被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法およびこのシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム
【課題】複数の部材が接続される接続部を有する被浸漬処理物であっても、被浸漬処理物に発生する空気溜まりを正確にシミュレーションする。
【解決手段】三角メッシュの属性を、被浸漬処理物30を形成するフリーエッジメッシュから次々と隣接する隣接メッシュを解析していくことにより設定し、この解析処理を、被浸漬処理物30のマルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュの属性の設定に達した場合に終了させるようにした。したがって、マルチエッジ(ME)を挟む一方側と他方側との三角メッシュで、それぞれ異なる属性に設定することができ、マルチエッジ(ME)を有する被浸漬処理物30における空気溜まりを迅速かつ正確にシミュレーションすることができる。
【解決手段】三角メッシュの属性を、被浸漬処理物30を形成するフリーエッジメッシュから次々と隣接する隣接メッシュを解析していくことにより設定し、この解析処理を、被浸漬処理物30のマルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュの属性の設定に達した場合に終了させるようにした。したがって、マルチエッジ(ME)を挟む一方側と他方側との三角メッシュで、それぞれ異なる属性に設定することができ、マルチエッジ(ME)を有する被浸漬処理物30における空気溜まりを迅速かつ正確にシミュレーションすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法およびこのシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体ボディ等の被浸漬処理物は、液体塗料で満たされた塗料槽内に浸漬することにより、その表面に電着塗装を施すようにしている。このような塗装方法によれば、被浸漬処理物の表面に形成される塗膜厚さを略均一にしたり、被浸漬処理物の溶接箇所などにも同様の塗装処理を施したりすることができる等の利点がある。この反面、複雑な形状の被浸漬処理物には、例えば、車体ボディであればフード内面,ルーフ内面およびフロア下面等に複数の凹部が形成されるため、この凹部がエアポケットと呼ばれる空気溜まりとなり、この空気溜まりの空気が残留した状態のもとでは、当該部分に塗装処理を施すことができないといった欠点がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に示されるように、被浸漬処理物に空気溜まりが発生しないように、空気を大気中に排出するための排出経路を被浸漬処理物に予め形成しておき、この排出経路を介して空気を大気中に排出させ、被浸漬処理物の表面全域に塗装処理を施せるようにすることが行われている。
【0004】
このような被浸漬処理物に発生する空気溜まりは、一般に、自由表面を用いた周知の解析手法を用いてシミュレーションすることができ、このシミュレーション結果を被浸漬対象物の設計に反映させることにより設計作業の効率化を図ることができる。本出願人は、シミュレーションに要する時間を短縮して設計作業のさらなる効率化を図るべく、特願2006−180453および特願2005−330098に示すシミュレーション方法を出願している。
【0005】
各シミュレーション方法のうち、前者(特願2006−180453)は、被浸漬処理物の数値計算モデルを三次元の要素に分割することなく二次元の要素に分割し、これらの分割された各要素によって形成される被浸漬処理物の数値計算モデルを用いて空気溜まりの発生をシミュレーションするようにしている。また、後者(特願2005−330098)は、被浸漬処理物の表面に複数の節点を配置して数値計算モデルを生成し、各節点の座標データを用いて空気溜まりの発生をシミュレーションするようにしている。前者および後者の何れの場合においても、二次元の要素を形成するデータや節点の座標データを用いることでコンピュータに掛かる負荷を小さくしており、その結果、シミュレーションに要する時間を短縮させることができる。
【特許文献1】特開平10−045037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の各シミュレーション方法によれば、被浸漬処理物を形成する複数の部材毎に空気溜まりの発生をシミュレーションするようにしているため、複数の部材が接続して形成される被浸漬処理物を解析対象として、正確なシミュレーション結果を得ることができなかった。
【0007】
つまり、例えば一対の部材の端部同士を断面がハの字形状(椀状)となるように接続して形成される被浸漬処理物を、当該ハの字形状の開口側が下方側に向くように浸漬させる場合、実際には各部材の接続部には空気溜まりが発生することになるが、上記各シミュレーション方法によれば、各部材の何れもが「空気溜まり発生せず」などと誤判定するという問題が生じ得た。
【0008】
本発明の目的は、複数の部材が接続される接続部を有する被浸漬処理物であっても、被浸漬処理物に発生する空気溜まりを正確にシミュレーションすることができる被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法およびこのシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法であって、複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データを、複数の二次元の要素に分割し、各要素の属性を空気に設定する第1のステップと、前記各要素のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する要素を初期境界要素に設定し、この初期境界要素の属性を塗料に設定する第2のステップと、前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記初期境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第4のステップと、前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定し、この二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第5のステップと、前記第5のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記二次境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第6のステップと、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素でないと判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素が前記接続部の要素であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0011】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の最高節点同士または最低節点同士のうちいずれか一方の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0012】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第7のステップに加え、前記接続部の節点を共有する要素のうち一つの要素の属性が空気であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの要素の属性が空気であると判定した場合に当該要素の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された要素を初期境界要素に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期境界要素に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする。
【0013】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期境界要素に隣接する隣接要素の属性が空気であると判定された場合に、前記初期境界要素の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする。
【0014】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法であって、複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データの表面に複数の節点を配置し、各節点の属性を空気に設定する第1のステップと、前記各節点のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する節点を初期節点に設定し、この初期節点の属性を塗料に設定する第2のステップと、前記初期節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記初期節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第4のステップと、前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接節点を二次節点に設定し、この二次節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第5のステップと、前記第5のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記二次節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第6のステップと、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であるか否かを判定し、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点でないと判定した場合には、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次節点が前記接続部の節点であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期節点および前記二次節点と前記隣接節点とをそれぞれの高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも高い場合は前記隣接節点の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも低い場合は前記隣接節点の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0016】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第7のステップに加え、前記接続部において隣り合う一対の節点を抽出し、この各節点から最も近接する近接節点を選択するとともに、前記近接節点のうち一つの近接節点の属性が空気であるか否かまたは全ての近接節点の属性が塗料であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの近接節点の属性が空気であると判定するかまたは全ての近接節点の属性が塗料であると判定した場合に、属性が空気の近接節点および前記接続部における一対の節点の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された前記近接節点を初期節点に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期節点に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする。
【0017】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期節点と隣接関係にある前記隣接節点の属性が空気であると判定された場合に、前記初期節点および前記一対の節点の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする。
【0018】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第1のステップでは、前記接続部における隣り合う一対の節点により形成される二次元の要素を生成して当該要素の属性を空気に設定し、前記第7のステップでは、前記二次節点が前記第1のステップで生成した前記接続部の要素を形成するか否かを判定することを特徴とする。
【0019】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第1のステップにおいて、前記接続部を形成する節点に、当該節点と隣接関係にある隣接節点の数に対応するサブ属性を持たせ、前記第6のステップにおいて、比較対象となる二次節点側の属性に合わせて前記各サブ属性を設定することを特徴とする。
【0020】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする。
【0021】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データを、複数の二次元の要素に分割し、各要素の属性を空気に設定する第1のステップと、前記各要素のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する要素を初期境界要素に設定し、この初期境界要素の属性を塗料に設定する第2のステップと、前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記初期境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第4のステップと、前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定し、この二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第5のステップと、前記第5のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記二次境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第6のステップと、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素でないと判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素が前記接続部の要素であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0023】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の最高節点同士または最低節点同士のうちいずれか一方の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0024】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第7のステップに加え、前記接続部の節点を共有する要素のうち一つの要素の属性が空気であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの要素の属性が空気であると判定した場合に当該要素の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された要素を初期境界要素に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期境界要素に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする。
【0025】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期境界要素に隣接する隣接要素の属性が空気であると判定された場合に、前記初期境界要素の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする。
【0026】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データの表面に複数の節点を配置し、各節点の属性を空気に設定する第1のステップと、前記各節点のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する節点を初期節点に設定し、この初期節点の属性を塗料に設定する第2のステップと、前記初期節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記初期節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第4のステップと、前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接節点を二次節点に設定し、この二次節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第5のステップと、前記第5のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記二次節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第6のステップと、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であるか否かを判定し、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点でないと判定した場合には、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次節点が前記接続部の節点であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする。
【0027】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期節点および前記二次節点と前記隣接節点とをそれぞれの高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも高い場合は前記隣接節点の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも低い場合は前記隣接節点の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0028】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第7のステップに加え、前記接続部において隣り合う一対の節点を抽出し、この各節点から最も近接する近接節点を選択するとともに、前記近接節点のうち一つの近接節点の属性が空気であるか否かまたは全ての近接節点の属性が塗料であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの近接節点の属性が空気であると判定するかまたは全ての近接節点の属性が塗料であると判定した場合に、属性が空気の近接節点および前記接続部における一対の節点の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された前記近接節点を初期節点に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期節点に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする。
【0029】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期節点と隣接関係にある前記隣接節点の属性が空気であると判定された場合に、前記初期節点および前記一対の節点の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする。
【0030】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第1のステップでは、前記接続部における隣り合う一対の節点により形成される二次元の要素を生成して当該要素の属性を空気に設定し、前記第7のステップでは、前記二次節点が前記第1のステップで生成した前記接続部の要素を形成するか否かを判定することを特徴とする。
【0031】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第1のステップにおいて、前記接続部を形成する節点に、当該節点と隣接関係にある隣接節点の数に対応するサブ属性を持たせ、前記第6のステップにおいて、比較対象となる二次節点側の属性に合わせて前記各サブ属性を設定することを特徴とする。
【0032】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、被浸漬処理物の形状データを二次元の要素(または節点の配置)により形成し、これらの要素(節点)の属性を、被浸漬処理物の端部または穴部を形成する要素(節点)から次々と隣接する要素(節点)を解析していくことにより設定し、この解析処理を、被浸漬処理物の接続部を形成する要素(節点)の属性の設定に達した場合に終了させることができる。したがって、被浸漬処理物の接続部を挟む一方側と他方側との要素(節点)で、それぞれ異なる属性に設定することが可能となり、複数の部材が接続される接続部を有する被浸漬処理物の空気溜まりを迅速かつ正確にシミュレーションすることができる。
【0034】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、要素(節点)の属性を、要素の重心点や節点の高さを比較することにより空気または塗料に設定することができる。したがって、別途複雑な計算をすることなく節点の座標データを用いて要素(節点)の属性を簡単に設定することができる。
【0035】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、要素(節点)の属性の設定を被浸漬処理物の接続部において終了した後に、当該接続部を形成する要素(または当該接続部に近接する近接節点)の属性の判定結果に応じて、継続して要素(節点)の属性の設定を実行させるので、接続部を複数備える被浸漬処理物においても正確にシミュレーションすることができる。
【0036】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、要素(節点)の属性の設定を被浸漬処理物の接続部において終了した後に、当該接続部を形成する要素(または当該接続部に近接する近接節点)の属性の判定結果に応じて、継続して要素(節点)の属性の判定を実行させる際、その後の比較対象となる要素(節点)の属性が空気である場合に、比較の元となる要素(節点)の属性を塗料から空気に戻して解析を終了させるので、解析結果の精度を向上させることができる。
