説明

被覆粒子含有組成物及びその製造方法

【課題】被覆粒子の被覆をレトルト工程でも安定にする。
【解決手段】(工程1)芯材を、常温において水難溶性を示す物質により造粒する工程、(工程2)上記工程1で得られた粒子を、油脂により被覆する工程、(工程3)上記工程2で得られた被覆粒子と、生全卵又は生卵黄とを混合する工程、及び(工程4)上記工程3で得られた混合物を加熱する工程を含むことを特徴とする、被覆粒子含有組成物の製造方法、ならびにその製造方法により得られる組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆粒子含有組成物の製造方法、この製造方法により得られる被覆粒子含有組成物、及びこの被覆粒子含有組成物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飼料、医薬品、医薬部外品、化粧品などの各分野において、原材料として使用される造粒粒子が外気や水分と接触したり又は相互に接触したりすることなどによって劣化することを防止するために、あるいは流動性の改善、徐放性、マスキング性、溶出防止性、耐酸性などを付与するために、造粒粒子を油脂によって被覆することが広く行われている。このような油脂による被覆方法として、造粒粒子に液状の油脂を噴霧して被覆する方法や、芯材と特定融点以上の硬化油粉末とを一緒に高速で撹拌して接触・衝突させることによって芯材の全周囲表面に油脂を固着させる方法などが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、芯材として50μm以下の微粉末を有する場合であっても、溶出防止性等に優れた被覆性能を容易に付与することができ、しかも生産効率に優れる被覆粒状組成物の製造方法及び該方法により得られた組成物が記載されている。また、特許文献2には、芯材として粒径2mm以下の水溶性ビタミン類の体内吸収性を改善した二重被覆造粒物の製造方法及び該方法により得られた組成物が記載されている。
【特許文献1】特開平11−308985号公報
【特許文献2】特開2004−123636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者は、特許文献1の方法で得られた被覆粒状組成物では、水分量が20%以上になると、被覆粒子の被覆性能が低下し、さらにレトルト殺菌などで加熱すると、被覆性能がいっそう低下することを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、生卵黄を併用することで、水分量が多い組成物中の被覆粒子の被覆性能が高まり、さらに加熱処理などの高温下でも保持されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(工程1)芯材を、常温において水難溶性を示す物質により、造粒する工程、
(工程2)上記工程1で得られた粒子を油脂により被覆する工程、及び
(工程3)上記工程2で得られた被覆粒子と、生全卵又は生卵黄とを混合する工程
を含むことを特徴とする、被覆粒子含有組成物の製造方法;(工程4)工程3で得られた混合物を加熱する工程を含む上記製造方法;これらの製造方法により得られる被覆粒子含有組成物;ならびにこの被覆粒子含有組成物の用途に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の被覆粒子含有組成物において、被覆粒子の被覆は、良好な被覆性能を有し、優れた徐放性やマスキング性などを粒子に付与する。
