説明

装置バリデーションシステム

【課題】バリーション実行時の作業の進捗度合いを示すプログレスバーの進行とユーザの感覚的な時間経過とのずれを解消するとともに、検査の残り時間をより的確にユーザに知らせる。
【解決手段】バリデーションの検査項目と測定条件とが前回と同一であれば(S1でYes)、前回のバリデーション実行時に計測した実時間を各検査項目の所要時間に設定し(S3)、同一でなければ基本となる時間情報と測定条件とから各検査項目の所要時間を計算する(S2)。指定された検査項目全体の所要時間を計算してこれを残り時間として表示し(S5)、検査が開始されると(S6)、S2又はS3で求めた各検査項目の所要時間、S5で求めた全体の所要時間を基準とし、時間経過に伴って全体及び項目毎のプログレスバーを進行させるとともに、全体及び項目毎の残り時間をダウンカウントする。それにより、プログレスバーの進行が感覚的な時間経過と一致し、且つ正確な残り時間も表示できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種分析装置の性能の検査を定期的に実施するための装置バリデーションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
GLPやGMPといった法的規制の強化に伴い、研究・開発或いは製造・品質管理などの現場で使用される分析装置が所定の性能を発揮し、意図したとおりに稼働していることを科学的に検証する作業、いわゆるバリデーションが極めて重要になってきている。こうしたことから、近年の分析装置では、その装置が正常に機能しているか否かを検査するバリデーション機能が搭載されることが多くなってきている(例えば特許文献1など参照)。例えばJIS(K0115)規格の「吸光光度分析通則」には、紫外可視分光光度計の性能確認のために、波長正確さ、波長再現性、測光正確さ、測光値再現性、分解、迷光、ベースライン安定性、ベースライン平坦性、ノイズレベルという9項目について検査することが定められており、ユーザは例えば1ヶ月又数ヶ月に1回程度の頻度で、上記各項目の検査を定期的に実施し、その検査結果を保存しておくようにしている。それによって、分析によって得られるデータの信頼性を保証することができる。
【0003】
当然のことながら、検査項目数が多いほどバリデーションには時間が掛かり、例えば上記項目について全て検査を実施すると2〜3時間以上の時間が掛かるのが一般的である。バリデーション実行中には目的試料の分析を行うことはできないから、分析作業を効率的に行うには、実行しているバリデーションの進捗状況をユーザが容易に確認できるようにし、バリデーション終了後にすぐに目的試料の分析に取り掛かれるようにすることが望ましい。こうした目的のために、株式会社島津製作所の紫外可視分光光度計用制御ソフトウエアである「UVProbe」にオプションで用意されているバリデーション用ソフトウエアでは、検査項目毎にその進捗状況と検査対象である全ての項目全体の進捗状況とをそれぞれプログレスバーで表示画面上に表示するようにしている。
【0004】
しかしながら、上記従来のソフトウエアで実現されるバリデーションシステムにおいて表示画面上に表示されるプログレスバーは時間的な進捗度合いを示すものではなく、あくまでも検査対象総数に対して実施済みの検査対象数の割合を示したものにすぎない。具体的に言えば、例えば或る1つの検査項目(例えば波長正確さ)について3つの波長において検査する必要があったとすると、その検査項目のプログレスバーは、1つの波長に対する検査が終了する毎に約33%ずつ増加し、3つの波長の検査が終了したときにプログレスバーは100%になる。また、或る1つの検査項目について10波長において検査する必要があれば、その検査項目のプログレスバーは、1つの波長に対する検査が終了する毎に約10%ずつ増加することになる。
【0005】
このように、プログレスバーの進行は検査の進行度合いを反映したものではあるが、検査項目の内容やその検査のための測定の条件等によって、検査に要する時間はそれぞれ異なるため、ユーザがプログレスバーを見たときの感覚的な時間経過と実際のプログレスバーの進行具合とには大きな差異が生じるおそれがある。例えば、プログレスバーで90%まで進行している場合にユーザはあと少しの時間で検査が終了するという感覚を抱くが、その残りの検査が長時間を要するものであった場合には、残りの10%がなかなか進行せず、ユーザには大きな違和感を与える。また、複数の検査項目がある場合に各項目の検査が終了するまで検査項目全体のプログレスバーは更新されないため、プログレスバーの増加は離散的で不自然である。また、プログレスバーによる進捗度合は百分率で表されているだけであるため、検査終了までの残り時間を知ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−228557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その主な目的は、バリデーションの進捗状況を直感的に示すプログレスバーの増加を時間経過に伴ったものとすることにより、ユーザの感覚的な時間経過とプログレスバーの増加とのずれを解消し、さらには、バリデーションの残り時間を的確にユーザに知らせることができる装置バリデーションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明は、分析装置の性能確認のためのバリデーションを実行する装置バリデーションシステムにおいて、