【0037】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、節点の属性を次々と設定していくシミュレーション方法において、被浸漬処理物の接続部におけるデータとして二次元の要素を生成しておき、節点がこの接続部の要素を形成するか否かによって解析を終了させることができる。
【0038】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、被浸漬処理物の接続部を形成する節点に、当該節点と隣接関係にある隣接節点の数に対応するサブ属性を持たせることができ、各サブ属性の設定を、当該節点と隣接関係にある隣接節点における解析処理に合わせてそれぞれ設定することができる。
【0039】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、被浸漬処理物を車体ボディとすることができ、この場合、複雑な形状の車体ボディを正確にシミュレーションすることができる。
【0040】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムによれば、上記各本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を、コンピュータに実行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の第1実施の形態について、図1ないし図11を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係るシミュレーション方法を実行する流体解析装置のブロック図を表している。
【0042】
図1に示すように、本発明に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行する流体解析装置(コンピュータ)10は、被浸漬処理物の解析条件等を入力するキーボード11と、解析処理結果等を表示するディスプレイ12と、被浸漬処理物の各種データ等を保存するHDD(ハードディスクドライブ)13と、FD(フレキシブルディスク)に解析処理結果等を保存したりするFDD(フレキシブルディスクドライブ)14とを有している。
【0043】
この流体解析装置10には、さらに、CPU15,ROM16およびRAM17からなる制御部18と、キーボード11のキーボードコントローラ19と、ディスプレイ12のディスプレイコントローラ20と、HDD13およびFDD14のディスクコントローラ21と、流体解析装置10をネットワーク22と接続するためのネットワークインターフェースコントローラ23とが設けられており、これらは相互にシステムバス24を介して通信可能となっている。
【0044】
制御部18を構成するCPU15は、ROM16やHDD13に保存されたソフトウェア、または、FDD14から供給されるソフトウェアを実行することにより、システムバス24に接続された種々の構成部材を総括的に制御するようになっている。すなわち、CPU15は、所定の処理シーケンスに従ってROM16やHDD13、あるいはFDD14からソフトウェアを読み出して、そのプログラムを実行することにより、図7に示すフローチャートを実現する制御を行うようになっている。
【0045】
CPU15は、解析対象となる被浸漬処理物の各種データをHDD13から読み出して、この読み出した各種データから複数の要素に分割された二次元の数値計算モデルを構築するようになっている。また、CPU15は、構築した数値計算モデルに基づいて、図7に示すフローチャートを実現するために必要な情報(データ)の算出、つまり、複数の要素の重心点等を算出し、最終的に被浸漬処理物における空気溜まりの発生状態をディスプレイ12に表示するようになっている。
【0046】
制御部18を構成するRAM17は、CPU15のメインメモリあるいはワークエリア等として機能するものである。キーボードコントローラ19は、キーボード11や図示しないポインティングデバイス等の入力手段からの入力信号を制御し、ディスプレイコントローラ20は、ディスプレイ12の表示を制御するようになっている。ディスクコントローラ21は、ブートプログラム,種々のアプリケーション,編集ファイル,ユーザファイルおよびネットワーク管理プログラム等を保存または読み出すHDD13やFDD14とのアクセスを制御するようになっている。ネットワークインターフェースコントローラ23は、ネットワーク22上の他のデバイス(図示せず)と双方向にデータを送受信するようになっている。
【0047】
次に、流体解析装置10によって実行される被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法について詳細に説明する。なお、本実施の形態においては、解析手法として有限要素法を用いるとともに、図2に示すような平板部材と半分にした筒状部材とを接続して形成される形状モデルを解析対象として解析を行っている。
【0048】
図2は被浸漬処理物および塗料槽を説明する説明図を、図3は被浸漬処理物の数値計算モデルを示す縦断面図を、図4はマルチエッジ周辺の三角メッシュを部分的に拡大して示す部分拡大図を、図5は図4の三角メッシュとノードとの関係を表すデータを、図6は図4のノードの座標データをそれぞれ表している。
【0049】
図2に示すように、被浸漬処理物30は、平板部材31と半分にした筒状部材32とを互いに溶接して接続することにより袋状に形成されている。この被浸漬処理物30の袋状部33の開口側(図中下方側)は、塗料槽40に向けられており、塗料槽40には、電着溶液としての液体塗料(塗料)41が所定量入っている。したがって、被浸漬処理物30を図2に示す姿勢のもとで、実際に液体塗料41中に浸漬させた場合には、被浸漬処理物30の袋状部33に空気溜まり(エアポケット)が発生することになる。
【0050】
流体解析装置10の制御部18(図1参照)は、図3に示す被浸漬処理物30の形状データを、平面により形成される複数の二次元の要素(三角メッシュ)50,50・・・に分割して数値計算モデルを構築するようになっており、この二次元の数値計算モデルを構築するにあたり、例えば、解析対象が車体ボディである場合には、車体ボディの衝突変形シミュレーション等で用いられる数値計算モデルを流用することができる。
【0051】
被浸漬処理物30は、破線円A部およびB部に示すように、複数の節点(ノード)51,51・・・と、これらのノード51同士の結線によって囲まれる複数の三角メッシュ50,50・・・とにより形成されている。破線円A部に示すように、被浸漬処理物30の端部または穴部を形成するフリーエッジ部52には、複数のフリーエッジノード53,53・・・およびフリーエッジメッシュ54,54・・・が配置されている。なお、図中網掛部がフリーエッジメッシュ54を表している。
【0052】
被浸漬処理物30を形成する平板部材31と筒状部材32との間には、破線円B部に示すように、接続部としてのマルチエッジ55(図中太線)が形成されており、このマルチエッジ55には、当該マルチエッジ55上において隣り合う一対のノード51,51を共有する3つの三角メッシュ50,50,50が配置されている。このように、少なくとも3つの三角メッシュを共有するノード同士の結線を連ねたものを、本発明ではマルチエッジと呼ぶ。
【0053】
被浸漬処理物30のマルチエッジ55の周辺を模式的に示すと図4のように表される。以下、ノードや三角メッシュ等の符号としてアルファベットを用いて説明する。
【0054】
マルチエッジ(ME)を形成する複数の三角メッシュ(M)、つまり、符号A1〜A11,B1〜B11およびC1〜C11と、これらの三角メッシュ群A,B,Cを形成する各ノード(N)、つまり、符号a〜yとは、それぞれ図5および図6に示すようなデータにより表される。これらのデータはRAM17(図1参照)に記憶されるようになっており、各データはそれぞれ固有のメモリアドレスに割り当てられている。なお、図中網掛部に示すように、各三角メッシュA1,B1,C1は組となってマルチエッジ(ME)を形成している。
【0055】
次に、図7〜図9に基づいて、流体解析装置10の制御部18が実行するプログラムの内容について説明する。図7は本発明に係る空気溜まり発生シミュレーション方法を示すフローチャート(メインルーチン)を、図8はエアポケット判定計算を示すフローチャート(サブルーチン)を、図9(a),(b),(c)は三角メッシュの属性変更の様子を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0056】
図7に示すように、まず、流体解析装置10に電源を投入して制御部18に電力が供給されると、制御部18の初期設定が行われるとともに、HDD13等からRAM17に解析処理のソフトウェアが読み込まれて、本発明に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するプログラムが実行される(ステップS1)。
【0057】
次に、操作者により解析対象とする部品(P_i)、つまり、図2に示す被浸漬処理物30を、キーボード11を介して入力する(ステップS2)。
【0058】
ステップS3では、ステップS2で入力された部品(P_i)に対応する元データ、つまり、部品(P_i)が車体ボディを構成する場合には、車体ボディの衝突変形シミュレーション等に用いられる形状データ(流用データ)をHDD13から読み出す。そして、この読み出した部品(P_i)の形状データを複数の二次元の要素(三角メッシュ)に分割し、これにより生成されたデータ(図5および図6参照)をRAM17に保存して数値計算モデルを構築する。
【0059】
ステップS4では、被浸漬処理物30の塗料槽40(図2参照)への浸漬方向、つまり、部品(P_i)の重力方向(G)を、操作者のキーボード11の操作により入力する。そして、制御部18は、入力された重力方向(G)に基づいて部品(P_i)を形成する全ての三角メッシュ(M)におけるノード(N)の座標データ(図6参照)を更新し、この重力方向(G)が考慮された座標データをRAM17に保存する。
【0060】
ステップS5では、ステップS4でRAM17に保存したデータに基づき、部品(P_i)を形成する全ての三角メッシュ(M)の属性を空気(A)に設定し、これにより、続くステップS6で用いられるデータの初期条件設定が完了する。ここで、ステップS3およびステップS5は、本発明における第1のステップを構成している。
【0061】
ステップS6では、図8のサブルーチンに示すエアポケット判定計算を実行する。ステップS7では、ステップS6における計算結果のポスト処理を実行し、続くステップS8では、ディスプレイ12を介して外部にグラフィック表示を行う等して解析結果を操作者に表示して解析処理を終了する。
【0062】
次に、エアポケット判定計算の処理内容について詳細に説明する。なお、図8に示すステップS6A以降の解析処理では、本発明の第1実施の形態に係るエアポケット判定計算を実行する。
【0063】
ステップS10では、部品(P_i)を形成する全ての三角メッシュ(M)のうち、端部または穴部を形成するフリーエッジメッシュ(FM_i)を抽出し、抽出した複数のフリーエッジメッシュ(FM_i)を初期境界メッシュ(初期境界要素)に設定する。そして、この初期境界メッシュの属性を塗料(液体)に設定(図3中網掛部参照)して液体メッシュ(LM_i)とする。ここで、ステップS10は、本発明における第2のステップを構成している。
【0064】
ステップS11では、複数の液体メッシュ(LM_i)のうち、1つの液体メッシュ(LM_i)を選択する。続くステップS12では、ステップS11で選択した液体メッシュ(LM_i)に隣接する空気メッシュ(AM_i)を抽出、つまり、液体メッシュ(LM_i)を形成する一対のノード(N)を共有する隣接メッシュ(NM)(隣接要素)の設定を行う。ここで、ステップS12は、本発明における第3のステップを構成している。
【0065】
ステップS13では、ステップS12で抽出した空気メッシュ(AM_i)が、マルチエッジ(ME)を挟んで液体メッシュ(LM_i)の反対側にあるか否かを判定し、空気メッシュ(AM_i)が、マルチエッジ(ME)を挟んで液体メッシュ(LM_i)の反対側にあると判定(yes)した場合、つまり、液体メッシュ(LM_i)を形成するマルチエッジ(ME)を共有する空気メッシュ(AM_i)がある場合にはステップS14に進む。一方、空気メッシュ(AM_i)がマルチエッジ(ME)を挟んで液体メッシュ(LM_i)の反対側にないと判定(no)した場合には、ステップS15に進む。
【0066】
ステップS15では、初期境界メッシュとしての液体メッシュ(LM_i)の重心点を算出するとともに、隣接メッシュ(NM)としての空気メッシュ(AM_i)の重心点を算出する。なお、各重心点の算出は、それぞれの三角メッシュ(M)を形成するノード(N)の座標データ(図6参照)を用いて所定計算により算出する。そして、各重心点の高さを比較(Z座標値の比較)して、液体メッシュ(LM_i)の重心点高さが空気メッシュ(AM_i)の重心点高さと同じかそれ以上の高さであると判定した場合には、ステップS16に進む。
【0067】
ただし、このステップS15においては、上記のように重心点の高さを比較することなく三角メッシュ(M)を形成する特定のノード(N)同士の高さを比較するようにしても良い。つまり、図4に示す三角メッシュA1と三角メッシュC1とを比較する場合、三角メッシュA1を形成する最も高い位置にある最高ノード(最高節点)aと、三角メッシュC1を形成する最も高い位置にある最高ノードgとの高さを比較するようにする。なお、最も低い位置にある最低ノード(最低節点)同士の高さを比較するようにしても良く、三角メッシュA1の場合においては符号hが最低ノードとなり、三角メッシュC1の場合においては符号tが最低ノードとなる。このように、比較すべき各三角メッシュ(M)を形成する特定のノード(N)同士の高さを比較することにより、図6に示す座標データ(Z座標値)をそのまま利用することができる。
【0068】
ステップS16では、図9(a),(b)の三角メッシュ群A方向からの判定の矢印に示すように、空気メッシュ(AM_i)を液体メッシュ(LM_i)に設定、つまり、その属性を空気(A)から液体(L)に変更する。
【0069】
一方、ステップS15でnoと判定、つまり、液体メッシュ(LM_i)の重心点高さが空気メッシュ(AM_i)の重心点高さよりも低いと判定した場合には、図9(a),(b)の三角メッシュ群B方向およびC方向からの判定の矢印に示すように、空気メッシュ(AM_i)の属性の変更は行わずにステップS14に進む。ここで、ステップS15およびステップS16は、本発明における第4のステップを構成している。
【0070】
ステップS14では、ステップS12で抽出した空気メッシュ(AM_i)の全てについて、ステップS13,S15,S16の解析処理を実行したか否かを判定する。ステップS14でnoと判定した場合には、ステップS12で抽出した他の空気メッシュ(AM_i)について、ステップS13,S15,S16の解析処理を実行する。ステップS14でyesと判定、つまり、ステップS12で抽出した空気メッシュ(AM_i)の全てについて、ステップS13,S15,S16の解析処理を実行したと判定(yes)した場合には、ステップS17に進む。
【0071】
ステップS17では、まず、ステップS16で属性変更されて解析処理を終えた液体メッシュ(LM_i)を二次境界メッシュ(二次境界要素)に設定する。そして、設定した二次境界メッシュとしての液体メッシュ(LM_i)および、ステップS10で抽出した初期境界メッシュとしての液体メッシュ(LM_i)の全てについて解析処理を実施したか否かを判定する。
【0072】
ステップS17でnoと判定した場合には、ステップS11に戻り、解析処理を終えていない初期境界メッシュとしての液体メッシュ(LM_i)と解析処理を終えて二次境界メッシュに設定された液体メッシュ(LM_i)の解析処理を継続して実行する。ステップS17でyesと判定した場合にはステップS18に進む。
【0073】
このように、ステップS17で行われる二次境界メッシュの設定と、ステップS11に戻って実行される二次境界メッシュを用いての解析処理が、本発明における第5のステップおよび第6のステップを構成している。また、ステップS11ないしステップS17において解析処理を繰り返し実行し、次々と抽出される隣接メッシュ(NM)がマルチエッジ(ME)を形成する場合に、当該解析処理が収束するようになっており、この解析処理を終了させるロジックが本発明における第7のステップを構成している。
【0074】
ここで、図2および図3に示す形状の被浸漬処理物30は、ステップS17までの解析処理によりエアポケット判定を行うことができる。つまり、ステップS17までの解析処理により図9(c)に示すように三角メッシュ(M)の属性が設定され、これにより図中ハッチング部に示すようなエアポケットの発生が判定されて解析処理が収束する。ステップS18以降の解析処理では、図10および図11に示す形状の被浸漬処理物60,70のエアポケット判定に対応できるようにしており、被浸漬処理物30の解析結果はステップS18以降の解析処理を実行することにより変わることはない。
【0075】
図10(a),(b),(c)は複数のマルチエッジを有する被浸漬処理物における三角メッシュの属性変更の様子を説明する説明図を、図11(a),(b)は解析処理結果の修正例を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0076】
図10に示す被浸漬処理物60は、第1および第2のマルチエッジ(ME_1),(ME_2)を有しており、各マルチエッジ(ME_1),(ME_2)に向けてそれぞれA〜Dの4方向から属性の判定が行われるようになっている。
【0077】
ステップS18では、マルチエッジ(ME)に接続される三角メッシュ(M)のメッシュグループ(MG_i)を抽出、つまり、図10(a)に示すような三角メッシュ(LM_a),(LM_b),(AM_c)よりなるメッシュグループを、第1のマルチエッジ(ME_1)の延びる方向に沿って抽出する。
【0078】
ステップS19では、ステップS18で抽出した複数のメッシュグループ(MG_i)のうち、1つのメッシュグループ(MG_i)を選択する。続くステップS20では、ステップS19で選択したメッシュグループ(MG_i)を構成する三角メッシュ(M)、つまり、三角メッシュ(LM_a),(LM_b),(AM_c)のうち、1つだけ空気メッシュ(AM_i)があるか否かを判定する。ここで、ステップS20は、本発明における第8のステップを構成している。
【0079】
ステップS20において、例えば、空気メッシュ(AM_i)が2つある場合(被浸漬処理物30参照)や、3つある場合(第2のマルチエッジ(ME_2)参照)には、noと判定されてステップS22に進む。図10の部品(P_j)における第1のマルチエッジ(ME_1)においては、当該第1のマルチエッジ(ME_1)を形成する三角メッシュ(AM_c)の属性のみが空気(A)であるためステップS21に進む。
【0080】
ステップS21では、ステップS20でyesと判定された空気メッシュ(AM_i)の属性を、液体(L)に変更して液体メッシュ(LM_i)とする。つまり、図10(a)および(b)に示すように、三角メッシュ(AM_c)を液体メッシュ(LM_i)に属性変更する。ここで、ステップS21は、本発明における第9のステップを構成している。
【0081】
続くステップS22では、ステップS18で抽出した複数のメッシュグループ(MG_i)の全てについて、ステップS20およびステップS21の解析処理を実行したか否かを判定し、未だ全てのメッシュグループ(MG_i)について解析処理を実行していなければ(no)、ステップS19に戻って他のメッシュグループ(MG_i)を対象に解析処理を実行する。
【0082】
ステップS22でyesと判定した場合には、ステップS23に進み、このステップS23では、その上流のステップS21において属性を変更した三角メッシュ(M)があるか否かを判定するとともに、属性を変更した三角メッシュ(M)を初期境界メッシュに設定する。図10に示す部品(P_j)においては、ステップS21において三角メッシュ(AM_c)を液体メッシュ(LM_i)に変更しているので、ステップS23ではyesと判定されるとともに、この液体メッシュ(LM_i)を初期境界メッシュに設定してステップS11に戻ることになる。ここで、ステップS23は、本発明における第10のステップを構成している。
【0083】
ステップS11に戻った後は、ステップS21で設定された液体メッシュ(LM_i)を初期境界メッシュとして解析処理を実行し、その後、次のマルチエッジ(ME)、つまり、図10に示す第2のマルチエッジ(ME_2)に到達するまで、上述と同様の解析処理を実行する。これにより、図10(c)に示すように部品(P_j)の解析処理が収束して、その結果、被浸漬処理物60には図中ハッチング部に示すようなエアポケットが発生すると判定される。
【0084】
ステップS23でnoと判定された場合には、ステップS24に進み、マルチエッジ(ME)上のノード(N)に接続される複数の液体メッシュ(LM_i)の属性を確認し、修正が必要な場合にはその属性の修正処理を実行する。ここで、上述した被浸漬処理物30,60は、何れもマルチエッジ(ME)における液体メッシュ(LM_i)の属性の設定が正しく行われる形状であるので、属性の修正処理は実行されない。続くステップS25においてエアポケット判定計算の解析処理が終了し、メインルーチンのステップS7(図7参照)に進む。
【0085】
次に、ステップS24において、マルチエッジ(ME)上のノード(N)に接続される液体メッシュ(LM_i)の属性の修正処理が実行される形状の一例について、図11に基づき説明する。
【0086】
図11に示す被浸漬処理物70は、上述の被浸漬処理物30と同様に一のマルチエッジ(ME)を有するとともに、当該マルチエッジ(ME)に向けてそれぞれA〜Cの3方向から属性の判定が行われるようになっている。ただし、被浸漬処理物70においては、三角メッシュ群C方向からの判定処理、つまり、属性が空気(A)と判定される判定処理が、マルチエッジ(ME)よりも重力方向(G)に対して高い位置で折り返されており、この点で被浸漬処理物30の形状と異なっている。
【0087】
図11に示すように、被浸漬処理物70としての部品(P_k)によれば、図8のステップS20およびステップS21の解析処理を実行することにより、図11(a)に示すように本来属性が空気(A)と判定されるべき三角メッシュ(M)が、液体メッシュ(LM_i)に変更される。
【0088】
その後、ステップS23でyesと判定されてステップS11に戻り、上述と同様の解析処理が繰り返され、再びステップS23に戻る。このように、ステップS11に戻されて再び解析処理(2回目の解析処理)が実行されるが、2回目の解析処理を終えた後のステップS23での判定においては、上流のステップS21で属性変更したメッシュが存在せずnoと判定され、ステップS24に進む。
【0089】
