説明

被覆された医療装置

本発明は、コーティングを含んでなる物品に関し、そのコーティングは少なくとも2つの層を含んでなり、その内の内層は支持ポリマーを含んでなる支持網状組織を含んでなるプライマー層であり、外層は多官能性重合性化合物を含んでなる機能性層である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、コーティングを含んでなる物品、物品にプライマー層を提供するためのプライマーコーティング調合物、物品に外層を提供するための機能性コーティング調合物、コーティングシステム、物品をコーティングする方法、医療コーティング、親水性コーティングおよび滑性コーティングに関する。
【0002】
人々は、表面にコーティングを塗布することでそれに特定の機能特性を与えることを常に試みてきた。尿道および心臓血管カテーテル、シリンジ、および膜などの多くの医療装置は、外面および/または内面に潤滑剤を塗布して、身体への挿入およびそれからの除去を容易にし、および/または身体からの流体の排液を容易にする必要がある。滑性特性はまた、挿入または除去時の軟部組織損傷を最小化するためにも必要とされる。特に潤滑目的のために、このような医療装置は、患者の身体への装置の挿入に先だって濡らす、すなわち特定時間にわたって湿潤性流体を塗布すると、滑らかになって低摩擦特性を得る親水性表面コーティングまたは層を有してもよい。濡らした後に滑らかになる親水性表面コーティングまたは層は、下文において親水性コーティングと称される。濡らした後に得られるコーティングは、下文において滑性コーティングと称される。
【0003】
このような滑性コーティング中で使用するためのコーティング調合物は、例えば重合開始剤存在下での硬化に際して重合して改善されたコーティングの頑強さを提供する多官能重合性化合物、ならびに例えば金属イオンおよび/またはその他の抗菌剤の調節された放出を可能にして、例えば抽出分の捕捉もまた可能にする制御可能な網状組織を含んでなってもよい。さらに親水性ポリマーが存在してより高いコーティングの親水性を提供し、および/または改善されたドライアウト時間を提供してもよい。好ましくは前記コーティング調合物の全構成要素は、前記構成要素の均質な混合物を得るために十分に親水性であり、好ましいコーティング性能がもたらされる。
【0004】
国際公開第2006/056482A1号パンフレットでは、支持ポリマー(ポリエチレングリコールジアクリレート、PEG4000ジアクリレート、ポリエチレングリコールの数平均分子量4000g/mol)、親水性ポリマー(ポリビニルピロリドン、PVP)、および重合開始剤を含んでなる親水性コーティングが開示されている。
【0005】
既知の物品に代わるものとして使用されてもよいコーティングを含んでなる新しい物品を提供することが、本発明の目的である。
【0006】
特に頑強で均一な滑性コーティングを含んでなる新しい物品を提供することが目的である。本発明者らは、既知のコーティング調合物が頻繁に劣ったコーティング性能のコーティングをもたらすことを発見したため、これは特に有用である。典型的にこのようなコーティングは水和環境において所定時間内に分解して、抽出分または溶脱分の増大を引き起こす傾向がある。このような抽出分または溶脱分は、コーティングの機能に不可欠であってもよく、および/またはその中にそれらが放出される体液中で有害な効果を有してもよい、低分子および/または高分子化合物および/または粒子を含んでなってもよい。前記コーティングの分解は、典型的に、水和するおよび水和を保つ能力などの特性の損失、滑性特性の損失、患者の快適さの損失、組織表面に残された残留物による感染症リスクの増大、制御されない放出、および生物学的に活性な構成要素の共溶出問題をもたらす。さらに擦った際にコーティングの一部が被覆された物品から容易に除去されるという事実によって実証されるように、機械的頑強さの欠如は、例えば心臓血管用途において望まれない粒子の放出をもたらすかもしれない。
【0007】
分解はまた、液体状態で、すなわちコーティング調製に先だって起きるかもしれない。これは所与の表面を被覆し濡らす能力、および視覚的外観の観点からコーティング性能に悪影響を及ぼす。これはコーティング調合物の貯蔵寿命安定性を制限して、デリケートな医療用途における使用に先だって許容可能な品質管理が必要となる。したがって液体状態においてより安定したコーティング調合物を提供することもまた目的である。
【0008】
被覆された物品を調製する方法を提供することもさらなる目的である。
【0009】
本発明に従って解決されてもよい1つ以上のその他の目的は、下の説明から明らかになるであろう。
【0010】
ここでは、プライマー層および機能性層を含んでなる特定のコーティングを物品に提供することにより、1つ以上の目的を解決できることが分かっている。
【0011】
したがって本発明は、
コーティングを含んでなり、そのコーティングが少なくとも2つの層を含んでなり、その内の内層が支持ポリマー(a)を含んでなる支持網状組織を含んでなるプライマー層であり、外層が(A)式(1)、
【化1】


(式中、
Gは少なくともn個の官能基を有する多官能性化合物の残基であり、Gは好ましくは親水性であり、より好ましくはポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエポキシド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリオキサゾリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリペプチド、およびセルロースまたはデンプンなどの多糖類、または上のあらゆる組み合わせよりなる群から選択され、Gはより好ましくは少なくとも1つのポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールブロックを含んでなるポリマーであり;各Rおよび各Rは独立して水素を表し、または場合により1つ以上のヘテロ原子を含有する置換および非置換炭化水素から選択される基を表し、好ましくは水素またはC1〜C20炭化水素、より好ましくは水素またはC1〜C20アルキルであり;nは少なくとも2、好ましくは2〜100、より好ましくは2〜8、特に2または3の値を有する整数である)に記載の少なくとも1つの多官能性重合性化合物を含んでなる機能性層である、特に医療装置、より特にカテーテルである物品に関する。
【0012】
本発明に従って、特により頑強で均一なコーティングが提供されることが判明し、それは水和環境において特に明らかである。さらにコーティングは、満足できるまたは有利でさえある物品表面への付着性、より少ない目に見えるひび割れ、および/またはコーティングを水で濡らした後の潤滑性を示してもよい。
【0013】
本発明の文脈で「滑性」とは、滑りやすい表面を有することと定義される。カテーテルなどの医療装置の外面または内面のコーティングは、それが(濡らした際に)対象に傷害をもたらさずおよび/または許容できないレベルの不快さを引き起こすことなく、意図される身体部分に挿入できれば滑性と見なされる。特にコーティングは、それがクランプ力300g、引っ張り速度1cm/秒、および温度22℃でのハーランド(Harland)FTS5000摩擦試験機(HFT)上における測定で20g以下の摩擦を有すれば滑性と見なされる。プロトコールを実施例に示す。湿潤性流体を塗布した際に親水性コーティングが滑性を保つ時間は、ここでさらにドライアウト時間と称される。
【0014】
「濡れた」という用語は、一般に広い意味で当該技術分野で知られており、「水を含有する」ことを意味する。特にこの用語はここで、滑性であるのに十分な水を含有するコーティングついて述べるために使用される。水濃度の観点から、通常濡れたコーティングは、コーティングの乾燥重量を基準にして少なくとも10重量%、好ましくはコーティングの乾燥重量を基準にして少なくとも50重量%、より好ましくはコーティングの乾燥重量を基準にして少なくとも100重量%の水を含有する。例えば本発明の特定の実施態様では、約300〜500重量%の水の水取り込みが実行可能である。湿潤性流体の例は、処理または未処理水、例えば有機溶剤との水含有混合物、または例えば塩、タンパク質または多糖類を含んでなる水溶液である。特に湿潤性流体は体液であることができる。
【0015】
本発明の文脈で、ポリマーという用語は2つ以上の反復単位を含んでなる分子について使用される。特にそれは同一であるかまたは異なっていてもよい2つ以上のモノマーから構成されてもよい。本明細書での用法では、本用語はオリゴマーおよびプレポリマーを含む。通常ポリマーは約500g/mol以上、特に約1000g/mol以上の数平均重量(Mn)を有するが、ポリマーが比較的小型のモノマー単位から構成される場合、Mnはより低くてもよい。ここでおよび下文においてMnは、光散乱による判定でのMnと定義される。
【0016】
プライマー層は、特に機能性層が提供される物品の表面が機能性層よりも疎水性であれば、一般に機能性層の付着性に貢献する。適切な表面の例は、例えば金属、特にプラスチックであるポリマー、およびセラミックからなる表面である。適切な材料の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ケイ素ポリマー、ポリアミド(例えばナイロン)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、およびポリカーボネートが、例えばポリアミドおよびポリエーテルの共重合体(例えばペバックス(Pebax)(商標))などのこのようなポリマーの共重合体を含め、挙げられる。
【0017】
本発明で使用するのに適した支持ポリマー(a)は、重合反応を被ることができる官能性部分を含んでなる。官能性部分で重合すると、支持ポリマーは通常三次元の網状組織を形成でき、別のポリマーが絡まってもよい。ポリマーの官能性部分は、アミノ、アミド、スルフヒドリル(SH)、不飽和エステル、エーテルおよびアミド、アルキド/乾燥樹脂、およびアルケン基、特にビニル基などのラジカル反応性基よりなる群から選択されてもよい。