a)バリデーションの各検査項目について、検査の所要時間を計算する際の基本となる時間情報が予め保存された時間情報保存手段と、
b)バリデーションを実施する検査項目と各検査項目の測定条件とが指定されたときに、該測定条件と前記時間情報保存手段に保存されている時間情報とから、検査項目毎の検査の所要時間、及び検査項目全体の総所要時間を算出する時間算出手段と、
c)検査項目毎及び指定された検査項目全体のバリデーションの進捗度合いを示すプログレスバー及び残り時間を表示画面上に表示する表示制御手段と、
d)バリデーション実行時に、前記時間算出手段により算出された検査項目毎の所要時間及び総所要時間を基準とし、実際の時間経過に伴って前記プログレスバー及び残り時間を逐次更新する進捗情報生成手段と、
を備えることを特徴としている。
【0009】
本発明に係る装置バリデーションシステムは、汎用のパーソナルコンピュータをハードウエア資源とし、特徴的な制御・処理を実行するソフトウエア(コンピュータプログラム)を該パーソナルコンピュータ上で動作させることにより構築されるシステムとすることができる。この場合、時間情報保存手段は時間情報が保存される実体を伴うメモリであり、時間算出手段、表示制御手段及び進捗情報生成手段は、コンピュータプログラムの実行に伴って具現化される機能的な手段である。
【0010】
上記検査項目はバリデーション対象の分析装置によって異なる。例えばバリデーション対象の分析装置が紫外可視分光光度計である場合には、検査項目とは上述した9項目、即ち、波長正確さ、波長再現性、測光正確さ、測光値再現性、分解、迷光、ベースライン安定性、ベースライン平坦性、ノイズレベルを少なくとも含むようにするとよい。
【0011】
また、上記「検査の所要時間を計算する際の基本となる時間情報」も分析装置によって異なる。バリデーション対象の分析装置が紫外可視分光光度計である場合、「検査の所要時間を計算する際の基本となる時間情報」は例えば、ベースライン補正を行うための単位波長当たりの時間、スペクトル測定を行うための単位波長当たりの時間、タイムコース測定(2波長における測光値の時間変化の測定)を実行するのに要する時間、フォトメトリック測定(単波長、複数波長、スペクトルを用いた定量)を実行するのに要する時間、オートゼロを実行するのに要する時間、装置に測定パラメータを設定するのに要する時間、ランプの点灯に要する時間、波長移動に要する時間、セル移動に要する時間、などである。この時間情報は装置の機種毎に或る程度決まった値であり、同一機種であれば装置の個体差は殆ど無視できる。したがって、この時間情報は、本システム(又は本システムを構築するコンピュータプログラム)の製造メーカが出荷前に予め時間情報保存手段に格納しておくようにすることができる。
【0012】
また、指定される「各検査項目の測定条件」とは、或る検査項目における測定を伴った検査の波長点数や波長範囲、或いは検査のシーケンスなどである。
【0013】
本発明に係る装置バリデーションシステムでは、バリデーションを実施する検査項目と各検査項目の測定条件とがユーザの手動操作により或いは自動的な設定により指定されると、時間算出手段が、指定された測定条件と時間情報保存手段に保存されている時間情報とに基づいて、検査項目毎の検査の所要時間、及び検査項目全体の総所要時間を算出する。そして、上記指定された項目についてのバリデーションが開始されると、進捗情報生成手段は、時間算出手段により算出された検査項目毎の所要時間及び総所要時間を基準とし、実際の時間経過に伴ってプログレスバーが増加し、残り時間が減少するように、表示されているプログレスバー及び残り時間表示を逐次更新する。時間算出手段により算出される所要時間と実際のバリデーション遂行に要する時間とのずれは殆どないから、プログレスバーの増加及び残り時間の減少はユーザの感覚的な時間経過に合ったものとなる。
【0014】
また本発明に係る装置バリデーションシステムの好ましい一態様は、バリデーションが実行された際に、検査項目及び各検査項目の測定条件並びに実際の所要時間を記憶する実検査時間記憶手段をさらに備え、前記時間算出手段は、指定された検査項目及び各検査項目の測定条件が前記実検査時間記憶手段に記憶されている検査項目及び各検査項目の測定条件と一致する場合に、該実検査時間記憶手段に記憶されている実際の所要時間に基づいて検査項目毎の検査の所要時間、及び検査項目全体の総所要時間を設定する構成とするとよい。