ステップS24においては、2回目の解析処理でのステップS16において、図11(a)に示す液体メッシュ(LM_i)の隣接メッシュ(NM)の属性が空気(A)のままで変更されないことから、当該液体メッシュ(LM_i)は空気メッシュ(AM_i)であるとされ、1回目の解析処理で属性変更された液体メッシュ(LM_i)を、空気メッシュ(AM_i)に修正する修正処理を実行する。その後、図11(b)に示すように、部品(P_k)の解析処理が収束して、その結果、被浸漬処理物60には図中ハッチング部に示すようなエアポケットが発生すると判定される(ステップS25)。なお、ステップS24では、マルチエッジ(ME)の延びる方向に沿う全ての修正すべき液体メッシュ(LM_i)について修正処理を実行するようになっている。
【0090】
以上詳述したように、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、三角メッシュ(M)の属性を、被浸漬処理物を形成するフリーエッジメッシュ(FM_i)から次々と隣接する隣接メッシュ(NM)を解析していくことにより設定し、この解析処理を、被浸漬処理物のマルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)の属性の設定に達した場合に終了させることができる。したがって、マルチエッジ(ME)を挟む一方側と他方側との三角メッシュ(M)で、それぞれ異なる属性に設定することができ、マルチエッジ(ME)を有する被浸漬処理物における空気溜まりを迅速かつ正確にシミュレーションすることができる。
【0091】
また、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、三角メッシュ(M)の属性を、当該三角メッシュ(M)の重心点の高さを比較することにより空気(A)または液体(L)に設定することができる。したがって、別途複雑な計算をすることなく三角メッシュ(M)を形成するノード(N)の座標データを用いて三角メッシュ(M)の属性を簡単に設定することができる。三角メッシュ(M)の属性の設定は、比較すべき各三角メッシュ(M)を形成する特定のノード(N)同士(最高ノード同士または最低ノード同士)の高さを比較することによっても行うことができ、この場合、図6に示す座標データ(Z座標値)をそのまま利用することができる。したがって、高さ比較のための計算が不要となり、三角メッシュ(M)の属性をより簡単に設定することができる。
【0092】
さらに、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、三角メッシュ(M)の属性の設定をマルチエッジ(ME)で終了させた後に、当該マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)の属性の判定結果に応じて、継続して三角メッシュ(M)の属性の設定を実行させるので、マルチエッジ(ME)を複数備える被浸漬処理物(図10の被浸漬処理物60参照)においても正確にシミュレーションすることができる。
【0093】
また、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、三角メッシュ(M)の属性の設定をマルチエッジ(ME)で終了させた後に、当該マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)の属性の判定結果に応じて、継続して三角メッシュ(M)の属性の設定を実行させる際、その後の比較対象となる三角メッシュ(M)の属性が空気(A)である場合に、比較の元となる三角メッシュ(M)の属性を液体(L)から空気(A)に戻して解析を終了させるので、解析結果の精度を向上(図11の被浸漬処理物70参照)させることができる。
【0094】
さらに、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、被浸漬処理物を車体ボディとすることができ、この場合、複雑な形状の車体ボディを正確にシミュレーションすることができる。
【0095】
次に、本発明の第2実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法について、図12および図13を用いて詳細に説明する。図12は第2実施の形態におけるエアポケット計算を示すフローチャート(サブルーチン)を、図13(a),(b),(c)はノードの属性変更の様子を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0096】
第1実施の形態においては、被浸漬処理物を形成する三角メッシュ(M)を利用して解析処理を実行するものであったが、第2実施の形態においては、被浸漬処理物の形状データの表面に配置されるノード(N)を利用して解析処理を実行するようになっている。なお、第1実施の形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0097】
図12に示すステップS6B以降の解析処理では、本発明の第2実施の形態に係るエアポケット判定計算を実行するようになっている。ステップS6Bの上流のステップS3(図7参照)では、部品(P_i)の形状データに基づき、図6に示す座標データのみを生成し、この座標データをRAM17に保存して数値計算モデルを構築するようになっている。
【0098】
ステップS5(図7参照)では、部品(P_i)(被浸漬処理物30)を形成する全てのノード(N)の属性を空気(A)に設定し、これにより初期条件設定が完了されるようになっている。ここで、図7に示すステップS3およびステップS5は、本発明における第1のステップを構成している。
【0099】
ステップS30では、部品(P_i)を形成する全てのノード(N)のうち、端部または穴部を形成するフリーエッジノード(FN_i)を抽出し、抽出した複数のフリーエッジノード(FN_i)を初期ノード(初期節点)に設定する。そして、この初期ノードの属性を液体(L)に設定して液体ノード(LN_i)とする。ここで、ステップS30は、本発明における第2のステップを構成している。
【0100】
ステップS31では、複数の液体ノード(LN_i)のうち、1つの液体ノード(LN_i)を選択する。続くステップS32では、ステップS31で選択した液体ノード(LN_i)がマルチエッジ(ME)上のノード(N)であるか否かを判定する。ステップS32でyesと判定した場合には、当該液体ノード(LN_i)に基づく解析処理を終了してステップS31に戻り、他の液体ノード(LN_i)を選択する。ステップS32でnoと判定した場合には、ステップS33に進む。
【0101】
ステップS33では、ステップS31で選択した液体ノード(LN_i)と隣接関係にある隣接節点(隣接ノード)としての空気ノード(AN_i)を抽出する。この空気ノード(AN_i)は、図6に示す座標データを用いることにより抽出することができる。ここで、ステップS33は、本発明における第3のステップを構成している。
【0102】
ステップS34では、ステップS33で抽出した空気ノード(AN_i)が、マルチエッジ(ME)上のノード(N)であるか否かを判定し、yesと判定した場合にはステップS35に進み、noと判定した場合にはステップS36に進む。
【0103】
ステップS36では、初期ノードとしての液体ノード(LN_i)と隣接ノードとしての空気ノード(AN_i)の高さを、図6に示す座標データを用いて比較する。ステップS36でyesと判定、つまり、液体ノード(LN_i)の高さが空気ノード(AN_i)の高さと同じかそれ以上の高さであると判定した場合には、ステップS37に進む。
【0104】
ステップS37では、図13(a),(b)のノード群A方向からの判定の矢印に示すように、空気ノード(AN_i)を液体ノード(LN_i)に設定、つまり、その属性を空気(A)から液体(L)に変更する。
【0105】
一方、ステップS36でnoと判定、つまり、液体ノード(LN_i)の高さが空気ノード(AN_i)の高さよりも低いと判定した場合には、図13(a),(b)のノード群B方向およびC方向からの判定の矢印に示すように、空気ノード(AN_i)の属性の変更は行わずにステップS35に進む。ここで、ステップS36およびステップS37は、本発明における第4のステップを構成している。
【0106】
ステップS35では、ステップS33で抽出した空気ノード(AN_i)の全てについて、ステップS34,S36,S37の解析処理を実行したか否かを判定する。ステップS35でnoと判定した場合には、ステップS33で抽出した他の空気ノード(AN_i)について、ステップS34,S36,S37の解析処理を実行する。ステップS35でyesと判定、つまり、ステップS33で抽出した空気ノード(AN_i)の全てについて、ステップS34,S36,S37の解析処理を実行したと判定(yes)した場合には、ステップS38に進む。
【0107】
ステップS38では、まず、ステップS37で属性変更されて解析処理を終えた液体ノード(LN_i)を二次ノード(二次節点)に設定する。そして、設定した二次ノードとしての液体ノード(LN_i)および、ステップS30で抽出した初期ノードとしての液体ノード(LN_i)の全てについて解析処理を実施したか否かを判定する。
【0108】
ステップS38でnoと判定した場合には、ステップS31に戻り、解析処理を終えていない初期ノードとしての液体ノード(LN_i)と解析処理を終えて二次ノードに設定された液体ノード(LN_i)の解析処理を継続して実行する。ステップS38でyesと判定した場合にはステップS39に進む。
【0109】
このように、ステップS38で行われる二次ノードの設定と、ステップS31に戻って実行される二次ノードを用いての解析処理が、本発明における第5のステップおよび第6のステップを構成している。また、ステップS31ないしステップS38において解析処理を繰り返し実行し、次々と抽出される隣接ノードがマルチエッジ(ME)上にある場合に、当該解析処理が収束する(図13(c)参照)ようになっており、この解析処理を終了させるロジックが本発明における第7のステップを構成している。
【0110】
ステップS39では、図13(b)に示すように、マルチエッジ(ME)上にあって隣り合う一対のノード(N_i),(N_j)を抽出する。続くステップS40では、ステップS39で抽出した一対のノード(N_i),(N_j)から最も近接するノード(N_k)(近接節点)を選択する。ここで、部品(P_i)におけるノード(N_k)は、図13(b)に示すように一対のノード(N_i),(N_j)の周囲に3つ存在することになる。
【0111】
ステップS41では、一対のノード(N_i),(N_j)のそれぞれに最も近接する複数のノード(N_k)のうち、1つだけ空気ノード(AN_i)があるか否か、または、全てのノード(N_k)が液体ノード(LN_i)であるか否かを判定する。ステップS41でyesと判定した場合にはステップS42に進み、noと判定した場合にはステップS43に進む。ここで、ステップS39ないしステップS41は、本発明における第8のステップを構成している。
【0112】
図13に示す部品(P_i)におけるステップS41での判定は、2つのノード(N_k)が空気ノード(AN_i)であるためnoと判定される。なお、図10に示す被浸漬処理物60は、ステップS41においてyesと判定される。
【0113】
ステップS42では、ステップS41の判定に用いた空気ノード(AN_i)およびマルチエッジ(ME)上の一対のノード(N_i),(N_j)を、液体ノード(LN_i)に属性変更する。このステップS42で実行される処理は、図10に示す被浸漬処理物60の形状、つまり、複数のマルチエッジ(ME)を有する被浸漬処理物に対応するための処理となっている。ここで、ステップS42は、本発明における第9のステップを構成している。
【0114】
続くステップS43では、マルチエッジ(ME)上の全てのノード(N)についてステップS39ないしステップS42における解析処理を実行したか否かを判定し、ステップS43でnoと判定した場合にはステップS39に戻り、yesと判定した場合にはステップS44に進む。
【0115】
ステップS44では、その上流のステップS42において属性を変更した近接節点としてのノード(N_k)があるか否かを判定するとともに、属性が変更されて液体ノード(LN_i)とされたノード(N_k)を初期ノードに設定する。図13に示す部品(P_i)においては、ステップS42で変更したノード(N_k)が存在しないので、ステップS44ではnoと判定されてステップS45に進む。なお、図10に示す被浸漬処理物60は、ステップS44においてyesと判定されてステップS31に戻ることになる。ここで、ステップS44は、本発明における第10のステップを構成している。
【0116】
ステップS45では、図11に示す被浸漬処理物70の形状に対応するための処理が実行される。つまり、ステップS42で液体ノード(LN_i)に設定された空気ノード(AN_i)およびマルチエッジ(ME)上の一対のノード(N_i),(N_j)の属性を、液体(L)から空気(A)に戻す修正処理を実行し、図11に示す被浸漬処理物70における解析結果の精度向上が図れるようにしている。
【0117】
その後、続くステップS46においてエアポケット判定計算の解析処理が終了し、メインルーチンのステップS7(図7参照)に進む。
【0118】
以上のように構成した第2実施の形態においても、上述の第1実施の形態と同様の作用・効果を奏することができる。これに加え、第2実施の形態によれば、解析処理に利用する被浸漬処理物の形状データがノードデータ(図6参照)のみであるので、流体解析装置10への負荷を低減することができる。
【0119】
次に、本発明の第3実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法について、図14および図15を用いて詳細に説明する。図14は第3実施の形態におけるエアポケット計算を示すフローチャート(サブルーチン)を、図15はマルチエッジ周辺の三角メッシュ・ノードの属性変更の様子を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0120】
第3実施の形態は、上述の第2実施の形態に比してマルチエッジ(ME)に接する三角メッシュ(M)を利用して解析処理を実行する点が異なっており、第2実施の形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0121】
図14に示すステップS6C以降の解析処理では、本発明の第3実施の形態に係るエアポケット判定計算を実行するようになっている。ステップS6Cの上流のステップS3(図7参照)では、部品(P_i)の形状データに基づき、図6に示す座標データの生成に加え、マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)、つまり、図15に示す符号a1〜a6,b1〜b6,c1〜c6を生成し、これらのデータをRAM17に保存して数値計算モデルを構築するようになっている。
【0122】
ステップS5(図7参照)では、部品(P_i)(被浸漬処理物30)を形成する全てのノード(N)およびマルチエッジ(ME)を形成する全ての三角メッシュ(M)の属性を空気(A)に設定し、これにより初期条件設定が完了する。ここで、図7に示すステップS3およびステップS5は、本発明における第1のステップを構成している。
【0123】
第3実施の形態では、第2実施の形態に比して、図14に示すように、ステップS32とステップS33との間で、ステップS50およびステップS51に示す処理が実行されるようになっている。
【0124】
ステップS50では、次々と属性変更された液体ノード(LN_i)(初期ノードとしてのフリーエッジノード(FN_i)を含む)が、マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)を形成するか否かを判定し、yesと判定した場合にはステップS51に進み、noと判定した場合にはステップS33に進む。
【0125】
ステップS51では、マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)の属性を液体(L)に変更、つまり、空気メッシュ(AM_i)を液体メッシュ(LM_i)に変更して、その後、ステップS31に戻される。
【0126】
ステップS50,S51を含むステップS31ないしステップS38において解析処理を繰り返し実行することにより、図15に示すように、ノード群A方向からの空気ノード(AN_i)の液体ノード(LN_i)への属性変更に伴い、マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュa1〜a6が液体メッシュ(LM_i)に設定される。
【0127】
このように、次々と解析処理される液体ノード(LN_i)がマルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)を形成する場合に、当該解析処理が収束するようになっており、この解析処理を終了させるロジックが本発明における第7のステップを構成している。
【0128】
ステップS52では、図15に示すように、マルチエッジ(ME)上にあって隣り合う一対のノード(N_i),(N_j)を共有する三角メッシュ(M)を抽出する。つまり、図15に示す三角メッシュ(M)のグループ(a1,b1,c1),(a2,b2,c2)・・・よりなる三角メッシュ(M)のグループを抽出する。
【0129】
ステップS53では、三角メッシュ(M)のグループの中に空気メッシュ(AM_i)があるか否かを判定し、yesと判定した場合にはステップS54に進み、noと判定した場合にはステップS56に進む。部品(P_i)においては、図15に示すように2つの空気メッシュ(AM_i)が存在するのでyesと判定される。
【0130】
ステップS54では、三角メッシュ(M)のグループの中に空気メッシュ(AM_i)が1つだけあるか否かを判定し、yesと判定した場合にはステップS55に進み、noと判定した場合にはステップS57に進む。部品(P_i)においては、図15に示すように2つの空気メッシュ(AM_i)が存在するのでnoと判定される。
【0131】
ステップS55では、ステップS53で見つけた空気メッシュ(AM_i)を液体メッシュ(LM_i)に属性変更し、続くステップS56では、ステップS55で属性変更された液体メッシュ(LM_i)を形成するマルチエッジ(ME)上の一対のノード(N_i),(N_j)を、それぞれ液体ノード(LN_i)に属性変更する。
【0132】
ステップS57では、マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)の全てについて、ステップS53ないしステップS56における解析処理を実行したか否かを判定する。noと判定した場合にはステップS53に戻り、他の三角メッシュ(M)のグループを抽出して、当該三角メッシュ(M)のグループについてステップS53ないしステップS56における解析処理を実行する。yesと判定した場合にはステップS58に進む。このように、ステップS53ないしステップS56の解析処理が実行されることにより、図10に示す被浸漬処理物60の形状に対応できるようにしている。
【0133】
ステップS58では、マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)の中で、上流のステップS55において属性変更した三角メッシュ(M)があるか否かを判定する。図15に示す部品(P_i)においてはnoと判定されてステップS59に進み、図10に示す被浸漬処理物60においてはyesと判定されてステップS31に戻る。
【0134】
ステップS59では、図11に示す被浸漬処理物70の形状に対応するための処理が実行される。つまり、ステップS55で液体メッシュ(LM_i)に設定された三角メッシュ(M)の属性と、ステップS56で液体ノード(LN_i)に設定された一対のノード(N_i),(N_j)の属性を、液体(L)から空気(A)に戻す修正処理を実行し、図11に示す被浸漬処理物70における解析結果の精度向上が図れるようにしている。
【0135】
以上のように構成した第3実施の形態においても、上述の第1実施の形態と同様の作用・効果を奏することができる。これに加え、第3実施の形態によれば、被浸漬処理物のマルチエッジ(ME)におけるデータとして三角メッシュ(M)を生成しておき、次々と解析処理されるノード(N)が、マルチエッジ(ME)の三角メッシュ(M)を形成するか否かによって解析を終了させることができるので、流体解析装置10への負荷を低減することができる。
【0136】
次に、本発明の第4実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法について、図16および図17を用いて詳細に説明する。図16は第4実施の形態におけるエアポケット計算を示すフローチャート(サブルーチン)を、図17はマルチエッジ周辺の三角メッシュ・ノードの属性変更の様子を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0137】
第4実施の形態は、上述の第2実施の形態に比して、被浸漬処理物30を形成する全てのノード(N)にサブ属性を持たせ(図17破線円参照)、このサブ属性を利用して解析処理を実行する点が異なっている。第2実施の形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0138】
図16に示すステップS6D以降の解析処理では、本発明の第4実施の形態に係るエアポケット判定計算を実行するようになっている。ステップS6Dの上流のステップS3(図7参照)では、部品(P_i)の形状データに基づき、図6に示す座標データの生成に加え、部品(P_i)を形成する全てのノード(N)にサブ属性の情報を持たせるようになっている。そして、これらのデータをRAM17に保存して数値計算モデルを構築するようになっている。ただし、サブ属性の情報は、マルチエッジ(ME)上のノード(N)のみに持たせるようにしても良く、この場合、流体解析装置10への負荷を低減することができる。
【0139】
マルチエッジ(ME)上にあるノード(N)のサブ属性は、当該ノード(N)と隣接関係にある隣接ノードの数に対応して生成される。つまり、図17に示す部品(P_i)においては、マルチエッジ(ME)上のノード(N)は3つのサブ属性を持つこととなる。なお、図17において、マルチエッジ(ME)上にあるノード(N)以外のノード(N)については、そのサブ属性の表示を省略している。
【0140】
ステップS5(図7参照)では、部品(P_i)を形成する全てのノード(N)のサブ属性を空気(A)に設定し、これにより初期条件設定が完了する。ここで、図7に示すステップS3およびステップS5は、本発明における第1のステップを構成している。
【0141】
第4実施の形態では、第2実施の形態に比して、図16に示すように、ステップS33とステップS35との間で、ステップS60ないしステップS63に示す処理が実行されるようになっている。
【0142】
ステップS60では、ステップS31で選択した液体ノード(LN_i)と、ステップS33で抽出した空気ノード(AN_i)の高さを比較する。液体ノード(LN_i)の高さが空気ノード(AN_i)の高さと同じかそれ以上の高さである場合(yes)にはステップS61に進み、液体ノード(LN_i)の高さが空気ノード(AN_i)の高さよりも低い高さである場合(no)にはステップS35に進む。
【0143】