【0018】
支持ポリマー(a)1分子あたりの反応性部分の平均数は、好ましくは約1.2〜約64の範囲内、より好ましくは約1.2〜約16の範囲内、最も好ましくは約1.2〜約8の範囲内である。
【0019】
本発明の一実施態様では支持ポリマーは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエポキシド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリオキサゾリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリペプチド、およびセルロースまたはデンプンなどの多糖類、または上のあらゆる組み合わせ、好ましくはポリエーテルおよび/またはポリチオエーテルよりなる群から選択される主鎖を含んでなる。好ましくは支持ポリマーは、ポリマーを重合するのに使用できる二重炭素−炭素結合をさらに含んでなる。好ましくは主鎖部分、好ましくはポリエーテル/ポリチオエーテル部分(部分a1)は、二重炭素−炭素結合を含んでなる少なくとも2つの部分(部分a3)で、特に水酸基および上で定義されるラジカル反応性基を含んでなる部分で、より特にアルキル側鎖基を含んでなってもよいヒドロキシアクリレートまたはヒドロキシメタクリレートで連結される。連結は、あらゆる基によって実現されてもよい。好ましくは連結はカルバメート基、すなわち−(NR)−(C=O)−O−(式中、Rは水素またはアルキルである)によって実現する。ここでカルバメートは、特にポリイソシアネート、特にジイソシアネートおよびアルコール起源(例えば前記ヒドロキシアクリレートまたはヒドロキシメタクリレートおよび部分a1起源)であってもよい。想定されたその他の連結は、特にチオカルバメートまたはカルバミド、エステル、アミド、およびエーテルである。
【0020】
特に好ましいのは、少なくともa1)ポリエーテルまたはポリチオエーテル;および/またはa2)少なくとも2個のイソシアネートを含んでなる部分;および/またはa3)ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、およびポリヒドロキシメタクリレートから構成されるポリマーよりなる群から選択される支持ポリマーである。
【0021】
部分a1)は、好ましくはポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール(PEG)およびポリプロピレングリコール(PPG)およびそれらの組み合わせなど)およびポリテトラヒドロフランから選択される。より好ましくはそれはポリ(−メチル−1,4−ブタンジオール)とテトラメチレングリコールの共重合体である。特に好ましいのはポリ(−メチル−1,4−ブタンジオール)(テトラメチレングリコール)(PTGL)である。このようなポリマーは、(ポリ(2−メチル−1,4−ブタンジオール)alt(テトラメチレングリコール)として)保土谷化学工業(Hodogaya)から入手できる。
【0022】
特に適切な部分の例では、a2)は、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマル酸、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、リジンイソシアネートなどである。部分a2は好ましくは、トルエンジイソシアネートおよび4−シクロヘキシルジイソシアネートから選択される。
【0023】
部分a3)は、好ましくはヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレートから選択される。ここでアルキルは好ましくはC1〜C18アルキルである。より好ましくはアルキルは、(メタ)アクリレート基の親水性特性を考慮してC2〜C7である。アルキルがエチルである化合物で良好な結果が得られている。
【0024】
支持ポリマー(硬化前)は、通常少なくとも300g/mol、特に少なくとも400g/mol、より特に少なくとも500g/mol、好ましくは少なくとも750g/molより好ましくは少なくとも1000g/molのポリスチレン標準を使用した、テトラヒドロフラン中のサイズ排除クロマトグラフィーによって判定できる数平均分子量(Mn)を有する。通常分子量は約20000g/mol以下、特に10000g/mol以下、より特に5000g/mol以下、好ましくは3000g/mol以下、特に約2500g/mol以下である。
【0025】
プライマー層中の支持ポリマーの濃度は、通常、層の乾燥重量(すなわち溶剤なし)を基準にして、少なくとも65重量%である。改善された付着性のために、濃度は好ましくは少なくとも70重量%、特に少なくとも75重量%、より特に少なくとも80重量%である。
【0026】
上限は、主に、存在してもよい1つ以上のその他の構成要素の所望の濃度によって定まる。特に濃度は、層の総乾燥重量を基準にして100重量%、より特に95重量%までであってもよい。
【0027】
プライマー層は、それ自体公知の様式で適切に物品に塗布されてもよい。好ましくは本発明に従ったプライマーコーティング調合物が使用される。このような調合物は、有利な特性があるコーティングをもたらすことが分かっている。
【0028】
本発明に従ったプライマー層を物品に提供するためのプライマーコーティング調合物は、典型的に、
(a)(上でおよび/または特許請求の範囲で同定されるように)調合物の総重量を基準にして1〜60重量%特に1〜20重量%の総濃度の支持ポリマー、
(b)重合開始剤、好ましくはノリッシュIタイプ光重合開始剤
を含んでなる。
【0029】
典型的に前記構成要素と、抗酸化剤、脂環式化合物、脂肪族化合物、抗酸化剤などの任意の1つ以上の添加剤と、および/またはプライマーコーティング調合物中での使用に適することが当該技術分野で知られている1つ以上の添加剤とが、適切な量の溶剤に溶解される。特に溶剤濃度は、少なくとも68重量%、より特に少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、なおもより好ましくは少なくとも90重量%の溶剤であってもよい。取り扱い特性(低粘度)の観点から、および/または所望の厚さのコーティングが得られるように調合物の塗布を容易にするために、総固形分は好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下、なおもより好ましくは15重量%以下、特に10重量%以下である。
【0030】
溶剤は、単一溶剤または溶剤混合物であってもよい。それはポリマーがその中に溶解または少なくとも分散できるように選択される。好ましくはプライマーコーティング調合物は、140℃未満、特に120℃以下、より特に100℃以下の沸点を有する有機溶剤を含んでなる。これは所望ならば、特に1つ以上の比較的低沸点のさらなる添加剤が存在する場合、コーティングの乾燥を容易にするかもしれない。好ましくは有機溶剤はアルコール、特に一価のアルコール、より好ましくはメタノールおよび/またはエタノールである。特に極性アルコール、特にC1〜C4一価アルコールなどの溶剤に可溶性の量で、いくらかの水を溶剤に含めることが有利であることが分かった。水濃度は、溶剤の重量を基準として少なくとも1重量%、特に溶剤の総重量を基準にして少なくとも2重量%、より特に少なくとも4重量%であってもよい。支持ポリマーを溶解/分散することを考慮して、含水量は通常、有機溶剤の含量と比較して比較的低く、例えば10重量%以下である。水の存在は、溶剤への構成要素の溶解を容易にすることが分かった。
【0031】
本発明の好ましいプライマーコーティング調合物は、(a)少なくとも2または少なくとも3重量%および/または10重量%まで、特に8重量%までの支持ポリマー、より好ましくは2〜8重量%、特に3〜8重量%の支持ポリマーを含んでなる。重合開始剤(b)の濃度は、重合開始剤の効率、所望の硬化速度、および重合する構成要素(典型的に構成要素(a))の量に基づいて定めることができる。通常、総濃度重合開始剤(b)は、構成要素(a)の重量を基準として10重量%まで、特に構成要素(a)の重量を基準として0.5〜8重量%、より特に1〜6重量%、好ましくは2〜6、より好ましくは2〜5重量%である。
【0032】
本発明に従ったコーティング調合物は、重合開始剤(b)の存在下で硬化できる。「硬化する」という用語は、調合物が固いまたは堅牢なコーティングを形成するように、それを処理するあらゆるやり方を含む。特に「硬化」とは、例えば加熱、冷却、乾燥、結晶化などのあらゆる方法による物理的または化学的硬化または凝固、または放射線硬化または熱硬化などの化学反応の結果としての硬化を指すものと理解される。硬化状態において、例えばUVまたは電子ビーム照射を使用して、コーティング調合物中の構成要素の全部または一部を重合させ、構成要素の全部または一部の間に共有結合を形成してもよい。しかし硬化状態において、構成要素の全部または一部はまた、イオン結合しても、双極子−双極子タイプの相互作用によって結合しても、またはファンデルワールス力または水素結合を通じて結合してもよい。
【0033】
本発明に従ったコーティング調合物を例えば光重合開始剤または熱重合開始剤などの重合開始剤存在下で、例えば可視またはUV光、電子ビーム、プラズマ、γまたはIR照射などの電磁照射を使用して硬化させて、医療コーティングを形成できる。医療コーティングで使用できる光重合開始剤の例は、それによって開始ラジカルが形成される過程によって一般に2つのクラスに分けられるフリーラジカル光重合開始剤である。照射に際して単分子結合開裂を被る化合物は、ノリッシュI型または等方性光重合開始剤と称される。ノリッシュII型光重合開始剤は、励起状態において、第2の分子、すなわちポリマーの低分子量化合物であってもよい相乗剤と相互作用し、二分子反応中でラジカルを生じる。一般にノリッシュII型光重合開始剤のための2つの主要な反応経路は、励起した重合開始剤による水素引き抜き、または光誘起電子転移である。本機序については国際公開第06/056482号パンフレットでさらに詳しく説明されている。
