説明

補強ポリブタジエンゴムの製造方法

【課題】耐疲労性に優れたシス−1,4−ポリブタジエンとシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンからなる補強ポリブタジエンゴムを提供する。
【解決手段】1,3−ブタジエンを不活性有機溶媒中で可溶性コバルト化合物、ハロゲン含有の有機アルミニウム化合物、および水からなる触媒でシス−1,4重合し、得られた重合反応混合物に可溶性コバルト化合物、トリアルキルアルミニウムを添加し、二硫化炭素の存在下でシンジオタクチック−1,2重合する補強ポリブタジエンゴムの製造方法であって、、シンジオタクチック−1,2重合における、ハロゲン含有の有機アルミニウム化合物中のハロゲン原子のモル数(A)と有機アルミニウム化合物のモル数(B)の比(B)/(A)が2.0〜10であることを特徴とする補強ポリブタジエンゴムの製造方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シス−1,4−ポリブタジエンとシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンからなる補強ポリブタジエンゴムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シス−1,4−ブタジエンゴム中にシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶を分散させた補強ポリブタジエンゴム(ビニル・シス−ポリブタジエンゴムまたはVCRとも呼ばれる)は、従来のシス−1,4−ブタジエンゴムに比べて製品の高硬度化、高弾性率化や加工性の改良を容易にする材料として知られている。
【0003】
特公昭49−17666号公報(特許文献1)、及び特公昭49−17667号公報(特許文献2)には、補強ポリブタジエンゴムの製造方法として、不活性有機溶媒中で1,3−ブタジエンを、水、可溶性コバルト化合物、及び一般式AlRn3-nで表せる有機アルミニウムハライドから得られた触媒を用いてシス−1,4重合し、続いてこの重合系で可溶性コバルト化合物、一般式AlR3で表せる有機アルミニウム化合物、及び二硫化炭素から得られるシンジオタクチック−1,2重合触媒により1,3−ブタジエンをシンジオタクチック−1,2重合する方法が開示されている。得られた補強ポリブタジエンゴムはシス−1,4−ブタジエンゴムの特性を損なわずに引裂強度や耐屈曲亀裂特性などに優れることが記載されている。
【0004】
さらに、特開2000−44633号公報(特許文献3)には、C4留分を主成分とする不活性有機溶媒中で上記と同様な方法を用いて新規な補強ポリブタジエンゴムを製造する方法が開示されている。得られた補強ポリブタジエンゴムにおいて、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンが短繊維結晶の分散形態を有すること、従来の補強ポリブタジエンゴムと比較して成形性や引張応力、引張強さ、耐屈曲亀裂成長性などに優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭49−17666号公報
【特許文献2】特公昭49−17667号公報
【特許文献3】特開2000−44633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は耐疲労性に優れたシス−1,4−ポリブタジエンとシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンからなる補強ポリブタジエンゴムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らはシスおよびトランス−2−ブテンを主成分とするC4留分と環状脂肪族炭化水素からなる不活性有機溶媒中で、1,3−ブタジエンをシス−1,4重合し、引き続きシンジオタクチック−1,2重合する補強ポリブタジエンゴムの製造において、シンジオタクチック−1,2重合における、ハロゲン含有の有機アルミニウム化合物中のハロゲンのモル数(A)と有機アルミニウム化合物のモル数(B)との比(B)/(A)を特定の範囲とすることによって、得られる補強ポリブタジエンゴムの耐疲労性が向上することを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、1,3−ブタジエンをシスおよびトランス−2−ブテンを主成分とするC留分と環状脂肪族炭化水素からなる不活性有機溶媒中で、可溶性コバルト化合物、一般式AlR3−n(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基であり、Xはハロゲン元素であり、nは1.5〜2である)で表されるハロゲン含有の有機アルミニウム化合物、および水からなる触媒でシス−1,4重合し、得られた重合反応混合物に可溶性コバルト化合物、一般式AlR(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物を添加し、二硫化炭素の存在下でシンジオタクチック−1,2重合する補強ポリブタジエンゴムの製造方法であって、シンジオタクチック−1,2重合における、ハロゲン含有の有機アルミニウム化合物中のハロゲン原子のモル数(A)と有機アルミニウム化合物のモル数(B)との比(B)/(A)が2.0〜10であることを特徴とする補強ポリブタジエンゴムの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、耐疲労性に優れた補強ポリブタジエンゴムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の補強ポリブタジエンゴムは二段重合法によって製造できる。すなわち、第一段階でシス−1,4重合を行い、そのまま重合を停止することなく、第二段階としてシンジオタクチック−1,2重合を行うことによって、シス−1,4−ポリブタジエン中にシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン結晶を分散させた補強ポリブタジエンゴムが得られる。
