説明

補助基板接合構造

【課題】メイン基板から突き出す補助基板の接合ピンの突き出し量を規定することで、良好なはんだ接合を可能とする補助基板接合構造を提供する。
【解決手段】メイン基板1に形成された接合ピン用貫通孔5に対して、補助基板10に立設する接合ピン17を貫通させてはんだ付けするスルーホール実装方式により、メイン基板1と補助基板10とを電気的かつ物理的に接合するようにした補助基板接合構造において、メイン基板1に、接合ピン17の軸方向と平行に指向して、前記メイン基板1に形成された位置決め用孔6を通る位置決めピン20を複数設ける。位置決めピン20に、位置決め用孔6に対する挿入可能量を規定する高さ規定面23を形成する。位置決めピン20を、メイン基板1と補助基板10とを係合させる際に、接合ピン17が接合ピン用貫通孔5を通るより先に位置決め用孔6を通る長さに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助基板接合構造に係り、特に、メイン基板としてのプリント基板上にパワーモジュール等の補助基板をはんだ付けで実装する際に好適な補助基板接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、メイン基板としてのプリント基板上に、パワーモジュール等の補助基板を実装する方法として、補助基板から立設する複数の接合ピンをプリント基板に設けられた貫通孔にそれぞれ貫通させ、この貫通した接合ピンの先端側をプリント基板にはんだ付けすることにより、両者を電気的かつ物理的に接合する方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、接合ピンと別個独立した大径の位置決めピンを補助基板側に複数設けるようにした補助基板接合構造が開示されている。この補助基板接合構造によれば、位置決めピンをメイン基板側の貫通孔に通すことで接合ピンの位置決めが決まるため、複数の細い接合ピンをメイン基板に貫通させる作業が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−223621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、メイン基板上と補助基板とは、メイン基板を貫通して突き出した接合ピンの先端側をはんだ付けすることによって最終的に固定されるが、このとき、良好なはんだ形状(はんだフィレット)を得るためには、メイン基板からの接合ピンの突き出し量が一定であることが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、位置決めピンによって接合ピンを貫通させる作業は容易であるものの、位置決めピンの突き出し量を一定にするためには、メイン基板と補助基板との隙間を規定する治具を用いる必要があり、はんだ付け作業の効率を高めるためには依然として改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、メイン基板から突き出す補助基板の接合ピンの突き出し量を規定することで、良好なはんだ接合を可能とする補助基板接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、メイン基板(1)に形成された接合ピン用貫通孔(5)に対して、補助基板(10,10a)に立設する接合ピン(17)を貫通させてはんだ付けするスルーホール実装方式により、前記メイン基板(1)と補助基板(10,10a)とを電気的かつ物理的に接合するようにした補助基板接合構造において、前記メイン基板(1)または補助基板(10,10a)の一方に、前記接合ピン(17)の軸方向と平行に指向して、前記メイン基板(1)または補助基板(10,10a)の他方に形成された位置決め用孔(6,6a)を通る位置決めピン(20,20a)が複数設けられており、前記位置決めピン(20,20a)には、前記位置決め用孔(6,6a)に対する挿入可能量を規定する高さ規定面(23,23a)が形成されている点に第1の特徴がある。
【0008】
また、前記位置決めピン(20,20a)は、前記メイン基板(1)と補助基板(10,10a)とを係合させる際に、前記接合ピン(17)が接合ピン用貫通孔(5)を通るより先に前記位置決め用孔(6,6a)を通る長さに設定されている点に第2の特徴がある。
【0009】
また、前記位置決めピン(20)は、大径部(22,22a)の端面に小径部(21,21a)が立設する構成を有し、大径部(22,22a)と小径部(21,21a)との段差面が前記高さ規定面(23,23a)となる点に第3の特徴がある。
【0010】
