離できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波感応性の金属含有物質を含む接着剤を使用して接着された被接着部材、及びこの被接着部材の剥離方法に関し、より詳細には使用済みの被接着部材に電磁波を照射して接着剤機能を喪失させることにより被接着部材を剥離させることのできる被接着部材及びその剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球上の有限な資源を有効利用するために、回収された廃棄物のリサイクルの重要性が認識され、かつ実行されている。
パソコン、テレビ及び自動車等のリサイクルに当たっては、付加価値の高い部分を外した後、破砕機で破砕し、これらの破砕片を選別機により、金属類、プラスチック及びガラス等に分別する。
リサイクル対象部材は複数の部品を接合して構成され各部品を構成する材料はさまざまである。つまりリサイクル対象部材には、金属のみから成る部材、プラスチックのみから成る部材及びガラスのみから成る部材に加えて、金属とプラスチックから成る部材、金属とガラスから成る部材、金属とプラスチックとガラスから成る部材、及び他の複数種から成る部材等がある。
【0003】
これらの材料の部品の接合の際には、金属−金属の接合には溶接が用いられることが多いが、金属−プラスチック、金属−ガラス、プラスチック−ガラス、プラスチック同士及びガラス同士の場合には接着剤を使用して接合を行うことが多い。
これらの材料の接合に際しては、そして接合され製造された製品が使用されている間は、接着剤には当然に接合後の製品の各部品を十分に高い強度で接着することが要求される。
【特許文献1】特開平7−179828号公報
【特許文献2】特開平10−254362号公報
【特許文献3】米国特許第5776281号明細書(第7欄)
【特許文献4】特開2001−107019号公報(請求項4及び段落0013〜0015)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接着すべき1対の被着材を強力な接着剤を使用して接合することにより得られる被接着部材、あるいはこの被接着部材に更に1又は2以上の被着材を接着した被接着部材は、前述した通り十分な強度で接着されているため、使用中は耐久性が生じ問題はない。しかし、一旦使用が停止されリサイクル等に供される場合には、前記接着剤による強い接着力が逆効果になり、製品である被接着部材を構成する接着された複数の被着材が強固に接合されているため、各被着材ごと及び各被着材と接着剤とを簡単には剥離することができない。
従来はこれらのリサイクル対象部材のリサイクルは、接着剤を除去せずに、つまり分別せずに被接着部材をそのまま破砕するか、あるいは接着剤を除去して各被着材ごとに分別するために、前記被接着部材全体を加熱して接着剤を溶融させて各被着材から除去して分別を行った後に、分別された被着材を破砕している。
【0005】
前者のそのまま破砕する方法では分別が行われていないため、被接着部材に接着剤が付着したままであり、接着剤単独又は被接着部材単独で回収することができず、有用なリサイクルとはならない。後者の接着剤の溶融法は、接着剤と被着材を分別できるため、各材料のリサイクルは可能になるが、接着剤を溶融するための加熱設備の設置コスト、及び加熱エネルギーが必要になり、これらのコストがリサイクルで得られるコストを上回り、経済的に成立し難く、更に接着剤の種類によって加熱温度が異なるため、操作性も劣るという欠点がある。
【0006】
このようにどのような用途に使用されるにしても接着剤を使用して製造される製品は製品として使用される間は接着剤が生じさせる接着強度が必要であるのに対し、使用期間の終了後は接着強度は不要であり、リサイクルするためには接着剤を如何にして製品(リサイクル対象部材)から除去するかが重要な問題になる。
例えば特許文献1には、リサイクル用ではないが、接着剤としての強度が不用になった接着剤層を基材から容易に剥離するための技術が開示されている。つまり基材層と、電磁誘導により発熱する発熱層と、常温で粘着性を有すると共に上記発熱層の発熱により粘着性が低下する接着剤層とを積層し具備する接着シートである。
【0007】