【0011】
重合に用いる溶媒は、シスおよびトランス−2−ブテンを主成分とし、1−ブテン、n−ブタンなどを含む炭素数4の炭化水素混合物であるC4留分と、シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素からなる混合溶媒である。反応系中の1,3−ブタジエンの濃度は10〜60重量%が好ましい。
【0012】
シス−1,4重合の触媒は、可溶性コバルト化合物、一般式AlRan3-n(但し、Raは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基であり、Xはハロゲン元素であり、nは1.5〜2である)で表されるハロゲン含有の有機アルミニウム化合物、及び水からなる触媒である。
【0013】
可溶性コバルト化合物としては、例えばコバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナートなどコバルトのβ−ジケトン錯体、コバルトアセト酢酸エチルエステル錯体のようなコバルトのβ−ケト酸エステル錯体、コバルトオクトエート、コバルトナフテネート、コバルトベンゾエートなどの炭素数6以上の有機カルボン酸のコバルト塩、塩化コバルトピリジン錯体、塩化コバルトエチルアルコール錯体などのハロゲン化コバルト錯体などを挙げることができる。
【0014】
これらのコバルト化合物の使用量は、通常、ブタジエン1モルに対し1×10-7〜1×10-4モル、好ましくは1×10-6〜1×10-5モルの範囲である。
【0015】
一般式AlRan3-n(但し、Raは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基であり、Xはハロゲン元素であり、nは1.5〜2である)で表されるハロゲン含有の有機アルミニウム化合物としては、ジアルキルアルミニウムクロライド、ジアルキルアルミニウムブロマイドなどのジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキクロライド、アルキルアルミニウムセスキブロマイドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジクロライド、アルキルアルミニウムジブロマイド等のアルキルアルミニウムジハライド等が挙げられる。具体的化合物としては、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノブロマイド、ジブチルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジシクロヘキシルアルミニウムモノクロライド、ジフェニルアルミニウムモノクロライド等が挙げられ、中でも、ジエチルアルミニウムモノクロライドが好ましい。これらは単独あるいは混合物として用いることができる。
【0016】
これらのハロゲン含有の有機アルミニウム化合物の使用量は、可溶性コバルト化合物1モルに対し、通常、10〜5000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲である。
【0017】
水の使用量は、アルミニウム化合物1モルに対し、通常、0.1〜1.45モル、好ましくは0.2〜1.2モルである。
【0018】
触媒成分の添加順序に特に制限はないが、ハロゲン含有の有機アルミニウムと水をあらかじめ混合し、熟成して用いることが好ましい。熟成時間は0.1〜24時間、熟成温度は0〜80℃が好ましい。
【0019】
重合時に公知の分子量調節剤、例えば、水素、シクロオクタジエン、アレンなどの非共役ジエン類、またはエチレン、プロピレン、ブテン−1などのα−オレフィン類を使用することができる。また、重合時のゲル生成を抑制するために公知のゲル化防止剤を使用することができる。
【0020】
重合温度は0℃〜100℃の範囲が好ましく、20℃〜80℃の範囲が特に好ましい。重合時間は5分〜5時間の範囲が好ましく、10分〜2時間が特に好ましい。また、重合圧は、常圧又は10気圧(ゲージ圧)程度までの加圧下に行われる。重合は1槽、又は2槽以上の槽を連結して行われ、槽内の溶液を攪拌混合しながら行うことが好ましく、重合後のポリマー濃度が5〜26重量%となるように重合することが好ましい。
【0021】
上記のようにして得られたシス−1,4重合反応混合物を用い、引き続きこの重合系でシンジオタクチック−1,2重合を行う。この際、1,3−ブタジエンを添加しても添加しなくてもよい。
【0022】
本発明におけるシンジオタクチック−1,2重合は、上記のシス−1,4重合反応混合物に、可溶性コバルト化合物、一般式AlRb3(但し、Rbは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物および二硫化炭素を添加することにより行われる。
【0023】
ここで添加する可溶性コバルト化合物は、シス−1,4重合で用いたものと同じであっても異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。この場合は必要に応じてシス−1,4重合で用いた可溶性コバルト化合物を追加する。
【0024】
一般式AlRb3(但し、Rbは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物であるトリアルキルアルミニウムとしては、トリエチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどが挙げられる。中でも、トリエチルアルミニウムが好ましい。これらは単独あるいは混合物として用いることができる。