さらに、前記補助基板(10)は、前記接合ピン(17)が立設するパワーモジュール基板(12)と、封止樹脂(16)を介して前記パワーモジュール基板(12)を保持する外枠(11)とからなり、前記位置決めピン(20)は、前記外枠(11)に一体形成されている点に第4の特徴がある。
【発明の効果】
【0011】
第1の特徴によれば、メイン基板または補助基板の一方に、接合ピンの軸方向と平行に指向して、メイン基板または補助基板の他方に形成された位置決め用孔を通る位置決めピンが複数設けられており、位置決めピンには、位置決め用孔に対する挿入可能量を規定する高さ規定面が形成されているので、メイン基板からの接合ピンの突き出し量を規定する機能を位置決めピンに兼務させることが可能となる。これにより、位置決めを行う部材と、接合ピンの突き出し量を規定する部材とを別々に設ける必要がなくなり、部品構造を簡略化することができると共に、接合ピンをはんだ付けする際に安定した品質のはんだフィレット形状を得ることが可能となる。
【0012】
第2の特徴によれば、位置決めピンは、メイン基板と補助基板とを係合させる際に、接合ピンが接合ピン用貫通孔を通るより先に位置決め用孔を通る長さに設定されているので、位置決めピンが位置決め用孔に先に入ることで接合ピンの位置決めが先に決まり、メイン基板と補助基板とを係合させる作業が容易となる。
【0013】
第3の特徴によれば、位置決めピンは、大径部の端面に小径部が立設する構成を有し、大径部と小径部との段差面が高さ規定面となるので、簡単な構造で高さ規定面を形成することが可能となり、生産性が向上する。
【0014】
第4の特徴によれば、補助基板は、接合ピンが立設するパワーモジュール基板と、封止樹脂を介してパワーモジュール基板を保持する外枠とからなり、位置決めピンは、外枠に一体形成されているので、位置決めピンの指向方向が接合ピンの指向方向と同一となり、メイン基板と補助基板とを係合させる作業がより容易となる。また、外枠の形状を変更するのみで、共通のパワーモジュール基板を多種のプリント基板に対応させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリント基板の側面図である。
【図2】表面実装部品を取り付けた状態のプリント基板の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るパワーモジュールの側面図である。
【図4】パワーモジュールの斜視図である。
【図5】パワーモジュールとプリント基板とを係合した状態の斜視図である。
【図6】パワーモジュールとプリント基板とをはんだ付けによって結合した状態の側面図である。
【図7】図6の位置決めピン周辺の拡大図である。
【図8】プリント基盤にパワーモジュールを実装する作業の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る補助基板接合構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るメイン基板としてのプリント基板1の側面図である。本発明に係る補助基板接合構造は、プリント基板1に対して、補助基板としてのパワーモジュール10(図3,4参照)を実装する際に、パワーモジュール10に立設する接合ピンがプリント基板1の図示上方側に突き出す量を規定するために適用される。
【0017】
プリント基板1は、積層したガラス繊維製の布にエポキシ樹脂を含浸させる等で形成される板状部材の表面に導体パターンを配置してなり、その表面には、各種の電子部品がはんだ付けによって実装される。電子部品の実装方式には、主に、表面実装方式とスルーホール実装方式とがある。表面実装方式は、ペースト状のはんだをあらかじめプリント基板に塗布し、この上にチップ等の表面実装部品(Surface Mount Device)を装着した後に、高温炉内で加熱してはんだを溶融させることで、プリント基板の表面に直接はんだ付けして電子部品を固定する方式である。また、スルーホール実装方式は、リード線やチップの足などの導体をプリント基板に形成されたスルーホール(貫通孔)を貫通させた後に、その貫通させた導体の先端をプリント基板にはんだ付けして電子部品を固定する方式である。
【0018】
プリント基板1には、チップ等の表面実装部品2が表面実装方式によって搭載されている。表面実装部品2は、はんだ付けされた足部分3によってプリント基板1に電気的かつ物理的に接合されている。プリント基板1には、スルーホール実装方式を適用するための貫通孔4,5のほかに、位置決め用孔6が形成されている。ここで、図8のパワーモジュール取付工程の手順を示すフローチャートを参照すると、図1に示すプリント基板1は、ステップS1(プリント基板に表面実装部品を搭載)およびステップS2(表面実装部品のはんだ付け)を経過した状態に相当する。