ステップS61では、ステップS60で比較対象となった空気ノード(AN_i)がマルチエッジ(ME)上にあるか否かを判定し、yesと判定した場合にはステップS62に進み、noと判定した場合にはステップS63に進む。
【0144】
ステップS62では、空気ノード(AN_i)の判定方向側のサブ属性、つまり、図17に示すように、ノード群Aの判定方向側のサブ属性を液体(L)に変更する。これにより、図17の部品(P_i)においては、図中破線円に示すようにサブ属性がそれぞれ設定される。ステップS63では、空気ノード(AN_i)のサブ属性を全て液体(L)に変更する。ここで、ステップS62は、本発明における第6のステップを構成している。
【0145】
ステップS60ないしステップS63を含むステップS31ないしステップS38において解析処理を繰り返し実行することにより、図17に示すように、各ノード(N)のサブ属性が設定されて解析処理が収束するようになっており、この解析処理を終了させるロジックが本発明における第7のステップを構成している。
【0146】
ステップS64では、マルチエッジ(ME)上のノード(N)を抽出する。ステップS65では、ステップS64で抽出したノード(N)のサブ属性が1つだけ空気(A)であるか否か、または、ノード(N)のサブ属性の全てが液体(L)であるか否かを判定する。ステップS65でyesと判定した場合にはステップS66に進み、noと判定した場合にはステップS67に進む。部品(P_i)においては、図17に示すように属性が空気(A)である2つのサブ属性が存在するのでnoと判定される。
【0147】
ステップS66では、マルチエッジ(ME)上のノード(N)におけるサブ属性の全てを液体(L)に設定する。つまり、マルチエッジ(ME)上のノード(N)を液体ノード(LN_i)に変更する。
【0148】
ステップS67では、マルチエッジ(ME)上の全てのノード(N)について、ステップS65,S66における解析処理を実行したか否かを判定する。noと判定した場合にはステップS64に戻り、他のマルチエッジ(ME)上のノード(N)を抽出して、当該ノード(N)についてステップS65,S66における解析処理を実行する。yesと判定した場合にはステップS68に進む。このように、ステップS65,S66の解析処理が実行されることにより、図10に示す被浸漬処理物60の形状に対応できるようにしている。
【0149】
ステップS68では、上流のステップS66において、マルチエッジ(ME)上のノード(N)のサブ属性を変更したか否かを判定する。図15に示す部品(P_i)においてはnoと判定されてステップS69に進み、図10に示す被浸漬処理物60においてはyesと判定されてステップS31に戻る。
【0150】
ステップS69では、図11に示す被浸漬処理物70の形状に対応するための処理が実行される。つまり、ステップS66で液体メッシュ(LM_i)に設定されたノード(N)のサブ属性を、属性変更する前の状態に戻す修正処理を実行し、図11に示す被浸漬処理物70における解析結果の精度向上が図れるようにしている。
【0151】
以上のように構成した第4実施の形態においても、上述の第1実施の形態と同様の作用・効果を奏することができる。これに加え、第4実施の形態によれば、解析処理に利用する被浸漬処理物の形状データが、サブ属性を持たせたノードデータ(図6参照)のみであるので、流体解析装置10への負荷を比較的小さなものとすることができる。また、マルチエッジ(ME)を形成するノード(N)のサブ属性の設定を、当該ノード(N)と隣接関係にある隣接ノードの解析処理に合わせてそれぞれ行うことができるので、解析結果の精度をより向上させることができる。
【0152】
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記各実施の形態においては、被浸漬処理物として車体ボディに適用し得ることを述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、鉄道車両の車体フレームや建設機械のキャビン等を被浸漬処理物の対象とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明に係るシミュレーション方法を実行する流体解析装置のブロック図である。
【図2】被浸漬処理物および塗料槽を説明する説明図である。
【図3】被浸漬処理物の数値計算モデルを示す縦断面図である。
【図4】マルチエッジ周辺の三角メッシュを部分的に拡大して示す部分拡大図である。
【図5】図4の三角メッシュとノードとの関係を表すデータである。
【図6】図4のノードの座標データである。
【図7】本発明に係る空気溜まり発生シミュレーション方法を示すフローチャート(メインルーチン)である。
【図8】エアポケット判定計算を示すフローチャート(サブルーチン)である。
【図9】(a),(b),(c)は、三角メッシュの属性変更の様子を説明する説明図である。
【図10】(a),(b),(c)は、複数のマルチエッジを有する被浸漬処理物における三角メッシュの属性変更の様子を説明する説明図である。
【図11】(a),(b)は、解析処理結果の修正例を説明する説明図である。
【図12】第2実施の形態におけるエアポケット計算を示すフローチャート(サブルーチン)である。
【図13】(a),(b),(c)は、ノードの属性変更の様子を説明する説明図である。
【図14】第3実施の形態におけるエアポケット計算を示すフローチャート(サブルーチン)である。
【図15】マルチエッジ周辺の三角メッシュ・ノードの属性変更の様子を説明する説明図である。
【図16】第4実施の形態におけるエアポケット計算を示すフローチャート(サブルーチン)である。
【図17】マルチエッジ周辺の三角メッシュ・ノードの属性変更の様子を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0154】
10 流体解析装置(コンピュータ)
18 制御部
30 被浸漬処理物
40 塗料槽
41 液体塗料(塗料)
50 三角メッシュ(二次元の要素)
51 ノード(節点)
55 マルチエッジ(接続部)
60 被浸漬処理物
70 被浸漬処理物
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法およびこのシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体ボディ等の被浸漬処理物は、液体塗料で満たされた塗料槽内に浸漬することにより、その表面に電着塗装を施すようにしている。このような塗装方法によれば、被浸漬処理物の表面に形成される塗膜厚さを略均一にしたり、被浸漬処理物の溶接箇所などにも同様の塗装処理を施したりすることができる等の利点がある。この反面、複雑な形状の被浸漬処理物には、例えば、車体ボディであればフード内面,ルーフ内面およびフロア下面等に複数の凹部が形成されるため、この凹部がエアポケットと呼ばれる空気溜まりとなり、この空気溜まりの空気が残留した状態のもとでは、当該部分に塗装処理を施すことができないといった欠点がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に示されるように、被浸漬処理物に空気溜まりが発生しないように、空気を大気中に排出するための排出経路を被浸漬処理物に予め形成しておき、この排出経路を介して空気を大気中に排出させ、被浸漬処理物の表面全域に塗装処理を施せるようにすることが行われている。
【0004】
このような被浸漬処理物に発生する空気溜まりは、一般に、自由表面を用いた周知の解析手法を用いてシミュレーションすることができ、このシミュレーション結果を被浸漬対象物の設計に反映させることにより設計作業の効率化を図ることができる。本出願人は、シミュレーションに要する時間を短縮して設計作業のさらなる効率化を図るべく、特願2006−180453および特願2005−330098に示すシミュレーション方法を出願している。
【0005】
各シミュレーション方法のうち、前者(特願2006−180453)は、被浸漬処理物の数値計算モデルを三次元の要素に分割することなく二次元の要素に分割し、これらの分割された各要素によって形成される被浸漬処理物の数値計算モデルを用いて空気溜まりの発生をシミュレーションするようにしている。また、後者(特願2005−330098)は、被浸漬処理物の表面に複数の節点を配置して数値計算モデルを生成し、各節点の座標データを用いて空気溜まりの発生をシミュレーションするようにしている。前者および後者の何れの場合においても、二次元の要素を形成するデータや節点の座標データを用いることでコンピュータに掛かる負荷を小さくしており、その結果、シミュレーションに要する時間を短縮させることができる。
【特許文献1】特開平10−045037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の各シミュレーション方法によれば、被浸漬処理物を形成する複数の部材毎に空気溜まりの発生をシミュレーションするようにしているため、複数の部材が接続して形成される被浸漬処理物を解析対象として、正確なシミュレーション結果を得ることができなかった。
【0007】
つまり、例えば一対の部材の端部同士を断面がハの字形状(椀状)となるように接続して形成される被浸漬処理物を、当該ハの字形状の開口側が下方側に向くように浸漬させる場合、実際には各部材の接続部には空気溜まりが発生することになるが、上記各シミュレーション方法によれば、各部材の何れもが「空気溜まり発生せず」などと誤判定するという問題が生じ得た。
【0008】
本発明の目的は、複数の部材が接続される接続部を有する被浸漬処理物であっても、被浸漬処理物に発生する空気溜まりを正確にシミュレーションすることができる被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法およびこのシミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法であって、複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データを、複数の二次元の要素に分割し、各要素の属性を空気に設定する第1のステップと、前記各要素のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する要素を初期境界要素に設定し、この初期境界要素の属性を塗料に設定する第2のステップと、前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記初期境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第4のステップと、前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定し、この二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第5のステップと、前記第5のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記二次境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第6のステップと、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素でないと判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素が前記接続部の要素であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0011】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の最高節点同士または最低節点同士のうちいずれか一方の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0012】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第7のステップに加え、前記接続部の節点を共有する要素のうち一つの要素の属性が空気であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの要素の属性が空気であると判定した場合に当該要素の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された要素を初期境界要素に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期境界要素に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする。
【0013】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期境界要素に隣接する隣接要素の属性が空気であると判定された場合に、前記初期境界要素の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする。
【0014】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法であって、複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データの表面に複数の節点を配置し、各節点の属性を空気に設定する第1のステップと、前記各節点のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する節点を初期節点に設定し、この初期節点の属性を塗料に設定する第2のステップと、前記初期節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記初期節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第4のステップと、前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接節点を二次節点に設定し、この二次節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第5のステップと、前記第5のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記二次節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第6のステップと、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であるか否かを判定し、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点でないと判定した場合には、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次節点が前記接続部の節点であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期節点および前記二次節点と前記隣接節点とをそれぞれの高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも高い場合は前記隣接節点の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも低い場合は前記隣接節点の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0016】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第7のステップに加え、前記接続部において隣り合う一対の節点を抽出し、この各節点から最も近接する近接節点を選択するとともに、前記近接節点のうち一つの近接節点の属性が空気であるか否かまたは全ての近接節点の属性が塗料であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの近接節点の属性が空気であると判定するかまたは全ての近接節点の属性が塗料であると判定した場合に、属性が空気の近接節点および前記接続部における一対の節点の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された前記近接節点を初期節点に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期節点に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする。
【0017】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期節点と隣接関係にある前記隣接節点の属性が空気であると判定された場合に、前記初期節点および前記一対の節点の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする。
【0018】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第1のステップでは、前記接続部における隣り合う一対の節点により形成される二次元の要素を生成して当該要素の属性を空気に設定し、前記第7のステップでは、前記二次節点が前記第1のステップで生成した前記接続部の要素を形成するか否かを判定することを特徴とする。
【0019】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記第1のステップにおいて、前記接続部を形成する節点に、当該節点と隣接関係にある隣接節点の数に対応するサブ属性を持たせ、前記第6のステップにおいて、比較対象となる二次節点側の属性に合わせて前記各サブ属性を設定することを特徴とする。
【0020】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法は、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする。
【0021】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データを、複数の二次元の要素に分割し、各要素の属性を空気に設定する第1のステップと、前記各要素のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する要素を初期境界要素に設定し、この初期境界要素の属性を塗料に設定する第2のステップと、前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記初期境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第4のステップと、前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定し、この二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第5のステップと、前記第5のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記二次境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第6のステップと、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素でないと判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素が前記接続部の要素であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする。
【0022】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0023】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の最高節点同士または最低節点同士のうちいずれか一方の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0024】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第7のステップに加え、前記接続部の節点を共有する要素のうち一つの要素の属性が空気であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの要素の属性が空気であると判定した場合に当該要素の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された要素を初期境界要素に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期境界要素に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする。
【0025】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期境界要素に隣接する隣接要素の属性が空気であると判定された場合に、前記初期境界要素の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする。
【0026】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データの表面に複数の節点を配置し、各節点の属性を空気に設定する第1のステップと、前記各節点のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する節点を初期節点に設定し、この初期節点の属性を塗料に設定する第2のステップと、前記初期節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第3のステップと、前記第3のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記初期節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第4のステップと、前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接節点を二次節点に設定し、この二次節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第5のステップと、前記第5のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記二次節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第6のステップと、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であるか否かを判定し、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点でないと判定した場合には、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次節点が前記接続部の節点であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする。