【0034】
適切なノリッシュI型またはフリーラジカル光重合開始剤の例は、ベンゾイン誘導体、メチロールベンゾインおよび4−ベンゾイル−1,3−ジオキソラン誘導体、ベンジルケタール、α,α−ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、アシルホスフィンスルフィド、ハロゲン化アセトフェノン誘導体などである。適切なノリッシュI型光重合開始剤の市販例は、イルガキュア(Irgacure)2959(2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン)イルガキュア、イルガキュア651(ベンジルジメチルケタールまたは2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタノン、チバガイギー(Ciba−Geigy))、イルガキュア184(活性構成要素として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、チバガイギー)、ダロキュア(Darocur)1173(活性構成要素として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チバガイギー)、イルガキュア907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、チバガイギー)、イルガキュア369(活性構成要素として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、チバガイギー)、エサキュア(Esacure)KIP 150(ポリ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン}、Fratelli Lamberti)、エサキュアKIP 100F(ポリ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン}および2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの配合物、Fratelli Lamberti)、エサキュアKTO 46(ポリ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパン−1−オン}、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−ホスフィンオキシドおよびメチルベンゾフェノン誘導体の配合物、Fratelli Lamberti)、アシルホスフィンオキシドなどのLucirin TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、BASF)、イルガキュア819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィン−オキシド、チバガイギー)、イルガキュア1700(ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキシドおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンの25:75%配合物、チバガイギー)などである。I型光重合開始剤の混合物もまた使用できる。
【0035】
本発明に従った医療コーティング調合物で使用できるノリッシュII型光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、キサントン、ベンゾフェノン誘導体(例えばクロロベンゾフェノン)、ベンゾフェノンおよびベンゾフェノン誘導体の配合物(例えばフォトキュア(Photocure)81、4−メチル−ベンゾフェノンおよびベンゾフェノンの50/50配合物)、ミヒラーケトン、エチルミヒラーケトンなどの芳香族ケトンと、チオキサントンおよびクアントキュア(Quantacure)ITX(イソプロピルチオキサントン)のようなその他のキサントン誘導体と、ベンジルと、アントラキノン(例えば2−エチルアントラキノン)と、クマリンと、またはこれらの光重合開始剤の化学誘導体または組み合わせが挙げられる。
【0036】
好ましいのは、水溶性のまたは調節して水溶性にできる光重合開始剤である。ポリマー性または重合性光重合開始剤もまた、好ましい光重合開始剤である。
【0037】
本発明の一実施態様では、プライマー層は親水性ポリマー(c)をさらに含んでなる。これは、プライマー層への、ひいては物品への機能性層の付着を改善するのを助けることが考察される。プライマー層中に存在してもよい親水性ポリマー(c)は、機能性層中に存在してもよい親水性ポリマー(C)について下で定義される例から選択できる。プライマー層および機能性層の双方で親水性ポリマーを使用する場合、前記親水性ポリマーは同一であるかまたは異なっていてもよい。
【0038】
存在する場合、プライマー層中の親水性ポリマーの濃度は、コーティングの総乾燥重量を基準にして少なくとも1重量%、特に少なくとも3重量%、より特に少なくとも5重量%であってもよい。通常、濃度は65重量%まで、好ましくは50重量%まで、より好ましくは40重量%まで、最も好ましくは30重量%まで、特に20重量%まで、より特に15重量%まで、なおもより特に10重量%までである。適切には、それはコーティングの総乾燥重量を基準にして特に1〜99重量%、特に1〜65重量%、より特に1〜40重量%、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは3〜20重量%、最も好ましくは5〜10重量%である範囲内で選択されてもよい。
【0039】
物品には、例えば浸漬またはスプレーによって層を提供するあらゆるやり方で、適切な厚さのプライマーコーティング調合物が提供されてもよい。
【0040】
耐摩耗性を改善するためおよび/または比較的短い硬化時間のために、比較的薄層で、特に20μm以下、より特に7μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下の最終層厚さを提供する量で、プライマーコーティング調合物を塗布することが好ましい。
【0041】
プライマー層の厚さは、少なくとも0.1μm、0.2μm、0.3μm、または0.5μmであってもよい。
【0042】
プライマーコーティング調合物を表面に塗布する際に、それは特定の重合開始剤およびポリマーの組み合わせに適したあらゆるやり方で硬化させてもよい。
【0043】
機能性層は多官能重合性化合物(A)を含んでなり、Rは特に水素、CHまたはCHOHを表す。特に適切なのは、RおよびRがどちらも水素を表し、またはRがCHを表し、Rが水素を表す多官能重合性化合物である。
【0044】
特に適切な多官能重合性化合物(A)は、例えばポリエチレングリコールジアクリルアミドおよびポリエチレングリコールジメタクリルアミドなどのポリエーテルベースの(メタ)アクリルアミドである。多官能性(メタ)アクリルアミド重合性化合物を製造するのに使用できる市販されるポリエーテル多官能性アミンとしては、ポリ(エチレングリコール)ビス(3−アミノプロピル)末端、Mw=1500(アルドリッチ(Aldrich));PEGジアミン(純粋酸化エチレン単位)P2AM−2(分子量2K)、P2AM−3(3.4K)、P2AM−6(6K)、P2AM−8(8K)およびP2AM−10(10K)(サンバイオ(Sunbio))、JEFFAMINE(登録商標)D−230ポリエーテルアミン、JEFFAMINE(登録商標)D−400ポリエーテルアミン、JEFFAMINE(登録商標)D−2000、JEFFAMINE(登録商標)D−4000、JEFFAMINE(登録商標)XTJ−500(ED−600)、JEFFAMINE(登録商標)XTJ D501(ED−900)、JEFFAMINE(登録商標)XTJ−502(ED−2003)、JEFFAMINE(登録商標)XTJ−590ジアミン、JEFFAMINE(登録商標)XTJ−542ジアミン、JEFFAMINE(登録商標)XTJ−548ジアミン、JEFFAMINE(登録商標)XTJ−559ジアミン、JEFFAMINE(登録商標)XTJ−556ジアミン、JEFFAMINE(登録商標)SD−231(XTJ584)、JEFFAMINE(登録商標)SD401(XTJ−585)、JEFFAMINE(登録商標)T−403ポリエーテルアミン、JEFFAMINE(登録商標)XTJ−509ポリオキシプロピレントリアミン、JEFFAMINE(登録商標)T−5000ポリエーテルアミン、およびJEFFAMINE(登録商標)ST−404ポリエーテルアミン(XTJ−586)が挙げられる。
【0045】
一般に多官能重合性化合物(A)は、500g/mol以上、好ましくは750g/mol以上、より好ましくは1000g/mol以上の数平均分子量(Mn)を有する。一般に多官能重合性化合物(A)は、100,000g/mol以下、好ましくは10,000g/mol以下、より好ましくは6,000g/mol以下、特に2,000g/mol以下の数平均分子量(Mn)を有する。
【0046】
上で定義される多官能性、すなわちn≧2の重合性化合物(A)に加えて、組成物はまた、式(1)に記載のn=1の化学種、すなわち1つの反応性部分のみを含んでなる分子も含んでなる。これらの単官能性分子はまた、硬化後に形成される網状組織の一部でもある。式(1)に記載の分子あたりの反応性部分平均数は、好ましくは約1.2〜約64の範囲内、より好ましくは約1.2〜約16の範囲内、最も好ましくは約1.2〜約8の範囲内である。
【0047】
多官能重合性化合物(A)は、乾燥機能性層の総重量を基準にして0%を超えて、すなわち溶剤なしで、例えば5%を超え、10%を超え、20%を超えまたは30%を超えて、機能性コーティング調合物中で使用してもよい。多官能重合性化合物は、機能性コーティング調合物中に100%まで存在できるが、乾燥機能性層の総重量を基準にして50、60、70、80または90%までの多官能重合性化合物を使用することがより多い。