この接着シートは、段ボールあるいはプラスチック製の包装容器等の封緘等に使用されるものである。つまり段ボール等の封緘に使用されるシートは、被着体に貼付あるいは接着して固定あるいは封緘した後、再度剥離して開封等を行うには、シートの端を指等で剥がし引張って剥離するか、シートあるいは被着体をナイフ等で切断して開封している。
従来のこの種の接着シートにおいては、被着体に強固に接着することは可能であっても、被着体から剥離するときに多大な労力や時間を要すると共に、費用を要するという問題があり、また、無理に接着シートを剥がすと、被着体が破損するというおそれがあり、これらの欠点を解消するために、前記発熱層で生じる熱を利用して接着剤層の接着力を弱めて前記シートを基材から容易に剥離させることを意図している。
【0008】
リサイクルへの応用という観点からこの技術を検討すると、リサイクルを前提として新製品の接着剤層と基材の間の全てに発熱層を形成することは、(1)製造時の工程数が増加するためコスト的に困難であること、(2)接着剤層と発熱層が隣り合っているとはいえ発熱層で発生した熱が接着剤層まで移動しなければ接着シートの剥離が起こらず熱の利用効率の面で不安が残ること、(3)リサイクル対象部材の接着剤は必ずしもシート状として使用されるものではなく、この場合には前記接着シートの利用は不可能かあるいは非常に難しくなる、という問題点がある。
【0009】
例えば従来の断熱用合わせガラスは、図1のような構造を有している。この合わせガラス1は、1対のガラス本体2間の空間3を断熱のために真空にし、前記1対のガラス本体2の周囲を樹脂状の接着剤4で接合して構成されている。この合わせガラス1における接着剤4は、前記空間3を真空に保持するため、隙間なく充填され、かつ両ガラス本体2に強固に密着している。従ってこの合わせガラス1では、特許文献1に記載された発熱層を形成することは実質的に不可能である。
更にリサイクル対象に限定しなくても接着剤で接合されている複数の被接着部材を各被接着部材に簡単に分離できれば好都合なことが多い。
【0010】
1対の被着材を接着剤で接合した被接着部材の剥離は、従来から基本的には加熱して接着剤を溶融させることにより行われている。近年では接着剤の組成を検討してより低温で溶融させて被接着部材を剥離させることが試みられているが、加熱が必要であることに変わりはなく、被接着部材を剥離させても溶融した接着剤が剥離した被着材表面に残存してリサイクル等の障害になっている。
【0011】
このような欠点を解消するために電磁波を利用して接着された部材の剥離が試みられている。例えば特許文献2では、ガラス製または陶磁器製の容器の表面に、電磁波感応性物質を含有する接着剤層を設けた熱収縮性ラベルを前記接着剤層を介して貼合し、使用後には接着層に電磁波を照射し、これにより生じる熱で前記ラベルを収縮させ、容器本体から剥がすことが開示されている。
この剥離方法は、生じる熱を利用して接着された一方の被着材から他の被着材を収縮させ剥離するものであって、紙や軟質のプラスチックなどの熱収縮性部材にしか適用できない。
【0012】
更に特許文献3はいわゆるホットメルトを使用する荷役用パレットの修理方法を開示している。荷役用パレットをプラスチック製とし更に複数に分割し、各分割パレット片を鉄粉を有するポリオレフィンを介在させて加熱し、各分割パレット片のポリオレフィンに接触する部分を溶融させることによりポリオレフィンと分割パレット片を接合し前記荷役用パレットを構成している。分割パレット片のいずれかが損傷した際には、前記接合部に電磁波を照射し鉄粉によりポリオレフィンを軟化させ、損傷した分割パレット片を交換しパレットの修理を行っている。この交換時には交換される分割パレット片にポリオレフィンが付着して除去されるため、鉄粉を含んだポリオレフィンの追加が必要であり、新規導入される分割パレット片に溶融状態で供給する必要がある。しかも交換時にポリオレフィンが溶融状態つまりホットメルトとしての機能を保持しており、重力により下方に垂れてしまい新規導入される分割パレット片に溶融ポリオレフィンを適正に付着させることは実質的に不可能である。このように特許文献3に開示された方法は操作が煩雑すぎ更にその効果も疑問視されるもので実用的でない。
更に特許文献3は、荷役用パレットが修理不能なまでに損傷した場合は、粉砕して新規ポリオレフィン樹脂としてリサイクルできると記載している。
【0013】
電磁波を利用する被接着部材の他の修理方法が特許文献4に開示されている。