【0027】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期節点および前記二次節点と前記隣接節点とをそれぞれの高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも高い場合は前記隣接節点の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも低い場合は前記隣接節点の属性は空気であると判定することを特徴とする。
【0028】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第7のステップに加え、前記接続部において隣り合う一対の節点を抽出し、この各節点から最も近接する近接節点を選択するとともに、前記近接節点のうち一つの近接節点の属性が空気であるか否かまたは全ての近接節点の属性が塗料であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの近接節点の属性が空気であると判定するかまたは全ての近接節点の属性が塗料であると判定した場合に、属性が空気の近接節点および前記接続部における一対の節点の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された前記近接節点を初期節点に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期節点に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする。
【0029】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期節点と隣接関係にある前記隣接節点の属性が空気であると判定された場合に、前記初期節点および前記一対の節点の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする。
【0030】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第1のステップでは、前記接続部における隣り合う一対の節点により形成される二次元の要素を生成して当該要素の属性を空気に設定し、前記第7のステップでは、前記二次節点が前記第1のステップで生成した前記接続部の要素を形成するか否かを判定することを特徴とする。
【0031】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記第1のステップにおいて、前記接続部を形成する節点に、当該節点と隣接関係にある隣接節点の数に対応するサブ属性を持たせ、前記第6のステップにおいて、比較対象となる二次節点側の属性に合わせて前記各サブ属性を設定することを特徴とする。
【0032】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムは、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、被浸漬処理物の形状データを二次元の要素(または節点の配置)により形成し、これらの要素(節点)の属性を、被浸漬処理物の端部または穴部を形成する要素(節点)から次々と隣接する要素(節点)を解析していくことにより設定し、この解析処理を、被浸漬処理物の接続部を形成する要素(節点)の属性の設定に達した場合に終了させることができる。したがって、被浸漬処理物の接続部を挟む一方側と他方側との要素(節点)で、それぞれ異なる属性に設定することが可能となり、複数の部材が接続される接続部を有する被浸漬処理物の空気溜まりを迅速かつ正確にシミュレーションすることができる。
【0034】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、要素(節点)の属性を、要素の重心点や節点の高さを比較することにより空気または塗料に設定することができる。したがって、別途複雑な計算をすることなく節点の座標データを用いて要素(節点)の属性を簡単に設定することができる。
【0035】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、要素(節点)の属性の設定を被浸漬処理物の接続部において終了した後に、当該接続部を形成する要素(または当該接続部に近接する近接節点)の属性の判定結果に応じて、継続して要素(節点)の属性の設定を実行させるので、接続部を複数備える被浸漬処理物においても正確にシミュレーションすることができる。
【0036】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、要素(節点)の属性の設定を被浸漬処理物の接続部において終了した後に、当該接続部を形成する要素(または当該接続部に近接する近接節点)の属性の判定結果に応じて、継続して要素(節点)の属性の判定を実行させる際、その後の比較対象となる要素(節点)の属性が空気である場合に、比較の元となる要素(節点)の属性を塗料から空気に戻して解析を終了させるので、解析結果の精度を向上させることができる。
【0037】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、節点の属性を次々と設定していくシミュレーション方法において、被浸漬処理物の接続部におけるデータとして二次元の要素を生成しておき、節点がこの接続部の要素を形成するか否かによって解析を終了させることができる。
【0038】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、被浸漬処理物の接続部を形成する節点に、当該節点と隣接関係にある隣接節点の数に対応するサブ属性を持たせることができ、各サブ属性の設定を、当該節点と隣接関係にある隣接節点における解析処理に合わせてそれぞれ設定することができる。
【0039】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、被浸漬処理物を車体ボディとすることができ、この場合、複雑な形状の車体ボディを正確にシミュレーションすることができる。
【0040】
本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムによれば、上記各本発明の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を、コンピュータに実行させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の第1実施の形態について、図1ないし図11を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係るシミュレーション方法を実行する流体解析装置のブロック図を表している。
【0042】
図1に示すように、本発明に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行する流体解析装置(コンピュータ)10は、被浸漬処理物の解析条件等を入力するキーボード11と、解析処理結果等を表示するディスプレイ12と、被浸漬処理物の各種データ等を保存するHDD(ハードディスクドライブ)13と、FD(フレキシブルディスク)に解析処理結果等を保存したりするFDD(フレキシブルディスクドライブ)14とを有している。
【0043】
この流体解析装置10には、さらに、CPU15,ROM16およびRAM17からなる制御部18と、キーボード11のキーボードコントローラ19と、ディスプレイ12のディスプレイコントローラ20と、HDD13およびFDD14のディスクコントローラ21と、流体解析装置10をネットワーク22と接続するためのネットワークインターフェースコントローラ23とが設けられており、これらは相互にシステムバス24を介して通信可能となっている。
【0044】
制御部18を構成するCPU15は、ROM16やHDD13に保存されたソフトウェア、または、FDD14から供給されるソフトウェアを実行することにより、システムバス24に接続された種々の構成部材を総括的に制御するようになっている。すなわち、CPU15は、所定の処理シーケンスに従ってROM16やHDD13、あるいはFDD14からソフトウェアを読み出して、そのプログラムを実行することにより、図7に示すフローチャートを実現する制御を行うようになっている。
【0045】
CPU15は、解析対象となる被浸漬処理物の各種データをHDD13から読み出して、この読み出した各種データから複数の要素に分割された二次元の数値計算モデルを構築するようになっている。また、CPU15は、構築した数値計算モデルに基づいて、図7に示すフローチャートを実現するために必要な情報(データ)の算出、つまり、複数の要素の重心点等を算出し、最終的に被浸漬処理物における空気溜まりの発生状態をディスプレイ12に表示するようになっている。
【0046】
制御部18を構成するRAM17は、CPU15のメインメモリあるいはワークエリア等として機能するものである。キーボードコントローラ19は、キーボード11や図示しないポインティングデバイス等の入力手段からの入力信号を制御し、ディスプレイコントローラ20は、ディスプレイ12の表示を制御するようになっている。ディスクコントローラ21は、ブートプログラム,種々のアプリケーション,編集ファイル,ユーザファイルおよびネットワーク管理プログラム等を保存または読み出すHDD13やFDD14とのアクセスを制御するようになっている。ネットワークインターフェースコントローラ23は、ネットワーク22上の他のデバイス(図示せず)と双方向にデータを送受信するようになっている。
【0047】
次に、流体解析装置10によって実行される被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法について詳細に説明する。なお、本実施の形態においては、解析手法として有限要素法を用いるとともに、図2に示すような平板部材と半分にした筒状部材とを接続して形成される形状モデルを解析対象として解析を行っている。
【0048】
図2は被浸漬処理物および塗料槽を説明する説明図を、図3は被浸漬処理物の数値計算モデルを示す縦断面図を、図4はマルチエッジ周辺の三角メッシュを部分的に拡大して示す部分拡大図を、図5は図4の三角メッシュとノードとの関係を表すデータを、図6は図4のノードの座標データをそれぞれ表している。
【0049】
図2に示すように、被浸漬処理物30は、平板部材31と半分にした筒状部材32とを互いに溶接して接続することにより袋状に形成されている。この被浸漬処理物30の袋状部33の開口側(図中下方側)は、塗料槽40に向けられており、塗料槽40には、電着溶液としての液体塗料(塗料)41が所定量入っている。したがって、被浸漬処理物30を図2に示す姿勢のもとで、実際に液体塗料41中に浸漬させた場合には、被浸漬処理物30の袋状部33に空気溜まり(エアポケット)が発生することになる。
【0050】
流体解析装置10の制御部18(図1参照)は、図3に示す被浸漬処理物30の形状データを、平面により形成される複数の二次元の要素(三角メッシュ)50,50・・・に分割して数値計算モデルを構築するようになっており、この二次元の数値計算モデルを構築するにあたり、例えば、解析対象が車体ボディである場合には、車体ボディの衝突変形シミュレーション等で用いられる数値計算モデルを流用することができる。
【0051】
被浸漬処理物30は、破線円A部およびB部に示すように、複数の節点(ノード)51,51・・・と、これらのノード51同士の結線によって囲まれる複数の三角メッシュ50,50・・・とにより形成されている。破線円A部に示すように、被浸漬処理物30の端部または穴部を形成するフリーエッジ部52には、複数のフリーエッジノード53,53・・・およびフリーエッジメッシュ54,54・・・が配置されている。なお、図中網掛部がフリーエッジメッシュ54を表している。
【0052】
被浸漬処理物30を形成する平板部材31と筒状部材32との間には、破線円B部に示すように、接続部としてのマルチエッジ55(図中太線)が形成されており、このマルチエッジ55には、当該マルチエッジ55上において隣り合う一対のノード51,51を共有する3つの三角メッシュ50,50,50が配置されている。このように、少なくとも3つの三角メッシュを共有するノード同士の結線を連ねたものを、本発明ではマルチエッジと呼ぶ。
【0053】
被浸漬処理物30のマルチエッジ55の周辺を模式的に示すと図4のように表される。以下、ノードや三角メッシュ等の符号としてアルファベットを用いて説明する。
【0054】
マルチエッジ(ME)を形成する複数の三角メッシュ(M)、つまり、符号A1〜A11,B1〜B11およびC1〜C11と、これらの三角メッシュ群A,B,Cを形成する各ノード(N)、つまり、符号a〜yとは、それぞれ図5および図6に示すようなデータにより表される。これらのデータはRAM17(図1参照)に記憶されるようになっており、各データはそれぞれ固有のメモリアドレスに割り当てられている。なお、図中網掛部に示すように、各三角メッシュA1,B1,C1は組となってマルチエッジ(ME)を形成している。
【0055】
次に、図7〜図9に基づいて、流体解析装置10の制御部18が実行するプログラムの内容について説明する。図7は本発明に係る空気溜まり発生シミュレーション方法を示すフローチャート(メインルーチン)を、図8はエアポケット判定計算を示すフローチャート(サブルーチン)を、図9(a),(b),(c)は三角メッシュの属性変更の様子を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0056】
図7に示すように、まず、流体解析装置10に電源を投入して制御部18に電力が供給されると、制御部18の初期設定が行われるとともに、HDD13等からRAM17に解析処理のソフトウェアが読み込まれて、本発明に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するプログラムが実行される(ステップS1)。
【0057】
次に、操作者により解析対象とする部品(P_i)、つまり、図2に示す被浸漬処理物30を、キーボード11を介して入力する(ステップS2)。
【0058】
ステップS3では、ステップS2で入力された部品(P_i)に対応する元データ、つまり、部品(P_i)が車体ボディを構成する場合には、車体ボディの衝突変形シミュレーション等に用いられる形状データ(流用データ)をHDD13から読み出す。そして、この読み出した部品(P_i)の形状データを複数の二次元の要素(三角メッシュ)に分割し、これにより生成されたデータ(図5および図6参照)をRAM17に保存して数値計算モデルを構築する。
【0059】
ステップS4では、被浸漬処理物30の塗料槽40(図2参照)への浸漬方向、つまり、部品(P_i)の重力方向(G)を、操作者のキーボード11の操作により入力する。そして、制御部18は、入力された重力方向(G)に基づいて部品(P_i)を形成する全ての三角メッシュ(M)におけるノード(N)の座標データ(図6参照)を更新し、この重力方向(G)が考慮された座標データをRAM17に保存する。
【0060】
ステップS5では、ステップS4でRAM17に保存したデータに基づき、部品(P_i)を形成する全ての三角メッシュ(M)の属性を空気(A)に設定し、これにより、続くステップS6で用いられるデータの初期条件設定が完了する。ここで、ステップS3およびステップS5は、本発明における第1のステップを構成している。
【0061】
ステップS6では、図8のサブルーチンに示すエアポケット判定計算を実行する。ステップS7では、ステップS6における計算結果のポスト処理を実行し、続くステップS8では、ディスプレイ12を介して外部にグラフィック表示を行う等して解析結果を操作者に表示して解析処理を終了する。
【0062】
次に、エアポケット判定計算の処理内容について詳細に説明する。なお、図8に示すステップS6A以降の解析処理では、本発明の第1実施の形態に係るエアポケット判定計算を実行する。
【0063】
ステップS10では、部品(P_i)を形成する全ての三角メッシュ(M)のうち、端部または穴部を形成するフリーエッジメッシュ(FM_i)を抽出し、抽出した複数のフリーエッジメッシュ(FM_i)を初期境界メッシュ(初期境界要素)に設定する。そして、この初期境界メッシュの属性を塗料(液体)に設定(図3中網掛部参照)して液体メッシュ(LM_i)とする。ここで、ステップS10は、本発明における第2のステップを構成している。
【0064】
ステップS11では、複数の液体メッシュ(LM_i)のうち、1つの液体メッシュ(LM_i)を選択する。続くステップS12では、ステップS11で選択した液体メッシュ(LM_i)に隣接する空気メッシュ(AM_i)を抽出、つまり、液体メッシュ(LM_i)を形成する一対のノード(N)を共有する隣接メッシュ(NM)(隣接要素)の設定を行う。ここで、ステップS12は、本発明における第3のステップを構成している。
【0065】
ステップS13では、ステップS12で抽出した空気メッシュ(AM_i)が、マルチエッジ(ME)を挟んで液体メッシュ(LM_i)の反対側にあるか否かを判定し、空気メッシュ(AM_i)が、マルチエッジ(ME)を挟んで液体メッシュ(LM_i)の反対側にあると判定(yes)した場合、つまり、液体メッシュ(LM_i)を形成するマルチエッジ(ME)を共有する空気メッシュ(AM_i)がある場合にはステップS14に進む。一方、空気メッシュ(AM_i)がマルチエッジ(ME)を挟んで液体メッシュ(LM_i)の反対側にないと判定(no)した場合には、ステップS15に進む。
【0066】
ステップS15では、初期境界メッシュとしての液体メッシュ(LM_i)の重心点を算出するとともに、隣接メッシュ(NM)としての空気メッシュ(AM_i)の重心点を算出する。なお、各重心点の算出は、それぞれの三角メッシュ(M)を形成するノード(N)の座標データ(図6参照)を用いて所定計算により算出する。そして、各重心点の高さを比較(Z座標値の比較)して、液体メッシュ(LM_i)の重心点高さが空気メッシュ(AM_i)の重心点高さと同じかそれ以上の高さであると判定した場合には、ステップS16に進む。
【0067】
ただし、このステップS15においては、上記のように重心点の高さを比較することなく三角メッシュ(M)を形成する特定のノード(N)同士の高さを比較するようにしても良い。つまり、図4に示す三角メッシュA1と三角メッシュC1とを比較する場合、三角メッシュA1を形成する最も高い位置にある最高ノード(最高節点)aと、三角メッシュC1を形成する最も高い位置にある最高ノードgとの高さを比較するようにする。なお、最も低い位置にある最低ノード(最低節点)同士の高さを比較するようにしても良く、三角メッシュA1の場合においては符号hが最低ノードとなり、三角メッシュC1の場合においては符号tが最低ノードとなる。このように、比較すべき各三角メッシュ(M)を形成する特定のノード(N)同士の高さを比較することにより、図6に示す座標データ(Z座標値)をそのまま利用することができる。
【0068】
ステップS16では、図9(a),(b)の三角メッシュ群A方向からの判定の矢印に示すように、空気メッシュ(AM_i)を液体メッシュ(LM_i)に設定、つまり、その属性を空気(A)から液体(L)に変更する。
【0069】
一方、ステップS15でnoと判定、つまり、液体メッシュ(LM_i)の重心点高さが空気メッシュ(AM_i)の重心点高さよりも低いと判定した場合には、図9(a),(b)の三角メッシュ群B方向およびC方向からの判定の矢印に示すように、空気メッシュ(AM_i)の属性の変更は行わずにステップS14に進む。ここで、ステップS15およびステップS16は、本発明における第4のステップを構成している。
【0070】
ステップS14では、ステップS12で抽出した空気メッシュ(AM_i)の全てについて、ステップS13,S15,S16の解析処理を実行したか否かを判定する。ステップS14でnoと判定した場合には、ステップS12で抽出した他の空気メッシュ(AM_i)について、ステップS13,S15,S16の解析処理を実行する。ステップS14でyesと判定、つまり、ステップS12で抽出した空気メッシュ(AM_i)の全てについて、ステップS13,S15,S16の解析処理を実行したと判定(yes)した場合には、ステップS17に進む。
【0071】
ステップS17では、まず、ステップS16で属性変更されて解析処理を終えた液体メッシュ(LM_i)を二次境界メッシュ(二次境界要素)に設定する。そして、設定した二次境界メッシュとしての液体メッシュ(LM_i)および、ステップS10で抽出した初期境界メッシュとしての液体メッシュ(LM_i)の全てについて解析処理を実施したか否かを判定する。
【0072】
ステップS17でnoと判定した場合には、ステップS11に戻り、解析処理を終えていない初期境界メッシュとしての液体メッシュ(LM_i)と解析処理を終えて二次境界メッシュに設定された液体メッシュ(LM_i)の解析処理を継続して実行する。ステップS17でyesと判定した場合にはステップS18に進む。
【0073】
このように、ステップS17で行われる二次境界メッシュの設定と、ステップS11に戻って実行される二次境界メッシュを用いての解析処理が、本発明における第5のステップおよび第6のステップを構成している。また、ステップS11ないしステップS17において解析処理を繰り返し実行し、次々と抽出される隣接メッシュ(NM)がマルチエッジ(ME)を形成する場合に、当該解析処理が収束するようになっており、この解析処理を終了させるロジックが本発明における第7のステップを構成している。
【0074】
ここで、図2および図3に示す形状の被浸漬処理物30は、ステップS17までの解析処理によりエアポケット判定を行うことができる。つまり、ステップS17までの解析処理により図9(c)に示すように三角メッシュ(M)の属性が設定され、これにより図中ハッチング部に示すようなエアポケットの発生が判定されて解析処理が収束する。ステップS18以降の解析処理では、図10および図11に示す形状の被浸漬処理物60,70のエアポケット判定に対応できるようにしており、被浸漬処理物30の解析結果はステップS18以降の解析処理を実行することにより変わることはない。
【0075】
図10(a),(b),(c)は複数のマルチエッジを有する被浸漬処理物における三角メッシュの属性変更の様子を説明する説明図を、図11(a),(b)は解析処理結果の修正例を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0076】
図10に示す被浸漬処理物60は、第1および第2のマルチエッジ(ME_1),(ME_2)を有しており、各マルチエッジ(ME_1),(ME_2)に向けてそれぞれA〜Dの4方向から属性の判定が行われるようになっている。
【0077】
ステップS18では、マルチエッジ(ME)に接続される三角メッシュ(M)のメッシュグループ(MG_i)を抽出、つまり、図10(a)に示すような三角メッシュ(LM_a),(LM_b),(AM_c)よりなるメッシュグループを、第1のマルチエッジ(ME_1)の延びる方向に沿って抽出する。
【0078】
