説明

被覆組成物用原液

【課題】金属、プラスチック、紙等の種々の基材の表面に耐候性、耐久性に優れた皮膜を形成する際に使用する被覆組成物用原液であり、シリカ濃度が高い場合に従来不安定とされていた弱酸性から中性の領域において保存安定性に優れることにより、塗料、特に、防錆塗料の調製に有用な原液を提供する。
【解決手段】平均一次粒子径が30nm以下のシリカ粒子を、平均二次粒子径が200nm以下となるように水媒体に分散させたシリカ分散液よりなり、該シリカ分散液は、シリカ濃度が10〜30重量%であり、且つ、シリカ粒子100重量部に対して0.01〜10重量部のアミノ酸又はその塩を含有する。また、上記原液は、防錆塗料の調製に好適に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、プラスチック、紙等の種々の基材の表面に耐候性、耐久性に優れた皮膜を形成する際に使用する被覆組成物用原液であり、塗料、特に、防錆塗料の調製に有用な原液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被覆組成物において、バインダーとなる樹脂にシリカを配合してその皮膜特性を改良することが行われてきた。例えば、防錆用塗料において、シリカを添加することにより、鋼板と表面処理樹脂被覆層との密着性を向上させ、また、腐食環境下で緻密で安定な金属の腐食生成物の形成に寄与し、防錆性を発揮するとされている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
この場合、上記組成物へのシリカの配合は、シリカを水などの溶媒に分散させたシリカ分散液の状態で行われる。例えば、防錆塗料の用途においては、有機溶媒や、水溶性樹脂に上記シリカ分散液を混合することにより用いられる。
【0004】
このようなシリカ分散液としては、四塩化珪素を原料として酸水素炎中で燃焼させて作る乾式シリカ、珪酸ナトリウムを中和して作る沈殿法シリカやゲル法シリカといった、いわゆる湿式シリカが優れており、かかるシリカを使用したシリカ分散液が注目されている。
【0005】
しかしながら、上記乾式シリカ、湿式シリカは凝集性が強いため、これを分散性良く溶媒に分散させることは困難である。そのため、これらのシリカを使用して製造されるシリカ分散液は、一概に安定性が悪く、特に、塗料等の被覆組成物の調製において遭遇する環境である、弱酸性から中性の領域での前記シリカ分散液は、数日でシリカの沈降やゲル化が起こるため、安定性に劣り、実用的ではなかった。
【0006】
そのような中、酸性条件下における安定性を向上させたものとして、コロイダルシリカを塩基性塩化アルミニウムの水溶液で処理したものや、酸性珪酸溶液にアルミニウム化合物を含有させ粒子成長させて、粒子内にアルミニウム化合物を内包させたものなどが知られている(例えば、特許文献3、4参照)。
【0007】
しかし、これらの方法で得られたシリカ分散液は、アルミニウムの存在により酸性条件下で安定性を有するものの、塩化物イオン等の腐食性イオンだけでなく、金属不純物、例えばナトリウムなどのアルカリの含有量が多くなるため、不純物分の存在が好まれない用途ではその使用範囲が限られるといった問題があった。
【0008】
また、塗料等の被覆用組成物を調製する際には、物流コスト、保管場所等の面から、前記調製時に希釈して使用する高濃度の状態、即ち、「原液」の状態での保管が要求され、前記シリカ分散液におけるシリカの沈降やゲル化の発生の問題が一層深刻となっている。
【0009】
【特許文献1】特開平11−158649号公報
【特許文献2】特開2000−15176号公報
【特許文献3】特許第2677646号公報
【特許文献4】特開昭63−123807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、従来用いられてきたコロイダルシリカで問題となっている、ナトリウムイオンや塩化物イオン等の不純物イオンの残存が無く、しかも、シリカ濃度が10重量%以上の、シリカ濃度が高い分散液においても、シリカ粒子が高度に分散し、弱酸性から中性領域で長期間の保存安定性が良好なシリカ分散液よりなる被覆組成物用原液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、アミノ酸又はその塩を含有するシリカ分散液が、長期間の保存においてゲル化せず、またシリカ粒子の沈降が起こらないといった保存安定性において優れた特性を示すと共に、塗料等の被覆組成物の調製において遭遇する環境である、弱酸性から中性におけるpHの変化においても優れた安定性を発揮することができ、前記目的を全て解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、平均一次粒子径が30nm以下のシリカ粒子を、平均二次粒子径(平均凝集粒子径)が200nm以下となるように水媒体に分散させたシリカ分散液よりなり、該シリカ分散液は、シリカ濃度が10〜30重量%であり、且つ、シリカ粒子100重量部に対して0.01〜10重量部のアミノ酸又はその塩を含有することを特徴とする被覆組成物用原液である。