また、芯材に含まれる機能性成分が苦味、渋味、又はえぐ味を有している場合、従来は水分含量が多い組成物中では被覆性能が低下して、機能性成分が溶出されるため、苦味、渋味、又はえぐ味を抑えるためには配合量を減らさざるを得なかったところ、本発明の被覆粒子含有組成物ではこれらの味が良好にマスキングされるので、機能性成分の含有量を増加することができ、少量の組成物摂取で機能性成分の持つ有用な効果を期待できる。ここでいう機能性成分の持つ有用な効果とは、例えば、カテキンなどのポリフェノール類が発揮する健康増進効果、すなわち、発ガン予防、老化防止、血中LDL低下作用、血圧上昇抑制、整腸作用、殺菌・抗菌作用、脱臭作用などが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の製造方法では、まず、芯材を、常温において水難溶性を示す物質により、造粒する(工程1)。この工程1に用いる芯材は粉末状又は粒状であることが好ましく、その形状は球形又は不定形などのいずれであってもよい。芯材の粒径(直径)は特に制限されない。
【0008】
上記芯材としては、各種の食品、飼料、医薬品、医薬部外品、及び化粧品などに通常使用される物質であれば、特に制限されない。好ましくは、苦味、渋味、又はえぐ味などを有する機能性成分である。具体的には、ポリフェノール類、カロテノイド類、核酸、ヘム鉄、及び無機鉄などが例示される。これらを1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。常温で液状のエキス類などについては、凍結乾燥やスプレー乾燥などにより粉末としたものを用いることができる。
【0009】
上記ポリフェノール類として、フラボン、フラボノール、フラバノン、イソフラボン、アントシアニン、フラバノールなどのフラボノイド類、その他の非フラボノイド類、及びこれらの誘導体、重合体などのいずれをも使用できる。これら化合物を含有する植物、例えば、緑茶、烏龍茶、紅茶、ほうじ茶などの茶、リンゴ果肉、ブドウ種子、ヒマワリ種子、米ぬか、及びこれら植物からの抽出物などを使用してもよい。ポリフェノール類の具体例として、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、及びエピガロカテキン、ならびにこれらの誘導体、重合体、及び立体異性体から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0010】
上記の工程1に用いる芯材を造粒するために使用される、常温において水難溶性を示す物質としては、油脂、ワックス類などの脂溶性物質;ツェイン、グルテンなどのアルコール可溶性蛋白質;プルラン、ゼラチン、キサンタンガム、アラビアガム、カゼインナトリウムなどの高濃度では水難溶性を示す増粘安定剤;寒天、ジェランガム、カラギーナンなどの常温で水難溶性を示すゲル化剤などが例示される。好ましくはツェインである。これら水難溶性を示す物質を、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
上記の水難溶性を示す物質は、場合により、常温もしくは加温しながら、適切な溶媒に撹拌して溶解させ、コーティング液とし、このコーティング液を工程1で芯材にノズル又はアトマイザーなどの公知の噴霧器により吹き付け、造粒してもよい。このときの溶媒として、水、アルコール溶液、酢酸などの酸性溶液などが例示される。使用量は、水難溶性を示す物質が溶解すればよく、特に限定されないが、通常、水難溶性を示す物質が5〜50重量%となるように調製したコーティング液を用いる。
また、被膜性能向上のために可塑剤を用いることが望ましい。可塑剤として、中鎖トリグリセリド、グリセリン、遊離脂肪酸、蒸留酢酸モノグリセリドなどが例示される。可塑剤の使用量は、通常、コーティング液中に0.1〜20重量%とし、好ましくは0.5〜10重量%とする。
【0011】
工程1において芯材を常温で水難溶性を示す物質により造粒するには、例えば、医薬品や食品の分野などにおいて通常使用される、流動層造粒機、流動層造粒機に撹拌羽根を取り付けた撹拌型流動層造粒機、転動板を備えた転動型流動層造粒機、ワースター型流動層コーティング機などの流動層型造粒機、粉末を撹拌しその中にバインダーを添加して顆粒状にする撹拌型造粒機、粉末をバインダーと共に高圧で押し出す押出し造粒機などを用いることができる。
上記造粒の条件は、特に限定されず、例えば、流動層造粒機を用いて行う場合、公知の条件で行うことができる。好ましくは、芯材を常温で水難溶性を示す物質で被覆した後の粒子のほとんどが粒径(直径)50μmを超えるように、好ましくは75〜500μm、特に好ましくは100〜250μmとなるような条件で、且つ芯材と、常温で水難溶性を示す物質との配合割合を、前記粒径となるように適宜決定して行うのが望ましい。