ステップS19では、ステップS18で抽出した複数のメッシュグループ(MG_i)のうち、1つのメッシュグループ(MG_i)を選択する。続くステップS20では、ステップS19で選択したメッシュグループ(MG_i)を構成する三角メッシュ(M)、つまり、三角メッシュ(LM_a),(LM_b),(AM_c)のうち、1つだけ空気メッシュ(AM_i)があるか否かを判定する。ここで、ステップS20は、本発明における第8のステップを構成している。
【0079】
ステップS20において、例えば、空気メッシュ(AM_i)が2つある場合(被浸漬処理物30参照)や、3つある場合(第2のマルチエッジ(ME_2)参照)には、noと判定されてステップS22に進む。図10の部品(P_j)における第1のマルチエッジ(ME_1)においては、当該第1のマルチエッジ(ME_1)を形成する三角メッシュ(AM_c)の属性のみが空気(A)であるためステップS21に進む。
【0080】
ステップS21では、ステップS20でyesと判定された空気メッシュ(AM_i)の属性を、液体(L)に変更して液体メッシュ(LM_i)とする。つまり、図10(a)および(b)に示すように、三角メッシュ(AM_c)を液体メッシュ(LM_i)に属性変更する。ここで、ステップS21は、本発明における第9のステップを構成している。
【0081】
続くステップS22では、ステップS18で抽出した複数のメッシュグループ(MG_i)の全てについて、ステップS20およびステップS21の解析処理を実行したか否かを判定し、未だ全てのメッシュグループ(MG_i)について解析処理を実行していなければ(no)、ステップS19に戻って他のメッシュグループ(MG_i)を対象に解析処理を実行する。
【0082】
ステップS22でyesと判定した場合には、ステップS23に進み、このステップS23では、その上流のステップS21において属性を変更した三角メッシュ(M)があるか否かを判定するとともに、属性を変更した三角メッシュ(M)を初期境界メッシュに設定する。図10に示す部品(P_j)においては、ステップS21において三角メッシュ(AM_c)を液体メッシュ(LM_i)に変更しているので、ステップS23ではyesと判定されるとともに、この液体メッシュ(LM_i)を初期境界メッシュに設定してステップS11に戻ることになる。ここで、ステップS23は、本発明における第10のステップを構成している。
【0083】
ステップS11に戻った後は、ステップS21で設定された液体メッシュ(LM_i)を初期境界メッシュとして解析処理を実行し、その後、次のマルチエッジ(ME)、つまり、図10に示す第2のマルチエッジ(ME_2)に到達するまで、上述と同様の解析処理を実行する。これにより、図10(c)に示すように部品(P_j)の解析処理が収束して、その結果、被浸漬処理物60には図中ハッチング部に示すようなエアポケットが発生すると判定される。
【0084】
ステップS23でnoと判定された場合には、ステップS24に進み、マルチエッジ(ME)上のノード(N)に接続される複数の液体メッシュ(LM_i)の属性を確認し、修正が必要な場合にはその属性の修正処理を実行する。ここで、上述した被浸漬処理物30,60は、何れもマルチエッジ(ME)における液体メッシュ(LM_i)の属性の設定が正しく行われる形状であるので、属性の修正処理は実行されない。続くステップS25においてエアポケット判定計算の解析処理が終了し、メインルーチンのステップS7(図7参照)に進む。
【0085】
次に、ステップS24において、マルチエッジ(ME)上のノード(N)に接続される液体メッシュ(LM_i)の属性の修正処理が実行される形状の一例について、図11に基づき説明する。
【0086】
図11に示す被浸漬処理物70は、上述の被浸漬処理物30と同様に一のマルチエッジ(ME)を有するとともに、当該マルチエッジ(ME)に向けてそれぞれA〜Cの3方向から属性の判定が行われるようになっている。ただし、被浸漬処理物70においては、三角メッシュ群C方向からの判定処理、つまり、属性が空気(A)と判定される判定処理が、マルチエッジ(ME)よりも重力方向(G)に対して高い位置で折り返されており、この点で被浸漬処理物30の形状と異なっている。
【0087】
図11に示すように、被浸漬処理物70としての部品(P_k)によれば、図8のステップS20およびステップS21の解析処理を実行することにより、図11(a)に示すように本来属性が空気(A)と判定されるべき三角メッシュ(M)が、液体メッシュ(LM_i)に変更される。
【0088】
その後、ステップS23でyesと判定されてステップS11に戻り、上述と同様の解析処理が繰り返され、再びステップS23に戻る。このように、ステップS11に戻されて再び解析処理(2回目の解析処理)が実行されるが、2回目の解析処理を終えた後のステップS23での判定においては、上流のステップS21で属性変更したメッシュが存在せずnoと判定され、ステップS24に進む。
【0089】
ステップS24においては、2回目の解析処理でのステップS16において、図11(a)に示す液体メッシュ(LM_i)の隣接メッシュ(NM)の属性が空気(A)のままで変更されないことから、当該液体メッシュ(LM_i)は空気メッシュ(AM_i)であるとされ、1回目の解析処理で属性変更された液体メッシュ(LM_i)を、空気メッシュ(AM_i)に修正する修正処理を実行する。その後、図11(b)に示すように、部品(P_k)の解析処理が収束して、その結果、被浸漬処理物60には図中ハッチング部に示すようなエアポケットが発生すると判定される(ステップS25)。なお、ステップS24では、マルチエッジ(ME)の延びる方向に沿う全ての修正すべき液体メッシュ(LM_i)について修正処理を実行するようになっている。
【0090】
以上詳述したように、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、三角メッシュ(M)の属性を、被浸漬処理物を形成するフリーエッジメッシュ(FM_i)から次々と隣接する隣接メッシュ(NM)を解析していくことにより設定し、この解析処理を、被浸漬処理物のマルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)の属性の設定に達した場合に終了させることができる。したがって、マルチエッジ(ME)を挟む一方側と他方側との三角メッシュ(M)で、それぞれ異なる属性に設定することができ、マルチエッジ(ME)を有する被浸漬処理物における空気溜まりを迅速かつ正確にシミュレーションすることができる。
【0091】
また、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、三角メッシュ(M)の属性を、当該三角メッシュ(M)の重心点の高さを比較することにより空気(A)または液体(L)に設定することができる。したがって、別途複雑な計算をすることなく三角メッシュ(M)を形成するノード(N)の座標データを用いて三角メッシュ(M)の属性を簡単に設定することができる。三角メッシュ(M)の属性の設定は、比較すべき各三角メッシュ(M)を形成する特定のノード(N)同士(最高ノード同士または最低ノード同士)の高さを比較することによっても行うことができ、この場合、図6に示す座標データ(Z座標値)をそのまま利用することができる。したがって、高さ比較のための計算が不要となり、三角メッシュ(M)の属性をより簡単に設定することができる。
【0092】
さらに、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、三角メッシュ(M)の属性の設定をマルチエッジ(ME)で終了させた後に、当該マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)の属性の判定結果に応じて、継続して三角メッシュ(M)の属性の設定を実行させるので、マルチエッジ(ME)を複数備える被浸漬処理物(図10の被浸漬処理物60参照)においても正確にシミュレーションすることができる。
【0093】
また、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、三角メッシュ(M)の属性の設定をマルチエッジ(ME)で終了させた後に、当該マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)の属性の判定結果に応じて、継続して三角メッシュ(M)の属性の設定を実行させる際、その後の比較対象となる三角メッシュ(M)の属性が空気(A)である場合に、比較の元となる三角メッシュ(M)の属性を液体(L)から空気(A)に戻して解析を終了させるので、解析結果の精度を向上(図11の被浸漬処理物70参照)させることができる。
【0094】
さらに、第1実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法によれば、被浸漬処理物を車体ボディとすることができ、この場合、複雑な形状の車体ボディを正確にシミュレーションすることができる。
【0095】
次に、本発明の第2実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法について、図12および図13を用いて詳細に説明する。図12は第2実施の形態におけるエアポケット計算を示すフローチャート(サブルーチン)を、図13(a),(b),(c)はノードの属性変更の様子を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0096】
第1実施の形態においては、被浸漬処理物を形成する三角メッシュ(M)を利用して解析処理を実行するものであったが、第2実施の形態においては、被浸漬処理物の形状データの表面に配置されるノード(N)を利用して解析処理を実行するようになっている。なお、第1実施の形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0097】
図12に示すステップS6B以降の解析処理では、本発明の第2実施の形態に係るエアポケット判定計算を実行するようになっている。ステップS6Bの上流のステップS3(図7参照)では、部品(P_i)の形状データに基づき、図6に示す座標データのみを生成し、この座標データをRAM17に保存して数値計算モデルを構築するようになっている。
【0098】
ステップS5(図7参照)では、部品(P_i)(被浸漬処理物30)を形成する全てのノード(N)の属性を空気(A)に設定し、これにより初期条件設定が完了されるようになっている。ここで、図7に示すステップS3およびステップS5は、本発明における第1のステップを構成している。
【0099】
ステップS30では、部品(P_i)を形成する全てのノード(N)のうち、端部または穴部を形成するフリーエッジノード(FN_i)を抽出し、抽出した複数のフリーエッジノード(FN_i)を初期ノード(初期節点)に設定する。そして、この初期ノードの属性を液体(L)に設定して液体ノード(LN_i)とする。ここで、ステップS30は、本発明における第2のステップを構成している。
【0100】
ステップS31では、複数の液体ノード(LN_i)のうち、1つの液体ノード(LN_i)を選択する。続くステップS32では、ステップS31で選択した液体ノード(LN_i)がマルチエッジ(ME)上のノード(N)であるか否かを判定する。ステップS32でyesと判定した場合には、当該液体ノード(LN_i)に基づく解析処理を終了してステップS31に戻り、他の液体ノード(LN_i)を選択する。ステップS32でnoと判定した場合には、ステップS33に進む。
【0101】
ステップS33では、ステップS31で選択した液体ノード(LN_i)と隣接関係にある隣接節点(隣接ノード)としての空気ノード(AN_i)を抽出する。この空気ノード(AN_i)は、図6に示す座標データを用いることにより抽出することができる。ここで、ステップS33は、本発明における第3のステップを構成している。
【0102】
ステップS34では、ステップS33で抽出した空気ノード(AN_i)が、マルチエッジ(ME)上のノード(N)であるか否かを判定し、yesと判定した場合にはステップS35に進み、noと判定した場合にはステップS36に進む。
【0103】
ステップS36では、初期ノードとしての液体ノード(LN_i)と隣接ノードとしての空気ノード(AN_i)の高さを、図6に示す座標データを用いて比較する。ステップS36でyesと判定、つまり、液体ノード(LN_i)の高さが空気ノード(AN_i)の高さと同じかそれ以上の高さであると判定した場合には、ステップS37に進む。
【0104】
ステップS37では、図13(a),(b)のノード群A方向からの判定の矢印に示すように、空気ノード(AN_i)を液体ノード(LN_i)に設定、つまり、その属性を空気(A)から液体(L)に変更する。
【0105】
一方、ステップS36でnoと判定、つまり、液体ノード(LN_i)の高さが空気ノード(AN_i)の高さよりも低いと判定した場合には、図13(a),(b)のノード群B方向およびC方向からの判定の矢印に示すように、空気ノード(AN_i)の属性の変更は行わずにステップS35に進む。ここで、ステップS36およびステップS37は、本発明における第4のステップを構成している。
【0106】
ステップS35では、ステップS33で抽出した空気ノード(AN_i)の全てについて、ステップS34,S36,S37の解析処理を実行したか否かを判定する。ステップS35でnoと判定した場合には、ステップS33で抽出した他の空気ノード(AN_i)について、ステップS34,S36,S37の解析処理を実行する。ステップS35でyesと判定、つまり、ステップS33で抽出した空気ノード(AN_i)の全てについて、ステップS34,S36,S37の解析処理を実行したと判定(yes)した場合には、ステップS38に進む。
【0107】
ステップS38では、まず、ステップS37で属性変更されて解析処理を終えた液体ノード(LN_i)を二次ノード(二次節点)に設定する。そして、設定した二次ノードとしての液体ノード(LN_i)および、ステップS30で抽出した初期ノードとしての液体ノード(LN_i)の全てについて解析処理を実施したか否かを判定する。
【0108】
ステップS38でnoと判定した場合には、ステップS31に戻り、解析処理を終えていない初期ノードとしての液体ノード(LN_i)と解析処理を終えて二次ノードに設定された液体ノード(LN_i)の解析処理を継続して実行する。ステップS38でyesと判定した場合にはステップS39に進む。
【0109】
このように、ステップS38で行われる二次ノードの設定と、ステップS31に戻って実行される二次ノードを用いての解析処理が、本発明における第5のステップおよび第6のステップを構成している。また、ステップS31ないしステップS38において解析処理を繰り返し実行し、次々と抽出される隣接ノードがマルチエッジ(ME)上にある場合に、当該解析処理が収束する(図13(c)参照)ようになっており、この解析処理を終了させるロジックが本発明における第7のステップを構成している。
【0110】
ステップS39では、図13(b)に示すように、マルチエッジ(ME)上にあって隣り合う一対のノード(N_i),(N_j)を抽出する。続くステップS40では、ステップS39で抽出した一対のノード(N_i),(N_j)から最も近接するノード(N_k)(近接節点)を選択する。ここで、部品(P_i)におけるノード(N_k)は、図13(b)に示すように一対のノード(N_i),(N_j)の周囲に3つ存在することになる。
【0111】
ステップS41では、一対のノード(N_i),(N_j)のそれぞれに最も近接する複数のノード(N_k)のうち、1つだけ空気ノード(AN_i)があるか否か、または、全てのノード(N_k)が液体ノード(LN_i)であるか否かを判定する。ステップS41でyesと判定した場合にはステップS42に進み、noと判定した場合にはステップS43に進む。ここで、ステップS39ないしステップS41は、本発明における第8のステップを構成している。
【0112】
図13に示す部品(P_i)におけるステップS41での判定は、2つのノード(N_k)が空気ノード(AN_i)であるためnoと判定される。なお、図10に示す被浸漬処理物60は、ステップS41においてyesと判定される。
【0113】
ステップS42では、ステップS41の判定に用いた空気ノード(AN_i)およびマルチエッジ(ME)上の一対のノード(N_i),(N_j)を、液体ノード(LN_i)に属性変更する。このステップS42で実行される処理は、図10に示す被浸漬処理物60の形状、つまり、複数のマルチエッジ(ME)を有する被浸漬処理物に対応するための処理となっている。ここで、ステップS42は、本発明における第9のステップを構成している。
【0114】
続くステップS43では、マルチエッジ(ME)上の全てのノード(N)についてステップS39ないしステップS42における解析処理を実行したか否かを判定し、ステップS43でnoと判定した場合にはステップS39に戻り、yesと判定した場合にはステップS44に進む。
【0115】
ステップS44では、その上流のステップS42において属性を変更した近接節点としてのノード(N_k)があるか否かを判定するとともに、属性が変更されて液体ノード(LN_i)とされたノード(N_k)を初期ノードに設定する。図13に示す部品(P_i)においては、ステップS42で変更したノード(N_k)が存在しないので、ステップS44ではnoと判定されてステップS45に進む。なお、図10に示す被浸漬処理物60は、ステップS44においてyesと判定されてステップS31に戻ることになる。ここで、ステップS44は、本発明における第10のステップを構成している。
【0116】
ステップS45では、図11に示す被浸漬処理物70の形状に対応するための処理が実行される。つまり、ステップS42で液体ノード(LN_i)に設定された空気ノード(AN_i)およびマルチエッジ(ME)上の一対のノード(N_i),(N_j)の属性を、液体(L)から空気(A)に戻す修正処理を実行し、図11に示す被浸漬処理物70における解析結果の精度向上が図れるようにしている。
【0117】
その後、続くステップS46においてエアポケット判定計算の解析処理が終了し、メインルーチンのステップS7(図7参照)に進む。
【0118】
以上のように構成した第2実施の形態においても、上述の第1実施の形態と同様の作用・効果を奏することができる。これに加え、第2実施の形態によれば、解析処理に利用する被浸漬処理物の形状データがノードデータ(図6参照)のみであるので、流体解析装置10への負荷を低減することができる。
【0119】
次に、本発明の第3実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法について、図14および図15を用いて詳細に説明する。図14は第3実施の形態におけるエアポケット計算を示すフローチャート(サブルーチン)を、図15はマルチエッジ周辺の三角メッシュ・ノードの属性変更の様子を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0120】
第3実施の形態は、上述の第2実施の形態に比してマルチエッジ(ME)に接する三角メッシュ(M)を利用して解析処理を実行する点が異なっており、第2実施の形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0121】
図14に示すステップS6C以降の解析処理では、本発明の第3実施の形態に係るエアポケット判定計算を実行するようになっている。ステップS6Cの上流のステップS3(図7参照)では、部品(P_i)の形状データに基づき、図6に示す座標データの生成に加え、マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)、つまり、図15に示す符号a1〜a6,b1〜b6,c1〜c6を生成し、これらのデータをRAM17に保存して数値計算モデルを構築するようになっている。
【0122】
ステップS5(図7参照)では、部品(P_i)(被浸漬処理物30)を形成する全てのノード(N)およびマルチエッジ(ME)を形成する全ての三角メッシュ(M)の属性を空気(A)に設定し、これにより初期条件設定が完了する。ここで、図7に示すステップS3およびステップS5は、本発明における第1のステップを構成している。
【0123】
第3実施の形態では、第2実施の形態に比して、図14に示すように、ステップS32とステップS33との間で、ステップS50およびステップS51に示す処理が実行されるようになっている。
【0124】
ステップS50では、次々と属性変更された液体ノード(LN_i)(初期ノードとしてのフリーエッジノード(FN_i)を含む)が、マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)を形成するか否かを判定し、yesと判定した場合にはステップS51に進み、noと判定した場合にはステップS33に進む。
【0125】
ステップS51では、マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)の属性を液体(L)に変更、つまり、空気メッシュ(AM_i)を液体メッシュ(LM_i)に変更して、その後、ステップS31に戻される。
【0126】
ステップS50,S51を含むステップS31ないしステップS38において解析処理を繰り返し実行することにより、図15に示すように、ノード群A方向からの空気ノード(AN_i)の液体ノード(LN_i)への属性変更に伴い、マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュa1〜a6が液体メッシュ(LM_i)に設定される。
【0127】
このように、次々と解析処理される液体ノード(LN_i)がマルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)を形成する場合に、当該解析処理が収束するようになっており、この解析処理を終了させるロジックが本発明における第7のステップを構成している。
【0128】
ステップS52では、図15に示すように、マルチエッジ(ME)上にあって隣り合う一対のノード(N_i),(N_j)を共有する三角メッシュ(M)を抽出する。つまり、図15に示す三角メッシュ(M)のグループ(a1,b1,c1),(a2,b2,c2)・・・よりなる三角メッシュ(M)のグループを抽出する。
【0129】
ステップS53では、三角メッシュ(M)のグループの中に空気メッシュ(AM_i)があるか否かを判定し、yesと判定した場合にはステップS54に進み、noと判定した場合にはステップS56に進む。部品(P_i)においては、図15に示すように2つの空気メッシュ(AM_i)が存在するのでyesと判定される。
【0130】
ステップS54では、三角メッシュ(M)のグループの中に空気メッシュ(AM_i)が1つだけあるか否かを判定し、yesと判定した場合にはステップS55に進み、noと判定した場合にはステップS57に進む。部品(P_i)においては、図15に示すように2つの空気メッシュ(AM_i)が存在するのでnoと判定される。
【0131】
ステップS55では、ステップS53で見つけた空気メッシュ(AM_i)を液体メッシュ(LM_i)に属性変更し、続くステップS56では、ステップS55で属性変更された液体メッシュ(LM_i)を形成するマルチエッジ(ME)上の一対のノード(N_i),(N_j)を、それぞれ液体ノード(LN_i)に属性変更する。