【0013】
また、本発明は、上記被覆組成物用原液を一成分として使用してなることを特徴とする防錆塗料をも提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の被覆組成物用原液は、シリカ粒子が微分散しているシリカ分散液にアミノ酸又はその塩を含んでいるため、高濃度において、優れた分散安定性および保存安定性を示す。
【0015】
そして、上記特性を利用して、金属・プラスチック・紙等の表面にガスバリヤ性、耐食性、親水性、光沢性、吸液性、絶縁性等を付与するための各種被覆組成物の用途において、該被覆組成物を調製する際の原液として有効に使用することができ、調製後においても安定した被覆組成物を得ることができる。
【0016】
また、シリカとして乾式シリカ、湿式シリカ(含水シリカ)を使用する場合、実質的に塩化物イオン等の腐食性イオンが入っていないため好ましく、防錆塗料の原料として使用した場合、シリカによる防錆性だけでなく、アミノ酸又はその塩によって、金属表面に溶出する金属イオンを捕捉し、緻密な皮膜を形成できることから、防錆性の極めて高い防錆塗料を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(シリカ)
本発明において、シリカは公知のシリカを特に制限なく使用することができる。また、これらのシリカは、単独或いは複数種を混合して用いることもできる。上記シリカのうち、四塩化珪素などのシラン系ガスを酸水素炎中で燃焼させて得られる乾式シリカ、珪酸ナトリウムなどの酸による中和により得られる湿式シリカが特に好ましい。
【0018】
即ち、上記の乾式シリカ及び湿式シリカは、一次粒子が集まった二次凝集粒子を形成している構造を有していることから、これを添加した被覆組成物において、密着性や加工性が良い皮膜を得ることができる。
本発明に用いられるシリカの平均一次粒子径は、30nm以下であることが好ましい。平均一次粒子径が30nmよりも大きいシリカを用いた場合、原液において沈殿物が堆積しやすく、保存安定性が悪くなる。
【0019】
本発明に用いられるシリカの比表面積は、防錆効果の点から、50〜400m/gの範囲にあるのが好ましい。
【0020】
(アミノ酸又はその塩)
また、本発明において、アミノ酸は、同一分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する化合物であり、公知のアミノ酸が特に制限なく使用される。また、アミノ酸には光学異性体が存在するものもあるが、本発明においては光学異性体による効果の差はなく、いずれの異性体も単独であるいはラセミ体で使用することができる。
【0021】
本発明に使用されるアミノ酸を具体的に例示すれば、下記一般式(1)で表されるアミノ酸が好ましい。
【0022】
N−R−COOH (1)
一般式(1)においてRは任意の置換基を表し、炭素数が10以下の置換基が好ましく、さらに好ましくは炭素数が8以下の置換基である。炭素数が10より大きくなると、水に対する溶解性が低くなるため、好ましくない。
【0023】
具体的なものを例示すると、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、グルタミン、グルタミン酸、アスパラギン、アスパラギン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジン等の化合物及びこれらの縮合物が挙げられ、その中でも、被覆組成物用原液中のシリカ粒子の分散性及び保存安定性の観点から、リシン、アルギニン、ヒスチジンが特に好ましい。
【0024】
また、本発明においては、上記アミノ酸の酢酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、リン酸塩等の塩も使用することができる。
【0025】