造粒に際しては、必要に応じてバインダーを添加することもできる。バインダーとしては、デキストリン、乳糖、コーンスターチ、粉糖などの糖類;脱脂粉乳、大豆蛋白などの蛋白質;セルロース粉末などが挙げられ、その使用量は、公知の方法に基づいて適宜決定することができ、例えば、5〜90重量%である。少量の水やアルコールを加えて溶解させながら造粒することが成形性の点から好ましい。さらに、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として、抗酸化剤や、着色料、香料等を配合してもよい。
【0012】
次に、上記工程1で得られた粒子を油脂により被覆する(工程2)。
【0013】
工程2に用いる油脂としては、牛脂、豚脂、魚油などの動物性油脂;ナタネ油、大豆油、パーム油、ヤシ油、エゴマ油、ゴマ油、コメ油、アマニ油などの植物性油脂などが例示される。これらの油脂は、硬化、分別、エステル交換などの油脂加工を行った精製脱臭油であってもよい。また、油脂の形態は後述する被覆方法に応じて選択でき、液状、半固形状、固体状のいずれであってもよい。
【0014】
工程2において、工程1により得られた粒子を油脂により被覆する方法としては、特に限定されないが、工程1により得られた粒子に、融点40℃以上の硬化油粉末を、接触・衝突させて、上記粒子の周囲表面に、好ましくは全周囲表面に上記油脂を固着させて、上記粒子を被覆する方法A;及び工程1により得られた粒子に、流動層内で油脂を液状噴霧し、上記粒子の周囲表面、好ましくは全周囲表面を上記油脂で被覆する方法Bなどが例示される。均一な被覆層が得られる点から方法Aが好ましい。
【0015】
上記方法Aに用いる融点40℃以上の硬化油粉末として、牛脂、豚脂、魚油などの動物性油脂;ナタネ油、大豆油、パーム油、ヤシ油、エゴマ油、ゴマ油、コメ油、アマニ油などの植物性油脂が挙げられ、これらの油脂を水素添加による硬化処理に付し、融点を40℃以上にしたものが使用できる。さらに、分別、エステル交換等の油脂加工を行った精製脱臭油などのもので融点が40℃以上のものであってもかまわない。また、前記の融点40℃以上の油脂は、その使用する場合の形態として、液状、半固形状、固体状のいずれであってもよく、被覆方法により適宜選択することができる。好ましくは、ナタネ極度硬化油である。使用形態としては、取り扱い性から粉末固体状もしくは液状が好ましい。これらの油脂は1種単独で使用しても、2種以上を配合して使用してもよい。
これら硬化油粉末の粒径(直径)は、芯材の粒径が50μm以下の芯材を造粒する場合は、0.1〜50μm程度、特に1〜10μmが好ましく、芯材の粒径が50〜2000μmの芯材を造粒する場合は、0.01〜500μm程度、特に0.1〜1μmが好ましい。
【0016】
方法Aにおいて、工程1により得られた粒子に、融点40℃以上の硬化油粉末を接触・衝突させる際の両者の混合比は、前記粒子の粒径と前記硬化油粉末の粒径との粒径比を考慮して適宜決定することができる。例えば、粒子:硬化油粉末が重量比で1:0.01〜5、特に1:0.05〜1の範囲から選択するのが好ましい。
方法Aにおいて、粒子と硬化油粉末との接触・衝突は、例えば、高能率粉体混合装置等の公知の粉体を接触させる装置を用いて行うことができる。接触・衝突の条件は、融点40℃以上の硬化油粉末が溶融しない40℃未満の温度において、接触・衝突により硬化油粉末の表面が溶け、粒子外表面に溶着し固着する条件であれば特に限定されない。
【0017】
前記方法Bに用いる油脂としては、前述の動物性油脂、植物性油脂などが例示され、油脂が半固形状又は固形状の場合には、液状にして使用することができる。方法Bにおいて、工程1により得られた粒子に、流動層内で油脂を液状噴霧するには、例えば、撹拌機などで粒子を撹拌させておき、液状の油脂をノズル、アトマイザー等を使用して噴霧する公知の方法等で行うことができる。また、造粒後の冷却については、特に限定されないが、溶融した油脂が、冷却固化すればよく、冷風などにより冷却することができる。