この方法は、被接着部材の接着に使用されている接着剤(ペースト)中に電磁波を吸収する無機粉末と発泡剤を含有させておき、このペーストに電磁波を照射しあるいは加熱する。これによりペースト中の樹脂の粘度を下げ、前記発泡性材料を発泡させて気泡を生じさせあるいはペーストを軟化させることによりペーストを脆い構造体とし、電子部品を剥離し、その結果、電子部品のリペアを容易に行うようにしている。
【0014】
このように従来の電磁波利用の被接着部材の剥離は、いずれも接着剤中に熱を発生させて被接着部材の一方を収縮させて他の部材から剥離するか、接着剤を軟化させて部材の修理を行うものである。熱収縮による方法は熱収縮性の部材にしか利用できないという欠点があり、接着剤の軟化による方法は接着剤の粘着性を残した状態を維持することを意図して部材の修理を行うことを目的としているため、接着剤自体を被接着部材から除去するという思想は見られず、リサイクルを意図するものはない。
【0015】
従って本発明は、特にリサイクル対象部材に適用でき新製品の段階からリサイクル時を見越して接着剤を選択し、この接着剤を利用して接合された被接着部材を容易に剥離し、必要に応じてリサイクルできる被接着部材及びその剥離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、第1に、第1被着材と第2被着材を、電磁波照射により接着機能を喪失させる電磁波感応性物質を含む接着剤で接着したことを特徴とする被接着部材であり、第2に、電磁波感応性物質を含む接着剤で第1被着材と第2被着材を接着して得た被接着部材に電磁波を照射して前記接着剤の機能を喪失させ、前記第1被着材と第2被着材を剥離することを特徴とする被接着部材の剥離方法である。
【0017】
以下本発明を詳細に説明する。
従来の接着剤は接着機能のみが重視され、接着された製品が廃棄され又は他に転用される際の状況は殆ど考慮されていない。
【0018】
従って例えば接着された製品をリサイクルする場合などは、性能の良いつまり被接着部材を非常に強固に接合させる接着剤が使用されているため、破砕自体にエネルギーと時間を要するだけでなく、被接着部材と接着剤が一体となって残るため、リサイクルで得られる部材の商品価値が下がり、リサイクルを行う意味が失われつつあった。
本発明者らは、接着剤を使用して接合された製品の廃棄時には接着剤の機能はむしろ逆効果になることを認識し、本発明の接着剤には、接着剤本来の機能に加えて、接着剤の機能が不要になった時点で比較的容易に接着剤としての機能を消失させられる機能を付加している。
【0019】
本発明では、第1被着材と第2被着材を接着剤で接着して被接着部材を構成する際に、電磁波感応性物質を混入させた接着剤を使用する。
この接着剤を使用して複数の被着材の接合を行って被接着部材(製品)を構成する。
このようにして構成された製品は所定の場所で長期間使用され、最終的には十分機能しなくなったり、新製品と交換されたりして、リサイクルに回されることになる。リサイクルの際にも接着剤自体の接着力は殆ど低下していないため、通常の破砕操作では、被接着部材から接着剤を剥離させることができず、円滑なリサイクルのための大きな障害とはなっている。
【0020】
そのため本発明では、被接着部材に電磁波を照射して第1被着材と第2被着材を接着している接着剤の機能を喪失させる。「接着剤の機能喪失」とは、実質的な接着能力を残存させることなく、第1被着材と第2被着材間の接着剤構造が分割される(クラックが生じることも含む)ことを意味する。電磁波照射により接着剤構造の外見に変化はなくても、人力で剥離できる程度に接着剤が変質している場合には、本発明の接着剤の機能喪失に含まれる。従って電磁波照射後に接着剤が再度接着に使用されることはない。
電磁波照射後に接着機能が残っていないため、接着剤の粘着性により第1被着材と第2被着材の剥離が阻害されることがなく、更に照射済みの接着剤は固体であり、第1被着材及び第2被着材の表面から容易に除去でき、接着剤の存在しない第1被着材及び第2被着材に戻すことができる。
【0021】
本発明による接着剤の機能喪失機構は次の通りであると推測できる。つまり本発明では、接着剤内に発泡剤等を含まず、更に好ましくは、第1被着材及び第2被着材が熱収縮性を有さない。従って電磁波照射された接着剤内の電磁波感応性物質は、自身が加熱されるとともに、接着剤構造内で粒子振動を起こして前記接着剤を内部から崩壊させることに使用され、電磁波照射量の大小や接着剤や被着材の材質に応じて接着剤が機能喪失して、接着剤に罅が入って複数に分割されたり、接着剤を手で容易に被接着部材面から除去できるようになる。この状況は接着剤が熱硬化性である場合に特に顕著である。