(原液)
本発明において、被覆組成物用原液を構成するシリカ分散液中のシリカの濃度は好ましくは10〜30重量%、より好ましくは、10〜25重量%が好ましい。即ち、上記シリカ分散液中のシリカ濃度が10重量%以上の高濃度において、前記アミノ酸又はその塩を添加する、本発明の効果が特に顕著であり、また、原液として貯蔵、および輸送する際のコストを低減できる。また、30重量%以下とすることにより、被覆組成物用原液の粘度の上昇を抑えることが出来る。
【0026】
本発明において、シリカ分散液は前記のシリカを平均二次粒子径が、200nm以下になるように微粒化して調製されたものである。このように微粒化したシリカ粒子を分散せしめることにより、良好な保存安定性を得ることができる。
【0027】
なお、本発明でいう二次粒子径は、光散乱回折式の粒度分布測定装置で測定した体積基準算術平均径の値である。
【0028】
本発明の被覆組成物用原液に用いられる分散媒は、水を主体とするものであるが、少量の有機溶剤例えば、低級アルコールや酢酸エチル等の低沸点溶剤を含んでもよい。その場合、有機溶剤は全分散媒に対し、20重量%以下、更には10重量%以下であることが好ましい。
【0029】
本発明において、アミノ酸又はその塩の添加量は、被覆組成物用原液が、増粘・ゲル化することなく安定に製造でき、且つ、得られた被覆組成物用原液の粘度を低くし、且つ、該原液の保存安定性を良くするために、シリカ100重量部に対して、0.01〜10重量部、特に0.02〜5重量部とすることが好ましい。
【0030】
即ち、上記アミノ酸又はその塩の添加量が、0.01重量部未満の場合、シリカ粒子間の凝集を抑える効果が不十分であるため、好ましくない。また、10重量部を超える場合、多量に添加しても効果は少なく、場合によっては、シリカ粒子の凝集を促進させることとなる。
【0031】
アミノ酸又はその塩の添加量に対する被覆組成物用原液のpH、粘度及び保存安定性は、添加するアミノ酸の種類により多少異なるため、予め実験により、前記添加量の範囲より最適な添加量を選択することが好ましい。
【0032】
尚、本発明において、原液の保存安定性や分散性を向上させるために、本発明の効果を損なわない範囲で、pH調整剤としての酸、又はシランカップリング剤等の界面活性剤や防カビ剤等を少量添加しても良い。
【0033】
本発明の被覆組成物用原液は、弱酸性から中性、即ちpH5〜8であっても長期間に渡って分散安定性が保たれる。
【0034】
(原液の製造方法)
本発明において、原液は、水媒体中に、シリカ粒子とアミノ酸又はその塩とが均一に分散していれば良いが、シリカをできるだけ高分散させるために、下記の工程によって得られたものが好適に使用される。
【0035】
即ち、水媒体中にシリカ及びアミノ酸又はその塩を予備分散させた後、該予備分散液を微粒化する方法が好ましい。具体的には、予備分散液の調製は、水媒体中にアミノ酸又はその塩を混合した溶液に、シリカを直接添加し、混合・分散する方法、水媒体中にシリカを添加し、分散した後に、アミノ酸又はその塩を混合・分散する方法、シリカ粒子及びアミノ酸又はその塩をそれぞれ水媒体に分散した液を混合・分散する方法などが挙げられる。
【0036】
上記の予備分散に用いる分散機は特に制限されないが、具体的には、プロペラ羽根、タービン羽根、パドル翼等を有する一般攪拌機、ディスパーミキサー等の高速回転遠心放射型攪拌機、ホモジナイザー、ホモミキサー、ウルトラミキサー等の高速回転せん断型攪拌機、コロイドミル、プラネタリーミキサー、吸引式分散機などの分散機、更に、上記高速回転せん断型撹拌機とプロペラ羽根及びパドル翼を組み合わせた複合型分散機、プラネタリーミキサーと高速回転遠心放射型撹拌機又は高速せん断型撹拌機を組み合わせた複合型分散機等が挙げられる。
【0037】
また、上記の方法によって得られた予備混合液を微粒化する方法は、特に制限されず、公知の微粒化装置を使用した方法が採用される。具体的には、サンドミル、ビーズミル等の湿式メディア型分散機、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を使用した微粒化方法が挙げられる。
【0038】
(その他の条件)
本発明において、被覆組成物用原液の製造途中で増粘・ゲル化などを起こすことなくより安定的に製造するために、45℃以下、特に20〜40℃の温度範囲に制御することが好ましい。
【0039】