【0018】
次に、前記工程2で得られた被覆粒子と、生全卵又は生卵黄とを混合する(工程3)。
【0019】
工程3では、鳥類、特に家禽の生全卵又は生卵黄が使用でき、具体的にはニワトリ、ウズラ、アヒル、カモ、シチメンチョウ、キジ、又はダチョウなどの生全卵又は生卵黄が使用できる。本発明ではこれらを1種単独で使用しても2種以上併用してもよい。好ましくはニワトリの生全卵又は生卵黄、特に生卵黄である。
【0020】
工程3において、前記工程2で得られた被覆粒子と、生全卵又は生卵黄との混合比は、特に制限されないが、生卵黄100重量部に対して、被覆粒子の被覆性能が良好な安定性を示す点から、被覆粒子を、0.1〜30重量部、好ましくは1〜25重量部、より好ましくは5〜20重量部混合することができる。
全卵については、全卵中の卵黄の量が上記の卵黄について示された範囲内に入るような量で混合させればよい。
工程3において、前記工程2で得られた被覆粒子と、生全卵又は生卵黄との混合は、被覆粒子の被覆性能保持の点から、穏やかな条件下で行われるのが望ましい。通常は、常温において、被覆粒子を、好ましくは少量ずつ、生全卵又は生卵黄にゆっくりと加えていき、遅い回転速度で攪拌又は振とうさせて混合させる。
【0021】
次に、前記工程3で得られた被覆粒子と生全卵又は生卵黄との混合物を加熱する(工程4)。
この加熱の際の条件は特に制限されず、加熱の目的、例えば、調理、又は殺菌若しくは滅菌などの目的に応じて適宜設定され得る。例えば、低温長時間殺菌では約62〜約65℃、約30分間、高温短時間殺菌では約72〜約75℃、約15秒間、超高温殺菌では約120〜約140℃、約0.5〜4秒間若しくは約130〜約140℃、約0.5〜4秒間、レトルト加熱殺菌では約115℃以上、約15分間以上若しくは約120℃以上、約4分間以上、それぞれ処理される。
【0022】
本発明はまた前記製造方法により得られる被覆粒子含有組成物にも関する。本発明の被覆粒子含有組成物として、前記工程1〜3を含む製造方法により得られる、(1)芯材と、この芯材の表面を被覆する常温において水難溶性を示す物質層と、この物質層の外側を被覆する油脂層とを備えている被覆粒子、及び(2)生全卵又は生卵黄、を含む被覆粒子含有組成物が挙げられる。
また、本発明の被覆粒子含有組成物として、前記工程1〜4を含む製造方法により得られる、(1)芯材と、この芯材の表面を被覆する常温において水難溶性を示す物質層と、この物質層の外側を被覆する油脂層とを備えている被覆粒子、及び(2)全卵又は卵黄、を含む被覆粒子含有組成物も挙げられる。
上記被覆粒子の粒径は、特に制限されないが、優れた被覆性能を有するために75〜500μmが好ましい。
【0023】
本発明の被覆粒子含有組成物は、本発明の効果を損なわない限り、添加剤、例えば、油脂、特に多価不飽和脂肪酸の他に、糖類、デンプン、デキストリン、調味料、甘味料、pH調整剤、増粘剤、香料、色素、又は乳化剤などを含有してもよい。
【0024】
本発明の被覆粒子含有組成物は多価不飽和脂肪酸を含むことができる。この被覆粒子含有組成物は、予め多価不飽和脂肪酸を添加した生全卵又は生卵黄を使用して、前述の方法に従って調製することができる。また、このとき、従来行われてきた特別な乳化工程を経る必要もなくなる。
上記多価不飽和脂肪酸として、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、アラキドン酸、リノール酸、α−リノレン酸、及びγ−リノレン酸などが例示される。本発明では、多価不飽和脂肪酸を豊富に含む油脂として魚油、好ましくは精製魚油を使用することができる。
ここで、カテキンなどのポリフェノール類を芯材として使用すると、多価不飽和脂肪酸の経時酸化が防止され、双方の含有量が高い組成物でありながら、不快な味や不快臭の少ない長期保存が可能な被覆粒子含有組成物を得られる。
【0025】