【0048】
下文において、本明細書で示される構成要素の百分率は全て、乾燥した層の総重量を基準とする。
【0049】
本発明の一実施態様では、親水性ポリマー(C)が機能性層中に存在する。前記親水性ポリマーはコーティングに親水性を提供でき、合成または生物由来であってもよく、配合物または共重合体であることができる。親水性ポリマーとしては、原則として滑性親水性コーティングを提供するのに適したあらゆるポリマーを使用してもよい。特に適切なのは、重合開始剤存在下で重合性、グラフト性および/または架橋性のポリマーである。
【0050】
親水性ポリマーは、特に水溶性で(例えばそれが水ゲル化性および/または水膨潤性であるために)比較的大量の水を結合または保持できるポリマーである。大量の水を保持する能力に関しては、その25℃での水取り込み能力がポリマー重量の少なくとも約25%、より特にポリマー重量の少なくとも約50%、より特にポリマー重量の少なくとも約100%であれば、量が特に多いと見なされる。
【0051】
プライマー層と物品表面との間および/またはプライマー層と機能性層との間の付着性は、親水性ポリマー分子量が大きくなるにつれて改善されることが分かった。したがってサイズ排除クロマトグラフィーと場合により組み合わせた光散乱による判定で判定できる親水性ポリマーの重量平均分子量は、通常少なくとも20kg/mol、特に少なくとも55kg/mol、好ましくは少なくとも250kg/mol、特に少なくとも360kg/mol、より好ましくは少なくとも500kg/mol、特に少なくとも750kg/molである。
【0052】
実用上の理由(塗布の容易さおよび/または均一の塗り厚実現の容易さ)から、重量平均分子量(Mw)は通常1000万まで、好ましくは500万g/molまで、より好ましくは300万g/molまで、最も好ましくは200万g/molまで、特に1.500万g/molまで、より特に1.300万g/molまで、なおもより特に100万g/molまでである。
【0053】
特に少なくとも100000g/molのMwを有するポリビニルピロリドン(PVP)およびポリエチレンオキシド(PEO)が、潤滑性に対して特定の好ましい効果を有し、コーティングから移行する傾向が低いことが分かった。
【0054】
親水性ポリマー(C)は、例えばプレポリマー、すなわち1つ以上の重合性基、特に1つ以上のビニル基などの1つ以上のラジカル重合性基を含んでなるポリマーであってもよい。
【0055】
しかしこのような重合性基を含まないポリマーもまた、特に調合物が光に曝露した際のグラフトの形成によって、開始剤存在下で硬化させてもよい。
【0056】
親水性ポリマー(C)は、非イオン性またはイオン性ポリマー、または非イオン性とイオン性ポリマーとの混合物であってもよい。
【0057】
非イオン性ポリマーとしては、限定されるものではないが、例えばポリビニルピロリドン(PVP)などのポリ(ラクタム)と、ポリウレタンと、アクリル酸およびメタクリル酸のホモポリマーおよび共重合体と、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテルと、無水マレイン酸ベースの共重合体と、ポリエステルと、ビニルアミンと、ポリエチレンイミンと、ポリエチレンオキシドと、ポリ(カルボン酸)と、ポリアミドと、ポリ酸無水物と、ポリホスファゼンと、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系材料と、ヘパリンと、デキストランと、例えばコラーゲン、線維素、およびエラスチンなどのポリペプチドと、例えばキトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ゼラチン、およびキチンなどの多糖類と、例えばポリラクチド、ポリグリコリド、およびポリカプロラクトンなどのポリエステルと、例えばコラーゲン、アルブミン、オリゴペプチド、ポリペプチド、短鎖ペプチド、タンパク質、およびオリゴヌクレオチドなどのポリペプチドが挙げられる。
【0058】
特にポリビニルピロリドン(PVP)および同一クラスのポリマーについては、少なくともK15、より特にK30、なおもより特にK80に相当する分子量を有するポリマーが好ましい。少なくともK90に相当する分子量を有するポリマーで、特定の良好な結果が達成されている。上限に関しては、K120以下、特にK100が好ましい。K−値は、ビスコテック(Viscotek)Y501自動化相対粘度計の方法W1307、改訂5/2001によって判定できる値である。このマニュアルはwww.ispcorp.com/products/hairscin/index_3.htmlにある。
【0059】
イオン性ポリマーを使用する場合、それはポリ電解質であってもよい。ここでポリ電解質は、構成単位を含んでなる高分子から構成される高分子量直鎖、分枝または架橋ポリマーと定義され、そこでは5〜100%の間の構成単位が親水性コーティング中でイオン化形態にある。ここで構成単位は、例えばモノマーなどの反復単位と理解される。ポリ電解質は、ここで1つのタイプの高分子から構成される1つのタイプのポリ電解質を指してもよいが、それはまた、異なるタイプの高分子から構成される2つ以上の異なるタイプのポリ電解質を指してもよい。好ましくはポリ電解質は1,000〜1,000,000g/molの間の数平均分子量(Mn)を有する。
【0060】
適切なポリ電解質は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、およびスルホン酸のホモポリマーおよび共重合体の塩、および四級アンモニウム塩およびその混合物および/または誘導体である。適切なポリ電解質の例は、ポリアクリルアミド−コ−アクリル酸ナトリウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸ナトリウム塩、ポリ(4−スチレンスルホン酸)ナトリウム塩、ポリ(塩化アクリルアミド−コ−ジアルキルアンモニウム)、四級化ポリ[ビス−(2−クロロエチル)エーテル−alt−1,3−ビス[3−(ジメチルアミノ)プロピル]尿素]、ポリアリルアンモニウムホスフェート、ポリ(塩化ジアリルジメチルアンモニウム)、ポリ(ナトリウムトリメチレンオキシエチレンスルホネート)、ポリ(臭化ジメチルドデシル(2−アクリルアミドエチル)アンモニウム)、ポリ(2−Nメチルピリジニウムエチレンヨウ素)、ポリビニルスルホン酸、およびポリ(ビニル)ピリジン、ポリエチレンイミン、およびポリリジンの塩である。
【0061】
存在する場合、非イオン性またはイオン性親水性ポリマーを乾燥親水性コーティングの総重量を基準にして、例えば1重量%を超え、2重量%を超え、または10重量%を超えて、コーティング調合物の0重量%を超えて使用してもよい。親水性ポリマーは、コーティング調合物中に90重量%まで存在できるが、親水性ポリマーは、乾燥親水性コーティングの総重量を基準にして50、60、70または80重量%までで使用されることがより多い。
【0062】
親水性ポリマー(C)が存在する場合、多官能重合性化合物(A):親水性ポリマー(C)の比率は、意図される結果次第で幅広い限度内で選択してもよい。特に親水性ポリマーと多官能重合性化合物との重量対重量比は、20:1〜1:20の間、特に15:1〜1:15の間、より特に12:1〜1:12の間で選択される。
【0063】
本発明はまた、機能性層を調製するためのコーティング調合物にも関する。ここでコーティング調合物とは、通常例えば液状媒体を含んでなる溶液または分散体などの液体コーティング調合物を指す。ここではコーティング調合物の表面への塗布を可能にするあらゆる液状媒体で十分である。したがってコーティング調合物は、調合物のその他の構成要素を分散または溶解するのに十分な量で液状媒体をさらに含んでなる。液状媒体の濃度は、通常、液体コーティング調合物の総重量の少なくとも68重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、なおもより好ましくは少なくとも85重量%である。取り扱い特性(低粘度)を考慮して、および/または所望の厚さのコーティングが得られるように調合物の塗布を容易にするため、調合物中の液状媒体の量は好ましくは比較的高い。その理由から総固形分は好ましくは20重量%以下である。
【0064】
液状媒体は、単一液状媒体または混合物であってもよい。それはポリマーがその中に溶解または少なくとも分散できるように選択される。特に親水性ポリマーを良好に溶解または分散するために、液状媒体は極性液体であることが好ましい。特に液体は、それが水に可溶性であれば極性と見なされる。好ましくはそれは水および/または例えばアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンなどの水に可溶性の有機溶剤、および水性混合物またはエマルジョン、好ましくはアルコール、より好ましくはC1〜C4アルコール、特にメタノールおよび/またはエタノールなどを含んでなる。混合物の場合、水と有機溶剤、特に1つ以上のアルコールとの比率は、約25:75〜75:25、特に40:60〜60:40、より特に45:55〜55:45の範囲内であってもよい。
【0065】
機能性コーティング調合物は、プライマーコーティング調合物について上述したように、特に例えば光重合開始剤または熱重合開始剤などの重合開始剤(B)の存在下で硬化させて、親水性コーティングを形成できる。ノリッシュI型およびノリッシュII型光重合開始剤のどちらを適用してもよい。上でプライマーコーティング調合物について述べたノリッシュI型光重合開始剤の例はまた、機能性コーティング調合物中で塗布できる。ノリッシュII型光重合開始剤の例は、ベンゾフェノンヒドロキシメチルフェニルプロパノン、ジメトキシフェニルアセトフェノン、2−メチル−l−4−(メチルチオ)−フェニル−2−モルホリノ−プロパノン−1,1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシル−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ジエトキシフェニルアセトフェノンなどである。ベンゾイルジアリールホスフィンオキシド光重合開始剤などのホスフィンオキシド光重合開始剤タイプ(例えばBASFからのルシリン(Lucirin)TPO)を使用してもよい。