【0025】
これらのトリアルキルアルミニウムの使用量は、可溶性コバルト化合物1モルに対し、通常、10〜5000モル、好ましくは50〜1000モルの範囲である。
【0026】
本発明のシンジオタクチック−1,2重合においては、一般式AlRan3-n(但し、Raは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基であり、Xはハロゲン元素であり、nは1.5〜2である)で表されるハロゲン含有の有機アルミニウム化合物中のハロゲン原子のモル数(A)と一般式AlRb3(但し、Rbは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物とのモル数の比(B)/(A)が2.0〜10となるようにする。この比は、2.0〜7.5がより好ましく、特に2.0〜5.0が好ましい。
【0027】
本発明において、二硫化炭素はシス−1,4重合後に添加する。二硫化炭素は水分を含まないものであることが好ましく、濃度は20ミリモル/L以下、特に0.01〜10ミリモル/Lが好ましい。
【0028】
重合温度は0℃〜100℃の範囲が好ましく、20℃〜80℃の範囲が特に好ましい。重合時間は5分〜5時間の範囲が好ましく、10分〜2時間の範囲が特に好ましい。また、重合系に前記のシス重合液100重量部当たり1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部の1,3−ブタジエンを添加することでシンジオタクチック−1,2重合時のシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンの収量を増大させることができるが、重合後のポリマー濃度が6〜30重量%となるように重合を行うことが好ましい。
【0029】
重合終了後、常法に従って公知の老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としてはフェノール系の2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、リン系のトリノニルフェニルフォスファイト(TNP)、硫黄系のジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート(TPL)などが挙げられる。これらは単独でも2種以上組み合わせて用いてもよく、添加量はポリマー100重量部に対して0.001〜5重量部である。
【0030】
重合は、メタノール、エタノールなどのアルコールや水などの重合停止剤を加えて停止する。例えばこれらが大量に供給される重合停止槽に重合溶液を投入する方法、塩酸、硫酸などの無機酸、酢酸、安息香酸などの有機酸、塩化水素ガスを重合溶液に導入する方法などの、それ自体公知の方法である。その後、通常の方法に従い生成したポリマーを分離、洗浄、乾燥する。
【0031】
以上のようにして得られる補強ポリブタジエンゴムの100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)は、加工性や強度の観点から20〜150の範囲であることが好ましく、特に30〜110の範囲であることが好ましい。
【0032】
補強ポリブタジエンゴムの沸騰n−ヘキサン不溶分(HI)は1〜25重量%が好ましく、より好ましくは2〜22重量%、特に好ましくは2.5〜19重量%である。また、融点は170℃以上、特に190〜220℃が好ましい。ここで、HIの大部分はシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンであり、沸騰n−ヘキサン可溶分は1,4−シス−ポリブタジエンである。
【0033】
沸騰n−ヘキサン可溶分のシス−1,4構造含有率は90%以上が好ましく、特に95%以上が好ましい。また、重量平均分子量(Mw)は300,000〜800,000が好ましく、特に400,000〜700,000が好ましい。
【0034】
沸騰n−ヘキサン可溶分の100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)は10〜130が好ましく、特に15〜80が好ましい。また、25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)は10〜300が好ましく、特に20〜200が好ましい。さらに、固有粘度([η])は1.0〜5.0が好ましく、特に1.0〜4.0が好ましい。
【0035】
沸騰n−ヘキサン可溶分の25℃で測定した5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)との比(Tcp/ML1+4)は1以上であることが好ましく、特に1.5以上が好ましい。
【0036】
シンジオタクチック1,2−ポリブタジエンによる補強効果は、補強ポリブタジエンゴムのムーニー粘度と沸騰n−ヘキサン可溶分のムーニー粘度の差(ΔML)を沸騰n−ヘキサン不溶分(HI)の量で割った値(ΔML/HI)で表すことができる。すなわち、ΔML/HIが大きいほど補強効果が高いことを示す。
【0037】
本発明により得られる補強ポリブタジエンゴムは、単独でまたは他の合成ゴム若しくは天然ゴムとブレンドし、必要ならばプロセス油で油展し、カーボンブラックなどの充填剤、その他通常の配合剤と加硫剤および加硫助剤を加えたゴム組成物とした後、加硫してタイヤ用ゴムとして用いることができる。具体的にはサイドウォール、トレッド、スティフナー、ビードフィラー、インナーライナー、カーカスなどのタイヤ用部材として好適に使用できる。その他、ホース、ベルトその他の各種工業用品等の機械的特性及び耐摩耗性が要求されるゴム用途に使用することもできる。さらに、プラスチックの改質剤として使用することもできる。
【0038】