本発明の被覆粒子含有組成物は、食品、医薬品、又は化粧品などとして使用できる。特に、加熱食品、とりわけレトルト食品やカップ容器入りのデザートなどの加熱調理済容器包装食品として使用できる。
本発明の被覆粒子含有組成物では、水分を多く含有する場合でも、被覆粒子の被覆性能は安定している。
被覆粒子含有組成物の水分量は、特に限定されないが、好ましくは20〜100重量%、より好ましくは50〜95重量%、特に好ましくは70〜90重量%である。
上記の水分量が多い組成物の例として、液状、ゲル状、ゾル状、及びこれらの混合物である食品及び医薬品が挙げられ、その中に固形物を含んでもよい。例えば、ミルクセーキ、プリン、茶碗蒸、及びゼリーなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
なお、本発明では、食品は動物用飼料、健康食品、及び機能性食品などを包含し、医薬品は医薬部外品などを包含する。
【0026】
本発明の被覆粒子含有組成物は、水分量が多いゲル状、ゾル状の組成物でありながら、機能性成分を多く含むことができるため、高齢者及び/又は咀嚼嚥下困難者用の食品又は医薬品として好適に使用できる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。本発明は実施例によって限定されるものではない。なお%は特記しない限り重量%を示す。
【0028】
製造例1 被覆粒子の製造
カテキン粉末(商品名「ポリフェノン70A」三井農林(株)製)500gを、結晶セルロース100g、デキストリン50gと共に流動層造粒機(商品名「フローコーターミニ」、フロイント産業(株)製)に仕込み、コーティング液255g〔ツェイン(商品名「昭和ツェインDP」昭和産業(株)製)30.0g、レシチン25.0g、中鎖脂肪酸(MCTオイル)9.5gを70%アルコール水溶液190.5gに溶解して調製した〕を吹き付け、造粒した。造粒条件は、給気温度を70℃、製品温度を35℃となるように給気量、送液量を調整した。次いで、得られた造粒物を319.5g用い、平均粒径3×10−3mmのナタネ極度硬化油微粉末180gを添加し、撹拌型造粒機(商品名「OMD−3型」奈良機械(株)製)にて、機内温度25℃、窒素ガス封入下で主軸回転数1,000rpm、副軸回転数2,000rpmの条件で、20分間撹拌して被覆粒子を得た。得られた粒子の粒径は1.1mm、収率は92%であった。
【0029】
実施例1
表1に示したレトルトプリン中の最終配合濃度になるように、水に生卵黄及び牛乳を加えて混合し、そこに紅茶エキス、デンプン、ゲル化剤(商品名「タカラゲンALX−B3」(株)タカラゲン製)、及び上白糖の一部を加えて混合し、さらに上記製造例1で得た被覆カテキン粒子及び上白糖の残量を加えて混合し、80℃まで加温して分散させて、プリン液を調製した。このプリン液を容器に充填して、121℃、20分間のレトルト殺菌を行った後、冷却し、レトルトプリンを製造した。
【0030】
実施例2
生卵黄の代わりに生全卵を使用した以外は、実施例1と同様にしてレトルトプリンを製造した。
【0031】
実施例3
予め生卵黄に魚油(商品名「ハイパワー27DHAオイル」ベルリッチ製)を混合させてから用いた以外は、実施例1と同様にしてレトルトプリンを製造した。
【0032】
比較例1
上記製造例1で得た被覆粒子の代わりに被覆していないカテキン粉末(商品名「ポリフェノン70A」三井農林(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてレトルトプリンを製造した。
【0033】
比較例2及び3
卵黄の代わりに、乾燥卵黄(「乾燥卵黄D−1」キューピー(株)製)又は卵黄油(「ヨークオイルHF」キューピー(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様にしてレトルトプリンを製造した。
【0034】
比較例4
生卵黄を使用しない以外は、実施例1と同様にしてレトルトプリンを製造した。
【0035】
比較例5