【0066】
本発明はまた、
(A)調合物の総重量を基準にして総濃度0.5〜60重量%、特に0.5〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、なおもより好ましくは1〜5重量%の式(1)に記載の多官能重合性化合物;
(B)a)およびb)の総重量を基準にして好ましくは総濃度0.1〜10重量%の光重合開始剤;
(C)場合により調合物の総重量を基準にして、総濃度0〜60重量%、特に0.5〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、なおもより好ましくは1〜5重量%の機能性ポリマー;
および少なくとも68重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、なおもより好ましくは少なくとも85重量%の溶剤
を含んでなる機能性コーティング調合物にも関し、構成要素A)、B)、および場合により(C)は溶解または分散する。
【0067】
機能性コーティング調合物はまた、(A)および(C)の総重量を基準にして好ましくは0.1〜10重量%の濃度で、界面活性剤(D)をさらに含んでなってもよい。
【0068】
本発明はまた、本発明に従ったプライマーコーティング調合物および機能性コーティング調合物を含んでなる、プライマー層および機能性層を物品に提供するためのコーティングシステムにも関する。
【0069】
本発明の実施態様では、本発明に従った機能性コーティング調合物は、コーティングの表面特性を改善できる少なくとも1つの界面活性剤(D)をさらに含んでなる。界面活性剤は、最も重要な洗剤構成要素のグループを構成する。一般にこれらは、通常、親水性または水溶性増強官能基に付着する長いアルキル鎖である、疎水性部分を含んでなる水溶性の表面活性剤である。界面活性剤は、分子の親水性部分に存在する電荷(水溶液中での解離後の)に従って、例えばアニオン性またはカチオン性界面活性剤などのイオン性界面活性剤と、非イオン性界面活性剤とに分類できる。イオン性界面活性剤の例としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、コール酸ナトリウム、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ラウリルジメチルアミンオキシド(LDAO)、N−ラウリルサルコシンナトリウム塩、およびデオキシコール酸ナトリウム(DOC)が挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、トリトン(TRITON)(商標)BG−10界面活性剤およびトリトン(TRITON)CG−110界面活性剤などのアルキルポリグルコシドと、タージトール(商標)TMNシリーズなどの分枝二級アルコールエトキシレートと、タージトールLシリーズ、およびタージトールXD、XH、およびXJ界面活性剤などの酸化エチレン/酸化プロピレン共重合体と、タージトールNPシリーズなどのノニルフェノールエトキシレートと、トリトン(TRITON)Xシリーズなどのオクチルフェノールエトキシレートと、タージトール15−Sシリーズなどの二級アルコールエトキシレートと、トリトン(TRITON)CA界面活性剤、トリトン(TRITON)N−57界面活性剤、トリトン(TRITON)X−207界面活性剤、ツイーン80およびツイーン20などの特殊アルコキシレートとが挙げられる
【0070】
乾燥機能性層の総重量を基準にして典型的に0.001〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%の界面活性剤(D)が塗布される。
【0071】
本発明に従った機能性コーティング調合物中に存在してもよい1つ以上のその他の添加剤は、例えばジアリルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、およびジエチルヘキシルアミンなどのアミン化合物;抗酸化剤;水溶性ラジカル安定剤;UV吸収体;光安定剤;(シラン)カップリング剤;コーティング表面改良剤;熱重合抑制剤;均展材;界面活性剤;例えば顔料または染料などの着色剤;脱色剤;保存料;分散剤;可塑剤;潤滑剤;溶剤;充填材;濡れ性改良剤;尿素;および連鎖移動剤である。着色剤は、顔料または染料であることができる。
【0072】
本発明に従ったコーティングは、物品上に被覆できる。コーティングは、一連の形状寸法および材料から選択されてもよい基材上に被覆できる。基材は、多孔性、非多孔性、滑面、粗面、均等または不均等などの肌目を有してもよい。基材はその表面にコーティングを支持する。コーティングは、基材の全領域または選択された領域に塗布できる。コーティングは、フィルム、シート、ロッド、チューブ、成形品(規則的なまたは不規則な形)、繊維、布帛、および微粒子をはじめとする多様な物理的形状に塗布できる。本発明で使用するための適切な表面は、空隙率、疎水性、親水性、着色性、強度、可撓性、透過度、伸び摩耗強さ、および引裂き抵抗などの所望の特性を提供する表面である。適切な表面の例は、例えば金属、プラスチック、セラミック、ガラスおよび/または複合材からなるまたはそれを含んでなる表面である。コーティングは、前記表面に直接塗布してもよく、または前処理またはコーティングが基材へのコーティングの接着を助けるようにデザインされた、前処理または被覆された表面に塗布してもよい。
【0073】
本発明の一実施態様では、本発明に従ったコーティングは、生物医学基材に被覆される。生物医学基材とは、一つには医学分野、および生細胞および生物系の研究を指す。これらの分野としては、診断的、治療的、および実験的人間医学、獣医学、および農学が挙げられる。医学分野の例としては、眼科学、整形外科学、および補綴学、免疫学、皮膚科学、薬理学、および外科学が挙げられ、研究分野の非制限的例としては、細胞生物学、微生物学、および化学が挙げられる。「生物医学」という用語はまた、それらの起源を問わず、(i)生体内で生物学的応答を仲介し、(ii)例えば免疫学的または薬理学的アッセイなどの生体外アッセイまたはその他のモデルで活性であり、または(iii)細胞または生物内に見られる化学物質および化学物質の組成物にも関する。「生物医学」という用語はまた、クロマトグラフィー、浸透作用、逆浸透作用、および濾過の工程を伴うような分離科学も指す。生物医学物品の例としては、研究道具、工業、および一般消費者向け用途が挙げられる。生物医学物品としては、分離用物品、埋め込み型物品、および眼科物品が挙げられる。眼科物品としては、ソフトおよびハードコンタクトレンズ、眼球内レンズ、および眼または周囲の組織に接触する鉗子、開創器、またはその他の外科用具が挙げられる。好ましい生物医学物品は、高度に酸素透過性のケイ素含有ヒドロゲルポリマーからできたソストコンタクトレンズである。分離用物品としては、フィルター、浸透および逆浸透膜、および透析膜、ならびに人工皮膚またはその他の膜などのバイオ表面が挙げられる。埋め込み型物品としては、カテーテル、および人工骨、関節、または軟骨片が挙げられる。物品は1つを超えるカテゴリーに属してもよく、例えば人工皮膚は多孔性で生物医学物品である。細胞培養用物品の例は、ガラスビーカー、プラスチックペトリ皿、およびその他の組織細胞培養または細胞培養工程で使用される器具である。細胞培養用物品の好ましい例は、固定化細胞バイオリアクターで使用されるシリコーンポリマーマトリックスであるバイオリアクター微小キャリアであり、そこでは微粒子微小キャリアの幾何学的配置、空隙率、および密度が性能を最適化するために制御されてもよい。理想的には、微小キャリアは化学または生物学的分解、高衝撃応力、機械的応力(撹拌)、および繰り返される蒸気または化学滅菌に対して抵抗性である。シリコーンポリマーに加えて、その他の材料もまた適切かもしれない。本発明はまた、食品産業、印刷産業、病院用品、おむつおよびその他のライナー、および親水性、湿潤性、または吸上物品が所望されるその他の分野にも応用してもよい。
【0074】
本発明はまた、本発明に従ったコーティング調合物を基剤に塗布してそれを硬化させて得られる場合により親水性の医療コーティングにも関する。本発明は、前記親水性コーティングを濡らすことで得られる滑性コーティングと、イオン性化合物もまた含んでなる親水性コーティング中での式(1)に記載の多官能重合性化合物の使用とにさらに関する。
【0075】
医療装置は、埋め込み型装置または体外装置であることができる。装置は短期の一時的使用または長期恒久的な移植であることができる。特定の実施態様では、適切な装置は、心調律障害、心不全、弁疾患、血管疾患、糖尿病、神経学的疾患および障害、整形外科学、神経外科、腫瘍学、眼科学、およびENT外科において、治療および/または診断を提供するために典型的に使用されるものである。
【0076】
適切な医療装置の例としては、限定されるものではないが、ステント、ステントグラフト、吻合コネクター、合成パッチ、リード、電極、針、ガイドワイヤ、カテーテル、センサー、手術用具、血管形成用バルーン、創傷排液、シャント、管材料、輸液スリーブ、尿道挿入物、ペレット、インプラント、血液酸素化装置、ポンプ、代用血管、血管アクセスポート、心臓弁、弁形成リング、縫合糸、止血鉗子、外科用ステープル、ペースメーカー、埋め込み型除細動器、神経刺激装置、整形外科装置、脳脊髄液シャント、埋め込み型薬物ポンプ、脊髄ケージ、人工椎間板、髄核置換装置、耳用チューブ、眼内レンズ、および最小侵襲手術で使用されるあらゆる管材料が挙げられる。
【0077】
本発明で使用するのに特に適した物品としては、カテーテル、ガイドワイヤ、ステント、シリンジ、金属およびプラスチックインプラント、コンタクトレンズ、医療チューブ、および体外装置などの医療装置または構成要素が挙げられる。