上記温度範囲に制御する方式は特に限定されず、液の組成に影響を与えない公知の冷却手段が特に制限なく採用される。例えば、各分散槽外部へのジャケット式冷却器の設置、各分散槽内部への冷却配管設置、各機器入口又は出口配管部への熱交換器の設置、等の冷却手段を、適宜選択して適用すればよい。
【0040】
(防錆塗料)
本発明の被覆組成物用原液を使用して調製される防錆塗料に含まれるアミノ酸又はその塩は、金属表面に配位し易く、それにより金属表面を不動態化させることができ、特に、亜鉛系被覆鋼等に有効である。本発明の防錆塗料は、皮膜形成目的で有機バインダーを混合する。
【0041】
上記有機バインダーは、塗料の調製に使用される公知の各種のバインダーを用いることができる。代表的なバインダーを具体的に示せば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。また、上記バインダーを2種類以上混合したバインダーも使用可能である。
【0042】
本発明の防錆塗料において、シリカに対する有機バインダーの配合割合は、公知の塗料において一般に採用される割合が特に制限なく採用される。例えば、配合割合は、シリカ100重量部に対して100〜2,000重量部、好ましくは、150〜1,000重量部、更に好ましくは180〜500重量部である。
【0043】
(その他の添加剤)
本発明の防錆剤は、本発明の効果を著しく低下させない範囲で、公知の任意の添加剤を配合することができる。代表的な添加剤を例示すれば、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防カビ剤等を挙げることができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら制限されるものではない。尚、被覆組成物用原液の物性測定、および防錆性評価は以下の方法により行った。
【0045】
(1)粘度測定
被覆組成物用原液300gを500ml容器に採取し、30℃の恒温槽に10分間つけた後、B型粘度計(トキメック製、BL)を用いて60rpmの条件で被覆組成物用原液の粘度を測定した。なお、粘度の経時変化は、得られた被覆組成物用原液を25℃で30日間経時させた粘度を上記と同様の方法で測定し、粘度変化を調べた。
【0046】
(2)pH測定
被覆組成物用原液300gを500ml容器に採取し、pHメーター(堀場製作所製、F−22)を用いて、被覆組成物用原液のpHを測定した。
【0047】
(3)平均二次粒子径の測定
被覆組成物用原液のシリカ濃度が10重量%となるように、該原液をイオン交換水で希釈した後、光散乱回折式の粒度分布測定装置(ベックマンコールター製、コールターLS−230)を用いて、体積基準算術平均径を測定し、この値を平均二次粒子径として採用した。
【0048】
尚、測定に際しては、水(分散媒)の屈折率1.332及びシリカの屈折率1.458をパラメーターとして入力した。
【0049】
(4)防錆性評価
被覆組成物用原液と水溶性ポリウレタン樹脂(第一工業製薬製、スーパーフレックス110)をシリカ100重量部に対して水溶性ポリウレタン樹脂が200重量部となるように混合し、シリカ濃度5重量%、樹脂固形分濃度10重量%の防錆塗料とした。
【0050】
防錆塗料で処理する金属板は、150mm×70mm×0.8mmの溶融合金化亜鉛めっき鋼板をアセトンを使用して脱脂し、次いで水洗、乾燥したものを用いた。次に、鋼板に上記防錆塗料を#3のバーコーターにて塗布し、150℃に保たれた乾燥機で焼き付けて試験片を作製した。
【0051】
評価は、試験板を5重量%塩化ナトリウム水溶液に浸漬した後、余滴を除去したものを35℃、相対湿度85%の湿潤雰囲気下に120時間放置し、試験片の腐食の程度を肉眼観察して下記の基準で判定した。
【0052】
5:赤錆の発生なし、4:錆発生面積5%未満、3:錆発生面積5%以上10%未満、2:錆発生面積10%以上15%未満、1:錆発生面積15%以上25%未満、0:錆発生面積25%以上
実施例1
比表面積が300m/gのヒュームドシリカ(トクヤマ製、レオロシールQS−30)をイオン交換水に徐々に添加しながら、液温度を30℃に維持して、ウルトラミキサー(みづほ工業製、ウルトラミキサーLR−2)で分散することにより、シリカ濃度12重量%のシリカスラリーを得た。このシリカスラリーとリジン水溶液をシリカ100重量部に対してリジンが0.1重量部となるように混合・分散し、予備混合液を得た。尚、予備混合中の液温度は30℃を維持した。この予備混合液を高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製、ナノマイザー、LA−31)を用いて処理圧力80MPaの条件で微粒化処理することにより原液を得た。物性および評価結果を表1に示す。