上記製造例1で得た被覆粒子と上白糖とデンプンとを混合したものと、生卵黄と牛乳と紅茶エキスとを混合したものを、それぞれ別々に、121℃、20分間、レトルト殺菌した。次いで、両者を混合して、そこにゲル化剤(商品名「タカラゲンALX」、(株)タカラゲン製)を加えて混合し、80℃まで加温して分散させて、プリン液を得た。このプリン液を容器に充填して冷却した。上記各原料は表1に示したレトルトプリン中の最終配合濃度になるように使用した。
【0036】
官能試験
上記で製造したレトルトプリンについて、風味の官能評価を行った。官能評価は、10名のパネラー(男性5名、女性5名)にそれぞれのレトルトプリンを食してもらい、苦味について、次の評価基準に従い点数化し、その平均点で示した。
評価基準
4点:苦味を感じない
3点:やや苦味を感じる
2点:苦味を感じる
1点:非常に強い苦味を感じる
なお、パネラーはレトルトプリンを食する前にうがいを行った。
結果を表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
上記の結果から、生全卵又は生卵黄の使用によりカテキンの苦味が抑えられることが認められる。特に、実施例1と比較例1とを比較すると、比較例1ではカテキン量が少ないにもかかわらず苦味が生卵黄によって抑えられなかったことから、実施例1で生卵黄が苦味を抑えたのは、生卵黄が被覆粒子のレトルト加熱に対する安定性を高めたためであることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(工程1)芯材を、常温において水難溶性を示す物質により、造粒する工程、
(工程2)工程1で得られた粒子を油脂により被覆する工程、及び
(工程3)工程2で得られた被覆粒子と、生全卵又は生卵黄とを混合する工程
を含むことを特徴とする、被覆粒子含有組成物の製造方法。
【請求項2】
芯材が、苦味、渋味、又はえぐ味を有する機能性成分を含む、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
苦味、渋味、又はえぐ味を有する機能性成分が、ポリフェノール類、カロテノイド類、核酸、ヘム鉄、又は無機鉄である、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
ポリフェノール類がカテキンである、請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
(工程4)工程3で得られた混合物を加熱する工程
をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
工程4の加熱がレトルト殺菌である、請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項記載の製造方法により得られる被覆粒子含有組成物であって、
(1)芯材と、この芯材の表面を被覆する常温において水難溶性を示す物質層と、この物質層の外側を被覆する油脂層とを備えている被覆粒子;及び
(2)生全卵又は生卵黄
を含有することを特徴とする、組成物。
【請求項8】
請求項5又は6記載の製造方法により得られる被覆粒子含有組成物であって、
(1)芯材と、この芯材の表面を被覆する常温において水難溶性を示す物質層と、この物質層の外側を被覆する油脂層とを備えている被覆粒子;及び
(2)全卵又は卵黄
を含有することを特徴とする、組成物。
【請求項9】
加熱食品である、請求項8記載の被覆粒子含有組成物。
【請求項10】
加熱調理済容器包装食品である、請求項9記載の被覆粒子含有組成物。
【請求項11】
高齢者及び/又は咀嚼嚥下困難者用食品である、請求項7〜10のいずれか1項記載の被覆粒子含有組成物。

【公開番号】特開2008−35730(P2008−35730A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211339(P2006−211339)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000252322)和光堂株式会社 (13)
【Fターム(参考)】