【0019】
図2は、プリント基板1に2つの挿入部品7をスルーホール実装方式によって搭載した状態を示す側面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。挿入部品7は、その下部から延出する2本の端子8をそれぞれ貫通孔4に通し、そのプリント基板1の裏面側(図示下面側)にはんだフィレット9を形成することでプリント基板1に固定されている。図2の状態は、図8のフローチャートのステップS3(プリント基板に挿入部品を搭載)およびステップS4(挿入部品のはんだ付け)を経過した状態に相当する。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態に係るパワーモジュール10の側面図である。また、図4は、パワーモジュール10の斜視図である。補助基板としてのパワーモジュール10は、硬質樹脂等で形成された外枠11の内側にパワーモジュール基板12を配設し、このパワーモジュール基板12を封止樹脂16によって固定した構成を有する。
【0021】
大電流を制御するパワー素子を集中的に搭載するためのパワーモジュール基板12の上面には、リード線14で接続されたパワー素子13および表面実装されたパワー素子15が配設されている。これらの電子部品は、封止樹脂16で覆われることによって光や熱、湿度等の外的要因から保護され、封止樹脂16の表面からは、プリント基板1にスルーホール実装するための複数の接合ピン17のみが突出することとなる。なお、本実施形態では、すべての接合ピン17が同一の形状および長さに設定され、封止樹脂16からの突出量も同一とされている。また、図3では、位置決めピン20に隣接配置される代表的な接合ピン17a,17bのみを示している。
【0022】
そして、本実施形態に係るパワーモジュール10の外枠11には、プリント基板1との係合位置を規定する4本の位置決めピン20が接合ピン17の軸方向と平行に指向して設けられている。位置決めピン20は、プリント基板1に形成された位置決め用孔6に貫通する小径部21と、この小径部21より大径の大径部22とからなり、この大径部22の上端に、高さ規定面23(図示ハッチング部)が形成されている。なお、本実施形態では、すべての位置決めピン20が同一の形状および長さに設定され、高さ規定面23も同一面上に位置するように構成されている。
【0023】
図5は、パワーモジュール10の上部にプリント基板1を係合した状態の斜視図である。また、図6は、パワーモジュール10とプリント基板1とをはんだ付けによって結合した状態の側面図である。前記と同一符号は、同一または同等部分を示す。さらに、図7は、位置決めピン20の周辺の一部拡大図である。
【0024】
図5に示したように、パワーモジュール10とプリント基板1を係合させる際には、位置決めピン20の小径部21を、プリント基板1に形成された位置決め用孔6に通すことで、複数の接合ピン17の位置決めが完了する。位置決めピン20の小径部21は、接合ピン17より太く、かつ接合ピン17が接合ピン用貫通孔5を通るより先に位置決め用孔6を通るように長く形成されているので、位置決め用孔6に通す作業が容易である。
【0025】
そして、小径部21の挿入量を増やしていくと、プリント基板1の裏面側(図示下面側)が位置決めピン20の高さ規定面23に当接することで、プリント基板1の位置が規定される。これにより、プリント基板1の表面側(図示上面側)から接合ピン17が突き出す量が一定に規定される。図5の状態は、図8のフローチャートのステップS5(プリント基板にパワーモジュールを搭載)を経過した状態に対応する。
【0026】
そして、図6に示したように、プリント基板1からの接合ピン17の突出量が一定に規定されることにより、プリント基板1とパワーモジュール10との間隔を固定する治具を用いることなく、良好かつ均一なはんだフィレット18を得ることが容易となる。図6の状態は、図8のフローチャートのステップS6(パワーモジュールのはんだ付け)を経過した状態に対応する。そして、図8に示したように、ステップS7ではんだ品質検査を終了すると、プリント基板1へのパワーモジュール10の取付工程が終了する。このはんだ品質検査においても、接合ピン17の突き出し寸法に対するはんだフィレット18の形状の良否を目視で判断しやすくなっているため、作業効率を向上することができる。
【0027】