【0053】
実施例2
アミノ酸としてヒスチジンを用いた以外は、実施例1と同様にして原液を得た。物性および評価結果を表1に示す。
【0054】
実施例3
アミノ酸としてアルギニンを用いた以外は、実施例1と同様にして原液を得た。物性および評価結果を表1に示す。
【0055】
実施例4
シリカ濃度を16重量%とし、添加するヒスチジンの量を0.2重量部とした以外は、実施例2と同様にして原液を得た。物性および評価結果を表1に示す。
【0056】
実施例5
シリカとして、比表面積が90m/gのヒュームドシリカ(トクヤマ製、レオロシールQS−09)を用いた以外は、実施例3と同様にして原液を得た。物性および評価結果を表1に示す。
【0057】
実施例6
市販のケイ酸ナトリウムとイオン交換水を反応槽中にケイ酸ナトリウムの濃度が5重量%となるように投入した。反応槽の温度を40℃として、22重量%硫酸を用いて中和反応(中和率50%まで)を行った後、反応液の温度を95℃とした。この反応液に中和率が100%になるまで上記硫酸を加えた。生成したシリカにろ過、洗浄操作を繰り返し、シリカケーク(シリカ含有量15重量%)を得た。次いで、この湿式シリカケークにイオン交換水を徐々に添加しながら、液温度を30℃に維持して、ウルトラミキサー(みづほ工業製、ウルトラミキサーLR−2)で分散することにより、シリカ濃度12重量%のシリカスラリーを得た。このシリカスラリーとリジン水溶液をシリカ100重量部に対してリジンが0.1重量部となるように混合・分散し、予備混合液を得た。尚、予備混合中の液温度は30℃を維持した。この予備混合液を高圧ホモジナイザー(ナノマイザー製、ナノマイザー、LA−31)を用いて処理圧力80MPaの条件で微粒化処理することにより原液を得た。物性および評価結果を表1に示す。
【0058】
実施例7
アミノ酸としてグリシンを用いた以外は、実施例6と同様にして原液を得た。物性および評価結果を表1に示す。
【0059】
実施例8
アミノ酸としてシステインを用いた以外は、実施例6と同様にして原液を得た。物性および評価結果を表1に示す。
【0060】
実施例9
アミノ酸としてリジンを用いた以外は、実施例6と同様にして原液を得た。物性および評価結果を表1に示す。
【0061】
実施例10
アミノ酸としてヒスチジンを用いた以外は、実施例6と同様にして原液を得た。物性および評価結果を表1に示す。
【0062】
実施例11
アミノ酸としてアルギニンを用いた以外は、実施例6と同様にして原液を得た。物性および評価結果を表1に示す。
【0063】
比較例1
リジンを添加しないこと以外は実施例1と同様にして原液を得た。物性および評価結果を表1に示す。
【0064】
比較例2
高圧ホモジナイザーで微粒化しないこと以外は実施例1と同様にして原液を得た。物性および評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【0066】
実施例1で得られた被覆組成物用原液は、アミノ酸を添加していない比較例1で得られた原液、および高圧微粒化処理をしていない比較例2で得られた被覆組成物用原液と比較して、安定性が大きいことがわかる。比較例2では平均二次粒子径が31μmと分散状態が悪いため、高分散の原液と比較して保存安定性が小さいと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均一次粒子径が30nm以下のシリカ粒子を、平均二次粒子径が200nm以下となるように水媒体に分散させたシリカ分散液よりなり、該シリカ分散液は、シリカ濃度が10〜30重量%であり、且つ、シリカ粒子100重量部に対して0.01〜10重量部のアミノ酸又はその塩を含有することを特徴とする被覆組成物用原液。
【請求項2】
前記原液のpHが5〜8であることを特徴とする請求項1記載の被覆組成物用原液。
【請求項3】
請求項1〜2記載の被覆組成物用原液を一成分として使用してなることを特徴とする防錆塗料。

【公開番号】特開2007−169360(P2007−169360A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365928(P2005−365928)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】