【0015】
実際の現場では、同一検査項目、同一測定条件のバリデーションを定期的に実施することも多く、その場合には、所要時間は前回のバリデーション実施時とほぼ同じとなる筈である。上記好ましい態様によれば、前回のバリデーション実施時に実測された時間情報が次のバリデーション時に利用されるので、プログレスバーや残り時間表示の更新の正確性が一層向上する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る装置バリデーションシステムによれば、複数の検査項目についてバリデーションを実行する際に、検査項目毎と検査項目全体との両方のプログレスバーが、実際の時間経過の度合いとして表示される。これにより、このプログレスバーの進行度合いとユーザの感覚的な時間の経過とが一致し、ユーザにとっては違和感がなく進捗状況をより直感的に把握することが可能となる。また、本発明に係る装置バリデーションシステムによれば、バリデーションの残り時間も数値として表示されるので、この表示からバリデーションの終了時刻を的確に把握し、それまで別の作業を行ったり分析装置の傍を離れたりすることも容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る装置バリデーションシステムを含むUV測定システムの一実施例の要部の構成図。
【図2】本実施例のUV測定システムにおける検査項目全体のバリデーションの手順を示すフローチャート。
【図3】図2中の検査項目毎のバリデーションの手順を示すフローチャート。
【図4】本実施例のUV測定システムにおけるバリデーション実行画面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る装置バリデーションシステムを含むUV測定システムの一実施例について添付図面を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は本実施例のUV測定システムの概略構成図である。UV分析部1は試料に対して吸光度を測定する機能を有し、制御・処理部2はUV分析部1の動作を制御するとともにUV分析部1で取得されたデータを処理する機能を有する。操作部3や表示部4が接続された制御・処理部2の実体はパーソナルコンピュータであり、該コンピュータに予めインストールされた専用の制御・処理ソフトウエアをコンピュータ上で動作させることにより、制御・処理部2としての機能を達成するようにすることができる。
【0020】
制御・処理部2は通常の分析のための制御・処理機能のほかに、UV分析部1の性能を確認するためのバリデーションを実行するバリデーション実行部21を機能ブロックとして含む。また、バリデーション実行部21は、検査項目毎の検査の所要時間を計算する際に必要となる基本的な時間情報が予め保存される時間情報保存部22と、バリデーション実行の際に実際に検査に要した時間を計測して得られる実時間を記憶する計測時間記憶部23とを含む。
【0021】
基本的な時間情報とは、後述するように、指定された検査シーケンスに従い指定された条件の下で検査を実行する際に、その検査の所要時間を計算するための基本となる情報であり、例えば、ベースライン補正を行うための単位波長当たりの時間、スペクトル測定を行うための単位波長当たりの時間、タイムコース(カイネティック)測定を実行するのに要する時間、フォトメトリック測定を実行するのに要する時間、オートゼロを実行するのに要する時間、装置に測定パラメータを設定するのに要する時間、ランプの点灯に要する時間、波長移動に要する時間、セル移動に要する時間などである。一般的に、これら時間情報については、本システムの製造メーカが工場において計測した結果に基づく値を用いることができる。なお、ここでいうタイムコース測定、フォトメトリック測定は、上述した株式会社島津製作所の「UV Probe」に搭載されているデータ処理機能の名称であるが、これらに相当する基本的な機能は一般的に用いられているものである。
【0022】
図4はバリデーション実行部21がバリデーションを行う際に表示部4の画面上に表示されるバリデーション実行画面10を示す図である。このバリデーション実行画面10の左半分には、検査項目とその検査結果を示す検査項目一覧表11が表示され、バリデーション実行画面10の右方には、現在の検査項目に関する作業の進捗状況を表すプログレスバー表示13及び残り時間表示14、並びに、検査項目全体に関する作業の進捗状況を表すプログレスバー表示15及び残り時間表示16、が配されている。また、画面10の上部右端には、バリデーションの実行開始及び停止を指示するための開始指示ボタン17及び停止指示ボタン18が配置されている。なお、検査項目一覧表11に掲載された各検査項目については、未実施、処理中、処理済の識別が容易であるように、その各欄の背景色が異なるように定められている。
【0023】