【0078】
コーティング調合物は、例えば浸漬塗装によって基材に塗布できる。その他の塗布方法としては、スプレー、薄め塗膜、蒸着沈着、ブラシ、ローラー、カーテン、スピンコート法、および当該技術分野で知られている他の方法が挙げられる。
【0079】
機能性層の厚さは、浸漬時間、ドローイング速度、コーティング調合物粘度、およびコーティングステップの数を変更することで制御してもよい。典型的に機能性層の厚さは、0.05〜300μm、好ましくは0.1〜200μmの範囲である。
【0080】
実施態様において、物品の表面は、提供されるコーティングの付着性を改善するために、例えばプラズマおよび/またはコロナ処理などの酸化、光酸化および/または極性化表面処理を施される。適切な条件については当該技術分野で知られている。
【0081】
本発明の調合物の塗布はあらゆる様式で実施してもよい。硬化条件は、光重合開始剤およびポリマーについて既知の硬化条件を基準にして定めることができ、または慣例的に判定できる。
【0082】
一般に硬化は、物品の機械的特性または別の特性に許容できない程の悪影響が及ばない限り、基材次第であらゆる適切な温度で実施してもよい。
【0083】
電磁放射の強度および波長は、選択された光重合開始剤を基準にして慣例的に選択できる。特にスペクトルのUV、可視またはIR部中の適切な波長を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】PEGDAで被覆されたプライマー層および機能性層があるPVC管材料を蒸留水に浸漬して得られた摩擦力。コーティングは50℃で0(四角)および2(三角)日間インキュベートした機能性コーティング調合物から調製された。塗りつぶしおよび白抜き四角/三角は、それぞれコーティングに対する1回目および2回目の試験を表す。
【図2】PEG(AM)を含有する調合物から調製された滑性コーティングに関するはるかにより好ましい結果を示す。PEG(AM)(×)およびPEG(AM)で被覆されたプライマー層および機能性層があるPVC管材料を蒸留水に浸漬して得られた摩擦力。PEG(AM)を含有するコーティングは、50℃で0(◇)2(■)、および7(▲)日間インキュベートした機能性コーティング調合物から調製された。
【0085】
以下の実施例によって本発明をさらに例示する。
【0086】
[実施例]
[1.多官能重合性化合物の合成]
[1.1 PEG−ジアクリレート;PEGDAの合成]
【化2】


[PEG4000DA]
PEG(150g、75mmol OH、フルカ(Fluka)からのBiochemika Ultra[95904]、#427345/1、OH−値:28.02mg KOH/g、499.5meq/kg、Mn:4004mol/g)を窒素雰囲気下で45℃で350mLの乾燥トルエン(メルク(Merck)プロアナリシス(pro analysis)、分子ふるい(molsieves)上(4Å)で乾燥)に溶解し、ラジカル安定剤としてイルガキュア1035(0.2g、約0.15w%、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))を添加した。PEG/トルエン溶液を一晩共沸蒸留し(50℃/70mbar)、凝縮トルエンを4Å分子ふるい上に導いた。OH滴定(分析参照)によりPEGの各バッチについてヒドロキシル値を正確に判定して、添加する塩化アクリロイル(メルク、合成用、5℃で保存してそのまま使用)の量を計算し、反応中の変換を判定することが重要である。
【0087】
トリエチルアミン(9.10グラム、90mmol、アルドリッチ(Aldrich)、99.5%、窒素雰囲気下で保存してそのまま使用)を反応混合物に添加し、それに続いて50mLの乾燥トルエンに溶解した塩化アクリロイル(8.15グラム、90mmol、(メルク、合成用、5℃で保存してそのまま使用)を1時間かけて滴下して添加した。使用する塩化アクリロイルおよびトリエチルアミンは、無色の液体であるべきである。反応混合物を窒素雰囲気下において45℃で2〜4時間撹拌した。反応中に温度を45℃に保ってPEGの結晶化を防止した。
【0088】
変換をチェックするために、反応混合物からサンプルを回収し、乾燥させて重水素化クロロホルムに溶解し、トリフルオロ無水酢酸(TFAA)を添加してH−NMRスペクトルを記録した。TFAAはあらゆる残留水酸基と反応して、H−NMR分光法(分析参照)を使用して容易に検出できるトリフルオロ酢酸エステルを形成する。変換が<98%(±0.5%)であれば、追加的な10mmolの塩化アクリロイルおよびトリエチルアミンを反応混合物に添加し、それをさらに1時間反応させる。
【0089】
変換が>98%(±0.5%)の時に、温かい溶液をすばやく濾過してトリエチルアミンHCl塩を除去した。およそ300mLのトルエンを真空下で(50℃、20mbar)除去した。残る溶液を加熱滴下漏斗内で45℃に保ち、1Lのジエチルエーテル(氷浴内で冷却、メルク)に滴下して添加した。エーテル懸濁液をさらに1時間冷却した後に、PEGジアクリレート生成物を濾過によって得た。生成物を減圧下(300mbar)において室温で一晩乾燥させた。収率:白色結晶として80〜90%。
【0090】
NMR:CDCl(TMS)中のPEG4000DAの300MHzH−NMRスペクトル。6.40(doublet,2H),6.15(multiplet,2H),5.8(doublet,2H),CH=CH−およびCH=CH−;4.3(triplet,4H),−(C=O)OCH−;3.75(triplet,4H),−(C=O)OCHCH−;3.65(multiplet,370H),−OCHCHO−。
【0091】
NMRパターンはPEG4000DAの形成を裏付けた。
【0092】
IRパターンはPEG4000DAの形成を裏付けた。
【0093】
PEG2000DAの合成および特性決定は、PEG4000DAの合成および特性決定と同様であった。PEG4000(M3500〜4500;フルカからのBiochemika Ultra)の代わりに、PEG2000(M1900〜2200;フルカからのBiochemika Ultra)を使用した。
【0094】
[1.2 PEG−ジアクリルアミド;PEG(AM)の合成]
【化3】


窒素下で、20g(13.3mmol)のPEG−ジアミン(M1500g/mol;アルドリッチ)を400mLのトルエン中で共沸蒸留し、約100mLのトルエンを除去した。溶液を窒素下で室温に冷却し、次に氷浴内で冷却した。50mLのジクロロメタン(メルク)を添加した。4.04g(39.7mmol)のトリエチルアミンを滴下して添加し、続いて3.48g(39.7mmol)の塩化アクリロイル(さらなる精製なしに使用した)を滴下して添加した。反応は窒素下で一晩進行した。溶液を氷浴内で冷却しNEt・HCl塩を沈殿させ、次に濾過した。1%(w/w)イルガノックス(Irganox)1035の添加後、濾液を真空下で濃縮した。濃縮物を75mLのジクロロメタンに溶解し、続いて1.5L氷冷ジエチルエーテル中で沈殿させた。生成物を濾過して収集し、続いてジエチルエーテルで洗浄した。
【0095】
H−NMR(CDCl、22℃)δ(TMS)=6.7ppm(2H、−NH−);6.2&6.1ppm(4H、CH=CH−);5.6ppm(2H、CH=CH−);3.6ppm(164H、−O−CH−CH−および−O−CH−CH−CH−);1.8ppm(4H、−O−CH−CH−CH−)。
【0096】
NMRスペクトルは、PEG(AM)の形成を裏付けた。1.8ppmであったそれぞれ6.2および6.1ppmでのNMRピークの統合から、約99%のPEG−ジアミンがPEG(AM)に変換したと推定された。
【0097】
IRスペクトルはPEG(AM)の形成を裏付けた。
【0098】
[1.3 PEG−ジメタクリルアミド;PEG(MAM)の合成]
【化4】


合成:PEG−ジアクリルアミドの合成と同様。
塩化アクリロイルの代わりに塩化メタクリロイル(アクロス(Acros))を使用した。
【0099】
H−NMR(CDCl、22℃)δ(TMS)=6.8ppm(2H、−NH−);5.7&5.3ppm(4H、CH=C);3.6ppm(164H、−O−CH−CH−および−O−CH−CH−CH−);1.95ppm(CHメタクリルアミド);1.8ppm(4H、−O−CH−CH−CH−)。
【0100】
NMRパターンはPEG(MAM)の形成を裏付けた。1.8ppmであったそれぞれ5.7および5.3ppmでのNMRピークの統合から、約90%のPEG−ジアミンがPEG(MAM)に変換したと推定された。
【0101】
IRパターンはPEG(MAM)の形成を裏付けた。
【0102】
[1.4 PTGL1000(T−H)の合成]
乾燥不活性雰囲気内で、トルエンジイソシアネート(TDIまたはT、アルドリッチ、95%純度、87.1g、0.5mol)、イルガノックス1035(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、0.58g、アクリル酸ヒドロキシエチル(HEAまたはH)に対して1重量%)およびヘキサン酸2−エチルスズ(II)(シグマ(Sigma)、95%純度、0.2g、0.5mol)を1リットルフラスコ内に入れて30分間撹拌した。氷浴を使用して反応混合物を0℃に冷却した。HEA(アルドリッチ、96%純度、58.1g、0.5mol)を30分間滴下して添加し、その後氷浴を除去して混合物が室温に暖まるまで置いた。3時間後に反応が完結した。ポリ(2−メチル−1,4−ブタンジオール)−alt−ポリ(テトラメチレングリコール)(PTGL、保土谷化学工業、M=1000g/mol、250g、0.25mol)を30分間滴下して添加した。続いて反応混合物を60℃に加熱し、18時間撹拌した時点で、GPC(HEAの完全な消費を示す)、IR(NCO関連バンドがないことを示す)、およびNCO滴定(0.02重量%未満のNCO含量)により反応が完結したことが示された。
【0103】
[2.調合物]
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