【0022】
本発明では電磁波照射により接着剤が完全に被接着部材から剥離又は除去される必要はなく、電磁波照射により接着剤が部分的にでも崩壊して接着剤と被接着部材との分離が容易になるような態様も包含する。
照射する電磁波は、前記接着剤が被接着部材から比較的容易に剥離又は除去できるように選択すれば良い。つまり接着剤の種類や量及び電磁波感応性物質の種類や量に応じて使用する電磁波を選択すれば良い。
電磁波は一般に波長が10−17〜10mの波動を総称し、本発明でも接着剤中の前記電磁波感応性物質に照射することにより接着剤の機能喪失が生じる前記範囲の波動を意味する。通常は100〜10000MHz、好ましくは1000〜3000MHzのマイクロ波を使用するが、これに限定されない。
【0023】
接着対象である第1被着材と第2被着材の材質は特に限定されず同一でも異なっていても良く、例えば金属(合金や酸化物を含む)、プラスチック(樹脂)、ガラス、石、ゴム、石膏、木材、陶器及びコンクリートなどが含まれる。具体的には、金属−プラスチック、金属−ガラス、金属−石、金属−木材、プラスチック−プラスチック、プラスチック−ガラス、プラスチック−木材、プラスチック−陶器、プラスチック−ゴム、プラスチック−石膏、プラスチック−木材、プラスチック−コンクリート、ガラス−ガラス、ガラス−木材、ガラス−石、ガラス−ゴム及び木材−木材などの被着材間で接着が行われる。特にリサイクル時の分別を必要とする異種被接着部材の接着、例えば金属−ガラス間、異種プラスチック間やプラスチック−ガラス間の接着により好ましく使用できる。
金属−金属間の接合は通常溶接により行われるが、本発明を使用して接着しても良い。但し金属は電磁波を遮蔽するため、接着部が金属で包囲されている場合には、本発明は適用できない。
【0024】
第1被着材及び第2被着材の形状も特に限定されないが通常はシート状又は板状であり、場合によっては塊状の部材や多孔性の部材あるいは湾曲した部材を使用することもできる。更にU字状又はV字状に折り曲げられたシート内に平面部材を挿入して3層構造になるように接着することも可能である。
これらの被着材はその全面が接着剤により他の被着材に接着されていても部分的に接着されても良い。更に接着される被接着部材は同一である必要はなく、例えば一方が板状体、他方が直方体で、該直方体の一面が前記板状体の一方面に接着される形態でも良い。更に第1被着材と第2被着材は同一部材であっても良く、例えば平面状シートから筒状シートを作製する場合には、平面状シートの一端が第1被着材、他端が第2被着材となる。
【0025】
使用する接着剤は、特に限定されず、熱硬化性樹脂(架橋型熱硬化性樹脂を含む)や熱可塑性樹脂等の従来の接着剤を使用でき、例えば感圧性接着剤や感熱性接着剤の使用も可能である。更に接着剤は単独で使用しても2種以上を混合して使用しても良い。第1液と第2液とを混合後、使用する混合型接着剤も含む。
具体的な接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ゴム系接着剤、ビニルアルキルエーテル系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ウレタン系接着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系接着剤などが挙げられる。
これらの接着剤は、接着性成分のほかに、架橋剤、粘着付与剤可塑剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、老化防止剤などの公知の各種添加剤を含んでいても良い。
【0026】
このような接着剤中に含有される電磁波感応性物質として、金属含有物質及び/又は炭素材料があり、金属含有物質には金属、金属合金及び金属酸化物等が含まれ、例えば磁鉄鉱、アルミニウム、鉄、酸化鉄及びステンレス鋼等があり、磁性を有する金属や金属酸化物が好ましく、磁鉄鉱が最も好ましい。炭素材料には、カーボンブラック、グラファイト及び金属炭化物(タングステンカーバイド等)が含まれる。