上記のゴム組成物は、各成分をバンバリー、オープンロール、ニーダー、二軸混練り機などを用いて、通常行われている方法により混練りすること得られる。配合剤としては前記の充填剤、加硫剤、加硫助剤およびプロセスオイルのほか、通常ゴム業界で用いられる老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを用いてもよい。
【0039】
充填剤としては、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、クレー、リサージュ、珪藻土等の無機充填剤、再生ゴム、粉末ゴム等の有機充填剤が挙げられる。加硫剤としては、公知の加硫剤、例えば硫黄、有機過酸化物、樹脂加硫剤、酸化マグネシウムなどの金属酸化物などが用いられ、加硫助剤としては、公知の加硫助剤、例えばアルデヒド類、アンモニア類、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカーバメイト類、キサンテート類などが用いられる。プロセスオイルは、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系のいずれを用いてもよい。老化防止剤としては、アミン・ケトン系、イミダゾール系、アミン系、フェノール系、硫黄系及び燐系などが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、物性の測定方法は次のとおりである。
(1)ムーニー粘度(ML1+4): JIS K6300に準じて100℃で測定した。
(2)沸騰n−ヘキサン不溶分(HI): 示差走査熱量計(DSC)により測定した融解熱量から、あらかじめ作成した融解熱量と実測のHIとの検量線を用いて算出した。実測HIは、2gの補強ポリブタジエンゴムを200mlのn−ヘキサンで4時間ソックスレー抽出した後の抽出残部の重量%である。
(3)融点(Tm): 示差走査熱量計(DSC)による吸熱曲線のピーク温度により決定した。
(4)加硫物の物性評価: 下記の配合表に従い加硫促進剤と硫黄以外をバンバリーミキサー中で混合した後、得られた混合物と硫黄及び加硫促進剤とをロールで混合して配合ゴム組成物を調製した。得られた各配合ゴム組成物を150℃で15分間プレス加硫して、評価用の試験片を作製した。
【0041】
【表1】

【0042】
(実施例1)
内容量5Lのオートクレーブに、シクロヘキサン、1,3−ブタジエン、シスおよびトランス−2−ブテンを主成分とするC4留分の重量比が42/33/25となるよう調整した混合溶液2.0Lを入れ、窒素置換した。この溶液に水3.43mmolを加えて30分間攪拌後、1,5−シクロオクタジエン19.6mmolおよびジエチルアルミニウムクロライド6.0mmolを加えて5分間攪拌した。溶液を60℃にしてコバルトオクトエート12.3mmolを加えて20分間シス−1,4重合を行った。その後、トリエチルアルミニウム12.0mmolを加えて40℃とし、コバルトオクトエート0.012mmol、水11.0mmolおよび二硫化炭素0.50mmolを加えて、20分間シンジオタクチック−1,2重合を行った。所定時間経過後、老化防止剤を含むn−ヘプタンとエタノールの1:1混合液を加えて重合を停止し、重合物をを回収、乾燥して補強ポリブタジエンゴムを得た。得られた補強ポリブタジエンゴムのML1+4は50.3、HIは14.4重量%、シンジオタクチック−1,2ポリブタジエンの融点は199.5℃であった。加硫物の物性評価結果を表2に示した。
【0043】
(比較例1)
シンジオタクチック−1,2重合の際に添加するトリエチルアルミニウムを7.8mmolとした以外は、実施例1と同様にして補強ポリブタジエンゴムを得た。得られた補強ポリブタジエンゴムのML1+4は53.7、HIは12.2重量%、シンジオタクチック−1,2ポリブタジエンの融点は198.8℃であった。加硫物の物性評価結果を表2に示した。
【0044】
(比較例2)
シンジオタクチック−1,2重合の際に添加するトリエチルアルミニウムを9.0mmolとした以外は、実施例1と同様にして補強ポリブタジエンゴムを得た。得られた補強ポリブタジエンゴムのML1+4は56.8、HIは13.7重量%、シンジオタクチック−1,2ポリブタジエンの融点は198.8℃であった。加硫物の物性評価結果を表2に示した。
【0045】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3−ブタジエンをシスおよびトランス−2−ブテンを主成分とするC留分と環状脂肪族炭化水素からなる不活性有機溶媒中で、可溶性コバルト化合物、一般式AlR3−n(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基であり、Xはハロゲン元素であり、nは1.5〜2である)で表されるハロゲン含有の有機アルミニウム化合物、および水からなる触媒でシス−1,4重合し、得られた重合反応混合物に可溶性コバルト化合物、一般式AlR(但し、Rは炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はシクロアルキル基である)で表される有機アルミニウム化合物を添加し、二硫化炭素の存在下でシンジオタクチック−1,2重合する補強ポリブタジエンゴムの製造方法であって、シンジオタクチック−1,2重合における、ハロゲン含有の有機アルミニウム化合物中のハロゲン原子のモル数(A)と有機アルミニウム化合物のモル数(B)の比(B)/(A)が2.0〜10であることを特徴とする補強ポリブタジエンゴムの製造方法。

【公開番号】特開2010−235865(P2010−235865A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87536(P2009−87536)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】