図2は本実施例のUV測定システムにおける検査項目全体のバリデーションの手順を示すフローチャート、図3は図2中の検査項目毎のバリデーションの手順を示すフローチャートである。図2及び図3を参照しながら、本実施例のUV測定システムにおいてバリデーション実行部21により実行されるバリデーション作業でのプログレスバー及び残り時間の表示更新に係る処理を中心に説明する。
【0024】
バリデーションを実行するに先立って、ユーザは操作部3を操作することにより、表示部4の画面上に表示されたバリデーション実行画面10上の検査項目一覧表11において、検査対象としたい項目についてチェックボックス12欄にチェックを入れ、開始指示ボタン17をクリック操作する。なお、ユーザが一々操作を行うのではなく、予め決めておいた検査項目について予め決めておいたタイミングで(例えば毎月第1月曜日の午前8:00など)自動的にバリデーションの実行を開始させるようにすることもできる。また、バリデーション実行時の測定条件、検査条件については、別途、細かく設定しておくものとする。ここでいう測定条件、検査条件とは、検査シーケンスや各検査項目における検査対象の波長数や波長範囲などである。
【0025】
バリデーションが開始されるとまずバリデーション実行部21は、前回のバリデーション実行時と同一の検査項目について同じ測定条件・検査条件の下で検査を行うか否かを判定する(ステップS1)。ただし、過去にバリデーション実行の実績がない場合には、このステップS1の判定結果は強制的にNoとする。ステップS1において、検査項目、測定条件等が全く同一であれば、計測時間記憶部23から前回のバリデーション実行時に記憶しておいた実所要時間を読み出し、これを各検査項目の所要時間として設定する(ステップS3)。一方、ステップS1において、検査項目、測定条件等が同一でないと判定されると、時間情報保存部22から予め決められている時間情報を読み出し、この時間情報と指定されている測定条件、検査条件とから各検査項目の所要時間を計算し、それを各検査項目に対して設定する(ステップS2)。
【0026】
ステップS2又はS3の処理によって各検査項目の所要時間が決まったならば、バリデーション実行画面10上の検査項目全体のプログレスバー表示15を0にクリアする(ステップS4)。さらに、検査項目全体の残り時間を各検査項目の所要時間から計算し、その計算値を検査項目全体の残り時間表示16に数値で表示する(ステップS5)。それから、検査項目一覧表11に指定されている順序で各検査項目のバリデーションを実施する(ステップS6)。
【0027】
なお、ステップS1〜S5の処理は、バリデーションの開始指示ボタン17の操作がなされる前の段階、つまり、検査項目一覧表11のチェックボックス12欄にチェックが入れられて検査項目が仮に決まった時点で実行するようにしてもよい。そうした場合、検査項目一覧表11のチェックボックス12欄のチェック有/無が切り替えられる毎に検査項目全体の残り時間が再計算され、残り時間表示16の数値が切り替わるから、ユーザは検査実行前に検査に要する時間を確認した上で実行させるか否かを判断することができる。
【0028】
ステップS6の処理においては、まず現在の検査項目についてのプログレスバー表示13を0にクリアし(ステップS61)、現在の検査項目の残り時間として、ステップS2又はS3で設定した当該検査項目に対する所要時間を残り時間表示14に数値表示する(ステップS62)。それから、所定の検査シーケンスを実行する(ステップS63)。その後、現在の検査項目についてのプログレスバー表示13を実時間の経過に応じて増加させ(ステップS64)、現在の検査項目についての残り時間表示14も実時間の経過に応じてカウントダウンする(ステップS65)。
【0029】
さらに、検査項目全体についてのプログレスバー表示15を実時間の経過に応じて増加させ(ステップS66)、検査項目全体についての残り時間表示16も実時間の経過に応じてカウントダウンする(ステップS67)。そして、当該検査項目に関し全ての処理が終了したか否かを判定し(ステップS68)、未終了であればステップS63へ戻る。したがって、ステップS63〜S68の繰り返しによって、当該検査項目に関する検査は遂行され、現在の検査項目についてのプログレスバー表示13は検査の進行に伴う時間経過に応じて増加し、現在の検査項目についての残り時間表示14も検査の進行に伴う時間経過に応じて減っていく。
【0030】
ステップS2又はS3で求めた検査項目毎の所要時間と実際に検査を実行した際に掛かった時間とのずれが殆どなければ、当該検査項目、例えば図4に示した検査項目一覧表11中の1番目の「波長正確さ」に関する全ての処理が終了した時点で、現在の検査項目のプログレスバー表示13は100%(フル)の位置になり、現在の検査項目の残り時間表示14は0分になる。この時点でステップS68においてYesと判定され、図2のステップS7へと戻る。なお、図2、図3のフローチャートには現れていないが、バリデーション実行部21は、検査項目毎にバリデーションが実行されてから終了するまでの時間を計測しておき、その計測により取得された実時間情報を計測時間記憶部23に記憶する。