磁鉄鉱は鉱物中で最強の磁性を示し、その化学組成は一般にFeで表され、Fe2+とFe3+を1:2のモル比で含んでいて、Fe2+はMg2+,Zn2+及びMn2+などにより、又Fe3+はAl3+、Cr3+及びMn3+などにより置換されていても良い。磁鉄鉱は1000〜3000MHz(これに限定されない)のマイクロ波を吸収し、接着剤と混合されている場合には接着剤に作用して接着機能を喪失させるよう機能する。更に磁鉄鉱は粉砕が容易であるため、接着剤との混合を簡単に行うことができ、取扱いに磁石を利用できる。
【0027】
電磁波感応性物質の形状は、接着剤中に混合されることから粒子状又は粉末状とすることが望ましいが、繊維状、又は箔やフィルムを細断した無定形状でも良い。
この金属含有物質は、接着剤に混ぜ込むだけで十分であり特別な処理は不要である。前記金属含有物質の量は特に限定されないが、接着剤本来の接着能力がさほど低下しない範囲で適宜選択すれば良く、好ましい含有量は接着剤に対して0.1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、更に好ましくは5〜10重量%である。
この接着剤を使用する被着材の接合は、被着材の形状等により異なるが、実質的に従来通り行えば良い。通常は接合すべき2枚の被着材の一方の面に、接着剤を塗布し、他の被着材と重ね合わせ、適度の圧力を掛けることにより、又は溶媒に溶解した接着剤の溶液を一方の被着材の面に塗布し、加熱しながら適度の圧力を掛けることにより溶剤を蒸発させて2枚の被着材を接合して被接着部材(製品)とする。
この他に合わせガラスの場合のように被接着部材を離間させ、1対の被接着部材の周囲のみを接着剤により接合させることもある。
【0028】
このような構成から成る接着剤を複数の被着材の接合に使用する。被接着部材の用途は特に限定されず、リサイクルが必要になる各種部材が含まれる。例えば建材、家具、車両類、家電製品、OA機器、遊戯機器及び各種機械などがある。
具体例及び従来の接着方法は次の通りである。
【0029】
建材としては合わせガラス、化粧板、断熱材、合板及び浴室材(浴槽)などがある。合わせガラスに関しては後述の通りである。他の建材、例えば化粧板は、印刷やエンボス加工により、所望の模様等を付して意匠性や高級感を高めたプラスチック製又は人造大理石等の表面材を接着剤を使用して、木材等の基材上に接着して成り、住宅やビル等の建築物の装飾用の内装材(キッチンカウンター等)や外装材(建物の外壁等)として広く使用されている。特に外装用の化粧板を、基材にアクリル樹脂系インキなどで模様を印刷して構成すると、数年で意匠が色あせを起こし、充分な耐候性を得ることができないため、近年では基材にフッ素樹脂フィルムを接着して構成することが主流になって来ている。
【0030】
これらの化粧板を廃棄する際には、表面材を基材から剥離することが望ましく、加熱による剥離が試みられている。しかしながら加熱自体に手間が掛かるだけでなく、接着剤が溶融するため剥離時に接着剤を基材や表面材から十分に除去できず、プラスチック表面材と接着剤との分離も行いにくい。
更に断熱用に外壁と内壁間に発泡樹脂製の断熱ボードを接着して設置することが行われるが、この断熱ボードもリサイクル可能で、両壁間から簡単に剥離できることが望まれている。
【0031】
浴室材としては浴室壁や浴室天井などがある。これらは鋼製の壁や天井に、基材である石膏ボードに直接又は他の部材を介して表面タイル等を接着して構成され、廃棄する際には前記化粧板と同様の不都合が生じる。
更に樹脂マット上にタイルを接着固定した建材マットが、バルコニーやベランダに敷き詰めて使用されているが、この建材マットもリサイクルが望ましい。
【0032】
家具には、箪笥、食器棚、机(ステンレス製及び木製)、椅子、下駄箱、マガジンラック、本棚及びロッカーなどが含まれる。これらの多くにも接着剤が使用され、リサイクルの障害となっている。
【0033】
車両類には、自動車、オートバイ、自転車などが含まれ、更に自動車にはトラック、バス、消防車などが含まれる。
自動車のボディは通常金属製でその接合は溶接により行われるが、近年では繊維強化プラスチックでボディが構成されることがあり、その場合の接着には接着剤が使用される。金属製ボディの場合も。バンパーやボンネットのみをボディから剥離することも可能である。