【表4】

【0108】
プライマー調合物のためならびにコーティング調合物のために、化合物を室温で撹拌しながら溶剤に溶解した。コーティング調合物を得るために、多官能重合性化合物を除く、上で指定される全化合物を含有する調合物を実験開始の前日に調製した。この調合物に多官能重合性化合物を溶解して実験を開始した(多官能重合性化合物は1時間以内に溶解した)。
【0109】
[3.方法]
[3.1.NMR測定]
核磁気共鳴(NMR)測定はVarian Inova 300分光計上で実施した。
【0110】
合成された多官能重合性化合物を重水素化クロロホルムに溶解させ、NMR実験を22℃で実施した。
【0111】
[3.2.FTIR測定]
Spectrumソフトウェアを使用して、パーキン・エルマー(Perkin Elmer)Spectrum One分光光度計を用いて、フーリエ変換赤外線(FTIR)測定を実施した。
【0112】
合成された多官能重合性化合物を臭化カリウム(ウバゾール(Uvasol);メルク)ピルの形態で分析した。
【0113】
[3.3.PETフィルム(実施例1および比較実験A)上のコーティング]
#12マイヤー・バー(MeyerBar)を使用して、表1に従ったプライマーコーティング調合物を120μmのPETホイル上に被覆し、およそ550nmの乾燥フィルム厚さを得た。空気中でDランプを使用して、プライマーコーティング調合物を1.10J/cmに硬化させた。引き続いて表3のコーティング調合物をプライマーに被覆した。コーティングを25℃で1分間放置して乾燥させ、空気中でDランプを使用して、1.10J/cmのUV単回パスに曝露した。得られた塗り厚は2μmであった。
【0114】
[3.4.浸漬コーティング(実施例3および4および比較実験C)]
ハーランドPCX塗布機によって浸漬コーティングを実施した。インターナショナル・ライト(International Light)検出器SED005#989を装着したハーランドUVR335(IL 1400としてもまた知られている)によってランプ強度を測定した。入力光学素子:W#11521、フィルターwbs320#27794。
【0115】
市販される医療等級PVC管材料(14フレンチ;Raumedic)を使用した。浸漬中にコーティング調合物が管材料内側に入り混むのを防止するために、管材料の下端部を密封した。管材料にガイドワイヤを挿入して管材料を固定し、それを塗布機のホルダーに取り付けた。96%(w/v)水性エタノール溶液(メルク)に浸漬したレンズティシュ(ワットマン(Whatman))で管材料を清潔にした。続いて塗布機を使用してアセンブリーをプライマーおよびトップコート調合物に浸漬した。ランプの強度は平均して60mW/cmであった。ランプの強度を測定するために、インターネットwww.intl−light.comで入手できるインターナショナル・ライトの取扱説明書を応用した。管材料をプライマー調合物に10秒間浸漬し、0.3cm/秒の速度で引き上げて、総線量0.9J/cmで15秒間硬化させた。次に管材料をトップコート調合物に10秒間浸漬し、1.5cm/秒の速度で引き上げて総線量21.6J/cmで360秒間硬化させた。室温で一晩乾燥後、コーティングの潤滑性、耐摩耗性、およびドライアウト時間を判定した。
【0116】
[3.5.コーティングの潤滑性および耐摩耗性の判定(実施例3および4および比較実験C)]
ハーランドFTS 5000摩擦試験機を使用した。ハーランド・メディカル・システムズ(Harland Medical Systems)からの摩擦試験機パッド、P/N102692、FTS5000摩擦試験機パッド、0.125*0.5*0.125、60デュロメーターを使用した。
【0117】
管材料にガイドワイヤを挿入して管材料を固定し、それを摩擦試験機のホルダーに取り付けた。試験を湿潤状態で行う場合は、クランプパッドが浸されるようにクランプを容器上に配置した。(被覆された)管材料もまた水に浸かるように、ホルダーを下げた。1分間浸漬した後、クランプを閉じて管材料を300gのクランプ力で固定した。ホルダーを10cm引き上げて、引き上げ中の摩擦力を測定した。次のパラメーターを適用した:25回の試験サイクル、牽引速度1.0cm/秒、加速時間2.0秒。化合物がコーティングから溶出した場合、各試験サイクル前に摩擦試験機のクランプパッドを清潔にした。
【0118】
ドライアウト時間は、時間の関数として潤滑性(gでの摩擦として)を測定して判定できる。ドライアウト時間を測定する試験では、300秒の時間間隔で5回の試験サイクルを適用した。その他の全てのパラメーターは、潤滑性試験と同じであった。
【0119】
[3.6.安定性試験(実施例1および比較実験A):摩擦抵抗性に対する多官能重合性化合物の効果]
実施例1および比較実験Aのコーティング調合物の安定性を試験するために、次の試験を実施した。
【0120】
3.3.に従って調製したフィルムを標準リン酸緩衝液溶液(「PBS緩衝液」)中において45℃で110時間インキュベートした。徐冷後に1本の人差し指の指先を使用し5滴の水を使用して、摩擦抵抗性を即座にチェックした。結果を表6に示す。
【0121】
[3.7.安定性試験(実施例2および比較実験B):コーティング調合物のインキュベーションに際する滑性コーティングの潤滑性に対する多官能重合性化合物の効果]
滑性コーティングを調製するのに使用したコーティング調合物の安定性を試験するために、次の試験を実施した。
【0122】
それぞれPEGDAおよびPEG(AM)を含んでなる表5に従ったコーティング調合物を密閉容器内において、50℃で0および2日間(PEGDA)および0、2および7日間(PEG(AM))インキュベートした。3.4で述べられている方法に従って、得られたコーティング調合物で管材料を被覆した。
【0123】
PEGDAを含んでなるコーティング調合物で被覆された管材料を順次2回試験した(カテーテルを水に浸けたまま)。1回目の試験の25サイクル後、25サイクルからなる第2回目の試験前に、被覆された管材料を10分間水中に保った。結果を図1に示す。
【0124】
PEG(AM)を含んでなるコーティング調合物で被覆された管材料は、1回だけ試験した。結果を図2に示す。
【0125】
[4.結果]
[4.1.実施例1および比較実験A:摩擦試験によって判定されたコーティングの安定性]
【0126】
【表5】

【0127】
表5は、PEG(AM)、イルガキュア2959、およびエタノールを含有するコーティング調合物から調製された、実施例1に従ったコーティングが、PEG(AM)の代わりにPEGDAを含有する対応するコーティングよりも摩擦に対してはるかにより安定していることを示す。
【0128】
[4.2.実施例2および3および比較実験B]
[4.2 1.コーティングの外観]
PEG(AM)(実施例2)、PEG(MAM)(実施例3)、およびPEGDA(比較実験B)を含有する新鮮な調合物を硬化させると、透明なコーティングが得られた。PEGDAを含有するコーティング調合物を閉じられた容器内において50℃でインキュベートすると、得られたコーティングは、ますます不透明になる。PEG(AM)およびPEG(MAM)を含有する調合物からできたコーティングは、調合物を50℃でインキュベートした際に透明なままであった。これはコーティング調合物の改善された安定性を示す。
【0129】
[4.3.2.潤滑性および耐摩耗性]
図1(比較実験B)は、滑性コーティングを調製するのに使用されるPEGDAを含んでなるコーティング調合物を50℃で2日間(塗りつぶし三角)インキュベートした後に、摩擦力(摩擦力が高いほど潤滑性は低い)で表わされる潤滑性が顕著に低下することを示す。40〜80gの範囲の摩擦力が測定された。実際に、PEGDA含有コーティング調合物から調製されたコーティングでは、第1回目の試験シリーズの最初のサイクル中に、コーティングの一部が摩擦試験機のクランプパッドによって除去された。その結果、コーティングは破損した。したがって2日間のインキュベーション後の試験シリーズの2回目の試験では、70〜140gの範囲のなおもより高い摩擦力(白抜き三角)という結果になった。これは新鮮なコーティング調合物(0日間インキュベーション)(塗りつぶしおよび白抜き四角)から調製されたコーティングでは観察されなかった。およそ10gの摩擦力が双方の試験シリーズで測定された。
【0130】
図2(実施例2)は、PEG(AM)を含有する調合物から調製された滑性コーティングについてはるかにより好ましい結果を示す。2または7日間インキュベートしたコーティング調合物から調製されたコーティングでさえ、依然として高潤滑性(低摩擦力)を特徴とし、全ての測定で摩擦力は10g未満であった。全てのコーティングは摩擦試験中に無傷のままであった。調合物のインキュベーションは、得られたコーティングの耐摩耗性に影響を及ぼさなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングを含んでなり、そのコーティングが少なくとも2つの層を含んでなり、その内の内層が支持ポリマーを含んでなる支持網状組織を含んでなるプライマー層であり、外層が(A)式(1)、
【化1】


(式中、
Gは少なくともn個の官能基を有する多官能性化合物の残基であり、Gは好ましくは親水性であり、より好ましくはポリエーテル、ポリウレタン、ポリエポキシド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリオキサゾリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリペプチド、およびセルロースまたはデンプンなどの多糖類、または上のあらゆる組み合わせよりなる群から選択され、Gはより好ましくは少なくとも1つのポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールブロックを含んでなるポリマーであり;各Rおよび各Rは独立して水素を表し、または場合により1つ以上のヘテロ原子を含有する置換および非置換炭化水素から選択される基を表し、好ましくは水素またはC1〜C20炭化水素、より好ましくは水素またはC1〜C20アルキルであり;nは少なくとも2、好ましくは2〜100、より好ましくは2〜8、特に2または3の値を有する整数である)に記載の少なくとも1つの多官能性重合性化合物を含んでなる機能性層である、特に医療装置である物品。