【0031】
ステップS7では、ステップS2又はS3で求めた検査項目の所要時間に基づく残り時間と実際に計測した検査の所要時間から求まる残り時間とを比較し、その計算した検査の残り時間に合うように検査項目全体のプログレスバー表示15の進行を調整する。また、検査項目全体の残り時間についても残りの検査項目に対応する所要時間から計算し、残り時間表示16を調整する(ステップS8)。或る検査項目の検査中にユーザの指示により該検査を途中で中断して次の検査項目に移行する場合があるが、ステップS7、S8の処理により、検査項目全体の残り時間及びプログレスバーの進行具合が調整されるため、上記のような検査の中断によっても残り時間表示16やプログレスバー表示15の進行のずれを防止することができる。
【0032】
その後、最初に指定された全ての検査項目について検査が終了したか否かを判定し(ステップS9)、未終了であればステップS6へと戻る。一方、全項目の検査が終了していれば検査を終了する。この検査終了時点では、各検査項目、検査項目全体ともに残り時間表示14、16はゼロになっており、プログレスバー表示13、15は100%(フル)になっている。
【0033】
以上のようにして、本実施例のUV測定システムではバリデーションを実行する際に、検査項目毎及び検査項目全体の進捗度合いをグラフィカルに示すプログレスバー表示13、15は実際の時間経過に応じて進行し、残り時間を数値で直接示す残り時間表示14、16は実際の時間経過に応じてカウントダウンする。したがって、ユーザがこれら表示を見たときの感覚的な時間経過とプログレスバー表示13、15の進行具合、残り時間表示14、16の減り具合とが一致する。また、前回のバリデーション実行時と同じ項目、同じ条件でバリデーションが行われるときには、前回のバリデーション実行時に実測された時間に基づいた残り時間表示やプログレスバー進捗表示がなされるので、それら表示の正確性が一層向上する。
【0034】
なお、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨の範囲で適宜変形、修正、追加などを行っても、本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。
【符号の説明】
【0035】
1…UV分析部
2…制御・処理部
21…バリデーション実行部
22…時間情報保存部
23…計測時間記憶部
3…操作部
4…表示部
10…バリデーション実行画面
11…検査項目一覧表
12…チェックボックス
13…現在の検査項目のプログレスバー表示
14…現在の検査項目の残り時間表示
15…検査項目全体のプログレスバー表示
16…検査項目全体の時間表示
17…開始指示ボタン
18…停止指示ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置の性能確認のためのバリデーションを実行する装置バリデーションシステムにおいて、
a)バリデーションの各検査項目について、検査の所要時間を計算する際の基本となる時間情報が予め保存された時間情報保存手段と、
b)バリデーションを実施する検査項目と各検査項目の測定条件とが指定されたときに、該測定条件と前記時間情報保存手段に保存されている時間情報とから、検査項目毎の検査の所要時間、及び検査項目全体の総所要時間を算出する時間算出手段と、
c)検査項目毎及び指定された検査項目全体のバリデーションの進捗度合いを示すプログレスバー及び残り時間を表示画面上に表示する表示制御手段と、
d)バリデーション実行時に、前記時間算出手段により算出された検査項目毎の所要時間及び総所要時間を基準とし、実際の時間経過に伴って前記プログレスバー及び残り時間を逐次更新する進捗情報生成手段と、
を備えることを特徴とする装置バリデーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の装置バリデーションシステムであって、
バリデーションが実行された際に、検査項目及び各検査項目の測定条件並びに実際の所要時間を記憶する実検査時間記憶手段をさらに備え、前記時間算出手段は、指定された検査項目及び各検査項目の測定条件が前記実検査時間記憶手段に記憶されている検査項目及び各検査項目の測定条件と一致する場合に、該実検査時間記憶手段に記憶されている実際の所要時間に基づいて検査項目毎の検査の所要時間、及び検査項目全体の総所要時間を設定することを特徴とする装置バリデーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−15399(P2013−15399A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148089(P2011−148089)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】