【0034】
更にボディ以外の部材にも、自動車の車内には、プラスチック−金属、ゴム−金属、プラスチック−プラスチック、プラスチック−ゴム等の接着により構成される被接着部材が多数搭載されている。例えば高級感を付与するために、金属基材に木目模様を有するプラスチック製又は木材製の成形体を接着したパネルなどである。
乗用車の廃車数は膨大な数に及ぶがそのリサイクル、特に内部の備品類はリサイクル可能なものが多いにも拘らず、そのリサイクルは十分に進んでいない。その一因は接着剤の除去を容易に行うことができない点にある。
【0035】
家電製品には、食器洗浄機、電気洗濯機、電気掃除機、フードプロセッサー、電子レンジ、冷蔵庫、電気ストーブ、エアコン、衣類乾燥機、加湿器、温水浄化器、除湿機、扇風機、電気カーペット、電気釜、コーヒーメーカー、電気コタツ、電気コンロ、足温器、トースター、ホットプレートなどがあり、殆どの製品で接着剤が使用されている。
【0036】
OA機器の製造工程において、例えばタッチパネルやフラットディスプレイ、円盤状記録メディア用のシートやフィルムをプラスチックやガラス製の基材に接着剤で接着することが頻繁に行われている。このようにOA機器内部には異種プラスチック同士、プラスチック−ガラス、金属−プラスチック等の接着により構成された被接着部材が多数収容されており、リサイクルの大きな障害となっている。
これらの各種OA機器、例えばコンピューター、パソコン、ワープロ、プリンター、コピー機、ファクシミリ装置等でも廃材から接着剤を簡便に除去する技術が要請されている。
【0037】
遊戯機器は幅広い用途が含まれ、具体的にはパチンコ台、スロットルマシン、ジュークボックス、DVDディスク等の光学ディスク、テレビゲーム機、遊園地のアトラクション又はその付属品(ジェットコースター、ゴーカート、観覧車等)、各種運動用品(潜水用具、体操用具、スキー、スケート、ラケット、ゴルフバッグ、グローブ、ハングライダー、パラグライダー、ボート、ヨット)、楽器、メトロノーム、アイスボックス、キャンプ用品などがある。
【0038】
各種機械器具には、旋盤、フライス盤、研削盤、ボール盤、圧延機、製管機、プレス機、鍛造機、溶接機、ドリル、切削機、穿孔機、クレーン、ショベル、杭打ち機、杭抜き機、ブルドーザー、舗装用機械、コンベア、巻上げ機、エレベーター、エスカレーター、ジャッキ、新聞輪転機、圧搾機、攪拌機、乾燥機、混合機、洗浄機、選別機、造粒機、抽出機、乳化機、破砕機、反応機、電解槽、オゾン発生機、殺菌装置、煮沸装置、冷暖房装置、浄水器、分離機、溶解機、濾過機、精錬機、紡糸機、織機、染色機、食品(パン、菓子、麺、肉、バター、チーズ、アイスクリーム、牛乳、みそ、ソーセージ、削り節、昆布、野菜、ジュース、清涼飲料、水)加工機、製材機、パルプ製造機、段ボール製造機、凸版印刷機、活字鋳造機、グラビア印刷機、写真植字機、写真製版機、製本機、梱包機、加硫装置、ゴム又はプラスチック用成形機、半導体製造装置、石材加工機、内燃機関、蒸気機関、ジェット機関、ロケット機関、原子力機関、タービン、ボイラー、ガス湯沸機、水車、風車、ポンプ、農業用機械、漁業用機械、ミシン、ガラス製造機、たばこ製造機、接着機、自動スタンプ機、発電機、駐車装置、芝刈り機、配電装置、制御装置、磁気測定機、映写機、カメラ、ビデオカメラ、ビデオデッキ、テープレコーダー、CDプレーヤー、DVDプレーヤー、テレビ、ラジオ、無線機、電話、インターホーン、信号機、火災報知機、消火器、消火栓、自動販売機、レジスター、タイムレコーダー、製図用具、医療用機械、理容又は美容器具、トイレ用器具、炉及び料金メーターなどが含まれる。
【0039】
前述のいずれにも属さないものとして、黒板、調理台、流し台、コインロッカー、救命具、船舶(潜水艦なども含む)、航空機(戦闘機やロケットを含む)などがある。
更に電車やバスの壁面に広告用のフィルムを接着剤(又は粘着剤)を用いて貼り合わせ、広告内容の変更ごとに前記フィルムを壁面から除去する広告方法があり、本発明はこのフィルム除去も含有する。
これらの物品中には、接着剤を使用して第1被着材及び第2被着材を接着して構成した被接着部材が多数存在し、本発明によると、接着剤の粘性に阻害されることなく、これらの被接着部材を第1被着材と第2被着材に剥離しリサイクルを可能にする。
【0040】