【請求項2】
多官能性重合性化合物(A)が500〜2000g/molの間の数平均分子量(Mn)を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
機能性層が、機能性ポリマー(C)をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
−プライマー層中の支持ポリマー(a)の濃度がプライマー層の総乾燥重量を基準にして10〜100重量%、好ましくは50〜100重量%の範囲内であり、
−機能性層中の式(1)に記載の多官能性重合性化合物(A)の濃度が、機能性層の総乾燥重量を基準にして1〜100%、好ましくは5〜90%、より好ましくは8〜60%の範囲内であり、
−機能性層中の機能性ポリマー(C)の濃度が、機能性層の総乾燥重量を基準にして0〜99重量%、好ましくは20〜95重量%、より好ましくは40〜95重量%の範囲内である、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
乾燥プライマー層が0.1〜20μm、好ましくは0.2〜7μm、より好ましくは0.3〜5μm、なおもより好ましくは0.5〜3μmの厚さを有し、機能性層が少なくとも0.1μmの厚さを有し、コーティングの総乾燥厚さが好ましくは100μm以下、特に50μm以下、より特に35μm以下、より好ましくは15μm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
カテーテル、内視鏡および喉頭鏡、栄養補給または排液または気管内用途のためのチューブ、ガイドワイヤ、コンドーム、(例えば手袋、創傷包帯、コンタクトレンズ、インプラント、体外血液導管のための)バリアコーティング、(例えば透析、血液フィルター、循環補助のための装置のための)膜、食材のための包装、かみそりの刃、漁網、ワイヤリングのための導管、内部コーティングを有する送水管、ウォータースライド、スポーツ用品、化粧品用添加剤、型剥離剤、および釣り糸とネットよりなる群から選択され、好ましくはカテーテルよりなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
(a)それらの共重合体を含むポリエーテルおよびポリチオエーテルよりなる群から選択される、調合物の総重量を基準にして総濃度1〜60重量%、好ましくは1〜20重量%、より好ましくは2〜10重量%、最も好ましくは3〜8重量%の支持ポリマー、
(b)構成要素(a)の重量を基準として好ましくは総濃度1〜10重量%、より好ましくは2〜6重量%、最も好ましくは3〜5重量%のノリッシュIタイプ光重合開始剤、および
少なくとも68重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、なおもより好ましくは少なくとも85重量%の溶剤を含んでなり、構成要素(a)および(b)が溶解または分散している、プライマー層がある物品を提供するためのプライマーコーティング調合物。
【請求項8】
支持ポリマーが、少なくとも(a−1)ポリエーテルまたはポリチオエーテルと、(a−2)少なくとも2個のイソシアネートを含んでなる部分と、(a−3)ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート、ポリヒドロキシアルキルアクリレート、およびポリヒドロキシメタクリレートとから構成される共重合体よりなる群から選択される、請求項7に記載のプライマーコーティング調合物または請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
(a−1)が(PEGおよびPPGおよびそれらの組み合わせなどの)ポリアルキレングリコールおよびポリテトラヒドロフラン、好ましくはポリ(−メチル−1,4−ブタンジオール)alt(テトラメチレングリコール)から選択され、(a−2)がトルエンジイソシアネートおよび4−シクロヘキシルジイソシアネートから選択され、(a−3)がヒドロキシエチルアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートから選択される、請求項8に記載のプライマーコーティング調合物または物品。
【請求項10】
支持ポリマーが300〜20,000、好ましくは400〜10,000、より好ましくは500〜5,000、なおもより好ましくは750〜3,000g/molの範囲内である数平均分子量を有する、請求項8または9に記載のプライマーコーティング調合物または物品。
【請求項11】
有機溶剤、好ましくはアルコール、より好ましくはメタノールおよび/またはエタノールを含んでなる、請求項7〜10のいずれか一項に記載のプライマーコーティング調合物。
【請求項12】
(A)調合物の総重量を基準にして0.5〜60重量%、特に0.5〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、なおもより好ましくは1〜5重量%の総濃度の式(1)に記載の多官能性重合性化合物、
(B)(A)および(C)の総重量を基準にして好ましくは0.1〜10重量%の総濃度の光重合開始剤、
(C)場合により調合物の総重量を基準にして0〜60重量%、特に0.5〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、なおもより好ましくは1〜5重量%の総濃度の機能性ポリマー、および
少なくとも68重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、なおもより好ましくは少なくとも85重量%の溶剤を含んでなり、構成要素A)、B)、および場合により(C)が溶解または分散している、物品を機能性層でコーティングするための機能性コーティング調合物。
【請求項13】
(A)および(C)の総重量を基準にして好ましくは0.1〜10重量%の濃度の少なくとも1つの界面活性剤(D)をさらに含んでなる、請求項12に記載の機能性コーティング調合物。
【請求項14】
請求項7〜11のいずれか一項に記載のプライマーコーティング調合物、および請求項12または13に記載の機能性コーティング調合物を含んでなる、プライマー層および機能性層を物品に提供するためのコーティングシステム。
【請求項15】
機能性ポリマー(C)が、例えばポリビニルピロリドン(PVP)などのポリ(ラクタム)と、ポリウレタンと、アクリル酸およびメタクリル酸のホモポリマーおよび共重合体と、ポリビニルアルコールと、ポリビニルエーテルと、無水マレイン酸ベースの共重合体と、ポリエステルと、ビニルアミンと、ポリエチレンイミンと、ポリエチレンオキシドと、ポリ(カルボン酸)と、ポリアミドと、ポリ酸無水物と、ポリホスファゼンと、例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系材料と、ヘパリンと、デキストランと、例えばコラーゲン、線維素、およびエラスチンなどのポリペプチドと、例えばキトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ゼラチン、およびキチンなどの多糖類と、例えばポリラクチド、ポリグリコリド、およびポリカプロラクトンなどのポリエステルと、例えばコラーゲン、アルブミン、オリゴペプチド、ポリペプチド、短鎖ペプチド、タンパク質、およびオリゴヌクレオチドなどのポリペプチドとよりなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品または請求項12または13に記載の調合物。
【請求項16】
機能性ポリマー(C)の重量平均分子量が20,000〜10,000,000g/mol、好ましくは250,000g/mol〜3,000,000g/mol、より好ましくは360,000〜1,500000g/molの範囲内である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品または請求項12または13に記載の調合物。
【請求項17】
請求項7〜11のいずれか一項に記載のプライマーコーティング調合物、および請求項12または13に記載の機能性コーティング調合物を含んでなるアセンブリー。
【請求項18】
−請求項7〜11のいずれか一項に記載のプライマーコーティング調合物を表面に塗布するステップと、
−支持ポリマーを硬化させるステップと、
−請求項12または13に記載の機能性コーティング調合物をプライマーコーティング調合物が提供された表面に塗布するステップと、
−機能性コーティング調合物を硬化させるステップ
を含んでなるコーティングを調製する方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法によって得られる医療コーティング。
【請求項20】
請求項12または13に記載の機能性コーティング調合物を硬化させて得られる親水性コーティング。
【請求項21】
湿潤性流体を塗布して請求項20に記載の親水性コーティングを濡らして得られる滑性コーティング。
【請求項22】
医療、親水性または滑性コーティングにおける式(1)に記載の多官能性重合性化合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−503436(P2010−503436A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527742(P2009−527742)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007984
【国際公開番号】WO2008/031595
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】