【0132】
ステップS57では、マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)の全てについて、ステップS53ないしステップS56における解析処理を実行したか否かを判定する。noと判定した場合にはステップS53に戻り、他の三角メッシュ(M)のグループを抽出して、当該三角メッシュ(M)のグループについてステップS53ないしステップS56における解析処理を実行する。yesと判定した場合にはステップS58に進む。このように、ステップS53ないしステップS56の解析処理が実行されることにより、図10に示す被浸漬処理物60の形状に対応できるようにしている。
【0133】
ステップS58では、マルチエッジ(ME)を形成する三角メッシュ(M)の中で、上流のステップS55において属性変更した三角メッシュ(M)があるか否かを判定する。図15に示す部品(P_i)においてはnoと判定されてステップS59に進み、図10に示す被浸漬処理物60においてはyesと判定されてステップS31に戻る。
【0134】
ステップS59では、図11に示す被浸漬処理物70の形状に対応するための処理が実行される。つまり、ステップS55で液体メッシュ(LM_i)に設定された三角メッシュ(M)の属性と、ステップS56で液体ノード(LN_i)に設定された一対のノード(N_i),(N_j)の属性を、液体(L)から空気(A)に戻す修正処理を実行し、図11に示す被浸漬処理物70における解析結果の精度向上が図れるようにしている。
【0135】
以上のように構成した第3実施の形態においても、上述の第1実施の形態と同様の作用・効果を奏することができる。これに加え、第3実施の形態によれば、被浸漬処理物のマルチエッジ(ME)におけるデータとして三角メッシュ(M)を生成しておき、次々と解析処理されるノード(N)が、マルチエッジ(ME)の三角メッシュ(M)を形成するか否かによって解析を終了させることができるので、流体解析装置10への負荷を低減することができる。
【0136】
次に、本発明の第4実施の形態に係る被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法について、図16および図17を用いて詳細に説明する。図16は第4実施の形態におけるエアポケット計算を示すフローチャート(サブルーチン)を、図17はマルチエッジ周辺の三角メッシュ・ノードの属性変更の様子を説明する説明図をそれぞれ表している。
【0137】
第4実施の形態は、上述の第2実施の形態に比して、被浸漬処理物30を形成する全てのノード(N)にサブ属性を持たせ(図17破線円参照)、このサブ属性を利用して解析処理を実行する点が異なっている。第2実施の形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0138】
図16に示すステップS6D以降の解析処理では、本発明の第4実施の形態に係るエアポケット判定計算を実行するようになっている。ステップS6Dの上流のステップS3(図7参照)では、部品(P_i)の形状データに基づき、図6に示す座標データの生成に加え、部品(P_i)を形成する全てのノード(N)にサブ属性の情報を持たせるようになっている。そして、これらのデータをRAM17に保存して数値計算モデルを構築するようになっている。ただし、サブ属性の情報は、マルチエッジ(ME)上のノード(N)のみに持たせるようにしても良く、この場合、流体解析装置10への負荷を低減することができる。
【0139】
マルチエッジ(ME)上にあるノード(N)のサブ属性は、当該ノード(N)と隣接関係にある隣接ノードの数に対応して生成される。つまり、図17に示す部品(P_i)においては、マルチエッジ(ME)上のノード(N)は3つのサブ属性を持つこととなる。なお、図17において、マルチエッジ(ME)上にあるノード(N)以外のノード(N)については、そのサブ属性の表示を省略している。
【0140】
ステップS5(図7参照)では、部品(P_i)を形成する全てのノード(N)のサブ属性を空気(A)に設定し、これにより初期条件設定が完了する。ここで、図7に示すステップS3およびステップS5は、本発明における第1のステップを構成している。
【0141】
第4実施の形態では、第2実施の形態に比して、図16に示すように、ステップS33とステップS35との間で、ステップS60ないしステップS63に示す処理が実行されるようになっている。
【0142】
ステップS60では、ステップS31で選択した液体ノード(LN_i)と、ステップS33で抽出した空気ノード(AN_i)の高さを比較する。液体ノード(LN_i)の高さが空気ノード(AN_i)の高さと同じかそれ以上の高さである場合(yes)にはステップS61に進み、液体ノード(LN_i)の高さが空気ノード(AN_i)の高さよりも低い高さである場合(no)にはステップS35に進む。
【0143】
ステップS61では、ステップS60で比較対象となった空気ノード(AN_i)がマルチエッジ(ME)上にあるか否かを判定し、yesと判定した場合にはステップS62に進み、noと判定した場合にはステップS63に進む。
【0144】
ステップS62では、空気ノード(AN_i)の判定方向側のサブ属性、つまり、図17に示すように、ノード群Aの判定方向側のサブ属性を液体(L)に変更する。これにより、図17の部品(P_i)においては、図中破線円に示すようにサブ属性がそれぞれ設定される。ステップS63では、空気ノード(AN_i)のサブ属性を全て液体(L)に変更する。ここで、ステップS62は、本発明における第6のステップを構成している。
【0145】
ステップS60ないしステップS63を含むステップS31ないしステップS38において解析処理を繰り返し実行することにより、図17に示すように、各ノード(N)のサブ属性が設定されて解析処理が収束するようになっており、この解析処理を終了させるロジックが本発明における第7のステップを構成している。
【0146】
ステップS64では、マルチエッジ(ME)上のノード(N)を抽出する。ステップS65では、ステップS64で抽出したノード(N)のサブ属性が1つだけ空気(A)であるか否か、または、ノード(N)のサブ属性の全てが液体(L)であるか否かを判定する。ステップS65でyesと判定した場合にはステップS66に進み、noと判定した場合にはステップS67に進む。部品(P_i)においては、図17に示すように属性が空気(A)である2つのサブ属性が存在するのでnoと判定される。
【0147】
ステップS66では、マルチエッジ(ME)上のノード(N)におけるサブ属性の全てを液体(L)に設定する。つまり、マルチエッジ(ME)上のノード(N)を液体ノード(LN_i)に変更する。
【0148】
ステップS67では、マルチエッジ(ME)上の全てのノード(N)について、ステップS65,S66における解析処理を実行したか否かを判定する。noと判定した場合にはステップS64に戻り、他のマルチエッジ(ME)上のノード(N)を抽出して、当該ノード(N)についてステップS65,S66における解析処理を実行する。yesと判定した場合にはステップS68に進む。このように、ステップS65,S66の解析処理が実行されることにより、図10に示す被浸漬処理物60の形状に対応できるようにしている。
【0149】
ステップS68では、上流のステップS66において、マルチエッジ(ME)上のノード(N)のサブ属性を変更したか否かを判定する。図15に示す部品(P_i)においてはnoと判定されてステップS69に進み、図10に示す被浸漬処理物60においてはyesと判定されてステップS31に戻る。
【0150】
ステップS69では、図11に示す被浸漬処理物70の形状に対応するための処理が実行される。つまり、ステップS66で液体メッシュ(LM_i)に設定されたノード(N)のサブ属性を、属性変更する前の状態に戻す修正処理を実行し、図11に示す被浸漬処理物70における解析結果の精度向上が図れるようにしている。
【0151】
以上のように構成した第4実施の形態においても、上述の第1実施の形態と同様の作用・効果を奏することができる。これに加え、第4実施の形態によれば、解析処理に利用する被浸漬処理物の形状データが、サブ属性を持たせたノードデータ(図6参照)のみであるので、流体解析装置10への負荷を比較的小さなものとすることができる。また、マルチエッジ(ME)を形成するノード(N)のサブ属性の設定を、当該ノード(N)と隣接関係にある隣接ノードの解析処理に合わせてそれぞれ行うことができるので、解析結果の精度をより向上させることができる。
【0152】
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記各実施の形態においては、被浸漬処理物として車体ボディに適用し得ることを述べたが、本発明はこれに限らず、例えば、鉄道車両の車体フレームや建設機械のキャビン等を被浸漬処理物の対象とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】本発明に係るシミュレーション方法を実行する流体解析装置のブロック図である。
【図2】被浸漬処理物および塗料槽を説明する説明図である。
【図3】被浸漬処理物の数値計算モデルを示す縦断面図である。
【図4】マルチエッジ周辺の三角メッシュを部分的に拡大して示す部分拡大図である。
【図5】図4の三角メッシュとノードとの関係を表すデータである。
【図6】図4のノードの座標データである。
【図7】本発明に係る空気溜まり発生シミュレーション方法を示すフローチャート(メインルーチン)である。
【図8】エアポケット判定計算を示すフローチャート(サブルーチン)である。
【図9】(a),(b),(c)は、三角メッシュの属性変更の様子を説明する説明図である。
【図10】(a),(b),(c)は、複数のマルチエッジを有する被浸漬処理物における三角メッシュの属性変更の様子を説明する説明図である。
【図11】(a),(b)は、解析処理結果の修正例を説明する説明図である。
【図12】第2実施の形態におけるエアポケット計算を示すフローチャート(サブルーチン)である。
【図13】(a),(b),(c)は、ノードの属性変更の様子を説明する説明図である。
【図14】第3実施の形態におけるエアポケット計算を示すフローチャート(サブルーチン)である。
【図15】マルチエッジ周辺の三角メッシュ・ノードの属性変更の様子を説明する説明図である。
【図16】第4実施の形態におけるエアポケット計算を示すフローチャート(サブルーチン)である。
【図17】マルチエッジ周辺の三角メッシュ・ノードの属性変更の様子を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0154】
10 流体解析装置(コンピュータ)
18 制御部
30 被浸漬処理物
40 塗料槽
41 液体塗料(塗料)
50 三角メッシュ(二次元の要素)
51 ノード(節点)
55 マルチエッジ(接続部)
60 被浸漬処理物
70 被浸漬処理物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法であって、
複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データを、複数の二次元の要素に分割し、各要素の属性を空気に設定する第1のステップと、
前記各要素のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する要素を初期境界要素に設定し、この初期境界要素の属性を塗料に設定する第2のステップと、
前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記初期境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第4のステップと、
前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定し、この二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第5のステップと、
前記第5のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記二次境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第6のステップと、
前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素でないと判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素が前記接続部の要素であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項2】
請求項1記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項3】
請求項1記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の最高節点同士または最低節点同士のうちいずれか一方の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第7のステップに加え、前記接続部の節点を共有する要素のうち一つの要素の属性が空気であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの要素の属性が空気であると判定した場合に当該要素の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された要素を初期境界要素に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期境界要素に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項5】
請求項4記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期境界要素に隣接する隣接要素の属性が空気であると判定された場合に、前記初期境界要素の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項6】
塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法であって、
複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データの表面に複数の節点を配置し、各節点の属性を空気に設定する第1のステップと、
前記各節点のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する節点を初期節点に設定し、この初期節点の属性を塗料に設定する第2のステップと、
前記初期節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記初期節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第4のステップと、
前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接節点を二次節点に設定し、この二次節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第5のステップと、
前記第5のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記二次節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第6のステップと、
前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であるか否かを判定し、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点でないと判定した場合には、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次節点が前記接続部の節点であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項7】
請求項6記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期節点および前記二次節点と前記隣接節点とをそれぞれの高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも高い場合は前記隣接節点の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも低い場合は前記隣接節点の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項8】
請求項6または7記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第7のステップに加え、前記接続部において隣り合う一対の節点を抽出し、この各節点から最も近接する近接節点を選択するとともに、前記近接節点のうち一つの近接節点の属性が空気であるか否かまたは全ての近接節点の属性が塗料であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの近接節点の属性が空気であると判定するかまたは全ての近接節点の属性が塗料であると判定した場合に、属性が空気の近接節点および前記接続部における一対の節点の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された前記近接節点を初期節点に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期節点に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項9】
請求項8記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期節点と隣接関係にある前記隣接節点の属性が空気であると判定された場合に、前記初期節点および前記一対の節点の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第1のステップでは、前記接続部における隣り合う一対の節点により形成される二次元の要素を生成して当該要素の属性を空気に設定し、前記第7のステップでは、前記二次節点が前記第1のステップで生成した前記接続部の要素を形成するか否かを判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項11】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第1のステップにおいて、前記接続部を形成する節点に、当該節点と隣接関係にある隣接節点の数に対応するサブ属性を持たせ、前記第6のステップにおいて、比較対象となる二次節点側の属性に合わせて前記各サブ属性を設定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項13】
塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、
複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データを、複数の二次元の要素に分割し、各要素の属性を空気に設定する第1のステップと、
前記各要素のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する要素を初期境界要素に設定し、この初期境界要素の属性を塗料に設定する第2のステップと、
前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記初期境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第4のステップと、
前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定し、この二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第5のステップと、
前記第5のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記二次境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第6のステップと、
前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素でないと判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素が前記接続部の要素であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項14】
請求項13記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項15】
請求項13記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の最高節点同士または最低節点同士のうちいずれか一方の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第7のステップに加え、前記接続部の節点を共有する要素のうち一つの要素の属性が空気であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの要素の属性が空気であると判定した場合に当該要素の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された要素を初期境界要素に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期境界要素に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項17】
請求項16記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期境界要素に隣接する隣接要素の属性が空気であると判定された場合に、前記初期境界要素の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項18】
塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、
複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データの表面に複数の節点を配置し、各節点の属性を空気に設定する第1のステップと、
前記各節点のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する節点を初期節点に設定し、この初期節点の属性を塗料に設定する第2のステップと、
前記初期節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記初期節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第4のステップと、