更に前記OA機器をはじめとする各種機器では、例えばプラスチック製(例えばABS樹脂製)本体に熱非収縮性のプラスチック製のラベル(ブランド名、連絡先等を表示)を貼着することが頻繁に行われている。これらの装置では本体とラベルのプラスチックの種類が異なっていることが多く、リサイクル時にラベルを剥離後した後本体のみを加熱融解できれば回収プラスチックの純度が保持され、付加価値の高いリサイクルが実行できる。しかしながら現実にはラベル剥離が困難であるため、ラベル貼着のまま装置全体を加熱融解しているため、本体のプラスチックの純度が低下してリサイクルに適さないプラスチックしか回収されていない。
予め前記ラベルを本発明の接着剤を使用してプラスチック製本体に貼着しておくと、リサイクル時に電磁波を照射するだけでラベルを本体から剥離でき、プラスチック製本体のみを加熱融解して高純度プラスチックとして回収できる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の接着剤を使用して複数の被着材を接合してなる被接着部材は、そのリサイクル時に電磁波照射のみで接着剤の全部又は一部が崩壊して機能喪失することにより、各被着材に簡単に分解され、リサイクル時に付加的な操作無しに又は簡単な付加的な操作のみで、接着剤と被着材に、及び被着材ごとに分離できる。特に複数の被着材が異なる材料から成る場合(例えば金属とガラス、異種プラスチック間)には、本発明方法により分別も行うことができるため、非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
次に本発明に係る被接着部材及びその剥離方法の一例を添付図面に基づいて説明するが、これは本発明を限定するものではない。
図2は、本発明の接着剤を使用して構成した合わせガラスの一態様を示す概略縦断面図である。
【0043】
この合わせガラス11は、1対のガラス本体12間の空間13を断熱のために真空にし、前記1対のガラス本体12の周縁を、電磁波を照射することにより発熱や発泡が起こる、例えば金属粒子14を含む樹脂状の接着剤15で接着して構成されている。この合わせガラス11の接着剤15は、前記空間13を真空に保持するため、隙間なく充填され、かつ両ガラス本体12に強固に密着し、通常の破砕法などでは、ガラス本体12から剥離させることができず、破砕後にもガラス本体12の破砕片と接着剤14が接合した状態が保持され、通常はそのままリサイクルさせるため、分別が不十分で、価値の高いリサイクル品を得ることはできない。
【0044】
しかし図示の例では接着剤15が電磁波照射等により発熱及び/又は発泡する成分、図示の例では発熱する金属粒子14を含んでいて、電磁波をガラス本体12の周囲の接着剤15に向けて照射すると、接着剤15内の金属粒子14が発熱して接着剤15の組織を内部から外部に向けて破壊し、特に金属粒子14の含有量が多い場合には、接着剤15全体が崩壊してガラス本体12が接着剤15と完全に分離される。これにより接着剤成分がリサイクル工程に入らなくなり、効率的なリサイクル及び価値の高いリサイクル品の取得が可能になる。
【0045】
図3は、本発明の接着剤を使用して構成した積層シートの一態様を示す概略縦断面図である。
図示の積層シート21は、図示の通り、1対の基材22間にフッ素樹脂シート23を介在させた積層構造を有し、各基材22とフッ素樹脂シート23間には、発熱性の金属粒子24又は発泡性のアゾビスイソブチロニトリルを含む層状の接着シート25が介在して、フッ素樹脂シートと両基材22を接合し、強固に接合された積層シート21を構成している。
【0046】
この態様でもフッ素樹脂シート23が各基材22と密着しているため、該フッ素樹脂シート23と各基材22を剥離することは破砕法では実質的に不可能である。本態様でも、前述の態様と同様に、積層シート21に横方向から電磁波を照射すると、電磁波は基材22を透過して接着シート25に達する。透過した電磁波は、接着シート25中の金属粒子24を発熱させ、発熱のエネルギーで内部から接着シート25を崩壊させて前述の態様と同様にしてフッ素樹脂シート23が両基材22から分別される。
本態様では、接着シートを除き、積層シートを3層構造としたが、これに限定されず、2層構造又は4層以上の構造としても良い。
【0047】
次に本発明の接着剤及び被接着物の剥離方法の実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