図9は、本発明の第2実施形態に係る補助基板接合構造を示す一部拡大側面図である。本実施形態では、接合ピン17の位置決め機能および突き出し量を規定する機能を兼ねる位置決めピン20aが、プリント基板1の裏面側(図示下面側)に設けられている点に特徴がある。位置決めピン20aは、外枠11aに形成された位置決め用孔6aに貫通する小径部21aと、この小径部21aより大径の大径部22aとからなり、この大径部22の下端に、高さ規定面23aが形成されている。本実施形態においても、この高さ規定面23aがプリント基板1の裏面側に当接することで、接合ピン17の突き出し量が規定され、安定した品質のはんだフィレット18ではんだ付けができるようになる。
【0028】
上記したように、本発明に係る補助基板接合構造によれば、メイン基板に、接合ピンの軸方向と平行に指向して、メイン基板に形成された位置決め用孔を通る位置決めピンを複数設け、この位置決めピンに、位置決め用孔に対する挿入可能量を規定する高さ規定面を形成したので、メイン基板からの接合ピンの突き出し量を規定する機能を位置決めピンに兼務させることで、位置決めを行う部材と、接合ピンの突き出し量を規定する部材とを別々に設ける必要がなくなり、部品構造を簡略化することができる。そして、接合ピンの突き出し量が規定されることにより、接合ピンをはんだ付けする際に安定した品質のはんだフィレット形状を得ることが可能となる。
【0029】
なお、パワーモジュールの外枠の形状、接合ピンや位置決めピンの形状や配置、位置決めピンの小径部、大径部および高さ規定面の形状等は、上記実施形態に限られず、種々の変更が可能である。例えば、位置決めピンを、円形断面のほか、方形断面やエル字型断面とすることもできる。また、位置決め用孔は、貫通孔ではなく有底の孔としてもよい。本発明に係る補助基板接合構造は、メイン基板に補助基板をスルーホール実装方式で取り付ける種々の電子基板に適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…プリント基板(メイン基板)、2…表面実装部品、5…貫通孔、6,6a…位置決め用孔、7…挿入部品、10,10a…パワーモジュール(補助基板)、11,11a…外枠、12…パワーモジュール基板、16…封止樹脂、17…接合ピン、20,20a…位置決めピン、21,21a…小径部、22,22a…大径部、23,23a…高さ規定面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン基板(1)に形成された接合ピン用貫通孔(5)に対して、補助基板(10,10a)に立設する接合ピン(17)を貫通させてはんだ付けするスルーホール実装方式により、前記メイン基板(1)と補助基板(10,10a)とを電気的かつ物理的に接合するようにした補助基板接合構造において、
前記メイン基板(1)または補助基板(10,10a)の一方に、前記接合ピン(17)の軸方向と平行に指向して、前記メイン基板(1)または補助基板(10,10a)の他方に形成された位置決め用孔(6,6a)を通る位置決めピン(20,20a)が複数設けられており、
前記位置決めピン(20,20a)には、前記位置決め用孔(6,6a)に対する挿入可能量を規定する高さ規定面(23,23a)が形成されていることを特徴とする補助基板接合構造。
【請求項2】
前記位置決めピン(20,20a)は、前記メイン基板(1)と補助基板(10,10a)とを係合させる際に、前記接合ピン(17)が接合ピン用貫通孔(5)を通るより先に前記位置決め用孔(6,6a)を通る長さに設定されていることを特徴とする請求項1に記載の補助基板接合構造。
【請求項3】
前記位置決めピン(20)は、大径部(22,22a)の端面に小径部(21,21a)が立設する構成を有し、大径部(22,22a)と小径部(21,21a)との段差面が前記高さ規定面(23,23a)となることを特徴とする請求項1または2に記載の補助基板接合構造。
【請求項4】
前記補助基板(10)は、前記接合ピン(17)が立設するパワーモジュール基板(12)と、封止樹脂(16)を介して前記パワーモジュール基板(12)を保持する外枠(11)とからなり、
前記位置決めピン(20)は、前記外枠(11)に一体形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の補助基板接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−228388(P2011−228388A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94935(P2010−94935)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】