前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接節点を二次節点に設定し、この二次節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第5のステップと、
前記第5のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記二次節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第6のステップと、
前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であるか否かを判定し、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点でないと判定した場合には、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次節点が前記接続部の節点であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項19】
請求項18記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期節点および前記二次節点と前記隣接節点とをそれぞれの高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも高い場合は前記隣接節点の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも低い場合は前記隣接節点の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項20】
請求項18または19記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第7のステップに加え、前記接続部において隣り合う一対の節点を抽出し、この各節点から最も近接する近接節点を選択するとともに、前記近接節点のうち一つの近接節点の属性が空気であるか否かまたは全ての近接節点の属性が塗料であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの近接節点の属性が空気であると判定するかまたは全ての近接節点の属性が塗料であると判定した場合に、属性が空気の近接節点および前記接続部における一対の節点の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された前記近接節点を初期節点に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期節点に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項21】
請求項20記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期節点と隣接関係にある前記隣接節点の属性が空気であると判定された場合に、前記初期節点および前記一対の節点の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項22】
請求項18〜21のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第1のステップでは、前記接続部における隣り合う一対の節点により形成される二次元の要素を生成して当該要素の属性を空気に設定し、前記第7のステップでは、前記二次節点が前記第1のステップで生成した前記接続部の要素を形成するか否かを判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項23】
請求項18〜21のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第1のステップにおいて、前記接続部を形成する節点に、当該節点と隣接関係にある隣接節点の数に対応するサブ属性を持たせ、前記第6のステップにおいて、比較対象となる二次節点側の属性に合わせて前記各サブ属性を設定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項24】
請求項13〜23のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項1】
塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法であって、
複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データを、複数の二次元の要素に分割し、各要素の属性を空気に設定する第1のステップと、
前記各要素のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する要素を初期境界要素に設定し、この初期境界要素の属性を塗料に設定する第2のステップと、
前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記初期境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第4のステップと、
前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定し、この二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第5のステップと、
前記第5のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記二次境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第6のステップと、
前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素でないと判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素が前記接続部の要素であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項2】
請求項1記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項3】
請求項1記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の最高節点同士または最低節点同士のうちいずれか一方の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第7のステップに加え、前記接続部の節点を共有する要素のうち一つの要素の属性が空気であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの要素の属性が空気であると判定した場合に当該要素の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された要素を初期境界要素に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期境界要素に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項5】
請求項4記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期境界要素に隣接する隣接要素の属性が空気であると判定された場合に、前記初期境界要素の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項6】
塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法であって、
複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データの表面に複数の節点を配置し、各節点の属性を空気に設定する第1のステップと、
前記各節点のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する節点を初期節点に設定し、この初期節点の属性を塗料に設定する第2のステップと、
前記初期節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記初期節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第4のステップと、
前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接節点を二次節点に設定し、この二次節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第5のステップと、
前記第5のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記二次節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第6のステップと、
前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であるか否かを判定し、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点でないと判定した場合には、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次節点が前記接続部の節点であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項7】
請求項6記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期節点および前記二次節点と前記隣接節点とをそれぞれの高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも高い場合は前記隣接節点の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも低い場合は前記隣接節点の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項8】
請求項6または7記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第7のステップに加え、前記接続部において隣り合う一対の節点を抽出し、この各節点から最も近接する近接節点を選択するとともに、前記近接節点のうち一つの近接節点の属性が空気であるか否かまたは全ての近接節点の属性が塗料であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの近接節点の属性が空気であると判定するかまたは全ての近接節点の属性が塗料であると判定した場合に、属性が空気の近接節点および前記接続部における一対の節点の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された前記近接節点を初期節点に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期節点に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項9】
請求項8記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期節点と隣接関係にある前記隣接節点の属性が空気であると判定された場合に、前記初期節点および前記一対の節点の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項10】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第1のステップでは、前記接続部における隣り合う一対の節点により形成される二次元の要素を生成して当該要素の属性を空気に設定し、前記第7のステップでは、前記二次節点が前記第1のステップで生成した前記接続部の要素を形成するか否かを判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項11】
請求項6〜9のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記第1のステップにおいて、前記接続部を形成する節点に、当該節点と隣接関係にある隣接節点の数に対応するサブ属性を持たせ、前記第6のステップにおいて、比較対象となる二次節点側の属性に合わせて前記各サブ属性を設定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法において、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法。
【請求項13】
塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、
複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データを、複数の二次元の要素に分割し、各要素の属性を空気に設定する第1のステップと、
前記各要素のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する要素を初期境界要素に設定し、この初期境界要素の属性を塗料に設定する第2のステップと、
前記初期境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記初期境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第4のステップと、
前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接要素を二次境界要素に設定し、この二次境界要素と節点を共有する要素を隣接要素に設定する第5のステップと、
前記第5のステップにおいて設定された前記隣接要素を前記二次境界要素を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接要素の属性を設定する第6のステップと、
前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であるか否かを判定し、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素でないと判定した場合には、前記二次境界要素に隣接する隣接要素が前記接続部の要素であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次境界要素が前記接続部の要素であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項14】
請求項13記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の重心点の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の重心点の高さが前記隣接要素の重心点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項15】
請求項13記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期境界要素および前記二次境界要素と前記隣接要素とをそれぞれの要素の最高節点同士または最低節点同士のうちいずれか一方の高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも高い場合は前記隣接要素の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期境界要素または前記二次境界要素の節点の高さが前記隣接要素の節点の高さよりも低い場合は前記隣接要素の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第7のステップに加え、前記接続部の節点を共有する要素のうち一つの要素の属性が空気であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの要素の属性が空気であると判定した場合に当該要素の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された要素を初期境界要素に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期境界要素に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項17】
請求項16記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期境界要素に隣接する隣接要素の属性が空気であると判定された場合に、前記初期境界要素の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項18】
塗料槽内への浸漬時に被浸漬処理物に発生する空気溜まりをシミュレーションする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムであって、
複数の部材が接続される接続部を有する前記被浸漬処理物の形状データの表面に複数の節点を配置し、各節点の属性を空気に設定する第1のステップと、
前記各節点のうち前記被浸漬処理物の端部または穴部を形成する節点を初期節点に設定し、この初期節点の属性を塗料に設定する第2のステップと、
前記初期節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第3のステップと、
前記第3のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記初期節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第4のステップと、
前記第4のステップにおいて解析が終了した前記隣接節点を二次節点に設定し、この二次節点と隣接関係にある節点を隣接節点に設定する第5のステップと、
前記第5のステップにおいて設定された前記隣接節点を前記二次節点を用いて解析し、この解析結果に基づいて前記隣接節点の属性を設定する第6のステップと、
前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であるか否かを判定し、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点でないと判定した場合には、前記二次節点と隣接関係にある隣接節点が前記接続部の節点であると判定するまで、前記第5のステップおよび前記第6のステップの順に各ステップの処理を繰り返させ、前記二次節点が前記接続部の節点であると判定した場合には解析を終了させる第7のステップとを備えることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項19】
請求項18記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第4のステップおよび前記第6のステップにおいては、前記初期節点および前記二次節点と前記隣接節点とをそれぞれの高さを比較して、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも高い場合は前記隣接節点の属性は塗料であると判定し、属性が塗料とされた前記初期節点または前記二次節点の高さが前記隣接節点の高さよりも低い場合は前記隣接節点の属性は空気であると判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項20】
請求項18または19記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第7のステップに加え、前記接続部において隣り合う一対の節点を抽出し、この各節点から最も近接する近接節点を選択するとともに、前記近接節点のうち一つの近接節点の属性が空気であるか否かまたは全ての近接節点の属性が塗料であるか否かを判定する第8のステップと、前記第8のステップにおいて一つの近接節点の属性が空気であると判定するかまたは全ての近接節点の属性が塗料であると判定した場合に、属性が空気の近接節点および前記接続部における一対の節点の属性を塗料に設定する第9のステップと、前記第9のステップにおいて属性が塗料に設定された前記近接節点を初期節点に設定する第10のステップとを実行し、前記第10のステップにおいて設定された初期節点に基づき前記第3のステップに戻って解析処理することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項21】
請求項20記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第3のステップに戻った後に実行される前記第4のステップにおいて、前記初期節点と隣接関係にある前記隣接節点の属性が空気であると判定された場合に、前記初期節点および前記一対の節点の属性を空気に戻して解析を終了することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項22】
請求項18〜21のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第1のステップでは、前記接続部における隣り合う一対の節点により形成される二次元の要素を生成して当該要素の属性を空気に設定し、前記第7のステップでは、前記二次節点が前記第1のステップで生成した前記接続部の要素を形成するか否かを判定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項23】
請求項18〜21のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記第1のステップにおいて、前記接続部を形成する節点に、当該節点と隣接関係にある隣接節点の数に対応するサブ属性を持たせ、前記第6のステップにおいて、比較対象となる二次節点側の属性に合わせて前記各サブ属性を設定することを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【請求項24】
請求項13〜23のいずれか1項に記載の被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラムにおいて、前記被浸漬処理物は、車体ボディであることを特徴とする被浸漬処理物における空気溜まり発生シミュレーション方法を実行するコンピュータが実行可能なプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−191741(P2008−191741A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22757(P2007−22757)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】
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