加熱した市販の接着剤(セメダイン株式会社製の商品名ハイスーパー5)100gに粒径が10〜30μmの磁鉄鉱粒子10gを加えて十分混練して分散させた。
市販のステンレス製机の上面に貼着されたプラスチック製板を機械的に剥離させ、前記磁鉄鉱入り接着剤で再接着した。
外径8mmの銅製角パイプをコイル状に巻回し、更にこのコイルを馬蹄形に成形した。2本の馬蹄形コイル間に前記ステンレス製机を位置させ、前記コイル内に冷却水を流しながらコイル間に電圧を掛けたところ、接着剤は瞬時に粉々になり飛散し、プラスチック製板が机本体から剥離できた。
【0049】
[実施例2]
加熱した市販の接着剤(セメダイン株式会社製の商品名ハイスーパー5)100gに粒径が10〜30μmの磁鉄鉱粒子10gを加えて十分混練して分散させた。
市販のガラス板2枚を10cm四方に切り出し、0.8cm間隔で固定具を使用して固定し、これら2枚のガラス板の周縁部間を閉塞するように、その空間に前記金属粒子入り接着剤を充填して図2に示す合わせガラスを作製した。
この合わせガラスを家庭用電子レンジに入れ、30秒間電磁波(2450MHz)照射を行った。照射後合わせガラスを取り出したところ、両ガラスは手で剥離させることができた。剥離後の接着剤は固体状で容易にガラスから取除くことができた。
【0050】
[比較例1]
磁鉄鉱粒子を接着剤中に加えなかったこと以外は、実施例2と同じ条件で合わせガラスを作製した。
この合わせガラスに実施例2と同じ電圧を掛けたが変化は現れなかった。
又合わせガラスの接着剤部分を加熱したところ、約300℃で接着剤は軟化し始め、約800℃で溶融してガラスごとに剥離できたが、接着剤は溶融状態でガラス表面に付着していた。
【0051】
[参考例1]
それぞれ水100gと磁鉄鉱粉末100gを入れた2個のコップを家庭用電子レンジに入れ、約30秒間電磁波照射を行った後、レンジから取り出した。目視と触感によると、磁鉄鉱の加熱の方が水の加熱よりも進行していた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】従来の断熱用合わせガラスの一例を示す概略縦断面図。
【図2】本発明の接着剤を使用して構成した合わせガラスの一態様を示す概略縦断面図。
【図3】本発明の接着剤を使用して構成した積層シートの一態様を示す概略縦断面図。
【符号の説明】
【0053】
11 合わせガラス
12 ガラス本体
13 空間
14 金属粒子
15 接着剤
21 積層シート
22 基材
23 フッ素樹脂シート
24 金属粒子
25 接着シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被着材と第2被着材を、電磁波照射により接着機能を喪失させる電磁波感応性物質を含む接着剤で接着したことを特徴とする被接着部材。
【請求項2】
接着剤が熱硬化性樹脂である請求項1記載の被接着部材。
【請求項3】
接着剤が、接着剤自身及び電磁波感応性物質のみから成る請求項1記載の被接着部材。
【請求項4】
第1被着材と第2被着材がいずれも熱非収縮性である請求項1記載の被接着部材。
【請求項5】
電磁波感応性物質が、金属含有物質及び/又は炭素材料である請求項1記載の被接着部材。
【請求項6】
電磁波感応性物質が、磁鉄鉱である請求項5記載の被接着部材。
【請求項7】
電磁波感応性物質を含む接着剤で第1被着材と第2被着材を接着して得た被接着部材に電磁波を照射して前記接着剤の接着機能を喪失させ、前記第1被着材と第2被着材を剥離しリサイクルすることを特徴とする被接着部材の剥離方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【国際公開番号】WO2005/071035
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【発行日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517316(P2005−517316)
【国際出願番号】PCT/JP2005/001013
【国際出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(591119624)株式会社御池鐵工所 (86)
【出願人】(300001484)
【Fターム(参考)】